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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】並列運転電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20220518BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
H02M3/28 W
H02M7/06 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020121263
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018270
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 正蔵
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-197687(JP,A)
【文献】特開昭57-203663(JP,A)
【文献】特開2000-060127(JP,A)
【文献】特開2013-247722(JP,A)
【文献】特開平11-004579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H02M 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続した3台の電力制御装置を備え、前記3台の電力制御装置の出力電流を合流させて負荷に供給する並列運転電源装置において、
前記3台の電力制御装置の入力側と電源間に接続され、前記3台の電力制御装置の結線状態をΔ結線又はY結線のいずれかに切替える接点と中性点端子とを備え、これらの結線状態が電源の種類に対応して予め設定してあり、前記中性点端子がフロートである第1接続状態と、前記中性点端子が前記3台の電力制御装置の中性点入力端子に接続される第2接続状態とを切り替えるΔ・Y切替回路部と、
電源のR、S、T端子と前記中性点端子とが入力側に接続され、これらの端子間に電流が流れるか否かを検出して、前記結線状態がΔ結線かY結線かを判定し、その判定結果を前記3台の電力制御装置に出力する、Δ・Y判定部とを備え、
前記3台の電力制御装置は、前記結線状態がY結線と判定されたときにY結線用制御モードをオンに設定する、並列運転電源装置。
【請求項2】
前記3台の電力制御装置は、それぞれ、電源開閉のメインリレーを備えるリレー回路と、前記リレー回路の出力側に接続される整流回路を含む力率改善コンバータ部と、前記力率改善コンバータ部の出力側に接続されるコンデンサと、前記コンデンサの充電電圧を電源として駆動するDC-DCコンバータ部と、を備え、
前記3台の電力制御装置は、それぞれ、電源投入後に前記コンデンサを所定時間徐々に充電する予備充電を行い、
前記Δ・Y判定部は、前記予備充電が行われている間に前記Δ結線かY結線かを判定し、
前記リレー回路は、前記所定時間の経過後に前記DC-DCコンバータ部をオンする、請求項1記載の並列運転電源装置。
【請求項3】
前記リレー回路は、前記電源開閉のメインリレーに並列接続され、電流制限抵抗が直列接続された予備充電リレーを備え、
前記予備充電は、前記力率改善コンバータ部をオフして前記予備充電リレーを介して行う、請求項2記載の並列運転電源装置。
【請求項4】
前記力率改善コンバータ部は、前記所定時間の予備充電を行った後にオンして出力電流を徐々に大きくするソフトスタート動作を行い、前記DC-DCコンバータ部は前記力率改善コンバータ部のソフトスタート動作後にオンする、請求項3記載の並列運転電源装置。
【請求項5】
前記Δ・Y判定部は、
前記R、S、T端子のそれぞれに直列接続された第1のダイオードと、前記第1のダイオードに直列接続され、電流方向に対して前記第1のダイオードの整流方向と同じ整流方向の第2のダイオードと、前記第1のダイオードから前記第2のダイオードに電流が流れるか否かで前記判定結果を生成する判定回路と、を備える、請求項1~4のいずれかに記載の並列運転電源装置。
【請求項6】
