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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】3D成形可能なシート材料
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/18 20060101AFI20220518BHJP
   D21H 17/63 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
D21H11/18
D21H17/63
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020158514
(22)【出願日】2020-09-23
(62)【分割の表示】P 2019154559の分割
【原出願日】2016-10-13
(65)【公開番号】P2021001430
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2020-10-20
(31)【優先権主張番号】16166349.7
(32)【優先日】2016-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】15189863.2
(32)【優先日】2015-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516341914
【氏名又は名称】ファイバーリーン テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・フンツィカー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ゲイン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・クリツィンガー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒェル・シェンカー
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-522145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0371172(US,A1)
【文献】特表2013-542335(JP,A)
【文献】特開昭62-184197(JP,A)
【文献】特表2006-503997(JP,A)
【文献】特開2007-016380(JP,A)
【文献】特開2008-127693(JP,A)
【文献】特開2002-326332(JP,A)
【文献】特開2002-194691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/18
D21H 17/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D成形可能なシート材料であって、
(a)3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して15wt%から55wt%までの量のセルロース材料であって、セルロース材料が、以下のものを含むセルロース材料混合物であり、
(i)セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して55wt%以上の量のミクロフィブリル化セルロース、および
(ii)セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して45wt%以下の量のセルロース繊維
且つミクロフィブリル化セルロースおよびセルロース繊維の量の合計が、セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して100wt%である、セルロース材料と、
(b)3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して45wt%から85wt%までの量の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と
を含み、
セルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の量の合計が、セルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の総乾燥重量に対して100.0wt%であり、
3D成形可能なシート材料が、
(a)水分1%当たり0.15%から0.7%までの範囲である含水量の濃度当たりの正規化延伸増分、および
(b)少なくとも6%の破断点伸び、および
(c)50g/mから500g/mまでのシート重量
を有することを特徴とする、3D成形可能なシート材料。
【請求項2】
ミクロフィブリル化セルロースが、充填剤および/または顔料の非存在下または存在下でセルロース繊維懸濁液をミクロフィブリル化することによって得られており、
セルロース繊維懸濁液のセルロース繊維が、トウヒパルプ、マツパルプ、ユーカリパルプ、カバノキパルプ、ブナパルプ、カエデパルプ、アカシアパルプ、麻パルプ、綿パルプ、バガスおよびワラパルプ、リサイクル繊維材料、ならびにこれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の3D成形可能なシート材料。
【請求項3】
セルロース繊維が、
(a)トウヒパルプ、マツパルプ、ユーカリパルプ、カバノキパルプ、ブナパルプ、カエデパルプ、アカシアパルプ、麻パルプ、綿パルプ、バガスおよびワラパルプ、リサイクル繊維材料、およびこれらの混合物から成る群から選択される、ならびに/または
(b)500μmから3000μmまでの長さ加重平均繊維長を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の3D成形可能なシート材料。
【請求項4】
少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料が、少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料であることを特徴とする、請求項1に記載の3D成形可能なシート材料。
【請求項5】
少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料が、沈降炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項4に記載の3D成形可能なシート材料。
【請求項6】
沈降炭酸カルシウムが、アラゴナイト型鉱物学的結晶形、ヴァテライト型鉱物学的結晶形およびカルサイト型鉱物学的結晶形からなる群の1種以上から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の3D成形可能なシート材料。
【請求項7】
少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料が、ドロマイトであることを特徴とする、請求項4に記載の3D成形可能なシート材料。
【請求項8】
少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料が、少なくとも1種の重質炭酸カルシウム材料であることを特徴とする、請求項4に記載の3D成形可能なシート材料。
【請求項9】
少なくとも1種の重質炭酸カルシウム含有材料が、大理石、白亜、石灰岩およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の3D成形可能なシート材料。
【請求項10】
少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料が、沈降炭酸カルシウム材料および重質炭酸カルシウム材料の両者を含むことを特徴とする、請求項1に記載の3D成形可能なシート材料。
【請求項11】
少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料が、
(a)0.1μmから20.0μmまでの重量メジアン粒径d50を有すること、および/または
(b)BET窒素方法によって測定された0.5m/gから200.0m/gまでの比表面積を有すること
を特徴とする、請求項1に記載の3D成形可能なシート材料。
【請求項12】
3D成形物品の調製のための方法であって、以下の段階:
(a)請求項1~4のいずれか一項に記載の3D成形可能なシート材料を提供する段階、および
(b)熱成形、真空成形、圧縮空気成形、深絞り成形、ハイドロフォーミング、球面成形、プレス成形、および真空/圧縮空気成形からなる群から選択される方法によって、3D成形可能なシート材料を3D成形物品に成形する段階
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
3D成形可能なシート材料が、
(i)請求項1~4のいずれか一項に規定されるセルロース材料を提供する段階、および
(ii)段階(i)のセルロース材料からなるプリシートを成形する段階、および
(iii)段階(ii)のプリシートを3D成形可能なシート材料に乾燥させる段階
によって得られている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
段階(i)のセルロース材料が、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と合わせされ、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料が、少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料が、沈降炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
沈降炭酸カルシウムが、アラゴナイト型鉱物学的結晶形、ヴァテライト型鉱物学的結晶形およびカルサイト型鉱物学的結晶形からなる群の1種以上から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料が、ドロマイトであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料が、少なくとも1種の重質炭酸カルシウム材料であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1種の重質炭酸カルシウム含有材料が、大理石、白亜、石灰岩およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料が、沈降炭酸カルシウム材料および重質炭酸カルシウム材料の両者を含むことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
段階(i)のセルロース材料が、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と合わされ、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料が、
(a)0.1μmから20.0μmまでの重量メジアン粒径d50を有すること、および/または
(b)BET窒素方法によって測定された0.5m/gから200.0m/gまでの比表面積を有すること
を特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
(i)セルロース材料が、水性懸濁液の形態において提供され、水性懸濁液が、水性懸濁液の総重量に対して0.2wt%から35wt%までの範囲のセルロース材料を含むこと、および/または
(ii)少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料が、粉末形態において提供されるか、または水性懸濁液の形態において提供され、水性懸濁液が、水性懸濁液の総重量に対して1wt%から80wt%までの量の粒子状無機充填剤材料を含むこと
を特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
セルロース材料が、充填剤および/または顔料の非存在下でセルロース繊維懸濁液をミクロフィブリル化することによって得られているミクロフィブリル化セルロースを含有するセルロース材料混合物であり、
ミクロフィブリル化セルロースが、水性懸濁液の形態であり、水性懸濁液が、水性懸濁液の総重量に対して1wt%のミクロフィブリル化セルロース含量において、25℃において1mPa・sから2000mPa・sまでの範囲のブルックフィールド粘度を有することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
セルロース材料が、充填剤および/または顔料の存在下でセルロース繊維懸濁液をミクロフィブリル化することによって得られているミクロフィブリル化セルロースを含有するセルロース材料混合物であって、
ミクロフィブリル化セルロースが、水性懸濁液の形態であり、水性懸濁液が、水性懸濁液の総重量に対して1wt%のミクロフィブリル化セルロース含量において、25℃において1mPa・sから2000mPa・sまでの範囲のブルックフィールド粘度を有することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
方法段階(b)の前および/または最中に、段階(a)で提供された3D成形可能なシート材料を、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して、2から30wt%までの含水量にまで湿潤する段階(c)をさらに含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項26】
3D成形物品が、包装容器、食品容器、ブリスターパックおよび食品トレーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項27】
熱成形、真空成形、圧縮空気成形、深絞り成形、ハイドロフォーミング、球面成形、プレス成形、または真空/圧縮空気成形を含む3D成形方法のためのものであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に規定する3D成形可能なシート材料の使用。
【請求項28】
請求項1~11のいずれか一項に規定される3D成形可能なシート材料を含む、好ましくは、包装容器、食品容器、ブリスターパック、食品トレーであることを特徴とする、3D成形物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D成形可能なシート材料、3D成形物品の調製のための方法、3D成形可能なシート材料の調製のためおよび3D成形可能なシート材料の延伸加工性を増大させるためのセルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の使用、3D成形プロセスにおける3D成形可能なシート材料の使用ならびに3D成形可能なシート材料を含む3D成形物品に関する。
【背景技術】
【0002】
