(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20220518BHJP
H02K 3/24 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K3/24 C
(21)【出願番号】P 2019563860
(86)(22)【出願日】2018-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2018063138
(87)【国際公開番号】W WO2018211086
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2020-01-17
(31)【優先権主張番号】102017208564.9
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツ ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】シュトイラー ハンス ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ゾンターク ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】マーキック ストージャン
(72)【発明者】
【氏名】ライセン アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】メドヴェセック アレックス
(72)【発明者】
【氏名】セヴァー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】グラープヘア フィリップ
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-297924(JP,A)
【文献】特開2003-070199(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0042498(US,A1)
【文献】実開昭57-090365(JP,U)
【文献】特表2004-522395(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0300220(US,A1)
【文献】実開昭52-123609(JP,U)
【文献】特開2012-005180(JP,A)
【文献】特開2011-120402(JP,A)
【文献】特開昭62-217837(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0091398(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の電気機械(1)であって、
電気機械(1)の軸方向(A)を定める回転軸(D)の周りを回転可能なロータ(3)を備え、ステータ巻線(6)を有するステータ(2)を備え、
冷却剤分配室(4)及び冷却剤分配室(4)から軸方向へ離れて配置された冷却剤収集室(5)を備え、ステータ巻線(6)を冷却するために、冷却剤分配室(4)は、冷却剤収集室(5)に冷却剤(K)が流れることが可能な少なくとも一つの冷却通路(10)により流体的に連通し、
冷却剤分配室(4)及び/または冷却剤収集室(5)は、少なくとも一つのステータ巻線(6)の第1及び/または第2の軸方向の端部(14a,14b)の領域に配置され、
特徴は、
少なくとも一つのステータ巻線(6)が、熱的結合のために電気絶縁性プラスチックからなるプラスチック構成物(11)に埋め込まれ、
冷却剤分配室(4)及び/または冷却剤収集室(5)は、少なくとも一つのステータ巻線(6)との熱結合のために、プラスチック構成物(11)に少なくとも一部が配置され、
前記
プラスチック構成物(11)の軸方向の両端に、互いに軸方向の反対に位置する第1の端部シールド(25a)と第2の端部シールド(25b)が配置され、
冷却剤分配室(4)
及び冷却剤収集室(5)は、それぞれ、一部がプラスチック構成物(11)に配置され、他の一部が前記第1の端部シールド(25a)及び/または第2の端部シールド(25b)に配置されている
電気機械。
【請求項2】
請求項1において、
冷却剤分配室(4)及び/または冷却剤収集室(5)は、少なくとも一つのステータ巻線(6)の第1
及び/または第2の端部(14a,14b)の径方向外側に配置される
ことを特徴とする電気機械。
【請求項3】
請求項1または2において、
冷却剤分配室(4)及び/または冷却剤収集室(5)は、ロータ(3)の回転軸(D)に直角の断面で、リング状の幾何学形状を有する
ことを特徴とする電気機械。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1つにおいて、
プラスチック構成物(11)は、冷却剤分配室(4)及び/または冷却剤収集室(5)を少なくとも部分的に区切る
ことを特徴とする電気機械。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1つにおいて、
冷却剤分配室(4)及び/または冷却剤収集室(5)は、プラスチック構成物(11)に、少なくとも部分的に形成されたキャビティ(41a,41b)により形成される
ことを特徴とする電気機械。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1つにおいて、
少なくとも一つの冷却通路(10)も、電気絶縁性プラスチックからなる少なくとも一つのプラスチック構成物(11)に埋め込まれる
ことを特徴とする電気機械。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1つにおいて
ステータ(2)は、軸方向(A)に沿って延びてロータ(3)の周方向(U)に沿って互いに離れて配置されるステータティース(8)を有し、前記ステータティース(8)はステータ巻線(6)を支持し、
プラスチック構成物(11)は、少なくとも一つの冷却通路(10)及び少なくとも一つのステータ巻線(6)とともに、周方向(U)に隣り合う2つのステータティース(8)の間に形成される空間(9)内に配置される
ことを特徴とする電気機械。
【請求項8】
請求項7において、
空間(9)は、少なくとも一つのステータ巻線(6)が配置される第1の部分空間(9c)と、少なくとも一つの冷却通路(10)が配置される第2の部分空間(9d)を備え、
位置決め補助装置(27)が2つの部分空間(9c,9d)の間に配置され、それによって、少なくとも一つの冷却通路(10)が第2の部分空間(9d)に位置決め可能である
ことを特徴とする電気機械。
【請求項9】
請求項8において、
位置決め補助装置(27)は、周方向(U)に隣り合う2つのステータティース(8a,8b)で具体化される2つの突起(28a,28b)を備え、
2つの突起(28a,28b)は、周方向に互いに向かい合い、冷却通路(10)を位置決めするために空間(9)の中へ突出する
ことを特徴とする電気機械。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1つにおいて、
少なくとも一つの空間(9)で、プラスチック構成物(11)は単一のプラスチック(材料)からなり、
電気絶縁性材料からなる追加の電気絶縁材(15)が、空間(9)内に配置される
ことを特徴とする電気機械。
【請求項11】
請求項10において、
追加の電気絶縁材(15)は、ステータ巻線(6)とステータティース(8)の間に配置される
ことを特徴とする電気機械。
【請求項12】
請求項1から11の何れか1つにおいて、
電気絶縁性プラスチックは、熱硬化性プラスチックを含むか、または熱硬化性プラスチックであり、
または、
電気絶縁性プラスチックは、熱可塑性プラスチックを含むか、または熱可塑性プラスチックである
ことを特徴とする電気機械。
【請求項13】
請求項7から12の何れか1つにおいて、
