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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】パイロット式電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
F16K31/06 305V
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019090587
(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公開番号】P2020186757
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 総太
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-209285(JP,A)
【文献】特開2011-085214(JP,A)
【文献】特開平11-072175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06 - 31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ポートと出力ポートとの間に設けられた主弁座に、ダイアフラム弁体を当接又は離間させることにより、前記入力ポートから前記出力ポートへ流れる流体を制御する主弁と、前記主弁を内蔵する弁本体と、前記弁本体に取り付けられ、コイルへの通電に応じてポペット弁体をポペット弁座に当接又は離間させることにより、前記ダイアフラム弁体の背室の圧力を制御する電磁式ポペット弁と、を備え、前記弁本体が、前記入力ポートと前記背室とを連通させる第1バイパス流路と、前記ポペット弁座を備えるポペット室と、前記ポペット室と前記背室とを連通させる連通路と、前記ポペット室と前記出力ポートとを連通させる第2バイパス流路と、を形成されているパイロット式電磁弁において、
前記弁本体は、前記ポペット室と前記背室とを連通させる貫通穴を有し、
前記貫通穴は、前記ポペット弁座の中心と前記連通路の中心とを通る軸線と直交し、かつ、前記ポペット弁座の中心を通る中心線より、前記連通路と反対寄りの位置に、設けられていること
を特徴とするパロット式電磁弁。
【請求項2】
請求項1に記載されるパイロット式電磁弁において、
前記第1バイパス流路と前記連通路と前記ポペット弁座と前記第2バイパス流路が、前記ポペット弁座の中心と前記連通路の中心とを通る前記軸線上に配置され、
前記連通路は、前記ポペット弁座より第1バイパス流路側に設けられ、
前記貫通穴は、前記中心線より第2バイパス流路側に設けられていること、
を特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するパイロット式電磁弁において、
前記貫通穴がポペット室に開口する開口面積は、前記ポペット弁座の開口面積より小さく、
前記連通路がポペット室に開口する開口面積は、前記ポペット弁座の開口面積より大きいこと
を特徴とするパイロット式電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁式ポペット弁への通電に応じて主弁を開閉するパイロット式電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、脱水機や、水冷式冷却装置、洗浄装置などでは、水が流れる配管にパイロット式電磁弁が配設され、水のON-OFF制御が行われている。パイロット式電磁弁としては、例えば、図4に示すものが製造・販売されている。
【0003】
図4に示す従来のパイロット式電磁弁100は、弁本体10に電磁式ポペット弁20が取り付けられ、電磁式ポペット弁20への通電に応じて、弁本体10に内蔵される主弁11が開閉される。
【0004】
弁本体10は、入力ポート101と出力ポート104が入力流路102と弁孔103を介して連通している。入力ポート101と出力ポート104は、弁本体10に同軸上に形成されている。弁孔103は、出力ポート104の軸線と直交する方向に沿って弁本体10に形成され、出力ポート104と連通している。主弁11は、主弁座12とダイアフラム弁体13とを備える。
【0005】
主弁座12は、弁孔103の開口部外周に沿って弁本体10に設けられている。ダイアフラム弁体13は、主弁座12に当接又は離間可能に設けられ、作用室105と背室106とを気密に区画している。弁ばね18は、背室106に縮設され、ダイアフラム弁体13を主弁座12側へ常時付勢している。背室106は、第1バイパス流路111と入力流路102を介して入力ポート101に連通している。
