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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】橋梁点検装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20220518BHJP
   E01D 19/10 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019011662
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2020117980
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-07-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 試験を行った日:平成30年11月29日、場所:知尾井橋(兵庫県上郡町野桑)
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅津 健司
(72)【発明者】
【氏名】藤原 保久
(72)【発明者】
【氏名】玉置 一清
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 香織
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-84086(JP,A)
【文献】特開2001-172920(JP,A)
【文献】特開2017-20252(JP,A)
【文献】特開2010-209666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 22/00
E01D 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁用防護柵に取り付けられたカバーユニットと、
前記カバーユニットを介して前記橋梁用防護柵に支持された支持部、前記支持部の橋幅方向の外側に懸垂された部分を含む延伸部、及び前記延伸部の下部に取り付けられたカメラを有するカメラユニットとを有する橋梁点検装置であって、
前記カバーユニットは、前記カメラユニットの橋軸方向への移動をガイドするべく、前記橋軸方向に延在するカバーを有することを特徴とする橋梁点検装置。
【請求項2】
前記カバーユニットは、前記橋軸方向に互いに間隔をおいて前記橋梁用防護柵に取り付けられる複数のジョイントを更に有し、
各々の前記ジョイントは、
前記橋梁用防護柵の笠木における上方及び前記橋幅方向の両側方を覆い、かつ、上方及び前記橋幅方向の両側方の少なくとも一部が前記カバーに覆われるジョイント本体と、
前記橋梁用防護柵に対する前記橋幅方向の外側において、前記橋梁用防護柵及び前記ジョイント本体間に配置された第1スペーサーと、
前記ジョイント本体に対する前記橋幅方向の内側において、前記ジョイント本体及び前記カバー間に配置された第2スペーサーと、
前記ジョイント本体に対する前記橋幅方向の外側において、前記ジョイント本体及び前記カバー間に配置された第3スペーサーとを更に有することを特徴とする請求項1に記載の橋梁点検装置。
【請求項3】
前記ジョイント本体及び前記第1~第3スペーサーは、それぞれ、前記橋幅方向の長さが調整可能であることを特徴とする請求項2に記載の橋梁点検装置。
【請求項4】
前記第1~第3スペーサーは、それぞれ、前記ジョイント本体に固定されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の橋梁点検装置。
【請求項5】
前記カバーは、前記橋軸方向に沿って互いに連結された複数のカバー部材を有し、
互いに隣接する前記カバー部材は、上部又は前記橋幅方向の内側において互いに固定され、
前記カバーは、
前記橋幅方向の外側の表面において、互いに隣接する2つの前記カバー部材の間を跨ぐように配置された平板と、
前記カバー部材の前記橋幅方向の外側の表面と協働して前記平板を挟持するクリップとを有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の橋梁点検装置。
【請求項6】
前記支持部は、前記カバーの上面を走行する無限軌道を有することを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の橋梁点検装置。