少なくとも一つの冷却通路(10)が、プラスチック構成物(11)に設けられ、周方向(U)にそれぞれ隣り合う2つのステータティース(8a,8b)の間の空間の少なくとも一つに配置される
ことを特徴とする電気機械。
【請求項14】
請求項1から13の何れか1つにおいて、
少なくとも一つの冷却通路(10)が、空間(9)内のそれぞれのステータ巻線(6)の径方向外側及び/または径方向内側に配置される
ことを特徴とする電気機械。
【請求項15】
請求項1から14の何れか1つにおいて、
少なくとも一つの冷却通路(10)が管体の内部(22)を包囲する管体(16)として具体化され、
少なくとも一つの分離要素(18)が、管体(16)に形成され、管体の内部(22)を互いに流体的に分離される少なくとも2つの部分冷却通路(19)に細分する
ことを特徴とする電気機械。
【請求項16】
請求項15において、
管体(16)は、2つの広い側面(20)と2つの狭い側面(21)とを有する扁平管(17)として具体化される
ことを特徴とする電気機械。
【請求項17】
請求項15または16において、
管体(16)は、扁平管(17)として具体化され、
軸方向(A)に直角な断面で、扁平管(17)の少なくとも一つの広い側面(20)は、径方向(R)に実質的に直角に延びる
ことを特徴とする電気機械。
【請求項18】
請求項1から17の何れか1つにおいて、
少なくとも一つの冷却通路(10)は、プラスチック構成物(11)の内部に完全に配置されている
ことを特徴とする電気機械。
【請求項19】
請求項1から18の何れか1つにおいて、
少なくとも一つの冷却通路(10)は、少なくとも一つのパーフォレーション(40)により形成され、パーフォレーションは、プラスチック構成物(11)の内部に設けられ、冷却剤(K)が流れることができる
ことを特徴とする電気機械。
【請求項20】
請求項19において、
少なくとも一つのパーフォレーション(40)は、軸方向(A)に直角な断面で、2つの広い側面(20)と2つの狭い側面(21)とを有する長方形の幾何学形状を有する
ことを特徴とする電気機械。
【請求項21】
請求項1から20の何れか1つにおいて、
少なくとも一つの冷却通路(10)は、ステータ本体(7)の内部に形成され、冷却剤(K)が流れることができる少なくとも一つのパーフォレーション(40)により形成されている
ことを特徴とする電気機械。
【請求項22】
請求項21において、
冷却通路(10)を形成するパーフォレーション(40)は、空間(9)に向かって開口するように形成され、空間(9)内に配置されたプラスチック構成物(11)によって流体密封の状態で閉じられている
ことを特徴とする電気機械。
【請求項23】
請求項1から22の何れか1つにおいて、
少なくとも一つの冷却通路(10,10b)がプラスチック構成物(11)に設けられ、少なくとも一つの冷却通路(10,10a)がステータ本体(7)に設けられる
ことを特徴とする電気機械。
【請求項24】
請求項1から23の何れか1つにおいて、
冷却剤供給部(35)は、第1の端部シールド(25a)に埋め込まれ、冷却剤分配室(4)を第1の端部シールド(25a)の外側に設けられた冷却剤入口(33)に流体的に接続し、
冷却剤供給部(35)が、ステータ(2)を回転可能に装着するための第1の軸受(32a)に熱的に接続され、前記第1の軸受は第1の端部シールド(25a)に設けられ、及び/または、
冷却剤収集部(36)は、第2の端部シールド(25b)に埋め込まれ、冷却剤収集室(5)を第2の端部シールド(25b)の外側に設けられた冷却剤出口(34)に流体的に接続し、
冷却剤放出部(36)が、ステータ(2)を回転可能に装着するための第2の軸受(33a)に熱的に接続され、前記第2の軸受は第2の端部シールド(25b)に設けられる
ことを特徴とする電気機械。
【請求項25】
請求項1から24の何れか1つにおいて、
プラスチック構成物(11)は、電気絶縁性プラスチックからなる射出成形構成物である
ことを特徴とする電気機械。
【請求項26】
請求項1から25の何れか1つにおいて
プラスチック構成物は、一体に形成されている
ことを特徴とする電気機械。
【請求項27】
請求項1から26の何れか1つにおいて、
ステータ(2)は、リング形状の固定子本体(7)を備え、
電気絶縁性プラスチックからなるプラスチック構成物(11)は、ステータ本体(7)の外周面(30)に配置され、前記外周面(30)に外側コーティング(11.1)を形成する
ことを特徴とする電気機械。
【請求項28】
請求項1から27の何れか1つにおいて、
プラスチック構成物(11)は、空間(9)から軸方向に突出するステータ巻線(6)の少なくとも一つの巻線部分を少なくとも部分的に包囲し、この場合、前記巻線部分が冷却剤(K)から機械(1)の動作中に絶縁されるように、冷却剤分配室(4)及び/または冷却剤収集室(5)を部分的に区切る
ことを特徴とする電気機械。
【請求項29】
請求項1から28の何れか1つにおいて、
冷却剤分配室(4)は、冷却剤収集室(5)と、複数の冷却通路(10)によって流体的に連通している
ことを特徴とする電気機械。
【請求項30】
請求項29において、
複数の冷却通路(10)は、互いに離れ、軸方向(A)に沿って延びている
ことを特徴とする電気機械。
【請求項31】
請求項29または30において、
冷却通路(10)は、ステータ(2)の周方向(U)に沿って互いに離れて配置されている
ことを特徴とする電気機械。
【請求項32】
請求項1から31の何れか1つにおいて、
冷却剤分配室(4)及び冷却剤収集室(5)は、ステータ本体(7)またはそれに近接するステータ(2)の軸方向の延長部にのみ配置され、ステータ本体(7)またはステータ(2)の径方向(R)に沿ってステータ(2)を超えて突出しない
ことを特徴とする電気機械。
【請求項33】
請求項1から32の何れか1つにおいて、
少なくとも一つのステータ巻線(6)は、電気機械(1)の動作中に少なくともそれぞれの空間(9)内の領域で、冷却剤(K)及びステータ本体(7)から電気的に絶縁されるように具体化されている
ことを特徴とする電気機械。
【請求項34】
請求項33において、
ステータ本体(7)からの少なくとも一つのステータ巻線(6)の電気絶縁材が、プラスチック構成物(11)
、またはプラスチック構成物(11)及び追加の絶縁材(15)によって完全に形成される
ことを特徴とする電気機械。
【請求項35】
請求項10から34の何れか1つにおいて、
追加の絶縁材(15)は、ステータ巻線(6)をステータ本体(7)及び各空間(9)を区切るステータティース(8)から絶縁するように、軸方向(A)に沿って空間の全体に亘って空間内に延びる
ことを特徴とする電気機械。
【請求項36】
請求項10から35の何れか1つにおいて、
追加の電気絶縁材(15)は、その周方向に沿って空間(9)の少なくとも全長に亘って空間(9)内でステータ巻線(6)を包囲する
ことを特徴とする電気機械。
【請求項37】
請求項15を引用する請求項35または36において、
少なくとも1つのステータ巻線(6)がプラスチック構成物(11)
、またはプラスチック構成物(11)及び追加の絶縁材(15)によって管体(16)として具体化された冷却通路(10)から電気的に絶縁される
ことを特徴とする電気機械。
【請求項38】
請求項1から37の何れか1つにおいて、
ステータ巻線(6)が分布巻きの巻線の一部である
ことを特徴とする電気機械。
【請求項39】
車両であって、
請求項1から38の何れか1つの電気機械(1)を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両用の電気機械、及びこのような機械を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの電気機械は、一般に電動機または発電機である。電動機は、外部ロータとして、または内部ロータとして実施できる。
【0003】
