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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池用アノード
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20220518BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20220518BHJP
   H01M 8/0236 20160101ALI20220518BHJP
   H01M 8/0232 20160101ALI20220518BHJP
   H01M 8/0241 20160101ALI20220518BHJP
【FI】
H01M4/86 U
H01M8/12 101
H01M4/86 T
H01M8/0236
H01M8/0232
H01M8/0241
H01M8/12 102A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019070246
(22)【出願日】2019-04-01
(65)【公開番号】P2020170607
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悟
(72)【発明者】
【氏名】森川 彰
(72)【発明者】
【氏名】小林 圭介
(72)【発明者】
【氏名】人見 卓磨
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-157693(JP,A)
【文献】特開2015-92459(JP,A)
【文献】特開2011-14461(JP,A)
【文献】特開2006-73231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 8/12
H01M 8/0236
H01M 8/0232
H01M 8/0241
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成を備えた固体酸化物形燃料電池用アノード。
(1)前記固体酸化物形燃料電池用アノードは、
拡散層と、
前記拡散層の集電体側表面に形成された集電層と、
前記拡散層の電解質側表面に形成された活性層と
を備えている。
(2)前記拡散層は、
Ni粒子(A)と、
イットリア安定化ジルコニアからなる電解質粒子(A)と
を含むサーメット(A)からなる。
(3)前記集電層は、
Ni粒子(B)と、
23、CeO2及びZrO2の複合酸化物(YCZ)からなる電解質粒子(B)と
を含むサーメット(B)からなる。
(4)前記活性層は、
Ni粒子(C)と、
固体酸化物からなる電解質粒子(C)と
を含むサーメット(C)からなる。
【請求項2】
前記電解質粒子(B)は、次の式(2)で表される組成を有する請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
xCeyZr1-x-y2-δ …(2)
但し、
0<x≦0.30、
0<y≦0.20、
δは、電気的中性が保たれる値。
【請求項3】
前記電解質粒子(B)は、粒子内部におけるZrに対するCeの平均モル濃度比(Ce/Zr比)が0.001以上0.2以下である請求項1又は2に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
【請求項4】
前記集電層は、CeO2-ZrO2固溶体(CZ)からなるCZ粒子をさらに含む請求項1から3までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
【請求項5】
前記集電層は、前記Ni粒子(B)の含有量が30wt%以上70wt%以下である請求項1から4までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
【請求項6】
オーミック抵抗が0.12Ω・cm未満である請求項1から5までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
【請求項7】
反応抵抗が0.12Ω・cm未満である請求項1から6までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
【請求項8】
前記電解質粒子(A)は、3mol%以上15mol%以下のY23を含むイットリア安定化ジルコニアからなり、
前記拡散層に含まれる前記Ni粒子(A)の含有量は、30wt%以上70wt%以下である
請求項1から7までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
【請求項9】
前記電解質粒子(C)は、
(a)3mol%以上15mol%以下のY23を含むイットリア安定化ジルコニア、又は、
(b)次の式(3)を満たすYCZからなり、
