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特許7075402有機エレクトロルミネセント材料及びそれを含む有機エレクトロルミネセントデバイス
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  • 特許-有機エレクトロルミネセント材料及びそれを含む有機エレクトロルミネセントデバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネセント材料及びそれを含む有機エレクトロルミネセントデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20220518BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20220518BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220518BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
H05B33/14 B
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H01L27/32
G09F9/30 365
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019525002
(86)(22)【出願日】2017-12-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 KR2017014132
(87)【国際公開番号】W WO2018105986
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】10-2016-0166026
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビトナリ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン-ヒュン・リー
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・キム
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-121957(JP,A)
【文献】特表2012-503043(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0077513(KR,A)
【文献】国際公開第2015/093878(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/126234(WO,A1)
【文献】特表2018-516850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50-51/56
H05B 33/00-33/28
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式1:
【化1】
(式中、
及びRは、それぞれ独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換の(C1-C10)アルキル、置換若しくは非置換の(C2-C10)アルケニル又は置換若しくは非置換の(C6-C30)アリールを表し、但し、R及びRの両方が水素であることはなく、
およびは、それぞれ独立して、イソ-プロピル、sec-ブチル、3-ペンチル又はフェニルを表し、
は、水素、メチル又はフェニルを表し、及び
aは、1~6の整数を表し、且つbは、1~4の整数を表し、ここで、a及びbがそれぞれ独立して2以上の整数である場合、R及びRのそれぞれは、同一であるか又は異なり得る
但し、R の2つ以上が前記置換若しくは非置換の(C1-C10)アルキルとはなり得ず、かつR の1つが置換若しくは非置換の(C1-C10)アルキルを表す場合は、残りのR は、水素および重水素からなる群から選択される。
によって表される少なくとも1つの化合物と、
下記の式2:
【化2】
(式中、
A環及びB環は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のベンゼン環又は置換若しくは非置換のナフタレン環を表し、但し、A環及びB環の少なくとも1つは、置換又は非置換のナフタレン環であり、
Ar及びArは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の(C6-C30)アリール又は置換若しくは非置換の窒素含有(8~30員)ヘテロアリールを表し、
及びLは、それぞれ独立して、単結合、置換若しくは非置換の(C6-C30)アリーレン又は置換若しくは非置換の(3~30員)ヘテロアリーレンを表し、及び
前記ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)は、B、N、O、S、Si及びPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する)
によって表される少なくとも1つの化合物と
を含む有機エレクトロルミネセント材料。
【請求項2】
は、水素原子又は置換若しくは非置換の(C1-C6)アルキルを表し、
は、置換又は非置換の(C1-C6)アルキルを表し、
及びRは、それぞれ独立して、イソ-プロピル、sec-ブチル、3-ペンチル又はフェニルを表し、
は、水素、メチル又はフェニルを表し、
a及びbは、それぞれ独立して、1又は2を表し、ここで、a及びbがそれぞれ独立して2である場合、R及びRのそれぞれは、同一であるか又は異なり得る、但し、R の2つが前記置換若しくは非置換の(C1-C6)アルキルとはなり得ない、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント材料。
【請求項3】
式2は、下記の式3:
【化3】
(式中、
A環及びB環のいずれか一方は、置換又は非置換のナフタレン環を表し、且つ他方は、置換又は非置換のベンゼン環を表し、
