(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】充填食品用紙容器
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020024799
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2022-04-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【識別番号】100206139
【氏名又は名称】大塚 匡
(72)【発明者】
【氏名】大久保 勝行
(72)【発明者】
【氏名】宮川 茂和
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/018026(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/024913(WO,A1)
【文献】特開2001-278330(JP,A)
【文献】特開2006-35466(JP,A)
【文献】国際公開第2015/052741(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/137947(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 1/00-43/00
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面側から内面側にかけて、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(A層)、紙基材層(B層)、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(C層)、バリア層(D層)、エチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とする接着層(E層)、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(I層)、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(F層)、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂を混合した熱可塑性樹脂層(G層)、ポリオレフィン系樹脂に多価アルコールもしくはその誘導体およびポリオキシエチレン誘導体から選ばれる配合剤を添加した熱可塑性樹脂層(H層)を備えた容器材料からなり、
前記エチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とする接着層(E層)と前記ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(I層)は素材同士が共押出しにより積層状態に形成されたものであることを特徴とする充填食品用紙容器。
【請求項2】
前記エチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とする接着層(E層)と前記ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(I層)の共押出しがTダイ法によるものであることを特徴とする請求項1に記載の充填食品用紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆腐等の食品の材料を容器に充填し、密封して加熱固化した容器入り食品を製造するために使用される充填食品用紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
豆腐、水ようかん、プリンなど、その材料を容器に充填し、密封し加熱固化して製造される食品(以下充填食品という。)がある。
例えば、充填食品が豆腐である場合、容器に豆乳と凝固剤を投入した豆腐材料を充填して密封し、豆腐材料を充填した容器を60~100度で加熱することにより、充填豆腐を製造している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
充填豆腐を始めとする充填食品で使用される容器としては、金属容器、合成樹脂容器、紙容器等が知られているが、使用後の廃棄の容易さ、リサイクル特性等から紙容器が普及している。食品を密封収容する紙容器として、外面側から内面側に向かって、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層、紙基材層、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層、バリア層を経て最内層にポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層を有する紙容器材料で形成された紙容器がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載された紙容器材料で形成された紙容器を充填食品の容器として使用した場合、容器内で固化した食品と容器の内面となるポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層との身離れ性が悪く、取り出しの際に食品が容器の内面に付着し、取り出し難かったり、一部が欠けるおそれがあった。
【0005】
容器の内面と容器内で固化した食品との身離れ性を良くするものとして、ポリオレフィン系樹脂に多価アルコールもしくはその誘導体およびポリオキシエチレン誘導体から選ばれる配合剤を添加したポリオレフィン系樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
この特許文献3に記載されている技術を特許文献2に記載された紙容器材料の最内層に適用すれば、紙容器の内面と食品との身離れ性が良くなり、紙容器から食品を容易に取り出せることになる。
【0006】
特許文献3に記載されている技術を特許文献2に記載された紙容器材料の最内層に適用する一例として、上記した紙容器材料の最内層を構成するポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層に、多価アルコールもしくはその誘導体およびポリオキシエチレン誘導体から選ばれる配合剤を添加したポリエチレン樹脂フィルムをラミネートして最内層とすることが考えられる。
【0007】
しかし、このようにして得られた紙容器材料で成形された紙容器を充填食品の容器として使用すると、配合剤を添加した最内層となるポリエチレン樹脂層と、その内側にあるポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層との間に剥離が発生し内容液が漏れる場合があった。
【0008】
このような問題点を解決するものとして、
