(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】電気光学素子のための複合基板
(51)【国際特許分類】
G02F 1/03 20060101AFI20220518BHJP
G02F 1/035 20060101ALI20220518BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20220518BHJP
C30B 29/30 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
G02F1/03 505
G02F1/035
G02B6/12 363
C30B29/30
(21)【出願番号】P 2020121585
(22)【出願日】2020-07-15
(62)【分割の表示】P 2020507295の分割
【原出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/011764
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 順悟
(72)【発明者】
【氏名】江尻 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山口 省一郎
(72)【発明者】
【氏名】多井 知義
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-349778(JP,A)
【文献】特許第6245587(JP,B1)
【文献】国際公開第2007/114367(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0297732(US,A1)
【文献】特開平06-289346(JP,A)
【文献】米国特許第06593212(US,B1)
【文献】R. Takei 他,Room-Temperature Direct Bonding for Integrated Optical Devices,LEOS 2007 - IEEE Lasers and Electro-Optics Society Annual Meeting Conference Proceedings,米国,IEEE,2007年10月21日,https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=4382337,DOI: 10.1109/LEOS.2007.4382337
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
G02B 6/12-6/14
C30B 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学素子のための複合基板であって、
電気光学効果を有する電気光学結晶基板と、
前記電気光学結晶基板が積層されているとともに、前記電気光学結晶基板よりも誘電率の低い低誘電率基板と、
前記低誘電率基板と前記電気光学結晶基板との間に位置しており、前記電気光学結晶基板よりも屈折率の低い低屈折率層と、
前記低誘電率基板と前記低屈折率層との間に位置しているアモルファス層と、
前記低誘電率基板と前記アモルファス層との間に位置しており、前記電気光学結晶基板よりも屈折率の低い第2低屈折率層と、
を備え、
前記低屈折率層と前記第2低屈折率層とのそれぞれは、主体層と、前記主体層とは異なる材料で構成された接合層とを有し、
前記アモルファス層は、前記低屈折率層
の前記接合層を構成する元素と前記第2低屈折率層
の前記接合層を構成する元素とで構成されている、
複合基板。
【請求項2】
前記低屈折率層は、前記電気光学結晶基板よりも誘電率が低い、請求項1に記載の複合基板。
【請求項3】
前記低屈折率層
の主体層は、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、ガラス、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムのうちの少なくとも一つで構成されている、請求項2に記載の複合基板。
【請求項4】
前記低誘電率基板の比誘電率は、5以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合基板。
【請求項5】
前記第2低屈折率層
の主体層を構成する材料は、前記低屈折率層
の主体層を構成する材料と同じである、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合基板。
【請求項6】
前記電気光学結晶基板の表面には、リッジ部が形成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の複合基板。
【請求項7】
前記電気光学結晶基板のc軸は、前記電気光学結晶基板に対して平行であり、
前記リッジ部の一方の側面に設けられた第1の電極と、前記リッジ部の他方の側面に設けられ、前記リッジ部を挟んで前記第1の電極に対向する第2の電極とをさらに備える、請求項6に記載の複合基板。
【請求項8】
前記電気光学結晶基板のc軸は、前記電気光学結晶基板に対して垂直であり、
前記リッジ部の頂上面に設けられた第1の電極と、前記電気光学結晶基板の表面のうちの前記リッジ部の部分を除いた範囲に設けられた第2の電極とをさらに備える、請求項6に記載の複合基板。
【請求項9】
前記リッジ部内には、不純物を含有する光導波路領域が、前記リッジ部の長手方向に沿って形成されている、請求項6から8のいずれか一項に記載の複合基板。
