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特許7075338高体積および重量エネルギー密度を有するアルカリ金属またはアルカリイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】高体積および重量エネルギー密度を有するアルカリ金属またはアルカリイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/054 20100101AFI20220518BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20220518BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220518BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220518BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220518BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20220518BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220518BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20220518BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20220518BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20220518BHJP
   H01M 6/02 20060101ALI20220518BHJP
   H01M 6/16 20060101ALI20220518BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220518BHJP
   H01M 10/36 20100101ALI20220518BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
H01M10/054
H01M4/04 A
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/38 Z
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/80 C
H01M6/02 Z
H01M6/16 Z
H01M10/052
H01M10/36 Z
H01M4/62 Z
【請求項の数】 58
(21)【出願番号】P 2018513330
(86)(22)【出願日】2016-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-01
(86)【国際出願番号】 US2016038528
(87)【国際公開番号】W WO2017048341
(87)【国際公開日】2017-03-23
【審査請求日】2019-06-04
(31)【優先権主張番号】14/756,509
(32)【優先日】2015-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/756,510
(32)【優先日】2015-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510124593
【氏名又は名称】ナノテク インスツルメンツ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】ザム,アルナ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ボー,ゼット.
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-061627(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0050535(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/054
H01M 4/00-4/62
H01M 10/052
H01M 10/36
H01M 6/16
H01M 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属イオン電池またはアルカリ金属電池であって、前記アルカリ金属が、ナト リウム(Na)、カリウム(K)、NaとKとの組合せ、Naおよび/またはKとリチウ ム(Li)との組合せから選択され、前記アルカリ金属がリチウム単独ではなく、前記電池が、 (a)少なくとも80体積%の細孔を有する3D多孔質アノード集電体の細孔内に配設されるアノードスラリを形成するために第1の液体電解質中に分散されたアノード活性材料および任意選択の導電性添加剤を有するアノードと;
(b)少なくとも80体積%の細孔を有する3D多孔質カソード集電体の細孔内に配設されるカソードスラリを形成するために第2の液体電解質中に分散されたカソード活性材料および任意選択の導電性添加剤を有するカソードと;
(c)上記アノードと上記カソードとの間に配設されたセパレータとを備え、
アノード厚さとアノード集電体の厚さとの比が0.8/1~1/0.8であり、および/または、カソード厚さとカソード集電体の厚さとの比が0.8/1~1/0.8であり、
前記アノード活性材料もしくは前記カソード活性材料が、10mg/cm2よりも大きい電極活性材料負荷を構成し、
前記アノード活性材料と前記カソード活性材料の合計が電池セル重量の40重量%を超え、および/または前記3D多孔質アノード集電体もしくは前記カソード集電体が200μm以上の厚さを有するアルカリ金属イオン電池またはアルカリ金属電池。
【請求項2】
アルカリ金属イオン電池またはアルカリ金属電池であって、前記アルカリ金属が、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、NaとKとの組合せ、Naおよび/またはKとリチウム(Li)との組合せから選択され、前記アルカリ金属がリチウム単独ではなく、前記電池が、
a)アノード集電体にコーティングされた、またはアノード集電体と物理的に接触したアノード活性材料を有するアノードであって、前記アノード活性材料が第1の液体電解質とイオン接触しているアノードと;
b)少なくとも80体積%の細孔を有する3D多孔質カソード集電体の細孔内に配設された第2の液体電解質中に分散されたカソード活性材料および任意選択の導電性添加剤を有するカソードであって、カソード厚さとカソード集電体の厚さとの比が0.8/1~1/0.8であるカソードと;
c)前記アノードと前記カソードとの間に配設されたセパレータと
を備え、
前記カソード活性材料が、20mg/cmよりも大きい電極活性材料負荷を構成し、前記アノード活性材料と前記カソード活性材料の合計が前記電池の30重量%を超え、および/または前記3D多孔質カソード集電体が200μm以上の厚さを有する
アルカリ金属イオン電池またはアルカリ金属電池。
【請求項3】
前記アノード集電体が多孔質発泡構造を含む、請求項2に記載のアルカリ金属電池。
【請求項4】
前記カソード活性材料が、無機材料、有機材料もしくは高分子材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、またはそれらの組合せから選択されたナトリウムもしくはカリウムインターカレーション化合物またはナトリウムもしくはカリウム吸収化合物である請求項1に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項5】
前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、コバルト酸化ナトリウム、ニッケル酸化ナトリウム、マンガン酸化ナトリウム、バナジウム酸化ナトリウム、ナトリウム混合金属酸化物、ナトリウム/カリウム遷移金属酸化物、鉄リン酸ナトリウム、鉄リン酸ナトリウム/カリウム、マンガンリン酸ナトリウム、マンガンリン酸ナトリウム/カリウム、バナジウムリン酸ナトリウム、バナジウムリン酸ナトリウム/カリウム、ナトリウム混合金属リン酸塩、遷移金属硫化物、またはそれらの組合せから選択される請求項4に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項6】
前記無機材料が、硫黄、硫黄化合物、ポリ硫化リチウム、遷移金属ジカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、またはそれらの組合せから選択される、請求項4に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項7】
前記無機材料が、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム、またはそれらの組合せから選択される、請求項4に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項8】
前記カソード活性材料が、NaFePO、KFePO、Na(1-x)PO、Na0.7FePO、Na1.5VOPO0.5、Na(PO、Na(PO、NaFePOF、NaFeF、NaVPOF、KVPOF、Na(PO、Na1.5VOPO0.5、Na(PO、NaV15、NaVO、Na0.33、NaCoO、Na2/3[Ni1/3Mn2/3]O、Na(Fe1/2Mn1/2)O、NaMnO、λ-MnO、Na(1-x)MnO、Na0.44MnO、Na0.44MnO/C、NaMn18、NaFeMn(PO、NaTi、Ni1/3Mn1/3Co1/3、Cu0.56Ni0.44HCF、NiHCF、NaMnO、NaCrO、KCrO、NaTi(PO、NiCO、Ni/FeS、Sb、NaFe(CN)/C、NaV1-xCrPOF、Se(y/z=0.01~100)、Se、アルオード石、またはそれらの組合せ(ここでxは0.1~1.0である)から選択されるナトリウムインターカレーション化合物またはカリウムインターカレーション化合物を含む請求項1に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項9】
前記カソード活性材料が、前記電解質と直接接触するアルカリ金属イオン捕捉性官能基またはアルカリ金属イオン貯蔵面を有する機能性材料またはナノ構造化材料から選択される、請求項1に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項10】
前記官能基が、アルカリ金属イオンと可逆反応し、アルカリ金属イオンと酸化還元対を形成し、またはアルカリ金属イオンと化学錯体を形成する、請求項9に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項11】
前記機能性材料またはナノ構造化材料が、
a)軟質炭素、硬質炭素、高分子炭素もしくは炭化樹脂、メソフェーズ炭素、コークス、炭化ピッチ、カーボンブラック、活性炭、ナノセル炭素発泡体、または部分的に黒鉛化された炭素の粒子から選択される、ナノ構造化または多孔質無秩序炭素材料;
b)単層グラフェンシートまたは多層グラフェンプレートレットから選択されるナノグラフェンプレートレット;
c)単壁カーボンナノチューブまたは多壁カーボンナノチューブから選択されるカーボンナノチューブ;
d)カーボンナノファイバ、ナノワイヤ、金属酸化物ナノワイヤもしくは繊維、導電性ポリマーナノファイバ、またはそれらの組合せ;
e)カルボニル含有有機またはポリマー分子;
f)カルボニル基、カルボキシル基、またはアミン基を含む機能性材料;およびそれらの組合せ
からなる群から選択される、請求項9に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項12】
前記機能性材料またはナノ構造化材料が、ポリ(2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン-3,6-メチレン)、Na(x=1~3)、Na(C),NaまたはNaテレフタレート、NaまたはNaトランス-トランス-ムコン酸塩)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物またはPTCDA、硫化物ポリマー、PTCDA、1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物またはNTCDA、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラキノン、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項13】
前記機能性材料またはナノ構造化材料が、少なくとも500m/gの比表面積を有する、請求項9に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項14】
前記機能性材料またはナノ構造化材料が、少なくとも1,000m/gの比表面積を有する、請求項9に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項15】
前記機能性材料またはナノ構造化材料が、-COOH、=O、-NH、-OR、または-COORから選択される官能基を有し、ここでRは炭化水素ラジカルである、請求項9に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項16】
前記アノード活性材料が、アルカリ金属、アルカリ金属合金、アルカリ金属もしくはアルカリ金属合金とアルカリインターカレーション化合物との混合物、アルカリ元素含有化合物、またはそれらの組合せから選択されるアルカリイオン源を含む、請求項1に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項17】
前記アノード活性材料が、石油コークス、カーボンブラック、無定形炭素、活性炭、硬質炭素、軟質炭素、鋳型炭素、中空炭素ナノワイヤ、中空炭素球、チタン酸塩、NaTi(PO、NaTi、Na、NaTP、NaTiO(x=0.2~1.0)、Na、カルボン酸塩ベースの物質、CNa、C、CNaO、CNa、C10Na、C14、C14Na、またはそれらの組合せから選択されるアルカリインターカレーション化合物を含む、請求項1に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項18】
前記アルカリインターカレーション化合物またはアルカリ含有化合物が、
(f)ナトリウムまたはカリウムドープされたシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、およびそれらの混合物;
(g)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物のナトリウムまたはカリウム含有合金または金属間化合物;
(h)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物または複合体のナトリウムまたはカリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、またはアンチモン化物;
(i)ナトリウム塩またはカリウム塩;および
(j)ナトリウムイオンまたはカリウムイオンを予め装填されたグラフェンシート
からなる群から選択される、請求項17に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項19】
前記第1または第2の液体電解質が、水性電解質、有機電解質、イオン液体電解質、有機電解質とイオン電解質の混合物、またはそれらとポリマーとの混合物から選択される、請求項1に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項20】
前記水性電解質が、水中、または水とアルコールとの混合物中に溶解されたナトリウム塩またはカリウム塩を含む、請求項19に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項21】
前記ナトリウム塩またはカリウム塩が、NaSO、KSO、それらの混合物、NaOH、KOH、NaCl、KCl、NaF、KF、NaBr、KBr、NaI、KI、またはそれらの混合物から選択される、請求項20に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項22】
前記有機電解質が、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸ジエチル(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、炭酸プロピレン(PC)、γ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、ギ酸プロピル(PF)、ギ酸メチル(MF)、トルエン、キシレン、酢酸メチル(MA)、炭酸フルオロエチレン(FEC)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸アリルエチル(AEC)、ヒドロフルオロエーテル、およびそれらの組合せからなる群から選択される液体有機溶媒を含む、請求項19に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項23】
前記有機電解質が、過塩素酸ナトリウム(NaClO)、過塩素酸カリウム(KClO)、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF)、六フッ化リン酸カリウム(KPF)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF)、ホウフッ化カリウム(KBF)、六フッ化ヒ酸ナトリウム、六フッ化ヒ酸カリウム、トリフルオロメタスルホン酸ナトリウム(NaCFSO)、トリフルオロメタスルホン酸カリウム(KCFSO)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドナトリウム(NaN(CFSO)、ナトリウムトリフルオロメタンスルホンイミド(NaTFSI)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドカリウム(KN(CFSO)、またはそれらの組合せから選択される非リチウムアルカリ金属塩を含む、請求項19に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項24】
前記イオン液体電解質が、テトラ-アルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、もしくはテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、またはそれらの組合せから選択されるカチオンを有する室温イオン液体から選択されるイオン液体溶媒を含む、請求項19に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項25】
前記イオン液体溶媒が、BF 、B(CN) 、CHBF 、CHCHBF 、CFBF 、CBF 、n-CBF 、n-CBF 、PF 、CFCO 、CFSO 、N(SOCF 、N(COCF)(SOCF、N(SOF) 、N(CN) 、C(CN) 、SCN、SeCN、CuCl 、AlCl 、F(HF)2.3 、またはそれらの組合せから選択されるアニオンを有する室温イオン液体から選択される、請求項24に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項26】
前記3D多孔質アノード集電体または3D多孔質カソード集電体が、200μm以上の厚さを有し、少なくとも85体積%の細孔を有する導電性発泡構造を含み、および/または前記アノード活性材料が、25mg/cm以上の質量負荷を有し、電池セル全体の少なくとも25重量%または25体積%を占め、および/または前記カソード活性材料が、前記カソード内で、有機もしくはポリマー材料に関しては20mg/cm以上、もしくは無機および非ポリマー材料に関しては45mg/cm以上の質量負荷を有し、および/または電池セル全体の少なくとも45重量%または45体積%を占める、請求項1に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項27】
前記3D多孔質アノード集電体または3D多孔質カソード集電体が、300μm以上の厚さを有し、少なくとも90体積%の細孔を有する導電性発泡構造を含み、および/または前記アノード活性材料が、30mg/cm以上の質量負荷を有し、電池セル全体の少なくとも30重量%または30体積%を占め、および/または前記カソード活性材料が、前記カソード内で、有機もしくはポリマー材料に関しては25mg/cm以上、もしくは無機および非ポリマー材料に関しては50mg/cm以上の質量負荷を有し、および/または電池セル全体の少なくとも50重量%または50体積%を占める、請求項1に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項28】
前記3D多孔質アノード集電体または3D多孔質カソード集電体が、400μm以上の厚さを有し、少なくとも95体積%の細孔を有する導電性発泡構造を含み、および/または前記アノード活性材料が、35mg/cm以上の質量負荷を有し、電池セル全体の少なくとも35重量%または35体積%を占め、および/または前記カソード活性材料が、前記カソード内で、有機もしくはポリマー材料に関しては30mg/cm以上、もしくは無機および非ポリマー材料に関しては55mg/cm以上の質量負荷を有し、および/または電池セル全体の少なくとも55重量%または55体積%を占める、請求項1に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項29】
