(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】筐体キット及び通気部材
(51)【国際特許分類】
H05K 5/06 20060101AFI20220518BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20220518BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20220518BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20220518BHJP
【FI】
H05K5/06 E
H05K5/02 L
F16J15/10 Q
F16J15/10 U
B60R16/02 610C
(21)【出願番号】P 2019563980
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2018048429
(87)【国際公開番号】W WO2019135399
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2018000067
(32)【優先日】2018-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】矢野 陽三
(72)【発明者】
【氏名】仲山 雄介
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-228428(JP,A)
【文献】特開2012-243536(JP,A)
【文献】特開2017-228721(JP,A)
【文献】特開2015-003621(JP,A)
【文献】国際公開第2013/024060(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/06
H05K 5/02
F16J 15/10
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する筐体と、前記開口に配置されて前記筐体に取り付けられる通気部材とを備えた筐体キットであって、
前記通気部材は、
通気膜と、
前記筐体の内面に係止される係止部及び前記通気部材が前記筐体に取り付けられたときに前記係止部よりも前記筐体の外部空間に近い位置で前記通気膜を支持する支持部を有し、前記通気部材が前記筐体に取り付けられたときに前記筐体の内部空間と前記筐体の外部空間との間の通気経路を形成する支持体と、
前記通気部材が前記筐体に取り付けられたときに、前記開口において前記筐体と前記支持体との間の隙間をシールする環状のシール部材と、を備え、
前記筐体は、
前記筐体の外面において前記開口の周囲に形成された平坦面と、
前記平坦面との境界をなすとともに前記筐体の内部空間に向かって縮小する開口径を前記開口に付与するテーパー面と、を有し、
前記通気部材が前記筐体に取り付けられたときに、前記シール部材は、前記テーパー面と前記平坦面との間の前記境界及び前記境界に接した前記テーパー面の縁部に接触
し、
前記通気部材が前記筐体に取り付けられたときに、前記シール部材は、前記筐体と前記支持体との間で弾性変形し、
前記開口の軸線を含む平面に沿って前記筐体を切断して現れる第一断面の前記テーパー面の輪郭は、直線又は湾曲した線を含み、
前記シール部材の軸線を含む平面に沿って前記シール部材を切断して現れる第二断面の輪郭は、前記通気部材が前記筐体に取り付けられたときに前記筐体に接触するとともに、前記通気部材が前記筐体に取り付けられる前に直線又は湾曲した線を示す接触部を有し、
前記シール部材は、前記係止部に向かって縮小する外径を前記シール部材に付与する傾斜面を有し、
前記第二断面の前記傾斜面の輪郭は、前記接触部を含み、かつ、前記通気部材が前記筐体に取り付けられる前に、円の内部に直線又は湾曲した線を含み、
前記円は、前記シール部材の軸線方向における前記第二断面の両端を通るとともに前記シール部材の前記軸線に垂直な一対の平行な直線と、前記軸線に垂直な方向において前記第二断面の前記軸線に近い端を通るとともに前記軸線に平行な直線とに接する、
筐体キット。
【請求項2】
前記傾斜面の前記輪郭は、前記通気部材が前記筐体に取り付けられる前に、前記円の中心を通るとともに前記軸線に平行な第一中心線及び前記円の中心を通るとともに前記一対の平行な直線に平行な第二中心線の少なくとも1つを跨いで延びている、請求項
1に記載の筐体キット。
【請求項3】
前記傾斜面の前記輪郭は、前記通気部材が前記筐体に取り付けられる前に、前記第二中心線を跨いで延びている、請求項
2に記載の筐体キット。
【請求項4】
前記シール部材の軸線方向において、前記傾斜面の前記輪郭の前記係止部から遠い端は、前記通気部材が前記筐体に取り付けられる前に、前記円の外部に位置する、請求項
1~
3のいずれか1項に記載の筐体キット。
【請求項5】
前記シール部材の軸線方向において、前記傾斜面の前記輪郭の前記係止部に近い端は、前記通気部材が前記筐体に取り付けられる前に、前記円の外部に位置する、請求項
1~
4のいずれか1項に記載の筐体キット。
【請求項6】
