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特許7075476架橋ナノ粒子薄膜及び製造方法、並びに薄膜光電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】架橋ナノ粒子薄膜及び製造方法、並びに薄膜光電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20220518BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220518BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20220518BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20220518BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220518BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20220518BHJP
   H01L 51/46 20060101ALN20220518BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/22 A
H05B33/14 Z
H01L31/10 A
H01L29/78 618A
H01L29/78 618B
H01L31/04 168
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020502747
(86)(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 CN2018079025
(87)【国際公開番号】W WO2018188448
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2019-10-01
(31)【優先権主張番号】201710232916.3
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201710232910.6
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201710232917.8
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201710232650.2
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201710233270.0
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519355323
【氏名又は名称】ティーシーエル テクノロジー グループ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】TCL Technology Group Corporation
【住所又は居所原語表記】TCL Technology Building,17 Huifeng 3rd Road,Zhongkai Hi-tech Development District,Huizhou,Guangdong,516006,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲そん▼
(72)【発明者】
【氏名】銭 磊
(72)【発明者】
【氏名】楊 一行
(72)【発明者】
【氏名】曹 蔚然
(72)【発明者】
【氏名】向 超宇
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-516453(JP,A)
【文献】特開2008-075121(JP,A)
【文献】特開2015-149501(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190335(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/039774(WO,A1)
【文献】特表2013-533340(JP,A)
【文献】特開2015-231665(JP,A)
【文献】特開2013-062185(JP,A)
【文献】特開2008-262775(JP,A)
【文献】特表2013-514193(JP,A)
【文献】特表2013-544440(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108695413(CN,A)
【文献】特開2013-107163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H01L 51/50
H05B 33/14
H01L 31/10
H01L 21/336
H01L 29/786