【請求項7】
前記支持部は、支持台と、前記支持台から下方に出没可能に前記支持台に設けられたローラーとを有し、
前記支持台は前記ローラーの前記支持台への没入時に前記カバーの上面に載置され、前記ローラーは前記支持台からの突出時に前記カバーの上面を転動可能であるように構成されたことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の橋梁点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、橋桁の下面及び側面や、床版の下面、支承等を点検するための橋梁点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の上部構造の下面等は直接目視して点検することが困難であるため、上部構造の下面等を撮影可能なカメラを有する点検装置で点検することが提案されている。例えば、特許文献1に記載の橋梁点検装置は、橋梁の橋梁用防護柵上を走行する上部支持台で水平方向の第1のアームを、長手方向を軸として回転するように支承し、第1のアームで、略垂直方向に延びる第2のアームを、長手方向を軸として回転するように支承し、第2のアームで、長手方向に多段に伸縮自在に構成された第3のアームを片持ち状態で支承し、第3のアームの先端にカメラを回転駆動可能に取り付けている。この橋梁点検装置では、上部支持台が、台枠の下面に橋梁用防護柵に直交するように跨って橋梁用防護柵上を滑走する棒状ローラーを設けられることで、機器を橋梁用防護柵に配置して橋梁用防護柵上を移動させながら撮影ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-77653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の橋梁点検装置は、鉄筋コンクリート造の壁高欄のように、橋軸方向に直交する断面の輪郭がどの地点でも等しい橋梁用防護柵に設置されるのであれば、橋梁用防護柵にガイドされて橋軸方向に移動できる。しかし、鋼製の橋梁用防護柵は、一般に、橋軸方向に沿って所定の間隔で設置された複数の支柱と、最上部に配置された横梁である笠木と、支柱間に取り付けられた柵本体とを有し、支柱部分と、柵本体部分とでは、橋軸方向に直交する断面の輪郭が互いに異なる。例えば、図4に示すように、橋幅方向において、支柱7の幅が、笠木8や柵本体9よりも広い。そのため、橋梁用防護柵は、橋軸方向に沿って凹凸を有し、笠木及び柵本体に支持された橋梁点検装置は、移動時に支柱に衝突するため、支柱を乗り越えて移動することができなかった。
【0005】
このような問題に鑑み、橋軸方向に沿って凹凸を有する橋梁用防護柵を有する橋梁であっても、橋軸方向に沿って広範囲に移動可能なカメラを有する橋梁点検装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、橋梁用防護柵(6)に取り付けられたカバーユニット(11)と、前記カバーユニットを介して前記橋梁用防護柵に支持された支持部(13)、前記支持部の橋幅方向の外側に懸垂された部分(14)を含む延伸部(15)、及び前記延伸部の下部に取り付けられたカメラ(16)を有するカメラユニット(12)とを有する橋梁点検装置(10)であって、前記カバーユニットは、前記カメラユニットの橋軸方向への移動をガイドするべく、前記橋軸方向に延在するカバーを有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、橋梁用防護柵に橋軸方向に沿って凹凸があっても、カメラユニットがカバーユニットを介して橋梁用防護柵に支持され、カバーにガイドされて橋軸方向に移動するため、橋梁用防護柵の凹凸に妨げられることなく広範囲にカメラユニットが移動できる。
【0008】
本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る橋梁点検装置は、上記構成において、前記カバーユニットは、前記橋軸方向に互いに間隔をおいて前記橋梁用防護柵に取り付けられる複数のジョイント(18)を更に有し、各々の前記ジョイントは、前記橋梁用防護柵の笠木(8)における上方及び前記橋幅方向の両側方を覆い、かつ、上方及び前記橋幅方向の両側方の少なくとも一部が前記カバーに覆われるジョイント本体(20)と、前記橋梁用防護柵に対する前記橋幅方向の外側において、前記橋梁用防護柵及び前記ジョイント本体間に配置された第1スペーサー(21)と、前記ジョイント本体に対する前記橋幅方向の内側において、前記ジョイント本体及び前記カバー間に配置された第2スペーサー(22)と、前記ジョイント本体に対する前記橋幅方向の外側において、前記ジョイント本体及び前記カバー間に配置された第3スペーサー(23)とを更に有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第1~第3スペーサーによってジョイント本体及びカバーが橋梁用防護柵に対して安定する。