前記傾斜面の前記輪郭は、前記通気部材が前記筐体に取り付けられる前に、前記円の内部に、曲率が0である直線部を有する、請求項
1~
5のいずれか1項に記載の筐体キット。
【請求項7】
前記第一断面の前記テーパー面の前記輪郭は、直線を含み、
前記通気部材が前記筐体に取り付けられる前に前記開口の前記軸線と前記シール部材の前記軸線とが一直線上に並ぶように前記通気部材及び前記筐体が配置されたときに、前記テーパー面の前記輪郭の前記直線と前記直線部とが平行である、
請求項
6に記載の筐体キット。
【請求項8】
前記第一断面の前記テーパー面の前記輪郭は、直線を含み、
前記通気部材が前記筐体に取り付けられる前に前記開口の前記軸線と前記シール部材の前記軸線とが一直線上に並ぶように前記通気部材及び前記筐体が配置されたときに、前記直線部の前記シール部材の前記軸線に対する傾斜角は、前記テーパー面の前記輪郭に含まれる前記直線の前記開口の前記軸線に対する傾斜角よりも大きい、
請求項
6に記載の筐体キット。
【請求項9】
前記支持体は、前記シール部材の軸線周りに離れて配置され、それらの先端部に前記係止部を含む複数の脚部を有し、
前記通気部材が前記筐体に取り付けられたときに、前記シール部材は、前記複数の脚部同士の間に入り込む、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の筐体キット。
【請求項10】
前記支持体は、前記支持部を含む基部と、前記基部から突出しているとともにその先端部に前記係止部を含む軸部とをさらに有し、
前記通気部材が前記筐体に取り付けられる前に、前記基部及び前記軸部によって形成されたコーナーと前記シール部材との間に環状の隙間が形成されている、
請求項1~
9のいずれか1項に記載の筐体キット。
【請求項11】
前記通気部材が前記筐体に取り付けられたときに、前記開口の軸線を含む平面に沿って前記筐体及び前記通気部材を切断して現れる第三断面において、
前記開口の前記軸線に平行な方向における前記平坦面と前記支持体との間の空間に現れる前記シール部材の輪郭は、基準直線よりも前記開口の前記軸線の近くに位置し、
前記基準直線は、前記開口の前記軸線から最も離れた位置にある前記シール部材と前記筐体との接触点を通るとともに前記接触点よりも前記開口の前記軸線から遠い位置で前記平坦面がなす直線と60°の角度をなす直線である、
請求項1~
10のいずれか1項に記載の筐体キット。
【請求項12】
前記通気部材は、前記通気膜よりも前記係止部から遠い位置で前記通気膜を覆うカバーをさらに備えた、請求項1~
11のいずれか1項に記載の筐体キット。
【請求項13】
開口を有する筐体の前記開口に配置されて前記筐体に取り付けられる通気部材であって、
通気膜と、
前記筐体の内面に係止される係止部及び当該通気部材が前記筐体に取り付けられたときに前記係止部よりも前記筐体の外部空間に近い位置で前記通気膜を支持する支持部を有し、当該通気部材が前記筐体に取り付けられたときに前記筐体の内部空間と前記筐体の外部空間との間の通気経路を形成する支持体と、
当該通気部材が前記筐体に取り付けられたときに、前記開口において前記筐体と前記支持体との間の隙間をシールする環状のシール部材と、を備え、
前記筐体は、前記筐体の外面において前記開口の周囲に形成された平坦面と、前記平坦面との境界をなすとともに前記筐体の内部空間に向かって縮小する開口径を前記開口に付与するテーパー面と、を有し、
当該通気部材が前記筐体に取り付けられたときに、前記シール部材は、前記テーパー面と前記平坦面との間の前記境界及び前記境界に接した前記テーパー面の縁部に接触
し、
前記シール部材は、前記係止部に向かって縮小する外径を前記シール部材に付与する傾斜面を有し、
前記シール部材の軸線を含む平面に沿って前記シール部材を切断して現れる断面の前記傾斜面の輪郭は、円の内部に直線又は湾曲した線を含み、
前記円は、前記シール部材の軸線方向における前記断面の両端を通るとともに前記シール部材の前記軸線に垂直な一対の平行な直線と、前記軸線に垂直な方向において前記断面の前記軸線に近い端を通るとともに前記軸線に平行な直線とに接する、
通気部材。
【請求項14】
通気膜と、
前記通気膜を支持する支持部及び係止部を有する支持体と、
前記支持体に取り付けられた環状のシール部材と、を備え、
前記シール部材は、前記係止部に向かって縮小する外径を前記シール部材に付与する傾斜面を有し、
前記シール部材の軸線を含む平面に沿って前記シール部材を切断して現れる断面の前記傾斜面の輪郭は、円の内部に直線又は湾曲した線を含み、
前記円は、前記シール部材の軸線方向における前記断面の両端を通るとともに前記シール部材の前記軸線に垂直な一対の平行な直線と、前記軸線に垂直な方向において前記断面の前記軸線に近い端を通るとともに前記軸線に平行な直線とに接する、
通気部材。
【請求項15】
前記傾斜面の前記輪郭は、前記円の中心を通るとともに前記軸線に平行な第一中心線及び前記円の中心を通るとともに前記一対の平行な直線に平行な第二中心線の少なくとも1つを跨いで延びている、請求項
14に記載の通気部材。
【請求項16】
前記傾斜面の前記輪郭は、前記第二中心線を跨いで延びている、請求項
15に記載の通気部材。
【請求項17】
前記シール部材の軸線方向において、前記傾斜面の前記輪郭の前記係止部から遠い端は、前記円の外部に位置する、請求項