H01L 51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子を溶媒中に分散し、均一に混合してナノ粒子溶液を得るステップAと、
溶液法により前記ナノ粒子溶液をナノ粒子薄膜に製造し、次に密閉した環境で還元性ガスを含む複合ガスを流すことで、ナノ粒子間の電気的結合を増加させて、架橋ナノ粒子薄膜を得るステップBと、を含み、
前記ステップBは、
まずナノ粒子溶液を密閉した環境に置き、溶液法によりナノ粒子溶液をナノ粒子薄膜に製造するステップB1と、
次に密閉した環境に置かれた前記ナノ粒子薄膜に複合ガスを流すことで、架橋ナノ粒子薄膜を得るステップB2と、を含み、
前記複合ガスは、還元性ガスと、少なくとも酸素ガス、水蒸気、及び二酸化炭素のいずれかを含み、
前記還元性ガスは、一酸化炭素、水素ガス、及びアンモニアガスのうちの1種であることを特徴とする架橋ナノ粒子薄膜の製造方法。
【請求項2】
ナノ粒子を溶媒中に分散し、均一に混合してナノ粒子溶液を得るステップAと、
溶液法により前記ナノ粒子溶液をナノ粒子薄膜に製造し、次に密閉した環境で還元性ガスを含む複合ガスを流すことで、ナノ粒子間の電気的結合を増加させて、架橋ナノ粒子薄膜を得るステップBと、を含み、
前記ステップBは、
まずナノ粒子溶液を不活性ガスの環境に置き、溶液法によりナノ粒子溶液をナノ粒子薄膜に製造するステップB1’と、
次に前記ナノ粒子薄膜を密閉した環境に置き、密閉した環境に複合ガスを流すことで、架橋ナノ粒子薄膜を得るステップB2’と、を含み、
前記複合ガスは、還元性ガスと、少なくとも酸素ガス、水蒸気、及び二酸化炭素のいずれかを含み、
前記還元性ガスは、一酸化炭素、水素ガス、及びアンモニアガスのうちの1種であることを特徴とする架橋ナノ粒子薄膜の製造方法。
【請求項3】
還元性ガスのバイアスは1~100Pa間に制御され、酸素ガスのバイアスは0~2×10Pa間に制御され、水蒸気のバイアスは0~2×10Pa間に制御され、二酸化炭素のバイアスは0~100Pa間に制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記ステップAでは、前記ナノ粒子溶液の質量濃度は1~100mg/mlであることを特徴とする請求項1又は2に記載の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記ナノ粒子は、酸化物ナノ粒子、硫化物ナノ粒子、セレン化物ナノ粒子、及び窒化物ナノ粒子、フッ化物ナノ粒子のうちの1種又は複数種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記ナノ粒子の平均径は5nm以内に制御されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記溶媒はアルコール系溶媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記ステップBでは、前記架橋ナノ粒子薄膜の厚さは15~60nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス薄膜の製造分野に関し、特に、架橋ナノ粒子薄膜及び製造方法、並びに薄膜光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物ナノ粒子(又は球状酸化物ナノ結晶)は良好な結晶度を有し、これはバルク材料(低次元材料)と類似な光学、電学性質を保証している。一方、ナノ粒子は自己組織化膜の効果が高いため、低コストのコーティング製造プロセスを適用することができる。溶液法による光電子デバイスの製造過程において、ナノ粒子は対応する酸化物薄膜を形成するための重要な解決案の1つである。一般的な例として、酸化亜鉛(ZnO)ナノ粒子、酸化チタン(TiO)粒子を含む薄膜は発光ダイオードや、薄膜太陽電池、薄膜トランジスタで電子を輸送する半導体材料となり、酸化ニッケル(NiO)は同一デバイスで正孔を輸送する半導体材料となる。
【0003】
とはいえ、ナノ粒子同士が互いに堆積して形成された薄膜とバルク材料薄膜には依然として相違点があり、キャリアの輸送特性に主に現れている。ナノ粒子の内部は良好な結晶性を有しているが、このような構造はナノオーダーの範囲内に限られており、密な配列である場合でも、ナノ粒子間は絶縁表面リガンドで充填されるか、ひいては何の物質も充填されていないことが多い。このように、ナノ粒子間にはかなり高いキャリア輸送障壁が存在し、キャリアのナノ粒子薄膜の内部での輸送はホッピング輸送の法則に従うしかできないため、材料が薄膜スケールで表現されるキャリア移動率は対応するバルク材料薄膜よりもはるかに小さくなる。
【0004】
従って、従来技術はまだ改善及び開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術の不足に鑑みて、本発明は、従来のデバイス薄膜のキャリア輸送障壁が高く、キャリア移動率が低いという問題を解決する架橋ナノ粒子薄膜及び製造方法、並びに薄膜光電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術手段として、