【請求項10】
電気光学素子のための複合基板の製造方法であって、
電気光学効果を有する電気光学結晶基板の主表面に、前記電気光学結晶基板よりも屈折率の低い低屈折率層を成膜する工程と、
前記電気光学結晶基板よりも誘電率の低い低誘電率基板の主表面に、前記電気光学結晶基板よりも屈折率の低い第2低屈折率層と、を成膜する工程と、
前記低屈折率層が成膜された前記電気光学結晶基板の前記主表面に、前記第2低屈折率層が成膜された前記低誘電率基板の前記主表面を直接接合する工程と、
を備え
、
前記低屈折率層と前記第2低屈折率層とのそれぞれは、主体層と、前記主体層とは異なる材料で構成された接合層とを有し、
前記直接接合する工程では、
前記低屈折率層の前記接合層と前記第2低屈折率層の前記接合層との間が直接接合によって接合される、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、電気光学効果を利用する電気光学素子(例えば、光変調器)のための複合基板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば光変調器といった電気光学素子が知られている。電気光学素子は、電気光学効果を利用して、電気信号を光信号に変換することができる。電気光学素子は、例えば光電波融合通信に採用されており、高速かつ大容量な通信を実現するために、その開発が進められている。
【0003】
例えば、特開2010-85789号公報に、光変調器が開示されている。この光変調器は、電気光学効果を有する電気光学結晶基板を備えており、その内部に光導波路が形成されている。電気光学結晶基板には、電気光学結晶基板よりも誘電率の低い補強基板が接合されている。この補強基板は、電気光学結晶基板を機械的に補強するだけでなく、誘電損失を低減することによって、光変調器の高速動作や低電圧での駆動を容易とする。このような電気光学結晶基板と低誘電率基板とを組み合わせた複合基板は、光変調器だけでなく、様々な電気光学素子にも好適に採用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の複合基板では、電気光学結晶基板と低誘電率基板との間が、接着剤によって接合されている。このような構成であると、接着剤が経時的に劣化することによって、複合基板に剥離が生じることや、さらにこの剥離が原因でクラックといった損傷が生じることがある。このような問題を避けるために、接着剤を用いることなく、電気光学結晶基板と低誘電率基板とを直接接合することが考えられる。しかしながら、電気光学結晶基板と低誘電率基板とを直接接合すると、電気光学結晶基板と低誘電率基板との間には、電気光学結晶基板の元素と低誘電率基板の元素から構成されるアモルファス層が形成される。このアモルファス層は結晶性がなく、光学物性も双方の基板とは異なり、電気光学結晶基板とアモルファス層との間の界面も平坦ではない。このような平坦でない界面は、電気光学結晶基板を伝わる光を、散乱(例えば、乱反射や漏出)、吸収させるおそれがある。
【0005】
従って、本明細書は、上述した問題を回避又は低減し得る複合基板及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、電気光学素子のための複合基板を開示する。この複合基板は、電気光学効果を有する電気光学結晶基板と、電気光学結晶基板が積層されているとともに、電気光学結晶基板よりも誘電率の低い低誘電率基板と、低誘電率基板と電気光学結晶基板との間に位置しており、電気光学結晶基板よりも屈折率の低い低屈折率層と、低誘電率基板と低屈折率層との間に位置しており、低誘電率基板を構成する元素と低屈折率層を構成する元素とで構成されたアモルファス層とを備える。
【0007】
上記した複合基板は、次の製造方法によって製造することができる。この製造方法は、電気光学効果を有する電気光学結晶基板の主表面上に、電気光学結晶基板よりも屈折率の低い低屈折率層を成膜する工程と、低屈折率層が成膜された電気光学結晶基板の主表面に、電気光学結晶基板よりも誘電率の低い低誘電率基板を直接接合する工程とを備える。ここでいう直接接合とは、接合される二つの部材の間で原子が拡散し合い、それらの原子間で共有結合が形成される接合を意味する。
【0008】
上記した製造方法によると、接着剤を必要とすることなく、電気光学結晶基板と低誘電率基板とが積層された複合基板を製造することができる。製造された複合基板では、直接接合に起因するアモルファス層が、低誘電率基板と低屈折率層との間に形成される。即ち、アモルファス層と電気光学結晶基板との間には低屈折率層が介在し、アモルファス層が電気光学結晶基板に接しない。従って、電気光学結晶基板を伝わる光が、アモルファス層やこのアアモルファス層と電気光学結晶基板との間の平坦でない界面で、散乱又は吸収されることがない。加えて、電気光学結晶基板に接する低屈折率層は、電気光学結晶基板よりも屈折率が低いことから、光ファイバにおけるクラッドのように、電気光学結晶基板を伝わる光の漏出を抑制することができる。この複合基板を用いることで、高速動作や低電圧での駆動を可能とする電気光学素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例の複合基板10を模式的に示す斜視図。
【0010】
【
図2】実施例の複合基板10の断面構造を模式的に示す図。
【0011】
【
図3】実施例の複合基板10の製造方法の一工程を示す図。
【0012】
【
図4】実施例の複合基板10の製造方法の一工程を示す図。
