(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】Si/Cコンポジット粒子の製造
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20220518BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220518BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 A
H01M4/38 Z
(21)【出願番号】P 2018545867
(86)(22)【出願日】2017-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2017054525
(87)【国際公開番号】W WO2017148871
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2018-10-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】102016203349.2
(32)【優先日】2016-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トレーゲル,デニス
(72)【発明者】
【氏名】パンティリック-ザイドル,イェレナ
【合議体】
【審判長】井上 猛
【審判官】土屋 知久
【審判官】佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-43547(JP,A)
【文献】特表2014-507050(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186742(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/205210(WO,A1)
【文献】特開2014-29833(JP,A)
【文献】特表2012-501951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/36-4/38
H01M4/58-4/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレコンポジット粒子を製造する方法であって、
ケイ素粒子、1つ以上の酸素不含有ポリマー、炭素改質に基づく1つ以上の炭素添加剤及び1つ以上の分散液を含む混合物を、噴霧乾燥によって乾燥させる方法であって、
前記ケイ素粒子は、元素ケイ素をベースとし、前記ケイ素粒子は、中央径d
50が100nm~30μmである体積加重粒径分布を有し、
前記酸素不含有ポリマーは、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニル芳香族化合物、多環芳香族化合物及び多環芳香族炭化水素から成る群から選択され、
前記1つ以上の炭素添加剤が、カーボンブラック、活性炭、非晶質炭素、硬質炭素、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン及びグラフェンから成る群から選択され、
プレコンポジット粒子は、プレコンポジット粒子の乾燥重量に基づき、3~90重量%の炭素添加剤を含
み、プレコンポジット粒子の体積加重粒子径分布の幅(d
90
-d
10
)/d
50
が1以下であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の炭素添加剤が、導電性カーボンブラック及び活性炭から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のプレコンポジット粒子を製造する方法。
【請求項3】
前記1つ以上の酸素不含有ポリマーが、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアニリン、ポリスチレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ピッチ及びタールを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプレコンポジット粒子の製造方法。
【請求項4】
Si/Cコンポジット粒子の製造方法であって、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法で得られるプレコンポジット粒子が熱処理され、
前記Si/Cコンポジット粒子の体積加重粒径分布の幅(d
90
-d
10
)/d
50
が1以下であることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー及びケイ素粒子を含む組成物の噴霧乾燥によるプレコンポジット粒子の製造方法、このようにして得ることができるプレコンポジット粒子、プレコンポジット粒子を熱処理することによるSi/Cコンポジット粒子の製造方法、このようにして得ることができるSi/Cコンポジット粒子並びにリチウムイオン電池用の、より詳細にはリチウムイオン電池の負極を製造するための電極材料でのこれの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
充電式リチウムイオン電池は現在、250Wh/kgまでの最大エネルギー密度を有する市販の電気化学エネルギー貯蔵品である。充電式リチウムイオン電池は、工具用の、及び例えば自転車又は自動車などの輸送手段用のポータブルエレクトロニクスの分野で、まず第一に利用されている。しかし、特に自動車での利用では、車両の範囲を拡張するために、電池のエネルギー密度をさらに大幅に上昇させる必要がある。
【0003】
実際に負極材料(「アノード」)として現在使用されているのは、まず第一にグラファイト炭素である。グラファイト炭素は、リチウム一次電池に使用されているリチウム金属と比較して、これの安定したサイクル特性及び明らかに高い取り扱い信頼性のために注目に値する。リチウムの挿入及び放出の間、グラファイト炭素は、LiC6の制限された化学量論に対して、例えば10%の領域における、わずかな体積変化しか受けない。しかし欠点は、理論的にはリチウム金属を用いて達成可能な電気化学容量のわずか約1/10に相当する、理論的には372mAh/gの、グラファイト炭素の比較的低い電気化学容量である。
【0004】
逆に、4199mAh/gのケイ素は、リチウムイオンについて最も高い既知の貯蔵容量を有する。不利なことに、ケイ素含有電極活物質は、リチウムによる充放電の間に、最大約300%の著しい体積変化を受ける。この体積変化は、活物質及び電極構造全体に大きな機械的応力を与え、この応力は、電解加工を通じて、電気的接触の損失、ひいては容量の損失を伴う電極の破壊をもたらす。さらに、使用されるケイ素アノード材料の表面は、電解質の構成成分と反応して、連続的に不動態化保護層(固体電解質界面(Solid Electrolyte Interface);SEI)を形成し、移動リチウムの不可逆的損失を生じる。
【0005】
Si含有アノードにおける活物質の激しい体積膨張及びSEIの形成に関連する問題を解決するために、例えばA.J.ApplebyによってJ.Power Sources 2007,163,pages 1003 to 1039に記載されているように、近年、Si含有電極活物質の電気化学的安定化に対する様々なアプローチが追求されている。多くの場合、ケイ素含有活物質は炭素と組み合わせて使用される。あるアプローチでは、EP1730800B1に教示されているように、グラファイトとの物理的混合物の形態のSi含有活物質が電極コーティングに挿入される。別のアプローチでは、M.Rossiによる総説J.Power Sources 2014,246,pages 167 to 177に要約されているように、ケイ素と炭素の2つの元素が構造的に組み合わされて、コンポジット材料を形成する。
【0006】
球状のマイクロスケール炭素粒子を製造するための常套的な一方法は、噴霧乾燥法である。この場合、糖、リグニン、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキシド又はレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂などの炭素前駆体(C前駆体)の溶液又は分散液を噴霧して液滴を形成し、次いで乾燥させて粒子を形成し、粒子のサイズ及び形状は、噴霧された液滴のサイズ及び形状に従う。生じた乾燥球状C前駆体粒子は、後続の炭化によって非晶質炭素の粒子に転化させることができる。したがって、JP1301717及びJP64043531は、噴霧工程の前又は間の、ポリアクリロニトリルの非溶媒としてのアルコールの混合を伴う、噴霧乾燥によるポリアクリロニトリルミクロスフェアの製造について記載している。WO-A08069633は、表面活性添加剤の存在下での炭素前駆体の噴霧乾燥を教示している。CN102723469から既知であるのは、フェノール樹脂などのポリマー樹脂及びグラファイトを含む混合物の噴霧乾燥である。