ナノ粒子を溶媒中に分散し、均一に混合してナノ粒子溶液を得るステップAと、
溶液法によりナノ粒子溶液をナノ粒子薄膜に製造し、複合ガスを流して架橋反応を発生させ、架橋ナノ粒子薄膜を得るステップBと、を含む架橋ナノ粒子薄膜の製造方法を提供する。
【0007】
上記の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法において、前記複合ガスは、還元性ガス、酸素ガス、水蒸気、及び二酸化炭素を含む。
【0008】
上記の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法において、還元性ガスのバイアスは1~100Pa間に制御され、酸素ガスのバイアスは0~2×10Pa間に制御され、水蒸気のバイアスは0~2×10Pa間に制御され、二酸化炭素のバイアスは0~100Pa間に制御される。
【0009】
上記の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法において、前記ステップAでは、前記ナノ粒子溶液の質量濃度は1~100mg/mlである。
【0010】
上記の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法において、前記ナノ粒子は、酸化物ナノ粒子、硫化物ナノ粒子、セレン化物ナノ粒子、窒化物ナノ粒子、及びフッ化物ナノ粒子のうちの1種又は複数種を含む。
【0011】
上記の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法において、前記ナノ粒子の平均径は5nm以内に制御されている。
【0012】
上記の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法において、前記溶媒はアルコール系溶媒である。
【0013】
上記の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法において、前記ステップBは、具体的に、
まずナノ粒子溶液を密閉した環境に置き、溶液法によりナノ粒子溶液をナノ粒子薄膜に製造するステップB1と、
次に密閉した環境に複合ガスを流して架橋反応を発生させ、架橋ナノ粒子薄膜を得るステップB2と、を含む。
【0014】
上記の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法において、前記ステップBは、具体的に、
まずナノ粒子溶液を不活性ガスの環境に置き、溶液法によりナノ粒子溶液をナノ粒子薄膜に製造するステップB1’と、
次にナノ粒子薄膜を密閉した環境に置き、密閉した環境に複合ガスを流して架橋反応を発生させ、架橋ナノ粒子薄膜を得るステップB2’と、を含む。
【0015】
上記の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法において、前記還元性ガスは、一酸化炭素、水素ガス、及びアンモニアガスのうちの1種である。
【0016】
上記の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法において、前記ステップBでは、前記架橋ナノ粒子薄膜の厚さは15~60nmである。
【0017】
また、上記した架橋ナノ粒子薄膜の製造方法により製造された架橋ナノ粒子薄膜を提供する。
【0018】
さらに、上記した架橋ナノ粒子薄膜を備える薄膜光電子デバイスを提供する。
【0019】
上記の薄膜光電子デバイスにおいて、前記薄膜光電子デバイスは、エレクトロルミネセンスデバイス、薄膜太陽光発電、薄膜光検出器、及び薄膜トランジスタのうちのいずれか1種である。
【0020】
上記の薄膜光電子デバイスにおいて、前記エレクトロルミネセンスデバイスは、第1電極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び第2電極を備え、前記電子輸送層の材料は、ナノ粒子薄膜を架橋処理することで形成された架橋ナノ粒子薄膜である。
【0021】
上記の薄膜光電子デバイスにおいて、前記薄膜太陽光発電デバイスは、第1電極、吸光層、電子抽出層、及び第2電極を備え、前記電子抽出層の材料は、ナノ粒子薄膜を架橋処理することで形成された架橋ナノ粒子薄膜である。
【0022】
上記の薄膜光電子デバイスにおいて、前記薄膜光検出器は、陽極、電子障壁層、吸光層、正孔障壁層、及び陰極を備え、前記正孔障壁層の材料は、ナノ粒子薄膜を架橋処理することでなる架橋ナノ粒子薄膜である。
【0023】
上記の薄膜光電子デバイスにおいて、前記薄膜トランジスタの半導体層の材料は、ナノ粒子薄膜を架橋処理することで形成された架橋ナノ粒子薄膜である。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、ナノ粒子の成膜時に粒子同士を互いに架橋させて、粒子間の電気的結合を増加し、キャリア輸送の障壁を下げ、キャリアの移動率を増加させることで、電気的性能を大幅に向上させ、このように製造されたナノ粒子薄膜は薄膜光電子デバイスの性能を著しく向上させることができるという有益な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】従来の無架橋酸化亜鉛ナノ粒子薄膜の構造模式図である。