~Xは、それぞれ独立して、CR又はNを表し、但し、X~Xの少なくとも1つは、Nを表し、
は、水素又は置換若しくは非置換の(C6-C30)アリールを表し、
Arは、水素、置換若しくは非置換の(C1-C30)アルキル、置換若しくは非置換の(C6-C30)アリール又は置換若しくは非置換の(3~30員)ヘテロアリールを表し、
cは、1~4の整数を表し、ここで、cが2以上の整数である場合、Arのそれぞれは、同一であるか又は異なり得、及び
Ar、L及びLは、請求項1に記載の通りである)
によって表される、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント材料。
【請求項4】
、Ar、Ar、L、L、A環及びB環における前記置換アルキル、前記置換アルケニル、前記置換アリール(アリーレン)、前記置換ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)、前記置換ベンゼン環及び前記置換ナフタレン環の置換基は、それぞれ独立して、重水素、ハロゲン、シアノ、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、(C1-C30)アルキル、ハロ(C1-C30)アルキル、(C2-C30)アルケニル、(C2-C30)アルキニル、(C1-C30)アルコキシ、(C1-C30)アルキルチオ、(C3-C30)シクロアルキル、(C3-C30)シクロアルケニル、(3~7員)ヘテロシクロアルキル、(C6-C30)アリールオキシ、(C6-C30)アリールチオ、(C6-C30)アリール、(5~30員)ヘテロアリール、トリ(C1-C30)アルキルシリル、トリ(C6-C30)アリールシリル、ジ(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールシリル、(C1-C30)アルキルジ(C6-C30)アリールシリル、アミノ、モノ-又はジ-(C1-C30)アルキルアミノ、モノ-又はジ-(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C30)アルキルカルボニル、(C1-C30)アルコキシカルボニル、(C6-C30)アリールカルボニル、ジ(C6-C30)アリールボロニル、ジ(C1-C30)アルキルボロニル、(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールボロニル、(C6-C30)アリール(C1-C30)アルキル及び(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント材料。
【請求項5】
式1によって表される前記化合物は、
【化4】
からなる群から選択される、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント材料。
【請求項6】
式2によって表される前記化合物は、
【化5】
【化6】
からなる群から選択される、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント材料。
【請求項7】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント材料を含む有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項8】
ドーパントとしての前記式1によって表される前記化合物と、ホストとしての前記式2によって表される前記化合物とを含む、請求項7に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも2種類の化合物を含む有機エレクトロルミネセント材料及びそれを含む有機エレクトロルミネセントデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセントデバイス(ELデバイス)は、より広い視野角、より大きいコントラスト比及びより速い応答時間を提供するという利点を有する自発光ディスプレイデバイスである。1987年に、Eastman Kodakにより、発光層を形成するための材料として小さい芳香族ジアミン分子及びアルミニウム錯体を用いて最初の有機ELデバイスが開発された(Appl.Phys.Lett.51,913,1987を参照されたい)。
【0003】
有機エレクトロルミネセントデバイス(OLED)は、有機エレクトロルミネセント材料に電気を印加することによって電気エネルギーを光に変換し、通常、アノード、カソード及び2つの電極間に形成された有機層を含む。OLEDの有機層は、必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、正孔補助層、発光補助層、電子阻止層、発光層(ホスト材料及びドーパント材料を含有する)、電子緩衝層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等を含むことができる。有機層に用いられる材料は、機能に応じて、正孔注入材料、正孔輸送材料、正孔補助材料、発光補助材料、電子阻止材料、発光材料、電子緩衝材料、正孔阻止材料、電子輸送材料、電子注入材料等に分類することができる。OLEDでは、電圧の印加により、アノードからの正孔とカソードからの電子とが発光層に注入され、正孔と電子との再結合により、高エネルギーを有する励起子が生成される。有機発光化合物は、有機発光化合物が励起状態から基底状態に戻るとき、エネルギーによって励起状態に移行し、エネルギーから光を発する。
【0004】
OLEDにおける発光効率を決定する最も重要な要因は、発光材料である。発光材料には、高い量子効率、電子及び正孔の高い移動性並びに形成された発光材料層の均一性及び安定性の特徴が要求される。発光材料は、発光色によって青色、緑色及び赤色の発光材料に分類され、黄色又は橙色の発光材料を更に含む。更に、発光材料は、機能面でホスト材料とドーパント材料とに分類される。
【0005】
一般的に、優れたEL特性を有するデバイスは、ホストにドーパントをドープして形成される発光層を含む構造を有する。発光材料として単一の材料のみを用いると、最大発光波長が長波長側に移動し、分子間力により色純度が低下するという問題が生じる。