【0007】
他のアプローチは、C前駆体だけでなくケイ素ナノ粒子をさらに含む分散液を使用して噴霧乾燥を行う。例えばUS2011165468に、又はB.LiによってElectrochem.Comm.2014,49,pages 98 to 102に記載されているように、得られたプレコンポジット粒子の炭化により、Si/Cコンポジット粒子が生じる。F.Beguinは、Electrochimica Acta 2015,174,pages 361 to 368で、ポリビニルアルコールをC前駆体として使用する、該当する方法を記載している。H.Cuiは、Ceramics Int.2015(in press)で、フェノール樹脂と共にSiO2コートケイ素ナノ粒子を噴霧し、続いて粒子を炭化してSi/Cコンポジット粒子を形成することによる、多孔質Si/C複合材料の製造について記載している。結論として、SiO2コーティングはフッ化水素酸を用いてエッチングされる。
【0008】
最後に、炭素含有添加剤、酸素リッチC前駆体及びナノケイ素を含む噴霧乾燥のための分散液を使用する既知の手法もある。後続の炭化により、次いでSi/Cコンポジット粒子が得られる。F.Su(J.Mater Chem.A,2015,3,pages 5859 to 5865)は、グラファイト化ニードルコークスをナノケイ素及びスクロースと共に噴霧乾燥し、続いて炭化することについて記載している。F.Su(RSC Adv.2014,4,pages 43114 to 43120)は、導電性カーボンブラック、ナノケイ素及びスクロースを使用する同様の手法について記載している。Y.Yang(Electrochimica Acta 2015,178,pages 65 to 73)は、この目的のためにカーボンナノチューブ、ナノケイ素及びフェノールホルムアルデヒド樹脂を用いている。X.Hou(J.Power Sources 2014,248,pages 721 to 728)は、第1のナノケイ素をグラファイト及びクエン酸と共にC前駆体として噴霧乾燥する、Si/Cコンポジットを製造するための2段階方法について記載している。温度における処理後に乾燥の生成物にピッチをコーティングし、次いで噴霧乾燥し、最後に熱分解に供した。
【0009】
しかし、熱分解後にリチウムイオン電池の電極材料に好適なSi/Cコンポジット粒子をもたらし、特にこの目的のために望ましい粒径及び非常に狭い粒径分布を有する粒子の、ケイ素粒子を含有するポリマー及び分散液の噴霧乾燥による製造に関連して、引き続き問題がある。特に、分散液中に存在する一次粒子が、噴霧乾燥又は炭化が粒子の凝集、即ち、異なる一次粒子の合体を伴わずに、噴霧乾燥によって対応する粒状固形物に変換され、続いて炭化により対応するSi/Cコンポジット粒子に変換されることが望ましい。したがって、可能な限り、噴霧中に生成された各液滴は、乾燥中に別個の粒子に変換するべきである。従来の噴霧乾燥法では、一次粒子のかなりの凝集があり、これに応じて粒径が大きく、粒径分布が広い乾燥粒子が生じる。従来の噴霧乾燥生成物を炭化すると、工程中に粒子が焼結され得て、したがってこのステップにおいても望ましくない粒子凝集が起こり得て、慣習的に広い粒径分布を有する大型の粒子が形成される。望ましくないサイズの、即ち破壊的な過大又は過小粒子は、実際に篩過(sieving)又は分級することによって分離除去できる。しかし、この種の付加操作は、費用がかかり不便であり、廃棄物も生じる。リチウムイオン電池で使用する場合、粒径の大きいSi/Cコンポジット粒子は、このような粒子が電池内のアノード材料の層厚を超過し得て、そのため電池内の電極又はセパレータに突き刺さって電池の短絡を生じ得て、ゆえに電池の機能を終了させ得るため、致命的であり得る。この問題は、充電サイクル中に粒子中に存在するケイ素が被る極端な体積膨張によって大きくなり、結果として大きな粒子の体積が極端に増大する。全体として、いわゆる電解加工に関連する問題は全て、より大きな粒子を有するSi/Cコンポジット粒子の結果としてより顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許第1730800号明細書
【文献】特開平1-301717号公報
【文献】特開昭64-043531号公報
【文献】国際公開第2008/069633号
【文献】中国特許出願公開第102723469号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/165468号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】A.J.Appleby,J.Power Sources 2007,163,p.1003-1039
【文献】M.Rossi,J.Power Sources 2014,246,p.167-177
【文献】B.Li,Electrochem.Comm.2014,49,p.98-102
【文献】F.Beguin,Electrochimica Acta 2015,174,p.361-368
【文献】H.Cui,Ceramics Int.2015(印刷中)
【文献】F.Su,J.Mater Chem.A,2015,3,p.5859-5865)
【文献】F.Su,RSC Adv.2014,4,p.43114-43120)
【文献】Y.Yang,Electrochimica Acta 2015,178,p.65-73)
【文献】X.Hou,J.Power Sources 2014,248,p.721-728)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この背景に対して、目的は、熱処理又は炭化によって、未凝集又は最小凝集Si/Cコンポジット粒子が入手可能となる、未凝集又は最小凝集プレコンポジット粒子を提供することであった。費用のかかる不便な過大又は過小粒子の除去は、可能な限り回避すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、この目的は、酸素不含有ポリマー、炭素含有添加剤、及びケイ素粒子を含む混合物の噴霧乾燥並びに得られたプレコンポジット粒子の、その後の熱処理によるSi/Cコンポジット粒子への変換によって達成されている。本発明による特徴の組合せにより、リチウムイオン電池に望まれる粒径及び粒径分布を有するSi/Cコンポジット粒子が入手可能となっている。予期しないことに、本発明のSi/Cコンポジット粒子を用いて、電池の最初の充放電サイクルにおいて比較的高いクーロン効率又は比較的低い初期の不可逆的な可動リチウムの損失を有するリチウムイオン電池を得ることができる。
【0014】
本発明の1つの主題は、プレコンポジット粒子を製造する方法であって、
ケイ素粒子、1つ以上の酸素不含有ポリマー、炭素改質に基づく1つ以上の炭素添加剤(C添加剤)及び1つ以上の分散液を含む混合物を、噴霧乾燥によって乾燥させることを特徴とする方法である。
【0015】
本発明のさらなる主題は、上述の方法によって得ることができる生成物(プレコンポジット粒子)である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、得られた粉末のSEM画像を示す(倍率2500倍)。
【
図2】
図2の生成物のSEM画像(倍率7500倍)は、凝集マイクロスケールボールの形態のC粒子を示す。
【
図3】
図3の生成物のSEM画像(倍率30,000倍)は、内部にナノSi粒子を含有する凝集マイクロスケール炭素ボールの形態のコンポジット粒子を示す。
【
図4】
図4の生成物のSEM画像(倍率75000倍)は、内部にグラファイト粒子及びナノSi粒子を含有する未凝集マイクロスケールSi/Cコンポジット粒子を示す。
【
図5】
図5のSEM画像(倍率30,000倍)は、粒子の炭素コーティング表面を示す。
【
図6】
図6のSEM画像(倍率7500倍)は、酸素不含有ポリマーで完全に被覆された未凝集マイクロスケールプレコンポジット粒子を示す。
【
図7】
図7の関連する断面(倍率7500倍)は、プレコンポジット粒子内の成分の均一な分布を示す。
【
図8】
図8の生成物のSEM画像(倍率1500倍)は、内部にグラファイト粒子及びナノSi粒子を含有する未凝集マイクロスケールSi/Cコンポジット粒子を示す。
【