一般的なタイプの機械は、例えば特許文献1で公知である。これは、内部空間を包囲してその周方向に延びるケーシングと、軸方向の一端で内部空間を区画するリア側壁と、軸方向の他端で内部空間を区画するフロント側壁とを有するハウジングを備える。この機械のステータはケーシングに接続されて固定されている。この機械のロータはステータ内に配置され、ロータのロータ軸が、フロント側壁のフロント軸受により回転可能に装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電気機械のステータは、一般に、機械の動作中に通電されるステータ巻線を備える。このことにより熱が発生し、熱は、過熱、それに伴う損傷、さらにはステータの破壊を避けるために放散することが必要である。この目的のため、従来の電気機械から、ステータを冷却するための冷却装置を、特に前記ステータの巻線に備え付けることが知られている。このような冷却装置は、冷却剤が流れる一つまたは複数の冷却通路を備え、冷却通路は、ステータ内でステータ巻線の近くに配置される。熱はステータ巻線から冷却材に伝達され、ステータから放出できる。
【0006】
この場合、各冷却通路を通って流れる冷却剤へステータから熱を効率的に伝達するのは、構造が大きく複雑になることを伴う不都合があることが分かる。しかしながら、このことは電気機械の製造コストに不利な影響を有する。
【0007】
したがって、本発明の目的は、この不都合が大部分または均一に十分解消される電気機械の改良された実施形態を提供することである。特に、その意図は、ステータのステータ巻線の冷却性が改善された、電気機械の改良実施形態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求の範囲の独立請求項の主題によって達成される。請求の範囲の従属請求項は、好ましい実施形態に関する。
【0009】
したがって、本発明の基本概念は、電気機械のステータ巻線を、プラスチックで構成されるプラスチック構成物に埋め込むことであり、プラスチック構成物には、熱の相互作用の結果としてステータ巻線により生成された排熱を吸収する冷却剤のために、冷却剤用の冷却剤分配室と冷却剤収集室も設けられている。この場合、プラスチックは熱をステータ巻線から冷却剤へ伝達するための熱伝達媒体として用いられる。
【0010】
ステータ巻線とステータを通過する冷却剤との間の特に良好な熱伝達は、このようにして生じる。このことは、熱伝導率の高いプラスチックが使用される場合に当てはまる。特に、いわゆる熱硬化性プラスチックはこの目的に適している。プラスチックは一般に電気絶縁性の特性も有しているため、このことにより、同時に、冷却されるべきステータ巻線がプラスチックによって、望まれていない方法で電気的に短絡しないことが保証される。したがって、例えば高負荷の下での電気機械の動作中に発生するようなステータの廃熱の発生が多い場合であっても、生じる廃熱をステータから確実に放出できる。そのため、ステータの過熱の結果としての電気機械の損傷または破壊でさえ回避できる。本発明の本質である、冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室が形成されたプラスチック構成物は、射出成形により製造でき、射出成形の過程では、冷却されるべきステータ巻線の周りにプラスチックが射出されて成形される。したがって、ステータ巻線と冷却通路をプラスチック構成物に埋め込むのを非常に簡単に行える。
【0011】
ステータ巻線を冷却する目的のため、プラスチック構成物で具体化された冷却剤収集室から進む冷却剤は、冷却剤がステータ巻線から熱の相互作用の結果として廃熱を吸収する複数の冷却通路の間に分配され得る。冷却剤は、冷却通路を通って流れた後、冷却剤収集室に集められる。冷却剤分配室と冷却剤収集室は、本発明に係るプラスチック生成物の中に配置されるため、冷却剤分配室に存在する冷却剤は、冷却通路の間で分配される前にステータ巻線を冷却するために使用できる。同じことは、冷却通路を通って流れた後に冷却剤収集室に集められる冷却剤にも当てはまる。冷却剤分配室及び/または各冷却剤分配室は、冷却されるべきステータ巻線に直接に隣接して配置されるので、冷却すべきステータ巻線に対する冷却剤分配室及び/または各冷却剤収集室の効果的な熱的結合が、この方法で達成される。
【0012】
特に車両用の、本発明に係る電気機械は、回転軸の周りで回転可能なロータを備える。回転軸は電気機械の軸方向を定める。この機械は、さらに、ステータ巻線を有するステータを備える。この機械は、さらに、冷却剤分配室と、冷却剤分配室から軸方向に離れて配置された冷却剤収集室とを有する。冷却剤は、ステータ巻線によって生成される廃熱を冷却するために冷却剤分配室を通って流れ、前記冷却剤分配室は、少なくとも一つの冷却通路により冷却剤収集室と流体的に連通する。このような冷却通路は少なくとも2つ設けるのが好ましく、複数の冷却通路を設けるのが特に好ましい。少なくとも一つのステータ巻線は、冷却剤と熱結合するために、電気絶縁性プラスチックで構成されたプラスチック構成物に、少なくとも部分的に、好ましくは完全に埋め込まれる。この場合、冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室は、少なくとも一つのステータ巻線の第1及びまたは第2軸端部の領域に配置される。冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室は、第1及びまたは第2端部の軸方向の延長部に配置するのが好ましい。本発明によれば、冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室が少なくとも一部はプラスチック構成物の内部に形成され、したがって少なくとも一つのステータ巻線と熱結合するために、プラスチック構成物によって少なくとも部分的に区切られる。
【0013】
好ましい一つの実施形態によれば、冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室は、回転軸に沿った長手方向断面において、少なくとも一つのステータ巻線に、U形状またはC形状で、第1及びまたは第2軸方向端部を包囲する。このようにして、特に熱負荷を受ける端部は冷却剤分配室によって、及び/または冷却剤収集室によって実質的に包囲され、冷却剤と各ステータ巻線の端部との特に良好な熱結合が成立する結果となる。
【0014】
したがって、軸方向に沿う長手方向断面の冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室は、したがって、U形状またはC形状の幾何学的形状を有することが特に好ましい。
【0015】
効果的に発展させた一つの形態では、冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室は、また、少なくとも一つのステータ巻線の第1及び/または第2端部の径方向の外側に配置される。
【0016】
冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室は、ロータの回転軸に直角の断面でリング形状の幾何学形状を有することが都合がよい。このことにより、複数の冷却通路を、ステータの周方向に沿って互いに離れて配置することが可能になる。
【0017】
少なくとも一つのプラスチック構成物が、冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室を少なくとも部分的に区切ることが特に好ましい。したがって、別個のハウジングを設けることを回避できる。
【0018】
さらに好ましい実施形態によれば、冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室は、プラスチック構成物の中に、少なくとも部分的に、好ましくは全体が設けられたキャビティにより具体化できる。そうすると、冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室を区切るために別のエンクロージャまたはハウジングを設けることは不要となる。このことは、わずかではない費用効果と結びつく。
【0019】