前記活性層に含まれる前記Ni粒子(C)の含有量は、30wt%以上70wt%以下である
請求項1から8までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
x’Cey'Zr1-x'-y'2-δ' …(3)
但し、
0<x'≦0.30、
0<y'≦0.20、
δ'は、電気的中性が保たれる値。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池用アノードに関し、さらに詳しくは、固体酸化物電解質として、Y23、CeO2及びZrO2の複合酸化物(YCZ)を含む集電層を備えた固体酸化物形燃料電池用アノードに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、環境問題・エネルギー問題を解決するための有力な手段の一つである。特に、固体酸化物型燃料電池(SOFC)は、(1)発電効率が高い、(2)多様な燃料に対応可能である、(3)小型分散電源から大規模火力代替システムまで幅広い適応性を持つ、(4)Pt触媒を必要としない、等の利点がある。
しかし、SOFC普及に向けて、作動温度(現状の作動温度:750℃)の低温化が鍵となっている。低温化(例えば、600℃)によって、(1)セルの耐久性向上(化学安定性)、(2)安価な筐体(安価なステンレス鋼)の使用、(3)起動停止時間の短縮、が可能となる。
【0003】
従来のSOFCは、750℃で運転しており、電解質としてイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を使用している。また、従来のSOFCのアノードには、電極触媒であるNiと固体酸化物電解質であるYSZとの複合体(いわゆる、「Ni-YSZサーメット」)が用いられている。YSZの結晶構造は、蛍石構造であり、対称性の高い結晶構造である。そのため、YSZ中の酸素イオンは、3次元方向への空孔拡散によって移動する。
【0004】
YSZは、高温でのイオン伝導度が高い。そのため、SOFCの電解質やSOFCのアノード用の固体電解質には、専らYSZが用いられ、他の固体電解質が用いられた例は少ない。例えば、非特許文献1には、Ni(56wt%)-Ce0.5Zr0.52-δからなるSOFC燃料極が開示されている。
【0005】
非特許文献2には、SOFCのアノードではないが、グリセロールを水蒸気改質し、合成ガスを製造するための触媒として、Ni(5wt%)-Ce0~1Zr1~02-δが開示されている。同文献には、Ce0.5Zr0.52-δが最も好ましい点が記載されている。
さらに、非特許文献3には、SOFCのアノードではないが、メタンを二酸化炭素と共に改質するための触媒として、Ni(15wt%)-MgO(10wt%)-Ce0~1Zr1~02-δが開示されている。同文献には、Ni-MgO-Ce0.8Zr0.22-δが最も好ましい点が記載されている。
【0006】
SOFCは、一般に、電解質の両面に電極が接合された単セルが積層された構造(スタック構造)を取る。各単セルの間には、ガス流路が形成された集電体(セパレータ、インターコネクターなどとも呼ばれる)が配置される。
【0007】
このような構造を備えたSOFCにおいて、アノード流路にH2を含む燃料ガスを供給し、カソード流路に空気を供給すると、カソードから電解質を通ってアノードの表面までO2-が拡散する。その結果、アノード表面においてO2-とH2とが反応し、H2Oが生成する。H2Oは酸化剤でもあるため、アノードに含まれる電極触媒(Ni)を酸化させる原因となる。アノードに含まれるNiであって、集電体との接触面近傍に存在するものが酸化されると、接触抵抗が増大し、電池性能を低下させる原因となる。しかしながら、アノードの集電体側の表面が酸化されることに起因する接触抵抗の増大を抑制可能なアノードが提案された例は、従来にはない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】「バイオガス直接供給時のCeO2-ZrO2ベースSOFC燃料極の性能評価」、電気化学会2017年(春)
【文献】"Catalytic features of Ni supported on CeO2-ZrO2 solid solution in the steam reforming of glycerol for syngas production," RSC Adv., 2014, 4, 31142
【文献】"Key properties of Ni-MgO-CeO2, Ni-MgO-ZrO2, Ni-MgO-Ce1-xZrxO2 catalysts for the reforming of methane with carbon dioxid," Green Chem., 2018, 20, 1621
