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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20220518BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20220518BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/155 H ZHV
B60L1/00 L
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019197371
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021072696
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小林 尚斗
(72)【発明者】
【氏名】倉内 修司
(72)【発明者】
【氏名】半田 祐一
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/097926(WO,A1)
【文献】特開2014-146589(JP,A)
【文献】特開2008-029050(JP,A)
【文献】特開2019-004544(JP,A)
【文献】特開2016-092884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H02M 3/155
B60L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側端子(CH1,CL1)、出力側端子(CH1,CL1)及びスイッチ部(Q5~Q8,Q11)を有し、前記入力側端子に接続される蓄電部(10)から、前記出力側端子に接続される給電対象(11)へと電力伝達を行う場合に前記スイッチ部をオンオフする電力変換装置(20,90,100)において、
前記スイッチ部は、該スイッチ部に逆導通電流が流れる場合において、そのゲート電圧が負側に大きいほど、逆導通電流が流れる場合に発生する導通損失が大きくなる特性を有しており、
前記電力伝達に伴う発熱量の増大要求があるか否かを判定する判定部と、
前記増大要求があると判定された場合、前記増大要求がないと判定された場合に比べて前記電力伝達を行うときに逆導通電流が流れる前記スイッチ部のオフ時のゲート電圧を負側に増大する制御部(70)と、を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記増大要求があると判定された場合、前記スイッチ部のオフ時のゲート電圧を、前記電力伝達に伴って発生した熱を用いて昇温させる昇温対象要素の温度(T)に基づき設定する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記昇温対象要素の温度が上限温度以上の場合、前記スイッチ部のオフ時のゲート電圧を第1オフ電圧に設定し、前記昇温対象要素の温度が、前記上限温度よりも低い制限開始温度以下の場合、前記スイッチ部のオフ時のゲート電圧を、前記第1オフ電圧よりも負側に増大した第2オフ電圧に設定する請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記昇温対象要素の温度が前記制限開始温度よりも高くてかつ前記上限温度よりも低い場合、前記スイッチ部のオフ時のゲート電圧を、前記昇温対象要素の温度が前記上限温度に近いほど前記第1オフ電圧に近づける請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記昇温対象要素の温度をその目標温度にフィードバック制御すべく、前記スイッチ部のオフ時のゲート電圧を設定する請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
互いに磁気結合される第1コイル(50a)及び第2コイル(50b)を有するトランス(50)と、
前記入力側端子及び前記第1コイルに接続され、前記蓄電部から供給される直流電圧を交番電圧に変換して前記第1コイルに印加する変換回路(30)と、
前記出力側端子及び前記第2コイルに接続され、前記スイッチ部を有するフルブリッジ回路(40)と、を備え、
前記制御部は、前記増大要求があると判定された場合、逆導通電流が流れている前記スイッチ部のオフ時のゲート電圧を、正側に一時的に増大させる期間を設ける請求項1乃至のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
互いに磁気結合される第1コイル及び第2コイルを有するトランスと、
前記入力側端子及び前記第1コイルに接続され、前記蓄電部から供給される直流電圧を交番電圧に変換して前記第1コイルに印加する変換回路と、
前記出力側端子及び前記第2コイルに接続され、前記スイッチ部を有するフルブリッジ回路と、を備え、
前記制御部は、前記増大要求があると判定された場合、前記スイッチ部のオン時のゲート電圧を、前記増大要求がないと判定された場合に比べ低減する請求項1乃至のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記増大要求がないと判定された場合、前記電力伝達を行うときに逆導通電流が流れる前記スイッチ部をオンする請求項1乃至のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記電力伝達に伴って発生した熱を吸収し、その熱を昇温対象要素に伝達する熱伝達部(110)を備える請求項1乃至のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電池の電気エネルギを熱エネルギに変換し、昇温対象要素を昇温する制御が行われている。特許文献1には、電熱ヒータにより加熱された熱交換流体を用いて、昇温対象要素としての蓄電池を昇温する電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3451141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電池を昇温させるために電熱ヒータが追加されると、電力変換装置が大型化する懸念がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、小型化を図ることができる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、入力側端子、出力側端子及びスイッチ部を有し、前記入力側端子に接続される蓄電部から、前記出力側端子に接続される給電対象へと電力伝達を行う場合に前記スイッチ部をオンオフする電力変換装置において、前記スイッチ部は、該スイッチ部に逆導通電流が流れる場合において、そのゲート電圧が負側に大きいほど、逆導通電流が流れる場合に発生する導通損失が大きくなる特性を有しており、前記電力伝達に伴う発熱量の増大要求があるか否かを判定する判定部と、前記増大要求があると判定された場合、前記増大要求がないと判定された場合に比べて前記電力伝達を行うときに逆導通電流が流れる前記スイッチ部のオフ時のゲート電圧を負側に増大する制御部と、を備える。
【0007】
本発明では、入力側端子に接続される蓄電部から、出力側端子に接続される給電対象へと電力伝達を行う場合にスイッチ部がオフされる。この際、スイッチ部に逆導通電流が流れることに伴って導通損失が発生し、その導通損失によって熱が発生する。その熱を利用することにより、昇温対象要素を昇温させるための発熱装置を不要にできたり、発熱装置が設けられる場合であっても、その装置を小型化できたりすることができる。このため、本発明によれば、電力変換装置の小型化を図ることができる。
【0008】
