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特許7075485車載電池の温度調整方法及び温度調整システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】車載電池の温度調整方法及び温度調整システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20220518BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220518BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20220518BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20220518BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20220518BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20220518BHJP
   H01M 10/663 20140101ALI20220518BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20220518BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20220518BHJP
   F24F 11/46 20180101ALN20220518BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/633
H01M10/651
H01M10/6571
H01M10/663
H01M10/6569
H01M10/6556
F24F11/46
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020518455
(86)(22)【出願日】2018-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 CN2018108732
(87)【国際公開番号】W WO2019062935
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-05-26
(31)【優先権主張番号】201710945051.5
(32)【優先日】2017-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】伍星▲馳▼
(72)【発明者】
【氏名】▲談▼▲際▼▲剛▼
(72)【発明者】
【氏名】王洪▲軍▼
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-048063(JP,A)
【文献】特開2013-025926(JP,A)
【文献】国際公開第2012/105047(WO,A1)
【文献】特開2012-190674(JP,A)
【文献】特開2014-238928(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0158722(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102544618(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103904382(CN,A)
【文献】中国実用新案第205970883(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第101714679(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105789719(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102315668(CN,A)
【文献】国際公開第2007/073452(WO,A1)
【文献】中国特許第101931110(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
H01M 10/42 -10/48
H01M 10/60 -10/667
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
F24F 11/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載電池の温度調整方法であって、
電池を現在温度から目標温度に調整するのに必要なパワーを要求パワーとし、
電池の温度調整を行うときに、電池が実際に得るパワーを実際パワーとし、
電池の温度を検出するステップと、
前記電池の要求パワーを取得するステップと、
前記電池の実際パワーを取得するステップと、
前記要求パワーと前記実際パワーに基づいて、目標時間内に前記電池の温度が目標温度に達するように調整するステップとを含み、
前記調整するステップは、
前記電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに、前記電池を冷却する冷却モードに入るステップと、
前記電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに、前記電池を加熱する加熱モードに入るステップとを含み、
冷却モードにあるときに、前記要求パワーと前記実際パワーに基づいて前記電池の温度を調整する前記ステップは、具体的には、
前記要求パワーが前記実際パワーより大きいか否かを判断するステップと、
前記要求パワーが前記実際パワーより大きければ、前記要求パワーと前記実際パワーとの間のパワー差を取得し、かつ前記パワー差に基づいて前記電池を冷却するコンプレッサーのパワーを向上させるステップと、
前記要求パワーが前記実際パワー以下であれば、前記コンプレッサーのパワーを低下させるか又は前記コンプレッサーのパワーをそのまま保持するステップとを含む、
車載電池の温度調整方法。
【請求項2】
車載電池の温度調整方法であって、
電池を現在温度から目標温度に調整するのに必要なパワーを要求パワーとし、
電池の温度調整を行うときに、電池が実際に得るパワーを実際パワーとし、
電池の温度を検出するステップと、
前記電池の要求パワーを取得するステップと、
前記電池の実際パワーを取得するステップと、
前記要求パワーと前記実際パワーに基づいて、目標時間内に前記電池の温度が目標温度に達するように調整するステップとを含み、
前記調整するステップは、
前記電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに、前記電池を冷却する冷却モードに入るステップと、
前記電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに、前記電池を加熱する加熱モードに入るステップとを含み、
加熱モードにあるときに、前記温度調整の要求パワーと前記温度調整の実際パワーに基づいて前記電池の温度を調整する前記ステップは、具体的には、
前記要求パワーが前記実際パワーより大きいか否かを判断するステップと、
前記要求パワーが前記実際パワーより大きければ、前記要求パワーと前記実際パワーとの間のパワー差を取得し、かつ前記パワー差に基づいて前記電池を加熱するヒーターのパワーを向上させるステップと、
前記要求パワーが前記実際パワー以下であれば、前記ヒーターのパワーをそのまま保持するステップとを含む、
車載電池の温度調整方法。
【請求項3】
電池に温度調整を行う要求パワーを取得する前記ステップは、
前記電池の温度調整時の第1のパラメータを取得し、かつ前記第1のパラメータに基づいて第1の要求パワーを生成するステップと、
前記電池の温度調整時の第2のパラメータを取得し、かつ前記第2のパラメータに基づいて第2の要求パワーを生成するステップと、
前記第1の要求パワーと前記第2の要求パワーに基づいて前記要求パワーを生成するステップとを含み、
前記第1のパラメータは、前記電池の温度調整時の初期温度、目標温度、及び前記初期温度から前記目標温度になるまでの目標時間であり、前記第1のパラメータに基づいて第1の要求パワーを生成する前記ステップは、
前記初期温度と前記目標温度との間の第1の温度差を取得するステップと、
前記第1の温度差と前記目標時間に基づいて前記第1の要求パワーを生成するステップとを含み、
下式に基づいて前記第1の要求パワーを生成し、
ΔT*C*M/t、
ΔTが前記初期温度と前記目標温度との間の第1の温度差であり、tが前記目標時間であり、Cが前記電池の比熱であり、Mが前記電池の質量であり、
前記第2のパラメータは所定の時間内の前記電池の平均電流であり、下式に基づいて前記第2の要求パワーを生成し、
*R、
Iが前記平均電流であり、Rが前記電池の内部抵抗であり、
前記電池を冷却するときは、前記要求パワーは、
ΔT1*C*M/t+I2*R
であり、
前記電池を加熱するときは、前記要求パワーは、
ΔT1*C*M/t-I2*R
である、
請求項1または2に記載の車載電池の温度調整方法。
【請求項4】
前記要求パワーが前記実際パワー以下であれば、水ポンプの回転速度を低下させるか又は前記水ポンプの回転速度をそのまま保持するステップと、
前記要求パワーが前記実際パワーより大きければ、前記水ポンプの回転速度を増加させるステップとをさらに含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の車載電池の温度調整方法。
【請求項5】
前記電池の実際パワーを取得する前記ステップは、具体的には、
前記電池の温度を調整する流路の入口温度と出口温度を取得すると共に、冷却液が前記流路に流入する流速を取得するステップと、
前記入口温度と前記出口温度に基づいて第2の温度差を生成するステップと、
前記第2の温度差と前記流速に基づいて前記実際パワーを生成するステップとを含む、
請求項1又は2に記載の車載電池の温度調整方法。
【請求項6】
前記電池に冷却剤を供給するコンプレッサーは複数あるときに、前記要求パワーと各コンプレッサーの定格冷却パワーに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断するステップと、
冷却モードにあるときに、対応する数量のコンプレッサーを起動させるように制御するステップとをさらに含む、
請求項1又は2に記載の車載電池の温度調整方法。
【請求項7】
前記要求パワーと各コンプレッサーの定格冷却パワーに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断する前記ステップは、具体的には、
前記電池の要求パワーが単一コンプレッサーの定格冷却パワーより大きいか否かを判断するステップと、
前記単一コンプレッサーの定格冷却パワーより大きければ、前記複数のコンプレッサーを同時に起動させるように制御するステップとを含む、
請求項に記載の車載電池の温度調整方法。
【請求項8】
コンプレッサーと、
前記コンプレッサーと接続されたコンデンサと、
前記コンプレッサーと前記コンデンサとの間に接続された電池冷却分岐路と、
前記電池冷却分岐路と接続された電池温度調整モジュールと、
を含む、車載電池の温度調整システムであって、
電池を現在温度から目標温度に調整するのに必要なパワーを要求パワーとし、
電池の温度調整を行うときに、電池が実際に得るパワーを実際パワーとしたとき、
電池温度調整モジュールは、電池の温度を検出し、電池に温度調整を行う要求パワーと実際パワーを取得し、かつ前記要求パワーと前記実際パワーに基づいて目標時間内に前記電池の温度が目標温度に達するように調整し、
前記電池温度調整モジュールは、さらに、前記電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに前記温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、前記電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに前記温度調整システムが加熱モードに入るように制御する、
車載電池の温度調整システム。
【請求項9】
前記電池冷却分岐路は熱変換器を含み、前記熱変換器は前記電池温度調整モジュールと接続される、
請求項に記載の車載電池の温度調整システム。
【請求項10】
前記電池温度調整モジュールは、
前記電池の温度を調整し、前記電池内に設置された流路と、
前記流路と前記熱変換器との間に接続された、水ポンプと、媒体容器と、ヒーターと、コントローラとを含み、前記コントローラは、前記電池に温度調整を行う要求パワーと実際パワーを取得し、かつ前記要求パワーと前記実際パワーに基づいて前記電池の温度を調整する、
請求項に記載の車載電池の温度調整システム。
【請求項11】
前記電池温度調整モジュールは、
前記流路の入口に設置された第1の温度センサと、
前記流路の出口に設置された第2の温度センサと、
流速センサとをさらに含む、
請求項10に記載の車載電池の温度調整システム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記電池の温度調整時に第1のパラメータを取得し、前記第1のパラメータに基づいて第1の要求パワーを生成し、そして、前記電池の温度調整時に第2のパラメータを取得し、前記第2のパラメータに基づいて第2の要求パワーを生成すると共に、前記第1の要求パワーと前記第2の要求パワーに基づいて前記要求パワーを生成する、
前記第1のパラメータは、前記電池の温度調整時の初期温度、目標温度、及び前記初期温度から前記目標温度になるまでの目標時間であり、前記コントローラが、前記第1のパラメータに基づいて第1の要求パワーを生成するには、
前記コントローラは、前記初期温度と前記目標温度との間の第1の温度差を取得し、
前記第1の温度差と前記目標時間に基づいて前記第1の要求パワーを生成し、
前記コントローラは、下式に基づいて前記第1の要求パワーを生成し、
ΔT*C*M/t、
ΔTが前記初期温度と前記目標温度との間の第1の温度差であり、tが前記目標時間であり、Cが前記電池の比熱であり、Mが前記電池の質量であり、
前記第2のパラメータは所定の時間内の前記電池の平均電流であり、前記コントローラは、下式に基づいて前記第2の要求パワーを生成し、
*R、
Iが前記平均電流であり、Rが前記電池の内部抵抗であり、
前記電池を冷却するときは、前記要求パワーは、
ΔT1*C*M/t+I2*R
であり、
前記電池を加熱するときは、前記要求パワーは、
ΔT1*C*M/t-I2*R
である、
請求項10又は11に記載の車載電池の温度調整システム。
【請求項13】
前記コントローラは、前記第1の温度センサによって検出された入口温度、及び第2の温度センサによって検出された出口温度に基づいて第2の温度差を生成し、かつ、前記実際パワーを、前記第2の温度差と、前記流速センサによって検出された流速との積に基づいて生成する、
請求項11に記載の車載電池の温度調整システム。
【請求項14】
前記電池に冷媒を供給するコンプレッサーは複数あり、車内冷却回路と前記電池冷却分岐路はいずれも複数あり、前記電池温度調整モジュールは、さらに、
前記要求パワーと各コンプレッサーの定格冷却パワーに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断し、かつ前記温度調整システムが冷却モードにあるときに、対応する数量のコンプレッサーを起動させるように制御する、
請求項に記載の車載電池の温度調整システム。
【請求項15】
請求項8~14に記載の車載電池の温度調整システムを含む、ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、自動車の技術分野に関し、特に車載電池の温度調整方法及び車載電池の温度調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気自動車の車載電池の性能は気候環境から大きな影響を受け、環境温度が高過ぎるか又は低過ぎると、いずれも車載電池の性能に影響を及ぼすため、車載電池の温度を調整してその温度を所定の範囲に維持する必要がある。
【0003】
関連技術において、気候が暑い地域には、電気自動車に電池冷却システムを追加して、車載電池の温度が高過ぎるときにその温度を下げる必要があり、気候が寒い地域には、電気自動車に電池加熱システムを追加して、車載電池の温度が低過ぎるときにその温度を上げる必要がある。
【0004】
しかしながら、夏が暑く、冬が寒い地域には、上記方法は車載電池の温度が高過ぎるという問題や低過ぎるという問題を同時に解決することができず、かつ車載電池の温度調整方法は粗雑であり、車載電池の実際の状況に応じてその加熱パワーと冷却パワーを精確に制御できないため、車載電池の温度を所定の範囲に維持することを保証することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、関連技術における技術的課題の1つを少なくともある程度解決しようとする。
【0006】
このため、本願は、車載電池に温度調整を行う要求パワーと実際パワーに基づいて電池の温度調整の時間を精確に制御でき、かつ電池に温度調整を行う実際パワーがリアルタイムに調整可能であり、目標時間内に電池の実際の状態に応じて車載電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御することを確保できるため、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、車載電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避する車載電池の温度調整方法を提供することを目的とする。
【0007】
本願は、車載電池の温度調整システムを提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願の一態様において、実施形態は、電池に温度調整を行う要求パワーを取得するステップと、上記電池に温度調整を行う実際パワーを取得し、上記要求パワーと上記実際パワーに基づいて上記電池の温度を調整するステップとを含む車載電池の温度調整方法を提供する。
【0009】
本願の実施形態の車載電池の温度調整方法によれば、まず、電池に温度調整を行う要求パワーを取得し、次に電池に温度調整を行う実際パワーを取得し、最後に要求パワーと実際パワーに基づいて電池の温度を調整する。これにより、該方法は、電池の温度調整の時間を精確に制御でき、かつ電池の実際パワーがリアルタイムに調整可能であり、車載電池の実際の状態に応じて車載電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御でき、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、車載電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避する。
【0010】
また、本願の上記実施形態が提供する車載電池の温度調整方法は、以下の付加的な技術的特徴をさらに有してよい。
【0011】
本願の一実施形態によれば、上記要求パワーと上記実際パワーに基づいて上記電池の温度を調整する上記ステップは、上記要求パワーと上記実際パワーに基づいて、目標時間内に上記電池の温度が目標温度に達するように調整することを含む。
【0012】
本願の一実施形態によれば、電池の要求パワーを取得する上記ステップは、具体的には、上記電池の温度調整開始時の第1のパラメータを取得し、かつ上記第1のパラメータに基づいて第1の要求パワーを生成するステップと、上記電池の温度調整中の第2のパラメータを取得し、かつ上記第2のパラメータに基づいて第2の要求パワーを生成するステップと、上記第1の要求パワーと上記第2の要求パワーに基づいて上記温度調整の要求パワーを生成するステップとを含む。
【0013】
本願の一実施形態によれば、上記第1のパラメータは、上記電池の温度調整開始時の初期温度、目標温度、及び上記初期温度から上記目標温度になるまでの目標時間であり、上記第1のパラメータに基づいて第1の要求パワーを生成する上記ステップは、具体的には、上記初期温度と上記目標温度との間の第1の温度差を取得するステップと、上記第1の温度差と上記目標時間に基づいて第1の要求パワーを生成するステップとを含む。
【0014】
本願の一実施形態によれば、式ΔT*C*M/tに基づいて上記第1の要求パワーを生成し、ΔTが上記初期温度と上記目標温度との間の第1の温度差であり、tが上記目標時間であり、Cが上記電池の比熱であり、Mが上記電池の質量であり、上記第2のパラメータは所定の時間内の上記電池の平均電流であり、式I*Rに基づいて上記第2の要求パワーを生成し、Iが上記平均電流であり、Rが上記電池の内部抵抗である。
【0015】
本願の一実施形態によれば、上記車載電池の温度調整方法は、上記電池の温度を検出するステップと、上記電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに、冷却モードに入るステップと、上記電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに、加熱モードに入るステップとをさらに含む。
【0016】
本願の一実施形態によれば、冷却モードにあるときに、上記要求パワーと上記実際パワーに基づいて上記電池の温度を調整する上記ステップは、具体的には、上記要求パワーが上記実際パワーより大きいか否かを判断するステップと、上記要求パワーが上記実際パワーより大きければ、上記要求パワーと上記実際パワーとの間のパワー差を取得し、かつ上記パワー差に基づいて上記電池を冷却するコンプレッサーのパワーを向上させるステップと、上記要求パワーが上記実際パワー以下であれば、上記コンプレッサーのパワーを低下させるか又は上記コンプレッサーのパワーをそのまま保持するステップとを含む。
【0017】
本願の一実施形態によれば、加熱モードにあるときに、上記要求パワーと上記実際パワーに基づいて上記電池の温度を調整するステップは、具体的には、上記要求パワーが上記実際パワーより大きいか否かを判断するステップと、上記要求パワーが上記実際パワーより大きければ、上記要求パワーと上記実際パワーとの間のパワー差を取得し、かつ上記パワー差に基づいて上記電池を加熱するヒーターのパワーを向上させるステップと、上記要求パワーが上記実際パワー以下であれば、上記ヒーターのパワーをそのまま保持するステップとを含む。
【0018】
本願の一実施形態によれば、上記車載電池の温度調整方法は、上記要求パワーが上記実際パワーより小さければ、ポンプの回転速度を低下させるステップと、上記要求パワーが上記実際パワーより大きければ、上記ポンプの回転速度を向上させるステップとをさらに含む。
【0019】
本願の一実施形態によれば、上記電池の実際パワーを取得する上記ステップは、具体的には、上記電池の温度を調整する流路の入口温度と出口温度を取得すると共に、冷却液が上記流路に流入する流速を取得するステップと、上記入口温度と出口温度に基づいて第2の温度差を生成するステップと、上記第2の温度差と上記流速に基づいて上記実際パワーを生成するステップとを含む。
【0020】
本願の一実施形態によれば、上記電池に冷却剤を供給するコンプレッサーは複数あり、上記方法は、上記要求パワーと各コンプレッサーの定格冷却パワーに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断するステップと、冷却モードにあるときに、対応する数量のコンプレッサーを起動させるように制御するステップとをさらに含む。
【0021】
本願の一実施形態によれば、上記要求パワーと各コンプレッサーの定格冷却パワーに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断する上記ステップは、具体的には、上記電池の要求パワーが単一コンプレッサーの定格冷却パワーより大きいか否かを判断するステップと、上記単一コンプレッサーの定格冷却パワーより大きければ、上記複数のコンプレッサーを同時に起動させるように制御するステップとを含む。
【0022】
上記目的を達成するために、本願の別の態様において、実施形態は、コンプレッサーと、上記コンプレッサーと接続されたコンデンサと、上記コンプレッサーと上記コンデンサとの間に接続された電池冷却分岐路と、上記電池冷却分岐路と接続され、電池に温度調整を行う要求パワーと実際パワーを取得し、かつ上記要求パワーと上記実際パワーに基づいて上記電池の温度を調整する電池温度調整モジュールとを含む車載電池の温度調整システムを提供する。
【0023】
本願の実施形態の車載電池の温度調整システムによれば、電池温度調整モジュールにより電池に温度調整を行う要求パワーと実際パワーを取得し、かつ要求パワーと実際パワーに基づいて電池の温度を調整する。これにより、該システムは、電池の温度調整の時間を精確に制御でき、かつ電池の実際パワーがリアルタイムに調整可能であり、車載電池の実際の状態に応じて車載電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御でき、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、車載電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避する。
【0024】
また、本願の上記実施形態が提供する車載電池の温度調整システムは、以下の付加的な技術的特徴をさらに有してよい。
【0025】
本願の一実施形態によれば、上記電池温度調整モジュールは、具体的には、上記要求パワーと上記実際パワーに基づいて、目標時間内に上記電池の温度が目標温度に達するように調整する。
【0026】
本願の一実施形態によれば、上記電池冷却分岐路は熱変換器を含み、上記熱変換器は上記電池温度調整モジュールと接続される。
【0027】
本願の一実施形態によれば、上記電池温度調整モジュールは、上記電池の温度を調整し、上記電池内に設置された流路と、上記流路と上記熱変換器との間に接続されたポンプと、媒体容器と、ヒーターと、コントローラとを含み、上記コントローラは、電池に温度調整を行う要求パワーと上記電池の実際パワーを取得し、かつ上記要求パワーと上記実際パワーに基づいて上記電池の温度を調整する。
【0028】
本願の一実施形態によれば、上記電池温度調整モジュールは、上記流路の入口に設置された第1の温度センサと、上記流路の出口に設置された第2の温度センサと、流速センサとをさらに含む。
【0029】
本願の一実施形態によれば、上記コントローラは、上記電池の温度調整開始時の第1のパラメータを取得し、上記第1のパラメータに基づいて第1の要求パワーを生成し、そして、上記電池の温度調整中の第2のパラメータを取得し、上記第2のパラメータに基づいて第2の要求パワーを生成すると共に、上記第1の要求パワーと上記第2の要求パワーに基づいて上記温度調整の要求パワーを生成する。
【0030】
本願の一実施形態によれば、上記コントローラは、さらに、上記電池の温度を検出し、かつ上記電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに上記温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、上記電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに上記温度調整システムが加熱モードに入るように制御する。
【0031】
本願の一実施形態によれば、上記コントローラは、上記第1の温度センサによって検出された入口温度、及び第2の温度センサによって検出された出口温度に基づいて第2の温度差を生成し、かつ上記第2の温度差、及び上記流速センサによって検出された流速に基づいて上記実際パワーを生成する。
【0032】
本願の一実施形態によれば、上記電池に冷却剤を供給するコンプレッサーは複数あり、上記車内冷却回路と上記電池冷却分岐路はいずれも複数あり、上記コントローラは、さらに、上記要求パワーと各コンプレッサーの定格冷却パワーに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断し、かつ上記温度調整システムが冷却モードにあるときに、対応する数量のコンプレッサーを起動させるように制御する。
【0033】
上記目的を達成するために、本願の更なる態様において、実施形態は、上記実施形態の車載電池の温度調整システムを含む車両を提供する。
【発明の効果】
【0034】
本願の実施形態の車両によれば、電池の温度調整の時間を精確に制御でき、かつ電池の実際パワーがリアルタイムに調整可能であり、車載電池の実際の状態に応じて車載電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御でき、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、車載電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
以下、本願の上記及び/又は追加の様態及び利点は、図面を参照して実施形態を説明することにより明らかになって理解されやすくなり、
図1】本願の実施形態1に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図1である。
図2】本願の実施形態1に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図2である。
図3】本願の実施形態2に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図である。
図4】本願の実施形態3に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図である。
図5】本願の実施形態に係るコントローラの動作原理概略図である。
図6】本願の実施形態1に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。
図7】本願の実施形態2に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。
図8】本願の実施形態3に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。
図9】本願の実施形態4に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。
図10】本願の実施形態5に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。
図11】本願の実施形態4に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図である。
図12】本願の実施形態6に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。
図13】本願の実施形態7に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図1である。
図14】本願の実施形態7に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図2である。
図15】本願の実施形態7に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図3である。
図16】本願の実施形態7に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。
図17】本願の実施形態8に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。
図18】本願の実施形態9に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。
図19】本願の実施形態10に係る車両の温度調整方法のフローチャートである。
図20】本願の実施形態11に係る車両の温度調整方法のフローチャートである。
図21】本願の実施形態12に係る車両の温度調整方法のフローチャートである。
図22】本願の実施形態13に係る車両の温度調整方法のフローチャートである。
図23】本願の実施形態14に係る車両の温度調整方法のフローチャートである。
図24】本願の実施形態15に係る車両の温度調整方法のフローチャートである。
図25】本願の実施形態8に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図1である。
図26】本願の実施形態8に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図2である。
図27】本願の実施形態9に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図である。
図28】本願の実施形態に係る吹き出し口の分布位置の概略図である。
図29】本願の実施形態16に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。
図30】本願の実施形態17に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。
図31】本願の実施形態10に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図である。
図32】本願の実施形態18に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。
図33】本願の実施形態11に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図1である。
図34】本願の実施形態11に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図2である。
図35】本願の実施形態11に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図3である。
図36】本願の実施形態19に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。
図37】本願の実施形態12に係る車載電池の温度調整システムの流路構造の概略図である。
図38】本願の実施形態に係る車両のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本願の実施形態を詳細に説明し、上記実施形態の例は図面に示され、全体を通して同一又は類似する符号は、同一又は類似する部品、若しくは同一又は類似する機能を有する部品を示す。以下、図面を参照しながら説明される実施形態は例示的なものに過ぎず、本願を解釈するものであり、本願を限定するものであると理解すべきではない。
【0037】
図1及び2に示すように、車両電池の数量が1であるときに、車載電池の温度調整システムは、コンプレッサー1、コンデンサ2、電池冷却分岐路4及び電池温度調整モジュール5を含む。
【0038】
コンデンサ2はコンプレッサー1と接続され、電池冷却分岐路4はコンプレッサー1とコンデンサ2との間に接続される。電池温度調整モジュール5は電池冷却分岐路4と接続され、電池6に温度調整を行う要求パワーP1と実際パワーP2を取得し、かつ要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池6の温度を調整する。コンプレッサー1とコンデンサ2は冷却分岐路を構成する。
【0039】
具体的には、要求パワーP1は、電池の温度を目標温度に調整すると、電池に必要な温度調整パワーである。実際パワーP2は、現在、電池に温度調整を行うときに、電池が実際に得る温度調整パワーである。目標温度は設定値であり、車載電池の実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、冬の場合に、室外の環境温度が低く、電池を加熱する必要があるため、目標温度を約10℃に設定してよく、夏の場合に、電池を冷却する必要があるため、目標温度を約35℃に設定してよい。電池温度調整モジュール5は、電池6の要求パワーP1と電池6の実際パワーP2を取得し、かつ要求パワーP1と実際パワーP2に基づいてコンプレッサー1とヒーターのパワーを調整して電池6の温度を調整する。図1に示すように、エアコンの冷却液が電池温度調整モジュール5と連通しないときに、電池冷却分岐路4は2つの配管を有し、第1の配管はコンプレッサー1と連通し、第2の配管は電池温度調整モジュール5と連通し、第1の配管と第2の配管を相互に独立し隣接して設置することにより、媒体(冷媒、水、油、空気などの流動媒体又は相変化材料などの媒体又は他の化学製品)は相互に独立する。電池6の温度が高過ぎるときに、車載エアコンの冷却機能はオンにされ、電池冷却機能はオンにされ、第1の配管と第2の配管内の冷却液(例えば、冷媒)の流れ方向は、それぞれ、コンプレッサー1-コンデンサ2-電池冷却分岐路4-コンプレッサー1であり、電池冷却分岐路4-電池温度調整モジュール5-電池6-電池温度調整モジュール5-電池冷却分岐路4である。
【0040】
図2に示すように、エアコンの冷却液が電池温度調整モジュール5と連通するときに、冷却液の流れ方向は、コンプレッサー1-コンデンサ2-電池冷却分岐路4-電池温度調整モジュール5-電池6-電池温度調整モジュール5-コンプレッサー1である。
【0041】
上記2つの実施形態では、車載エアコンは、電池6の冷却と加熱のみに用いられ、温度調整システムは車載エアコンにより車室と電池6の両方を冷却してよい。該システムが車載エアコンにより車室と電池6の両方を冷却するときに、図3に示すように、温度調整システムは、車内冷却分岐路3をさらに含んでよく、車内冷却分岐路3はコンプレッサー1とコンデンサ2との間に接続される。
【0042】
車内の温度が高過ぎるときに、車内冷却機能がオンにされ、冷却液の流れ方向は、コンプレッサー1-コンデンサ2-車内冷却分岐路3-コンプレッサー1である。電池6の温度が高過ぎるときに、電池冷却機能がオンにされ、第1の配管と第2の配管内の冷却液の流れ方向は、コンプレッサー1-コンデンサ2-電池冷却分岐路4-コンプレッサー1であり、電池冷却分岐路4-電池温度調整モジュール5-電池6-電池温度調整モジュール5-電池冷却分岐路4である。これにより、車載電池の実際の状態に応じて車載電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御できるため、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、車載電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避し、そして、電池の温度が要求を満たす場合に、車内温度が要求を満たすようにすることもできる。
【0043】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、図4に示すように、電池冷却分岐路4は熱変換器41を含んでよく、熱変換器41は第1の配管と第2の配管を含み、第2の配管は電池温度調整モジュール5と接続され、第1の配管はコンプレッサー1と連通し、第1の配管と第2の配管が相互に独立し隣接して設置される。本願の実施形態では、熱変換器41の物理的位置は車載エアコンのコンプレッサー1の所在する回路にあってよく、車載エアコンの出荷デバッグに役立ち、かつ車載エアコンを個別に供給し組み立てることができ、同時に取付過程において車載エアコンに媒体を1回追加すればよい。熱変換器41の物理的位置は、電池6の所在する回路にあってよく、熱変換器41の物理的位置は車載エアコンとコンプレッサー1の所在する回路と電池6の所在する回路から独立するように設置されてもよい。
【0044】
図4に示すように、電池温度調整モジュール5は、電池の温度を調整し、電池6内に設置された流路(具体的に図示せず)と、流路と熱変換器41との間に接続されたポンプ51と、媒体容器52と、ヒーター53と、コントローラ(具体的に図示せず)とを含んでよい。コントローラは、電池6に温度調整を行う要求パワーP1と実際パワーP2を取得し、かつ要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池6の温度を調整する。車内冷却分岐路3は、エバポレーター31、第1の膨張弁32及び第1の電子弁33を含んでよい。電池冷却分岐路4は、第2の膨張弁42及び第2の電子弁43をさらに含んでよい。
【0045】
電池冷却分岐路4において熱変換器41が設置されなくてよく、熱変換器41がないときに、電池冷却分岐路4を流れるのは冷媒であると理解すべきである。熱変換器41が設置されていれば、電池冷却分岐路4の第1の配管を流れるのは冷媒であり、第2の配管を流れるのは冷却液であり、車内冷却分岐路3を流れるのは冷媒である。
【0046】
本願の一実施形態によれば、図4に示すように、電池温度調整モジュール5は、流路の入口に設置された第1の温度センサ55、流路の出口に設置された第2の温度センサ56、及び流速センサ57をさらに含む。流路の入口と出口の位置は絶対的ではなく、ポンプ51の回転方向に応じて確定される。
【0047】
具体的には、図5に示すように、コントローラは、電池管理コントローラ、電池熱管理コントローラ及び車載エアコンコントローラを含んでよい。電池熱管理コントローラは、第1の温度センサ51、第2の温度センサ52及び流速センサ57と電気的に接続され、ポンプ51及びヒーター53とCAN通信を行い、かつ媒体の比熱、媒体の密度、流路の断面積に基づいて、実際パワーP2を取得し、ポンプ51の回転速度とヒーター53のパワーを制御することができる。電池管理コントローラは、電池を流れる電流、電池自体の温度を取得し、かつ電池の目標温度、目標時間t、電池の比熱C、電池の質量M、及び電池の内部抵抗Rに基づいて、要求パワーP1を取得し、かつ車載エアコンコントローラを起動させるか又は動作を停止させるように制御する。車載エアコンコントローラは、膨張弁及び電子弁と電気的に接続され、かつ車載エアコンコントローラは、電池管理コントローラ、電池熱管理コントローラ及びコンプレッサー1とCAN通信を行って、電池管理コントローラによって取得された要求パワーP1と電池熱管理コントローラによって取得された実際パワーP2に基づいて、コンプレッサーのパワーP、膨張弁及び電子弁の開閉を制御することにより、熱変換を制御するという目的を達成する。
【0048】
なお、電池管理コントローラは、例えば電池管理機能を持つDSPチップを含んでよい。電池熱管理コントローラは、例えば電池熱管理機能を持つDSPチップを含んでよい。車載エアコンコントローラは、例えば車載エアコンDSPチップを含んでよい。
【0049】
熱変換器41はプレート式熱交換器であってよく、プレート式熱交換器が車載エアコンの内部に取り付けられてよく、冷却剤回路全体を車載エアコンの内部にして、車載エアコンの出荷デバッグに役立ち、車載エアコンを個別に供給し組み立てることができ、同時に取付過程において車載エアコンに冷却剤を1回追加すればよい。
【0050】
冷却液は流路の入口から電池6の内部に流入し、流路の出口から流出することにより、電池6と冷却液との間の熱変換を実現する。
【0051】
ポンプ51は主に動力を供給し、媒体容器52は主に冷却液を貯蔵し、かつ温度調整システムに添加される冷却液を収容し、温度調整システムにおける冷却液が減少するときに、媒体容器52中の冷却液から自動的に補充することができる。ヒーター53は、PTC(Positive Temperature Coefficient、正温度係数、一般的に正温度係数が大きい半導体材料又は部品を指す)ヒーターであってよく、コントローラとCAN(Controller Area Network、コントローラエリアネットワーク)通信を行うことができ、車載電池の温度調整システムに加熱パワーを供給し、コントローラによって制御され、ヒーター53は媒体容器52と第1の温度センサ55との間の任意の位置に設置されてよい。つまり、ヒーター53は電池6と直接接触せず、高い安全性、信頼性及び実用性を持つ。
【0052】
第1の温度センサ55は流路入口における冷却液の温度を検出し、第2の温度センサ56は流路出口における冷却液の温度を検出する。流速センサ57は温度調整システムにおける配管内の冷却液の流速情報を検出する。第1の電子弁33は車内冷却分岐路3の開閉を制御し、第1の膨張弁32は車内冷却分岐路3中の冷却液の流量を制御することができる。第2の電子弁43は電池冷却分岐路4の開閉を制御し、第2の膨張弁42は電池冷却分岐路4中の冷却液の流量を制御することができる。
【0053】
図2に示すように、エアコンの冷却液が電池温度調整モジュール5と連通するときに、熱変換器41、ポンプ51及び媒体容器52を設置する必要がないと理解すべきである。このような、車載エアコン回路が電池冷却分岐路4と連通する方式は、冷却効率を向上させることができ、熱変換器41における熱変換が不完全であるという問題を回避し、つまり、熱変換器の熱変換効率による熱変換損失を絶つ。車載エアコン回路と電池冷却分岐路の冷却液が相互に独立する方式では、車載エアコン回路中のコンプレッサーのパワーは、熱変換器41等の熱変換効率を考慮した、電池を冷却するコンプレッサーの実際パワーであり、かつ後述するコンプレッサーのパワーPは、ここでの電池を冷却する上記コンプレッサーのパワーである(後述するコンプレッサーの最大(又は定格)冷却パワーはコンプレッサーの最大(又は定格)パワーに熱変換効率を掛けて得るものであると理解すべきである)。該熱変換効率は設定された定値であり、システム全体の構築後に測定されたものであってもよく、また、リアルタイムに取得されたものであってもよく、熱変換器の前後に温度センサを追加すると共に、熱変換器の所在する回路に流速センサを追加することにより、実際の熱変換パワーを得ることができ、電池の実際パワーP2と実際の熱変換パワーの比は、即ち熱変換効率である。
【0054】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて電池温度調整モジュール5が電池6の要求パワーP1と実際パワーP2をどのように取得するかを説明する。
【0055】
本願の一実施形態によれば、コントローラは電池の温度調整開始時の第1のパラメータを取得し、かつ第1のパラメータに基づいて電池の第1の要求パワーを生成し、そして、電池の温度調整中の第2のパラメータを取得し、かつ第2のパラメータに基づいて電池の第2の要求パワーを生成すると共に、電池の第1の要求パワーと電池の第2の要求パワーに基づいて電池の要求パワーP1を生成する。
【0056】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、第1のパラメータは電池6の温度調整開始時の初期温度、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tであり、コントローラは、初期温度と目標温度との間の第1の温度差ΔTを取得し、かつ第1の温度差ΔTと目標時間tに基づいて第1の要求パワーを生成する。
【0057】
好ましくは、コントローラは下式(1)に基づいて第1の要求パワーを生成し、
ΔT*C*M/t (1)
ΔTが初期温度と目標温度との間の第1の温度差であり、tが目標時間であり、Cが電池6の比熱であり、Mが電池6の質量である。
【0058】
第2のパラメータは所定の時間内の電池6の平均電流Iであり、コントローラは下式(2)に基づいて第2の要求パワーを生成し、
*R (2)
Iが平均電流であり、Rが電池6の内部抵抗である。
【0059】
電池6を冷却するときに、P1=ΔT*C*M/t+I*R、電池6を加熱するときに、P1=ΔT*C*M/t-I*R。
【0060】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、それぞれ第1の温度センサ55によって検出された入口温度と第2の温度センサ56によって検出された出口温度に基づいて第2の温度差ΔTを生成し、かつ各電池の第2の温度差ΔT、及び流速センサ57によって検出された流速vに基づいて電池の実際パワーP2を生成する。
【0061】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(3)に基づいて実際パワーP2を生成し、
ΔT*c*m (3)
ΔTが第2の温度差であり、cが流路中の冷却液の比熱であり、mが単位時間当たりに流路の断面積を流れる冷却液の質量であり、m=v*s*ρであり、sが流路の断面積であり、vが冷却液の流速であり、ρが冷却液の密度である。
【0062】
また、流速センサは、流量センサによって替わられてもよく、m=Q*ρ、Qが流量センサによって測定された単位時間当たりに流路の断面積を流れる冷却液の流量である。
【0063】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池管理コントローラは車両に温度調整を行う必要があるか否かを判断し、車両に温度調整を行う必要があり、例えば、電池6の温度が高過ぎると判断すれば、CAN通信により、温度調整機能をオンにするという情報を車載エアコンコントローラに送信し、車載エアコンコントローラは温度調整機能をオンにした後に熱変換情報を電池熱管理コントローラに送信し、同時に車載コントローラは第2の電子弁を開弁するように制御し、電池熱管理コントローラはポンプ51が初期設定回転速度(例えば、低い回転速度)で動作を開始させるように制御する。
【0064】
同時に、電池管理コントローラは電池6の初期温度(即ち、現在の温度)、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tを取得し、目標温度と目標時間tが実際の状況に応じて予め設定されてよく、そして式(1)に基づいて電池の第1の要求パワーを計算する。電池管理コントローラは、さらに所定の時間内の電池6の平均電流Iを取得し、式(2)に基づいて電池の第2の要求パワーを計算する。次に、電池管理コントローラは、電池6の第1の要求パワーと第2の要求パワーに基づいて要求パワーP1(即ち、目標時間内に電池6の温度を目標温度に調整する要求パワー)を計算し、電池6を冷却するときに、P1=ΔT*C*M/t+I*R、電池6を加熱するときに、P1=ΔT*C*M/t-I*R。
【0065】
そして、電池熱管理コントローラは、第1の温度センサ55と第2の温度センサ56の検出温度情報を取得すると共に、流速センサ57によって検出された流速情報を取得し、式(3)に基づいて電池6の実際パワーP2を計算する。
【0066】
最後に、車載エアコンコントローラは、電池6の要求パワーP1、実際パワーP2に基づいてコンプレッサーの出力パワーと第2の膨張弁42の開度を制御し、好ましくは、電池熱管理コントローラはポンプ51の回転速度を調整する。例えば、要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、要求パワーP1と実際パワーP2の差に基づいて、コンプレッサーのパワーを向上させ、かつ第2の膨張弁42の開度を大きくし、好ましくは、ポンプ51の回転速度を向上させ、要求パワーP1が実際パワーP2より小さければ、要求パワーP1と実際パワーP2の差に基づいて、コンプレッサーのパワーを低下させ、かつ第2の膨張弁42の開度を小さくし、好ましくは、ポンプ51の回転速度を低下させる。
【0067】
例を挙げて説明すると、上記実施形態から分かるように、異なる場合に、異なる方法で計算して要求パワーP1を取得することができ、電池6を冷却する必要があるときに、電池6の初期温度が45℃で、目標温度が35℃であれば、電池が45℃から35℃に低下するために放出する熱は一定であり、式(1)、即ちΔT*C*M/tに基づいて直接計算して取得することができ、それが即ち第1の要求パワーである。同時に、電池6の冷却過程に放電と充電プロセスが存在し、この過程において熱が発生し、電池6の放電又は充電電流が変化しているため、この部分の熱は電池の平均電流Iを検出して直接取得されてよく、式(3)、即ちI*Rに基づいて現在の電池6の発熱パワー、即ち第2の要求パワーを直接計算する。本願の冷却完了時間は、目標時間tに基づいて設定される(tがユーザ要求又は車両の実際の設計状況に応じて変更できる)。冷却完了に必要な目標時間tを決定すると、現在の電池6の冷却に必要な要求パワーP1を予測することができ、P1=ΔT*C*M/t+I*R。加熱機能がオンにされば、要求パワーP1=ΔT*C*M/t-I*R、つまり、電池6の加熱過程において、電池6の放電又は充電電流が大きければ大きほど、必要な加熱パワー、即ち要求P1が小さい。
【0068】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて、どのように各電池6の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池6の温度を調整するかを説明する。
【0069】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに、電池の温度を検出し、かつ電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに温度調整システムが加熱モードに入るように制御する。第1の温度閾値と第2の温度閾値は実際の状況に応じて予め設定されてよく、一般に、第1の温度閾値は第2の温度閾値より大きく、例えば、第1の温度閾値が40℃であってよく、第2の温度閾値が0℃であってよい。
【0070】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池管理コントローラは電池6の温度をリアルタムに検出し、かつ判断する。電池6の温度が40℃より高ければ、このときに電池6の温度が高過ぎることを示し、高温が該電池6の性能に影響を及ぼすことを回避するために、電池6に降温処理を行う必要があり、温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、かつ電池冷却機能をオンにするという情報を車載エアコンコントローラに送信する。車載エアコンコントローラは、電池冷却機能をオンにするという情報を受信した後に、第2の電子弁43を開弁するように制御することにより、冷却液と電池6が熱変換を行って電池6の温度を下げる。図4に示すように、温度調整システムが冷却モードで動作するときに、電池6の所在する回路の対応する第1の配管と第2の配管内の冷却液の流れ方向は、それぞれ、コンプレッサー1-コンデンサ2-第2の電子弁43-第2の膨張弁42-熱変換器41-コンプレッサー1であり、媒体容器52-熱変換器41-ヒーター53(動作停止)-ポンプ51-第1の温度センサ55-電池6-第2の温度センサ56-流速センサ57-媒体容器52であり、このように循環し、熱変換器41で熱変換を行って、電池6の降温を実現する。
【0071】
電池6の温度が0℃より低ければ、このときに電池6の温度が低過ぎることを示し、低温が電池6の性能に影響を及ぼすことを回避するために、電池6に昇温処理を行う必要があり、電池管理コントローラは温度調整システムが加熱モードに入るように制御し、かつ電池加熱機能をオンにするという情報を車載エアコンコントローラに送信する。車載エアコンコントローラは、電池加熱機能をオンにするという情報を受信した後に、第2の電子弁43を閉弁するように制御し、同時に電池熱管理コントローラはヒーター53を起動させるように制御して、温度調整システムに加熱パワーを供給する。温度調整システムが加熱モードで動作するときに、冷却液の流れ方向は、媒体容器52-熱変換器41-ヒーター53(起動)-ポンプ51-第1の温度センサ55-電池6-第2の温度センサ56-流速センサ57-媒体容器52であり、このように循環して、電池6の昇温を実現する。
【0072】
本願の一実施形態によれば、温度調整システムが冷却モードで動作し、かつ電池6の要求パワーP1が電池の対応する実際パワーP2より大きいときに、コントローラは、電池に温度調整を行う要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池6を冷却するコンプレッサーのパワーを向上させたり、電池6の冷却液の流量を増加させたりすることにより、電池6の冷却パワーを向上させ、そして、電池6の要求パワーP1が実際パワーP2以下であるときに、コンプレッサーのパワーを低下させるか又はコンプレッサーのパワーをそのまま保持したり、電池の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池6の冷却パワーを低下させる。
【0073】
具体的には、温度調整システムが冷却モードで動作するときに、電池管理コントローラは電池の要求パワーP1を取得し、電池熱管理コントローラは電池の実際パワーP2を取得し、車載エアコンコントローラは要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて判断する。電池6の要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、現在の冷却パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池6の降温を完了できないことを示すため、車載エアコンコントローラは電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいてコンプレッサー1のパワーを向上させたり、電池の冷却液の流量を増加させ、つまり、第2の膨張弁42の開度を大きくしたりすることにより、該電池の冷却パワーを向上させ、温度調整の要求パワーP1と実際パワーP2のパワー差が大きければ大きいほど、コンプレッサー1のパワーを多く向上させ該電池の冷却液の流量を多く増加させることにより、所定の時間t内に該電池の温度を目標温度に下げる。その一方、電池6の温度調整の要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、車載エアコンコントローラは、コンプレッサー1のパワーをそのまま保持するか又はコンプレッサー1のパワーを適切に低下させたり、該電池の冷却液の流量を減少させ、つまり、第2の膨張弁42の開度を小さくしたりすることにより、電池の冷却パワーを低下させることができる。電池6の温度が35℃より低いときに、電池6の冷却は完了し、電池管理コントローラはCAN通信により車載エアコンコントローラに温度調整機能をオフにするという情報を送信し、車載エアコンコントローラは第2の電子弁43を閉弁するように制御する。温度調整システムが冷却モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、電池6の温度が依然として35℃より高ければ、車載エアコンコントローラはコンプレッサー1のパワーを適切に向上させて、該電池が降温をできるだけ速く完了する。
【0074】
本願の一実施形態によれば、温度調整システムが加熱モードで動作し、かつ電池の要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、コントローラは該電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を加熱するヒーター53のパワーを向上させたり、電池の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の加熱パワーを向上させ、そして、電池の要求パワーP1が実際パワーP2以下であるときに、ヒーター53のパワーを低下させたり、ヒーター53のパワーをそのまま保持したり、電池の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の加熱パワーを低下させる。
【0075】
具体的には、温度調整システムが加熱モードで動作するときに、電池管理コントローラは電池のP1を取得し、電池熱管理コントローラは電池の実際パワーP2を取得する。電池6の要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、現在の加熱パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池6の昇温を完了できないことを示すため、電池熱管理コントローラは該電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池6を加熱するヒーター53のパワーを向上させたり、電池の冷却液の流量を調整して増加させ、例えば、ポンプ51の回転速度を向上させたりすることにより、該電池が目標時間内に温度調整を完了する。要求パワーP1と実際パワーP2の差が大きければ大きいほど、ヒーター53のパワーの向上と該電池回路の冷却液の流量の増加が多い。電池の要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、電池熱管理コントローラはヒーター53のパワーを適切に低下させたり、ヒーター53のパワーをそのまま保持したり、該電池回路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の加熱パワーを低下させることができる。電池6の温度が所定温度、例えば10℃より高いときに、電池6の加熱は完了し、電池管理コントローラはCAN通信により電池熱管理コントローラに温度調整機能をオフにするという情報を送信して、電池熱管理コントローラはヒーター53が動作を停止させるように制御する。温度調整システムが加熱モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、電池6の温度が依然として10℃より低ければ、電池熱管理コントローラはヒーター53のパワーを適切に向上させて、電池6が昇温をできるだけ速く完了する。