【0010】
本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る橋梁点検装置は、上記構成において、前記ジョイント本体及び前記第1~第3スペーサーは、それぞれ、前記橋幅方向の長さが調整可能であることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ジョイント本体及び第1~第3スペーサーの橋幅方向の長さを調整することにより、様々な形状の橋梁用防護柵に対してカバーを取り付けることができる。
【0012】
本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る橋梁点検装置は、上記のジョイント本体及び第1~第3スペーサーを有する構成の何れかにおいて、前記第1~第3スペーサーは、それぞれ、前記ジョイント本体に固定されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第1~第3スペーサーがジョイント本体に固定されているため、ジョイントの運搬、取り付け及び取り外し作業を効率的に行える。
【0014】
本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る橋梁点検装置は、上記構成の何れかにおいて、前記カバーは、前記橋軸方向に沿って互いに連結された複数のカバー部材(30)を有し、互いに隣接する前記カバー部材は、上部又は橋幅方向の内側において互いに固定され、前記カバーは、前記橋幅方向の外側の表面において、互いに隣接する2つの前記カバー部材の間を跨ぐように配置された平板(34)と、前記カバー部材の前記橋幅方向の外側の表面と協働して前記平板を挟持するクリップ(35)とを有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、橋幅方向の外側におけるカバー部材同士の連結が平板とクリップとによって行われるため、橋梁用防護柵の橋幅方向の外側に足場を設けなくても、比較的安全にカバー部材同士を連結することができる。
【0016】
本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る橋梁点検装置は、上記構成の何れかにおいて、前記支持部は、前記カバーの上面を走行する無限軌道(39)を有することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、無限軌道のカバー上面に対する接触面積が比較的大きいため、支持部がカバーに対して安定する。
【0018】
本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る橋梁点検装置は、上記構成の無限軌道に代えて、前記支持部は、支持台(40)と、前記支持台から下方に出没可能に前記支持台に設けられたローラー(41)とを有し、前記支持台は前記ローラーの前記支持台への没入時に前記カバーの上面に載置され、前記ローラーは前記支持台からの突出時に前記カバーの上面を転動可能であるように構成されたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、支持部の停止時にローラーを支持台に没入させることにより、支持台がカバーの上面に支持されるため支持部がカバーに対して安定する。また、支持部の橋軸方向への移動時に、ローラーを支持台から突出させることにより、カバーの上面をローラーが転動するため、移動に伴う摩擦力が減少し、移動が容易になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、橋軸方向に沿って凹凸を有する橋梁用防護柵を有する橋梁でも、カバーによってカメラユニットの橋軸方向の移動がガイドされるため、カメラユニットを広範囲に渡って橋軸方向に沿って移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る橋梁点検装置を示す正面図