【0006】
(III)錯体は、それぞれ赤色、緑色及び青色の発光材料としてのビス(2-(2’-ベンゾチエニル)-ピリジナト-N、C-3’)イリジウム(アセチルアセトネート)[(acac)Ir(btp)]、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム[Ir(ppy)]及びビス(4,6-ジフルオロフェニルピリジナト-N,C2)ピコリナトイリジウム(Firpic)などの燐光発光材料として広く知られている。
【0007】
また、4,4’-N,N’-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)が最も広く知られている燐光ホスト材料となっている。近年、Pioneer(Japan)らは、バソクプロイン(BCP)及びアルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリナート)(4-フェニルフェノレート)(BAlq)等を用いた高性能有機エレクトロルミネセントデバイスを開発し、これは、ホスト材料としての正孔阻止材料として知られていた。
【0008】
しかしながら、これらの従来の燐光ホスト材料は、良好な発光特性をもたらすが、これらは、ガラス転移温度が低く、熱安定性が低いため、真空下で高温堆積プロセスが行われると材料が変化するという欠点を有する。従って、デバイスの色純度は、依然として不十分であった。
【0009】
一方、現在のFHD(フルHD)、先進的なUHD(ウルトラHD)及びより先進的なディスプレイの市場でより鮮やかなディスプレイを実現するには、様々な色を表現することが可能でなければならない。色空間が代表的である、定義され得るいくつかの基準が存在する。色空間は、光の3原色である赤色、緑色及び青色の各頂点と組み合わせることができる色の領域を指す。近年、多くの電子パネル企業は、青色、緑色及び赤色の3色を使用することによって有機エレクトロルミネセントデバイスを製造しており、これらの3色を組み合わせて、現在使用されている様々な色のディスプレイを実現する。ディスプレイは、青色、緑色及び赤色の3つの頂点で互いに組み合わせることができる色のみを実現することができる。従って、よりカラフルに実現するには、これらの3色の頂点ができるだけそれぞれの色の波長に達する必要がある。
【0010】
韓国特許出願公開第2010-0014633号明細書、同2011-0074538号明細書及び同2015-0003670号明細書では、ドーパントとしてフェニルキノリンの配位子を有するイリジウム錯体を含む有機エレクトロルミネセントデバイスを開示している。また、韓国特許第1082144号明細書及び韓国特許出願公開第2016-0039561号明細書では、インドロカルバゾール誘導体をホストとして含む有機エレクトロルミネセントデバイスを開示している。しかしながら、上記の文献では、ドーパントとしてフェニルキノリンの配位子を有するイリジウム錯体と、ホストとしてのベンゾインドロカルバゾール誘導体とを含む有機エレクトロルミネセントデバイスを具体的に開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示の目的は、従来の有機エレクトロルミネセントデバイスのものよりも優れた色純度を有する有機エレクトロルミネセントデバイスを製造することができる有機エレクトロルミネセント材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の技術的課題を解決するための徹底した研究の結果、より長波長の暗赤色発光デバイスに着目した。その後、赤色発光の波長帯域をできるだけ長波長化することにより、色再現範囲を広げることができる方向に本発明を完成させた。ホストのドーパント材料及びドーパント材料の特性は、波長帯域に大きい影響を及ぼすが、ドーパント材料に適したホスト材料を使用することにより、発光特性を更に最適化することが可能である。より長い波長を表すために、特定の光を放射するドーパントは、HOMO-LUMOバンドギャップにおいてより小さくなければならない。本開示では、特定のドーパントによるエネルギー移動を可能にする小さいエネルギーバンドギャップを有するホストが、より良好な色空間特性を与えるために探索される。具体的には、ベンゾインドロカルバゾールのホストと、イソキノリン構造を含むドーパントとの組み合わせは、上記の目的を達成することができる。より具体的には、下記の式1によって表される化合物と、下記の式2によって表される化合物とを含む有機エレクトロルミネセント材料により、上記の目的を達成することができる。式1によって表される化合物は、ドーパントとして含まれ得、及び式2によって表される化合物は、ホストとして含まれ得る。
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、
及びRは、それぞれ独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換の(C1-C10)アルキル、置換若しくは非置換の(C2-C10)アルケニル又は置換若しくは非置換の(C6-C30)アリールを表し、但し、R及びRの両方が水素であることはなく、
~Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換の(C1-C10)アルキル又は置換若しくは非置換の(C6-C30)アリールを表し、及び
aは、1~6の整数を表し、且つbは、1~4の整数を表し、ここで、a及びbがそれぞれ独立して2以上の整数である場合、R及びRのそれぞれは、同一であるか又は異なり得る。)
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、
A環及びB環は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のベンゼン環又は置換若しくは非置換のナフタレン環を表し、但し、A環及びB環の少なくとも1つは、置換又は非置換のナフタレン環であり、
Ar及びArは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の(C6-C30)アリール又は置換若しくは非置換の窒素含有(8~30員)ヘテロアリールを表し、