図2】本発明の方法により製造された架橋酸化亜鉛ナノ粒子薄膜の構造模式図である。
図3】ITO/NPB/MoO/Alデバイスに対する異なる薄膜の電流-電圧曲線模式図である。
図4】本発明の薄膜光電子デバイスの実施形態におけるエレクトロルミネセンスデバイスの好ましい実施例の構造模式図である。
図5】本発明の薄膜光電子デバイスの実施形態における薄膜太陽光発電デバイスの好ましい実施例の構造模式図である。
図6】本発明の薄膜光電子デバイスの実施形態における薄膜光検出器の好ましい実施例の構造模式図である。
図7a】本発明の薄膜光電子デバイスの実施形態における薄膜トランジスタの好ましい実施例の第1構造模式図である。
図7b】本発明の薄膜光電子デバイスの実施形態における薄膜トランジスタの好ましい実施例の第2構造模式図である。
図8】本発明の薄膜光電子デバイスの実施形態における薄膜トランジスタの好ましい実施例の第3構造模式図である。
図9】本発明の薄膜光電子デバイスの実施形態における薄膜トランジスタの好ましい実施例の第4構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、架橋ナノ粒子薄膜及び製造方法、並びに薄膜光電子デバイスを提供しており、本発明の目的、技術手段及び効果をより明瞭にするため、以下に本発明について詳細に説明する。なお、ここで記載された具体的な実施例は、単に本発明を解釈するためのものであり、本発明を限定するためのものではないことを理解すべきである。
【0027】
本発明の架橋ナノ粒子薄膜の製造方法の好ましい実施例において、次のようなステップを含む。
【0028】
ステップA:ナノ粒子を溶媒中に分散し、均一に混合してナノ粒子溶液を得る。
【0029】
前記ステップAは、具体的に、質量濃度1~100mg/mlの配合比で、ナノ粒子を溶媒中に分散し、混合が均一になるまで撹拌し、溶液法の成膜に使用できるナノ粒子溶液を調製する。その中で、前記ナノ粒子は広帯域ギャップの酸化物ナノ粒子、硫化物ナノ粒子、セレン化物ナノ粒子、窒化物ナノ粒子、及びフッ化物ナノ粒子のうちの1種又は複数種であってもよく、前記酸化物ナノ粒子はZnO(ZnO等)、TiO(TiO等)等のうちの1種であってもよいが、これらに限られない。前記硫化物ナノ粒子は、硫化亜鉛、硫化モリブデンのうちの1種であってもよいが、これらに限られない。前記セレン化物ナノ粒子は、セレン化亜鉛、及びセレン化鉛のうちの1種であってもよいが、これらに限られない。前記窒化物ナノ粒子は、窒化ケイ素、及び窒化アルミニウムのうちの1種であってもよいが、これらに限られない。前記フッ化物ナノ粒子は、フッ化ランタン、及びフッ化ナトリウムのうちの1種であってもよいが、これらに限られない。本発明ではナノ粒子のサイズを制御しているが、好ましくは、球状ナノ粒子の平均径を5nm以内に制御して、十分の表面準位の金属原子が反応に関与できるように保証する。前記溶媒は、メタノールや、エタノール等のアルコール系溶媒であってもよい。
【0030】
ステップB:溶液法によりナノ粒子溶液をナノ粒子薄膜に製造し、複合ガスを流して架橋反応を発生させ、架橋ナノ粒子薄膜を得る。本発明では、溶液法により薄膜を堆積する。前記溶液法は、スピンコートや、インクジェット印刷、スプレーコート、ナイフコート等であってもよい。
【0031】
具体的に、前記複合ガスは、還元性ガス、酸素ガス、水蒸気、及び二酸化炭素を含む。好ましくは、還元性ガス(一酸化炭素、水素ガスやアンモニアガス等)のバイアスを1~100Pa間に制御し、酸素ガスのバイアスを0~2×10Pa間に制御し、水蒸気のバイアスを0~2×10Pa間に制御し、二酸化炭素のバイアスを0~100Pa間に制御する。本発明では、膜と接触する複合ガスを制御する。好ましくは、膜と接触する複合ガスを上記のバイアス範囲内に制御する。これは、当該バイアス範囲内で製造される薄膜の密度が高く、薄膜中のキャリア電子の移動率も高いからである。
【0032】
以下に、上記の各タイプのナノ粒子が架橋反応を起こす条件について詳しく説明する。
1.酸化物ナノ粒子
【0033】
ナノ粒子が酸化亜鉛ナノ粒子である場合、還元性ガス(一酸化炭素、水素ガスやアンモニアガス等)のバイアスを1~100Pa間に制御し、酸素ガスのバイアスを0~1×10Pa間に制御し、水蒸気のバイアスを0~1×10Pa間に制御し、二酸化炭素のバイアスを0~100Pa間に制御する。当該バイアス範囲内で製造された薄膜の密度は高く、薄膜中のキャリア電子の移動率も比較的高い。
【0034】
ナノ粒子が酸化チタンナノ粒子である場合、還元性ガス(一酸化炭素、水素ガスやアンモニアガス等)のバイアスを1~100Pa間に制御し、酸素ガスのバイアスを0~1×10Pa間に制御し、水蒸気のバイアスを0~2×10Pa間に制御し、二酸化炭素のバイアスを0~100Pa間に制御する。当該バイアス範囲内で製造された薄膜の密度は高く、薄膜中のキャリア電子の移動率も比較的高い。
