(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】アクリロニトリル・ブタジエンゴム組成物および当該組成物層を含む積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 25/08 20060101AFI20220518BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20220518BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20220518BHJP
C08L 9/02 20060101ALI20220518BHJP
C08L 31/04 20060101ALI20220518BHJP
C08F 263/04 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
B32B25/08
B32B27/28 102
B32B7/12
C08L9/02
C08L31/04 S
C08F263/04
(21)【出願番号】P 2020506478
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2019009447
(87)【国際公開番号】W WO2019176797
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2018049539
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018049541
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】菊地 義治
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-019030(JP,A)
【文献】特開2010-269485(JP,A)
【文献】特開2009-006575(JP,A)
【文献】国際公開第2018/151103(WO,A1)
【文献】特開2017-113388(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0127619(US,A1)
【文献】特開平09-124803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08F 263/04
B32B 25/08
B32B 27/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロニトリル・ブタジエンゴムを含み、シラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体を含まないアクリロニトリル・ブタジエンゴム組成物、または、
アクリロニトリル・ブタジエンゴム、および当該アクリロニトリル・ブタジエンゴム100質量部に対して、シラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体を0質量部を超えて50質量部以下の量で含むアクリロニトリル・ブタジエンゴム組成物
を含むアクリロニトリル・ブタジエンゴム層と、
エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層と
が、エチレン・酢酸ビニル共重合体層を介して積層されていることを特徴とする積層体。
【請求項2】
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体層がシラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体を含むことを特徴とする請求項
1に記載の積層体。
【請求項3】
アクリロニトリル・ブタジエンゴム、および当該アクリロニトリル・ブタジエンゴム100質量部に対して、シラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体を2~50質量部含むことを特徴とす
るアクリロニトリル・ブタジエンゴム組成物。
【請求項4】
さらにジクミルペルオキシドを1.7~20質量部含むことを特徴とする請求項
3に記載のアクリロニトリル・ブタジエンゴム組成物。
【請求項5】
請求項
3または
4に記載のアクリロニトリル・ブタジエンゴム組成物からなる層とエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層とが積層されていることを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層との接着強度が改良されたアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)組成物および当該組成物層とエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層との積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、産業機械、建設機械、モーターバイク、農業機械等にはエンジンを冷却するためのラジエーターホース、ラジエーターオーバーフロー用ドレインホース、室内暖房用ヒーターホース、エアコンドレインホース、ワイパー送水ホース、ルーフドレインホース、プロラクトホース等の各種ホースが装着されている。これらのホースには耐油性、耐熱性、耐ガス透過性の良いNBRが使用されている。
【0003】
しかしながら、用途によっては、NBR単層では耐ガス透過性が不十分であることから、例えば、NBR層とよりガスバリア性に優れるエチレン・ビニルアルコール共重合体層とを積層すること(特許文献1)が提案されている。
【0004】
しかしながら、単にNBR層とエチレン・ビニルアルコール共重合体層との積層を試みても接着強度が不十分であることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層との接着強度に優れるNBR組成物、およびNBR層とエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層との接着強度に優れる積層体を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]~[6]に係る。
【0008】
[1]アクリロニトリル・ブタジエンゴム、および当該アクリロニトリル・ブタジエンゴム100質量部に対して、シラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体を0~50質量部含むことを特徴とするアクリロニトリル・ブタジエンゴム組成物。