14~
16のいずれか1項に記載の通気部材。
【請求項18】
前記シール部材の軸線方向において、前記傾斜面の前記輪郭の前記係止部に近い端は、前記円の外部に位置する、請求項
14~
17のいずれか1項に記載の通気部材。
【請求項19】
前記傾斜面の前記輪郭は、前記円の内部に、曲率が0である直線部を有する、請求項
14~
18のいずれか1項に記載の通気部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体キット及び通気部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ランプ、モータ、センサ、スイッチ、ECU(Electronic Control Unit)等の自動車の電気部品が収容された筐体に通気部材が取り付けられた構造が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、筐体の通気用の開口部に取り付けられた通気部材を備えた通気構造が記載されている。この通気構造において、開口部には筐体の内部空間から筐体の外部空間に向かうにつれて開口径が拡大するようにテーパーが形成されている。通気部材はゴム弾性を有するシールリングを含み、シールリングは、開口部内において通気部材の支持体と筐体との間に挟まれることでテーパーに沿って変形している。この通気構造は、筐体の表面に平行な方向から噴射された水に対し高いシール性を発揮する。
【0004】
特許文献2には、通気部材と、シール部材と、環状の隔壁部材とを備える通気ユニットが記載されている。通気部材は、筐体の開口に取り付けられる。シール部材は、筐体と通気部材との間のギャップをシールする。環状の隔壁部材の内部には通気部材が嵌め込まれる。筐体の開口は筐体の外側から内側に向かって縮径している。この通気ユニットの構成によれば、通気部材が筐体の開口に取り付けられたときにシール部材の外側に形成される通気部材の周縁部と筐体の間の隙間が隔壁部材によって塞がれる。従って、高い外圧が作用する環境下でも通気部材と筐体の間から筐体内に異物が侵入することを防止できる。
【0005】
特許文献3には、通気部材と、シール部材と、ワッシャとを備える通気ユニットが記載されている。通気部材は、筐体の開口に取り付けられ、開口を覆うための防水通気膜を含む。シール部材は、筐体と通気部材との間のギャップをシールする。ワッシャは、シール部材の周囲で通気部材によって筐体に押圧される。この通気ユニットの構成によれば、通気部材が筐体の開口に取り付けられたときにシール部材の外側に形成される通気部材の周縁部と筐体の間の隙間がワッシャによって塞がれる。従って、高い外圧が作用する環境下でも通気部材と筐体の間から筐体内に異物が侵入することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-52791号公報
【文献】特開2012-231088号公報
【文献】特開2012-231089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の通気構造は、耐久性を高める観点から改良の余地を有する。また、特許文献2及び3に記載の通気ユニットは、それぞれ、隔壁部材及びワッシャを備えるので、簡素な構成であるとは言い難い。そこで、本発明は、簡素な構成で高い耐久性を有する通気構造を提供するのに有利な筐体キット及び通気部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
開口を有する筐体と、前記開口に配置されて前記筐体に取り付けられる通気部材とを備えた筐体キットであって、
前記通気部材は、
通気膜と、
前記筐体の内面に係止される係止部及び前記通気部材が前記筐体に取り付けられたときに前記係止部よりも前記筐体の外部空間に近い位置で前記通気膜を支持する支持部を有し、前記通気部材が前記筐体に取り付けられたときに前記筐体の内部空間と前記筐体の外部空間との間の通気経路を形成する支持体と、
前記通気部材が前記筐体に取り付けられたときに、前記開口において前記筐体と前記支持体との間の隙間をシールする環状のシール部材と、を備え、
前記筐体は、
前記筐体の外面において前記開口の周囲に形成された平坦面と、
前記平坦面との境界をなすとともに前記筐体の内部空間に向かって縮小する開口径を前記開口に付与するテーパー面と、を有し、
前記通気部材が前記筐体に取り付けられたときに、前記シール部材は、前記テーパー面と前記平坦面との間の前記境界及び前記境界に接した前記テーパー面の縁部に接触する、
筐体キットを提供する。
【0009】
また、本発明は、
開口を有する筐体の前記開口に配置されて前記筐体に取り付けられる通気部材であって、
通気膜と、
前記筐体の内面に係止される係止部及び当該通気部材が前記筐体に取り付けられたときに前記係止部よりも前記筐体の外部空間に近い位置で前記通気膜を支持する支持部を有し、当該通気部材が前記筐体に取り付けられたときに前記筐体の内部空間と前記筐体の外部空間との間の通気経路を形成する支持体と、
当該通気部材が前記筐体に取り付けられたときに、前記開口において前記筐体と前記支持体との間の隙間をシールする環状のシール部材と、を備え、