【0006】
弁本体10は、背室106と同軸上にポペット室113が形成されている。ポペット室113は、背室106より容積が小さく、連通路112を介して背室106と連通している。弁本体10は、ポペット室113と背室106とを連通するように貫通穴が形成され、その貫通穴により、第1バイパス流路111と連通路112が部分的に重なり合って形成されている。また、ポペット室113は、第2バイパス流路114を介して弁孔103に連通している。よって、背室106は、連通路112、ポペット室113、第2バイパス流路114を介して弁孔103と連通している。
【0007】
ポペット室113は、第2バイパス流路114のパイロット孔1141が底部中央に開口し、その開口部外周に沿って、ポペット弁座21が設けられている。電磁式ポペット弁20は、ポペット弁体22がポペット弁座21に当接又は離間するように、弁本体10に取り付けられている。電磁式ポペット弁20は、コイル組立体23にコイルが巻回されている。コイル組立体23は、中空部を備え、その中空部の一端開口部にコア24が固定され、他端開口部からプランジャ25が往復直線運動可能に装填されている。プランジャばね26は、プランジャ25をポペット弁座21側に常時付勢している。
【0008】
このようなパイロット式電磁弁100は、コイル組立体23のコイルに通電されない場合、主弁11が弁閉状態になる。すなわち、電磁式ポペット弁20は、コア24が励磁されず、プランジャ25がプランジャばね26に付勢されてポペット弁体22をポペット弁座21に当接させる。水が入力ポート101に供給されると、その水は、第1バイパス流路111を介して背室106に流入するが、電磁式ポペット弁20に遮断されて弁孔103側に流れない。よって、ダイアフラム弁体13は、背室106側に作用する力が、出力ポート104側に作用する力より大きくなり、主弁座12に当接する。
【0009】
パイロット式電磁弁100は、コイル組立体23のコイルに通電された場合、主弁11が弁開状態になり、出力ポート104から水を出力する。すなわち、電磁式ポペット弁20は、コイル組立体23への通電に応じてコア24が励磁される。コア24は、プランジャばね26に抗してプランジャ25を吸引し、ポペット弁体22をポペット弁座21から離間させる。これにより、背室106の内力が、連通路112、パイロット孔1141、第2バイパス流路114を介して出力ポート104へ排出されるので、ダイアフラム弁体13の背室106側の受圧力が低下して、作用室105側の受圧力が勝り、ダイアフラム弁体13が主弁座12から離間する。つまり、主弁11が弁閉状態から弁開状態になり、水が出力ポート104から出力される。
【0010】
パイロット式電磁弁100は、コイル組立体23のコイルへの通電が停止されると、ポペット弁体22がポペット弁座21に当接する。入力ポート101に供給された水は、背室106に流入し、背室106の内圧を上昇させる。ダイアフラム弁体13は、背室106の内圧が上昇するのに応じて主弁座12側に変位し、主弁座12に当接する。つまり、主弁11が弁開状態から弁閉状態になり、水が出力ポート104から出力されなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来技術には、次のような問題はあった。すなわち、従来のパイロット式電磁弁100は、弁を開閉して水を供給する時に、配管に揺れを生じさせることがあった。配管の揺れは、異音を発生させたり、配管が塩ビ配管である場合には、配管を疲労破壊させたりする恐れがあるため、好ましくない。
【0012】
そこで、発明者は、弁の開閉時における圧力変動確認試験を行った。試験では、3種類の試験回路を作製した。第1試験回路は、図5(a)に示すように、垂直方向に配設された垂直配管301に、上流側から第1圧力変換器201、図4に示すパイロット式電磁弁100、第2圧力変換器202を配設した。第1試験回路は、図中L1に示すように、出力側の配管301aをパイロット式電磁弁100から1m程度立ち上げた。第2試験回路は、図5(b)に示すように、垂直方向に配設された垂直配管302に、上流側から第1圧力変換器201、パイロット式電磁弁100、第2圧力変換器202を配設した。第2試験回路は、図に示すように、出力側の配管302aをパイロット式電磁弁100からほとんど立ち上げていない。第3試験回路は、図5(c)に示すように、水平方向に配設された水平配管303に、上流側から第1圧力変換器201、パイロット式電磁弁100、第2圧力変換器202を配設した。第3試験回路は、図中L3に示すように、出力側の配管303aを1m程度立ち上げるように設けたものである。
【0013】
