(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】光学的な審美的及び技術的効果を発生させることを可能にする光学的デバイス
(51)【国際特許分類】
G04B 19/26 20060101AFI20220518BHJP
G04B 45/00 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
G04B19/26 A
G04B45/00 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020175815
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2020-10-20
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】594082512
【氏名又は名称】ブランパン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ピエルパスクヮーレ・トルトラ
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ブラッテル
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ドゥボー
(72)【発明者】
【氏名】ベルナト・モンフェレール
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/054962(WO,A1)
【文献】実開昭51-5376(JP,U)
【文献】特開2014-178489(JP,A)
【文献】特開2012-237883(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第3064376(FR,A1)
【文献】特開2012-198030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
G02B 26/00 - 26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面(100)と、この上面(100)から離れて延在している下面(102)がある光透過性の支持体(98)を備える光学的デバイスであって、
この光透過性の支持体(98)は、第1の側にて平坦な面(110)によって境界が定められ、第1の側と反対の第2の側にて凹面(112)によって境界が定められる平凹レンズ(108)を形成し、
当該光学的デバイスは、さらに、前記光透過性の支持体(98)の前記凹面(112)の下にて前記凹面(112)から離れた位置に配置されるシャッター(94)を備え、
当該光学的デバイスは、前記シャッター(94)の奥に配置される基材(106)を備え、
当該光学的デバイスは、前記平凹レンズ(108)を通して前記シャッター(94)のエッジの像
と、前記平凹レンズ(108)の前記平坦な面の上に形成された物体の像とを一緒に形成する、
ことを特徴とする光学的デバイス。
【請求項2】
前記平凹レンズ(108)が作られている材料の光学屈折率は、1.60~1.85である
ことを特徴とする請求項1に記載の光学的デバイス。
【請求項3】
前記光学屈折率は1.78である
ことを特徴とする請求項2に記載の光学的デバイス。
【請求項4】
前記平凹レンズ(108)は、ガラス又はポリマーによって作られている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の光学的デバイス。
【請求項5】
前記凹面(112)は曲がっている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の光学的デバイス。
【請求項6】
前記凹面(112)は、非球面の
形状を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の光学的デバイス。
【請求項7】
前記シャッター(94)は、曲がった
形状を備える
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の光学的デバイス。
【請求項8】
前記シャッター(94)は、双曲状の
形状を備える
ことを特徴とする請求項7に記載の光学的デバイス。
【請求項9】
前記光透過性の支持体(98)の前記上面(100)又は前記下面(102)のいずれかに
前記物体である月に
関する描写(104)が
形成され、
当該光学的デバイスは、さらに、計時器用ムーブメントによって動かされることを意図され前記シャッター(94)を駆動する駆動手段(72)を備え、
前記シャッター(94)と前記基材(106)は、表示コントラストが互いに逆であり、
前記シャッター(94)は、1つの月周期の間に初期位置から最終位置へ移動して、これによって、新月から第1クオーター月へ、第1クオーター月から満月へ、満月から第4クオーター月へ、そして第4クオーター月から新月へと変わる
月相を日々観測者(96)に対して表示し、
前記シャッター(94)は、月周期の終了時において、最終位置から初期位置へと前記駆動手段によって戻される
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の光学的デバイス。
【請求項10】
前記駆動手段(72)は、まっすぐなラック(80)を備え、このまっすぐなラック(80)と前記シャッター(94)がともに並進運動をするように固定されて連結している
ことを特徴とする請求項9に記載の光学的デバイス。
【請求項11】
当該光学的デバイスは、間隙をなくすデバイスを備え、この間隙をなくすデバイスの上側車(78)の回転軸(76)上に、前記駆動手段(72)の下側車(74)が回転自由にマウントされ、
この下側車(74)は、前記まっすぐなラック(80)と噛み合う
ことを特徴とする請求項10に記載の光学的デバイス。
【請求項12】
前記計時器用ムーブメントは、月周期の整数倍の期間に完全な1回転の自転をするカム(52)を運動学的に駆動する運動機構の可動部品を備え、