図2に示すように、外面側から内面側にかけて、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(A層)、紙基材層(B層)、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(C層)、バリア層(D層)、エチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とする接着層(E層)、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(F層)、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂を混合した熱可塑性樹脂層(G層)、ポリオレフィン系樹脂に多価アルコールもしくはその誘導体およびポリオキシエチレン誘導体から選ばれる配合剤を添加した熱可塑性樹脂層(H層)を備えた容器材料で成形された充填食品用紙容器が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
特許文献4に記載されている充填食品用紙容器によれば、熱可塑性樹脂層(H層)の内側のポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(F層)との間にポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂を混合した熱可塑性樹脂層(G層)を介在させた積層構造となっているので、豆腐等の食品の材料を容器に充填し、密封し加熱固化する製造の過程で、最内層である熱可塑性樹脂層(H層)からの配合剤の溶出が前記熱可塑性樹脂層(G層)により抑えられ、熱可塑性樹脂層(F層)への移行を防止することができ、これにより前記熱可塑性樹脂層(F層)から熱可塑性樹脂層(H層)の剥離の発生が防止できるので、内容液の漏れのない充填食品用紙容器を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2014-187975号公報
【文献】特開2004-17984号公報
【文献】特開平7-62163号公報
【文献】特開2017-24762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献4に記載されている充填食品用紙容器に使用される容器材料では、バリア層(D層)に積層されているエチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とする接着層(E層)に、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(F層)をラミネートして積層しているが、接着層(E層)と熱可塑性樹脂層(F層)はエチレン・メタクリル酸共重合樹脂とポリエチレン樹脂といった異なる樹脂を主成分としているため両者の接着性が高いとはいえない。
【0012】
接着層(E層)と熱可塑性樹脂層(F層)の接着強度は、充填食品用紙容器の性能維持に必要な条件であるが、エチレン・メタクリル酸共重合樹脂とポリエチレン樹脂との接着性が高くないため、充填食品用紙容器の長期保存や、例えば、充填食品が豆腐である場合の製造工程における加熱処理などにより、接着層(E層)と熱可塑性樹脂層(F層)の接着強度が低下し、接着層(E層)と熱可塑性樹脂層(F層)との間に剥離が発生し内容液が漏れるおそれがあるといった問題がある。
【0013】
本発明の目的は、積層間の初期の接着強度を上げ、層間剥離による内容液の漏れを防止できる充填食品用紙容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、外面側から内面側にかけて、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(A層)、紙基材層(B層)、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(C層)、バリア層(D層)、エチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とする接着層(E層)、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(I層)、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(F層)、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂を混合した熱可塑性樹脂層(G層)、ポリオレフィン系樹脂に多価アルコールもしくはその誘導体およびポリオキシエチレン誘導体から選ばれる配合剤を添加した熱可塑性樹脂層(H層)を備えた容器材料からなり、前記エチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とする接着層(E層)と前記ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(I層)は素材同士が共押出しにより積層状態に形成されたものであることを特徴とする。
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、前記エチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とする接着層(E層)と前記ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(I層)は素材同士が共押出しにより積層状態に形成されたものであるので、共押出し時に前記エチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とする接着層(E層)と前記ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(I層)の素材同士が接触し接触面側が混合した状態となり、前記接着層(E層)と前記熱可塑性樹脂層(I層)は剥離のおそれのない積層構造となる。そして、前記接着層(E層)に積層された前記熱可塑性樹脂層(I層)に前記熱可塑性樹脂層(F層)をラミネートして積層するので、前記熱可塑性樹脂層(I層)と前記熱可塑性樹脂層(F層)は同じ樹脂であるため前記熱可塑性樹脂層(I層)と前記熱可塑性樹脂層(F層)の間に高い接着強度が得られることから、特許文献4に記載されている充填食品用紙容器のような接着層(E層)と熱可塑性樹脂層(F層)との間に剥離が発生するといった問題ははく、層間剥離による内容液の漏れといった事態の発生を防止できる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記エチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とする接着層(E層)と前記ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(I層)の共押出しがTダイ法によるものであることを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の、前記エチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とする接着層(E層)と前記ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(I層)の共押出しがTダイ法によるものであるので、共押出し時に前記エチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とする接着層(E層)と前記ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(I層)の素材同士がTダイ内で接触することにより両者の混合範囲が大きくなり、前記接着層(E層)と前記熱可塑性樹脂層(I層)はより剥離のおそれのない積層構造となり、層間剥離による内容液の漏れといった事態の発生をより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る充填食品用紙容器によれば、層間剥離による内容液の漏れといった事態の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る充填食品用紙容器を成形する容器材料の積層構造の一例を示す説明図である。