【0076】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2以下であるときに、ポンプ51の回転速度を低下させるか又はポンプ51の回転速度をそのまま保持し、そして、電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より大きいときに、ポンプ51の回転速度を向上させる。
【0077】
具体的には、温度調整システムが加熱モード又は冷却モードに入るときに、電池6の要求パワーP1が実際パワーP2より小さければ、コントローラはポンプ51の回転速度を低下させるように制御して、電気エネルギーを節約したり、ポンプ51の回転速度をそのまま保持したりする。電池6の要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、コントローラはヒーター53、コンプレッサー1のパワーを向上させるか又は該電池の所在する回路の冷却液の流量を増加させるように制御することに加え、また、ポンプ51の回転速度を向上させるように制御して、単位時間当たりに冷却流路の断面積を流れる冷却液の質量を増加させることにより、電池の実際パワーP2を向上させて、目標時間t内に温度調整を実現することができる。電池6の要求パワーP1が実際パワーP2に等しければ、ポンプ51の回転速度を現在の回転速度にそのまま保持するように制御すればよい。
【0078】
要するに、温度調整システムが冷却モードで動作するときに、電池6の要求パワーP1と車内冷却の要求パワーP4の和がコンプレッサーの最大冷却パワーPより小さく、つまり、P1+P4≦Pであれば、車載エアコンコントローラはコンプレッサー1がP1+P4の冷却パワーで運転するように制御する。P1+P4>Pであれば、電池管理コントローラは電池6の温度が設定温度(例えば、45℃)より大きいか否かを判断し、45℃より大きければ、電池6に冷却パワーを優先的に供給し、車載エアコンコントローラはコンプレッサー1が最大冷却パワーで運転するように制御し、車載エアコンコントローラは第1の膨張弁32と第2の膨張弁42の開度を制御することにより、電池冷却分岐路4の冷却パワーが電池の要求パワーP1に等しく、車内冷却分岐路のパワーP4がPからP1を差し引いた値である。その一方、電池の温度が45℃以下であると判断し、かつ車内温度が設定温度に達しなければ、車内に冷却パワーを優先的に供給し、コンプレッサー1が最大冷却パワーで運転するように制御し、車内冷却分岐路3の冷却パワーがP4であり、電池冷却分岐路4の冷却パワーがP-P4である。車内温度が設定温度に達すれば、電池6の冷却を優先的に満たす。
【0079】
電池6のP1>P2、電池6に調整すべきパワーがP3(P3=P1-P2)であるときに、P1+P4+P3≦Pであれば、コンプレッサー1が向上すべき冷却パワーはP3であり、第2の膨張弁42の開度を大きくし、及び/又はポンプ51の回転速度を向上させることによりP1=P2にすることができる。その一方、P1+P4+P3>Pであれば、電池管理コントローラは電池の温度が設定温度より大きいか否かを判断し、例えば、設定温度が45℃であってよく、電池の温度が45℃より大きければ、電池6に冷却パワーを優先的に供給し、車載エアコンコントローラはコンプレッサー1が最大冷却パワーで運転するように制御し、第1の膨張弁32と第2の膨張弁42の開度を調整することにより、電池冷却分岐路4の冷却パワーがP1=P2になるようにP3向上して、車内冷却分岐路3の冷却パワーを低下させる。電池の温度が45℃以下であると判断し、かつ車内温度が設定温度に達しなければ、車内に冷却パワーを優先的に供給し、コンプレッサー1が最大冷却パワーで運転するように制御し、車内冷却分岐路3の冷却パワーがP4であり、電池冷却分岐路4の冷却パワーがP-P4である。車内温度が設定温度に達すれば、電池6の冷却を優先的に満たし、電池冷却分岐路4の冷却パワーをP3向上させる。
【0080】
P1≦P2であれば、車載エアコンコントローラはコンプレッサーのパワーをそのまま維持したり、コンプレッサーのパワーを低下させたり、第2の膨張弁42の開度を小さくしたり、ポンプ51の回転速度を低下させたりすることにより、電池冷却分岐路4の冷却パワーを低下させる。
【0081】
温度調整システムが加熱モードで動作するときに、P1とP2のパワー差がP3であり、即ち、P1-P2=P3。P1>P2であれば、電池熱管理コントローラはヒーター53の加熱パワーをP3向上させるように制御し、かつポンプ51の回転速度を向上させる。P1≦P2であれば、電池熱管理はヒーター53のパワーをそのまま保持するか、ヒーター53のパワーをP3低下させて電気エネルギーを節約したり、ポンプ51の回転速度を低下させたりしてよい。
【0082】
冷却機能が所定の時間、例えば1時間オンにされた後、電池6の温度が依然として35℃より高ければ、電池の冷却パワーを向上させる。加熱機能が1時間オンにされた後、電池の平均温度が依然として10℃より低ければ、電池熱管理コントローラはヒーター53のパワーを適切に向上させることができる。
【0083】
単一コンプレッサー1が電池6の冷却に必要なパワーを満たすことができなければ、複数のコンプレッサー1を設置して電池6に冷却パワーを供給することができる。例えば、バスは、一般に4つのコンプレッサーを有し、このとき、これら4つのコンプレッサーをいずれも電池6に冷却パワーを供給するために用いることができる。
【0084】
本願の一実施形態によれば、電池に冷却剤を供給するコンプレッサー1は複数あり、車内冷却分岐路3と電池冷却分岐路4はいずれも複数あり、コントローラは、さらに電池の要求パワーP1と各コンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断し、かつ温度調整システムが冷却モードにあるときに、対応する数量のコンプレッサー1を起動させるように制御する。
【0085】
具体的には、コンプレッサー1が複数あるときに、それに応じて、車内冷却分岐路3と電池冷却分岐路4は複数ある。例として、電池6に冷却剤を供給するコンプレッサー1が2つあり、車内冷却分岐路3と電池冷却分岐路4がいずれも2つあるときに、温度調整システムが冷却モードに入るときに、コントローラは、電池6の要求パワーP1を取得し、電池6の要求パワーP1が単一コンプレッサー1の最大冷却パワー以下であれば、コントローラは1つのコンプレッサー1を起動させるように制御すればよい。その一方、電池6の要求パワーP1が単一コンプレッサー1の最大冷却パワーより大きければ、コントローラは2つのコンプレッサー1を同時に起動させて動作させるように制御して、電池6の降温冷却パワーの要求を満たす。
【0086】
コンプレッサー1が複数ある場合の動作原理は、上記コンプレッサー1が1つある場合の動作原理と同じであり、冗長な説明を避けるために、ここで説明を省略する。
【0087】
本願の実施形態に係る車載電池の温度調整システムは、電池の実際の状態に応じて電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御でき、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避する。
【0088】
図6は、本願の実施形態1に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。図6に示すように、車載電池の温度調整方法は、以下のステップS1~S3を含む。
【0089】
S1では、電池の要求パワーP1を取得する。
【0090】
好ましくは、図7に示すように、本願の実施形態では、電池に温度調整を行う要求パワーを取得するステップは、具体的には、以下のステップS11~S13を含む。
【0091】
S11では、電池の温度調整開始時の第1のパラメータを取得し、かつ第1のパラメータに基づいて第1の要求パワーを生成する。
【0092】
S12では、電池の温度調整中の第2のパラメータを取得し、かつ第2のパラメータに基づいて第2の要求パワーを生成する。
【0093】
S13では、第1の要求パワーと第2の要求パワーに基づいて要求パワーP1を生成する。
【0094】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、第1のパラメータは電池の温度調整開始時の初期温度、目標温度、及び初期温度から上記目標温度になるまでの目標時間tであり、第1のパラメータに基づいて第1の要求パワーを生成するステップは、具体的には、以下を含む。初期温度と目標温度との間の第1の温度差ΔTを取得する。第1の温度差ΔTと目標時間tに基づいて第1の要求パワーP1を生成する。
【0095】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(1)に基づいて第1の要求パワーを生成し、
ΔT*C*M/t (1)
ΔTが初期温度と目標温度との間の第1の温度差であり、tが目標時間であり、Cが電池の比熱であり、Mが電池の質量である。
【0096】
本願の一実施形態によれば、第2のパラメータは所定の時間内の電池の平均電流Iであり、下式(2)に基づいて第2の要求パワーを生成し、
*R (2)
Iが平均電流であり、Rが電池の内部抵抗である。
【0097】
S2では、電池の実際パワーP2を取得する。
【0098】
本願の一実施形態によれば、図7に示すように、電池の温度調整の実際パワーを取得するステップは、具体的には、以下のステップS21~S23を含む。
【0099】
S21では、電池の温度を調整する流路の入口温度と出口温度を取得すると共に、冷却液が流路に流入する流速vを取得する。
【0100】
S22では、入口温度と出口温度に基づいて第2の温度差ΔTを生成する。
【0101】
S23では、第2の温度差ΔTと流速vに基づいて実際パワーP2を生成する。
【0102】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(3)に基づいて実際パワーP2を生成し、
ΔT*C*m (3)
ΔTが第2の温度差であり、Cが電池の比熱であり、mが単位時間当たりに流路の断面積を流れる冷却液の質量であり、m=v*ρ*sであり、vが冷却液の流速であり、ρが冷却液の密度であり、sが流路の断面積である。
【0103】
また、流速センサは、流量センサによって替わられてもよく、m=Q*ρ、Qが流量センサによって測定された、単位時間当たりに流路の断面積を流れる冷却液の流量である。
【0104】
S3では、要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池の温度を調整する。
【0105】
本願の実施形態では、要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて、目標時間内に電池の温度が目標温度に達するように調整する。
【0106】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池管理コントローラにより電池に温度調整を行う必要があるか否かを判断し、電池に温度調整を行う必要があると判断するときに、電池の初期温度(即ち、現在温度)、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tを取得し、目標温度と目標時間tが車載電池の実際の状況に応じて予め設定されてよく、その後に、式(1)に基づいて第1の要求パワーを計算する。同時に、電池管理コントローラにより、所定の時間内の電池の平均電流Iを取得し、式(2)に基づいて第2の要求パワーを計算する。次に、電池管理コントローラにより、第1の要求パワーと第2の要求パワーに基づいて、要求パワーP1(即ち、電池の温度を目標温度に調整する要求パワー)を計算する。そして、電池熱管理コントローラにより電池の入口温度と出口温度を取得すると共に、流速情報を取得し、式(3)に基づいて実際パワーP2を計算する。最後に、車載エアコンコントローラにより要求パワーP1と実際パワーP2に基づいてコンプレッサーが異なるパワーで運転するように制御するか、又は電池熱管理コントローラによりヒーターが異なるパワーで運転するように制御する。これにより、該制御方法は、電池の温度調整に必要な時間を精確に制御でき、かつ電池の温度調整の実際パワーはリアルタイムに調整可能であり、目標時間内に車載電池の温度調整を完了することを確保できるため、車載電池の温度を所定の範囲に維持して、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避する。
【0107】
本願の一実施形態によれば、図8に示すように、上記車載電池の温度調整方法は、さらに以下を含んでよい。電池の温度を検出し、かつ温度が第1の温度閾値より大きいか又は第2の温度閾値より小さいかを判断する(S10-S20)。電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに、冷却モードに入る(S30)。第1の所定温度閾値が実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、40℃であってよい。電池の温度が第1の温度閾値以下であるときに、電池の温度が第2の温度閾値より小さいか否かをさらに判断し、電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに、加熱モードに入る(S40-S50)。第2の所定温度閾値が実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、0℃であってよい。
【0108】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池管理コントローラにより電池の温度をリアルタムに検出し、かつ判断する。電池の温度が40℃より高ければ、このときに電池の温度が高過ぎることを示し、高温が電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、電池に降温処理を行う必要があり、電池管理コントローラにより温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、かつ車載エアコンコントローラによりコンプレッサーを起動させるように制御することにより、冷却液と電池は熱変換を行って電池の温度を下げる。その一方、電池の温度が0℃より低ければ、このときに電池の温度が低過ぎることを示し、低温が電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、電池に昇温処理を行う必要があり、電池管理コントローラにより温度調整システムが加熱モードに入るように制御し、かつ電池熱管理コントローラによりヒーターを起動させるように制御して、加熱パワーを供給する。電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池6に温度調整を行うと、電池の温度調整に必要な時間を精確に制御でき、かつP2がリアルタイムに調整可能であり、目標時間t内に電池の温度調整を完了することを確保することができると理解すべきである。そして、要求パワーP1と実際パワーP2を容易に取得することができる。
【0109】
上記実施形態から分かるように、P1は2つの部分で構成され、電池の冷却を例として、電池を冷却する必要があるときに、電池の初期温度が45℃で、電池を冷却する目標温度が35℃であれば、電池が45℃から35℃に低下するために放出する熱は一定であり、式(1)、即ちΔT*C*M/tに基づいて直接計算することができる。ΔTが上記初期温度と目標温度との間の第1の温度差であり、tが目標時間であり、Cが電池の比熱であり、Mが上記電池の質量である。同時に、電池の冷却過程に放電と充電プロセスが存在し、この過程において熱が発生し、この部分の熱は電流を検出して直接取得されてよく、式(3)、即ちI*Rに基づいて現在の電池の発熱パワー、即ち第2の要求パワーを直接計算することができる。Iが平均電流であり、Rが電池の内部抵抗である。本願の要点の1つは、冷却時間が調整可能であり、かつ冷却完了時間が精密に確定でき、本願では、目標時間tに基づいて設定される(tがユーザ要求又は車両の実際の設計状況に応じて変更できる)。冷却完了に必要な目標時間tを決定すると、現在の電池冷却に必要な要求パワーP1を予測することができ、P1=ΔT*C*M/t+I*R。加熱機能がオンにされば、要求パワーP1=ΔT*C*M/t-I*R、つまり、電池の加熱過程において、電池の放電又は充電電流が大きければ大きほど、必要な加熱パワー、即ち要求P1が小さい。
【0110】
電池の放電又は充電電流が変化しているため、I*Rは変化し、冷却時間の正確性をよりよく確保するために、冷却パワーを電池の現在の平均放電又は充電電流の変化に伴って変化させる必要がある。車載エアコンが電池と車室を同時に冷却すれば、電池の放電電流が小さいときに、I*Rは減少し、このときに、車載エアコンはより多くの冷却パワーを車室に分配することにより、車室が設定気温に速く達する。同時に、電池の放電又は充電電流が大きいときに、I*Rは大きく、このときに、車載エアコンはより多くの冷却パワーを電池に分配することができる。このような調整により、電池冷却に必要な時間が常に正確になると共に、車載エアコンの冷却パワーをより効率的かつ合理的に利用し、冷却パワーが大きいエアコンを配置する必要がないため、冷却パワーの無駄を回避する。
【0111】
電池の冷却時間は冷却効率の影響を受け、冷却効率が外部環境温度と電池の現在の温度の影響を受け、電池の冷却過程において、温度調整システムの効率も絶えず変化するため、冷却効率は100%であるわけがなく、要求パワーP1しかに基づいて電池冷却に必要な時間を正確に調整することができず、電池の実際パワーP2を検出する必要がある。本願では、電池の実際パワーP2は式(3)、即ちΔT*C*mに基づいて計算することができる。P2、即ち電池の実際冷却パワーP2は、式(4)、即ちΔT*C*m1に基づいて計算して取得することができ、ΔTがある時間内の電池の温度変化であり、Cが電池の比熱であり、m1が電池の質量である。しかしながら、電池の質量が大きいため、単位時間当たりに温度変化が明らかではなく、長時間を要してこそ温度差を検出することができ、リアルタイム性の要求に合致しないため、一般に式(3)に基づいて実際パワーP2を計算する。
【0112】
冷却効率の影響を受けるため、実際パワーP2が完全に要求パワーP1に等しくなりにくく、電池の冷却の目標時間tをより正確にするために、要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差に基づいてリアルタイムに調整することにより、電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2に等しくなることを確保する必要がある。
【0113】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて、どのように要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池の温度を調整するかを説明する。
【0114】
本願の一実施形態によれば、温度調整システムが冷却モードに入るときに、図9に示すように、要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池の温度を調整するステップは、具体的には、以下のステップS31~S33を含む。
【0115】
S31では、要求パワーP1が実際パワーP2より大きいか否かを判断する。
【0116】
S32では、要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を冷却するコンプレッサーのパワーを向上させる。
【0117】
S33では、温度調整の要求パワーが温度調整の実際パワー以下であれば、コンプレッサーのパワーを低下させるか又はコンプレッサーのパワーをそのまま保持する。
【0118】
具体的には、温度調整システムが冷却モードに入るときに、車載エアコンコントローラにより要求パワーP1と実際パワーP2に基づいてコンプレッサー1のパワーを調整する。要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、コンプレッサーが現在のパワーで運転すれば、目標時間t内に電池の温度を目標温度に下げることができないことを示す。したがって、要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を継続して取得し、かつ車載エアコンコントローラによりパワー差に基づいてコンプレッサーのパワーを向上させ、要求パワーP1と実際パワーP2のパワー差が大きければ大きいほど、コンプレッサーのパワーを多く向上させることにより、所定の時間内に電池の温度を目標温度に下げる。要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、コンプレッサーのパワーをそのまま保持するか又はコンプレッサーのパワーを適切に低下させることができる。電池の温度が35℃より低いときに、電池の冷却は完了し、CAN通信により、温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンコントローラに送信する。温度調整システムが冷却モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、電池の温度が依然として35℃より高ければ、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーのパワーを適切に向上させて、電池が降温をできるだけ速く完了する。
【0119】
本願の一実施形態によれば、図9に示すように、温度調整システムが加熱モードに入るときに、温度調整の要求パワーと温度調整の実際パワーに基づいて電池の温度を調整するステップは、具体的には、以下のステップS34~S36を含む。
【0120】
S34では、要求パワーP1が実際パワーP2より大きいか否かを判断する。
【0121】
S35では、要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を加熱するヒーターのパワーを向上させる。
【0122】
S36では、要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、ヒーターのパワーをそのまま保持する。
【0123】
具体的には、温度調整システムが加熱モードに入るときに、電池熱管理コントローラによりヒーターを起動させるように制御し、かつ要求パワーP1と実際パワーP2に基づいてヒーターのパワーを調整する。要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、ヒーターが現在のパワーで加熱すれば、所定の時間内に電池の温度を目標温度に上げることができないことを示す。したがって、要求パワーP1とP2との間のパワー差を継続して取得し、かつ電池熱管理コントローラによりパワー差に基づいてヒーターのパワーを向上させ、要求パワーP1と実際パワーP2の差が大きければ大きいほど、ヒーターのパワーの向上が多い。要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、ヒーターのパワーをそのまま保持することができる。電池の温度が所定温度、例えば10℃より高いときに、電池の加熱は完了し、電池管理コントローラはCAN通信により電池熱管理コントローラに温度調整機能をオフにするという情報を送信して、電池熱管理コントローラによりヒーターが動作を停止させるように制御する。温度調整システムが加熱モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、電池の温度が依然として10℃より低ければ、電池熱管理コントローラによりヒーターのパワーを適切に向上させて、電池が昇温をできるだけ速く完了する。
【0124】
本願の一実施形態によれば、図10に示すように、上記車載電池の温度調整方法は、さらに以下のステップS37~S38を含んでよい。
【0125】
S37では、要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、ポンプの回転速度を低下させるか又はポンプの回転速度をそのまま保持する。
【0126】
S38では、要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、ポンプの回転速度を向上させる。
【0127】
具体的には、温度調整システムが加熱モード又は冷却モードに入るときに、要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を低下させるように制御して電気エネルギーを節約したり、ポンプの回転速度をそのまま保持したりする。要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、電池熱管理コントローラによりヒーターがパワーを向上させるように制御するか又は車載エアコンコントローラによりコンプレッサーのパワーを向上させるように制御することに加え、また、電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を向上させるように制御して、単位時間当たりに冷却流路の断面積を流れる冷却液質量を増加させることにより、実際パワーP2を向上させて、目標時間内に電池の温度調整を実現することができる。
【0128】
本願の一実施形態によれば、電池に冷却剤を供給するコンプレッサーが複数あるときに、上記方法は、さらに以下を含んでよい。要求パワーP1と各コンプレッサーの最大冷却パワーに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断する。冷却モードにあるときに、対応する数量のコンプレッサーを起動させるように制御する。
【0129】
好ましくは、要求パワーP1と各コンプレッサーの最大冷却パワーに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断するステップは、具体的には、以下を含む。電池の要求パワーP1が単一コンプレッサーの最大冷却パワーより大きいか否かを判断する。単一コンプレッサーの最大冷却パワーより大きければ、複数のコンプレッサーを同時に起動させるように制御する。
【0130】
例として、電池に冷却剤を供給するコンプレッサー1が2つあるときに、温度調整システムが冷却モードに入るときに、要求パワーP1と各コンプレッサーの最大冷却パワーに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断し、要求パワーP1が単一コンプレッサーの最大冷却パワー以下であれば、1つのコンプレッサーを起動させるように制御すればよい。その一方、温度調整の要求パワーP1が単一コンプレッサーの最大冷却パワーより大きければ、2つのコンプレッサーを同時に起動させて動作させるように制御して、電池の降温冷却パワーの要求を満たす。
【0131】
なお、本願の実施形態では、電池は単一電池パック(複数の電池セルから構成される)であってもよく、複数の電池パックを直列接続し、並列接続するか又は直並列接続して構成されてもよい。電池が複数の並列接続された電池パックを備えるときに、各電池パック間で温度調整のパワー分配を行う必要があり、これは弁によってパワー分配を行う必要がある。
【0132】
要するに、温度調整システムが冷却モードで動作するときに、電池の要求パワーP1と車内冷却の要求パワーP4の和がコンプレッサーの最大冷却パワーPより小さく、つまり、P1+P4≦P5であれば、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーがP1+P4の冷却パワーで運転するように制御する。P1+P4>Pであれば、電池の温度が設定温度(例えば、45℃)より大きいか否かを判断し、45℃より大きければ、電池に冷却パワーを優先的に供給し、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーが最大冷却パワーで運転するように制御し、電池冷却分岐路と車内冷却分岐路の冷媒流量を制御することにより、電池冷却分岐路の冷却パワーが電池の要求パワーP1に等しく、車内冷却分岐路のパワーP4がPからP1を差し引いた値である。その一方、電池の温度が45℃以下であると判断し、かつ車内温度が設定温度に達しなければ、車内に冷却パワーを優先的に供給し、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーが最大冷却パワーで運転するように制御し、車内冷却分岐路の冷却パワーがP4であり、電池冷却分岐路の冷却パワーがP-P4である。その一方、電池の温度が45℃以下であると判断し、かつ車内温度が設定温度に達しなければ、車内に冷却パワーを優先的に供給し、車載エアコンコントローラによりコンプレッサー1が最大冷却パワーで運転するように制御し、車内冷却分岐路の冷却パワーがP4であり、電池冷却分岐路の冷却パワーがP-P4である。車内温度が設定温度に達すれば、電池の冷却を優先的に満たす。
【0133】
電池のP1>P2、電池に調整すべきパワーがP3(P3=P1-P2)であるときに、P1+P4+P3≦P5であれば、コンプレッサー1が向上すべき冷却パワーはP3であり、電池冷却分岐路の冷媒流量を増加させ、及び/又はポンプの回転速度を向上させることによりP1=P2にすることができる。その一方、P1+P4+P3>Pであれば、電池管理コントローラは電池の温度が設定温度より大きいか否かを判断し、例えば、設定温度が45℃であってよく、電池の温度が45℃より大きければ、電池に冷却パワーを優先的に供給し、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーが最大冷却パワーで運転するように制御することにより、電池冷却分岐路の冷却パワーを向上させ、車内冷却分岐路の冷却パワーを低下させる。電池の温度が45℃以下であると判断し、かつ車内温度が設定温度に達しなければ、車内に冷却パワーを優先的に供給し、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーが最大冷却パワーで運転するように制御し、車内冷却分岐路の冷却パワーがP4であり、電池冷却分岐路の冷却パワーがP-P4である。車内温度が設定温度に達すれば、電池の冷却を優先的に満たし、電池冷却分岐路の冷却パワーをP3向上させる。
【0134】
P1≦P2であれば、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーのパワーをそのまま維持したり、コンプレッサーのパワーを低下させたり、電池冷却の冷媒流量を減少させたり、電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を低下させたりすることにより、電池冷却分岐路の冷却パワーを低下させる。
【0135】
温度調整システムが加熱モードで動作するときに、P1とP2のパワー差がP3であり、即ち、P1-P2=P3。P1>P2であれば、電池熱管理コントローラによりヒーターの加熱パワーがP3向上するように制御し、かつポンプの回転速度を向上させる。P1≦P2であれば、電池熱管理コントローラによりヒーターのパワーをそのまま保持するか、ヒーターのパワーをP3低下させて電気エネルギーを節約したり、ポンプの回転速度を低下させたりしてよい。
【0136】
冷却機能が所定の時間、例えば1時間オンにされた後、電池の温度が依然として35℃より高ければ、電池の冷却パワーを向上させる。加熱機能が1時間オンにされた後、電池の平均温度が依然として10℃より低ければ、電池熱管理コントローラによりヒーターのパワーを適切に向上させることができる。
【0137】
本願の実施形態の車載電池の温度調整方法によれば、まず、電池の温度調整の要求パワーを取得し、次に電池の温度調整の実際パワーを取得し、最後に温度調整の要求パワーと温度調整の実際パワーに基づいて目標時間内に電池の温度を調整することにより、目標温度に達する。これにより、該方法は電池の温度調整の時間を精確に制御でき、かつ電池の温度調整の実際パワーがリアルタイムに調整可能であり、目標時間内に車載電池の実際の状態に応じて車載電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御することを確保でき、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、車載電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避する。
【0138】
また、本願は、プロセッサによって実行されるときに上記車載電池の温度調整方法を実現するコンピュータプログラムが記憶された非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体をさらに提供する。
【0139】
本願の実施形態の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体によれば、まず、電池の温度調整の要求パワーを取得し、次に電池の温度調整の実際パワーを取得し、最後に温度調整の要求パワーと温度調整の実際パワーに基づいて電池の温度を調整するため、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、車載電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避する。
【0140】
車両の電池6の数量が複数あり、かつ複数の電池6が並列接続されているときに、例えば、電池6の数量が2つあり、それぞれが第1の電池61と第2の電池62であるときに、図11に示すように、車載電池の温度調整システムは、コンプレッサー1、コンデンサ2、電池冷却分岐路4及び電池温度調整モジュール5を含む。
【0141】
コンデンサ2はコンプレッサー1と接続され、電池冷却分岐路4はコンプレッサー1とコンデンサ2との間に接続される。電池温度調整モジュール5は、複数の並列接続された電池6、及び電池冷却分岐路4と接続され、複数の並列接続された電池の要求パワーP1と実際パワーP2を取得し、それぞれ複数の並列接続された電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて複数の並列接続された電池の温度を調整する。
【0142】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、それぞれ複数の並列接続された電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて複数の並列接続された電池の温度を調整するステップは、具体的には、以下を含む。それぞれ複数の並列接続された電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて、目標時間t内に複数の並列接続された電池の温度が目標温度に達するように調整する。
【0143】
つまり、電池温度調整モジュール5が各電池のP1とP2に基づいて各電池6に温度調整を行うときに、目標時間t内に各電池6の実際の状態に応じて車載電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御することにより、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整することを確保することができる。
【0144】
車内の温度が高過ぎるときに、車内冷却機能がオンにされ、冷却液の流れ方向は、コンプレッサー1-コンデンサ2-車内冷却分岐路3-コンプレッサー1である。第1の電池61の温度が高過ぎるときに、電池冷却機能がオンにされ、第1の配管と第2の配管内の冷却液の流れ方向は、コンプレッサー1-コンデンサ2-電池冷却分岐路4-コンプレッサー1であり、電池冷却分岐路4-電池温度調整モジュール5-第1の電池61-電池温度調整モジュール5-電池冷却分岐路4である。第2の電池62の温度が高過ぎるときに、第1の配管と第2の配管内の冷却液の流れ方向は、コンプレッサー1-コンデンサ2-電池冷却分岐路4-コンプレッサー1であり、電池冷却分岐路4-電池温度調整モジュール5-第2の電池62-電池温度調整モジュール5-電池冷却分岐路4である。
【0145】
電池温度調整モジュール5の冷却パワーが車載エアコンによって供給され、車内冷却システムと冷却力を共用することにより、温度調整システムの体積を減少させ、冷却液の流量の分配をより柔軟にすることができる。これにより、各電池の実際の状態に応じて各電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御できるため、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、車載電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避する。
【0146】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、図6及び図7に示すように、電池冷却分岐路4は熱変換器41を含んでよく、熱変換器41は第1の配管と第2の配管を含み、第2の配管は電池温度調整モジュール5と接続され、第1の配管はコンプレッサー1と連通し、第1の配管と第2の配管が相互に独立し隣接して設置される。
【0147】
電池温度調整モジュール5は、電池の温度を調整し、電池6内に設置された流路(具体的に図示せず)と、流路と熱変換器41との間に接続されたポンプ51と、媒体容器52と、ヒーター53と、コントローラ(具体的に図示せず)とを含んでよい。コントローラは、複数の並列接続された電池6の要求パワーP1と電池の実際パワーP2をそれぞれ取得し、かつそれぞれ各電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて各電池6の温度を調整する。車内冷却分岐路3は、エバポレーター31、第1の膨張弁32及び第1の電子弁33を含んでよい。電池冷却分岐路4は、第2の膨張弁42及び第2の電子弁43をさらに含んでよい。
【0148】
電池冷却分岐路4において熱変換器41が設置されなくてよく、熱変換器41がないときに、電池冷却分岐路4を流れるのは冷媒であると理解すべきである。熱変換器41が設置されていれば、電池冷却分岐路4の第1の配管を流れるのは冷媒であり、第2の配管を流れるのは冷却液であり、車内冷却分岐路を流れるのは冷媒である。
【0149】
本願の一実施形態によれば、図11に示すように、電池温度調整モジュール5は、流路の入口に設置された第1の温度センサ55、流路の出口に設置された第2の温度センサ56、及び流速センサ57をさらに含む。流路の入口と出口の位置は絶対的ではなく、ポンプ51の回転方向に応じて確定されると理解すべきである。
【0150】
具体的には、コントローラは、電池管理コントローラ、電池熱管理コントローラ及び車載エアコンコントローラを含んでよい。電池熱管理コントローラは、ポンプ51、第1の温度センサ51、第2の温度センサ52及び流速センサ57と電気的に接続され、かつ媒体の比熱、媒体の密度に基づいて、複数の並列接続された電池の実際パワーP2を取得し、ポンプ51の回転速度を制御することができる。電池熱管理コントローラは、さらに弁58の開度を制御することにより、第1の電池61の冷却回路と第2の電池の冷却回路の冷却液の流量を制御して、第1の電池61の冷却回路と第2の電池62の冷却回路の冷却パワーの分配を調整することができる。電池管理コントローラは、電池を流れる電流、電池自体の温度を取得し、かつ電池の目標温度、目標時間t、電池の比熱C、電池の質量M、及び電池の内部抵抗Rに基づいて、要求パワーP1を取得し、かつ車載エアコンコントローラを起動させるか又は動作を停止させるように制御する。車載エアコンコントローラは、コンプレッサー1、膨張弁及び電子弁と電気的に接続され、電池管理コントローラによって取得された要求パワーP1と電池熱管理コントローラによって取得された実際パワーP2に基づいて、コンプレッサーのパワーP、膨張弁及び電子弁の開閉を制御することにより、熱変換を制御するという目的を達成する。
【0151】
なお、電池管理コントローラは、例えば電池管理機能を持つDSPチップを含んでよい。電池熱管理コントローラは、例えば電池熱管理機能を持つDSPチップを含んでよい。車載エアコンコントローラは、例えば車載エアコンDSPチップを含んでよい。
【0152】
熱変換器41はプレート式熱交換器であってよく、プレート式熱交換器が車載エアコンの内部に取り付けられてよく、冷却剤回路全体を車載エアコンの内部にして、車載エアコンの出荷デバッグに役立ち、車載エアコンを個別に供給し組み立てることができ、同時に取付過程において車載エアコンに冷却剤を1回追加すればよい。
【0153】
冷却液は流路の入口から電池6の内部に流入し、流路の出口から流出することにより、電池6と冷却液との間の熱変換を実現する。
【0154】
ポンプ51は主に動力を供給し、媒体容器52は主に冷却液を貯蔵し、かつ温度調整システムに添加される冷却液を収容し、温度調整システムにおける冷却液が減少するときに、媒体容器52中の冷却液から自動的に補充することができる。ヒーター53は、PTC(Positive Temperature Coefficient、正温度係数、一般的に正温度係数が大きい半導体材料又は部品を指す)ヒーターであってよく、コントローラとCAN(Controller Area Network、コントローラエリアネットワーク)通信を行い、車載電池の温度調整システムに加熱パワーを供給し、コントローラによって制御される。つまり、ヒーター53は電池6と直接接触せず、高い安全性、信頼性及び実用性を持つ。
【0155】
第1の温度センサ55は流路入口における冷却液の温度を検出し、第2の温度センサ56は流路出口における冷却液の温度を検出する。流速センサ57は温度調整システムにおける配管内の冷却液の流速情報を検出する。第1の電子弁33は車内冷却分岐路3の開閉を制御し、第1の膨張弁32は車内冷却分岐路3中の冷却液の流量を制御することができる。第2の電子弁43は電池冷却分岐路4の開閉を制御し、第2の膨張弁42は電池冷却分岐路4中の冷却液の流量を制御することができる。各電池6の流路の入口に弁58がさらに設置される。電池熱管理コントローラは各電池6の対応するP1とP2に基づいて弁58を制御することにより、各電池6に流入する冷却液の流量をそれぞれ制御して、各電池6の加熱パワー/冷却パワーを精確に制御することができる。本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに複数の並列接続された電池の要求パワーP1に基づいて総要求パワーPzを生成し、かつ総要求パワーPzが車載エアコンの最大冷却パワーPと整合するか否かを判断し、整合すれば、コントローラは複数の並列接続された電池の要求パワーP1に基づいて複数の並列接続された電池6を冷却する。整合しなければ、コントローラはエアコンの最大冷却パワーPと複数の並列接続された電池の要求パワーP1に基づいて複数の並列接続された電池6を冷却する。
【0156】
具体的には、図11に示すように、コントローラは、各電池の要求パワーP1に基づいて温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、つまり、各電池の要求パワーP1を加算すれば、総要求パワーPzを得ることができる。その後に、総要求パワーPzに基づいて、Pzが車載エアコンの最大冷却パワーPと整合するか否かを判断し、つまり、PzがP以下であるか否かを判断し、そうであれば、車載エアコンコントローラは各電池の要求パワーP1に基づいてコンプレッサー1のパワーを制御することにより各電池を冷却し、同時に電池熱管理コントローラは第1の電池61と第2の電池62の冷却要求パワーに基づいて、弁58の開度を制御することにより、第1の電池61と第2の電池62の冷却パワーを調整する。その一方、Pzが車載エアコンの最大冷却パワーPと整合しなければ、即ち、PzがPより大きければ、車載エアコンはコンプレッサー1が最大冷却パワーPで動作するように制御し、同時に電池熱管理コントローラはエアコンの最大冷却パワーPと各電池の要求パワーP1に基づいて、弁58の開度を制御することにより、割合に応じて冷却液の流量の分配を行うことにより、最大効率で各電池6は降温を完了することができる。
【0157】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて電池温度調整モジュール5が各電池6の要求パワーP1と実際パワーP2をどのように取得するかを説明する。
【0158】
本願の一実施形態によれば、コントローラは各電池の温度調整開始時の第1のパラメータをそれぞれ取得し、第1のパラメータに基づいて各電池の第1の要求パワーを生成し、そして、各電池の温度調整中の第2のパラメータをそれぞれ取得し、第2のパラメータに基づいて各電池の第2の要求パワーを生成すると共に、各電池の第1の要求パワーと各電池の第2の要求パワーに基づいて各電池の要求パワーP1を生成する。
【0159】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、第1のパラメータは電池6の温度調整開始時の初期温度、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tであり、コントローラは、初期温度と目標温度との間の第1の温度差ΔTを取得し、かつ第1の温度差ΔTと目標時間tに基づいて第1の要求パワーを生成する。
【0160】
好ましくは、コントローラは下式(1)に基づいて第1の要求パワーを生成し、
ΔT*C*M/t (1)
ΔTが初期温度と目標温度との間の第1の温度差であり、tが目標時間であり、Cが電池6の比熱であり、Mが電池6の質量である。
【0161】
第2のパラメータは所定の時間内の各電池6の平均電流Iであり、コントローラは下式(2)に基づいて第2の要求パワーを生成し、
*R (2)
Iが平均電流であり、Rが電池6の内部抵抗である。
【0162】
電池6を冷却するときに、P1=ΔT*C*M/t+I*R、電池6を加熱するときに、P1=ΔT*C*M/t-I*R。
【0163】
本願の一実施形態によれば、電池熱管理コントローラは、それぞれ第1の温度センサ55によって検出された入口温度と第2の温度センサ56によって検出された出口温度に基づいて第2の温度差ΔTを生成し、かつ各電池の第2の温度差ΔT、及び流速センサ57によって検出された流速vに基づいて各電池の実際パワーP2を生成する。
【0164】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、電池熱管理コントローラは、下式(3)に基づいて実際パワーP2を生成し、
ΔT*c*m (3)
ΔTが第2の温度差であり、cが流路中の冷却液の比熱であり、mが単位時間当たりに流路の断面積を流れる冷却液の質量であり、m=v*ρ*sであり、vが冷却液の流速であり、ρが冷却液の密度であり、sが流路の断面積である。
【0165】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池管理コントローラは車両に温度調整を行う必要があるか否かを判断し、車両に温度調整を行う必要があり、例えば、電池6の温度が高過ぎると判断すれば、CAN通信により、温度調整機能をオンにするという情報を車載エアコンに送信し、車載エアコンコントローラは温度調整機能をオンにした後に熱変換情報を電池熱管理コントローラに送信し、同時に車載コントローラは第2の電子弁43を開弁するように制御し、電池熱管理コントローラはポンプ51が初期設定回転速度(例えば、低い回転速度)で動作を開始させるように制御する。
【0166】
同時に、電池管理コントローラは各電池6の初期温度(即ち、現在の温度)、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tを取得し、目標温度と目標時間tが実際の状況に応じて予め設定されてよく、そして式(1)に基づいて各電池の第1の要求パワーを計算する。同時に、電池管理コントローラは、さらに所定の時間内の電池6の平均電流Iを取得し、式(2)に基づいて各電池の第2の要求パワーを計算する。次に、電池管理コントローラは、各電池6の第1の要求パワーと第2の要求パワーに基づいて要求パワーP1(即ち、目標時間内に電池6の温度を目標温度に調整する要求パワー)を計算し、電池6を冷却するときに、P1=ΔT*C*M/t+I*R、電池6を加熱するときに、P1=ΔT*C*M/t-I*R。
【0167】
そして、電池熱管理コントローラは、各電池の対応して設置された第1の温度センサ55と第2の温度センサ56の検出温度情報をそれぞれ取得すると共に、流速センサ57によって検出された流速情報をそれぞれ取得し、式(3)に基づいて各電池6の実際パワーP2をそれぞれ計算する。
【0168】
最後に、電池熱管理コントローラは、各電池6の対応する要求パワーP1、実際パワーP2に基づいて、弁58を制御することにより、各電池6に流入する冷却液の流量をそれぞれ制御して、各電池6の加熱パワー/冷却パワーを精確に制御することができる。例えば、第1の電池61の要求パワーP1が第2の電池62の要求パワーP1より大きければ、電池熱管理コントローラは第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を大きくし、第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することができる。
【0169】
電池6の温度が低ければ、車載エアコンコントローラは、第2の電子弁43を閉弁するように制御し、電池熱管理コントローラはヒーター53を起動させるように制御し、かつ電池熱管理コントローラは要求パワーP1と実際パワーP2に基づいてヒーター53の加熱パワーを制御して、目標時間t内に電池6の温度を目標温度に上げて、温度が高過ぎて電池6の動作性能に影響を及ぼすことを防止する。これにより、目標時間内に各電池の実際の状態に応じて各電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御することを確保することにより、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整する。
【0170】
具体的には、上記実施形態から分かるように、要求パワーP1は2つの部分で構成され、第1の電池61を例として、第1の電池61を冷却する必要があるときに、第1の電池61の初期温度が45℃で、目標温度が35℃であれば、電池が45℃から35℃に低下するために放出する熱は一定であり、式(1)、即ちΔT*C*M/tに基づいて直接計算することができる。同時に、第1の電池61の冷却過程に放電と充電プロセスが存在し、この過程において熱が発生し、この部分の熱は第1の電池の平均電流Iを検出して直接取得されてよく、式(3)、即ちI*Rに基づいて現在の第1の電池61の発熱パワー、即ち第2の要求パワーを直接計算する。本願の冷却完了時間は、目標時間tに基づいて設定される(tがユーザ要求又は車両の実際の設計状況に応じて変更できる)。冷却完了に必要な目標時間tを決定すると、現在の第1の電池61の冷却に必要な要求パワーP1を予測することができ、P1=ΔT*C*M/t+I*R。加熱機能がオンにされば、要求パワーP1=ΔT*C*M/t-I*R、つまり、第1の電池61の加熱過程において、第1の電池61の放電又は充電電流が大きければ大きほど、必要な加熱パワー、即ち要求P1が小さい。
【0171】
第1の電池61の放電又は充電電流が変化しているため、I*Rは変化し、冷却時間の正確性をよりよく確保するために、冷却パワーを第1の電池61の現在の平均放電又は充電電流の変化に伴って変化させる必要がある。車載エアコンが第1の電池61と車室を同時に冷却すれば、第1の電池61の放電電流が小さいときに、I*Rは減少し、このときに、より多くの冷却パワーを車室に分配することにより、車室が設定気温に速く達する。同時に、第1の電池61の放電又は充電電流が大きいときに、I*Rは大きく、このときに、車載エアコンはより多くの冷却パワーを第1の電池61に分配することができる。このような調整により、電池冷却に必要な時間が常に正確になると共に、車載エアコンの冷却パワーをより効率的かつ合理的に利用し、冷却パワーが大きいエアコンを配置する必要がないため、冷却パワーの無駄を回避する。
【0172】
電池の冷却時間は冷却効率の影響を受け、冷却効率が外部環境温度と電池の現在の温度の影響を受け、第1の電池61の冷却過程において、温度調整システムの効率も絶えず変化するため、冷却効率は100%であるわけがなく、P1しかに基づいて第1の電池61の冷却時間を正確に調整することができず、第1の電池61の実際パワーP2を検出する必要がある。本願では、第1の電池61の実際パワーP2は式(3)、即ちΔT*c*mに基づいて計算することができる。P2、即ち電池の実際冷却パワーは、式(4)、即ちΔT*C*m1に基づいて計算して取得することができ、ΔTがある時間内の第1の電池61の温度変化であり、Cが第1の電池61の比熱であり、m1が第1の電池61の質量である。しかしながら、一般に電池の質量が大きいため、単位時間当たりに温度変化が明らかではなく、長時間を要してこそ温度差を検出することができるため、一般に式(3)に基づいて実際パワーP2を計算する。
【0173】
第2の電池62に温度調整を行う必要があるときに、その要求パワーP1と実際パワーP2の取得方法は、上記第1の電池61の原理と同じであるため、ここで説明を省略する。
【0174】
冷却効率の影響を受けるため、実際パワーP2が完全に要求パワーP1に等しくなりにくく、各電池6の冷却の目標時間tをより正確にするために、要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差に基づいてリアルタイムに調整することにより、電池6の要求パワーP1が電池の実際パワーP2に等しくなることを確保する必要がある。
【0175】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて、どのように各電池6の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて各電池6の温度を調整するかを説明する。
【0176】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに、複数の並列接続された電池の温度を検出し、かつ複数の並列接続された電池6のうちの少なくとも1つの電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、複数の並列接続された電池6のうちの少なくとも1つの電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに温度調整システムが加熱モードに入るように制御する。第1の温度閾値と第2の温度閾値は実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、第1の温度閾値が40℃であってよく、第2の温度閾値が0℃であってよい。
【0177】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池管理コントローラは各電池6の温度をリアルタムに検出し、かつ判断する。そのうちのある電池6の温度が40℃より高ければ、このときに該電池6の温度が高過ぎることを示し、高温が該電池6の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池6に降温処理を行う必要があり、電池管理コントローラは温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、かつ電池冷却機能をオンにするという情報を車載エアコンコントローラに送信し、車載エアコンコントローラは電池冷却機能をオンにするという情報を受信した後に第2の電子弁43を開弁するように制御することにより、冷却液と電池6は熱変換を行って該電池6の温度を下げる。図11に示すように、温度調整システムが冷却モードで動作するときに、第1の電池61の所在する回路の対応する第1の配管と第2の配管内の冷却液の流れ方向は、それぞれ、コンプレッサー1-コンデンサ2-第2の電子弁43-第2の膨張弁42-熱変換器41-コンプレッサー1であり、媒体容器52-熱変換器41-ヒーター53(動作停止)-ポンプ51-弁58-第1の温度センサ55-第1の電池61-第2の温度センサ56-流速センサ57-媒体容器52であり、このように循環し、熱変換器41で熱変換を行って、第1の電池61の降温を実現する。第2の電池62の所在する回路中の第1の配管と第2の配管内の冷却液の流れ方向は、それぞれ、コンプレッサー1-コンデンサ2-第2の電子弁43-第2の膨張弁42-熱変換器41-コンプレッサー1であり、媒体容器52-熱変換器41-ヒーター53(動作停止)-ポンプ51-弁58-第1の温度センサ55-第2の電池62-第2の温度センサ56-流速センサ57-媒体容器52であり、このように循環し、熱変換器41で熱変換を行って、第2の電池62の降温を実現する。
【0178】
ある電池6の温度が0℃より低ければ、このときに該電池6の温度が低過ぎることを示し、低温が該電池6の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池6に昇温処理を行う必要があり、電池管理コントローラは温度調整システムが加熱モードに入るように制御し、かつ電池加熱機能をオンにするという情報を車載エアコンコントローラに送信する。車載エアコンコントローラは、電池加熱機能をオンにするという情報を受信した後に、第2の電子弁43を閉弁するように制御し、かつ電池熱管理コントローラはヒーター53を起動させるように制御して、温度調整システムに加熱パワーを供給する。温度調整システムが加熱モードで動作するときに、第1の電池61と第2の電池62中の冷却液の流れ方向は、それぞれ、媒体容器52-熱変換器41-ヒーター53(起動)-ポンプ51-弁58-第1の温度センサ55-第1の電池61-第2の温度センサ56-流速センサ57-媒体容器52であり、媒体容器52-熱変換器41-ヒーター53(起動)-ポンプ51-第1の温度センサ55-第2の電池62-第2の温度センサ56-流速センサ57-媒体容器52であり、このように循環して、電池6の昇温を実現する。弁58の開度を調整して各電池6に流入する冷却液の流量を調整することにより、各電池の加熱/冷却パワーを調整すると理解すべきである。
【0179】
本願の一実施形態によれば、温度調整システムが冷却モードで動作するときに、コントローラは、ある電池6の要求パワーP1が該電池の対応する実際パワーP2より大きいときに、該電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池6を冷却するコンプレッサーのパワーを向上させたり、電池6の冷却液の流量を増加させたりすることにより、電池6の冷却パワーを向上させ、そして、ある電池6の要求パワーP1が実際パワーP2以下であるときに、コンプレッサーのパワーを低下させるか又はコンプレッサーのパワーをそのまま保持したり、電池の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池6の冷却パワーを低下させる。
【0180】
具体的には、電池6が複数あり、かつ並列接続されば、温度調整システムが冷却モードで動作するときに、電池管理コントローラは電池の要求パワーP1を取得し、電池熱管理コントローラは電池の実際パワーP2を取得し、車載エアコンコントローラは要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて判断する。そのうちのある電池6の要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、現在の冷却パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池6の降温を完了できないことを示すため、車載エアコンコントローラは該電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいてコンプレッサー1のパワーを向上させたり、該電池の冷却液の流量を増加させ、つまり、第2の膨張弁42の開度を大きくしたりすることにより、該電池の冷却パワーを向上させ、要求パワーP1と実際パワーP2のパワー差が大きければ大きいほど、コンプレッサー1のパワーを多く向上させ該電池の冷却液の流量を多く増加させることにより、所定の時間t内に該電池の温度を目標温度に下げる。その一方、そのうちのある電池6の要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、車載エアコンコントローラは、コンプレッサー1のパワーをそのまま保持するか又はコンプレッサー1のパワーを適切に低下させたり、該電池の冷却液の流量を減少させ、つまり、第2の膨張弁42の開度を小さくしたりすることにより、電池の冷却パワーを低下させることができる。すべての電池6の温度が35℃より低いときに、電池6の冷却は完了し、電池管理コントローラはCAN通信により車載エアコンに温度調整機能をオフにするという情報を送信し、車載エアコンコントローラは第2の電子弁43を閉弁するように制御する。温度調整システムが冷却モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が35℃より高い電池6が依然として存在すれば、電池の冷却パワーを適切に向上させて、該電池が降温をできるだけ速く完了する。
【0181】
本願の一実施形態によれば、温度調整システムが加熱モードで動作し、コントローラは、ある電池の要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、該電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を加熱するヒーター53のパワーを向上させたり、電池の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の加熱パワーを向上させ、そして、ある電池の要求パワーP1が実際パワーP2以下であるときに、ヒーター53のパワーを低下させたり、ヒーター53のパワーをそのまま保持したり、電池の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の加熱パワーを低下させる。