【0013】
【
図5】実施例の複合基板10の製造方法の一工程を示す図。
【0014】
【
図6】複合基板10の一変形例を示しており、電気光学結晶基板12に電界を形成する電極32、34と、電気光学結晶基板12内に設けられた光導波路領域36が付加されている。
【0015】
【
図7】複合基板10の一変形例を示しており、低誘電率基板14とアモルファス層18との間に第2低屈折率層20が付加されている。
【0016】
【
図8】
図7に示す変形例の複合基板10の製造方法を示す図。
【0017】
【
図9】複合基板10の一変形例を示しており、電気光学結晶基板12の上面12aにリッジ部13が形成されている。
【0018】
【
図10】複合基板10の一変形例を示しており、
図9に示す変形例と比較して、第1の電極42及び第2の電極44が付加されている。なお、この変形例では、電気光学結晶基板12のc軸(c-axis)が、電気光学結晶基板12に対して平行である。
【0019】
【
図11】複合基板10の一変形例を示しており、
図10に示す変形例と比較して、低誘電率基板14の下面14bに沿って導電層22が付加されている。
【0020】
【
図12】複合基板10の一変形例を示しており、
図11に示す変形例と比較して、導電層22に接合された支持基板24が付加されている。
【0021】
【
図13】複合基板10の一変形例を示しており、
図9に示す変形例と比較して、第1の電極52及び第2の電極54が付加されている。なお、この変形例では、電気光学結晶基板12のc軸(c-axis)が、電気光学結晶基板12に対して垂直である。
【0022】
【
図14】複合基板10の一変形例を示しており、
図13に示す変形例と比較して、低誘電率基板14の下面14bに沿って導電層22が付加されている。
【0023】
【
図15】複合基板10の一変形例を示しており、
図14に示す変形例と比較して、導電層22に接合された支持基板24が付加されている。
【0024】
【
図16】複合基板10の一変形例を示しており、
図9に示す変形例と比較して、リッジ部13内に光導波路領域56が付加されている。
【0025】
【
図17】複合基板10の一変形例を示しており、
図13に示す変形例と比較して、リッジ部13内に光導波路領域56が付加されている。
【0026】
【
図18】複合基板10の一変形例を示しており、
図14に示す変形例と比較して、リッジ部13内に光導波路領域56が付加されている。
【0027】
【
図19】複合基板10の一変形例を示しており、
図15に示す変形例と比較して、リッジ部13内に光導波路領域56が付加されている。
【0028】
【
図20】複合基板10の一変形例を示しており、低屈折率層16が主体層16aと表面層16bとを含む多層構造を有する。
【0029】
【
図21】
図20に示す複合基板10の製造方法の一工程(直接接合)を説明する図。
【0030】
【
図22】複合基板10の一変形例を示しており、第2低屈折率層20が主体層20aと表面層20bとを含む多層構造を有する。
【0031】
【
図23】
図22に示す複合基板10の製造方法の一工程(直接接合)を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本技術の一実施形態において、低屈折率層は、電気光学結晶基板よりも誘電率が低くてもよい。このような構成によると、低屈折率層における誘電損失を低減することができ、電気光学素子の高速動作や低電圧での駆動をさらに容易とすることができる。特に限定されないが、低屈折率層は、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、ガラス、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムのうちの少なくとも一つで構成されることができる。
【0033】
本技術の一実施形態において、複合基板は、低誘電率基板とアモルファス層との間に位置しており、電気光学結晶基板よりも屈折率の低い第2低屈折率層をさらに備えてもよい。この場合、アモルファス層は、低誘電率基板を構成する元素に代えて、低屈折率層を構成する元素と第2低屈折率層を構成する元素とで構成されているとよい。このような複合基板は、低屈折率層が成膜された電気光学結晶基板に、第2低屈折層が成膜された低誘電率基板を、直接接合して製造することができる。このとき、低屈折率層と第2低屈折率層との各材料が同一、又は構造が類似していると、高品質の直接接合を比較的に容易に行うことができる。
【0034】
本技術の一実施形態において、電気光学結晶基板の表面には、リッジ部が形成されていてもよい。複合基板にリッジ部が予め形成されていると、リッジ型光導波路を必要とする電気光学素子の製造を、容易に行うことができる。なお、リッジ部に加えて、又は代えて、電気光学結晶基板には、不純物(例えばチタン又は亜鉛)がドーピングされた光導波路領域が形成されていてもよい。但し、不純物がドーピングされた光導波路領域は、不純物のドーピングによる屈折率の段差が小さく、光の閉じ込め効果が小さいので、光の近視野像(ニアフィールド径)は比較的に大きくなる。その結果、複合基板から製造される電気光学素子では、電界効率が低下することから、必要とされる駆動電圧が大きくなる。このため素子サイズも大きくなる。電気光学素子の低駆動電圧化や小型化の観点では、リッジ型光導波路の方が好ましい。
【0035】