【
図2】従来の充填食品用紙容器を成形する容器材料の積層構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る充填食品用紙容器の実施の形態の一例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る充填食品用紙容器を形成する容器材料の積層構造の一例を示す説明図である。
【0021】
本例の充填食品用紙容器は、外面側から内面側にかけて、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(A層)、紙基材層(B層)、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(C層)、バリア層(D層)、エチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とする接着層(E層)、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(I層)、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(F層)、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂を混合した熱可塑性樹脂層(G層)、ポリオレフィン系樹脂に多価アルコールもしくはその誘導体およびポリオキシエチレン誘導体から選ばれる配合剤を添加した熱可塑性樹脂層(H層)を備えた容器材料からなり、前記エチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とする接着層(E層)と前記ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(I層)は素材同士が共押出しにより積層状態に形成された容器材料で成形されている。
【0022】
上記容器材料の積層構造のうちの、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(A層)、紙基材層(B層)、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(C層)、バリア層(D層)、エチレン・メタクリル酸共重合樹脂を主成分とする接着層(E層)、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(F層)、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂を混合した熱可塑性樹脂層(G層)、ポリオレフィン系樹脂に多価アルコールもしくはその誘導体およびポリオキシエチレン誘導体から選ばれる配合剤を添加した熱可塑性樹脂層(H層)迄の積層構造は、特許文献4に記載されている従来の充填食品用紙容器として使用されている容器材料と変わるところはない。
【0023】
本例では、熱可塑性樹脂層(C層)は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)を成分とし、熱可塑性樹脂層(F層)は、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を成分としている。また、バリア層(D層)としてアルミ箔を使用している。
【0024】
本発明に係る充填食品用紙容器を成形する容器材料は、上記のように積層された積層構造の、接着層(E層)と熱可塑性樹脂層(F層)の間に、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(I層)が積層されている。
【0025】
このような積層構造を有する容器材料の製造の一例を説明する。
先ず、紙基材層(B層)の外面に熱可塑性樹脂層(A層)をラミネートして積層させる。
【0026】
次に、紙基材層(B層)の内面に、ポリエチレン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層(C層)をラミネートして積層させ、熱可塑性樹脂層(C層)の上にバリア層(D層)をラミネートして積層させる。
【0027】
次に、バリア層(D層)の上に、接着層(E層)と熱可塑性樹脂層(I層)を、この順でラミネートして積層させる。接着層(E層)と熱可塑性樹脂層(I層)の積層にあっては、接着層(E層)と熱可塑性樹脂層(I層)の素材同士を共押出しによりバリア層(D層)の上にラミネートして積層する。本例では、接着層(E層)と熱可塑性樹脂層(I層)の素材同士の共押出しはTダイ法による共押出しとなっている。
【0028】
次に、熱可塑性樹脂層(I層)の上に、熱可塑性樹脂層(F層)、熱可塑性樹脂層(G層)、熱可塑性樹脂層(H層)をこの順でラミネートして積層させる。
熱可塑性樹脂層(F層)、熱可塑性樹脂層(G層)、熱可塑性樹脂層(H層)の積層にあっては、熱可塑性樹脂層(F層)、熱可塑性樹脂層(G層)、熱可塑性樹脂層(H層)の3層フィルムを熱可塑性樹脂層(I層)の上にラミネートして積層してもよく、また、熱可塑性樹脂層(F層)、熱可塑性樹脂層(G層)、熱可塑性樹脂層(H層)の素材同士を共押出しにより熱可塑性樹脂層(I層)の上にラミネートして積層するようにしてもよい。
【0029】
なお、本例では、先ず紙基材層(B層)の外面に熱可塑性樹脂層(A層)を積層しているが、紙基材層(B層)の内面側に、熱可塑性樹脂層(C層)、バリア層(D層)、接着層(E層)、熱可塑性樹脂層(I層)、熱可塑性樹脂層(F層)、熱可塑性樹脂層(G層)、熱可塑性樹脂層(H層)を積層してから、最後に紙基材層(B層)の外面に熱可塑性樹脂層(A層)を積層してもよい。
【0030】
このようにして製造された積層構造を有する容器材料で成形された充填食品用紙容器は、接着層(E層)と熱可塑性樹脂層(I層)は素材同士が共押出しにより積層状態に形成されたものであるので素材同士が接触し、接着層(E層)と熱可塑性樹脂層(I層)は異なる樹脂を主成分とするものであっても接触面側が混合した状態となり、接着層(E層)と前記熱可塑性樹脂層(I層)は剥離のおそれのない積層構造となる。
【0031】
そして、接着層(E層)に積層された熱可塑性樹脂層(I層)に熱可塑性樹脂層(F層)をラミネートして積層するので、熱可塑性樹脂層(I層)に、前記熱可塑性樹脂層(F層)は同じ樹脂であるため接着層(E層)に積層された熱可塑性樹脂層(I層)の間に高い接着強度が得られる。
【0032】
本例では、接着層(E層)と熱可塑性樹脂層(I層)の素材同士の共押出しはTダイ法による共押出しで行っているので、接着層(E層)と熱可塑性樹脂層(I層)の素材同士がTダイの中で接触混合することにより両者の混合範囲が大きくなり、接着層(E層)と熱可塑性樹脂層(I層)はより剥離のおそれのない積層構造となる。