(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】サンプリング機構及びサンプリング方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20220518BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N35/02 B
(21)【出願番号】P 2020513974
(86)(22)【出願日】2019-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2019002649
(87)【国際公開番号】W WO2019202805
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2018081134
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】川辺 俊樹
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-3916(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018214(WO,A1)
【文献】特開平7-83938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
G01N 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体が収容された被サンプリング容器の栓体に管状の穿孔体を刺し込み、前記栓体を貫通した前記穿孔体にプローブを通して検体サンプリングを行うサンプリング機構であって、
前記穿孔体が、
先端を閉じ、前記栓体に刺し込まれて前記栓体を貫通する第1穿孔体と、
管状に形成されて前記第1穿孔体の外側に配置され、前記第1穿孔体を下方に突出させ、前記第1穿孔体とともに前記栓体に接近して前記第1穿孔体よりも後に前記栓体に到達し、前記栓体に刺し込まれて前記栓体を貫通する第2穿孔体と、を有し、
前記第1穿孔体が退避して残った前記第2穿孔体に前記プローブを通すことを特徴とするサンプリング機構。
【請求項2】
前記第1穿孔体に、前記被サンプリング容器の内部空間に到達する部位で側部を向いて開口し、前記被サンプリング容器の内部と外部を連通する通気路を有することを特徴とする請求項1記載のサンプリング機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載のサンプリング機構を備えた自動分析装置。
【請求項4】
検体が収容された被サンプリング容器の栓体に穿孔体を刺し込み、前記穿孔体にプローブを通して検体サンプリングを行うサンプリング方法であって、
前記穿孔体が、
先端を閉じた第1穿孔体と、
管状に形成された第2穿孔体と、を有し、
前記第2穿孔体を前記第1穿孔体の外側に配置し、前記第1穿孔体を前記第2穿孔体の下方に突出させ、前記第1穿孔体と前記第2穿孔体をともに前記栓体に接近させる工程と、
前記第1穿孔体を前記栓体に刺し込む工程と、
前記第2穿孔体を前記第1穿孔体よりも後に前記栓体に到達させて前記栓体に刺し込む工程と、
前記第1穿孔体及び前記第2穿孔体を前記栓体に貫通させる工程と、
前記第1穿孔体を退避させる工程と、
残った前記第2穿孔体に前記プローブを通す工程と、を備えたことを特徴とするサンプリング方法。
【請求項5】
前記第1穿孔体に、前記被サンプリング容器の内部空間に到達する部位で側部を向いて開口する通気路が設けられており、前記通気路により前記被サンプリング容器の内部と外部を連通した後に前記第1穿孔体を退避させることを特徴とする請求項4記載のサンプリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栓により密閉された状態の容器から血液などの検体を採取して分析に供することが可能なサンプリング機構やサンプリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、血液凝固分析装置などの自動分析装置には、採血管に栓(以下、キャップと表記することもある)を付けたまま検体をサンプリングするCTS(Closed Tube Sampling)を採用したものがある(特許文献1など)。このCTSにおいては、針状で内部が空洞の管であるピアサが用いられる。そして、ピアサにより栓に孔が空けられ(栓が穿孔され)、検体プローブが、ピアサ内側を通って採血管内に到達し、検体を採取する。なお、CTSによるサンプリング方式は、キャップアピアシング方式などと呼ばれることもある。