また、本発明のスイッチ部は、逆導通電流が流れる場合において、そのゲート電圧が負側に大きいほど、逆導通電流が流れる場合に発生する導通損失が大きくなる特性を有している。この特性に着目し、本発明では、電力伝達に伴う発熱量の増大要求があると判定された場合、増大要求がないと判定された場合に比べて、電力伝達を行うときに逆導通電流が流れるスイッチ部のオフ時のゲート電圧は負側に増大される。これにより、上記増大要求がある場合にスイッチ部で発生する導通損失を上記増大要求がない場合よりも大きくできる。その結果、電力変換装置で発生する熱量を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の構成図。
図2】通常モード及び発熱モードにおける制御部の機能ブロック図。
図3】Gan-HEMTに流れる逆導通電流の特性を示す図。
図4】通常モード及び発熱モードにおける各スイッチの操作状態の推移を示すタイミングチャート。
図5】制御部の処理手順を示すフローチャート。
図6】通常モード及び発熱モードにおける電流波形等を示すタイミングチャート。
図7】通常モード及び発熱モードにおける電流経路を示す図。
図8】第1実施形態の変形例2に係る電力変換装置の構成図。
図9】通常モード及び発熱モードにおける各スイッチの操作状態の推移を示すタイミングチャート。
図10】通常モード及び発熱モードにおける電流経路を示す図。
図11】第2実施形態に係る電力変換装置の構成図。
図12】通常モード及び発熱モードにおける制御部の機能ブロック図。
図13】制御部の処理手順を示すフローチャート。
図14】通常モード及び発熱モードにおける電流波形等を示すタイミングチャート。
図15】発熱モードにおけるゲート電圧設定部の電圧制御方法を示す図。
図16】発熱モードにおけるゲート電圧設定部の機能ブロック図。
図17】第4実施形態の発熱モードにおける電流波形等を示すタイミングチャート。
図18】第5実施形態の発熱モードにおける各スイッチの操作状態の推移を示すタイミングチャート。
図19】発熱モードにおける電流経路を示すタイミングチャート。
図20】オン時のゲート電圧を低減した場合の導通電流量及び電圧降下量の特性を示す図。
図21】第6実施形態の通常モードにおける制御部の機能ブロック図。
図22】通常モードにおける各スイッチの操作状態の推移を示すタイミングチャート。
図23】第7実施形態に係る電力変換装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る電力変換装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の電力変換装置は、プラグインハイブリッド自動車や電気自動車等の電動化車両に搭載される。
【0011】
図1に示すように、電力変換システムは、蓄電部としての蓄電池10、給電対象11、第1コンデンサ12、第2コンデンサ13、及び電力変換装置20を備えている。
【0012】
蓄電池10は、電力変換装置20を介して、給電対象11に電力を供給する。蓄電池10は、充放電可能な2次電池であり、例えば、リチウムイオン蓄電池である。また、給電対象11は、蓄電池10よりも出力電圧の低い低圧蓄電池と、電気負荷とのうち、少なくとも一方を含む。低圧蓄電池は、例えば鉛蓄電池である。電気負荷は、例えばヘッドランプ等である。
【0013】
電力変換装置20は、第1高電位側端子CH1、第1低電位側端子CL1、第1フルブリッジ回路30、第2高電位側端子CH2、第2低電位側端子CL2、第2フルブリッジ回路40及びトランス50を備えている。本実施形態において、第1高電位側端子CH1及び第1低電位側端子CL1が一対の入力側端子に相当し、第2高電位側端子CH2及び第2低電位側端子CL2が一対の出力側端子に相当する。また、第1フルブリッジ回路30が変換回路に相当する。
【0014】
第1フルブリッジ回路30は、第1~第4スイッチQ1~Q4を備えている。本実施形態において、第1~第4スイッチQ1~Q4は、NチャネルMOSFETである。また、第2フルブリッジ回路40は第5~第8スイッチQ5~Q8を備えている。本実施形態において、第5~第8スイッチQ5~Q8は、GaN-HEMTである。ここで、GaNとは窒化ガリウムであり、HEMTとは高電子移動度トランジスタである。GaN-HEMTは、ゲートに負の電圧を印加すると、逆導通時の電圧降下が増大する特性を有するスイッチングデバイスである。本実施形態において、第5~第8スイッチQ5~Q8が、スイッチ部に相当する。なお、本実施形態において、ドレインが高電位側端子に相当し、ソースが低電位側端子に相当する。
【0015】
第1フルブリッジ回路30において、第1スイッチQ1及び第3スイッチQ3のドレインには、第1高電位側端子CH1が接続されている。第1スイッチQ1のソースには、第2スイッチQ2のドレインが接続され、第3スイッチQ3のソースには、第4スイッチQ4のドレインが接続されている。第2スイッチQ2及び第4スイッチQ4のソースには、第1低電位側端子CL1が接続されている。第1高電位側端子CH1には、第1コンデンサ12を介して第1低電位側端子CL1が接続されている。また、第1高電位側端子CH1には、蓄電池10の正極端子が接続され、蓄電池10の負極端子には、第1低電位側端子CL1が接続されている。
【0016】
第2フルブリッジ回路40において、第5スイッチQ5及び第7スイッチQ7のドレインには、第2高電位側端子CH2が接続されている。第5スイッチQ5のソースには、第6スイッチQ6のドレインが接続され、第7スイッチQ7のソースには、第8スイッチQ8のドレインが接続されている。第6スイッチQ6及び第8スイッチQ8のソースには、第2低電位側端子CL2が接続されている。第2高電位側端子CH2には、第2コンデンサ13を介して、第2低電位側端子CL2が接続されている。また、第2高電位側端子CH2には、給電対象11を介して、第2低電位側端子CL2が接続されている。
【0017】
トランス50は、第1コイル50a及び第2コイル50bを有している。第1コイル50aの第1端には、第1スイッチQ1のソース及び第2スイッチQ2のドレインが接続され、第1コイル50aの第2端には、第3スイッチQ3のソース及び第4スイッチQ4のドレインが接続されている。第2コイル50bの第1端には、第5スイッチQ5のソース及び第6スイッチQ6のドレインが接続され、第2コイル50bの第2端には、第7スイッチQ7のソース及び第8スイッチQ8のドレインが接続されている。
【0018】
第1コイル50a及び第2コイル50bは、互いに磁気結合する。第1コイル50aの第2端に対する第1端の電位が高くなる場合、第2コイル50bには、その第2端よりも第1端の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。一方、第1コイル50aの第1端に対する第2端の電位が高くなる場合、第2コイル50bには、その第1端よりも第2端の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。
【0019】
電力変換システムは、第1電流センサ60、第1電圧センサ61、第2電流センサ62、第2電圧センサ63及び温度センサ64を備えている。第1電流センサ60は、第1高電位側端子CH1を流れる第1電流I1を検出し、第1電圧センサ61は、第1高電位側端子CH1及び第1低電位側端子CL1の端子間電圧である第1電圧V1を検出する。ここで、第1電流I1は、蓄電池10に放電電流が流れる場合を正とし、充電電流が流れる場合を負とする。
【0020】
第2電流センサ62は、第2高電位側端子CH2を流れる第2電流I2を検出し、第2電圧センサ63は、第2高電位側端子CH2及び第2低電位側端子CL2の端子間電圧である第2電圧V2を検出する。ここで、第2電流I2は、第2高電位側端子CH2から第5スイッチQ5及び第7スイッチQ7のドレイン方向へ電流が流れる場合を正とし、その逆方向に電流が流れる場合を負とする。
【0021】
温度センサ64は環境温度Tを検出する。ここで、本実施形態において、環境温度Tは昇温対象要素の温度である。本実施形態において、昇温対象要素は、例えば電力変換装置20である。
【0022】
各検出値I1,V1,I2,V2,Tは、電力変換装置20が備える制御部70に入力される。制御部70は、各検出値I1,V1,I2,V2,Tに基づいて、各スイッチQ1~Q8のゲートに駆動信号を出力し、各スイッチQ1~Q8をオンオフする。