上記した実施形態において、電気光学結晶基板のc軸(即ち、結晶主軸)が、電気光学結晶基板に対して平行であってもよい。即ち、電気光学結晶基板は、xカットの基板であってもよい。この場合、複合基板は、リッジ部の一方の側面に設けられた第1の電極と、リッジ部の他方の側面に設けられ、リッジ部を挟んで第1の電極に対向する第2の電極とをさらに備えてもよい。これらの第1及び第2の電極は、複合基板から電気光学素子を製造するときに、リッジ型光導波路へ電気信号(即ち、電界)を加える電極として利用することができる。
【0036】
あるいは、電気光学結晶基板のc軸(即ち、結晶主軸)が、電気光学結晶基板に対して垂直であってもよい。即ち、電気光学結晶基板は、zカットの基板であってもよい。この場合、複合基板は、リッジ部の頂上面に設けられた第1の電極と、電気光学結晶基板の表面のうちのリッジ部の部分を除いた範囲に設けられた第2の電極とをさらに備えてもよい。これらの第1及び第2の電極は、複合基板から電気光学素子を製造するときに、リッジ型光導波路へ電気信号(即ち、電界)を加える電極として利用することができる。
【0037】
複合基板が第1の電極と第2の電極を有する実施形態では、第1の電極と電気光学結晶基板との間と、第2の電極と前記電気光学結晶基板との間との少なくとも一方に、電気光学結晶基板よりも屈折率の低い低屈折率膜が形成されていてもよい。このような構成によると、電気光学結晶基板と第1の電極(又は第2の電極)との間の界面において、電気光学結晶基板を伝わる光が電極で吸収や散乱されることを抑制することができる。
【0038】
電気光学結晶基板がリッジ部を有する実施形態では、不純物を含有する光導波路領域が、リッジ部の長手方向に沿って形成されていてもよい。このような構成によると、リッジ部を変更することなく、不純物をドーピングする領域を変更することによって、所望の光導波路を容易に形成することができる。
【0039】
本技術の一実施形態において、複合基板は、低誘電率基板に対して電気光学結晶基板とは反対側に位置する導電層をさらに備えてもよい。このような導電層は、複合基板から製造された電気光学素子において、低誘電率基板から電界が漏れ出ることを抑制することができる。
【0040】
上記した実施形態において、複合基板は、導電層に接合された支持基板をさらに備えてもよい。このような構成によると、支持基板によって複合基板の機械的な強度を維持しながら、電気光学結晶基板及び低誘電率基板の厚みを小さくすることができる。複合基板から製造された電気光学素子では、電気光学結晶基板及び低誘電率基板の厚みが小さくなるほど、電気信号が複合基板内で共振する周波数(共振周波数)を高周波側にシフトすることができる。例えば、電気光学結晶基板及び低誘電率基板の合計の厚みが60マイクロメートル以下であれば、共振周波数は300ギガヘルツ以上となる。この場合、電気光学素子は、100ギガヘルツといった高周波(いわゆるミリ波帯)の電気信号が基板共振によって減衰する問題を回避することができる。
【0041】
以下では、本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された複合基板、並びにそれらの使用及び製造方法を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
【0042】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本発明を実施する際に必須のものではなく、特に本発明の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本発明の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0043】
本明細書及び/又はクレームに記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【実施例】
【0044】
図面を参照して、実施例の複合基板10とその製造方法について説明する。本実施例の複合基板10は、例えば光変調器といった、各種の電気光学素子に採用することができる。
図1に示すように、本実施例の複合基板10は、いわゆるウエハの形態で製造され、電気光学素子の製造者へ提供される。一例ではあるが、複合基板10の直径は、およそ10センチ(4インチ)である。通常、一枚の複合基板10から、複数の電気光学素子が製造される。なお、複合基板10は、ウエハの形態に限定されず、様々な形態で製造され、提供されてもよい。
【0045】
図1、
図2に示すように、複合基板10は、電気光学結晶基板12を備える。電気光学結晶基板12は、外部に露出する上面12aと、複合基板10内に位置する下面12bとを有する。電気光学結晶基板12の一部又は全部は、複合基板10から製造される電気光学素子において、光を伝える光導波路となる。電気光学結晶基板12は、電気光学効果を有する材料の結晶で構成されている。詳しくは、電気光学結晶基板12に電界が印加されると、電気光学結晶基板12の屈折率が変化する。特に、電気光学結晶基板12のc軸に沿って電界が印加されると、電気光学結晶基板12の屈折率は大きく変化する。ここで、電気光学結晶基板12のc軸は、電気光学結晶基板12に平行であってもよい。即ち、電気光学結晶基板12は、例えばxカット又はyカットの基板であってもよい。あるいは、電気光学結晶基板12のc軸は、電気光学結晶基板12に垂直であってもよい。即ち、電気光学結晶基板12は、例えばzカットの基板であってもよい。電気光学結晶基板12の厚みT2は、特に限定されないが、例えば1マイクロメートル以上であって、50マイクロメートル以下であってよい。
【0046】