【0035】
ナノ粒子が酸化ニッケルナノ粒子である場合、還元性ガス(一酸化炭素、水素ガスやアンモニアガス等)のバイアスを1~100Pa間に制御し、酸素ガスのバイアスを0~5×10Pa間に制御し、水蒸気のバイアスを0~2×10Pa間に制御し、二酸化炭素のバイアスを0~100Pa間に制御する。当該バイアス範囲内で製造された薄膜の密度は高く、薄膜中のキャリア電子の移動率も比較的高い。
2.硫化物ナノ粒子
【0036】
ナノ粒子が硫化亜鉛ナノ粒子である場合、還元性ガス(一酸化炭素、水素ガスやアンモニアガス等)のバイアスを1~100Pa間に制御し、酸素ガスのバイアスを0.1Paよりも小さくなるように制御し、水蒸気のバイアスを0~2×10Pa間に制御し、二酸化炭素のバイアスを0~100Pa間に制御する。当該バイアス範囲内で製造された薄膜の密度は高く、薄膜中のキャリア電子の移動率も比較的高い。
【0037】
ナノ粒子が硫化モリブデンナノ粒子である場合、還元性ガス(一酸化炭素、水素ガスやアンモニアガス等)のバイアスを1~100Pa間に制御し、酸素ガスのバイアスを0.1Paよりも小さくなるように制御し、水蒸気のバイアスを0~2×10Pa間に制御し、二酸化炭素のバイアスを0~100Pa間に制御する。当該バイアス範囲内で製造された薄膜の密度は高く、薄膜中のキャリア電子の移動率も比較的高い。
3.セレン化物ナノ粒子
【0038】
ナノ粒子がセレン化亜鉛ナノ粒子である場合、還元性ガス(一酸化炭素、水素ガスやアンモニアガス等)のバイアスを1~100Pa間に制御し、酸素ガスのバイアスを0.1Paよりも小さくなるように制御し、水蒸気のバイアスを0~1×10Pa間に制御し、二酸化炭素のバイアスを0~10Pa間に制御する。当該バイアス範囲内で製造された薄膜の密度は高く、薄膜中のキャリア電子の移動率も比較的高い。
【0039】
ナノ粒子がセレン化鉛ナノ粒子である場合、還元性ガス(一酸化炭素、水素ガスやアンモニアガス等)のバイアスを1~100Pa間に制御し、酸素ガスのバイアスを0.1Paよりも小さくなるように制御し、水蒸気のバイアスを0.1Paよりも小さくなるように制御し、二酸化炭素のバイアスを0~100Pa間に制御する。当該バイアス範囲内で製造された薄膜の密度は高く、薄膜中のキャリア電子の移動率も比較的高い。
4.窒化物ナノ粒子
【0040】
ナノ粒子が窒化ケイ素ナノ粒子である場合、還元性ガス(一酸化炭素、水素ガスやアンモニアガス等)のバイアスを1~100Pa間に制御し、酸素ガスのバイアスを0.1~1Paに制御し、水蒸気のバイアスを0~2×10Pa間に制御し、二酸化炭素のバイアスを0~100Pa間に制御する。また、アンモニアガスは1×10Pa程度に保持される。当該バイアス範囲内で製造された薄膜の密度は高く、薄膜中のキャリア電子の移動率も比較的高い。
【0041】
ナノ粒子が窒化アルミニウムナノ粒子である場合、還元性ガス(一酸化炭素、水素ガスやアンモニアガス等)のバイアスを1~100Pa間に制御し、酸素ガスのバイアスを0.1Paよりも小さくなるように制御し、水蒸気のバイアスを0~2×10Pa間に制御し、二酸化炭素のバイアスを10~100Pa間に制御する。また、アンモニアガスは1×10Pa程度に保持される。当該バイアス範囲内で製造された薄膜の密度は高く、薄膜中のキャリア電子の移動率も比較的高い。
5.フッ化物ナノ粒子
【0042】
ナノ粒子がフッ化ランタンナノ粒子である場合、還元性ガス(一酸化炭素、水素ガスやアンモニアガス等)のバイアスを1~100Pa間に制御し、酸素ガスのバイアスを0.1Paよりも小さくなるように制御し、水蒸気のバイアスを0~1×10Pa間に制御し、二酸化炭素のバイアスを0~10Pa間に制御する。当該バイアス範囲内で製造された薄膜の密度は高く、薄膜中のキャリア電子の移動率も比較的高い。
【0043】
ナノ粒子がフッ化ナトリウムナノ粒子である場合、還元性ガス(一酸化炭素、水素ガスやアンモニアガス等)のバイアスを1~100Pa間に制御し、酸素ガスのバイアスを0.1Paよりも小さくなるように制御し、水蒸気のバイアスを0~2×10Pa間に制御し、二酸化炭素のバイアスを10~100Pa間に制御する。当該バイアス範囲内で製造された薄膜の密度は高く、薄膜中のキャリア電子の移動率も比較的高い。
【0044】
本発明では、成膜時にナノ粒子を互いに架橋させる。架橋とは、ナノ粒子間に物質が充填され、化学結合によってナノ粒子を連結させることを意味する。これに対し、無架橋のナノ粒子間には化学結合によって連結された物質が存在しない。本発明は、上記の架橋方法によって、対応薄膜の密度やキャリア移動率を向上させることができる。
【0045】
本発明は、非真空条件下でナノ粒子溶液を直接にナノ粒子薄膜に製造することができる。具体的には、前記ステップBは、
まずナノ粒子溶液を密閉した環境に置き、溶液法によりナノ粒子溶液をナノ粒子薄膜に製造するステップB1と、
次に密閉した環境に複合ガスを流して架橋反応を発生させ、架橋ナノ粒子薄膜を得るステップB2と、を含む。