図2】実施形態に係る橋梁点検装置のカバーユニットを示す正面図
図3】実施形態に係る橋梁点検装置のジョイントを示す斜視図
図4】実施形態に係る橋梁点検装置のジョイントの取付状態及びカバー部材を示す斜視図
図5】実施形態に係る橋梁点検装置のカバーユニットの取り付け状態を示す斜視図
図6】実施形態に係る橋梁点検装置の支持部の第1変形例を示す模式的側面図
図7】実施形態に係る橋梁点検装置の支持部の第2変形例を示す模式的縦断面(橋幅方向に直交する断面)図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る橋梁点検装置10を説明する。図1は、橋梁1に取り付けられた実施形態に係る橋梁点検装置10を示す正面図であり、横断面(橋軸方向に直交する面)で示される橋梁1に橋梁点検装置10が取り付けられている状態を示す。橋梁1は、略水平に延在する下床版2と、下床版2の橋軸直交方向の両端部から立ち上がる一対のウェブ3と、一対のウェブ3の上端に連結して略水平に延在する上床版4とから構成される鉄筋コンクリートからなる単一箱桁橋である。一対のウェブ3は、下床版2の左右の両端から上方に向けて開く向きに傾斜している。上床版4は、一対のウェブ3の上端同士を連結して下床版2と協働して箱形断面を形成する。また、上床版4は、ウェブ3のそれぞれから側方に張り出す左右の張出部5を有しており、これにより橋梁1の幅員を増大させている。張出部5の張り出し端には、上方に向けて突出する鋼製の高欄等の橋梁用防護柵6が設けられている。図1及び図4に示すように、橋梁用防護柵6は、張出部5に固定されて上方に延出して橋軸方向に沿って所定の間隔で設置された複数の支柱7と、複数の支柱7に支持されて最上部の横梁を形成する笠木8と、上下2段の横梁と2段の横梁間に配置された複数の縦梁とを有して、支柱7間に配置されるように支柱7に固定された柵本体9とを有する。橋幅方向において、支柱7は、笠木8や柵本体9よりも幅広である。
【0023】
図1に示すように、橋梁点検装置10は、橋梁用防護柵6に取り付けられたカバーユニット11と、カバーユニット11を介して橋梁用防護柵6に支持されたカメラユニット12とを有する。カメラユニット12は、カバーユニット11を介して橋梁用防護柵6に支持された支持部13、支持部13の橋幅方向の外側に懸垂されたポール14を含む延伸部15、並びに延伸部15の下部に取り付けられたカメラ16及びレーザー距離計17を有する。延伸部15のポール14は伸縮可能であることが好ましく、ポール14を伸縮することにより、撮影対象面を撮影可能な上下方向位置にカメラ16を配置する。なお、延伸部15は、ポール14の下端部から水平方向に延出する水平延長部(図示せず)を更に有し、水平延長部にカメラ16及びレーザー距離計17が取り付けられてもよい。
【0024】
ポール14の下端に取り付けられたカメラ16及びレーザー距離計17は、ポール14に対する角度の変更が可能であり、支持部13を停止させた状態で、張出部5の下面、ウェブ3の側面及び/又は下床版2の下面を撮影し、撮影箇所までの距離を測定する。一度に全体を撮影できないため、カメラ16及びレーザー距離計17のポール14に対する角度をずらしながら、カメラ16は撮影対象面を撮影し、レーザー距離計17は、撮影対象面に対するカメラ16の鉛直方向角度及び水平方向角度を算出するために、各撮影対象面で三角形の頂点に当たる3つの地点までの距離を測定する。カメラユニット12の橋軸方向の位置をずらしながらこの作業が繰り返される。なお、互いに隣接する箇所を撮影した静止画は部分的に重複した箇所を撮影している。撮影された画像、その画像を撮影した時の撮影対象面までの距離を受け取った計算機(図示せず)により、全体の合成画像が作成され、橋梁1の張出部5の下面、ウェブ3の側面及び下床版2の下面に生じているひび割れ等を確認できる。なお、検出したいひび割れ幅に応じてカメラ16のズーム倍率(画角)は設定されている。
【0025】