図9】
図9は、断面(倍率1500倍)における成分の均一な分布及び炭素による完全な包囲を示す。
【
図10】
図10の生成物のSEM画像(倍率1500倍)は、内部にグラファイト粒子及びナノSi粒子を含有する未凝集マイクロスケールSi/Cコンポジット粒子を示す。
【
図11】
図11は、炭素を有する粒子の完全包囲を示す(倍率30,000倍)。
【
図12】
図12の生成物のSEM画像(倍率1500倍)は、内部に導電性カーボンブラック粒子及びナノSi粒子を含有する凝集マイクロスケールSi/Cコンポジット粒子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
プレコンポジット粒子は、一般に、ケイ素粒子、C添加剤、及び酸素不含有ポリマーの凝集体である。本発明によるこれの製造のために、プレコンポジット粒子中のケイ素粒子及びC添加剤は、一般に、酸素不含有ポリマーによって全体的又は部分的に包囲されている。プレコンポジット粒子の表面は、酸素不含有ポリマーによって好ましくは全体的又は部分的に、より好ましくは実質的に形成される。これらの構造的特徴に照らして、本発明のプレコンポジット粒子が本発明の目的を達成したことは、特に酸素不含有ポリマーもバインダー特性を有するため、なお一層驚きであった。ケイ素粒子、酸素不含有ポリマー及びC添加剤の単なる物理的混合によって、又は本発明の混合物の本発明によらない乾燥によって、逆に、本発明による構造を有する、特に本発明により得られたプレコンポジット粒子中の酸素不含有ポリマーの本発明によって得られた分布を有する、プレコンポジット粒子を得ることは不可能である。
【0018】
酸素不含有ポリマーは、一般に、これの実験化学式において酸素を含まない。酸素不含有ポリマーは、アルコキシ(例えばエーテル、アセタール)、ヒドロキシル(アルコール)、オキソ(ケトン)、ホルミル(アルデヒド)、カルボキシル(カルボン酸)、金属カルボキシラト(カルボン酸塩)、アルキルオキシカルボニル(エステル)、ハロホルミル(カルボニルハライド)、カルバモイル(カルボキサミド)、カルバメート(ウレタン)、スルホナト(スルホン酸)、金属スルホナト(スルホン酸塩)、無水物又はシロキサン基などの酸素含有官能基を持たない、例えば架橋、分枝及び特に直鎖ポリマーであり得る。
【0019】
酸素不含有ポリマーの例は、ポリアクリロニトリル;ポリオレフィン、例えばポリエチレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー;ポリハロゲン化ビニル、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン又はポリテトラフルオロエチレン;ポリビニル芳香族化合物又は多環芳香族化合物、例えばポリアニリン、ポリスチレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリピロール、ポリパラフェニレン;多環芳香族炭化水素、例えばピッチ又はタール、特にメソゲン性ピッチ、メソフェーズピッチ、石油ピッチ及び硬質コールタールピッチである。好ましい酸素不含有ポリマーは、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン及びポリスチレンである。ポリアクリロニトリルが特に好ましい。
【0020】
酸素不含有ポリマーは、一般に、熱処理によって導電性炭素構造体に変換することができる。
【0021】
プレコンポジット粒子は、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、最も好ましくは85重量%以下の程度までの酸素不含有ポリマーを主成分とする。プレコンポジット粒子は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、最も好ましくは15重量%以上の程度までの酸素不含有ポリマーを主成分とする。重量%の上記数値は、それぞれの場合において、プレコンポジット粒子の乾燥重量に基づく。
【0022】
好ましいC添加剤は、(導電性)カーボンブラック、活性炭、非晶質炭素、熱分解炭素、軟質炭素、硬質炭素、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン及びグラフェンを含む群から選択される。特に好ましいC添加剤は、導電性カーボンブラック及び活性炭である。
【0023】
プレコンポジット粒子は、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、最も好ましくは80重量%以下の程度までのC添加剤を主成分とする。プレコンポジット粒子は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、最も好ましくは7重量%以上の程度までのC添加剤を主成分とする。重量%の上記数値は、それぞれの場合において、プレコンポジット粒子の乾燥重量に基づく。
【0024】
ケイ素粒子は、元素ケイ素、酸化ケイ素又は二元、三元若しくは多元ケイ素/金属合金(例えばLi、Na、K、Sn、Ca、Co、Ni、Cu、Cr、Ti、Al、Feを有する)からなり得る。元素ケイ素の使用が好ましいのは、特に有利にリチウムイオンの高い貯蔵容量を有するためである。
【0025】
元素ケイ素とは、一般に、低比率の異質原子(例えばB、P、As)を有する高純度多結晶シリコン、異種原子(例えばB、P、As)で特異的にドープしたケイ素だけでなく、元素不純物(例えばFe、Al、Ca、Cu、Zr、C)を含み得る、冶金処理によるケイ素も示す。
【0026】
ケイ素粒子が酸化ケイ素を含む場合、酸化物SiOxの化学量論は、好ましくは0<x<1.3の範囲である。ケイ素粒子がより高い化学量論を有する酸化ケイ素を含む場合、ケイ素粒子の表面の層厚は好ましくは10nm未満である。
【0027】
ケイ素粒子がアルカリ金属Mと合金化されている場合、合金MySiの化学量論は、好ましくは0<y<5の範囲にある。ケイ素粒子は、任意にプレリチウム化されていてもよい。ケイ素粒子がリチウムと合金化されている場合、合金LizSiの化学量論は、好ましくは0<z<2.2の範囲である。
【0028】
80モル%以上のケイ素及び/又は20モル%以下の異種原子、非常に好ましくは10モル%以下の異種原子を含有するケイ素粒子が特に好ましい。
【0029】
ケイ素粒子の表面は、任意に、酸化物層によって、又は他の有機及び無機基によって被覆されていてよい。特に好ましいケイ素粒子は、表面上にSi-OH基若しくはSi-H基又は共有結合した有機基、例えばアルコール又はアルケンを有する。有機基を介して、例えばケイ素粒子の表面張力を制御することができる。したがって、表面張力を細粒の製造又は電極コーティングの製造において使用される溶媒又は結合剤に適合させることができる。
【0030】
噴霧乾燥の前に、ケイ素粒子は、中央径d50が好ましくは50nm~50μm、より好ましくは100nm~30μm、最も好ましくは150nm~20μmである体積加重粒径分布を有する。
【0031】
体積加重粒径分布は、Fraunhoferモデル又はMieモデルを用い、Horiba LA 950機器を使用して、ケイ素粒子の分散媒としてエタノール又はイソプロパノールを用いる、静的レーザ散乱によって求めることができる。
【0032】
ケイ素粒子は、好ましくは未弱凝集であり、より詳細には未凝集である。
【0033】
凝集とは、例えばケイ素粒子の製造のために最初に気相操作で形成された種類の球状又は大部分が球状の一次粒子が、気相操作における反応のさらなる過程で合体し、このように凝集体を形成することを意味する。反応のさらなる過程において、これらの凝集体は弱凝集体を形成し得る。
【0034】
弱凝集体は、共有化学結合のない一次粒子又は凝集体の塊である。ある場合には、弱凝集体は、混練及び分散工程によって分割されて凝集体に戻り得るが、このことは不可能であることが多い。凝集体は、これらの工程によって全く又は部分的にしか一次粒子に分解することができない。凝集体又は弱凝集体の形態のケイ素粒子の存在は、例えば従来の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて視覚化され得る。逆に、粒径分布を求めるための静的光散乱法によって、凝集体又は弱凝集体を区別することはできない。
【0035】
ケイ素粒子の真球度は、好ましくは0.3≦ψ≦1、より好ましくは0.4≦ψ≦1、最も好ましくは0.5≦ψ≦1である。真球度ψは、物体の実際の表面に対する等体積の球の表面積の比である(Wadellによる定義)。真球度は、例えば従来のSEM顕微鏡写真から求められ得る。
【0036】