電気光学結晶基板12を構成する材料は、特に限定されないが、ニオブ酸リチウム(LiNbO3:LN)、タンタル酸リチウム(LiTaO3:LT)、チタン酸リン酸カリウム(KTiOPO4:KTP)、ニオブ酸カリウム・リチウム(KxLi(1-x)NbO2:KLN)、ニオブ酸カリウム(KNbO3:KN)、タンタル酸・ニオブ酸カリウム(KNbxTa(1-x)O3:KTN)、ニオブ酸リチウムとタンタル酸リチウムとの固溶体のいずれかであってよい。なお、電気光学結晶基板12は、屈折率に加えて、又は代えて、他の光学定数を変化させる電気光学効果を有してもよい。
【0047】
複合基板10は、低誘電率基板14をさらに備える。低誘電率基板14は、複合基板10内に位置する上面14aと、外部に露出する下面14bとを有する。低誘電率基板14には、その上面14a側に、上述した電気光学結晶基板12が積層されている。低誘電率基板14は、電気光学結晶基板12よりも誘電率の低い材料で構成されている。低誘電率基板14の誘電率(比誘電率)は、特に限定されないが、5以下であるとよい。例として、低誘電率基板14を構成する材料には、例えば石英やガラスが挙げられる。低誘電率基板14の厚みT4も、特に限定されないが、電気光学結晶基板12の厚みT2より大きくてもよい。電気光学結晶基板12に隣接する低誘電率基板14は、電気光学結晶基板12へ電界が印加されたときに、誘電損失を低減することができる。従って、複合基板10を用いることにより、高速動作や低電圧での駆動が可能な電気光学素子を製造することができる。
【0048】
複合基板10は、低屈折率層16をさらに備える。低屈折率層16は、電気光学結晶基板12の下面12bに沿って設けられており、低誘電率基板14と電気光学結晶基板12との間に位置している。低屈折率層16は、電気光学結晶基板12よりも低い屈折率を有する。これにより、電気光学結晶基板12の下面12b(即ち、低屈折率層16に接する界面)では、電気光学結晶基板12を伝わる光が全反射されやすく、電気光学結晶基板12から漏れ出すことが抑制される。低屈折率層16を構成する材料は、特に限定されないが、例えば酸化シリコン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、ガラス、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムの一又は複数であってよい。低屈折率層16の厚みT6も、特に限定されないが、例えば0.3マイクロメートル以上であって、1マイクロメートル以下であってもよい。一例ではあるが、本実施例における低屈折率層16は、誘電損失の抑制や電気信号の実効誘電率を小さくし、効率よく光変調できるように、電気光学結晶基板12よりも誘電体損(tanδ)又は誘電率が低い材料で構成されている。
【0049】
複合基板10は、アモルファス層18をさらに備える。アモルファス層18は、低誘電率基板14と低屈折率層16との間に位置している。アモルファス層18は、アモルファス構造を有しており、低誘電率基板14を構成する元素と、低屈折率層16を構成する元素とで構成されている。アモルファス層18の厚みT8は、特に限定されないが、0.5ナノメートル以上であって、100ナノメートル以下であってよい。後述するように、複合基板10は、低屈折率層16が成膜された電気光学結晶基板12に、低誘電率基板14を直接接合することによって、製造することができる。アモルファス層18は、この直接接合において生成される層であり、低屈折率層16及び低誘電率基板14の原子がそれぞれ拡散することによって形成される。従って、アモルファス層18の上面18a(即ち、低屈折率層16に接する界面)、及び、アモルファス層18の下面18b(即ち、低誘電率基板14に接する界面)は、必ずしも平坦ではない。
【0050】
一般に、直接接合に起因するアモルファス層は、その上下に位置する材料を構成する元素から構成され、結晶性がなく、外部から異なる元素が取り込まれることもあり、光学特性が上下に位置する材料と異なる。またアモルファス層の界面が平坦でなく、光学的に吸収や散乱が生じ得る。このため、仮に、アモルファス層18が電気光学結晶基板12へ直接接触していると、電気光学結晶基板12を伝わる光が、アモルファス層18によって減衰する。これに対して、本実施例の複合基板10では、アモルファス層18と電気光学結晶基板12との間に影響されない厚みの低屈折率層16が介在しており、アモルファス層18が電気光学結晶基板12に接していない。従って、電気光学結晶基板12を伝わる光が、アモルファス層18やこの上面18aで散乱されることがない。加えて、電気光学結晶基板12に接する低屈折率層16は、電気光学結晶基板12よりも屈折率が低いことから、光ファイバにおけるクラッドのように、電気光学結晶基板12を伝わる光の漏出を抑制し、光導波路伝搬することができる。
【0051】
以上のように、本実施例の複合基板10では、電気光学結晶基板12に隣接して低誘電率基板14が設けられているので、電気光学結晶基板12へ電界が印加されたときに、誘電損失を低減することができる。また、電気光学結晶基板12と低誘電率基板14との間は、接着剤を用いることなく直接接合されているので、接着剤による誘電損失がなく、変質及び変形もないので信頼性も確保できる。そして、直接接合に起因するアモルファス層18は、低屈折率層16によって電気光学結晶基板12から隔てられているので、電気光学結晶基板12を伝わる光は、損失なく出力側へ伝搬されることができる。
【0052】
次に、
図3-
図5を参照して、複合基板10の製造方法について説明する。先ず、