及びLは、それぞれ独立して、単結合、置換若しくは非置換の(C6-C30)アリーレン又は置換若しくは非置換の(3~30員)ヘテロアリーレンを表し、及び
ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)は、B、N、O、S、Si及びPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する。)
【0017】
本発明の効果
本開示により、優れた色純度を有する有機エレクトロルミネセントデバイスが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の表1のNTSC色空間をCIE1931色度図として示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本開示を詳細に説明する。しかしながら、以下の説明は、本開示を説明することを意図しており、決して本開示の範囲を限定することを意味しない。
【0020】
本開示における「有機エレクトロルミネセント材料」という用語は、有機エレクトロルミネセントデバイスに使用され得、且つ少なくとも1つの化合物を含み得る材料を意味する。必要に応じて、有機エレクトロルミネセント材料は、有機エレクトロルミネセントデバイスを構成する任意の層に含まれ得る。例えば、有機エレクトロルミネセント材料は、正孔注入材料、正孔輸送材料、正孔補助材料、発光補助材料、電子阻止材料、発光材料、電子緩衝材料、正孔阻止材料、電子輸送材料、電子注入材料等であり得る。
【0021】
本開示の有機エレクトロルミネセント材料は、式1によって表される少なくとも1つの化合物及び式2によって表される少なくとも1つの化合物を含むことができる。式1の化合物及び式2の化合物は、発光層に含まれ得るが、これに限定されるものではない。この場合、式1の化合物は、ドーパントとして含まれ得、及び式2の化合物は、ホストとして含まれ得る。
【0022】
式1において、R及びRは、それぞれ独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換の(C1-C10)アルキル、置換若しくは非置換の(C2-C10)アルケニル又は置換若しくは非置換の(C6-C30)アリールを表し、本開示の一実施形態では水素又は置換若しくは非置換の(C1-C6)アルキルを表し、但し、R及びRの両方が水素であることはない。本開示の別の実施形態では、Rは、水素又は置換若しくは非置換の(C1-C6)アルキルを表し、及びRは、置換又は非置換の(C1-C6)アルキルを表す。例えば、Rは、水素、メチル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル又はsec-ブチルを表し得、及びRは、メチル、イソ-ブチル又はtert-ブチルを表し得る。
【0023】
式1において、R~Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換の(C1-C10)アルキル又は置換若しくは非置換の(C6-C30)アリールを表し、本開示の一実施形態では水素、置換若しくは非置換の(C1-C6)アルキル又は置換若しくは非置換の(C6-C25)アリールを表す。本開示の別の実施形態では、R及びRは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の(C1-C6)アルキル又は置換若しくは非置換の(C6-C18)アリールを表し、及びRは、水素、置換若しくは非置換の(C1-C6)アルキル又は置換若しくは非置換の(C6-C18)アリールを表す。更に、R及びRは、互いに同一であり得る。例えば、R及びRは、それぞれ独立して、メチル、イソ-プロピル、イソ-ブチル、sec-ブチル、3-ペンチル又はフェニルを表し得、及びRは、水素、メチル又はフェニルを表し得る。
【0024】
式1では、aは、1~6の整数を表し、且つbは、1~4の整数を表し、ここで、a及びbがそれぞれ独立して2以上の整数である場合、R及びRのそれぞれは、同一であるか又は異なり得る。本開示の一実施形態では、a及びbは、それぞれ独立して、1又は2を表し、ここで、a及びbがそれぞれ独立して2である場合、R及びRのそれぞれは、同一であるか又は異なり得る。
【0025】
式2では、A環及びB環は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のベンゼン環又は置換若しくは非置換のナフタレン環を表し、但し、A環及びB環の少なくとも1つは、置換又は非置換のナフタレン環である。本開示の一実施形態では、A環及びB環のいずれか一方は、置換又は非置換のベンゼン環を表し得、且つ他方は、置換又は非置換のナフタレン環を表し得る。A環及びB環は、それぞれ独立して、非置換のベンゼン環又は非置換の若しくはフェニルで置換されたナフタレン環を表し得る。
【0026】
式2において、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の(C6-C30)アリール又は置換若しくは非置換の窒素含有(8~30員)ヘテロアリールを表す。Ar及びArのいずれか一方は、置換又は非置換の(C6-C30)アリールを表し、且つ他方は、置換又は非置換の窒素含有(8~30員)ヘテロアリールを表し得る。本開示の一実施形態では、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の(C6-C25)アリール又は置換若しくは非置換の窒素含有(8~25員)ヘテロアリールを表し、本開示の別の実施形態では置換若しくは非置換の(C6-C18)アリール又は置換若しくは非置換の窒素含有(8~18員)ヘテロアリールを表す。例えば、Ar及びArは、それぞれ独立して、非置換のフェニル、非置換のナフチル、フェニルで置換されたキナゾリニル、或いは非置換の又はフェニル、ビフェニル、ナフチル、ナフチルフェニル及び/若しくはジメチルフルオレニルで置換されたキノキサリニルを表す。
【0027】