ケイ素粒子は、好ましくは、バルク材料のある特性を有する。バルク材料の特性は、例えば、「Federation Europeenne de la Manutention」の国際標準FEM2.581に記載されている。標準FEM2.582は、バルク材料の分類に関してバルク材料の一般的及び特定の特性を定義している。材料の一貫性及び状態を記載する特性値は、例えば、粒子形状及び粒径分布(FEM2.581/FEM2.582:General characteristics of bulk products with regard to their classification and their symbolization(バルク製品の等級及びその象徴ごとのバルク製品の一般的な特性))である。
【0037】
DIN ISO 3435に従って、バルク材料は粒子エッジの特性に応じて6つの異なる粒子形状にさらに分けることができる:
I:三次元でほぼ等しい広がりを有する鋭いエッジ(例えば立方体);
II:鋭いエッジであって、この1つが他の2つよりも著しく長いエッジ(例えば角柱、ブレード);
III:鋭いエッジであって、この1つが2つの他よりも著しく小さいエッジ(例えばプレート、フレーク);
IV:三次元でほぼ等しい広がりを有する丸まったエッジ(例えば球);
V:一方の方向が他の2つの方向よりもはるかに大きく丸まったエッジ(例えば、円筒、ロッド);
VI:繊維状、糸状、カール状、絡み合っている。
【0038】
ケイ素粒子は、好ましくは、DIN ISO 3435に従ってI~VI、より好ましくはI、II、III又はIV、特に好ましくはI又はIVの粒子形状を有する。
【0039】
プレコンポジット粒子は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下、最も好ましくは40重量%以下の程度までのケイ素粒子を主成分とする。プレコンポジット粒子は、好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上、最も好ましくは7重量%以上のケイ素粒子を主成分とする。重量%の上記数値は、それぞれの場合において、プレコンポジット粒子の乾燥重量に基づく。
【0040】
ケイ素粒子は、例えば蒸着法によって、又は好ましくは粉砕操作によって製造することができる。
【0041】
検討される粉砕操作は、乾式又は湿式粉砕操作である。これらは、好ましくはカウンタジェットミル又はインパクトミル、遊星ボールミル又は撹拌ボールミルなどのジェットミルを使用して行われる。ジェットミルは、好ましくは、静的若しくは動的設計であり得るか、又は外部の気流式分級器を備えた回路で操作される、一体型気流式分級器を有する。
【0042】
湿式粉砕は、一般に、有機又は無機の分散媒を用いた懸濁液中で行う。好ましい分散媒は、以下にさらに説明する分散液である。
【0043】
湿式粉砕では、粒径体積分布に基づいて、導入された粉砕材料の直径の90%パーセンタイルd90の10~1000倍の平均直径を有する粉砕媒体を使用することが好ましい。粉砕媒体の初期分布のd90の20~200倍の平均直径を有する粉砕媒体が特に好ましい。
【0044】
分散液として、有機及び/又は無機溶媒を使用することが可能である。2つ以上の分散液の混合物も使用することができる。
【0045】
無機溶媒の一例は水である。
【0046】
有機溶媒は、例えば炭化水素、エーテル、エステル、窒素官能性溶媒、硫黄官能性溶媒、又はアルコールである。有機溶媒は、好ましくは1~12個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子を含有する。アルコールの例は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びベンジルアルコールである。炭化水素は、例えば脂肪族又は芳香族、置換又は非置換であり得る。炭化水素の例は、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びトリクロロエチレンなどの塩素化炭化水素;ペンタン、n-ヘキサン、ヘキサン異性体混合物、ヘプタン、オクタン、洗浄ベンジン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの非置換炭化水である。エーテルの例は、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテルである。エステルの例は、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸プロピル、酪酸エチル及びイソ酪酸エチルである。窒素官能性溶媒の例は、ニトロベンゼン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン及びN-エチル-2-ピロリドンである。硫黄官能性溶媒の例は、ジメチルスルホキシドである。好ましい溶媒は、エタノール及び2-プロパノール、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド又はこれらの溶媒の混合物である。
【0047】
分散液は、一般に室温で液状であり、好ましくは100mPas以下、より好ましくは10mPas以下の20℃における粘度を有する。分散液は、好ましくは不活性であるか、又はケイ素に対する反応性が低い。
【0048】
噴霧乾燥に使用される混合物は、好ましくは、5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、最も好ましくは20重量%以上の分散液を含有する。混合物は、好ましくは、99重量%以下、より好ましくは98.5重量%以下、最も好ましくは98重量%以下の分散液を含有する。重量%の上記数値は、それぞれの場合において、噴霧乾燥に使用される混合物の乾燥重量に基づく。
【0049】
混合物は、1つ以上のアジュバントを含み得る。アジュバントの例は、金属(例えば銅、ジルコニウム)、酸化物、炭化物又は窒化物を主成分とする不活性材料である。
【0050】
プレコンポジット粒子は、プレコンポジット粒子の乾燥重量に対して、好ましくは0~30重量%、より好ましくは1~25重量%、最も好ましくは2~20重量%の程度までのアジュバントを主成分としている。好ましい代替的な一実施形態において、プレコンポジット粒子はアジュバントを含有していない。
【0051】
混合物は、例えば細孔形成剤、流動制御剤、ドーパント又は電池中の電極の電気化学的安定性を改善する物質などの1つ以上の添加剤も含み得る。好ましい添加剤は細孔形成剤である。一般的な細孔形成剤が使用され得る。
【0052】
プレコンポジット粒子は、プレコンポジット粒子の乾燥重量に対して、好ましくは0~50重量%、より好ましくは1~40重量%、最も好ましくは2~30重量%の程度までの添加剤を主成分としている。好ましい代替的な一実施形態において、プレコンポジット粒子は添加剤を含有しない。
【0053】
プレコンポジット粒子は、好ましくは、プレコンポジット粒子の単離粒子又は緩い弱凝集体の形態で得られるが、一般にプレコンポジット粒子の凝集体の形態ではない。プレコンポジット粒子のいずれの弱凝集体も、例えば混練工程又は分散工程を使用して、個々のプレコンポジット粒子に分離することができる。プレコンポジット粒子を破壊せずに、プレコンポジット粒子の凝集体をこのようにして個々の粒子に分離することはできない。
【0054】
プレコンポジット粒子は、好ましくは球状であるが、スライバー形状を有していてもよく、又は中空球体の形態であってもよく、特に中実球状粒子が好ましい。
【0055】
プレコンポジット粒子の真球度は、好ましくは0.3≦ψ≦1、より好ましくは0.5≦ψ≦1、最も好ましくは0.8≦ψ≦1である。真球度ψは、物体の実際の表面に対する等体積の球の表面積の比である(Wadellによる定義)。真球度は、例えば従来のSEM顕微鏡写真から求められ得る。
【0056】
プレコンポジット粒子の直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布は、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、最も好ましくは20μm以下、しかし好ましくは1μm以上である。
【0057】
プレコンポジット粒子の粒径分布は、二峰性又は多峰性であってもよく、好ましくは単峰性であり、より好ましくは狭い。プレコンポジット粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは1.5以下、より好ましくは1以下、最も好ましくは0.9以下の幅(d90-d10)/d50を有する。
【0058】