【0182】
具体的には、電池が複数あり、かつ並列接続されば、温度調整システムが加熱モードで動作するときに、電池管理コントローラは電池の要求パワーP1を取得し、電池熱管理コントローラは電池の実際パワーP2を取得する。そのうちのある電池6の要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、現在の加熱パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池6の昇温を完了できないことを示すため、電池熱管理コントローラは該電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池6を加熱するヒーター53のパワーを向上させたり、電池の冷却液の流量を調整して増加させ、例えば、ポンプ51の回転速度を向上させたりすることにより、該電池が目標時間内に温度調整を完了する。要求パワーP1と実際パワーP2の差が大きければ大きいほど、ヒーター53のパワーの向上と該電池回路の冷却液の流量の増加が多い。ある電池の要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、コントローラは、ヒーター53のパワーを適切に低下させたり、ヒーター53のパワーをそのまま保持したり、該電池回路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、該電池の加熱パワーを低下させることができる。すべての電池6の温度が所定温度、例えば10℃より高いときに、電池6の加熱は完了し、電池管理コントローラはCAN通信により温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンに送信して、電池熱管理コントローラはヒーター53が動作を停止させるように制御する。温度調整システムが加熱モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が10℃より低い電池6が依然として存在すれば、電池熱管理コントローラはヒーター53のパワーとポンプ51の回転速度を適切に向上させて、該電池が昇温をできるだけ速く完了する。
【0183】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より小さいときに、ポンプ51の回転速度を低下させ、そして、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より大きいときに、ポンプ51の回転速度を向上させる。
【0184】
具体的には、温度調整システムが加熱モード又は冷却モードに入るときに、ある電池6の要求パワーP1が実際パワーP2より小さければ、コントローラはポンプ51の回転速度を低下させるように制御して、電気エネルギーを節約する。ある電池6の要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、コントローラはヒーター53、コンプレッサー1のパワーを向上させるか又は該電池の所在する回路の冷却液の流量を増加させるように制御することに加え、また、ポンプ51の回転速度を向上させるように制御して、単位時間当たりに冷却流路の断面積を流れる冷却液の質量を増加させることにより、該電池の実際パワーP2を向上させて、目標時間t内に温度調整を実現することができる。
【0185】
単一コンプレッサー1が複数の電池6の冷却に必要なパワーを満たすことができなければ、複数のコンプレッサー1を設置して電池6に冷却パワーを供給することができる。例えば、バスは、一般に4つのコンプレッサーを有し、このとき、これら4つのコンプレッサーをいずれも電池6に冷却パワーを供給するために用いることができる。
【0186】
本願の一実施形態によれば、電池に冷却剤を供給するコンプレッサー1が複数あれば、コントローラは、さらに各電池の要求パワーP1と各コンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断し、かつ温度調整システムが冷却モードにあるときに、対応する数量のコンプレッサー1を起動させるように制御する。
【0187】
好ましくは、コントローラは、各電池の要求パワーP1に基づいて総要求パワーPzを生成することができ、コントローラは、総要求パワーPzが単一コンプレッサーの最大冷却パワーPより大きいと判断するときに、複数のコンプレッサー1を同時に起動させるように制御する。
【0188】
例として、複数の電池6に冷却剤を供給するコンプレッサー1が2つあるときに、温度調整システムが冷却モードに入るときに、コントローラは、各電池6のP1をそれぞれ取得し、かつ各電池のP1を加算して温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができる。Pzが単一コンプレッサー1の最大冷却パワー以下であれば、コントローラは1つのコンプレッサー1を起動させるように制御すればよい。その一方、Pzが単一コンプレッサー1の最大冷却パワーより大きければ、コントローラは2つのコンプレッサー1を同時に起動させて動作させるように制御して、電池6の降温冷却パワーの要求を満たす。
【0189】
当業者が本願をより明確に理解できるように、以下、具体的な実施形態を組み合わせて、図11に示す車載電池の温度調整システムの動作過程を説明する。
【0190】
電池6は、第1の電池61と第2の電池62を含み、Pz=P11+P12、P11が第1の電池61の温度調整の要求パワーであり、P12が第2の電池62の温度調整の要求パワーであり、Pzが第1の電池61と第2の電池62の温度調整の要求パワーの和(総要求パワーPz)である。Pf=P21+P22、P21が電池61の温度調整の実際パワーであり、P22が電池62の温度調整の実際パワーであり、Pfが第1の電池61と第2の電池62の温度調整の実際パワーの和である。
【0191】
ある電池の温度が第1の温度閾値(例えば、40℃)より大きいときに、車載電池の温度調整システムが冷却モードで動作し、総要求パワーPzと車内冷却要求パワーP4の和がコンプレッサーの最大冷却パワーPより小さく、即ちPz+P4<Pであれば、コンプレッサー1がPz+P4の冷却パワーで運転するように制御する。この場合に、Pz<P、P4<Pであると理解すべきでる。
【0192】
Pz+P4>Pであれば、第1の電池61又は第2の電池62の温度が45℃より大きいか否かを判断し、45℃より大きければ、電池冷却に冷却パワーを優先的に供給し、コントローラはコンプレッサー1が最大冷却パワーPで運転するように制御し、電池冷却分岐路4の冷却パワーがPzであり、車内冷却分岐路3の冷却パワーがP-Pzに等しい。
【0193】
電池の温度が45℃以下であると判断し、かつ車内温度が設定温度に達しなければ、車内に冷却パワーを優先的に供給し、コンプレッサー1が最大冷却パワーPで運転し、車内冷却分岐路の冷却パワーがP4であり、電池冷却分岐路の冷却パワーがP-P4に等しい。第1の電池61の冷却分岐路と第2の電池62の冷却分岐路は割合に応じて冷却パワーを低下させる。割合は、(P-P4)/(P11+P12)であってよい。車内温度が設定温度に達すれば、電池の冷却パワーを優先的に満たす。
【0194】
第1の電池61と第2の電池62の温度調整の実際パワーの和はPfであり、Pz>Pfであるときに、調整すべきパワーはPc(Pc=Pz-Pf)である。Pz+P4+Pc≦Pであれば、コンプレッサーが向上すべき冷却パワーはPcであり、第2の膨張弁42の開度を大きくし、ポンプ51の回転速度を向上させる。同時に以下の処理を行う。
【0195】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラは、第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラは、第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池61の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池62の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーを低下させる。
【0196】
Pz+P4+Pc>P(かつPz+Pc≦P)であれば、以下の判断を行う。
【0197】
第1の電池61と第2の電池62の温度が45℃より大きいか否かを判断する。45℃より大きければ、電池冷却に冷却パワーを優先的に供給し、コンプレッサーは最大冷却パワーで運転し、同時にポンプ51の回転速度を向上させ、電池冷却分岐路の冷却パワーをPc向上させ、車内冷却分岐路のパワーをPc低下させる。P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラは、第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラは、第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池61の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池62の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーを低下させる。
【0198】
電池の温度が45℃以下であり、かつ車内温度が設定温度に達しなければ、車内に冷却パワーを優先的に供給し、コンプレッサーが最大冷却パワーPで運転し、ポンプ51の回転速度を向上させ、車内冷却分岐路の冷却パワーがP4であり、電池冷却分岐路の冷却パワーがP-P4に等しい。第1の電池61の冷却分岐路と第2の電池62の冷却分岐路は割合に応じて冷却パワーを低下させる。割合は、(P-P4)/(P11+P12)であってよい。第1の電池61の冷却パワーはP11*(P-P4)/(P11+P12)であり、第2の電池62の冷却パワーはP12*(P-P4)/(P11+P12)である。
【0199】
車内温度が設定温度に達すれば、電池の冷却パワーを優先的に満たし、コンプレッサーは最大パワーPで運転し、第2の膨張弁42の開度を大きくし、ポンプ51の回転速度を向上させることにより、電池冷却分岐路の冷却パワーをPc向上させる。同時に以下の処理を行う。
【0200】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラは、第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラは、第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池61の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、電池61の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池62の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーを低下させる。
【0201】
Pz≦Pfであるときに、調整すべきパワーがPc(Pc=Pf-Pz)であると、車載エアコンコントローラはコンプレッサーの冷却パワーをそのまま維持したり、コンプレッサーの冷却パワーを低下させたり、第2の膨張弁42の開度を小さくしたり、電池熱管理コントローラによりポンプ51の回転速度を低下させたりする。P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラは、第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラは、第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、電池62の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池61の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池62の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーを低下させる。
【0202】
電池に冷却パワーを供給するコンプレッサー1が複数あり、複数のコンプレッサーの最大冷却パワーの和がP5であると、電池冷却パワーの調整は以下のとおりであってよい。
【0203】
(1)Pz>Pfであるときに、調整すべきパワーはPc(Pc=Pz-Pf)であり、Pz+P4+Pc≦P5であれば、コンプレッサーが向上すべき冷却パワーはPcであり、第2の膨張弁の開度を大きくし、ポンプの回転速度を向上させる。同時に以下の処理を行う。
【0204】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラは、第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラは、第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池61の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池62の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、電池62の冷却パワーを低下させる。
【0205】
Pz+P4+Pc>P5(かつPz+Pc≦P5)であれば、以下の判断を行う。
【0206】
電池の温度が45℃より大きいか否かを判断する。45℃より大きければ、電池冷却に冷却パワーを優先的に供給し、コンプレッサーは最大冷却パワーで運転し、同時にポンプの回転速度を向上させ、電池冷却分岐路の冷却パワーをPc向上させ、車内冷却分岐路のパワーをPc低下させる。
【0207】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラは、第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、電池61の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラは、第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、電池61の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池62の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーを低下させる。
【0208】
電池の温度が45℃以下であり、かつ車内温度が設定温度に達しなければ、車内に冷却パワーを優先的に供給し、すべてのコンプレッサーが最大冷却パワーで運転し、ポンプの回転速度を向上させ、車内冷却分岐路の冷却パワーがP4であり、電池冷却分岐路の冷却パワーが=P5-P4である。第1の電池61の冷却分岐路と第2の電池62の冷却分岐路は割合に応じて冷却パワーを低下させる。割合は、(P5-P4)/(P11+P12)であってよい。第1の電池61の冷却パワーはP11*(P5-P4)/(P11+P12)であり、第2の電池62の冷却パワーはP12*(P5-P4)/(P11+P12)である。
【0209】
車内温度が設定温度に達すれば、電池の冷却パワーを優先的に満たし、すべてのコンプレッサーは最大パワーで運転し、第2の膨張弁の開度を大きくし、ポンプの回転速度を向上させることにより、電池冷却分岐路の冷却パワーをPc向上させる。同時に以下の処理を行う。
【0210】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラは、第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラは、第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池61の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池62の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、電池62の冷却パワーを低下させる。
【0211】
(2)Pz≦Pfであるときに、調整すべきパワーがPc(Pc=Pf-Pz)であると、コンプレッサーの冷却パワーをそのまま維持したり、コンプレッサーの冷却パワーを低下させたり、第2の膨張弁42の開度を小さくしたり、ポンプ51の回転速度を低下させたりする。P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラは、第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラは、第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、電池62の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池61の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池62の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーを低下させる。
【0212】
車載電池の温度が第2の温度閾値(例えば、0℃)より小さく、車載電池の温度調整システムが加熱モードで動作するときに、Pz>Pfであれば、調整すべきパワーがPc(Pc=Pz-Pf)であるときに、ヒーター53の加熱パワーをPc向上させ、ポンプ51の回転速度を向上させる。同時に以下の処理を行う。
【0213】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラは、第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池61の加熱パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラは、第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池62の加熱パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池61の加熱パワーをそのまま保持するか、又は第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池61の加熱パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池62の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第2の電池62の加熱パワーを低下させる。
【0214】
Pz≦Pfであれば、調整すべきパワーがPc(Pc=Pz-Pf)であるときに、ヒーターのパワーをそのまま保持したり、加熱パワーをPc低下させたり、ポンプの回転速度を低下させたりする。同時に以下の処理を行う。
【0215】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池61の加熱パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池62の加熱パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池61の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池61の加熱パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池62の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、電池62の加熱パワーを低下させる。
【0216】
第1の電池61と第2の電池62の温度のバランスをとれるように、以下の処理を行ってよい。
【0217】
電池冷却を行う過程において、第1の電池61の温度T61と第2の電池62の温度T62との間の温度差が3℃(該温度値が所定値である)を超えれば、つまり、T61-T62>3℃であれば、電池熱管理コントローラは、第1の電池61の冷却分岐路中の弁58の開度を大きくするように制御し、第2の電池62の冷却分岐路中の弁58の開度を小さくするように制御して、第1の電池61の冷却パワーを向上させ、第2の電池62の冷却パワーを低下させることにより、第1の電池61と第2の電池62の温度のバランスを実現する。T62-T61>3℃であれば、電池熱管理コントローラは、第2の電池62の冷却分岐路中の弁58の開度を大きくするように制御し、第1の電池61の冷却分岐路中の弁58の開度を小さくするように制御して、第2の電池62の冷却パワーを向上させ、第1の電池61の冷却パワーを低下させることにより、第1の電池61と第2の電池62の温度のバランスを実現する。
【0218】
電池加熱を行う過程において、第1の電池61と第2の電池62との間の電池の温度差が3℃を超えれば、つまり、T61-T62>3℃であれば、電池熱管理コントローラは、電池61の冷却分岐路中の弁58の開度を小さくするように制御し、電池62の冷却分岐路中の弁58の開度を大きくするように制御して、第1の電池61の加熱パワーを低下させ、第2の電池62の加熱パワーを向上させることにより、第1の電池61と第2の電池62の温度のバランスを実現する。T62-T61>3℃であれば、電池熱管理コントローラは、電池62の冷却分岐路中の弁58の開度を小さくするように制御し、電池61の冷却分岐路中の弁58の開度を大きくするように制御して、第1の電池61の加熱パワーを向上させ、第2の電池62の加熱パワーを低下させることにより、第1の電池61と第2の電池62の温度のバランスを実現する。
【0219】
本願の実施形態の車載電池の温度調整システムによれば、電池温度調整モジュールにより、複数の並列接続された電池に温度調整を行う要求パワーと実際パワーを取得し、かつ複数の並列接続された電池に温度調整を行う要求パワーと実際パワーにそれぞれ基づいて複数の並列接続された電池の温度を調整する。これにより、該システムは各電池の実際の状態に応じて各電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御でき、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避する。
【0220】
図12は、本願の実施形態6に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。車載電池は複数の並列接続された電池を含み、図12に示すように、車載電池の温度調整方法は、以下のステップs1~s3を含む。
【0221】
s1では、複数の並列接続された電池の要求パワーP1をそれぞれ取得する。
【0222】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、複数の並列接続された電池の要求パワーP1をそれぞれ取得するステップは、具体的に以下を含む。各電池の温度調整開始時の第1のパラメータをそれぞれ取得し、かつ第1のパラメータに基づいて各電池の第1の要求パワーを生成する。各電池の温度調整中の第2のパラメータを取得し、かつ第2のパラメータに基づいて各電池の第2の要求パワーを生成する。各電池の第1の要求パワーと各電池の第2の要求パワーに基づいて各電池の要求パワーP1をそれぞれ生成する。
【0223】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、第1のパラメータは電池の温度調整開始時の初期温度、目標温度、及び初期温度から上記目標温度になるまでの目標時間tであり、第1のパラメータに基づいて各電池の第1の要求パワーを生成するステップは、具体的には、以下を含む。初期温度と目標温度との間の第1の温度差ΔTを取得する。第1の温度差ΔTと目標時間tに基づいて第1の要求パワーP1を生成する。
【0224】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(1)に基づいて第1の要求パワーを生成し、
ΔT*C*M/t (1)
ΔTが初期温度と目標温度との間の第1の温度差であり、tが目標時間であり、Cが電池の比熱であり、Mが電池の質量である。
【0225】
本願の一実施形態によれば、第2のパラメータは所定の時間内の各電池の平均電流Iであり、下式(2)に基づいて各電池の第2の要求パワーを生成し、
*R (2)
Iが平均電流であり、Rが電池の内部抵抗である。
【0226】
s2では、複数の並列接続された電池の実際パワーP2をそれぞれ取得する。
【0227】
本願の一実施形態によれば、複数の並列接続された電池の実際パワーP2をそれぞれ取得するステップは、具体的に以下を含む。各電池の温度を調整する流路の入口温度と出口温度を取得すると共に、冷却液が流路に流入する流速vを取得する。各電池の流路の入口温度と出口温度に基づいて第2の温度差ΔTを生成する。各電池の第2の温度差ΔT及び流速vに基づいて実際パワーP2を生成する。
【0228】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(3)に基づいて実際パワーP2を生成し、
ΔT*c*m (3)
ΔTが第2の温度差であり、cが流路中の冷却液の比熱であり、mが単位時間当たりに流路の断面積を流れる冷却液の質量であり、m=v*ρ*sであり、vが冷却液の流速であり、ρが冷却液の密度であり、sが流路の断面積である。
【0229】
s3では、それぞれ複数の並列接続された電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて複数の並列接続された電池の温度を調整する。
【0230】
本願の一実施形態によれば、要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池温度調整モジュールを制御することにより、目標時間t内に電池の温度が目標温度に達するように調整する。
【0231】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池管理コントローラにより電池に温度調整を行う必要があるか否かを判断し、電池に温度調整を行う必要があると判断するときに、各電池の初期温度(即ち、現在温度)、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tをそれぞれ取得し、目標温度と目標時間tが実際の状況に応じて予め設定されてよく、かつ式(1)に基づいて第1の要求パワーをそれぞれ計算する。同時に、電池管理コントローラにより、所定の時間内の各電池の平均電流Iを取得し、かつ式(2)に基づいて各電池の第2の要求パワーをそれぞれ計算する。次に、それぞれ各電池の第1の要求パワーと第2の要求パワーに基づいて、各電池の要求パワーP1(即ち、電池の温度を目標温度に調整する要求パワー)をそれぞれ計算する。そして、電池熱管理コントローラにより各電池の入口温度と出口温度をそれぞれ取得し、かつ流速情報を取得し、式(3)に基づいて各電池の実際パワーP2をそれぞれ計算する。最後に、それぞれ各電池のP1とP2に基づいて電池に温度調整を行う。これにより、該制御方法は、各電池の実際の状態に応じて各電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御でき、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避する。
【0232】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて、どのように電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池の温度を調整するかを説明する。
【0233】
車載電池が複数の並列接続された電池を含むときに、本願の一実施形態によれば、図10に示すように、それぞれ複数の並列接続された電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池温度調整モジュールを制御して電池の温度を調整するステップは、さらに以下を含んでよい。複数の並列接続された電池の要求パワーP1に基づいて総要求パワーPzを生成する。総要求パワーPzが車載エアコンの最大冷却パワーPと整合するか否かを判断する。整合すれば、複数の並列接続された電池の要求パワーP1に基づいて複数の並列接続された電池を冷却する。整合しなければ、エアコンの最大冷却パワーPと複数の並列接続された電池の要求パワーP1に基づいて複数の並列接続された電池を冷却する。
【0234】
具体的には、各電池の要求パワーP1に基づいて温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、つまり、各電池の要求パワーP1を加算すれば、総要求パワーPzを得ることができる。その後に、総要求パワーPzに基づいて、Pzが車載エアコンの最大冷却パワーPと整合するか否かを判断し、つまり、PzがP以下であるか否かを判断し、そうであれば、各電池の要求パワーP1に基づいて、各電池に流入する冷却液の流量を制御し、かつコンプレッサーのパワーを制御することにより各電池を冷却する。その一方、Pzが車載エアコンの最大冷却パワーPと整合せず、即ち、PzがPより大きければ、コントローラはエアコンの最大冷却パワーPと各電池の要求パワーP1に基づいて、各電池に流入する冷却液の流量を調整して割合に応じて冷却液の流量の分配を行うことにより、最大効率で各電池は降温を完了することができる。
【0235】
電池が複数で、かつ並列接続されるときに、本願の一実施形態によれば、電池の温度調整方法は、さらに以下のステップを含んでよい。複数の並列接続された電池の温度を検出する。複数の並列接続された電池のうち少なくとも1つの電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに、冷却モードに入る。複数の並列接続された電池のうち少なくとも1つの電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに、加熱モードに入る。第1の温度閾値と第2の温度閾値は実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、第1の温度閾値が40℃であってよく、第2の温度閾値が0℃であってよい。
【0236】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池管理コントローラにより各電池の温度をリアルタムに検出し、かつ判断する。そのうちのある電池の温度が40℃より高ければ、このときに該電池の温度が高過ぎることを示し、高温が該電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池に降温処理を行う必要があり、そして、電池管理コントローラにより温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、かつ電池冷却機能をオンにするという情報をエアコンシステムに送信する。
【0237】
その一方、ある電池の温度が0℃より低ければ、このときに該電池の温度が低過ぎることを示し、低温が該電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池に昇温処理を行う必要があり、電池管理コントローラにより温度調整システムが加熱モードに入るように制御し、そして、車載エアコンコントローラにより電池冷却分岐路をオフにするように制御し、かつ電池熱管理コントローラによりヒーターを起動させるように制御して、電池に加熱パワーを供給する。
【0238】
第1の電池と第2の電池の温度のバランスをとれるように、以下の処理を行ってよい。
【0239】
例として、図11に示すように、電池が第1の電池及び第2の電池を含むときに、電池冷却を行う過程において、第1の電池の温度T61と第2の電池の温度T62との間の電池の温度差が3℃(該温度値が所定値である)を超えれば、つまり、T61-T62>3℃であれば、電池熱管理コントローラは、第1の電池の冷却分岐路中の調整弁の開度を大きくするように制御し、第2の電池の冷却分岐路中の調整弁の開度を小さくするように制御して、第1の電池の冷却パワーを向上させ、第2の電池の冷却パワーを低下させることにより、第1の電池と第2の電池の温度のバランスを実現する。
【0240】
T62-T61>3℃であれば、電池熱管理コントローラにより、第2の電池の冷却分岐路中の調整弁の開度を大きくするように制御し、第1の電池の冷却分岐路中の調整弁の開度を小さくするように制御して、第2の電池の冷却パワーを向上させ、第1の電池の冷却パワーを低下させることにより、第1の電池と第2の電池の温度のバランスを実現する。
【0241】
電池加熱を行う過程において、第1の電池と第2の電池との間の電池の温度差が3℃を超えれば、つまり、T61-T62>3℃であれば、電池熱管理コントローラにより第1の電池の冷却分岐路中の調整弁の開度を小さくするように制御し、第2の電池の冷却分岐路中の調整弁の開度を大きくするように制御して、第1の電池の加熱パワーを向上させ、第2の電池の加熱パワーを低下させることにより、第1の電池と第2の電池の温度のバランスを実現する。T62-T61>3℃であれば、電池熱管理コントローラにより、第2の電池の冷却分岐路中の調整弁の開度を小さくするように制御し、第1の電池の冷却分岐路中の調整弁の開度を大きくするように制御して、第2の電池の加熱パワーを向上させ、第1の電池の加熱パワーを低下させることにより、第1の電池と第2の電池の温度のバランスを実現する。
【0242】
本願の一実施形態によれば、冷却モードにあるときに、それぞれ複数の並列接続された電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて複数の並列接続された電池の温度を調整するステップは、具体的には、以下を含む。各電池の要求パワーP1が各電池の対応する実際パワーP2より大きいか否かを判断する。ある電池の要求パワーP1が電池の対応する実際パワーP2より大きければ、該電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を冷却するコンプレッサーのパワーを向上させたり、電池の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の冷却パワーを向上させる。ある電池の要求パワーP1が電池の対応する実際パワーP2以下であれば、コンプレッサーのパワーを低下させたり、コンプレッサーのパワーをそのまま保持したり、電池の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の冷却パワーを低下させる。
【0243】
具体的には、温度調整システムが冷却モードに入るときに、それぞれコントローラにより各電池のP1とP2を取得し、かつ判断する。そのうちのある電池のP1がP2より大きければ、現在の冷却パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池の降温を完了できないことを示すため、該電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつ車載エアコンコントローラによりパワー差に基づいてコンプレッサー1のパワーを向上させたり、該電池の冷却液の流量を増加させたりすることにより、該電池の冷却パワーを向上させ、P1とP2のパワー差が大きければ大きいほど、コンプレッサーのパワーを多く向上させ該電池の冷却液の流量を多く増加させることにより、所定の時間t内に該電池の温度を目標温度に下げる。その一方、そのうちのある電池のP1がP2以下であれば、車載エアコンコントローラにより、コンプレッサー1のパワーをそのまま保持するか又はコンプレッサーのパワーを適切に低下させたり、該電池の冷却液の流量を減少させたりすることにより、電池の冷却パワーを低下させる。すべての電池の温度が35℃より低いときに、電池の冷却は完了し、CAN通信により、温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンに送信し、かつ電池の冷却分岐路をオフにするように制御する。温度調整システムが冷却モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が35℃より高い電池が依然として存在すれば、電池の冷却パワーを適切に向上させて、該電池が降温をできるだけ速く完了する。
【0244】
本願の一実施形態によれば、温度調整システムが加熱モードに入るときに、それぞれ複数の並列接続された電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて複数の並列接続された電池の温度を調整するステップは、具体的には、以下を含む。各電池の要求パワーP1が各電池の対応する実際パワーP2より大きいか否かを判断する。ある電池の要求パワーP1が電池の対応する実際パワーP2より大きければ、該電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を冷却するヒーターのパワーを向上させたり、電池の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の加熱パワーを向上させる。
【0245】
具体的には、温度調整システムが加熱モードに入るときに、各電池のP1とP2をそれぞれ取得し、かつ判断する。そのうちのある電池のP1がP2より大きければ、現在の加熱パワー又は冷却液の流量で目標時間t内に該電池の昇温を完了できないことを示すため、該電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつ電池熱管理コントローラによりパワー差に基づいて電池を加熱するヒーターのパワーを向上させたり、電池の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、該電池が目標時間t内に温度調整を完了する。P1とP2の差が大きければ大きいほど、ヒーターのパワーの向上と該電池回路の冷却液の流量の増加が多い。ある電池のP1がP2以下であれば、電池熱管理コントローラにより、ヒーターのパワーを適切に低下させたり、ヒーターのパワーをそのまま保持したり、該電池回路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、該電池の加熱パワーを低下させることができる。すべての電池の温度が所定温度、例えば10℃より高いときに、電池の加熱は完了し、CAN通信により温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンに送信し、かつ電池熱管理コントローラによりヒーターが動作を停止させるように制御する。温度調整システムが加熱モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が10℃より低い電池が依然として存在すれば、電池熱管理コントローラによりヒーターのパワーとポンプの回転速度を適切に向上させて、該電池が昇温をできるだけ速く完了する。
【0246】
本願の一実施形態によれば、車載電池の温度調整方法は、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より小さければ、ポンプの回転速度を低下させるステップと、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より大きければ、ポンプの回転速度を向上させるステップとをさらに含んでよい。
【0247】
具体的には、温度調整システムが加熱モード又は冷却モードに入るときに、ある電池のP1がP2より小さければ、電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を低下させるように制御して、電気エネルギーを節約する。ある電池のP1がP2より大きければ、ヒーター、コンプレッサーのパワーを向上させるか又は該電池の所在する回路の冷却液の流量を増加させるように制御することに加え、また、ポンプの回転速度を向上させるように制御して、単位時間当たりに冷却流路の断面積を流れる冷却液の質量を増加させることにより、該電池の実際パワーP2を向上させて、目標時間t内に温度調整を実現する。
【0248】
当業者が本願をより明確に理解できるように、以下、具体的な実施形態を組み合わせて、車載電池システムの温度調整方法を説明する。
【0249】
図11に示すように、電池は第1の電池と第2の電池を含んでよく、Pz=P11+P12、P11が第1の電池の要求パワーであり、P12が第2の電池の要求パワーであり、Pzが第1の電池と第2の電池の要求パワーの和(総要求パワーPz)である。Pf=P21+P22、P21が電池の温度調整の実際パワーであり、P22が電池の温度調整の実際パワーであり、Pfが第1の電池と第2の電池の温度調整の実際パワーの和である。
【0250】
ある電池の温度が第1の温度閾値(例えば、40℃)より大きいときに、車載電池の温度調整システムが冷却モードで動作し、総電池冷却要求パワーPzと車内冷却要求パワーP4の和がコンプレッサーの最大冷却パワーPより小さく、即ちPz+P4<Pであれば、車載エアコンコントローラによりコンプレッサー1がPz+P4の冷却パワーで運転するように制御する。この場合に、Pz<P、P4<Pであると理解すべきでる。
【0251】
Pz+P4>Pであれば、第1の電池又は第2の電池の温度が45℃より大きいか否かを判断し、45℃より大きければ、電池冷却に冷却パワーを優先的に供給し、コントローラはコンプレッサーが最大冷却パワーPで運転するように制御し、電池冷却分岐路の冷却パワーはPzであり、車内冷却分岐路の冷却パワーはP-Pzに等しい。
【0252】
電池の温度が45℃以下であると判断し、かつ車内温度が設定温度に達しなければ、車内に冷却パワーを優先的に供給し、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーが最大冷却パワーPで運転するように制御し、車内冷却分岐路の冷却パワーがP4であり、電池冷却分岐路の冷却パワーがP-P4に等しい。第1の電池の冷却分岐路と第2の電池の冷却分岐路は割合に応じて冷却パワーを低下させる。割合は、(P-P4)/(P11+P12)であってよい。車内温度が設定温度に達すれば、電池の冷却パワーを優先的に満たす。
【0253】
第1の電池と第2の電池の温度調整の実際パワーの和はPfであり、Pz>PFであるときに、調整すべきパワーはPc(Pc=Pz-Pf)である。Pz+P4+Pc≦Pであれば、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーの冷却パワーを向上させ、第2の膨張弁の開度を大きくし、かつ電池熱管理コントローラによりポンプ51の回転速度を向上させる必要がある。同時に以下の処理を行う。
【0254】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラにより、第1の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラにより、第2の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第1の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第2の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、第2の電池の冷却パワーを低下させる。
【0255】
Pz+P4+Pc>P(かつPz+Pc≦P)であれば、以下の判断を行う。
【0256】
第1の電池と第2の電池の温度が45℃より大きいか否かを判断する。45℃より大きければ、電池冷却に冷却パワーを優先的に供給し、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーが最大冷却パワーで運転するように制御し、同時に電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を向上させ、車載エアコンコントローラにより電池冷却分岐路の冷却パワーをPc向上させ、車内冷却分岐路のパワーをPc低下させるように制御する。P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラにより、第1の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラにより、第2の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、電池熱管理コントローラにより第1の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第1の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、電池の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第2の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、第2の電池の冷却パワーを低下させる。
【0257】
電池の温度が45℃以下であり、かつ車内温度が設定温度に達しなければ、車内に冷却パワーを優先的に供給し、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーが最大冷却パワーPで運転するように制御し、電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を向上させ、車内冷却分岐路の冷却パワーがP4であり、電池冷却分岐路の冷却パワーがP-P4に等しい。第1の電池61の冷却分岐路と第2の電池62の冷却分岐路は割合に応じて冷却パワーを低下させる。割合は、(P-P4)/(P11+P12)であってよい。第1の電池の冷却パワーはP11*(P-P4)/(P11+P12)であり、第2の電池の冷却パワーはP12*(P-P4)/(P11+P12)である。
【0258】
車内温度が設定温度に達すれば、電池の冷却パワーを優先的に満たし、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーが最大パワーPで運転することにより制御し、第2の膨張弁の開度を大きくし、電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を向上させることにより、電池冷却分岐路の冷却パワーをPc向上させる。同時に以下の処理を行う。
【0259】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラにより、第1の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラにより、第2の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、電池熱管理コントローラにより第1の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第1の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、電池の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第2の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、第2の電池の冷却パワーを低下させる。
【0260】
Pz≦Pfであるときに、調整すべきパワーがPc(Pc=Pf-Pz)であると、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーの冷却パワーをそのまま維持したり、コンプレッサーの冷却パワーを低下させたり、第2の膨張弁の開度を小さくしたり、電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を低下させたりする。P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラにより、第1の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラにより、第2の電池の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、電池の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、電池熱管理コントローラにより第1の電池61の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第1の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、電池熱管理コントローラにより第2の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第2の電池の所在する回路の調整弁の開度を小さくするように制御することにより、第2の電池の冷却パワーを低下させる。
【0261】
車載電池の温度が第2の温度閾値(例えば、0℃)より小さく、車載電池の温度調整システムが加熱モードで動作するときに、Pz>Pfであれば、調整すべきパワーがPc(Pc=Pz-Pf)であるときに、ヒーターの加熱パワーをPc向上させ、ポンプの回転速度を向上させる。同時に以下の処理を行う。
【0262】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラにより、第1の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池の加熱パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラにより、第2の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池の加熱パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第1の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池の加熱パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、電池熱管理コントローラにより第2の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は第2の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、第2の電池の加熱パワーを低下させる。
【0263】
Pz≦Pfであれば、調整すべきパワーがPc(Pc=Pz-Pf)であるときに、電池熱管理コントローラによりヒーターのパワーをそのまま保持したり、加熱パワーをPc低下させたり、ポンプの回転速度を低下させたりするように制御する。同時に以下の処理を行う。
【0264】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラにより、第1の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池の加熱パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、第2の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池の加熱パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池の加熱パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第1の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池の加熱パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第2の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、電池の加熱パワーを低下させる。
【0265】
本願の一実施形態によれば、電池に冷却剤を供給するコンプレッサーが複数あり、電池の温度調整方法は、さらに以下を含んでよい。各電池の要求パワーP1と各コンプレッサーの最大冷却パワーに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断する。冷却モードにあるときに、対応する数量のコンプレッサーを起動させるように制御する。
【0266】
好ましくは、各電池の要求パワーP1と各コンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断するステップは、具体的には、各電池の要求パワーP1に基づいて総温度調整実際パワーPzを生成するステップと、総要求パワーPzが単一コンプレッサーの最大冷却パワーPより大きいか否かを判断するステップと、単一コンプレッサーの最大冷却パワーPより大きければ、複数のコンプレッサーを同時に起動させるように制御するステップとを含む。
【0267】
具体的には、コンプレッサーが複数あるときに、それに応じて、車内冷却分岐路と電池冷却分岐路は複数ある。例として、電池に冷却剤を供給するコンプレッサーが2つあり、車内冷却分岐路と電池冷却分岐路がいずれも2つあるときに、温度調整システムが冷却モードに入るときに、それぞれ各電池のP1を取得し、かつ各電池のP1を加算して温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができる。Pzが単一コンプレッサーの最大冷却パワーP以下であれば、1つのコンプレッサーを起動させるように制御すればよい。その一方、Pzが単一コンプレッサーの最大冷却パワーPより大きければ、2つのコンプレッサーを同時に起動させて動作させるように制御して、電池の降温冷却パワーの要求を満たす。
【0268】
電池に冷却剤を供給するコンプレッサーが複数あり、複数のコンプレッサーの最大冷却パワーの和がP5であると、電池冷却パワーの調整は以下のとおりであってよい。
【0269】
(1)Pz>Pfであるときに、調整すべきパワーはPc(Pc=Pz-Pf)であり、Pz+P4+Pc≦P5であれば、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーの冷却パワーをPc向上させ、第2の膨張弁の開度を大きくするように制御し、電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を向上させる。同時に以下の処理を行う。
【0270】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラにより、第1の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラにより、第2の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第1の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第2の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、電池の冷却パワーを低下させる。
【0271】
Pz+P4+Pc>P5(かつPz+Pc≦P5)であれば、以下の判断を行う。
【0272】
電池の温度が45℃より大きいか否かを判断する。45℃より大きければ、電池冷却に冷却パワーを優先的に供給し、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーが最大冷却パワーで運転するように制御し、同時にポンプの回転速度を向上させ、電池冷却分岐路の冷却パワーをPc向上させ、車内冷却分岐路のパワーをPc低下させる。
【0273】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラにより、第1の電池の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、電池の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラにより、第2の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第1の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第2の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、第2の電池の冷却パワーを低下させる。
【0274】
電池の温度が45℃以下であり、かつ車内温度が設定温度に達しなければ、車内に冷却パワーを優先的に供給し、車載エアコンコントローラによりすべてのコンプレッサーが最大冷却パワーで運転するように制御し、そして、電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を向上させ、車内冷却分岐路の冷却パワーがP4であり、電池冷却分岐路の冷却パワーが=P5-P4である。第1の電池の冷却分岐路と第2の電池の冷却分岐路は割合に応じて冷却パワーを低下させる。割合は、(P5-P4)/(P11+P12)であってよい。第1の電池61の冷却パワーはP11*(P5-P4)/(P11+P12)であり、第2の電池62の冷却パワーはP12*(P5-P4)/(P11+P12)である。
【0275】
車内温度が設定温度に達すれば、電池の冷却パワーを優先的に満たし、車載エアコンコントローラによりすべてのコンプレッサーが最大パワーで運転することにより制御し、第2の膨張弁の開度を大きくし、電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を向上させることにより、電池冷却分岐路の冷却パワーをPc向上させる。同時に以下の処理を行う。
【0276】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラにより、第1の電池の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラにより、第2の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第1の電池の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第2の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、電池の冷却パワーを低下させる。
【0277】
(2)Pz≦Pfであるときに、調整すべきパワーがPc(Pc=Pf-Pz)であると、電池熱管理コントローラによりコンプレッサーの冷却パワーをそのまま維持したり、コンプレッサーの冷却パワーを低下させたり、第2の膨張弁の開度を小さくしたり、電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を低下させたりする。P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラにより、第1の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラにより、第2の電池の所在する回路の弁の開度を大きくするように制御することにより、電池の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第1の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池の冷却パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第2の電池の所在する回路の弁の開度を小さくするように制御することにより、第2の電池の冷却パワーを低下させる。
【0278】
車載電池の温度が第2の温度閾値(例えば、0℃)より小さく、車載電池の温度調整システムが加熱モードで動作するときに、Pz>Pfであれば、調整すべきパワーがPc(Pc=Pz-Pf)であるときに、ヒーター53の加熱パワーをPc向上させ、ポンプ51の回転速度を向上させる。同時に以下の処理を行う。
【0279】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラにより、第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池61の加熱パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラにより、第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池62の加熱パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池61の加熱パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池61の加熱パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池62の冷却パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第2の電池62の加熱パワーを低下させる。