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、アノード表面が酸化されることに起因する接触抵抗の増大を抑制可能な新規な固体酸化物形燃料電池用アノードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る固体酸化物形燃料電池用アノードは、以下の構成を備えている。
(1)前記固体酸化物形燃料電池用アノードは、
拡散層と、
前記拡散層の集電体側表面に形成された集電層と、
前記拡散層の電解質側表面に形成された活性層と
を備えている。
(2)前記拡散層は、
Ni粒子(A)と、
イットリア安定化ジルコニアからなる電解質粒子(A)と
を含むサーメット(A)からなる。
(3)前記集電層は、
Ni粒子(B)と、
23、CeO2及びZrO2の複合酸化物(YCZ)からなる電解質粒子(B)と
を含むサーメット(B)からなる。
(4)前記活性層は、
Ni粒子(C)と、
固体酸化物からなる電解質粒子(C)と
を含むサーメット(C)からなる。
【発明の効果】
【0011】
YCZは、酸化物イオン伝導体としての機能に加えて、酸素吸蔵・放出能を持つ。そのため、YCZをSOFCのアノードの集電層に適用した場合、高出力下での発電により水蒸気が多量に発生しても、YCZが水蒸気中の酸素イオンをトラップする。その結果、アノードの集電体側の表面近傍におけるNiの酸化、及び、これに起因するアノード/集電体間の接触抵抗の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】YCZをアノードの集電層に用いた固体酸化物形燃料電池の模式図である。
図2】Ni-YSZサーメットを用いた従来のアノードの模式図である。
図3】YCZによる酸素イオン固定の概念図である。
図4図4(A)は、アノード(実施例3)のSEM像である。図4(B)は、アノード(実施例3)のCeマッピング結果(EPMA分析)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 固体酸化物形燃料電池用アノード]
本発明に係る固体酸化物形燃料電池用アノードは、
拡散層と、
前記拡散層の集電体側表面に形成された集電層と、
前記拡散層の電解質側表面に形成された活性層と
を備えている。
【0014】
[1.1. 拡散層]
本発明において、拡散層は、Ni粒子(A)と、イットリア安定化ジルコニアからなる電解質粒子(A)とを含むサーメット(A)からなる。拡散層は、活性層を支持するためのものである。拡散層と活性層との積層体を含むアノードにおいて、電極反応は、主として活性層内で生じる。そのため、拡散層は、必ずしも高いイオン伝導性を有している必要はない。
【0015】
すなわち、拡散層は、少なくとも、
(a)その電解質側表面に形成される活性層を支持するための機能、
(b)燃料ガスを活性層まで拡散させる機能、
(c)電極反応により活性層で放出された電子を集電体まで輸送する機能、及び、
(d)電極反応により活性層で生成した水蒸気をアノード外に排出する機能
を備えている必要がある。
拡散層の組成は、このような機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。
【0016】
[1.1.1. Ni粒子(A)]
Ni粒子(A)の含有量は、拡散層としての機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。一般に、Ni粒子(A)の含有量が少なすぎると、拡散層の導電性が低下する。従って、Ni粒子(A)の含有量は、30wt%以上が好ましい。含有量は、好ましくは、40wt%以上である。
一方、Ni粒子(A)の含有量が過剰になると、電解質粒子(A)の含有量が少なくなり、機械的強度が低下する。従って、Ni粒子(A)の含有量は、70wt%以下が好ましい。含有量は、好ましくは、60wt%以下である。
【0017】
[1.1.2. 電解質粒子(A)]
本発明において、電解質粒子(A)は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)からなる。電解質粒子(A)の組成は、拡散層としての機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。すなわち、電解質粒子(A)は、活性層に含まれる電解質粒子(C)と同一の組成を有するものでも良く、あるいは、異なる組成を有するものでも良い。
【0018】
電解質粒子(A)のY23含有量は、機械的強度、活性層に用いられる電解質粒子(C)との熱膨張係数差などを考慮して、3~15mol%が好ましい。
【0019】
[1.1.3. 気孔率]
拡散層の気孔率は、アノードのガス拡散性、強度、電子伝導性などに影響を与える。一般に、拡散層の気孔率が小さすぎると、ガス拡散性が低下する。従って、拡散層の気孔率は、40%以上が好ましい。気孔率は、好ましくは、45%以上、さらに好ましくは、50%以上である。