【0003】
図2(a)~(e)は、CTSにおける穿孔(ピアシング)からサンプリングまでの代表的な手順を概略的に示している。
図2(a)に示すピアサ41は、開放した先端が斜めに加工されて尖った円筒形状の部材である。このようなピアサ41を備えた分析装置(或いは検査装置やサンプリング装置)は、サンプリングの対象となっている試料容器(ここでは採血管31)を所定のサンプリング位置に配置する。
【0004】
さらに、
図2(a)や
図2(b)に示すように、ピアサ41が採血管31の上方から下降し、採血管31の上部に装着されているキャップ32に刺し込まれる。
図2(a)、(b)に示す例においてキャップ32は、プラスチック製の剛体であるキャップ本体33と、キャップ本体33の中央部に嵌め込まれたゴム等の弾性体である被穿孔部34とにより構成されている。
【0005】
そして、
図2(b)に示すように、ピアサ41が、被穿孔部34に刺さり、被穿孔部34の孔43を押し広げながら下降する。そして、
図2(c)に示すように、ピアサ41が被穿孔部34を貫通し、
図2(d)に示すように停止する。この結果、
図2(d)に示すように、被穿孔部34中に空間44が確保される。
【0006】
その後、検体プローブ(以下「プローブ」と称する)42が、停止したピアサ41の上方から下降し、
図2(e)に示すように、ピアサ41の空間44を通って採血管31内に進入する。さらに、図示は省略するが、プローブ42の下端部(先端部)が、採血管31内に到達して停止し、プローブ42を介して採血管31内の検体(血漿)36が吸引される。そして、プローブ42が、所定の吐出位置へ移動して検体36の吐出を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-176774号公報
【文献】特許第2929406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述のようなCTSを利用した検体採取では、採血管31をキャップ32で密閉したままサンプリングが行われるため、採血や検査を行う作業者への感染の防止や、被収容体である血液の蒸発防止などといった種々の点において優れている。しかし、例えば採血(真空採血)を行う際や行った後などに、
図2(a)に示すように、キャップ32の上面に血液35が付着している場合がある。
【0009】
採血時には、図示は省略するが、採血針が取り付けられた(或いはチューブを介して採血針と繋がった)採血管ホルダに対して、採血管31が装着される。この際、採血管ホルダ内に突出し鞘ゴムで覆われていた針が、採血管31の被穿孔部34に刺さる。採血管31の内部の気圧は、採血前には規定採血量に応じた陰圧となっており、被検査者の静脈圧との圧力差を利用して被検査者の血液が採血管内に流入する。
【0010】
採血を終えて採血管ホルダから採血管31を外す際に、縮んでいた鞘ゴムが元に戻るまでの間に露出した針から漏れ出た血液が、キャップ32の上面に付着する場合がある。
【0011】
このようにキャップ32の上面には血液35が付着することがあり、この血液35を除去せずにそのまま測定すると、
図2(b)に示すようにピアサ41が被穿孔部34に進入する際に、ピアサ41の内部に血液35aが入り込み、ピアサ41の内壁面に付着する場合がある。そして、キャップ32の外側にあった血液35が、ピアサ41を介してキャップ32の内側に持ち込まれ、
図2(c)に符号35bで示すように検体36中に落下するおそれがある。また、例えば採血時の採血量が規定値よりも少ない場合などには、採血管31内に陰圧が残ることもある。そして、このような場合には、CTSの利用の際に血液35が採血管31の中に入り込んで、検体36が汚染され易くなる可能性が高くなる。
【0012】