式2では、L及びLは、それぞれ独立して、単結合、置換若しくは非置換の(C6-C30)アリーレン又は置換若しくは非置換の(3~30員)ヘテロアリーレンを表し、本開示の一実施形態では単結合、置換若しくは非置換の(C6-C25)アリーレン又は置換若しくは非置換の(5~25員)ヘテロアリーレンを表し、本開示の別の実施形態では単結合、置換若しくは非置換の(C6-C18)アリーレン又は置換若しくは非置換の(5~18員)ヘテロアリーレン、例えば単結合、フェニレン、ナフチレン又はピリジニレンを表す。
【0028】
式1及び2では、ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)は、B、N、O、S、Si及びPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、本開示の一実施形態では、N、O及びSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有することができ、本開示の別の実施形態では窒素原子を含有することができる。
【0029】
本開示の一実施形態では、式2は、以下の式3によって表され得る。
【0030】
【化3】
【0031】
式3では、A環及びB環のいずれか一方は、置換又は非置換のナフタレン環を表し、且つ他方は、置換又は非置換のベンゼン環を表す。本開示の一実施形態では、A環及びB環のいずれか一方は、非置換の又はフェニルで置換されたナフタレン環を表し、且つ他方は、非置換のベンゼン環を表す。
【0032】
式3では、X~Xは、それぞれ独立して、CR又はNを表し、但し、X~Xの少なくとも1つは、Nを表し、本開示の一実施形態では、X~Xの少なくとも2つは、Nを表し得、本開示の別の実施形態では、X~Xの2つは、Nを表し得る。例えば、Xは、Nを表し得、X及びXのいずれか一方は、Nを表し得、且つX及びXの他方は、CRを表し得る。
【0033】
本明細書において、Rは、水素又は置換若しくは非置換の(C6-C30)アリールを表し、本開示の一実施形態では置換又は非置換の(C6-C25)アリールを表し、本開示の別の実施形態では置換又は非置換の(C6-C18)アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル又はナフチルフェニルを表す。
【0034】
式3において、Arは、水素、置換若しくは非置換の(C1-C30)アルキル、置換若しくは非置換の(C6-C30)アリール又は置換若しくは非置換の(3~30員)ヘテロアリールを表し、本開示の一実施形態では水素、置換若しくは非置換の(C1-C20)アルキル、置換若しくは非置換の(C6-C25)アリール又は置換若しくは非置換の(3~25員)ヘテロアリールを表し、本開示の別の実施形態では水素又は置換若しくは非置換の(C6-C18)アリール、例えば水素、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ナフチルフェニル又はジメチルフルオレニルを表す。
【0035】
式3では、cは、1~4の整数を表し、本開示の一実施形態では1又は2を表し得、本開示の別の実施形態では1を表し得る。cが2以上の整数である場合、Arのそれぞれは、同一であるか又は異なり得る。
【0036】
式3では、Ar、L及びLは、式2で定義された通りである。
【0037】
本明細書において、「(C1-C30)アルキル」という用語は、鎖を構成する1~30の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状アルキルであることを意味し、その炭素原子数は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。上記のアルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル等を含むことができる。「(C3-C30)シクロアルキル」という用語は、3~30の環骨格炭素原子を有する単環式又は多環式炭化水素を意味し、ここで、炭素原子数は、3~20であることが好ましく、3~7であることがより好ましい。上記のシクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を含むことができる。「(3~7員)ヘテロシクロアルキル」という用語は、3~7、好ましくは5~7の環骨格原子を有し、B、N、O、S、Si及びPからなる群、好ましくはO、S及びNからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むシクロアルキルであることを意味する。上記のヘテロシクロアルキルとしては、テトラヒドロフラン、ピロリジン、チオラン、テトラヒドロピラン等を挙げることができる。「(C6-C30)アリール(アリーレン)」という用語は、6~30の環骨格炭素原子を有する芳香族炭化水素から誘導される単環式又は縮合環ラジカルであることを意味し、ここで、環骨格炭素原子の数は、好ましくは6~25、より好ましくは6~18である。上記のアリール(アリーレン)は、部分的に飽和され得、且つスピロ構造を含み得る。上記のアリールとしては、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、ナフチル、ビナフチル、フェニルナフチル、ナフチルフェニル、フルオレニル、フェニルフルオレニル、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、フェナントレニル、フェニルフェナントレニル、アントラセニル、インデニル、トリフェニルエチレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニル、クリセニル、ナフタセニル、フルオランテニル、スピロビフルオレニル等を挙げることができる。「(3~30員)ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)」という用語は、3~30の環骨格原子を有し、B、N、O、S、Si及びPからなる群から選択される少なくとも1つ、好ましくは1~4つのヘテロ原子を含むアリールである。上記のヘテロアリール(ヘテロアリーレン)は、単環式環又は少なくとも1つのベンゼン環と縮合した縮合環であり得、部分的に飽和され得、単結合を介してヘテロアリール基に少なくとも1つのヘテロアリール又はアリール基を結合することにより形成されるものであり得、且つスピロ構造を含み得る。