一方、拡散層の気孔率が大きくなりすぎると、強度及び電子伝導性が低下する。従って、拡散層の気孔率は、60%以下が好ましい。気孔率は、好ましくは、58%以下、さらに好ましくは、55%以下である。
【0020】
[1.2. 集電層]
集電層は、拡散層の集電体側表面に形成される。本発明において、集電層は、Ni粒子(B)と、Y23、CeO2及びZrO2の複合酸化物(YCZ)からなる電解質粒子(B)とを含むサーメット(B)からなる。集電層は、CeO2-ZrO2固溶体(CZ)からなるCZ粒子をさらに含んでいても良い。
集電層は、拡散層から集電体に電子を輸送するためのものである。そのため、集電層は、必ずしも高いイオン伝導度を有している必要はない。しかし、Ni粒子(B)が酸化することに起因する接触抵抗の増大を抑制するためには、集電層の材料は、耐酸化性に優れている材料である必要がある。
【0021】
[1.2.1. Ni粒子(B)]
Ni粒子(B)の含有量は、集電層としての機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。一般に、Ni粒子(B)の含有量が少なすぎると、集電層の導電性が低下する。従って、Ni粒子(B)の含有量は、30wt%以上が好ましい。含有量は、好ましくは、40wt%以上である。
一方、Ni粒子(B)の含有量が過剰になると、電解質粒子(B)の含有量が少なくなり、機械的強度が低下する。従って、Ni粒子(B)の含有量は、70wt%以下が好ましい。含有量は、好ましくは、60wt%以下である。
【0022】
[1.2.2. 電解質粒子(B)]
[A. 酸素吸蔵・放出能]
電解質粒子(B)は、Y23、CeO2及びZrO2の複合酸化物(YCZ)からなる。CeO2は、ZrO2に酸素吸蔵・放出能を付与する作用がある。一方、Y23は、ZrO2内、又は、CeO2-ZrO2固溶体(以下、「CZ」ともいう)内に酸素イオン空孔を導入し、ZrO2又はCZのイオン伝導度を向上させる作用がある。そのため、適量のY23及びCeO2を含むYCZを電解質粒子(B)として用いると、高い発電性能と高い耐久性とを兼ね備えた集電層が得られる。
【0023】
次の式(1)に、CZの酸素吸蔵・放出反応の反応式を示す。式(1)中、右側に進む反応は酸化反応を表し、左側に進む反応は還元反応を表す。
CeO2-x-ZrO2+(x/2)O2 ⇔ CeO2-ZrO2 …(1)
ZrO2中に固溶しているCeイオンは、周囲の雰囲気中の酸素分圧に応じて、可逆的に3価の状態(還元状態)と、4価の状態(酸化状態)とを取ることができる。そのため、CZが酸化雰囲気に曝される時には、CZは雰囲気中にある酸素イオンを結晶格子内に取り込む(図3参照)。一方、CZが還元雰囲気に曝される時には、CZは結晶格子内にある酸素イオンを雰囲気中に放出する。この点は、YCZも同様である。
【0024】
[B. 組成]
電解質粒子(B)は、特に、次の式(2)で表される組成を有するものが好ましい。
xCeyZr1-x-y2-δ …(2)
但し、
0<x≦0.30、
0<y≦0.20、
δは、電気的中性が保たれる値。
【0025】
[B.1. x]
式(2)中、xは、電解質粒子(B)に含まれるY、Ce及びZrの総モル数に対するYのモル数の比を表す。xは、特に限定されるものではなく、0超であれば良い。
但し、xが大きくなりすぎると、拡散層に含まれる電解質粒子(A)との熱膨張係数差が大きくなり、機械的強度が低下する場合がある。従って、xは、0.30以下が好ましい。xは、好ましくは、0.20以下である。
【0026】
[B.2. y]
式(2)中、yは、電解質粒子(B)に含まれるY、Ce及びZrの総モル数に対するCeのモル数の比を表す。Ceは、上述したように、ZrO2に酸素吸蔵・放出能を付与する作用がある。そのため、yが小さくなりすぎると、集電層の耐酸化性が低下する。従って、yは、0超が好ましい。yは、好ましくは、0.001以上、さらに好ましくは、0.02以上である。
【0027】
一方、yが大きくなりすぎると、酸素拡散の活性化エネルギーが大きくなり、かえって酸素が拡散しにくくなる(参考文献1参照)。また、yが大きくなりすぎると、焼結性が低下し、集電層の機械的特性が低下する。従って、yは、0.20以下が好ましい。yは、好ましくは、0.1以下、さらに好ましくは、0.08以下である。
[参考文献1]J. Phys. Chem. B 1997, 101, 1750-1753
【0028】
[B.3. δ]
δは、電気的中性が保たれる値を表す。Zrは4価であるのに対し、Yは3価である。また、Ceは、ZrO2中において、4価又は3価を取る。そのため、ZrO2にY及びCeを固溶させると、電気的中性が保たれるように、所定量の酸素空孔が導入される。
【0029】
[C. Ce/Zr比]
「Ce/Zr比」とは、電解質粒子(B)に含まれるZrの平均モル濃度に対するCeの平均モル濃度の比をいう。