前記Y結線用制御モードをオンに設定されたときに、電源の各相の入力電圧の平均と大小を求め、その結果に基づいて入力電圧のバランスを保持する入力電圧バランス部を設けた、請求項1~5の何れかに記載の並列運転電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に3相電源と直流負荷の間に3台の電力制御装置を並列接続して並列運転を行う並列運転電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3相電源に単相用の3台の電力制御装置(または電源制御装置)を並列接続した並列運転電源装置では、電源の種類によって各電力制御装置の結線状態を変更する必要が生じてくる。例えば、電源がΔ結線の場合とY結線の場合とでは、電源電圧が異なる。そこで、これに対応するために、電源の種類に応じて3台の電力制御装置の結線状態を変更可能にする。すなわち、電源がΔ結線であれば、3台の電力制御装置もΔ結線にし、電源がY結線であれば、3台の電力制御装置もY結線となるようにする。また、電源が中性点付きのY結線であれば、3台の電力制御装置を中性点端子付きのY結線とし、電源の中性点を電力制御装置の中性点端子に接続する。このような結線状態を切り替えるために、電源と3台の電力制御装置との間に切替回路が設けられる。
【0003】
例えば、特許文献1では、電源と電力制御装置間に入力切替部と入力電源電圧を監視する入力監視部とを設け、入力監視部で検出した電源電圧が低下すると、入力切替部をY結線とし、電力制御装置への入力電圧を上げる。また、入力監視部で検出した電源電圧が上昇すると、入力切替部をΔ結線とし、電力制御装置への入力電圧を低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-197687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の装置では、入力監視部が電源電圧を監視し、監視している電圧の大きさに応じて入力切替部をΔ結線かY結線に切り替えているだけである。このため、電源の種類によっては、適切な制御を行えない場合がある。例えば、単相用の3台の電力制御装置を並列接続した並列運転電源装置に、中性点なしのY結線電源を接続した場合にこのような問題生じる。中性点なしのY結線電源では、各電力制御装置の電気的な特性の微妙な相違に起因して、電力制御装置の入力電圧が不安定となることがある。この場合、各電力制御装置には入力電圧をバランスさせる手段を設けるなど制御モードの変更対応が必要であるが、上記の装置では、電源電圧を監視して入力切替部を切り替える構成であるために、このような対応は出来ない。また、制御モードの変更が可能であってもこの変更作業を手動で行わなければならず、誤操作が起きる可能性があった。
【0006】
そこで、この発明は、電源電圧の大きさとは無関係に結線状態を判定し、その判定結果に基づいて各電力制御装置の制御モードを自動的に確実に設定できる並列運転電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の並列運転電源装置は、並列接続した3台の電力制御装置を備え、前記3台の電力制御装置の出力電流を合流させて負荷に供給する並列運転電源装置において、
前記3台の電力制御装置の入力側と電源間に接続され、前記3台の電力制御装置の結線状態をΔ結線又はY結線のいずれかに切替える接点と中性点端子とを備え、これらの結線状態が電源の種類に対応して予め設定してあるΔ・Y切替回路部と、
電源のR、S、T端子と前記中性点端子とが入力側に接続され、これらの端子間に電流が流れるか否かを検出して、前記結線状態がΔ結線かY結線かを判定し、その判定結果を前記3台の電力制御装置に出力する、Δ・Y判定部とを備え、
前記3台の電力制御装置は、前記判定結果がY結線のときY結線用制御モードを設定する。
【0008】
前記Δ・Y切替回路部は、予め、装置が設置される場所の電源の種類に応じて、Δ結線かY結線の結線状態に設定してある。例えば、電源がΔ結線の電源であれば、前記Δ・Y切替回路部での結線状態はΔ結線に設定してある。また、電源が中性点なしのY結線の電源であれば、前記Δ・Y切替回路部での結線状態はY結線に設定してある。
【0009】
前記Δ・Y判定部は、電源のR、S、T端子から前記中性点端子に電流が流れると、前記Δ・Y切替回路部での結線状態がY結線と判定する。Δ・Y判定部は、Y結線と判定した結果を3台の電力制御装置に出力する。3台の電力制御装置は、Y結線用制御モードが動作するように設定する。Y結線は、中性点接続のないY結線であるため、3台の電力制御装置のそれぞれの動作が同じとならず、出力電流や入力電圧が不平衡となる可能性があるが、Y結線用制御モードでは、入力電圧のバランスを保つ入力電圧バランス部が作動する。