このカム(52)は、第1のラック(62)によって恒久的に追従される
輪郭(58)を備え、
この第1のラック(62)には、歯付き区画(64)があり、この歯付き区画(64)によって前記第1のラック(62)が前記駆動手段(72)と噛み合う
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の光学的デバイス。
【請求項13】
前記第1のラック(62)には、フィーラービーク(66)があり、このフィーラービーク(66)によって前記第1のラック(62)が前記カム(52)の
輪郭(58)に恒久的に追従し、
この
輪郭(58)は、スネール状であり、この
輪郭(58)には、少なくとも1つの実質的にまっすぐに落とす段(60)があり、
これによって、新しい月周期が開始するすぐ前に、前記フィーラービーク(66)は、前記カム(52)の前記
輪郭(58)の頂部にあり、その後に前記段(60)において落ち、
この運動の間に、前記第1のラック(62)は、その歯付き区画(64)によって、前記駆動手段(72)に運動学的に接続されているピニオン(68)を駆動する
ことを特徴とする請求項12に記載の光学的デバイス。
【請求項14】
前記上側車(78)は、一方では、前記まっすぐなラック(80)と係合し、他方では、中間ピニオン(86)を備える中間可動部品(84)の中間車(82)と係合し、
この中間ピニオン(86)は、第4のばね(92)の戻し力の制約を弾性的に受ける第2のラック(90)の歯付き区画(88)と噛み合う
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の光学的デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい視覚的効果を発生させることを可能にし審美的及び技術的アプリケーションの両方に適した光学的デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
「万華鏡(kaleidoscope)」は、19世紀初頭にスコットランドの物理学者のブルースターによって考えられ、色付けしながら外部光を無限に反射する光学器具であり、鏡で反射することによってこの光学器具内を光が伝播する。この光学機器の名前は、ギリシャ語で「美しい」を意味する「kalos」、「像」を意味する「eidos」、そして「見る」を意味する「skopein」から名付けられた。万華鏡は、管の第1の端に光が入り込み第2の端から観察者が見る形態であり、多くの着色されたガラス片を収容している。これらのガラス片は振られると、ほとんど無限の数の組み合わせで互いに構成を変えて、美しい変化する像を作る。以下を読むことによって理解することができるように、万華鏡は、本発明を適用することができるデバイスの一例である。
【0003】
本発明を適用することができるデバイスの別の例として、計時器、特に、腕時計、において長い間用いられている月相表示機構がある。このような月相表示機構の目的は、月の周期における現在の段階を携行型時計(例、腕時計、懐中時計)の所有者に知らせることである。しかし、このような月相表示機構には、携行型時計の所有者が月の周期における現在の段階を容易に判断することを可能にするような正確な指示を提供することよりも装飾上の目的がある。最も単純な月相表示機構は、月相の様々な表現(第1クオーター月、満月、第4クオーター月、新月)を指示する針インジケーターを備える。他の既知の月相表示機構においては、月の2つの表現を担持するディスクを備えるものがあり、このディスクの一部を携行型時計の表盤に形成された特殊な形状の開口を通して見ることができ、漸大月、満月、欠けていく月及び新月を順に示す。様々な月相をこのように提示することは、審美的観点から非常に有利である。しかし、月が表現される形態は、月が星として空において見える様相とあまり密接な関係はない。さらに別の月相表示機構として、月の周期ごとに完全に自転する2色の球体を備えるものがある。このような月相表示機構によって、月の面をリアリスティックに表現することができる。しかし、このような月相表示機構は、月の異なる様相を表現するために球体を用いるので、厚みがあり、大きな空間を占め、計時器用ムーブメント、特に、腕時計、に搭載することは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明には、光学的な審美的及び技術的効果を発生させる光学的デバイスを提供することによって、上記の課題を解決するという目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、本発明は、上面と、この上面から離れて延在している下面がある光透過性の支持体を備える光学的デバイスに関する。この光透過性の支持体は、第1の側にて平坦な面によって境界が定められ、第1の側と反対の第2の側にて凹面によって境界が定められる平凹レンズを形成し、当該光学的デバイスは、さらに、前記光透過性の支持体の前記凹面の下にて前記凹面から離れた位置に配置されるシャッターを備え、当該光学的デバイスは、前記シャッターの奥に配置される基材を備え、当該光学的デバイスは、前記平凹レンズを通して前記シャッターのエッジの像を射影するように構成しており、前記平凹レンズの前記平坦な面の上に物体の像が配置される。
【0006】
本発明の特別な実施形態には、以下の特徴がある。
- 前記平凹レンズが作られている材料の光学屈折率は、1.60~1.85であり、好ましくは、1.78に等しいないし実質的に等しい。
- 前記平凹レンズは、ガラス又はポリマーによって作られている。
- 前記平凹レンズの凹面は、曲がったプロファイル、好ましくは、非球面のプロファイルを有する。なお、これに限定されない。
- 前記シャッターは、曲がったプロファイル、好ましくは、双曲状のプロファイル、を有する。なお、これに限定されない。