前記3D多孔質アノード集電体または前記3D多孔質カソード集電体が、金属発泡体、金属ウェブまたはスクリーン、穿孔された金属シートベースの3D構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマー被覆ファイバ発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゾル、炭素ゼロックスゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、またはそれらの組合せから選択される導電性発泡構造を含む、請求項1に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項30】
ナトリウムイオンまたはカリウムイオンを装填された前記グラフェンシートが、プレナトリウム化またはプレカリウム化された形態の純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープされたグラフェン、窒素ドープされたグラフェン、化学官能化グラフェン、それらの物理的または化学的に活性化またはエッチングされた形態、またはそれらの組合せから選択される、請求項18に記載のアルカリ金属イオン電池。
【請求項31】
アルカリ金属電池を製造するための方法であって、前記アルカリ金属が、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、NaとKとの組合せ、Naおよび/またはKとリチウム(Li)との組合せから選択され、前記アルカリ金属がリチウム単独ではなく、前記方法が、
a)第1の液体電解質中に分散されたアノード活性材料および任意選択の導電性添加剤の第1の懸濁液と、第2の液体電解質中に分散されたカソード活性材料および任意選択の導電性添加剤の第2の懸濁液とを調製するステップと、
b)アノード集電体としての第1の導電性発泡構造、カソード集電体としての第2の導電性発泡構造、および前記第1の導電性発泡構造と前記第2の導電性発泡構造の間に配設された多孔質セパレータから構成される多孔質セルフレームワークを組み立てるステップであって、前記第1および/または第2の導電性発泡構造が、100μm以上の厚さおよび少なくとも80体積%の細孔を有するステップと、
c)前記第1の懸濁液を前記第1の導電性発泡構造の細孔に注入してアノードを形成し、前記第2の懸濁液を前記第2の導電性発泡構造の細孔に注入してカソードを形成し、それによって、前記アノード活性材料が、前記アノード内で20mg/cm以上の材料質量負荷を有し、または前記カソード活性材料が、前記カソード内で、有機もしくはポリマー材料に関しては15mg/cm以上、もしくは無機および非ポリマー材料に関しては40mg/cm以上の材料質量負荷を有するようにするステップと
を含み、
前記アノード集電体、前記セパレータ、および前記カソード集電体が、第1の懸濁液の前記注入および/または第2の懸濁液の前記注入の前または後に保護ハウジング内に組み立てられる、方法。
【請求項32】
アルカリ金属電池を製造するための方法であって、前記アルカリ金属が、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、NaとKとの組合せ、Naおよび/またはKとリチウム(Li)との組合せから選択され、前記アルカリ金属がリチウム単独ではなく、前記方法が、
(a)カソード集電体としての第1の導電性発泡構造、アノード集電体、および前記アノード集電体と前記カソード集電体との間に配設された多孔質セパレータから構成される多孔質セルフレームワークを組み立てるステップであって、前記第1の導電性発泡構造が、100μm以上の厚さおよび少なくとも80体積%の細孔を有し、前記アノード集電体が、2つの反対側の主表面を有し、前記2つの主表面の少なくとも1つが、ナトリウムもしくはカリウム金属、または少なくとも50重量%のナトリウムもしくはカリウム元素を中に有する合金の層を含むステップと、
(b)第1の液体電解質中に分散されたカソード活性材料の第1の懸濁液を調製するステップであって、前記カソード活性材料が、前記アルカリ金属電池が放電されるときにアルカリ金属イオンを吸収するアルカリ金属インターカレーション化合物またはアルカリ金属吸収化合物の複数の粒子を含み、前記化合物が、Na/NaまたはK/Kよりも少なくとも1.0ボルト高いリチウムインターカレーションまたは吸収電圧を有するステップと、
(c)前記第1の懸濁液を前記第1の導電性発泡構造の細孔に注入してカソードを形成し、それにより、前記カソード活性材料が、7mg/cm以上の電極活性材料負荷を構成し、アノード、前記セパレータ、および前記カソードが、前記注入ステップが行われる前または後に保護ハウジング内に組み立てられるようにするステップと
を含む方法。
【請求項33】
前記アノード集電体が多孔質発泡構造を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記カソード活性材料が、無機材料、有機材料もしくは高分子材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、またはそれらの組合せから選択されたナトリウムもしくはカリウムインターカレーション化合物またはナトリウムもしくはカリウム吸収化合物である請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、コバルト酸化ナトリウム、ニッケル酸化ナトリウム、マンガン酸化ナトリウム、バナジウム酸化ナトリウム、ナトリウム混合金属酸化物、ナトリウム/カリウム遷移金属酸化物、鉄リン酸ナトリウム、鉄リン酸ナトリウム/カリウム、マンガンリン酸ナトリウム、マンガンリン酸ナトリウム/カリウム、バナジウムリン酸ナトリウム、バナジウムリン酸ナトリウム/カリウム、ナトリウム混合金属リン酸塩、遷移金属硫化物、またはそれらの組合せから選択される請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記無機材料が、硫黄、硫黄化合物、ポリ硫化リチウム、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、またはそれらの組合せから選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記無機材料が、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム、またはそれらの組合せから選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記カソード活性材料が、NaFePO、KFePO、Na(1-x)PO、Na0.7FePO、Na1.5VOPO0.5、Na(PO、Na(PO、NaFePOF、NaFeF、NaVPOF、KVPOF、Na(PO、Na1.5VOPO0.5、Na(PO、NaV15、NaVO、Na0.33、NaCoO、Na2/3[Ni1/3Mn2/3]O、Na(Fe1/2Mn1/2)O、NaMnO、λ-MnO、Na(1-x)MnO、Na0.44MnO、Na0.44MnO/C、NaMn18、NaFeMn(PO、NaTi、Ni1/3Mn1/3Co1/3、Cu0.56Ni0.44HCF、NiHCF、NaMnO、NaCrO、KCrO、NaTi(PO、NiCO、Ni/FeS、Sb、NaFe(CN)/C、NaV1-xCrPOF、Se(y/z=0.01~100)、Se、アルオード石、またはそれらの組合せ(ここでxは0.1~1.0である)から選択されるナトリウムインターカレーション化合物またはカリウムインターカレーション化合物を含む請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記カソード活性材料が、前記電解質と直接接触するアルカリ金属イオン捕捉性の官能基またはアルカリ金属イオン貯蔵面を有する機能性材料またはナノ構造化材料から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記官能基が、アルカリ金属イオンと可逆反応し、アルカリ金属イオンと酸化還元対を形成し、またはアルカリ金属イオンと化学錯体を形成する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記機能性材料またはナノ構造化材料が、
(a)軟質炭素、硬質炭素、高分子炭素もしくは炭化樹脂、メソフェーズ炭素、コークス、炭化ピッチ、カーボンブラック、活性炭、ナノセル炭素発泡体、または部分的に黒鉛化された炭素の粒子から選択される、ナノ構造化または多孔質無秩序炭素材料;
(b)単層グラフェンシートまたは多層グラフェンプレートレットから選択されるナノグラフェンプレートレット;
(c)単壁カーボンナノチューブまたは多壁カーボンナノチューブから選択されるカーボンナノチューブ;
(d)カーボンナノファイバ、ナノワイヤ、金属酸化物ナノワイヤもしくは繊維、導電性ポリマーナノファイバ、またはそれらの組合せ;
(e)カルボニル含有有機またはポリマー分子;
(f)カルボニル基、カルボキシル基、またはアミン基を含む機能性材料;およびそれらの組合せ
からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記機能性材料またはナノ構造化材料が、ポリ(2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン-3,6-メチレン)、Na(x=1~3)、Na(C),NaまたはNaテレフタレート、NaまたはNaトランス-トランス-ムコン酸塩)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物またはPTCDA、硫化物ポリマー、PTCDA、1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物またはNTCDA、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラキノン、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記機能性材料またはナノ構造化材料が、少なくとも500m/gの比表面積を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記機能性材料またはナノ構造化材料が、少なくとも1,000m/gの比表面積を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記機能性材料またはナノ構造化材料が、-COOH、=O、-NH、-OR、または-COORから選択される官能基を有し、ここでRは炭化水素ラジカルである、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記アノードが、アルカリ金属、アルカリ金属合金、アルカリ金属もしくはアルカリ金属合金とアルカリインターカレーション化合物との混合物、アルカリ元素含有化合物、またはそれらの組合せから選択されるアルカリイオン源を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項47】
前記アノード活性材料が、石油コークス、カーボンブラック、無定形炭素、活性炭、硬質炭素、軟質炭素、鋳型炭素、中空炭素ナノワイヤ、中空炭素球、チタン酸塩、NaTi(PO、NaTi、Na、NaTP、NaTiO(x=0.2~1.0)、Na、カルボン酸塩ベースの物質、CNa、C、CNaO、CNa、C10Na、C14、C14Na、またはそれらの組合せから選択されるアルカリインターカレーション化合物を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項48】
前記アルカリインターカレーション化合物またはアルカリ含有化合物が、
(k)ナトリウムまたはカリウムドープされたシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、およびそれらの混合物;
(l)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物のナトリウムまたはカリウム含有合金または金属間化合物;
(m)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物または複合体のナトリウムまたはカリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、またはアンチモン化物;
(n)ナトリウム塩またはカリウム塩;および
(o)ナトリウムイオンまたはカリウムイオンを予め装填されたグラフェンシート
からなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記第1または第2の液体電解質が、水性電解質、有機電解質、イオン液体電解質、有機電解質とイオン電解質の混合物、またはそれらとポリマーとの混合物から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項50】
前記水性電解質が、水中、または水とアルコールとの混合物中に溶解されたナトリウム塩またはカリウム塩を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ナトリウム塩またはカリウム塩が、NaSO、KSO、それらの混合物、NaOH、KOH、NaCl、KCl、NaF、KF、NaBr、KBr、NaI、KI、またはそれらの混合物から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記有機電解質が、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸ジエチル(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、炭酸プロピレン(PC)、γ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、ギ酸プロピル(PF)、ギ酸メチル(MF)、トルエン、キシレン、酢酸メチル(MA)、炭酸フルオロエチレン(FEC)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸アリルエチル(AEC)、ヒドロフルオロエーテル、およびそれらの組合せからなる群から選択される液体有機溶媒を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記有機電解質が、過塩素酸ナトリウム(NaClO)、過塩素酸カリウム(KClO)、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF)、六フッ化リン酸カリウム(KPF)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF)、ホウフッ化カリウム(KBF)、六フッ化ヒ酸ナトリウム、六フッ化ヒ酸カリウム、トリフルオロメタスルホン酸ナトリウム(NaCFSO)、トリフルオロメタスルホン酸カリウム(KCFSO)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドナトリウム(NaN(CFSO)、ナトリウムトリフルオロメタンスルホンイミド(NaTFSI)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドカリウム(KN(CFSO)、またはそれらの組合せから選択される非リチウムアルカリ金属塩を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記イオン液体電解質が、テトラ-アルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、もしくはテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、またはそれらの組合せから選択されるカチオンを有する室温イオン液体から選択されるイオン液体溶媒を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記イオン液体溶媒が、BF 、B(CN) 、CHBF 、CHCHBF 、CFBF 、CBF 、n-CBF 、n-CBF 、PF 、CFCO 、CFSO 、N(SOCF 、N(COCF)(SOCF、N(SOF) 、N(CN) 、C(CN) 、SCN、SeCN、CuCl 、AlCl 、F(HF)2.3 、またはそれらの組合せから選択されるアニオンを有する室温イオン液体から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記第1および/または第2の導電性発泡構造が、200μm以上の厚さを有し、および/または少なくとも85体積%の細孔を有し、および/または前記アノード活性材料が、25mg/cm以上の質量負荷を有し、および/または電池セル全体の少なくとも25重量%または25体積%を占め、および/または前記カソード活性材料が、前記カソード内で、有機もしくはポリマー材料に関しては20mg/cm以上、もしくは無機および非ポリマー材料に関しては45mg/cm以上の質量負荷を有し、および/または電池セル全体の少なくとも45重量%または45体積%を占める、請求項31に記載の方法。
【請求項57】
前記第1および/または第2の導電性発泡構造が、300μm以上の厚さを有し、少なくとも90体積%の細孔を有し、および/または前記アノード活性材料が、30mg/cm以上の質量負荷を有し、および/または電池セル全体の少なくとも30重量%または30体積%を占め、および/または前記カソード活性材料が、前記カソード内で、有機およびポリマー材料に関しては25mg/cm以上、もしくは無機および非ポリマー材料に関しては50mg/cm以上の質量負荷を有し、および/または電池セル全体の少なくとも50重量%または50体積%を占める、請求項31に記載の方法。
【請求項58】
前記第1および/または第2の導電性発泡構造が、400μm以上の厚さを有し、少なくとも95体積%の細孔を有し、および/または前記アノード活性材料が、35mg/cm以上の質量負荷を有し、および/または電池セル全体の少なくとも35重量%または35体積%を占め、および/または前記カソード活性材料が、前記カソード内で、有機もしくはポリマー材料に関しては30mg/cm以上、もしくは無機および非ポリマー材料に関しては55mg/cm以上の質量負荷を有し、および/または電池セル全体の少なくとも55重量%または55体積%を占める、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、どちらも2015年9月14日出願の、「Process for Producing Alkali Metal or Alkali-Ion Batteries Having High Volumetric and Gravimetric Energy Densities」という名称の米国特許出願第14/756,509号明細書および「Alkali Metal or Alkali-Ion Batteries Having High Volumetric and Gravimetric Energy Densities」という名称の米国特許出願第14/756,510号からの優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、高い体積エネルギー密度および高い重量エネルギー密度を有する一次(非充電式)または二次(充電式)の非リチウムアルカリ電池(アルカリ金属およびアルカリ金属イオンセルを含む)を対象とする。アルカリ金属は、ナトリウム、カリウム、またはナトリウムおよび/またはカリウムとリチウムとの混合物(しかしリチウム単独ではない)から選択される。
【背景技術】
【0003】
再生可能エネルギーおよび環境に優しい電気自動車(EV)の使用を増やすには、安全で、低コストであり、サイクル寿命が長く、効率の良いエネルギー貯蔵デバイスを利用できることが重要となる。充電式リチウムイオン(Liイオン)、リチウム金属、リチウム-硫黄、およびLi金属-空気電池が、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、およびポータブル電子デバイス、例えばラップトップコンピュータおよび携帯電話用の有望な電源とみなされている。金属元素としてのリチウムは、他の金属と比較して最高のリチウム貯蔵容量(3,861mAh/g)を有する。したがって、一般に、Li金属電池(リチウム金属アノードを有する)は、リチウムイオン電池(理論的比容量が372mAh/gの黒鉛アノードを有する)よりもはるかに高いエネルギー密度を有する。
【0004】
歴史的には、充電式リチウム金属電池は、リチウム金属アノードと結合されたカソード活性材料として、TiS、MoS、MnO、CoO、およびVなどの非リチウム化化合物を使用して製造された。電池が放電されると、リチウム金属アノードから電解質を通ってカソードにリチウムイオンが移動され、カソードがリチウム化された。残念ながら、充放電を繰り返すと、リチウム金属がアノードでデンドライトを形成し、このデンドライトは、最終的にはセパレータを貫通してカソードに到達し、内部短絡、熱暴走、および爆発を引き起こした。この問題に関連した一連の事故の結果、1990年代初頭にこれらのタイプの二次電池の生産が中止され、リチウムイオン電池に取って代わられた。
【0005】
現在でさえ、サイクリングの安定性と安全性の懸念が、EV、HEV、およびマイクロエレクトロニクスデバイス用途でのLi金属電池(例えば、リチウム-硫黄およびリチウム-遷移金属酸化物セル)のさらなる商業化を妨げる主因となっている。ここでも、充電式リチウム金属電池のサイクリング安定性および安全性の問題は、Li金属がサイクリングまたは過充電中にデンドライト構造を形成する傾向が強いことに主に関係し、内部電気的短絡および熱暴走につながる。この熱暴走、さらに爆発は、電解質(例えば炭酸塩およびエーテル系の溶媒)中で使用される有機液体溶媒によって引き起こされ、それらの有機液体溶媒は、残念ながら揮発性および引火性が非常に高い。
【0006】
これらの努力と並行して、従来のリチウム金属二次電池の安全性に関する上記の懸念から、リチウムイオン二次電池が開発された。リチウムイオン二次電池では、純粋なリチウム金属のシートまたはフィルムが、アノード活性材料としての炭素質材料(例えば天然黒鉛粒子)によって置換された。炭素質材料は、(例えば、グラフェン面間でのリチウムイオンまたは原子のインターカレーションにより)リチウムを吸収し、リチウムイオン電池動作のそれぞれ再充電段階中および放電段階中にリチウムイオンを脱着する。炭素質材料は、リチウムとインターカレートすることができる黒鉛を主に含むことがあり、得られる黒鉛インターカレーション化合物は、Liとして表すことができ、ここで、xは典型的には1未満であり、比較的低いアノード比容量(黒鉛に関して理論的には372mAh/g、しかし実用上は300~360mAh/g)を示唆する。カソード比容量は、典型的には130~200mAh/gの範囲内にあるので、得られるリチウムイオン電池の重量および体積エネルギー密度は、典型的にはそれぞれ150~200Wh/gおよび450~600Wh/Lの範囲内である。