【0023】
次に、本実施形態で実施される昇温制御について説明する。本実施形態では、環境温度Tが設定温度より高い場合は、発熱量の増大要求がないとして通常モードに設定される。一方、環境温度Tが設定温度以下の場合は、発熱量の増大要求があるとして発熱モードに設定される。
【0024】
図2に、通常モード及び発熱モードにおける制御部70が実施する制御ブロック図を示す。
【0025】
制御部70は、指令電流設定部71を備えている。指令電流設定部71は、電流算出部72及び最小値選択部73を備えている。
【0026】
電流算出部72は、電力指令値P2*を、第2電圧センサ63の検出電圧である第2電圧V2で除算することにより、指令電流I2fを算出する。指令電流I2fの符号の定義は、第2電流I2の符号の定義と同一である。
【0027】
最小値選択部73は、電流算出部72により算出された指令電流I2fと、電流制限値I2Lとのうち小さい方を最終的な指令電流Iref2として選択する。電流制限値I2Lは、電力変換システムを過電流から保護するために設定されている。
【0028】
最小値選択部73から出力された指令電流Iref2は、第1リミッタ74により上限値又は下限値が制限される。
【0029】
制御部70は、電流制御器75を備えている。電流制御器75は、電流偏差算出部76、フィードバック制御部77及び第2リミッタ78を備えている。電流偏差算出部76は、第1リミッタ74から出力された指令電流Iref2から、第2電流センサ62の検出電流である第2電流I2を減算することにより、電流偏差ΔI2を算出する。
【0030】
フィードバック制御部77は、算出された電流偏差ΔI2を0にフィードバックするための操作量として、レグ間位相φ1を算出する。本実施形態では、このフィードバック制御として、比例積分制御が用いられている。なお、フィードバック制御部77で用いられるフィードバック制御は、比例積分制御に限らず、例えば、比例積分微分制御であってもよい。
【0031】
フィードバック制御部77により算出されたレグ間位相φ1は、第2リミッタ78により上限値又は下限値が制限される。本実施形態では、レグ間位相φ1は、0°から所定位相までの範囲に制限され、その範囲において、値が大きくなるほど蓄電池10から給電対象11への伝達電力が大きくなる。
【0032】
制御部70は、PWM生成部79、ゲート電圧補正部80、ゲート電圧設定部81を備えている。
【0033】
PWM生成部79は、第2リミッタ78から受け取るレグ間位相φ1に基づいて、各スイッチQ1~Q8の駆動信号を生成し、ゲート電圧補正部80へ出力する。本実施形態では、PWM生成部79は、第1~第4スイッチQ1~Q4をオンオフし、第5~第8スイッチQ5~Q8をオフする駆動信号を生成する。
【0034】
ゲート電圧補正部80は、ゲート電圧設定部81から受け取る指令に基づいて、第5~第8スイッチQ5~Q8のオフ時のゲート電圧Voffの補正を行う。その後、ゲート電圧補正部80は、上記補正が反映された駆動信号を各スイッチQ1~Q8のゲートへ出力する。
【0035】
ゲート電圧設定部81は、第5~第8スイッチQ5~Q8のオフ時のゲート電圧Voffを、通常モードの場合に第1オフ電圧Vα(例えば0V)に設定し、発熱モードの場合に第2オフ電圧Vβに設定する。ここで、第2オフ電圧Vβは、第1オフ電圧Vαよりも小さい値であり、本実施形態では負電圧である。オフ時のゲート電圧Voffが第2オフ電圧Vβに設定されることは、オフ時のゲート電圧Voffが負側に増大されることに相当する。
【0036】
図3は、GaN-HEMTに流れる逆導通電流の特性を示す図である。縦軸は、逆導通電流量を示し、横軸は、電圧降下量を示す。図3中の矢印は、オフ時のゲート電圧Voffを負側に増大させる方向を示す。よって、オフ時のゲート電圧Voffが負側に増大されたVoff=Vβの場合は、Voff=Vαの場合よりも、逆導通時の電圧降下が増大するため、導通損失も大きくなる。
【0037】
図4に、通常モード及び発熱モードにおける各スイッチQ1~Q8の操作状態の推移を示す。図4(a)は、第1~第4スイッチQ1~Q4の操作状態の推移を示し、図4(b)は、第5~第8スイッチQ5~Q8の操作状態の推移を示す。
【0038】
図4(a)の実線は、第1スイッチQ1の操作状態の推移を示す。第1スイッチQ1の操作状態が反転された操作状態が、第2スイッチQ2の操作状態となる。図4(a)の破線は、第3スイッチQ3の操作状態の推移を示す。第3スイッチQ3の操作状態が反転された操作状態が、第4スイッチQ4の操作状態となる。例えば、図4(a)において、第1スイッチQ1のオン期間は、第2スイッチQ2のオフ期間となる。
【0039】
図4(b)の実線は、第5~第8スイッチQ5~Q8の操作状態を示す。本実施形態では、第5~第8スイッチQ5~Q8はオフされる。
【0040】
第1~第4スイッチQ1~Q4の1スイッチング周期Tswは、互いに同じである。第1スイッチQ1のオフへの切り替えタイミングと、第3スイッチQ3のオフへの切り替えタイミングとの位相差がレグ間位相φ1とされる。本実施形態において、レグ間位相φ1は、第1スイッチQ1のオフへの切り替えタイミングに対して、第3スイッチQ3のオフへの切り替えタイミングが早まる場合に正となる。例えば、図4(a)において、レグ間位相φ1は正である。
【0041】
図5に、制御部70により実行される処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、本実施形態において、第1電圧V1と第1コイル50aの巻き数の積は、第2電圧V2と第2コイル50bの巻き数の積よりも大きいとする。つまり、この処理により電力は、蓄電池10から給電対象11へ伝達されるものとする。
【0042】
ステップS10では、環境温度Tが設定温度以下であるかを判定する。本実施形態において、ステップS10が判定部に相当する。
【0043】
ステップS10で否定判定した場合、発熱量の増大要求がないとしてステップS11に進み、制御モードを通常モードに設定する。通常モードでは、次のステップS12で、第5~第8スイッチQ5~Q8のオフ時のゲート電圧Voffを第1オフ電圧Vαとする。
【0044】
ステップS10で肯定判定した場合、発熱量の増大要求があるとしてステップS13に進み、制御モードを発熱モードに設定する。発熱モードでは、次のステップS14で、第5~第8スイッチQ5~Q8のオフ時のゲート電圧Voffを第2オフ電圧Vβとする。
【0045】
ステップS15では、指令電流設定部71で指令電流Iref2を設定する。
【0046】
ステップS16では、第2電流I2が指令電流Iref2に制御されるように、第1~第4スイッチQ1~Q4をオンオフし、第5~第8スイッチQ5~Q8をオフする。
【0047】
図6に、通常モード及び発熱モードにおける、各スイッチQ1~Q8の操作状態等の推移を示す。図6(a)は、第1~第4スイッチQ1~Q4の操作状態の推移を示す。図6(b)は、第5~第8スイッチQ5~Q8の操作状態の推移を示す。
【0048】
図6(c)は、第1電流I1及び第2電流I2の推移を示す。図6(d)は、第1電力P1、第2電力P2及び損失電力P1+P2を示す。ここで、第1電力P1は、蓄電池10から第1フルブリッジ回路30へと供給される電力の時間平均値であり、第2電力P2は、第2フルブリッジ回路40から給電対象11へと供給される電力の時間平均値である。第1電力P1が正であると、蓄電池10から放電される。また、第2電力P2が負であると、給電対象11に電力が供給される。したがって、第1電力P1及び第2電力P2の和P1+P2が損失電力となる。損失電力P1+P2が正であると、電気エネルギが熱エネルギへと変換され、発熱が生じることを示す。図6(e)は、図6(d)における損失電力P1+P2の縦軸を拡大した図である。図6(e)の通常モード及び発熱モードにおける縦軸のスケールは同一であり、通常モード及び発熱モードにおける損失電力P1+P2の大きさを比較するのに用いる。
【0049】