- 前記光透過性の支持体の前記上面又は前記下面のいずれかに月の表現が透過され、当該光学的デバイスは、さらに、計時器用ムーブメントによって動かされ前記シャッターを駆動する駆動手段を備え、前記シャッターと前記基材は、表示コントラストが互いに逆であり、前記シャッターは、1つの月周期の間に初期位置から最終位置へ移動して、これによって、新月から第1クオーター月へ、第1クオーター月から満月へ、満月から第4クオーター月へ、そして第4クオーター月から新月へと変わる月の様相を日々観測者に対して表示し、前記シャッターは、月周期の終了時において、最終位置から初期位置へと前記駆動手段によって戻される。
- 前記駆動手段は、まっすぐなラックを備え、このまっすぐなラックと前記シャッターがともに並進運動をするように固定されて連結している。
- 前記駆動手段は、回転軸上にて下側車と上側車を備え、この下側車は、前記まっすぐなラックと噛み合い、回転自由にマウントされる。
- 前記計時器用ムーブメントは、月周期の整数倍の期間に完全な1回転の自転をするカムを運動学的に駆動する運動機構の可動部品を備え、
このカムは、第1のラックによって恒久的に追従されるプロファイルを備え、
この第1のラックには、歯付き区画があり、この歯付き区画によって前記第1のラックが当該月相表示機構の前記駆動手段と噛み合う。
- 前記第1のラックには、フィーラービークがあり、このフィーラービークによって前記第1のラックが前記カムのプロファイルに恒久的に追従し、このプロファイルは、スネール状であり、このプロファイルには、少なくとも1つの実質的にまっすぐに落とす段があり、これによって、新しい月周期が開始するすぐ前に、前記フィーラービークは、前記カムの前記プロファイルの頂部にあり、その後に前記段において落ち、この運動の間に、前記第1のラックは、その歯付き区画によって、当該月相表示機構の前記駆動手段に運動学的に接続されているピニオンを駆動する。
- 間隙をなくすデバイスは、前記上側車を備え、前記上側車は、一方では、前記まっすぐなラックと係合し、他方では、中間ピニオンを備える中間可動部品の中間車と係合し、この中間ピニオンは、第4のばねの戻し力の制約を弾性的に受ける第2のラックの歯付き区画と噛み合う。
【0007】
これらの特徴のおかげで、本発明は、平凹レンズを通して、平凹レンズの平坦な面の上に配置される物体上にシャッターのエッジの像を射影することを可能にする光学的デバイスを提供する。
【0008】
本発明に係るデバイスを万華鏡と組み合わせて使用することに関心があることがある。実際に、平凹レンズを通過する際に最適化されるシャッターのエッジの像は、色付けされたガラスの断片の像上に重ね合わされ、これによって、これらの像のプロファイルを変え、これらの像の形状の組み合わせをさらに増やすことが可能になる。
【0009】
本発明は、さらに、月相表示機構のアプリケーションにおいても非常に興味深い。このために、本発明の特定の実施形態において、前記光透過性の支持体の前記平坦な面に月の表現が透過され、前記シャッターは、前記光透過性の支持体と前記基材の間に配置されるように構成している。前記シャッターと前記基材は、表示コントラストが互いに逆である。前記シャッターは、1つの月周期の間に初期位置から最終位置へと変位する。これによって、新月から第1クオーター月へ、第1クオーター月から満月へ、満月から第4クオーター月へ、そして第4クオーター月から新月へと変わる月の様相を日々観測者に対して表示する。前記シャッターは、月周期の終了時において、最終位置から初期位置へと前記駆動手段によって戻される。このようにして、月の異なる様相が、オリジナルでありユーザーが容易に理解することができるように表現される。特に、本発明に係る光学的デバイスによって提供される月の表現は、空における月の実際の様相に非常に近く、このために、月周期のどの時期に月があるのかを判断することがユーザーにとってはるかに容易になる。本発明に係る光学的デバイスは、さらに、自転する球体を用いるものよりも薄く、したがって、計時器用ムーブメント、特に、腕時計、に搭載することが容易になる。また、月のクオーター段階に関係なく、携行型時計の所有者が常に月の表現を見ることができる。また、本発明に係る光学的デバイスによって、異なる色の2つの面によって形成され明暗界線、すなわち、月の暗い部分と明るい部分の間の曲線、によって分けられるリアリスティックな様々な月の相の表現を得ることができる。そのプロファイルは、非常にリアリスティックであり、空における月を観察しているときにユーザーが見ることができるものに非常に忠実である。このことは、特に、光学的歪みがほぼ0であり、したがって、明暗界線が完全にまっすぐに見える場合に、第1クオーター月と第4クオーター月の間において顕著である。
【0010】
平凹レンズ、好ましくは、非球面レンズと、そして、曲がったプロファイル、好ましくは、双曲タイプのプロファイル(これに限定されない)、を備えるシャッターとを組み合わせて用いるおかげで、観察者は、明暗界線、すなわち、月の暗い部分と明るい部分を分ける曲線、を見る。そのプロファイルは、非常に実際的であり、空における月を観察しているときにユーザーが見ることができるものに非常に忠実である。さらに、当該光学的デバイスはコンパクトであり、したがって、腕時計タイプの計時器の場合のように小さな体積内に収容することができる。例として、月の表現の直径が同じ場合、本発明の光学的デバイスの厚みは、球体を用いる月相表示機構の厚みの半分になると考えられる。同様に、月の表現を受ける面が平坦であるので、本発明に係る光学的デバイスは、表盤の面上の針の変位の運動を妨げないことを理解することができる。
【0011】
本発明に係る光学的デバイスの例示的実施形態についての下記の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明確になるであろう。この例は、添付の図面に関連してのみ、また、純粋に説明のために、与えられる。なお、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の光学的デバイスと組み合わせることができる月相表示機構を上方から見た図である。
【