前記筐体は、前記筐体の外面において前記開口の周囲に形成された平坦面と、前記平坦面との境界をなすとともに前記筐体の内部空間に向かって縮小する開口径を前記開口に付与するテーパー面と、を有し、
当該通気部材が前記筐体に取り付けられたときに、前記シール部材は、前記テーパー面と前記平坦面との間の前記境界及び前記境界に接した前記テーパー面の縁部に接触する、
通気部材を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、
通気膜と、
前記通気膜を支持する支持部及び係止部を有する支持体と、
前記支持体に取り付けられた環状のシール部材と、を備え、
前記シール部材は、前記係止部に向かって縮小する外径を前記シール部材に付与する傾斜面を有し、
前記シール部材の軸線を含む平面に沿って前記シール部材を切断して現れる断面の前記傾斜面の輪郭は、円の内部に直線又は湾曲した線を含み、
前記円は、前記シール部材の軸線方向における前記断面の両端を通るとともに前記シール部材の前記軸線に垂直な一対の平行な直線と、前記軸線に垂直な方向において前記断面の前記軸線に近い端を通るとともに前記軸線に平行な直線とに接する、
通気部材を提供する。
【発明の効果】
【0011】
上記の筐体キット及び上記の通気部材は、簡素な構成で高い耐久性を有する通気構造を提供するのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の筐体キットの一例により提供される通気構造を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す筐体キットの組み立て前の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の筐体キットの別の一例により提供される通気構造の一部を拡大した断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の筐体キットのさらに別の一例により提供される通気構造を示す断面図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の筐体キットのさらに別の一例により提供される通気構造を示す断面図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の筐体キットのさらに別の一例により提供される通気構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ランプ、モータ、センサ、スイッチ、ECU、バッテリーパック、インバーター、コンバーター、ミリ波レーダ、及び車載カメラ等の自動車用の電気機器は、温度変化によりその内部に発生する差圧が解消されるように通気性を有する必要がある。加えて、このような電気機器には、異物、水、油、及び塩の侵入を防止できる特性も要求される。このような特性を電気機器に付与するために、電気機器の筐体に通気膜を備えた通気部材を取り付け、通気構造を提供することが考えられる。近年、自動車に搭載される電気機器の種類及び数が増えており、通気部材の取り付けの態様も多様化している。本発明者らは、このような事情を踏まえて、筐体及び通気部材からなる筐体キットによって提供される通気構造の耐久性について従来着目されていなかった観点から検討を行った。なお、自動車用の電気機器は、本発明に係る筐体キット及び通気部材の応用の一例に過ぎず、本発明に係る筐体キット及び通気部材は、自動車用の電気機器以外の用途にも応用可能である。
【0014】
特許文献1に記載の通気構造において、開口部のシールリングの周囲にはシールリング及びテーパーの縁部によって環状の溝が形成される。本発明者らは、この環状の溝に塩水等の液体がたまると筐体が腐食して通気構造の耐久性が低下する可能性があることを新たに見出した。特に、筐体の外部空間が上方に存在する開口に通気部材が配置される場合には、環状の溝に溜まった液体は排出されにくい。特許文献2及び3に記載の技術によれば、隔壁部材及びワッシャの働きによって、シール部材の周囲には液体がたまりにくいと考えられる。しかし、隔壁部材及びワッシャが必要になってしまい、簡素な構成で通気構造を提供しにくい。そこで、本発明者らは日夜検討を重ねた結果、シール部材と筐体との接触の態様を抜本的に見直すことによってシール部材の周囲に液体がたまりにくくなる構成を新たに見出し、簡素な構成で高い耐久性を有する通気構造を提供するのに有利な筐体キット及び通気部材を案出した。
【0015】
特許文献1~3に記載の技術のように、シールリング及びシール部材としては、製造又は入手の容易さからOリングが望ましく用いられる。一方で、本発明者らは、通気構造においてシール部材としてOリングを用いると、通気部材の特定の部分にかかる力が大きくなりやすく、通気構造の耐久性を高めにくいことを新たに見出した。そこで、本発明者らは、シール部材の形状について日夜検討を重ね、簡素な構成で高い耐久性を有する通気構造を提供するのに有利なシール部材の形状を新たに見出した。
【0016】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1及び