上記のヘテロアリールとしては、フリル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアジニル、テトラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニルなどの単環型ヘテロアリール並びにベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソインドリル、インドリル、ベンゾインドリル、インダゾリル、ベンゾチアジアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾカルバゾリル、ジベンゾカルバゾリル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナントリジニル、ベンゾジオキソリル及びジヒドロアクリジニルなどの縮合環型ヘテロアリールを挙げることができる。更に、「ハロゲン」としては、F、Cl、Br及びIが挙げられる。
【0038】
本明細書において、「置換又は非置換」という表現における「置換」は、特定の官能基中の水素原子が別の原子又は別の官能基、即ち置換基で置き換えられていることを意味する。R~R、Ar~Ar、L、L、式1~3のA環及びB環における置換アルキル、置換アルケニル、置換アリール(アリーレン)、置換ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)、置換ベンゼン環及び置換ナフタレン環の置換基は、それぞれ独立して、重水素、ハロゲン、シアノ、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、(C1-C30)アルキル、ハロ(C1-C30)アルキル、(C2-C30)アルケニル、(C2-C30)アルキニル、(C1-C30)アルコキシ、(C1-C30)アルキルチオ、(C3-C30)シクロアルキル、(C3-C30)シクロアルケニル、(3~7員)ヘテロシクロアルキル、(C6-C30)アリールオキシ、(C6-C30)アリールチオ、(C6-C30)アリール、(5~30員)ヘテロアリール、トリ(C1-C30)アルキルシリル、トリ(C6-C30)アリールシリル、ジ(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールシリル、(C1-C30)アルキルジ(C6-C30)アリールシリル、アミノ、モノ-又はジ-(C1-C30)アルキルアミノ、モノ-又はジ-(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C30)アルキルカルボニル、(C1-C30)アルコキシカルボニル、(C6-C30)アリールカルボニル、ジ(C6-C30)アリールボロニル、ジ(C1-C30)アルキルボロニル、(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールボロニル、(C6-C30)アリール(C1-C30)アルキル及び(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールからなる群から選択される少なくとも1つであり得、本開示の一実施形態では少なくとも1つの(C6-C25)アリールであり得、本開示の別の実施形態では少なくとも1つの(C6-C18)アリールであり得、例えばフェニル、ビフェニル、ナフチル、ナフチルフェニル及びジメチルフルオレニルからなる群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0039】
式1によって表される化合物としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
【化4】
【0041】
式2によって表される化合物としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
【化5】
【0043】
【化6】
【0044】
本開示の式1及び2によって表される有機エレクトロルミネセント化合物は、当業者に知られている合成方法によって製造することができる。例えば、下記の反応スキーム1に示されるように、式1によって表される化合物を合成することができ、下記の反応スキーム2又は3の方法を参照して式2の化合物を合成することができるが、これに限定されるものではない。
【0045】
[反応スキーム1]
【0046】
【化7】
【0047】
反応スキーム1において、R~R、a及びbは、式1で定義されたた通りである。
【0048】
[反応スキーム2]
【0049】
【化8】
【0050】
[反応スキーム3]
【0051】
【化9】
【0052】
反応スキーム2及び3において、Ar、Ar、L及びLは、式2で定義された通りである。
【0053】
一方、本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスは、第1電極、第2電極及び第1電極と第2電極との間の少なくとも1つの有機層を含むことができる。第1及び第2電極の一方は、アノードであり得、且つ他方は、カソードであり得る。有機層は、少なくとも1つの発光層を含み、正孔注入層、正孔輸送層、正孔補助層、発光補助層、電子輸送層、電子緩衝層、電子注入層、中間層、正孔阻止層及び電子阻止層から選択される少なくとも1つの層を更に含むことができる。発光層は、光を放出する層であり、単層であり得、又は2つ以上の層が積層される複数の層であり得る。発光層において、ホスト化合物に基づくドーパント化合物のドーピング濃度は、20重量%未満であることが好ましい。
【0054】
発光補助層は、アノードと発光層との間又はカソードと発光層との間に配置することができる。発光補助層をアノードと発光層との間に配置する場合、それは、正孔注入及び/若しくは正孔輸送を促進するために、又は電子のオーバーフローを防止するために用いられ得る。発光補助層をカソードと発光層との間に配置する場合、それは、電子注入及び/若しくは電子輸送を促進するために、又は正孔のオーバーフローを防止するために用いられ得る。また、正孔補助層は、正孔輸送層(又は正孔注入層)と発光層との間に配置され得、正孔輸送速度(又は正孔注入速度)を促進又は阻止するのに有効であり得、それにより電荷のバランスを制御する。更に、電子阻止層は、正孔輸送層(又は正孔注入層)と発光層との間に配置され得、発光層からのオーバーフローしている電子を阻止し、発光層内に励起子を閉じ込めて光漏れを防止することができる。有機エレクトロルミネセントデバイスが2つ以上の正孔輸送層を含む場合、更に含まれる正孔輸送層は、正孔補助層又は電子阻止層として使用することができる。発光補助層、正孔補助層又は電子阻止層は、有機エレクトロルミネセントデバイスの効率及び/又は寿命を向上させる効果を有し得る。