また、ピアサ41が、被穿孔部34の内部に進入する際や、下降する際には、被穿孔部34が、ピアサ41により採血管31内に向かって押されて幾分弾性変形する。そして、採血管31内の空気が被穿孔部34の弾性変形によって圧縮され、採血管31内の気圧が高められる。そして、ピアサ41が被穿孔部34を貫通する際には、ピアサ41の空間44を介して、採血管31の内部と外部とが繋がる。
【0013】
このため、ピアサ41が被穿孔部34を貫通する際に、採血管31内の高まった圧力が開放され、瞬間的な圧力変化により、検体36の飛散が生じる場合がある。さらに、検体36の飛散により、ピアサ41の内壁面に検体36aが付着し、所謂液だれが生じる場合がある(
図2(e))。
【0014】
そして、例えば分析装置が、検体36の液面を検知すると自動的に検体36の吸引を行うタイプのものである場合には、
図2(e)に示すようにプローブ42が、液だれによる検体36bに接触すると、この液だれによる検体36bの表面が適正な液面であると誤認識され、プローブ42による吸引が開始される場合がある。しかし、液だれに伴う検体36bを吸引しても、吸引量が分析に必要な量に足りず、所謂空吸いが生じることとなる。そして、このような空吸いにより、分析装置を利用した検査の精度が低下することとなる。なお、このような空吸いは、ピアサ41内に付着した血液35aでも生じ得る。
【0015】
さらに、キャップ32を外した状態の採血管31にシリンジ採血した血液を注入後、キャップ32で閉栓した採血管の内部は陽圧になっているため、CTS時に検体36がピアサ41の空間44を通って採血管の外に飛散する場合もある。そして、このような場合には、分析装置のカバーを開けた作業者が、分析装置内で飛散した血液に触れてしまったり、飛散した血液35や検体36が、分析装置内において周辺の箇所を汚染(機器汚染)したりすることもある。
【0016】
また、ピアサ41が下降時に被穿孔部34に適正に刺さらなかった場合に、ピアサ41が被穿孔部34を押し続け、被穿孔部34をキャップ本体33から分離させて、採血管31内に押し込まれることもある。そして、このような場合にはプローブ42が下降した際に、押し込まれた被穿孔部34によって、検体36へのプローブ42の進入が阻まれ、正常なサンプリングが行えなくなる。
【0017】
このように従来のCTSにおいては、状況に応じて前記の問題が生じる場合がある。そして、これらを原因として、分析装置を用いた検査の精度が悪化することが考えられる。このため、上述のような各種の状況が生じないよう、対策を施しておくことが必要である。
【0018】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、栓体に対する適正な穿孔を経てサンプリングを行うことが可能なサンプリング機構及びサンプリング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(1)上記目的を達成するために本発明は、被サンプリング容器の栓体に管状の穿孔体を刺し込み、前記栓体を貫通した前記穿孔体にプローブを通して検体サンプリングを行うサンプリング機構であって、
前記穿孔体が、
先端を閉じ、前記栓体に刺し込まれて前記栓体を貫通する第1穿孔体と、
管状に形成されて前記第1穿孔体の外側に配置され、前記第1穿孔体を下方に突出させ、前記第1穿孔体とともに前記栓体に接近して前記第1穿孔体よりも後に前記栓体に到達し、前記栓体に刺し込まれて前記栓体を貫通する第2穿孔体と、を有し、
前記第1穿孔体が退避して残った前記第2穿孔体に前記プローブを通すことを特徴とするサンプリング機構にある。
(2)また、上記目的を達成するために他の発明は、前記第1穿孔体に、前記被サンプリング容器の内部空間に到達する部位で側部を向いて開口し、前記被サンプリング容器の内部と外部を連通する通気路を有することを特徴とするサンプリング機構にある。
(3)また、上記目的を達成するために他の発明は、上記(1)又は(2)のいずれかのサンプリング機構を備えた自動分析装置にある。
(4)また、上記目的を達成するために他の発明は、被サンプリング容器の栓体に穿孔体を刺し込み、前記穿孔体にプローブを通して検体サンプリングを行うサンプリング方法であって、
前記穿孔体が、
先端を閉じた第1穿孔体と、
管状に形成された第2穿孔体と、を有し、