【0007】
全く異なるクラスのエネルギー貯蔵装置として、ナトリウム電池は、リチウム電池に対する魅力的な代替と考えられている。これは、ナトリウムが豊富な物質であり、ナトリウムの生産はリチウムの生産に比べてかなり環境に優しいからである。さらに、リチウムの高コストは大きな問題であり、Na電池はかなり低コストとなり得る。
【0008】
アノードとカソードの間でナトリウムイオン(Na)を往復させるように動作する少なくとも2種類の電池がある。すなわち、アノード活性材料としてNa金属または合金を有するナトリウム金属電池と、アノード活性材料としてNaインターカレーション化合物を有するナトリウムイオン電池である。硬質炭素ベースのアノード活性材料(Naインターカレーション化合物)およびナトリウム遷移金属リン酸塩をカソードとして使用するナトリウムイオン電池は、いくつかの研究グループによって述べられている。X. Zhuo et al. Journal of Power Sources 160 (2006) 698;J. Barker他の米国特許第7,759,008号「Sodium Ion Batteries」(2010年7月20日);およびJ. F. Whitacre, et al. “NaMn18 as a positive electrode material for an aqueous electrolyte sodium-ion energy storage device,” Electrochemistry Communications 12 (2010) 463-466。
【0009】
しかし、これらのナトリウムベースのデバイスは、Liイオン電池よりもさらに低い比エネルギーおよびレート性能を示す。Naインターカレーションのためのアノード活性材料およびNaインターカレーションのためのカソード活性材料は、それらのLi貯蔵容量に比べて低いNa貯蔵容量を有する。例えば、硬質炭素粒子は、300~360mAh/gまでのLiイオンを貯蔵することができるが、この材料は、Naイオンを最大で150~250mAh/g、およびKイオン貯蔵に関しては100mAh/g未満だけ貯蔵することができる。
【0010】
硬質炭素や他の炭素質インターカレーション化合物の代わりに、ナトリウム金属をナトリウム金属セルのアノード活性材料として使用することができる。しかし、アノード活性材料としての金属ナトリウムの使用は通常、デンドライト形成、界面老化、および電解質の非両立性の問題により、望ましくなく、危険であると考えられる。
【0011】
低容量のアノードまたはカソード活性材料は、ナトリウムイオン電池またはカリウムイオン電池に関連する唯一の問題ではない。電池業界が認識していないと思われる、またはほとんど無視している重大な設計上および製造上の問題がある。例えば、公開されている文献および特許文献で頻繁に主張されているように(アノードまたはカソード活性材料の重量のみに基づく)電極レベルでの重量容量が高いにもかかわらず、これらの電極は、残念ながら、(総電池セル重量またはパック重量に基づく)電池セルまたはパックレベルでの高い容量を電池に提供することができない。これは、これらの報告では電極の実際の活性材料質量負荷が低すぎるという見解によるものである。ほとんどの場合、アノードの活性材料質量負荷(面密度)は、15mg/cmよりもかなり低く、大抵は<8mg/cmである(面密度=電極の厚さ方向に沿った電極断面積あたりの活性材料の量)。セルの中のカソード活性材料の量は、典型的にはアノード活性材料の量の1.5~2.5倍である。その結果、Na-イオン電池セルにおけるアノード活性材料(例えば、炭素)の重量比は、典型的には12%~17%であり、カソード活性材料(例えば、NaMnO)の重量比は、17%~35%(大抵は<30%)である。カソード活性材料およびアノード活性材料の複合の重量分率は、典型的には、セル重量の30%~45%である。
【0012】
低い活性材料質量負荷は、主として、従来のスラリコーティング手順を使用して比較的厚い電極(100~200μmよりも厚い)を得ることができないことが原因である。これは、思うほど簡単な作業ではなく、現実には、電極の厚さは、セル性能を最適化するために任意にかつ自由に変えることができる設計パラメータではない。反対に、より厚い試料は、非常に脆くなりやすく、または構造的完全性が低くなりやすく、また大量の粘結剤樹脂の使用を必要とする。低い面密度および低い体積密度(薄い電極および低い充填密度に関連する)により、電池セルの体積容量は比較的低く、体積エネルギー密度は低い。
【0013】
よりコンパクトでポータブルなエネルギー貯蔵システムに対する需要の高まりと共に、電池の体積の利用率を高めることに強い関心が持たれている。セルの体積容量およびエネルギー密度の改良を実現するために、高い体積容量および高い質量負荷を可能にする新規の電極材料および設計が不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許出願公開第2012/0171574A1号
【文献】米国特許出願公開第2015/0050535A1号
【文献】米国特許出願公開第2013/0202959A1号
【文献】米国特許出願公開第2014/0363746A1号
【文献】米国特許出願公開第2013/0344397A1号
【文献】米国特許出願公開第2013/0319870A1号
【文献】米国特許出願公開第2004/0121237A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の全般的な目的は、充電式Na金属セル、K金属セル、ハイブリッドNa/K金属セル、Naイオンセル、Kイオンセル、またはハイブリッドNa/Kイオンセルを提供することである。これらは、重量エネルギー密度が高く、体積エネルギーが高く、電力密度が高く、サイクル寿命が長く、およびNa/K金属デンドライトによる爆発の危険性がない。このセルは、NaまたはK金属二次電池、Naイオンセル、Kイオンセル、または非リチウムアルカリ金属ハイブリッドセルを含み、少なくとも1つの電極(カソードのみ、またはアノードとカソードの両方)が、NaまたはKの挿入またはインターカレーションで動作する。
本発明の1つの特定の技術的目標は、サイクル寿命が長く、重量エネルギー密度が150Wh/Kgよりも大きく、体積エネルギーが450Wh/Lよりも大きく、好ましくは250Wh/Kgおよび600Wh/Lよりも大きく、より好ましくは300Wh/Kgおよび750Wh/Lよりも大きい、安全なNaまたはK金属ベースの電池を提供することである(上記の数値はすべて総セル重量またはセル体積に基づく)。
【0016】
本発明の特定の目的は、従来のアルカリ金属セルに一般的に関連する以下の問題を克服または大幅に低減する合理的な材料および電池設計に基づく充電式の非リチウムアルカリ金属セルを提供することである:(a)デンドライト形成(鋭利なデンドライトがセパレータを貫通してカソードに到達することによる内部短絡);(b)カソード中のNaインターカレーション化合物の非常に低い電気およびイオン伝導度。これは、大きな割合(典型的には10~30%)の非活性導電性フィラーを必要とし、かつかなりの割合のアクセス不可能なまたは到達不可能なカソード活性材料を有する;および(c)短いサイクル寿命。本発明の別の目的は、様々なNa金属およびNaイオン電池における潜在的なNa金属デンドライト誘発内部短絡および熱暴走問題を防止するための、簡単でコスト効率が良く、実施が容易な手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、同じタイプの電池を前提として、高い活性材料質量負荷、(活性材料質量および体積に対して)非常に低いオーバーヘッド重量および体積、高い体積容量、ならびに従来なかった高い体積エネルギー密度および電力密度を有するアルカリ金属電池を製造するための方法を提供する。このアルカリ金属(Na、K、Na/K、Na/Li、K/Li、またはNa/K/Li、しかしLi単独ではない)電池は、一次電池(非充電式)または二次電池(充電式)でよく、充電式アルカリ金属電池(アルカリ金属アノードを有する)およびアルカリ金属イオン電池(例えば、アノード活性材料として第1のNaまたはKインターカレーション化合物を有し、カソード活性材料として、第1のNaまたはKインターカレーション化合物よりもはるかに高い電気化学ポテンシャルを有する第2のNaまたはKインターカレーションまたは吸収化合物を有する)を含む。カソード活性材料の電気化学ポテンシャルは、アノード活性材料の電気化学ポテンシャルよりも少なくとも1.0ボルト、好ましくは少なくとも1.5ボルト、さらに好ましくは少なくとも2.0ボルト、より好ましくは少なくとも3.0ボルト、さらに好ましくは少なくとも3.5ボルト、最も好ましくは少なくとも4.0ボルト高い。
【0018】
本発明は、アルカリ金属が、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、NaとKとの組合せ、Naおよび/またはKとリチウム(Li)との組合せから選択され、アルカリ金属がリチウム単独ではない、アルカリ金属イオン電池またはアルカリ金属電池を提供する。
この電池は、
(a)少なくとも80重量%の細孔を有する3D多孔質アノード集電体の細孔内に配設されるアノードスラリを形成するために第1の液体電解質中に分散されたアノード活性材料および任意選択の導電性添加剤を有するアノードであって、アノード厚さとアノード集電体の厚さとの比が0.8/1~1/0.8であるアノードと;
(b)少なくとも80重量%の細孔を有する3D多孔質カソード集電体の細孔内に配設されるカソードスラリを形成するために第2の液体電解質中に分散されたカソード活性材料および任意選択の導電性添加剤を有するカソードであって、カソード厚さとカソード集電体の厚さとの比が0.8/1~1/0.8であるカソードと;
(c)上記アノードと上記カソードとの間に配設されたセパレータと
を備え、
アノード活性材料もしくはカソード活性材料が、10mg/cmよりも大きい電極活性材料負荷を構成し、アノード活性材料とカソード活性材料の合計が電池セル重量の40重量%を超え、および/または3D多孔質アノード集電体もしくはカソード集電体が200μm以上の厚さを有し、電池が充電されるときに、カソード活性材料がアルカリ金属イオンを解放し、アノード活性材料がアルカリ金属イオンを吸収し、電池が放電されるときに、アノード活性材料がアルカリ金属イオンを解放し、カソード活性材料がアルカリ金属イオンを吸収する。
【0019】
このアルカリ金属イオン二次電池は、以下の方法によって製造することができる。
(a)アノード集電体としての第1の導電性発泡構造(電子伝導経路の相互接続された2Dまたは3Dネットワーク)、カソード集電体としての第2の導電性発泡構造、および第1の導電性発泡構造と第2の導電性発泡構造との間に配設された多孔質セパレータから構成される多孔質セルフレームワークを組み立てるステップであって、第1および/または第2の導電性発泡構造は、100μm以上(好ましくは200μm超、より好ましくは300μm超、さらに好ましくは400μm超、および最も好ましくは500μm超)の厚さ、および少なくとも80体積%の細孔(好ましくは少なくとも85%の多孔率、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%;これらの細孔の体積は、懸濁液を含浸される前の細孔の量を表す)を有するステップと、
(b)第1の液体電解質中に分散されたアノード活性材料および任意選択の導電性添加剤の第1の懸濁液と、第2の液体電解質中に分散されたカソード活性材料および任意選択の導電性添加剤の第2の懸濁液とを調製するステップと、
(c)第1の発泡構造の細孔に第1の懸濁液を含浸して(例えば、第1の導電性発泡構造の細孔に第1の懸濁液を注入して)アノードを形成し、第2の発泡構造の細孔に第2の懸濁液を含浸して(例えば、第2の導電性発泡構造の細孔に第2の懸濁液を注入して)カソードを形成し、それによって、好ましくは、アノード活性材料がアノード内で20mg/cm以上の材料質量負荷を成し、またはカソード活性材料がカソード内で、有機もしくはポリマー材料に関して15mg/cm以上、または無機および非ポリマー材料に関して30mg/cm以上(好ましくは40%以上)の材料質量負荷を有するようにするステップと
を含み、
第1の懸濁液の注入(または含浸)および/または第2の懸濁液の注入(または含浸)の前、途中、または後に、アノード集電体、セパレータ、およびカソード集電体が保護ハウジング内で組み立てられる。
【0020】
本発明の別の実施形態は、アルカリ金属が、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、NaとKとの組合せ、Naおよび/またはKとリチウム(Li)との組合せから選択され、アルカリ金属がリチウム単独ではない、アルカリ金属電池(一次または二次)を提供する。このアルカリ金属電池は、
a)アノード集電体にコーティングされた、またはアノード集電体と物理的に接触したアノード活性材料を有するアノードであって、アノード活性材料が第1の液体電解質とイオン接触しているアノードと;
b)少なくとも80体積%の細孔を有する3D多孔質カソード集電体の細孔内に配設されたカソード電解質を形成するために第2の液体電解質中に分散されたカソード活性材料および任意選択の導電性添加剤を有するカソードであって、カソード厚さとカソード集電体の厚さとの比が0.8/1~1/0.8であるカソードと;
c)アノードとカソードとの間に配設されたセパレータと
を備え、
カソード活性材料が、20mg/cmよりも大きい電極活性材料負荷を構成し、アノード活性材料とカソード活性材料の合計が電池の30重量%を超え、および/または3D多孔質カソード集電体が200μm以上の厚さを有し、電池が充電されるときに、カソード活性材料がアルカリ金属イオンを解放し、アノード活性材料がアルカリ金属イオンを吸収し、電池が放電されるときに、アノード活性材料がアルカリ金属イオンを解放し、カソード活性材料がアルカリ金属イオンを吸収する。
【0021】
このアルカリ金属電池は、以下のステップを含む方法によって製造することができる。
(A)カソード集電体としての第1の導電性発泡構造、アノード集電体、および上記アノード集電体と上記カソード集電体との間に配設された多孔質セパレータから構成される多孔質セルフレームワークを組み立てるステップであって、上記第1の導電性発泡構造が、100μm以上の厚さおよび少なくとも80体積%の細孔を有し、アノード集電体(例えばCu箔)が、2つの反対側の主表面を有し、2つの主表面の少なくとも1つが、ナトリウムもしくはカリウム金属、または少なくとも50重量%のナトリウムもしくはカリウム元素を中に有する合金の層を含むステップと、
(B)第1の液体電解質中に分散されたカソード活性材料の第1の懸濁液を調製するステップであって、カソード活性材料が、アルカリ金属電池が放電されるときにアルカリ金属イオンを吸収するアルカリ金属インターカレーション化合物またはアルカリ金属吸収化合物の複数の粒子を含み、化合物が、Na/NaまたはK/Kよりも少なくとも1.0ボルト高いリチウムインターカレーションまたは吸収電圧を有するステップと、
(C)第1の懸濁液を上記第1の導電性発泡構造の細孔に注入してカソードを形成し、それにより、カソード活性材料が、7mg/cm以上の電極活性材料負荷を構成し、上記アノード、上記セパレータ、および上記カソードが、注入ステップが行われる前または後に保護ハウジング内に組み立てられるようにするステップ。
【0022】
本発明を実施するのに使用することができるアノード活性材料またはカソード活性材料の種類に制限はない。しかし、好ましくは、アノード活性材料は、電池が充電されたときに、Na/Naよりも(すなわち、標準電位としてのNa→Na+eに対して)またはK/Kよりも(すなわち、標準電位としてのK→K+eに対して)1.0ボルト未満(好ましくは0.7ボルト未満)だけ高い電気化学ポテンシャルでNaイオンまたはKイオンを吸収する。
【0023】
いくつかの実施形態では、アノードは、アルカリ金属、アルカリ金属合金、アルカリ金属もしくはアルカリ金属合金とアルカリインターカレーション化合物との混合物、アルカリ元素含有化合物、またはそれらの組合せの箔、粒子、またはチップから選択されるアルカリイオン源を(アノード活性材料として)含む。
【0024】
いくつかの好ましい実施形態では、アノード活性材料は、石油コークス、カーボンブラック、無定形炭素、活性炭、硬質炭素、軟質炭素、鋳型炭素、中空炭素ナノワイヤ、中空炭素球、チタン酸塩、NaTi(PO、NaTi、Na、NaTP、NaTiO(x=0.2~1.0)、テレフタル酸二ナトリウム(Na)、カルボン酸塩ベースの物質、CNa、C、CNaO、CNa、C10Na、C14、C14Na、またはそれらの組合せから選択されるアルカリインターカレーション化合物を含む。
【0025】
アノード活性材料としてのアルカリインターカレーション化合物またはアルカリ含有化合物は、以下の材料からなる群から選択されることがある。
(a)ナトリウムまたはカリウムドープされたシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、およびそれらの混合物;
(b)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物のナトリウムまたはカリウム含有合金または金属間化合物;
(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物または複合体のナトリウムまたはカリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、またはアンチモン化物;
(d)ナトリウムまたはカリウム塩;および
(e)ナトリウムイオンまたはカリウムイオンを予め装填されたまたは予め付着されたグラフェンシート(本明細書では、プレナトリウム化またはプレカリウム化グラフェンシートと呼ぶ)。
【0026】
いくつかの実施形態では、カソード活性材料は、無機材料、有機材料もしくは高分子材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、またはそれらの組合せから選択されたナトリウムもしくはカリウムインターカレーション化合物またはナトリウムもしくはカリウム吸収化合物である。金属酸化物/リン酸塩/硫化物は、コバルト酸化ナトリウム、ニッケル酸化ナトリウム、マンガン酸化ナトリウム、バナジウム酸化ナトリウム、ナトリウム混合金属酸化物、ナトリウム/カリウム遷移金属酸化物、鉄リン酸ナトリウム、鉄リン酸ナトリウム/カリウム、マンガンリン酸ナトリウム、マンガンリン酸ナトリウム/カリウム、バナジウムリン酸ナトリウム、バナジウムリン酸ナトリウム/カリウム、ナトリウム混合金属リン酸塩、遷移金属硫化物、またはそれらの組合せから選択される。
【0027】
無機材料ベースのカソード活性材料は、硫黄、硫黄化合物、ポリ硫化リチウム、遷移金属ジカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、またはそれらの組合せから選択することができる。いくつかの好ましい実施形態では、無機材料は、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム、またはそれらの組合せから選択される。
【0028】
好ましくは、カソード活性材料は、NaFePO、KFePO、Na(1-x)PO、Na0.7FePO、Na1.5VOPO0.5、Na(PO、Na(PO、NaFePOF、NaFeF、NaVPOF、KVPOF、Na(PO、Na1.5VOPO0.5、Na(PO、NaV15、NaVO、Na0.33、NaCoO、Na2/3[Ni1/3Mn2/3]O、Na(Fe1/2Mn1/2)O、NaMnO、Na(1-x)MnO、Na0.44MnO、Na0.44MnO/C、NaMn18、NaFeMn(PO、NaTi、Ni1/3Mn1/3Co1/3、Cu0.56Ni0.44HCF、NiHCF、NaMnO、NaCrO、KCrO、NaTi(PO、NiCO、Ni/FeS、Sb、NaFe(CN)/C、NaV1-xCrPOF、Se(y/z=0.01~100)、Se、アルオード石、またはそれらの組合せ(ここでxは0.1~1.0である)から選択されるナトリウムインターカレーション化合物またはカリウムインターカレーション化合物を含む。
【0029】
代替形態として、カソード活性材料は、上記電解質と直接接触するアルカリ金属イオン捕捉性官能基またはアルカリ金属イオン貯蔵面を有する機能性材料またはナノ構造化材料から選択されることがある。官能基は、アルカリ金属イオンと可逆反応し、アルカリ金属イオンと酸化還元対を形成し、またはアルカリ金属イオンと化学錯体を形成する。いくつかの実施形態では、機能性材料またはナノ構造化材料は、以下のものからなる群から選択される。
(a)軟質炭素、硬質炭素、高分子炭素もしくは炭化樹脂、メソフェーズ炭素、コークス、炭化ピッチ、カーボンブラック、活性炭、ナノセル炭素発泡体、または部分的に黒鉛化された炭素から選択されるナノ構造化または多孔質の無秩序炭素材料;
(b)単層グラフェンシートまたは多層グラフェンプレートレットから選択されるナノグラフェンプレートレット;
(c)単壁カーボンナノチューブまたは多壁カーボンナノチューブから選択されるカーボンナノチューブ;
(d)カーボンナノファイバ、ナノワイヤ、金属酸化物ナノワイヤもしくは繊維、導電性ポリマーナノファイバ、またはそれらの組合せ;
(e)カルボニル含有有機またはポリマー分子;
(f)カルボニル基、カルボキシル基、またはアミン基を含む機能性材料;およびそれらの組合せ。
【0030】
機能性材料またはナノ構造化材料は、ポリ(2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン-3,6-メチレン)、Na(x=1~3)、Na(C),Na(Naテレフタレート)、Na(Liトランス-トランス-ムコン酸塩)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、硫化物ポリマー、PTCDA、1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラキノン、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン、およびそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0031】