3D成形可能な材料は、包装容器、例えば医薬品および化粧品の包装または食品包装、食品容器、例えば菓子箱、ブリスターパックおよび食品トレー等のような多種多様な用途において使用されている。紙に似た材料、すなわち、セルロース材料を含む材料は、リサイクル可能度、生分解性および再生可能性のような様々な利点を理由として、このような用途のために増々魅力的になっている。このような材料は、いくつかの文献において記述されている。例えば、JP2003-293282Aは、圧空成型または真空成型中に予備加熱する必要なく60℃未満の処理温度において成型可能であり、廃棄処分またはリサイクルおよび利用の実施が容易であり、環境の観点において優れた特性を有する、紙基材に言及している。実施例によれば、ポリアクリルアミド系が、紙基材の調製のためにパルプに添加される。JP2006-082384Aは、基材として使用される成形可能な紙およびこの成形可能な紙上に配置されたインク受容層に言及している。成形可能な紙上に装着されたインク受容層は、割れを防止するための結合剤を含む。特に好ましい結合剤は、ポリウレタンコポリマー、アクリル酸コポリマー、エチレン-ビニルアセテートコポリマーおよびゴムコポリマーであることが記述されている。CN104015450Aは、1個以上の層を含む、紙材料に言及しており、紙材料は、縦方向(MD)に向かって少なくとも5%伸長されることが可能であり、横方向(CD)に向かって少なくとも5%伸長されることが可能である。紙材料は好ましくは、水主体型接着剤層、例えば水主体型にかわまたはPEのようなバインダーの使用によって紙材料が互いに結合されている、ラミネート品である。PE層またはEVOH層は、防湿層またはガスバリア層としても使用されることが可能である。CN104015987Aは、伸長可能な紙用木材からできた部材によって形成された、挿入部材に言及している。挿入部材は、包装のために使用されており、三次元形状になっており、木からできた部材によって形成される。紙材料は好ましくは、水主体型接着剤層またはPEのようなバインダーの使用によって紙材料が互いに結合されている、ラミネート品である。PE層は、ガスバリア層としても使用される。US3,372,084は、a)単位長さ当たり75立方ミクロンから175立方ミクロンの比容積および2mm超の平均長さを有することを特徴とする微細な繊維である、植物性繊維および合成有機繊維から選択される35%から100%までの微細な繊維を含有する、繊維部分と、b)製紙用の木材パルプから選択される繊維部分の残り部分と、c)酸化亜鉛、炭酸カルシウムおよびケイ酸カルシウムから選択される繊維部分の総重量に対して0.5%から30%までの酸受容体とを組合せとして含む、後成形可能なプラスチックラミネート品の調製における使用に適合することができる、後成形可能な吸収紙に言及しており、この吸収紙は、6.8から7.6までの範囲である水抽出物のpHと、0.5から3.0までの範囲である水抽出物のアルカリ価とによって判定されたとき、本質的に天然である。さらに、3D成形物品を成形するための方法も、当技術分野において、例えばWO2015/063643A1、AU54281/86B、GB2092941A、US7,681,733B2、US4,637,811A、WO99/53810A1、WO2009/020805A1、DE102012201882A1、US1567162およびEP2829392A1から周知である。
【0003】
しかしながら、シート材料の不十分な3D成形加工性は、3D成形物品の調製に制限を加える因子である。この不十分な3D成形加工性は一般的に、シート材料の限定的な強度および不十分な延伸加工性ならびに充填剤とセルロース材料とが分離する可能性が原因である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-293282号公報
【文献】特開2006-082384号公報
【文献】中国特許出願公開第104015450号明細書
【文献】中国特許出願公開第104015987号明細書
【文献】米国特許第3,372,084号明細書
【文献】国際公開第2015/063643号
【文献】AU54281/86B
【文献】英国特許出願公開第2092941号明細書
【文献】米国特許第7,681,733号明細書
【文献】米国特許第4,637,811号明細書
【文献】国際公開第99/53810号
【文献】国際公開第2009/020805号
【文献】独国特許出願公開第102012201882号明細書
【文献】米国特許第1567162号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2829392号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、当技術分野において、良好な3D成形加工性を付与する3D成形可能なシート材料が、必要とされ続けている。特に、十分な強度および改善された延伸加工性を有し、加えて、塊が均一に分配され、且つその分離が困難な、3D成形可能なシート材料が必要とされている。
【0006】
したがって、本発明の一目的は、3D成形物品のための良好な3D成形加工性を付与する3D成形可能なシート材料を提供することである。さらなる目的は、十分な強度を有する、すなわち、強度が維持または改善された3D成形可能なシート材料を提供することである。別の目的は、維持または改善された延伸加工性を有する3D成形可能なシート材料を提供することである。なおさらなる目的は、質量がシート材料の全体にわたって均一に分配されており、成分の分離、特に充填剤とセルロース材料との分離が困難である、3D成形可能なシート材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的および他の目的は、請求項1において規定する主題によって解決される。
【0008】
本発明の3D成形可能なシート材料の有利な複数の実施形態が、対応する従属請求項に規定されている。
【0009】
本出願の一態様によれば、3D成形可能なシート材料が提供される。この3D成形可能なシート材料は、
a)3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して5wt%から55wt%までの量のセルロース材料であって、セルロース材料が、以下のものを含むセルロース混合物であり、
i)セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して55wt%以上の量のナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロース、ならびに
ii)セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して45wt%以下の量のセルロース繊維
且つナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロース、ならびにセルロース繊維の量の合計が、セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して100wt%である、セルロース材料と、
b)3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して45wt%以上の量の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と
を含み、
セルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の量の合計が、セルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の総乾燥重量に対して100.0wt%である。
【0010】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明による上記3D成形可能なシート材料が、良好な3D成形加工性を3D成形物品に付与することを発見した。より正確には、本発明者らは、本発明による上記3D成形可能なシート材料が、十分な強度および延伸加工性を付与することおよび本シート材料の塊分離が困難であることを発見した。
【0011】
本発明の目的に関するとき、下記の用語は、下記の意味を有することを理解すべきである。
【0012】
本発明の意味における「3D成形可能なという用語は、3D成形物品が3D形状を保持するように3D成形プロセスを使用することによって、3D成形物品に成形されることが可能である、シート材料を指す。
【0013】
「3D成形物品」という用語は、物品が、3D成形可能なシート材料から成形された3D形状を保持していることを意味する。
【0014】
少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料に関する「乾燥した」という用語は、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の重量に対して0.3重量%未満の水を有する材料であると理解されている。水の百分率%は、クーロメトリー式カールフィッシャー測定方法に従って測定されるが、ここで、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料が220℃に加熱され、蒸気として放出され、(100ml/分において)窒素ガス流を使用して単離された含有水分が、クーロメトリー式カールフィッシャーユニットによって測定される。
【0015】
セルロース材料に関する「乾燥した」という用語は、セルロース材料の重量に対して0.5重量%未満の水を有する乾燥したセルロース材料であると理解されている。「乾燥したセルロース材料」は、DIN52183に従って一定の重量になるまで103℃においてセルロース材料を処理することによって測定される。
【0016】
3D成形可能なシート材料に関する「乾燥した」という用語は、3D成形可能なシート材料の重量に対して0.5重量%未満の水を有する乾燥した3D成形可能なシート材料であると理解されている。「乾燥した3D成形可能なシート材料」は、DIN52183に従って一定の重量になるまで103℃において3D成形可能なシート材料を処理することによって測定される。
【0017】
「含む(comprising)」という用語が本明細書および特許請求の範囲において使用されている場合、「含む」という用語は、明示されていない機能的に重要なまたは機能的に重要でない他の要素を排除しない。本発明の目的に関するとき、「からなる(consisting of)」という用語は、「からなる(comprising of)」という用語の好ましい一実施形態であると考えられている。下記において、ある群が、特定の数の実施形態を少なくとも含むように規定されている場合、この群はやはり、好ましくはこれらの実施形態のみからなる一群を開示していると理解すべきである。
【0018】
「含む(including)」または「有する(having)」という用語が使用されている場合はいつでも、これらの用語は、上記に規定の「含む」と等価であるように解される。
【0019】
ある不定冠詞または定冠詞、例えば「1つの(a)」、「1つの(an)」または「当該(the)」が、ある単数形名詞に言及するときに使用されている場合、この不定冠詞または定冠詞は、何らかの別の事柄が明示的に記載されていない限り、当該名詞の複数形を含む。
【0020】
「得ることができる」または「規定可能な」および「得られる」または「規定されている」のような用語は、相換可能に使用されている。これは例えば、そうではないと文脈により明確に述べられていない限り、「得られる」という用語が、例えばある実施形態が、例えば「得られる」という用語の後に続く一連の段階によって得られなければならないことを指摘することを意味するわけではないことを意味するが、そのような限定的な理解が常に、好ましい一実施形態として、「得られる」または「規定されている」という用語に包含される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、3D成形物品の調製のための方法が提供される。この方法は、
a)本明細書に規定の3D成形可能なシート材料を提供する段階、および
b)好ましくは熱成形、真空成形、圧縮空気成形、深絞り成形、ハイドロフォーミング、球面成形、プレス成形または真空/圧縮空気成形によって、3D成形可能なシート材料を3D成形物品に成形する段階
を含む。
【0022】
本方法の一実施形態によれば、3D成形可能なシート材料は、
i)本明細書に規定のセルロース材料を提供する段階、
ii)段階i)のセルロース材料からなるプリシートを成形する段階、および
iii)、段階ii)のプリシートを3D成形可能なシート材料に乾燥させる段階
によって得られている。
【0023】
本方法の別の実施形態によれば、段階i)のセルロース材料が、本明細書に規定の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と合わせられて、セルロース-無機充填剤材料混合物を形成する。
【0024】
本方法のさらに別の実施形態によれば、i)セルロース材料が、水性懸濁液の形態において提供され、水性懸濁液が、水性懸濁液の総重量に対して0.2wt%から35wt%までの範囲、より好ましくは0.25wt%から20wt%までの範囲、さらにより好ましくは0.5wt%から15wt%までの範囲、最も好ましくは1wt%から10wt%までの範囲のセルロース材料を含む、および/またはii)少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料が、粉末形態で提供されるか、または水性懸濁液の形態で提供され、水性懸濁液が、水性懸濁液の総重量に対して1wt%から80wt%までの量、好ましくは5wt%から78wt%までの量、より好ましくは10wt%から78wt%までの量、最も好ましくは15wt%から78wt%までの量の粒子状無機充填剤材料を含む。
【0025】
本方法の一実施形態によれば、セルロース材料は、充填剤および/または顔料の非存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって得られたナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースを含む、セルロース材料混合物であり、好ましくは、ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースは、水性懸濁液の形態であり、水性懸濁液が、水性懸濁液の総重量に対して1wt%のナノフィブリル化セルロース含量および/またはミクロフィブリル化セルロース含量において、25℃において1mPa・sから2000mPa・sまでの範囲、より好ましくは25℃において10mPa・sから1200mPa・sまでの範囲、最も好ましくは25℃において100mPa・sから600mPa・sまでの範囲のブルックフィールド粘度を有する。
【0026】
本方法の別の実施形態によれば、セルロース材料は、充填剤および/または顔料の存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって得られたナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースを含む、セルロース材料混合物であり、好ましくは、ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースは、水性懸濁液の形態であり、水性懸濁液が、水性懸濁液の総重量に対して1wt%のナノフィブリル化セルロース含量および/またはミクロフィブリル化セルロース含量において、25℃において1mPa・sから2000mPa・sまでの範囲、より好ましくは25℃において3mPa・sから1200mPa・sまでの範囲、最も好ましくは25℃において10mPa・sから600mPa・sまでの範囲のブルックフィールド粘度を有する。
【0027】
欧州特許出願EP2386682A1、EP2386683A1、EP2236664A1、EP2236545A1、EP2808440A1、EP2529942A1およびEP2805986A1ならびにJ.Rantanenら、「Forming and dewatering of a microfibrillated cellulose composite paper」、BioResources 10(2)、2015、3492-3506頁から、ナノフィブリル化セルロースおよびミクロフィブリル化セルロースならびに紙に取り込まれたこれらの使用が公知である。しかしながら、3D成形可能なシート材料中におけるこれらのセルロースの効果に関する教示はない。