【0009】
[2]項[1]に記載の組成物を含むアクリロニトリル・ブタジエンゴム層とエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層とが、エチレン・酢酸ビニル共重合体層を介して積層されていることを特徴とする積層体。
【0010】
[3]上記エチレン・酢酸ビニル共重合体層がシラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体を含むことを特徴とする項[2]に記載の積層体。
【0011】
[4]アクリロニトリル・ブタジエンゴム、および当該アクリロニトリル・ブタジエンゴム100質量部に対して、シラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体を2~50質量部含むことを特徴とする項[1]に記載のアクリロニトリル・ブタジエンゴム組成物。
【0012】
[5]さらにジクミルペルオキシドを1.7~20質量部含むことを特徴とする項[1]または項[4]に記載のアクリロニトリル・ブタジエンゴム組成物。
【0013】
[6]項[4]または項[5]に記載のアクリロニトリル・ブタジエンゴム組成物からなる層とエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層とが積層されていることを特徴とする積層体。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体を含むアクリロニトリル・ブタジエンゴム組成物は、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層と積層した場合に接着強度が優れるので、耐油性、耐熱性、耐ガス透過性を必要とする各種用途に好適に用い得る。
【0015】
また、アクリロニトリル・ブタジエンゴム層とエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層との間にエチレン・酢酸ビニル共重合体層を有する積層体は層間の接着強度に優れ、耐油性、耐熱性、耐ガス透過性を必要とする各種用途に好適に用い得る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《アクリロニトリル・ブタジエンゴム》
本発明の積層体を構成するアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)層(以下、「NBR層」と略称する場合がある。)、およびアクリロニトリル・ブタジエンゴム組成物(以下、「NBR組成物」と略称する場合がある。)を構成するアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)は、アクリロニトリルとブタジエンとを乳化重合して得られるジエン系合成ゴムである。NBRは一般的にアクリロニトリルの結合量によって、極高(43%以上)、高(36~42%)、中高(31~35%)、中(25~30%)、低(24%以下)の5段階に分類され、中高が汎用タイプである。
【0017】
《シラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体》
本発明に係わるNBRに配合されるシラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレン・酢酸ビニル共重合体に不飽和シラン化合物をグラフト変性してなる変性共重合体である。不飽和シラン化合物のグラフト量は、通常0.01~5重量%、好ましくは0.02~3重量%である。
【0018】
本発明に係わるシラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210〔190℃、2.16kg荷重〕に準拠して測定した値が、通常1.6~6.4g/10分、好ましくは1.6~4.6g/10分の範囲にある。
【0019】
シラン変性されるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、共重合体中に存在する酢酸ビニル含量が通常、5~50重量%、好ましくは5~40重量%の範囲にある。
【0020】
本発明に係わるエチレン・酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210〔190℃、2.16kg荷重〕に準拠して測定した値が、通常1.6~6.4g/10分、好ましくは1.6~4.6g/10分の範囲にある。
【0021】
エチレン・酢酸ビニル共重合体に不飽和シラン化合物をグラフト変性する方法は、種々公知の変性方法、例えば、ラジカル開始剤の存在下または不存在下にグラフト変性を行なうことができる。その際、ラジカル開始剤の存在下にグラフト変性すると、上記不飽和シラン化合物を効率よくグラフト変性することができる。
【0022】
このようなラジカル開始剤としては、有機ペルオキシド、アゾ化合物などが用いられる。このようなラジカル開始剤としては、具体的には、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-t- ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5- ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシン-3、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルペルアセテート、2,5-ジメチル-2,5- ジ-(t-ブチルペルオキシド)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5- ジ(t-ブチルペルオキシド)ヘキサン、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルフェニルアセテート、t-ブチルペルイソブチレート、t-ブチルペル-sec- オクトエート、t-ブチルペルピバレート、クミルペルピバレート、t-ブチルペルジエチルアセテート;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどが挙げられる。
【0023】
これらのうちでは、ジクミルペルオキシド、ジ-t- ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5- ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5- ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルペルオキシドが好ましく用いられる。