図2に示す通り、筐体キット1aは、筐体10と、通気部材20とを備える。筐体10は開口12を有し、通気部材20は、開口12に配置されて筐体10に取り付けられる。これにより、筐体キット1aにより通気構造を提供できる。通気部材20は、通気膜22と、支持体24と、環状のシール部材26とを備える。支持体24は、係止部24a及び支持部24bを有する。係止部24aは、通気部材20が筐体10に取り付けられたときに筐体10の内面11iに係止される。支持部24bは、通気部材20が筐体10に取り付けられたときに、係止部24aよりも筐体10の外部空間に近い位置で通気膜22を支持する。支持体24は、通気部材20が筐体10に取り付けられたときに、筐体10の内部空間と筐体10の外部空間との間の通気経路25を形成する。シール部材26は、通気部材20が筐体10に取り付けられたときに、開口12において筐体10と支持体24との間の隙間をシールする。筐体10は、平坦面11fと、テーパー面11tとを有する。平坦面11fは、筐体10の外面11oにおいて開口12の周囲に形成されている。テーパー面11tは、平坦面11fとの境界11bをなすとともに筐体10の内部空間に向かって縮小する開口径を開口12に付与する。シール部材26は、通気部材20が筐体10に取り付けられたときに、テーパー面11tと平坦面11fとの間の境界11b及び境界11bに接したテーパー面11tの縁部11eに接触する。これにより、開口12においてシール部材26の周囲に液体がたまりにくく、筐体10が腐食しにくい。このため、筐体キット1aは、簡素な構成で高い耐久性を有する通気構造を提供するのに有利である。
【0018】
シール部材26は、通気部材20が筐体10に取り付けられたときに、典型的には、筐体10と支持体24との間で弾性変形している。これにより、シール部材26がテーパー面11tの縁部11e及び境界11bにおいて筐体10に密着しやすく、高いシール性を発揮できる。この場合、シール部材26の材料は、弾性変形可能な材料である限り特に制限されないが、例えば、合成ゴム又は熱可塑性エラストマー等のエラストマーである。この場合、合成ゴムは、例えば、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、又は水素化ニトリルゴムである。なお、通気部材20が筐体10に取り付けられたときに、シール部材26が、境界11b及びテーパー面11tの縁部11eに接触するようにシール部材26の加工精度を高く確保できるのであれば、シール部材26は、筐体10と支持体24との間で実質的に弾性変形しなくてもよい。
【0019】
通気部材20が筐体10に取り付けられたときに、シール部材26とテーパー面11tとの接触面積は、例えば、テーパー面11tの面積の60%以上である。この場合、筐体キット1aにより提供される通気構造において高いシール性が発揮される。また、何らかの理由によりシール部材26が境界11bから瞬間的に離れたとしても液体が筐体10の内部空間に侵入することを防止でき、かつ、シール部材26の弾性等によりシール部材26の境界11bとの接触が回復される過程で開口12に侵入した液体を筐体10の外部空間に追い出すことができる。
【0020】
図1及び
図3に示す通り、開口12の軸線A1を含む平面に沿って筐体10を切断して現れる断面のテーパー面11tの輪郭は、例えば、直線を含む。この輪郭は、湾曲した線を含んでいてもよく、直線及び湾曲した線を含んでいてもよい。この場合、この輪郭が(i)湾曲した線、(ii)直線、及び(iii)湾曲した線を含み、(i)~(iii)の線が筐体10の外部空間から筐体10の内部空間に向かってこれらの順番で連なっていてもよい。
図1及び
図3に示す通り、シール部材26の軸線A2を含む平面に沿ってシール部材26を切断して現れる輪郭は、接触部26cを有する。接触部26cは、通気部材20が筐体10に取り付けられたときに筐体10に接触するとともに、通気部材20が筐体10に取り付けられる前に例えば直線を示す。接触部26cは、通気部材20が筐体10に取り付けられる前に、湾曲した線を示してもよく、直線及び湾曲した線を示してもよい。なお、
図1及び
図3において、軸線A1と軸線A2とが同一直線上にある。このことは、
図4、
図5、
図6A、
図6B、
図7A、及び
図7Bにも当てはまる。
【0021】
図3に示す通り、通気部材20において、シール部材26は支持体24に取り付けられている。シール部材26は、例えば、係止部24aに向かって縮小する外径をシール部材26に付与する傾斜面26sを有する。シール部材26の軸線A2を含む平面に沿ってシール部材26を切断して現れる断面の傾斜面26sの輪郭は、例えば円C1の内部に直線又は湾曲した線を含む。円C1は、一対の平行な直線L1と、軸線A2に平行な直線L2とに接する。一対の平行な直線L1は、シール部材26の軸線方向におけるシール部材26の上記の断面の両端を通るとともにシール部材26の軸線A2に垂直である。直線L2は、軸線A2に垂直な方向においてシール部材26の上記の断面の軸線A2に近い端を通る。傾斜面26sの輪郭がこのように形成されていれば、通気部材20が筐体10に取り付けられたときに、シール部材26が境界11b及び縁部11eに接触しやすい。また、筐体キット1aにより提供される通気構造において、テーパー面11tの法線方向におけるシール部材26の圧縮ひずみが小さくても広いシール面を確保でき、高いシール性を実現しやすい。加えて、シール部材26の圧縮変形に伴い支持体24又は筐体10にかかる応力が広い範囲に分布しやすいので、支持体又は筐体の特定の部分に応力が集中することによる通気構造の損傷を防止でき、筐体キット1aにより提供される通気構造の耐久性を高めることができる。また、通気部材20を筐体10に取り付けるときに傾斜面26sをテーパー面11tに沿わせて移動させやすく、通気部材20を筐体10に取り付けやすい。