【0028】
本方法のさらに別の実施形態によれば、本方法は、工程段階b)の前および/または最中に、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して2wt%から30wt%までの含水量になるまで、段階a)において提供された3D成形可能なシート材料を湿潤する段階c)をさらに含む。
【0029】
本発明のさらなる一態様によれば、3D成形可能なシート材料の調製のための、本明細書に規定のセルロース材料および本明細書に規定の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の使用が提供される。本発明のなおさらなる一態様によれば、3D成形可能なシート材料の延伸加工性を増大させるための、本明細書に規定のセルロース材料および本明細書に規定の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の使用であって、3D成形可能なシート材料が、1パーセント当たり0.15%から0.7%までの範囲である、含水量の濃度当たりの正規化延伸増分を有するときに、増大が達成される、使用が提供される。本発明のなおさらなる一態様によれば、3D成形プロセスにおける、好ましくは熱成形、真空成形、圧縮空気成形、深絞り成形、ハイドロフォーミング、球面成形、プレス成形または真空/圧縮空気成形における、本明細書に規定の3D成形可能なシート材料の使用が、提供される。本発明の別の態様によれば、本明細書に規定の3D成形可能なシート材料を含む、3D成形物品、好ましくは包装容器、食品容器、ブリスターパック、食品トレーが、提供される。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、3D成形可能なシート材料は、a)3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して15wt%から55wt%までの量のセルロース材料およびb)3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して45wt%から85wt%までの量の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料を含む。
【0031】
本発明の別の実施形態によれば、3D成形可能なシート材料は、a)1パーセント当たり0.15%から0.7%までの範囲である含水量の濃度当たりの正規化延伸増分および/またはb)少なくとも6%の破断点伸び、好ましくは6%から16%までの破断点伸び、最も好ましくは7%から15%までの破断点伸びおよび/またはc)50g/mから500g/mまでのシート重量、好ましくは80g/mから300g/mまでのシート重量、最も好ましくは80g/mから250g/mまでのシート重量を有する。
【0032】
本発明のさらに別の実施形態によれば、ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースは、充填剤および/または顔料の非存在下または存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって得られており、好ましくは、セルロース繊維懸濁液のセルロース繊維は、トウヒパルプおよびマツパルプのような針葉樹材パルプ、ユーカリパルプ、カバノキパルプ、ブナパルプ、カエデパルプ、アカシアパルプのような広葉樹材パルプならびに麻パルプ、綿パルプ、バガスパルプもしくはワラパルプのような他の種類のパルプまたはリサイクル繊維材料ならびにこれらの混合物を含む群から選択されるパルプ中に含有されるセルロース繊維である。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、セルロース繊維は、a)トウヒ繊維およびマツ繊維のような針葉樹材繊維、ユーカリ繊維、カバノキ繊維、ブナ繊維、カエデ繊維、アカシア繊維のような広葉樹材繊維、ならびに麻繊維、綿繊維、バガス繊維もしくはワラ繊維のような他の種類の繊維、もしくはリサイクル繊維材料、ならびにこれらの混合物を含む群から選択され、ならびに/またはb)500μmから3000μmまでの長さ加重平均繊維長、より好ましくは600μmから2000μmまでの長さ加重平均繊維長、最も好ましくは700μmから1000μmまでの長さ加重平均繊維長を有する。
【0034】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料は、少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料であり、好ましくは、少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料は、ドロマイトであり、ならびに/または大理石、白亜、石灰岩および/もしくはこれらの混合物のような少なくとも1種の重質炭酸カルシウム(GCC)であり、ならびに/またはアラゴナイト型鉱物学的結晶形、ヴァテライト型鉱物学的結晶形およびカルサイト型鉱物学的結晶形のうちの1種以上のような少なくとも1種の沈降炭酸カルシウム(PCC)であり、より好ましくは、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料は、少なくとも1種の沈降炭酸カルシウム(PCC)である。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態によれば、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料は、a)0.1μmから20.0μmまでの重量メジアン粒径d50、好ましくは0.3μmから10.0μmまでの範囲、より好ましくは0.4μmから8.0μmまでの範囲、最も好ましくは0.5μmから4.0μmまでの範囲の重量メジアン粒径d50を有する、および/またはb)BET窒素方法によって測定された0.5m/gから200.0m/gまでの比表面積、より好ましくは0.5m/gから100.0m/gまでの比表面積、最も好ましくは0.5m/gから50.0m/gまでの比表面積を有する。
【0036】
上記のように、本発明の3D成形可能なシート材料は、事項a)および事項b)に記載のセルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料を含む。下記において、本発明のさらなる詳細に言及されており、特に、本発明の3D成形可能なシート材料に関する上記事項に言及されている。
【0037】
本発明によれば、3D成形可能なシート材料は、
a)3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して5wt%から55wt%までの量のセルロース材料と、
b)3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して45wt%以上の量の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と
を含む。
【0038】
本3D成形可能なシート材料の一要件は、セルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の量の合計が、セルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の総乾燥重量に対して100.0wt%であることである。
【0039】
本発明の3D成形可能なシート材料は、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して5wt%から55wt%までの量のセルロース材料を含む。好ましくは、3D成形可能なシート材料は、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して15wt%から55wt%までの量のセルロース材料を含む。例えば、3D成形可能なシート材料は、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して20wt%から45wt%までの量または25wt%から35wt%までの量のセルロース材料を含む。
【0040】
さらに、3D成形可能なシート材料は、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して45wt%以上の量の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料を含む。好ましくは、3D成形可能なシート材料は、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して45wt%から85wt%までの量の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料を含む。例えば、3D成形可能なシート材料は、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して55wt%から80wt%までの量または65wt%から75wt%までの量の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料を含む。
【0041】
一実施形態において、3D成形可能なシート材料は、セルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料からなる。すなわち、3D成形可能なシート材料は、
a)3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して5wt%から55wt%までの量、好ましくは15wt%から55wt%までの量、より好ましくは20wt%から45wt%までの量または25wt%から35wt%までの量のセルロース材料、および
b)3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して45wt%以上の量、好ましくは45wt%から85wt%までの量、最も好ましくは55wt%から80wt%までの量または65wt%または75wt%までの量の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料
からなり、
セルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の量の合計が、セルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の総乾燥重量に対して100.0wt%である。
【0042】
3D成形可能なシート材料は、製紙分野において、特に3D成形可能なシート材料の製造において一般的に使用されている添加剤を含んでもよいと理解されている。
【0043】
本発明の意味における「少なくとも1種の」添加剤という用語は、添加剤が、1種以上の添加剤を含み、好ましくは1種以上の添加剤からなることを意味する。
【0044】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種の添加剤は、1種の添加剤を含み、好ましくは1種の添加剤からなる。代替的には、少なくとも1種の添加剤は、2種以上の添加剤を含み、好ましくは2種以上の添加剤からなる。例えば、少なくとも1種の添加剤は、2種または3種の添加剤を含み、好ましくは2種または3種の添加剤からなる。
【0045】
例えば、少なくとも1種の添加剤は、サイズ剤、紙強度向上剤、充填剤(少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と異なる)、Percol(登録商標)のような定着助剤、バインダー、界面活性剤、殺生物剤、帯電防止剤、着色料および難燃剤からなる群から選択される。
【0046】
少なくとも1種の添加剤は、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して0.01wt%から10wt%までの範囲の量において、3D成形可能なシート材料中に存在できる。例えば、少なくとも1種の添加剤は、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して0.02wt%から8wt%までの範囲、好ましくは0.04wt%から5wt%までの範囲の量において、3D成形可能なシート材料中に存在できる。
【0047】
したがって、3D成形可能なシート材料は、
a)3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して5wt%から55wt%までの量、好ましくは15wt%から55wt%までの量、より好ましくは20wt%から45wt%までの量または25wt%から35wt%までの量のセルロース材料と、
b)3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して45wt%以上の量、好ましくは45wt%から85wt%までの量、最も好ましくは55wt%から80wt%までの量または65wt%または75wt%までの量の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と、
c)任意選択的に、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して0.01wt%から10wt%までの量、好ましくは0.02wt%から8wt%までの量、最も好ましくは0.04wt%から5wt%までの量の少なくとも1種の添加剤と
を含んでもよく、
セルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の量の合計が、セルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の総乾燥重量に対して100.0wt%である。
【0048】
一実施形態において、3D成形可能なシート材料は、
a)3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して5wt%から55wt%までの量、好ましくは15wt%から55wt%までの量、より好ましくは20wt%から45wt%までの量または25wt%から35wt%までの量のセルロース材料と、
b)3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して45wt%以上の量、好ましくは45wt%から85wt%までの量、最も好ましくは55wt%から80wt%までの量または65wt%から75wt%までの量の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と、
c)任意選択的に、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して0.01wt%から10wt%の量、好ましくは0.02wt%から8wt%までの量、最も好ましくは0.04wt%から5wt%までの量の少なくとも1種の添加剤と
からなり、
セルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の量の合計が、セルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の総乾燥重量に対して100.0wt%である。
【0049】