【0280】
Pz≦Pfであれば、調整すべきパワーがPc(Pc=Pz-Pf)であるときに、ヒーターのパワーをそのまま保持したり、加熱パワーをPc低下させたり、ポンプの回転速度を低下させたりする。同時に以下の処理を行う。
【0281】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、電池熱管理コントローラにより、第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第1の電池61の加熱パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、電池熱管理コントローラにより、第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を大きくするように制御することにより、第2の電池62の加熱パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池61の冷却パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第1の電池61の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、第1の電池61の加熱パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池62の冷却パワーをそのまま保持するか、又は電池熱管理コントローラにより第2の電池62の所在する回路の弁58の開度を小さくするように制御することにより、電池62の加熱パワーを低下させる。本願の実施形態の車載電池の温度調整方法によれば、まず、複数の並列接続された電池の要求パワーをそれぞれ取得し、次に、複数の並列接続された電池の温度調整の実際パワーをそれぞれ取得し、最後に、それぞれ複数の並列接続された電池の要求パワーと温度調整の実際パワーに基づいて複数の並列接続された電池の温度を調整する。これにより、該方法は、各電池の実際の状態に応じて各電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御でき、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避する。
【0282】
車載電池の数量が複数あり、かつ各電池が相互に独立して設置されるときに、本願は、別の車載電池の温度調整システムをさらに提供する。
【0283】
具体的には、図13に示すように、該温度調整システムは、複数のコンプレッサー1、複数のコンデンサ2、複数の電池冷却分岐路4及び複数の電池温度調整モジュール5を含む。
【0284】
複数のコンデンサ2は複数のコンプレッサー1と接続され、複数の電池冷却分岐路4は複数のコンプレッサー1と複数のコンデンサ2との間に接続され、かつ複数の電池冷却分岐路4は相互に連通する。電池温度調整モジュール5は、複数の電池6及び複数の電池冷却分岐路4とそれぞれ接続されて、複数の電池の要求パワーP1と実際パワーP2をそれぞれ取得し、かつ要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池の温度を調整し、そして、要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて複数のコンプレッサー1が電池6の対応する電池冷却分岐路4に冷却力を供給する開度を調整する。
【0285】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、温度調整の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池の温度を調整するステップは、具体的には、以下を含む。要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて、目標時間t内に電池の温度が目標温度に達するように調整する。
【0286】
つまり、電池温度調整モジュール5が要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて各電池6に温度調整を行うときに、目標時間t内に各電池6の実際の状態に応じて車載電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御することにより、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整することを確保することができる。
【0287】
図13に示すように、コンプレッサー1、電池冷却分岐路4、電池温度調整モジュール5、電池6が2つあることを例として、電池冷却分岐路4は、第1の電池冷却分岐路401と第2の電池冷却分岐路402を含んでよく、それぞれが第1の電池61と第2の電池62に対応する。
【0288】
エアコンの冷却液が電池温度調整モジュール5と連通しないときに、電池冷却分岐路4は2つの配管を有し、第1の配管はコンプレッサー1と連通し、第2の配管は電池温度調整モジュール5と連通し、第1の配管と第2の配管が相互に独立し隣接して設置される。第1の電池61の所在する第1の電池冷却分岐路401を例として、第1の電池61の温度が高過ぎるときに、車載エアコン冷却機能がオンにされ、電池冷却機能がオンにされ、第1の配管と第2の配管内の冷却液(例えば、冷媒)の流れ方向は、それぞれ、コンプレッサー1-コンデンサ2-第1の電池冷却分岐路401-コンプレッサー1であり、第1の電池冷却分岐路401-電池温度調整モジュール5-第1の電池61-電池温度調整モジュール5-第1の電池冷却分岐路401である。
【0289】
各電池温度調整モジュール5が対応する電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて、対応する電池冷却分岐路4に流入する冷却液の流量を調整して電池の冷却パワー/加熱パワーを調整することにより、目標時間t内に各電池の実際の状態に応じて電池の温度を調整することを確保することができる。同時に、複数の電池冷却分岐路4が相互に連通するため、電池温度調整モジュール5は各電池の温度に基づいて、電池の対応する電池冷却分岐路4の冷却力の開度を調整することにより、各電池間の温度のバランスを保証することができる。これにより、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに、目標時間内に温度を調整して、車載電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避し、かつ各電池間の温度のバランスを保証することができる。
【0290】
本願の一実施形態によれば、図13に示すように、電池冷却分岐路4は熱変換器41を含んでよく、熱変換器41は第1の配管と第2の配管を含み、第2の配管は電池温度調整モジュール5と接続され、第1の配管はコンプレッサー1と連通し、第1の配管と第2の配管が相互に独立し隣接して設置される。
【0291】
電池温度調整モジュール5は、電池の温度を調整し、電池6内に設置された流路(具体的に図示せず)と、流路と熱変換器41との間に接続されたポンプ51と、媒体容器52と、ヒーター53と、コントローラ(具体的に図示せず)とを含んでよい。コントローラは、複数の電池6の要求パワーP1と電池の実際パワーP2を取得し、かつ各電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池6の温度を調整する。電池冷却分岐路4は、第2の膨張弁42と第2の電子弁43をさらに含んでよい。
【0292】
図13に示すように、第1の電池冷却分岐路401は、第1の調整弁411と第3の調整弁413をさらに含んでよく、第2の電池冷却分岐路402は、第2の調整弁412及び第4の調整弁414をさらに含んでよく、各調整弁の接続方式について、具体的には図13を参照すればよく、ここで説明を省略する。
【0293】
図13に示すように、コンプレッサー11は、第1の調整弁411と第2の調整弁412により第1の電池冷却分岐路401と第2の電池冷却分岐路402に流れる冷媒の流量をそれぞれ制御する。コンプレッサー12は、第3の調整弁413及び第4の調整弁414により第1の電池冷却分岐路401と第2の電池冷却分岐路402に流れる冷媒の流量をそれぞれ制御する。電池冷却分岐路401の冷却パワーは、第1の調整弁411と第3の調整弁413の冷媒流量に関連する。電池冷却分岐路402の冷却パワーは、第2の調整弁412と第4の調整弁414の冷媒流量に関連する。
【0294】
電池冷却分岐路4において熱変換器41が設置されなくてよく、熱変換器41がないときに、電池冷却分岐路4を流れるのは冷媒であると理解すべきである。熱変換器41が設置されていれば、電池冷却分岐路4の第1の配管を流れるのは冷媒であり、第2の配管を流れるのは冷却液である。
【0295】
本願の一実施形態によれば、図13に示すように、電池温度調整モジュール5は、流路の入口に設置された第1の温度センサ55、流路の出口に設置された第2の温度センサ56、及び流速センサ57をさらに含んでよい。流路の入口と出口の位置は絶対的ではなく、ポンプ51の回転方向に応じて確定されると理解すべきである。
【0296】
具体的には、熱変換器41はプレート式熱交換器であってよく、プレート式熱交換器が車載エアコンの内部に取り付けられてよく、冷却剤回路全体を車載エアコンの内部にして、車載エアコンの出荷デバッグに役立ち、車載エアコンを個別に供給し組み立てることができ、同時に取付過程において車載エアコンに冷却剤を1回追加すればよい。冷却液は流路の入口から電池6の内部に流入し、流路の出口から流出することにより、電池6と冷却液との間の熱変換を実現する。
【0297】
ポンプ51は主に動力を供給し、媒体容器52は主に冷却液を貯蔵し、かつ温度調整システムに添加される冷却液を収容し、温度調整システムにおける冷却液が減少するときに、媒体容器52中の冷却液から自動的に補充することができる。ヒーター53は、PTCヒーターであってよく、コントローラとCAN通信を行い、車載電池の温度調整システムに加熱パワーを供給し、コントローラによって制御される。かつヒーター53は電池6と直接接触せず、高い安全性、信頼性及び実用性を持つ。
【0298】
第1の温度センサ55は流路入口における冷却液の温度を検出し、第2の温度センサ56は流路出口における冷却液の温度を検出する。流速センサ57は対応する配管内の冷却液の流速情報を検出する。第2の電子弁43は対応する電池冷却分岐路4の開閉を制御し、第2の膨張弁42は対応する電池冷却分岐路4中の冷却液の流量を制御することができる。コントローラは、第1~第4の調整弁411~414の開度を調整すると共に、第1の電池61と第2の電池62の2つの冷却分岐路の冷却液の流量を制御することにより、2つの電池の温度をバランスさせることができる。同時に、コントローラは、さらに車載エアコン及びヒーター53とCAN通信を行い、かつポンプ51の回転速度を制御し、冷却液の温度及び流量情報を監視することができ、さらに電池6を管理し、電池6の電圧及び温度情報を検出し、車載電池の温度調整システムの開閉を制御することができる。
【0299】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて各電池温度調整モジュール5が対応する電池6の要求パワーP1と実際パワーP2をどのように取得するかを説明する。
【0300】
本願の一実施形態によれば、コントローラは各電池の温度調整開始時の第1のパラメータをそれぞれ取得し、第1のパラメータに基づいて各電池の第1の要求パワーを生成し、そして、各電池の温度調整中の第2のパラメータをそれぞれ取得し、第2のパラメータに基づいて各電池の第2の要求パワーを生成すると共に、各電池の第1の要求パワーと各電池の第2の要求パワーに基づいて各電池の要求パワーP1を生成する。
【0301】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、第1のパラメータは電池6の温度調整開始時の初期温度、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tであり、コントローラは、初期温度と目標温度との間の第1の温度差ΔTを取得し、かつ第1の温度差ΔTと目標時間tに基づいて第1の要求パワーを生成する。
【0302】
好ましくは、コントローラは下式(1)に基づいて第1の要求パワーを生成し、
ΔT*C*M/t (1)
ΔTが初期温度と目標温度との間の第1の温度差であり、tが目標時間であり、Cが電池6の比熱であり、Mが電池6の質量である。
【0303】
第2のパラメータは所定の時間内の各電池6の平均電流Iであり、コントローラは下式(2)に基づいて第2の要求パワーを生成し、
*R (2)
Iが平均電流であり、Rが電池6の内部抵抗である。
【0304】
電池6を冷却するときに、P1=ΔT*C*M/t+I*R、電池6を加熱するときに、P1=ΔT*C*M/t-I*R。
【0305】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、それぞれ各電池6の所在する回路の第1の温度センサ55によって検出された入口温度と第2の温度センサ56によって検出された出口温度に基づいて、各電池の第2の温度差ΔTを生成し、かつ各電池の第2の温度差ΔT、及び流速センサ57によって検出された流速vに基づいて各電池の実際パワーP2を生成する。
【0306】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(3)に基づいて実際パワーP2を生成し、
ΔT*c*m (3)
ΔTが第2の温度差であり、cが流路中の冷却液の比熱であり、mが単位時間当たりに流路の断面積を流れる冷却液の質量であり、m=v*ρ*sであり、vが冷却液の流速であり、ρが冷却液の密度であり、sが流路の断面積である。
【0307】
具体的には、車両がパワーアップされると、コントローラは車両に温度調整を行う必要があるか否かを判断し、車両に温度調整を行う必要があると判断すれば、温度調整機能をオンにし、かつ低い回転速度情報をポンプ51に送信し、ポンプが初期設定回転速度(例えば、低い回転速度)で動作を開始させる。その後に、コントローラは各電池6の初期温度(即ち、現在の温度)、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tを取得し、目標温度と目標時間tが実際の状況に応じて予め設定されてよく、そして式(1)に基づいて各電池の第1の要求パワーを計算する。同時に、コントローラは、所定の時間内の各電池6の平均電流Iをそれぞれ取得し、式(2)に基づいて各電池の第2の要求パワーを計算する。その後に、コントローラは、それぞれ各電池6の第1の要求パワーと第2の要求パワーに基づいて要求パワーP1(即ち、目標時間内に電池6の温度を目標温度に調整する要求パワー)を計算する。そして、コントローラは、各電池の対応して設置された第1の温度センサ55と第2の温度センサ56の検出温度情報をそれぞれ取得し、かつ流速センサ57によって検出された流速情報をそれぞれ取得し、式(3)に基づいて各電池6の実際パワーP2をそれぞれ計算する。最後に、コントローラは、対応する電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて、対応する電池冷却分岐路4に流入する冷却液の流量を調整して電池の冷却パワーを調整するか、又はヒーターを調整して加熱パワーを調整することにより、目標時間t内に各電池の実際の状態に応じて電池の温度を調整することを確保することができる。
【0308】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて、どのように各電池6の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて各電池6の温度を調整するかを説明する。
【0309】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、各電池の要求パワーP1に基づいて総要求パワーPzを生成し、かつ複数のコンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5を生成し、総要求パワーPzが複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5より大きいか否かを判断し、総要求パワーPzが複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5より大きいときに、コントローラは、複数のコンプレッサー1から電池の対応する電池冷却分岐路4への冷却力の開度を最大に調整し、総要求パワーPzが複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5以下であるときに、コントローラは、総要求パワーPzと総最大冷却パワーP5の差に基づいて電池6の対応する電池冷却分岐路4の冷却力の開度を調整する。
【0310】
具体的には、図13に示すように、電池を冷却するときに、コントローラは、各電池の要求パワーP1に基づいて温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、つまり、各電池の要求パワーP1を加算すれば、総要求パワーPzを得ることができ、同時にコントローラは、各コンプレッサー1の最大冷却パワーPに基づいて複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5を計算し、つまり、各コンプレッサー1の最大冷却パワーPを加算すれば総最大冷却パワーP5を得ることができる。その後に、コントローラは、Pz>P5であるか否かを判断し、そうであれば、コントローラは各第2の膨張弁42の開度を最大に調整するように制御して、各電池の冷却回路4に流入する冷却液の流量を増加させることにより、電池が目標時間内に降温を完了することができる。 Pz≦P5であれば、コントローラはPzとP5との間の差に基づいて各第2の膨張弁42の開度を調整し、PzとP5の差の絶対値が大きければ大きいほど、第2の膨張弁42の開度が小さく、エネルギーを節約するという目的を達成する。
【0311】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに、複数の電池の温度を検出し、かつ複数の電池6のうちのいずれか1つの電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、複数の電池のうちのいずれか1つの電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに温度調整システムが加熱モードに入るように制御する。第1の温度閾値と第2の温度閾値は実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、第1の温度閾値が40℃であってよく、第2の温度閾値が0℃であってよい。
【0312】
具体的には、車両がパワーアップされると、コントローラは各電池6の温度をそれぞれリアルタムに検出し、かつ判断する。そのうちのある電池6の温度が40℃より高ければ、このときに該電池6の温度が高過ぎることを示し、高温が該電池6の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池6に降温処理を行う必要があり、コントローラは温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、かつ電池冷却機能をオンにするという情報をエアコンシステムに送信し、かつ対応する第2の電子弁43を開弁するように制御することにより、冷却液と電池6は熱変換を行って該電池6の温度を下げる。
【0313】
ある電池6の温度が0℃より低ければ、このときに該電池6の温度が低過ぎることを示し、低温が該電池6の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池6に昇温処理を行う必要があり、コントローラは温度調整システムが加熱モードに入るように制御し、第2の電子弁43を閉弁するように制御し、かつ対応するヒーター53を起動させるように制御することにより、温度調整システムに加熱パワーを供給する。温度調整システムが加熱モードで動作するときに、ヒーター53は加熱パワーを供給し、第1の電池61を加熱することを例として、第1の電池61の所在する回路中の冷却液の流れ方向は、媒体容器52-熱変換器41-ヒーター53(起動)-ポンプ51-第1の温度センサ55-第1の電池61-第2の温度センサ56-流速センサ57-媒体容器52であり、このように循環して、電池の第1の電池61の昇温を実現する。
【0314】
本願の一実施形態によれば、冷却モードにあるときに、コントローラは、ある電池の要求パワーP1が電池の対応する実際パワーP2より大きいときに、該電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を冷却するコンプレッサー1のパワーを向上させたり、電池6の対応する電池冷却分岐路4の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の冷却パワーを向上させ、そして、ある電池の要求パワーP1が電池の対応する実際パワーP2以下であるときに、コンプレッサーのパワーを低下させるか又はコンプレッサーのパワーをそのまま保持したり、電池6の対応する電池冷却分岐路4の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の冷却パワーを低下させる。
【0315】
具体的には、冷却モードで動作するときに、コントローラは各電池6のP1とP2をそれぞれ取得し、かつ判断する。そのうちのある電池6のP1がP2より大きければ、現在の冷却パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池6の降温を完了できないことを示すため、コントローラは該電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて該電池を冷却するコンプレッサー1のパワーを向上させたり、該電池の所在する電池冷却分岐路4の冷却液の流量を増加させたりすることにより、該電池の冷却パワーを向上させ、P1とP2のパワー差が大きければ大きいほど、対応するコンプレッサー1のパワーを多く向上させ該電池の冷却液の流量を多く増加させることにより、所定の時間t内に該電池の温度を目標温度に下げる。その一方、そのうちのある電池6のP1がP2以下であれば、該電池を冷却するコンプレッサー1のパワーをそのまま保持するか又はコンプレッサー1のパワーを適切に低下させたり、該電池の所在する電池冷却分岐路4の冷却液の流量を減少させたりすることにより、電池の冷却パワーを低下させる。すべての電池6の温度が35℃より低いときに、電池6の冷却は完了し、コントローラはCAN通信により車載エアコンに温度調整機能をオフにするという情報を送信し、すべての第2の電子弁43を閉弁するように制御する。温度調整システムが冷却モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、電池6の温度が依然として35℃より高ければ、コントローラは対応するコンプレッサー1のパワー又はポンプの回転速度を適切に向上させて、該電池が降温をできるだけ速く完了する。
【0316】
本願の一実施形態によれば、加熱モードにあるときに、コントローラは、ある電池の要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、該電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を加熱するヒーター53のパワーを向上させて電池の加熱パワーを向上させ、そして、ある電池の要求パワーP1が実際パワーP2以下であるときに、ヒーター53のパワーを低下させたり、ヒーター53のパワーをそのまま保持したりする。
【0317】
具体的には、加熱モードにあるときに、コントローラは各電池6のP1とP2をそれぞれ取得し、かつ判断する。そのうちのある電池6のP1がP2より大きければ、現在の加熱パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池6の昇温を完了できないことを示すため、コントローラは、該電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池6を加熱するヒーター53のパワーを向上させたりすることにより、該電池が目標時間内に温度調整を完了する。P1とP2の差が大きければ大きいほど、ヒーター53のパワーの向上が多い。その一方、ある電池のP1がP2以下であれば、コントローラは、ヒーター53のパワーを適切に低下させて電気エネルギーを節約するか、ヒーター53のパワーをそのまま保持することができる。すべての電池6の温度が所定温度、例えば10℃より高いときに、電池6の加熱は完了し、コントローラはヒーター53が動作を停止させるように制御する。温度調整システムが加熱モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が10℃より低い電池6が依然として存在すれば、コントローラはヒーター53のパワーを適切に向上させて、該電池が昇温をできるだけ速く完了する。
【0318】
例として、図13に示すように、第1の電池61と第2の電池62の加熱機能は相互に独立し、第1の電池61と第2の電池62はそれぞれ1つのヒーターで加熱されるため、第1の電池61のみを例として電池加熱機能のパワー調整を説明する。(P11が第1の電池61の要求パワーであり、P21が第1の電池61の実際パワーであり、P11とP21のパワー差がP31であると仮定する)
P11>P21であれば、調整すべきパワーがP31(P31=P11-P21)であるときに、ヒーター53の加熱パワーをP31向上させ、かつポンプ51の回転速度を向上させる。
【0319】
P11≦P21であれば、調整すべきパワーがP31(P31=P11-P21)であるときに、ヒーター53のパワーをそのまま保持したり、ヒーター53のパワーをP31低下させたり、ポンプ51の回転速度を低下させたりする。
【0320】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より小さいときに、ポンプ51の回転速度を低下させ、そして、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より大きいときに、ポンプ51の回転速度を向上させる。
【0321】
具体的には、温度調整システムが加熱モード又は冷却モードに入るときに、ある電池6のP1がP2より小さければ、コントローラは対応するポンプ51の回転速度を低下させるように制御して、電気エネルギーを節約する。ある電池6のP1がP2より大きければ、コントローラは対応するヒーター53又はコンプレッサー1のパワーを向上させるか又は該電池の所在する回路の冷却液の流量を増加させるように制御することに加え、また、ポンプ51の回転速度を向上させるように制御して、単位時間当たりに冷却流路の断面積を流れる冷却液の質量を増加させることにより、該電池の実際パワーP2を向上させて、目標時間t内に温度調整を実現することができる。
【0322】
本願の一実施形態によれば、電池に冷却剤を供給するコンプレッサー1が複数あれば、コントローラは、さらに各電池の要求パワーP1と各コンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断し、かつ温度調整システムが冷却モードにあるときに、対応する数量のコンプレッサー1を起動させるように制御する。
【0323】
好ましくは、コントローラは、各電池の要求パワーP1に基づいて総要求パワーPzを生成することができ、コントローラは、総要求パワーPzが単一コンプレッサーの最大冷却パワーPより大きいと判断するときに、複数のコンプレッサー1を同時に起動させるように制御する。
【0324】
具体的には、図13に示すように、コンプレッサー1が2つあることを例として、温度調整システムが冷却モードに入るときに、コントローラは、各電池6のP1、各電池の実際パワーP2及び単一コンプレッサーの最大冷却パワーPをそれぞれ取得し、かつ各電池のP1を加算すれば温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、各電池の実際パワーP2を加算すれば総温度調整の実際パワーPfを得て、各コンプレッサーの最大冷却パワーを加算すればすべてのコンプレッサーの最大冷却パワーの和P5を計算することができる。第1の電池61の要求パワーはP11であり、第2の電池62の要求パワーはP12である。第1の電池61の実際パワーはP21であり、第2の電池62の実際パワーはP22である。各コンプレッサーの最大冷却パワーPは等しい。
【0325】
Pz≦Pであれば、1つのコンプレッサー1を動作させて、冷却パワーを供給するように制御してもよく、2つのコンプレッサー1を同時に動作させるように制御してもよい。P<Pz≦P5であれば、2つのコンプレッサー1を同時に動作させる必要があり、各コンプレッサーの初期冷却パワーはPz/2である。Pz≦P5であれば、車載エアコンコントローラによりコンプレッサー1がPz冷却パワーで運転するように制御し、かつ第1~第4の調整弁の開度を調整することにより、第1の電池冷却分岐路401の初期冷却パワーをP11冷却パワーにして冷却し、第2の電池冷却分岐路402の初期冷却パワーをP21冷却パワーにして冷却する。Pz>P5であれば、各コンプレッサーが最大冷却パワーPで運転し、かつ第1の電池冷却分岐路401の初期冷却パワーをP5*[P11/(P11+P12)]冷却パワーにして冷却し、第2の電池冷却分岐路402の初期冷却パワーをP5*[P12/(P11+P12)]冷却パワーにして冷却することができる。
【0326】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに、冷却モードにあるときに、電池6間の温度差が設定値を超えるときに、温度が高い電池6の冷却パワーを向上させて、電池6間の温度差を低下させ、加熱モードにあるときに、電池間の温度差が設定値を超えるときに、温度が低い電池6の加熱パワーを向上させる。
【0327】
温度調整システムが冷却モードで動作するときに、図13に示すように、コントローラは、第1の電池61と第2の電池62の要求パワーP1をそれぞれ計算し、その後にそれぞれ各電池のP1とコンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて対応する第2の膨張弁42の開度を調整する。冷却過程において、コントローラは、それぞれ各電池の実際パワーP2に基づいて第2の膨張弁42の開度を継続して調整する。同時に、コントローラは第1の電池61と第2の電池62との間の温度状況に応じて、第1~第4の調整弁411~412の開度を調整して、第1の電池冷却分岐路401と第2の電池冷却分岐路402の冷却液の流量の分配を調整することにより、第1の電池61と第2の電池62の温度のバランスを制御する。第1の電池61の温度が第2の電池62の温度より高く、かつ差が設定値を超えるときに、第1の調整弁411と第3の調整弁413の開度を大きくし、第2の調整弁412と第4の調整弁414の開度を小さくして、第1の電池61の冷却パワーを向上させ、第1の電池61と第2の電池62の温度が等しいときに、2つのコンプレッサー1によって供給された冷却パワーが等しければ、第1~第4の調整弁411~414の開度を等しくするように制御することができ、その一方、2つのコンプレッサー1によって供給された冷却パワーが等しなければ、第1の調整弁411と第2の調整弁412の開度を等しくするように制御し、かつ第3の調整弁413と第4の調整弁414の開度を等しくするように制御することができる。温度調整システムが加熱モードで動作するときに、第1の電池61の温度が第2の電池62の温度より低く、かつ差が設定値を超えるときに、コントローラは第1の電池61の対応するヒーター53の加熱パワーを向上させる。これにより、2つの電池の間の温度のバランスをとれる。本願の一実施形態によれば、車載電池の温度調整システムは、さらに図14及び図15に示すとおりであってよい。図14において、複数のコンプレッサー(即ち、図14における第1のコンプレッサー11と第2のコンプレッサー12)が並列接続され、かつ1つの膨張弁を共用し、各電池冷却分岐路に調整弁(即ち、第1の調整弁411と第2の調整弁412)を追加し、調整弁により各電池冷却分岐路に流入する冷却液の流量を調整して、各電池の冷却パワーを調整する。図15において、複数のコンプレッサー(即ち、図15における第1のコンプレッサー11と第2のコンプレッサー12)が並列接続され、かつ1のコンデンサ2を共用し、各電池冷却分岐路に第2の膨張弁42と電子弁が設置され、第2の膨張弁42の開度を調整することにより、各電池冷却分岐路に流入する冷却液の流量を調整して、各電池の冷却パワーを調整し、電子弁により各電池冷却分岐路の開閉を制御する。
【0328】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて、図15に示すシステムの温度調整過程を説明する。
【0329】
図15に示すように、電池は第1の電池と第2の電池を含んでよく、Pz=P11+P12、P11が第1の電池の要求パワーであり、P12が第2の電池の要求パワーであり、Pzが第1の電池と第2の電池の要求パワーの和(総要求パワーPz)である。Pf=P21+P22、P21が電池の温度調整の実際パワーであり、P22が電池の温度調整の実際パワーであり、Pfが第1の電池と第2の電池の温度調整の実際パワーの和である。Pはコンプレッサーの最大冷却パワーであり、P5はすべてのコンプレッサーの最大冷却パワーの和であり、P5=2*P。
【0330】
コンプレッサーのパワーの初期分配は以下のとおりである:
Pz≦Pであれば、1つのコンプレッサー1を動作させて、冷却パワーを供給してもよく、2つのコンプレッサーを同時に動作させてもよく、P<Pz≦P5であれば、2つのコンプレッサーを同時に動作させる必要があり、各コンプレッサーの初期冷却パワーがPz/2であり、Pz>P5であれば、2つのコンプレッサーを同時に動作させる必要があり、車載エアコンコントローラにより各コンプレッサーが最大冷却パワーPで運転するように制御する。
【0331】
Pz≦P5であるときに、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーがPz冷却パワーで運転するように制御し、第1の電池61の冷却分岐路の初期冷却パワーをP11冷却パワーにして冷却し、第2の電池62の冷却分岐路の初期冷却パワーをP21冷却パワーにして冷却する。Pz>P5であるときに、各コンプレッサーは最大冷却パワーPで運転する。第1の電池61の冷却分岐路の初期冷却パワーをP5*[P11/(P11+P12)]冷却パワーにして冷却し、第2の電池62の冷却分岐路の初期冷却パワーをP5*[P12/(P11+P12)]冷却パワーにして冷却する。
【0332】
電池を冷却する過程において、電池の冷却パワーを調整するステップは、具体的には、以下のとおりである。
【0333】
Pz>Pfであるときに、調整すべきパワーはPc(Pc=Pz-Pf)である。Pz+Pc≦P5であれば、コンプレッサーが向上すべき冷却パワーはPcであり、同時に以下の処理を行う。
【0334】
P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、車載エアコンコントローラにより、第1の電池61の所在する回路の膨張弁の開度を大きくするように制御し、かつ電池熱管理コントローラにより所在する回路のポンプの回転速度を向上させるように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、車載エアコンコントローラにより、第2の電池62の所在する回路の膨張弁の開度を大きくするように制御し、かつ電池熱管理コントローラにより所在する回路のポンプの回転速度を向上させるように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池61の冷却パワーをそのまま保持するか、又は車載エアコンコントローラにより第1の電池61の所在する回路の膨張弁8の開度を小さくするように制御し、かつ電池熱管理コントローラにより所在する回路のポンプの回転速度を低下させるように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池62の冷却パワーをそのまま保持するか、又は車載エアコンコントローラにより第2の電池62の所在する回路の膨張弁の開度を小さくするように制御し、かつ電池熱管理コントローラにより所在する回路のポンプの回転速度を低下させるように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーを低下させる。
【0335】
P5について、Pz+Pc>P5であれば、各コンプレッサーは最大冷却パワーPで運転して、ポンプの回転速度を向上させる。同時に以下の処理を行う。
【0336】
車載エアコンコントローラにより第1の電池61の所在する冷却分岐路の膨張弁の開度を制御することにより、第1の電池61の冷却分岐路の冷却パワーをP5*[P11/(P11+P12)]冷却パワーにして冷却し、車載エアコンコントローラにより第2の電池62の所在する冷却分岐路の膨張弁の開度を制御することにより、第2の電池62の冷却分岐路の冷却パワーをP5*[P12/(P11+P12)]冷却パワーにして冷却する。
【0337】
Pz≦Pfであるときに、調整すべきパワーがPc(Pc=Pf-Pz)であると、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーの冷却パワーをそのまま維持したり、コンプレッサーの冷却パワーを低下させたりすると共に、以下の処理を行う。P11≧P21、かつP11-P21=Pc1であれば、車載エアコンコントローラにより、第1の電池61の所在する回路の膨張弁の開度を大きくするように制御し、かつ所在する回路のポンプの回転速度を向上させるように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーをPc1向上させる。P12≧P22、かつP12-P22=Pc2であれば、車載エアコンコントローラにより、第2の電池62の所在する回路の膨張弁の開度を大きくするように制御し、かつ所在する回路のポンプの回転速度を向上させるように制御することにより、電池62の冷却パワーをPc2向上させる。P11<P12、かつP21-P11=Pc1であれば、第1の電池61の冷却パワーをそのまま保持するか、又は車載エアコンコントローラにより第1の電池61の所在する回路の膨張弁の開度を小さくするように制御し、かつ電池熱管理コントローラにより所在する回路のポンプの回転速度を低下させるように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーを低下させる。P12<P22、かつP22-P12=Pc2であれば、第2の電池62の冷却パワーをそのまま保持するか、又は車載エアコンコントローラにより第2の電池62の所在する回路の膨張弁の開度を小さくするように制御し、かつ電池熱管理コントローラにより所在する回路のポンプの回転速度を低下させるように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーを低下させる。
【0338】
加熱パワーの調整は、以下のとおりである。
【0339】
第1の電池61と第2の電池62の加熱機能は相互に独立し、第1の電池61と第2の電池62はそれぞれ1つのヒーターを使用し、P11が第1の電池61の加熱要求パワーであり、P21が第2の電池62の実際加熱パワーであり、パワー差がP31であり、P11>P21であれば、調整すべきパワーがP31(P31=P11-P21)であり、ヒーターの加熱パワーをP31向上させ、ポンプの回転速度を向上させP11≦P21であれば、調整すべきパワーがP31(P31=P11-P21)であるときに、ヒーターのパワーをそのまま保持したり、加熱パワーをP31低下させたり、ポンプの回転速度を低下させたりする。
【0340】
電池温度のバランスは、以下のとおりである。
【0341】
電池冷却を行う過程において、第1の電池61の温度T61と第2の電池62の温度T62との間の電池温度差が3℃(該温度値が所定値である)を超えれば、つまり、T61-T62>3℃であれば、電池熱管理コントローラは、第1の電池61の冷却分岐路中の第2の膨張弁42の開度を大きくするように制御したり、第1の電池61の所在する分岐路中のポンプの回転速度を向上させるように制御すると共に、第2の電池62の冷却分岐路中の第2の膨張弁42の開度を小さくするように制御したり、第2の電池62の所在する分岐路中のポンプの回転速度を低下させるように制御したりして、第1の電池61の冷却パワーを向上させ、第2の電池62の冷却パワーを低下させることにより、第1の電池61と第2の電池62の温度のバランスを実現する。
【0342】
T62-T61>3℃であれば、電池熱管理コントローラは、第2の電池62の冷却分岐路中の第2の膨張弁42の開度を大きくするように制御したり、第2の電池62の所在する分岐路中のポンプの回転速度を向上させるように制御すると共に、第1の電池61の冷却分岐路中の第2の膨張弁42の開度を小さくするように制御したり、第1の電池61の所在する分岐路中のポンプの回転速度を低下させるように制御したりして、第2の電池62の冷却パワーを向上させ、第1の電池61の冷却パワーを低下させることにより、第1の電池61と第2の電池62の温度のバランスを実現する。
【0343】
電池加熱を行う過程において、第1の電池61と第2の電池62との間の電池の温度差が3℃を超えれば、つまり、T61-T62>3℃であれば、電池熱管理コントローラは、第1の電池61の所在する加熱回路中のヒーター53の加熱パワーを低下させ、該回路のポンプ51の回転速度を低下させるように制御すると共に、第2の電池62の加熱回路中のヒーター53の加熱パワーを向上させ、かつ該回路中のポンプの回転速度を向上させるように制御して、第1の電池61の加熱パワーを向上させ、第2の電池62の加熱パワーを低下させることにより、第1の電池61と第2の電池62の温度のバランスを実現する。T62-T61>3℃であれば、電池熱管理コントローラは、第1の電池61の所在する加熱回路中のヒーター53の加熱パワーを向上させ、該回路のポンプ51の回転速度を向上させるように制御すると共に、第2の電池62の加熱回路中のヒーター53の加熱パワーを低下させ、かつ該回路中のポンプの回転速度を低下させるように制御して、第1の電池61の加熱パワーを低下させ、第2の電池62の加熱パワーを向上させることにより、第1の電池61と第2の電池62の温度のバランスを実現する。
【0344】
図14図15に比べて、図14において第1の電池61の所在する第1の電池冷却分岐路401と第2の電池62の所在する第2の電池冷却分岐路402との間の冷却パワーは調整弁によりパワー調整を実現し、図15において2つの電池冷却分岐路は膨張弁により2つの冷却分岐路の冷却パワーの調整を実現するという点で相違すると理解すべきである。図14の具体的な調整過程は上記実施形態を参照すればよく、ここで説明を省略する。
【0345】
本願の実施形態に係る温度調整システムは、各電池の実際の状態に応じて各電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御でき、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避し、そして、複数の電池冷却分岐路の間は相互に連通し、電池温度調整モジュールは各電池の対応する電池冷却分岐路の冷却力の開度を調整することにより、各電池間の温度のバランスを保証することができる。
【0346】
図16は、本願の実施形態6に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。車載電池の温度調整システムは、複数のコンプレッサーと、複数のコンプレッサーに対応する複数の電池冷却分岐路と、複数の電池と、複数の電池と複数の電池冷却分岐路との間に接続された複数の電池温度調整モジュールとを含む。図16に示すように、車載電池の温度調整方法は、以下のステップS1”~S3”を含む。
【0347】
S1”では、複数の電池の要求パワーP1をそれぞれ取得する。
【0348】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、図17に示すように、複数の電池の要求パワーP1をそれぞれ取得するステップは、具体的に以下のステップS11”~S13”を含む。
【0349】
S11”では、各電池の温度調整開始時の第1のパラメータをそれぞれ取得し、かつ第1のパラメータに基づいて各電池の第1の要求パワーを生成する。
【0350】
S12”では、各電池の温度調整中の第2のパラメータをそれぞれ取得し、かつ第2のパラメータに基づいて各電池の第2の要求パワーを生成する。
【0351】
S13”では、各電池の第1の要求パワーと各電池の第2の要求パワーに基づいて各電池の要求パワーP1をそれぞれ生成する。
【0352】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、第1のパラメータは電池の温度調整開始時の初期温度、目標温度、及び初期温度から上記目標温度になるまでの目標時間tであり、第1のパラメータに基づいて各電池の第1の要求パワーを生成するステップは、具体的には、以下を含む。初期温度と目標温度との間の第1の温度差ΔTを取得する。第1の温度差ΔTと目標時間tに基づいて第1の要求パワーを生成する。
【0353】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(1)に基づいて第1の要求パワーを生成し、
ΔT*C*M/t (1)
ΔTが初期温度と目標温度との間の第1の温度差であり、tが目標時間であり、Cが電池の比熱であり、Mが電池の質量である。
【0354】
本願の一実施形態によれば、第2のパラメータは所定の時間内の各電池の平均電流Iであり、下式(2)に基づいて各電池の第2の要求パワーを生成し、
*R (2)
Iが平均電流であり、Rが電池の内部抵抗である。
【0355】
電池を冷却するときに、P1=ΔT*C*M/t+I*R、電池を加熱するときに、P1=ΔT*C*M/t-I*R。
【0356】
S2”では、複数の電池の実際パワーP2をそれぞれ取得する。
【0357】
本願の一実施形態によれば、図17に示すように、複数の電池の実際パワーP2をそれぞれ取得するステップは、具体的に以下のステップS21”~S23”を含む。
【0358】
S21”では、各電池の温度を調整する流路の入口温度と出口温度を取得すると共に、冷却液が流路に流入する流速vを取得する。
【0359】
S22”では、各電池の流路の入口温度と出口温度に基づいて第2の温度差ΔTを生成する。
【0360】
S23”では、各電池の第2の温度差ΔTと流速vに基づいて各電池の実際パワーP2を生成する。
【0361】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(3)に基づいて実際パワーP2を生成し、
ΔT*c*m (3)
ΔTが第2の温度差であり、cが流路中の冷却液の比熱であり、mが単位時間当たりに流路の断面積を流れる冷却液の質量であり、m=v*ρ*sであり、vが冷却液の流速であり、ρが冷却液の密度であり、sが流路の面積である。
【0362】
S3”では、要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて各電池の対応する電池温度調整モジュールを制御して電池の温度を調整する。複数の電池冷却分岐路は相互に連通し、かつ電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて複数のコンプレッサーが電池の対応する電池冷却分岐路に冷却力を供給する開度を調整する。
【0363】
本願の実施形態では、要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて各電池の対応する電池温度調整モジュールを制御して電池の温度を調整するステップは、具体的には以下を含む。要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて、目標時間t内に各電池の対応する電池温度調整モジュールを制御して電池の温度が目標温度に達するように調整する。
【0364】
電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて複数のコンプレッサーが電池の対応する電池冷却分岐路に冷却力を供給する開度を調整するステップは、具体的には以下を含む。各電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2より大きいか否かを判断し、電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2より大きければ、複数のコンプレッサー又は単一コンプレッサーの冷却パワーを向上させるか、電池の対応する電池冷却分岐路に冷却力を供給する開度を大きくする。
【0365】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池管理コントローラにより電池に温度調整を行う必要があるか否かを判断し、電池に温度調整を行う必要があると判断するときに、各電池の初期温度(即ち、現在温度)、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tをそれぞれ取得し、目標温度と目標時間tが実際の状況に応じて予め設定されてよく、かつ式(1)に基づいて第1の要求パワーをそれぞれ計算する。同時に、電池管理コントローラにより、所定の時間内の各電池の平均電流Iを取得し、かつ式(2)に基づいて各電池の第2の要求パワーをそれぞれ計算する。次に、それぞれ各電池の第1の要求パワーと第2の要求パワーに基づいて、各電池の要求パワーP1(即ち、電池の温度を目標温度に調整する要求パワー)をそれぞれ計算する。そして、電池熱管理コントローラにより、各電池の入口温度と出口温度をそれぞれ取得し、かつ流速情報を取得し、式(3)に基づいて各電池の実際パワーP2をそれぞれ計算する。その後に、対応する電池の温度調整の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて、対応する電池冷却分岐路に流入する冷却液の流量又は対応するヒーターのパワーを調整して電池の冷却パワー/加熱パワーを調整することにより、目標時間t内に各電池の実際の状態に応じて電池の温度を調整することを確保することができる。同時に、複数の電池冷却分岐路が相互に連通するため、各電池の温度に基づいて、電池の対応する電池冷却分岐路の冷却力の開度を調整することにより、各電池間の温度のバランスを保証することができる。これにより、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに、目標時間内に温度を調整して、車載電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避することができる。
【0366】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて、どのように要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて各電池の対応する電池温度調整モジュールを制御して電池の温度を調整するかを説明する。
【0367】
本願の一実施形態によれば、図17に示すように、車載電池の温度調整方法は、さらに以下のステップS31”~S35”を含んでよい。
【0368】
S31”では、各電池の要求パワーP1に基づいて総要求パワーPzを生成する。
【0369】
S32”では、複数のコンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5を生成する。
【0370】
S33”では、総要求パワーPzが複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5より大きいか否かを判断する。
【0371】
S34”では、総要求パワーPzが複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5より大きければ、複数のコントローラが電池の対応する電池冷却分岐路に冷却力を供給する開度を最大に調整する。
【0372】
S35”では、総要求パワーPzが複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5以下あれば、総要求パワーPzと総最大冷却パワーP5の差に基づいて電池の対応する電池冷却分岐路の冷却力の開度を調整する。
【0373】
具体的には、各電池の要求パワーP1に基づいて温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、つまり、各電池の要求パワーP1を加算すれば、総要求パワーPzを得ることができ、同時に各コンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5を計算し、つまり、各コンプレッサーの最大冷却パワーPを加算すれば総最大冷却パワーP5を得ることができる。その後に、Pz>P5であるか否かを判断し、そうであれば、各第2の膨張弁の開度を最大に調整するように制御して、複数のコンプレッサーから電池の対応する電池冷却分岐路への冷却液の流量を最大に調整することにより、電池が目標時間t内に降温を完了することができる。Pz≦P5であれば、PzとP5との間の差に基づいて第2の膨張弁の開度を調整し、PzとP5の差の絶対値が大きければ大きいほど、第2の膨張弁の開度が小さく、エネルギーを節約するという目的を達成する。
【0374】
本願の一実施形態によれば、図18に示すように、電池の温度調整方法は、さらに以下のステップを含んでよい。
【0375】
電池の温度を検出し、かつ温度が第1の温度閾値より大きいか又は第2の温度閾値より小さいかを判断する(S10”-S20”)。電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに、冷却モードに入る(S30”)。第1の所定温度閾値が実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、40℃であってよい。電池の温度が第1の温度閾値以下であるときに、さらに電池の温度が第2の温度閾値より小さいか否かを判断し、電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに、加熱モードに入る(S40”-S50”)。第2の所定温度閾値が実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、0℃であってよい。
【0376】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池管理コントローラにより各電池の温度をリアルタムに検出し、かつ判断する。そのうちのある電池の温度が40℃より高ければ、このときに該電池の温度が高過ぎることを示し、高温が該電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池に降温処理を行う必要があり、電池管理コントローラにより温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、かつ電池冷却機能をオンにするという情報をエアコンシステムに送信する。その一方、ある電池の温度が0℃より低ければ、このときに該電池の温度が低過ぎることを示し、低温が該電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池に昇温処理を行う必要があり、電池管理コントローラにより温度調整システムが加熱モードに入るように制御し、対応する電池冷却分岐路をオフにするように制御し、かつ電池熱管理コントローラによりヒーターを起動させるように制御して、電池に加熱パワーを供給する。
【0377】
本願の一実施形態によれば、図18に示すように、冷却モードにあるときに、要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて各電池の対応する電池温度調整モジュールを制御して電池の温度を調整するステップは、具体的には以下のステップS36”~S38”を含む。
【0378】
S36”では、各電池の要求パワーP1が各電池の対応する実際パワーP2より大きいか否かを判断する。
【0379】
S37”では、ある電池の要求パワーP1が電池の対応する実際パワーP2より大きければ、該電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を冷却するコンプレッサーのパワーを向上させたり、電池の対応する電池冷却分岐路の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の冷却パワーを向上させる。
【0380】
S38”では、ある電池の要求パワーP1が電池の対応する実際パワーP2以下であれば、コンプレッサーのパワーを低下させたり、コンプレッサーのパワーをそのまま保持したり、電池の対応する電池冷却分岐路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の冷却パワーを低下させる。
【0381】
具体的には、温度調整システムが冷却モードに入るときに、各電池のP1とP2をそれぞれ取得し、かつ判断する。そのうちのある電池のP1がP2より大きければ、現在の冷却パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池の降温を完了できないことを示すため、該電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつ車載エアコンコントローラによりパワー差に基づいて該電池を冷却するコンプレッサーのパワーを向上させたり、該電池の所在する電池冷却分岐路の冷却液の流量を増加させたりすることにより、該電池の冷却パワーを向上させ、P1とP2のパワー差が大きければ大きいほど、対応するコンプレッサーのパワーを多く向上させ該電池の冷却液の流量を多く増加させることにより、所定の時間t内に該電池の温度を目標温度に下げる。その一方、そのうちのある電池のP1がP2以下であれば、車載エアコンコントローラにより該電池を冷却するコンプレッサーのパワーをそのまま保持するか又はコンプレッサーのパワーを適切に低下させたり、該電池の所在する電池冷却分岐路の冷却液の流量を減少させたりすることにより、電池の冷却パワーを低下させる。すべての電池の温度が35℃より低いときに、電池の冷却は完了し、CAN通信により車載エアコンに温度調整機能をオフにするという情報を送信し、車載エアコンコントローラにより第2の電子弁を閉弁するように制御する。温度調整システムが冷却モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が35℃より高い電池が依然として存在すれば、車載エアコンコントローラにより対応するコンプレッサーのパワーを適切に向上させて、該電池が降温をできるだけ速く完了する。
【0382】
本願の一実施形態によれば、図18に示すように、加熱モードにあるときに、要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて各電池の対応する電池温度調整モジュールを制御して電池の温度を調整するステップは、具体的には以下のステップS39”~S311”を含む。
【0383】
S39”では、各電池の温度調整の要求パワーP1が各電池の対応する実際パワーP2より大きいか否かを判断する。
【0384】
S310”では、ある電池の要求パワーP1が電池の対応する実際パワーP2より大きければ、該電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいてヒーターのパワーを向上させて、該電池の加熱パワーを向上させる。
【0385】
S311”では、ある電池の要求パワーP1が電池の対応する実際パワーP2以下であれば、ヒーターのパワーを低下させるか又はヒーターの加熱パワーをそのまま保持する。
【0386】
具体的には、温度調整システムが加熱モードに入るときに、各電池のP1とP2をそれぞれ取得し、かつ判断する。そのうちのある電池のP1がP2より大きければ、現在の加熱パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池の昇温を完了できないことを示すため、該電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつ電池熱管理コントローラによりパワー差に基づいて電池を加熱するヒーターのパワーを向上させることにより、該電池が目標時間内に温度調整を完了する。その一方、ある電池のP1がP2以下であれば、電池熱管理コントローラによりヒーターのパワーを適切に低下させて電気エネルギーを節約するか、ヒーターのパワーをそのまま保持する。すべての電池の温度が所定温度、例えば10℃より高いときに、電池の加熱は完了し、CAN通信により温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンに送信し、かつ電池熱管理コントローラによりヒーターが動作を停止させるように制御する。温度調整システムが加熱モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が10℃より低い電池が依然として存在すれば、電池熱管理コントローラによりヒーターのパワーを適切に向上させて、該電池が昇温をできるだけ速く完了する。