図2】フィンガーが担持するピンが入り込む長円状の穴の大きなスケールでの詳細図である。
【
図3】
図3Aは、中間位置Aにおける第1のレバーの大きなスケールでの詳細図である。
図3Bは、極位置Bにおける第1のレバーの大きなスケールでの詳細図であり、この第1のレバーは、フィンガープロファイルの頂部に当接している。
【
図4】
図4Aは、位置Cにおける第1のラックの大きなスケールでの詳細図であり、そのフィーラービークがカムプロファイルの頂部にある。
図4Bは、位置Dにおける第1のラックの大きなスケールでの詳細図であり、そのフィーラービークがカムの段に沿って落ちる。
【
図5】非球面状の平凹レンズ及びシャッターが得られる光透過性の支持体及びシート金属を上から見た図である。
【
図6】非球面状の平凹レンズ、シャッター及び基材によって形成される光学アセンブリーの立面図及び断面図である。
【
図7】非球面状の平凹レンズと基材との間の空間にシャッターが入り込み始めたときに観察者が知覚することができる月の表現の様相を示している概略上面図である。
【
図8】
図8Aは、月周期の開始時に極位置Eにあるときの月相表示機構の概略図である。
図8Bは、
図8Aと同様の図であり、月周期の終了時に極位置Fにあるときの月相表示機構を示している。
【
図9】
図9A~9Lは、曲がった、好ましくは、双曲状の、プロファイルシャッターがいくつかの位置にあるときの明暗界線の様相を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、概して、シャッターのエッジの像を当該光学的デバイスの上に配置される物体の像上に射影することを可能にするような光学的デバイスを提供することを伴う創造性のある概念から進展したものである。この目的を達成するために、本発明に係る光学的デバイスは、本質的に、第1の側にて、平坦な面によって境界が定められ、第1の側と反対の第2の側にて、凹面によって境界が定められる平凹状の光学レンズを形成する光透過性の支持体を備える。光学的デバイスは、さらに、前記凹面の側にて前記平凹レンズの下に配置されるシャッターと、シャッターの奥に配置される基材とを備える。必須ではないが、好ましくは、前記シャッターは、前記平凹レンズと基材との間の空間において、近位位置から遠位位置へと、そして、近位位置に戻すように変位することができるように構成している。本発明に係る光学的デバイスの利点は、平凹レンズの平坦な面の側にて、平凹レンズを通して形成されたシャッターのエッジの像を平凹レンズの上に配置された物体の像と重ね合わせることを可能にすることによって、新規の光学的な審美的又は技術的効果を発生させることである。
【0014】
本発明に係る光学的デバイスは、月面表示機構に適用することが非常に興味深い。この月面表示機構は、このシャッターが光透過性の支持体と基材の間に配置されるようにして、基材の上に基材から離れて配置された光透過性の支持体の上面及び下面の2つの面のうちのいずれか1つ上に月の表現を透過させる。月の面は、基材の色と同様の色で表すことができ、一方、シャッターと基材のコントラストは逆である。すなわち、基材が明るい場合、シャッターは暗く、逆に、基材が暗い場合、シャッターは明るい。説明用の例としてのみ仮定するが、月の表現と基材が暗くシャッターが明るいと仮定すると、シャッターが光透過性の支持体と暗い基材の間の空間にない場合、暗い基材の上にある月の表現は、観察者には知覚されないことを理解することができる。そして、明るいシャッターが光透過性の支持体と暗い基材との間の空間に入ると、月の表現が徐々にユーザーに見えるようになる。このようにして、本発明は、大部分の従来技術の月相表示デバイスが可能にするよりも月相を独創的かつリアリスティックな形態で表示することを可能にするコンパクトな光学的デバイスを提供する。結果として、月周期のどの段階にあるのかを観察者がわかることがはるかに容易になる。また、本発明の特別な実施形態において、前記光透過性の支持体に、平凹プロファイルが与えられ、好ましくは、非球面のプロファイルが与えられ、このような光透過性の支持体が、プロファイルが曲がったシャッター、好ましくは、双曲状のものと組み合わされる場合に、実際性がさらに増す。実際に、このような組み合わせによって、月が満ちてきて、満月になり、欠けて、月周期が再開するにしたがって実際に観察されるプロファイルに非常に忠実なプロファイルを有する明暗界線を得ることが可能になる。
【0015】
月相表示機構1は、例えば、腕時計のような計時器内に収容され、計時器用ムーブメント、すなわち、動作が時間の分割に依存する機構によって駆動される。特に、計時器用ムーブメントは、運動機構の可動部品を備え、その1つのピニオン(図示せず)は、24時間車2を駆動する。これは、その名前が示唆するように、1日当たり完全な1回転を行うように構成している。
【0016】
24時間車2は、軸6上にてフィンガー4を担持し、このフィンガー4がこの軸6に回転自由にマウントされる。24時間車2のまわりを回転することができるようにするために、フィンガー4は、わずかな軸方向の遊びがあるように軸6上にマウントされる。これには、この軸6に係合されるリング8が寄与する。また、フィンガー4には、24時間車2の厚みに形成される長円状の穴12に入り込むピン10が設けられており、このピン10は、24時間車2に対するフィンガー4の回転の自由度を制限する(
図2を参照)。したがって、ピン10が長円状の穴12の内壁14に当接しているときに、ピン10は24時間車2によって回転駆動され、次に、フィンガー4を駆動し、このフィンガー4も同様に24時間で完全な1回転をすることがわかる。
【0017】
また、月相表示機構1は、回転軸18のまわりに回転可能にマウントされた第1のレバー16を備え、この第1のレバー16は、上側ばね22によってフィンガー4のプロファイル20の第1の部分20aに弾性的に当てられる。星形車24の存在も、図面において留意されるべきである。この星形車24の位置は、下側ばね30によってこの星形車24の歯列28に対抗するように弾性的に保持されるジャンパー26によってインデクシングされる。