Ce/Zr比が大きくなるほど、集電層の耐久性が向上する。このような効果を得るためには、Ce/Zr比は、0.001以上が好ましい。
【0030】
一方、Ce/Zr比が大きくなりすぎると、かえってイオン伝導度が低下し、あるいは、焼結性が低下する。従って、Ce/Zr比は、0.20以下が好ましい。
【0031】
[1.2.3. 気孔率]
集電層の気孔率は、アノードのガス拡散性、強度、電子伝導性などに影響を与える。一般に、集電層の気孔率が小さすぎると、ガス拡散性が低下する。従って、集電層の気孔率は、40%以上が好ましい。気孔率は、好ましくは、45%以上、さらに好ましくは、50%以上である。
一方、集電層の気孔率が大きくなりすぎると、強度及び電子伝導性が低下する。従って、集電層の気孔率は、60%以下が好ましい。気孔率は、好ましくは、58%以下、さらに好ましくは、55%以下である。
【0032】
[1.2.4. CZ粒子]
CZ粒子とは、CeO2-ZrO2固溶体からなる粒子をいう。YCZを含む集電層の製造方法には、種々の方法がある。例えば、Ni-YSZサーメットからなる拡散層の表面に、CZ粒子を含むスラリーを含浸させ、所定の温度で焼成すると、表面近傍のYSZとCZとが反応し、YCZが生成する。この時、未反応のCZ粒子が残留する場合がある。集電層は、このような未反応のCZ粒子を含んでいても良い。
【0033】
[1.3. 活性層]
活性層は、拡散層の電解質側表面に形成される。本発明において、活性層は、Ni粒子(C)と、固体酸化物からなる電解質粒子(C)とを含むサーメット(C)からなる。活性層は、電極反応の反応場となる部分である。そのため、活性層は、電子伝導性及びイオン伝導性に優れている必要がある。また、高い耐久性を得るためには、活性層は、耐酸化性に優れているのが好ましい。
【0034】
[1.3.1. Ni粒子(C)]
Ni粒子(C)は、活性層中において、電極触媒及び電子伝導体として機能する。そのため、Ni粒子(C)の含有量が少なくなりすぎると、セル全抵抗が高くなり、発電出力も低下する。従って、Ni粒子(C)の含有量は、30wt%以上が好ましい。
【0035】
一方、Ni粒子(C)の含有量が過剰になると、活性層中における電解質粒子(C)の割合が少なくなるため、かえってセル全抵抗が高くなり、発電出力も低下する。従って、Ni粒子(C)の含有量は、70.0wt%以下が好ましい。Ni粒子(C)の含有量は、好ましくは、65.0wt%以下、さらに好ましくは、60wt%以下である。
【0036】
[1.3.2. 電解質粒子(C)]
電解質粒子(C)の組成は、活性層としての機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。電解質粒子(C)は、電解質粒子(A)及び/又は電解質粒子(B)と同一の組成を有するものでも良く、あるいは、異なる組成を有するものでも良い。
【0037】
電解質粒子(C)としては、例えば、
(a)3mol%以上15mol%以下のY23を含むイットリア安定化ジルコニア、
(b)次の式(3)を満たすYCZ、
などがある。
x’Cey'Zr1-x'-y'2-δ' …(3)
但し、
0<x'≦0.30、
0<y'≦0.20、
δ'は、電気的中性が保たれる値。
【0038】
特に、式(3)で表すYCZは、耐酸化性に優れているので、活性層を構成する電解質粒子(C)として好適である。電解質粒子(C)がYCZからなる場合、x’及びy’は、以下の条件を満たしているのが好ましい。
【0039】
[A. x']
式(3)中、x'は、電解質粒子(C)に含まれるY、Ce及びZrの総モル数に対するYのモル数の比を表す。Yは、上述したように、ZrO2のイオン伝導度を向上させる作用がある。そのため、x'が小さくなりすぎると、活性層のイオン伝導度が低下する。従って、x'は、0超が好ましい。x'は、好ましくは、0.03以上、好ましくは、0.05以上、さらに好ましくは、0.07以上である。
【0040】
一方、x'が大きくなりすぎると、かえってイオン伝導度が低下する。従って、xは、0.30以下が好ましい。xは、好ましくは、0.20以下である。
【0041】
[B. y']
式(3)中、y'は、電解質粒子(C)に含まれるY、Ce及びZrの総モル数に対するCeのモル数の比を表す。Ceは、上述したように、ZrO2に酸素吸蔵・放出能を付与する作用がある。そのため、y'が小さくなりすぎると、活性層の耐酸化性が低下する。従って、y'は、0超が好ましい。y'は、好ましくは、0.001以上である。
【0042】
一方、y'が大きくなりすぎると、酸素拡散の活性化エネルギーが大きくなり、かえって酸素が拡散しにくくなる(参考文献1参照)。また、y'が大きくなりすぎると、焼結性が低下し、活性層の機械的特性が低下する。従って、y'は、0.20以下が好ましい。
【0043】
[C. δ']