図2に示すように、カバーユニット11は、橋軸方向に互いに間隔をおいて橋梁用防護柵6に取り付けられる複数のジョイント18と、ジョイント18に取り付けられて、橋軸方向に沿って延在するカバー19とを有する。ジョイント18は、様々な形状の橋梁用防護柵6にカバー19を取付可能にし、かつ、カバー19が橋梁用防護柵6を傷つけることを防ぐためのものである。図2及び図3に示すように、各々のジョイント18は、橋梁用防護柵6の笠木8における上部及び橋幅方向の両側部に当接し、かつ、上方及び橋幅方向の両側方の大部分がカバー19に覆われるジョイント本体20と、橋梁用防護柵6に対する橋幅方向の外側において、柵本体9及びジョイント本体20間に配置された第1スペーサー21と、ジョイント本体20に対する橋幅方向の内側において、ジョイント本体20及びカバー19間に配置された第2スペーサー22と、ジョイント本体20に対する橋幅方向の外側において、ジョイント本体20及びカバー19間に配置された上下1対の第3スペーサー23とを有する。
【0026】
ジョイント本体20は、橋幅方向の内側に配置される第1ジョイント部材24と、橋幅方向の外側に配置される第2ジョイント25部材と、笠木8の上部に当接して第1及び第2ジョイント部材24、25を載置する板部材26とを有する。
【0027】
第1ジョイント部材24は、橋幅方向に直交する平板状の側部24aと、側部24aの上縁から橋幅方向の外側に延出して上下方向に直交する平板状の上部24bと、上部24bの橋幅方向の外側の端縁から橋幅方向の外側に突出するパイプ24cとを有する。側部24a及び上部24bは、一体に成形された樹脂を素材とすることが好ましい。第2ジョイント部材25は、橋幅方向に直交する平板状の側部25aと、側部25aの上縁から橋幅方向の内側に延出して上下方向に直交する平板状の上部25bとを有し、上部25bの橋幅方向の内側の端縁には、パイプ24cを摺動可能に受容するガイド孔25cが設けられている。側部25a及び上部25bは、一体に成形された樹脂を素材とすることが好ましい。パイプ24cをガイド孔25cに摺動させることにより、ジョイント本体20の橋幅方向の幅を笠木8の幅に合わせて調整できる。第1及び第2ジョイント部材24,25の側部24a,25aで笠木8を挟持させた状態で、上部24b,25bを橋幅方向に貫通するように設けられたボルト用孔24d,25dに挿通されるボルト及びナット等の締結具27により、第1及び第2ジョイント部材24,25を互いに固定する。第1ジョイント部材24の下端は、笠木8の下部よりも下方に位置し、第2ジョイント部材25の下端は、柵本体9の上縁よりも下方に位置する。
【0028】
板部材26は、横断面視でL字状の板材であり、一片側に第1ジョイント部材24の側部24aにボルト等の締結具27で固定され、他片側の上面において第1及び第2ジョイント部材24,25の上部24b,25bの下面に当接し、他片側の下面において笠木8の上部に当接する。板部材26が、笠木8と第1及び第2ジョイント部材24,25間に配置されることによって、第1ジョイント部材24と第2ジョイント部材25との互いの接合部の角によって笠木8が傷つくことを防止できる。
【0029】
第1スペーサー21は、柵本体9と第2ジョイント部材25の側部25aとの距離を一定に保つための部材であり、様々な形状の橋梁用防護柵6に対応できるように橋幅方向の長さが調整可能である。第1スペーサー21は、平面視でコ字形状をなす本体部分の縁にフランジが形成された第1金具21aと、平面視でコ字形状をなす第2金具21bとを有する。第1及び第2金具21a,21bは、コ字形状の開口面が第2ジョイント部材25を向き、第1金具21aの互いに対向する側片の外面に、第2金具21bの互いに対向する側片の内面が当接するように配置される。第1金具21aのフランジ部分が第2ジョイント部材25の側部25aの橋幅方向の内側の面に固定され、第1及び第2金具21a,21bは互いに締結具27で固定される。第2金具21bに、橋幅方向に沿って複数の幅調整孔28が設けられており、締結具27を挿通させる幅調整孔28を変更することにより、第1及び第2金具21a,21bの相対的な位置が変わり、第1スペーサー21の橋幅方向の幅を調整できる。第1スペーサー21の橋幅方向の幅は、第2金具21bの橋幅方向の内側の面が柵本体9に当接した時に第2ジョイント部材25の側部25aが鉛直方向に延在するように調整される。複数の幅調整孔28に代えて、第2金具21bに橋幅方向に延在する1つの長孔を設けてもよく、第2金具21bに代えて又は第2金具21bとともに、第1金具21aに複数の幅調整孔28又は長孔を設けてもよい。また、第1スペーサー21の第2ジョイント部材25に対する上下方向位置を調整できるように、締結具27が挿通される第2金具21b又は第2ジョイント部材25に設けられる孔を上下方向に延在する長孔としてもよい。なお、図示する例では、笠木8が柵本体9よりも橋幅方向の外側に突出しているため、第2ジョイント部材25の側部25aが笠木8に当接して、第1スペーサー21が柵本体9に当接しているが、柵本体9が笠木8よりも橋幅方向の外側に突出している場合は、第1スペーサー21は笠木8に当接して、第2ジョイント部材25の側部25aが柵本体9に当接する。