一つの好ましい実施形態によれば、少なくとも一つの冷却通路も、電気絶縁性プラスチックからなる少なくとも一つのプラスチック構成物の中に埋め込まれる。このことにより、冷却通路を通って流れる冷却剤と、関連するステータ巻線との良好な熱結合が確保される。
【0020】
他の好ましい実施形態によれば、ステータは、軸方方向に沿って延び、周方向に沿って互いに離れて配置されるステータティースを有し、ステータティースがステータ巻線を支持する。この実施形態では、プラスチック構成物は、少なくとも一つの冷却通路及び少なくとも一つのステータ巻線とともに、周方向に隣り合う2つのステータティースの間に形成される空間に配置される。冷却されるべきステータ巻線のすぐ近くの空間に冷却通路が配置されるため、この方法によれば、ステータ巻線と冷却通路との間の特に良好な熱伝達が保証される。さらに、ステータティースの間の前記空間は、プラスチックまたはプラスチック構成物を鋳型に注入する方法でプラスチック構成物を製造する間に使用できる。このことにより、別の鋳型を設けることが不要になるため、プラスチック構成物の製造が簡素化される。
【0021】
さらに好ましい実施形態は、空間を第1及び第2の部分空間に細分することを提案する。この構成では、少なくとも一つのステータ巻線が第1の部分空間に配置される。少なくとも一つの冷却通路が第2の部分空間に配置される。第2の部分空間に少なくとも一つの冷却通路を位置決めするための位置決め補助を、2つの部分空間の間に形成できる。この方法により、特に、2つのステータティースの間の空間にステータ巻線が、プラスチック構成物を作り出す射出成形により封入される場合に、一般に管体または扁平管である冷却通路を、正確且つ安定して位置決めすることが可能になる。
【0022】
この構成の一つの有利な発展形態では、位置決め補助は、周方向に隣り合う2つのステータティースで形成される2つの突出部を有する。2つの突出部はロータの周方向へ互いに向かい合い、冷却通路を位置決めするために前記空間の中へ突出する。この構成により、プラスチック構成物のプラスチックを射出成形で封入する前に、前記空間内で冷却通路を特に正確に位置合わせすることが可能になる。
【0023】
一つの好ましい実施形態によれば、前記空間に配置されるプラスチック構成物は、単一のプラスチック材料から構成される。この実施形態では、電気絶縁材料で構成される追加の電気絶縁材が、前記空間内に、好ましくはステータ巻線またはプラスチック構成物とステータティースとの間に配置される。この実施形態では、単一のプラスチック材料のみを前記空間に導入することになるため、前記プラスチックからなるプラスチック構成物の製造は、単一の射出成形工程で行える。したがって、プラスチック構成物の製造を特に簡単に行えることが分かり、費用面での効果につながる。
【0024】
プラスチック構成物の電気絶縁性のプラスチックは、熱硬化性のプラスチックを含むか、熱硬化性のプラスチックであることが好都合である。または、プラスチック構成物の電気絶縁性のプラスチックは、熱可塑性材料を含むものか、熱可塑性材料にすることができる。熱硬化性のプラスチックと熱可塑性プラスチックの組み合わせも、さらなる変形例として考えられる。
【0025】
プラスチック構成物は、前記空間を実質的に完全に満たすのが好都合である。
熱伝達性の不用意な低下につながる望ましくない空間の形成、例えばエアギャップ、が、前記の方法では回避される。
【0026】
一つの好ましい実施形態によれば、少なくとも一つのプラスチック構成物が前記空間から軸方向へ、望ましくは両側へ突出する。したがって、プラスチック構成物は、冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室を具体化するために使用できる。
【0027】
他の好ましい実施形態によれば、少なくとも一つの冷却通路が、前記空間内の各ステータ巻線の径方向外側及び/または径方向内側に配置される。このことにより、冷却すべきステータ巻線の近くに冷却通路を省スペースで配置でき、その結果、電気機械には、ステータ巻線を冷却するための構造的に小さなスペースだけしか必要にならない。
【0028】
一つの好ましい構成では、少なくとも一つの冷却通路を、管体の内部を包囲する管体として具体化することが提案される。この変形例では、少なくとも一つの分離要素が管体に形成され、管体の内部が、互いに流体的に分離される少なくとも2つの部分冷却通路に区分される。管体は、前記分離要素により補強でき、それによって機械的な強度が高められる。
【0029】
管体は、2つの幅の広い面と2つの幅の狭い面とを有する扁平管として具体化するのが好都合である。
【0030】
一つの効果的な発展形態では、管体を、軸方向に沿って延び、軸方向に直角な断面で2つの広い側辺と2つの狭い側辺とを有する扁平管として具体化することが提案される。扁平管の少なくとも一つの広い側辺は、軸方向に直角な断面において、径方向へ直角に延びることが好都合である。この場合、二つの広い側辺の長さは、2つの狭い側辺の長さの少なくとも4倍であることが好ましく、10倍であることがより好ましい。
【0031】
少なくとも一つの冷却通路は、プラスチックで構成されるプラスチック構成物の中に完全に配置されることが特に好ましい。
【0032】
さらに好ましい実施形態によれば、ステータは、軸方向に直角な断面がリング形状に形成され、軸方向に沿って延在するとともにステータの周方向に沿って互いから離れて配置されるステータティースを有し、ステータティースはステータ巻線を支持する。この実施形態では、プラスチック構成物は、少なくとも一つの冷却通路及び少なくとも一つのステータ巻線とともに、周方向に配置される2つのステータティースの間に形成される空間に配置される。この方法によれば、前記空間に配置される冷却通路が、冷却されるべきステータ巻線に直接に隣接しているので、ステータ巻線と冷却溝の間での特に効果的な熱伝達を保証できる。さらに、鋳型にプラスチック構成物のプラスチックが注入される方法でプラスチック構成物を製造する間に、ステータティースの間の空間を利用できる。このことにより、別の鋳型を準備することが不要になるため、プラスチック構成物の製造が簡素化される。
【0033】
さらに好ましい実施形態によれば、少なくとも一つの冷却通路は、プラスチック構成物に設けられて冷却剤が内部を流れることができる、少なくとも一つのパーフォレーションで形成するのが好ましく、複数のパーフォレーションで形成するのがより好ましい。このような複数のパーフォレーションを設けることが特に好ましい。この変形例では、冷却通路を区画するための別の管体を設けることが不要になる。このことは、製造コストの低減につながる。前記パーフォレーションは、適切な穴あけ工具によってプラスチック構成物に導入される貫通孔の形で実施できる。この変形例では、冷却通路を区画するために別の管体などを設けることを回避できる。このことは、製造コストの低減につながる。
【0034】
軸方向に直角の断面の少なくとも一つのパーフォレーションは、2つの広い側辺と2つの狭い側辺を有する長方形の形状を有することが好都合である。このように、パーフォレーションを、扁平管の有利な幾何学形状にすると、その幾何学形状により、冷却されるべきステータ巻線に直接に隣接する冷却通路を、構造的に省スペースで配置可能になる。
【0035】
さらに好ましい実施形態によれば、少なくとも一つの冷却通路は、ステータ本体の中に配置され、冷却剤が流れることのできる少なくとも1つのパーフォレーションにより形成される。前記パーフォレーションは、電気機械を製造する過程で、適切な穴開け工具によりステータ本体に導入される貫通孔の形態で実現できる。冷却通路を区切るために別の管体などを設けることは、この変形例では回避される。このことは、製造コストの低減につながる。
【0036】
さらに好ましい実施形態では、冷却通路を形成するパーフォレーションは、前記空間に向かって開口するものとして具体化される。さらに、前記パーフォレーションは、前記空間に配置されたプラスチック構成物により液密状態で閉じられる。この変形例では、パーフォレーションを特に簡単に製造でき、そのことが製造中の費用効果につながる。