δ'は、電気的中性が保たれる値を表す。Zrは4価であるのに対し、Yは3価である。また、Ceは、ZrO2中において、4価又は3価を取る。そのため、ZrO2にY及びCeを固溶させると、電気的中性が保たれるように、所定量の酸素空孔が導入される。
【0044】
[D. Ce/Zr比]
「Ce/Zr比」とは、電解質粒子(C)に含まれるZrの平均モル濃度に対するCeの平均モル濃度の比をいう。
Ce/Zr比が大きくなるほど、活性層の耐久性が向上する。このような効果を得るためには、Ce/Zr比は、0.001以上が好ましい。Ce/Zr比は、好ましくは、0.002以上である。
【0045】
一方、Ce/Zr比が大きくなりすぎると、かえってイオン伝導度が低下し、あるいは、焼結性が低下する。従って、Ce/Zr比は、0.20以下が好ましい。
【0046】
[1.3.3. 気孔率]
活性層の気孔率は、発電特性に影響を与える。活性層の気孔率が小さすぎると、反応生成物である水蒸気の排出特性が低下する。従って、活性層の気孔率は、20%以上が好ましい。気孔率は、好ましくは、22%以上、さらに好ましくは、25%以上である。
一方、活性層の気孔率が大きくなりすぎると、三相界面が相対的に少なくなり、かえって発電特性が低下する。従って、活性層の気孔率は、40%以下が好ましい。気孔率は、好ましくは、35%以下、さらに好ましくは、30%以下である。
【0047】
[1.4. 特性]
[1.4.1. オーミック抵抗]
「オーミック抵抗」とは、燃料電池の内部抵抗の内、構成素材の抵抗成分をいう。YCZを集電層に用いることによって、酸素吸蔵作用を示し、かつ、酸素拡散性も向上する。酸素吸蔵作用により、Ni酸化に対する抵抗が向上し、集電層の電子伝導性の低下が抑制される。その結果、オーミック抵抗が低下する。
具体的には、アノードの組成を最適化すると、オーミック抵抗は、0.12Ω・cm以下となる。アノードの組成をさらに最適化すると、オーミック抵抗は、0.11Ω・cm以下となる。
【0048】
[1.4.2. 反応抵抗]
「反応抵抗」とは、燃料電池の内部抵抗の内、化学反応(電極反応)の速度限界による抵抗成分をいう。YCZを集電層に用いると、オーミック抵抗だけでなく、反応抵抗も低下する。
具体的には、アノードの組成を最適化すると、反応抵抗は、0.12Ω・cm以下となる。アノードの組成をさらに最適化すると、反応抵抗は、0.1Ω・cm以下となる。
【0049】
[2. 固体酸化物形燃料電池用アノードの製造方法(1)]
本発明の第1の実施の形態に係る固体酸化物形燃料電池用アノードの製造方法は、
(a)Ni粒子(A)、及び、電解質粒子(A)の原料を含む原料混合物(A)を用いて拡散層成形体を作製する拡散層成形体作製工程と、
(b)拡散層成形体の表面に、Ni粒子(C)、及び、電解質粒子(C)の原料を含む原料混合物(C)を用いて活性層成形体を形成する活性層成形体形作製工程と、
(c)得られた積層体を焼結させる焼結工程と、
(d)拡散層/活性層からなる焼結体の活性層が形成されていない面にCZ粒子を含むスラリーを含浸させ、拡散層に含まれるYSZとCZとを固相反応させることにより、YCZを生成させる集電層形成工程と、
(e)得られた焼結体を還元処理する還元工程と、
を備えている。
【0050】
[2.1. 拡散層成形体作製工程]
まず、Ni粒子(A)、及び、電解質粒子(A)の原料を含む原料混合物(A)を用いて拡散層成形体を作製する(拡散層成形体作製工程)。
【0051】
電解質粒子(A)の原料の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な原料を選択することができる。
例えば、電解質粒子(A)の原料としては、
(a)目的とする組成を有するYSZ粉末、
(b)目的とする組成となるように配合されたZrO2粉末と、Y23粉末との混合物
などがある。
Ni粒子(A)の原料としては、例えば、NiO粉末などがある。
【0052】
また、原料混合物(A)中には、造孔材(例えば、カーボン粉末)が含まれていても良い。原料混合物(A)中にNiO粉末が添加されている場合、焼結体作製後に還元処理される。その際、体積収縮が起こり、焼結体内に気孔が導入される。そのため、造孔材は、必ずしも必要ではない。しかし、原料混合物(A)中に造孔材を添加すると、気孔率の制御の自由度が増大する。
【0053】
拡散層成形体の作製方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。拡散層成形体の作製方法としては、例えば、
(a)原料混合物(A)を含むスラリーをテープ成形し、得られたグリーンシートを複数枚積層し、積層体を静水圧プレスして圧着させる方法、
(b)原料混合物(A)を金型でプレス成形する方法、
などがある。
【0054】
[2.2. 活性層成形体作製工程]
次に、拡散層成形体の表面に、Ni粒子(C)、及び、電解質粒子(C)の原料を含む原料混合物(C)を用いて活性層成形体を形成する(活性層成形体作製工程)。
【0055】