前記第2穿孔体を前記第1穿孔体の外側に配置し、前記第1穿孔体を前記第2穿孔体の下方に突出させ、前記第1穿孔体と前記第2穿孔体をともに前記栓体に接近させる工程と、
前記第1穿孔体を前記栓体に刺し込む工程と、
前記第2穿孔体を前記第1穿孔体よりも後に前記栓体に到達させて前記栓体に刺し込む工程と、
前記第1穿孔体及び前記第2穿孔体を前記栓体に貫通させる工程と、
前記第1穿孔体を退避させる工程と、
残った前記第2穿孔体に前記プローブを通す工程と、を備えたことを特徴とするサンプリング方法にある。
(5)また、上記目的を達成するために他の発明は、前記第1穿孔体に、前記被サンプリング容器の内部空間に到達する部位で側部を向いて開口する通気路が設けられており、
前記通気路により前記被サンプリング容器の内部と外部を連通した後に前記第1穿孔体を退避させることを特徴とするサンプリング方法にある。
【発明の効果】
【0020】
上記構成によれば、栓体に対する適正な穿孔を経てサンプリングを行うことが可能なサンプリング機構及びサンプリング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a)~(e)は本発明の一実施形態のサンプリング機構における穿孔動作を順に示す説明図である。
【
図2】(a)~(e)は従来のサンプリング機構における穿孔動作を順に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係るサンプリング機構と、このサンプリング機構を用いて実行されるサンプリング方法について、図面に基づき説明する。なお、
図2に示した従来技術と同様な部分については同一符号を付し、その説明は適宜省略する。
図1(a)には、本実施形態におけるサンプリング機構1を示している。このサンプリング機構1は、詳細な図示は省略するが、自動分析装置2のサンプリング部に備えられているものである。
【0023】
ここで、自動分析装置2は、分析対象である検体や、検体と混合される試薬を反応容器にそれぞれ分注する。さらに、自動分析装置2は、図示は省略するが、反応容器内で生じる反応を光学的に測定する測定部、検体容器を保持したラックを測定部に搬送するラック搬送部、及び、測定部やラック搬送部を含む全体的な制御を行う制御部などを備える。そして、自動分析装置2は、これら構成各部を連携させることによって、検体の生化学的、免疫学的、血液学的あるいは遺伝学的な分析を自動で行えるようになっている。
【0024】
サンプリング機構1には、複合ピアサ3が備えられている。この複合ピアサ3は、第1穿孔体としての第1ピアサ6と、第2穿孔体としての第2ピアサ7とにより構成されている。これらのうち第1ピアサ6は、軸心を上下方向に向けた円柱状の形態を有している。さらに、第1ピアサ6は、下端に、先端側へいくほど細くなるテーパ部8を有している。このテーパ部8の形状は、針状(或いは円錐形状)となっている。
【0025】
また、第1ピアサ6は、その内部に、軸心に沿って伸びる空間である通気路9を有している。この通気路9は、下端部において径方向に折れ曲がるよう形成されており、第1ピアサ6の側面に、例えば円形の開口11が形成されている。ここで、
図1(a)では、第1ピアサ6の上方の部位に係る図示は省略しているが、通気路9は外部空間(大気)に繋がるようになっている。そして、通気路9の内部の気圧は大気圧となっている。また、開口11は、第1ピアサ6の上方の丸棒状の部位(非テーパ部13)に位置している。
【0026】
前述の第2ピアサ7は、軸心を上下方向に向けた円管状の形態を有している。さらに、第2ピアサ7の先端(下端)は、全周に亘り水平になるよう加工されている。また、第2ピアサ7の下端においては、全周に亘って面取り加工が施されており、下方へ狭まるテーパ面12が形成されている。そして、
図1(a)に示す状態において、第2ピアサ7は、第1ピアサ6の外側に同軸的に配置されており、第1ピアサ6の大部分を覆っている。
【0027】
ここで、第2ピアサ7の内径は、例えば2mmから4mm程度とすることが可能である。また、本実施形態においては、第2ピアサ7の内周面と、第1ピアサ6の外周面との間には、血液35や検体36がほとんど進入せず、第1ピアサ6が軸方向に相対移動することを妨げない程度の極僅かな隙間が形成されている。さらに、