【0010】
また、前記Δ・Y判定部は、電源のR、S、T端子から前記中性点端子に電流が流れないと、前記Δ・Y切替回路部での結線状態がΔ結線と判定する。結線状態がΔ結線であるため、この状態では、Δ・Y切替回路部の中性点端子はフロート状態である。中性点端子がフロート状態である、電源のR、S、T端子から前記中性点端子に電流が流れない。
【0011】
Δ・Y判定部は、Δ結線と判定した結果を3台の電力制御装置に出力する。3台の電力制御装置は、Y結線用制御モードをオフするように設定する。Δ結線は、中性点接続のないY結線に比べて安定しているため、入力電圧が不平衡となることはない。このため、Y結線用制御モードがオフで入力電圧バランス部が作動しなくても問題はない。
【0012】
このように、Δ・Y判定部は、電源のR、S、T端子から前記中性点端子への電流の有無により結線状態を判定する。このため、Δ・Y切替回路部での結線状態を誤判定することがない。また、Δ・Y判定部の判定結果がY結線である場合、3台の電力制御装置の制御モードを正しくY結線用制御モード設定できる。
【0013】
3台の電力制御装置は、それぞれ、電流制限抵抗が直列接続された予備充電リレー接点と電源開閉のリレー接点とが並列接続されたリレー回路と、前記リレー回路の出力側に接続される整流回路を含む力率改善コンバータ部と、前記力率改善コンバータ部の出力側に接続されるコンデンサと、前記コンデンサの充電電圧を電源として駆動するDC-DCコンバータ部と、を備えている。
【0014】
前記リレー回路は、電源投入後に前記予備充電リレー接点と前記力率改善コンバータ部を介して前記コンデンサに所定時間の予備充電を行う。予備充電は、コンデンサに対する突入電流を防止するためのものである。Δ・Y判定部は、この予備充電の間に行われる。したがって、DC-DCコンバータ部は、予備充電中(DC-DCコンバータ部がまだオンしていない)に、前記結線状態がY結線と判定されたときにY結線用制御モードに設定することが出来る。
【0015】
予備充電は、リレー回路の予備充電リレー接点を介して行われる。予備充電期間は力率改善コンバータ部をオフしているため、電源から流れる電流は電流制限抵抗で電流制限されて力率改善コンバータ部をそのまま通過し、コンデンサの充電電流となる。
【0016】
前記力率改善コンバータ部は、前記所定時間の予備充電を行った後にオンして出力電流を徐々に大きくするソフトスタート動作を行う。コンデンサは予備充電によってある程度充電されているが、その後に前記力率改善コンバータ部からの出力電流を徐々に上昇させることで、コンデンサに対する突入電流を一層防止する。
【0017】
前記DC-DCコンバータ部は、予備充電と前記力率改善コンバータ部のソフトスタート動作が終わるとオンする。このとき、前記DC-DCコンバータ部は、前記結線状態がY結線と判定されたときにY結線用制御モードに設定されている。したがって、もし、前記DC-DCコンバータ部の制御モードがY結線用制御モードに設定されていなければ、前記判定結果を受信したときにY結線用制御モードに切り替えられる。このような制御のため、前記DC-DCコンバータ部は、オンする前に、正しい制御モードに設定される。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、Δ・Y判定部により、電源電圧の大きさにかかわらず、3台の電力制御装置の結線状態がΔ結線かY結線かを正しく判定出来る。また、3台の電力制御装置は、判定結果に基づいて、制御動作モードを正しく設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態の3相並列運転電源装置の結線図を示す。
図2】Δ・Y判定回路3の回路図を示す。
図3】モジュール1R、1S、1Tの構成図を示す。
図4】RY部10R、力率改善コンバータ部(PFC)11R、DC-DCコンバータ部13Rの動作シーケンスを示す。
図5】フィードバック制御回路の構成図を示す。