試験は、第1~第3試験回路毎に、出力側の配管301a,302a,303aを開放した状態で、圧力を0.25MPaに調整した水を供給した。そして、第1~第3試験回路毎に、パイロット式電磁弁100の一次側圧力P1の圧力波形を、第1圧力変換器201を用いて測定し、パイロット式電磁弁100の二次側圧力P2の圧力波形を、第2圧力変換器202を用いて測定した。また、第1~第3試験回路毎に、配管に揺れが生じるか否かを目視で確認した。
【0014】
図6は、第1試験回路の圧力変動確認試験結果を示す。図6(a)に示すように、第1試験回路は、パイロット式電磁弁100が電圧を印加されて(図中D1参照)、主弁11を開き始めるときに、図中D2,D3に示すように、一次側圧力P1と二次側圧力P2に大きな圧力変動が生じた。その圧力変動は、約1秒間続いた(図中T1参照)。圧力変動がある間、垂直配管301の揺れが目視によって確認された。
【0015】
また、第1試験回路は、図6(b)に示すように、パイロット式電磁弁100が電圧の印加を停止されて(図中D11)、主弁11を閉じ始めるときに、図中D12、D13に示すように、一次側圧力P1と二次側圧力P2に大きな圧力変動が生じた。その圧力変動は、約1秒間続いた(図中T11参照)。圧力変動がある間、垂直配管301の揺れが目視によって確認された。
【0016】
これに対して、第2試験回路と第3試験回路は、パイロット式電磁弁100の開閉時に、圧力変動が殆ど確認されなかった。また、垂直配管302や水平配管303の揺れが目視によって確認されなかった。
【0017】
以上より、パイロット式電磁弁100は、取付姿勢と、出力側の配管の長さに起因して、弁の開閉時に圧力変動と配管の揺れが発生することを確認した。
【0018】
次に、発明者は、透明の弁本体10を作製し、垂直配管301に揺れが発生しているときのパイロット式電磁弁100の内部状態を確認した。その結果、図7に示すように、背室106にエア溜まりEが背室106の半分程度まで形成されていることを確認した。発明者は、このエア溜まりEがクッションになって、弁の開閉時に圧力変動や配管の揺れが生じると考えた。
【0019】
すなわち、図7に示すように、水が入力ポート101から第1バイパス流路111を介して背室106に流入すると、水に混入しているエアが、背室106の高い部分に溜まる。連通路112は、ポペット弁座21より低い位置にある。そのため、背室106のエアは、連通路112を介してポペット室113へ抜けることができず、背室106に残留する。よって、背室106では、エア溜まりEが半分程度まで成長していた。
【0020】
パイロット式電磁弁100は、電圧の印加により、ポペット弁体22がポペット弁座21から離間すると、ダイアフラム弁体13が主弁座12から離間する。しかし、主弁座12から離間したダイアフラム弁体13は、エア溜まりEの反発力によって主弁座12側へ押し戻され、ダイアフラム弁体13と主弁座12との間の流路面積を狭くする。流路面積が狭くなることにより、水は、弁孔103に流入する際の流速が大きくなる。そのため、弁孔103付近が、負圧状態になる。この負圧状態によって、ダイアフラム弁体13が主弁座12に吸引され、主弁座12に当接する。その後、出力ポート104から出力側の配管301aに流出した水が、負圧領域に引き戻されて、弁孔103の内圧を上昇させ、ダイアフラム弁体13が主弁座12から再び離間する。
【0021】
この一連の動作の繰り返しにより、パイロット式電磁弁100は、弁を開き始めるときに、ダイアフラム弁体13が主弁座12に高速で当接又は離間を繰り返すチャタリングを発生する。このチャタリングにより、水が出力ポート104から断続的に出力され、圧力変動と垂直配管301の揺れが生じると、考えられる。
【0022】
一方、パイロット式電磁弁100は、電圧の印加が停止されることにより、ポペット弁体22がポペット弁座21に当接すると、ダイアフラム弁体13が主弁座12側に変位し、入力ポート101から出力ポート104へ流れる水の流量を急激に減少させる。しかし、出力ポート104側の水は、慣性力によって下流側へ流れる。そのため、弁孔103付近が負圧状態になる。すると、出力側の配管301aに出力された水が、負圧領域、つまり、弁孔103に引き戻され、ダイアフラム弁体13を主弁座12から離間する方向に加圧して主弁座12から離間させる。このとき、エア溜まりEの反発力によって、ダイアフラム弁体13が主弁座12側へ押し戻され、主弁座12に当接する。
【0023】
この一連の動作の繰り返しにより、パイロット式電磁弁100は、弁を閉じ始めるときに、チャタリングを発生する。このチャタリングにより、水が出力ポート104から断続的に出力され、圧力変動と垂直配管301の揺れが生じると、考えられる。