【0024】
〈不飽和シラン化合物〉
エチレン・酢酸ビニル共重合体にグラフトされる不飽和シラン化合物としては、種々公知の化合物、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニルシラン類、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル系シラン類等を挙げることができる。
【0025】
《NBR組成物》
本発明のNBR組成物は、上記NBR:100質量部に対して、上記シラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体を0~50質量部、好ましくは2~50質量部、より好ましくは5~20質量部含む組成物である。
【0026】
本発明のNBR組成物は、上記シラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体に加え、ジクミルペルオキシドを1.7~20質量部、より好ましくは3.4~10.2質量部含むとエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物からなる層との接着強度がより改良される。
【0027】
本発明に係わるNBRには、所望の目的に応じて上記シラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体およびジクミルペルオキシドに加え、他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。他の成分としては、例えば、フィラー、架橋助剤、加硫促進剤、加硫助剤、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、活性剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、増粘剤、発泡剤および発泡助剤から選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。また。それぞれの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
〈フィラー〉
本発明に係わるNBRに配合されるフィラーは、NBRに配合される公知のゴム補強剤であり、通常、カーボンブラック、無機補強剤と呼称されている無機物である。
【0029】
本発明に係わるフィラーとしては、具体的には、旭#55G、旭#60G(以上、旭カーボン(株)製)、シースト(SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等)のカーボンブラック(東海カーボン(株)製)、これらカーボンブラックをシランカップリング剤等で表面処理したのもの、および、シリカ、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微粉ケイ酸、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー等が挙げられる。
【0030】
これらフィラーは、単独でも、二種以上の混合物であってもよい。
【0031】
本発明に係わるフィラーとしては、好ましくは、親水性シリカ、疎水性シリカなどのシリカ、カーボンブラック、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー等が用いられる。
【0032】
本発明に係わるNBRがフィラーを含む場合は、上記NBR100質量部に対し、通常、100~300質量部、好ましくは100~250質量部の範囲で配合すればよい。
【0033】
〈架橋助剤、加硫促進剤および加硫助剤〉
架橋剤として、ジクミルペルオキシドを用いる場合、架橋助剤を併用してもよい。架橋助剤としては、例えば、イオウ;p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;マレイミド系架橋助剤;ジビニルベンゼン;酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種(JIS規格(K-1410))、ハクスイテック(株)製)、酸化マグネシウム、亜鉛華〔例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業(株)製)などの酸化亜鉛〕、活性亜鉛華等の金属酸化物が挙げられる。
【0034】
架橋助剤を用いる場合、NBR中の架橋助剤の配合量は、ジクミルペルオキシド1モルに対して、通常0.5~10モル、好ましくは0.5~7モル、より好ましくは1~6モルである。
【0035】
本発明に係わる加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール(例えば、サンセラーM(商品名;三新化学工業社製))、2-(4-モルホリノジチオ)ペンゾチアゾール(例えば、ノクセラーMDB-P(商品名;大内新興化学工業社製))、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルフォリノチオ)ベンゾチアゾールおよびジベンゾチアジルジスルフィド(例えば、サンセラーDM(商品名;三新化学工業社製))などのチアゾール系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジンおよびジオルソトリルグアニジンなどのグアニジン系加硫促進剤;アセトアルデヒド・アニリン縮合物およびブチルアルデヒド・アニリン縮合物などのアルデヒドアミン系加硫促進剤;2-メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド(例えば、サンセラーTS(商品名;三新化学工業社製))、テトラメチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTT(商品名;三新化学工業社製))、テトラエチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTET(商品名;三新化学工業社製))、テトラブチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTBT(商品名;三新化学工業社製))およびジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(例えば、サンセラーTRA(商品名;三新化学工業社製))などのチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(例えば、サンセラーPZ、サンセラーBZおよびサンセラーEZ(商品名;三新化学工業社製))およびジエチルジチオカルバミン酸テルルなどのジチオ酸塩系加硫促進剤;エチレンチオ尿素(例えば、サンセラーBUR(商品名;三新化学工業社製)、サンセラー22-C(商品名;三新化学工業社製))、N,N'-ジエチルチオ尿素およびN,N'-ジブチルチオ尿素などのチオウレア系加硫促進剤;ジブチルキサトゲン酸亜鉛などのザンテート系加硫促進剤が挙げられる。