図6】入力電圧バランス部15Sのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施形態の3相並列運転電源装置の結線図を示す。同図(A)は、電源が200V系Δ結線のときの結線図、同図(B)は、電源が400V系Y結線のときの結線図を示す。400V系Y結線の電源は中性点端子のない電源である。
【0021】
3相並列運転電源装置は、単相で動作する3台の電力制御装置(以下、モジュールと称する)1R、1S、1Tを備え、これらのモジュール1R、1S、1Tを並列運転して負荷6に対して電力を供給する。3相並列運転電源装置は、モジュール1R、1S、1Tの入力側と電源間に接続され、モジュール1R、1S、1Tの結線状態をΔ結線又はY結線のいずれかに切替えるΔ・Y切替回路部2を備える。Δ・Y切替回路部2は、接点2R、2S、2Tと中性点端子N´とを備える。
【0022】
3相並列運転電源装置は、さらに、Δ・Y判定回路(Δ・Y判定部)3を備える。このΔ・Y判定回路3は、電源のR、S、T端子と前記中性点端子N´とが入力側に接続され、これらの端子間に電流が流れるか否かを検出する、その検出結果から、前記モジュール1R、1S、1Tの結線状態がΔ結線かY結線かを判定し、その判定結果を前記3台のモジュール1R、1S、1Tに出力する。
【0023】
モジュール1R、1S、1Tは、後述のようにDC-DCコンバータを備え、その出力電流を合流させて負荷6に供給する。また、モジュール1R、1S、1Tは、Y結線用制御モードの動作モードを備えている。後述のように、モジュール1R、1S、1Tは、Y結線用制御モードが設定されている場合に、入力電圧のバランスを保持するための回路を動作させる。
【0024】
Δ・Y切替回路部2は、電源が200V系Δ結線の場合、接点2R、2S、2Tをa(a1、a2、a3)側に切り替える(図1(A))。これによりモジュール1R、1S、1Tの結線状態はΔ結線となる。このとき中性点端子N´はフロートの状態となる。また、Δ・Y切替回路部2は、電源が400V系Y結線の場合、接点2R、2S、2Tをb(b1、b2、b3)側に切り替える(図1(B))。これによりモジュール1R、1S、1Tの結線状態はY結線となる。このとき中性点端子N´は、接点2R、2S、2Tを介してモジュール1R、1S、1Tの中性点入力端子Nに接続される。以下、前者の接続状態(図1(A))をΔ接続状態(第1接続状態)、後者の接続状態(図1(B))をY接続状態(第2接続状態)と称する。
【0025】
Δ・Y切替回路部2は、電源が200V系Δ結線の場合、予めΔ接続状態に設定されている。また、電源が400V系Y結線の場合、予めY接続状態に設定されている。これらの接続状態は、3相並列運転電源装置が設置される場所の電源の種類に合わせて予め設定されている。
【0026】
図2は、Δ・Y判定回路3の回路図を示す。
【0027】
Δ・Y判定回路3は、電源のR、S、T端子のそれぞれに直列接続された第1のダイオードD1、D2、D3と、Δ・Y切替回路部2の中性点端子N´に直列接続された第2のダイオードD4を備える。第1のダイオードD1、D2、D3の整流方向と第2のダイオードD4の整流方向は、電流方向に対して同一である。第1のダイオードD1、D2、D3のカソード端子と第2のダイオードD4のアノード端子間には抵抗R1、R2が接続され、抵抗R2の両端電圧はフォトカプラPHC1、PHC2、PHC3に印加される。
【0028】
Δ・Y判定回路3において、Δ接続状態(図1(A))のときは、Δ・Y切替回路部2の中性点端子N´はフロートの状態である。このため、第1のダイオードD1、D2、D3から第2のダイオードD4に電流が流れず、フォトカプラPHC1、PHC2、PHC3はオフ状態でその出力は「H」である。Δ・Y判定回路3において、Y接続状態(図1(B))のときは、Δ・Y切替回路部2の中性点端子N´はモジュール1R、1S、1Tの中性点入力端子Nに接続される。このため、第1のダイオードD1、D2、D3から第2のダイオードD4に電流が流れ、フォトカプラPHC1、PHC2、PHC3はオンしその出力は「L」である。
【0029】
モジュール1R、1S、1Tは、上記「H」または「L」の論理値を受ける事で、以下のように制御モードを設定する。
【0030】
「L」・・・Y結線用制御モードをオン
「H」・・・Y結線用制御モードをオフ
Y結線用制御モードについては後述する。
【0031】
図3は、モジュール1R、1S、1Tの構成図である。
【0032】