【0018】
24時間車2は時計回りに回転し、自身とともにフィンガー4を持ってくる。したがって、第1のレバー16は、フィンガー4のプロファイル20の第1の部分20aに沿って摺動し、中間位置
A(
図3A)を通過した後には、フィンガー4のプロファイル20の頂部34に対抗するように足部32によって支持される極位置
B(
図3B)にある。また、第1のレバー16は、ビーク36によって、星形車24の歯列28と係合する。例えば、午前0時ごろに、フィンガー4がさらに進むと、第1のレバー16は、極位置
Bを越える。ここにおいては、第1のレバー16は、フィンガー4のプロファイル20の頂部34に対抗するように支持され、星形車24を反時計回りに1ピッチだけ駆動する。この運動は、第1のレバー16がフィンガー4のプロファイル20の頂部34を越えたときに、フィンガー4にて、てこの効果が発生し、このことによって、このフィンガー4の回転とそれに付随するピン10の変位が発生し、このピン10は、24時間車2の厚みに形成される長円状の穴12の一端に当接して、この長円状の穴12の反対側の端に当接するように変位するということによって可能になる。そして、第1のレバー16は、フィンガー4のプロファイル20の第2の部分20bに沿って再び摺動し始める。この第2の部分20bは、このプロファイル20の頂部34の後側に位置する。なお、第1のレバー16が星形車24を1ピッチ前進させる時点において、ジャンパー26は、星形車24の歯列28の2つの連続する歯の間の溝からこの歯列28にすぐ続く溝まで、下側ばね30の戻し力に対抗するようにして、切り替わる。ジャンパー26は、次の溝に落ちることによって、星形車24がその1ピッチの前進を完了することを可能にし、この星形車24の正確なポジショニングを再度確実にする。
【0019】
月相表示機構の好ましい実施形態において、月相表示デバイスは、さらに、月相表示デバイスを修正するための手動デバイスを備える。この手動式修正デバイスは、全体を参照符号38によって示しており、軸42のまわりに回転する第2のレバー40を備え、この第2のレバー40は、回転軸42の反対側の端部にてピンのような発動手段44を備える。この第2のレバー40には、例えば、折り曲げられた領域46があり、この折り曲げられた領域46に対して、携行型時計ケースの体積の外側から腕時計の所有者によってばねの弾性戻し力に対抗するようにしてコレクターが発動されたときに、コレクター(図において見えない)が載置される。コレクターの発動の影響の下で、第2のレバー40はその軸42のまわりに回転し、次に、第1のレバー16の回転を制御して、星形車24を1ピッチ前進させる。この星形車24の前進は、第1のレバーがフィンガー4のプロファイル20の頂部34を越えたときに上述したものと同じ条件下で行われる。
【0020】
純粋に説明用の例のみのために与えられる好ましい実施形態において、星形車24の完全な1回転は、2つの連続する月周期に対応し、月周期は、2つの新しい連続する月の間にて経過する時間に対応し、太陰月(lunar month)とも呼ばれる。このために、月相表示機構は、星形車24上にて同軸的にマウントされ星形車24上にてともに回転するように固定された第1のピニオン50によって、セッティング車56によって、また、第2ピニオン54が固定的にマウントされた回転軸上のカム52によって、完成される。第1のピニオン50は、セッティング車56を介して第2のピニオン54を駆動し、この運動連鎖の歯列の比は、カム52が月周期ごとに完全な1回転を行うように計算される。
【0021】
カム52には、実質的にまっすぐに落とす段60があるスネール状のプロファイル58がある。また、歯付き区画64がある第1のラック62には、さらに、フィーラービーク66があり、このフィーラービーク66によって、第1のラック62は、カム52のプロファイル58に恒久的に追従する。新しい月周期が開始する少し前に、例えば、午前0時ごろに、第1のラック62のフィーラービーク66は、カム52のプロファイル58の頂部にあり(位置
C-
図4A)、そして、カム52の段60に沿って落ちる(位置
D-
図4B)。この運動の間、第1のラック62は、その歯付き区画64によって、第3のピニオン68と恒久的に係合しており、この第3のピニオン68を、段60に沿ったフィーラービーク66の落ちに対応する量だけ時計回りに回転させる。
【0022】
回転させることによって、第3のピニオン68は、車70を回転させ、この車70とともに可動部品69を形成する。すなわち、第3のピニオン68は、同軸的な形態で車70上にマウントされ、この車70に固定されてともに回転する。この結果、車70は、その回転運動を、回転軸76に自由にマウントされた下側車74と上側車78とを備える、月相表示機構1の駆動手段72に伝達する。下側車74は、まっすぐなラック80と噛み合い、これは次に上側車78と噛み合う。
【0023】
下側車74は、月相表示機構1の制御に関与する。このために、回転によって、下側車74は、並進運動するようにまっすぐなラック80を駆動し、このまっすぐなラック80を
図8Aに示している新しい月周期の開始時に対応する第1の極位置
Eに押し戻す。その後に、月周期の開始時にカム52の段60に沿って落ちた後にフィーラービーク66がカム52のプロファイル58に再び追従し始めると、フィーラービーク66は、第2の極位置
F(
図8Bを参照)まで時計回りに徐々に押し戻されて、第3のピニオン68、したがって、車70が、反時計回りに回転する。この結果、下側車74は時計回りに回転し、新しい月周期の開始時に対応する第1の極位置
Eから、
図8Bに示している月周期の終了時に対応する第2の極位置
Fまで、図の右から左へと並進運動をするようにまっすぐなラック80を駆動する。フィーラービーク66は、カム52のプロファイル58の全長を移動した後に、再びカム52の段60の頂部に配置され、そして、新しい月周期の開始時に、フィーラービーク66は段60に沿って落ち、このことによって、まっすぐなラック80がその初期位置に戻る。
【0024】