好ましくは、機能性材料またはナノ構造化材料は、少なくとも500m/g、さらに好ましくは少なくとも1,000m/gの比表面積を有する。いくつかの特定の実施形態では、機能性材料またはナノ構造化は、-COOH、=O、-NH、-OR、または-COOR(ここでRは炭化水素ラジカルである)から選択される官能基を有する。これらの官能基はNaまたはKイオンを可逆的に捕捉して貯蔵することができる。
【0032】
本明細書における発泡構造は、電子伝導経路の相互接続された2Dまたは3Dネットワークを表すことに留意されたい。これは、例えば、図3に示されるように、端部で接続された2Dマット、ウェブ、チキンワイヤ状の金属スクリーンなどでよい。これはまた、金属発泡体、導電性ポリマー発泡体、黒鉛発泡体、炭素発泡体、またはグラフェン発泡体などでもよく、細孔壁が導電性材料を含む。
【0033】
好ましい実施形態では、図1(C)または図1(D)に示されるように、発泡性アノード集電体は、多孔質セパレータの縁部まで延び、その縁部と物理的に接触している。また、発泡性カソード集電体も、多孔質セパレータの反対側の縁部まで延び、その縁部と物理的に接触していてよい。換言すると、アノード集電体の細孔壁がアノード層全体を覆い、および/またはカソード集電体の細孔壁がカソード層全体を覆う。これらの構成では、集電体の厚さ/活性材料層の厚さの比が約1/1であり、電極の厚さが集電体の厚さと本質的に同じである(カソードの厚さとカソード集電体の厚さの比が約1であり、アノードの厚さとアノード集電体の厚さの比が約1である)。このような状況では、導電性細孔壁は、あらゆるアノード活性材料粒子またはあらゆるカソード活性材料粒子のすぐ近傍にある。
【0034】
特定の実施形態では、集電体の厚さ/活性材料層の厚さの比は、約0.8/1.0~1.0/0.8とすることができる。別の形で表すと、カソードの厚さとカソード集電体の厚さとの比は0.8/1~1/0.8であり、アノードの厚さとアノード集電体の厚さの比は0.8/1~1/0.8である。従来のリチウムイオンまたはナトリウムイオン電池(図1(A)および図1(B)に概略的に図示される)では、アノード(またはカソード)集電体は、典型的には厚さ8~12μmのCu箔(またはAl箔)である。Cu箔表面にコーティングされたアノード活性材料層は、典型的には80~100μmである。したがって、アノード集電体の厚さ/アノード活性材料層の厚さの比は、典型的には8/100~12/80である。従来のLiイオンまたはNaイオンセルのカソード側での集電体の厚さ/活性材料層の厚さの比も、約1/12.5~1/6.7である。これに対して、本発明による電池では、比は0.8/1~1/0.8、より望ましくは0.9/1~1/0.9、さらに望ましくは0.95/1~1/0.95、最も望ましくは典型的には1/1である。
【0035】
発泡性集電体の細孔体積(例えば、>80%)は、活性材料の大きな割合が集電体に収容されるのを保証するのに非常に重要な要件である。この基準に基づくと、天然および/または合成繊維から形成された従来の紙または織物は、十分な量の適切なサイズの細孔を有さないので、この要件を満たさない。
【0036】
第1および/または第2の導電性発泡構造の孔径は、好ましくは10nm~100μm、より好ましくは100nm~50μm、さらに好ましくは500nm~20μm、さらに好ましくは1μm~10μm、および最も好ましくは1μm~5μmの範囲内である。これらの孔径範囲は、アノード活性材料(炭素粒子など)およびカソード活性材料(λ-MnOまたはリン酸鉄ナトリウムなど)を収容するように設計され、典型的には直径が10nm~20μm、最も典型的には50nm~10μm、さらに典型的には100nm~5μm、および最も典型的には200nm~3μmの一次または二次粒径を有する。
【0037】
しかし、より重要なことに、(例えば、孔径5μmを有する)細孔内の全ての活性材料粒子は、平均で3D発泡構造の細孔壁から2.5μmの距離内にあるので、アノード活性材料粒子から電子を容易に収集することができ、NaまたはKイオンが長距離の固体拡散を受ける必要がない。これは、従来技術のリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池の従来の厚い電極(例えば、100μmの厚さの黒鉛粒子層が、厚さ10μmの固体Cu箔集電体の表面上にコーティングされる)内の幾らかの電子が、集電体によって収集されるために少なくとも50μm進まなければならない(より大きな内部抵抗と、より高い電力を送給する機能の低下とを意味する)という見解とは対照的である。
【0038】
一般に、電池では第1の液体電解質および第2の液体電解質は同一であるが、組成が異なることがある。液体電解質は、水性液体、有機液体、イオン液体(100℃よりも低い、好ましくは室温25℃よりも低い融解温度を有するイオン性塩)、または1/100~100/1の比でのイオン液体と有機液体との混合物でよい。有機液体が望ましいが、イオン液体が好ましい。注入を可能にする幾らかの流動性を電解質が有すると仮定して、ゲル電解質も使用することができる。液状電解質中に0.1%~10%の少量を添合することができる。
【0039】
好ましい実施形態では、第1および/または第2の導電性発泡構造は、200μm以上の厚さを有し、および/または少なくとも85体積%の細孔を有し、および/またはアノード活性材料は、25mg/cm以上の質量負荷を有し、および/または電池セル全体の少なくとも25重量%または25体積%を占め、および/またはカソード活性材料は、カソード内で、有機もしくはポリマー材料に関しては20mg/cm以上、もしくは無機および非ポリマー材料に関しては45mg/cm以上の質量負荷を有し、および/または電池セル全体の少なくとも45重量%または45体積%を占める。
【0040】
別の好ましい実施形態では、第1および/または第2の導電性発泡構造は、300μm以上の厚さを有し、少なくとも90体積%の細孔を有し、および/またはアノード活性材料は、30mg/cm以上の質量負荷を有し、および/または電池セル全体の少なくとも30重量%または30体積%を占め、および/またはカソード活性材料は、カソード内で、有機またはポリマー材料に関しては25mg/cm以上、もしくは無機および非ポリマー材料に関しては50mg/cm以上の質量負荷を有し、および/または電池セル全体の少なくとも50重量%または50体積%を占める。
【0041】
より好ましくは、第1および/または第2の導電性発泡構造は、400μm以上の厚さを有し、少なくとも95体積%の細孔を有し、および/またはアノード活性材料は、35mg/cm以上の質量負荷を有し、および/または電池セル全体の少なくとも35重量%または35体積%を占め、および/またはカソード活性材料は、カソード内で、有機またはポリマー材料に関しては30mg/cm以上、もしくは無機および非ポリマー材料に関しては55mg/cm以上の質量負荷を有し、および/または電池セル全体の少なくとも55重量%または55体積%を占める。
【0042】
電極の厚さ、集電体の細孔レベル、アノード活性材料の面積質量負荷または電池セル全体に対する質量分率、またはカソード活性材料の面積質量負荷または電池セル全体に対する質量分率に関する前述の要件は、従来のスラリコーティングおよび乾燥法を使用する従来のアルカリ金属電池またはアルカリイオン電池では可能でなかった。
【0043】
特定の実施形態では、第1および/または第2の導電性発泡構造は、金属発泡体、金属ウェブまたはスクリーン、穿孔された金属シートベースの3D構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマー被覆ファイバ発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素ゼロックスゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、またはそれらの組合せから選択される。
【0044】
幾つかの実施形態では、アノード活性材料は、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープされたグラフェン、窒素ドープされたグラフェン、化学官能化グラフェン、それらの物理的もしくは化学的に活性化もしくはエッチングされたバージョン、またはそれらの組合せから選択されるプレナトリウム化されたまたはプレカリウム化されたバージョンのグラフェンシートである。意外にも、プレナトリウム化またはプレカリウム化がないと、得られるNaまたはK電池セルは十分なサイクル寿命を示さない(すなわち容量が急速に減衰する)。
【0045】
好ましくは、第1の分散液中のアノード活性材料-液体電解質の体積比は、1/5~20/1(好ましくは1/3~5/1)であり、および/または第2の分散液中のカソード活性材料-液体電解質の体積比は、1/5~20/1(好ましくは1/3~5/1)である。
【0046】
特定の実施形態では、第1および/または第2の導電性発泡構造は、金属発泡体、金属ウェブまたはスクリーン、穿孔された金属シートベースの3D構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマー被覆ファイバ発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素ゼロックスゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、またはそれらの組合せから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】(A)はアノード集電体、アノード電極(例えば、薄いSnコーティング層)、多孔質セパレータ、カソード電極、およびカソード集電体から構成された、従来技術のナトリウムイオン電池セルの概略図である。(B)は電極層が活性材料(例えば、アノード層内の硬質炭素粒子またはカソード層内のNaMnO)の離散粒子から構成された、従来技術のナトリウムイオン電池の概略図である。(C)は高多孔率発泡体の形態でのアノード集電体と、多孔質セパレータと、高多孔率発泡体の形態でのカソード集電体とを備える、本発明によるナトリウムイオンまたはカリウムイオン電池セルの概略図である。懸濁液は、2つの集電体の細孔に注入または含浸される。説明のために、細孔の半分が充填されている。(D)は高多孔率発泡体の形態でのアノード集電体と、多孔質セパレータと、高多孔率発泡体の形態でのカソード集電体とを備える、本発明によるNa-イオンまたはK-イオン電池セルの概略図である。2つの発泡性集電体の細孔に、それぞれの懸濁液が含浸されている。(E)はNaまたはK金属またはその上に堆積された合金の層を含むアノード集電体と、多孔質セパレータと、高多孔率発泡体の形態でのカソード集電体とを備える、本発明によるNa金属またはK金属電池セルの概略図である。この発泡性集電体の細孔に、カソード-電解質懸濁液が含浸されている。
図2】アノードまたはカソード活性材料を支持するための良好な導電性基板であるグラフェンシートの電子顕微鏡画像を示す図である。
図3】タブを形成するように端部で接続された5枚の高多孔率2Dウェブ(例えば、チキンワイヤ形状の薄い2D構造)から構成された、一例としての発泡性または多孔質集電体の概略図である。
図4】(A)は剥離黒鉛、膨張黒鉛フレーク(厚さ>100nm)、およびグラフェンシート(厚さ<100nm、より典型的には<10nmであり、0.34nmの薄さでもよい)を製造するための一般に使用されている方法の概略図である。(B)は剥離黒鉛、膨張黒鉛フレーク、およびグラフェンシートを製造するための方法を示す概略図である。
図5】アノード活性材料として硬質炭素粒子を含み、カソード活性材料として炭素被覆Na(PO粒子を含むNa-イオン電池セルのRagoneプロット(重量および体積電力密度対エネルギー密度)を示す図である。4つのデータ曲線のうちの2つは、本発明の実施形態に従って用意されたセルに関するものであり、他の2つは、電極の従来のスラリコーティング(ロールコーティング)によるものである。
図6】アノード活性材料としてグラフェン包有Snナノ粒子を含み、カソード活性材料としてNaFePOナノ粒子を含む2つのセルのRagoneプロット(重量および体積エネルギー密度に対する重量および体積電力密度)を示す図である。データは、本発明による方法によって用意されたナトリウムイオンセルと、電極の従来のスラリコーティングによって用意されたナトリウムイオンセルとから得られた。
図7】アノード活性材料としてナトリウム箔、カソード活性材料としてロジゾン酸二リチウム(Na)、および有機液体電解質としてナトリウム塩(NaPF)-PC/DECを含むナトリウム金属電池のRagoneプロットを示す図である。データは、本発明による方法によって用意されたナトリウム金属セルと、電極の従来のスラリコーティングによって用意されたナトリウム金属セルとの両方に関するものである。
図8】従来のスラリコーティング法によって準備された一連のKイオンセルのRagoneプロットと、本発明による方法によって準備された対応するKイオンセルのRagoneプロットとを示す図である。
図9】従来のスラリコーティングによって準備された、および発泡性集電体の細孔に直接注入する本発明による方法によって準備された、ハイブリッドアノード活性材料(活性炭粒子とNaTi(PO粒子との混合物)と、カソード活性材料としてのλ-MnO粒子とを有する一連のハイブリッドセルのRagoneプロットを示す図である。
図10】層間剥離および割れのない従来の方法によって用意されたMnO/RGOカソードと、本発明による方法によって用意されたカソードとの実現可能なカソード厚さ範囲にわたってプロットされた、ナトリウム金属セルのセルレベルの重量エネルギー密度(Wh/kg)および体積エネルギー密度(Wh/L)が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、本開示の一部を成す添付図面に関連してなされる本発明の以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解することができる。本発明は、本明細書に記載および/または図示される特定のデバイス、方法、条件、またはパラメータに限定されず、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を単に例として説明するためのものであり、特許請求される発明の限定を意図するものではない。
【0049】
本発明は、同じタイプの電池で従来実現されていない非常に高い体積エネルギー密度を示すアルカリ金属電池またはアルカリ金属イオン電池(例えば、NaイオンまたはKイオン電池)を製造するための方法を対象とする。このアルカリ金属電池は、一次電池でよいが、アルカリ金属イオン電池(例えば、硬質炭素粒子などのNaインターカレーション化合物を使用する)またはアルカリ金属二次電池(例えば、NaまたはK金属をアノード活性材料として使用する)から選択される二次電池であることが好ましい。電池は、水性電解質、有機電解質、ゲル電解質、イオン液体電解質、または有機液体とイオン液体の混合物に基づく。アルカリ金属電池の形状は、円筒形、正方形、ボタン状などでよい。本発明は、任意の電池形状または構成に限定されない。
【0050】
便宜上、Naイオンセルのカソード活性材料の例示的な例としてNaFePOおよびλ-MnO粒子など、およびアノード活性材料の例として硬質炭素およびNaTi(PO粒子などの選択された材料を使用する。Kイオン電池にも同様の手法が適用可能である。発泡または多孔の厚い集電体の例としては、ニッケル発泡体、黒鉛発泡体、グラフェン発泡体、およびステンレス鋼繊維ウェブが使用される。これらの例は、例示目的のものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0051】
図1(A)および1(B)に示されるように、従来のナトリウムイオン電池セルは、典型的には、アノード集電体(例えばCu箔)、アノード電極(アノード活性材料層)、多孔質セパレータおよび/または電解質成分、カソード電極(カソード活性材料層)、ならびにカソード集電体(例えばAl箔)から構成される。より一般的に使用されるセル構成(図1(B))では、アノード層は、アノード活性材料(例えば硬質炭素粒子)、導電性添加剤(例えば膨張黒鉛フレーク)、および樹脂粘結剤(例えばSBRまたはPVDF)から構成される。カソード層は、カソード活性材料(例えばNaFePO粒子)、導電性添加剤(例えばカーボンブラック粒子)、および樹脂粘結剤(例えばPVDF)の粒子から構成される。アノード層とカソード層はどちらも、単位電極面積当たりにおそらく十分な量の電流を生じるように、典型的には60~100μmの厚さ(200μm以下)である。例として100μmの活性材料層の厚さおよび10μmの固体(CuまたはAl箔)集電体層の厚さを用いると、得られる電池構成は、従来のNaイオン、Kイオン、Liイオン電池セルでは、集電体厚さと活性材料層厚さとの比が10/100、すなわち1/10である。
【0052】
60~100μmのこの厚さ範囲は、現在のスラリコーティング法(活性材料-粘結剤-添加剤混合スラリのロールコーティング)に基づいて電池設計者が通常的に作業を行う、業界で受け入れられている制約と考えられる。この厚さの制約は、以下のような幾つかの理由によるものである:(a)既存の電池電極コーティング機は、非常に薄いまたは非常に厚い電極層をコーティングするようには装備されていない;(b)リチウムイオン拡散経路長の短縮を考慮すると、より薄い層が好ましい;しかし、層が薄すぎると(例えば<60μm)、十分な量の活性アルカリ金属イオン貯蔵材料を含まない(したがって、不十分な電流出力となる);および(c)より厚い電極は、スラリのロールコーティング後の乾燥または取扱い時に層間剥離または亀裂が生じやすい。この制約は、最小オーバーヘッド重量および最大ナトリウム貯蔵容量、したがって最大エネルギー密度(セルのWk/kgまたはWh/L)を得るために、全ての非活性材料(例えば集電体およびセパレータ)の量を増加させることなく活性材料(NaまたはKイオンの貯蔵する役目を果たすもの)の量を自由に増加させることを不可能にしている。
【0053】
あまり一般的に使用されていないセル構成では、図1(A)に示されるように、アノード活性材料(例えば、NaTi(PO)またはカソード活性材料(例えば、ナトリウム遷移金属酸化物)が、スパッタリングを利用する銅箔またはAl箔などの集電体上に直接、薄膜の形態で堆積される。しかし、厚さ方向の寸法が非常に小さい(典型的には500nmよりもはるかに小さく、しばしば必要であれば100nmよりも薄い)そのような薄膜構造は、(電極または集電体の表面積を同じと仮定して)電極に少量の活性材料しか組み込むことができないことを示唆し、総リチウム貯蔵容量を低減し、単位電極表面積当たりのNa貯蔵容量を低減する。そのような薄膜は、(アノードに関する)サイクリングにより誘発される割れに対する耐性をより高くするため、またはカソード活性材料の完全な利用を容易にするために、厚さを100nm未満にしなければならない。そのような制約は、総Na貯蔵容量、および単位電極表面積当たりのナトリウム貯蔵容量をさらに減少させる。そのような薄膜電池は、適用範囲が非常に限られている。
【0054】
アノード側では、100nmよりも厚いスパッタリングされたNaTi(PO層は、電池の充放電サイクル中に割れ抵抗性が低いことが判明している。わずか数サイクルで破砕されてしまう。カソード側では、100nmよりも厚いナトリウム金属酸化物のスパッタ層は、リチウムイオンが完全に浸透してカソード層全体に達することを可能にせず、カソード活性材料利用率が低くなる。望ましい電極厚さは少なくとも100μmであり、個々の活性材料の粒子は、望ましくは100nm未満の寸法を有する。したがって、集電体上に直接堆積されたこれらの薄膜電極(<100nmの厚さを有する)は、必要な厚さに3桁足りない。さらなる問題として、カソード活性材料は全て、電子とナトリウムイオンの両方に対して伝導性ではない。大きな層厚さは、非常に高い内部抵抗、および低い活性材料利用率を示唆する。
【0055】
すなわち、材料のタイプ、サイズ、電極層の厚さ、および活性材料の質量負荷の面で、カソードまたはアノード活性材料の設計および選択に際して同時に考慮しなければならない幾つかの相反する因子がある。これまでのところ、これらのしばしば相反する問題に対して任意の先行技術の教示によって提供されている有効な解決策は存在していない。本明細書に開示されるように、本発明者らは、アルカリ金属電池を製造する新規の方法を開発することによって、電池設計者およびまた電気化学者を30年超にわたって悩ませてきたこれらの難題を解決した。
【0056】
従来技術のナトリウムまたはリチウム電池セルは、典型的には、以下のステップを含む方法によって製造される:(a)第1のステップは、アノード活性材料(例えば、硬質炭素粒子)、導電性フィラー(例えば、拡張黒鉛フレーク)、および樹脂粘結剤(例えば、PVDF)の粒子を溶媒(例えば、NMP)中で混合して、アノードスラリを形成することである。それとは別に、カソード活性材料(例えば、Na-イオンセルのリン酸ナトリウム金属粒子およびLi-イオンセルのLFP粒子)、導電性フィラー(例えば、アセチレンブラック)、および樹脂粘結剤(例えば、PVDF)の粒子を溶媒(例えば、NMP)中で混合して分散させて、カソードスラリを形成する。(b)第2のステップは、アノード集電体(例えば、Cu箔)の一方または両方の主面にアノードスラリをコーティングし、溶媒(例えば、NMP)を蒸発させることによってコーティングされた層を乾燥させて、Cu箔上にコーティングされた乾燥アノード電極を形成することである。同様に、カソードスラリをコーティングして乾燥させて、Al箔上にコーティングされた乾燥カソード電極を形成する。実際の製造状況では、スラリコーティングは通常、ロールツーロール方式で行われる;(c)第3のステップは、アノード/Cu箔シート、多孔質セパレータ層、およびカソード/Al箔シートを積層し合わせて、3層または5層アセンブリを形成し、これを所望のサイズに切断してまたは細く裂いて積層し、(形状の一例として)矩形の構造を形成するか、または巻いて円筒形のセル構造にすることを含む。(d)次いで、矩形または円筒形の積層構造を、アルミニウムプラスチック積層エンベロープまたはスチールケーシングに収容する。(e)次いで、液体電解質を積層構造に注入して、ナトリウムイオンまたはリチウム電池セルを製造する。
【0057】