図3に示すように、電気光学結晶基板12を用意する。電気光学結晶基板12は、xカット又はyカットの基板(c軸が基板に平行)であってもよいし、分極反転部が形成される場合はc軸が基板の水平面と10°以内の角度を成すオフセット基板であってもよい。あるいは、zカットの基板(c軸が基板に垂直)であってもよい。次に、
図4に示すように、電気光学結晶基板12の下面12bに、低屈折率層16を成膜する。低屈折率層16の成膜は、特に限定されないが、蒸着(物理蒸着又は化学蒸着)によって行うことができる。なお、電気光学結晶基板12の下面12bは、電気光学結晶基板12の一方の主表面である。次に、
図5に示すように、低誘電率基板14を用意し、低屈折率層16が成膜された電気光学結晶基板12の下面12bに、低誘電率基板14を直接接合する。このとき、低誘電率基板14と低屈折率層16との間に、前述したアモルファス層18が形成される。これにより、
図1、
図2に示す複合基板10が製造される。
【0053】
上記した直接接合について、具体的な手順や加工条件は特に限定されない。互いに接合される層又は基板の各材料に応じて、適宜定めることができる。一例ではあるが、本実施例の製造方法では、先ず、高真空チャンバー内(例えば、1×10-6パスカル程度)において、各接合面に中性化ビームを照射する。これより、各接合面が活性化される。次いで、真空雰囲気で、活性化された接合面同士を接触させ、常温で接合する。この接合時の荷重は、例えば、100~20000ニュートンとすることができる。この製造方法において、中性化ビームによる表面活性化を行う際には、チャンバーに不活性ガスを導入し、チャンバー内に配置した電極へ、直流電源から高電圧を印加する。これにより、電極(正極)とチャンバー(負極)との間に生じる電界により、電子が運動して、不活性ガスによる原子とイオンのビームが生成される。グリッドに達したビームのうち、イオンビームはグリッドで中和されるので、中性原子のビームが高速原子ビーム源から出射される。ビームを構成する原子種は、不活性ガス元素(例えば、アルゴン(Ar)、窒素(N)等)が好ましい。ビーム照射による活性化時の電圧は0.5~2.0キロボルト、電流は50~200ミリアンペアとすることができる。
【0054】
図6に示すように、複合基板10には、電気光学結晶基板12に電界を形成するための電極32、34が、電気光学結晶基板12の上面12aに設けられてもよい。電極32、34を構成する材料は、導電体であればよく、例えば金といった金属であってよい。電極32、34と電気光学結晶基板12との間には、電極32、34のはがれ防止やマイグレーションを防止するために、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)等の層が介在してもよい。電極32、34の数、位置、形状については、特に限定されない。例えば、電極32、34の数については、複合基板10から製造される電気光学素子の数や、各々の電気光学素子が必要とする電極32、34の数に応じて、適宜定めることができる。複合基板10に電極32、34が予め設けられていると、電気光学素子の製造者は、複合基板10から電気光学素子を容易に製造することができる。
【0055】
加えて、又は代えて、電気光学結晶基板12内には、不純物をドーピングすることによって、光導波路領域36が設けられてもよい。電気光学結晶基板12では、チタン又は亜鉛といった特定の不純物をドーピングすることで、屈折率を選択的に(即ち、局所的に)高めることができ、これによって光導波路領域36を形成することができる。光導波路領域36の数、位置、形状についても、特に限定されない。例えば、光導波路領域36の数については、複合基板10から製造される電気光学素子の数や、各々の電気光学素子が必要とする光導波路領域36の数に応じて、適宜定めることができる。複合基板10に光導波路領域36が予め設けられていると、電気光学素子の製造者は、複合基板10から電気光学素子を容易に製造することができる。
【0056】
図7に示すように、複合基板10には、第2低屈折率層20がさらに設けられてもよい。第2低屈折率層20は、低誘電率基板14とアモルファス層18との間に位置しており、電気光学結晶基板12よりも屈折率の低い材料で構成されている。また、第2低屈折率層20は、誘電損失を抑制するために、電気光学結晶基板12よりも誘電率の低い材料で構成されてもよい。第2低屈折率層20は、例えば、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、ガラス、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムのうちの少なくとも一つで構成されることができる。第2低屈折率層20は、低屈折率層16と同じ材料で構成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。
【0057】
図8は、
図7に示す複合基板10の製造方法を示す。
図8に示すように、第2低屈折率層20を有する複合基板10は、低屈折率層16が成膜された電気光学結晶基板12の下面12bに、第2低屈折率層20が成膜された低誘電率基板14を直接接合すことによって、製造することができる。この製造方法によると、低屈折率層16と第2低屈折率層20との間に、
図7に示すアモルファス層18が形成される。ここで、低屈折率層16と第2低屈折率層20との材料が同一、又は構造が類似していると、高品質の直接接合を比較的に容易に行うことができる。
【0058】