【0036】
加硫促進剤を用いる場合、NBR中のこれらの加硫促進剤の配合量は、NBR100質量部に対して、一般に0.1~20質量部、好ましくは0.2~15質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部である。加硫促進剤の配合量が上記範囲内であると、得られる積層体の表面へのブルームなく、NBRが優れた架橋特性を示す。架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、加硫助剤を併用することができる。
【0037】
本発明に係わる加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種、ハクスイテック(株)製)、酸化マグネシウム、亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業(株)製)などの酸化亜鉛)が挙げられる。
【0038】
加硫助剤を用いる場合、NBR組成物中の加硫助剤の配合量は、NBR100質量部に対して、通常1~20質量部である。
【0039】
〈軟化剤〉
本発明に係わる軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ等のロウ類;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)が挙げられ、これらのうちでは、石油系軟化剤が好ましく、プロセスオイルが特に好ましい。
【0040】
本発明に係わるNBRが軟化剤を含有する場合には、軟化剤の配合量は、NBR100質量部に対して、一般に2~100質量部、好ましくは10~100質量部である。
【0041】
〈老化防止剤(安定剤)〉
本発明に係わるNBRに、老化防止剤(安定剤)を配合することにより、これから形成されるシールパッキンの寿命を長くすることができる。このような老化防止剤として、従来公知の老化防止剤、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤などがある。
【0042】
本発明に係わる老化防止剤としては、例えば、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p―フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤;ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等がある。
【0043】
本発明に係わるNBRが老化防止剤を含有する場合には、老化防止剤の配合量は、NBR100質量部に対して、通常は0.3~10質量部、好ましくは0.5~7.0質量部である。老化防止剤の配合量が上記範囲内であると、得られる積層体の表面のブルームがなく、さらに加硫阻害の発生を抑制することができる。
【0044】
〈加工助剤〉
加本発明に係わる加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛またはエステル類等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。
【0045】
本発明に係わるNBRが加工助剤を含有する場合は、NBR100質量部に対して、通常1~3質量部の量で適宜配合することができる。加工助剤の配合量が前記範囲内であると、混練加工性、押出加工性、射出成形性等の加工性に優れるので好適である。
【0046】
前記加工助剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0047】
〈活性剤〉
本発明に係わる活性剤としては、例えば、ジ-n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン等のアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリレート、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の亜鉛化合物等の活性剤;過酸化亜鉛調整物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0048】
本発明に係わるNBRが活性剤を含有する場合には、活性剤の配合量は、NBR100質量部に対して、通常は0.2~10質量部、好ましくは0.3~5質量部である。
【0049】
〈発泡剤および発泡助剤〉
本発明に係わるNBRを用いて形成された積層体は、非発泡体であってもよいし、発泡体であってもよい。積層体が発泡体である場合にはNBR組成物には発泡剤が含まれていることが好ましい。
【0050】
本発明に係わる泡剤としては、市販の発泡剤のいずれもが好適に使用される。このような発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機系発泡剤;N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(ベンゼンスルフォニルヒドラジド)ジフェニルスルフォン-3,3'-ジスルフォニルヒドラジド等のスルフォニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4'-ジフェニルジスルホニルアジド、パラトルエンマルホニルアジド等のアジド化合物が挙げられる。中でも、アゾ化合物、スルフォニルヒドラジド化合物、アジド化合物が好ましく用いられる。
【0051】
本発明に係わるNBRが、発泡剤を含有する場合には、発泡剤の配合量は、NBRから製造される積層体に要求される性能により適宜選択されるが、NBR100質量部に対して、通常0.5~30質量部、好ましくは1~20質量部の割合で用いられる。
【0052】
また、必要に応じて発泡剤とともに発泡助剤を併用しても差し支えない。発泡助剤の添加は、発泡剤の分解温度の調節、気泡の均一化などに効果がある。発泡助剤としては、具体的には、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、シュウ酸などの有機酸、尿素およびその誘導体などが挙げられる。
【0053】
本発明に係わるNBRが、発泡助剤を含有する場合には、発泡助剤の配合量は、発泡剤100質量部に対して、通常1~100質量部、好ましくは2~80質量部の割合で用いられる。
【0054】
<エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物>
本発明の積層体を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物は、エチレン・ビニルアルコール共重合体とも称されているエチレンとビニルアルコールとの共重合体である。
【0055】
本発明に係わるエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物は、特に限定はされないが、通常、エチレン含有率が20~50モル%、好ましくは24~35モル%の範囲にある。又、本発明に係わるエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物は、溶融押出し成形性を有する限り、MFR(荷重:2160g、測定温度:190℃)は、特に限定はされないが、通常、1.6~6.4g/10分の範囲にある。
【0056】
本発明に係わるエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物は、具体的には、株式会社クラレからエバールの商品名で、および日本合成化学からソアノールの商品名で夫々製造販売されている。
【0057】
《エチレン・酢酸ビニル共重合体》
本発明の積層体を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体であって、共重合体中に存在する酢酸ビニル含量が通常、共重合体中に存在する酢酸ビニル含量が通常、5~50重量%、好ましくは5~40重量%の範囲にある。
【0058】
本発明に係わるエチレン・酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210〔190℃、2.16kg荷重〕に準拠して測定した値が、通常1.6~6.4g/10分、好ましくは1.6~4.6g/10分の範囲にある。
【0059】
本発明に係わるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、不飽和シラン化合物をグラフト変性してなる変性共重合体であってもよい。その場合の不飽和シラン化合物のグラフト量は、通常0.01~5重量%、好ましくは0.02~3重量%の範囲にある。
【0060】
本発明に係わる変性共重合体は、種々公知の変性方法、たとえば、例えば、ラジカル開始剤の存在下または不存在下にエチレン・酢酸ビニル共重合体をグラフト変性して得られる。その際、ラジカル開始剤の存在下にグラフト変性すると、上記不飽和シラン化合物を効率よくグラフト変性することができる。
【0061】
このようなラジカル開始剤としては、有機ペルオキシド、アゾ化合物などが用いられる。このようなラジカル開始剤としては、具体的には、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-t- ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5- ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシン-3、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルペルアセテート、2,5-ジメチル-2,5- ジ-(t-ブチルペルオキシド)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5- ジ(t-ブチルペルオキシド)ヘキサン、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルフェニルアセテート、t-ブチルペルイソブチレート、t-ブチルペル-sec- オクトエート、t-ブチルペルピバレート、クミルペルピバレート、t-ブチルペルジエチルアセテート;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどが挙げられる。
【0062】
これらのうちでは、ジクミルペルオキシド、ジ-t- ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5- ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5- ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルペルオキシドが好ましく用いられる。
【0063】
〈不飽和シラン化合物〉
エチレン・酢酸ビニル共重合体にグラフトされる不飽和シラン化合物としては、種々公知の化合物、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニルシラン類、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル系シラン類等を挙げることができる。
【0064】
<積層体>
本発明の積層体は、上記NBR組成物層と上記エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層とが積層されてなる積層体である。
【0065】
本発明の積層体を構成する上記NBR組成物層と上記エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層の厚さとしては、特に限定は無いが、NBR組成物層は、通常は0.1~30mmであり、好ましくは1~5mmであり、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層は、通常は0.1~30mmであり、好ましくは1~5mmである。また、積層体全体の厚さとしては、特に限定は無いが、通常は1~31mmであり、好ましくは5~20mmである。
【0066】
また、本発明の積層体は、上記NBR層と上記エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層とが上記エチレン・酢酸ビニル共重合体層を介して積層されてなる積層体である。
【0067】
上記積層体を構成する上記NBR層は上記NBR組成物層を含む。
【0068】
本発明の積層体を構成する上記NBR層と上記エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層の厚さとしては、特に限定は無いが、NBR層は、通常は0.1~30mmであり、好ましくは1~5mmであり、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層は、通常は0.1~30mmであり、好ましくは1~5mmである。
【0069】