【0037】
少なくとも一つの冷却通路は、周方向に関して隣り合うステータティースの間の領域にで、ステータ本体に配置するのが望ましい。このことにより、冷却すべきステータ巻線の近くに冷却通路を配置でき、ステータ巻線から冷却通路への熱伝達が改善される。
【0038】
他の好ましい実施形態によれば、少なくとも一つの冷却通路がプラスチック構成物に設けられ、少なくともさらに一つの冷却通路がステータ本体に設けられる。この変形例では、ステータ本体とプラスチック構成物の両方が冷却通路を収容するために用いられるので、特に、構造的なスペースを殆ど必要としない。
【0039】
他の好ましい実施形態によれば、ステータは、第1及び第2端部シールドの間で軸方向に沿って配置され、第1及び第2端部シールドは、互いに軸方向の反対側に存在する。この実施形態では、冷却剤分配室の一部は、第1端部シールドに配置される。その代わりに、または追加として、冷却剤収集室の一部が第2冷却剤収集室に配置される。
【0040】
別の好ましい実施形態によれば、冷却剤供給部が第1端部シールドに形成され、冷却剤供給部は、冷却剤分配室を、第1端部シールドの外側、好ましくは端部側に設けられた冷却剤入口と流体的に接続する。さらに、冷却剤放出部が第2端部シールドに設けられ、冷却剤放出部は、冷却剤収集室を、第2端部シールドの外側、好ましくは端部側に設けられた冷却剤出口と流体的に接続する。特に好ましくは、冷却剤供給部はステータを回転可能に装着するための第1軸受に熱的に接続でき、前記第1軸受は第1端部シールドに設けられる。同様に、冷却剤放出部はステータを回転可能に装着するための第2軸受に熱的に接続でき、前記第2軸受は第2端部シールドに設けられる。
【0041】
プラスチック構成物は、電気絶縁性プラスチックからなる射出成形された構成物であることが特に好ましい。射出成形法を適用することにより、プラスチック構成物の製造が簡素化され、且つ促進される。このことにより、電気機械の製造中の費用効果につながる。
【0042】
プラスチック構成物の全体、すなわち、特に、ステータティースと、冷却剤分配室及び冷却剤収集室を区切るプラスチック構成物との間の空間にも配置されたプラスチック構成物は、一体的な方法で実現できる。この方法により、電気機械の製造を簡素化でき、そのことが費用効果につながる。
【0043】
一つの効果的な発展形態では、ステータは、好ましくはリング状のステータ本体を備え、ステータ本体からステータティースが突出する。この発展形態では、電気絶縁性プラスチックからなるプラスチック構成物はステータ本体の外周側に配置され、好ましくは、前記外周側にプラスチックコーティングを形成する。したがって、ステータは周囲に対して電気的に絶縁され得る。そのため、ステータ本体を収容するための別のハウジングを設ける必要はない。ステータ本体の少なくとも片側または両側をプラスチック成形物でコーティングすることも、一つの選択的な変形例においては考えられる。さらなる変形例において、プラスチック生成物は、ステータ本体を、好ましくは完全に包むことができる。
【0044】
冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室は、少なくとも一つのステータ巻線と軸方向に隣接するのが特に好ましい。したがって、冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室が、冷却すべきステータ巻線と軸方向に関して直接に隣接して配置されるため、冷却すべきステータ巻線に対する冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室の効果的な熱結合が、このようにして実現される。
【0045】
さらに好ましい実施形態によれば、冷却剤収集室及び/または冷却剤分配室は、少なくとも一つのステータ巻線に径方向外側及び/または径方向内側で軸方向の端面で隣接し、前記少なくとも一つのステータ巻線の第1及び/または各第2の軸方向端部に隣接する。
【0046】
一つの好ましい実施形態によれば、プラスチック構成物は、ステータ本体の前記空間から軸方向に突出する少なくとも一つのステータ巻線の少なくとも一つの巻線部分を少なくとも部分的に包囲し、この場合、冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室が部分的に区切られ、ステータ巻線の前記巻線部分が冷却剤から電気的に絶縁される。電気機械の運転中に冷却剤がステータ巻線と電気的に短絡するという望まれない事態は、この方法で阻止される。
【0047】
一つの効果的な発展形態によれば、冷却剤分配室は複数の冷却通路により冷却剤収集室と流体的に連通する。
【0048】
複数の冷却通路は、軸方向に沿って互いに離れて延びることが好都合である。この手段により、ステータ巻線のすべての軸方向部分を冷却することが保証される。
【0049】
冷却通路は、ステータの周方向に沿って互いに離れて配置することが好ましい。この手段により、周方向に沿ってすべてのステータ巻線を冷却することが保証される。
【0050】
他の好ましい実施形態によれば、冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室は、ステータ本体に隣接する、ステータ本体の軸方向延長部にのみ配置される。この実施形態では、冷却剤分配室及び/または冷却剤収集室は、ステータ本体またはステータを、径方向に沿って超えて突出しない。この実施形態は、径方向にごくわずかの構造的な空間しか必要としない。
【0051】
電気機械の運転中に少なくともそれぞれの空間内の領域で、少なくとも一つのステータ巻線が、冷却剤及びステータ本体から電気的に絶縁されるように形成されることは特に好ましい。このことは、電気機械のすべてのステータ巻線に適用されることが特に好ましい。ステータ巻線とステータ本体との電気的な短絡、または電気機械の運転中の冷却剤との電気的な短絡のような望ましくないことは、この方法によれば阻止される。
【0052】
ステータ本体からの、好ましくは前記空間を区切るステータティースからの少なくとも一つのステータ巻線の電気絶縁材は、すでに上述したように、プラスチック構成物及び/または追加の絶縁材によって、完全に形成される。このことにより、さらに電気絶縁材を設けることを回避できる。
【0053】
他の好ましい実施形態によれば、追加の電気絶縁材が、前記空間内を、軸方向に沿って測定される空間の全長に亘って、空間内にのび、そのことにより、ステータ巻線を、ステータ本体から絶縁し、且つ空間を区切るステータティースから絶縁する。
【0054】
一つの効果的な発展形態によれば、追加の電気絶縁材が、その周方向に沿って少なくとも空間の全長に亘って空間内のテータ巻線を包囲する。
【0055】
一つの特に好ましい実施形態では、少なくとも一つのステータ巻線も、管体として具体化された冷却通路から電気的に絶縁される。この場合、電気絶縁材は、プラスチック構成物により、及び/または追加の電気絶縁材により形成される。
【0056】
ステータ巻線は、分布巻線の一部にすることができ、それが特に好ましい。
【0057】
本発明は、さらに、上述した電気機械を備える車両、特に自動車に関する。電気機械の上述の効果は、したがって、本発明に係る車両にも適用される。
【0058】
本発明のさらに重要な特徴と効果は、従属請求項、図面、及び図面に関する図の説明から明らかである。
【0059】
上記の特徴及び以下で説明されない特徴は、本発明の範囲から逸脱しない限り、それぞれ示される組み合わせだけでなく、他の組み合わせまたはそれら単独で使用できることは言うまでもない。
【0060】
本発明の好ましい代表的な実施形態を図面に示し、以下の説明でさらに詳細に説明する。
【0061】
図はそれぞれ概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】
図1は、本発明に係る電気機械の一例をロータの回転軸に沿った縦断面で示す。