【0387】
例として、図13に示すように、第1の電池と第2の電池の加熱機能は相互に独立し、第1の電池と第2の電池はそれぞれ1つのヒーターで加熱されるため、第1の電池のみを例として電池加熱機能のパワー調整を説明する。(P11が第1の電池の要求パワーであり、P21が第1の電池の実際パワーであり、P11とP21のパワー差がP31であると仮定する)
P11>P21であれば、調整すべきパワーがP31(P31=P11-P21)であるときに、電池熱管理コントローラによりヒーターの加熱パワーをP31向上させ、かつポンプの回転速度を向上させるように制御する。
【0388】
P11≦P21であれば、調整すべきパワーがP31(P31=P11-P21)であるときに、電池熱管理コントローラによりヒーターのパワーをそのまま保持したり、ヒーターのパワーをP31低下させたり、ポンプの回転速度を低下させたりする。
【0389】
本願の一実施形態によれば、車載電池の温度調整方法は、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より小さければ、ポンプの回転速度を低下させるステップと、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より大きければ、ポンプの回転速度を向上させるステップとをさらに含んでよい。
【0390】
具体的には、温度調整システムが加熱モード又は冷却モードに入るときに、ある電池のP1がP2より小さければ、電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を低下させるように制御して、電気エネルギーを節約する。ある電池のP1がP2より大きければ、電池熱管理コントローラによりヒーターのパワーを向上させるように制御し、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーのパワーを向上させるように制御するか又は該電池の所在する回路の冷却液の流量を増加させるように制御することに加え、また、電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を向上させるように制御して、単位時間当たりに冷却流路の断面積を流れる冷却液の質量を増加させることにより、該電池の実際パワーP2を向上させて、目標時間t内に温度調整を実現する。
【0391】
本願の一実施形態によれば、電池に冷却剤を供給するコンプレッサーが複数あり、電池の温度調整方法は、さらに以下を含んでよい。各電池の要求パワーP1と各コンプレッサーの最大冷却パワーに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断する。冷却モードにあるときに、対応する数量のコンプレッサーを起動させるように制御する。
【0392】
好ましくは、各電池の要求パワーP1と各コンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて、起動されるコンプレッサーの数量を判断するステップは、具体的には、各電池の要求パワーP1に基づいて総温度調整実際パワーPzを生成するステップと、総要求パワーPzが単一コンプレッサーの最大冷却パワーPより大きいか否かを判断するステップと、単一コンプレッサーの最大冷却パワーPより大きければ、複数のコンプレッサーを同時に起動させるように制御するステップとを含む。
【0393】
具体的には、温度調整システムが冷却モードに入るときに、電池管理コントローラにより各電池のP1をそれぞれ取得し、かつ各電池のP1を加算して温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができる。その一方、Pzが単一コンプレッサーの最大冷却パワーより大きければ、車載エアコンコントローラにより複数のコンプレッサーを同時に起動させて動作させるように制御し、かつ電池熱管理コントローラにより対応する弁の開度を調整して各電池冷却分岐路に流入する冷却液の流量を調整して、対応する電池の降温冷却パワーの要求を満たす。
【0394】
具体的には、図13に示すように、コンプレッサー1が2つあることを例として、温度調整システムが冷却モードに入るときに、コントローラは、各電池のP1、各電池の実際パワーP2及び単一コンプレッサーの最大冷却パワーPをそれぞれ取得し、かつ各電池のP1を加算すれば温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、各電池の実際パワーP2を加算すれば総温度調整の実際パワーPfを得て、各コンプレッサーの最大冷却パワーを加算すればすべてのコンプレッサーの最大冷却パワーの和P5を計算することができる。第1の電池の要求パワーはP11であり、第2の電池の要求パワーはP12である。第1の電池の実際パワーはP21であり、第2の電池の実際パワーはP22である。各コンプレッサーの最大冷却パワーPは等しい。
【0395】
Pz≦Pであれば、1つのコンプレッサーを動作させて、冷却パワーを供給するように制御してもよく、2つのコンプレッサーを同時に動作させるように制御してもよい。P<Pz≦P5であれば、2つのコンプレッサーを同時に動作させ、各コンプレッサーの初期冷却パワーをPz/2にする必要がある。Pz≦P5であれば、コンプレッサーがPz冷却パワーで運転するように制御し、かつ第1~第4の調整弁の開度を調整することにより、第1の電池冷却分岐路の初期冷却パワーをP11冷却パワーにして冷却し、第2の電池冷却分岐路の初期冷却パワーをP21冷却パワーにして冷却する。Pz>P5であれば、各コンプレッサーが最大冷却パワーPで運転し、かつ第1の電池冷却分岐路の初期冷却パワーをP5*[P11/(P11+P12)]冷却パワーにして冷却し、第2の電池冷却分岐路の初期冷却パワーをP5*[P12/(P11+P12)]冷却パワーにして冷却することができる。
【0396】
本願の一実施形態によれば、冷却モードにあるときに、電池間の温度差が設定値を超えるときに、温度が高い電池の冷却パワーを向上させて、電池間の温度差を低下させ、加熱モードにあるときに、電池間の温度差が設定値を超えるときに、温度が低い電池の加熱パワーを向上させる。
【0397】
温度調整システムが冷却モードに入るときに、電池管理コントローラにより第1の電池と第2の電池の要求パワーP1をそれぞれ計算し、その後に車載エアコンコントローラによりそれぞれ各電池のP1と対応するコンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて対応する第2の膨張弁の開度を調整する。かつ車載エアコンコントローラにより、それぞれ各電池の実際パワーP2に基づいて第2の膨張弁42の開度を継続して調整する。同時に、第1の電池と第2の電池との間の温度状況に応じて、第1~第4の調整弁の開度を調整して、第1の電池冷却分岐路と第2の電池冷却分岐路の冷却液の流量の分配を調整することにより、第1の電池と第2の電池の温度のバランスを制御する。第1の電池の温度が第2の電池の温度より高く、かつ差が設定値を超えるときに、車載エアコンコントローラにより第1の調整弁と第3の調整弁の開度を大きくし、第2の調整弁と第4の調整弁の開度を小さくして、第1の電池の冷却パワーを向上させ、第1の電池と第2の電池の温度が等しいときに、車載エアコンコントローラにより第1~第4の調整弁の開度を等しくするように制御することができる。温度調整システムが加熱モードに入るときに、第1の電池の温度が第2の電池の温度より低く、かつ差が設定値を超えるときに、電池熱管理コントローラにより第1の電池の対応するヒーターの加熱パワーを向上させる。これにより、2つの電池の間の温度のバランスをとれる。
【0398】
本願の実施形態に係る車載電池の温度調整方法は、各電池の実際の状態に応じて各電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御し、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持し、かつ各電池間の温度のバランスを保証することができる。
【0399】
車両の温度調整は、電池の温度調整と車室の温度調整を含む。電池の温度が要求を満たす場合に、車内温度が要求を満たすように、電池冷却分岐路と車内冷却分岐路の冷却液の流量を合理的に分配する必要がある。このため、本願の実施形態は、車両の温度調整システムを提供する。以下、図面を参照しながら本願の実施形態が提供する車両の温度調整方法及び温度調整システムを説明する。
【0400】
図3は、本願の実施形態に係る車両の温度調整システムのブロック図である。図3に示すように、該温度調整システムは、コンプレッサー1、コンデンサ2、車内冷却分岐路3、電池冷却分岐路4及び電池温度調整モジュール5を含む。
【0401】
コンデンサ2はコンプレッサー1と接続され、車内冷却分岐路3はコンプレッサー1とコンデンサ2との間に接続され、電池冷却分岐路4はコンプレッサー1とコンデンサ2との間に接続される。電池温度調整モジュール5は電池冷却分岐路4と接続され、電池6の要求パワーP1と実際パワーP2を取得し、かつ車両の車内温度Tとエアコンの設定温度Tsを取得し、そして、要求パワーP1、実際パワーP2、車内温度T及びエアコンの設定温度Tsに基づいて車内冷却分岐路3及び電池冷却分岐路4の開度を調整する。
【0402】
具体的には、電池温度調整モジュール5は電池6の要求パワーP1、電池6の実際パワーP2、車両の車内温度T及びエアコンの設定温度Tsを取得し、かつP1、P2、T及びTsに基づいて車内冷却分岐路3と電池冷却分岐路4の開度を調整して、冷却力を分配する。図1に示すように、車載エアコン冷却機能がオンにされているときに、冷却液の流れ方向は、コンプレッサー1-コンデンサ2-車内冷却分岐路3-コンプレッサー1である。電池冷却分岐路4は2つの配管を有し、第1の配管はコンプレッサー1と連通し、第2の配管は電池温度調整モジュール5と連通し、第1の配管と第2の配管が相互に独立し隣接して設置される。電池の温度が高過ぎるときに、電池の冷却機能がオンにされ、第1の配管と第2の配管内の冷却液の流れ方向は、それぞれ、コンプレッサー1-コンデンサ2-電池冷却分岐路4-コンプレッサー1であり、電池冷却分岐路4-電池温度調整モジュール5-電池6-電池温度調整モジュール5-電池冷却分岐路4である。電池6の温度が低過ぎるときに、電池温度調整モジュール5は電池加熱機能をオンにし、第2の配管内の冷却液の流れ方向は、電池冷却分岐路4-電池温度調整モジュール5-電池6-電池温度調整モジュール5-電池冷却分岐路4である。
【0403】
電池温度調整モジュール5の冷却パワーが車載エアコンによって供給され、車内冷却システムと冷却力を共用することにより、温度調整システムの体積を減少させ、冷却液の流量の分配をより柔軟にすると理解すべきである。これにより、該システムは、車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の開度を調整することにより、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を迅速に調整して、車載電池の温度を所定の範囲に維持して、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避するだけでなく、電池の温度が要求を満たす場合に、車内温度が要求を満たすようにすることもできる。
【0404】
本願の一実施形態によれば、電池温度調整モジュール5は、具体的には、要求パワーP1、実際パワーP2、車内温度T及びエアコンの設定温度Tsに基づいて車内冷却分岐路3と電池冷却分岐路4の開度を調整することにより、電池6が目標時間t内に目標温度に達する。
【0405】
具体的には、電池温度調整モジュール5がP1、P2、T及びTsに基づいて車内冷却分岐路3と電池冷却分岐路4の開度を調整するときに、目標時間t内に電池6の実際の状態に応じて車載電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御することを確保することにより、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整し、かつ電池の温度が要求を満たす場合に、車内温度が要求を満たすようにすることができる。
【0406】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、図4に示すように、電池冷却分岐路4は熱変換器41を含み、熱変換器41は第1の配管と第2の配管を含み、第2の配管は電池温度調整モジュール5と接続され、第1の配管はコンプレッサー1と連通し、第1の配管と第2の配管が相互に独立し隣接して設置される。電池温度調整モジュール5は、電池の温度を調整し、電池6内に設置された流路(具体的に図示せず)と、流路と熱変換器41との間に接続されたポンプ51と、媒体容器52と、ヒーター53と、コントローラ(具体的に図示せず)とを含んでよい。コントローラは電池6の要求パワーP1と電池の実際パワーP2を取得し、かつ要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池6の温度を調整し、そして、コントローラは要求パワーP1、実際パワーP2、車内温度T及びエアコンの設定温度Tsに基づいて車内冷却分岐路3と電池冷却分岐路4の開度を調整することにより、電池の温度が要求を満たす場合に、車内温度が要求を満たす。車内冷却分岐路3は、エバポレーター31、第1の膨張弁32及び第1の電子弁33を含んでよい。電池冷却分岐路4は、第2の膨張弁42及び第2の電子弁43をさらに含んでよい。
【0407】
電池6の要求パワーP1と実際パワーP2をどのように取得するかについて、上記実施形態を参照すればよく、冗長な説明を避けるために、ここで説明を省略する。
【0408】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて電池温度調整モジュール5がどのようにP1、P2、T及びTsに基づいて車内冷却分岐路3と電池冷却分岐路4の開度を調整することにより、電池の温度が要求を満たす場合に、車内温度が要求を満たすかを説明する。
【0409】
本願の一実施形態によれば、冷却モードにあるときに、コントローラは、要求パワーP1が実際パワーP2より大きく、かつ電池温度が第3の温度閾値T3より大きいときに、車内冷却分岐路4の開度を小さくし、かつ電池冷却分岐路4の開度を大きくすることができる。第3の温度閾値は第1の温度閾値より大きく、例えば、第3の所定閾値は45℃であってよい。
【0410】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池6の温度が40℃より高ければ、コントローラは温度調整システムが冷却モードに入るように制御して、電池6を冷却する。電池6の冷却過程において、コントローラはP1とP2を取得し、要求パワーP1が実際パワーP2より大きいと判断するときに、電池の温度が45℃より大きいか否かをさらに判断する。電池の温度が45℃より高ければ、電池の温度が高過ぎることを示し、車載エアコンは電池6の冷却要求を優先的に満たし、コントローラは第1の膨張弁32の開度を小さくし、第2の膨張弁42の開度を大きくするように制御し、車内冷却分岐路3の冷却液の流量を減少させ、電池冷却分岐路4の冷却液の流量を増加させて、電池6が降温をできるだけ速く完了する。電池の温度が35℃に低下するときに、電池6の冷却は完了し、コントローラは電池冷却分岐路4をオフにするように制御する。これにより、電池の温度が要求を満たす場合に、車内温度が要求を満たすようにすることができる。
【0411】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに、電池の温度が第3の温度閾値より小さく、かつ車内温度Tがエアコンの設定温度Tsより大きいときに、車内冷却分岐路の開度を大きくし、かつ電池冷却分岐路の開度を小さくする。
【0412】
具体的には、電池6の冷却過程において、コントローラは、電池の温度が45℃より小さいときに、車内温度Tがエアコンの設定温度Tsより大きいか否かをさらに判断する。T>Tsであれば、車内温度Tが設定温度に達せず、車内温度が高いことを示し、ユーザが不快感を覚えることを防止するために、車内冷却の要求を優先的に満たし、コントローラは第1の膨張弁32の開度を大きくし、第2の膨張弁42の開度を小さくする。その一方、車内温度Tがエアコンの設定温度Tsに達し、車内冷却パワーが十分であり、かつバランスを取れば、コントローラは第2の膨張弁42の開度を大きくして、電池6の冷却パワーを向上させる。電池の温度が35℃に低下するときに、電池6の冷却は完了し、コントローラは第2の電子弁43をオフにするように制御する。これにより、電池の温度が要求を満たす場合に、車内温度が要求を満たすようにすることができる。
【0413】
つまり、ここで、電池の温度に階層化処理を行い、温度制御の閾値がそれぞれ40℃、45℃及び35℃である。電池の温度が40℃より高いときに、電池の冷却機能がオンにされ、電池の温度が35℃に低下すると、電池6の冷却が完了する。電池の温度が45℃に達するときに、電池冷却の要求を優先的に満たす。また、要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、電池の温度が45℃を超えなければ、依然として車内冷却の要求を優先し、車内の冷却パワーが十分であり、かつバランスを取れば、コントローラは電池冷却分岐路4の開度を大きくして、電池の冷却パワーを向上させる。要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、車内冷却の要求を優先的に満たしてよい。
【0414】
本願の一実施形態によれば、加熱モードにあるときに、コントローラは、要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池6を加熱するヒーター53のパワーを向上させ、そして、要求パワーP1が実際パワーP2以下であるときに、ヒーター53のパワーをそのまま保持する。
【0415】
具体的には、車両は、単一電池6を含んでもよく、複数の電池6を直列接続し、並列接続するか又は直並列接続して構成されてもよい。図19~20に示すように、電池が2つあることを例として、電池が2つあり(第1の電池61と第2の電池62)、かつ直列接続されるときに、それに応じてポンプが2つあり、かつ2つのポンプの一方が順方向ポンプ511、他方が逆方向ポンプ512である。
【0416】
図19に示すように、順方向ポンプ511が起動されるときに、第2の配管内の冷却液の流れは、媒体容器52-熱変換器41-ヒーター53-順方向ポンプ511-第1の温度センサ55-第1の電池61-第2の電池62-第2の温度センサ56-流速センサ57-媒体容器52である。図20に示すように、逆方向ポンプ512が起動されるときに、第2の配管内の冷却液の流れは、媒体容器52-流速センサ57-第2の温度センサ56-第2の電池62-第1の電池61-第1の温度センサ55-逆方向ポンプ512-ヒーター53-熱変換器41-媒体容器52である。
【0417】
例えば、第1の電池61と第2の電池62の冷却機能がオンにされ、温度調整システムが冷却モードに入るときに、コントローラは、各電池のP1、各電池の実際パワーP2及び単一コンプレッサーの最大冷却パワーPをそれぞれ取得し、かつ各電池のP1を加算して温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、各電池の実際パワーP2を加算して総温度調整実際パワーPfを得る。第1の電池の要求パワーはP11であり、第2の電池の要求パワーはP12である。第1の電池の実際パワーはP21であり、第2の電池の実際パワーはP22である。コンプレッサーの最大冷却パワーはPである。
【0418】
総要求パワーPzと車内冷却の要求パワーP4の和がコンプレッサーの最大冷却パワーP以下であり、即ちPz+P4≦Pであれば、コンプレッサーはPz+P4冷却パワーで運転する。かつPz<P、P4<Pである。
【0419】
Pz+P4>Pであれば、第1の電池61又は第2の電池62の温度が45℃より大きいか否かを判断し、45℃より大きければ、電池冷却に冷却パワーを優先的に供給し、コントローラはコンプレッサー1が最大冷却パワーPで運転するように制御し、電池冷却分岐路4の冷却パワーがPzであり、車内冷却分岐路3の冷却パワーがP-Pzに等しい。
【0420】
電池の温度が45℃以下であると判断し、かつ車内温度が設定温度に達しなければ、車内に冷却パワーを優先的に供給し、コンプレッサー1が最大冷却パワーPで運転し、車内冷却分岐路の冷却パワーがP4であり、電池冷却分岐路の冷却パワーがP-P4に等しい。
【0421】
車内温度が設定温度に達すれば、電池の冷却パワーを優先的に満たす。電池冷却分岐路の冷却パワーはPzである。
【0422】
第1の電池61と第2の電池62の温度調整の実際パワーの和はPfであり、Pz>Pfであるときに、調整すべきパワーはPc(Pc=Pz-Pf)である。Pz+P4+Pc≦Pであれば、コンプレッサーが向上すべき冷却パワーはPcであり、コントローラは第2の膨張弁42の開度を大きくし、ポンプ51の回転速度を向上させる。同時に以下の処理を行う。
【0423】
P11-P21=Pc1、P12-P22=Pc2、P11>P21、P12>P22であれば、
Pc1が設定値より大きいときに、コントローラは順方向ポンプ511を起動させ、逆方向ポンプ512が動作を停止させるように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーを向上させる。Pc2が設定値より大きいときに、逆方向ポンプ512を起動させ、順方向ポンプ511が動作を停止させるように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーを向上させる。Pc1>Pc2であるときに、コントローラは順方向ポンプ511を起動させ、逆方向ポンプ512が動作を停止させるように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーを向上させる。Pc1≦Pc2であるときに、コントローラは逆方向ポンプ512を起動させ、順方向ポンプ511が動作を停止させるように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーを向上させる。
【0424】
そして、第1の電池61の温度T61が第2の電池62の温度T62より大きいときに、コントローラは順方向ポンプ511を起動させ、逆方向ポンプ512が動作を停止させるように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーを向上させる。第1の電池61の温度T61が第2の電池62の温度T62以下であるときに、コントローラは逆方向ポンプ512を起動させ、順方向ポンプ511が動作を停止させるように制御することにより、電池62の冷却パワーを向上させる。
【0425】
P21-P11=Pc1、P22-P12=Pc2、P11≦P21、P12≦P22であれば、以下のように処理してよい。
【0426】
Pc1が設定値より大きいときに、コントローラは順方向ポンプ511を停止させ、逆方向ポンプ512を起動させるように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーを低下させる。Pc2が設定値より大きいときに、コントローラは逆方向ポンプ512が動作を停止させ、順方向ポンプ511を起動させるように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーを低下させる。Pc1>Pc2であるときに、コントローラは順方向ポンプ511が動作を停止させ、逆方向ポンプ512を起動させるように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーを低下させる。Pc1≦Pc2であるときに、コントローラは逆方向ポンプ512が動作を停止させ、順方向ポンプ511を起動させるように制御することにより、第2の電池62の冷却パワーを低下させる。
【0427】
そして、第1の電池61の温度T61が第2の電池62の温度T62より大きいときに、コントローラは順方向ポンプ511を起動させ、逆方向ポンプ512が動作を停止させるように制御することにより、第1の電池61の冷却パワーを向上させる。第1の電池61の温度T61が第2の電池62の温度T62以下であるときに、コントローラは逆方向ポンプ512を起動させ、順方向ポンプ511が動作を停止させるように制御することにより、電池62の冷却パワーを向上させる。また、つまり、第1の電池61と第2の電池62の冷却機能がオンにされているときに、第1の電池61の温度が第2の電池62の温度より高く、かつ差が所定値を超えれば、コントローラは順方向ポンプ511が動作するように制御して、冷却液が第1の電池61を流れてから、第2の電池62を流れるようにすることにより、第1の電池61が降温をできるだけ速く完了する。その一方、第2の電池62の温度が第1の電池61の温度より高く、かつ差が所定値を超えれば、コントローラは逆方向ポンプ512が動作するように制御して、冷却液が第2の電池62を流れてから、第1の電池61を流れるようにすることにより、第2の電池62が降温をできるだけ速く完了する。これにより、冷却液の流れを変化させることにより、第1の電池61と第2の電池62の温度差を小さくすることができる。
【0428】
第1の電池61と第2の電池62の冷却機能と加熱機能がいずれもオンにされていないときに、第1の電池61と第2の電池62の温度差が所定値を超えれば、コントローラは順方向ポンプ511又は逆方向ポンプ512を起動させるように制御して、電池冷却分岐路4中の冷却液が流れるようにすることにより、第1の電池61と第2の電池62の温度をバランスさせる。
【0429】
ポンプ51が順方向に回転し、かつ電池管理コントローラによって取得された各電池間の温度差の最大値が所定値を超えるときに、電池管理コントローラは、ポンプが逆方向に回転するように制御するという情報を電池熱管理コントローラに送信して、電池熱管理コントローラはポンプが逆方向(回路の流れが反時計回り方向である)に回転するように制御することにより、各直列接続された電池の温度差を小さくする。
【0430】
以上より、本願の実施形態の車両の温度調整システムによれば、電池温度調整モジュールにより電池の温度調整の要求パワーと温度調整の実際パワーを取得し、かつ車両の車内温度とエアコンの設定温度を取得し、そして、温度調整の要求パワー、温度調整の実際パワー、車内温度及びエアコンの設定温度に基づいて車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の開度を調整する。これにより、該システムは、車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の開度を調整することにより、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を迅速に調整して、車載電池の温度を所定の範囲に維持して、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避するだけでなく、電池の温度が要求を満たす場合に、車内温度が要求を満たすようにすることもできる。
【0431】
図31は、本願の実施形態1に係る車両の温度調整方法のフローチャートである。図31に示すように、車両の温度調整方法は、以下のステップS1’~S3’を含む。
【0432】
S1’では、電池の要求パワーP1と実際パワーP2を取得する。
【0433】
好ましくは、図22に示すように、本願の実施形態では、電池の要求パワーP1を取得するステップは、具体的には、以下のステップS11’~S13’を含む。
【0434】
S11’では、電池の温度調整開始時の第1のパラメータを取得し、かつ第1のパラメータに基づいて第1の要求パワーを生成する。
【0435】
S12’では、電池の温度調整中の第2のパラメータを取得し、かつ第2のパラメータに基づいて第2の要求パワーを生成する。
【0436】
S13’では、第1の要求パワーと第2の要求パワーに基づいて要求パワーP1を生成する。
【0437】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、第1のパラメータは電池の温度調整開始時の初期温度、目標温度、及び初期温度から上記目標温度になるまでの目標時間tであり、第1のパラメータに基づいて第1の要求パワーを生成するステップは、初期温度と目標温度との間の第1の温度差ΔTを取得するステップと、第1の温度差ΔTと目標時間tに基づいて第1の要求パワーを生成するステップとを含む。
【0438】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(1)に基づいて第1の要求パワーを生成し、
ΔT*C*M/t (1)
ΔTが初期温度と目標温度との間の第1の温度差であり、tが目標時間であり、Cが電池の比熱であり、Mが電池の質量である。
【0439】
本願の一実施形態によれば、第2のパラメータは所定の時間内の電池の平均電流Iであり、下式(2)に基づいて第2の要求パワーを生成し、
*R (2)
Iが平均電流であり、Rが電池の内部抵抗である。
【0440】
電池を冷却するときに、P1=ΔT*C*M/t+I*R、電池を加熱するときに、P1=ΔT*C*M/t-I*R。
【0441】
本願の一実施形態によれば、図22に示すように、電池の実際パワーP2を取得するステップは、具体的に以下のステップS14’~S16’を含む。
【0442】
S14’では、電池の温度を調整する流路の入口温度と出口温度を取得すると共に、冷却液が流路に流入する流速vを取得する。
【0443】
S15’では、入口温度と出口温度に基づいて第2の温度差ΔTを生成する。
【0444】
S16’では、第2の温度差ΔTと流速vに基づいて実際パワーP2を生成する。
【0445】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(3)に基づいて実際パワーP2を生成し、
ΔT*c*m (3)
ΔTが第2の温度差であり、cが流路中の冷却液の比熱であり、mが単位時間当たりに流路の断面積を流れる冷却液の質量であり、m=v*ρ*sであり、vが冷却液の流速であり、ρが冷却液の密度であり、sが流路の断面積である。
【0446】
S2’では、車両の車内温度Tとエアコンの設定温度Tsを取得する。
【0447】
S3’では、要求パワーP1、実際パワーP2、車内温度T及びエアコンの設定温度Tsに基づいて車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の開度を調整する。
【0448】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、要求パワーP1、実際パワーP2、車内温度T及びエアコンの設定温度Tsに基づいて車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の開度を調整するステップは、要求パワーP1、実際パワーP2、車内温度T及びエアコンの設定温度Tsに基づいて車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の開度を調整することにより、電池が目標時間t内に目標温度に達することを含む。
【0449】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池管理コントローラにより車両に温度調整を行う必要があるか否かを判断し、温度調整を行う必要があると判断するときに、電池の初期温度(即ち、現在温度)、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tを取得し、目標温度と目標時間tが実際の状況に応じて予め設定されてよく、かつ式(1)に基づいて第1の要求パワーを計算する。同時に、電池熱管理コントローラにより、所定の時間内の電池の平均電流Iを取得し、式(2)に基づいて第2の要求パワーを計算する。次に、電池管理コントローラにより、第1の要求パワーと第2の要求パワーに基づいて、要求パワーP1(即ち、電池の温度を目標温度に調整する要求パワー)を計算する。そして、電池熱管理コントローラにより電池の入口温度と出口温度を取得し、かつ流速情報を取得し、式(3)に基づいて実際パワーP2を計算する。車内温度Tとエアコンの設定温度Tsを取得する。最後に、P1、P2、T及びTsに基づいて車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の開度を調整することにより、電池が目標時間t内に目標温度に達する。これにより、該方法は、車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の開度を調整することにより、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を迅速に調整して、車載電池の温度を所定の範囲に維持して、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避するだけでなく、電池の温度が要求を満たす場合に、車内温度が要求を満たすようにすることもできる。
【0450】
本願の一実施形態によれば、図23に示すように、上記車両の温度調整方法は、さらに、以下を含んでよい。
【0451】
電池の温度を検出し、かつ温度が第1の温度閾値より大きいか又は第2の温度閾値より小さいかを判断する(S10’-S20’)。電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに、冷却モードに入る(S30’)。第1の所定温度閾値が実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、40℃であってよい。電池の温度が第1の温度閾値以下であるときに、さらに電池の温度が第2の温度閾値より小さいか否かを判断し、電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに、加熱モードに入る(S40’-S50’)。第2の所定温度閾値が実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、0℃であってよい。
【0452】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池管理コントローラにより電池の温度をリアルタムに検出し、かつ判断する。電池の温度が40℃より高ければ、このときに電池の温度が高過ぎることを示し、高温が電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、電池に降温処理を行う必要があり、電池管理コントローラにより温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、かつ車載エアコンコントローラによりコンプレッサーを起動させるように制御することにより、冷却液と電池は熱変換を行って電池の温度を下げる。その一方、電池の温度が0℃より低ければ、このときに電池の温度が低過ぎることを示し、低温が電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、電池に昇温処理を行う必要があり、電池管理コントローラにより温度調整システムが加熱モードに入るように制御し、かつ車載エアコンコントローラによりヒーターを起動させるように制御して、加熱パワーを供給する。
【0453】
電池の要求パワーP1、実際パワーP2、車内温度T及びエアコンの設定温度Tsに基づいて、車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の開度を調整することにより、電池が温度の要求を満たすと共に、車内温度が要求を満たすようにすることができる。そして、要求パワーP1と実際パワーP2を容易に取得することができる。
【0454】
具体的には、上記実施形態から分かるように、異なる場合に、異なる方法で計算して要求パワーP1を取得することができ、電池を冷却することを例として、電池を冷却する必要があるときに、電池の初期温度が45℃で、電池冷却の目標温度が35℃であれば、電池が45℃から35℃に低下するために放出する熱は一定であり、式(1)、即ちΔT*C*M/tに基づいて直接計算して取得することができる。ΔTが上記初期温度と目標温度との間の第1の温度差であり、tが目標時間であり、Cが電池の比熱であり、Mが電池の質量である。同時に、電池の冷却過程に放電と充電プロセスが存在し、この過程において熱が発生し、この部分の熱は電流を検出して直接取得されてよく、式(3)、即ちI*Rに基づいて現在の電池の発熱パワー、即ち第2の要求パワーを直接計算することができる。Iが平均電流であり、Rが電池の内部抵抗である。本願の要点の1つは、冷却時間が調整可能であり、かつ冷却完了時間が精密に確定でき、本願では、目標時間tに基づいて設定される(tがユーザ要求又は車両の実際の設計状況に応じて変更できる)。冷却完了に必要な目標時間tを決定すると、現在の電池冷却に必要な要求パワーP1を予測することができ、P1=ΔT*C*M/t+I*R。加熱機能がオンにされば、要求パワーP1=ΔT*C*M/t-I*R、つまり、電池の加熱過程において、電池の放電又は充電電流が大きければ大きほど、必要な加熱パワー、即ち要求P1が小さい。
【0455】
電池の放電又は充電電流が変化しているため、I*Rは変化し、冷却時間の正確性をよりよく確保するために、冷却パワーを電池の現在の平均放電又は充電電流の変化に伴って変化させる必要がある。車載エアコンが電池と車室を同時に冷却すれば、電池の放電電流が小さいときに、I*Rは減少し、このときに、車載エアコンはより多くの冷却パワーを車室に分配することにより、車室が設定気温に速く達する。同時に、電池の放電又は充電電流が大きいときに、I*Rは大きく、このときに、車載エアコンはより多くの冷却パワーを電池に分配することができる。このような調整により、電池冷却に必要な時間が常に正確になると共に、車載エアコンの冷却パワーをより効率的かつ合理的に利用し、冷却パワーが大きいエアコンを配置する必要がないため、冷却パワーの無駄を回避する。
【0456】
電池の冷却時間は冷却効率の影響を受け、冷却効率が外部環境温度と電池の現在の温度の影響を受け、電池の冷却過程において、温度調整システムの効率も絶えず変化するため、冷却効率は100%であるわけがなく、P1しかに基づいて電池の冷却の時間を正確に調整することができず、電池の実際パワーP2を検出する必要がある。本願では、電池の実際パワーP2は式(3)、即ちΔT*C*mに基づいて計算することができる。P2、即ち電池の実際冷却パワーP2は、式(4)、即ちΔT*C*m1に基づいて計算して取得することができ、ΔTがある時間内の電池の温度変化であり、Cが電池の比熱であり、m1が電池の質量である。しかしながら、電池の質量が大きいため、単位時間当たりに温度変化が明らかではなく、長時間を要してこそ温度差を検出することができ、リアルタイム性の要求に合致しないため、一般に式(3)に基づいてP2パワーを計算する。
【0457】
冷却効率の影響を受けるため、P2が完全にP1に等しくなりにくく、電池の冷却の目標時間tをより正確にするために、P1とP2との間のパワー差に基づいてリアルタイムに調整することにより、電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2に等しくなることを確保する必要がある。以下、具体的な実施形態を組み合わせて、どのように要求パワーP1、実際パワーP2、車内温度T及びエアコンの設定温度Tsに基づいて車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の開度を調整することにより、車両の温度を調整するかを説明する。
【0458】
本願の一実施形態によれば、図24に示すように、冷却モードにあるときに、要求パワーP1、実際パワーP2、車内温度T及びエアコンの設定温度Tsに基づいて車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の開度を調整するステップは、具体的には、以下のステップS31’~S32’を含む。
【0459】
S31’では、要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、電池の温度Tが第3の温度閾値より大きいか否かを判断する。第3の温度閾値は第1の温度閾値より大きく、例えば、第3の温度閾値は45℃であってよい。
【0460】
S32’では、電池の温度Tが第3の温度閾値より大きければ、車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ電池冷却分岐路の開度を大きくする。
【0461】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池の温度が40℃より高ければ、電池管理コントローラにより温度調整システムが冷却モードに入るように制御して、電池を冷却する。電池の冷却過程において、P1とP2を取得し、要求パワーP1が実際パワーP2より大きいと判断するときに、電池の温度が45℃より大きいか否かをさらに判断する。電池の温度が45℃より高ければ、電池の温度が高過ぎることを示し、車載エアコンは電池6の冷却要求を優先的に満たし、車載エアコンコントローラにより車内冷却分岐路の開度を小さくし、電池冷却分岐路の開度を大きくするように制御して、車内冷却分岐路の冷却液の流量を減少させ、電池冷却分岐路の冷却液の流量を増加させて、電池が降温をできるだけ速く完了する。電池の温度が35℃に低下するときに、電池の冷却は完了し、電池冷却分岐路をオフにするように制御する。これにより、電池の温度が要求を満たす場合に、車内温度が要求を満たすようにすることができる。
【0462】
本願の一実施形態によれば、図24に示すように、上記車両の温度調整方法は、さらに、以下のステップS33’~S34’を含んでよい。
【0463】
S33’では、電池の温度が第3の温度閾値より小さければ、車内温度Tがエアコンの所定温度Tsより大きいか否かをさらに判断する。
【0464】
S34’では、車内温度Tがエアコンの設定温度Tsより大きければ、車内冷却分岐路の開度を大きくし、かつ電池冷却分岐路の開度を小さくする。
【0465】
具体的には、電池の冷却過程において、電池の温度が45℃より小さいときに、車内温度Tがエアコンの設定温度Tsより大きいか否かをさらに判断する。T>Tsであれば、車内温度Tが設定温度に達せず、車内温度が高いことを示し、ユーザが不快感を覚えることを防止するために、車内冷却の要求を優先的に満たし、車載エアコンコントローラにより車内冷却分岐路の開度を大きくし、電池冷却分岐路の開度を小さくする。その一方、車内温度Tがエアコンの設定温度Tsに達し、車内冷却パワーが十分であり、かつバランスを取れば、車載エアコンコントローラにより電池冷却分岐路の開度を大きくして、電池の冷却パワーを向上させる。電池の温度が35℃に低下するときに、電池の冷却は完了し、電池冷却分岐路をオフにするように制御する。これにより、電池の温度が要求を満たす場合に、車内温度が要求を満たすようにすることができる。
【0466】
つまり、ここで、電池の温度に階層化処理を行い、温度制御の閾値がそれぞれ40℃、45℃及び35℃である。電池の温度が40℃より高いときに、電池の冷却機能がオンにされ、電池の温度が35℃に低下するときに、電池の冷却が完了する。電池の温度が45℃に達するときに、電池冷却の要求を優先的に満たす。また、要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、電池の温度が45℃より小さければ、車内冷却の要求を優先的に満たし、車内の冷却パワーが十分であり、かつバランスを取れば、電池冷却分岐路の開度を大きくして、電池の冷却パワーを向上させる。要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、車内冷却の要求を優先的に満たしてよい。
【0467】
本願の一実施形態によれば、図24に示すように、加熱モードにあるときに、要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池の温度を調整するステップは、具体的には以下のステップS35’~S37’を含む。
【0468】
S35’では、要求パワーP1が実際パワーP2より大きいか否かを判断する。
【0469】
S36’では、要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を加熱するヒーターのパワーを向上させる。
【0470】
S37’では、要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、ヒーターのパワーをそのまま保持する。
【0471】
具体的には、温度調整システムが加熱モードに入るときに、電池熱管理コントローラによりヒーターを起動させるように制御し、かつP1とP2に基づいてヒーターのパワーを調整する。P1がP2より大きければ、ヒーターが現在のパワーで加熱すれば、目標時間t内に電池の温度を目標温度に上げることができないことを示す。したがって、P1とP2との間のパワー差を継続して取得し、かつ電池熱管理コントローラによりパワー差に基づいてヒーターのパワーを向上させ、P1とP2の差が大きければ大きいほど、ヒーターのパワーの向上が多い。P1がP2以下であれば、ヒーターのパワーをそのまま保持することができる。電池の温度が所定温度、例えば10℃より高いときに、電池の加熱は完了し、CAN通信により温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンに送信し、かつ電池熱管理コントローラによりヒーターが動作を停止させるように制御する。温度調整システムが加熱モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、電池の温度が依然として10℃より低ければ、電池熱管理コントローラによりヒーターのパワーを適切に向上させて、電池が昇温をできるだけ速く完了する。これにより、電池の実際の状態に応じて温度調整パワーを精確に制御することにより、電池が目標時間内に温度調整を完了することができる。
【0472】
本願の一実施形態によれば、上記車両の温度調整方法は、さらに、以下を含んでよい。要求パワーP1が実際パワーP2より小さければ、ポンプの回転速度を低下させる。要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、ポンプの回転速度を向上させる。
【0473】
具体的には、温度調整システムが加熱モード又は冷却モードに入るときに、P1がP2より小さければ、電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を低下させるように制御して、電気エネルギーを節約する。P1がP2より大きければ、電池熱管理コントローラによりヒーターがパワーを向上させるように制御するか、又は車載エアコンコントローラにより電池冷却分岐路の開度を大きくするように制御することに加え、また、電池熱管理コントローラによりポンプの回転速度を向上させるように制御して、単位時間当たりに冷却流路の断面積を流れる冷却液質量を増加させることにより、実際パワーP2を向上させて、目標時間t内に電池の温度調整を実現することができる。
【0474】
車両は、単一電池を含んでもよく、複数の電池を直列接続し、並列接続するか又は直並列接続して構成されてもよい。図19~20に示すように、電池が2つあることを例として、電池が2つ(第1の電池と第2の電池)であるときに、それに応じてポンプが2つあり、かつ2つのポンプの一方が順方向ポンプ、他方が逆方向ポンプである。
【0475】
温度調整システムが冷却モードに入るときに、コントローラは、各電池のP1、各電池の実際パワーP2及び単一コンプレッサーの最大冷却パワーPをそれぞれ取得し、かつ各電池のP1を加算して温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、各電池の実際パワーP2を加算して総温度調整実際パワーPfを得る。第1の電池の要求パワーはP11であり、第2の電池の要求パワーはP12である。第1の電池の実際パワーはP21であり、第2の電池の実際パワーはP22である。コンプレッサーの最大冷却パワーはPである。
【0476】
総要求パワーPzと車内冷却の要求パワーP4の和がコンプレッサーの最大冷却パワーP以下であり、即ちPz+P4≦Pであれば、コンプレッサーはPz+P4冷却パワーで運転する。
【0477】
Pz+P4>Pであれば、第1の電池又は第2の電池の温度が45℃より大きいか否かを判断し、45℃より大きければ、電池冷却に冷却パワーを優先的に供給し、コントローラはコンプレッサー1が最大冷却パワーPで運転するように制御し、電池冷却分岐路4の冷却パワーはPzであり、車内冷却分岐路3の冷却パワーはP-Pzに等しい。
【0478】
電池の温度が45℃以下であると判断し、かつ車内温度が設定温度に達しなければ、車内に冷却パワーを優先的に供給し、コンプレッサー1が最大冷却パワーPで運転し、車内冷却分岐路の冷却パワーがP4であり、電池冷却分岐路の冷却パワーがP-P4に等しい。
【0479】
車内温度が設定温度に達すれば、電池の冷却パワーを優先的に満たす。電池冷却分岐路の冷却パワーはPzである。
【0480】
第1の電池と第2の電池の温度調整の実際パワーの和はPfであり、Pz>Pfであるときに、調整すべきパワーはPc(Pc=Pz-Pf)である。Pz+P4+Pc≦Pであれば、コンプレッサーが向上すべき冷却パワーはPcであり、第2の膨張弁の開度を大きくし、ポンプの回転速度を向上させる。同時に以下の処理を行う。
【0481】
P11-P21=Pc1、P12-P22=Pc2、P11>P21、P12>P22であれば、
Pc1が設定値より大きいときに、コントローラは順方向ポンプを起動させ、逆方向ポンプが動作を停止させるように制御することにより、第1の電池の冷却パワーを向上させる。Pc2が設定値より大きいときに、コントローラは逆方向ポンプを起動させ、順方向ポンプが動作を停止させるように制御することにより、第2の電池の冷却パワーを向上させる。Pc1>Pc2であるときに、コントローラは順方向ポンプを起動させ、逆方向ポンプが動作を停止させるように制御することにより、第1の電池の冷却パワーを向上させる。Pc1≦Pc2であるときに、コントローラは逆方向ポンプを起動させ、順方向ポンプが動作を停止させるように制御することにより、第2の電池の冷却パワーを向上させる。
【0482】
そして、第1の電池の温度T61が第2の電池の温度T62より大きいときに、コントローラは順方向ポンプを起動させ、逆方向ポンプが動作を停止させるように制御することにより、第1の電池の冷却パワーを向上させる。第1の電池の温度T61が第2の電池の温度T62以下であるときに、コントローラは逆方向ポンプを起動させ、順方向ポンプが動作を停止させるように制御することにより、電池の冷却パワーを向上させる。
【0483】
P21-P11=Pc1、P22-P12=Pc2、P11≦P21、P12≦P22であれば、以下のように処理してよい。
【0484】
Pc1が設定値より大きいときに、コントローラは順方向ポンプが動作を停止させ、逆方向ポンプを起動させるように制御することにより、第1の電池の冷却パワーを低下させる。Pc2が設定値より大きいときに、コントローラは逆方向ポンプが動作を停止させ、順方向ポンプを起動させるように制御することにより、第2の電池の冷却パワーを低下させる。Pc1>Pc2であるときに、コントローラは順方向ポンプが動作を停止させ、逆方向ポンプを起動させるように制御することにより、第1の電池の冷却パワーを低下させる。Pc1≦Pc2であるときに、コントローラは逆方向ポンプが動作を停止させ、順方向ポンプを起動させるように制御することにより、第2の電池の冷却パワーを低下させる。
【0485】
そして、第1の電池の温度T61が第2の電池の温度T62より大きいときに、順方向ポンプを起動させ、逆方向ポンプが動作を停止させるように制御することにより、第1の電池の冷却パワーを向上させる。第1の電池の温度T61が第2の電池の温度T62以下であるときに、逆方向ポンプを起動させ、順方向ポンプが動作を停止させるように制御することにより、電池の冷却パワーを向上させる。
【0486】
また、第1の電池と第2の電池の冷却機能がオンにされているときに、第1の電池の温度が第2の電池の温度より高く、かつ差が所定値を超えれば、順方向ポンプが動作するように制御して、冷却液が第1の電池を流れてから、第2の電池を流れるようにすることにより、第1の電池が降温をできるだけ速く完了してよい。その一方、第2の電池の温度が第1の電池の温度より高く、かつ差が所定値を超えれば、逆方向ポンプが動作するように制御して、冷却液が第2の電池を流れてから、第1の電池を流れるようにすることにより、第2の電池が降温をできるだけ速く完了する。これにより、冷却液の流れを変化させることにより、第1の電池と第2の電池の温度差を小さくすることができる。
【0487】
第1の電池と第2の電池の冷却機能と加熱機能がいずれもオンにされていないときに、第1の電池と第2の電池の温度差が所定値を超えれば、順方向ポンプ又は逆方向ポンプを起動させるように制御して、電池冷却分岐路中の冷却液が流れるようにすることにより、第1の電池と第2の電池の温度をバランスさせる。
【0488】
本願の実施形態の車両の温度調整方法によれば、まず、電池の温度調整の要求パワーを取得し、次に電池の温度調整の実際パワーを取得し、最後に温度調整の要求パワー、温度調整の実際パワー、車内温度及びエアコンの設定温度に基づいて車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の開度を調整する。これにより、該方法は、車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の開度を調整することにより、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を迅速に調整して、車載電池の温度を所定の範囲に維持して、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避するだけでなく、電池の温度が要求を満たす場合に、車内温度が要求を満たすようにすることもできる。
【0489】
電池、冷却分岐路、車内冷却分岐路及び電池冷却分岐路が複数あるときに、車載電池の温度調整システムは、複数の冷却分岐路、複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び電池温度調整モジュールを含む。
【0490】
各冷却分岐路は、コンプレッサー1、コンプレッサー1と接続されたコンデンサ2を含む。複数の車内冷却分岐路はそれぞれ複数の冷却分岐路と接続される。電池温度調整モジュール5は電池冷却分岐路と接続され、要求パワーP1と実際パワーP2を取得し、かつ車両の複数の領域の領域温度Tqとエアコンの設定温度Tsを取得し、そして、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の電池冷却分岐路の開度を調整する。
【0491】
本願の実施形態では、電池は電池パック又は電池モジュールであってよい。各電池冷却分岐路は、並列又は直列接続された複数の電池に対応する。
【0492】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、電池温度調整モジュール5は、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて、目標時間t内に複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整することにより、目標温度に達する。
【0493】
例として、図25~27に示すように、冷却分岐路、電池冷却分岐路、車内冷却分岐路及び電池が2つあることを例として、電池はそれぞれ第1の電池61と第2の電池62であり、冷却分岐路はそれぞれ第1の冷却分岐路11と第2の冷却分岐路12であり、電池冷却分岐路はそれぞれ第1の電池冷却分岐路401と第2の電池冷却分岐路402であり、車内冷却分岐回路はそれぞれ第1の車内冷却分岐路301と第2の車内冷却分岐路302である。図25及び図26において、電池が直列接続され、図27において、電池が並列接続される。第1の電池61及び/又は第2の電池62の温度が高過ぎる/低過ぎるときに、第1の電池61及び/又は第2の電池62に温度調整を行う必要がある。電池温度調整モジュール5は要求パワーP1と実際パワーP2を取得し、P1とP2に基づいて複数の電池冷却分岐路の開度を調整して、電池の冷却パワーを調整し、かつ電池温度調整モジュール5は複数の領域温度Tqとエアコンの設定温度Tsを取得し、かつTqとTsに基づいて各電池冷却分岐路の開度を制御し、例えば、ある領域のTqが高く、かつ他の領域のTqとの差が大きければ、電池温度調整モジュール5は該領域を冷却する車内冷却分岐路の開度を大きくするように制御すると共に、対応する電池冷却分岐路の開度を小さくするように制御し、同時に、電池の冷却パワーが変化しないことを保証するために、電池温度調整モジュール5は別の車内冷却分岐路の開度を小さくするように制御すると共に、対応する電池冷却分岐路の開度を大きくするように制御する。これにより、該システムは各電池の実際の状態、車室内の複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて、電池と車室内の各領域の冷却力を分配し、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持するだけでなく、車室内の各領域の温度をバランスさせることができる。
【0494】
電池温度調整モジュール5の冷却パワーが車載エアコンによって供給され、車内冷却システムと冷却力を共用することにより、温度調整システムの体積を減少させ、冷却液の流量の分配をより柔軟にすると理解すべきである。
【0495】
本願の一実施形態によれば、電池冷却分岐路は熱変換器41を含んでよく、熱変換器41は電池温度調整モジュール5と接続される。熱変換器41は第1の配管と第2の配管を含んでよく、第2の配管は電池温度調整モジュール5と接続され、第1の配管はコンプレッサー1と連通し、第1の配管と第2の配管が相互に独立し隣接して設置される。電池温度調整モジュール5は、電池内に設置され、電池温度を調整する流路(具体的に図示せず)と、流路と熱変換器41との間に接続されたポンプ51と、媒体容器52と、ヒーター53と、コントローラ(具体的に図示せず)とを含んでよい。コントローラは、電池の要求パワーP1と電池の実際パワーP2を取得し、かつ要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池の温度を調整する。車内冷却分岐路は、エバポレーター31、第1の膨張弁32及び第1の電子弁33を含んでよい。電池冷却分岐路4は、第2の膨張弁42及び第2の電子弁43をさらに含んでよい。
【0496】
図27に示すように、電池が複数で並列接続されるときに、各電池の流路の入口に弁58がさらに設置される。コントローラは各電池の対応するP1とP2に基づいて弁58を制御することにより、それぞれ各電池に流入する冷却液の流量を制御して、各電池の加熱パワー/冷却パワーを精確に制御することができる。
【0497】
本願の一実施形態によれば、図19~20に示すように、電池が複数あり、かつ流路が直列接続されるときに、複数の電池は電池の冷却液の流量を調整する複数のポンプに対応し、かつ上記ポンプが双方向ポンプである。
【0498】
図25~27に示すように、電池が2つあることを例として、電池が2つあり(第1の電池61と第2の電池62)、かつ直列接続されるときに、それに応じてポンプが2つあり、かつ2つのポンプの一方が順方向ポンプ511、他方が逆方向ポンプ512である。
【0499】
図25に示すように、順方向ポンプ511が起動されるときに、第2の配管内の冷却液の流れは、媒体容器52-熱変換器41-ヒーター53-順方向ポンプ511-第1の温度センサ55-第1の電池61-第2の電池62-第2の温度センサ56-流速センサ57-媒体容器52である。図26に示すように、逆方向ポンプ512が起動されるときに、第2の配管内の冷却液の流れは、媒体容器52-流速センサ57-第2の温度センサ56-第2の電池62-第1の電池61-第1の温度センサ55-逆方向ポンプ512-ヒーター53-熱変換器41-媒体容器52である。
【0500】
また、第1の電池61と第2の電池62の冷却機能がオンにされているときに、第1の電池61の温度が第2の電池62の温度より高く、かつ差が所定値を超えれば、コントローラは順方向ポンプ511が動作するように制御して、冷却液が第1の電池61を流れてから、第2の電池62を流れるようにすることにより、第1の電池61が降温をできるだけ速く完了する。その一方、第2の電池62の温度が第1の電池61の温度より高く、かつ差が所定値を超えれば、コントローラは逆方向ポンプ512が動作するように制御して、冷却液が第2の電池62を流れてから、第1の電池61を流れるようにすることにより、第2の電池62が降温をできるだけ速く完了する。これにより、冷却液の流れを変化させることにより、第1の電池61と第2の電池62の温度差を小さくすることができる。第1の電池61と第2の電池62の冷却機能と加熱機能がいずれもオンにされていないときに、第1の電池61と第2の電池62の温度差が所定値を超えれば、コントローラは順方向ポンプ511が動作するように制御して、電池冷却分岐路4中の冷却液が流れるようにすることにより、第1の電池61と第2の電池62の温度をバランスさせる。