したがって、3D成形可能なシート材料は好ましくは、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して90wt%以上の量のセルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料を含む。例えば、3D成形可能なシート材料は好ましくは、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して90wt%から99.99wt%までの量のセルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料を含む。好ましくは、3D成形可能なシート材料は、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して92wt%から99.95wt%までの量または95wt%から99.9wt%までの量のセルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料を含む。代替的には、3D成形可能なシート材料は、セルロース材料および少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料からなる。
【0050】
本発明の3D成形可能なシート材料の一利点は、3D成形可能なシート材料が3D成形物品の調製に特に適合するような高い延伸加工性および大きな破断点伸びを特徴とすることである。
【0051】
3D成形可能なシート材料は特に、高い延伸加工性または増大した延伸加工性を特徴とする。特に、3D成形可能なシート材料は、1パーセント当たり0.15%から0.7%までの範囲である含水量の濃度当たりの正規化延伸増分を有すると理解されている。例えば、3D成形可能なシート材料は、シートの水分1%当たり0.15%から0.6%までの範囲、好ましくは0.2%から0.6%までの範囲である含水量の濃度当たりの正規化延伸増分を有する。
【0052】
「含水量の濃度当たりの正規化延伸増分」は、材料の一特性であり、次の式(I)
【0053】
【数1】
[式中、
d(水分)は、検討する含水量の範囲を規定しており、すなわち、対象の高い方の水分濃度(例えば、20%)と、対象の低い方の水分濃度(例えば、10%)との差を規定しており、
d(延伸度)は、検討する含水量の範囲における延伸加工性の範囲を規定しており、すなわち、対象の高い方の水分濃度における延伸加工性と、対象の低い方の水分濃度における延伸加工性との差を規定する。]
によって決定される。
【0054】
延伸加工性の増大は、3D成形可能なシート材料の含水量に依存すると理解されている。
【0055】
例えば、3D成形可能なシート材料は、10%の3D成形可能なシート材料の含水量において、4%から10%までの範囲、好ましくは5%から10%までの範囲の延伸加工性を有する。
【0056】
さらにまたは代替的には、3D成形可能なシート材料は、20%の3D成形可能なシート材料の含水量において、6%から18%までの範囲、好ましくは7%から18%までの範囲の延伸加工性を有する。
【0057】
特定の含水量における延伸加工性は、次の式(II)
【0058】
【数2】
によって決定されることが可能であり、
式中、「水分」が、(X%の水分-参照用水分%)として規定されており、参照用水分が、対象の低い方の水分濃度を指す。
【0059】
3D成形可能なシート材料は、大きな破断点伸びまたは改善された破断点伸びをさらに特徴とし得ると理解されている。例えば、3D成形可能なシート材料は、少なくとも6%の破断点伸び、好ましくは6%から16%までの破断点伸び、最も好ましくは7%から15%までの破断点伸びを有する。
【0060】
3D成形可能なシート材料は、好ましくは50g/mから500g/mまでのシート重量、好ましくは80g/mから300g/mまでのシート重量、最も好ましくは80g/mから250g/mまでのシート重量を有する。
【0061】
したがって、3D成形可能なシート材料は好ましくは、
a)1パーセント当たり0.15%から0.7%までの範囲、より好ましくは1パーセント当たり0.15%から0.6%までの範囲、最も好ましくは1パーセント当たり0.2%から0.6%までの範囲である含水量の濃度当たりの正規化延伸増分および/または
b)少なくとも6%の破断点伸び、より好ましくは6%から16%までの破断点伸び、最も好ましくは7%から15%までの破断点伸びおよび/または
c)50g/mから500g/mまでのシート重量、より好ましくは80g/mから300g/mまでのシート重量、最も好ましくは80g/mから250g/mまでのシート重量
を有する。
【0062】
例えば、3D成形可能なシート材料は好ましくは、
a)1パーセント当たり0.15%から0.7%までの範囲、より好ましくは1パーセント当たり0.15%から0.6%までの範囲、最も好ましくは1パーセント当たり0.2%から0.6%までの範囲である含水量の濃度当たりの正規化延伸増分、および
b)少なくとも6%の破断点伸び、より好ましくは6%から16%までの破断点伸び、最も好ましくは7%から15%までの破断点伸び、または
c)50g/mから500g/mまでのシート重量、より好ましくは80g/mから300g/mまでのシート重量、最も好ましくは80g/mから250g/mまでのシート重量
を有する。
【0063】
例えば、3D成形可能なシート材料は好ましくは、
a)1パーセント当たり0.15%から0.7%までの範囲、より好ましくは1パーセント当たり0.15%から0.6%までの範囲、最も好ましくは1パーセント当たり0.2%から0.6%までの範囲である含水量の濃度当たりの正規化延伸増分、または
b)少なくとも6%の破断点伸び、より好ましくは6%から16%までの破断点伸び、最も好ましくは7%から15%までの破断点伸び、および
c)50g/mから500g/mまでのシート重量、より好ましくは80g/mから300g/mまでのシート重量、最も好ましくは80g/mから250g/mまでのシート重量
を有する。
【0064】
一実施形態において、3D成形可能なシート材料は、
a)1パーセント当たり0.15%から0.7%までの範囲、より好ましくは1パーセント当たり0.15%から0.6%までの範囲、最も好ましくは1パーセント当たり0.2%から0.6%までの範囲である含水量の濃度当たりの正規化延伸増分、または
b)少なくとも6%の破断点伸び、より好ましくは6%から16%までの破断点伸び、最も好ましくは7%から15%までの破断点伸び、または
c)50g/mから500g/mまでのシート重量、より好ましくは80g/mから300g/mまでのシート重量、最も好ましくは80g/mから250g/mまでのシート重量
を有する。
【0065】
好ましくは、3D成形可能なシート材料は、
a)1パーセント当たり0.15%から0.7%までの範囲、より好ましくは1パーセント当たり0.15%から0.6%までの範囲、最も好ましくは1パーセント当たり0.2%から0.6%までの範囲である含水量の濃度当たりの正規化延伸増分、および
b)少なくとも6%の破断点伸び、より好ましくは6%から16%までの破断点伸び、最も好ましくは7%から15%までの破断点伸び、および
c)50g/mから500g/mまでのシート重量、より好ましくは80g/mから300g/mまでのシート重量、最も好ましくは80g/mから250g/mまでのシート重量
を有する。
【0066】
下記において、3D成形可能なシート材料の成分が、より詳細に記述される。
【0067】
セルロース材料は、
i)セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して55wt%以上の量のナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロース、および
ii)セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して45wt%以下の量のセルロース繊維
を含む、セルロース材料混合物である。
【0068】
セルロース材料混合物の一要件は、ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースならびにセルロース繊維の量の合計が、セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して100wt%であることである。
【0069】
ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースの使用は、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と、任意選択的な添加剤との分離が困難になり、この結果、単一種類の成分が均一に分配された塊が得られるという利点を有する。
【0070】
一実施形態において、セルロース材料混合物は、
i)セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して55wt%以上の量のナノフィブリル化セルロースまたはミクロフィブリル化セルロース、好ましくは
ミクロフィブリル化セルロース、ならびに
ii)セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して45wt%以下の量のセルロース繊維
を含み、
ナノフィブリル化セルロースまたはミクロフィブリル化セルロースおよびセルロース繊維の量の合計が、セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して100wt%である。
【0071】
代替的には、セルロース材料混合物は、
i)セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して55wt%以上の量のナノフィブリル化セルロースおよびミクロフィブリル化セルロース、ならびに
ii)セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して45wt%以下の量のセルロース繊維
を含み、
ナノフィブリル化セルロースおよびミクロフィブリル化セルロースならびにセルロース繊維の量の合計が、セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して100wt%である。
【0072】
したがって、セルロース材料混合物は好ましくは、セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して55wt%以上の量のナノフィブリル化セルロースまたはミクロフィブリル化セルロース、好ましくはミクロフィブリル化セルロースを含む。例えば、セルロース材料混合物は、セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して55wt%から99wt%までの量のナノフィブリル化セルロースまたはミクロフィブリル化セルロース、好ましくはミクロフィブリル化セルロースを含む。好ましくは、セルロース材料混合物は、セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して60wt%から95wt%までの量のナノフィブリル化セルロースまたはミクロフィブリル化セルロース、好ましくはミクロフィブリル化セルロースを含む。
【0073】
さらに、セルロース材料混合物は、セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して45wt%以下の量のセルロース繊維を含む。例えば、セルロース材料混合物は、セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して1wt%から45wt%までの量のセルロース繊維を含む。好ましくは、セルロース材料混合物は、セルロース材料混合物の総乾燥重量に対して5wt%から40wt%までの量のセルロース繊維を含む。
【0074】
一実施形態において、乾燥重量に基づいたセルロース材料混合物中におけるセルロース繊維に対するナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースの重量比は、90:10から50:50までであり、より好ましくは90:10から60:40までであり、さらにより好ましくは90:10から70:30までであり、最も好ましくは90:10から80:20までであり、例えば約90:10または約85:15までである。
【0075】
「ナノフィブリル化セルロース」および「ミクロフィブリル化セルロース」という用語は、例えばH.Sixta(編)、Handbook of Pulp、Wiley-VCHにおいて規定されているような、一般的に認知された規定を指す。
【0076】
原材料としてのセルロースパルプは、麻、亜麻およびマニラ麻のような植物の木または幹から加工される。パルプ繊維は主に、セルロースおよび他の有機成分(ヘミセルロースおよびリグニン)によって構築されている。セルロース高分子(1位と4位とがグリコシド結合したβ-Dグリコース分子から構成される)は、水素結合によって一緒に連結されて、結晶性ドメインおよび非晶性ドメインを有するいわゆるナノフィブリル(一次フィブリルまたはミセルとも呼ばれる)を形成する。数本のナノフィブリル(約55本)が、いわゆるミクロフィブリルを形成する。これらのミクロフィブリルのうちの約250本が、1つのフィブリルを形成する。
【0077】
フィブリルは、1本の繊維を形成するように、(リグニンおよび/またはヘミセルロースを含有し得る)異なる層中に配列されている。個々の繊維は、やはり、リグニンによって一緒に結合されている。
【0078】
加えられたエネルギーの作用により、繊維が叩解された状態になると、繊維は、細胞壁が破壊され、引裂かれて、くっつき合ったストリップ、すなわち、フィブリルに変わるため、フィブリル化された状態になる。この裂断が継続されて、繊維の本体からフィブリルを分離した場合、繊維の本体がフィブリルを解放する。ミクロフィブリルへの繊維の裂断は、「ミクロフィブリル化」と呼ばれる。このプロセスは、繊維が残っておらず、ナノフィブリルのみが残留しているようになるまで、継続することが可能である。
【0079】
上記プロセスがさらに進行し、これらのフィブリルを裂断して、増々小さなフィブリルになっていったならば、フィブリルは、最終的に、セルロース断片になる。ナノフィブリルへの裂断は、上記2種の構造的枠組みの間に円滑な遷移が存在し得る場合、「ナノフィブリル化」と呼ばれることがある。
【0080】
本発明の文脈における「ナノフィブリル化セルロース」という用語は、少なくとも部分的に裂断されて、ナノフィブリル(一次フィブリルとも呼ばれる)になった繊維を意味する。
【0081】
本発明の文脈における「ミクロフィブリル化セルロース」という用語は、少なくとも部分的に裂断されて、ミクロフィブリルになった繊維を意味する。ミクロフィブリル化セルロースは好ましくは、水性懸濁液の総重量に対して1wt%のナノフィブリル化セルロース含量および/またはミクロフィブリル化セルロース含量において、25℃において1mPa・sから2000mPa・sまでの範囲、より好ましくは25℃において10mPa・sから1200mPa・sまでの範囲、最も好ましくは25℃において100mPa・sから600mPa・sまでの範囲のブルックフィールド粘度を有する。
【0082】
この点に関して、本発明の文脈におけるフィブリル化は、長軸に沿って繊維およびフィブリルを主に裂断し、繊維およびフィブリルのそれぞれの直径を減少させる、任意のプロセスを意味する。
【0083】
ナノフィブリル化セルロースおよびミクロフィブリル化セルロースならびにこれらの調製は、当業者に周知である。例えば、ナノフィブリル化セルロースおよびミクロフィブリル化セルロースならびにこれらの調製は、EP2386682A1、EP2386683A1、EP2236664A1、EP2236545A1、EP2808440A1およびEP2805986A1において記述されており、したがって、これらは、参照により本明細書に組み込むが、加えて、Franklin W.Herrickら「Microfibrillated Cellulose:Morphology and Accessibility」、Journal of Applied Polymer Science:Applied Polymer Symposium 37、797-813(1983)およびHubbeら「Cellulosic nanocomposites,review」BioResources、3(3)、929-890(2008)においても記述されている。