月相表示機構は、間隙をなくし、月の周期の終了時にこの月相表示機構を極位置Eに戻すことを可能にするデバイスによって補助される。このデバイスは、上側車78によって構成しており、この上側車78は、一方では、まっすぐなラック80の歯列と係合し、他方では、中間ピニオン86を備える中間可動部品84の中間車82と係合する。この中間ピニオン86は、第4のばね92の戻し力の制約を弾性的に受ける、第2のラック90の歯付き区画88と噛み合う。この構成のおかげで、第1のラック62と第2のラック90の間に延在している運動連鎖のすべての遊びがなくなり、まっすぐなラック80のポジショニングが常に正確になる。
【0025】
月相表示機構1は、まっすぐなラック80を備え、このまっすぐなラック80には、ともに並進運動をするようにシャッター94が固定されている。月相表示機構1は、さらに、観察者96の側に、光透過性の支持体98を備え、この支持体98には、下面102と平行にかつ下面102から離れて延在している上面100がある。月の表現104は、例えば、デカールの形態であり、光透過性の支持体98の上面100へと透過される。また、この月の表現104は、光透過性の支持体98の下面102にも透過させることができる。基材106は、観察者96に対して、光透過性の支持体98の下に光透過性の支持体98から離れた位置に配置される。シャッター94は、まっすぐなラック80が下側車74によって駆動されるときに光透過性の支持体98と基材106との間の空間内へと徐々に入り込むことができるように、まっすぐなラック80上にマウントされる。シャッター94と基材106は、以下に説明するようにコントラストが逆である。すなわち、シャッター94が明るく基材106と月の表現104が暗いか、あるいはシャッター94が暗く基材106と月の表現104が明るいかのいずれかである。例としてのみ挙げるが、月の表現104と基材106が暗くシャッター94が明るく反射性であると仮定すると、シャッター94が光透過性の支持体98と暗い基材106の間に位置する空間にない場合、月の表現104は、暗い基材106の上に位置し、したがって、観察者96が知覚することができないことを理解することができる。そして、光透過性の支持体98と暗い基材106との間の空間に明るく反射性のシャッター94が入り込むにしたがって、月の表現104がユーザーによって徐々に知覚されるようになる。特に、シャッター94が光透過性の支持体98と暗い基材106の間の空間に入り込み始めるにしたがって、観察者96は、第1クオーター月の月が現れるのを徐々に見る。そして、反射性のシャッター94が完全に光透過性の支持体98と暗い基材106の間にあれば、観察者96は完全な月の表現104、すなわち、満月、を見る。そして、シャッター94は、同じ方向におけるそのまっすぐな運動を継続し、光透過性の支持体98と暗い基材106の間の空間を離れ始め、これによって、観察者96は、第4クオーター月の月が出現するのを徐々に見るようになる。これは、シャッター94がこの同じ自由面を離れて隠れた面となる時点に対応する状況である。最後に、シャッター94が光透過性の支持体98と暗い基材106の間の空間から完全に出ると、観察者96から再び、月の表現104が見えなくなり(基材106が月の表現104と同じ色であると仮定して)、したがって、観察者96は月周期が終了し新しい月周期が始まることを知る。したがって、観察者96は、新月、第1クオーター月の月、満月、第4クオーター月の月及び新月である、容易に理解可能な様々な月の相の表現を見ることができる。
【0026】
本発明において、光透過性の支持体98は、平凹レンズ108の形態であり、この平凹レンズ108は、観察器96の側にて、月の表現104を受ける平坦な面110によって上方向の境界が定められ、そして、好ましくは非球面であるプロファイルが与えられる凹面112によって下方向の境界が定められる。この非球面状の平凹レンズ108は、その中心にて折り曲げられたシャッター94と組み合わさって、曲がったプロファイル、好ましくは、双曲面状のプロファイルを与える。なお、これに限定されない。このようにして、月の明暗界線、すなわち、月の明るい部分から暗い部分を分ける曲線が、空における月の実際の様相を最も近似しているような月の像が得られる。
【0027】
非球面状の平凹レンズ108と双曲面のプロファイルのシャッター94の幾何学的寸法構成を決めるために、本発明の目的のために、LightToolsという商品名の2019年に公開されたバージョン8のようなコンピューター支援光学的システム設計ソフトウェアを用いる。
【0028】
本発明に係る光学的デバイスを用いて表示することが可能であることが望ましい月の表現104の寸法構成が定められた後で月相のリアリスティックな表現を得るために作用することができる主なパラメーターは以下の通りである。
- 非球面状の平凹レンズ108が作られている材料、そして、したがって、非球面状の平凹レンズ108の屈折率
- 非球面状の平凹レンズ108の非球面状の凹面112のプロファイル、そして、したがって、その円錐定数
- シャッター94の寸法構成
- 非球面状の凹面112によって形成されるアーチの頂部とシャッター94の間の距離
- シャッター94の曲がった、好ましくは、双曲状の、プロファイル、そして、したがって、その円錐定数
【0029】