以下、図6及び図7を用いつつ、本実施形態の通常モード及び発熱モードにおける昇温制御について説明する。本実施形態の発熱モードにおいて、レグ間位相φ1は、第2電流I2が指令電流Iref2にフィードバック制御されるように、0°から所定位相までの範囲の値とされる。レグ間位相φ1を0°から所定位相までの範囲に制限することにより、レグ間位相φ1を大きくしすぎて、蓄電池10から給電対象11へ伝送することができる電力が小さくなることを防止できる。
【0050】
図6(a)に示すように、本実施形態の通常モード及び発熱モードでは、1スイッチング周期Tswにおいて、第1~第4期間T1~T4が出現する。本実施形態において、通常モード及び発熱モードのスイッチングパターンは同一である。第1期間T1は、第2,第3スイッチQ2,Q3がオンにされて、かつ、第1,第4,第5,第6,第7,第8スイッチQ1,Q4,Q5,Q6,Q7,Q8がオフにされる期間である。第2期間T2は、第1,第3スイッチQ1,Q3がオンにされて、かつ、第2,第4,第5,第6,第7,第8スイッチQ2,Q4,Q5,Q6,Q7,Q8がオフにされる期間である。
【0051】
第3期間T3は、第1,第4スイッチQ1,Q4がオンにされて、かつ、第2,第3,第5,第6,第7,第8スイッチQ2,Q3,Q5,Q6,Q7,Q8がオフにされる期間である。第4期間T4は、第2,第4スイッチQ2,Q4がオンにされて、かつ、第1,第3,第5,第6,第7,第8スイッチQ1,Q3,Q5,Q6,Q7,Q8がオフにされる期間である。
【0052】
図7(a)に、第1期間T1における電流経路を示す。第1フルブリッジ回路30においては、第1高電位側端子CH1、第3スイッチQ3、第1コイル50a、第2スイッチQ2及び第1低電位側端子CL1を含む電流経路が形成される。一方、第2フルブリッジ回路40においては、第2低電位側端子CL2、第6スイッチQ6、第2コイル50b、第7スイッチQ7及び第2高電位側端子CH2を含む電流経路が形成される。この場合、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7はオフされているが、GaN-HEMTの特性により、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7には逆導通電流が流されている。
【0053】
これにより、図6(c)に示すように、第1期間T1において、第1電流I1は正方向に漸増し、第2電流I2は負方向に漸増する。第1期間T1において、発熱モードでは、通常モードよりもオフ時のゲート電圧Voffが負側に増大されているため、GaN-HEMTの特性により、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7の逆導通電流による導通損失は、通常モードに比べて大きい。
【0054】
図7(b)に、第2期間T2における電流経路を示す。第1フルブリッジ回路30においては、第1スイッチQ1、第3スイッチQ3及び第1コイル50aを含む電流経路が形成される。一方、第2フルブリッジ回路40においては、第1期間T1と同じ電流経路が形成される。
【0055】
第2期間T2において、第1コイル50aは、第1低電位側端子CL1と接続されないため、図6(c)に示すように、第1電流I1は0である。第1フルブリッジ回路30には、第1コイル50aにおいて、第2端よりも第1端の電位が高くなるような誘起電圧が一時的に発生する。これにより、第2コイル50bには、第1端よりも第2端の電位が高くなるような誘起電圧が一時的に発生する。このため、第2電流I2の符号は負のままで、その絶対値は漸減する。この場合においても、GaN-HEMTの特性により、通常モードよりも発熱モードの方が、逆導通電流による導通損失は大きい。
【0056】
図7(c)に、第3期間T3における電流経路を示す。第1フルブリッジ回路30においては、第1高電位側端子CH1、第1スイッチQ1、第1コイル50a、第4スイッチQ4及び第1低電位側端子CL1を含む電流経路が形成される。一方、第2フルブリッジ回路40においては、第2低電位側端子CL2、第8スイッチQ8、第2コイル50b、第5スイッチQ5及び第2高電位側端子CH2を含む電流経路が形成される。この場合、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8はオフされているが、GaN-HEMTの特性により、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8には逆導通電流が流されている。
【0057】
これにより、図6(c)に示すように、第3期間T3において、第1電流I1は正方向に漸増し、第2電流I2は負方向に漸増する。第3期間T3において、発熱モードでは、通常モードよりもオフ時のゲート電圧Voffが負側に増大されているため、GaN-HEMTの特性により、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8の逆導通電流による導通損失は、通常モードに比べて大きい。
【0058】
図7(d)に、第4期間T4における電流経路を示す。第1フルブリッジ回路30においては、第2スイッチQ2、第1コイル50a及び第4スイッチQ4を含む電流経路が形成される。一方、第2フルブリッジ回路40においては、第3期間T3と同じ電流経路が形成される。
【0059】
第4期間T4において、第1コイル50aは、第1高電位側端子CH1と接続されないため、図6(c)に示すように、第1電流I1は0である。第1フルブリッジ回路30には、第1コイル50aにおいて、第1端よりも第2端の電位が高くなるような誘起電圧が一時的に発生する。これにより、第2コイル50bには、第2端よりも第1端の電位が高くなるような誘起電圧が一時的に発生する。このため、第2電流I2の符号は負のままで、その絶対値は漸減する。この場合においても、GaN-HEMTの特性により、通常モードよりも発熱モードの方が、逆導通電流による導通損失は大きい。
【0060】
図6(c)に、第1~第4期間T1~T4における、第1電流I1の時間平均値I1aveと第2電流I2の時間平均値I2aveとを破線にて示す。第1電流平均値I1aveは正の値となり、第2電流平均値I2aveは負の値となる。
【0061】
図6(d)に示すように、第1電力P1は正の値となり、第2電力P2は負の値となっている。これは、第1期間T1~第4期間T4において、蓄電池10から給電対象11へ電力が伝達されたことを示す。この電力伝達により、各スイッチQ1~Q8等において、電力の損失が発生するため、損失電力P1+P2は正の値となっている。
【0062】
図6(e)に示すように、発熱モードの損失電力P1+P2は、通常モードにおける損失電力P1+P2の値と比較して大きくなっていることがわかる。これは、発熱モードでは、通常モードよりもオフ時のゲート電圧Voffが負側に増大されているため、GaN-HEMTの特性により、第5~第8スイッチQ5~Q8における逆導通電流による導通損失が大きくなるためである。
【0063】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0064】
本実施形態では、蓄電池10から、給電対象11へと電力伝達を行う場合に第5~第8スイッチQ5~Q8がオフされる。この際、第5~第8スイッチQ5~Q8に逆導通電流が流れることに伴って導通損失が発生し、その導通損失によって熱が発生する。その熱を利用することにより、昇温対象要素を昇温させるための発熱装置を不要にできたり、発熱装置が設けられる場合であっても、その装置を小型化できたりすることができる。このため、本発明によれば、電力変換装置20の小型化を図ることができる。
【0065】
また、本実施形態の第5~第8スイッチQ5~Q8は、GaN-HEMTで構成されているため、逆導通電流が流れる場合において、そのオフ時のゲート電圧Voffが負側に大きいほど、発生する導通損失が大きくなる特性を有している。この特性に着目し、本実施形態では、発熱モードに設定された場合、通常モードに設定された場合よりも、第5~第8スイッチQ5~Q8のオフ時のゲート電圧Voffは負側に増大される。これにより、発熱モードに設定された場合に第5~第8スイッチQ5~Q8で発生する導通損失を、通常モードに設定された場合よりも大きくすることができる。その結果、電力変換装置20で発生する熱量を大きくすることができる。