3台のモジュール1R、1S、1Tは、その入力端子が、Δ・Y切替回路部2に接続される。モジュール1Rの入力端子TB1、TB3、TB5は、それぞれ、Δ・Y切替回路部2のR出力端子、S出力端子、T出力端子に接続される。また、3台のモジュール1R、1S、1Tの入力端子TB2、TB4、TB6は、それぞれ、Δ・Y切替回路部2の接点2Sの端子c2、接点2Tの端子c3、接点2Rの端子c1に接続される。図1(A)に示すΔ接続状態のときは、入力端子TB2、TB4、TB6は、それぞれ、S入力端子、T入力端子、R入力端子となる。図1(B)に示すY接続状態のときは、入力端子TB2、TB4、TB6は、それぞれ、中性点入力端子Nとなる。
【0033】
モジュール1R、1S、1Tの出力は並列接続して出力電流を合流し、負荷6に供給する。すなわち、モジュール1Rの出力側の端子TB7と、モジュール1Sの出力側の端子TB9と、モジュール1Tの出力側の端子TB11とが出力電流端子PPに接続される。また、モジュール1Rの出力側の端子TB8と、モジュール1Sの出力側の端子TB10と、モジュール1Tの出力側の端子TB12とが出力電流端子NNに接続される。負荷6は、出力電流端子PP、NN間に接続される。
【0034】
モジュール1R、1S、1Tのそれぞれは同じ構成であるため、以下、モジュール1Rの構成を説明する。
【0035】
モジュール1Rは、電源開閉のメインリレーRY1と予備充電リレーRY2の各リレー接点を有するRY部10R(リレー回路)と、整流回路を含む力率改善コンバータ部(PFC)11Rと、力率改善コンバータ部(PFC)11Rの出力側に接続されるコンデンサ12Rと、DC-DCコンバータ部13Rと、フィードバック制御回路14Rと、入力電圧バランス部15Rとを備える。
【0036】
RY部10Rは、電源起動後から予備充電リレーRY2をオンし、所定時間T経過後にメインリレーRY1をオンする、
力率改善コンバータ部(PFC)11Rは、メインリレーRY1がオンしたときからソフトスタートをする。ソフトスタートは、力率改善コンバータ部(PFC)11Rの出力電流を徐々に増やしていく制御動作である。ソフトスタートにより、コンデンサ12Rへの充電電流が急峻に増大しないようにする。力率改善コンバータ部(PFC)11Rは、通常の動作時では、入力電流をスイッチングすることで入力電流と入力電圧の位相を同位相として力率を良くする。
【0037】
コンデンサ12Rは、力率改善コンバータ部(PFC)11Rの出力を充電し、このコンデンサ12Rの充電電圧により、後段に接続されるDC-DCコンバータ部13Rを駆動する。
【0038】
DC-DCコンバータ部13Rは、コンデンサ12Rの電圧をDC-DC変換して出力する。DC-DCコンバータ部13Rの出力側には、出力電流Ioを検出する出力電流検出器3Rと、出力電圧Voを検出する出力電圧検出器4Rとを備えている。
【0039】
フィードバック制御回路14Rは、DC-DCコンバータ部13Rに接続され、出力電流Ioと出力電圧Voが入力される。フィードバック制御回路14Rは、出力電流Ioと出力電圧Voに基づいて、出力電圧Voが予め設定した基準電圧となるように電流制御指令値を生成する。この電流制御指令値は、フィードバック制御回路14R内の出力電流バランス部(後述)によって補正される。また、制御モードがY結線用制御モードの場合に、電流制御指令値は入力電圧バランス部15Rによっても補正される。DC-DCコンバータ部13Rのスイッチング素子は、この補正された電流制御指令値と出力電流Ioとの誤差がなくなるように制御される。
【0040】
図4は、RY部10R、力率改善コンバータ部(PFC)11R、DC-DCコンバータ部13Rの動作シーケンスを示す。このシーケンス制御はフィードバック制御回路14Rで行われる。
【0041】
時刻t1で電源が投入されると、RY部10Rの予備充電リレーRY2と電流制限抵抗R10とを介して、コンデンサ12Rに対する予備充電が行われる。このとき、力率改善コンバータ部(PFC)11Rはオフしている。入力電流は力率改善コンバータ部(PFC)11Rの前段で整流され、整流後の電流が後段のダイオードを通過してスイッチングされることなくそのままコンデンサ12Rに充電電流として流れる。入力電流の大きさは、電流制限抵抗R10で制限される。
【0042】