【0024】
なお、水平配管303に設置したパイロット式電磁弁100に圧力変動や配管の揺れが確認されなかったのは、背室106の連通路112が開口する部分に、エアが溜まり、ポペット弁体22がポペット弁座21から離間した際に、背室106に溜まったエアが、連通路112からポペット室113、第2バイパス流路114を介して弁孔103に抜け易いためと考えられる。つまり、エア溜まりEは背室106の1~2割くらいに溜まる程度であれば、ダイアフラム弁体13の変位に殆ど影響せず、水平配管303は、その程度までしかエア溜まりEが成長しないためと考えられる。
【0025】
また、垂直配管302に設置したパイロット式電磁弁100に圧力変動や配管の揺れが確認されなかったのは、出力側の配管302aの垂直方向への立ち上がりがないことにより、出力ポート104から出力された水が弁孔103側に戻る量が少ないためと考えられる。
【0026】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、弁の開閉時に発生するチャタリングを抑制することができるパイロット式電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の一態様は、次のような構成を有している。すなわち、(1)入力ポートと出力ポートとの間に設けられた主弁座に、ダイアフラム弁体を当接又は離間させることにより、前記入力ポートから前記出力ポートへ流れる流体を制御する主弁と、前記主弁を内蔵する弁本体と、前記弁本体に取り付けられ、コイルへの通電に応じてポペット弁体をポペット弁座に当接又は離間させることにより、前記ダイアフラム弁体の背室の圧力を制御する電磁式ポペット弁と、を備え、前記弁本体が、前記入力ポートと前記背室とを連通させる第1バイパス流路と、前記ポペット弁座を備えるポペット室と、前記ポペット室と前記背室とを連通させる連通路と、前記ポペット室と前記出力ポートとを連通させる第2バイパス流路と、を形成されているパイロット式電磁弁において、前記弁本体は、前記ポペット室と前記背室とを連通させる貫通穴を有し、前記貫通穴は、前記ポペット弁座の中心と前記連通路の中心とを通る軸線と直交し、かつ、前記ポペット弁座の中心を通る中心線より、前記連通路と反対寄りの位置に、設けられていることを特徴とする。
【0028】
上記構成のパイロット式電磁弁は、例えば、ポペット弁座より下側に連通路を配置する姿勢で配管に取り付けられた場合でも、電磁式ポペット弁に通電してポペット弁体をポペット弁座から離間させたときに、背室に溜まったエアが貫通穴を介してポペット室に抜ける。そのため、背室に残留するエアの残留量が抑制され、ダイアフラム弁体が背室側と出力ポート側の圧力差に応じてスムーズに変位する。よって、上記構成のパイロット式電磁弁によれば、弁の開閉時に発生するチャタリングを抑制することができる。
【0029】
(2)(1)に記載の構成において、前記第1バイパス流路と前記連通路と前記ポペット弁座と前記第2バイパス流路が同軸上に形成され、前記連通路は、前記ポペット弁座より第1バイパス流路側に設けられ、前記貫通穴は、前記中心線より第2バイパス流路側に設けられていること、が好ましい。
【0030】
上記構成のパイロット式電磁弁によれば、簡単な流路構成で、弁の開閉時に発生するチャタリングを防止することができる。
【0031】
(3)(1)又は(2)に記載するパイロット式電磁弁において、前記貫通穴がポペット室に開口する開口面積は、前記ポペット弁座の開口面積より小さく、前記連通路がポペット室に開口する開口面積は、前記ポペット弁座の開口面積より大きいことが好ましい。
【0032】
上記構成のパイロット式電磁弁は、流体が連通路からポペット室を介して第2バイパス流路に流れ込む勢いを利用して、背室に溜まっているエアを、貫通穴を介してポペット室に抜くエア抜きを促進でき、弁の開閉時に発生するチャタリングを効率良く抑制することができる。
【発明の効果】
【0033】
従って、本発明によれば、弁の開閉時に発生するチャタリングを抑制することができるパイロット式電磁弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施形態に係るパイロット式電磁弁の断面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】エアの流れを説明する図である。
図4】従来のパイロット式電磁弁の断面図である。
図5】試験回路を示す図である。
図6図4に示すパイロット式電磁弁の圧力変動確認試験結果を示す図である。