【0055】
本開示の一態様によれば、式1によって表される少なくとも1つの化合物と、式2によって表される少なくとも1つの化合物との組み合わせを含む有機層を提供することができる。有機層は、複数の層を含むことができ、式1によって表される化合物と、式2によって表される化合物とは、それぞれ同一の層又は異なる層に含まれ得る。また、本開示は、有機層を含む有機エレクトロルミネセントデバイスを提供する。
【0056】
本開示の別の態様によれば、式1によって表される少なくとも1つのドーパント化合物と、式2によって表される少なくとも1つのホスト化合物との組み合わせである、ドーパントとホストとの組み合わせが提供され得る。また、本開示は、ドーパントとホストとの組み合わせを含む有機エレクトロルミネセントデバイスを提供する。
【0057】
本開示の更なる態様によれば、式1によって表される少なくとも1つの化合物と、式2によって表される少なくとも1つの化合物との組み合わせを含む有機エレクトロルミネセント材料及びこの材料を含む有機エレクトロルミネセントデバイスが提供され得る。この材料は、式1の化合物と式2の化合物との組み合わせのみからなることができ、且つ有機エレクトロルミネセント材料に含まれる従来の材料を更に含むことができる。
【0058】
また、本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスは、式1及び式2の化合物を含むことができ、且つアリールアミン系化合物及びスチリルアリールアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を更に含む。
【0059】
更に、本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスにおいて、有機層は、1族の金属、2族の金属、4族の遷移金属、5族の遷移金属、周期律表のd-遷移元素のランタニド及び有機金属、又は式1及び2の化合物の他に前記金属を含む少なくとも1つの錯体化合物からなる群から選択される少なくとも1つの金属を更に含むことができる。更に、有機層は、発光層と電荷発生層とを更に含むことができる。
【0060】
更に、本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスは、当技術分野で知られている青色、赤色又は緑色の発光化合物を含有する少なくとも1つの発光層を更に含むことによって白色光を放出することができる。また、それは、必要に応じて、黄色又は橙色の発光層を更に含むことができる。
【0061】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスにおいて、カルコゲナイド層、金属ハロゲン化物層及び金属酸化物層から選択される少なくとも1つの層(以下、「表面層」)は、好ましくは、片方又は両方の電極のその内面に配置され得る。具体的には、エレクトロルミネセント媒体層のアノード面にシリコン又はアルミニウムのカルコゲナイド(酸化物を含む)層を配置し、エレクトロルミネセント媒体層のカソード面に金属ハロゲン化物層又は金属酸化物層を配置することが好ましい。このような表面層は、有機エレクトロルミネセントデバイスに動作安定性をもたらすことができる。好ましくは、カルコゲナイドとしては、SiO(1≦X≦2)、AlO(1≦X≦1.5)、SiON、SiAlON等が挙げられ、ハロゲン化金属としては、LiF、MgF、CaF、フッ化希土類金属等が挙げられ、金属酸化物としては、CsO、LiO、MgO、SrO、BaO、CaO等が挙げられる。
【0062】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスにおいて、電子輸送化合物と還元性ドーパントとの混合領域又は正孔輸送化合物と酸化性ドーパントとの混合領域は、電極の対の少なくとも一方の表面に配置されていることが好ましい。この場合、電子輸送化合物は、アニオンに還元されるため、混合領域からエレクトロルミネセント媒体への電子の注入及び輸送がより容易になる。更に、正孔輸送化合物は、カチオンに酸化されるため、混合領域からエレクトロルミネセント媒体への正孔の注入及び輸送がより容易になる。好ましくは、酸化性ドーパントは、種々のルイス酸及びアクセプター化合物を含み、還元性ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、希土類金属及びそれらの混合物を含む。還元性ドーパント層を電荷発生層として使用して、2つ以上の発光層を有し且つ白色光を放出する有機エレクトロルミネセントデバイスを調製することができる。
【0063】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスの各層を形成するために、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ及びイオンプレーティング方法などの乾式成膜方法又はインクジェット印刷、ノズル印刷、スロットコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング及びフローコーティング方法などの湿式成膜方法を使用することができる。本開示のドーパント及びホスト化合物は、同時蒸発又は混合蒸発であり得る。
【0064】
湿式製膜法を用いる場合、各層を形成する材料をエタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等などの任意の適切な溶媒に溶解又は拡散させることによって薄膜を形成することができる。各層を形成する材料を溶解又は拡散させることができ、製膜能力に問題がない場合、溶媒は、任意の溶媒であり得る。