【0022】
シール部材26の軸線A2を含む平面に沿ってシール部材26を切断して現れる断面の傾斜面26sの輪郭は、典型的には接触部26cを含む。このため、筐体キット1aにおいて、傾斜面26sの少なくとも一部が筐体10に接触している。
【0023】
図3に示す通り、シール部材26の軸線A2を含む平面に沿ってシール部材26を切断して現れる断面の傾斜面26sの輪郭は、望ましくは、通気部材20が筐体10に取り付けられる前に、第一中心線L3及び第二中心線L4の少なくとも1つを跨いで延びている。第一中心線L3は、円C1の中心を通るとともに軸線A2に平行である。第二中心線L4は、円C1の中心を通るとともに一対の平行な直線L1に平行である。これにより、筐体キット1aにより提供される通気構造において、シール部材26が境界11b及び縁部11eにより確実に接触しやすい。また、テーパー面11tの法線方向におけるシール部材26の圧縮ひずみが小さくてもより確実に広いシール面を確保できる。加えて、支持体又は筐体の特定の部分に応力が集中することによる通気構造の損傷をより確実に防止できる。
【0024】
図3に示す通り、シール部材26の軸線A2を含む平面に沿ってシール部材26を切断して現れる断面の傾斜面26sの輪郭は、望ましくは、通気部材20が筐体10に取り付けられる前に、第二中心線L4を跨いで延びている。これにより、筐体キット1aにより提供される通気構造において、シール部材26が境界11b及び縁部11eにより確実に接触しやすい。また、テーパー面11tの法線方向におけるシール部材26の圧縮ひずみが小さくてもより確実に広いシール面を確保できる。加えて、支持体又は筐体の特定の部分に応力が集中することによる通気構造の損傷をより確実に防止できる。
【0025】
図3に示す通り、シール部材26の軸線方向において、傾斜面26sの輪郭の係止部24aから遠い端は、通気部材20が筐体10に取り付けられる前に、円C1の外部に位置する。これにより、筐体キット1aにより提供される通気構造において、シール部材26が境界11b及び縁部11eにより確実に接触しやすい。また、テーパー面11tの法線方向におけるシール部材26の圧縮ひずみが小さくてもより確実に広いシール面を確保できる。加えて、支持体又は筐体の特定の部分に応力が集中することによる通気構造の損傷をより確実に防止できる。
【0026】
図3に示す通り、シール部材26の軸線方向において、傾斜面26sの輪郭の係止部24aに近い端は、通気部材20が筐体10に取り付けられる前に、円C1の外部に位置する。これにより、テーパー面11tの法線方向におけるシール部材26の圧縮ひずみが小さくてもより確実に広いシール面を確保できる。加えて、支持体又は筐体の特定の部分に応力が集中することによる通気構造の損傷をより確実に防止できる。
【0027】
図3に示す通り、シール部材26の軸線A2を含む平面に沿ってシール部材26を切断して現れる断面の傾斜面26sの輪郭は、例えば、通気部材20が筐体10に取り付けられる前に、円C1の内部に、曲率が0である直線部26rを有する。これにより、筐体キット1aにより提供される通気構造において、テーパー面11tの法線方向におけるシール部材26の圧縮ひずみが小さくても広いシール面を確保しやすく、高いシール性を実現しやすい。加えて、シール部材26の圧縮変形に伴い支持体24又は筐体10にかかる応力が広い範囲に分布しやすい。
【0028】
望ましくは、通気部材20が筐体10に取り付けられる前に軸線A1と軸線A2とが一直線上に並ぶように通気部材20及び筐体10が配置されたときに、直線部26rは、軸線A1を含む平面に沿って筐体10を切断して現れる断面のテーパー面11tの輪郭に含まれる直線と平行である。この場合、筐体キット1aにより提供される通気構造において、テーパー面11tの法線方向におけるシール部材26の圧縮ひずみが小さくてもより確実に広いシール面を確保しやすく、高いシール性を実現しやすい。加えて、シール部材26の圧縮変形に伴い支持体24又は筐体10にかかる応力がより確実に広い範囲に分布しやすい。
【0029】
図1に示す通り、支持体24は、例えば、複数の脚部24l(本例では、4つ)を有する。複数の脚部24lは、シール部材26の軸線A2の周りに離れて配置されている。加えて、複数の脚部24lは、それらの先端部に係止部24aを含む。通気部材20が筐体10に取り付けられたときに、シール部材26の一部は、例えば、複数の脚部24l同士の間に入り込む。これにより、シール部材26の圧縮変形により支持体24にかかる力の大きさを低減できる。その結果、通気部材20の耐久性、ひいては筐体キット1aにより提供される通気構造の耐久性を高めることができる。