【0084】
好ましくは、ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースは、充填剤および/または顔料の非存在下または存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって得られている。
【0085】
一実施形態において、ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースは、充填剤および/または顔料の非存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって得られている。したがって、ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースは、充填剤および/または顔料を含まない。したがって、3D成形可能なシート材料は、この実施形態において、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と異なる充填剤および/または顔料を含まない。
【0086】
充填剤および/または顔料の非存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって得られたナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースは、好ましくは、水性懸濁液の形態である。好ましくは、水性懸濁液は、水性懸濁液の総重量に対して1wt%のナノフィブリル化セルロース含量および/またはミクロフィブリル化セルロース含量において、25℃において1mPa・sから2000mPa・sまでの範囲、より好ましくは25℃において10mPa・sから1200mPa・sまでの範囲、最も好ましくは25℃において100mPa・sから600mPa・sまでの範囲のブルックフィールド粘度を有する。
【0087】
代替的な一実施形態において、ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースは、充填剤および/または顔料の存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって得られている。
【0088】
充填剤および/または顔料は好ましくは、沈降炭酸カルシウム(PCC)、天然重質炭酸カルシウム(GCC)、ドロマイト、タルク、ベントナイト、クレー、マグネサイト、サチンホワイト、セピオライト、ハンタイト、珪藻土、シリケートおよびこれらの混合物を含む群から選択される。ヴァテライト型結晶構造、カルサイト型結晶構造またはアラゴナイト型結晶構造、および/または天然重質炭酸カルシウムを有することが可能であり、大理石、石灰岩および/または白亜から選択され得る、沈降炭酸カルシウムが特に好ましい。
【0089】
好ましい一実施形態において、充填剤および/または顔料としての大理石、石灰岩および/または白亜のような天然重質炭酸カルシウム(GCC)の使用は、有利なことがある。
【0090】
したがって、3D成形可能なシート材料は、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の他にも、さらなる充填剤および/または顔料を含んでもよいと理解されている。少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と、さらなる充填剤および/または顔料とは、同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と、さらなる充填剤および/または顔料とは異なる。
【0091】
一実施形態において、乾燥重量に基づいた充填剤および/または顔料に対するナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースの重量比は、1:10から10:1までであり、より好ましくは1:6から6:1までであり、一般的に1:4から4:1までであり、特に1:3から3:1までであり、最も好ましくは1:2から2:1までであり、例えば1:1である。
【0092】
ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースは好ましくは、ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースの総乾燥重量に対して5wt%から90wt%までの範囲、好ましくは20wt%から80wt%までの範囲、より好ましくは30wt%から70wt%までの範囲、最も好ましくは35wt%から65wt%までの範囲の量の充填剤および/または顔料を含む。
【0093】
したがって、3D成形可能なシート材料のセルロース材料は好ましくは、セルロース材料の総乾燥重量に対して2wt%から85wt%までの範囲、好ましくは2wt%から70wt%までの範囲、より好ましくは3wt%から50wt%までの範囲、最も好ましくは5wt%から40wt%までの範囲の量の充填剤および/または顔料を含む。充填剤および/または顔料は、充填剤および/または顔料の存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって発生すると理解されている。
【0094】
充填剤および/または顔料の存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって得られたナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースは、好ましくは、水性懸濁液の形態である。好ましくは、水性懸濁液は、水性懸濁液の総重量に対して1wt%のナノフィブリル化セルロース含量および/またはミクロフィブリル化セルロース含量において、25℃において1mPa・sから2000mPa・sまでの範囲、より好ましくは25℃において3mPa・sから1200mPa・sまでの範囲、最も好ましくは25℃において10mPa・sから600mPa・sまでの範囲のブルックフィールド粘度を有する。
【0095】
好ましい一実施形態において、充填剤および/または顔料粒子は、0.03μmから15μmまでのメジアン粒径、好ましくは0.1μmから10μmまでのメジアン粒径、より好ましくは0.2μmから5μmまでのメジアン粒径、最も好ましくは0.2μmから4μmまでのメジアン粒径、例えば、1.6μmまたは3.2μmのメジアン粒径を有する。
【0096】
そこからナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースが得られたセルロース繊維懸濁液のセルロース繊維は好ましくは、トウヒパルプおよびマツパルプのような針葉樹材パルプ、ユーカリパルプ、カバノキパルプ、ブナパルプ、カエデパルプ、アカシアパルプのような広葉樹材パルプ、ならびに麻パルプ、綿パルプ、バガスパルプもしくはワラパルプのような他の種類のパルプ、またはリサイクル繊維材料、ならびにこれらの混合物を含む群から選択されるパルプ中に含有されるセルロース繊維であることが理解されている。
【0097】
ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースは好ましくは、充填剤および/または顔料の存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって得られる。
【0098】
セルロース材料混合物は、セルロース繊維をさらに含む。
【0099】
セルロース材料混合物中に存在するセルロース繊維は好ましくは、トウヒ繊維およびマツ繊維のような針葉樹材繊維、ユーカリ繊維、カバノキ繊維、ブナ繊維、カエデ繊維、アカシア繊維のような広葉樹材繊維、ならびに麻繊維、綿繊維、バガス繊維もしくはワラ繊維のような他の種類の繊維、またはリサイクル繊維材料、ならびにこれらの混合物を含む群から選択される。
【0100】
セルロース材料混合物中に存在するセルロース繊維は、そこからナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースが得られた同じまたは異なる繊維に由来し得ることが理解されている。好ましくは、セルロース材料混合物中に存在するセルロース繊維は、そこからナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースが得られた異なる繊維に由来する。
【0101】
一実施形態において、セルロース材料混合物中に存在するセルロース繊維は、ユーカリ繊維である。
【0102】
そこからナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースが得られたセルロース繊維懸濁液のセルロース繊維と、セルロース繊維とは、同じであっても異なっていてもよいと理解されている。好ましくは、そこからナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースが得られたセルロース繊維懸濁液のセルロース繊維と、セルロース繊維とは異なる。
【0103】
好ましくは、セルロース材料混合物中に存在するセルロース繊維は、500μmから3000μmまでの長さ加重平均繊維長、より好ましくは600μmから2000μmまでの長さ加重平均繊維長、最も好ましくは700μmから1000μmまでの長さ加重平均繊維長を有する。
【0104】
本3D成形可能なシート材料の別の本質的な成分は、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料である。
【0105】
本発明の意味における「少なくとも1種の」粒子状無機充填剤材料という用語は、粒子状無機充填剤材料が、1種以上の粒子状無機充填剤材料を含み、好ましくは1種以上の粒子状無機充填剤材料からなることを意味する。
【0106】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料は、1種の粒子状無機充填剤材料を含み、好ましくは1種の粒子状無機充填剤材料からなる。代替的には、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料は、2種以上の粒子状無機充填剤材料を含み、好ましくは2種以上の粒子状無機充填剤材料からなる。例えば、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料は、2種または3種の粒子状無機充填剤材料を含み、好ましくは2種または3種の粒子状無機充填剤材料からなる。
【0107】
好ましくは、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料は、1種の粒子状物質を含み、より好ましくは1種の粒子状物質からなる。
【0108】
本発明の意味における少なくとも1種の「粒子状」無機充填剤材料という用語は、無機充填剤材料を含み、好ましくは無機充填剤材料からなる、固体コンパウンドを指す。
【0109】
少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料は、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸カルシウムまたはドロマイト)、金属硫酸塩(例えば、バライトまたは石膏)、金属ケイ酸塩、金属酸化物(例えば、チタニアまたは酸化鉄)、カオリン、か焼カオリン、タルクもしくはマイカまたはこれらの任意の混合物もしくは組合せのような、粒子状の天然無機充填剤材料、合成無機充填剤材料または配合無機充填剤材料であってよい。
【0110】
延伸加工性および破断点伸びに関する特に良好な結果は、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料が少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料である場合に得られる。
【0111】
「炭酸カルシウム含有材料」という用語は、炭酸カルシウム含有材料の総乾燥重量に対して少なくとも50.0wt%の炭酸カルシウムを含む材料を指す。
【0112】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料は、ドロマイト、少なくとも1種の重質炭酸カルシウム(GCC)、少なくとも1種の沈降炭酸カルシウム(PCC)およびこれらの混合物から選択される。
【0113】
本発明の意味における「ドロマイト」は、CaMg(CO(「CaCO・MgCO」)の化学組成を有する、カルシウムとマグネシウムとの炭酸塩型鉱物である。ドロマイト鉱物は、ドロマイトの総重量に対して少なくとも30.0wt%のMgCOを含有し、好ましくは35.0wt%超、40.0wt%超、一般的に45.0wt%から46.0wt%までのMgCOを含有する。
【0114】
本発明の意味における「重質炭酸カルシウム」(GCC)は、石灰岩、大理石または白亜のような天然供給源から得られた炭酸カルシウムであり、例えばサイクロンまたは分級機による粉砕、スクリーニングおよび/または分画のような湿式処理および/または乾式処理によって処理される。
【0115】
一実施形態によれば、GCCは、乾式粉砕によって得られる。本発明の別の実施形態によれば、GCCは、湿式粉砕の後に乾燥させることによって得られる。
【0116】
一般に、粉砕段階は、任意の従来の粉砕装置によって、叩解が副次的な物体による衝撃を主因とする条件下で実施することが可能であり、すなわち、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心インパクトミル、立て型ビーズミル、アトリッションミル、ピンミル、ハンマーミル、微粉砕機、シュレッダー、破塊装置、ナイフカッターまたは当業者に知られた他のこのような設備のうちの1種以上の中で実施することが可能である。炭酸カルシウム含有材料が湿式粉砕された炭酸カルシウム含有材料を含む場合、粉砕段階は、自然発生的な粉砕が発生するような条件下ならびに/または自然発生的な粉砕が水平ボールミル粉砕および/もしくは当業者に知られた他のこのようなプロセスによって発生するような条件下で、実施することが可能である。このようにして得られた湿式処理された重質炭酸カルシウム含有材料は、乾燥前に、周知のプロセス、例えばフロキュレーション、ろ過または強制蒸発によって洗浄および脱水されることが可能である。乾燥させる後続の段階は、噴霧乾燥のような単一の段階として実施されてもよいしまたは少なくとも2種の段階として実施されてもよい。このような炭酸カルシウム材料が、不純物を除去するために(浮遊選鉱段階、漂白段階または磁気分離段階のような)選鉱段階を受けることも、一般的である。
【0117】
一実施形態において、GCCは、大理石、白亜、石灰岩およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0118】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、一般に、水性環境中における二酸化炭素と石灰との反応後の沈殿によって得られるか、または水中におけるカルシウムおよび炭酸イオン源の沈殿によって得られる合成材料である。PCCは、アラゴナイト型鉱物学的結晶形、ヴァテライト型鉱物学的結晶形およびカルサイト型鉱物学的結晶形のうちの1種以上であってよい。好ましくは、PCCは、アラゴナイト型鉱物学的結晶形、ヴァテライト型鉱物学的結晶形およびカルサイト型鉱物学的結晶形のうちの1種である。
【0119】
アラゴナイトは、一般的に針状形態であるが、ヴァテライトは、六方晶系に属する。カルサイトは、偏三角面体形態、角柱形態、球体形態および菱面体形態を形成し得る。PCCは、多様な方法によって製造することが可能であり、例えば、二酸化炭素による沈殿、ライムソーダ法またはPCCがアンモニア生成の副生成物であるSolvay法によって製造することが可能である。得られたPCCスラリーは、機械的に脱水および乾燥され得る。