【0501】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて要求パワーP1と実際パワーP2をどのように取得するかを説明する。
【0502】
本願の一実施形態によれば、コントローラは各電池の温度調整開始時の第1のパラメータをそれぞれ取得し、第1のパラメータに基づいて各電池の第1の要求パワーを生成し、そして、各電池の温度調整中の第2のパラメータをそれぞれ取得し、第2のパラメータに基づいて各電池の第2の要求パワーを生成すると共に、各電池の第1の要求パワーと各電池の第2の要求パワーに基づいて各電池の要求パワーP1を生成する。
【0503】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、第1のパラメータは電池の温度調整開始時の初期温度、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tであり、コントローラは、初期温度と目標温度との間の第1の温度差ΔTを取得し、かつ第1の温度差ΔTと目標時間tに基づいて第1の要求パワーを生成する。
【0504】
好ましくは、コントローラは下式(1)に基づいて第1の要求パワーを生成し、
ΔT*C*M/t (1)
ΔTが初期温度と目標温度との間の第1の温度差であり、tが目標時間であり、Cが電池6の比熱であり、Mが電池の質量である。
【0505】
第2のパラメータは所定の時間内の各電池の平均電流Iであり、コントローラは下式(2)に基づいて第2の要求パワーを生成し、
*R (2)
Iが平均電流であり、Rが電池の内部抵抗である。
【0506】
電池を冷却するときに、P1=ΔT*C*M/t+I*R、電池を加熱するときに、P1=ΔT*C*M/t-I*R。
【0507】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、それぞれ各電池の所在する回路の第1の温度センサ55によって検出された入口温度と第2の温度センサ56によって検出された出口温度に基づいて、各電池の第2の温度差ΔTを生成し、かつ各電池の第2の温度差ΔT、及び流速センサ57によって検出された流速vに基づいて各電池の実際パワーP2を生成する。
【0508】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(3)に基づいて実際パワーP2を生成し、
ΔT*c*m (3)
ΔTが第2の温度差であり、cが流路中の冷却液の比熱であり、mが単位時間当たりに流路の断面積を流れる冷却液の質量であり、m=v*ρ*sであり、vが冷却液の流速であり、ρが冷却液の密度であり、sが流路の断面積である。
【0509】
具体的には、図19~20に示すように、車両がパワーアップされると、コントローラは車両に温度調整を行う必要があるか否かを判断し、車両に温度調整を行う必要があると判断すれば、温度調整機能をオンにし、かつ低い回転速度情報をポンプ51に送信し、ポンプが初期設定回転速度(例えば、低い回転速度)で動作を開始させる。コントローラは各電池の初期温度(即ち、現在の温度)、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tを取得し、目標温度と目標時間tが実際の状況に応じて予め設定されてよく、そして式(1)に基づいて各電池の第1の要求パワーを計算する。同時に、コントローラは、所定の時間内の各電池の平均電流Iをそれぞれ取得し、式(2)に基づいて各電池の第2の要求パワーを計算する。その後に、コントローラは、それぞれ各電池の第1の要求パワーと第2の要求パワーに基づいて要求パワーP1を計算する。そして、図19~20に示すように、電池が直列接続されるときに、コントローラは、第1の温度センサ55と第2の温度センサ56の検出温度情報を取得し、かつ流速センサによって検出された流速情報をそれぞれ取得し、式(3)に基づいて電池の実際パワーP2を計算する。図27に示すように、電池が並列接続されるときに、コントローラは、各電池の対応して設置された第1の温度センサ55と第2の温度センサ56の検出温度情報をそれぞれ取得すると共に、流速センサ57によって検出された流速情報をそれぞれ取得し、式(3)に基づいて各電池6の実際パワーP2をそれぞれ計算する。
【0510】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて、どのように要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路(30及び30)、複数の電池冷却分岐路(401及び402)及び複数の冷却分岐路(11及び12)の開度を調整するかを説明する。
【0511】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに複数の電池の要求パワーP1に基づいて総要求パワーPzを生成し、かつ総要求パワーPzが車載エアコンの最大冷却パワーPと整合するか否かを判断し、整合すれば、コントローラは複数の並列接続された電池の総要求パワーの要求パワーP1に基づいて電池を冷却し、整合しなければ、コントローラはコンプレッサーの最大冷却パワーPと複数の電池冷却分岐路の要求パワーP1に基づいて電池を冷却する。
【0512】
具体的には、図27に示すように、電池の冷却機能がオンにされているときに、コントローラは、各電池の要求パワーP1に基づいて温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、つまり、各電池の要求パワーP1を加算すれば、総要求パワーPzを得ることができる。そして、総要求パワーPzに基づいてPzが車載エアコンの最大冷却パワーPと整合するか否かを判断し、つまり、PzがP以下であるか否かを判断し、そうであれば、コントローラは、各電池の要求パワーP1に基づいて弁58を制御することにより各電池を冷却する。その一方、Pzが車載エアコンの最大冷却パワーPと整合せず、つまり、PzがPより大きければ、コントローラは、エアコンの最大冷却パワーPと各電池の要求パワーP1に基づいて、弁58の開度により、割合に応じて冷却液の流量の分配を行うことにより、最大効率で各電池は降温を完了することができる。
【0513】
本願の一実施形態によれば、複数の冷却分岐路は、それぞれ複数の吹き出し口に対応し、複数の領域温度は複数の吹き出し口の温度である。
【0514】
例として、図28に示すように、車室内に4つの吹き出し口が設置されてよく、それぞれが吹き出し口1~4である。吹き出し口の温度Tcを検出することにより対応する領域温度Tqを検出する。吹き出し口1と吹き出し口2は、第1の冷却分岐路11によって冷却パワーが供給され、吹き出し口3と吹き出し口4は、第2の冷却分岐路12によって冷却パワーが供給されると仮定する。
【0515】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに、複数の電池の温度を検出し、かつ複数の並列接続された電池のうちのいずれか1つの電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、複数の電池のうちのいずれか1つの電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに温度調整システムが加熱モードに入るように制御する。第1の温度閾値と第2の温度閾値は実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、第1の温度閾値が40℃であってよく、第2の温度閾値が0℃であってよい。
【0516】
具体的には、車両がパワーアップされると、コントローラは各電池の温度をリアルタムに検出し、かつ判断する。そのうちのある電池の温度が40℃より高ければ、このときに該電池の温度が高過ぎることを示し、高温が該電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池に降温処理を行う必要があり、コントローラは、温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、かつ電池冷却機能をオンにするという情報をエアコンシステムに送信し、そして、第2の電子弁43を開弁するように制御することにより、冷却液と電池は熱変換を行って該電池の温度を下げる。
【0517】
ある電池の温度が0℃より低ければ、このときに該電池6の温度が低過ぎることを示し、低温が該電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池に昇温処理を行う必要があり、コントローラは温度調整システムが加熱モードに入るように制御し、第2の電子弁43を閉弁するように制御し、かつヒーター53を起動させるように制御することにより、温度調整システムに加熱パワーを供給する。
【0518】
本願の一実施形態によれば、冷却モードにあるときに、コントローラは、さらに、電池冷却分岐路の要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、電池温度が第3の温度閾値より大きいか否かを判断し、電池温度が第3の温度閾値より大きければ、コントローラは複数の車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ複数の電池冷却分岐路の開度を大きくし、複数の電池冷却分岐路の開度は対応する弁(即ち、第2の膨張弁42)によりそれぞれ制御され、第3の温度閾値が第1の温度閾値より大きく、例えば、第3の温度閾値が45℃であってよい。
【0519】
具体的には、冷却モードにあるときに、P1がP2より大きければ、コントローラは電池の温度が45℃より大きいか否かを判断する。いずれか1つの電池の温度が45℃より大きければ、現在の電池の温度が高過ぎることを示し、コントローラは第1の膨張弁32の開度を小さくして、車内冷却分岐路の冷却液の流量を減少させると共に、第2の膨張弁42の開度を大きくして、電池冷却分岐路の冷却液の流量を増加させる。ことにより、車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の冷却力の分配を調整することにより、電池の温度が高過ぎるときに目標時間内に電池の温度調整を完了することができる。
【0520】
本願の一実施形態によれば、冷却モードにあるときに、コントローラは、さらに、ある電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2より大きいときに、電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を冷却するコンプレッサー1のパワーを向上させたり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の冷却パワーを向上させ、ある電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2以下であるときに、コンプレッサーのパワーを低下させるか又はコンプレッサーのパワーをそのまま保持したり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の冷却パワーを低下させる。
【0521】
具体的には、冷却モードで動作するときに、電池が複数あれば、コントローラは各電池のP1とP2をそれぞれ取得し、かつ判断する。そのうちのある電池のP1がP2より大きければ、現在の冷却パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池の降温を完了できないことを示すため、コントローラは該電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいてコンプレッサー1のパワーを向上させたり、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を増加させたりすることにより、該電池の冷却パワーを向上させ、P1とP2のパワー差が大きければ大きいほど、コンプレッサー1のパワーを多く向上させ該電池の冷却液の流量を多く増加させることにより、所定の時間t内に該電池の温度を目標温度に下げる。その一方、そのうちのある電池のP1がP2以下であれば、コンプレッサー1のパワーをそのまま保持するか又はコンプレッサー1のパワーを適切に低下させたり、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を減少させたりして、電池の冷却パワーを低下させる。すべての電池の温度が35℃より低いときに、電池の冷却は完了し、コントローラはCAN通信により温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンに送信し、かつ第2の電子弁43を閉弁するように制御する。温度調整システムが冷却モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が35℃より高い電池が依然として存在すれば、コントローラはコンプレッサーのパワーを適切に向上させて、該電池が降温をできるだけ速く完了する。
【0522】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに、ある電池の温度が第3の温度閾値より小さく、かつ車内温度がエアコンの設定温度Tsに等しいときに、複数の車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ複数の電池冷却分岐路の開度を大きくする。
【0523】
具体的には、冷却モードにあるときに、各電池の温度が45℃より小さければ、コントローラは車内温度がエアコンの設定温度Tsに達するか否かを判断する。達すれば、コントローラは第1の膨張弁32の開度を小さくし、かつ第2の膨張弁42の開度を大きくして、電池冷却分岐路の冷却液の流量を増加させ、車内冷却分岐路の冷却液の流量を減少させて、電池の降温をできるだけ速く完了する。その一方、車内温度がエアコンの設定温度Tsに達しなければ、車内の冷却要求を優先的に満たし、コントローラは第1の膨張弁32の開度を大きくし、かつ第2の膨張弁42の開度を小さくする。
【0524】
また、電池の温度に階層化処理を行い、温度制御の閾値がそれぞれ40℃、45℃及び35℃である。電池の温度が40℃より高いときに、電池の冷却機能がオンにされ、電池の温度が35℃に低下するときに、電池の冷却が完了する。電池の温度が45℃に達するときに、電池冷却の要求を優先的に満たす。また、要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、電池の温度が45℃を超えなければ、依然として車内冷却の要求を優先し、車内の冷却パワーが十分であり、かつバランスを取れば、コントローラは電池冷却分岐路の開度を大きくして、電池の冷却パワーを向上させる。要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、車内冷却の要求を優先的に満たしてよい。
【0525】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに、複数の領域温度間の温度差を取得し、かつ温度差が第4の温度閾値より大きいときに、温度が高い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する車内冷却分岐路の開度を大きくし、かつ温度が高い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する電池冷却分岐路の開度を小さくする。第4の温度閾値が実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、3℃であってよい。
【0526】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに、温度が低い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ温度が低い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する電池冷却分岐路の開度を大きくする。
【0527】
具体的には、電池の冷却過程において、車内にエアコンを起動する必要があれば、車室内の環境温度を監視し制御することにより、車内の各箇所の環境温度がバランスをとれると共に、電池冷却の要求を満たす。図28に示すように、吹き出し口1と吹き出し口2における領域温度Tqが吹き出し口3と吹き出し口4における近傍領域温度Tqより3℃以上高いと検出するときに、コントローラは、第1の車内冷却分岐路301中の第1の膨張弁32の開度を大きくするように制御すると共に、第1の電池冷却分岐路401中の第2の膨張弁42の開度を小さくするように制御して、第1の車内冷却分岐路301中の冷却パワーを向上させる。コントローラは、さらに第2の車内冷却分岐路302中の第1の膨張弁32の開度を小さくし、第2の電池冷却分岐路402中の第2の膨張弁42の開度を大きくするように制御して、第2の車内冷却分岐路302中の冷却パワーを低下させる。これにより、第1の電池冷却分岐路401と第2の電池冷却分岐路402の冷却パワーを変化させないと共に、車内の各箇所の吹き出し口における近傍領域温度をバランスさせる。車載エアコンが吹き出し口1、吹き出し口2における近傍領域温度Tqと吹き出し口3、吹き出し口4における近傍領域温度Tqとの差が3℃以内であると検出するときに、コントローラは、第1の車内冷却分岐路301と第2の車内冷却分岐路302中の第1の膨張弁32の開度が同じになるように制御して、第1の車内冷却分岐路301と第2の車内冷却分岐路302の冷却パワーが同じになることを保証する。
【0528】
本願の一実施形態によれば、加熱モードにあるときに、コントローラは、ある電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2より大きいときに、電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を加熱するヒーターのパワーを向上させたり、上記電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、上記電池の加熱パワーを向上させ、そして、ある電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2以下であるときに、ヒーターのパワーを低下させるか又はヒーターのパワーをそのまま保持したり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の加熱パワーを低下させる。
【0529】
具体的には、温度調整システムが加熱モードに入るときに、コントローラは各電池のP1とP2をそれぞれ取得し、かつ判断する。そのうちのある電池のP1がP2より大きければ、現在の加熱パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池の昇温を完了できないことを示すため、コントローラは該電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を加熱するヒーター53のパワーを向上させたり、対応するポンプ51の回転速度を調整して向上させたりして、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を増加させることにより、該電池が目標時間t内に温度調整を完了する。P1とP2の差が大きければ大きいほど、ヒーター53のパワーの向上が多い。その一方、ある電池のP1がP2以下であれば、コントローラは、ヒーター53のパワーを適切に低下させて電気エネルギーを節約したり、対応するポンプ51の回転速度を調整して低下させることにより、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を減少させて、加熱パワーを低下させたり、ヒーター53のパワーをそのまま保持したりしてよい。すべての電池の温度が所定温度、例えば10℃より高いときに、電池の加熱は完了し、コントローラはCAN通信により温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンに送信し、かつヒーター53が動作を停止させるように制御する。温度調整システムが加熱モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が10℃より低い電池が依然として存在すれば、コントローラはヒーター53のパワーを適切に向上させて、該電池が昇温をできるだけ速く完了する。
【0530】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より小さいときに、ポンプ51の回転速度を低下させ、そして、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より大きいときに、ポンプ51の回転速度を向上させる。
【0531】
具体的には、温度調整システムが加熱モード又は冷却モードに入るときに、ある電池のP1がP2より小さければ、コントローラは対応するポンプ51の回転速度を低下させるように制御して、電気エネルギーを節約する。ある電池6のP1がP2より大きければ、コントローラは対応するヒーター53又はコンプレッサー1のパワーを向上させるか又は該電池の所在する回路の冷却液の流量を増加させるように制御することに加え、また、ポンプ51の回転速度を向上させるように制御して、単位時間当たりに冷却流路の断面積を流れる冷却液の質量を増加させることにより、該電池の実際パワーP2を向上させて、目標時間t内に温度調整を実現することができる。
【0532】
本願の一実施形態によれば、図27に示すように、複数の電池が並列接続されるときに、コントローラは、さらに、冷却モードにあるときに、電池間の温度差が設定値を超えるときに、温度が高い電池の冷却パワーを向上させ、加熱モードにあるときに、電池間の温度差が設定値を超えるときに、温度が低い電池の加熱パワーを向上させる。設定値が3℃であってよい。
【0533】
具体的には、図27に示すように、電池が並列接続されるときに、各電池の流路の入口に弁58がさらに設置され、冷却モードにあると、電池間の温度差が3℃を超えるときに、コントローラは、温度が高い電池の所在する電池冷却分岐路中の弁58の開度を大きくすることにより、温度が高い電池の冷却パワーを向上させる。温度調整システムが加熱モードに入るときに、電池間の温度差が3℃を超えると、コントローラは、温度が低い電池の所在する電池冷却分岐路中の弁58の開度を大きくすることにより、温度が低い電池の加熱パワーを向上させる。
【0534】
本願の一実施形態によれば、図27に示すように、複数の電池が並列接続されるときに、冷却モードにあるときに、コントローラは、各分岐流路の冷却液の流量を個別に制御し、かつ各電池の温度調整の要求パワーに基づいて、各電池モジュールの流路の冷却液の流量を調整することにより、各電池の温度調整の実際パワーと温度調整の要求パワーが等しい。
【0535】
具体的には、図27に示すように、冷却モードにあるときに、コントローラは、第2の膨張弁42の開度を制御することにより、第1の電池冷却分岐路401と第2の電池冷却分岐路402の冷却液の流量をそれぞれ制御し、かつ弁58の開度を制御することにより、第1の電池61と第2の電池62の流路に流入する冷却液の流量をそれぞれ制御することにより、各電池の温度調整の実際パワーP1と温度調整の要求パワーP2が等しくて、電池の温度調整をできるだけ速く完了する。
【0536】
本願の一実施形態によれば、図19~20に示すように、電池が複数あり、かつ流路が直列接続されるときに、複数の電池は電池の冷却液の流量を調整する複数のポンプに対応し、かつポンプが双方向ポンプである。
【0537】
当業者が本願をより明確に理解できるように、以下、具体的な例を組み合わせて、車載電池の温度調整システムの動作過程を説明する。
【0538】
図27図11に比べて、主にコンプレッサーの冷却回路を追加すると共に、車内エアコンの吹き出し口の温度バランスとコンプレッサー間のパワー調整の問題を増加させるという点で相違する。以下、相違点のみを示し、その他について説明を省略する。
【0539】
図27に示すように、電池が複数あり、温度調整システムが冷却モードに入るときに、コントローラは、各電池6のP1、各電池の実際パワーP2及び単一コンプレッサーの最大冷却パワーPをそれぞれ取得し、かつ各電池のP1を加算すれば温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、各電池の実際パワーP2を加算すれば総温度調整の実際パワーPfを得て、各コンプレッサーの最大冷却パワーを加算すればすべてのコンプレッサーの最大冷却パワーの和P5を計算することができる。P51はコンプレッサー11の最大冷却パワーであり、P52はコンプレッサー12の最大冷却パワーであり、P5はすべてのコンプレッサーの最大冷却パワーの和であり、P5=P51+P52。第1の電池61の要求パワーはP11であり、第2の電池62の要求パワーはP12である。第1の電池61の実際パワーはP21であり、第2の電池62の実際パワーはP22である。
【0540】
Pz≦P51であれば、1つのコンプレッサー1を動作させて、冷却パワーを供給するように制御してもよく、2つのコンプレッサー1を同時に動作させるように制御してもよい。P51<Pz≦P5であれば、2つのコンプレッサーを同時に動作させる必要があり、各コンプレッサーの初期冷却パワーをPz/2にし、或いは、他のパワーを組み合わせる形式により、2つのコンプレッサーの冷却パワーの和をPzにする。Pz>P5であれば、2つのコンプレッサーを同時に動作させる必要があり、各コンプレッサーが最大冷却パワーで運転する。車内冷却分岐路の温度調整の要求パワーはP4であり、つまり、P4は車内温度を設定温度に調整するのに必要なパワーである。
【0541】
車内冷却と電池冷却が同時にオンにされるときに、吹き出し口1、吹き出し口2の領域温度がT51であり、吹き出し口3、吹き出し口4の領域温度がT52であると仮定する。
【0542】
T51-T52≧Tc、Tcが3℃であれば、以下の処理を行う。
【0543】
Pz+P4≦P5であれば、コントローラは第1のコンプレッサー11の冷却パワーを向上させるように制御したり、第1のコンプレッサー11の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁の開度を小さくするように制御し、車内冷却回路の膨張弁の開度を大きくするように制御したり、第2のコンプレッサー12の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁を大きくするように制御すると共に、車内冷却回路の膨張弁の開度を小さくするように制御したりすることにより、T51温度を迅速に下げると共に、電池の冷却パワーの要求を満たして、車内環境温度のバランスを実現する。
【0544】
Pz+P4>P5であれば、コントローラは第1のコンプレッサー11と第2のコンプレッサー12が最大冷却パワーで運転するように制御すると共に、第1のコンプレッサー11の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁の開度を小さくするように制御し、車内冷却回路の膨張弁の開度を大きくするように制御したり、第2のコンプレッサー12の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁を大きくするように制御すると共に、車内冷却回路の膨張弁の開度を小さくするように制御したりすることにより、T51温度を迅速に下げると共に、電池の冷却パワーの要求を満たして、車内環境温度のバランスを実現する。
【0545】
T51-T52≧Tc、Tcが3℃であれば、以下の処理を行ってよい。
【0546】
コントローラは第1のコンプレッサー11の冷却回路中の電池冷却分岐路をオフにするように制御し、車内冷却回路の膨張弁の開度を大きくするように制御することにより、第1のコンプレッサー11のすべての冷却パワーを車内冷却に用いる。第2のコンプレッサー12の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁を大きくするように制御すると共に、車内冷却回路の膨張弁の開度を小さくするように制御して、電池への冷却パワーを向上させることにより、T51温度を迅速に下げると共に、電池の冷却パワーの要求を満たして、車内環境温度のバランスを実現する。本願の実施形態の車載電池の温度調整システムによれば、各電池の実際の状態、車室内の複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて、電池と車室内の各領域の冷却力を分配し、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持するだけでなく、車室内の各領域の温度をバランスさせることができる。
【0547】
車載電池の温度調整システムが複数の電池冷却分岐路、複数の車内冷却分岐路及び複数の冷却分岐路を含むときに、図29に示すように、車載電池の温度調整方法は、以下のステップS1”’~S3”’を含む。
【0548】
S1”’では、複数の電池冷却分岐路中の複数の電池の要求パワーP1と実際パワーP2をそれぞれ取得する。電池冷却分岐路は、対応する電池に温度調整を行う。
【0549】
本願の一実施形態によれば、図30に示すように、複数の電池の温度調整の要求パワーをそれぞれ取得するステップは、具体的に以下のステップS11”’~S13”’を含む。
【0550】
S11”’では、各電池の温度調整開始時の第1のパラメータをそれぞれ取得し、かつ第1のパラメータに基づいて各電池の第1の要求パワーを生成する。
【0551】
S12”’では、各電池の温度調整中の第2のパラメータを取得し、かつ第2のパラメータに基づいて各電池の第2の要求パワーを生成する。
【0552】
S13”’では、各電池の第1の要求パワーと第2の要求パワーに基づいて電池冷却分岐路の要求パワーP1を生成する。
【0553】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、第1のパラメータは電池の温度調整開始時の初期温度、目標温度、及び初期温度から上記目標温度になるまでの目標時間tであり、第1のパラメータに基づいて第1の要求パワーを生成するステップは、具体的には、初期温度と目標温度との間の第1の温度差ΔTを取得するステップと、第1の温度差ΔTと目標時間tに基づいて第1の要求パワーを生成するステップとを含む。
【0554】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(1)に基づいて第1の要求パワーを生成し、
ΔT*C*M/t (1)
ΔTが初期温度と目標温度との間の第1の温度差であり、tが目標時間であり、Cが電池の比熱であり、Mが電池の質量である。
【0555】
本願の一実施形態によれば、第2のパラメータは所定の時間内の電池の平均電流Iであり、下式(2)に基づいて第2の要求パワーを生成し、
*R (2)
Iが平均電流であり、Rが電池の内部抵抗である。
【0556】
電池を冷却するときに、P1=ΔT*C*M/t+I*R、電池を加熱するときに、P1=ΔT*C*M/t-I*R。
【0557】
本願の一実施形態によれば、図30に示すように、複数の電池の実際パワーP2を取得するステップは、具体的に以下のステップS14”’~S16’を含む。
【0558】
S14”’では、複数の電池の温度を調整する流路の入口温度と出口温度を取得すると共に、冷却液が流路に流入する流速vを取得する。
【0559】
S15’では、複数の電池の流路の入口温度と出口温度に基づいて複数の電池の第2の温度差ΔTを生成する。
【0560】
S16’では、複数の電池の第2の温度差ΔTと流速vに基づいて複数の電池の実際パワーP2を生成する。
【0561】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(3)に基づいて実際パワーP2を生成し、
ΔT*c*m (3)
ΔTが第2の温度差であり、cが流路中の冷却液の比熱であり、mが単位時間当たりに流路の断面積を流れる冷却液の質量であり、m=v*ρ*sであり、vが冷却液の流速であり、ρが冷却液の密度であり、sが流路の断面積である。
【0562】
S2”’では、車両の複数の領域の領域温度Tqとエアコンの設定温度Tsをそれぞれ取得する。
【0563】
S3”’では、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整する。
【0564】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の上記領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて、目標時間t内に複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整することにより、目標温度に達する。
【0565】
図19~20に示すように、各電池冷却分岐路は、並列又は直列接続された複数の電池に対応する。
【0566】
具体的には、冷却分岐路、電池冷却分岐路、車内冷却分岐路及び電池が2つあることを例として、電池はそれぞれ第1の電池と第2の電池であり、冷却分岐路はそれぞれ第1の冷却分岐路と第2の冷却分岐路であり、電池冷却分岐路はそれぞれ第1の電池冷却分岐路と第2の電池冷却分岐路であり、車内冷却分岐回路はそれぞれ第1の車内冷却分岐路と第2の車内冷却分岐路である。第1の電池及び/又は第2の電池の温度が高過ぎる/低過ぎるときに、第1の電池及び/又は第2の電池に温度調整を行う必要がある。要求パワーP1と実際パワーP2を取得し、P1とP2に基づいて複数の電池冷却分岐路の開度を調整して、電池の冷却パワーを調整し、かつ複数の領域温度Tqとエアコンの設定温度Tsを取得し、かつTqとTsに基づいて各電池冷却分岐路の開度を制御し、例えば、ある領域のTqが高く、かつ他の領域のTqとの差が大きければ、該領域を冷却する車内冷却分岐路の開度を大きくするように制御すると共に、対応する電池冷却分岐路の開度を小さくするように制御し、同時に、電池の冷却パワーが変化しないことを保証するために、別の車内冷却分岐路の開度を小さくするように制御すると共に、対応する電池冷却分岐路の開度を大きくするように制御する。これにより、該方法は各電池の実際の状態、車室内の複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて、電池と車室内の各領域の冷却力を分配し、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持するだけでなく、車室内の各領域の温度をバランスさせることができる。
【0567】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度をどのように調整するかを説明する。
【0568】
本願の一実施形態によれば、図30に示すように、車載電池が複数あり、かつ車内冷却分岐路、電池冷却分岐路及び冷却分岐路が複数あるときに、上記車載電池の温度調整方法は、さらに以下のステップS31”’~S34”’を含んでよい。
【0569】
S31”’では、各電池の要求パワーP1に基づいて総要求パワーPzを生成する。
【0570】
S32”’では、総要求パワーPzが車載エアコンの最大冷却パワーPと整合するか否かを判断する。
【0571】
S33”’では、整合すれば、複数の電池の温度調整の要求パワーに基づいて電池を冷却する。
【0572】
S34”’では、整合しなければ、コンプレッサーの最大冷却パワーPと複数の電池冷却分岐路の要求パワーP1に基づいて電池を冷却する。
【0573】
具体的には、電池が複数で、かつ並列接続されるときに、各電池の要求パワーP1に基づいて温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、つまり、各電池の要求パワーP1を加算すれば、総要求パワーPzを得ることができる。そして、総要求パワーPzに基づいてPzが車載エアコンの最大冷却パワーPと整合するか否かを判断し、つまり、PzがP以下であるか否かを判断し、そうであれば、各電池の要求パワーP1に基づいて電池冷却分岐路中の弁を制御することにより各電池を冷却する。その一方、Pzが車載エアコンの最大冷却パワーPと整合せず、つまり、PzがPより大きければ、エアコンの最大冷却パワーPと各電池の要求パワーP1に基づいて、電池冷却分岐路中の弁の開度を調整することにより、割合に応じて冷却液の流量の分配を行うことにより、最大効率で各電池は降温を完了することができる。
【0574】
本願の一実施形態によれば、電池の温度調整方法は、さらに以下のステップを含んでよい。複数の電池の温度を検出する。複数の電池のうちのいずれか1つの電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに、冷却モードに入る。複数の電池のうちのいずれか1つの電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに、加熱モードに入る。第1の温度閾値と第2の温度閾値は実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、第1の温度閾値が40℃であってよく、第2の温度閾値が0℃であってよい。
【0575】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池管理コントローラにより各電池の温度をリアルタムに検出し、かつ判断する。そのうちのある電池の温度が40℃より高ければ、このときに該電池の温度が高過ぎることを示し、高温が該電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池に降温処理を行う必要があり、電池管理コントローラにより温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、かつ電池冷却機能をオンにするという情報をエアコンシステムに送信する。その一方、ある電池の温度が0℃より低ければ、このときに該電池の温度が低過ぎることを示し、低温が該電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池に昇温処理を行う必要があり、電池管理コントローラにより温度調整システムが加熱モードに入るように制御し、車載エアコンコントローラにより対応する電池冷却分岐路をオフにするように制御し、かつ電池熱管理コントローラによりヒーターを起動させるように制御して、電池に加熱パワーを供給する。
【0576】
本願の一実施形態によれば、図28に示すように、複数の冷却分岐路は、それぞれ複数の吹き出し口に対応し、上記複数の領域温度は上記複数の吹き出し口の温度である。
【0577】
例として、図28に示すように、車室内に4つの吹き出し口が設置されてよく、それぞれが吹き出し口1~4である。吹き出し口の温度Tcを検出することにより対応する領域温度Tqを検出する。吹き出し口1と吹き出し口2は、第1の冷却分岐路11によって冷却パワーが供給され、吹き出し口3と吹き出し口4は、第2の冷却分岐路12によって冷却パワーが供給されると仮定する。
【0578】
本願の一実施形態によれば、冷却モードにあるときに、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整するステップは、具体的には、以下を含む。電池冷却分岐路の要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、電池の温度が第3の温度閾値より大きいか否かを判断する。第3の温度閾値は第1の温度閾値より大きく、例えば、第3の温度閾値は45℃であってよい。電池の温度が上記第3の温度閾値より大きければ、複数の車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ複数の電池冷却分岐路の開度を大きくする。複数の電池冷却分岐路の開度は、対応する弁によってそれぞれ制御される。
【0579】
具体的には、温度調整システムが冷却モードに入るときに、P1がP2より大きければ、電池の温度が45℃より大きいか否かを判断する。いずれか1つの電池の温度が45℃より大きければ、現在の電池の温度が高過ぎることを示し、第1の膨張弁32の開度を小さくして、車内冷却分岐路の冷却液の流量を減少させると共に、第2の膨張弁42の開度を大きくして、電池冷却分岐路の冷却液の流量を増加させる。ことにより、車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の冷却力の分配を調整することにより、電池の温度が高過ぎるときに目標時間内に電池の温度調整を完了することができる。
【0580】
本願の一実施形態によれば、冷却モードにあるときに、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整するステップは、各電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2より大きいか否かを判断するステップと、ある電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2より大きければ、電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を冷却するコンプレッサーのパワーを向上させたり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の冷却パワーを向上させるステップと、ある電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2以下であれば、コンプレッサーのパワーを低下させたり、コンプレッサーのパワーをそのまま保持したり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の冷却パワーを低下させるステップとをさらに含む。
【0581】
具体的には、温度調整システムが冷却モードに入るときに、電池が複数あれば、各電池のP1とP2をそれぞれ取得し、かつ判断する。そのうちのある電池のP1がP2より大きければ、現在の冷却パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池の降温を完了できないことを示すため、車載エアコンコントローラにより該電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいてコンプレッサー1のパワーを向上させたり、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を増加させたりすることにより、該電池の冷却パワーを向上させ、P1とP2のパワー差が大きければ大きいほど、コンプレッサーのパワーを多く向上させ該電池の冷却液の流量を多く増加させることにより、所定の時間t内に該電池の温度を目標温度に下げる。その一方、そのうちのある電池のP1がP2以下であれば、コンプレッサーのパワーをそのまま保持するか又はコンプレッサーのパワーを適切に低下させたり、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を減少させたりして、電池の冷却パワーを低下させる。すべての電池の温度が35℃より低いときに、電池の冷却は完了し、CAN通信により車載エアコンに温度調整機能をオフにするという情報を送信し、車載エアコンコントローラにより第2の電子弁を閉弁するように制御する。温度調整システムが冷却モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が35℃より高い電池が依然として存在すれば、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーのパワーを適切に向上させて、該電池が降温をできるだけ速く完了する。
【0582】
本願の一実施形態によれば、電池の温度が第3の温度閾値より小さければ、上記車内温度がエアコンの設定温度Tsに等しい否かをさらに判断し、車内温度がエアコンの設定温度Tsに等しければ、複数の車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ複数の電池冷却分岐路の開度を大きくする。
【0583】
具体的には、温度調整システムが冷却モードに入るときに、各電池の温度が45℃より小さければ、コントローラは車内温度がエアコンの設定温度Tsに達するか否かを判断する。達すれば、コントローラは電池冷却分岐路の冷却液の流量を増加させ、車内冷却分岐路の冷却液の流量を減少させて、電池の降温をできるだけ速く完了する。車内温度がエアコンの設定温度Tsに達しなければ、車内の冷却要求を優先的に満たし、コントローラは車内冷却分岐路の冷却液流量を増加させ、かつ電池冷却分岐路の冷却液流量を減少させる。
【0584】
また、電池の温度に階層化処理を行い、温度制御の閾値がそれぞれ40℃、45℃及び35℃である。電池の温度が40℃より高いときに、電池の冷却機能がオンにされ、電池の温度が35℃に低下するときに、電池の冷却が完了する。電池の温度が45℃に達するときに、電池冷却の要求を優先的に満たす。また、要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、電池の温度が45℃を超えなければ、依然として車内冷却の要求を優先し、車内の冷却パワーが十分であり、かつバランスを取れば、電池冷却分岐路の開度を大きくして、電池の冷却パワーを向上させる。要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、車内冷却の要求を優先的に満たしてよい。
【0585】
本願の一実施形態によれば、複数の車内冷却分岐路の開度を小さくするステップは、具体的には、以下を含む。複数の領域温度の間の温度差を取得する。温度差が第4の温度閾値より大きいか否かを判断する。温度差が第4の温度閾値より大きければ、温度が高い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する車内冷却分岐路の開度を大きくし、好ましくは、温度が高い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する電池冷却分岐路の開度を小さくする。第4の温度閾値が実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、3℃であってよい。
【0586】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、車載電池の温度調整方法は、温度が低い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ温度が低い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する電池冷却分岐路の開度を大きくすることをさらに含む。
【0587】
具体的には、電池の冷却過程において、車内にエアコンを起動する必要があれば、車室内の環境温度を監視し制御することにより、車内の各箇所の環境温度がバランスをとれると共に、電池冷却の要求を満たす。図28に示すように、吹き出し口1及び吹き出し口2における領域温度Tqが吹き出し口3及び吹き出し口4における近傍領域温度Tqより3℃以上高いと検出するときに、第1の車内冷却分岐路中の開度を大きくし、第1の電池冷却分岐路中の開度を小さくすることにより、第1の車内冷却分岐路中の冷却パワーが大きい。さらに、好ましくは、第2の車内冷却分岐路中の冷間開度を小さくし、第2の電池冷却分岐路の開度を大きくすることにより、第2の車内冷却分岐路中の冷却パワーが小さい。これにより、第1の電池冷却分岐路と第2の電池冷却分岐路の冷却パワーを変化させないと共に、車内の各箇所の吹き出し口における近傍領域温度をバランスさせることができる。車載エアコンが吹き出し口1、吹き出し口2における近傍領域温度Tqと吹き出し口3、吹き出し口4における近傍領域温度Tqとの差が3℃以内であると検出するときに、第1の車内冷却分岐路と第2の車内冷却分岐路中の第1の膨張弁の開度が同じになるように制御して、第1の車内冷却分岐路と第2の車内冷却分岐路の冷却パワーが同じになることを保証する。
【0588】
本願の一実施形態によれば、加熱モードにあるときに、さらに以下を含む。ある電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2より大きいか否かを判断する。ある電池の要求パワーP1が電池の対応する実際パワーP2より大きければ、該電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を冷却するヒーターのパワーを向上させたり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の加熱パワーを向上させる。ある電池の要求パワーP1が電池の対応する実際パワーP2以下であれば、ヒーターのパワーを低下させるか又はヒーターのパワーをそのまま保持したり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の加熱パワーを低下させる。
【0589】
具体的には、温度調整システムが加熱モードに入るときに、各電池のP1とP2をそれぞれ取得し、かつ判断する。そのうちのある電池のP1がP2より大きければ、現在の加熱パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池の昇温を完了できないことを示すため、該電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を加熱するヒーターのパワーを向上させたり、対応するポンプの回転速度を調整して向上させたりして、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を増加させることにより、該電池が目標時間t内に温度調整を完了する。P1とP2の差が大きければ大きいほど、ヒーターのパワーの向上が多い。その一方、ある電池のP1がP2以下であれば、ヒーターのパワーを適切に低下させて電気エネルギーを節約したり、対応するポンプの回転速度を調整して低下させることにより、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を減少させて、加熱パワーを低下させたり、ヒーターのパワーをそのまま保持したりしてよい。すべての電池の温度が所定温度、例えば10℃より高いときに、電池の加熱は完了し、CAN通信により温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンに送信し、かつヒーターが動作を停止させるように制御する。温度調整システムが加熱モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が10℃より低い電池が依然として存在すれば、ヒーターのパワーを適切に向上させて、該電池が昇温をできるだけ速く完了する。
【0590】
本願の一実施形態によれば、車載電池の温度調整方法は、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より小さければ、電池の流路中のポンプの回転速度を低下させるステップと、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より大きければ、電池の流路中のポンプの回転速度を向上させるステップとをさらに含んでよい。
【0591】
具体的には、温度調整システムが加熱モード又は冷却モードに入るときに、ある電池のP1がP2より小さければ、コントローラは対応するポンプの回転速度を低下させるように制御して、電気エネルギーを節約する。ある電池のP1がP2より大きければ、コントローラは対応するヒーター又はコンプレッサーのパワーを向上させるか又は該電池の所在する回路の冷却液の流量を増加させるように制御することに加え、また、ポンプの回転速度を向上させるように制御して、単位時間当たりに冷却流路の断面積を流れる冷却液の質量を増加させることにより、該電池の実際パワーP2を向上させて、目標時間t内に温度調整を実現することができる。
【0592】
本願の一実施形態によれば、電池が複数あり、かつ流路が直列接続されるときに、複数の電池は電池の冷却液の流量を調整する複数のポンプに対応し、かつポンプが双方向ポンプである。
【0593】
図19~20に示すように、電池が2つあることを例として、電池が2つ(第1の電池と第2の電池)であり、かつ直列接続されるときに、それに応じてポンプが2つあり、かつ2つのポンプの一方が順方向ポンプ、他方が逆方向ポンプである。
【0594】
図25に示すように、順方向ポンプが起動されるときに、第2の配管内の冷却液の流れは、媒体容器-熱変換器-ヒーター-順方向ポンプ-第1の温度センサ-第1の電池-第2の電池-第2の温度センサ-流速センサ-媒体容器である。図26に示すように、逆方向ポンプが起動されるときに、第2の配管内の冷却液の流れは、媒体容器-流速センサ-第2の温度センサ-第2の電池-第1の電池-第1の温度センサ-逆方向ポンプ-ヒーター-熱変換器-媒体容器である。
【0595】
第1の電池と第2の電池の冷却機能がオンにされているときに、第1の電池の温度が第2の電池の温度より高く、かつ差が所定値を超えれば、順方向ポンプが動作するように制御して、冷却液が第1の電池を流れてから、第2の電池を流れるようにすることにより、第1の電池が降温をできるだけ速く完了する。その一方、第2の電池の温度が第1の電池の温度より高く、かつ差が所定値を超えれば、逆方向ポンプが動作するように制御して、冷却液が第2の電池を流れてから、第1の電池を流れるようにすることにより、第2の電池が降温をできるだけ速く完了する。これにより、冷却液の流れを変化させることにより、第1の電池と第2の電池の温度差を小さくすることができる。第1の電池と第2の電池の冷却機能と加熱機能がいずれもオンにされていないときに、第1の電池と第2の電池の温度差が所定値を超えれば、順方向ポンプ又は逆方向ポンプを起動させるように制御して、電池冷却分岐路中の冷却液が流れるようにすることにより、第1の電池と第2の電池の温度をバランスさせることができる。
【0596】
当業者が本願をより明確に理解できるように、以下、具体的な例を組み合わせて、車載電池の温度調整システムの動作過程を説明する。
【0597】
図19図19に比べて、主にコンプレッサーの冷却回路を追加すると共に、車内エアコンの吹き出し口の温度バランスとコンプレッサー間のパワー調整の問題を増加させるという点で相違する。以下、相違点のみを示し、その他について説明を省略する。
【0598】
図19に示すように、電池が複数あり、温度調整システムが冷却モードに入るときに、コントローラは、各電池のP1、各電池の実際パワーP2及び単一コンプレッサーの最大冷却パワーPをそれぞれ取得し、かつ各電池のP1を加算すれば温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、各電池の実際パワーP2を加算すれば総温度調整実際パワーPfを得て、各コンプレッサーの最大冷却パワーを加算すればすべてのコンプレッサーの最大冷却パワーの和P5を計算することができる。P51はコンプレッサー11の最大冷却パワーであり、P52はコンプレッサー12の最大冷却パワーであり、P5はすべてのコンプレッサーの最大冷却パワーの和であり、P5=P51+P52。第1の電池の要求パワーはP11であり、第2の電池の要求パワーはP12である。第1の電池61の温度調整の実際パワーはP21であり、第2の電池62の温度調整の実際パワーはP22である。
【0599】
Pz≦P51であれば、1つのコンプレッサーを動作させて、冷却パワーを供給するように制御してもよく、2つのコンプレッサーを同時に動作させるように制御してもよい。P51<Pz≦P5であれば、2つのコンプレッサーを同時に動作させる必要があり、各コンプレッサーの初期冷却パワーをPz/2にし、或いは、他のパワーを組み合わせる形式により、2つのコンプレッサーの冷却パワーの和をPzにする。Pz>P5であれば、2つのコンプレッサーを同時に動作させる必要があり、各コンプレッサーが最大冷却パワーで運転する。車内冷却分岐路の温度調整の要求パワーはP4であり、つまり、P4は車内温度を設定温度に調整するのに必要なパワーである。
【0600】
車内冷却と電池冷却が同時にオンにされるときに、吹き出し口1、吹き出し口2の領域温度がT51であり、吹き出し口3、吹き出し口4の領域温度がT52であると仮定する。
【0601】
T51-T52≧Tc、Tcが3℃であれば、以下の処理を行う。
【0602】
Pz+P4≦P5であれば、コントローラは第1のコンプレッサー11の冷却パワーを向上させるように制御したり、第1のコンプレッサーの冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁の開度を小さくするように制御し、車内冷却回路の膨張弁の開度を大きくするように制御したり、第2のコンプレッサーの冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁を大きくするように制御すると共に、車内冷却回路の膨張弁の開度を小さくするように制御したりすることにより、T51温度を迅速に下げると共に、電池の冷却パワーの要求を満たして、車内環境温度のバランスを実現する。
【0603】
Pz+P4>P5であれば、コントローラは第1のコンプレッサーと第2のコンプレッサーが最大冷却パワーで運転するように制御すると共に、第1のコンプレッサーの冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁の開度を小さくするように制御し、車内冷却回路の膨張弁の開度を大きくするように制御したり、第2のコンプレッサーの冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁を大きくするように制御すると共に、車内冷却回路の膨張弁の開度を小さくするように制御したりすることにより、T51温度を迅速に下げると共に、電池の冷却パワーの要求を満たして、車内環境温度のバランスを実現する。
【0604】
T51-T52≧Tc、Tcが3℃であれば、以下の処理を行ってよい。
【0605】
コントローラは第1のコンプレッサーの冷却回路中の電池冷却分岐路をオフにするように制御し、車内冷却回路の膨張弁の開度を大きくするように制御することにより、第1のコンプレッサーのすべての冷却パワーを車内冷却に用いる。第2のコンプレッサーの冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁を大きくするように制御すると共に、車内冷却回路の膨張弁の開度を小さくするように制御して、電池への冷却パワーを向上させることにより、T51温度を迅速に下げると共に、電池の冷却パワーの要求を満たして、車内環境温度のバランスを実現する。
【0606】
図27図11に比べて、主にコンプレッサーの冷却回路を追加すると共に、車内エアコンの吹き出し口の温度バランスとコンプレッサー間のパワー調整の問題を増加させるという点で相違する。以下、相違点のみを示し、その他について説明を省略する。
【0607】
図27に示すように、電池が複数あり、温度調整システムが冷却モードに入るときに、コントローラは、各電池6のP1、各電池の実際パワーP2及び単一コンプレッサーの最大冷却パワーPをそれぞれ取得し、かつ各電池のP1を加算すれば温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、各電池の実際パワーP2を加算すれば総温度調整の実際パワーPfを得て、各コンプレッサーの最大冷却パワーを加算すればすべてのコンプレッサーの最大冷却パワーの和P5を計算することができる。P51はコンプレッサー11の最大冷却パワーであり、P52はコンプレッサー12の最大冷却パワーであり、P5はすべてのコンプレッサーの最大冷却パワーの和であり、P5=P51+P52。第1の電池61の要求パワーはP11であり、第2の電池62の要求パワーはP12である。第1の電池61の実際パワーはP21であり、第2の電池62の実際パワーはP22である。
【0608】
Pz≦P51であれば、1つのコンプレッサー1を動作させて、冷却パワーを供給するように制御してもよく、2つのコンプレッサー1を同時に動作させるように制御してもよい。P51<Pz≦P5であれば、2つのコンプレッサーを同時に動作させる必要があり、各コンプレッサーの初期冷却パワーをPz/2にし、或いは、他のパワーを組み合わせる形式により、2つのコンプレッサーの冷却パワーの和をPzにする。Pz>P5であれば、2つのコンプレッサーを同時に動作させる必要があり、各コンプレッサーが最大冷却パワーで運転する。車内冷却分岐路の温度調整の要求パワーはP4であり、つまり、P4は車内温度を設定温度に調整するのに必要なパワーである。
【0609】
車内冷却と電池冷却が同時にオンにされるときに、吹き出し口1、吹き出し口2の領域温度がT51であり、吹き出し口3、吹き出し口4の領域温度がT52であると仮定する。
【0610】
T51-T52≧Tc、Tcが3℃であれば、以下の処理を行う。
【0611】
Pz+P4≦P5であれば、コントローラは第1のコンプレッサー11の冷却パワーを向上させるように制御したり、第1のコンプレッサー11の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁の開度を小さくするように制御し、車内冷却回路の膨張弁の開度を大きくするように制御したり、第2のコンプレッサー12の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁を大きくするように制御すると共に、車内冷却回路の膨張弁の開度を小さくするように制御したりすることにより、T51温度を迅速に下げると共に、電池の冷却パワーの要求を満たして、車内環境温度のバランスを実現する。