プレコンポジット粒子の体積加重粒径分布は、Mieモデルを用い、Horiba LA 950機器を使用して、プレコンポジット粒子の分散媒としてエタノールを用いる、静的レーザ散乱によって求めた。
【0059】
プレコンポジット粒子は、通例、好ましくは1~300m2/g、より好ましくは2~250m2/g、最も好ましくは5~200m2/gのBET表面積を有する(DIN ISO 9277:2003-05に従って測定)。
【0060】
噴霧乾燥に使用される混合物は、これらの個々の構成成分の任意の所望の混合によって製造され得る。混合は、いかなる特定の手順にも拘束されない。酸素不含有ポリマー、C添加剤及びケイ素粒子は、共に又は連続して分散液に混合され得る。最初に、好ましくは、酸素不含有ポリマーを分散液と混合した後、C添加剤及びケイ素粒子を共に又は別々に、同時に又は連続して添加する。
【0061】
酸素不含有ポリマーは、好ましくは分散液に溶解されている。好ましくは、少なくとも1gの酸素不含有ポリマーを20℃の分散液100mLに溶解することができる。ケイ素粒子及びC添加剤は、通例、分散液中に分散されている。
【0062】
混合は、例えばロータ-ステータ装置、高エネルギーミル、遊星ミキサ、混練装置、磁気攪拌機、撹拌ボールミル、振動プレート、ディゾルバ、Ultraturrax装置、ローラーベッド又は超音波装置などの通常の混合装置中で行われ得る。超音波を用いてもよい。
【0063】
噴霧乾燥は、目的のために一般的であるシステムにおいて、それ自体一般的である条件下にて行うことができる。噴霧乾燥システムにおける噴霧は、例えば、単流体、二流体若しくは多流体ノズルを使用して又は回転ディスクを用いて実施され得る。噴霧乾燥システムへの乾燥のための混合物の入口温度は、好ましくは、乾燥される混合物の沸点以上であり、より好ましくは、乾燥される混合物の沸騰温度より10℃以上高い。例えば、入口温度は、好ましくは80℃~220℃であり、より好ましくは100℃~180℃である。出口温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、最も好ましくは50℃以上である。一般に、出口温度は30℃~100℃、好ましくは45℃~90℃の範囲である。噴霧乾燥システムにおける圧力は、好ましくは周囲圧力である。
【0064】
乾燥は、周囲空気中、合成空気中、又は好ましくは不活性ガス雰囲気、例えば窒素又はアルゴン雰囲気中で行われ得る。特に、分散液として有機溶媒を使用する場合、不活性ガスの使用が好ましい。
【0065】
噴霧乾燥システムにおいて、噴霧された混合物は、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~50μm、最も好ましくは5~20μmの一次液滴径を有する。
【0066】
入口温度、ガス流量及び圧送速度(供給量)の設定、ノズル、アスピレータの選択、分散液の選択、あるいは噴霧分散液の固形分濃度の選択によって、それ自体既知の方法で、一次粒子の大きさ、生成物中の残留水分、及び生成物の収率を調整することができる。例えば、噴霧懸濁液のより高い固形分濃度において、より大きな粒径を有する一次粒子が得られる。ガス流量は、粒径にも影響する。微粒子には高いガス流量が好ましく、より大きい粒子には低いガス流量が好ましい。ガス流量は、好ましくは84~820L/h、より好ましくは350~600L/hである。ガス流はアスピレータによって流動化され、これにより循環される。アスピレータは、例えば、0~35m3/hに設定することができ、20~35m3/hの流動化が好ましい。
【0067】
噴霧乾燥によって得たプレコンポジット粒子は、様々な一般的な方法で、例えばフィルタ、篩過(sifting)などの分級法、又は好ましくはサイクロンによってガス流から分離することができる。
【0068】
残留水分を除去するために、プレコンポジット粒子を任意にさらに乾燥させてよいか、又は直接さらに利用してよい。
【0069】
本発明のさらなる主題は、Si/Cコンポジット粒子を製造する方法であって、該方法は
ケイ素粒子、1つ以上の酸素不含有ポリマー、炭素変性に基づく1つ以上のC添加剤及び1つ以上の分散液を含む混合物を噴霧乾燥によって乾燥させ、
このようにして得られたプレコンポジット粒子を熱処理することを特徴とする。
【0070】
本発明のさらなる主題は、上述の方法によって得ることができるSi/Cコンポジット粒子である。
【0071】
熱処理は、プレコンポジット粒子をSi/Cコンポジット粒子に変換する。プレコンポジットの熱処理は、一般に酸素不含有ポリマーを炭化する効果を有する。この手順において、酸素不含有ポリマーは、好ましくは無機炭素に変換される。酸素不含有ポリマーを炭化する場合の炭素収率は、酸素不含有ポリマーの総重量に対して、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、最も好ましくは25%以上である。Si/Cコンポジット粒子中の炭素は、結晶質又は非晶質であってよく、結晶質及び非晶質構成成分の混合物も含んでよい。
【0072】
Si/Cコンポジット粒子の本発明の製造のために、この中のケイ素粒子及びC添加剤は、一般に、全体的又は部分的に炭素に埋め込まれる。Si/Cコンポジット粒子の表面は、好ましくは、全体的又は部分的に、より好ましくは実質的に炭素からなる。ケイ素粒子、酸素不含有ポリマー及びC添加剤の単なる物理的混合によって、又は本発明の混合物の本発明によらない乾燥及び後続の炭化によって、逆に、本発明による構造を有する、特に本発明により得られたSi/Cコンポジット粒子中の炭素の分布を有する、Si/Cコンポジット粒子を得ることは不可能である。
【0073】
Si/Cコンポジット粒子は、好ましくは、Si/Cコンポジット粒子の単離粒子又は緩い弱凝集体の形態で得られるが、一般にSi/Cコンポジット粒子の凝集体の形態ではない。Si/Cコンポジット粒子のいずれの弱凝集体も、例えば混練工程又は分散工程によって、個々のSi/Cコンポジット粒子に分離することができる。Si/Cコンポジット粒子を破壊せずに、Si/Cコンポジット粒子の凝集体をこのようにして個々の粒子に分離することはできない。
【0074】
本発明のSi/Cコンポジット粒子は、酸素含有ポリマーを使用して製造された類似のSi/Cコンポジット粒子と比較して、電池の最初の充放電サイクルにおいて、より高いクーロン効率又はより低い初期の不可逆的な可動リチウムの損失を有する、リチウムイオン電池をもたらす。したがって、本発明のSi/Cコンポジット粒子は必然的に、このような従来のSi/Cコンポジット粒子とは構造的に異なる。
【0075】
Si/Cコンポジット粒子は、好ましくは球状であるが、スライバー形状を有していてもよく、又は中空球体の形態であってもよく、特に中実球状粒子が好ましい。
【0076】
Si/Cコンポジット粒子の真球度は、好ましくは0.3≦ψ≦1、より好ましくは0.5≦ψ≦1、最も好ましくは0.8≦ψ≦1である。真球度ψは、物体の実際の表面に対する等体積の球の表面積の比である(Wadellによる定義)。真球度は、例えば従来のSEM顕微鏡写真から求められ得る。
【0077】
Si/Cコンポジット粒子は、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、最も好ましくは6μm以上の直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布を有する。Si/Cコンポジット粒子は、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、非常に好ましくは36μm以下、最も好ましくは20μm以下のd50値を有する。
【0078】
Si/Cコンポジット粒子の粒径分布は、二峰性又は多峰性であってもよく、好ましくは単峰性、より好ましくは狭い。Si/Cコンポジット粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下、非常に好ましくは1以下、最も好ましくは0.9以下の幅(d90-d10)/d50を有する。
【0079】
Si/Cコンポジット粒子の体積加重粒径分布は、Mieモデルを用い、Horiba LA 950機器を使用して、Si/Cコンポジット粒子の分散媒としてエタノールを用いる、静的レーザ散乱によって求めた。
【0080】
Si/Cコンポジット粒子は、好ましくは多孔性である。Si/Cコンポジット粒子は、好ましくは60nm以上、より好ましくは100nm以上、最も好ましくは200nm以上の孔径を有する細孔を含む。細孔は、好ましくは1400nm以下、より好ましくは700nm以下、最も好ましくは400nm以下の孔径を有する(測定方法:走査型電子顕微鏡法(SEM))。
【0081】