電解質粒子(C)の原料の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な原料を選択することができる。電解質粒子(C)の原料としては、
(a)目的とする組成を有するYSZ粉末若しくはYCZ粉末、
(b)目的とする組成となるように配合されたYSZ粉末と、CeO2粉末及び/又はCZ粉末との混合物
(c)目的とする組成となるように配合されたZrO2粉末とY23粉末との混合物、若しくは、ZrO2粉末とY23粉末とCeO2粉末との混合物
などがある。
Ni粒子(C)の原料の詳細については、Ni粒子(A)の原料と同様であるので、説明を省略する。
【0056】
さらに、原料混合物(A)と同様の理由から、原料混合物(C)中には、造孔材(例えば、カーボン粉末)が含まれていても良い。
【0057】
活性層成形体の作製方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。活性層成形体の作製方法としては、例えば、
(a)原料混合物(C)を含むスラリーをテープ成形し、得られたグリーンシートを拡散層成形体の上に積層し、積層体を静水圧プレスして圧着させる方法、
(b)原料混合物(C)を含むスラリーを作製し、拡散層成形体の表面にスラリーをスクリーン印刷する方法、
などがある。
【0058】
[2.3. 焼結工程]
次に、得られた積層体を焼結させる(焼結工程)。焼結条件は、原料組成に応じて最適な条件を選択するのが好ましい。焼結は、通常、大気雰囲気下において、1000℃~1500℃で1時間~5時間行うのが好ましい。
原料混合物中に2種以上の酸化物が含まれている場合、焼結中に固相反応が進行し、所定の組成を有する固溶体が生成する。また、原料混合物中に造孔材が含まれている場合、焼結時に造孔材が消失し、焼結体内に気孔が形成される。
【0059】
[2.4. 集電層形成工程]
次に、拡散層/活性層からなる焼結体の活性層が形成されていない面にCZ粒子を含むスラリーを含浸させる。次いで、これを所定温度に加熱する。これにより、拡散層に含まれるYSZとCZとが固相反応し、YCZが生成する。固相反応の条件は、原料組成に応じて最適な条件を選択するのが好ましい。固相反応は、通常、大気雰囲気下において、500℃~1000℃で1時間~10時間行うのが好ましい。
【0060】
[2.5. 還元工程]
次に、得られた焼結体を還元処理する(還元工程)。これにより、本発明に係るアノードが得られる。還元処理は、焼結体中に含まれるNiO粒子をNi粒子に還元するために行われる。還元条件は、特に限定されるものではなく、アノード、電解質、及びカソードの組成に応じて最適な条件を選択するのが好ましい。
なお、固体酸化物形燃料電池は、後述するように、アノード/電解質/反応防止層/カソードの接合体からなる。アノードの還元は、通常、各層を接合した後に行われる。
【0061】
[3. 固体酸化物形燃料電池用アノードの製造方法(2)]
本発明の第2の実施の形態に係る固体酸化物形燃料電池用アノードの製造方法は、
(a)Ni粒子(A)、及び、電解質粒子(A)の原料を含む原料混合物(A)を用いて拡散層成形体を作製する拡散層成形体作製工程と、
(b)拡散層成形体の一方の表面に、Ni粒子(C)、及び、電解質粒子(C)の原料を含む原料混合物(C)を用いて活性層成形体を形成する活性層成形体形作製工程と、
(c)拡散層成形体の他方の表面に、Ni粒子(B)、及び、電解質粒子(B)の原料を含む原料混合物(B)を用いて集電層成形体を形成する集電層成形体形作製工程と、
(d)得られた積層体を焼結させる焼結工程と、
(e)得られた焼結体を還元処理する還元工程と、
を備えている。
【0062】
本実施の形態に係る方法は、活性層成形体/拡散層成形体/集電層成形体からなる積層体を作製し、積層体を一体的に焼結させるものである。この点が第1の実施の形態とは異なる。集電層成形体の形成方法は、活性層成形体の形成方法と同様である。その他の点については第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0063】
[4. 固体酸化物形燃料電池]
図1に、YCZをアノードの集電層に用いた固体酸化物形燃料電池の模式図を示す。
図1において、固体酸化物形燃料電池(SOFC)10は、
電解質12と、
電解質12の一方の面に接合されたアノード14と、
電解質12の他方の面に接合されたカソード16と、
電解質12とカソード16との間に挿入された反応防止層18と
を備えている。
【0064】
アノード14は、拡散層14aと、拡散層14aの集電体側表面に形成された集電層14bと、拡散層14aの電解質12側表面に形成された活性層14cとを備えている。拡散層14a、集電層14b、及び活性層14cの詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
【0065】