この方法および結果として得られるナトリウム電池セル(およびカリウムイオンおよびリチウムイオン電池セル)に関連する幾つかの重大な問題がある。
1)100μmよりも、まして200μmよりも厚い電極層(アノード層またはカソード層)を製造することは非常に難しい。その理由は幾つかある。厚さ100μmの電極は、典型的には、スラリコーティング施設において長さ30~50メートルの加熱区域を必要とし、これは、時間がかかりすぎ、エネルギーを消費しすぎ、費用対効果が良くない。金属酸化物粒子など幾つかの電極活性材料に関しては、100μmよりも厚い良好な構造的完全性を備える電極を実際の製造環境で連続的に製造することはできていない。得られる電極は、非常に壊れやすくて脆い。より厚い電極は、層間剥離および割れが生じる傾向が高い。
2)図1(A)に示されるような従来の方法では、電極の実際の質量負荷、および活性材料に関する見掛けの密度は、K-イオンセルの100Wh/kgを超える、Na-イオンセルの150Wh/kgを超える、またはLi-イオンセルの200Wh/kgを超える重量エネルギー密度を実現するには低すぎる。大抵は、比較的大きい黒鉛粒子に関してさえ、電極のアノード活性材料質量負荷(面密度)は15-25mg/cmよりもかなり低く、活性材料の見掛けの体積密度またはタップ密度は典型的には1.2g/cm未満である。電極のカソード活性材料質量負荷(面密度)は、リチウム金属酸化物系の無機材料に関しては25-45mg/cmよりも実質的に低く、有機またはポリマー材料に関しては8-15mg/cmよりも実質的に低い。さらに、電池容量に寄与せずに電極に追加の重量および体積を加える非常に多くの他の非活性材料(例えば、導電性添加剤および樹脂粘結剤)が存在する。これらの低い面密度および低い体積密度は、比較的低い重量エネルギー密度および低い体積エネルギー密度をもたらす。
3)従来の方法は、電極活性材料(アノード活性材料およびカソード活性材料)を液体溶媒(例えば、NMP)中で分散させてスラリにする必要があり、集電体表面にコーティングした後に液体溶媒を除去して電極層を乾燥させなければならない。アノードおよびカソード層をセパレータ層と共に積層して、ハウジング内にパッケージングしてスーパーキャパシタセルを形成した後、セル内に(NMPとは異なる溶媒に溶解された塩を使用して)液体電解質を注入する。実際には、2つの電極を濡らし、次いで電極を乾燥させ、最後に再び濡らす。そのような湿潤-乾燥-湿潤法は、良好なプロセスではない。さらに、最も一般的に使用される溶媒(NMP)は、よく知られた望ましくない溶媒(例えば、先天性異常を引き起こすことが知られている)である。
4)現在のナトリウムおよびカリウムイオン電池は、重量エネルギー密度が比較的低く、体積エネルギー密度が低いという欠点が依然としてある。したがって、Naイオン電池もKイオン電池も市販されていない。市販のリチウムイオン電池は、約150~220Wh/kgの重量エネルギー密度および450~600Wh/Lの体積エネルギー密度を示し、これらは不十分と考えられる。Naイオン電池に関しては80~150Wh/kgおよび300~450Wh/L、Kイオン電池に関しては50~100Wh/kgおよび150~250Wh/Lのエネルギー密度と、さらに悪い値である。
【0058】
文献では、活性材料重量のみまたは電極重量に基づいて報告されたエネルギー密度データから、実用的な電池セルまたはデバイスのエネルギー密度を直接導くことはできない。「オーバーヘッド重量」、すなわち他のデバイス構成要素(粘結剤、導電性添加剤、集電体、セパレータ、電解質、およびパッケージング)の重量も考慮に入れる必要がある。従来の製造法では、ナトリウムイオン電池中のアノード活性材料(例えば、カーボン粒子)の重量比は典型的には12%~15%であり、カソード活性材料(例えば、ナトリウム遷移金属酸化物)の重量比は20%~30%である。
【0059】
本発明は、高い電極厚さ(電極活性材料を含む電極の厚さ。活性材料を含まない集電体層(存在する場合)の厚さは含まない)、高い活性材料質量負荷、低いオーバーヘッド重量および体積、高い体積静電容量、ならびに高い体積エネルギー密度を有するナトリウムまたはカリウム電池セルを製造する方法を提供する。一実施形態では、図1(C)および図1(D)に示されるように、本発明の方法は、以下のことを含む。
(A)アノード集電体としての第1の導電性発泡構造236と、カソード集電体としての第2の導電性発泡構造238と、第1および第2の導電性発泡構造の間に配設された多孔質セパレータ240とから構成された多孔質セルフレームワークを組み立てる。
a.第1および/または第2の導電性発泡構造は、100μm以上(好ましくは200μm超、より好ましくは300μm超、さらに好ましくは400μm超、および最も好ましくは500μm超)の厚さ、および少なくとも80体積%の細孔(好ましくは少なくとも85体積%、より好ましくは少なくとも90体積%、および最も好ましくは少なくとも95体積%の多孔率)を有する。
b.これらの発泡構造は、本質的に80%~99%の多孔率レベルを有し、残りの1%~20%は細孔壁(例えば、金属または黒鉛骨格)である。これらの細孔は、活性材料(例えば、アノード内の炭素粒子+任意選択の導電性添加剤)と液体電解質との混合物を収容するために使用される。
(B)第1の液体電解質中に分散されたアノード活性材料および任意選択の導電性添加剤の第1の懸濁液と、第2の液体電解質中に分散されたカソード活性材料および任意選択の導電性添加剤の第2の懸濁液とを調製する。
(C)第1の導電性発泡構造の細孔に第1の懸濁液を注入してアノードを形成し、第2の導電性発泡構造の細孔に第2の懸濁液を注入してカソードを形成し、それによって、アノード活性材料がアノード内で20mg/cm以上(好ましくは25mg/cm以上、およびより好ましくは30mg/cm以上)の電極活性材料負荷を成し、またはカソード活性材料がカソード内で無機材料に関して45mg/cm以上(好ましくは50mg/cm超、およびより好ましくは60mg/cm超)の電極活性材料質量負荷を成すようにし(有機またはポリマーカソード活性材料に関しては15mg/cm以上、好ましくは25mg/cm以上)、ここで、アノード、セパレータ、およびカソードが、保護ハウジング内に組み立てられる。
a.実質的に全ての細孔が、電極(アノードまたはカソード)活性材料、任意選択の導電性添加剤、および液体電解質(粘結剤樹脂は不要)を充填されることが好ましい。
b.細孔壁(1~20%)に対して細孔の量が多い(80~99%)ので無駄な空間がほとんどなく(「無駄」とは、電極活性材料および電解質が占有していないことを意味する)、その結果、多量の電極活性材料-電解質区域(高い活性材料負荷質量)が得られる。
c.図1(C)に示されているのは、アノード用の多孔質発泡構造(アノード集電体236)が、第1の懸濁液(液体電解質中に分散されたアノード活性材料および任意選択の導電性添加剤)で一部充填されている状況である。アノード集電体発泡体236の上部240は空のままであるが、下部244はアノード懸濁液を充填されている。同様に、カソード集電体発泡体238の上部242は空のままであり、下部246はカソード懸濁液(液体電解質中に分散されたカソード活性材料)を充填されている。4つの矢印が、懸濁液の噴射方向を表す。
【0060】
図1(D)に示されているのは、アノード集電体発泡体およびカソード集電体発泡体がどちらもそれぞれの懸濁液を充填されている状況である。一例として、発泡孔250(拡大図)は、硬質炭素粒子252(アノード活性材料)および液体電解質254を含むアノード懸濁液を充填されている。同様に、発泡孔260(拡大図)は、炭素被覆ナトリウム遷移金属酸化物粒子262(カソード活性材料)および液体電解質264を含むカソード懸濁液を充填されている。
【0061】
図1(E)に概略的に示される代替構成は、本発明によるナトリウム金属またはカリウム金属電池セルであり、NaまたはK金属282またはその上に堆積されたNa/K金属合金の層を含むアノード集電体280と、多孔質セパレータと、高多孔率発泡体の形態でのカソード集電体とを備える。この発泡性集電体の細孔270には、カソード活性材料272および液体電解質274の懸濁液が含浸されている。
【0062】
そのような構成(図1(C)~(E))では、細孔壁が集電体全体(またアノード層全体)の至る所に存在するので、電子は、短い距離(平均で孔径の半分;例えば数マイクロメートル)だけ移動すれば、集電体(細孔壁)によって収集される。さらに、各懸濁液において、全ての電極活性材料粒子が液体電解質(電解質濡れ性の問題なし)中に予備分散され、湿式コーティング、乾燥、充填、および電解質注入の従来の方法によって用意される電極で一般に存在する乾燥ポケットの存在をなくす。したがって、本発明による方法は、従来の電池セル製造法に勝る全く予想外の利点を生み出す。
【0063】
好ましい実施形態では、アノード活性材料は、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択されるプレナトリウム化またはプレカリウム化されたバージョンのグラフェンシートである。上記のグラフェン材料の任意の1つを製造するための出発グラフェン材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズカーボン、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、コークス、炭素繊維、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、またはそれらの組合せから選択することができる。グラフェン材料は、アルカリ金属電池のアノード活性材料とカソード活性材料の両方のための良好な導電性添加剤でもある。
【0064】
面間ファンデルワールス力を克服することができると仮定して、天然または人造黒鉛粒子中の黒鉛結晶の構成グラフェン面を剥離し、抽出または単離して、六角形を成す炭素原子の個々のグラフェンシートを得ることができ、これらのシートは単原子厚である。炭素原子の単離された個々のグラフェン面は、一般に、単層グラフェンと呼ばれる。厚さ方向で約0.3354nmのグラフェン面間隔でファンデルワールス力によって結合された複数のグラフェン面の積層は、一般に多層グラフェンと呼ばれる。多層グラフェンプレートレットは、最大300層のグラフェン面(100nm未満の厚さ)、しかしより典型的には最大30層のグラフェン面(10nm未満の厚さ)、さらにより典型的には最大20層のグラフェン面(7nm未満の厚さ)、および最も典型的には最大10層のグラフェン面(科学界では一般に数層グラフェンと呼ばれる)を有する。単層グラフェンおよび多層グラフェンシートは、総称して「ナノグラフェンプレートレット」(NGP)と呼ばれる。グラフェンシート/プレートレット(総称してNGP)は、0Dフラーレン、1D CNTまたはCNF、および3D黒鉛とは異なる新しいクラスのカーボンナノ材料(2Dナノカーボン)である。特許請求の範囲を定義する目的で、また当技術分野で一般に理解されるように、グラフェン材料(単離されたグラフェンシート)は、カーボンナノチューブ(CNT)またはカーボンナノファイバ(CNF)ではない(それらを含まない)。
【0065】
1つの方法では、図4(A)および図4(B)(概略図)に示されるように、グラフェン材料は、天然黒鉛粒子を強酸および/または酸化剤でインターカレーションして黒鉛インターカレーション化合物(GIC)または酸化黒鉛(GO)を得ることによって得られる。GICまたはGO中のグラフェン面間の間隙空間に化学種または官能基が存在することが、グラフェン間隔(d002;X線回折によって決定される)を増加させる働きをし、それにより、通常であればc軸方向に沿ってグラフェン面を一体に保持するファンデルワールス力を大幅に減少させる。GICまたはGOは、硫酸、硝酸(酸化剤)、および別の酸化剤(例えば、過マンガン酸カリウムまたは過塩素酸ナトリウム)の混合物中に天然黒鉛粉末(図4(B)での参照番号100)を浸漬することによって生成されることが最も多い。インターカレーション手順中に酸化剤が存在する場合、得られるGIC(102)は、実際には、ある種の酸化黒鉛(GO)粒子である。次いで、このGICまたはGOを繰り返し洗浄し、水中ですすいで余剰の酸を除去すると、酸化黒鉛懸濁液または分散液が得られ、これは、水中に分散された、離散した視覚的に区別可能な酸化黒鉛粒子を含む。グラフェン材料を製造するために、このすすぎステップ後に2つの処理ルートの一方をたどることができ、以下に簡単に説明する。
【0066】
ルート1は、本質的に乾燥GICまたは乾燥酸化黒鉛粒子の塊である「膨張黒鉛」を得るために懸濁液から水を除去することを含む。膨張黒鉛を典型的には800~1,050℃の範囲内の温度に約30秒~2分間曝すと、GICは、30~300倍に急速に体積膨張して、「黒鉛ワーム」(104)を形成する。黒鉛ワーム(104)はそれぞれ、剥離されてはいるがほとんど分離されておらず、相互接続されたままの黒鉛フレークの集合である。
【0067】
ルート1Aでは、これらの黒鉛ワーム(剥離された黒鉛または「相互接続された/分離されていない黒鉛フレークのネットワーク」)を再び圧縮して、典型的には0.1mm(100μm)~0.5mm(500μm)の範囲内の厚さを有する可撓性黒鉛シートまたは箔(106)を得ることができる。代替として、100nmよりも厚い(したがって定義によりナノ材料ではない)黒鉛フレークまたはプレートレットを主として含むいわゆる「膨張黒鉛フレーク」(108)を製造する目的で、低強度エアミルまたはせん断機を使用して黒鉛ワームを単に破砕することを選択することもできる。
【0068】
ルート1Bでは、同一出願人の米国特許出願第10/858,814号明細書(2004年3月6日)に開示されているように、剥離された黒鉛は、(例えば、超音波装置、高せん断ミキサ、高強度エアジェットミル、または高エネルギーボールミルを使用した)高強度の機械的せん断を受けて、分離された単層および多層グラフェンシート(総称してNGP112と呼ぶ)を形成する。単層グラフェンが0.34nmの薄さであり得る一方、多層グラフェンは、最大100nm、しかしより典型的には10nm未満の厚さを有することがある(一般に数層グラフェンと呼ばれる)。複数のグラフェンシートまたはプレートレットが、製紙法を使用して1枚のNGP紙として形成されることがある。このNGP紙は、本発明による方法で利用される多孔質グラフェン構造層の一例である。
【0069】
ルート2は、個々の酸化グラフェンシートを酸化黒鉛粒子から分離/単離する目的で、酸化黒鉛懸濁液(例えば、水中に分散された酸化黒鉛粒子)を超音波処理することを含む。これは、グラフェン面の離間距離が天然黒鉛での0.3354nmから高度に酸化された酸化黒鉛での0.6~1.1nmに増加されており、隣接する面を一体に保持するファンデルワールス力を大幅に弱めるという見解に基づいている。超音波出力は、完全に分離された、単離された、または離散した酸化グラフェン(GO)シートを形成するために、グラフェン面シートをさらに分離するのに十分なものでよい。次いで、これらの酸化グラフェンシートを化学的または熱的に還元して、「還元酸化グラフェン」(RGO)を得ることができ、これは、典型的には、0.001重量%~10重量%、より典型的には0.01重量%~5重量%の酸素含有量を有し、最も典型的にはかつ好ましくは2重量%未満の酸素を含む。
【0070】
本出願の特許請求の範囲を定義する目的で、NGPまたはグラフェン材料は、単層および多層(典型的には10層未満)の純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン(RGO)、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、ドープされた(例えば、BまたはNをドープされた)グラフェンの離散シート/プレートレットを含む。純粋なグラフェンは、本質的に0%の酸素を有する。RGOは、典型的には0.001重量%~5重量%の酸素含有量を有する。酸化グラフェン(RGOを含む)は、0.001重量%~50重量%の酸素を有することができる。純粋なグラフェンを除き、全てのグラフェン材料が、非炭素元素(例えば、O、H、N、B、F、Cl、Br、Iなど)を0.001重量%~50重量%含む。本明細書では、これらの材料を不純グラフェン材料と呼ぶ。
【0071】
純粋なグラフェンは、より小さい離散グラフェンシート(典型的には0.3μm~10μm)として、黒鉛粒子の直接超音波処理(液相剥離または生成としても知られている)または超臨界流体剥離によって製造することができる。これらの方法は、当技術分野でよく知られている。
【0072】
酸化グラフェン(GO)は、反応容器内で、ある期間(出発材料の性質および使用される酸化剤のタイプに応じて典型的には0.5~96時間)にわたって所望の温度で、出発黒鉛材料の粉末またはフィラメント(例えば、天然黒鉛粉末)を酸化性液体媒体(例えば、硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物)中に浸漬することによって得ることができる。上述したように、次いで、得られた酸化黒鉛粒子に熱剥離または超音波誘発剥離を施して、単離GOシートを生成することができる。次いで、これらのGOシートは、OH基を他の化学基(例えば、BrやNHなど)で置換することによって様々なグラフェン材料に変換することができる。
【0073】
本明細書では、ハロゲン化グラフェン材料群の一例として、フッ素化グラフェンまたはフッ化グラフェンが使用される。フッ素化グラフェンを生成するために採用されている2つの異なる手法がある。(1)予め合成されたグラフェンのフッ素化:この手法は、機械的剥離またはCVD成長によって用意されたグラフェンをXeFまたはFベースのプラズマなどのフッ素化剤で処理することを必要とする。(2)多層フッ化黒鉛の剥離:フッ化黒鉛の機械的剥離と液相剥離の両方を容易に達成することができる。
【0074】
低温で黒鉛インターカレーション化合物(GIC)CF(2≦x≦24)が生成されるのに対し、高温でのFと黒鉛との相互作用は、共有結合性フッ化黒鉛(CF)または(CF)をもたらす。(CF)では、炭素原子はsp3混成であり、したがって、フルオロカーボン層は波形であり、トランスリンクされたシクロヘキサンのいす型立体配座からなる。(CF)では、C原子の半分のみがフッ素化され、隣接する炭素シートの対はどれもC-C共有結合により結合される。フッ素化反応に関する系統的研究から、得られたF/C比が、フッ素化温度、フッ素化ガス中のフッ素の分圧、ならびに黒鉛前駆体の物理的特性、例えば黒鉛化度、粒度、および比表面積に大きく依存することが示された。フッ素(F)に加え、他のフッ素化剤も使用することができるが、入手できる文献のほとんどは、時としてフッ化物の存在下で、Fガスによるフッ素化を含む。
【0075】
層状の前駆体材料を個々の層または数層の状態に剥離するためには、隣接する層間の引力を克服すること、および層をさらに安定させることが必要である。これは、官能基によるグラフェン表面の共有結合修飾によって、または特定の溶媒、界面活性剤、ポリマー、もしくはドナー-アクセプタ芳香族分子を使用する非共有結合修飾によって実現されることがある。液相剥離のプロセスは、液体媒体中のフッ化黒鉛の超音波処理を含む。
【0076】
グラフェンの窒素化は、酸化グラフェンなどのグラフェン材料を高温(200~400℃)でアンモニアに曝すことによって行うことができる。窒素化グラフェンは、水熱法によって、より低温で生成することもできる。これは、例えば、オートクレーブ内にGOおよびアンモニアを封止し、次いで温度を150~250℃に上昇させることによって行われる。窒素ドープされたグラフェンを合成する他の方法は、グラフェンに対する窒素プラズマ処理、アンモニアの存在下での黒鉛電極間のアーク放電、CVD条件下での酸化グラフェンのアンモノリシス、および様々な温度での酸化グラフェンおよび尿素の水熱処理を含む。
【0077】
上記の特徴は、以下のようにさらに詳細に記述および説明される。図4(B)に示されるように、黒鉛粒子(例えば、100)は、典型的には、複数の黒鉛結晶または微粒子からなる。黒鉛結晶は、炭素原子の六方晶ネットワークの層面から構成されている。六角形状に配列された炭素原子のこれらの層平面は実質的に平坦であり、特定の結晶において互いに実質的に平行かつ等距離になるように配向または秩序化されている。一般にグラフェン層または基底面と呼ばれる六方晶構造の炭素原子のこれらの層は、弱いファンデルワールス力によってそれらの厚さ方向(結晶学的c軸方向)で弱く結合され、これらのグラフェン層の群は結晶として配列される。黒鉛結晶構造は通常、2つの軸または方向に関して特徴付けられる。すなわち、c軸方向およびa軸(またはb軸)方向である。c軸は、基底面に垂直な方向である。a軸またはb軸は、基底面に平行(c軸方向に垂直)な方向である。
【0078】
平行なグラフェン層を保持する弱いファンデルワールス力により、天然黒鉛を処理してグラフェン層間の間隔をかなり開き、それにより、c軸方向での顕著な膨張を可能にし、したがって炭素層の層状特性が実質的に保持された膨張黒鉛構造を形成することができる。可撓性黒鉛を製造するための方法は、当技術分野でよく知られている。一般に、天然黒鉛のフレーク(例えば、図4(B)での参照番号100)を酸溶液中にインターカレーションして、黒鉛インターカレーション化合物(GIC、102)を生成する。GICを洗浄し、乾燥させ、次いで、高温に短時間曝すことによって剥離させる。これにより、フレークは、それらの元の寸法の80~300倍まで黒鉛のc軸方向で膨張または剥離する。剥離された黒鉛フレークは、見た目が虫のようであり、したがって一般に黒鉛ワーム104と呼ばれる。大きく膨張されている黒鉛フレークのこれらのワームは、ほとんどの用途に関して、粘結剤を使用せずに、約0.04~2.0g/cmの典型的な密度を有する膨張黒鉛の粘着性または一体型のシート、例えばウェブ、紙、ストリップ、テープ、箔、マットなど(典型的には「可撓性黒鉛」106と呼ばれる)として形成することができる。
【0079】
硫酸などの酸は、GICを得るためにグラフェン面間の空間に浸透する唯一のタイプのインターカレーション剤(インターカラント)というわけではない。黒鉛をステージ1、ステージ2、ステージ3などにインターカレーションするために、アルカリ金属(Li、K、Na、Cs、およびそれらの合金または共晶)など多くの他のタイプのインターカレート剤を使用することができる。ステージnは、n個のグラフェン面ごとに1つのインターカラント層があることを示唆する。例えば、ステージ1のカリウムインターカレーションされたGICは、グラフェン面ごとに1つのK層があることを意味する。すなわち、G/K/G/K/G/KG…の順列で2つの隣接するグラフェン面間に挿入された1つのK原子層を見つけることができる。ここで、Gはグラフェン面であり、Kはカリウム原子面である。ステージ2のGICは、GG/K/GG/K/GG/K/GG…の順列を有する。ステージ3のGICは、GGG/K/GGG/K/GGG…の順列を有する。以下同様である。次いで、これらのGICを水または水-アルコール混合物と接触させて、剥離された黒鉛および/または分離/単離されたグラフェンシートを生成することができる。