【
図2】
図2は、
図1に係る電気機械のステータをロータの回転軸に直角な横断面で示す。
【
図3】
図3は、周方向に隣り合う2つのステータティースの間の空間の領域における
図2のステータの詳細を示す。
【
図4】
図4は、
図1の電気機械の変形例を示し、冷却溝を流れる冷却材がロータの軸受を冷却するためにも使用される。
【
図5】
図5は、2つのステータティースの間の空間のさらに異なる変形例を示し、空間がプラスチック構成物で満たされる。
【
図6】
図6は、2つのステータティースの間の空間のさらに異なる変形例を示し、空間がプラスチック構成物で満たされる。
【
図7】
図7は、2つのステータティースの間の空間のさらに異なる変形例を示し、空間がプラスチック構成物で満たされる。
【
図8】
図8は、2つのステータティースの間の空間のさらに異なる変形例を示し、空間がプラスチック構成物で満たされる。
【
図9】
図9は、2つのステータティースの間の空間のさらに異なる変形例を示し、空間がプラスチック構成物で満たされる。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は、本発明に係る電気機械1の一例を断面図で示す。電気機械1は、車両、好ましくは道路車両で使用できるように寸法構成されている。
【0064】
電気機械1は、
図1に概略を示すロータ3と、ステータ2とを有する。説明のために、
図2は、ステータ2を、
図1の断面線II-IIに沿って、回転軸Dに直角な横断面で別の図に示している。
図1によれば、ロータ3はロータ軸31を有し、
図1には具体的には示していないが複数の磁石を有することができ、その磁気極性は、周方向Uに沿って交互に変わる。ロータ3は、回転軸Dの周りを回転可能であり、その位置は、ロータ軸31の長手方向の中心軸Mにより定められる。回転軸Dは、回転軸軸Dと平行に延びる軸方向Aを定める。径方向Rは軸方向Aと直角である。周方向Uは回転軸Dの周りを回転する。
【0065】
図1から分かるように、ロータ3はステータ2内に配置されている。したがって、ここで示される電気機械1は、いわゆる内部ロータである。しかしながら、いわゆる外部ロータとして実現することも考えられ、その場合、ロータ3はステータ2の外側に配置される。ロータ軸31は、第1軸受32aと、そこから軸方向に離れた第2軸受32bで、回転軸Dの周りを回転可能にステータ2に装着されている。
【0066】
ステータ2は、すでに知られているように、磁場を生成するために通電される複数のステータ巻線6をさらに含む。ロータ3の磁石により生成される磁場とステータ巻線6により生成される磁場との間の磁気的な相互作用により、ロータ3が回転する。
【0067】
図2の横断面は、ステータ2が、例えば鉄で構成されるリング状のステータ本体7を有してよいことを示している。特に、ステータ本体7は、軸方向Aに沿って互いに積み重ねられ、互いに接着で結合される複数のステータ本体プレート(図示せず)から形成できる。複数のステータティース8は、ステータ本体7と径方向内側で一体に形成され、ステータティースは軸方向Aに沿って延び、ステータ本体7から径方向内側に突出し、周方向Uに沿って互いに離れて配置される。各ステータティース8はステータ巻線6を支持する。個々のステータ巻線6が集合して巻線配列が形成される。ステータ巻線6によって形成される磁極の数に応じて、巻線配列の全体のうちの個々のステータ巻線6は対応して一緒に電気配線できる。
【0068】
機械1の運転中に、通電されたステータ巻線6は、機械1の過熱、及びそれに伴う損傷、さらには破壊を阻止するために、機械1から放出すべき廃熱を発生する。したがって、ステータ巻線6は、ステータ2を通過し、ステータ巻線6によって生成された廃熱を熱伝達で吸収する冷却剤Kに補助されて冷却される。
【0069】
冷却剤Kがステータ2を通過するために、機械1は冷却剤分配室4を備え、冷却剤Kを冷却剤入口33から冷却剤分配室4の中へ導入できる。冷却剤収集室5は、冷却剤分配室4から、軸方向Aに沿って距離をあけて配置されている。冷却剤分配室4は、複数の冷却通路10によって冷却剤収集室5と流体的に連通し、
図1では複数の冷却通路10のうちの一つのみが認識可能である。図示していない軸方向Aに直角の横断面において、冷却剤分配室4と冷却剤収集室5は、それぞれリング状の幾何学形状を有することができる。複数の冷却通路10は、周方向Uに沿って互いに距離をあけて配置され、これらの冷却通路は、いずれの場合にも、軸方向Aに沿ってリング状の冷却剤分配室4からリング状の冷却収集室へ延びる。冷却剤入口33から冷却剤分配室4へ導入された冷却剤Kは、したがって、個々の冷却通路10に分配できる。冷却剤Kは、冷却通路10を通って流れ、ステータ巻線から熱を吸収した後、冷却剤収集室5に集められ、ステータ2に設けられた冷却剤出口34から、再び機械1の外へ導かれる。
【0070】
図1及び
図2に明示されているように、複数のステータ巻線6は、いずれも、周方向Uに隣り合う2つのステータティース8の間に具体化される空間9に配置される。前記空間9も、ステータティース8と同様に軸方向Aに沿って延びる、いわゆる「ステータスロット」または「ステータスリット」として、当業者に知られている。
【0071】
周方向Uに隣り合う2つのステータティース8の間に形成される空間の詳細図である
図3に注目して説明する。ステータティース8は、以下ではステータティース8a,8bとも称する。
図3において、ステータ巻線6により生成された廃熱を、冷却溝10を通って流れる冷却剤Kに効率よく熱伝達するために、プラスチックからなるプラスチック構成物11が各空間9に設けられる。特に、プラスチック構成物11は、電気絶縁性プラスチックからなる射出成形された構成物であることが好ましい。射出成形法を適用することにより、プラスチック構成物の製造が簡素化され、且つ促進される。
図3の例では、プラスチック構成物11は単一のプラスチック材料から構成される。空間9に配置された冷却通路10と同じ空間9に配置されたステータ巻線6は、例えば、熱硬化性プラスチックまたは熱可塑性プラスチックから構成できるプラスチック構成物11に埋め込まれる。
図3においてそれぞれの空間9に配置されるステータ巻線6は、第1ステータティース8aに支持される第1ステータ巻線6aに部分的につながり、第1ステータティース8aに周方向Uに隣り合う第2ステータティース8bに支持される第2ステータ巻線6bに部分的につながることは言うまでもない。このことを分かりやすくするため、分離線12を仮想線で
図3に示す。
図3において分離線12の左に示されている巻線13aは、ステータティース8aによって支持されたステータ巻線6aに含まれる。分離線12の右に示されている巻線13bは、ステータティース8bによって支持されたステータ巻線6bに含まれる。
【0072】
図3の詳細な表示によりさらに明らかなように、電気絶縁材料で構成される追加の電気絶縁材15が、プラスチック構成物11と、ステータ本体7、または周方向Uに空間9を区切る2つのステータティース8a、8bとの間のそれぞれの空間9に配置される。紙で構成された電気絶縁材15は、特に費用効果が高いことが分かっている。このような方法では、プラスチック構成物11が熱的な過負荷のために割れたり、他の何らかの方法で損傷したりした場合に、ステータ巻線6と、ステータ本体7、または一般に鉄や他の適切な導電性材料で形成されるステータティース8もしくは8a,8bとの、望まれない電気的な短絡を回避できる。
【0073】
図3の詳細な表示により明らかなように、冷却通路10は、いずれの場合にも、例えばアルミニウムからなる管体16により形成でき、管体16は管体内部22を包囲する。
図3に詳細に表示されているように、一つまたは複数の分離要素18を、管体16に選択的に形成でき、その1つまたは複数の分離要素は、冷却溝10を、互いに流体的に分離された部分冷却通路19に細分する。このようにして、冷却通路10内での冷却剤Kの流れの挙動を改善でき、そのことが、冷却剤への熱伝達性の改善につながる。さらに、管体16は、このようにして機械的に一層強化される。