図9に示すように、電気光学結晶基板12の上面12aには、リッジ部13が形成されてもよい。リッジ部13は、上面12aに沿って細長く延びる突出部である。リッジ部13は、複合基板10が製造される電気光学素子において、リッジ型光導波路を構成する。複合基板10にリッジ部13が予め形成されていると、リッジ型光導波路を必要とする電気光学素子の製造を、容易に行うことができる。リッジ部13の幅Wは、特に限定されないが、1マイクロメートル以上であって、10マイクロメートル以下であってよい。リッジ部13の高さT1についても、特に限定されないが、電気光学結晶基板12の厚みT2の10パーセント以上であって、95パーセント以下であってよい。リッジ部13の数、位置、形状についても、特に限定されない。一例ではあるが、複合基板10がマッハツェンダー型の電気光学変調器の製造に用いられるときは、少なくとも一部が平行に延びる二つのリッジ部13が形成されるとよい。
【0059】
図10に示すように、リッジ部13を有する複合基板10には、第1の電極42及び第2の電極44がさらに設けられてもよい。ここで、電気光学結晶基板12のc軸(c-axis)が、電気光学結晶基板12に対して平行である場合、第1の電極42はリッジ部13の一方の側面13aに設けられるとよい。そして、第2の電極44は、リッジ部13の他方の側面13bに設けられ、リッジ部13を挟んで第1の電極42に対向するとよい。このような構成によると、電気光学素子において光導波路となるリッジ部13に対して、第1の電極42及び第2の電極44はc軸と平行に電界を印加することができる。第1の電極42及び第2の電極44を構成する材料は、導電体であればよく、例えば金といった金属材料であってよい。また、第1の電極42と電気光学結晶基板12や、第2の電極44と電気光学結晶基板12との間には、電気光学結晶基板12よりも屈折率の低い低屈折率膜が設けられてもよい。このような低屈折率膜は、クラッド層として機能し、リッジ部13を伝わる光の損失を抑制することができる。
【0060】
図11に示すように、複合基板10には、低誘電率基板14の下面14bに沿って、導電層22が設けられてもよい。このような導電層22は、複合基板10から製造された電気光学素子において、接地電極として使用されることができる。この場合、導電層22は、第1の電極42及び第2の電極44によって印加された電界が、低誘電率基板14の下面14bから漏出することを抑制することができる。導電層22を構成する材料は、導電体であればよく、例えば金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、プラチナ(Pt)、又は、それらのうちの少なくとも二つを含む合金の層を有してもよい。導電層22は、単層構造であってもよいし、多層構造を有してもよい。導電層22は、低誘電率基板14と接触する下地層として、導電層22のはがれやマイグレーションを防止するために、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)等の層を有してもよい。なお、
図11に示す導電層22は、上述した他の複合基板10にも同様に設けることができる。
【0061】
加えて、
図12に示すように、複合基板10には、導電層22に接合された支持基板24をさらに備えてもよい。このような構成によると、支持基板24によって複合基板10の機械的な強度を維持しながら、電気光学結晶基板12及び低誘電率基板14の厚みを小さくすることができる。複合基板10から製造された電気光学素子では、電気光学結晶基板12及び低誘電率基板14の厚みが小さくなるほど、電気信号に対する共振周波数が高くなる。例えば、電気光学結晶基板12及び低誘電率基板14の合計の厚みが60マイクロメートル以下であれば、共振周波数は300ギガヘルツ以上となる。この場合、電気光学素子は、100ギガヘルツといった高周波(いわゆるミリ波帯)の電気信号を問題なく処理することができる。
【0062】
支持基板24を構成する材料は特に限定されない。例えば、支持基板24は、シリコン(Si)、ガラス、サイアロン(Si
3N
4-Al
2O
3)、ムライト(3Al
2O
3・2SiO
2,2Al
2O
3・SiO
2)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(Si
3N
4)、酸化マグネシウム(MgO)、サファイア、石英、水晶、窒化ガリウム(GaN)、炭化シリコン(SiC)、酸化ガリウム(Ga
2O
3)のうちのいずれかの基板であってよい。但し、複合基板10の熱変形(特に反り)を抑制するために、支持基板24を構成する材料の線膨張係数は、電気光学結晶基板12を構成する材料の線膨張係数に近いほどよい。特に限定されないが、支持基板24を構成する材料の線膨張係数は、電気光学結晶基板12を構成する材料の線膨張係数の±50パーセント以内であるとよい。一例ではあるが、支持基板24を構成する材料は、電気光学結晶基板12を構成する材料と同じであってもよい。なお、
図12に示す支持基板24は、導電層22と共に、上述した他の複合基板10にも同様に設けることができる。
【0063】
図12に示す複合基板10の製造方法では、導電層22と支持基板24との間を、直接接合によって接合してもよい。この場合、導電層22の表層は、白金で構成されていてもよい。白金は直接接合に適した材料である。そのことから、導電層22の表層が白金で構成されていていると、導電層22が成膜された電気光学結晶基板12を、支持基板24に対して良好に直接接合することができる。この場合、製造後の複合基板10では、導電層22と支持基板24との間に、直接接合に起因するアモルファス層が形成される。このアモルファス層は、導電層22を構成する元素(主に白金)と、支持基板24を構成する元素とで構成される。