【0066】
<第1実施形態の変形例1>
以下、第1実施形態の変形例1について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0067】
第1~第4スイッチQ1~Q4としては、NチャネルMOSFETに限らず、IGBTであってもよい。この場合、高電位側端子はコレクタであり、低電位側端子はエミッタである。さらに、IGBTを用いる場合、第1フルブリッジ回路30は、第1~第4スイッチQ1~Q4それぞれに対して逆並列に接続されるフリーホイールダイオードを備えている。この場合、スイッチとフリーホイールダイオードとの組がスイッチ部に相当する。
【0068】
<第1実施形態の変形例2>
以下、第1実施形態の変形例2について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。第1実施形態では、変換回路として第1フルブリッジ回路30を用いたが、これを変更する。本実施形態では、変換回路としてハーフブリッジ回路を用いる。
【0069】
図8は、本実施形態の構成図である。図8において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上同一の符号を付している。電力変換システムは、電力変換装置90を備えている。
【0070】
電力変換装置90は、第3コンデンサ91及びハーフブリッジ回路92を備えている。本実施形態において、ハーフブリッジ回路92が変換回路に相当する。
【0071】
ハーフブリッジ回路92は、第9スイッチQ9及び第10スイッチQ10を備えている。本実施形態において、第9スイッチQ9及び第10スイッチQ10は、NチャネルMOSFETである。第9スイッチQ9のドレインには、第1高電位側端子CH1が接続されている。第9スイッチQ9のソースには、第10スイッチQ10のドレインが接続されている。第10スイッチQ10のソースには、第1低電位側端子CL1及び第1コイル50aの第2端が接続されている。第1コイル50aの第1端には、第3コンデンサ91を介して、第9スイッチQ9のソース及び第10スイッチQ10のドレインが接続されている。
【0072】
本実施形態では、制御部70は、ハーフブリッジ回路92を構成する第9スイッチQ9及び第10スイッチQ10を交互にオンする。この場合の第9スイッチQ9のデューティ比は0.5である。ここで、デューティ比は、第9スイッチQ9の1スイッチング周期Tswに対するオン時間Tonの比率(Ton/Tsw)である。
【0073】
図9に、本実施形態の通常モード及び発熱モードにおける第5~第10スイッチQ5~Q10の操作状態等の推移を示す。図9(a)の実線は第9スイッチQ9の操作状態の推移を、破線は第10スイッチQ10の推移を示す。図9(b)は、第5~第8スイッチQ5~Q8の操作状態を示す。図9(c)は、第1電流I1及び第2電流I2の推移を示す。
【0074】
以下、図9及び図10を用いつつ、本実施形態の通常モード及び発熱モードにおける昇温制御について説明する。
【0075】
図9(a)に示すように、本実施形態の通常モード及び発熱モードでは、1スイッチング周期Tswにおいて、第5~第8期間T5~T8が出現する。第5期間T5及び第8期間T8は、第9スイッチQ9がオンされて、かつ、第5,第6,第7,第8,第10スイッチQ5,Q6,Q7,Q8,Q10がオフされる期間である。第6期間T6及び第7期間T7は、第10スイッチQ10がオンされて、かつ、第5,第6,第7,第8,第9スイッチQ5,Q6,Q7,Q8,Q9がオフされる期間である。このように、本実施形態においても、第2フルブリッジ回路40を構成する第5~第8スイッチQ5~Q8はオフに固定されるため、逆導通電流による導通損失が発生する。
【0076】
図10(a)に、第5期間T5における電流経路を示す。ハーフブリッジ回路92においては、第1高電位側端子CH1、第9スイッチQ9、第3コンデンサ91、第1コイル50a及び第1低電位側端子CL1を含む電流経路が形成される。一方、第2フルブリッジ回路40においては、第3期間T3と同じ電流経路が形成される。
【0077】
これにより、図9(c)に示すように、第5期間T5において、第1電流I1は正方向に漸増する。一方、第2電流I2は負方向に漸増する。
【0078】
図10(b)に、第6期間T6における電流経路を示す。ハーフブリッジ回路92においては、第10スイッチQ10、第3コンデンサ91及び第1コイル50aを含む電流経路が形成される。第2フルブリッジ回路40においては、第5期間T5と同じ電流経路が形成される。
【0079】
第6期間T6において、第1コイル50aは、第1高電位側端子CH1に接続されていないため、図9(c)に示すように、第1電流I1は0である。ハーフブリッジ回路92には、第1コイル50aにおいて、第1端よりも第2端の電位が高くなるような誘起電圧が一時的に発生する。これにより、第2コイル50bには、第2端よりも第1端の電位が高くなるような誘起電圧が一時的に発生する。このため、第2電流I2の符号は負のままで、その絶対値は漸減する。
【0080】
図10(c)に、第7期間T7における電流経路を示す。ハーフブリッジ回路92においては、第6期間T6と同じ電流経路で、逆方向の電流が流れる。第2フルブリッジ回路40においては、第2低電位側端子CL2、第6スイッチQ6、第2コイル50b、第7スイッチQ7及び第2高電位側端子CH2を含む電流経路が形成される。
【0081】
第7期間T7においても、第1コイル50aは、第1高電位側端子CH1に接続されていないため、図9(c)に示すように、第1電流I1は0である。ハーフブリッジ回路92には、第3コンデンサ91が蓄えた電荷を放出するため、第6期間T6とは逆方向に電流が流れる。このため、第2コイル50bには、第1端よりも第2端の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。このため、第2電流I2は負方向に漸増する。
【0082】
図10(d)に、第8期間T8における電流経路を示す。ハーフブリッジ回路92においては、第1低電位側端子CL1、第2コイル50b、第3コンデンサ91、第9スイッチQ9及び第1高電位側端子CH1を含む電流経路が形成される。第2フルブリッジ回路40においては、第7期間T7と同じ電流経路が形成される。
【0083】
第8期間T8において、第1コイル50aには、第2端よりも第1端の電位が高くなるような誘起電圧が一時的に発生する。このため、図9(c)に示すように、第1電流I1の符号は負となり、その絶対値は漸減する。一方、第2コイル50bには、第1端よりも第2端の電位が高くなるような誘起電圧が一時的に発生する。このため、第2電流I2の符号は負のままで、その絶対値は漸減する。
【0084】
このように、変換回路の構成としてハーフブリッジ回路92を用いた場合も、蓄電池10から供給される直流電圧を交番電圧に変換することができる。よって、この交番電圧を用いて、第2フルブリッジ回路40を構成する第5~第8スイッチQ5~Q8に逆導通電流を流すことができる。
【0085】
よって、以上詳述した本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
なお、本実施形態においても、第10スイッチQ10としては、NチャネルMOSFETに限らず、IGBTであってもよい。
【0087】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。第1実施形態では、電力変換装置20の構成にフルブリッジ回路を用いたが、これを変更する。本実施形態では、電力変換装置の構成を昇圧チョッパ回路とする。
【0088】
図11に本実施形態の構成図を示す。図11において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。電力変換システムは、蓄電池10、給電対象11、コンデンサ12及び電力変換装置100を備えている。