【0080】
剥離された黒鉛ワームに、高強度エアジェットミル、高強度ボールミル、または超音波デバイスを使用した高強度の機械的せん断/分離処理を施して、分離されたナノグラフェンプレートレット(NGP)を生成することができ、グラフェンプレートレットは全て、100nmよりも薄く、大抵は10nmよりも薄く、多くの場合には単層グラフェンである(図4(B)では参照番号112としても示されている)。NGPは、グラフェンシートまたは複数のグラフェンシートから構成され、各シートは、炭素原子の2次元の六角形構造である。フィルム形成または製紙法を使用して、単層および/または数層のグラフェンまたは酸化グラフェンの離散シート/プレートレットを含む複数のNGPの塊をグラフェンフィルム/紙(図4(B)の参照番号114)に形成することができる。代替として、低強度せん断では、黒鉛ワームは、厚さ100nm超のいわゆる膨張黒鉛フレーク(図4(B)での参照番号108)に分離される傾向がある。これらのフレークは、樹脂粘結剤有りまたは無しの製紙またはマット製造法を使用して黒鉛紙またはマット106として形成することができる。膨張黒鉛フレークは、電池での導電性フィラーとして使用することができる。分離されたNGP(個々の単層または多層のグラフェンシート)は、アノード活性材料として、またはアルカリ金属電池のカソードにおける支持導電性材料として使用することができる。
【0081】
本発明を実施するのに使用することができるアノード活性材料またはカソード活性材料の種類に制限はない。好ましくは、本発明による方法において、アノード活性材料は、電池が充電されたときに、Na/Naよりも(すなわち、標準電位としてのNa→Na+eに対して)またはK/Kよりも(すなわち、標準電位としてのK→K+eに対して)1.0ボルト未満(好ましくは0.7ボルト未満)だけ高い電気化学ポテンシャルでナトリウムまたはカリウムイオンを吸収する。
【0082】
1つの好ましい実施形態では、アノード活性材料は、以下のものからなる群から選択される:(a)ナトリウムまたはカリウムドープされたシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、およびそれらの混合物;(b)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物のナトリウムまたはカリウム含有合金または金属間化合物;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物または複合体のナトリウムまたはカリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、またはアンチモン化物;(d)ナトリウムまたはカリウム塩;および(e)ナトリウムイオンまたはカリウムイオンを予め装填されたまたは予め付着されたグラフェンシート(本明細書では、プレナトリウム化またはプレカリウム化グラフェンシートと呼ぶ)。
【0083】
充電式アルカリ金属電池において、アノードは、アルカリ金属、アルカリ金属合金、アルカリ金属もしくはアルカリ金属合金とアルカリインターカレーション化合物との混合物、アルカリ元素含有化合物、またはそれらの組合せから選択されるアルカリイオン源を含むことがある。特に望ましいのは、石油コークス、カーボンブラック、無定形炭素、硬質炭素、鋳型炭素、中空炭素ナノワイヤ、中空炭素球、チタン酸塩、NaTi(PO、NaTi(チタン酸ナトリウム)、Na(テレフタル酸二ナトリウム)、NaTP(テレフタル酸ナトリウム)、TiO、NaTiO(x=0.2~1.0)、カルボン酸塩ベースの物質、CNa、C、CNaO、CNa、C10Na、C14、C14Na、またはそれらの組合せから選択されるアルカリインターカレーション化合物を含むアノード活性材料である。
【0084】
一実施形態では、アノードは、2または3種類のアノード活性材料の混合物(例えば、活性炭+NaTi(POの混合粒子)を含むことができ、カソードは、ナトリウムインターカレーション化合物(例えばNaMnO)単独でよく、電気二重層コンデンサ型カソード活性材料(例えば活性炭)単独でよく、疑似容量用のλ-MnO/活性炭の酸化還元対でもよい。
【0085】
本発明による方法または電池における第1または第2の液体電解質は、水性電解質、有機電解質、イオン液体電解質、有機電解質とイオン電解質の混合物、またはそれらとポリマーとの混合物から選択することができる。いくつかの実施形態では、水性電解質は、水中、または水とアルコールとの混合物中に溶解されたナトリウム塩またはカリウム塩を含む。いくつかの実施形態において、ナトリウム塩またはカリウム塩は、NaSO、KSO、それらの混合物、NaOH、KOH、NaCl、KCl、NaF、KF、NaBr、KBr、NaI、KI、またはそれらの混合物から選択される。
【0086】
有機溶媒は、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸ジエチル(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、炭酸プロピレン(PC)、γ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、ギ酸プロピル(PF)、ギ酸メチル(MF)、トルエン、キシレン、酢酸メチル(MA)、炭酸フルオロエチレン(FEC)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸アリルエチル(AEC)、ヒドロフルオロエーテル(例えば、メチルペルフルオロブチルエーテル、MFE、またはエチルペルフルオロブチルエーテル、EFE)、およびそれらの組合せから選択される液体溶媒を含むことがある。
【0087】
有機電解質は、過塩素酸ナトリウム(NaClO)、過塩素酸カリウム(KClO)、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF)、六フッ化リン酸カリウム(KPF)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF)、ホウフッ化カリウム(KBF)、六フッ化ヒ酸ナトリウム、六フッ化ヒ酸カリウム、トリフルオロメタスルホン酸ナトリウム(NaCFSO)、トリフルオロメタスルホン酸カリウム(KCFSO)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドナトリウム(NaN(CFSO)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドカリウム(KN(CFSO)、イオン液体塩、またはそれらの組合せから好ましくは選択されるアルカリ金属塩を含むことがある。
【0088】
さらに、電解質は、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロ-メタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビスートリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CFSO)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiBF)、リチウムオキサリル-ジフルオロボレート(LiBF)、硝酸リチウム(LiNO)、Li-フルオロアルキルリン酸塩(LiPF(CFCF)、リチウムビスペルフルオロ-エチスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン液体リチウム塩、またはそれらの組合せから選択される(ナトリウムまたはカリウム塩への添加剤としての)リチウム塩を含むこともある。
【0089】
イオン液体はイオンのみから構成されている。イオン液体は、所望の温度を超えたときには融解状態または液体状態になる低融解温度の塩である。例えば、イオン塩は、その融点が100℃未満である場合にイオン液体とみなされる。融解温度が室温(25℃)以下である場合、塩は室温イオン液体(RTIL)と呼ばれる。ILベースのリチウム塩は、大きなカチオンと電荷非局在化アニオンとの組合せによる弱い相互作用によって特徴付けられる。これは、可撓性(アニオン)および非対称性(カチオン)による結晶化の傾向を低減する。
【0090】
いくつかのILは、本発明の第1の有機溶媒と共に働くためのコソルベント(塩ではない)として使用することができる。1-エチル-3-メチル-イミダゾリウム(EMI)カチオンとN,N-ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンとの組合せによって、よく知られたイオン液体が生成される。この組合せにより、最大約300~400℃で、多くの有機電解質溶液と同等のイオン導電率、ならびに低い分解性および低い蒸気圧を有する流体が得られる。これは、一般に低い揮発性および非引火性、したがって電池に関してはるかに安全な電解質溶媒を示唆する。
【0091】
イオン液体は、基本的には、多様な成分の調製が容易であることにより、無制限の数の構造変化を生じる有機または無機イオンから構成される。したがって、様々な種類の塩を使用して、所与の用途に合わせて所望の特性を有するイオン液体を設計することができる。これらは、とりわけ、カチオンとしてのイミダゾリウム、ピロリジニウム、および第四級アンモニウム塩と、アニオンとしてのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、およびヘキサフルオロホスフェートとを含む。有用なイオン液体ベースのナトリウム塩(溶媒ではない)は、カチオンとしてのナトリウムイオンと、アニオンとしてのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、またはヘキサフルオロリン酸塩とから構成することができる。例えば、トリフルオロメタンスルホンイミドナトリウム(NaTFSI)が特に有用なナトリウム塩である。
【0092】
それらの組成に基づいて、イオン液体は、非プロトン性型、プロトン性型、および双性イオン型の3つの基本的なタイプを含む異なるクラスに入り、それぞれが特定の用途に適している。室温イオン液体(RTIL)の一般的なカチオンとしては、限定はしないが、テトラアルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、およびテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキルピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、ならびにトリアルキルスルホニウムが挙げられる。RTILの一般的なアニオンとしては、限定はしないが、BF 、B(CN) 、CHBF 、CH2CHBF 、CFBF 、CBF 、n-CBF 、n-CBF 、PF 、CFCO 、CFSO 、N(SOCF 、N(COCF)(SOCF、N(SOF) 、N(CN) 、C(CN) 、SCN、SeCN、CuCl 、AlCl 、F(HF)2.3 などが挙げられる。相対的に言えば、イミダゾリウムまたはスルホニウムベースのカチオンと、AlCl 、BF 、CFCO 、CFSO 、NTf 、N(SOF) 、またはF(HF)2.3 などの錯体ハロゲン化物アニオンとの組合せが、良好な動作伝導率を有するRTILをもたらす。
【0093】
RTILは、高い固有のイオン導電率、高い熱安定性、低い揮発性、低い(実質的にゼロの)蒸気圧、非引火性、室温よりも上および下の広い温度範囲で液体を維持する機能、高い極性、高い粘度、および広い電気化学的窓など、典型的な特性を有することができる。高い粘度を除いて、これらの特性は、交換可能なリチウムセルにおける電解質副溶媒としてRTILを使用する際に望ましい特性である。
【0094】
アルカリ金属セルでは、カソード活性材料は、NaFePO(リン酸鉄ナトリウム)、Na0.7FePO、Na1.5VOPO0.5、Na(PO、Na(PO、NaFePOF、NaFeF、NaVPOF、Na(PO、Na1.5VOPO0.5、NaV2(PO、NaV15、NaVO、Na0.33、NaCoO(ナトリウムコバルト酸化物)、Na2/3[Ni1/3Mn2/3]O、Na(Fe1/2Mn1/2)O、NaMnO(ナトリウムマンガンブロンズ)、λ-MnO、Na0.44MnO、Na0.44MnO/C、NaMn18、NaFeMn(PO、NaTi、Ni1/3Mn1/3Co1/3、Cu0.56Ni0.44HCF(ヘキサシアノ鉄酸銅ニッケル)、NiHCF(ヘキサシアノ鉄酸ニッケル)、NaCoO、NaCrO、NaTi(PO、NiCo、Ni/FeS、Sb、NaFe(CN)/C、NaV1-xCrPOF、Se(セレンおよびセレン/硫黄、0.01~100のz/y)、Se(Sなし)、アルオード石、またはそれらの組合せから選択されるナトリウムインターカレーション化合物(またはカリウムインターカレーション化合物)を含むことがある。
【0095】
代替として、カソード活性材料は、電解質と直接接触するアルカリ金属イオン捕捉性官能基またはアルカリ金属イオン貯蔵面を有する機能性材料またはナノ構造化材料から選択することができる。好ましくは、官能基は、アルカリ金属イオンと可逆反応し、アルカリ金属イオンと酸化還元対を形成し、またはアルカリ金属イオンと化学錯体を形成する。機能性材料またはナノ構造化材料は、(a)軟質炭素、硬質炭素、高分子炭素もしくは炭化樹脂、メソフェーズ炭素、コークス、炭化ピッチ、カーボンブラック、活性炭、ナノセル炭素発泡体、または部分的に黒鉛化された炭素から選択されるナノ構造化または多孔質の無秩序炭素材料;(b)単層グラフェンシートまたは多層グラフェンプレートレットから選択されるナノグラフェンプレートレット;(c)単壁カーボンナノチューブまたは多壁カーボンナノチューブから選択されるカーボンナノチューブ;(d)カーボンナノファイバ、ナノワイヤ、金属酸化物ナノワイヤもしくは繊維、導電性ポリマーナノファイバ、またはそれらの組合せ;(e)カルボニル含有有機またはポリマー分子;(f)カルボニル基、カルボキシル基、またはアミン基を含む機能性材料;およびそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0096】
機能性材料またはナノ構造化材料は、ポリ(2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン-3,6-メチレン)、Na(x=1~3)、Na(C)、Na(Naテレフタレート)、Na(Liトランス-トランス-ムコン酸塩)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、硫化物ポリマー、PTCDA、1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラキノン、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン、およびそれらの組合せからなる群から選択することができる。機能性材料またはナノ構造化材料は、-COOH、=O、-NH、-OR、または-COOR(ここでRは炭化水素ラジカルである)から選択される官能基を有することが望ましい。
【0097】
好ましい実施形態では、機能性材料またはナノ構造化材料は、少なくとも500m/g、好ましくは少なくとも1,000m/gの比表面積を有する。
【0098】
典型的には、カソード活性材料は導電性でない。したがって、一実施形態では、カソード活性材料は、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、黒鉛粒子、膨張黒鉛粒子、活性炭、メソ多孔質炭素、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバ(CNF)、グラフェンシート(ナノグラフェンプレートレット、NGPとも呼ばれる)、炭素繊維、またはそれらの組合せなど、導電性フィラーと混合することができる。これらの炭素/黒鉛/グラフェン材料は、カソード活性材料を支持するための布地、マット、または紙の形態にすることができる。
【0099】
好ましい実施形態では、ナノスケールのフィラメント(例えば、CNT、CNF、および/またはNGP)は、アノード活性材料(例えば、NaもしくはKコーティング)またはカソード活性材料(例えば、NaFePO)を支持するための大きい表面を含む多孔質ナノ構造として形成される。多孔質ナノ構造は、好ましくは2nm~50nm、好ましくは2nm~10nmの孔径を有する細孔を有するべきである。これらの細孔は、カソード側で電解質を収容し、反復の充放電中に細孔内にカソード活性材料を保持するように適切にサイズ設定される。アノード活性材料を支持するために、アノード側で同じタイプのナノ構造が実現されてもよい。
【0100】
アノード側では、アルカリ金属がアルカリ金属セル内の唯一のアノード活性材料として使用されるときにデンドライトの形成が懸念され、これは、内部短絡および熱暴走をもたらし得る。ここでは、このデンドライト形成の問題に対処するために、個別にまたは組み合わせて2つの手法を使用した。一方は、高濃度電解質の使用を含み、他方は、アノードでアルカリ金属を支持するための導電性ナノフィラメントから構成されるナノ構造の使用を含む。後者の場合、複数の導電性ナノフィラメントを処理して、好ましくは稠密ウェブ、マット、または紙の形態での一体型の集合構造を形成し、これらのフィラメントが互いに交差、重畳、または何らかの形で結合されて(例えば粘結剤材料を使用して)、電子伝導経路のネットワークを形成することを特徴とする。一体型構造は、電解質を収容するために実質的に相互接続された細孔を有する。ナノフィラメントは、例として、カーボンナノファイバ(CNF)、黒鉛ナノファイバ(GNF)、カーボンナノチューブ(CNT)、金属ナノワイヤ(MNW)、エレクトロスピニングによって得られる導電性ナノファイバ、導電性エレクトロスピニング組成物ナノファイバ、ナノスケールグラフェンプレートレット(NGP)、またはそれらの組合せから選択することができる。ナノフィラメントは、ポリマー、コールタールピッチ、石油ピッチ、メソフェーズピッチ、コークス、またはそれらの誘導体から選択される粘結剤材料によって結合されてもよい。
【0101】
意外にも、有意なことに、ナノ構造は、多数回のサイクル後にも幾何学的に鋭利な構造またはデンドライトがアノードで見られない程度で、電池の再充電中にアルカリ金属イオンの均一な堆積をもたらす環境を提供する。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、本出願人は、高導電性ナノフィラメントの3Dネットワークが、再充電中、フィラメント表面へのアルカリ金属イオンの実質的に均一な引力を提供すると考えている。さらに、フィラメントのナノメートルサイズにより、ナノフィラメントの単位体積または単位重量当たりの表面積が大きい。この超高比表面積は、アルカリ金属イオンに、フィラメント表面上に薄いコーティングを均一に堆積する機会を提供する。高い表面積は、液体電解質中に多量のアルカリ金属イオンを容易に受け入れ、アルカリ金属二次電池に関する高い再充電率を可能にする。
【実施例
【0102】
以下に論じる例では、特に断りのない限り、シリコン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン、亜鉛、鉄、ニッケル、チタン、コバルト、およびスズなどの未加工材料は、Alfa Aesarof Ward Hill(米国マサチューセッツ州)、Aldrich Chemical Company(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)、またはAlcan Metal Powders of Berkeley(米国カリフォルニア州)から得られた。銅ターゲットX線管および回折ビームモノクロメータを備えた回折計を使用して、X線回折パターンを収集した。試験した各合金試料毎に、特徴的なピークパターンの有無を観察した。例えば、X線回折パターンが存在しないかまたは鮮明で明確なピークがない場合、相を非晶質とみなした。いくつかの場合、ハイブリッド材料試料の構造および形態を特徴付けるために、走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)を使用した。
【0103】
以下では、本発明を実施する最良の形態を示すために、幾つかの異なるタイプのアノード活性材料、カソード活性材料、および多孔質集電体材料(例えば、黒鉛発泡体、グラフェン発泡体、および金属発泡体)の幾つかの例を提供する。これらの例示的な実施例、ならびに本明細書および図面の他の箇所は、個別にまたは組み合わせて、当業者が本発明を実施できるようにするのに十分すぎるものである。しかし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0104】
実施例1:発泡性集電体の例示的な実施例
様々なタイプの金属発泡体および微細金属ウェブ/スクリーンが、アノードまたはカソード発泡構造(集電体)として使用するために市販されている。例えば、Ni発泡体、Cu発泡体、Al発泡体、Ti発泡体、Niメッシュ/ウェブ、ステンレス鋼繊維メッシュなどである。金属被覆ポリマー発泡体およびカーボン発泡体も集電体として使用される。
【0105】
実施例2:Ni発泡体テンプレート上のNi発泡体およびCVDグラフェン発泡体ベースの集電体
CVDグラフェン発泡体を製造するための手順は、以下の公開されている文献で開示されるものから適合した:Chen,Z.et al.“Three-dimensional flexible and conductive interconnected graphene networks grown by chemical vapor deposition,” Nature Materials,10,424-428(2011)。ニッケル発泡体、ニッケルの相互接続された3D足場を有する多孔質構造を、グラフェン発泡体の成長のためのテンプレートとして選択した。簡潔には、周囲圧力下にて1000℃でCHを分解することによって炭素をニッケル発泡体に導入し、次いでニッケル発泡体の表面にグラフェンフィルムを堆積させた。ニッケルとグラフェンの熱膨張係数の相違により、グラフェンフィルムに波形や皺が生じた。この実施例で形成された4つのタイプの発泡体、すなわちNi発泡体、CVDグラフェン被覆Ni発泡体、CVDグラフェン発泡体(Niはエッチング除去される)、および導電性ポリマー結合CVDグラフェン発泡体を、本発明によるリチウム電池での集電体として使用した。