【0046】
上記のステップは、密閉した非真空条件下でナノ粒子溶液をナノ粒子薄膜に製造し、その後に、当該密閉した環境に上記複合ガスを流して架橋反応を発生させ、架橋ナノ粒子薄膜を得ることである。
【0047】
本発明は、上記のガス環境下で架橋ナノ粒子薄膜を製造することに限られない。まず不活性ガス条件下でナノ粒子薄膜を製造した後、得られたナノ粒子薄膜を密閉した環境に置き、次に複合ガスを流して架橋反応を発生させ、架橋ナノ粒子薄膜を得てもよい。具体的に、前記ステップBは、
まずナノ粒子溶液を不活性ガスの環境に置き、溶液法によりナノ粒子溶液をナノ粒子薄膜に製造するステップB1’と、
次にナノ粒子薄膜を密閉した環境に置き、密閉した環境に複合ガスを流して架橋反応を発生させ、架橋ナノ粒子薄膜を得るステップB2’と、を含む。
【0048】
本発明は、上記の架橋反応の終了後に、架橋ナノ粒子薄膜を乾燥処理して、最終的に厚さが15~60nmである架橋ナノ粒子薄膜を得る。但し、乾燥温度はナノ粒子溶液における溶媒の沸点よりも高く、膜厚により、乾燥時間は50nmあたりで15分間より長い。
【0049】
本発明は、架橋ナノ粒子薄膜も提供しており、上記したいずれかの架橋ナノ粒子薄膜の製造方法で製造される。
【0050】
通常のナノ粒子薄膜は互いに架橋しないナノ粒子が自己組織化したものであり、本発明をナノ粒子成膜に適用する場合、複合ガスを流して、粒子同士の架橋を促すことで粒子間の電気的結合を増加させ、キャリア輸送の障壁を下げて、キャリア移動率を増加させ、電気的性能を大幅に向上させる。このようにして得られた架橋ナノ粒子薄膜を、溶液法で製造した発光ダイオードや、薄膜太陽電池、光検出器、薄膜トランジスタに適用すると、これらのデバイスの性能を著しく向上させることができる。
【0051】
以下では、酸化亜鉛ナノ粒子を例として、従来の無架橋酸化亜鉛ナノ粒子薄膜と本発明の方法により製造された架橋酸化亜鉛ナノ粒子薄膜の性能を測定する。図1~3を合わせると、図1は従来の無架橋酸化亜鉛ナノ粒子薄膜の構造模式図であり、図2は本発明の方法により製造された架橋酸化亜鉛ナノ粒子薄膜の構造模式図であり、図3はITO/NPB/MoO/Alデバイスに対する異なる薄膜の電流-電圧曲線模式図である。図1から分かるように、無架橋のナノ粒子1間には化学結合により連結される物質が存在せず、図2から分かるように、ナノ粒子2間には物質3が充填され化学結合によりナノ粒子2が連結される。加えられた酸化亜鉛はITO/NPB/MoO/Alという構造の電流に対して非常に効果的な抑制作用があるため、電流が増加しているかどうかを見ることで、ZnOナノ粒子薄膜が浸漬から離脱したか否かを判断することができる。図3から分かるように、架橋ZnOナノ粒子薄膜がアルコール系溶媒(エタノール等)に浸漬してもしなくても、電流は比較的低い値に保たれる。これは、架橋ZnOナノ粒子薄膜が浸漬から離脱しておらず、ZnOはITO/NPB/MoO/Alという構造の電流に対して明らかな抑制作用を発揮していることを示している。また、無架橋のZnOナノ粒子薄膜はアルコール系溶媒(エタノール等)に浸漬されると、電流は著しく高くなる。これは、無架橋のZnOナノ粒子薄膜が浸漬から脱落し、応答デバイスの電流を著しく上昇させ、ZnOナノ粒子薄膜を添加しないデバイスに非常に近づいたことを示している。従って、酸化亜鉛ナノ粒子を架橋して得られた架橋酸化亜鉛ナノ粒子薄膜は、原溶媒(酸化亜鉛ナノ粒子を分散する際に用いられる溶媒であり、通常はアルコール系溶媒)に浸漬しても明らかな溶解や物質の離脱はなかった。逆に、架橋されていないナノ粒子薄膜は浸漬すると容易に脱落する。
【0052】
本発明は、薄膜光電子デバイスも提供しており、上記した架橋ナノ粒子薄膜を備えている。具体的に、前記薄膜光電子デバイスは、エレクトロルミネセンスデバイス、薄膜太陽光発電、薄膜光検出器、及び薄膜トランジスタのうちのいずれか1種である。
【0053】
薄膜光電子デバイスのうちの具体的な一実施形態として、図4に示すように、前記エレクトロルミネセンスデバイスは、第1電極10と、正孔注入層20と、正孔輸送層30と、発光層40と、電子輸送層50と、第2電極60とを順に備え、前記電子輸送層50の材料はナノ粒子薄膜を架橋処理することで形成された架橋ナノ粒子薄膜である。
【0054】
本実施形態で説明するエレクトロルミネセンスデバイスにおいて、前記第1電極及び第2電極のうち少なくとも一方の電極が発光層から放出した光帯域に対して高い透過率を有し、具体的に、前記第1電極は、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)から選ばれた1種又は複数種であってもよく、好ましくは、前記第1電極はITOである。
【0055】