【0089】
電力変換装置100は、第1高電位側端子CH1、第1低電位側端子CL1、第2高電位側端子CH2、第2低電位側端子CL2、ハーフブリッジ回路101、及びリアクトル102を備えている。
【0090】
ハーフブリッジ回路101は、第11スイッチQ11及び第12スイッチQ12を備えている。本実施形態において、第11スイッチQ11はGaN-HEMTであり、第12スイッチQ12はIGBTである。第11スイッチQ11のドレインには、第2高電位側端子CH2が接続されている。第11スイッチQ11のソースには、第12スイッチQ12のコレクタが接続されている。第12スイッチQ12のエミッタには、第1低電位側端子CL1及び第2低電位側端子CL2が接続されている。第2高電位側端子CH2には、コンデンサ12を介して、第2低電位側端子CL2が接続されている。また、第2高電位側端子CH2には、給電対象11を介して、第2低電位側端子CL2が接続されている。
【0091】
なお、第12スイッチQ12には、フリーホイールダイオードとしてのダイオードDが逆並列に接続されている。第12スイッチQ12としては、IGBTに限らず、NチャネルMOSFETを用いてもよい。この場合、ダイオードDが備えられていなくてもよい。
【0092】
リアクトル102の第1端は、第1高電位側端子CH1に接続されている。リアクトル102の第2端は、第11スイッチQ11のソース及び第12スイッチQ12のコレクタに接続されている。第1高電位側端子CH1には、蓄電池10の正極端子が接続され、蓄電池10の負極端子には、第1低電位側端子CL1が接続されている。
【0093】
電力変換システムは、第1電流センサ60、第1電圧センサ61、第2電流センサ62、第2電圧センサ63及び温度センサ64を備えている。これらのセンサの検出対象は、第1実施形態と同様である。
【0094】
制御部70は、各検出値I1,V1,I2,V2,Tに基づいて、第11スイッチQ11及び第12スイッチQ12のゲートに駆動信号を出力し、第11スイッチQ11及び第12スイッチQ12をオンオフする。ここで、本実施形態において、第1電流I1の符号の定義は第1実施形態と同様であるが、第2電流I2は、第2高電位側端子CH2から給電対象11方向へ電流が流れる場合を正とし、その逆方向に電流が流れる場合を負とする。
【0095】
図12は、本実施形態において、制御部70が実施する制御ブロック図である。制御部70は、電圧制御器82を備えている。電圧制御器82は、電圧偏差算出部83、フィードバック制御部77及びデューティ比算出部84を備えている。
【0096】
電圧偏差算出部83は、指令電圧V2*から第2電圧センサ63の検出電圧である第2電圧V2を減算することにより、電圧偏差ΔV2を算出する。
【0097】
フィードバック制御部77は、算出された電圧偏差ΔV2を0にフィードバックするための操作量として、第12スイッチQ12のデューティ比を算出する。
【0098】
デューティ比算出部84では、フィードバック制御部77により算出されたデューティ比に、フィードフォワード項(V2*-V1)/V2*を加算し、最終的な第12スイッチQ12のデューティ比とする。この第12スイッチQ12のデューティ比は、PWM生成部79に出力される。
【0099】
PWM生成部79は、第11スイッチQ11及び第12スイッチQ12の駆動信号を生成し、ゲート電圧補正部85に出力する。本実施形態では、第11スイッチQ11は、オフされる。また、第12スイッチQ12のデューティ比に基づいて、第12スイッチQ12はオンオフされる。
【0100】
ゲート電圧補正部85は、ゲート電圧設定部81から受け取る指令に基づいて、第11スイッチQ11のオフ時のゲート電圧Voffの補正を行う。その後、ゲート電圧補正部85は、駆動信号を第11スイッチQ11及び第12スイッチQ12へ出力する。
【0101】
ゲート電圧設定部81は、第1実施形態と同様に、第11スイッチQ11のオフ時のゲート電圧Voffを設定する。
【0102】
図13に、制御部70により実行される処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、図13において、先の図5に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0103】
ステップS10で否定判定した場合、発熱量の増大要求がないとしてステップS17に進み、制御モードを通常モードに設定する。通常モードでは、次のステップS18で、第11スイッチQ11のオフ時のゲート電圧Voffを第1オフ電圧Vαに設定する。
【0104】
ステップS10で肯定判定した場合、発熱量の増大要求があるとしてステップS19に進み、制御モードを発熱モードに設定する。発熱モードでは、次のステップS20で、第11スイッチQ11のオフ時のゲート電圧Voffを第2オフ電圧Vβに設定する。ここで、第2オフ電圧Vβは第1オフ電圧Vαよりも負側に増大された値である。
【0105】
ステップS21では、指令電圧V2*の値を設定する。
【0106】
ステップS22では、第11スイッチQ11をオフし、第2電圧V2が指令電圧V2*に制御されるように第12スイッチQ12のデューティ比を制御する。
【0107】
図14に、通常モード及び発熱モードにおける、第11スイッチQ11及び第12スイッチQ12の操作状態等の推移を示す。図14(a)の実線は第11スイッチQ11の操作状態の推移を示し、破線は第12スイッチQ12の操作状態の推移を示す。図14(b)は、第1電圧V1及び第2電圧V2を示す。図14(c)は、第1電流I1及び第2電流I2の推移を示す。図14(d)は、第1電力P1、第2電力P2及び損失電力P1-P2を示す。ここで、本実施形態において、第2電力P2は、電力変換装置100から給電対象11へと供給される場合を正とする。そのため、第1電力P1から第2電力P2を差し引いた値が損失電力P1-P2となる。
【0108】
図14(d)に示すように、通常モードの損失電力P1-P2よりも発熱モードの損失電力P1-P2の方が大きい。これは、本実施形態においても、発熱モードでは、通常モードよりもオフ時のゲート電圧Voffが負側に増大されているため、GaN-HEMTの特性により、第11スイッチQ11における逆導通電流による導通損失が大きくなるためである。
【0109】
以上詳述した本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0110】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、ゲート電圧設定部81の発熱モードにおけるオフ時のゲート電圧Voffを設定する方法を変更する。
【0111】
本実施形態の発熱モードにおいて、ゲート電圧設定部81は、第5~第8スイッチQ5~Q8のオフ時のゲート電圧Voffを、環境温度Tに基づき制御する。
【0112】
図15に、ゲート電圧設定部81が実施する電圧制御方法を示す。上限温度TLは、昇温対象要素の耐熱性等から設定される温度であり、例えば、昇温対象要素の許容上限温度に設定される。環境温度Tが、上限温度TLに対して低い温度に設定された制限開始温度TC以上になると、ゲート電圧設定部81は、第5~第8スイッチQ5~Q8のオフ時のゲート電圧Voffを環境温度Tに応じた値に設定する。詳しくは、ゲート電圧設定部81は、環境温度Tが制限開始温度TCを超える場合、環境温度Tが上限温度TLに近づくほど、第5~第8スイッチQ5~Q8のオフ時のゲート電圧Voffを第1オフ電圧Vαに近づける。ゲート電圧設定部81は、環境温度Tが制限開始温度TCになる場合、第5~第8スイッチQ5~Q8のオフ時のゲート電圧Voffを第1オフ電圧Vαに設定する。このように設定された第5~第8スイッチQ5~Q8のオフ時のゲート電圧Voffは、ゲート電圧補正部80へ出力される。
なお、環境温度Tが上限温度TL以上の場合、オフ時のゲート電圧Voffは第1オフ電圧Vαに設定される。また、環境温度Tが制限開始温度TC以下の場合、オフ時のゲート電圧Voffは第2オフ電圧Vβに設定される。
【0113】