好ましい例としてのみ挙げるが、非球面状の平凹レンズ108は、屈折率が、好ましくは1.60~1.85であり、最適値が約1.78であるような光透過性の材料によって作られる。この値は、多くの試験の後に選択されたものであり、これらの試験においては、レンズが作られている材料の屈折率の値が高いほど、シャッター94にレンズを近づけなければならず、その結果、シャッター94がこのレンズを通して観察者に視認されないことを観察することができた。このことが、本発明に係る光学的デバイスを腕時計タイプの計時器に搭載することが望ましい場合に、空間的要件の観点から好ましいことを容易に理解することができる。一方、屈折率が高いほど、対応する材料の加工が高コストになり難しくなる。また、レンズがシャッター94に近づきすぎると、最終的には、月の表現104のまわりに乳汁状のオパール状の冠状体を形成するレンズの周部エッジの像が見えることになることが認識されており、これは受け入れられない。同様に、低すぎる屈折率値を選択することによって、月の表現を徐々に覆う、曲がったプロファイル、好ましくは、双曲状のプロファイル、を備えるシャッター94の像が、真の月の表現と比べて、あまり審美性が高くなく、また、実際に本物っぽくないことがわかった。このために、非球面状の平凹レンズ108が作られている材料の光学屈折率の値が、1.60~1.85のオーダーであり、好ましくは、1.78に等しいないし実質的に等しいことが、最適であると思われる。この値によって、非球面状の平凹レンズ108が作られる材料の光学屈折率と、非球面状の平凹レンズ108の非球面状の凹面112とシャッター94との間の距離との間の最良の折り合いを与え、したがって、空間的要件が計時器の寸法構成と相性が良く、プロファイルが適切な明暗界線を与えつつ収容されることを意図されるような月相表示機構を得ることができる。本発明の目的に適した材料の例として、参照符号N-SF 11としてSchott社によって製造され販売されているガラスが挙げられる。
【0030】
そして、非球面状の平凹レンズ108が得られるガラスシリンダー又はポリカーボネートのようなポリマーシリンダーのような光透過性ないし少なくとも半透明の材料のブロックの寸法構成をコンピューター支援設計ソフトウェアに導入する。本事例では、直径
Dが6mm~7mmであり高さ
Hが0.9mm~1.1mmである円筒状のガラスブロックを加工することによって、非球面状の平凹レンズ108を得る(
図5、6を参照)。
【0031】
双曲状のプロファイルシャッター94については、好ましくは、厚みeが0.08mm~0.2mmであり、シャッター94の変位方向に平行に延在する側の長さlが7mm~8mmであるようにに選択され、このシャッター94の変位方向に垂直に延在する側の幅Lが9mm~10mmであるように選択されるような矩形シート金属から得られる。なお、これに限定されない。このシート金属には、その中心に、シャッター94の変位方向に平行に延在している折り曲がり114があり、好ましくは、折り曲がり114に平行な平坦なエッジ116がある。なお、実際に、シャッター94がその両端まで双曲状のプロファイルを維持する必要はない。なぜなら、これらの領域では、光学歪み効果は、非球面状の平凹レンズ108によって実質的に発生するからである。したがって、これらの平坦なエッジ116は、非球面状の平凹レンズ108が与える視野を完全に妨げる機能のみを備え、それらの平坦性のために、これらのエッジ116は、月相表示機構の空間的要件を緩和することを可能にする。
【0032】
非球面状の平凹レンズ108の非球面状の凹面112のプロファイルは、距離rとz(r)の値によって決められる。非球面状の平凹レンズ108の対称中心軸を
Sとすると、距離
rは、対称中心軸
Sの各点と、その反対側に位置する非球面状の凹面112の点との間の距離に対応する(
図6を参照)。同様に、シャッター94の双曲状のプロファイルは、このシャッター94の対称面
S’の各点と、このシャッター94の面との間の距離
r’によって決められる。これらの距離
r、
r’は、以下の同じ関係を用いて決められる。
【0033】
【0034】
図6に示しているように、関数z(r)の原点は、非球面状の凹面112によって形成されるアーチの頂部に位置する点
Oに対応する。関数z(r)の値は、非球面状の凹面112によって形成されるアーチの各点において、非球面状の平凹レンズ108の基部からのこの点の高さに対応する。
【0035】
非球面状の平凹レンズ108を特徴づける定数R及びkの値、そして、シャッター94を特徴づける定数R’及びk’の値は、以下に説明する形態の順次的な繰り返しによって決められる。係数A
n
は、多項式和の係数であり、その値は繰り返しによっても決められる。
【0036】
非球面状の平凹レンズ108について、定数Rは、この非球面状の凹面112によって形成されるアーチの頂部に位置する点Oにおける非球面状の凹面112の曲率半径に対応する。月の暗い部分と明るい部分を分ける線である明暗界線Tが月周期の真ん中にて直線的に現れるには、点Oの近くにおいて、非球面状の凹面112が実質的に平坦であることが必要である。このために、数千ミリメートルのオーダーの非常に大きな曲率半径Rの値が、コンピューター支援設計ソフトウェアに初期に導入される。「円錐定数」と呼ばれる定数「k」は、円錐セクションを表す量である。円錐セクションとは、回転体の円錐と平面との交わりによって定められる平面曲線を意味する。この交わる平面は、円錐の頂部を通過しない場合、この円錐との交わりが、楕円、放物線又は双曲線である平面曲線の1つに対応する。
【0037】
なお、k=-e2 であり、ここで、eは、円錐セクションの偏心率に対応する。円錐セクションの偏心率は、この円錐セクションの形のみを特徴づける正の実数である。円錐セクションの偏心率は、円錐セクションが円から逸脱する量の尺度として解釈することができる。したがって、円の偏心率は0である。円ではない楕円の偏心率は、厳密に0~1である。放物線の偏心率は1であり、双曲線の偏心率は1よりも大きい。
【0038】
円錐定数kは、以下の式に関わる。
y2-2Rx+(k+1)x2=0
この式は、頂点が原点にあり、接線が「y」軸に沿って延在し、Rがx=0であるときの曲率半径であるような円錐セクションを表す。この式は、レンズの光学的な面を表すように幾何光学において用いられる。この場合、初期においてコンピューター支援設計ソフトウェアに、円錐定数が0(k=0)である。すなわち、円を扱っている。
【0039】
この結果、非球面状の平凹レンズ108について、円錐定数kの値が0で、曲率半径Rが非常に大きな値で、シミュレーションを開始する。
【0040】