【0106】
支持Ni発泡体からグラフェン発泡体を回収(分離)するために、Niフレームをエッチング除去した。Chenらによって提案された手順では、高温HCl(またはFeCl3)溶液によってニッケル骨格をエッチング除去する前に、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の薄層を支持体としてグラフェンフィルムの表面に堆積して、ニッケルエッチング中にグラフェンネットワークが崩壊するのを防止した。高温のアセトンによってPMMA層を注意深く除去した後、脆弱なグラフェン発泡体試料が得られた。PMMA支持層の使用は、グラフェン発泡体の自立型フィルムを用意するのに重要であると考えられていた。代わりに、本発明者らは、粘結剤樹脂として導電性ポリマーを使用して、グラフェンを一体に保持すると共に、Niをエッチング除去した。ここで使用されるCVDグラフェン発泡体は、液体電解質中に分散された活性物質の懸濁液を収容するための発泡性集電体として意図されていることに留意されたい。例えば、アノードに液体電解質と共に注入された硬質炭素ナノ粒子と、カソードに液体電解質と共に注入されたグラフェン担持NaFePOナノ粒子とを収容する発泡性集電体として意図されていることに留意されたい。
【0107】
実施例3:ピッチベースの炭素発泡体からの黒鉛発泡体ベースの集電体
ピッチパウダー、顆粒、またはペレットを、発泡体の所望の最終形状を有するアルミニウム鋳型に入れる。Mitsubishi ARA-24メソフェーズピッチを利用した。試料を1トール未満に排気し、次いで約300℃の温度に加熱する。この時点で、真空を解放して窒素ブランケットとし、次いで1,000psiまでの圧力を加えた。次いで、系の温度を800℃に上昇させた。これは2℃/分の速度で行った。温度を少なくとも15分間保って浸漬を実現し、次いで炉の電力を切って約1.5℃/分の速度で室温まで冷却し、それと共に約2psi/分の速度で圧力を解放した。最終的な発泡体の温度は、630℃および800℃であった。冷却サイクル中、圧力は大気条件まで徐々に解放される。次いで、発泡体を窒素ブランケット下で1050℃まで熱処理(炭化)し、次いで、黒鉛るつぼ内で、アルゴン中で2500℃および2800℃(黒鉛化)まで別々に熱処理した。
【0108】
実施例4:使用される電解質のいくつかの例
好ましい非リチウムアルカリ金属塩は、以下のものを含む。過塩素酸ナトリウム(NaClO)、過塩素酸カリウム(KClO)、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF)、六フッ化リン酸カリウム(KPF)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF)、ホウフッ化カリウム(KBF)、六フッ化ヒ酸ナトリウム、六フッ化ヒ酸カリウム、トリフルオロメタスルホン酸ナトリウム(NaCFSO)、トリフルオロメタスルホン酸カリウム(KCFSO)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドナトリウム(NaN(CFSO)、およびビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドカリウム[KN(CFSO]。
【0109】
水性電解質では、ナトリウム塩またはカリウム塩は、好ましくは、NaSO、KSO、それらの混合物、NaOH、KOH、NaCl、KCl、NaF、KF、NaBr、KBr、NaI、KI、またはそれらの混合物から選択される。本研究で使用した塩濃度は、0.3M~3.0M(最も多くの場合には0.5M~2.0M)であった。
【0110】
望みであれば、多様なリチウム塩を、有機液体溶媒中に(単独で、または別の有機液体もしくはイオン液体との混合物中に)溶解された第2の塩(修飾添加剤)として添加することができる。以下のものが、選択された有機またはイオン液体溶媒によく溶解される傾向があるリチウム塩のための良好な選択肢である。ホウフッ化リチウム(LiBF)、トリフルオロ-メタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス-トリフルオロメチルスルホニルイミド(LiN(CFSOまたはLITFSI)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiBF)、およびリチウムビスペルフルオロエチ-スルホニルイミド(LiBETI)。Li金属を安定化させる助けとなる良好な電解質添加剤は、LiNOである。特に有用なイオン液体ベースのリチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を含む。
【0111】
好ましい有機液体溶媒は、以下のものを含む。炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸プロピレン(PC)、アセトニトリル(AN)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸アリルエチル(AEC)、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、ヒドロフロロエーテル(例えばTPTP)、スルホン、およびスルホラン。
【0112】
好ましいイオン液体溶媒は、テトラアルキルアンモニウム、ジ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、またはジアルキルピペリジニウムから選択されるカチオンを有する室温イオン液体(RTIL)から選択することができる。対アニオンは、好ましくは、BF 、B(CN) 、CFCO 、CFSO 、N(SOCF 、N(COCF)(SOCF、またはN(SOF) から選択される。特に有用なイオン液体ベースの溶媒は、N-n-ブチル-N-エチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(BEPyTFSI)、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(PP13TFSI)、およびN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを含む。
【0113】
実施例4:天然黒鉛粉末からの酸化グラフェン(GO)および還元酸化グラフェン(RGO)ナノシートの調製
Huadong Graphite Co.(中国、青島)製の天然黒鉛を出発材料として使用した。よく知られているmodified Hummers法に従うことによってGOが得られた。この方法は、2つの酸化段階を含んでいた。典型的な手順において、以下の条件で第1の酸化を実現した。1100mgの黒鉛を1000mLの沸騰フラスコに入れた。次いで、K、20gのP、および400mLの濃縮HSO水溶液(96%)をフラスコに加えた。混合物を還流下で6時間加熱し、次いで室温で20時間安置した。酸化黒鉛を濾過し、中性pHになるまで多量の蒸留水ですすいだ。この最初の酸化の終わりに、ウェットケーキ状物質が回収された。
【0114】
第2の酸化プロセスでは、前に収集されたウェットケーキを、69mLの濃縮HSO水溶液(96%)を含む沸騰フラスコに入れた。9gのKMnOをゆっくりと加えながら、フラスコを氷浴内で保った。過熱を避けるように注意した。得られた混合物を35℃で2時間撹拌し(試料の色が暗い緑色に変わった)、続いて140mLの水を加えた。15分後、420mLの水および15mLの30wt%H水溶液を加えることによって反応を停止させた。この段階での試料の色は、明るい黄色に変わった。金属イオンを除去するために、混合物を濾過し、1:10HCl水溶液ですすいだ。収集した物質を2700gで穏やかに遠心分離し、脱イオン水ですすいだ。最終生成物は、乾燥抽出物から推定されるように、1.4wt%のGOを含むウェットケーキであった。その後、脱イオン水で希釈したウェットケーキ物質を軽く超音波処理することによって、GOプレートレットの液体分散液を得た。
【0115】
純水の代わりに界面活性剤水溶液でウェットケーキを希釈することによって、界面活性剤で安定化されたRGO(RGO-BS)を得た。Sigma Aldrichによって提供されているコール酸ナトリウム(50wt%)とデオキシコール酸ナトリウム(50wt%)の塩の市販の混合物を使用した。界面活性剤の重量画分は、0.5wt%であった。全ての試料に関してこの画分を一定に保った。13mmステップディストラクタホーンと、3mmテーパ付きマイクロチップとを備え、20kHzの周波数で動作するBranson Sonifier S-250Aを使用して超音波処理を行った。例えば、0.1wt%のGOを含む水溶液10mLを10分間超音波処理し、その後、2700gで30分間遠心分離して、溶解していない大きな粒子、凝集物、および不純物を除去した。0.1wt%のGO水溶液10mLを50mL沸騰フラスコに入れることを含む方法に従うことによって、RGOを生成するために、上記のようにして得られたGOの化学的還元を行った。次いで、界面活性剤によって安定化させた混合物に、35wt%のN(ヒドラジン)水溶液10μLおよび28wt%のNHOH(アンモニア)水溶液70mLを加えた。溶液を90℃に加熱し、1時間還流させた。反応後に測定されたpH値は約9だった。還元反応中、試料の色は暗黒色に変わった。
【0116】
本発明による幾つかのアルカリ金属電池では、アノードおよびカソードのいずれかまたは両方での導電性添加剤としてRGOを使用した。選択されたナトリウムイオンセルでのアノード活性材料として、プレナトリウム化されたRGO(例えば、RGO+ナトリウム粒子またはナトリウムコーティングを予め堆積されたRGO)も使用した。
【0117】
比較のために、従来の電極を製造するためにスラリコーティングおよび乾燥手順を行った。次いで、電極と、2つの電極間に配設されたセパレータとを組み立てて、Al-プラスチック積層パッケージングエンベロープ内に入れ、続いて液体電解質を注入して、ナトリウムまたはカリウム電池セルを形成した。
【0118】
実施例5:純粋なグラフェンのシート(酸素0%)の調製
GOシート中の高欠陥集団が個々のグラフェン面の導電率を低下させるように作用する可能性を認識して、本発明者らは、純粋なグラフェンのシート(例えば、酸化されておらず、酸素を含まない、ハロゲン化されておらず、ハロゲンを含まない)を使用することで、高い導電率および熱伝導率を有する導電性添加剤を得ることができるかどうか研究することにした。プレナトリウム化された純粋なグラフェンも、アノード活性材料として使用した。直接超音波処理または液相製造法を使用することによって、純粋なグラフェンのシートを製造した。
【0119】
典型的な手順では、約20μm以下のサイズに粉砕した5グラムの黒鉛フレークを1,000mLの脱イオン水(0.1重量%の分散剤を含む。DuPont社製のZonyl(登録商標)FSO)中に分散させて、懸濁液を得た。グラフェンシートの剥離、分離、およびサイズ減少のために、85Wの超音波エネルギーレベル(Branson S450 Ultrasonicator)を15分~2時間の期間にわたって使用した。得られたグラフェンシートは、一度も酸化されておらず、酸素を含まず、比較的欠陥のない純粋なグラフェンである。純粋なグラフェンは、非炭素元素を本質的に含まない。
【0120】
次いで、本発明による発泡体細孔へのスラリ注入手順と、従来のスラリコーティング、乾燥、および積層の手順との両方を使用して、純粋なグラフェンのシートを、導電性添加剤として、アノード活性材料(またはカソードではカソード活性材料)と共に電池に組み込んだ。アルカリ金属イオン電池とアルカリ金属電池(カソードのみへの注入)の両方を調べた。アルカリ金属電池(一次電池または二次電池)では、アノードは、グラフェンシートによって支持されたNa箔またはKチップである。
【0121】
実施例6:ナトリウムイオン電池のアノード活性材料としてのプレナトリウム化されたグラフェンフッ化物シートの調製
グラフェンフッ化物(GF)を製造するために幾つかの方法を使用したが、ここでは一例として1つの方法のみを述べる。典型的な手順では、インターカレート化合物CF・xClFから、大きく剥離された黒鉛(HEG)を調製した。HEGを三フッ化塩素の蒸気によってさらにフッ素化して、フッ素化された大きく剥離された黒鉛(FHEG)を生成した。予冷されたテフロン(登録商標)(Teflon)反応器に20~30mLの予冷された液体ClFを充填し、反応器を閉じ、液体窒素温度まで冷却した。次いで、ClFガスが反応炉の内部に入り込めるようにする穴を有する容器に、1g以下のHEGを入れた。7~10日で、近似式CFを有するグレーベージュの生成物が形成された。
【0122】
その後、少量のFHEG(約0.5mg)を20~30mLの有機溶媒(別々に、メタノールとエタノール)と混合し、超音波処理(280W)を30分間行って、均質な黄色っぽい分散液を生成した。溶媒の除去後、分散液は茶色っぽい粉末になった。液体電解質中で、グラフェンフッ化物粉末をナトリウムチップと混合し、アノード集電体の細孔への注入前または後にプレナトリウム化を生じさせた。
【0123】
実施例7:ナトリウムイオン電池のアノード活性材料としてのテレフタル酸二ナトリウム(Na)の調製
再結晶法によって、純粋なテレフタル酸二ナトリウムを得た。テレフタル酸をNaOH水溶液に添加することによって水溶液を調製し、次いでエタノール(EtOH)をこの混合物に添加して、水/EtOH混合物中でテレフタル酸二ナトリウムを沈殿させた。共鳴安定化のために、テレフタル酸は比較的低いpKa値を有し、これはNaOHによる容易な脱プロトン化を可能にし、酸塩基化学反応によって二ナトリウムテレフタレート(NaTP)を生成する。典型的な手順では、テレフタル酸(3.00g、18.06mmol)を室温でEtOH(60mL)中の水酸化ナトリウム(1.517g、37.93mmol)で処理した。24時間後、懸濁した反応混合物を遠心分離し、上澄み液を静かに移した。沈殿物をEtOH中に再分散させ、次いで再び遠心分離した。この手順を2回繰り返して白色固体を生成した。生成物を150℃で1時間真空乾燥した。化合物、試薬、および溶媒は、標準的な供給業者から購入し、さらなる精製をせずに使用した。別個の試料において、GOをNaOH水溶液に添加して(5重量%のGOシート)、同等の反応条件下でグラフェン担持二ナトリウムテレフタレートのシートを調製した。
【0124】
次いで、本発明によるアノード集電体の発泡体細孔へのスラリ注入手順と、従来のスラリコーティング、乾燥、および積層の手順との両方を使用して、炭素-テレフタル酸二ナトリウム混合物粉末とグラフェン担持テレフタル酸二ナトリウムとを別々に、それぞれ液体電解質と共に電池に取り込んだ。
【0125】
実施例8:混合遷移金属酸化物に基づくカソード活性材料
例として、Na1.0Li0.2Ni0.25Mn0.75δ、Ni0.25Mn0.75CO、またはNi0.25Mn0.75(OH)カソード活性材料の合成のために、出発化合物としてNaCOおよびLiCOを使用した。適切なモル比での材料をまとめて粉砕し、まず空気中にて500℃で8時間、次いで最後に空気中にて800℃で8時間熱処理し、炉中冷却した。
【0126】
従来の手順を使用する電極調製のために、アルミニウム箔のシートに、カソード混合物のN-メチルピロリジノン(NMP)スラリをコーティングした。電極混合物は、82wt%の活性酸化物材料、8wt%の導電性カーボンブラック(Timcal Super-P)、および10wt%のPVDF粘結剤(Kynar)から構成される。鋳造後、最初に電極を70℃で2時間乾燥し、続いて80℃で少なくとも6時間、動的真空乾燥を行った。ヘキサンを使用して油を浄化したナトリウムチャンク(Aldrich、99%)からナトリウム金属箔を切断し、次いで圧延して打抜き加工した。本発明のスラリの調製のために、NMPを液体電解質(1MのNaClOを含む炭酸プロピレン)で置換した。そのようなスラリをカソード集電体の細孔に直接注入した。
【0127】
次いで、本発明によるカソード集電体の発泡体細孔へのスラリ注入手順と、従来のスラリコーティング、乾燥、および積層の手順との両方を使用して、Na1.0Li0.2Ni0.25Mn0.75δ粉末(導電性添加剤としてカーボンブラック粉末を含む)とグラフェン担持Na1.0Li0.2Ni0.25Mn0.75δ粉末を別々に、液体電解質と共に電池に取り込んだ。
【0128】
電解質は、1MのNaClO電解質塩(Aldrich、99%)を含む炭酸プロピレンとした。パウチセルを、Na/Na(15mA/g)に対する4.2Vのカットオフに定電流でサイクルさせ、次いで、様々な電流速度で2.0Vのカットオフ電圧まで放電させた。
【0129】
準備された全ての電池セルで、電荷貯蔵容量を定期的に測定し、サイクル数の関数として記録した。本明細書で述べる比放電容量は、複合体カソードの単位質量当たりの、放電中にカソードに挿入される総電荷(カソード活性材料、導電性添加剤または支持体、粘結剤、および任意選択の添加剤の重量を合わせて計数するが、集電体は除外する)である。比電荷容量は、複合体カソードの単位質量あたりの電荷量を指す。本節で提示される比エネルギーおよび比出力値は、全てのパウチセルの総セル重量に基づく。透過型電子顕微鏡法(TEM)と走査型電子顕微鏡法(SEM)の両方を用いて、所望の回数の充電および再充電サイクルを繰り返した後の、選択された試料の形態学的または微小構造的変化を観察した。
【0130】
実施例9:Na(PO/CおよびNa(PO/グラフェンカソード
以下の手順に従って固体状態反応によって、Na(PO/C試料を合成した。NaHPO・2HO(99.9%、Alpha)粉末とV(99.9%、Alpha)粉末の化学量論的混合物を前駆体としてアゲートジャーに入れ、次いで、前駆体を、ステンレス鋼容器中にて400rpmで8時間、遊星型ボールミルでボールミル粉砕した。ボールミル粉砕中、炭素被覆試料については、炭素前駆体および還元剤として糖(99.9%、Alpha)も添加され、これは、V の酸化を防止した。ボールミル粉砕後、混合物を圧密してペレットとし、次いでAr雰囲気中にて900℃で24時間加熱した。これとは別に、Na(PO/グラフェンカソードを同様に調製したが、糖を酸化グラフェンで置換した。
【0131】
これらのカソード活性材料を、電解質としてPC+DOL中に1MのNaPF塩を含むいくつかのNa金属セルで使用した。次いで、従来のNMPスラリコーティング法と、本発明の集電体細孔への直接の電解質注入とを行って、Na金属セルを製造した。
【0132】
実施例10:ナトリウム金属電池のカソード活性材料としての有機材料(Na
ロジゾン酸二ナトリウム(Na)を合成するために、ロジゾン酸二水和物(以下の式では種1)を前駆体として使用した。両方のエネジオール酸機能を中和するために、塩基性ナトリウム塩NaCOを水性媒体中で使用することができる。厳密な化学量論量の両方の反応物、すなわちロジゾン酸と炭酸ナトリウムを10時間反応させて80%の収率を実現した。ロジゾン酸二ナトリウム(種2)は少量の水にさえ容易に溶解可能であり、水分子が種2に存在することを示唆する。水を真空中において180℃で3時間除去し、無水形(種3)を得た。
【化1】
カソード活性材料(Na)と導電性添加剤(カーボンブラック、15%)との混合物を10分間ボールミル加工し、得られたブレンドを研磨して複合物粒子を製造した。電解質は、PC-EC中で1Mのヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF)であった。
【0133】
式Na中の2つのNa原子は固定構造の一部であり、可逆的なリチウムイオンの貯蔵および解放に関与しないことに留意されたい。これは、ナトリウムイオンがアノード側から来なければならないことを示唆する。したがって、アノードにはナトリウム源(例えば、ナトリウム金属またはナトリウム金属合金)が存在しなければならない。図1(E)に示されているように、アノード集電体(Cu箔)には、(例えば、スパッタリングまたは電気化学めっきによって)ナトリウムの層が堆積される。これは、ナトリウム被覆層または単にナトリウム箔、多孔質セパレータ、および発泡性カソード集電体を乾電池に組み立てる前に行うことができる。カソード集電体の細孔には、液体電解質中に分散されたカソード活性材料と導電性添加剤(Na/C複合粒子)の懸濁液が浸潤している。比較のために、従来のスラリコーティング、乾燥、積層、パッケージング、および電解質注入の手順によって、対応する従来のNa金属セルも製造した。
【0134】
実施例11:ナトリウム金属電池の金属ナフタロシアニン-RGOハイブリッドカソード
RGO-水懸濁液のスピンコーティングから調製されたグラフェンフィルム(5nm)と共にチャンバ内でCuPcを気化させることによって、CuPc被覆グラフェンシートを得た。得られた被覆されたフィルムを切断して粉砕してCuPc被覆グラフェンシートを製造し、これを、アノード活性材料としてナトリウム金属箔を有し、電解質として炭酸プロピレン(PC)溶液中の1MのNaClOを有するナトリウム金属電池でのカソード活性材料として使用した。
【0135】
実施例12:Na金属電池のカソード活性材料としてのMoS/RGOハイブリッド材料の調製
この実施例では、多様な無機材料を調べた。例えば、200℃で、酸化された酸化グラフェン(GO)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液中での(NHMoSとヒドラジンとの1段階のソルボサーマル反応により、超薄MoS/RGOハイブリッドを合成した。典型的な手順では、10mlのDMF中に分散された10mgのDMFに22mgの(NHMoSを加えた。混合物を、室温で約10分間、透明で均質な溶液が得られるまで超音波処理した。その後、0.1mlのN・HOを加えた。反応溶液をさらに30分間超音波処理した後、テフロン(登録商標)ライニングされた40mLのオートクレーブに移した。オーブン内で、系を200℃で10時間加熱した。生成物を8000rpmで5分間の遠心分離によって収集し、DI水で洗浄し、遠心分離により再収集した。ほとんどのDMFが確実に除去されるように、洗浄ステップを少なくとも5回繰り返した。最後に、生成物を乾燥させてカソードにした。