【0120】
少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料は、少なくとも1種の沈降炭酸カルシウム(PCC)になっている、好ましくは、アラゴナイト型鉱物学的結晶形、ヴァテライト型鉱物学的結晶形またはカルサイト型鉱物学的結晶形の少なくとも1種の沈降炭酸カルシウム(PCC)になっている、粒子状炭酸カルシウム含有材料であることが好ましい。
【0121】
炭酸カルシウムの他にも、少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料は、二酸化チタンおよび/または三酸化アルミニウムのようなさらなる金属酸化物、三水酸化アルミニウムのような金属水酸化物、硫酸塩のような金属塩、タルクおよび/またはカオリンクレーおよび/またはマイカのようなケイ酸塩、炭酸マグネシウムおよび/または石膏のような炭酸塩、サチンホワイトおよびこれらの混合物を含んでもよい。
【0122】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料中における炭酸カルシウムの量は、炭酸カルシウム含有材料の総乾燥重量に対して50.0wt%以上であり、好ましくは90.0wt%であり、より好ましくは95.0wt%以上であり、最も好ましくは97.0wt%以上である。
【0123】
少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料、好ましくは少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料は、沈降方法によって測定された0.1μmから20.0μmまでの範囲、好ましくは0.3μmから10.0μmまでの範囲、より好ましくは0.4μmから8.0μmまでの範囲、最も好ましくは0.5μmから4.0μmまでの範囲、例えば、2.7μmまでの範囲の重量メジアン粒径d50を有することが好ましい。
【0124】
本明細書を通して、充填剤材料または他の粒状物質を含む炭酸カルシウムの「粒径」は、粒径の分布によって記述されている。値dは、その直径を基準にしたときに、粒子のうちのx重量%がd未満の直径を有することになる直径を表す。これは、d20値が、すべての粒子のうちの20wt%が小さい方となる粒径であることを意味しており、d98値が、すべての粒子のうちの98wt%が小さい方となる粒径であることを意味する。d98値は、「トップカット」とも呼ばれる。したがって、d50値は、重量メジアン粒径であり、すなわち、すべての粒子のうちの50wt%が、この粒径より小さい。本発明の目的に関するとき、粒径は、そうではないと示されていない限り、重量メジアン粒径d50として指定されている。重量メジアン粒径d50値またはトップカット粒径d98値を測定するために、Micromeritics社、USA製のSedigraph(商標)5100または5120という装置が使用され得る。方法および機器は、当業者に公知であり、一般的に、充填剤および顔料の粒度を測定するために使用されている。測定は、0.1wt%のNaの水溶液中で実施される。試料は、高速撹拌器および超音波を使用して分散される。
【0125】
少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料、好ましくは少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料は、例えば40.0μm未満のトップカットを有し得る。好ましくは、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料、好ましくは少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料は、30.0μm未満のトップカット、より好ましくは20.0μm未満のトップカットを有する。
【0126】
さらにまたは代替的には、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料、好ましくは少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料は、BET窒素方法によって測定された0.5m/gから200.0m/gまでの比表面積、より好ましくは0.5m/gから100.0m/gまでの比表面積、最も好ましくは0.5m/gから50.0m/gまでの比表面積を有する。
【0127】
本発明の意味における少なくとも1種の粒子状炭酸カルシウム含有材料の「比表面積」(m/gによる)という用語は、当業者に周知のBET方法(ISO9277:1995)を使用して測定される。
【0128】
3D成形可能なシート材料は好ましくは、シート材料の延伸加工性および破断点伸びの改善に適したポリマー材料を含む、層またはラミネート品を含まないことが理解されている。したがって、3D成形可能なシート材料は好ましくは、PE、PPおよびEVOH等のような(合成)ポリマー材料を含まない。
【0129】
本発明の別の態様によれば、3D成形物品の調製のための方法が提供される。この方法は、
a)本明細書に規定の3D成形可能なシート材料を提供する段階および
b)3D成形可能なシート材料を3D成形物品に成形する段階
を含む。
【0130】
3D成形可能なシート材料およびこのシート材料の好ましい実施形態の規定に関して、上記において本発明の3D成形可能なシート材料の技術的詳細を論述しているときに提供された記載を参照する。
【0131】
3D成形物品への3D成形可能なシート材料の成形は、3D成形物品を成形するための当業者に周知のすべての技法およびプロセスラインによって実施することが可能である。しかしながら、DIN8583に従った加圧成形方法は一般的に、3D成形可能なシート材料を3D成形物品に成形するのに適さないと理解されている。
【0132】
3D成形物品は好ましくは、DIN8584に従った引張圧縮成形方法またはDIN8585に従った引張成形方法によって成形される。
【0133】
3D成形物品への3D成形可能なシート材料の成形は、好ましくは、熱成形、真空成形、圧縮空気成形、深絞り成形、ハイドロフォーミング、球面成形、プレス成形または真空/圧縮空気成形によって実施される。これらの技法は、3D成形物品の成形に関して、当業者に周知である。
【0134】
3D成形物品に成形される3D成形可能なシート材料は、段階b)における成形プロセスを容易にするために、特定の含水量を有するべきであることが好ましい。特に、段階a)において提供された3D成形可能なシート材料は、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して2wt%以上の含水量を有することが好ましい。しかしながら、含水量が特定の値を超える場合、得られた3D成形物品の品質は、一般的に悪化する。したがって、段階a)において提供された3D成形可能なシート材料は、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して30wt%以下の含水量を有することが好ましい。
【0135】
したがって、段階a)において提供された3D成形可能なシート材料は好ましくは、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して2wt%から30wt%までの範囲の含水量を有する。例えば、段階a)において提供された3D成形可能なシート材料は好ましくは、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して6wt%から25wt%までの範囲または10wt%から20wt%までの範囲の含水量を有する。
【0136】
したがって、段階a)において提供された3D成形可能なシート材料の含水量が、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して2wt%以下であるか、または30wt%以上である場合、3D成形可能なシート材料は、湿潤されてもよい。
【0137】
したがって、一実施形態において、本方法は、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して2wt%から30wt%までの含水量になるまで、段階a)において提供された3D成形可能なシート材料を湿潤する、段階c)をさらに含む。
【0138】
好ましくは、段階c)は、3D成形可能なシート材料が、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して6wt%から25wt%までの含水量または10wt%から20wt%までの含水量になるまで湿潤されるように実施される。
【0139】
湿潤後の含水量は、一般慣行に従って測定されると理解されており、すなわち、湿潤後の含水量は好ましくは、湿潤の直後に測定されないと理解されている。好ましくは湿潤後の含水量は、3D成形可能なシート材料中における水分の平衡が達成されたらすぐに測定される。水分平衡を達成および測定するための方法は、当業者に周知である。
【0140】
例えば、含水量は、3D成形可能なシート材料の湿潤から少なくとも30分後に測定される。好ましくは、含水量は、3D成形可能なシート材料の湿潤から30分後から24時間後までに測定され、例えば、1時間後から24時間後までに測定される。
【0141】
湿潤する段階c)は、好ましくは、工程段階b)の前および/または最中に実施される。一実施形態において、湿潤する段階c)は、工程段階b)の前および最中に実施される。代替的には、湿潤する段階c)は、工程段階b)の前または最中に実施される。例えば、湿潤する段階c)は、工程段階b)の前に実施される。
【0142】
3D成形可能なシート材料の湿潤は、材料を湿潤するための当業者に周知のすべての方法および機器によって実施することが可能である。例えば、3D成形可能なシート材料の湿潤は、噴霧によって実施することが可能である。
【0143】
3D成形可能なシート材料は、
i)本明細書に規定のセルロース材料を提供する段階、
ii)段階i)のセルロース材料からなるプリシートを成形する段階、および
iii)段階ii)のプリシートを3D成形可能なシート材料に乾燥させる段階
によって得られていることが好ましい。
【0144】
3D成形可能なシート材料が添加剤を含む場合、セルロース材料は、段階i)において添加剤と組み合わせられる。
【0145】
一実施形態において、セルロース材料が、本明細書に規定の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と合わせられて、セルロース-無機充填剤材料混合物を形成する。この実施形態は好ましくは、セルロース材料が充填剤および/または顔料を含まない場合に当てはまると理解されている。3D成形可能なシート材料が添加剤を含む場合、セルロース材料が、段階i)において、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料および添加剤と組み合わせて、セルロース-無機充填剤材料混合物を形成する。
【0146】
セルロース材料、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料、添加剤およびこれらの好ましい実施形態の規定に関するときには、上記において本発明の3D成形可能なシート材料の技術的詳細を論述しているときに提供された記載を参照する。
【0147】
セルロース材料は、好ましくは、水性懸濁液の形態において提供される。例えば、水性懸濁液は、水性懸濁液の総重量に対して0.2wt%から35wt%までの範囲、より好ましくは0.25wt%から20wt%までの範囲、さらにより好ましくは0.5wt%から15wt%までの範囲、最も好ましくは1wt%から10wt%までの範囲のセルロース材料を含む。
【0148】
一実施形態において、セルロース材料は、充填剤および/または顔料の非存在下または存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって得られた、ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースである。
【0149】
セルロース材料が、充填剤および/または顔料の存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって得られたナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースである場合、充填剤および/または顔料と、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料とは同じであってよい。すなわち、充填剤および/または顔料は、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料である。したがって、この実施形態において、セルロース材料は好ましくは、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料とさらに合わせられない。
【0150】
別の好ましい実施形態において、セルロース材料は、充填剤および/または顔料の非存在下または存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって得られたナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースであり、セルロース材料は、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料とさらに組み合わせられる。
【0151】
いずれの場合においても、提供されたセルロース材料は、充填剤および/または顔料を含み、および/またはセルロース材料は、3D成形可能なシート材料が、3D成形可能なシート材料の総乾燥重量に対して45wt%以上の量の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料を含むように、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と組み合わせられる。
【0152】
セルロース材料が、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料と組み合わせられる場合、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料は、粉末形態、すなわち、乾燥した形態において提供され、または水性懸濁液の形態において提供される。
【0153】
少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料が、水性懸濁液の形態において提供される場合、水性懸濁液は、水性懸濁液の総重量に対して好ましくは1wt%から80wt%までの量、より好ましくは5wt%から78wt%までの量、さらにより好ましくは10wt%から78wt%までの量、最も好ましくは15wt%から78wt%までの量の粒子状無機充填剤材料を含む。
【0154】
一実施形態において、セルロース材料は、水性懸濁液の形態において提供され、少なくとも種の粒子状無機充填剤材料は、水性懸濁液の形態において提供される。
【0155】
代替的には、セルロース材料は、水性懸濁液の形態において提供され、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料は、粉末形態において提供される。
【0156】
本発明の意味における水性「スラリー」または水性「懸濁液」は、不溶性固形分および水を含み、通常、大量の固形分を含有することが可能であり、この結果、そこから水性スラリーまたは水性懸濁液が形成された液体に比べてより粘性が高い状態であることが可能であり、一般に、より高い密度を有し得る。
【0157】