また、本実施形態において、前記正孔輸送層の材料は、ポリ[ビス(4-フェニル)(4-ブチルフェニル)アミン]、4-ブチル-N,N-ジフェニルアニリンホモポリマー、アニリン、4-ブチル-N,N-ジフェニル、ホモポリマー(Poly-TPD)、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-co-N-(4-ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(TFB)、ポリ(9-ビニルカルバゾール)(PVK)、TPD、Spiro-TPD、LG101、HAT-CN、PEDOT:PSS、TAPC、a-NPB、m-MTDATA、NixO、MoOx、VOx、WOx又はそれらの混合物から選んでもよく、好ましくは、前記正孔輸送層はpoly-TPDである。前記正孔輸送層の厚さは10~100nmである。
【0056】
さらに、本実施形態において、前記量子ドット発光層の材料は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、PbS、PbSe、PbTe及びその他の二元、三元、四元のII-VI族化合物のようなII-VI族半導体のナノ結晶;GaP、GaAs、InP、InAs及びその他の二元、三元、四元のIII-V族化合物のようなIII-V族半導体のナノ結晶を含むが、これらに限定されない。また、前記のエレクトロルミネセンス用の量子ドット発光材料は、II-V族化合物、III-VI族化合物、IV-VI族化合物、I-III-VI族化合物、II-IV-VI族化合物、IV族モノマーを含むが、これらに限定されない。
【0057】
また、本実施形態において、前記第2電極は、Al、Ag、Cu、Mo、Au又はそれらの合金から選んでもよく、好ましくは、前記第2電極はAuである。前記第2電極の厚さは50~500nmであり、好ましくは、前記第2電極の厚さは100~200nmである。
【0058】
薄膜光電子デバイスのうちの具体的な一実施形態として、図5に示すように、前記薄膜太陽光発電デバイスは、第1電極10と、吸光層20と、電子抽出層30と、第2電極40とを順に備え、前記電子抽出層30の材料はナノ粒子薄膜を架橋処理することで形成された架橋ナノ粒子薄膜である。
【0059】
本実施形態で説明する薄膜太陽光発電デバイスにおいて、前記第1電極及び第2電極のうち少なくとも一方の電極が太陽光に対して高い透過率を有し、具体的に、前記第1電極は、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)から選ばれた1種又は複数種であってもよく、好ましくは、前記第1電極はITOである。
【0060】
また、本実施形態において、前記吸光層は、半導体の同質接合又は異質接合であってもよく、前記吸光層の材料は太陽スペクトルの範囲内の吸光材料であり、ポリマー太陽光発電材料、有機小分子太陽光発電材料、ハロゲン含有ペロブスカイト太陽光発電材料、黄銅鉱構造材料(例えば銅インジウムガリウムセレン)、II-VI族化合物材料(例えば薄膜とナノ結晶)、単結晶、多結晶、アモルファスシリコンを含むことができる。前記吸光層が同質接合であると、吸光層には上記のいずれかの材料カテゴリ中の特定の材料が含まれる。前記吸光層が異質接合であると、吸光層には上記のいずれかのカテゴリ又は2種の材料カテゴリ中の合計2種の特定の材料が含まれる。
【0061】
さらに、本実施形態において、前記第2電極は、Al、Ag、Cu、Mo、Au又はそれらの合金から選んでもよく、好ましくは、前記第2電極はAuである。前記第2電極の厚さは50~500nmであり、好ましくは、前記第2電極の厚さは100~200nmである。
【0062】
薄膜光電子デバイスのうちの具体的な一実施形態として、図6に示すように、前記薄膜光検出器は、陽極4と、電子障壁層5と、吸光層6と、正孔障壁層7と、陰極8とを順に備え、前記正孔障壁層7の材料はナノ粒子薄膜を架橋処理することで形成された架橋ナノ粒子薄膜である。
【0063】
本実施形態で説明する薄膜光検出器において、前記陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極が検出帯域に対して高い透過率を有する。
【0064】
また、本実施形態において、前記陽極は、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)から選ばれた1種又は複数種であってもよく、好ましくは、前記陽極はITOである。
【0065】
さらに、本実施形態において、前記電子障壁層の材料は、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-co-N-(4-ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(TFB)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリ(N,N’ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン)(poly-TPD)、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-co-ビス-N,N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン)(PFB)、4,4’、4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン(TCTA)、4,4’-ビス(9-カルバゾール)ビフェニル(CBP)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)、N,N’-ジフェニル-N,N’-(1-ナフチル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(NPB)、ドープグラフェン、非ドープグラフェン、C60、又はそれらの混合物から選んでもよく、好ましくは、前記電子障壁層はpoly-TPDである。