時刻t1で電源が投入された直後の時刻t2では、Δ・Y判定回路3において、Δ・Y切替回路部2の接点状態により、Δ接続状態(図1(A))なのかY接続状態(図1(B))なのかを判定する。Δ接続状態のときは「H」、Y接続状態のときは「L」をモジュール1R、1S、1Tに出力する。モジュール1R、1S、1Tは、「H」のときはY結線用制御モードをオフし、「L」のときはY結線用制御モードをオンする。上記の判定と、制御モードの設定は、それらの動作を行うのに十分な長さの時間T内に行われる。
【0043】
時間Tが経過した時刻t3になると、力率改善コンバータ部(PFC)11Rをオンし、ソフトスタートする(ソフトスタート動作)。ソフトスタートでは、力率改善コンバータ部(PFC)11Rの出力電流が急激に大きくならないため、コンデンサ12Rへの充電電流が時刻t1以降の予備充電電流から急激に増えることがない。このため、突入電流をより一層防止できる。
【0044】
時刻t4になると、DC-DCコンバータ部13Rの動作がスタートする。この時、コンデンサ12Rには十分に充電されている。
【0045】
以上の動作シーケンスにおいて、電源投入後に、Δ・Y判定回路3においてΔ接続状態かY接続状態かを判定して、その判定結果に基づいて、モジュール1R、1S、1TにおいてY結線用制御モードのオンまたはオフを設定する。したがって、万一、Δ・Y切替回路部2がY接続状態(図1(B))であるにもかかわらず、モジュール1R、1S、1TにおいてΔY結線用制御モードがオフであれば、モジュール1R、1S、1TはDC-DCコンバータ部13Rが動作スタートする前にY結線用制御モードがオンとなるように切り替えられる。
【0046】
次に、フィードバック制御回路14R、14S、14Tについて説明する。図5は、フィードバック制御回路14R、14S、14Tの構成図である。フィードバック制御回路14R、14S、14Tのそれぞれは同じ構成であるため、以下、フィードバック制御回路14Rについて説明する。
【0047】
フィードバック制御回路14Rは、出力端子aを備え、接続ライン5がこの出力端子aに接続されている。同様に、モジュール1Sのフィードバック制御回路14Sは、出力端子bを備え、接続ライン5がこの出力端子bに接続されている。同様に、モジュール1Tのフィードバック制御回路14Tは、出力端子cを備え、接続ライン5がこの出力端子cに接続されている。
【0048】
この接続ライン5は、モジュール1R、1S、1Tの各出力電流をバランスさせる出力電流バランス部に相当し、出力電流バランスが崩れそうになると電流制御指令値を補正する。
【0049】
フィードバック制御回路14Rは、3相並列運転電源装置の出力電圧Voが予め設定した基準電圧VREFとなるようにフィードバック制御を行う。フィードバック制御回路14Rは、電流制御指令値回路120RとPWM制御回路130Rとを備える。なお、フィードバック制御回路14Sは、電流制御指令値回路120SとPWM制御回路130Sとを備え、フィードバック制御回路14Tは、電流制御指令値回路120TとPWM制御回路130Tとを備えている。
【0050】
電流制御指令値回路120Rは、前記基準電圧VREFと前記出力電圧Voとの差に対応する電圧を前記出力電流Ioに対する電流制御指令値として出力する。この電流制御指令値は、出力電流バランス部を構成する接続ライン5によって補正され、また、後述するように、Y結線用制御モードがオンのときは入力電圧バランス部15Rによっても補正される。
【0051】
PWM制御回路130Rは、補正された電流制御指令値と出力電流Ioの差から電流制御値を演算し、これに基づいてスイッチング素子を駆動するPWM信号を生成する。
【0052】
電流制御指令値回路120Rは、基準電圧VREF設定部120と、第1エラー検出部121と、第1ゲイン制御部122と、抵抗分圧回路123と、第2エラー検出部124とを備える。
【0053】
PWM制御回路130Rは、第3エラー検出部130と、第2ゲイン制御部131と、PWM制御部132と、鋸歯状波発生回路133と、スイッチング制御部134とを備える。
【0054】
電流制御指令値回路120Rにおいて、第1エラー検出部121は、出力電圧検出器4Rで検出した出力電圧Voに対応する電圧と基準電圧VREFとを比較し、その差電圧を検出する。第1ゲイン制御部122は、前記差電圧を適切なゲインで増幅し、Vi_REF_1として出力する。
【0055】