【0612】
Pz+P4>P5であれば、コントローラは第1のコンプレッサー11と第2のコンプレッサー12が最大冷却パワーで運転するように制御すると共に、第1のコンプレッサー11の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁の開度を小さくするように制御し、車内冷却回路の膨張弁の開度を大きくするように制御したり、第2のコンプレッサー12の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁を大きくするように制御すると共に、車内冷却回路の膨張弁の開度を小さくするように制御したりすることにより、T51温度を迅速に下げると共に、電池の冷却パワーの要求を満たして、車内環境温度のバランスを実現する。
【0613】
T51-T52≧Tc、Tcが3℃であれば、以下の処理を行ってよい。
【0614】
コントローラは第1のコンプレッサー11の冷却回路中の電池冷却分岐路をオフにするように制御し、車内冷却回路の膨張弁の開度を大きくするように制御することにより、第1のコンプレッサー11のすべての冷却パワーを車内冷却に用いる。第2のコンプレッサー12の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁を大きくするように制御すると共に、車内冷却回路の膨張弁の開度を小さくするように制御して、電池への冷却パワーを向上させることにより、T51温度を迅速に下げると共に、電池の冷却パワーの要求を満たして、車内環境温度のバランスを実現する。
【0615】
本願の実施形態の車載電池の温度調整方法によれば、まず、複数の電池冷却分岐路中の複数の電池の温度調整の要求パワーをそれぞれ取得し、次に車両中の複数の領域の領域温度とエアコンの設定温度をそれぞれ取得し、温度調整の要求パワー、温度調整の実際パワー、複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整する。これにより、該方法は各電池の実際の状態、車室内の複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて、電池と車室内の各領域の冷却力を分配し、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持するだけでなく、車室内の各領域の温度をバランスさせることができる。
【0616】
電池が複数あり、かつ複数の電池が独立して設置されるときに、図31に示すように、車載電池の温度調整システムは、複数の冷却分岐路、複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び電池温度調整モジュール5を含む。
【0617】
各冷却分岐路は、コンプレッサー1、コンプレッサー1と接続されたコンデンサ2を含む。複数の車内冷却分岐路はそれぞれ複数の冷却分岐路と接続される。複数の電池冷却分岐路は複数の冷却分岐路と接続され、複数の電池冷却分岐路間は相互に連通する。電池温度調整モジュール5は、複数の電池及び複数の電池冷却分岐路とそれぞれ接続されて、要求パワーP1と実際パワーP2を取得し、かつ車両中の複数の領域の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsを取得し、そして、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整し、かつ電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて複数のコンプレッサー1が電池の対応する電池冷却分岐路に冷却力を供給する開度を調整する。
【0618】
電池は電池パック又は電池モジュールであってよい。
【0619】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、電池温度調整モジュール5は、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて、目標時間t内に複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整することにより、目標温度に達する。
【0620】
例として、図31に示すように、冷却分岐路、電池冷却分岐路、車内冷却分岐路及び電池が2つあることを例として、電池はそれぞれ第1の電池61と第2の電池62であり、第1の電池61と第2の電池62が相互に独立して設置される。冷却分岐路はそれぞれ第1の冷却分岐路11と第2の冷却分岐路12であり、電池冷却分岐路はそれぞれ第1の電池冷却分岐路401と第2の電池冷却分岐路402であり、車内冷却分岐回路はそれぞれ第1の車内冷却分岐路301と第2の車内冷却分岐路302である。
【0621】
第1の電池61及び/又は第2の電池62の温度が高過ぎる/低過ぎるときに、第1の電池61及び/又は第2の電池62に温度調整を行う必要がある。電池温度調整モジュール5は要求パワーP1と実際パワーP2を取得し、P1とP2に基づいて複数の電池冷却分岐路の開度を調整して、電池の冷却パワーを調整し、かつ電池温度調整モジュール5は複数の領域温度Tqとエアコンの設定温度Tsを取得し、かつTqとTsに基づいて各電池冷却分岐路の開度を制御し、例えば、ある領域のTqが高く、かつ他の領域のTqとの差が大きければ、電池温度調整モジュール5は該領域を冷却する車内冷却分岐路の開度を大きくするように制御すると共に、対応する電池冷却分岐路の開度を小さくするように制御し、同時に、電池の冷却パワーが変化しないことを保証するために、電池温度調整モジュール5は別の車内冷却分岐路の開度を小さくするように制御する。これにより、該システムは各電池の実際の状態、車室内の複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて、電池と車室内の各領域の冷却力を分配し、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持するだけでなく、車室内の各領域の温度をバランスさせることができる。同時に、複数の電池冷却分岐路が相互に連通するため、電池温度調整モジュール5は各電池の温度に基づいて、電池の対応する電池冷却分岐路の冷却力の開度を調整することにより、各電池間の温度のバランスを保証することができる。
【0622】
電池温度調整モジュール5の冷却パワーが車載エアコンによって供給され、車内冷却システムと冷却力を共用することにより、温度調整システムの体積を減少させ、冷却液の流量の分配をより柔軟にすると理解すべきである。
【0623】
本願の一実施形態によれば、図31に示すように、電池冷却分岐路は熱変換器41を含んでよく、熱変換器41は第1の配管と第2の配管を含み、第2の配管は電池温度調整モジュール5と接続され、第1の配管はコンプレッサー1と連通し、第1の配管と第2の配管が相互に独立し隣接して設置される。
【0624】
電池温度調整モジュール5は、電池内に設置され、電池温度を調整する流路(具体的に図示せず)と、流路と熱変換器41との間に接続されたポンプ51と、媒体容器52と、ヒーター53と、コントローラ(具体的に図示せず)とを含む。コントローラは、電池の要求パワーP1と電池の実際パワーP2を取得し、かつ要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池の温度を調整する。車内冷却分岐路は、エバポレーター31、第1の膨張弁32及び第1の電子弁33を含んでよい。電池冷却分岐路4は、第2の膨張弁42及び第2の電子弁43をさらに含んでよい。
【0625】
図31に示すように、第1の電池冷却分岐路401は、第1の調整弁411及び第3の調整弁413をさらに含んでよく、第2の電池冷却分岐路402は、第2の調整弁412及び第4の調整弁414をさらに含んでよく、各調整弁の接続方式について、具体的には図24を参照すればよく、ここで説明を省略する。図24に示すように、各コンプレッサー1の冷却力は、第1~第4の調整弁411~414を調整することにより第1の電池冷却分岐路401又は第2の電池冷却分岐路402に分配することができる。例えば、第1の冷却分岐路11のコンプレッサー1は、第1の調整弁411により冷媒を第1の電池冷却分岐路401に分配し、第2の調整弁412により冷媒を第2の電池冷却分岐路402に分配することができる。第2の冷却分岐路12のコンプレッサー1は、第3の調整弁413により冷媒を第1の電池冷却分岐路401に分配し、第4の調整弁414により冷媒を第2の電池冷却分岐路402に分配することができる。
【0626】
本願の一実施形態によれば、図31に示すように、電池温度調整モジュール5は、流路の入口に設置された第1の温度センサ55、流路の出口に設置された第2の温度センサ56、及び流速センサ57をさらに含んでよい。流路の入口と出口の位置は絶対的ではなく、ポンプ51の回転方向に応じて確定されると理解すべきである。
【0627】
具体的には、熱変換器41はプレート式熱交換器であってよく、プレート式熱交換器が車載エアコンの内部に取り付けられてよく、冷却剤回路全体を車載エアコンの内部にして、車載エアコンの出荷デバッグに役立ち、車載エアコンを個別に供給し組み立てることができ、同時に取付過程において車載エアコンに冷却剤を1回追加すればよい。冷却液は流路の入口から電池の内部に流入し、流路の出口から流出することにより、電池と冷却液との間の熱変換を実現する。
【0628】
ポンプ51は主に動力を供給し、媒体容器52は主に冷却液を貯蔵し、かつ温度調整システムに添加される冷却液を収容し、温度調整システムにおける冷却液が減少するときに、媒体容器52中の冷却液から自動的に補充することができる。ヒーター53は、PTCヒーターであってよく、コントローラとCAN通信を行い、車載電池の温度調整システムに加熱パワーを供給し、コントローラによって制御される。かつヒーター53は電池6と直接接触せず、高い安全性、信頼性及び実用性を持つ。
【0629】
第1の温度センサ55は流路入口における冷却液の温度を検出し、第2の温度センサ56は流路出口における冷却液の温度を検出する。流速センサ57は対応する配管内の冷却液の流速情報を検出する。第2の電子弁43は対応する電池冷却分岐路4の開閉を制御し、第2の膨張弁42は対応する電池冷却分岐路4中の冷却液の流量を制御することができる。コントローラは、第1~第4の調整弁411~414の開度を調整すると共に、第1の電池61と第2の電池62の2つの冷却分岐回路の冷却液の流量を制御することにより、2つの電池の温度をバランスさせることができる。同時に、コントローラは、さらに車載エアコン及びヒーター53とCAN通信を行い、かつポンプ51の回転速度を制御し、冷却液の温度及び流量情報を監視することができ、さらに電池を管理し、電池の電圧及び温度情報を検出し、車載電池の温度調整システムの開閉を制御することができ、かつコントローラ間は相互に通信することができる。
【0630】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて各電池温度調整モジュール5が対応する電池6の要求パワーP1と実際パワーP2をどのように取得するかを説明する。
【0631】
本願の一実施形態によれば、コントローラは各電池の温度調整開始時の第1のパラメータをそれぞれ取得し、第1のパラメータに基づいて各電池の第1の要求パワーを生成し、そして、各電池の温度調整中の第2のパラメータをそれぞれ取得し、第2のパラメータに基づいて各電池の第2の要求パワーを生成すると共に、各電池の第1の要求パワーと各電池の第2の要求パワーに基づいて各電池の要求パワーP1を生成する。
【0632】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、第1のパラメータは電池の温度調整開始時の初期温度、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tであり、コントローラは、初期温度と目標温度との間の第1の温度差ΔTを取得し、かつ第1の温度差ΔTと目標時間tに基づいて第1の要求パワーを生成する。
【0633】
好ましくは、コントローラは下式(1)に基づいて第1の要求パワーを生成し、
ΔT*C*M/t (1)
ΔTが初期温度と目標温度との間の第1の温度差であり、tが目標時間であり、Cが電池の比熱であり、Mが電池の質量である。
【0634】
第2のパラメータは所定の時間内の各電池の平均電流Iであり、コントローラは下式(2)に基づいて第2の要求パワーを生成し、
*R (2)
Iが平均電流であり、Rが電池の内部抵抗である。
【0635】
電池を冷却するときに、P1=ΔT*C*M/t+I*R、電池を加熱するときに、P1=ΔT*C*M/t-I*R。
【0636】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、それぞれ各電池の所在する回路の第1の温度センサ55によって検出された入口温度と第2の温度センサ56によって検出された出口温度に基づいて、各電池の第2の温度差ΔTを生成し、かつ各電池の第2の温度差ΔT、及び流速センサ57によって検出された流速vに基づいて各電池の実際パワーP2を生成する。
【0637】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(3)に基づいて実際パワーP2を生成し、
ΔT*c*m (3)
ΔTが第2の温度差であり、cが流路中の冷却液の比熱であり、mが単位時間当たりに流路の断面積を流れる冷却液の質量であり、m=v*ρ*sであり、vが冷却液の流速であり、ρが冷却液の密度であり、sが流路の断面積である。
【0638】
具体的には、車両がパワーアップされると、コントローラは車両に温度調整を行う必要があるか否かを判断し、車両に温度調整を行う必要があると判断すれば、温度調整機能をオンにし、かつ低い回転速度情報をポンプ51に送信し、ポンプが初期設定回転速度(例えば、低い回転速度)で動作を開始させる。その後に、コントローラは各電池の初期温度(即ち、現在の温度)、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tを取得し、目標温度と目標時間tが実際の状況に応じて予め設定されてよく、そして式(1)に基づいて各電池の第1の要求パワーを計算する。同時に、コントローラは、所定の時間内の各電池の平均電流Iをそれぞれ取得し、式(2)に基づいて各電池の第2の要求パワーを計算する。その後に、コントローラは、それぞれ各電池6の第1の要求パワーと第2の要求パワーに基づいて要求パワーP1(即ち、目標時間内に電池の温度を目標温度に調整する要求パワー)を計算する。そして、コントローラは、各電池の対応して設置された第1の温度センサ55と第2の温度センサ56の検出温度情報をそれぞれ取得すると共に、流速センサ57によって検出された流速情報をそれぞれ取得し、式(3)に基づいて各電池の実際パワーP2をそれぞれ計算する。
【0639】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて、どのように要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路(30及び30)、複数の電池冷却分岐路(401及び402)及び複数の冷却分岐路(11及び12)の開度を調整するかを説明する。
【0640】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、各電池の要求パワーP1に基づいて総要求パワーPzを生成し、総要求パワーPzが複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5より大きいか否かを判断し、総要求パワーPzが複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5より大きいときに、コントローラは複数のコンプレッサー1から電池の対応する電池冷却分岐路4への冷却力の開度を最大に調整し、総要求パワーPzが複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5以下であるときに、コントローラは、総要求パワーPzと総最大冷却パワーP5の差に基づいて電池6の対応する電池冷却分岐路4の冷却力の開度を調整する。
【0641】
具体的には、図31に示すように、電池を冷却するときに、コントローラは、各電池の要求パワーP1に基づいて温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、つまり、各電池の要求パワーP1を加算すれば、総要求パワーPzを得ることができ、同時にコントローラは、各コンプレッサー1の最大冷却パワーPに基づいて複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5を計算し、つまり、各コンプレッサー1の最大冷却パワーPを加算すれば総最大冷却パワーP5を得ることができる。その後に、コントローラは、Pz>P5であるか否かを判断し、そうであれば、コントローラは各第2の膨張弁42の開度を最大に調整するように制御して、各電池の冷却回路4に流入する冷却液の流量を増加させることにより、電池が目標時間内に降温を完了することができる。Pz≦P5であれば、2つのコンプレッサーを同時に動作させ、各コンプレッサーの初期冷却パワーをPz/2にし、或いは、他のパワーを組み合わせる形式により、2つのコンプレッサーの冷却パワーの和をPzにすると共に、PzとP5との間の差に基づいて各第2の膨張弁42の開度を調整し、PzとP5の差の絶対値が大きければ大きいほど、第2の膨張弁の開度が小さく、エネルギーを節約するという目的を達成する。
【0642】
本願の一実施形態によれば、図31に示すように、コントローラは、さらに、複数の電池の温度を検出し、かつ複数の電池6のうちのいずれか1つの電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、複数の電池のうちのいずれか1つの電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに温度調整システムが加熱モードに入るように制御する。第1の温度閾値と第2の温度閾値は実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、第1の温度閾値が40℃であってよく、第2の温度閾値が0℃であってよい。
【0643】
具体的には、車両がパワーアップされると、コントローラは各電池の温度をそれぞれリアルタムに検出し、かつ判断する。そのうちのある電池の温度が40℃より高ければ、このときに該電池の温度が高過ぎることを示し、高温が該電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池に降温処理を行う必要があり、コントローラは、温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、かつ電池冷却機能をオンにするという情報をエアコンシステムに送信し、そして、対応する第2の電子弁43を開弁するように制御することにより、冷却液と電池は熱変換を行って該電池の温度を下げる。
【0644】
ある電池の温度が0℃より低ければ、このときに該電池の温度が低過ぎることを示し、低温が該電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池に昇温処理を行う必要があり、コントローラは温度調整システムが加熱モードに入るように制御し、第2の電子弁43を閉弁するように制御し、かつ対応するヒーター53を起動させるように制御することにより、温度調整システムに加熱パワーを供給する。温度調整システムが加熱モードで動作するときに、ヒーター53は加熱パワーを供給し、第1の電池61を加熱することを例として、第1の電池61の所在する回路中の冷却液の流れ方向は、媒体容器52-熱変換器41-ヒーター53(起動)-ポンプ51-第1の温度センサ55-第1の電池61-第2の温度センサ56-流速センサ57-媒体容器52であり、このように循環して、電池の第1の電池61の昇温を実現する。
【0645】
本願の一実施形態によれば、図31に示すように、冷却モードにあるときに、コントローラは、さらに、電池冷却分岐路の要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、電池温度が第3の温度閾値より大きいか否かを判断し、電池温度が第3の温度閾値より大きければ、コントローラは対応する電池冷却分岐路の開度を大きくし、電池冷却分岐路の開度は対応する弁(即ち、第2の膨張弁42)によりそれぞれ制御され、第3の温度閾値が第1の温度閾値より大きく、例えば、第3の温度閾値が45℃であってよい。
【0646】
具体的には、冷却モードにあるときに、P1がP2より大きければ、コントローラは電池の温度が45℃より大きいか否かを判断する。いずれか1つの電池の温度が45℃より大きければ、現在の電池の温度が高過ぎることを示し、コントローラは、対応する第1の膨張弁32の開度を小さくして、車内冷却分岐路の冷却液の流量を減少させると共に、第2の膨張弁42の開度を大きくして、電池冷却分岐路の冷却液の流量を増加させる。ことにより、車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の冷却力の分配を調整することにより、電池の温度が高過ぎるときに目標時間内に電池の温度調整を完了することができる。
【0647】
本願の一実施形態によれば、図31に示すように、冷却モードにあるときに、コントローラは、さらに、ある電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2より大きいときに、電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を冷却するコンプレッサー1のパワーを向上させたり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の冷却パワーを向上させ、ある電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2以下であるときに、コンプレッサーのパワーを低下させるか又はコンプレッサーのパワーをそのまま保持したり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の冷却パワーを低下させる。
【0648】
具体的には、冷却モードで動作するときに、電池が複数あれば、コントローラは各電池のP1とP2をそれぞれ取得し、かつ判断する。そのうちのある電池のP1がP2より大きければ、現在の冷却パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池の降温を完了できないことを示すため、コントローラは該電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいてコンプレッサー1のパワーを向上させたり、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を増加させたりすることにより、該電池の冷却パワーを向上させ、P1とP2のパワー差が大きければ大きいほど、コンプレッサー1のパワーを多く向上させ該電池の冷却液の流量を多く増加させることにより、所定の時間t内に該電池の温度を目標温度に下げる。その一方、そのうちのある電池のP1がP2以下であれば、コンプレッサー1のパワーをそのまま保持するか又はコンプレッサー1のパワーを適切に低下させたり、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を減少させたりして、電池の冷却パワーを低下させる。すべての電池の温度が35℃より低いときに、電池の冷却は完了し、コントローラはCAN通信により温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンに送信し、かつ第2の電子弁43を閉弁するように制御する。温度調整システムが冷却モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が35℃より高い電池が依然として存在すれば、コントローラはコンプレッサーのパワーを適切に向上させて、該電池が降温をできるだけ速く完了する。
【0649】
本願の一実施形態によれば、図31に示すように、コントローラは、さらに、ある電池の温度が第3の温度閾値より小さく、かつ車内温度がエアコンの設定温度Tsに等しいときに、複数の車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ複数の電池冷却分岐路の開度を大きくする。
【0650】
具体的には、冷却モードにあるときに、各電池の温度が45℃より小さければ、コントローラは車内温度がエアコンの設定温度Tsに達するか否かを判断する。達すれば、コントローラは第1の膨張弁32の開度を小さくし、かつ第2の膨張弁42の開度を大きくして、電池冷却分岐路の冷却液の流量を増加させ、車内冷却分岐路の冷却液の流量を減少させて、電池の降温をできるだけ速く完了する。その一方、車内温度がエアコンの設定温度Tsに達しなければ、車内の冷却要求を優先的に満たし、コントローラは第1の膨張弁32の開度を大きくし、かつ第2の膨張弁42の開度を小さくする。
【0651】
また、電池の温度に階層化処理を行い、温度制御の閾値がそれぞれ40℃、45℃及び35℃である。電池の温度が40℃より高いときに、電池の冷却機能がオンにされ、電池の温度が35℃に低下するときに、電池の冷却が完了する。電池の温度が45℃に達するときに、電池冷却の要求を優先的に満たす。また、要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、電池の温度が45℃を超えなければ、依然として車内冷却の要求を優先し、車内の冷却パワーが十分であり、かつバランスを取れば、コントローラは電池冷却分岐路の開度を大きくして、電池の冷却パワーを向上させる。要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、車内冷却の要求を優先的に満たしてよい。
【0652】
本願の一実施形態では、複数の冷却分岐路は、それぞれ複数の吹き出し口に対応し、複数の領域温度は複数の吹き出し口の温度である。
【0653】
例として、図28に示すように、車室内に4つの吹き出し口が設置されてよく、それぞれが吹き出し口1~4である。吹き出し口の温度Tcを検出することにより対応する領域温度Tqを検出する。吹き出し口1と吹き出し口2は、第1の冷却分岐路11によって冷却パワーが供給され、吹き出し口3と吹き出し口4は、第2の冷却分岐路12によって冷却パワーが供給されると仮定する。
【0654】
本願の一実施形態によれば、図31に示すように、コントローラは、さらに、複数の領域温度間の温度差を取得し、かつ温度差が第4の温度閾値より大きいときに、温度が高い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する車内冷却分岐路の開度を大きくし、かつ温度が高い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する電池冷却分岐路の開度を小さくする。第4の温度閾値が実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、3℃であってよい。
【0655】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに、温度が低い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ温度が低い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する電池冷却分岐路の開度を大きくする。
【0656】
具体的には、電池の冷却過程において、車内にエアコンを起動する必要があれば、車室内の環境温度を監視し制御することにより、車内の各箇所の環境温度がバランスをとれると共に、電池冷却の要求を満たす。図28に示すように、吹き出し口1及び吹き出し口2における領域温度Tqが吹き出し口3及び吹き出し口4における近傍領域温度Tqより3℃以上高いと検出するときに、第1の車内冷却分岐路301中の第1の膨張弁32の開度を大きくするように制御すると共に、第1の電池冷却分岐路401中の第2の膨張弁42の開度を小さくするように制御して、第1の車内冷却分岐路301中の冷却パワーを向上させる。コントローラは、さらに第2の車内冷却分岐路302中の第1の膨張弁32の開度を小さくし、第2の電池冷却分岐路402中の第2の膨張弁42の開度を大きくするように制御して、第2の車内冷却分岐路302中の冷却パワーを低下させる。これにより、第1の電池冷却分岐路401と第2の電池冷却分岐路402の冷却パワーを変化させないと共に、車内の各箇所の吹き出し口における近傍領域温度をバランスさせる。車載エアコンが吹き出し口1、吹き出し口2における近傍領域温度Tqと吹き出し口3、吹き出し口4における近傍領域温度Tqとの差が3℃以内であると検出するときに、コントローラは、第1の車内冷却分岐路301と第2の車内冷却分岐路302中の第1の膨張弁32の開度が同じになるように制御して、第1の車内冷却分岐路301と第2の車内冷却分岐路302の冷却パワーが同じになることを保証する。
【0657】
本願の一実施形態によれば、加熱モードにあるときに、コントローラは、ある電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2より大きいときに、電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を加熱するヒーターのパワーを向上させたり、上記電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、上記電池の加熱パワーを向上させ、そして、ある電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2以下であるときに、ヒーターのパワーを低下させるか又はヒーターのパワーをそのまま保持したり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の加熱パワーを低下させる。
【0658】
具体的には、温度調整システムが加熱モードに入るときに、コントローラは各電池のP1とP2をそれぞれ取得し、かつ判断する。そのうちのある電池のP1がP2より大きければ、現在の加熱パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池の昇温を完了できないことを示すため、コントローラは該電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を加熱するヒーター53のパワーを向上させたり、対応するポンプ51の回転速度を調整して向上させたりして、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を増加させることにより、該電池が目標時間t内に温度調整を完了する。P1とP2の差が大きければ大きいほど、ヒーター53のパワーの向上が多い。その一方、ある電池のP1がP2以下であれば、コントローラは、ヒーター53のパワーを適切に低下させて電気エネルギーを節約したり、対応するポンプ51の回転速度を調整して低下させることにより、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を減少させて、加熱パワーを低下させたり、ヒーター53のパワーをそのまま保持したりしてよい。すべての電池の温度が所定温度、例えば10℃より高いときに、電池の加熱は完了し、コントローラはCAN通信により温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンに送信し、かつヒーター53が動作を停止させるように制御する。温度調整システムが加熱モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が10℃より低い電池が依然として存在すれば、コントローラはヒーター53のパワーを適切に向上させて、該電池が昇温をできるだけ速く完了する。
【0659】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より小さいときに、電池流路中のポンプ51の回転速度を低下させ、そして、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より大きいときに、電池流路中のポンプ51の回転速度を向上させる。
【0660】
具体的には、温度調整システムが加熱モード又は冷却モードに入るときに、ある電池のP1がP2より小さければ、コントローラは対応するポンプ51の回転速度を低下させるように制御して、電気エネルギーを節約する。ある電池のP1がP2より大きければ、コントローラは対応するヒーター53又はコンプレッサー1のパワーを向上させるか又は該電池の所在する回路の冷却液の流量を増加させるように制御することに加え、また、ポンプ51の回転速度を向上させるように制御して、単位時間当たりに冷却流路の断面積を流れる冷却液の質量を増加させることにより、該電池の実際パワーP2を向上させて、目標時間t内に温度調整を実現することができる。
【0661】
温度調整システムが冷却モードで動作するときに、図31に示すように、コントローラは、第1の電池61と第2の電池62の要求パワーP1をそれぞれ計算し、その後にそれぞれ各電池のP1と対応するコンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて対応する第2の膨張弁42の開度を調整する。冷却過程において、コントローラは、それぞれ各電池の実際パワーP2に基づいて第2の膨張弁42の開度を継続して調整する。同時に、コントローラは第1の電池61と第2の電池62との間の温度状況に応じて、第1~第4の調整弁411~412の開度を調整して、第1の電池冷却分岐路401と第2の電池冷却分岐路402の冷却液の流量の分配を調整することにより、第1の電池61と第2の電池62の温度のバランスを制御する。第1の電池61の温度が第2の電池62の温度より高く、かつ差が設定値を超えるときに、第1の調整弁411と第3の調整弁413の開度を大きくし、第2の調整弁412と第4の調整弁414の開度を小さくして、第1の電池61の冷却パワーを向上させ、第1の電池61と第2の電池62の温度が等しいときに、第1~第4の調整弁411~414の開度が同じになるように制御することができる。温度調整システムが加熱モードで動作するときに、第1の電池61の温度が第2の電池62の温度より低く、かつ差が設定値を超えるときに、コントローラは第1の電池61の対応するヒーター53の加熱パワーを向上させる。これにより、2つの電池の間の温度のバランスをとれる。
【0662】
当業者が本願をより明確に理解できるように、以下、具体的な例を組み合わせて、車載電池の温度調整システムの動作過程を説明する。
【0663】
図13~14に示す温度調整システムに比べて、図31において車内冷却回路が追加される。以下、相違点のみを示し、その他について説明を省略する。
【0664】
図31に示すように、電池、車内冷却回路3、電池冷却分岐路4が複数あり、かつ複数の電池が独立して設置されるときに、温度調整システムが冷却モードに入るときに、コントローラは、各電池6のP1、各電池の実際パワーP2及び単一コンプレッサーの最大冷却パワーPをそれぞれ取得し、かつ各電池のP1を加算すれば温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、各電池の実際パワーP2を加算すれば総温度調整実際パワーPfを得て、各コンプレッサーの最大冷却パワーを加算すればすべてのコンプレッサーの最大冷却パワーの和P5を計算することができる。第1の電池61の要求パワーはP11であり、第2の電池62の要求パワーはP12である。第1の電池61の実際パワーはP21であり、第2の電池62の実際パワーはP22である。P51は第1のコンプレッサー11の最大冷却パワーであり、P52は第2のコンプレッサー12の最大冷却パワーである。
【0665】
Pz≦P51であれば、1つのコンプレッサー1を動作させて、冷却パワーを供給するように制御してもよく、2つのコンプレッサー1を同時に動作させるように制御してもよい。P51<Pz≦P5であれば、2つのコンプレッサー1を同時に動作させる必要があり、各コンプレッサーの初期冷却パワーをPz/2にし、或いは、他のパワーを組み合わせる形式により、2つのコンプレッサーの冷却パワーの和をPzにする。Pz>P5であれば、各コンプレッサーは最大冷却パワーPで運転する。
【0666】
車内冷却と電池冷却が同時にオンにされるときに、吹き出し口1、吹き出し口2の領域温度がT51であり、吹き出し口3、吹き出し口4の領域温度がT52であると仮定すれば、以下の判断を行う。
【0667】
T51-T52≧Tc、Tcが3℃であれば、以下の処理を行う。
【0668】
Pz+P4≦P5であれば、コントローラは第1のコンプレッサー11の冷却パワーを向上させるように制御したり、第1のコンプレッサー11の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁の開度を小さくするように制御し、車内冷却回路の膨張弁の開度を大きくするように制御したり、第2のコンプレッサー12の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁を大きくするように制御すると共に、車内冷却回路の膨張弁の開度を小さくするように制御したりすることにより、T51温度を迅速に下げると共に、電池の冷却パワーの要求を満たして、車内環境温度のバランスを実現する。
【0669】
Pz+P4>P5であれば、コントローラは第1のコンプレッサー11と第2のコンプレッサー12が最大冷却パワーで運転するように制御すると共に、第1のコンプレッサー11の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁の開度を小さくするように制御し、車内冷却回路の膨張弁の開度を大きくするように制御したり、第2のコンプレッサー12の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁を大きくするように制御すると共に、車内冷却回路の膨張弁の開度を小さくするように制御したりすることにより、T51温度を迅速に下げると共に、電池の冷却パワーの要求を満たして、車内環境温度のバランスを実現する。
【0670】
T51-T52≧Tc、Tcが3℃であれば、以下の処理を行ってよい。
【0671】
コントローラは第1のコンプレッサー11の冷却回路中の電池冷却分岐路をオフにするように制御し、車内冷却回路の膨張弁の開度を大きくするように制御することにより、第1のコンプレッサー11のすべての冷却パワーを車内冷却に用いる。第2のコンプレッサー12の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁を大きくするように制御すると共に、車内冷却回路の膨張弁の開度を小さくするように制御して、電池への冷却パワーを向上させることにより、T51温度を迅速に下げると共に、電池の冷却パワーの要求を満たして、車内環境温度のバランスを実現する。
【0672】
以上より、本願の実施形態の車載電池の温度調整システムによれば、電池温度調整モジュールにより温度調整の要求パワーと温度調整の実際パワーを取得し、かつ車両中の複数の領域の領域温度とエアコンの設定温度を取得し、そして、温度調整の要求パワー、温度調整の実際パワー、複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整し、かつ電池の温度調整の要求パワーと温度調整の実際パワーに基づいて複数のコンプレッサーが電池の対応する電池冷却分岐路に冷却力を供給する開度を調整する。これにより、該システムは各電池の実際の状態、車室内の複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて、電池と車室内の各領域の冷却力を分配し、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持するだけでなく、車室内の各領域の温度と各電池間の温度をバランスさせることができる。
【0673】
車載電池の温度調整システムが複数の冷却分岐路、複数の冷却分岐路に対応する複数の電池冷却分岐路、複数の車内冷却分岐路、複数の電池、及び複数の電池と複数の電池冷却分岐路との間に接続された複数の電池温度調整モジュールを含むときに、図32に示すように、車載電池の温度調整方法は、以下のステップS1””~S3””を含む。
【0674】
S1””では、複数の電池の要求パワーP1と実際パワーP2をそれぞれ取得する。
【0675】
本願の一実施形態によれば、複数の電池の温度調整の要求パワーをそれぞれ取得するステップは、具体的に以下を含む。各電池の温度調整開始時の第1のパラメータをそれぞれ取得し、かつ第1のパラメータに基づいて各電池の第1の要求パワーを生成する。各電池の温度調整中の第2のパラメータを取得し、かつ第2のパラメータに基づいて各電池の第2の要求パワーを生成する。各電池の第1の要求パワーと第2の要求パワーに基づいて電池冷却分岐路の要求パワーP1を生成する。
【0676】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、第1のパラメータは電池の温度調整開始時の初期温度、目標温度、及び初期温度から上記目標温度になるまでの目標時間tであり、第1のパラメータに基づいて第1の要求パワーを生成するステップは、具体的には、初期温度と目標温度との間の第1の温度差ΔTを取得するステップと、第1の温度差ΔTと目標時間tに基づいて第1の要求パワーを生成するステップとを含む。
【0677】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(1)に基づいて第1の要求パワーを生成し、
ΔT*C*M/t (1)
ΔTが初期温度と目標温度との間の第1の温度差であり、tが目標時間であり、Cが電池の比熱であり、Mが電池の質量である。
【0678】
本願の一実施形態によれば、第2のパラメータは所定の時間内の電池の平均電流Iであり、下式(2)に基づいて第2の要求パワーを生成し、
*R (2)
Iが平均電流であり、Rが電池の内部抵抗である。
【0679】
電池を冷却するときに、P1=ΔT*C*M/t+I*R、電池を加熱するときに、P1=ΔT*C*M/t-I*R。
【0680】
本願の一実施形態によれば、複数の電池の実際パワーP2を取得するステップは、具体的に以下を含む。複数の電池の温度を調整する流路の入口温度と出口温度を取得すると共に、冷却液が流路に流入する流速vを取得する。複数の電池の流路の入口温度と出口温度に基づいて複数の電池の第2の温度差ΔTを生成する。複数の電池の第2の温度差ΔT及び流速vに基づいて複数の電池の実際パワーP2を生成する。
【0681】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(3)に基づいて実際パワーP2を生成し、
ΔT*c*m (3)
ΔTが第2の温度差であり、cが流路中の冷却液の比熱であり、mが単位時間当たりに流路の断面積を流れる冷却液の質量であり、m=v*ρ*sであり、vが冷却液の流速であり、ρが冷却液の密度である。
【0682】
S2””では、車両中の複数の領域の領域温度Tqとエアコンの設定温度Tsをそれぞれ取得する。
【0683】
S3””では、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整する。複数の電池冷却分岐路は相互に連通し、かつ電池の要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて複数のコンプレッサーが電池の対応する電池冷却分岐路に冷却力を供給する開度を調整する。
【0684】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の上記領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて、目標時間t内に複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整することにより、目標温度に達する。
【0685】
電池は電池パック又は電池モジュールであってよい。各電池は相互に独立して設置される。
【0686】
具体的には、冷却分岐路、電池冷却分岐路、車内冷却分岐路及び電池が2つあることを例として、電池はそれぞれ第1の電池と第2の電池であり、冷却分岐路はそれぞれ第1の冷却分岐路と第2の冷却分岐路であり、電池冷却分岐路はそれぞれ第1の電池冷却分岐路と第2の電池冷却分岐路であり、車内冷却分岐回路はそれぞれ第1の車内冷却分岐路と第2の車内冷却分岐路である。
【0687】
第1の電池及び/又は第2の電池の温度が高過ぎる/低過ぎるときに、第1の電池及び/又は第2の電池に温度調整を行う必要がある。要求パワーP1と実際パワーP2を取得し、P1とP2に基づいて複数の電池冷却分岐路の開度を調整して、電池の冷却パワーを調整し、かつ複数の領域温度Tqとエアコンの設定温度Tsを取得し、かつTqとTsに基づいて各電池冷却分岐路の開度を制御し、例えば、ある領域のTqが高く、かつ他の領域のTqとの差が大きければ、該領域を冷却する車内冷却分岐路の開度を大きくするように制御すると共に、対応する電池冷却分岐路の開度を小さくするように制御し、同時に、電池の冷却パワーが変化しないことを保証するために、別の車内冷却分岐路の開度を小さくするように制御すると共に、対応する電池冷却分岐路の開度を大きくするように制御する。これにより、該方法は各電池の実際の状態、車室内の複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて、電池と車室内の各領域の冷却力を分配し、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持するだけでなく、車室内の各領域の温度をバランスさせることができる。同時に、複数の電池冷却分岐路が相互に連通するため、各電池の温度に基づいて、電池の対応する電池冷却分岐路の冷却力の開度を調整することにより、各電池間の温度のバランスを保証することができる。
【0688】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度をどのように調整するかを説明する。
【0689】
本願の一実施形態によれば、車載電池が複数で、独立して設置され、かつ車内冷却分岐路、電池冷却分岐路及び冷却分岐路が複数あるときに、上記車載電池の温度調整方法は、さらに以下を含んでよい。各電池の要求パワーP1に基づいて総要求パワーPzを生成する。複数のコンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5を生成する。総要求パワーPzが複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5より大きいか否かを判断する。総要求パワーPzが複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5より大きければ、複数のコンプレッサーによる電池の対応する電池冷却分岐路への冷却力の開度を最大に調整する。総要求パワーPzが複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5以下あれば、総要求パワーPzと総最大冷却パワーP5の差に基づいて電池の対応する電池冷却分岐路の冷却力の開度を調整する。
【0690】
具体的には、各電池の要求パワーP1に基づいて温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、つまり、各電池の要求パワーP1を加算すれば、総要求パワーPzを得ることができ、同時に各コンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5を計算し、つまり、各コンプレッサーの最大冷却パワーPを加算すれば総最大冷却パワーP5を得ることができる。その後に、Pz>P5であるか否かを判断し、そうであれば、各第2の膨張弁の開度を最大に調整するように制御して、複数のコンプレッサーから電池の対応する電池冷却分岐路への冷却液の流量を最大に調整することにより、電池が目標時間t内に降温を完了することができる。Pz≦P5であれば、PzとP5との間の差に基づいて第2の膨張弁の開度を調整し、PzとP5の差の絶対値が大きければ大きいほど、第2の膨張弁の開度が小さく、エネルギーを節約するという目的を達成する。
【0691】
本願の一実施形態によれば、電池の温度調整方法は、さらに以下のステップを含んでよい。複数の電池の温度を検出する。複数の電池のうちのいずれか1つの電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに、冷却モードに入る。複数の電池のうちのいずれか1つの電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに、加熱モードに入る。第1の温度閾値と第2の温度閾値は実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、第1の温度閾値が40℃であってよく、第2の温度閾値が0℃であってよい。
【0692】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池管理コントローラにより各電池の温度をリアルタムに検出し、かつ判断する。そのうちのある電池の温度が40℃より高ければ、このときに該電池の温度が高過ぎることを示し、高温が該電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池に降温処理を行う必要があり、コントローラにより温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、かつ電池冷却機能をオンにするという情報をエアコンシステムに送信する。その一方、ある電池の温度が0℃より低ければ、このときに該電池の温度が低過ぎることを示し、低温が該電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池に昇温処理を行う必要があり、加熱モードに入り、対応する電池冷却分岐路をオフにするように制御し、かつヒーターを起動させるように制御して、電池に加熱パワーを供給する。
【0693】
本願の一実施形態によれば、冷却モードにあるときに、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整するステップは、具体的には、以下を含む。電池冷却分岐路の要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、電池温度が第3の温度閾値より大きいか否かを判断し、電池温度が第3の温度閾値より大きければ、コントローラは複数の車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ複数の電池冷却分岐路の開度を大きくし、複数の電池冷却分岐路の開度は対応する弁(即ち、第2の膨張弁)によりそれぞれ制御され、第3の温度閾値が第1の温度閾値より大きく、例えば、第3の温度閾値が45℃であってよい。
【0694】
具体的には、温度調整システムが冷却モードに入るときに、P1がP2より大きければ、電池の温度が45℃より大きいか否かを判断する。いずれか1つの電池の温度が45℃より大きければ、現在の電池の温度が高過ぎることを示し、車載エアコンコントローラにより第1の膨張弁32の開度を小さくして、車内冷却分岐路の冷却液の流量を減少させると共に、第2の膨張弁42の開度を大きくして、電池冷却分岐路の冷却液の流量を増加させる。ことにより、車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の冷却力の分配を調整することにより、電池の温度が高過ぎるときに目標時間内に電池の温度調整を完了することができる。
【0695】
本願の一実施形態によれば、冷却モードにあるときに、電池の温度調整方法は、さらに以下を含む。各電池の要求パワーP1が各電池の対応する実際パワーP2より大きいか否かを判断する。ある電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2より大きければ、電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を冷却するコンプレッサーのパワーを向上させたり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の冷却パワーを向上させる。ある電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2以下であれば、コンプレッサーのパワーを低下させたり、コンプレッサーのパワーをそのまま保持したり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の冷却パワーを低下させる。
【0696】
具体的には、温度調整システムが冷却モードに入るときに、電池が複数あれば、各電池のP1とP2をそれぞれ取得し、かつ判断する。そのうちのある電池のP1がP2より大きければ、現在の冷却パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池の降温を完了できないことを示すため、該電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつ車載エアコンコントローラによりパワー差に基づいてコンプレッサーのパワーを向上させたり、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を増加させたりすることにより、該電池の冷却パワーを向上させ、P1とP2のパワー差が大きければ大きいほど、コンプレッサーのパワーを多く向上させ該電池の冷却液の流量を多く増加させることにより、所定の時間t内に該電池の温度を目標温度に下げる。その一方、そのうちのある電池のP1がP2以下であれば、車載エアコンコントローラにより、コンプレッサーのパワーをそのまま保持するか又はコンプレッサーのパワーを適切に低下させたり、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を減少させたりすることにより、電池の冷却パワーを低下させる。すべての電池の温度が35℃より低いときに、電池の冷却は完了し、CAN通信により車載エアコンに温度調整機能をオフにするという情報を送信し、車載エアコンコントローラにより第2の電子弁を閉弁するように制御する。温度調整システムが冷却モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が35℃より高い電池が依然として存在すれば、車載エアコンコントローラによりコンプレッサーのパワーを適切に向上させて、該電池が降温をできるだけ速く完了する。
【0697】
本願の一実施形態によれば、電池の温度が第3の温度閾値より小さければ、上記車内温度がエアコンの設定温度Tsに等しい否かをさらに判断し、車内温度がエアコンの設定温度Tsに等しければ、複数の車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ複数の電池冷却分岐路の開度を大きくする。
【0698】
具体的には、温度調整システムが冷却モードに入るときに、各電池の温度が45℃より小さければ、コントローラは車内温度がエアコンの設定温度Tsに達するか否かを判断する。達すれば、コントローラにより電池冷却分岐路の冷却液の流量を増加させ、車内冷却分岐路の冷却液の流量を減少させて、電池の降温をできるだけ速く完了する。車内温度がエアコンの設定温度Tsに達しなければ、車内の冷却要求を優先的に満たし、コントローラは車内冷却分岐路の冷却液流量を増加させ、かつ電池冷却分岐路の冷却液流量を減少させる。
【0699】
また、電池の温度に階層化処理を行い、温度制御の閾値がそれぞれ40℃、45℃及び35℃である。電池の温度が40℃より高いときに、電池の冷却機能がオンにされ、電池の温度が35℃に低下するときに、電池の冷却が完了する。電池の温度が45℃に達するときに、電池冷却の要求を優先的に満たす。また、要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、電池の温度が45℃を超えなければ、依然として車内冷却の要求を優先し、車内の冷却パワーが十分であり、かつバランスを取れば、電池冷却分岐路の開度を大きくして、電池の冷却パワーを向上させる。要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、車内冷却の要求を優先的に満たしてよい。
【0700】
本願の一実施形態によれば、複数の車内冷却分岐路の開度を小さくするステップは、具体的には、以下を含む。複数の領域温度の間の温度差を取得する。温度差が第4の温度閾値より大きいか否かを判断する。温度差が第4の温度閾値より大きければ、温度が高い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する車内冷却分岐路の開度を大きくし、温度が高い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する電池冷却分岐路の開度を小さくする。第4の温度閾値が実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、3℃であってよい。
【0701】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、車載電池の温度調整方法は、温度が低い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ温度が低い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する電池冷却分岐路の開度を大きくすることをさらに含む。
【0702】
具体的には、電池の冷却過程において、車内にエアコンを起動する必要があれば、車室内の環境温度を監視し制御することにより、車内の各箇所の環境温度がバランスをとれると共に、電池冷却の要求を満たす。図28に示すように、吹き出し口1及び吹き出し口2における領域温度Tqが吹き出し口3及び吹き出し口4における近傍領域温度Tqより3℃以上高いと検出するときに、第1の車内冷却分岐路中の開度を大きくし、第1の電池冷却分岐路中の開度を小さくすることにより、第1の車内冷却分岐路中の冷却パワーが大きい。さらに、第2の車内冷却分岐路中の冷間開度を小さくし、第2の電池冷却分岐路の開度を大きくすることにより、第2の車内冷却分岐路中の冷却パワーが小さい。これにより、第1の電池冷却分岐路と第2の電池冷却分岐路の冷却パワーを変化させないと共に、車内の各箇所の吹き出し口における近傍領域温度をバランスさせることができる。車載エアコンが吹き出し口1、吹き出し口2における近傍領域温度Tqと吹き出し口3、吹き出し口4における近傍領域温度Tqとの差が3℃以内であると検出するときに、第1の車内冷却分岐路と第2の車内冷却分岐路中の第1の膨張弁の開度が同じになるように制御して、第1の車内冷却分岐路と第2の車内冷却分岐路の冷却パワーが同じになることを保証する。
【0703】
本願の一実施形態によれば、加熱モードにあるときに、さらに以下を含む。ある電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2より大きいか否かを判断する。ある電池の要求パワーP1が電池の対応する実際パワーP2より大きければ、該電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を冷却するヒーターのパワーを向上させたり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の加熱パワーを向上させる。ある電池の要求パワーP1が電池の対応する実際パワーP2以下であれば、ヒーターのパワーを低下させるか又はヒーターのパワーをそのまま保持したり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の加熱パワーを低下させる。
【0704】
具体的には、温度調整システムが加熱モードに入るときに、各電池のP1とP2をそれぞれ取得し、かつ判断する。そのうちのある電池のP1がP2より大きければ、現在の加熱パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池の昇温を完了できないことを示すため、該電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を加熱するヒーターのパワーを向上させたり、対応するポンプの回転速度を調整して向上させたりして、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を増加させることにより、該電池が目標時間t内に温度調整を完了する。P1とP2の差が大きければ大きいほど、ヒーターのパワーの向上が多い。その一方、ある電池のP1がP2以下であれば、ヒーターのパワーを適切に低下させて電気エネルギーを節約したり、対応するポンプの回転速度を調整して低下させることにより、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を減少させて、加熱パワーを低下させたり、ヒーターのパワーをそのまま保持したりしてよい。すべての電池の温度が所定温度、例えば10℃より高いときに、電池の加熱は完了し、CAN通信により温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンに送信し、かつ電池熱管理コントローラによりヒーターが動作を停止させるように制御する。温度調整システムが加熱モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が10℃より低い電池が依然として存在すれば、電池熱管理コントローラによりヒーターのパワーを適切に向上させて、該電池が昇温をできるだけ速く完了する。