前記電子障壁層の厚さは10~100nmである。
【0066】
また、本実施形態において、前記吸光層の材料は、二元のIII-V族化合物(GaN、GaAsやInGaAs等)、多元のIII-V族化合物、II-VI族化合物材料のナノ結晶、有機半導体材料、ハロゲン含有ペロブスカイト材料、黄銅鉱構造材料(銅インジウムガリウムセレン等)、単結晶、多結晶、アモルファスシリコンのうちの1種又は複数種であってもよい。前記吸光層(光電子発生層)は、半導体同質接合であってもよく、个半導体異質接合であってもよい。具体的に、吸光層が同質接合であると、吸光層の材料は上記のいずれかの材料カテゴリのうち1種の特定の材料である。吸光層が異質接合であると、その材料は上記のいずれかの材料カテゴリ又は2種の材料カテゴリ中の合計2種の特定の材料である。
【0067】
さらに、本実施形態において、前記陰極は、Al、Ag、Cu、Mo、Au又はそれらの合金から選んでもよく、好ましくは、前記陰極はAuである。前記陰極の厚さは50~500nmであり、好ましくは、前記陰極の厚さは100~200nmである。好ましくは、前記薄膜光検出器は部分パッケージ、全パッケージ、又はパッケージ無しのいずれかである。
【0068】
薄膜光電子デバイスのうちの具体的な一実施形態として、前記薄膜トランジスタの半導体層材料はナノ粒子薄膜を架橋処理することで形成された架橋ナノ粒子薄膜であり、前記薄膜トランジスタは、基板10と、基板10上に位置するソース電極20及びドレイン電極30と、前記ソース電極20及びドレイン電極30上に位置する絶縁層40と、前記絶縁層40上に位置するゲート電極50とを備え、前記基板10には半導体層60がさらに設けられ、前記ソース電極20とドレイン電極30との間は前記半導体層60により分離され、具体的に、前記半導体層の厚さは前記ソース電極及びドレイン電極の厚さより大きくてもよい(図7a参照)。また、前記半導体層は前記ソース電極及びドレイン電極の厚さと一致するように配置されてもよい(図7b参照)。
【0069】
さらに、図8に示すように、前記薄膜トランジスタは、下方から上方に向かって基板、ゲート電極、絶縁層、及び半導体層を順に積層し、前記半導体層にはソース電極及びドレイン電極が配置され、前記ソース電極及びドレイン電極は互いに分離するように構成されてもよい。
【0070】
或いは、図9に示すように、前記薄膜トランジスタは、下方から上方に向かって基板、ゲート電極、絶縁層、及び半導体層を順に積層し、前記絶縁層にはソース電極及びドレイン電極がさらに設けられ、前記ソース電極及びドレイン電極は前記半導体層の内部に位置し、前記半導体層により分離するように構成されてもよい。
【0071】
本実施形態で説明する薄膜トランジスタにおいて、前記ソース電極、ドレイン電極、及びゲート電極の材料は、金属又は高い導電率を有する半導体であってもよく、前記絶縁層の材料は、例えば酸化物や窒化物等の誘電体材料であってもよい。
【0072】
上記したように、本発明が提供する架橋ナノ粒子薄膜及び製造方法、並びに薄膜光電子デバイスは、本発明でナノ粒子により成膜する際に、複合ガスを流して粒子同士の架橋を促すことで、粒子間の電気的結合を増加し、キャリア輸送の障壁を下げ、キャリアの移動率を増加させることで、電気的性能を大幅に向上させる。このようにして得られた架橋ナノ粒子薄膜を電子輸送層として溶液法により製造したエレクトロルミネセンスデバイスに適用すると、キャリアバランスを改善し、発光効率及びデバイスの寿命を高めることができる。また、電子輸送層として溶液法により製造した薄膜太陽光発電に適用すると、デバイスの線形抵抗を著しく低下させ、並列抵抗を高め、デバイスのエネルギー転換効率を高めることができる。さらに、電子抽出層及び正孔障壁層として溶液法により製造した薄膜光検出器に適用すると、電流を低減し、検出率を向上することができる。また、溶液法により製造した薄膜トランジスタに適用すると、半導体層のキャリア移動率を向上し、ソース-ドレイン電流を増加し、応答周波数を高めることができる。
【0073】
なお、本発明の適用は上記の例に限らず、当業者にとって、上記の説明によって改良又は変換でき、これら全ての改良及び変換はいずれも本発明の特許請求の範囲に属することを理解できるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9