このように、環境温度Tが制限開始温度TCを超える場合、第5~第8スイッチQ5~Q8のゲート電圧Voffを環境温度Tに基づき徐々に低減することで、逆導通電流による発熱を低減することができる。その結果、環境温度Tが上限温度TLを超えることを防止することができる。
【0114】
<第3実施形態の変形例>
以下、第3実施形態の変形例について、第3実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、ゲート電圧設定部81の発熱モードにおけるオフ時のゲート電圧Voffを設定する方法として、フィードバック制御を用いる。
【0115】
図16は、本実施形態の発熱モードにおいて、ゲート電圧設定部81が実施する制御ブロック図である。ゲート電圧設定部81は、温度制御器86を備えている。温度制御器86は、温度偏差算出部87、フィードバック制御部88及びリミッタ89を備えている。
【0116】
温度偏差算出部87は、目標温度T*から環境温度Tを減算することにより、温度偏差ΔTを算出する。なお、本実施形態において、目標温度T*が指令温度に相当する。
【0117】
フィードバック制御部88は、算出された温度偏差ΔTを0にフィードバックするための操作量として、第5~第8スイッチQ5~Q8のオフ時のゲート電圧Voffを算出する。例えば、環境温度Tを上げる場合、オフ時のゲート電圧Voffは負側に増大される。一方、環境温度Tを下げる場合、オフ時のゲート電圧Voffはその絶対値を低減される。本実施形態では、このフィードバック制御として、比例積分制御が用いられている。なお、フィードバック制御部88で用いられるフィードバック制御は、比例積分制御に限らず、例えば、比例積分微分制御であってもよい。
【0118】
フィードバック制御部88により算出された第5~第8スイッチQ5~Q8のオフ時のゲート電圧Voffは、リミッタ89により上限値又は下限値が制限され、ゲート電圧補正部80へ出力される。なお、本実施形態において、上限値は第1オフ電圧Vαであり、下限値は第5~第8スイッチQ5~Q8の特性から定められる電圧である。
【0119】
このように、第5~第8スイッチQ5~Q8のゲート電圧Voffを環境温度Tに基づきフィードバック制御することで、環境温度Tを目標温度T*に制御することができる。
【0120】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、制御部70は、第5スイッチQ5及び第6スイッチQ6のオフ時のゲート電圧Voffを、第2オフ電圧Vβから一時的に第1オフ電圧Vαへと切り替える。
【0121】
図17に、オフ時のゲート電圧Voffを固定した場合と、オフ時のゲート電圧Voffを一時的に切り替えた場合とのそれぞれにおける各スイッチQ1~Q8の操作状態等の推移を示す。図17(a)は、第1スイッチQ1及び第4スイッチQ4の操作状態の推移を示す。第1スイッチQ1及び第4スイッチQ4の操作状態が反転された操作状態が、第2スイッチQ2及び第3スイッチQ3の操作状態となる。図17(b)は、第5~第8スイッチQ5~Q8の操作状態の推移を示す。本実施形態においても、第5~第8スイッチQ5~Q8はオフされる。図17(c)は、第5スイッチQ5及び第6スイッチQ6のオフ時のゲート電圧Voffの推移を示す。図17(d)は、第1電流I1及び第2電流I2の推移を示す。
【0122】
図17(c)に示すように、Voff固定の場合、制御部70は、第5スイッチQ5及び第6スイッチQ6のオフ時のゲート電圧Voffを第2オフ電圧Vβに固定する。一方、Voff切替ありの場合、制御部70は、オフ時のゲート電圧Voffを第2オフ電圧Vβから一時的に第1オフ電圧Vαへ切り替える。例えば、図17(a)に示す第9期間T9及び第10期間T10において、制御部70は、第6スイッチQ6のオフ時のゲート電圧Voffを第1オフ電圧Vαに制御する。
【0123】
第9期間T9の各スイッチQ1~Q8の操作状態は、第1期間T1と同一である。
【0124】
第9期間T9の電流経路は、第1期間T1と同一である。この場合、第6スイッチQ6のオフ時のゲート電圧Voffが第2オフ電圧Vβから第1オフ電圧Vαへ切り替えられることで、第6スイッチQ6の電圧降下量は小さくなる。これにより、第6スイッチQ6の導通損失が小さくなるため、図17(d)に示すように、Voff切替ありの場合では、Voff固定の場合に比べて、第2電流I2の負側への増加速度が高くなる。
【0125】
第10期間T10の各スイッチQ1~Q8の操作状態は、第3期間T3と同一である。
【0126】
第10期間T10の電流経路は、第3期間T3と同一である。この場合、第5スイッチQ5のオフ時のゲート電圧Voffが第2オフ電圧Vβから第1オフ電圧Vαへ切り替えられることで、第5スイッチQ5の電圧降下量は小さくなる。この場合にも、第5スイッチQ5の導通損失が小さくなるため、図17(d)に示すように、Voff切替ありの場合では、Voff固定の場合に比べて、第2電流I2の負側への増加速度が高くなる。
【0127】
このように、本実施形態では、制御部70は、第5~第8スイッチQ5~Q8をオフする期間内に、逆導通電流が流れているスイッチのオフ時のゲート電圧Voffを第1オフ電圧Vαに一時的に切り替える期間を設ける。これにより、第1電圧V1及び第2電圧V2の差を十分に確保できない場合でも、この期間において逆導通電流が増大されるので、その後オフ時のゲート電圧Voffを第2オフ電圧Vβに戻しても、逆導通電流を第5~第8スイッチQ5~Q8に流すことができる。その結果、逆導通電流による導通損失を大きくすることができるため、電力変換装置20で発生する熱量を大きくすることができる。
【0128】
なお、本実施形態では、オフ時のゲート電圧Voffを一時的に切り替える値を第1オフ電圧Vαとしたが、この値は第1オフ電圧Vαに限られず、逆導通電流の大きさを調整するために導通損失が低減される方向に調整されてよい。
【0129】
また、オフ時のゲート電圧Voffを一時的に切り替える時間幅を増やした場合、逆導通電流は増加するが、逆導通電流による発熱量は減少する。そのため、オフ時のゲート電圧Voffを一時的に切り替える時間幅を増やしていくと、1スイッチング周期当たりの発熱量は極大値を迎えた後減少に転じる。このような特性を予め設計しておく又は発熱量に応じた時間幅のフィードバック制御を随時実施することで、オフ時のゲート電圧Voffを一時的に切り替える時間幅は、所望の発熱量が得られる時間幅に設定されてもよい。
【0130】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。第5実施形態では、発熱モードにおけるスイッチングパターンを変更する。第1実施形態では、発熱モードにおいて、第5~第8スイッチQ5~Q8はオフされていたが、本実施形態では、第5~第8スイッチQ5~Q8はオンオフされる。
【0131】
図18に、本実施形態の発熱モードにおける各スイッチQ1~Q8の操作状態等の推移を示す。図18(a)の実線は、第1スイッチQ1の操作状態の推移を示す。第1スイッチQ1の操作状態が反転された操作状態が、第2スイッチQ2の操作状態となる。図18(a)の破線は、第4スイッチQ4の操作状態を示す。第4スイッチQ4の操作状態が反転された操作状態が、第3スイッチQ3の操作状態となる。図18(b)の実線は、第5スイッチQ5の操作状態の推移を示す。第5スイッチQ5の操作状態が反転された操作状態が、第6スイッチQ6の操作状態となる。図18(b)の破線は、第8スイッチQ8の操作状態の推移を示す。第8スイッチQ8の操作状態が反転された操作状態が、第7スイッチQ7の操作状態となる。
【0132】
第1フルブリッジ回路30及び第2フルブリッジ回路40の間の伝達電力は、回路間位相φ21を制御することで調整される。ここで、回路間位相φ21は、第4スイッチQ4のオンへの切り替えタイミングと、第8スイッチQ8のオンへの切り替えタイミングとの位相差である。
【0133】