【0030】
係止部24aは、例えば、軸線A2に垂直な方向において外向きに突出した鉤状の部分を有し、これにより係止面が形成されている。通気部材20が筐体10に取り付けられたときに、係止部24aの係止面が筐体10の内面11iに接触することにより、開口12の軸線方向における通気部材20の移動が規制される。なお、筐体キット1aにより提供される通気構造において、複数の脚部24lの少なくとも1つを軸線A2に近づけるように弾性変形させることにより、通気部材20を筐体10から取り外すことができる。
【0031】
通気膜22は、通気性を有する膜である限り特に制限されないが、典型的には防水性を有し、気体の透過を許容しつつ液体の透過を阻止する。この限りにおいて、通気膜22の構造及び材料は特に制限されず、通気膜22は、例えば、金属材料又は樹脂材料でできた織布、不織布、メッシュ、ネット、スポンジ、フォーム、又は多孔体である。
【0032】
通気膜22は、例えば、膜本体と、膜本体に重ね合わされた補強材とを有していてもよい。補強材により、通気膜22の強度が向上する。膜本体と補強材とは、例えば、熱ラミネーション、熱溶着、又は接着剤によって貼り合わせられる。もちろん、通気膜22が膜本体のみで構成されていてもよい。
【0033】
通気膜22は、例えば樹脂多孔質膜を含む。樹脂多孔質膜は、延伸法又は抽出法等の公知の方法によって製造できる。樹脂多孔質膜の材料は特に制限されないが、例えば、フッ素樹脂、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ナイロン、又はポリ乳酸である。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、又はテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体を使用できる。ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、4-メチルペンテン-1、及び1-ブテン等のモノマーから得られるホモポリマー又はコポリマーを使用できる。樹脂多孔質膜の材料がポリアクリロニトリル、ナイロン、又はポリ乳酸である場合、樹脂多孔質膜は、例えば、これらの高分子のナノメートルサイズの寸法を有するファイバーによって形成された多孔質膜である。中でも、小面積で適切な通気性を確保できること、かつ、筐体内部への異物の侵入を阻止する機能が高いことを考慮して、PTFE多孔質膜が樹脂多孔質膜として望ましく使用される。
【0034】
樹脂多孔質膜には、筐体キット1aの用途に応じて、撥液処理が施されていてもよい。撥液処理は、例えば、パーフルオロアルキル基を有する高分子等を含む撥液性の被膜を樹脂多孔質膜に形成することによってなされる。撥液性の被膜の形成は、特に制限されないが、例えば、エアスプレイ法、静電スプレイ法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、カーテンフローコーティング法、又は含浸法等の方法により、パーフルオロアルキル基を有する高分子の溶液又はディスパージョンで樹脂多孔質膜をコーティングすることによりなされる。また、電着塗装法又はプラズマ重合法によって、撥液性の被膜を形成してもよい。
【0035】
図1に示す通り、支持体24において、支持部24bは、例えば環状面を有しており、この環状面に通気膜22が支持されている。通気膜22は、例えば、熱板溶着、超音波溶着、及びレーザー溶着等の熱溶着により溶着されている。通気膜22は、支持体24を成形する金型において支持部24bをなす樹脂と接触する位置に固定された状態で、この金型に樹脂を流し込んで支持体24をインサート成形することによって、支持部24bに支持されてもよい。
【0036】
支持体24は、例えば、基部24cと、軸部24dとを有している。基部24cは、支持部24bを含む。基部24cは、例えばフランジ状に形成されている。また、軸部24dは、基部24cから突出しており、軸部24dの先端部に係止部24aを含む。
図1に示す通り、基部24c及び軸部24dによってコーナー24eが形成されている。通気部材20が筐体10に取り付けられたときに、シール部材26は、例えば、コーナー24eを覆うように支持体24に接触している。
【0037】
支持体24は、例えば、支持部24bの環状面の外側に複数の保護壁24pを有する。複数の保護壁24pは、軸線A2の周りに離れて配置されている。これにより、通気膜22が保護されるとともに、複数の保護壁24p同士の隙間が通気経路25の一部をなしている。支持体24は、保護壁24pの外側に複数の斜面24sを有する。これにより、保護壁24pによって遮られた異物又は液体が斜面24sを伝って排出される。
【0038】
図1に示す通り、例えば、通気部材20は、カバー28をさらに備えている。カバー28は、通気膜22よりも係止部24aから遠い位置で通気膜22を覆っている。これにより、通気膜22を適切に保護できる。
【0039】