【0064】
図13に示すように、電気光学結晶基板12のc軸(c-axis)は、電気光学結晶基板12に対して垂直であってもよい。この場合でも、電気光学結晶基板12の上面12aには、リッジ部13が形成されてもよい。また、電気光学結晶基板12の上面12aには、第1の電極52及び第2の電極54が設けられてもよい。但し、第1の電極52は、リッジ部13の頂上面13cに設けられるとよく、第2の電極54は、電気光学結晶基板12の上面12aのうちのリッジ部13の部分を除いた範囲に設けられるとよい。このような構成によると、電気光学素子において光導波路となるリッジ部13に対して、第1の電極52及び第2の電極54はc軸と平行に電界を印加することができる。
【0065】
図14に示すように、
図13に示した複合基板10にも、低誘電率基板14の下面14bに沿って、導電層22が設けられてもよい。前述したように、導電層22は、複合基板10から製造された電気光学素子において、接地電極として使用されることができる。また、
図15に示すように、その導電層22には、
図12に示した複合基板10と同様に、支持基板24が接合されてもよい。これにより、複合基板10の機械的な強度を維持しながら、電気光学結晶基板12及び低誘電率基板14の厚みを小さくすることができる。前述したように、電気光学結晶基板12及び低誘電率基板14の厚みを小さくすることで、電気信号に対する共振周波数を、例えばミリ波帯といった高周波帯域よりも十分に高くすることができる。
図15に示す複合基板10の製造方法においても、導電層22と支持基板24との間は、直接接合によって接合することができる。この場合、前述したように、導電層22の表層が白金で構成されていると、導電層22と支持基板24との直接接合を良好に行うことができる。
【0066】
図16-
図19に例示するように、本明細書が開示する各種の複合基板10では、不純物を含有する光導波路領域56が、リッジ部13の内部において、リッジ部13の長手方向に沿って形成されていてもよい。なお、
図16に示す複合基板10は、
図9に示す複合基板10において、リッジ部13内に光導波路領域56が付加されたものである。
図17に示す複合基板10は、
図13に示す複合基板10において、リッジ部13内に光導波路領域56が付加されたものである。
図18に示す複合基板10は、
図14に示す複合基板10において、リッジ部13内に光導波路領域56が付加されたものである。そして、
図19に示す複合基板10は、
図15に示す複合基板10において、リッジ部13内に光導波路領域56が付加されたものである。図示省略するが、
図10-
図12に示す他の複合基板10においても同様に、不純物を含有する光導波路領域が、リッジ部13の内部において、リッジ部13の長手方向に沿って形成されていてもよい。
【0067】
図20に示すように、複合基板10の低屈折率層16は、主体層16aと接合層16bとを含む多層構造を有してもよい。接合層16bは、主体層16aとアモルファス層18との間に位置し、アモルファス層18に接する層である。主体層16aを構成する材料には、前述したように、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、ガラス、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムの一又は複数であってよい。一方、接合層16bを構成する材料については、例えば酸化タンタル(Ta
2O
5)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化チタン(TiO
2)といった、直接接合に適した材料であるとよい。このような構成によると、
図21に示すように、接合層16bを有する低屈折率層16を、低誘電率基板14に対して良好に直接接合することができる。なお、多層構造を有する低屈折率層16は、本明細書で開示される全ての実施形態において採用することができる。
【0068】
図22に示すように、複合基板10が第2低屈折率層20をさらに備える場合は、第2低屈折率層20についても、主体層20aと接合層20bとを含む多層構造を有してもよい。接合層20bは、主体層20aとアモルファス層18との間に位置し、アモルファス層18に接する層である。上述したように、接合層20bを構成する材料は、例えば酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化チタンといった、直接接合に適した材料であるとよい。このような構成によると、
図23に示すように、電気光学結晶基板12側の低屈折率層16を、接合層20bを有する第2低屈折率層16に対して良好に直接接合することができる。なお、
図22、
図23に示す例において、電気光学結晶基板12側の低屈折率層16は、単層構造であってもよく、接合層16bを有さなくてもよい。なお、多層構造を有する低屈折率層20は、本明細書で開示される全ての実施形態において採用することができる。
【符号の説明】
【0069】
10:複合基板
12:電気光学結晶基板
13:リッジ部
13a、13b:リッジ部の側面
13c:リッジ部の頂上面
14:低誘電率基板
16:低屈折率層
18:アモルファス層
20:第2低屈折率層
22:導電層
24:支持基板
32、34、42、44、52、54:電極
36、56:光導波路領域