抵抗分圧回路123は、前記Vi_REF_1を抵抗RaとRbで分圧する。この分圧した電圧は補正前の電流制御指令値に対応したものとなる。モジュール1S、1Tのフィードバック制御回路14S、14Tにおいても同様にVi_REF_2、Vi_REF_3を抵抗RaとRbで分圧する。この分圧した電圧は、モジュール1R、1S、1Tそれぞれにおいて出力され、これらが接続ライン5によって、アナログ的に平均化される(補正される)。すなわち、モジュール1R、1S、1Tの第1エラー検出部121から出力される電流制御指令値(に対応する電圧)は、平均化されて(補正されて)Vi_REF_AVEとして出力される。
【0056】
このように、モジュール1R、1S、1Tの抵抗分圧回路123で分圧された電圧は接続ライン5で同一電圧にされるため、各モジュール1R、1S、1Tの電流制御指令値は同一の値に制御される。すると、モジュール1R、1S、1Tのいずれかのモジュールの出力電流が増大して不平衡になろうとしても、元の状態に戻りバランスが保持される。
【0057】
第2エラー検出部124は、Vi_REF_AVEと入力電圧バランス部15Rからの出力電流補正値Vi_CORとの差電圧を検出し、接続ライン5で平均化された(補正された)電圧(電流制御指令値)Vi_REF_AVEを出力電流補正値Vi_CORによってさらに補正する。出力電流補正値Vi_CORは、入力電圧バランス部15Sの出力である。入力電圧バランス部15Sは、Y結線用制御モードがオンのときに作動する。
【0058】
図6は、入力電圧バランス部15Sのブロック図である。
【0059】
入力電圧バランス部15Rは、Δ・Y判定回路3から「L」を受けたときに、すなわち、モジュール1R、1S、1Tの結線状態がY結線であると判定されたときにY結線用制御モードとなって作動する。Y結線用制御モードは、Δ・Y判定回路3がモジュール1R、1S、1Tの結線状態がY結線であると判定し、「L」を出力したときにオンとなる。
【0060】
入力電圧バランス部15Rは、R相の入力電圧VIN1_DETと、S相の入力電圧VIN2_DETと、T相の入力電圧VIN3_DETとの平均を求め、R相の入力電圧VIN1_DETが平均よりも大きいか小さいかを判定する。その大きさに応じた出力電流補正値Vi_CORをフィードバック制御回路14Rに出力する。なお、モジュール1S内の入力電圧バランス部15Sと、モジュール1T内の入力電圧バランス部15Tも同様に、Y結線用制御モードとなった時に、R相の入力電圧VIN1_DETと、S相の入力電圧VIN2_DETと、T相の入力電圧VIN3_DETとの平均と大小を判定し、出力電流補正値Vi_CORをフィードバック制御回路14S、フィードバック制御回路14Tに出力する。
【0061】
PWM制御回路130Rにおいて、第3エラー検出部130は、電流制御指令値回路120Rから出力される電流制御指令値と、出力電流検出器3Rで検出した出力電流Ioに対応する電圧Vi_DETとを比較し、その差電圧を検出する。第2ゲイン制御部131は、前記差電圧を適切なゲインで増幅し、電流制御値Vi_Cとして出力する。
【0062】
電流制御値Vi_Cは、PWM制御部132に出力される。PWM制御部132には、鋸歯状波発生回路133から鋸歯状波が入力する。PWM制御部132は、前記電流制御値Vi_Cと前記鋸歯状波とを比較してPWM制御信号を出力する。スイッチング制御部134は、前記PWM制御信号に応じてDC-DCコンバータ部13Rのスイッチング素子のオン時間を変動させる。
【0063】
以上のように、Y結線用制御モードがオンに設定されると入力電圧バランス部15Rによってフィードバック制御回路14Rの電流制御指令値が補正される。このため、中性点なしY結線電源の場合に、Y結線用制御モードが自動的に確実にオンに設定されるため、入力電圧が不平衡状態に移行することを防止できる。
【0064】
なお、本実施形態では、出力電流バランス部を構成する接続ライン5を設けることで、モジュール1R、1S、1Tの各出力電流が不平衡になることも防止しているから、装置の動作をより一層安定化できる。
【符号の説明】
【0065】
1R、1S、1T・・・電力制御装置
12R、12S、12T・・・フィードバック制御回路
120R、120S、120T・・・電流制御指令値回路
15R、15S、15T・・・入力電圧バランス部
5・・・接続ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6