電解質12、カソード16、及び反応防止層18の材料は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。
例えば、電解質12には、YSZなどを用いることができる。また、カソード16には、(La,Sr)CoO3(LSC)、(La,Sr)(Co,Fe)O3(LSCF)などを用いることができる。
反応防止層18は、電解質12とカソード16とが直接、接触することにより生じる反応を防止するための層であり、必要に応じて挿入される。例えば、電解質12がYSZであり、カソード16がLSCである場合、反応防止層18には、Gd添加CeO2(GDC)を用いるのが好ましい。
【0066】
[4. 作用]
図2に、Ni-YSZサーメットを用いた従来のアノードの模式図を示す。アノードがNi-YSZサーメットからなるSOFCにおいて、アノードにH2ガスを供給し、カソードに空気を供給すると、カソード側からアノード側に向かってO2-が拡散する。その結果、アノード表面において次の式(4)の反応が進行する。
2+O2- → H2O+2e- …(4)
【0067】
SOFCの低コスト化及びダウンサイジング化のためには、1セル当たりの出力を上げ、スタック中のセル数を少なくすることが有効である。しかしながら、高出力下の発電では水蒸気が多量に発生し、その水蒸気がアノード中のNiを酸化させる。その結果、電極活性が低下する。また、Niが酸化してNiOになると、体積が約1.6倍に膨張するために、アノードの剥離又はセルの破壊が生じるおそれがある。
【0068】
これに対し、YCZは、酸化物イオン伝導体としての機能に加えて、酸素吸蔵・放出能を持つ(図3参照)。そのため、YCZをSOFCのアノードの集電層に適用した場合、高出力下での発電により水蒸気が多量に発生しても、YCZが水蒸気中の酸素イオンをトラップする。その結果、アノード表面近傍におけるNiの酸化、及び、これに起因するアノード/集電体間の接触抵抗の増加を抑制することができる。
【実施例
【0069】
(実施例1~4、比較例1)
[1. セルの作製]
[1.1. 実施例1~4]
[1.1.1. SOFCセルの作製]
公知の方法を用いて、アノードの拡散層がNi-YSZサーメットからなるSOFCセルを作製した。
【0070】
[1.1.2. YCZを含む集電層の作製]
エタノール中に濃度10wt%のCZ粒子が分散しているCZスラリーを調製した。次いで、SOFCセルのアノードの拡散層表面にCZスラリーを含浸させた。さらに、SOFCセルを100℃で乾燥させた後、大気中、800℃で焼成した。
【0071】
CZ粒子には、
(a)5mol%CeO2-ZrO2粒子(CZ0595)(実施例1)、
(b)9mol%CeO2-ZrO2粒子(CZ0991)(実施例2)、
(c)25mol%CeO2-ZrO2粒子(CZ2575)(実施例3)、又は、
(d)50mol%CeO2-ZrO2粒子(CZ5050)(実施例4)、
を用いた。
【0072】
[1.2. 比較例1]
実施例1で得られたSOFCセル(CZスラリー未添加)をそのまま試験に供した。
【0073】
[2. 試験方法]
[2.1. EPMA分析]
アノードの断面のEPMA分析を行った。
[2.2. オーミック抵抗及び反応抵抗]
インピーダンス振幅:100mV、周波数範囲:0.3MHz~0.1Hzの条件下で、SOFCセルのインピーダンスを測定した。得られたインピーダンスから、セル全抵抗(Ω・cm)を算出した。さらに、セル全抵抗(Ω・cm)から、オーミック抵抗(Ω・cm)と反応抵抗(Ω・cm)とを算出した。
【0074】
[2.3. 発電出力]
SOFCセルのアノード及びカソードに、それぞれ、燃料及び酸化剤を供給し、発電を行った。燃料には、100%水素を用い、水素流量は200cc/minとした。酸化剤には、空気を用い、空気流量は500cc/minとした。セル温度は、700℃とした。セル電圧:0.8Vの時の電流値から、発電出力を算出した。
【0075】
[3. 結果]
[3.1. EPMA分析]
図4(A)に、アノード(実施例3)のSEM像を示す。図4(B)に、アノード(実施例3)のCeマッピング結果(EPMA分析)を示す。図4より、上記方法によって、拡散層内に最大10μmの集電層が形成されていることが分かった。
【0076】
[3.2. セル抵抗、発電出力]
表1に、発電出力、反応抵抗、及びオーミック抵抗を示す。表1より、以下のことが分かる。
(1)実施例1~4の発電出力は、比較例1に比べて1.2倍以上向上した。
(2)発電時の反応抵抗及びオーミック抵抗は、いずれも、CZ添加により低減した。
【0077】
【表1】
【0078】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池用アノードは、家庭用コジェネレーションシステム、独立分散型電源などに用いられる固体酸化物形燃料電池のアノードとして使用することができる。
図1
図2
図3
図4