図7】チャタリングの原因を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明に係るパイロット式電磁弁の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るパイロット式電磁弁1の断面図である。本形態のパイロット式電磁弁1は、図4に示す従来のパイロット式電磁弁100に対して、エア抜き用の貫通穴2を設けたものである。
【0036】
パイロット式電磁弁1の弁本体10は、メインボディ3と、バルブボディ4と、スタフィング5と、押さえ板6をネジ固定することにより構成したものである。貫通穴2は、ポペット室113と背室106を形成するスタフィング5に設けられている。本形態において、メインボディ3は、金属などの剛性の高い材料で形成され、バルブボディ4とスタフィング5と押さえ板6は、樹脂などの非磁性材料で形成されている。
【0037】
なお、メインボディ3は、樹脂などの金属以外の材料で形成してもよい。メインボディ3とバルブボディ4は一体で形成してもよい。スタフィング5は、本形態では第1部材51と第2部材52と第3部材53との3部品で構成されているが、一部品で構成してもよいし、2部品または4部品以上で構成してもよい。
【0038】
弁本体10は、入力ポート101と入力流路102と弁孔103と出力ポート104が同一断面上に形成されている。すなわち、入力ポート101と出力ポート104は、メインボディ3の対向する端面に、同軸上に設けられている。そして、弁孔103は、出力ポート104の軸線に対して直交する方向に沿ってメインボディ3に形成され、出力ポート104に連通している。入力流路102は、弁孔103の径方向外側の位置に、入力ポート101と連通するように、メインボディ3に形成されている。
【0039】
主弁座12は、弁孔103の開口部外周に沿って設けられるように、バルブボディ4に一体成形されている。ダイアフラム弁体13は、弾力性を有するゴムで形成されている。ダイアフラム弁体13は、バルブボディ4とスタフィング5との間で外縁部を挟持されることにより、バルブボディ4とスタフィング5との間に形成される空間部を、作用室105と背室106とに気密に区画している。
【0040】
ダイアフラム弁体13は、案内ロッド16を介して、第1受圧体14と第2受圧体15との間で挟持され、ダイアフラム組立17を構成している。スタフィング5は、第1受圧体14との間で弁ばね18を支持するバネ受け部531が第3部材53に設けられている。ガイド孔532は、背室106の軸線方向に沿ってバネ受け部531に形成され、案内ロッド16が摺動可能に嵌め合わされている。
【0041】
第1受圧体14は、金属を円筒形のコップ形状に成形したものである。第2受圧体15は、金属を円板形状に成形したものである。第1受圧体14の外径は主弁座12の外径より大きく、第2受圧体15の外径は主弁座12の外径より小さい。よって、ダイアフラム組立17は、案内ロッド16がガイド孔532にガイドされた状態で、第1受圧体14と第2受圧体15に作用する力のバランスに応じて背室106の軸線方向に沿って変位し、ダイアフラム弁体13を主弁座12に対して周方向に均一な力で押し付けることができる。
【0042】
弁本体10の第1バイパス流路111と、連通路112と、ポペット室113と、第2バイパス流路114は、入力ポート101や出力ポート104と同一断面上に現れるように、形成されている。ポペット室113は、背室106と同軸上に設けられ、底部中央部に第2バイパス流路114のパイロット孔1141が開口している。ポペット弁座21は、パイロット孔1141の開口部外周に沿って設けられている。
【0043】
つまり、図2に示すように、第1バイパス流路111と、連通路112と、ポペット室113と、第2バイパス流路114と、ポペット弁座21は、同軸上に形成されている。連通路112は、ポペット弁座21の中心と連通路112の中心とを通る軸線X1と直交し、かつ、ポペット弁座21の中心を通る中心線X2より、第1バイパス流路111側に設けられている。貫通穴2は、中心線X2より第2バイパス流路114側に設けられている。つまり、弁本体10は、中心線X2より、連通路112と反対寄りの位置に、貫通穴2が設けられている。
【0044】
連通路112の流路内径Y2は、ポペット弁座21の開口部内径Y1より大きく、貫通穴2の流路内径Y3は、ポペット弁座21の開口部内径Y1より小さい。つまり、貫通穴2がポペット室113に開口する開口面積は、ポペット弁座21の開口面積より小さい。そして、連通路112がポペット室113に開口する開口面積は、ポペット弁座21の開口面積より大きい。
【0045】
上記パイロット式電磁弁1は、垂直配管に取り付けられる場合、図3に示すように、入力ポート101を下側、出力ポート104を上側とする姿勢になる。この場合、パイロット式電磁弁1は、従来のパイロット式電磁弁100と同様に、入力ポート101に供給された水に混入するエアが背室106に溜まり、エア溜まりEを形成する。