カバー28は、例えば、円板状の本体28aと複数の側壁28bとを有し、複数の側壁28bは、軸線A2の周りに離れて配置され、本体28aの周縁部から支持体24に向かって突出している。本体28aは、複数の側壁28bよりも軸線A2に近い位置で支持体24の保護壁24pの端面と接触している又は向かい合っている。複数の側壁28bは、複数の斜面24s同士の間に嵌められている。加えて、複数の側壁28bによって、複数の保護壁24p同士の隙間が覆われている。複数の側壁28b同士の隙間は通気経路25の入口又は出口をなしている。
【0040】
支持体24及びカバー28の材料は、特に制限されないが、成形性又は溶着性の観点から、望ましくは、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、及びポリフェニレンエーテル(PPE)等の熱可塑性樹脂である。支持体24及びカバー28の材料は、熱硬化性樹脂又は金属材料であってもよい。
【0041】
筐体10の材料は特に制限されず、筐体10は、例えば金属材料又は樹脂材料によってできている。
【0042】
筐体キット1aは様々な観点から変更可能である。例えば、筐体キット1aは、
図4、
図5、
図6A、及び
図7Aにそれぞれ示す筐体キット1b、筐体キット1c、筐体キット1d、及び筐体キット1eのように変更されてもよい。筐体キット1b、筐体キット1c、筐体キット1d、及び筐体キット1eは、特に説明する場合を除き、筐体キット1aと同様に構成されている。筐体キット1aの構成要素と同一又は対応する筐体キット1b、筐体キット1c、筐体キット1d、及び筐体キット1eの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。筐体キット1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、筐体キット1b、筐体キット1c、筐体キット1d、及び筐体キット1eにも当てはまる。
【0043】
図4に示す通り、筐体キット1bにおいて、通気部材20が筐体10に取り付けられたときに、開口12の軸線A1を含む平面に沿って筐体10及び通気部材20を切断して現れる断面において、筐体10の外部空間におけるシール部材26の輪郭は、基準直線L5よりも開口12の軸線A1の近くに位置する。ここで、基準直線L5は、開口12の軸線A1から最も離れた位置にあるシール部材26と筐体10との接触点CPを通るとともに接触点CPよりも開口12の軸線A1から遠い位置で平坦面11fがなす直線L6と60°の角度をなす直線である。この場合、筐体10の外部空間においてシール部材26の周囲に液体がたまりにくい。その結果、筐体10が腐食しにくく、筐体キット1bにより提供される通気構造がより確実に高い耐久性を発揮できる。シール部材26の上記の輪郭は、望ましくは直線L6と70°の角度をなす直線よりも軸線A1の近くに位置し、より望ましくは直線L6と80°の角度をなす直線よりも軸線A1の近くに位置し、さらに望ましくは直線L6と90°の角度をなす直線よりも軸線A1の近くに位置する。
【0044】
図5に示す通り、筐体キット1cにおいて、開口12の軸線A1を含む平面に沿って筐体10を切断して現れる断面のテーパー面11tの輪郭は、湾曲した線を含む。例えば、この輪郭は、シール部材26に向かって膨らむように湾曲している。この場合でも、通気部材20が筐体10に取り付けられたときに、シール部材26が適切に弾性変形することにより、シール部材26が境界11b及び縁部11eに接触する。
【0045】
図6A及び
図6Bに示す通り、筐体キット1dにおいて、開口12の軸線A1を含む平面に沿って筐体10を切断して現れる断面のテーパー面11tの輪郭は、直線を含む。加えて、
図6Bに示す通り、シール部材26の軸線A2を含む平面に沿ってシール部材26を切断して現れる断面の傾斜面26sの輪郭は、直線部26rを有する。
図6Bに示す通り、通気部材20が筐体10に取り付けられる前に軸線A1と軸線A2とが一直線上に並ぶように通気部材20及び筐体10が配置されたときに、傾斜角θ2は傾斜角θ1よりも大きい。傾斜角θ2は、直線部26rのシール部材26の軸線A2に対する傾斜角である。傾斜角θ1は、開口12の軸線A1を含む平面に沿って筐体10を切断して現れる断面のテーパー面11tの輪郭に含まれる直線の軸線A1に対する傾斜角である。この場合、筐体キット1dにより提供される通気構造において、テーパー面11t及び支持体24の押圧によりもたらされるシール部材26の圧縮ひずみが筐体10の内部空間に向かって小さくなりやすい。このため、シール部材26の変形により支持体24にかかる力が支持体24の係止部24aに近い位置で小さくなりやすく、支持体24の耐久性、ひいては筐体キット1dにより提供される通気構造の耐久性が高い。
【0046】
図7Aに示す通り、筐体キット1eにおいて、支持体24は、支持部24bを含む基部24cと、基部24cから突出しているとともにその先端部に係止部24aを含む軸部24dとを有する。基部24cと軸部24dとによってコーナー24eが形成されている。
図7Bに示す通り、通気部材20が筐体10に取り付けられる前に、コーナー24eとシール部材26との間に環状の隙間G1が形成されている。これにより、通気構造を提供するために通気部材20を筐体10に取り付けるときにシール部材26の変形に伴い移動するシール部材26の一部が隙間G1に受け入れられる。