【0065】
共蒸発は、2つ以上の異性体材料をそれぞれの個々のるつぼ源に入れ、材料を蒸発させるために同時に両方のセルに電流を流す混合堆積法である。混合蒸発は、2つ以上の異性体材料を、それらを蒸発させる前に1つのるつぼ源中で混合し、電流をセルに印加して材料を蒸発させる混合堆積法である。
【0066】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスを用いて表示システム又は照明システムを作製することができる。
【0067】
以下では、本開示のドーパント化合物とホスト化合物とを含む有機発光ダイオード(OLED)デバイスの発光特性について、従来のOLEDデバイスと比較して詳細に説明する。しかしながら、本開示は、以下の実施例によって限定されない。
【実施例
【0068】
デバイスの実施例1:本開示の化合物を含むOLEDデバイスの作製
本開示による有機エレクトロルミネセント化合物を用いてOLEDデバイスを作製した。OLEDデバイス(ジオマテック株式会社、日本)のためのガラス基板上の透明電極酸化インジウムスズ(ITO)薄膜(10Ω/sq)をアセトン、エタノール及び蒸留水で超音波洗浄し、その後、イソプロパノール中に保存した。次いで、ITO基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに取り付けた。化合物HI-1を真空蒸着装置のセルに導入した後、装置のチャンバー内の圧力を10-6トールに制御した。その後、セルに電流を流して、上記で導入した材料を蒸発させて、それによりITO基板上に厚さ80nmの第1の正孔注入層を形成した。次に、化合物HI-2を真空蒸着装置の別のセルに導入し、セルに電流を流して蒸着させ、それにより第1の正孔注入層上に厚さ5nmの第2の正孔注入層を形成した。次いで、化合物HT-1を真空蒸着装置の別のセルに導入し、セルに電流を流して蒸着させ、それにより第2の正孔注入層上に厚さ10nmの第1の正孔輸送層を形成した。次いで、化合物HT-2を真空蒸着装置の別のセルに導入し、セルに電流を流して蒸発させ、それにより第1の正孔輸送層上に厚さ60nmの第2の正孔輸送層を形成した。正孔注入層及び正孔輸送層を形成した後、以下のようにしてそれらの上に発光層を形成した。化合物H-2をホストとして真空蒸着装置の一方のセルに導入し、化合物D-19をドーパントとして他方のセルに導入した。ドーパントは、ホストとドーパントとの総量に基づいて3重量%のドーピング量で蒸着し、第2の正孔輸送層上に40nmの厚さの発光層を形成した。次いで、化合物ET-1と化合物EI-1とを他の2つのセルに導入し、1:1の割合で蒸着し、発光層上に厚さ35nmの電子輸送層を形成した。電子輸送層上に厚さ2nmの電子注入層として化合物EI-1を蒸着した後、電子注入層上に別の真空蒸着装置によって厚さ80nmのAlカソードを蒸着した。このようにしてOLEDデバイスを作製した。
【0069】
デバイスの実施例2:本開示の化合物を含むOLEDデバイスの作製
化合物HT-2の代わりに第2の正孔輸送層として化合物HT-3を使用し、ドーパントとして化合物D-7を使用したことを除いて、デバイスの実施例1と同じ方法でOLEDデバイスを作製した。
【0070】
デバイスの実施例3:本開示の化合物を含むOLEDデバイスの作製
化合物HI-1を厚さ90nmの第1の正孔注入層として堆積させ、化合物HT-2の代わりに第2の正孔輸送層として化合物HT-3を用い、ドーパントとして化合物D-9を用い、ドーパントをホストとドーパントとの総量に基づいて2重量%のドーピング量で蒸着したことを除いて、デバイスの実施例1と同じ方法でOLEDデバイスを作製した。
【0071】
【化10】
【0072】
比較例1:従来の化合物を含むOLEDデバイスの作製
ドーパントとして下記化合物Aを使用したことを除いて、デバイスの実施例1と同じ方法でOLEDデバイスを作製した。
【0073】
【化11】
【0074】
比較例2:従来の化合物を含むOLEDデバイスの作製
ドーパントとして下記化合物Bを使用したことを除いて、デバイスの実施例1と同じ方法でOLEDデバイスを作製した。
【0075】
【化12】
【0076】
比較例3:従来の化合物を含むOLEDデバイスの作製
ドーパントとして上記化合物Bを使用し、化合物HT-2の代わりに化合物HT-3を第2の正孔輸送層として使用したことを除いて、デバイスの実施例1と同じ方法でOLEDデバイスを作製した。
【0077】
色再現範囲の比較
色再現範囲は、National Television System Committee(NTSC)によって作成された色空間の規格に基づいて算出され、これは、国際照明委員会(CIE)によって定義された色座標系に基づいている。図1を参照して、NTSCによって定義される赤色(0.67、0.33)、緑色(0.21、0.71)及び青色(0.14、0.08)の3点で形成される三角形の面積が算出される(以下、「NTSC面積」)。また、青色及び緑色についてNTSC定義値を、赤色について、作製したデバイスでの測定値を用いて三角形の面積を算出し、次いでNTSC面積に対する三角形の面積の比を算出する。数字が高いほど、より鮮やかな色が再現される。
【0078】
NTSC面積に対する比較例及びデバイスの実施例の面積のパーセント(%)、即ちNTSC色空間は、以下の表1に示すように算出される。
【0079】
【表1】
【0080】
表1において、R(x)は、赤色発光のCIE X座標を表し、R(y)は、赤色発光のCIE Y座標を表し、G(x)は、緑色発光のCIE X座標を表し、G(y)は、緑色発光のCIE Y座標を表し、B(x)は、青色発光のCIE X座標を表し、B(y)は、青色発光のCIE Y座標を表す。
【0081】
デバイスの実施例及び比較例の有機エレクトロルミネセントデバイスのCIE色座標及びNTSC面積に対する面積のパーセントを以下の表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
上記の表2から、本開示の化合物を含む有機エレクトロルミネセントデバイス(デバイスの実施例1~3)は、従来の化合物を含む有機エレクトロルミネセントデバイス(比較例1~3)より色再現範囲(色域)が優れていることが確認できる。
図1