図1(a)では、第2ピアサ7の上方の部位に係る図示は省略しているが、第2ピアサ7の内部は外部空間に繋がっており、第2ピアサ7内の気圧は大気圧となっている。
【0028】
第1ピアサ6や第2ピアサ7の材質としては、種々のものを採用することが可能であるが、本実施形態では、被穿孔部34の材質との摩擦や、必要な剛性等の条件を考慮して、ステンレス鋼(SUS)が採用されている。このようにステンレス鋼を採用することにより、第1ピアサ6や第2ピアサ7を、剛性、洗浄の容易性、耐薬品性、被穿孔部34に対する摺動特性等といった各種の条件について優れたものとすることができる。
【0029】
なお、例えば、被穿孔部34に対する穿孔を支障なく行うことができ、更に被穿孔部34との摺動によりゴム片(ゴム屑)を生じない等の条件を満たすものであれば、第1ピアサ6や第2ピアサ7の材質として、例えばエンジニアリングプラスチックなどの合成樹脂を採用することも可能である。また、例えばステンレス鋼の表面に、セラミクスなどの所定のコーティングを施した素材を、第1ピアサ6や第2ピアサ7に用いることも可能である。
【0030】
第1ピアサ6や第2ピアサ7の保持は、自動分析装置2に備えられた各種の可動アーム機構によりそれぞれ独立して行うことが可能である。可動アーム機構としては、一般的な分析装置に備えられているような種々のものを採用することが可能である。例えば、本実施形態において、プローブ42は、水平方向への旋回や上下動が可能な可動アーム機構に装着されているが、第1ピアサ6や第2ピアサ7についても、プローブ42と同様の方式で動作を行う可動アーム移動を各々適用することが可能である。
【0031】
本実施形態の自動分析装置2は、可動アーム機構の組合せにより、
図1(a)、(b)に示すように、第1ピアサ6を第2ピアサ7の内側に挿入した状態のまま、第1ピアサ6及び第2ピアサ7を一体的に下降させることができるようになっている。さらに、自動分析装置2は、
図1(b)~(d)に示すように、第2ピアサ7の高さを維持したまま、第1ピアサ6を第2ピアサ7から上方に引き抜くことができるようになっている。
【0032】
次に、自動分析装置2により行われるサンプリング方法について説明する。先ず、
図1(a)に示すように、第2ピアサ7の内側に第1ピアサ6を挿入した状態で、第1ピアサ6及び第2ピアサ7(複合ピアサ3)が、採血管31の真上に移動する。この場合、複合ピアサ3の軸心(図示略)は、採血管31の軸心(図示略)とほぼ同一直線上に位置している。複合ピアサ3の移動は、第2ピアサ7の内側に第1ピアサ6を挿入した状態のまま一体的に行うことが可能である。
【0033】
このように第1ピアサ6及び第2ピアサ7を複合ピアサ3の状態で一体的に移動させる場合には、例えば、自動分析装置2内に備えられた洗浄部(図示略)で洗浄を行う際に、両者の移動や洗浄をまとめて同時に行うことができる。これにより、第1ピアサ6及び第2ピアサ7の移動や洗浄を、総合的に短時間で済ませることができる。
【0034】
なお、これに限らず、第2ピアサ7を先に、続いて第1ピアサ6の順に採血管31の真上に移動させるようにしてもよい。このようにした場合には、第1ピアサ6及び第2ピアサ7の各々に対して個別に最適な洗浄時間を割り当てる、といったことが可能である。
【0035】
図1(a)に示す状態においては、第1ピアサ6のテーパ部8が、第2ピアサ7の下端から突出し、第2ピアサ7の外側に露出している。さらに、第1ピアサ6に設けられた通気路9の開口11が、第2ピアサ7の外側に露出している。なお、これに限らず、第1ピアサ6を被穿孔部34に刺し進む際に、開口11に血液35が入り込むことを防止するため、開口11が第2ピアサ7に隠れた状態となるように第1ピアサ6の位置を制御し、
図1(b)のように第2ピアサ7(及び第1ピアサ6)が採血管31に進入してから第1ピアサ6を更に下降させ、開口11が第2ピアサ7から出て露出するようにしてもよい。そして、第1ピアサ6及び第2ピアサ7が採血管31に向かって下降し、第1ピアサ6の下端が、キャップ32の被穿孔部34に到達している。この際、第1ピアサ6の先端が接する位置は、被穿孔部34の上面における中央部となっている。
【0036】