【0046】
そして、パイロット式電磁弁1は、コイル組立体23に通電し、ポペット弁体22がポペット弁座21から離間すると、ポペット室113からパイロット孔1141、第2バイパス流路114、弁孔103を介して出力ポート104へ水が流れ始める。第2部材52は、第1バイパス流路111上に配設され、第1バイパス流路111の流路断面積をパイロット孔1141の流路断面積より小さくしている。そのため、電磁式ポペット弁20が弁開すると、図中Z11、Z12、Z2~Z6に示すように、背室106の水が連通路112、ポペット室113、パイロット孔1141、第2バイパス流路114を介して出力ポート104に流出する。つまり、背室106の内力が連通路112、ポペット室113、パイロット孔1141、第2バイパス流路114を介して出力ポート104へ排出される。これにより、ダイアフラム弁体13は、背室106側の受圧力が低下して、作用室105側の受圧力が勝り、主弁座12から離間する。
【0047】
この場合において、本形態のパイロット式電磁弁1は、エア溜まりEがダイアフラム弁体13の変位に応じて加圧されると、図中Z1に示すように、背室106のエアが貫通穴2を介してポペット室113に抜ける。よって、パイロット式電磁弁1は、図4に示す従来のパイロット式電磁弁100と比べて、背室106に形成されるエア溜まりEが小さい。つまり、パイロット式電磁弁1は、ダイアフラム弁体13が主弁座12から離間する際にエア溜まりEがダイアフラム弁体13を押し返す力が、パイロット式電磁弁100より小さくなる。
【0048】
ポペット室113に抜けたエアは、図中Z2に示すように、連通路112からポペット室113に流入した水と一緒に、パイロット孔1141に流れ込み、図中Z3~Z6に示すように、第2バイパス流路114、弁孔103、出力ポート104を介してパイロット式電磁弁1の外に排出される。
【0049】
連通路112の流路内径Y2は、ポペット弁座21の開口部内径Y1より大きい。つまり、連通路112がポペット室113に開口する開口面積は、ポペット弁座21の開口面積より大きい。そのため、水は、パイロット孔1141に流入する際に加速され、勢いよく第2バイパス流路114を介して弁孔103へ流れる。一方、貫通穴2は、ポペット弁座21の開口部内径Y1より小さい。つまり、貫通穴2の流路内径Y3は、連通路112の流路内径Y2より小さい。つまり、貫通穴2がポペット室113に開口する開口面積は、連通路112の開口面積、及び、ポペット弁座21の開口面積より小さい。よって、背室106から貫通穴2を介してポペット室113に抜けたエアは、ポペット室113からパイロット孔1141に流れ込む水の勢いに乗って、パイロット孔1141に流れ込む。これにより、背室106から貫通穴2を介してポペット室113にエアを抜くエア抜きが促進される。つまり、エア溜まりEの成長が、図4に示す従来のパイロット式電磁弁100より抑制される。
【0050】
よって、パイロット式電磁弁1は、連通路112をポペット弁座21より下側として、ダイアフラム弁体13を水平方向に変位させる姿勢で配管に取り付けられても、電圧を印加された場合に、ダイアフラム弁体13が、背室106の内圧低下に応じて、主弁座12と反対方向にスムーズに変位し、入力ポート101から出力ポート104に水を供給できる。つまり、パイロット式電磁弁1は、主弁11を開き始めるときに、チャタリングが発生せず、出力ポート104から水を安定した流量で出力できる。そのため、パイロット式電磁弁1は、水を供給し始めるときの圧力変動を抑制し、配管の揺れを防止できる。
【0051】
パイロット式電磁弁1は、コイル組立体23への通電を停止すると、ポペット弁体22がポペット弁座21に当接し、水が入力ポート101から第1バイパス流路111を介して背室106に供給される。ダイアフラム弁体13は、背室106の内圧上昇に応じて主弁座12に当接する。
【0052】
主弁11が弁閉した後、水は、慣性の力によって、出力ポート104から出力される。そのため、パイロット式電磁弁1の弁孔103は、負圧状態になる。その後、出力ポート104から出力された水が負圧領域に引き戻される。よって、ダイアフラム弁体13は、主弁座12に当接した後、主弁座12から離間する方向の力を受ける。しかし、背室106は、図4に示す従来のパイロット式電磁弁100と比べ、エア溜まりEが小さく、水を多く充填されている。そのため、ダイアフラム弁体13は、負圧領域に引き戻された水によって主弁座12と反対方向に加圧されても、主弁座12から離間しない。
【0053】