シャッター94についても同様であり、円錐定数k’の値が0で、曲率半径R’が非常に大きな値で、シミュレーションを開始する。シャッター94は、非球面状の平凹レンズ108を通して像が知覚されるような物体と考えることができ、したがって、その幾何学的特徴は、LightToolsのようなコンピューター支援光学的システム設計ソフトウェアによって決めることができることに留意することは重要である。
【0041】
最後に、非球面状の平凹レンズ108の次数は偶数であり、係数A4、A6及びA8の値を任意に選択することによって開始すると考えられる。係数A4、A6及びA8の値の初期の選択において、当業者は、これらの係数の値が非常に小さく、指数nが増えるにしたがって減り続けることを知っていることによって導かれる。しかし、係数A
8
にて止める決定を行った。なぜなら、明暗界線Tに起因する様相の改善に対する高次係数の寄与は無視できるからである。係数A
2
については、式z(r)の第一項がすでに変数rの2乗を含むために、無視される。
【0042】
コンピューター支援設計ソフトウェアを用いて、月及びその明暗界線
Tの表現118をいくつかのシャッター位置94に対してシミュレーションした(
図7及び9A~9Lを参照)。
図9Aでは、月周期の始まりを示している。
図9Cでは、月は第1クオーター月に入っている。
図9Fでは、月周期の真ん中であり満月となっている。
図9Iは、月の第4クオーター月に対応し、
図9Lは、新月に対応する。シミュレーションを行うために、例えば、変わっていないシャッター94を特徴づける、パラメーター
A’
n
、円錐定数
k’と曲率半径
R’の値を維持しつつ、非球面状の平凹レンズ108を特徴づける、パラメーター
A
n
、円錐定数
kと曲率半径
Rの値を変化させ、明暗界線
Tから発生する様相をコンピュータースクリーン上で観察する。この実験を繰り返し、今回は、非球面状の平凹レンズ108を特徴づけるパラメーター
A
n
、
k及び
Rの値を一定に保ち、シャッター94を特徴づけるパラメーター
A’
n
、
k’及び
R’の値を変化させ、そして、LightToolsソフトウェアの「フォトリアリスティックレンダリング」機能を用いて、コンピュータースクリーン上で明暗界線
Tから発生する様相を観察する。この機能によって、非球面状の平凹レンズ、双曲状のシャッター及び基材によって形成されるデバイス全体を、このデバイスが所望の角度と距離で撮影されたかのように見ることが可能になる。このように、「フォトリアスティックレンダリング」機能のおかげで、所望の光学的効果が適切であることを検証することができる。このように、実際の様相に忠実であり満足できるものであると考えられる明暗界線
Tのプロファイルを得るまで段階的に進める。当然、この基準は、各個人の裁量に任される純粋に主観的な基準である。
【0043】
なお、上述の非球面状の平凹レンズ108とシャッター94の寸法構成の特徴について、非球面状の平凹レンズ108の場合、k=-1、R=20840mm、A4=3.769・10-3、A6=2.9534・10-5及びA8=-1.407・10-7の値にて、シャッター94の場合、k’=-4.922、R’=2.556mm、A4=1.654・10-5、A6=-1.511・10-6及びA8=4.686・10-8の値にて、明暗界線Tの視覚的様相について最も満足できる結果が得られた。円錐定数kの値については、非球面状の平凹レンズ108のために保持される値は-1であり、これは放物線プロファイルに対応する。シャッター98のプロファイルを特徴づける円錐定数k’の値は、双曲状のプロファイルに対応する-1未満である。
【0044】
このようにして、非球面状の凹面112によって形成されるアーチの頂部に位置する点Oは、円筒状のガラスブロックの基部に対して0.78mmである距離P離れて位置する。したがって、この点Oにて、非球面状の平凹レンズ108の厚みは0.22mmであると推定される。これは、非球面状の平凹レンズ108の最小厚みである。
【0045】
当然、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、添付の請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱することなく、当業者であれば、様々な単純な改変及び代替形態を考えることができる。特に、シャッターが明るい場合、Super-LumiNova(登録商標)の商品名で市販されているようなリン光性材料の層によって覆うことができる。また、光反射現象を避けるために、シャッターの面を粗くすることができる。光反射をできるだけ抑える課題が常にあり、平凹レンズに反射防止処理を施すことができ、そのエッジをメタライズすることができる。なお、図面には示していないが、カム52に2つの段60を設けることができる。星形車24が2つの月周期で完全な1回転を行うとすると、星形車24をカム52と直接係合させて、ピニオン50及び54とセッティング車56を節約することができる。
【符号の説明】
【0046】
1:月相表示機構
2:24時間車
4:フィンガー
6:軸
8:リング
10:ピン
12:長円状の穴
14:内壁
16:第1のレバー
18:回転軸
20:プロファイル
22:上側ばね
24:星形車
26:ジャンパー
28:歯列
30:下側ばね
32:足部
34:頂部
36:ビーク
38:手動式修正デバイス
40:第2のレバー
42:回転軸
44:発動手段
46:折り曲げられた領域
50:第1のピニオン
52:カム
54:第2のピニオン
56:セッティング車
58:プロファイル
60:段
62:第1のラック
64:歯付き区画
66:フィーラービーク
68:第3のピニオン
69:可動部品
70:車
72:駆動手段
74:下側車
76:回転軸
78:上側車
80:まっすぐなラック
82:中間車
84:中間可動部品
86:中間ピニオン
88:歯付き区画
90:第2のラック
92:第4のばね
94:シャッター
96:観察者
98:光透過性の支持体
100:上面
102:下面
104:月の表現
106:基材
108:非球面状の平凹レンズ
110:平坦な面
112:非球面状の凹面
114:折れ曲がり
116:平坦なエッジ
118:月の表現