【0705】
本願の一実施形態によれば、車載電池の温度調整方法は、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より小さければ、電池の流路中のポンプの回転速度を低下させるステップと、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より大きければ、電池の流路中のポンプの回転速度を向上させるステップとをさらに含んでよい。
【0706】
具体的には、温度調整システムが加熱モード又は冷却モードに入るときに、ある電池のP1がP2より小さければ、対応するポンプの回転速度を低下させるように制御して、電気エネルギーを節約する。ある電池のP1がP2より大きければ、コントローラは対応するヒーター又はコンプレッサーのパワーを向上させるか又は該電池の所在する回路の冷却液の流量を増加させるように制御することに加え、また、ポンプの回転速度を向上させるように制御して、単位時間当たりに冷却流路の断面積を流れる冷却液の質量を増加させることにより、該電池の実際パワーP2を向上させて、目標時間t内に温度調整を実現することができる。
【0707】
図13~14に示す温度調整システムに比べて、図31において車内冷却回路が追加される。以下、相違点のみを示し、その他について説明を省略する。
【0708】
図31に示すように、電池、車内冷却回路、電池冷却分岐路が複数あり、かつ複数の電池が独立して設置されるときに、温度調整システムが冷却モードに入るときに、コントローラは、各電池のP1、各電池の実際パワーP2及び単一コンプレッサーの最大冷却パワーPをそれぞれ取得し、かつ各電池のP1を加算すれば温度調整システム全体の総要求パワーPzを計算することができ、各電池の実際パワーP2を加算すれば総温度調整実際パワーPfを得て、各コンプレッサーの最大冷却パワーを加算すればすべてのコンプレッサーの最大冷却パワーの和P5を計算することができる。第1の電池の要求パワーはP11であり、第2の電池の要求パワーはP12である。第1の電池の実際パワーはP21であり、第2の電池の実際パワーはP22である。P51は第1のコンプレッサー11の最大冷却パワーであり、P52は第2のコンプレッサーの最大冷却パワーである。
【0709】
Pz≦P51であれば、1つのコンプレッサーを動作させて、冷却パワーを供給するように制御してもよく、2つのコンプレッサーを同時に動作させるように制御してもよい。P51<Pz≦P5であれば、2つのコンプレッサーを同時に動作させる必要があり、各コンプレッサーの初期冷却パワーをPz/2にし、或いは、他のパワーを組み合わせる形式により、2つのコンプレッサーの冷却パワーの和をPzにする。Pz>P5であれば、各コンプレッサーは最大冷却パワーPで運転する。
【0710】
車内冷却と電池冷却が同時にオンにされるときに、吹き出し口1、吹き出し口2の領域温度がT51であり、吹き出し口3、吹き出し口4の領域温度がT52であると仮定すれば、以下の判断を行う。
【0711】
T51-T52≧Tc、Tcが3℃であれば、以下の処理を行う。
【0712】
Pz+P4≦P5であれば、コントローラは第1のコンプレッサーの冷却パワーを向上させるように制御したり、第1のコンプレッサーの冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁の開度を小さくするように制御し、車内冷却回路の膨張弁の開度を大きくするように制御したり、第2のコンプレッサーの冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁を大きくするように制御すると共に、車内冷却回路の膨張弁の開度を小さくするように制御したりすることにより、T51温度を迅速に下げると共に、電池の冷却パワーの要求を満たして、車内環境温度のバランスを実現する。
【0713】
Pz+P4>P5であれば、コントローラは第1のコンプレッサー11と第2のコンプレッサー12が最大冷却パワーで運転するように制御すると共に、第1のコンプレッサー11の冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁の開度を小さくするように制御し、車内冷却回路の膨張弁の開度を大きくするように制御したり、第2のコンプレッサーの冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁を大きくするように制御すると共に、車内冷却回路の膨張弁の開度を小さくするように制御したりすることにより、T51温度を迅速に下げると共に、電池の冷却パワーの要求を満たして、車内環境温度のバランスを実現する。
【0714】
T51-T52≧Tc、Tcが3℃であれば、以下の処理を行ってよい。
【0715】
コントローラは第1のコンプレッサーの冷却回路中の電池冷却分岐路をオフにするように制御し、車内冷却回路の膨張弁の開度を大きくするように制御することにより、第1のコンプレッサーのすべての冷却パワーを車内冷却に用いる。第2のコンプレッサーの冷却回路中の電池冷却分岐路の膨張弁を大きくするように制御すると共に、車内冷却回路の膨張弁の開度を小さくするように制御して、電池への冷却パワーを向上させることにより、T51温度を迅速に下げると共に、電池の冷却パワーの要求を満たして、車内環境温度のバランスを実現する。
【0716】
本願の実施形態の車載電池の温度調整方法によれば、まず、複数の電池の温度調整の要求パワーと温度調整の実際パワーをそれぞれ取得し、次に車両中の複数の領域の領域温度とエアコンの設定温度をそれぞれ取得し、温度調整の要求パワー、温度調整の実際パワー、複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整する。これにより、該方法は各電池の実際の状態、車室内の複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて、電池と車室内の各領域の冷却力を分配し、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持するだけでなく、車室内の各領域の温度と各電池間の温度をバランスさせることができる。
【0717】
電池が1つあり、かつ冷却分岐路、車内冷却分岐路及び電池冷却分岐路が複数あるときに、車載電池の温度調整システムは、複数の冷却分岐路、複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び電池温度調整モジュール5を含む。
【0718】
図33に示すように、各冷却分岐路は、コンプレッサー1、コンプレッサー1と接続されたコンデンサ2を含む。複数の車内冷却分岐路はそれぞれ複数の冷却分岐路と接続される。電池温度調整モジュール5は、電池6及び電池冷却分岐路と接続されて、要求パワーP1と実際パワーP2を取得し、かつ車両中の複数の領域の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsを取得し、そして、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路のパワーを調整する。
【0719】
電池は電池パック又は電池モジュールであってよい。
【0720】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、電池温度調整モジュール5は、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて、目標時間t内に複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路のパワーを調整することにより、目標温度に達する。電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに、電池に温度調整を行う必要がある。電池温度調整モジュール5は電池6の要求パワーP1と実際パワーP2を取得し、P1とP2に基づいて複数の電池冷却分岐路の開度を調整して、電池の冷却パワーを調整し、かつ電池温度調整モジュール5は複数の領域温度Tqとエアコンの設定温度Tsを取得し、かつTqとTsに基づいて各電池冷却分岐路の開度を制御し、例えば、ある領域のTqが高く、かつ他の領域のTqとの差が大きければ、電池温度調整モジュール5は該領域を冷却する車内冷却分岐路の開度を大きくするように制御すると共に、対応する電池冷却分岐路の開度を小さくするように制御し、同時に、電池の冷却パワーが変化しないことを保証するために、電池温度調整モジュール5は別の車内冷却分岐路の開度を小さくするように制御すると共に、対応する電池冷却分岐路の開度を大きくするように制御する。これにより、該システムは電池の実際の状態、車室内の複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて、電池と車室内の各領域の冷却力を分配し、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持するだけでなく、車室内の各領域の温度をバランスさせることができる。
【0721】
電池温度調整モジュール5の冷却パワーが車載エアコンによって供給され、車内冷却システムと冷却力を共用することにより、温度調整システムの体積を減少させ、冷却液の流量の分配をより柔軟にすると理解すべきである。
【0722】
本願の一実施形態によれば、電池冷却分岐路は熱変換器41を含んでよく、熱変換器41は電池温度調整モジュール5と接続される。熱変換器41は第1の配管と第2の配管を含んでよく、第2の配管は電池温度調整モジュール5と接続され、第1の配管はコンプレッサー1と連通し、第1の配管と第2の配管が相互に独立し隣接して設置される。電池温度調整モジュール5は、電池内に設置され、電池温度を調整する流路(具体的に図示せず)と、流路と熱変換器41との間に接続されたポンプ51と、媒体容器52と、ヒーター53と、コントローラ(具体的に図示せず)とを含む。コントローラは、電池の要求パワーP1と電池の実際パワーP2を取得し、かつ要求パワーP1と実際パワーP2に基づいて電池の温度を調整する。車内冷却分岐路は、エバポレーター31、第1の膨張弁32及び第1の電子弁33を含んでよい。電池冷却分岐路4は、第2の膨張弁42及び第2の電子弁43をさらに含んでよい。
【0723】
具体的には、熱変換器41はプレート式熱交換器であってよく、プレート式熱交換器が車載エアコンの内部に取り付けられてよく、冷却剤回路全体を車載エアコンの内部にして、車載エアコンの出荷デバッグに役立ち、車載エアコンを個別に供給し組み立てることができ、同時に取付過程において車載エアコンに冷却剤を1回追加すればよい。冷却液は流路の入口から電池の内部に流入し、流路の出口から流出することにより、電池と冷却液との間の熱変換を実現する。
【0724】
ポンプ51は主に動力を供給し、媒体容器52は主に冷却液を貯蔵し、かつ温度調整システムに添加される冷却液を収容し、温度調整システムにおける冷却液が減少するときに、媒体容器52中の冷却液から自動的に補充することができる。ヒーター53は、PTCヒーターであってよく、コントローラとCAN通信を行い、車載電池の温度調整システムに加熱パワーを供給し、コントローラによって制御される。かつヒーター53は電池6と直接接触せず、高い安全性、信頼性及び実用性を持つ。
【0725】
第1の温度センサ55は流路入口における冷却液の温度を検出し、第2の温度センサ56は流路出口における冷却液の温度を検出する。流速センサ57は対応する配管内の冷却液の流速情報を検出する。第2の電子弁43は対応する電池冷却分岐路の開閉を制御し、第2の膨張弁42は対応する電池冷却分岐路中の冷却液の流量を制御することができる。
【0726】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて要求パワーP1と実際パワーP2をどのように取得するかを説明する。
【0727】
本願の一実施形態によれば、コントローラは電池の温度調整開始時の第1のパラメータをそれぞれ取得し、第1のパラメータに基づいて電池の第1の要求パワーを生成し、そして、電池の温度調整中の第2のパラメータをそれぞれ取得し、第2のパラメータに基づいて電池の第2の要求パワーを生成すると共に、電池の第1の要求パワーと電池の第2の要求パワーに基づいて電池の要求パワーP1を生成する。
【0728】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、第1のパラメータは電池の温度調整開始時の初期温度、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tであり、コントローラは、初期温度と目標温度との間の第1の温度差ΔTを取得し、かつ第1の温度差ΔTと目標時間tに基づいて第1の要求パワーを生成する。
【0729】
好ましくは、コントローラは下式(1)に基づいて第1の要求パワーを生成し、
ΔT*C*M/t (1)
ΔTが初期温度と目標温度との間の第1の温度差であり、tが目標時間であり、Cが電池6の比熱であり、Mが電池の質量である。
【0730】
第2のパラメータは所定の時間内の電池の平均電流Iであり、コントローラは下式(2)に基づいて第2の要求パワーを生成し、
*R (2)
Iが平均電流であり、Rが電池6の内部抵抗である。
【0731】
電池6を冷却するときに、P1=ΔT*C*M/t+I*R、電池6を加熱するときに、P1=ΔT*C*M/t-I*R。
【0732】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、それぞれ第1の温度センサ55によって検出された入口温度と第2の温度センサ56によって検出された出口温度に基づいて電池の第2の温度差ΔTを生成し、かつ電池の第2の温度差ΔT、及び流速センサ57によって検出された流速vに基づいて電池の実際パワーP2を生成する。
【0733】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(3)に基づいて実際パワーP2を生成し、
ΔT*c*m (3)
ΔTが第2の温度差であり、cが流路中の冷却液の比熱であり、mが単位時間当たりに流路の断面積を流れる冷却液の質量であり、m=v*ρ*sであり、vが冷却液の流速であり、ρが冷却液の密度である。
【0734】
具体的には、図33に示すように、車両がパワーアップされると、コントローラは電池6に温度調整を行う必要があるか否かを判断し、電池6に温度調整を行う必要があると判断すれば、温度調整機能をオンにし、かつ低い回転速度情報をポンプ51に送信し、ポンプが初期設定回転速度(例えば、低い回転速度)で動作を開始させる。コントローラは電池6の初期温度(即ち、現在の温度)、目標温度、及び初期温度から目標温度になるまでの目標時間tを取得し、目標温度と目標時間tが実際の状況に応じて予め設定されてよく、そして、式(1)に基づいて電池6の第1の要求パワーを計算する。同時に、コントローラは、所定の時間内の電池6の平均電流Iを取得し、式(2)に基づいて電池6の第2の要求パワーを計算する。その後に、コントローラは、それぞれ電池の第1の要求パワーと第2の要求パワーに基づいて要求パワーP1を計算する。そして、コントローラは、第1の温度センサ55と第2の温度センサ56の検出温度情報を取得すると共に、流速センサによって検出された流速情報をそれぞれ取得し、式(3)に基づいて電池の実際パワーP2を計算する。
【0735】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて、どのように要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路(30及び30)、複数の電池冷却分岐路(401及び402)及び複数の冷却分岐路(11及び12)の開度を調整するかを説明する。
【0736】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、複数のコンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5を生成し、要求パワーP1が複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5より大きいか否かを判断し、要求パワーP1が複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5より大きいときに、コントローラは、複数の電池冷却分岐路の冷却力の開度を最大に調整し、要求パワーP1が複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5以下であるときに、コントローラは、要求パワーP1と総最大冷却パワーP5の差に基づいて電池冷却分岐路の冷却力の開度を調整する。
【0737】
具体的には、図33に示すように、コントローラは、各コンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5を計算することができ、つまり、各コンプレッサーの最大冷却パワーPを加算すれば、総最大冷却パワーP5を得ることができる。その後に、コントローラはPz>P5であるか否かを判断し、そうであれば、コントローラは各第2の膨張弁42の開度を最大に調整して、複数のコンプレッサー1から電池の対応する電池冷却分岐路への冷却液の流量を最大に調整することにより、電池6が目標時間t内に降温を完了することができる。P1≦P5であれば、コントローラはP1とP5との間の差に基づいて第2の膨張弁42の開度を調整し、P1とP5の差の絶対値が大きければ大きいほど、第2の膨張弁42の開度が小さく、エネルギーを節約するという目的を達成する。
【0738】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに、電池の温度を検出し、かつ電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに温度調整システムが加熱モードに入るように制御する。第1の温度閾値と第2の温度閾値は実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、第1の温度閾値が40℃であってよく、第2の温度閾値が0℃であってよい。
【0739】
具体的には、車両がパワーアップされると、コントローラは電池の温度をリアルタムに検出し、かつ判断する。そのうち、電池の温度が40℃より高ければ、このときに電池6の温度が高過ぎることを示し、高温が電池6の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池6に降温処理を行う必要があり、コントローラは、温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、かつ電池冷却機能をオンにするという情報をエアコンシステムに送信し、そして、第2の電子弁43を開弁するように制御することにより、冷却液と電池は熱変換を行って該電池の温度を下げる。
【0740】
ある電池の温度が0℃より低ければ、このときに電池6の温度が低過ぎることを示し、低温が該電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、該電池6に昇温処理を行う必要があり、コントローラは温度調整システムが加熱モードに入るように制御し、第2の電子弁43を閉弁するように制御し、かつヒーター53を起動させるように制御することにより、温度調整システムに加熱パワーを供給する。
【0741】
本願の一実施形態によれば、冷却モードにあるときに、コントローラは、さらに、電池冷却分岐路の要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、電池温度が第3の温度閾値より大きいか否かを判断し、電池温度が第3の温度閾値より大きければ、コントローラは複数の車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ複数の電池冷却分岐路の開度を大きくし、電池冷却分岐路の開度は対応する弁(即ち、第2の膨張弁42)によりそれぞれ制御され、第3の温度閾値が第1の温度閾値より大きく、例えば、第3の温度閾値が45℃であってよい。
【0742】
具体的には、温度調整システムが冷却モードに入るときに、P1がP2より大きければ、コントローラは電池の温度が45℃より大きいか否かを判断する。電池の温度が45℃より大きければ、現在の電池6の温度が高過ぎることを示し、コントローラは第1の膨張弁32の開度を小さくして、車内冷却分岐路の冷却液の流量を減少させると共に、第2の膨張弁42の開度を大きくして、電池冷却分岐路の冷却液の流量を増加させる。ことにより、車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の冷却力の分配を調整することにより、電池の温度が高過ぎるときに目標時間内に電池の温度調整を完了することができる。
【0743】
本願の一実施形態によれば、冷却モードにあるときに、コントローラは、さらに、電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2より大きいときに、電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を冷却するコンプレッサー1のパワーを向上させたり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の冷却パワーを向上させ、電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2以下であるときに、コンプレッサーのパワーを低下させるか又はコンプレッサーのパワーをそのまま保持したり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の冷却パワーを低下させる。
【0744】
具体的には、温度調整システムが冷却モードに入るときに、コントローラは電池6のP1とP2を取得し、かつ判断する。P1がP2より大きければ、現在の冷却パワー又は冷却液の流量で目標時間内に電池6の降温を完了できないことを示すため、コントローラは電池6のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいてコンプレッサー1のパワーを向上させたり、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を増加させたりすることにより、該電池の冷却パワーを向上させ、P1とP2のパワー差が大きければ大きいほど、コンプレッサーのパワーを多く向上させ該電池の冷却液の流量を多く増加させることにより、所定の時間t内に該電池の温度を目標温度に下げる。その一方、電池のP1がP2以下であれば、コンプレッサーのパワーをそのまま保持するか又はコンプレッサーのパワーを適切に低下させたり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を減少させたりして、電池の冷却パワーを低下させる。電池の温度が35℃より低いときに、電池の冷却は完了し、コントローラはCAN通信により温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンに送信し、かつ第2の電子弁43を閉弁するように制御する。温度調整システムが冷却モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、電池の温度が依然として35℃より高ければ、コントローラはコンプレッサーのパワーを適切に向上させて、電池6が降温をできるだけ速く完了する。
【0745】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに、電池の温度が第3の温度閾値より小さく、かつ車内温度がエアコンの設定温度Tsに等しいときに、複数の車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ複数の電池冷却分岐路の開度を大きくする。
【0746】
具体的には、温度調整システムが冷却モードに入るときに、電池の温度が45℃より小さければ、コントローラは車内温度がエアコンの設定温度Tsに達するか否かを判断する。達すれば、コントローラは第1の膨張弁32の開度を小さくし、かつ第2の膨張弁42の開度を大きくして、電池冷却分岐路の冷却液の流量を増加させ、車内冷却分岐路の冷却液の流量を減少させて、電池の降温をできるだけ速く完了する。その一方、車内温度がエアコンの設定温度Tsに達しなければ、車内の冷却要求を優先的に満たし、コントローラは第1の膨張弁32の開度を大きくし、かつ第2の膨張弁42の開度を小さくする。
【0747】
また、電池の温度に階層化処理を行い、温度制御の閾値がそれぞれ40℃、45℃及び35℃である。電池の温度が40℃より高いときに、電池の冷却機能がオンにされ、電池の温度が35℃に低下するときに、電池の冷却が完了する。電池の温度が45℃に達するときに、電池冷却の要求を優先的に満たす。また、要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、電池の温度が45℃を超えなければ、依然として車内冷却の要求を優先し、車内の冷却パワーが十分であり、かつバランスを取れば、コントローラは電池冷却分岐路の開度を大きくして、電池の冷却パワーを向上させる。要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、車内冷却の要求を優先的に満たしてよい。
【0748】
本願の一実施形態では、複数の冷却分岐路は、それぞれ複数の吹き出し口に対応し、複数の領域温度は複数の吹き出し口の温度である。
【0749】
例として、図28に示すように、車室内に4つの吹き出し口が設置されてよく、それぞれが吹き出し口1~4である。吹き出し口の温度Tcを検出することにより対応する領域温度Tqを検出する。吹き出し口1と吹き出し口2は、第1の冷却分岐路11によって冷却パワーが供給され、吹き出し口3と吹き出し口4は、第2の冷却分岐路12によって冷却パワーが供給されると仮定する。
【0750】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに、複数の領域温度間の温度差を取得し、かつ温度差が第4の温度閾値より大きいときに、温度が高い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する車内冷却分岐路の開度を大きくし、かつ温度が高い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する電池冷却分岐路の開度を小さくする。第4の温度閾値が実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、3℃であってよい。
【0751】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、コントローラは、さらに、温度が低い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ温度が低い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する電池冷却分岐路の開度を大きくする。
【0752】
具体的には、電池の冷却過程において、車内にエアコンを起動する必要があれば、車室内の環境温度を監視し制御することにより、車内の各箇所の環境温度がバランスをとれると共に、電池冷却の要求を満たす。図28に示すように、吹き出し口1及び吹き出し口2における領域温度Tqが吹き出し口3及び吹き出し口4における近傍領域温度Tqより3℃以上高いと検出するときに、第1の車内冷却分岐路301中の第1の膨張弁32の開度を大きくするように制御すると共に、第1の電池冷却分岐路401中の第2の膨張弁42の開度を小さくするように制御して、第1の車内冷却分岐路301中の冷却パワーを向上させる。コントローラは、さらに第2の車内冷却分岐路302中の第1の膨張弁32の開度を小さくし、第2の電池冷却分岐路402中の第2の膨張弁42の開度を大きくするように制御して、第2の車内冷却分岐路302中の冷却パワーを低下させる。これにより、第1の電池冷却分岐路401と第2の電池冷却分岐路402の冷却パワーを変化させないと共に、車内の各箇所の吹き出し口における近傍領域温度をバランスさせる。車載エアコンが吹き出し口1、吹き出し口2における近傍領域温度Tqと吹き出し口3、吹き出し口4における近傍領域温度Tqとの差が3℃以内であると検出するときに、コントローラは、第1の車内冷却分岐路301と第2の車内冷却分岐路302中の第1の膨張弁32の開度が同じになるように制御して、第1の車内冷却分岐路301と第2の車内冷却分岐路302の冷却パワーが同じになることを保証する。
【0753】
本願の一実施形態によれば、加熱モードにあるときに、コントローラは、電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2より大きいときに、電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を加熱するヒーター53のパワーを向上させたり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の加熱パワーを向上させ、そして、電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2以下であるときに、ヒーター53のパワーを低下させたり、ヒーター53のパワーをそのまま保持したり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の加熱パワーを低下させる。
【0754】
具体的には、温度調整システムが加熱モードに入るときに、コントローラは電池6のP1とP2を取得し、かつ判断する。P1がP2より大きければ、現在の加熱パワー又は冷却液の流量で目標時間内に電池6の昇温を完了できないことを示すため、コントローラは電池6のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池6を加熱するヒーター53のパワーを向上させたり、ポンプ51の回転速度を調整して向上させたりして、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を増加させることにより、該電池が目標時間t内に温度調整を完了する。P1とP2の差が大きければ大きいほど、ヒーター53のパワーの向上が多い。その一方、電池6のP1がP2以下であれば、コントローラは、ヒーター53のパワーを適切に低下させて電気エネルギーを節約したり、ポンプ51の回転速度を調整して低下させることにより、該電池6の循環分岐路の冷却液の流量を減少させて、加熱パワーを低下させたり、ヒーター53のパワーをそのまま保持したりしてよい。電池の温度が所定温度、例えば10℃より高いときに、電池6の加熱は完了し、コントローラはCAN通信により温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンに送信し、かつヒーター53が動作を停止させるように制御する。温度調整システムが加熱モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、電池6の温度が依然として10℃より低ければ、コントローラはヒーター53のパワーを適切に向上させて、電池6が昇温をできるだけ速く完了する。
【0755】
本願の一実施形態によれば、コントローラは、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より小さいときに、ポンプ51の回転速度を低下させ、そして、ある電池の要求パワーP1が対応する実際パワーP2より大きいときに、ポンプ51の回転速度を向上させる。
【0756】
具体的には、温度調整システムが加熱モード又は冷却モードに入るときに、電池6のP1がP2より小さければ、コントローラはポンプ51の回転速度を低下させるように制御して、電気エネルギーを節約する。電池6のP1がP2より大きければ、コントローラは対応するヒーター53又はコンプレッサー1のパワーを向上させるか又は電池6の所在する回路の冷却液の流量を増加させるように制御することに加え、また、ポンプ51の回転速度を向上させるように制御して、単位時間当たりに冷却流路の断面積を流れる冷却液の質量を増加させることにより、電池6の実際パワーP2を向上させて、目標時間t内に温度調整を実現することができる。
【0757】
図33に示すシステムの電池温度調整モジュール5の調整方法は図25~26の方法と類似するが、図33において単一電池パックであり、図25~26において2つの電池パックが直列接続されるという点で相違し、本願の実施形態の図33に示すシステムの温度調整過程について、詳細に開示されていないが、具体的には上記実施形態を参照すればよく、冗長な説明を避けるために、ここで説明を省略する。
【0758】
本願の実施形態の車載電池の温度調整システムによれば、電池温度調整モジュールにより温度調整の要求パワーと温度調整の実際パワーを取得し、かつ車両中の複数の領域の領域温度とエアコンの設定温度を取得し、そして、温度調整の要求パワー、温度調整の実際パワー、複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整する。これにより、該システムは電池の実際の状態、車室内の複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて、電池と車室内の各領域の冷却力を分配し、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持するだけでなく、車室内の各領域の温度をバランスさせることができる。
【0759】
図36は、本願の実施形態11に係る車載電池の温度調整方法のフローチャートである。図33に示すように、車載電池の温度調整システムは複数の冷却分岐路、複数の冷却分岐路に対応する複数の電池冷却分岐路、複数の車内冷却分岐路、電池、及び上記電池と複数の電池冷却分岐路との間に接続された電池温度調整モジュールを含み、各電池冷却分岐路は熱変換器を含み、図36に示すように、該温度調整方法は、以下のステップS1””~S3””を含む。
【0760】
S1””では、電池の要求パワーP1と実際パワーP2をそれぞれ取得する。
【0761】
本願の一実施形態によれば、電池の温度調整の要求パワーを取得するステップは、具体的には、以下を含む。電池の温度調整開始時の第1のパラメータを取得し、かつ第1のパラメータに基づいて電池の第1の要求パワーを生成する。電池の温度調整中の第2のパラメータを取得し、かつ第2のパラメータに基づいて電池の第2の要求パワーを生成する。第1の要求パワーと第2の要求パワーに基づいて電池冷却分岐路の要求パワーP1を生成する。
【0762】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、第1のパラメータは電池の温度調整開始時の初期温度、目標温度、及び初期温度から上記目標温度になるまでの目標時間tであり、第1のパラメータに基づいて第1の要求パワーを生成するステップは、具体的には、初期温度と目標温度との間の第1の温度差ΔTを取得するステップと、第1の温度差ΔTと目標時間tに基づいて第1の要求パワーを生成するステップとを含む。
【0763】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(1)に基づいて第1の要求パワーを生成し、
ΔT*C*M/t (1)
ΔTが初期温度と目標温度との間の第1の温度差であり、tが目標時間であり、Cが電池の比熱であり、Mが電池の質量である。
【0764】
本願の一実施形態によれば、第2のパラメータは所定の時間内の電池の平均電流Iであり、下式(2)に基づいて第2の要求パワーを生成し、
*R (2)
Iが平均電流であり、Rが電池の内部抵抗である。
【0765】
電池を冷却するときに、P1=ΔT*C*M/t+I*R、電池を加熱するときに、P1=ΔT*C*M/t-I*R。
【0766】
本願の一実施形態によれば、電池の実際パワーP2を取得するステップは、具体的には、以下を含む。電池の温度を調整する流路の入口温度と出口温度を取得すると共に、冷却液が流路に流入する流速vを取得する。電池の流路の入口温度と出口温度に基づいて電池の第2の温度差ΔTを生成する。電池の第2の温度差ΔT及び流速vに基づいて電池の実際パワーP2を生成する。
【0767】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、下式(3)に基づいて実際パワーP2を生成し、
ΔT*c*m (3)
ΔTが第2の温度差であり、cが流路中の冷却液の比熱であり、mが単位時間当たりに流路の断面積を流れる冷却液の質量であり、m=v*ρ*sであり、vが冷却液の流速であり、ρが冷却液の密度であり、sが流路の断面積である。
【0768】
S2””では、車両中の複数の領域の領域温度Tqとエアコンの設定温度Tsをそれぞれ取得する。
【0769】
S3””では、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整する。
【0770】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の上記領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて、目標時間t内に複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整することにより、目標温度に達する。
【0771】
電池は電池パック又は電池モジュールであってよい。
【0772】
具体的には、冷却分岐路、電池冷却分岐路、車内冷却分岐路及び電池が2つあることを例として、冷却分岐路はそれぞれ第1の冷却分岐路と第2の冷却分岐路であり、電池冷却分岐路はそれぞれ第1の電池冷却分岐路と第2の電池冷却分岐路であり、車内冷却分岐回路はそれぞれ第1の車内冷却分岐路と第2の車内冷却分岐路である。
【0773】
電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに、電池に温度調整を行う必要がある。電池の要求パワーP1と実際パワーP2を取得し、P1とP2に基づいて複数の電池冷却分岐路の開度を調整して、電池の冷却パワーを調整し、かつ複数の領域温度Tqとエアコンの設定温度Tsを取得し、かつTqとTsに基づいて各電池冷却分岐路の開度を制御し、例えば、ある領域のTqが高く、かつ他の領域のTqとの差が大きければ、該領域を冷却する車内冷却分岐路の開度を大きくするように制御すると共に、対応する電池冷却分岐路の開度を小さくするように制御し、同時に、電池の冷却パワーが変化しないことを保証するために、別の車内冷却分岐路の開度を小さくするように制御すると共に、対応する電池冷却分岐路の開度を大きくするように制御する。これにより、該方法は電池の実際の状態、車室内の複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて、電池と車室内の各領域の冷却力を分配し、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持するだけでなく、車室内の各領域の温度をバランスさせることができる。
【0774】
図33に基づいて、以下、具体的な実施形態を組み合わせて、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度をどのように調整するかを説明する。
【0775】
本願の一実施形態によれば、車載電池が1つあり、かつ車内冷却分岐路、電池冷却分岐路及び冷却分岐路が複数あるときに、上記車載電池の温度調整方法は、さらに以下を含んでよい。複数のコンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5を生成する。要求パワーP1が複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5より大きいか否かを判断する。要求パワーP1が複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5より大きければ、複数のコンプレッサーによる電池冷却分岐路への冷却力の開度を最大に調整する。要求パワーP1が複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5以下であれば、要求パワーP1と総最大冷却パワーP5の差に基づいて電池の対応する電池冷却分岐路の冷却力の開度を調整する。
【0776】
具体的には、各コンプレッサーの最大冷却パワーPに基づいて複数のコンプレッサーの総最大冷却パワーP5を計算することができ、つまり、各コンプレッサーの最大冷却パワーPを加算すれば、総最大冷却パワーP5を得ることができる。その後に、P1>P5であるか否かを判断し、そうであれば、各電池冷却分岐路中の第2の膨張弁の開度を最大に調整して、複数のコンプレッサーから電池の対応する電池冷却分岐路への冷却液の流量を最大に調整することにより、電池が目標時間t内に降温を完了することができる。P1≦P5であれば、P1とP5との間の差に基づいて電池冷却分岐路中の第2の膨張弁の開度を調整し、P1とP5の差の絶対値が大きければ大きいほど、第2の膨張弁の開度が小さく、エネルギーを節約するという目的を達成する。
【0777】
本願の一実施形態によれば、電池の温度調整方法は、さらに以下のステップを含んでよい。電池の温度を検出する。電池の温度が第1の温度閾値より大きいときに、冷却モードに入る。電池の温度が第2の温度閾値より小さいときに、加熱モードに入る。第1の温度閾値と第2の温度閾値は実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、第1の温度閾値が40℃であってよく、第2の温度閾値が0℃であってよい。
【0778】
具体的には、車両がパワーアップされると、電池管理コントローラにより電池の温度をリアルタムに検出し、かつ判断する。電池の温度が40℃より高ければ、このときに電池の温度が高過ぎることを示し、高温が電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、電池に降温処理を行う必要があり、電池管理コントローラにより温度調整システムが冷却モードに入るように制御し、かつ電池冷却機能をオンにするという情報をエアコンシステムに送信する。その一方、電池の温度が0℃より低ければ、このときに電池の温度が低過ぎることを示し、低温が電池の性能に影響を及ぼすことを回避するために、電池に昇温処理を行う必要があり、温度調整システムが加熱モードに入るように制御し、電池冷却分岐路をオフにするように制御し、かつヒーターを起動させるように制御して、電池に加熱パワーを供給する。
【0779】
本願の一実施形態によれば、冷却モードにあるときに、要求パワーP1、実際パワーP2、複数の領域温度Tq及びエアコンの設定温度Tsに基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整するステップは、具体的には、以下を含む。電池冷却分岐路の要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、電池温度が第3の温度閾値より大きいか否かを判断し、電池温度が第3の温度閾値より大きければ、複数の車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ複数の電池冷却分岐路の開度を大きくし、複数の電池冷却分岐路の開度は対応する弁(即ち、第2の膨張弁)によりそれぞれ制御され、第3の温度閾値が第1の温度閾値より大きく、例えば、第3の温度閾値が45℃であってよい。
【0780】
具体的には、冷却モードにあるときに、P1がP2より大きければ、電池の温度が45℃より大きいか否かを判断する。電池の温度が45℃より大きければ、現在の電池の温度が高過ぎることを示し、第1の膨張弁の開度を小さくして、車内冷却分岐路の冷却液の流量を減少させると共に、第2の膨張弁42の開度を大きくして、電池冷却分岐路の冷却液の流量を増加させる。ことにより、車内冷却分岐路と電池冷却分岐路の冷却力の分配を調整することにより、電池の温度が高過ぎるときに目標時間内に電池の温度調整を完了することができる。
【0781】
本願の一実施形態によれば、電池の温度調整方法は、さらに以下を含む。電池の要求パワーP1が実際パワーP2より大きいか否かを判断する。電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2より大きければ、電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を冷却するコンプレッサーのパワーを向上させたり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の冷却パワーを向上させる。電池の要求パワーP1が電池の実際パワーP2以下であれば、コンプレッサーのパワーを低下させたり、コンプレッサーのパワーをそのまま保持したり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の冷却パワーを低下させる。
【0782】
具体的には、温度調整システムが冷却モードに入るときに、電池のP1とP2をそれぞれ取得し、かつ判断する。P1がP2より大きければ、現在の冷却パワー又は冷却液の流量で目標時間内に該電池の降温を完了できないことを示すため、コントローラは電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいてコンプレッサーのパワーを向上させたり、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を増加させたりすることにより、該電池の冷却パワーを向上させ、P1とP2のパワー差が大きければ大きいほど、コンプレッサーのパワーを多く向上させ該電池の冷却液の流量を多く増加させることにより、所定の時間t内に電池の温度を目標温度に下げる。その一方、電池のP1がP2以下であれば、コンプレッサーのパワーをそのまま保持するか又はコンプレッサーのパワーを適切に低下させたり、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を減少させたりして、電池の冷却パワーを低下させる。電池の温度が35℃より低いときに、電池の冷却は完了し、CAN通信により温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンに送信し、かつ第2の電子弁を閉弁するように制御する。温度調整システムが冷却モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、温度が35℃より高い電池が依然として存在すれば、コンプレッサーのパワーを適切に向上させて、該電池が降温をできるだけ速く完了する。
【0783】
本願の一実施形態によれば、電池の温度が第3の温度閾値より小さければ、上記車内温度がエアコンの設定温度Tsに等しい否かをさらに判断し、車内温度がエアコンの設定温度Tsに等しければ、複数の車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ複数の電池冷却分岐路の開度を大きくする。
【0784】
具体的には、温度調整システムが冷却モードに入るときに、電池の温度がいずれも45℃より小さければ、コントローラは車内温度がエアコンの設定温度Tsに達するか否かを判断する。達すれば、電池冷却分岐路の冷却液の流量を増加させ、車内冷却分岐路の冷却液の流量を減少させて、電池の降温をできるだけ速く完了する。車内温度がエアコンの設定温度Tsに達しなければ、車内の冷却要求を優先的に満たし、コントローラは車内冷却分岐路の冷却液流量を増加させ、かつ電池冷却分岐路の冷却液流量を減少させる。
【0785】
また、電池の温度に階層化処理を行い、温度制御の閾値がそれぞれ40℃、45℃及び35℃である。電池の温度が40℃より高いときに、電池の冷却機能がオンにされ、電池の温度が35℃に低下するときに、電池の冷却が完了する。電池の温度が45℃に達するときに、電池冷却の要求を優先的に満たす。また、要求パワーP1が実際パワーP2より大きいときに、電池の温度が45℃を超えなければ、依然として車内冷却の要求を優先し、車内の冷却パワーが十分であり、かつバランスを取れば、電池冷却分岐路の開度を大きくして、電池の冷却パワーを向上させる。要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、車内冷却の要求を優先的に満たしてよい。
【0786】
本願の一実施形態によれば、複数の車内冷却分岐路の開度を小さくするステップは、具体的には、以下を含む。複数の領域温度の間の温度差を取得する。温度差が第4の温度閾値より大きいか否かを判断する。温度差が第4の温度閾値より大きければ、温度が高い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する車内冷却分岐路の開度を大きくし、温度が高い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する電池冷却分岐路の開度を小さくする。第4の温度閾値が実際の状況に応じて予め設定されてよく、例えば、3℃であってよい。
【0787】
本願の一実施形態では、複数の冷却分岐路は、それぞれ複数の吹き出し口に対応し、複数の領域温度は複数の吹き出し口の温度である。
【0788】
例として、図28に示すように、車室内に4つの吹き出し口が設置されてよく、それぞれが吹き出し口1~4である。吹き出し口の温度Tcを検出することにより対応する領域温度Tqを検出する。吹き出し口1と吹き出し口2は、第1の冷却分岐路11によって冷却パワーが供給され、吹き出し口3と吹き出し口4は、第2の冷却分岐路12によって冷却パワーが供給されると仮定する。
【0789】
好ましくは、本願の一実施形態によれば、車載電池の温度調整方法は、温度が低い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する車内冷却分岐路の開度を小さくし、かつ温度が低い吹き出し口の所在する冷却分岐路に対応する電池冷却分岐路の開度を大きくすることをさらに含む。
【0790】
具体的には、電池の冷却過程において、車内にエアコンを起動する必要があれば、車室内の環境温度を監視し制御することにより、車内の各箇所の環境温度がバランスをとれると共に、電池冷却の要求を満たす。図28に示すように、吹き出し口1及び吹き出し口2における領域温度Tqが吹き出し口3及び吹き出し口4における近傍領域温度Tqより3℃以上高いと検出するときに、第1の車内冷却分岐路中の開度を大きくし、第1の電池冷却分岐路中の開度を小さくすることにより、第1の車内冷却分岐路中の冷却パワーが大きい。さらに、第2の車内冷却分岐路中の冷間開度を小さくし、第2の電池冷却分岐路の開度を大きくすることにより、第2の車内冷却分岐路中の冷却パワーが小さい。これにより、第1の電池冷却分岐路と第2の電池冷却分岐路の冷却パワーを変化させないと共に、車内の各箇所の吹き出し口における近傍領域温度をバランスさせることができる。車載エアコンが吹き出し口1、吹き出し口2における近傍領域温度Tqと吹き出し口3、吹き出し口4における近傍領域温度Tqとの差が3℃以内であると検出するときに、第1の車内冷却分岐路と第2の車内冷却分岐路中の第1の膨張弁の開度が同じになるように制御して、第1の車内冷却分岐路と第2の車内冷却分岐路の冷却パワーが同じになることを保証する。
【0791】
本願の一実施形態によれば、加熱モードにあるときに、さらに以下を含む。電池の要求パワーP1が実際パワーP2より大きいか否かを判断する。電池の要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、電池の要求パワーP1と実際パワーP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を冷却するヒーターのパワーを向上させたり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して増加させたりすることにより、電池の加熱パワーを向上させる。電池の要求パワーP1が実際パワーP2以下であれば、ヒーターのパワーを低下させるか又はヒーターのパワーをそのまま保持したり、電池の循環分岐路の冷却液の流量を調整して減少させたりすることにより、電池の加熱パワーを低下させる。
【0792】
具体的には、温度調整システムが加熱モードに入るときに、コントローラは電池のP1とP2をそれぞれ取得し、かつ判断する。P1がP2より大きければ、現在の加熱パワー又は冷却液の流量で目標時間内に電池の昇温を完了できないことを示すため、電池のP1とP2との間のパワー差を取得し、かつパワー差に基づいて電池を加熱するヒーターのパワーを向上させたり、対応するポンプの回転速度を調整して向上させたりして、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を増加させることにより、電池が目標時間t内に温度調整を完了する。P1とP2の差が大きければ大きいほど、ヒーターのパワーの向上が多い。その一方、電池のP1がP2以下であれば、ヒーターのパワーを適切に低下させて電気エネルギーを節約したり、対応するポンプの回転速度を調整して低下させることにより、該電池の循環分岐路の冷却液の流量を減少させて、加熱パワーを低下させたり、ヒーターのパワーをそのまま保持したりしてよい。電池の温度が所定温度、例えば10℃より高いときに、電池の加熱は完了し、CAN通信により温度調整機能をオフにするという情報を車載エアコンに送信し、かつヒーターが動作を停止させるように制御する。温度調整システムが加熱モードに入って長い時間、例えば1時間が経過した後、電池の温度が依然として10℃より低ければ、ヒーターのパワーを適切に向上させて、該電池が昇温をできるだけ速く完了する。
【0793】
本願の一実施形態によれば、車載電池の温度調整方法は、電池の要求パワーP1が実際パワーP2より小さければ、電池の流路中のポンプの回転速度を低下させるステップと、電池の要求パワーP1が実際パワーP2より大きければ、電池の流路中のポンプの回転速度を向上させるステップとをさらに含んでよい。
【0794】
具体的には、温度調整システムが加熱モード又は冷却モードに入るときに、電池のP1がP2より小さければ、コントローラにより対応するポンプの回転速度を低下させるように制御して、電気エネルギーを節約する。電池のP1がP2より大きければ、コントローラは対応するヒーター又はコンプレッサーのパワーを向上させるか又は電池の循環分岐路の冷却液の流量を増加させるように制御することに加え、また、ポンプの回転速度を向上させるように制御して、単位時間当たりに冷却流路の断面積を流れる冷却液の質量を増加させることにより、電池の実際パワーP2を向上させて、目標時間t内に温度調整を実現することができる。
【0795】
以上より、本願の実施形態の車載電池の温度調整方法によれば、まず、電池の温度調整の要求パワーと温度調整の実際パワーをそれぞれ取得し、次に車両中の複数の領域の領域温度とエアコンの設定温度をそれぞれ取得し、温度調整の要求パワー、温度調整の実際パワー、複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて複数の車内冷却分岐路、複数の電池冷却分岐路及び複数の冷却分岐路の開度を調整する。これにより、該方法は電池の実際の状態、車室内の複数の領域温度及びエアコンの設定温度に基づいて、電池と車室内の各領域の冷却力を分配し、電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、電池の温度を所定の範囲に維持するだけでなく、車室内の各領域の温度をバランスさせることができる。
【0796】
電池に冷却剤を供給するコンプレッサー1は複数で、かつ相互に独立してよく、車内冷却分岐路3と電池冷却分岐路4はいずれも1つあってよい。
【0797】
例として、図37に示すように、コンプレッサーが2つあることを例とし、第1のコンプレッサー11と第2のコンプレッサー12を含む。コントローラは要求パワーP1と実際パワーP2に基づいてコンプレッサーの起動数量を制御することができる。
【0798】
具体的には、電池6を冷却するときに、P1がP2より大きければ、1つのコンプレッサーを起動させるように制御すればよく、P1がP2より小さければ、2つのコンプレッサーをいずれも起動させるように制御する。
【0799】
また、本願の実施形態は車両をさらに提供し、図38に示すように、本願の実施形態の車両1000は、上記車載電池の温度調整システム100を含んでよい。
【0800】
本願の実施形態の車両によれば、電池の温度調整の時間を精確に制御でき、かつ電池の実際パワーがリアルタイムに調整可能であり、車載電池の実際の状態に応じて車載電池の加熱パワーと冷却パワーを精確に制御でき、車載電池の温度が高過ぎるか又は低過ぎるときに温度を調整して、車載電池の温度を所定の範囲に維持することにより、温度が車載電池の性能に影響を及ぼす状況を回避する。
【0801】
なお、本願の説明において、用語「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「半径方向」、「周方向」などで示す方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、本願を容易に説明し説明を簡略化するためのものに過ぎず、示された装置又は部品が特定の方位を有するとともに、特定の方位で構成されて動作しなければならないことを示すか又は示唆するものではないため、本願を限定するものであると理解すべきではない。
【0802】
さらに、用語「第1の」、「第2の」は、説明目的のためのみに用いられ、相対的な重要性を指示するか又は暗示し、或いは指示された技術的特徴の数量を暗示すると理解すべきではない。これにより、「第1の」、「第2の」で限定された特徴は、少なくとも1つの該特徴を明示的又は暗示的に含むことができる。本願の説明において、「複数」とは、別に明らかかつ具体的な限定がない限り、少なくとも2つ、例えば2つ、3つなどを意味する。
【0803】
本願において、明確な規定及び限定がない限り、用語「装着」、「連接」、「接続」、「固定」などは、広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続、着脱可能な接続、一体的な接続であってもよく、機械的な接続、電気的な接続であってもよく、直接的な接続、中間媒体を介した接続であってもよく、明確な限定がない限り、2つの素子の間の連通、または2つの素子の相互作用の関係であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて本願における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0804】
本願において、明確な規定及び限定がない限り、第1の特徴が第2特徴の「上」又は「下」にあることは、第1の特徴と第2の特徴とが直接的に接触することを含んでもよいし、第1の特徴と第2の特徴とが中間媒体を介して間接的に接触することを含んでもよい。また、第1の特徴が第2の特徴の「上」、「上方」又は「上面」にあることは、第1の特徴が第2の特徴の真上及び斜め上にあることを含んでもよいし、単に第1の特徴の水平高さが第2の特徴より高いことだけを表すことを含んでもよい。第1の特徴が第2の特徴の「下」、「下方」又は「下面」にあることは、第1の特徴が第2の特徴の真下及び斜め下にあることを含んでもよいし、又は単に第1の特徴の水平高さが第2の特徴より低いことだけを表すことを含んでもよい。
【0805】
本明細書の説明において、参照用語「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「実施例」、「具体的な実施例」、又は「いくつかの実施例」などの説明の意味は、該実施形態又は実施例と組み合わせて説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性が本願の少なくとも1つの実施形態又は実施例に含まれることである。本明細書において、上記用語の概略性説明は、必ずしも同じ実施形態又は実施例に対するものではない。また、説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性は、いずれか1つ又は複数の実施形態又は実施例において適切な形態で組み合わせることができる。また、互いに矛盾しない場合、当業者であれば、本明細書で説明された異なる実施形態又は実施例、及び異なる実施形態又は実施例の特徴を結合し、かつ組み合わせることができる。
【0806】
以上、本願の実施形態が示され、説明されるが、上記実施形態は、例示的なものであり、本願を限定するものと見なすと理解すべきではなく、当業者であれば、本願の範囲で上記実施形態に対して変更、修正、交換及び変形を行うことができる。
図1
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