よって、パイロット式電磁弁1は、連通路112をポペット弁座21より下側として、ダイアフラム弁体13を水平方向に変位させる姿勢で配管に取り付けられても、電圧の印加を停止された場合に、ダイアフラム弁体13が背室106の内圧上昇に応じて主弁座12側にスムーズに変位し、主弁座12に当接する。つまり、パイロット式電磁弁1は、主弁11を閉じ始めるときに、チャタリングを発生せずに、水を遮断する。そのため、パイロット式電磁弁1は、水の供給を停止するときの圧力変動を抑制し、配管の揺れを防止できる。
【0054】
発明者らは、図5(a)に示す第1試験回路のパイロット式電磁弁100をパイロット式電磁弁1に交換し、従来のパイロット式電磁弁100について行った試験と同じ条件で、弁の開閉時における圧力変動確認試験を行った。その結果、弁の開閉時に、一次側圧力P1と二次側圧力P2に圧力変動が確認されなかった。また、目視による配管の揺れも確認しなかった。また、発明者らは、図5(b)(c)に示すパイロット式電磁弁100をパイロット式電磁弁1に交換し、弁の開閉時における圧力変動確認試験と目視による配管の揺れを確認する試験を行ったが、圧力変動や配管の揺れを確認しなかった。
【0055】
つまり、パイロット式電磁弁1は、取付姿勢に関わらず、チャタリングを抑制できる。また、パイロット式電磁弁1は、出力ポート104を上側にした姿勢で、垂直方向に沿って配置される長い配管を出力ポート104に接続する場合でも、チャタリングを抑制できる。
【0056】
以上説明したように、本形態のパイロット式電磁弁1は、例えば、ポペット弁座21より下側に連通路112を配置する姿勢で配管に取り付けられた場合でも、電磁式ポペット弁20に通電してポペット弁体22をポペット弁座21から離間させたときに、背室106に溜まったエアが貫通穴2を介してポペット室113に抜ける。そのため、背室106に残留するエアの残留量が抑制され、ダイアフラム弁体13が背室106側と出力ポート104側の圧力差に応じてスムーズに変位する。よって、上記構成のパイロット式電磁弁によれば、取付姿勢や、出力ポート104に接続する配管の長さの制約を受けずに、弁の開閉時に発生するチャタリングを抑制することができる。
【0057】
チャタリングの発生が抑制されることにより、パイロット式電磁弁1は、弁の開閉時に異音を発生しにくい。また、パイロット式電磁弁1に塩ビ配管を接続する場合でも、塩ビ配管が振動により疲労破壊しにくく、配管寿命を長くできる。更に、パイロット式電磁弁1は、水の出力流量を安定させることができる。
【0058】
上記効果は、従来のパイロット式電磁弁100に貫通穴2を追加加工するだけで得ることが可能なので、簡単かつ安価にチャタリング抑制機能を現行品に付加できる。
【0059】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。例えば、パイロット式電磁弁1は、水以外の流体制御に使用してもよい。
【0060】
入力ポート101と出力ポート104は、同軸上に形成しなくてもよい。例えば、入力ポート101と出力ポート104は、90°の位相差で設けて形成したり、出力ポート104を弁孔103と同軸上に形成したりしてもよい。
【0061】
連通路112と第1バイパス流路111を別個に設けてもよい。つまり、連通路112と第1バイパス流路111の一部が、1つの貫通穴で形成されていなくてもよい。
【0062】
貫通穴2の流路内径Y3をポペット弁座21の開口部内径Y1より大きくして、貫通穴2がポペット室113に開口する開口面積を、ポペット弁座21の開口面積より大きくしてもよい。但し、上記形態のように、貫通穴2の開口面積がポペット弁座21の開口面積より小さく、連通路112の開口面積がポペット弁座21の開口面積より大きい場合、水が連通路112からポペット室113を介して第2バイパス流路114に流れ込む勢いを利用して、背室106に溜まっているエアを、貫通穴2を介してポペット室113に抜くエア抜きを促進でき、弁の開閉時に発生するチャタリングを効率良く抑制することができる。なお、貫通穴2は、複数あってもよい。この場合、複数の貫通穴2がポペット室113に開口する面積の総計が、ポペット弁座21の開口面積より小さくすることが好ましい。
【符号の説明】
【0063】
1 パイロット式電磁弁
2 貫通穴
10 弁本体
11 主弁
12 主弁座
13 ダイアフラム弁体
20 電磁式ポペット弁
21 ポペット弁座
22 ポペット弁体
101 入力ポート
103 弁孔
106 背室
111 第1バイパス流路
112 連通路
113 ポペット室
114 第2バイパス流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7