図3には、そのような3つの分離要素18が例示されており、その結果、4つの部分冷却通路19が形成されている。もちろん、この例を変形して、異なる数の分離要素18を設けることが可能である。冷却通路10を形成する管体16は、ロータ3の回転軸Dに直角な断面で、2つの広い側辺20と2つの狭い側辺21を有する扁平管17として実現される。
図3に示すように軸方向Aに直角な断面において、扁平管17の2つの広い側辺20は、径方向Rと直角に延びる。2つの広い側辺20の長さは、2つの狭い側辺21の長さの少なくとも4倍、好ましくは少なくとも10倍である。
【0074】
図1~
図3の例では、冷却通路10は、それぞれの空間9内でステータ巻線6の径方向外側に配置される。したがって、冷却通路10とロータ3の回転軸Dとの間の径方向の距離は、ステータ巻線6と回転軸Dの間の径方向の距離よりも大きい。しかしながら、冷却通路10を径方向内側に配置することも考えられる。
【0075】
続く説明では、再び
図1を参照する。
図1に例示しているように、一体的に形成されたプラスチック構成物11は、空間9から軸方向の両側へ突出することができる。このことにより、冷却剤分配室4と、その代わりの、またはそれに追加される冷却剤収集室5も、それぞれの空間9の軸方向外側に配置されたそれぞれのステータ巻線6の軸方向の端部14a,14bと熱結合するために、プラスチック構成物11に埋め込まれる。言い換えると、この実施形態の変形例では、1つのプラスチック構成物11は、冷却剤分配室4と冷却剤収集室5を、それぞれの場合に少なくとも部分的に区切る。
【0076】
このようにして、関連するステータ巻線6の軸方向端部14a,14bの領域においてさえ、前記端部は通常は特に熱負荷を受け、冷却剤分配室4及び/または冷却剤収集室5に存在する冷却剤Kに効果的に熱伝達することができる。このことにより、ステータ巻線6の2つの軸方向端部14a,14bを特に効果的に冷却できる。
【0077】
さらに、
図1によれば、ステータ本体7とステータティース8とを有するステータ2が、第1及び第2端部シールド25a,25bの間に軸方向に配置されている。
図1により明らかなように、冷却剤分配室4の一部は第1端部シールド25aに配置され、冷却剤収集室5の一部は第2端部シールド25bに配置されている。冷却剤分配室4は、したがって、第1端部シールド25aとプラスチック構成物11により区切られる。同様に、冷却剤収集室5は、第2端部シールド25bとプラスチック構成物11によって区切られている。
【0078】
冷却剤分配室4と冷却剤収集室5は、それぞれ、プラスチック構成物に設けられたキャビティ41a,41bにより部分的に形成される。第1のキャビティ41aは、冷却剤分配室4を形成するように第1端部シールド25aに形成されたキャビティ42aにより補われる。同様に、第2のキャビティ41bは、冷却剤収集室5を形成するように第2端部シールド25bに形成されたキャビティ42bにより補われる。
【0079】
さらに、冷却剤供給部35は、第1端部シールド25aに形成でき、冷却剤分配室4を、特に第1端部シールド25aの
図1に示された円周側の外部に設けられた冷却剤入口33に流体的に接続する。これに対応して、冷却剤放出部36は、第2端部シールド25bに形成でき、冷却剤収集室5を、特に端部シールド25bの
図1に示された円周側の外部に設けられた冷却剤出口34に流体的に接続する。このことにより、冷却剤分配室4及び/または冷却剤収集室5を、それぞれ、対応するステータ巻線6の第1及び/または第2端部14a,14bの径方向の外側に配置でき、軸方向Aに沿って前記端部14a,14bを延長する方向にも配置できる。ステータ巻線6の端部14a,14bは、機械1の動作中に熱負荷を特に受ける部分であり、これを上記の方法により特に効果的に冷却できる。
【0080】
図3に示すように、空間9は、ステータ巻線6が配置される第1部分空間9cと、冷却通路10が配置され、空間9を形成するために第1部分空間9cを補う第2部分空間9dを含む。
図3及び
図4から明らかなように、位置決め装置27を、2つの部分空間の間に配置でき、この位置決め装置27により、冷却通路10が第2部分空間9dに位置決めされる。前記位置決め装置27は、2つのステータティース8a,8bに形成される2つの突起28a,28bを備え、2つの突起28a,28bは、周方向Uに隣り合い、空間9を区切る。2つの突起28a,28bは、周方向Uに互いに向かい合い、冷却通路を位置決めするために前記空間に突出する。管体16または扁平管17として具体化される冷却溝10に関して、突起28a,28bは、特にプラスチック構成物11の製造中または径方向内側への射出成形によって、冷却通路10の望ましくない動きを阻止する径方向のストッパとして機能する。
【0081】
図1に示すように、電気絶縁性プラスチックからなるプラスチック構成物11は、ステータ本体7の外周側面30に配置することもでき、外周側面30にプラスチックコーティング11.1を形成することができる。ステータ2のステータ本体7は、一般的に導電性のステータプレートから形成され、したがって周囲に対して電気絶縁性を有することができる。そのため、ステータ本体7を収容するための別のハウジングを設けるのを不要にすることができる。
【0082】
図1~
図3に示されている電気機械1を製造するために、まず、例えば紙からなる電気絶縁材15を空間9が挿入される。その後、ステータ巻線6は、空間9に導入され、例えば熱硬化性プラスチックなどのプラスチックによる射出成形で製造されるプラスチック構成物に封入される。その後、冷却通路2を形成するパーフォレーション40が、適切な穴あけ工具を用いてプラスチック構成物11に取り入れられる。プラスチック構成物11を製造する過程で、ステータ本体7は、プラスチック構成物11を製造するプラスチック、言い換えると特に熱硬化性プラスチックを用いて射出成形により封入することができる。冷却剤分配室4と冷却剤収集室5は、同様に、射出成形プロセスの過程で製造される。
【0083】
図4は、ロータ3の回転軸Dに沿った縦断面における
図1の変形例を示す。機械1の動作中に、ロータ軸31に加えて2つの軸受32a,32bも冷却するために、冷却剤供給部35は、第1端部シールド25aに配置された第1軸受32aと熱的に連結できる。同様に、冷却剤放出部36は、第2端部シールド25bに配置された第2軸受32bと熱的に連結できる。このように、軸受32a,32bを冷却するための別の冷却装置が不要になるため、費用効果につながる。
図4の例では、冷却剤入口33及び冷却剤出口34は、それぞれ、第1及び第2端部シールド25a及び25bのそれぞれの外側端面26a及び26bに設けられている。
図4及び
図1に係る変形例の場合、ステータ巻線6は、径方向Rに関して冷却通路10内に径方向に配置される。ステータ巻線6は、第2端部シールド25bに設けられたブッシュ39を通じて電気接続部50によってステータ2から外へ引き出され、そのことにより、前記ステータ巻線に外から通電できる。ブッシュ39は、冷却剤分配室4及び/または冷却剤収集室5と、径方向Rに関する回転軸Dとの間に配置される。
【0084】
図5は、
図3の例の発展例を示す。
図5の発展例は、冷却通路10が空間9に、径方向の外側だけでなく径方向の内側にも追加して設けられている点が
図3の例と異なり、冷却通路は、
図3の例と同様に、管体16として、または扁平管17として具体化できる。一例として、径方向内側の冷却通路10が、2つの分離要素18と3つの部分冷却通路19を有する扁平管17として図示されている。
図3の例に関する上記の説明は、
図5の例にも有効である限り、適宜変更して適用できる。
【0085】
次に、
図6について説明する。
図6は、周方向Uに隣り合う2つのステータティース8の間に形成された空間9の詳細を示す。前記ステータティースは、以下では、ステータティース8a,8bとも称する。ステータ巻線6により生成された廃熱の、冷却通路10を流れる冷却剤Kへの熱伝達性を高めるため、