特に好ましくは、細孔内にケイ素粒子が位置する。細孔内に位置するケイ素粒子の割合は、Si/Cコンポジット粒子中のケイ素粒子の総数に対して、好ましくは5%以上、より好ましくは20%以上、最も好ましくは50%以上である(測定方法:走査型電子顕微鏡法(SEM))。
【0082】
Si/Cコンポジット粒子は、好ましくは5~50重量%、より好ましくは10~40重量%、最も好ましくは20~40重量%の程度までのケイ素;好ましくは50~95重量%、より好ましくは60~85重量%、最も好ましくは60~80重量%の炭素を主成分とする。さらに、例えばケイ素粒子上の未変性SiO2層の形態で、例えば20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の酸素含有量が存在し得る。Si/Cコンポジット粒子中の窒素のある量が有利であり、例えば0.5~10重量%、より好ましくは2~5重量%の量である。窒素は、好ましくは複素環として、例えばピリジン単位又はピロール単位(N)として化学的に結合した形態でここに存在する。記載した主構成成分に以外に、例えばLi、Fe、Al、Cu、Ca、K、Na、S、Cl、Zr、Ti、Pt、Ni、Cr、Sn、Mg、Ag、Co、Zn、B、P、Sb、Pb、Ge、Bi、レアアースなどの意図的な添加又は偶発的な不純物の形態で存在する、さらなる化学元素も存在してよく、この量は好ましくは1重量%以下、より好ましくは100ppm以下である。重量%の上記数値は、それぞれの場合において、Si/Cコンポジット粒子の乾燥重量に基づく。
【0083】
プレコンポジット粒子の熱処理において無機炭素に変換されるポリマーは、Si/Cコンポジット粒子の総重量に対して、Si/Cコンポジット粒子中に、好ましくは3重量%以下の酸素、より好ましくは2重量%以下の酸素、最も好ましくは1重量%以下の酸素を導入する。プレコンポジット粒子の熱処理において無機炭素に変換されるポリマーは、好ましくは酸素不含有ポリマーである。酸素不含有ポリマーを使用した結果、ポリマーによって導入される追加の酸素の量は最小限である。
【0084】
プレコンポジット粒子の熱処理は、好ましくは400~1400℃、より好ましくは700~1200℃、最も好ましくは900~1100℃の温度で行われる。
【0085】
熱処理は、例えば管状炉、回転式管状炉又は流動床反応器内で行われ得る。反応器の種類を選択することによって、反応媒体の炭化を静的に又は連続的混合によって行うことができる。
【0086】
熱処理は、好気性条件又は嫌気性条件下で行われ得る。例えば、酸素含有雰囲気中で300℃以下の温度で第1の熱処理が、不活性ガス雰囲気中で300℃を超える温度で第2の熱処理が行われ得る。熱処理は、好ましくは不活性ガス雰囲気、例えば窒素又はアルゴン雰囲気中で行われる。不活性ガス雰囲気は、任意に、わずかな水素などの還元性ガスをさらに含んでもよい。好ましくは、熱処理は嫌気的に実施される。不活性ガス雰囲気は、反応媒体上で静止していてもよく、又はガス流の形態で反応混合物上を流れてもよい。この場合の流量は、特にプレコンポジット粒子2~150gの炭化又は反応器容積7000~11000cm3の場合、好ましくは1リットル/分、より好ましくは100~600mL/分、最も好ましくは200~250mL/分である。反応混合物を加熱する際の加熱速度は、好ましくは1~20℃/分、より好ましくは1~15℃/分、非常に好ましくは1~10℃/分、最も好ましくは3~5℃/分である。さらに、異なる中間温度及び中間加熱速度を用いる段階的操作も可能である。目標温度に到達したとき、反応混合物は慣習的に一定時間温度で調整されるか、又はその後直ちに冷却される。保持時間は、例えば30分~24時間、好ましくは1~10時間、より好ましくは2~3時間が有利である。冷却は、能動的に又は受動的に、均一に又は段階的に行われ得る。
【0087】
得られたSi/Cコンポジット粒子は、該コンポジット粒子のさらなる利用に直ちに供給されてもよく、又は、粉砕若しくは篩過(sieving)によって最初に機械的に後処理されてもよく、又は分級技術(篩過(sieving)、篩過(sifting))によって過大又は過小粒子から除去され得る。好ましくは、分級の機械的後処理は省略され、より詳細には、粉砕、篩過(sieving)又は篩過(sifting)は省略される。
【0088】
Si/Cコンポジット粒子は、電極材料の製造に使用することができる。又は、Si/Cコンポジット粒子の表面は、1つ以上のコーティングを施すことによって、例えば、より詳細には炭素コーティングを施すことによって、最初に改質してもよい。続いて、このように改質したSi/Cコンポジット粒子も電極材料の製造に使用され得る。
【0089】
本発明のさらなる主題は、リチウムイオン電池用電極材料における、より詳細にはリチウムイオン電池の負極を製造するためのSi/Cコンポジット粒子の使用である。
【0090】
Si/Cコンポジット粒子は、リチウムイオン電池の電極材料のケイ素成分として使用することができる。この種のリチウムイオン電池は、例えばWO2015/117838に記載されているように製造され得る。
【0091】
驚くべきことに、本発明による方法により、所望の粒径及び所望の狭い粒径分布を有するSi/Cコンポジット粒子を得ることができる。このようにして、球状でマイクロスケールの未凝集及び/又は未焼結Si/Cコンポジット粒子を入手できる。したがって、費用がかかり不便な過大粒子又は過小粒子の除去の必要はない。このようにして、有利には、細孔がリチウムイオン電池の充放電の過程でケイ素の体積変化を緩衝する能力を有する、多孔性Si/Cコンポジット粒子を得ることも可能である。Si/Cコンポジット粒子は、有利には、リチウムイオン電池用のアノード活物質にさらに加工することができる。予期しないことに、本発明のSi/Cコンポジット粒子を用いて、電池の最初の充放電サイクルにおいてより高いクーロン効率又はより低い初期の不可逆的な可動リチウムの損失を有するリチウムイオン電池を得ることができる。Si/Cコンポジット粒子の粒子構造及び粒径は、リチウムイオン電池用のアノード活物質における該粒子の加工及び電気化学的性能にとって重要である。
【実施例】
【0092】
以下の実施例は、本発明のさらなる解明に役立つ。
【0093】
得られたSi/Cコンポジットのキャラクタリゼーションに使用した分析方法及び機器は以下の通りであった:
走査型電子顕微鏡法(SEM/EDX):
顕微鏡による検討は、Zeiss Ultra 55走査型電子顕微鏡及びINCA x-sightエネルギー分散型X線分光計を用いて行った。検討の前に、Baltec SCD500スパッタ/炭素コーティングユニットを使用して、帯電現象を防止するために試料を炭素で蒸気コーティングした。図に示すSi/Cコンポジット粒子の断面は、6kVにてLeica TIC 3Xイオンカッターを使用して製造した。
【0094】
無機分析/元素分析:
実施例で報告されたC含有量は、Leco CS 230アナライザを用いて測定した。O含有量並びに必要に応じてN及びH含有量を測定するために、Leco TCH-600分析装置を用いた。Si/Cコンポジット粒子中の他の報告された元素の定性的及び定量的測定は、ICP(誘導結合プラズマ)放出分光法(Perkin Elmer製のOptima 7300 DV)によって行った。この分析では、試料をマイクロ波(Anton Paar製のMicrowave 3000)にて酸消化(HF/HNO3)に供した。ICP-OES測定は、酸性水溶液の調査に用いられている、ISO 11885「Water quality-Determination of selected elements by inductively coupled plasma optical emission spectrometry(ICP-OES)(ISO 11885:2007);EN ISO 11885:2009のドイツ語版」に基づく。
【0095】
粒径の測定:
本発明の目的のために、Horiba LA 950を用いた静的レーザ散乱によって、ISO 13320に従って粒径分布を測定した。ここで試料を調製する際には、個々の粒子ではなく弱凝集体の大きさを測定しないように、測定溶液中の粒子の分散に特に注意する必要がある。この目的のために、Si/Cコンポジット粒子をエタノール中に分散させ、測定前に、分散液をLS24d5 sonotrodeを有するHielscher UIS250v実験用超音波装置にて250W超音波を用いて4分間処理した。
【0096】
[実施例1]
(比較)
PANの噴霧乾燥:凝集PAN繊維の形成:
ポリアクリロニトリル(PAN)12.5gを室温にてジメチルホルムアミド(DMF)500mlに溶解した。得られた分散液をB-295不活性ループ及びB-296除湿器(BUCHI GmbH)(ノズルチップ0.7mm;ノズルキャップ1.4mm;ノズル温度130℃;N2ガス流量約40;アスピレータ100%;ポンプ20%)を備えた、タイプB-290型実験用噴霧乾燥機(BUCHI GmbH)を用いて噴霧及び乾燥した。
【0097】
図1は、得られた粉末のSEM画像を示す(倍率2500倍)。生成物は無色であり、ナノスケールPAN繊維の繊維状コイル及びまた個々の変形PANボールからなっていた。
【0098】
[実施例2]
(比較)
PANの噴霧乾燥及び凝集C粒子の製造:
ポリアクリロニトリル(PAN)1.5gを室温にてジメチルホルムアミド(DMF)100mlに溶解した。得られた分散液をB-295不活性ループ及びB-296除湿器(BUCHI GmbH)(ノズルチップ0.7mm;ノズルキャップ1.4mm;ノズル温度130℃;N2ガス流量約30;アスピレータ100%;ポンプ20%)を備えた、タイプB-290型実験用噴霧乾燥機(BUCHI GmbH)を用いて噴霧及び乾燥した。無色粉末を得た。
【0099】
この粉末のうち647mgを溶融石英ボート(QCS GmbH)に入れ、不活性ガスとしてアルゴン/H2を用いるタイプNプローブ素子を含む、カスケード調整を使用する3ゾーン管状炉(TFZ12/65/550/E301;Carbolite GmbH)内で炭化した:初期加熱速度10℃/分、温度300℃、保持時間90分、Ar/H2流量200ml/分;次いで直ちに、加熱速度10℃/分、温度1000℃、保持時間3時間、Ar/H2流量200ml/分で継続した。冷却後、黒色粉末173mgを得た(収率27%)。
【0100】
図2の生成物のSEM画像(倍率7500倍)は、凝集マイクロスケールボールの形態のC粒子を示す。
【0101】
[実施例3]
(比較)
凝集Si/Cコンポジット粒子の製造:
ポリアクリロニトリル(PAN)12.0gを室温にてジメチルホルムアミド(DMF)800mlに溶解した。このPAN溶液中に、超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル:0.9;持続時間30分)によって、ケイ素ナノ粉末懸濁液8.6g(エタノール中20.3%;ケイ素1.75gに相当)を分散させた。得られた分散液をB-295不活性ループ及びB-296除湿器(BUCHI GmbH)(ノズルチップ0.7mm;ノズルキャップ1.4mm;ノズル温度130℃;N2ガス流量約30;アスピレータ100%;ポンプ20%)を備えた、タイプB-290型実験用噴霧乾燥機(BUCHI GmbH)を用いて噴霧及び乾燥した。褐色粉末11.1gを得た(収率80%)。
【0102】
得られたSi/PANプレコンポジット10.6gを溶融石英ボート(QCS GmbH)に入れ、不活性ガスとしてアルゴン/H2を用いるタイプN熱電対を含む、カスケード調整を使用する3ゾーン管状炉(TFZ12/65/550/E301;Carbolite GmbH)内で炭化した:初期加熱速度10℃/分、温度300℃、保持時間90分、Ar/H2流量200ml/分;次いで直ちに、加熱速度10℃/分、温度1000℃、保持時間3時間、Ar/H2流量200ml/分で継続した。冷却後、黒色粉末を得た(収率42%)。
【0103】
図3の生成物のSEM画像(倍率30,000倍)は、内部にナノSi粒子を含有する凝集マイクロスケール炭素ボールの形態のコンポジット粒子を示す。
【0104】
元素組成:Si28重量%;C62.4重量%;O5.82重量%;N3.63重量%;B<50ppm;P<50ppm;Al<50ppm;Ca<50ppm;Cu<25ppm;K<50ppm;Li<10ppm;Zr1300ppm。
【0105】
粒径分布:単峰性;D10:5.36μm、D50:9.69μm、D90:16.4μm、(D90-D10)/D50=1.14。
【0106】
[実施例4]
未凝集Si/Cコンポジット粒子:
ポリアクリロニトリル(PAN)20.0gを室温にてジメチルホルムアミド(DMF)1380mlに溶解した。このPAN溶液中に、超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル:0.9;持続時間30分)によって、ケイ素ナノ粉末懸濁液(エタノール中21%;ナノSi5gに相当)25.0g及びグラファイト11.2g(KS6L)を分散させた。得られた分散液をB-295不活性ループ及びB-296除湿器(BUCHI GmbH)(ノズルチップ0.7mm;ノズルキャップ1.4mm;ノズル温度130℃;N2ガス流量約30;アスピレータ100%;ポンプ20%)を備えた、タイプB-290型実験用噴霧乾燥機(BUCHI GmbH)を用いて噴霧及び乾燥した。褐色-黒色粉末31.2gを得た(収率86%)。
【0107】
得られたプレコンポジット30.7gを溶融石英ボート(QCS GmbH)に入れ、不活性ガスとしてアルゴン/H2を用いるタイプNプローブ素子を含む、カスケード調整を使用する3ゾーン管状炉(TFZ12/65/550/E301;Carbolite GmbH)内で炭化した:初期加熱速度10℃/分、温度300℃、保持時間90分、Ar/H2流量200ml/分;次いで直ちに、加熱速度10℃/分、温度1000℃、保持時間3時間、Ar/H2流量200ml/分で継続した。冷却後、黒色粉末20.4gを得た(収率66%)。
【0108】
図4の生成物のSEM画像(倍率75000倍)は、内部にグラファイト粒子及びナノSi粒子を含有する未凝集マイクロスケールSi/Cコンポジット粒子を示す。
図5のSEM画像(倍率30,000倍)は、粒子の炭素コーティング表面を示す。
【0109】
元素組成:Si20.6重量%;C75.0重量%;O3.5重量%;N2.5重量%;B<50ppm;P<50ppm;Al<25ppm;Ca<50ppm;Cu<10ppm;K<50ppm;Li<10ppm;Zr1100ppm。
【0110】
粒径分布:単峰性;D10:4.68μm、D50:7.26μm、D90:11.6μm;(D90-D10)/D50=0.95。
【0111】
[実施例5]
未凝集Si/Cコンポジット粒子:
ポリアクリロニトリル(PAN)10.8gを室温にてジメチルホルムアミド(DMF)720mlに溶解した。このPAN溶液中に、超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル:0.9;持続時間30分)によって、ケイ素ナノ粉末懸濁液12.6g(イソプロパノール中19.8%;ナノSi2.55gに相当)及び導電性カーボンブラック(スーパーP)3.15gを分散させた。得られた分散液をB-295不活性ループ及びB-296除湿器(BUCHI GmbH)(ノズルチップ0.7mm;ノズルキャップ1.4mm;ノズル温度130℃;N2ガス流量約30;アスピレータ100%;ポンプ20%)を備えた、タイプB-290型実験用噴霧乾燥機(BUCHI GmbH)を用いて噴霧及び乾燥した。褐色-黒色粉末13.8gを得た(収率84%)。
【0112】
図6のSEM画像(倍率7500倍)は、酸素不含有ポリマーで完全に被覆された未凝集マイクロスケールプレコンポジット粒子を示す。
【0113】
図7の関連する断面(倍率7500倍)は、プレコンポジット粒子内の成分の均一な分布を示す。
【0114】
得られたプレコンポジット13.7gを溶融石英ボート(QCS GmbH)に入れ、不活性ガスとしてアルゴン/H2を用いるタイプNプローブ素子を含む、カスケード調整を使用する3ゾーン管状炉(TFZ12/65/550/E301;Carbolite GmbH)内で炭化した:初期加熱速度10℃/分、温度300℃、保持時間90分、Ar/H2流量200ml/分;次いで直ちに、加熱速度10℃/分、温度1000℃、保持時間3時間、Ar/H2流量200ml/分で継続した。冷却後、黒色粉末7.71gを得た(収率56%)。
【0115】
図8の生成物のSEM画像(倍率1500倍)は、内部にグラファイト粒子及びナノSi粒子を含有する未凝集マイクロスケールSi/Cコンポジット粒子を示す。
【0116】
図9は、断面(倍率1500倍)における成分の均一な分布及び炭素による完全な包囲を示す。元素組成:Si24.4重量%;C65.6重量%;O4.62重量%;N2.67重量%;B<50ppm;P<50ppm;Al<25ppm;Ca<50ppm;Cu<10ppm;K<50ppm;Li<10ppm;Zr800ppm。
【0117】
粒径分布:単峰性;D10:4.15μm、D50:6.32μm、D90:9.54μm、(D90-D10)/D50=0.85。
【0118】