さらに、この
図1(a)に示す状態では、被穿孔部34の上面における略中央に、血液35が付着している。第1ピアサ6及び第2ピアサ7(複合ピアサ3)は下降を続け、第1ピアサ6が被穿孔部34を押圧する。第1ピアサ6のテーパ部8は、先端が細径となっていることから、第1ピアサ6が被穿孔部34に突き刺さり、テーパ部8の周囲に穴(符号省略)が生じる。ここで、採血時にも孔が生じるが、この採血時の孔は、採血後に、ゴムの弾性により閉じている。そして、採血時に生じた孔に、第1ピアサ6が進入する場合もある。
【0037】
さらに、第1ピアサ6及び第2ピアサ7が一体的に下降を続けることにより、第1ピアサ6が、テーパ部8により被穿孔部34の穴(符号省略)を押し広げながら、被穿孔部34の奥へ進入する。そして、第1ピアサ6に係るテーパ部8の全体が穴内に進入すると、第1ピアサ6による穴の拡大量は最大となる。
【0038】
また、第1ピアサ6と共に第2ピアサ7が下降していることから、第2ピアサ7も、被穿孔部34に到達する。前述のように第2ピアサ7の下端にテーパ面12が形成されており、このテーパ面12は、第1ピアサ6に係るテーパ部8の上方に位置している。このため、第2ピアサ7のテーパ面12により被穿孔部34が幾分押し広げられ、第2ピアサ7が下端から、被穿孔部34の穴に進入する。そして、第2ピアサ7が第1ピアサ6との位置関係を保ったまま、第1ピアサ6と一体的に下降する。
【0039】
ここで、本実施形態では、第2ピアサ7のテーパ面12と、第1ピアサ6のテーパ部8との位置関係は、両者の間に、第1ピアサ6における丸棒状の部位(非テーパ部13)が介在するようになっている。また、第1ピアサ6の開口11は、この非テーパ部13に位置している。
【0040】
なお、これに限らず、テーパ部8とテーパ面12をより接近させ、非テーパ部13の露出を最小限に抑えるようにするか、或は、非テーパ部13が露出しないようにすることで、テーパ部8とテーパ面12を最大限連続するよう配置することができる。そして、このようにすることで、テーパ部8からテーパ面12への被穿孔部34の受け渡しを円滑に行い得ると考えられる。また、このようにする場合には、図示は省略するが、第1ピアサ6の開口11をテーパ部8に配置することが考えられる。
【0041】
図1(b)に示すように、第1ピアサ6及び第2ピアサ7(複合ピアサ3)が更に下降すると、第1ピアサ6及び第2ピアサ7の両方が、被穿孔部34を貫通する。このとき、第1ピアサ6の開口11が、採血管31の内部空間45に到達し、採血管31の中の圧力が通気路9を介して開放される。なお、
図1(b)には、第1ピアサ6及び第2ピアサ7が被穿孔部34を貫通した際の圧力変化により、検体36の飛散が生じ、飛散した検体36aが通気路9内に入り込んだ状態を示している。
【0042】
自動分析装置2は、この状態で第2ピアサ7を停止させ、第1ピアサ6を、
図1(c)に示すように上昇させる。第1ピアサ6が所定の高さまで移動すると、第1ピアサ6用の可動アーム機構(図示略)により、第1ピアサ6が水平方向に退避させられる。そして、
図1(d)に示すように、第2ピアサ7が、被穿孔部34を貫通した状態で残り、被穿孔部34中に空間46が確保される。
【0043】
その後、プローブ42が、停止した第2ピアサ7の上方から下降し、第2ピアサ7の空間46を通って採血管31内に進入する。そして、
図1(e)に示すように、プローブ42の下端部(先端部)が、採血管31内に到達して停止し、プローブ42を介して採血管31内の検体36が吸引される。ここで、本実施形態では、プローブ42の外径は0.8mmから1.5mm程度となっている。
【0044】
以上説明したようなサンプリング機構1によれば、先に穿孔を行う第1ピアサ6と、第1ピアサ6に続いて穿孔を行う第2ピアサ7とが備えられており、第1ピアサ6の先端は閉じている。そして、第2ピアサ7には、穿孔時には第1ピアサ6を受入れ、穿孔後にはプローブ42を通過させる空間46が形成されている。
【0045】
したがって、第1ピアサ6による穿孔時には、キャップ32に付着した血液35が、第1ピアサ6の先端から中に入ることを防止できる。つまり、血液35が第1ピアサ6によって採血管31内に持ち込まれるのを防止することが可能である。
【0046】