【0030】
第2スペーサー22は、第1スペーサー21と同様の形状を有し、それぞれ、第1スペーサー21の第1及び第2金具21a,21bに対応する第1及び第2金具22a,22bを有する。第1金具22aのフランジが第1ジョイント部材24の側部24aの橋幅方向の内側の面に固定される。第3スペーサー23も、第1スペーサー21と同様の形状を有し、それぞれ、第1スペーサー21の第1及び第2金具21a,21bに対応する第1及び第2金具23a,23bを有する。第1金具23aのフランジが第2ジョイント部材25の側部25aの橋幅方向の外側の面に固定される。第2及び第3スペーサー22,23は、幅調整孔28を有するため、橋幅方向の幅を変更でき、これにより、ジョイント本体20に対するカバー19の橋幅方向の位置が調整できる。第2及び第3スペーサー22,23のジョイント本体20に対する上下方向位置を調整できるように、締結具27が挿通される第2金具21b又は第2ジョイント部材25に設けられる孔を上下方向に延在する長孔29としてもよい。
【0031】
図2図4及び図5に示すように、カバー19は、橋軸方向に沿って互いに連結された複数のカバー部材30を有する。各々のカバー部材30は、金属製であり、互いに同一の形状を有する。各々のカバー部材30は、水平に配置された平板の橋幅方向の両側方を下方に向けて90°折り曲げた形状をなし、垂下している橋幅方向の内側の第1側片30a及び外側の第2側片30bの長さは、それぞれ、概ね、第1及び第2ジョイント部材24,25の側部24a,25aの長さに対応している。カバー部材30は、水平方向に延在する部分である上片30cが第1及び第2ジョイント部材24,25の上部24b,25bに載置され、第1側片30aの橋幅方向の外側の面が第2スペーサー22に当接し、第2側片30bの橋幅方向の内側の面が第3スペーサー23に当接するように、ジョイント18に取り付けられる。カバー部材30の第2側片30bの橋幅方向の位置は、張出部5の橋幅方向の外端に略一致する(図1参照)。
【0032】
また、ジョイント18は、互いに隣接するカバー部材30の継ぎ目に配置されている。カバー部材30の第1側片30aの橋軸方向の端部及び第2スペーサー22の第2金具22bに設けられたねじ孔31にねじ(図示せず)を螺合することによりカバー部材30がジョイント18に固定される。なお、互いに隣接するカバー部材30の継ぎ目に支柱7がある場合は、ジョイント本体20及び第1~第3スペーサー21,22,23の橋幅方向の長さを調整して、ジョイント18を支柱7に取り付けてもよく、また、ジョイント18を支柱7及びカバー部材30の継ぎ目からずらして配置してもよい。ずらして配置した場合、カバー部材30の第1側片30a同士は、以下に記載する上片30c同士と同様に連結してもよい。
【0033】
互いに隣接するカバー部材30の上片30c同士は、2つの上片30cを跨ぐように金属製の薄い平板32を配置し、平板32に設けられたねじ孔(図示せず)及び上片30cに設けられたねじ孔31にねじ33を螺合することにより、連結される。互いに隣接するカバー部材30の第2側片30b同士は、2つの第2側片30bを跨ぐように配置された金属製の薄い平板34と、第2側片30bの橋軸方向の端部近傍かつ橋幅方向の外側に固定されて第2側片30bの橋幅方向の外側の表面と協働して平板34を挟持するクリップ35とによって連結される。クリップ35は、平板34の下側及び橋軸方向の両端部を支持するように配置されており、平板34は、上方からクリップ35と第2側片30bとの間に挿入することができる。このような連結手段を用いることにより、橋梁用防護柵6よりも橋幅方向の外側でねじを締結する必要がなくなる。このため、橋梁用防護柵6の橋幅方向の外側に足場を設けなくても、橋梁用防護柵6の橋幅方向の内側から比較的安全に作業を行える。互いに隣接するカバー部材30は外表面が滑らかに繋がるように互いに連結されるため、カバー19の横断面の輪郭はどの地点でも略同一となり、カバー19はカメラユニット12を橋軸方向に移動させる時に支持部13をガイドする。
【0034】