また、上記エチレン・酢酸ビニル共重合体層の厚さは、特に限定は無いが、通常、30~300μm、好ましくは30~250μmの範囲にある。
【0070】
また、積層体全体の厚さとしては、特に限定は無いが、通常は1~31mmであり、好ましくは5~20mmである。
【0071】
本発明の積層体は、種々公知の成形加工方法、具体的には、例えば、NBRとエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物とをエチレン・酢酸ビニル共重合体を中間層として共押出成形して積層体とする方法、NBR、エチレン・酢酸ビニル共重合体およびエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物とを夫々押出成形、あるいはプレス成形した後、NBR層とエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層とをエチレン・酢酸ビニル共重合体層を介して積層する方法、NBR層あるいはエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層にエチレン・酢酸ビニル共重合体層を押出しラミネートした後、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層あるいはNBR層とを貼り合わせる方法、若しくは、射出成形、カレンダー成形、中空成形等の各種の成形加工方法により、積層体とすることができる。
【0072】
また、本発明の積層体は、例えば、NBR組成物とエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物とを共押出成形して積層体とする方法、NBRおよびエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物とを夫々押出成形、あるいはプレス成形した後、NBR組成物層とエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層とを積層する方法、若しくは、射出成形、カレンダー成形、中空成形等の各種の成形加工方法により、積層体とすることができる。
【0073】
本発明の積層体は、耐油性、耐熱性、耐ガス透過性を必要とする各種用途、例えば、自動車燃料配管用チューブまたはホース、自動車冷却系配管用チューブまたはホース、自動車ラジエーターホース、ブレーキホース、エアコンホース、電線被覆材、光ファイバー被覆材等のチューブ、ホース類、農業用フィルム、ライニング、建築用内装材(壁紙等)、ラミネート鋼板等のフィルム、シート類、自動車ラジエータータンク、薬液ボトル、薬液タンク、薬液容器、ガソリンタンク等のタンク類として好適に用いられる。本発明の積層構造体は、燃料透過性が低いため、自動車燃料配管用チューブまたはホースとして特に有用である。
【実施例】
【0074】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0075】
実施例および比較例で用いた重合体等を以下に示す。
(1)NBR:商品名Nipol 1042、結合アクリロニトリル(AN)量:33.5%、ML(1+4)100℃:77.5、非汚染性、比重:0.98[日本ゼオン(株)製]
(2)エチレン・酢酸ビニル共重合体
(2-1)エチレン・酢酸ビニル共重合体
エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA-1)として、商品名 エバフレック 銘柄EVA150 MFR:30g/10分、VA含有量:33重量%および密度:960kg/m3 三井・デュポンポリケミカル株式会社製を用いた。
(2-2)シラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体
実施例で用いたシラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体(変性EVA)は、以下の製造例1で製造した。
【0076】
〔製造例1〕
エチレン・酢酸ビニル共重合体〔商品名エバフレックス 銘柄EV260(MFR:6g/10分、密度:950kg/m3、酢酸ビニル含有量:28重量% 三井・デュポンポリケミカル製)を100質量部、ビニルトリメトキシシラン:1.7質量部、ジクミルパーオキサイド:0.15質量部、及び、ドデシルメルカプタン:0.03質量部を混合し、65mmφの多軸押出機に供給して押出温度200℃以上で溶融混練して押出した後、冷却ペレット化してシラン変性エチレン・酢酸ビニル共重合体(変性EVA)を得た。
【0077】
(3)エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物
エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物からなるフィルムとして、EVOH 商品面F101B [(株)クラレ社製]融点:180℃、厚さ:100μmのフィルムを用いた(EVOHフィルム)。
【0078】
当該EVOHフィルムは、NBRと積層する前に100℃×3時間 減圧乾燥し、パッケージ容器に保管した。
【0079】
[実施例1]
(NBR組成物の調製)
第一段階として、BB-2型バンバリーミキサー(神戸製鋼所製)を用いて、上記NBRを30秒間素練りし、次いでこれに、NBR:100質量部に対して5質量部の酸化亜鉛(井上石灰工業(株)製)と、40質量部のFEFカーボンブラック(旭#60UG、旭カーボン(株)社製)及び1質量部のステアリン酸を140℃で2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、さらに、1分間混練を行ない、約150℃で排出し、第一段階の配合物を得た。
【0080】
次に、第二段階として、第一段階で得られた配合物を、8インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、これに、0.7質量部のN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラー NS-P、大内新興(株)製)および1.5質量部の硫黄を加え10分間混練して未架橋のNBR組成物(NBR配合物)を得た。
【0081】
(積層体の作製、評価)
(T型剥離試験用の積層体の作製)
上記NBR組成物の調製で得られたNBR組成物をシート状に分出した。次に分出したNBR組成物シート50gを、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製 商品名:ルミラー)で共重合体組成物シートの上下を挟んだ。ルミラーフィルムで上下が挟まれたNBR組成物シートを、50トンプレス成形機を用いて、120℃で2分間プレスし、t(厚さ)=1mm、20cm四方のNBR組成物シートを作製した。