Si/Cコンポジット粒子2.00gをカルボキシメチルセルロースナトリウム(Daicel、グレード1380)の1.4重量%溶液15.8gに、溶解機を用いて20℃にて冷却しながら循環速度2.6m/sで5分間、13m/sで30分間分散させた。脱気後、厚さ0.030mmの銅箔(Schlenk Metallfolien、SE-Cu58)上にスロット高さ0.18mmを有するフィルム-ドローイングフレーム(Erichsen、モデル360)を用いて分散液を塗布した。続いて、このようにして製造した電極コーティングを80℃、1バールの空気圧で120分間乾燥させた。単位表面積当りの乾燥電極コーティングの平均重量は1.36mg/cm2であった。
【0119】
最初のクーロン効率の電気化学的測定は、参照なしで半電池に対して行った。電極コーティングを作用電極として使用し、リチウム箔(Rockwood Lithium、厚さ0.5mm)を対電極として使用した。電解質120μlを含浸させたガラス繊維マイクロフィルタ(GFタイプD、Whatman)は、セパレータとして作用した。使用した電解質は、2重量%のビニレンカーボネートを添加した、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの3:7(体積/体積)混合物によるリチウムヘキサフルオロホスフェートの1モル溶液からなっていた。電池をグローブボックス(1ppm未満のH2O、O2)中で構築した。使用した全ての成分の乾燥質量中の含水量は20ppmを下回っていた。
【0120】
電気化学的測定は20℃にて行った。電極の充電又はリチウム化は、cc/cv法(定電流/定電圧)によって、定電流33mA/g(C/25に相当)にて、5mVの電圧限界の到達後は、電流が20mA/gを下回るまで定電圧にて行った。電池をcc法(定電流)によって、電圧制限1.5Vに到達するまで33mA/g(C/25に相当)の定電流にて放電させた。選択した特定の電流は、コーティングの重量に基づいていた。
【0121】
Si/Cコンポジット粒子の最初のクーロン効率は84.6±0.6%(3回測定の平均値)であり、したがって実施例7(比較)よりも有意に高い。
【0122】
[実施例6]
未凝集Si/Cコンポジット粒子:
ポリアクリロニトリル(PAN)9.00gを室温にてジメチルホルムアミド(DMF)600mlに溶解した。このPAN溶液中に、超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル:0.9;持続時間30分)によって、ケイ素ナノ粉末懸濁液13.8g(エタノール中26.9%;ナノSi3.7gに相当)及び粉砕活性炭7.01gを分散させた。得られた分散液をB-295不活性ループ及びB-296除湿器(BUCHI GmbH)(ノズルチップ0.7mm;ノズルキャップ1.4mm;ノズル温度130℃;N2ガス流量約30;アスピレータ100%;ポンプ20%)を備えた、タイプB-290型実験用噴霧乾燥機(BUCHI GmbH)を用いて噴霧及び乾燥した。褐色-黒色粉末21.4gを得た(収率88%)。
【0123】
得られたプレコンポジット21.0gを溶融石英ボート(QCS GmbH)に入れ、不活性ガスとしてアルゴン/H2を用いるタイプNプローブ素子を含む、カスケード調整を使用する3ゾーン管状炉(TFZ12/65/550/E301;Carbolite GmbH)内で炭化した:初期加熱速度10℃/分、温度300℃、保持時間90分、Ar/H2流量200ml/分;次いで直ちに、加熱速度10℃/分、温度1000℃、保持時間3時間、Ar/H2流量200ml/分で継続した。冷却後、黒色粉末12.3gを得た(収率58%)。
【0124】
図10の生成物のSEM画像(倍率1500倍)は、内部にグラファイト粒子及びナノSi粒子を含有する未凝集マイクロスケールSi/Cコンポジット粒子を示す。
【0125】
図11は、炭素を有する粒子の完全包囲を示す(倍率30,000倍)。
【0126】
元素組成:Si19.6重量%;C72.2重量%;O5.5重量%;N2.4重量%;B<50ppm;P70ppm;Al2300ppm;Ca945ppm;Cu15ppm;K323ppm;Li<10ppm;Zr1100ppm。
【0127】
粒径分布:単峰性;D10:4.57μm、D50:7.18μm、D90:11.2μm、(D90-D10)/D50=0.92。
【0128】
[実施例7]
(比較)
Si/Cコンポジット粒子を製造するための酸素含有ポリマーの使用:
水/エタノール混合物(1:1)600ml中にポリビニルアルコール(PvOH;水中20%)(LL620、Wacker Chemieの商品名)37.8gを室温にて溶解した。このPvOH溶液中に、超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル:0.9;持続時間30分)によって、ケイ素ナノ粉末懸濁液5.87g(エタノール中21.3%;ナノSi1.25gに相当)及び導電性カーボンブラック(スーパーP)1.58gを分散させた。得られた分散液をB-295不活性ループ及びB-296除湿器(BUCHI GmbH)(ノズルチップ0.7mm;ノズルキャップ1.5mm;ノズル温度100℃;N2ガス流量約30;アスピレータ100%;ポンプ20%)を備えた、タイプB-290型実験用噴霧乾燥機(BUCHI GmbH)を用いて噴霧及び乾燥した。褐色-黒色粉末26.9gを得た(収率66%)。
【0129】
得られたプレコンポジット25.5gを溶融石英ボート(QCS GmbH)に入れ、不活性ガスとしてアルゴン/H2を用いるタイプNプローブ素子を含む、カスケード調整を使用する3ゾーン管状炉(TFZ12/65/550/E301;Carbolite GmbH)内で炭化した:初期加熱速度10℃/分、温度300℃、保持時間90分、Ar/H2流量200ml/分;次いで直ちに、加熱速度10℃/分、温度1000℃、保持時間3時間、Ar/H2流量200ml/分で継続した。冷却後、黒色粉末3.03gを得た(収率12%)。
【0130】
図12の生成物のSEM画像(倍率1500倍)は、内部に導電性カーボンブラック粒子及びナノSi粒子を含有する凝集マイクロスケールSi/Cコンポジット粒子を示す。
【0131】
元素組成:Si26.8重量%;C57.8重量%;O12.9重量%;N0.69重量%。
【0132】
したがって、Si/Cコンポジット粒子は、酸素不含有ポリマー(実施例5)の使用と比較して、酸素含有量が著しく増加している。
【0133】
粒径分布:二峰性;D10:8.20μm、D50:62.9μm、D90:108.9μm、(D90-D10)/D50=1.60。
【0134】
Si/Cコンポジット粒子2.00gをカルボキシメチルセルロースナトリウム(Daicel、グレード1380)の1.4重量%溶液15.8gに、溶解機を用いて20℃にて冷却しながら循環速度2.6m/sで5分間、13m/sで30分間分散させた。脱気後、厚さ0.030mmの銅箔(Schlenk Metallfolien、SE-Cu58)上にスロット高さ0.22mmを有するフィルム-ドローイングフレーム(Erichsen、モデル360)を用いて分散液を塗布した。続いて、このようにして製造した電極コーティングを80℃、1バールの空気圧で120分間乾燥させた。単位表面積当りの乾燥電極コーティングの平均重量は1.60mg/cm2であった。
【0135】
最初のクーロン効率の電気化学的測定は、参照なしで半電池に対して行った。電極コーティングを作用電極として使用し、リチウム箔(Rockwood Lithium、厚さ0.5mm)を対電極として使用した。電解質120μlを含浸させたガラス繊維マイクロフィルタ(GFタイプD、Whatman)は、セパレータとして作用した。使用した電解質は、2重量%のビニレンカーボネートを添加した、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの3:7(体積/体積)混合物によるリチウムヘキサフルオロホスフェートの1モル溶液からなっていた。電池をグローブボックス(1ppm未満のH2O、O2)中で構築した。使用した全ての成分の乾燥質量中の含水量は20ppmを下回っていた。
【0136】
電気化学的測定は20℃にて行った。電極の充電又はリチウム化は、cc/cv法(定電流/定電圧)によって、定電流27mA/g(C/25に相当)にて、5mVの電圧限界の到達後は、電流が20mA/gを下回るまで定電圧にて行った。電池をcc法(定電流)によって、電圧制限1.5Vに到達するまで27mA/g(C/25に相当)の定電流にて放電させた。選択した特定の電流は、コーティングの重量に基づいていた。
【0137】
Si/Cコンポジット粒子の最初のクーロン効率は、実施例7(比較)では79.7±0.1%(3回測定の平均値)であり、したがって実施例5よりも有意に低い。