図1に示すように、支持部13は、延伸部15の上部から橋幅方向の内方に向かって延出する梁部材42と、梁部材42に支持されてカバー19の上面を転動する上部車輪36と、橋幅方向に変位可能に梁部材42に支持されてカバー19を橋幅方向において挟持するクランプ37と、クランプ37とともに橋幅方向に変位して、カバー19の両側面を転動する複数の側部車輪38とを有する。上部車輪36を駆動輪にしてカメラユニット12を自走式としてもよく、駆動機構を設けずに作業員が支持部13を押すことによりカメラユニット12を移動させてもよい。
【0035】
図6は、支持部13の第1変形例を示す。図6に示すように、上部車輪36(図1参照)に代えて、梁部材42に巻きつけられた無限軌道39によってカバー19の上面を走行してもよい。無限軌道39の内周面が梁部材42を滑りやすくするため、橋幅方向に直交する断面視で、梁部材42の橋軸方向における両端を半円形状とすること、すなわち、梁部材42を陸上競技のトラック形状とすることが望ましい。また、無限軌道39において、カバー19に接触する外周面は、比較的摩擦係数が高く、またカバー19を傷つけ難いラバー等により構成し、梁部材42に摺接する内周面は、梁部材42を円滑に滑るように比較的摩擦係数の低いポリテトラフルオロエチレンで加工した板(摩擦係数:約0.05)により構成することが好ましい。上部車輪36(図1参照)に比べて、無限軌道39は、カバー19の上面との接触面積が大きいため、支持部13がカバー19に対して安定する。また、無限軌道39は、カメラユニット12(図1参照)が作業員の手動によって移動する場合に適する。
【0036】
また、図7は、支持部13の第2変形例を示す。図7に示すように、上部車輪36(図1参照)に代えて、支持部13は、梁部材42を支持する支持台40と、支持台40から下方に出没する可能に前記支持台に設けられたローラー41とを有してもよい。支持部13が停止した時は、図7(A)に示すように、ローラー41が支持台40に没入して、支持台40の下面がカバー19の上面に当接する。上部車輪36(図1参照)に比べて、停止時における支持台40のカバー19の上面との接触面積が大きいため、支持部13がカバー19に対して安定する。支持部13が橋軸方向に移動する時は、図7(B)に示すようにローラー41が支持台40の下方に突出し、支持台40がカバー19から浮き上がり、ローラー41が転動する。このため、移動に伴う摩擦力が減少し、支持部13の橋軸方向への移動が容易になる。
【0037】
図1及び図4に示すように、実施形態に係る橋梁点検装置10は、橋幅方向において支柱7と、笠木8及び柵本体9との間に幅の違いがある等、橋軸方向に沿って凹凸を有する橋梁用防護柵6を有する橋梁1の点検に使用するのに適する。カメラユニット12を橋軸方向に沿って凹凸を有する橋梁用防護柵6に直接支持させると、その凹凸によってカメラユニット12の橋軸方向への移動が妨げられる。そこで、橋軸方向に沿って略直線的に延在するカバー19を橋梁用防護柵6に取り付け、カメラユニット12をカバー19を介して橋梁用防護柵6に支持させると、カバー19がカメラユニット12の橋軸方向への移動をガイドし、橋梁用防護柵6の凹凸はカメラユニット12の橋軸方向への移動の妨げとならない。
【0038】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、第2及び第3スペーサーをジョイント本体ではなく、カバー部材に固定してもよい。また、パイプ及びパイプを受容するガイド孔をそれぞれ、第1及び第2ジョイント部材に代えて、第2及び第1ジョイント部材に設けてもよい。支持部に車輪を設けず、支持部がカバーを摺動してもよい。カバー部材の第1側片同士を上片同士と同様に連結してもよく、この場合、カバーはジョイントに固定されないが、カバーの自重及びカバーと第1~第3スペーサーとの摩擦力により、カバーはジョイントに対して安定する。
【符号の説明】
【0039】
6:橋梁用防護柵
7:支柱
8:笠木
10:橋梁点検装置
11:カバーユニット
12:カメラユニット
13:支持部
14:ポール
15:延伸部
16:カメラ
18:ジョイント
19:カバー
20:ジョイント本体
21:第1スペーサー
22:第2スペーサー
23:第3スペーサー
30:カバー部材
34:平板
35:クリップ
39:無限軌道
40:支持台
41:ローラー
42:梁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7