【0136】
実施例13:2次元(2D)層状のBiSeカルコゲナイドナノリボンの調製
(2D)層状のBiSeカルコゲナイドナノリボンの調製は、当技術分野でよく知られている。例えば、蒸気-液体-固体(VLS)法を用いてBiSeナノリボンを成長させた。本明細書で製造されるナノリボンは、平均で厚さが30~55nmであり、幅および長さが数百ナノメートル~数マイクロメートルの範囲である。比較的大きいナノリボンにはボールミル加工を施し、横方向寸法(長さおよび幅)を200nm未満に減少させた。これらの手順によって(グラフェンシートまたは剥離黒鉛フレークを伴って、または伴わずに)調製されたナノリボンを、NaまたはK金属電池のカソード活性材料として使用した。意外にも、BiSeカルコゲナイドナノリボンは、それらの表面上にNaイオンとKイオンの両方を蓄積することが可能である。
【0137】
実施例14:MXene粉末+化学的に活性化されたRGO
TiAlCなど金属炭化物の層状構造から特定の元素を部分的にエッチング除去することによって、選択されたMXeneを生成した。例えば、TiAlC用のエッチャントとして、1MのNHHF水溶液を室温で使用した。典型的には、MXene表面は、O、OH、および/またはF基によって終端される。これは、それらが通常はMn+1と呼ばれる理由であり、ここで、Mは前周期遷移金属であり、XはCおよび/またはNであり、Tは末端基(O、OH、および/またはF)であり、n=1、2、または3であり、xは末端基の数である。調べたMXene材料には、TiCT、NbCT、VCT、TiCNT、およびTaが含まれる。典型的には、35~95%のMXeneおよび5~65%のグラフェンシートを液体電解質中で混合し、発泡性集電体の細孔に注入した。
【0138】
実施例15:グラフェン担持MnOおよびNaMnOカソード活性材料の調製
MnO粉末を2つの方法(それぞれグラフェンシート有りまたは無し)によって合成した。1つの方法では、過マンガン酸カリウムを脱イオン水中に溶解することによって、0.1mol/LのKMnO水溶液を調製した。一方、高純度のビス(2-エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウムの界面活性剤13.32gを300mLのイソオクタン(油)中に加え、よく撹拌して、光学的に透明な溶液を得た。次いで、その溶液中に、0.1mol/LのKMnO溶液32.4mLと、選択された量のGO溶液とを加え、それを30分間超音波処理して、暗褐色の沈殿物を調製した。生成物を分離し、蒸留水およびエタノールで数回洗浄し、80℃で12時間乾燥させた。試料は、粉末状のグラフェン担持MnOとし、これを液体電解質中に分散させてスラリを生成し、発泡性集電体の細孔に注入した。
【0139】
さらに、グラフェンシートを伴って、または伴わずに、(モル比1:2での)NaCOとMnOの混合物を12時間ボールミル粉砕し、その後、870℃で10時間加熱することによって、NaMnOおよびNaMnO/グラフェン複合体を合成する。
【0140】
実施例16:カリウム金属セル用の電極の調製
アノード活性材料としてカリウムフィルムのシートを使用し、カソード活性材料として、Angstron Materials, Inc.(米国オハイオ州デイトン)から提供されるPVDF結合還元型酸化グラフェン(RGO)シートの層を使用した。使用した電解質は、炭酸プロピレンとDOL(1/1の比)の混合物中に溶解された1MのKClO塩とした。異なるCレートに対応するいくつかの電流密度(50mA/g~50A/g)で充放電曲線を得て、そこから得られるエネルギー密度および電力密度データを測定および計算した。
【0141】
実施例17:様々な電池セルの用意と電気化学的試験
調べたアノードおよびカソード活性材料のほとんどについて、本発明による方法と従来の方法との両方を使用して、アルカリ金属イオンセルまたはアルカリ金属セルを用意した。
【0142】
従来の方法では、典型的なアノード組成物は、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)中に溶解された、85wt%の活性材料(例えば、SnまたはNa被覆グラフェンシート)と、7wt%アセチレンブラック(Super-P)と、8wt%ポリフッ化ビニリデン粘結剤(PVDF、5wt%固形分)とを含む。Cu箔上にスラリをコーティングした後、電極を120℃で2時間真空乾燥させて溶媒を除去した。この方法により、典型的には、粘結剤樹脂が必要とされず、または使用されず、8重量%節約する(非活性材料の量が減少する)。カソード層も、従来のスラリコーティングおよび乾燥手順を使用して、(カソード集電体としてAl箔を使用して)同様に形成される。次いで、アノード層、セパレータ層(例えば、Celgard 2400膜)、およびカソード層を積層し合わせて、プラスチックAlエンベロープ内に収容する。次いで、炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)との混合物(EC-DEC、1:1v/v)中に溶解された1M NaPF電解質溶液をセルに注入する。幾つかのセルでは、液体電解質としてイオン液体を使用した。アルゴン充填グローブボックス内にセルアセンブリを形成した。
【0143】
本発明による方法では、好ましくは、第1の懸濁液の注入(または含浸)および/または第2の懸濁液の注入(または含浸)の前または後に、アノード集電体、セパレータ、およびカソード集電体を保護ハウジング内で組み立てる。幾つかの実施例では、空の発泡性アノード集電体、多孔質セパレータ層、および空の発泡性集電体を一体に組み立てて、(Al-ナイロン二層フィルムからなる)パウチに収容されたアセンブリを形成した。次いで、第1の懸濁液をアノード集電体に注入し、第2の懸濁液をカソード集電体に注入した。次いで、パウチを封止した。他の実施例では、発泡性アノード集電体に第1の懸濁液を含浸させてアノード層を形成し、それとは別に、発泡性カソード集電体に第2の懸濁液を含浸させてカソード層を形成した。次いで、アノード層、多孔質セパレータ層、およびカソード層を組み立て、ポーチに収容してセルを形成した。
【0144】
Arbin電気化学ワークステーションを使用して、1mV/sの典型的な走査速度でサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を行った。さらにまた、定電流充電/放電サイクルによって、様々なセルの電気化学的性能を50mA/g~10A/gの電流密度で評価した。長期のサイクル試験には、LAND製のマルチチャネル電池テスタを使用した。
【0145】
留意すべきは、リチウムイオン電池業界では、電池のサイクル寿命を、所要の電気化学的形成後に測定された初期容量に基づいて電池が20%の容量減衰を受ける充放電サイクル数と定義するのが一般的な慣例である。ここでも、NaイオンまたはKイオンセルのサイクル寿命に関する同じ定義に従う。
【0146】
実施例18:典型的な試験結果
各試料毎に、電気化学的応答を決定するために幾つかの電流密度(充電/放電速度を表す)を課し、Ragoneプロット(電力密度対エネルギー密度)の構築に必要なエネルギー密度および電力密度値の計算を可能にした。図5に、アノード活性材料として硬質炭素粒子を含み、カソード活性材料として炭素被覆Na(PO粒子を含むNa-イオン電池セルのRagoneプロット(重量および体積電力密度対エネルギー密度)が示されている。4つのデータ曲線のうちの2つは、本発明の実施形態に従って用意されたセルに関するものであり、他の2つは、電極の従来のスラリコーティング(ロールコーティング)によるものである。これらのデータから以下のような幾つかの重要な観察を行うことができる。
【0147】
本発明による方法(図の凡例では「本発明」と表される)によって用意されたナトリウムイオン電池セルの重量および体積エネルギー密度および電力密度は、従来のロールコーティング法(「従来の」と表される)によって用意された相当物のものよりもかなり高い。150μmのアノード厚さ(平坦な固体Cu箔上にコーティングされた)から225μmの厚さ(85%の多孔率を有するNi発泡体の細孔内に全て収容される)への変化、およびバランスの取れた容量比を維持するためのカソードの対応する変化は、115Wh/kgから154Wh/kgへの重量エネルギー密度の増加をもたらす。さらに意外なことに、体積エネルギー密度は241Wh/Lから493Wh/Lに増加される。この後者の値493Wh/Lは、硬質炭素のアノードとナトリウム遷移金属リン酸塩タイプのカソードとを使用するナトリウムイオン電池では達成されていなかった。
【0148】
これらの大きな相違は、単に電極の厚さおよび質量負荷の増加に起因するだけではない。この相違は、おそらく以下のことに起因する。本発明によるセルに関連するかなり高い活性材料質量負荷(他の材料に関連して);活性材料の重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)構成要素の割合の減少;粘結剤樹脂を有する必要がないこと;電極活性材料の驚くほど良い利用率(全てではないにせよほとんどの硬質炭素粒子およびNa(PO粒子がナトリウムイオン貯蔵容量に寄与する。特に高い充電/放電率の条件下で、電極中に乾燥ポケットまたは非効果的なスポットがない);および、発泡性集電体の細孔内に活性材料粒子をより効果的に充填することができる本発明による方法の意外な機能。
【0149】
図6は、アノード活性材料としてグラフェン包有Snナノ粒子を含み、カソード活性材料としてNaFePOナノ粒子を含む2つのセルのRagoneプロット(重量および体積エネルギー密度に対する重量および体積電力密度)を示す。実験データは、本発明による方法によって用意されたNaイオン電池セルと、電極の従来のスラリコーティングによって用意されたNaイオン電池セルとから得られた。
【0150】
これらのデータは、本発明による方法によって用意された電池セルの重量および体積エネルギー密度および電力密度が、従来の方法によって用意された相当物よりもかなり高いことを示している。ここでも相違は大きい。従来のやり方で形成されたセルは、185Wh/kgの重量エネルギー密度および388Wh/Lの体積エネルギー密度を示すが、本発明によるセルは、それぞれ305Wh/kgおよび823Wh/Lを送給する。セルレベルの重量エネルギー密度823Wh/Lは、充電式ナトリウム電池では従来達成されていない。実際、現在の技術水準のリチウムイオン電池でさえ、750Wh/Lよりも高い体積エネルギー密度を示すことはめったにない。1205W/kgと3,495W/Lの電力密度は、典型的にはより高いエネルギーのリチウムイオン電池に関して前例がなく、ナトリウムイオン電池については言うまでもない。
【0151】
これらのエネルギー密度および電力密度の相違は、主として以下のことによる。本発明によるセルに関連する高い活性材料質量負荷(アノードでは>25mg/cm、およびカソードでは>45mg/cm);活性材料重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)構成要素の割合の減少;粘結剤樹脂を有する必要がないこと;活性材料粒子をより良く利用することができ(全ての粒子が液体電解質に接近可能であり、高速のイオンおよび電子運動速度)、発泡性集電体の細孔内に活性材料粒子をより効果的に充填することができる本発明による方法の機能。
【0152】
図7に、アノード活性材料としてナトリウム箔、カソード活性材料としてロジゾン酸二ナトリウム(Na)、および有機液体電解質としてリチウム塩(NaPF)-PC/DECを含むナトリウム金属電池のRagoneプロットが示されている。データは、本発明による方法によって用意されたナトリウム金属セルと、電極の従来のスラリコーティングによって用意されたナトリウム金属セルとの両方に関するものである。これらのデータは、本発明による方法によって用意されたナトリウム金属セルの重量および体積エネルギー密度および電力密度が、従来の方法によって用意された相当物よりもかなり高いことを示している。ここでも、相違は大きく、おそらく以下のことに起因する。本発明によるセルに関連するかなり高い活性材料質量負荷;活性材料の重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)構成要素の割合の減少;粘結剤樹脂を有する必要がないこと;電極活性材料の驚くほど良い利用率(全てではないにせよほとんどの活性材料がナトリウムイオン貯蔵容量に寄与する。特に高い充電/放電率の条件下で、電極中に乾燥ポケットまたは非効果的なスポットがない);および、発泡性集電体の細孔内に活性材料粒子をより効果的に充填することができる本発明による方法の意外な機能。
【0153】
本発明によるナトリウム金属有機カソードセルの重量エネルギー密度は320Wh/kgと高く、これまでに報告されている全ての充電式ナトリウム金属またはナトリウムイオン電池の重量エネルギー密度(現在のナトリウムイオン電池は、総セル重量に基づいて一般的に100~150Wh/kgを貯蔵することを想起されたい)よりも高いという観察結果は、かなり注目に値し、意外である。さらに、有機カソード活性材料ベースのナトリウム電池(対応するリチウム電池さえも)では、1,204W/kgの重量電力密度、および3490W/Lの体積電力密度は考えられなかった。
【0154】
多くの研究者が行っているようなRagoneプロット上での活性材料のみの重量当たりのエネルギーおよび電力密度の報告は、組み立てられた電池セルの性能の現実的な状況を示さないことがあることを指摘しておくことは重要であろう。他のデバイス構成要素の重量も考慮に入れなければならない。集電体、電解質、セパレータ、粘結剤、コネクタ、およびパッケージングを含むこれらのオーバーヘッド構成要素は、非活性材料であり、電荷蓄積量に寄与しない。これらの構成要素は、デバイスに重量および体積を追加するだけである。したがって、オーバーヘッド構成要素の重量の相対比を減少し、活性材料の割合を増加させることが望ましい。しかしながら、従来の電池製造法を使用してこの目的を達成することは可能でなかった。本発明は、リチウム電池の技術分野におけるこの長年にわたる最も重大な問題を克服する。
【0155】
150μmの電極厚さを有する市販のリチウムイオン電池では、リチウムイオン電池におけるアノード活性材料(例えば、黒鉛や炭素)の重量比は、典型的には12~17%であり、カソード活性材料の重量比(LiMnなど無機材料に関して)は22%~41%であり、または有機またはポリマー材料に関しては10%~15%である。Naイオン電池での対応する重量比は、非常に類似していると予想される。なぜなら、2種類の電池の間で、アノード活性材料とカソード活性材料の両方が同様の物理的密度を有し、アノード比容量に対するカソード比容量の比も同様であるからである。したがって、活性材料重量のみに基づく特性から、デバイス(セル)のエネルギーまたは電力密度を外挿するために、係数3~4が使用されることがある。大抵の科学論文では、報告されている特性は、典型的には活性材料重量のみに基づいており、電極は典型的には非常に薄い(<<100μm、および大抵は<<50μm)。活性材料重量は、典型的には総デバイス重量の5%~10%であり、これは、対応する活性材料重量ベース値を係数10~20で割ることによって実際のセル(デバイス)エネルギーまたは電力密度を得ることができることを示唆する。この係数が考慮された後では、これらの論文で報告されている特性は、商用電池の特性よりも良いものとは思えない。したがって、科学論文および特許出願で報告されている電池の性能データを読んで解釈するに当たっては非常に慎重でなければならない。
【0156】
従来のスラリコーティング法によって準備された一連のKイオンセルのRagoneプロットと、本発明による方法によって準備された対応するKイオンセルのRagoneプロットとが、図8に要約されて比較されている。これらのデータもまた、本発明による方法がNa金属電池とK金属電池の両方に関して良好に機能することを裏付ける。
【0157】
図9には、従来のスラリコーティングによって準備された、および発泡性集電体の細孔に直接注入する本発明による方法によって準備された、ハイブリッドアノード活性材料(活性炭粒子とNaTi(PO粒子との混合物)と、カソード活性材料としてのλ-MnO粒子とを有する一連のハイブリッドセルのRagoneプロットが示されている。液体電解質は、2MのNaSO水溶液である。これらのデータも、予想外に高いエネルギー密度(重量と体積の両方)をハイブリッド電池セルに与える本発明による方法の効果を実証する。
【0158】
実施例19:実現可能な電極の厚さと、リチウム電池セルの電気化学的性能に対するその影響
アルカリ金属電池の電極厚さは、デバイス性能の最適化のために自由に調整できる設計パラメータであると考えられがちである。実際には、この認識とは対照的に、アルカリ金属電池電極の厚さは製造上の制限を受け、現実の工業的製造環境(例えば、ロールツーロールコーティング施設)では、特定の厚さレベルを超える良好な構造的完全性を有する電極を製造することができない。従来の電池電極設計は、平坦な金属集電体上への電極層のコーティングに基づき、これは、以下のような幾つかの主な問題を有する。(a)Cu箔またはAl箔上の厚いコーティングは、長い乾燥時間を必要とする(長さ30~100メートルの加熱区域を必要とする)。(b)厚い電極は、乾燥およびその後の取扱いの際に層間剥離または割れを生じやすく、電極の完全性を改良すると期待される15~20%の樹脂粘結剤比率でさえ、この問題は大きな制限因子のままである。したがって、固体平坦集電体上にスラリをロールコーティングするそのような業界の慣行は、高い活性物質質量負荷を可能にしない。(c)コーティング、乾燥、および圧縮によって用意された厚い電極は、電解質(セルが形成された後にセルに注入される)が電極を通って浸透するのを難しくし、したがって、厚い電極は、電解質によって濡らされない多くの乾燥ポケットまたはスポットを意味する。これは、活性材料の利用率が低いことを示唆する。本発明は、アルカリ金属電池に関連するこれらの長年にわたる非常に重要な問題を解決する。
【0159】
図10に、層間剥離および割れのない従来の方法によって用意されたMnO/RGOカソードと、本発明による方法によって用意されたカソードとの実現可能なカソード厚さ範囲にわたってプロットされた、ナトリウム金属セルのセルレベルの重量エネルギー密度(Wh/kg)および体積エネルギー密度(Wh/L)が示されている。この図では、データ点は、従来のNa-MnO/RGO電池の重量(◆)および体積(▲)エネルギー密度と、本発明による電池の重量(■)および体積(x)エネルギー密度として記号を付されている。
【0160】
電極は、従来のスラリコーティング法を使用して最大100~200μmの厚さで製造することができる。しかし、対照的に、本発明による方法で実現することができる電極の厚さには理論上の制限はない。典型的には、実用上の電極の厚さは10μm~1000μm、より典型的には100μm~800μm、および最も典型的には200μm~600μmである。
【0161】
これらのデータは、従来実現できなかった超厚ナトリウム電池電極を製造する際の本発明による方法の意外な有効性をさらに確認している。ナトリウム金属電池でのこれら超厚電極は、無機カソード活性材料に関して、典型的には実質的に、>25mg/cm(より典型的には>30mg/cm、さらに典型的には>40mg/cm、しばしば>50mg/cm、およびさらには>60mg/cm)の非常に高いカソード活性材料質量負荷をもたらす。これらの高い活性物質質量負荷は、スラリコーティング法によって形成される従来のアルカリ金属電池で得ることは可能でなかった。これらの高い活性物質質量負荷は、電池システムを同じものと仮定して、従来実現されなかった非常に高い重量および体積エネルギー密度(例えば、本発明によるナトリウム金属電池の377Wh/kgおよび886Wh/L)をもたらした。
【0162】
実施例20:セル中で実現可能な活性材料重量百分率と、アルカリ金属電池セルの電気化学的性能へのその影響
アノードおよびカソードの活性材を合わせた重量が、パッケージングされた商用リチウム電池の総質量の最大約30%~50%を占めるので、活性材料単独の性能データからデバイスのエネルギーまたは電力密度を外挿するために係数30%~50%を使用しなければならない。したがって、硬質炭素とナトリウムニッケルマンガン酸化物との合計重量の300Wh/kgのエネルギー密度は、パッケージングされたセルの約90~150Wh/kgに換算される。しかし、この外挿は、市販の電極(炭素アノードの150μmまたは約15mg/cm、および遷移金属酸化物カソードの30mg/cm)のものと同様の厚さおよび密度を有する電極に対してのみ有効である。より薄いまたはより軽い同じ活性材料の電極は、セル重量に基づいてさらに低いエネルギーまたは電力密度を意味する。したがって、高い活性材料比率を有するアルカリ金属イオン電池セルを製造することが望ましい。残念ながら、大半の商用アルカリ金属イオン電池では、45重量%を超える総活性材料比率を実現することは従来可能でなかった。
【0163】
本発明による方法は、調べられた全ての活性材料に関してNa、KおよびNa/K電池がこれらの限界を十分に上回ることを可能にする。事実、本発明は、望みであれば活性材料比率を90%超に高めることを可能にする。しかし、典型的には45%~85%、より典型的には40%~80%、さらにより典型的には40%~75%、最も典型的には50%~70%である。その結果、ここで、同じアルカリ金属セルのエネルギー密度を簡単に2倍または3倍にするストラテジが得られる。これは非常に驚くべき非常に有用な発明である。
【0164】
Li、Na、およびK金属の二次電池に共通して関連するデンドライトの問題も、本発明の発泡性集電体ストラテジを使用することによって解決される。数百個のセルを調査したが、発泡性アノード集電体を有するセルでは、セパレータを通るデンドライトの貫通による故障は見つからなかった。本発明のナトリウムおよびカリウムセルからの試料のSEM試験により、多孔質アノード集電体の細孔壁に再堆積されたアルカリ金属表面は滑らかであり均一であるように見え、アノードに固体集電体(Cu箔)を有する対応するセルでしばしば観察されるような鋭利な金属堆積物または樹木状形態の徴候を示さないことが裏付けられた。これは、アノードでの発泡性集電体の高い比表面積に関連付けられるより低い交換電流密度と、繰り返される再充電手順中にアルカリ金属堆積を促す発泡構造でのより均一な局所電場とによるものであり得る。
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