図18(c)に、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8のゲート電圧の推移を示す。Von1は通常モードにおけるオン時のゲート電圧を示し、Von2は発熱モードにおけるオン時のゲート電圧を示す。発熱モードにおけるオン時のゲート電圧Von2は、通常モードにおけるオン時のゲート電圧Von1に比べて低減されている。また、Voff1は、通常モードにおけるオフ時のゲート電圧を示し、Voff2は発熱モードにおけるオフ時のゲート電圧を示す。発熱モードにおけるオフ時のゲート電圧Voff2は、通常モードのオフ時のゲート電圧Voff1に比べて負側に増大されている。例えば、図18(a)に示す第11期間T11において、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8のオン時のゲート電圧はVon2に設定される。また、第12期間T12において、第5スイッチQ5のオン時のゲート電圧はVon2に設定され、第8スイッチQ8のオフ時のゲート電圧はVoff2に設定される。
【0134】
第11期間T11は、第1,第4,第5,第8スイッチQ1,Q4,Q5,Q8がオンされて、かつ、第2,第3,第6,第7スイッチQ2,Q3,Q6,Q7がオフされる期間である。
【0135】
第11期間T11の電流経路は、図19(a)に示すように、第3期間T3と同一である。しかし、第3期間T3と異なり第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8はオンされている。そこで、制御部70は、逆導通電流が流れる第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8のオン時のゲート電圧を、通常モードにおけるオン時のゲート電圧Von1に比べて小さいVon2に設定することで、逆導通時の導通損失を大きくすることができる。
【0136】
第12期間T12は、第2,第3,第5,第7スイッチQ2,Q3,Q5,Q7がオンされて、かつ、第1,第4,第6,第8スイッチQ1,Q4,Q6,Q8がオフされる期間である。
【0137】
図19(b)に、第12期間T12の電流経路を示す。第2フルブリッジ回路40においては、第2コイル50b、第7スイッチQ7及び第5スイッチQ5を含む回路が形成される。この場合についても、制御部70は、順導通電流が流れる第5スイッチQ5のオン時のゲート電圧を、通常モードにおけるオン時のゲート電圧Von1に比べて小さいVon2に設定することで、順導通時の導通損失を大きくすることができる。
【0138】
オン時のゲート電圧を低減することで、逆導通時の導通損失を大きくすることができるのは、図3に示したGaN-HEMTに流れる逆導通電流の特性によるものである。また、図20に、第5~第8スイッチQ5~Q8のオン時のゲート電圧を低減した場合の順導通電流量及び電圧降下量の特性を示す。図20中の矢印は、オン時のゲート電圧を低減することを示す。オン時のゲート電圧を低減すると、同じ順導通電流量に対する電圧降下量が増大することがわかる。
【0139】
このように、本実施形態では、発熱モードにおけるオン時のゲート電圧を通常モードに比べて低減することで、第5~第8スイッチQ5~Q8の電圧降下量を増大し、導通損失を大きくすることができる。
【0140】
また、オン時のゲート電圧の大きさを低減することで、オン時のゲート電圧と負側に増大したオフ時のゲート電圧との差を低減することができるため、第5~第8スイッチQ5~Q8にかかるストレスを低減することもできる。その結果、第5~第8スイッチQ5~Q8が劣化することを抑制することができる。
【0141】
<第6実施形態>
以下、第6実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。第1実施形態では、通常モードにおいて、第5~第8スイッチQ5~Q8をオフしたが、これを変更する。本実施形態では、通常モードにおいて第5~第8スイッチQ5~Q8をオンオフする。
【0142】
図21に、通常モードにおける制御部70が実施する制御ブロック図を示す。図21において、先の図2と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。本実施形態では、フィードバック制御部77は、電流偏差ΔI2を0にフィードバックするための操作量として、回路間位相φ21を算出する。本実施形態では、回路間位相φ21は、0°から所定位相までの範囲に制限され、その範囲において、値が大きくなるほど蓄電池10から給電対象11への伝達電力が大きくなる。
【0143】
PWM生成部79は、回路間位相φ21に基づいて、各スイッチQ1~Q8の駆動信号を生成する。
【0144】
ゲート電圧補正部80は、ゲート電圧設定部81からオフ時のゲート電圧をVoff=Vαとする指令を受け取り、第5~第8スイッチQ5~Q8のゲート電圧Voffを補正する。その後、ゲート電圧補正部80は、駆動信号を各スイッチQ1~Q8のゲートへ出力する。
【0145】
図22に、通常モードにおける各スイッチQ1~Q8の操作状態の推移を示す。図22(a)の実線は、第1スイッチQ1の操作状態の推移を示す。第1スイッチQ1の操作状態が反転された操作状態が、第2スイッチQ2の操作状態となる。図22(a)の破線は、第3スイッチQ3の操作状態の推移を示す。第3スイッチQ3の操作状態が反転された操作状態が、第4スイッチQ4の操作状態となる。図22(b)の実線は、第5スイッチQ5の操作状態の推移を示す。第5スイッチQ5の操作状態が反転された操作状態が、第6スイッチQ6の操作状態となる。図22(b)の破線は、第7スイッチQ7の操作状態の推移を示す。第7スイッチQ7の操作状態が反転された操作状態が、第8スイッチQ8の操作状態となる。第1スイッチQ1のオンへの切り替えタイミングと、第5スイッチQ5のオンへの切り替えタイミングとの位相差が回路間位相φ21とされる。
【0146】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0147】
<第7実施形態>
以下、第7実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。第7実施形態では、第1実施形態の構成に熱伝達部を追加する。
【0148】
図23に、本実施形態の構成図を示す。図23において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。電力変換装置20は、熱伝達部110を備えている。本実施形態において、熱伝達部110は、各スイッチQ1~Q8、トランス50及び給電対象11を熱交換対象要素とし、熱交換対象要素で発生する熱を吸収可能に構成されている。熱伝達部110は、吸収した熱を昇温対象要素に伝達し、昇温対象要素を昇温させる。昇温対象要素は、例えば、給電対象11である。
【0149】
熱伝達部110としては、例えば、熱交換対象要素と昇温対象要素との間で冷却水が循環する循環経路を備え、この冷却水を介して昇温対象要素を昇温させるものであってもよい。なお、熱伝達部110としては、これ以外にも例えば、冷却流体として気体(空気)が用いられるものであってよい。また、熱伝達部110としては、例えば、冷却流体を用いず、熱交換対象要素及び昇温対象要素に当接するヒートシンク等の構成部材であってもよい。
【0150】
これにより、電力変換に伴い発生した熱を回収し、昇温対象要素に伝達することができるため、効率的に昇温対象要素の温度を上昇することができる。
【0151】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0152】
・第3実施形態、第3実施形態の変形例、第4実施形態及び第5実施形態では、第1実施形態の電力変換装置20の回路構成を用いたが、第1実施形態の変形例2で示した電力変換装置90の回路構成を用いても同様の効果を得ることができる。
【0153】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0154】
10…蓄電池、11…給電対象、20…電力変換装置、Q1~Q8…第1~第8スイッチ、70…制御部。
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