図6によれば、プラスチックからなるプラスチック構成物11が空間9のそれぞれに設けられる。空間9に配置された冷却通路10と、同じ空間9に配置されたステータ巻線6は、例えば熱硬化性プラスチックからなるプラスチック構成物11、または熱硬化性プラスチックを含むプラスチック構成物11に埋め込まれる。
図6の例では、単一のプラスチック材料からなるプラスチック構成物11が空間9に設けられる。
【0086】
図6において空間9にそれぞれ配置されたステータ巻線6が、第1ステータティース8aに支持された第1ステータ巻線6aに部分的につながり、第1ステータティース8aに周方向に隣接する第2ステータティース8bに支持された第2ステータ巻線6bに部分的につながることは、言うまでもない。このことを明確にするために、可能な分離線12の仮想線を、
図3と同様にして
図6に示す。
図6の分離線の左側に示す巻線13aは、ステータティース8aに支持されるステータ巻線6aに属する。分離線12の右側に示す巻線13bは、したがって、第2ステータティース8bに支持されるステータ巻線6bに属する。
【0087】
図6の例では、それぞれの空間9に具体化される冷却溝10は、プラスチック構成物11に設けられる複数のパーフォレーション40によって実現され、パーフォレーション40を通って冷却剤Kが流れることができる。
図6には単なる例として4つのパーフォレーション40が示されているが、そのパーフォレーション40は、周方向Uに沿って互いに距離をあけて配置され、それぞれは軸方向Aに沿って延びる。パーフォレーション40は、適切な穴あけ工具によってプラスチック構成物11に導入された貫通孔として実現できる。パーフォレーション40は、回転軸に直角な断面で、それぞれ2つの広い側辺20と2つの狭い側辺21とを有する長方形の形状を有することができる。ここで、2つの広い側辺20の長さは、2つの狭い側辺の長さの少なくとも2倍、好ましくは少なくとも4倍である。したがって、扁平管と同様の効果的な形状である。
【0088】
図3の詳細な図から明らかなように、電気絶縁材料からなる電気絶縁材15が、プラスチック構成物11とステータ本体7の間、または空間9を周方向Uに区切る2つのステータティース8の間のそれぞれの空間9に配置される。この方法では、プラスチック構成物11が熱的な過負荷のために割れたり、他の何らかの方法で損傷したりした場合に、影響を受けたステータ巻線6と、一般的には鉄または他の何らかの導電性材料であるステータ本体7またはステータティース8の材料との望ましくない電気的な短絡を回避できる。紙からなる電気絶縁材15は、特に費用効果が高いことが分かっている。
【0089】
図6の例では、冷却通路10を形成するパーフォレーション40は、径方向Rに関して、プラスチック構成物11に、ステータ巻線6の径方向外側に配置される。冷却通路10とロータ3の回転軸Dとの間の径方向距離は、したがって、ステータ巻線6と回転軸Dとの間の距離より大きい。
図6に示す軸方向Aに直角な断面において、パーフォレーション40の2つの広い側辺20は、それぞれ径方向Rに直角に延びている。
【0090】
図7は
図6の例の変形例を示す。
図7に係る機械1の場合、冷却通路10はプラスチック構成物11には配置されず、ステータ2のステータ本体7に配置される。
図7から明らかなように、冷却通路10を形成するパーフォレーション40は、空間9の径方向外側に配置され、周方向Uに関してはステータ本体7の隣り合う2つのステータティース8a,8bの間に配置される。
図6の例と同様の方法で、冷却通路10は、ステータ本体7に設けられたパーフォレーション40によって形成される。したがって、冷却通路10は、適した穴あけ工具を用いて、ステータ本体7、またはステータ本体7を形成するステータ本体プレートに形成するのが好ましい、孔の形態のパーフォレーション40によって、ステータ本体7を製造する過程で形成される。
【0091】
図8は、
図7の例の変形例を示す。
図8に係る変形例の場合も、冷却通路10を形成するパーフォレーション40は、ステータ2のステータ本体7に配置される。
図8の例では、ステータ本体7に配置されたパーフォレーション40は、空間9に向かって開口するように形成されている。
図8から明らかなように、パーフォレーション40は、空間9に向かって流体密封の状態になるように、空間9に設けられたプラスチック構成物11により閉じられている。
【0092】
図9は、
図8の例の発展例を示す。
図9に係る機械1の場合は、冷却通路10はステータ本体7の内部とプラスチック構成物11の内部の両方に設けられる。以下では「径方向外側の冷却通路」10aとも称する、ステータ本体7に設けられた冷却通路10は、
図8の例と同様の方法で形成されるため、
図8に関する上記の説明を参照のこと。プラスチック構成物11に配置された冷却通路10は、以下では、「径方向内側の冷却通路」10bとも称する。したがって、ステータ巻線6は、径方向Rに関して、2つの冷却通路10a,10bの間に配置される。
図9に詳細に図示されているように、径方向外側の冷却通路10aは、管体の内部22を包囲する、例えばアルミニウムからなる管体16により形成できる。選択的に、
図9に詳細に示されるように、一つまたは複数の分離要素18を管体16に形成でき、分離要素18は、冷却通路10を互いに流体的に分離した部分冷却通路19に細分できる。冷却通路10内での冷却剤Kの流れの挙動がこのようにして改善され、このことは冷却剤への熱伝達性の向上につながる。さらに、管体16は、その上に機械的に強化される。
図9の例では、このような2つの分離要素18が例として示され、その結果、3つの部分冷却通路19が形成される。もちろん、この例の連携例においては、分離要素18を異なる数にすることも可能である。管体16は、軸方向Aに直角な断面において、2つの広い側辺20と2つの狭い側辺21とを有する扁平管17として具体化できる。この場合、2つの広い側辺20の長さは、2つの狭い側辺の長さの少なくとも4倍、好ましくは少なくとも10倍である。広い側辺20は、径方向Rに対して直角に延びる。
【0093】
上述した
図3~
図9に係る変形例は、実用的である限り、互いに組み合わせてもよい。
【0094】
また、プラスチック構成物11は、ステータ本体の空間9から軸方向へ突出するステータ巻線6の巻線部分を包囲し、そうすることにより,冷却剤分配室4及び/または冷却剤収集室5を区切り、それによって、関連するステータ巻線6または関連するステータ巻線6の巻線部分が、機械1の動作中に冷却剤が関連する冷却通路10を通過するときに、冷却剤から電気的に絶縁される。
【0095】
冷却剤分配室4と冷却剤収集室5を、ステータ本体7の軸方向の延長部にステータ本体7と隣接して配置するのが都合がよい。冷却剤分配室4及び/または冷却剤収集室5は、ステータ本体7またはステータ2より、その軸方向Rに沿って突出しないことが好ましい。
【0096】
ステータ巻線6は、少なくとも、電気機械1の動作中に各空間9内の領域で、冷却剤Kから、そしてステータ2のステータ本体7から電気的に絶縁されるように具体化される。このようにして、電気機械1の動作中に、ステータ本体7のステータ巻線6が冷却剤Kと望まれずに電気的に短絡するのが回避される。ステータ本体7に対するステータ巻線6の、好ましくは空間9を区切るステータティース8に対するステータ巻線6のこのような電気的な絶縁は、すでに説明したように、プラスチック構成物11及び/または追加の電気絶縁材15によって形成される。
【0097】
追加の電気絶縁材15は、ステータ巻線6をステータ本体7及び/またはステータティース8から絶縁するように、軸方向Aに沿って空間9の全長に亘って空間内に延びているのが好ましい。同様に、追加の電気絶縁材15は、空間9の少なくとも周方向の境界に沿った全長に亘って、空間9内でステータ巻線6を包囲するのが好ましい。また、ステータ巻線6は、管体16として具体化された冷却溝から電気的に絶縁されるのが好ましい。この場合、電気絶縁材は、プラスチック構成物、その代わりにまたはそれに加えて、追加の電気絶縁材によって形成される。