「水性」スラリーまたは「水性」懸濁液という用語は、液相が水を含み、好ましくは水からなる、系を指す。しかしながら、前述の「水性」スラリーまたは「水性」懸濁液という用語は、水性スラリーまたは水性懸濁液の液相が、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフランおよびこれらの混合物を含む群から選択される少量の少なくとも1種の水混和性有機溶媒を含むことを排除しない。水性スラリーまたは水性懸濁液が少なくとも1種の水混和性有機溶媒を含む場合、水性スラリーの液相は、水性スラリーまたは水性懸濁液の液相の総重量に対して0.1wt%から40.0wt%までの量、好ましくは0.1wt%から30.0wt%までの量、より好ましくは0.1wt%から20.0wt%までの量、最も好ましくは0.1wt%から10.0wt%までの量の少なくとも1種の水混和性有機溶媒を含む。例えば、水性スラリーまたは水性懸濁液の液相は、水からなる。水性スラリーまたは水性懸濁液の液相が水からなる場合、使用すべき水は、水道水および/または脱イオン水のような、利用可能な任意の水であってよい。
【0158】
セルロース材料は、任意の順番で、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料および任意選択的な添加剤と組み合わせられる。好ましくは、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料および任意選択的な添加剤は、セルロース材料に添加される。
【0159】
セルロース材料は、ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースを含む、セルロース材料混合物である。
【0160】
好ましくは、セルロース材料は、充填剤および/または顔料の非存在下または存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって得られたナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースを含む、セルロース材料混合物である。
【0161】
ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースが、充填剤および/または顔料の非存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって得られている場合、好ましくは、ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースは、水性懸濁液の形態であり、水性懸濁液は、水性懸濁液の総重量に対して1wt%のナノフィブリル化セルロース含量および/またはミクロフィブリル化セルロース含量において、25℃において1mPa・sから2000mPa・sまでの範囲、より好ましくは25℃において10mPa・sから1200mPa・sまでの範囲、最も好ましくは25℃において100mPa・sから600mPa・sまでの範囲のブルックフィールド粘度を有する。
【0162】
ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースが、充填剤および/または顔料の存在下でセルロース繊維懸濁液をナノフィブリル化および/またはミクロフィブリル化することによって得られている場合、好ましくは、ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースは水性懸濁液の形態であり、水性懸濁液は水性懸濁液の総重量に対して1wt%のナノフィブリル化セルロース含量および/またはミクロフィブリル化セルロース含量において、25℃において1mPa・sから2000mPa・sまでの範囲、より好ましくは25℃において3mPa・sから1200mPa・sまでの範囲、最も好ましくは25℃において10mPa・sから600mPa・sまでの範囲のブルックフィールド粘度を有する。
【0163】
ナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースの水性懸濁液は、好ましくは水性懸濁液の総重量に対して0.2wt%から35wt%までの量、より好ましくは0.25wt%から20wt%までの量、さらにより好ましくは0.5wt%から15wt%までの量、最も好ましくは1wt%から10wt%までの量のナノフィブリル化セルロースおよび/またはミクロフィブリル化セルロースを含む。
【0164】
ナノフィブリル化セルロースおよびミクロフィブリル化セルロースを調製するための方法は、当業者に周知である。例えば、ナノフィブリル化セルロースおよびミクロフィブリル化セルロースを調製するための方法は、EP2386682A1、EP2386683A1、EP2236664A1、EP2236545A1、EP2808440A1およびEP2805986A1において記述されており、したがって、これらは、参照により本明細書に組み込むが、加えて、Franklin W.Herrickら「Microfibrillated Cellulose:Morphology and Accessibility」、Journal of Applied Polymer Science:Applied Polymer Symposium 37、797-813(1983)およびHubbeら「Cellulosic nanocomposites,review」BioResources、3(3)、929-890(2008)においても記述されている。
【0165】
「セルロース-無機充填剤材料混合物」という用語は、セルロース材料、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料および任意選択的な添加剤の混合物を指すと理解されている。好ましくは、セルロース-無機充填剤材料混合物は、セルロース材料、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料および任意選択的な添加剤の均一な混合物である。
【0166】
セルロース-無機充填剤材料混合物は好ましくは、セルロース材料、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料および任意選択的な添加剤を含む水性懸濁液である。一実施形態において、セルロース-無機充填剤材料混合物の水性懸濁液は、水性懸濁液の総重量に対して0.3wt%から35wt%までの範囲、より好ましくは0.5wt%から30wt%までの範囲、さらにより好ましくは0.7wt%から25wt%までの範囲、最も好ましくは0.9wt%から20wt%までの範囲の固形分含量を有する。
【0167】
本方法の段階ii)に従って、段階i)のセルロース-無機充填剤材料混合物からなるプリシートが成形される。
【0168】
成形段階ii)は、セルロース-無機充填剤材料混合物のプリシートを成形するための当業者に周知のすべての技法および方法によって実施することが可能である。成形段階ii)は、任意の従来の成形機によって、例えば、セルロース-無機充填剤材料混合物からできた連続プリシートまたは非連続プリシートが得られるような条件下で実施されてもよいし、または当業者に知られた他のこのような設備によって実施されてもよい。例えば、成形は、J.Rantanenら、Forming and dewatering of a microfibrillated cellulose composite paper.BioRes.10(2)、2015、3492-3506に記載の抄紙機内で実施することが可能である。
【0169】
セルロース-無機充填剤材料混合物のプリシートは、プリシートの含水量を低下させる段階に供されることが可能である。このような含水量を低下させる段階は、工程段階ii)の最中または後に、好ましくは工程段階ii)の後に実施することが可能である。このような含水量を低下させる段階は、プリシートの含水量を低下させるための当業者に周知のすべての技法および方法によって実施することが可能である。含水量を低下させる段階は、任意の従来の方法によって実施することが可能であり、例えば、含水量を低下させる段階より前の含水量に比較して低下した含水量を有するプリシートが得られるような圧力、湿式プレス加工用の真空、重力もしくは吸引力または当業者に知られた他のこのような設備によって実施することが可能である。
【0170】
そうではないとの定めがない限り、「含水量を低下させる」という用語は、予備乾燥されたプリシートが得られるようにプリシートから水の一部のみが除去される、プロセスを指す。さらに、「予備乾燥された」プリシートは、そうではないとの定めがない限り、プリシートの総重量に対して5wt%以上であり、好ましくは8wt%以上であり、より好ましくは10wt%以上であり、最も好ましくは20wt%から60wt%までである、合計含水量によってさらに規定されることも可能である。
【0171】
したがって、本方法は好ましくは、段階ii)のプリシートを脱水する段階iv1)をさらに含む。
【0172】
一実施形態において、段階iv1)の脱水は、加圧下、好ましくは10kPaから150kPaまでの範囲の圧力下、より好ましくは20kPaから100kPaまでの範囲の圧力下、最も好ましくは30kPaから80kPaまでの範囲の圧力下で実施される。
【0173】
代替的には、本方法は、段階ii)のプリシートを湿式プレス加工する段階iv2)をさらに含む。
【0174】
一実施形態において、段階iv1)において得られたプリシートは、含水量をさらに低下させるために、湿式プレス加工する段階にさらに供される。この場合、本方法は、段階iv1)のプリシートを湿式プレス加工する段階iv2)をさらに含む。
【0175】
湿式プレス加工する段階iv2)は好ましくは、100kPaから700kPaまでの範囲の圧力下、好ましくは200kPaから600kPaまでの範囲の圧力下、最も好ましくは300kPaから500kPaまでの範囲の圧力下で実施される。さらにまたは代替的には、湿式プレス加工する段階iv2)は、10℃から80℃までの範囲の温度、好ましくは15℃から75℃までの範囲の温度、より好ましくは20℃から70℃までの範囲の温度において実施される。
【0176】
好ましくは、段階ii)または段階iv1)のプリシートを湿式プレス加工する段階iv2)は、100kPaから700kPaまでの範囲の圧力下、好ましくは200kPaから600kPaまでの範囲の圧力下、最も好ましくは300kPaから500kPaまでの範囲の圧力下で、10℃から80℃までの範囲の温度、好ましくは15℃から75℃までの範囲の温度、より好ましくは20℃から70℃までの範囲の温度において、実施される。
【0177】
段階iii)に従って、段階ii)または段階iv1)または段階iv2)のプリシートは、3D成形可能なシート材料になるように乾燥される。
【0178】
「乾燥させる」という用語は、3D成形可能なシート材料が得られるようにプリシートから水の少なくとも一部が除去される、プロセスを指す。さらに、「乾燥済み」3D成形可能なシート材料は、そうではないとの定めがない限り、乾燥済み材料の総重量に対して30wt%以下、好ましくは25wt%以下、より好ましくは20wt%以下、最も好ましくは15wt%以下である、合計含水量によってさらに規定されることも可能である。
【0179】
このような乾燥させる段階は、プリシートを乾燥させるための当業者に周知のすべての技法および方法によって実施することが可能である。乾燥させる段階は、任意の従来の方法によって実施することが可能であり、例えば、乾燥の前の含水量に比較して低下した含水量を有するプリシートが得られるような圧力、重力もしくは吸引力または当業者に知られた他のこのような設備によって実施することが可能である。
【0180】
一実施形態において、段階iii)は、加圧乾燥によって実施され、例えば、50kPaから150kPaまでの範囲の圧力下、好ましくは60kPaから120kPaまでの範囲の圧力下、最も好ましくは80kPaから100kPaまでの範囲の圧力および/または80℃から180℃までの範囲の温度、好ましくは90℃から160℃までの範囲の温度、より好ましくは100℃から150℃までの範囲の温度において、加圧乾燥によって実施される。
【0181】
一実施形態において、段階iii)は、50kPaから150kPaまでの範囲の圧力下、好ましくは60kPaから120kPaまでの範囲の圧力下、最も好ましくは80kPaから100kPaまでの範囲の圧力下で、80℃から180℃までの範囲の温度、好ましくは90℃から160℃までの範囲の温度、より好ましくは100℃から150℃までの範囲の温度において、加圧乾燥によって実施される。
【0182】
上記に規定の3D成形可能なシート材料の非常に良好な結果を鑑みて、本発明のさらなる一態様は、3D成形可能なシート材料の調製のための、本明細書に規定のセルロース材料および本明細書に規定の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の使用に関連する。
【0183】
本発明の別の態様は、3D成形可能なシート材料の延伸加工性を増大させるための、本明細書に規定のセルロース材料および本明細書に規定の少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料の使用であって、3D成形可能なシート材料が、1パーセント当たり0.15%から0.7%までの範囲である含水量の濃度当たりの正規化延伸増分を有するときに、増大が達成される、使用に関連する。含水量の濃度当たりの正規化延伸増分は、好ましくは、上記に規定の式(I)に従って決定される。
【0184】
一実施形態において、増大は、3D成形可能なシート材料が、1パーセント当たり0.15%から0.6%までの範囲、最も好ましくは1パーセント当たり0.2%から0.6%までの範囲である含水量の濃度当たりの正規化延伸増分を有する場合に達成される。含水量の濃度当たりの正規化延伸増分は、好ましくは、上記に概説した式(I)に従って決定される。
【0185】
一実施形態において、3D成形可能なシート材料は、10%の3D成形可能なシート材料の含水量において、4%から10%までの範囲、好ましくは5%から10%までの範囲の延伸加工性を有する。さらにまたは代替的には、3D成形可能なシート材料は、20%の3D成形可能なシート材料の含水量において、6%から18%までの範囲、好ましくは7%から18%までの範囲の延伸加工性を有する。延伸加工性は好ましくは、上記に概説した式(II)に従って決定される。
【0186】
本発明のなおさらなる一態様は、3D成形プロセスにおける、本明細書に規定の3D成形可能なシート材料の使用に関連する。好ましくは、本発明は、熱成形、真空成形、圧縮空気成形、深絞り成形、ハイドロフォーミング、球面成形、プレス成形または真空/圧縮空気成形における、本明細書に規定の3D成形可能なシート材料の使用に関連する。
【0187】
本発明のさらなる一態様は、本明細書に規定の3D成形可能なシート材料を含む、3D成形物品、好ましくは包装容器、食品容器、ブリスターパック、食品トレーに関連する。
【0188】
セルロース材料、少なくとも1種の粒子状無機充填剤材料、3D成形可能なシート材料およびこれらの好ましい実施形態の規定に関するときには、上記において本発明の3D成形可能なシート材料の技術的詳細を論述しているときに提供された記載を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0189】
図1】GCC粒子の存在下で調製されたミクロフィブリル化セルロースを示す図である。
図2】充填剤および/または顔料の非存在下で調製されたミクロフィブリル化セルロースを示す図である。
図3】延伸度と水分との関係を示すグラフである。
【実施例
【0190】
下記の例は、本発明をさらに説明することができるが、本発明を例示された実施形態に限定することを意図するものではない。下記の例は、本発明による3D成形可能なシート材料ならびに延伸加工性および破断点伸びのような当該シート材料の優れた良好な機械的特性を示している。