【0082】
前記プレスが行われた後の、NBR組成物シート(層1)を本プレス寸法(15cm×15cm×t=1mm)に裁断した。裁断した後に上下のルミラーフィルムを剥がした。
【0083】
110℃で3時間、真空状態で乾燥処理したEVOHフィルム(層3)を、本プレス寸法(15cm×15cm×t=1mm)に裁断した。
【0084】
変性EVAを用いて、厚さ250μmのフィルム(層2)を用意した。
【0085】
次にそれぞれのシート(層1)、フィルム(層3)およびフィルム(層2)を、層(2)を中間層として、重ね合わせた。
【0086】
重ね合わせる際には、層間の一部(幅3cm、長さ15cm:剥離試験時の掴みしろ)にルミラーフィルム(t=0.2mm)をはさみ込んだ状態で、層(1)、層(2)および層(3)とを重ね合わせ、続いて、前記一部にルミラーフィルムが挟み込まれた、重ね合わせられたシートとフィルムを、100トンプレス成型機を用いて180℃で10分間プレス(本プレス)し、NBRシートを架橋して、厚み2mmの積層体を得た。
【0087】
得られた積層体からルミラーフィルムを取り除き、NBR組成物シート〔層(1)〕と変性EVA層、あるいはEVA-1層〔層(2)〕との層間、変性EVA層あるいはEVA-1層〔層(2)〕とEVOH層〔層(3)〕との界面を手で剥離し、その剥離性(接着性)を、接着せずを1とし、強固に接着して手で剥離できない状態を5とし、1~5の5段階で評価を行うと共に、EVOH層の状態を観察した。
【0088】
評価結果を表1に示す。
【0089】
[実施例2]
実施例1で用いた変性EVAに替えて、EVA-1を用いる以外は、実施例1と同様に行い積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0090】
[比較例1]
実施例1において、中間層に用いた変性EVAを用いずに、シート(層1)とフィルム(層3)とを直接積層して積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0091】
[実施例3]
実施例1で用いたノクセラーNS-P及び硫黄に替えて、ジクミルパーオキサイド40%マスターバッチ(DCP-40C、日油(株)製)を用いる以外は、実施例1と同様に行い積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0092】
[実施例4]
実施例3で用いた変性EVAに替えて、EVA-1を用いる以外は、実施例3と同様に行い積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0093】
[比較例2]
実施例3において、中間層に用いた変性EVAを用いずに、シート(層1)とフィルム(層3)とを直接積層して積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
[実施例5]
(NBR組成物の調製)
第一段階として、BB-2型バンバリーミキサー(神戸製鋼所製)を用いて、上記NBRを30秒間素練りし、次いでこれに、NBR:100質量部に対して10質量部のシラン変性EVAと、5質量部の酸化亜鉛(井上石灰工業(株)製)と、40質量部のFEFカーボンブラック(旭#60UG、旭カーボン(株)社製)及び1質量部のステアリン酸を140℃で2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、さらに、1分間混練を行ない、約150℃で排出し、第一段階の配合物を得た。
【0095】
次に、第二段階として、第一段階で得られた配合物を、8インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、これに、0.7質量部のN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラー NS-P、大内新興(株)製)および1.5質量部の硫黄を加え10分間混練して未架橋のNBR組成物(NBR配合物)を得た。
【0096】
(積層体の作製、評価)
(T型剥離試験用の積層体の作製)
上記NBR組成物の調製で得られたNBR組成物をシート状に分出した。次に分出したNBR組成物シート50gを、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製 商品名:ルミラー)で共重合体組成物シートの上下を挟んだ。ルミラーフィルムで上下が挟まれたNBR組成物シートを、50トンプレス成形機を用いて、120℃で2分間プレスし、t(厚さ)=1mm、20cm四方のNBR組成物シートを作製した。
【0097】
次に、前記プレスが行われた後の、NBR組成物シート(層1)を本プレス寸法(15cm×15cm×t=1mm)に裁断した。裁断した後に上下のルミラーフィルムを剥がした。
【0098】
次に、110℃で3時間、真空状態で乾燥処理したEVOHフィルム(層2)を、本プレス寸法(15cm×15cm×t=1mm)に裁断した。次にそれぞれのシート(層1)およびフィルム(層2)を重ね合わせた。重ね合わせる際には、NBR組成物シートの一部(幅3cm、長さ15cm:剥離試験時の掴みしろ)にルミラーフィルム(t=0.2mm)をはさみ込んだ状態で、シートとフィルムを重ね合わせ、続いて、前記一部にルミラーフィルムが挟み込まれた、重ね合わせられたシートとフィルムを、100トンプレス成型機を用いて180℃で10分間プレス(本プレス)し、NBRシートを架橋して、厚さ2mmの積層体を得た。
【0099】
得られた積層体からルミラーフィルムを取り除き、NBR組成物シートとEVOHフィルムとの界面を手で剥離し、その剥離性(接着性)を、接着せずを1とし、強固に接着して手で剥離できない状態を5とし、1~5の5段階で評価を行うと共に、EVOHフィルムの状態を観察した。
【0100】
評価結果を表2に示す。
【0101】
[実施例6]
実施例5で用いたノクセラーNS-P及び硫黄に替えて、ジクミルパーオキサイド40%マスターバッチ(DCP-40C、日油(株)製)を用いる以外は、実施例5と同様に行い、NBR組成物および積層体を得た。
【0102】
評価結果を表2に示す。
【0103】
[比較例3]
実施例5で用いたNBR組成物に替えて、シラン変性EVAを配合しないNBR組成物を用いる以外は実施例5と同様に行い、NBR組成物およびその積層体を得た。
【0104】
評価結果を表2に示す。
【0105】
[比較例4]
実施例6で用いたNBR組成物に替えて、シラン変性EVAを配合しないNBR組成物を用いる以外は実施例6と同様に行い、NBR組成物およびその積層体を得た。
【0106】
評価結果を表2に示す。
【0107】