ここで、キャップ32の血液35の一部が、第1ピアサ6のテーパ部8により被穿孔部34内に引き込まれたとしても、被穿孔部34の厚み(高さ)内で被穿孔部34の中(穴内)で薄く広がる。したがって、このことによっても血液35を採血管31内に持ち込み難く、検体36への血液35の進入を防止できる。
【0047】
また、第1ピアサ6には通気路9が形成されており、第1ピアサ6が被穿孔部34を貫通すると、通気路9を介して、採血管31の内部空間45が採血管31の外部と空間的に繋がり連通する。このため、第1ピアサ6の通気路9によって内部空間45を大気圧にすることができる。
【0048】
さらに、採血管31の内部空間45が採血管31の外部と空間的に繋がる際には、第2ピアサ7の内側に第1ピアサ6が存在している。このため、第1ピアサ6による穿孔時に採血管31内の検体36が飛散したとしても、検体36が第2ピアサ7内に進入し付着するのを防止できる。
【0049】
これらのことから、第2ピアサ7内に検体の液だれが発生するのを防止できる。そして、自動分析装置2が、液だれした検体36bに対して液面検知するのを防ぐことができる。ここで、第2ピアサ7と第1ピアサ6の間には、前述のように極僅かな隙間が存在する。しかし、この隙間の大きさを、例えば、第2ピアサ7の中で第1ピアサ6が相対移動できるのに最低限必要な程度のものとすることで、より確実に、検体36が第2ピアサ7内に進入するのを防止できる。
【0050】
さらに、第2ピアサ7よりも細径な第1ピアサ6によって先に穿孔を行っているので、例えば従来のもののように、ピアサ41のみにより穿孔するものに比べて、穿孔時の弾性復元力を抑制することができる。
【0051】
また、第1ピアサ6は、先端へ行くほど細くなるテーパ部8を有しているので、被穿孔部34に第1ピアサ6をより確実に突き刺すことができる。このため、被穿孔部34がキャップ本体33から分離して採血管31内に落下(脱落)するのを防止できる。
【0052】
そして、これらのことから本実施形態のサンプリング機構1によれば、検査精度の悪化を防止することができる。そして、サンプリング機構1での検体液面誤検知を起因とする検査精度不良によって、本来不要な再検査が行われる、といったことを未然に防止できるようになる。
【0053】
また、本実施形態のサンプリング機構1においては、第2ピアサ7の先端に、下方へ狭まるテーパ面12が形成されている。このため、第2ピアサ7に関しても、被穿孔部34への突き刺しが容易であり、貫通時における弾性復元力の抑制が可能である。
【0054】
なお、本発明は要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することが可能である。例えば、第2ピアサ7の下端を、従来のピアサと同様に先端を斜めに加工することが可能である。
【0055】
また、第1ピアサ6の先端を、角錐形状や、例えばカッターの刃のような尖った薄板状の形状などとしてもよい。さらに、第1ピアサ6の、被穿孔部34への到達位置を、被穿孔部34の上面における中央部ではなく、偏心した位置としてもよい。この場合、偏心位置から被穿孔部34へ刺し込むことにより、第1ピアサ6の進入時に、被穿孔部34に発生する応力の分布が一様ではなくなるため、第1ピアサ6を被穿孔部34に進入させ易くなるとともに、被穿孔部34がキャップ本体33から脱落し難くなる。
【0056】
また、採血管31として、種々のタイプのものに適用することが可能である。この場合、上述の実施形態では、採血管31として、キャップ32を有し、キャップ32がキャップ本体33と被穿孔部34により構成されているものを例に説明したが、キャップ32としても種々のタイプのものに適用することが可能である。例えば、図示は省略するが、キャップ32を、フィルム体とその上部に第1ピアサ6及び第2ピアサ7が貫通するゴム部分(被穿孔部)を有するタイプのものとしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 サンプリング機構
2 自動分析装置
3 複合ピアサ
6 第1ピアサ
7 第2ピアサ
9 通気路
11 開口
31 採血管
32 キャップ
34 被穿孔部
35、35a、35b 血液
36、36a、36b 検体
42 プローブ