【0191】
測定方法
下記の測定方法が、実施例および特許請求の範囲において与えられたパラメーターを評価するために使用される。
【0192】
顔料スラリーのようなセルロースを含有する試料である水性懸濁液の固形分含量
懸濁液の固形分含量(「乾燥重量」としても公知)を、Mettler-Toledo社、Switzerland製のMoisture Analyzer MJ33を使用して測定したが、このとき、160℃の乾燥温度、30秒の期間にわたって質量が1mg超変化しない場合は自動的にスイッチオフ、5gから20gまでの懸濁液の標準乾燥という設定を用いた。
【0193】
含水量
含水量(wt%)=100(wt%)-固形分含量(wt%)
【0194】
鉱物粒子の粒径
本明細書において使用されている重量メジアン粒径d50およびトップカットd98は、Micromeritics Instrument Corporation製のSedigraph(商標)5120機器の使用によってなされた測定に基づいて、決定されている。方法および機器は、当業者に公知であり、一般的に、充填剤および顔料の粒度を測定するために使用されている。測定は、0.1wt%のNaを含む水溶液中で実施した。試料は、高速撹拌器および超音波を使用して分散した。分散された試料の測定の場合、さらなる分散剤は、添加しなかった。
【0195】
繊維長測定
長さ加重平均繊維長を、Kajaani FS200(Kajaani Electronics Ltd、now Valmet、Finland)によって測定した。方法および機器は、当業者に公知であり、一般的に、繊維のモルフォロジに関するパラメーターを測定するために使用されている。測定は、約0.010wt%の固形分含量をもたらした。
【0196】
ろ水度試験機(Schopper Riegler)
ショッパー-リグラー度(Schopper-Riegler degree:SR)を、Zellcheming Merkblatt V/7/61に従って測定し、ISO5267/1により標準化した。
【0197】
ブルックフィールド粘度
水性懸濁液のブルックフィールド粘度が、適切なディスクスピンドル、例えばスピンドル1番から6番を装着したブルックフィールド粘度計型RVTの使用によって、25℃±1℃、100rpmにおいて、製造から1時間後および撹拌から1分後に測定された。
【0198】
MFCの種類を区別するための光学顕微鏡法
グラフ顕微鏡写真が、透過光および明視野方法を使用して光学顕微鏡によって撮影された。
【0199】
フィルム成形装置:「Scandinavian Type」実験用シート
SCAN-CM64:00「Preparation of laboratory sheets for physical testing」に記載の装置が使用されたが、いくつかの修正(J.Rantanenら、「Forming and dewatering of a microfibrillated cellulose composite paper」、BioResources 10(2)、2015、3492-3506頁)が実施された。
【0200】
フィルム成形装置:「Rapid Kothen Type」実験用シート
ISO5269/2「Preparation of laboratory sheets for physical testing-Part 2:Rapid Kothen method」に記載の装置が使用されたが、いくつかの修正が加えられており、さらなる詳細に関しては、メソッドの部「MFC filler composite films produced with“Rapid Kothen Type”laboratory sheet former」を参照されたい。
【0201】
引張試験機
L&W Tensile Strength Tester(Lorentzen&Wettre、Sweden)を、ISO1924-2に記載の手順に従った破断点伸びの測定のために使用した。
【0202】
3D成形の設備および手順
Laboratory Platen Press TypeP300(Dr.Collins、Germany)を、成形のために使用した。圧力、温度およびプレス加工時間を相応に調整した。
【0203】
2個のアルミニウムダイを使用した。16cm×16cm×2.5cmの外形寸法と、直径が10cmで深さが1cmの円形区画に相当する雌型部分とを有する、第1の型が、約3%の線状延伸レベルを示している。16cm×16cm×3.5cmの外形寸法と、直径が10cmで深さが2cmの円形区画に相当する雌型部分とを有する、第2の型が、約10%の線状延伸レベルを示している。
【0204】
EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマーゴム)から製造された寸法20cm×20cm×1cmも寸法を有する軟質ゴムプレート
【0205】
1.材料
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)と充填剤とのコンパウンド
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)と充填剤とのコンパウンドを、40wt%の酵素処理(Buckman Maximyze2535)によって得、機械的に(ディスク型叩解装置により、60°SR超のろ水度になるまで)予備処理し、共回転型二軸押出機内で55%の固形分含量において、パルプを60wt%のGCC充填剤(Hydrocarb(登録商標)60)と一緒に溶解させた。ミクロフィブリル化の品質は、図1の微視的な画像によって特徴付けられる。
【0206】
充填剤を含まないミクロフィブリル化セルロース(MFC)
図2の微視的な画像によって特徴付けられたミクロフィブリル化セルロース(MFC)を使用した。このミクロフィブリル化セルロースは、3.8wt%の固形分含量を有する懸濁液として利用可能だった。
【0207】
広葉樹材パルプ
一旦乾燥させた、0.81mmの長さ加重平均繊維長を有する市販ユーカリパルプ。
【0208】
針葉樹材パルプ
一旦乾燥させた、2.39mmの長さ加重平均繊維長を有する針葉樹材(マツ)パルプ。
【0209】
GCC、Hydrocarb(登録商標)60(Omya International AG、Switzerlandから入手可能)
78wt%の固形分含量および1.6μmの重量メジアン粒径d50を有する、分散された重質炭酸カルシウム(GCC)顔料スラリーが使用された。
【0210】
PCC、Syncarb(登録商標)F0474(Omya International AG、Switzerlandから入手可能)
15wt%の固形分含量および2.7μmの重量メジアン粒径d50を有する、分散されていない沈降炭酸カルシウム(PCC)顔料スラリーが使用された。
【0211】
Percol(登録商標)1540、BASF(Germany)
【0212】
2.方法
充填剤の存在下で製造されたミクロフィブリル化セルロース(MFC)からできた顕微鏡法試料の調製
濡れた(約55wt%の)MFC-充填剤コンパウンド(材料の部において記述された)からできた小さな試料(0.1g)を、ガラスビーカー内に配置し、500mlの脱イオン水を加えた。調理用ミキサーを使用して、繊維と炭酸カルシウム粒子との分離を補助した。次いで、2mlの10wt%の塩酸を添加して、炭酸カルシウムを溶解させた後、得られた混合物を、調理用ミキサーによって2分間混合した。この懸濁液を数滴、顕微鏡用スライドガラス上に垂らし、オーブン内で120℃において乾燥させた。
【0213】
MFCからできた顕微鏡法試料の調製
材料の部において上述された充填剤(3.8wt%の固形分含量)を含まない約1gのミクロフィブリル化セルロース(MFC)を、ガラスビーカー内に配置し、500mlの脱イオン水を加えた。調理用ミキサーを2分間使用して、繊維材料を分離した。数滴のこの懸濁液を、顕微鏡用スライドガラスに垂らし、オーブン内で120℃において乾燥させた。
【0214】
広葉樹材パルプの調製
乾燥したらすぐに、ユーカリパルプをISO5263-1に従って離解し、1.5wt%の固形分含量になるまで希釈した。叩解は、適用されなかった。
【0215】
叩解広葉樹材パルプの調製
乾燥したらすぐに、ユーカリパルプをISO5263-1に従って離解し、3wt%の固形分含量になるまで希釈した。実験用ディスク叩解装置(Escher Wyss、now Voith、Germany)を使用して、30°SRのろ水度を有するユーカリパルプを調製した。
【0216】
針葉樹材パルプの調製
乾燥したらすぐに、針葉樹材パルプをISO5263-1に従って離解し、1.5wt%の固形分含量になるまで希釈した。叩解は、適用されなかった。
【0217】
叩解針葉樹材パルプの調製
乾燥したらすぐに、針葉樹材パルプをISO5263-1に従って離解し、1.5wt%の固形分含量になるまで希釈した。実験用ディスク叩解装置(Escher Wyss、now Voith、Germany)を使用して、25°SRのろ水度を有する針葉樹材パルプを調製した。
【0218】
MFCを用いないフィルム成形のための完成紙料の調製
乾燥重量に基づいた配合物に応じて、1wt%の最終的な固形分含量を達成するような広葉樹材パルプまたは広葉樹材パルプまたは針葉樹材パルプまたは叩解針葉樹材パルプ、最終的なGCC粒子および/またはPCC粒子ならびに脱イオン水を、高せん断条件(Pendraulik、LD50 Labordissolver、Pendraulik、Germany)下において15分の混合時間によって調製した。
【0219】
MFC充填剤コンパウンドの液体懸濁液の調製
10wt%の固形分含量を達成するような量の脱イオン水を、55wt%の固形分含量を有するコンパウンドに添加した。高せん断混合(Pendraulik、LD50 Labordissolver、Pendraulik、Germany)を15分間施して、コンパウンドを分散させ、続いて、所望の固形分含量濃度(5wt%、4wt%、2.5wt%、1wt%)になるまで、やはり15分の高せん断混合段階(Pendraulik、2000rpm)を用いて、脱イオン水によってさらに希釈した。
【0220】
MFC充填剤コンパウンドを用いたフィルム成形のための完成紙料の調製
乾燥重量に基づいた配合物に応じて、1wt%の最終的な固形分含量を達成するような1wt%の固形分含量を有するMFC充填剤コンパウンド懸濁液、広葉樹材パルプまたは針葉樹材パルプおよび脱イオン水の混合物を、高せん断条件(Pendraulik、LD50 Labordissolver、Pendraulik、Germany)下において15分の混合時間によって調製した。
【0221】
充填剤を含まないMFC懸濁液の調製
所望の固形分含量濃度(2wt%、1wt%)を得るために、脱イオン水をMFC懸濁液に添加し、適切な混合を確保するために、高せん断混合(Pendraulik、LD50 Labordissolver、Pendraulik、Germany)を15分間施した。
【0222】
充填剤を含まないMFCを用いたフィルム成形のための完成紙料の調製
乾燥重量に基づいた配合物に応じて、1%の最終的な固形分含量を達成するようにMFC、PCCおよび/またはGCC、ユーカリパルプまたは針葉樹材パルプならびに脱イオン水を含有する混合物を、高せん断条件(Pendraulik、LD50 Labordissolver、Pendraulik、Germany)下において15分の混合時間によって調製した。
【0223】
「Scandinavian Type」実験用シート成形装置によって製造されたMFC充填剤複合フィルム
修正版「Scandinavian Type」実験用シート成形装置を使用して、フィルムを製造した。通常200g/mのフィルム重量を達成するために調製された相応の量の完成紙料を、下側区域の頂部部分としてメンブレンにしっかりと連結された上側区域に充填した。頂部区域をフードによって閉じ、0.5barの超過圧力を加えて、メンブレンによる脱水を加速した。撹拌またはさらなる希釈は、採用されなかった。成形後、シートを、当技術分野において公知のように2枚の吸取紙の間に入れた状態で調製し、次いで、420kPaにおいて260秒間プレス加工した。4枚のシートが2枚の吸取紙の間に配置された状態で、130℃の温度および95kPaの圧力を用いる、さらなるホットプレス加工段階を使用して、シートを乾燥させた。物理的試験のために、シートをコンディショニング済みの中に配置し、成形のために、湿潤手順を適用した。
【0224】
「Rapid Kothen Type」実験用シート成形装置によって製造されたMFC充填剤複合フィルム
ISO5269/2「Preparation of laboratory sheets for physical testing-Part 2:Rapid Kothen method」に従ったシート成形手順を使用したが、このとき、メッシュ幅が50μmのワイヤーを使用するという修正を加えた。希釈のための水は、添加されなかった。混合のための空気は、使用されなかった。充填から5秒後、脱水弁を開き、真空を25秒間施用した。シートを、Sheet Press(PTI、Austria)によってプレス加工し、次いで、吸取紙の間の入れた状態で115℃において8分間乾燥させた。
【0225】
成形試行のためのシートの再湿潤
現時点の含水量(100-wt%による固形分含量)に基づいて、6.25wt%、8wt%、10wt%、15wt%または20wt%の含水量を達成するような所望の量の脱イオン水を、エアロゾル缶の使用によってMFC充填剤複合フィルムに噴霧した。同じ組成物および同じ水分濃度のMFC充填剤複合フィルムが、湿度の均一な分配を確保するために、閉じたプラスチック袋内に24時間貯蔵された。
【0226】
3D成形
3D成形のために、積層体が、底部から頂部に向かって調製されなければならず、すなわち、最初に、プラテンプレスの底部部分が存在し、続いて、型が表面を上にした状態のアルミニウムダイ、成形対象のシート/フィルム/材料、複数のゴムプレート(1cmの深さの型の場合は3-4枚、2cmの深さの型の場合は5-6枚)からできた層が存在し、最後に、プラテンプレスの頂部部分が存在する。使用されたプレスにおいて、底部部分は移動しており、所望の温度に加熱されることが可能であった。成形試行を開始する前に、相応のダイが、所望の温度を達成するように加熱されているプレスの中に配置された。圧力、プロセスの動特性(速度および時間)、温度は、相応に調整しなければならない。
【0227】
3.実験
a)MFC懸濁液の粘度
【0228】
【表1】
【0229】
b)異なる水分濃度におけるMFC充填剤複合材料シート材料の特性
得られたシート材料の特性も、図3において示されている。
【0230】
【表2】
【0231】
c)3D成形実験
(1)3D成形パラメーター
「Scandinavian Type」実験用シート。成形において、より低い圧力が有益である。
【0232】
【表3】
【0233】
(2)参照用試料
「Rapid Kothen型」実験用シート。
【0234】
【表4】
【0235】
(3)コンパウンド系列1、基本条件
「Scandinavian Type」実験用シート。
【0236】
【表5】
【0237】
(4)コンパウンド系列2、強制条件および15wt%の含水量
「Scandinavian Type」実験用シート。
【0238】
【表6】
【0239】
(5)コンパウンド系列3、強制条件および20wt%の含水量
「Scandinavian Type」実験用シート。
【0240】
【表7】
【0241】
(6)コンパウンド系列4、強制条件、10wt%の含水量における異なる組成物
「Scandinavian Type」実験用シート。
【0242】
【表8】
【0243】
(7)コンパウンド系列5、強制条件、20wt%の含水量における異なる組成物
「Scandinavian Type」実験用シート。
【0244】
【表9】
図1
図2
図3