(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】監視システム及び監視装置
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20220518BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20220518BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20220518BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20220518BHJP
【FI】
H04N7/18 D
H04N7/18 K
G08B21/00 Z
G08B25/00 510M
G01M99/00 A
(21)【出願番号】P 2020545925
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2019034435
(87)【国際公開番号】W WO2020054479
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2018169297
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】長岡 正晴
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-91280(JP,A)
【文献】特開2008-170400(JP,A)
【文献】実開昭52-91134(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G08B 21/00
G08B 25/00
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の運動を繰り返す機構を有する監視対象物を監視して異常を検出する監視システム において、
前記監視対象物を撮影するカメラと、
前記カメラから送信される複数のフレームの画像に基づいて、前記機構の一部に付され た目印が基準位置で撮影されたフレームから、該フレームの次に前記目印が前記基準位置 で撮影されたフレームまでのフレーム数を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定されたフレーム数の変動に基づいて、前記監視対象物の異常を 検出する異常検出手段と、 を備えたことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の監視システムにおいて、
前記監視対象物は、回転するモータギアを有するモータ装置であり、前記モータギアの 一部に前記目印が付されており、
前記異常検出手段は、正常時の前記モータ装置において前記モータギアの1周に要する フレーム数を基準フレーム数とし、前記測定手段により測定されたフレーム数と前記基準 フレーム数との差分が所定の閾値以上の場合に、前記モータ装置の異常と判定することを 特徴とする監視システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の監視システムにおいて、
前記カメラは、150フレーム毎秒以上のフレームレートでの撮影に対応したカメラで あることを特徴とする監視システム。
【請求項4】
特定の運動を繰り返す機構を有する監視対象物を監視して異常を検出する監視装置にお いて、
前記監視対象物を撮影するカメラから送信される複数のフレームの画像に基づいて、前 記機構の一部に付された目印が基準位置で撮影されたフレームから、該フレームの次に前 記目印が前記基準位置で撮影されたフレームまでのフレーム数を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定されたフレーム数の変動に基づいて、前記監視対象物の異常を 検出する異常検出手段と、 を備えたことを特徴とする監視装置。
【請求項5】
請求項4に記載の監視装置において、
前記監視対象物は回転するモータギアを有するモータ装置であり、前記モータギアの一 部に前記目印が付されており、
前記異常検出手段は、正常時の前記モータ装置において前記モータギアの1周に要する フレーム数を基準フレーム数とし、前記測定手段により測定されたフレーム数と前記基準 フレーム数との差分が所定の閾値以上の場合に、前記モータ装置の異常と判定することを 特徴とする監視装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の監視装置において、
前記測定手段は、前記カメラにより150フレーム毎秒以上のフレームレートで撮影さ れた複数のフレームの画像に基づいて、フレーム数の測定を行うことを特徴とする監視装 置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視対象物を監視して異常を検出する監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、監視対象物をカメラで撮影して異常を検出する監視システムに関し、種々の 発明が提案されている。例えば、特許文献1には、各シーンにおける動きや変化を検出し 、動きや変化が小さいシーンよりも動きや変化が大きいシーンの方がフレームレート(一 定時間あたりのフレーム数)が高くなるように制御する発明が開示されている。
【0003】
例えば、モータ装置を監視して異常を検出する従来の監視システムは、通常、30fp s(frames per second;フレーム毎秒)のカメラを使用しており、そのカメラ映像では モータギアの回転を把握することはできなかった。このため、モータ装置の付近にカメラ に加えて集音マイクを設置し、運用者が都度、スピーカから出力される音声を聞いて、正 常音か異常音かをチェックする必要があった。また、雑音が酷く、異常音かどうかを判断 できない場合は、運用者が該当のカメラを手動で選択してカメラ映像を表示させ、確認す る必要があった。それでも判断できない場合は、運用者がポンプ等の装置付近に実際に行 き、装置に耳を傾けて確認する必要があった。また、スピーカから音声を常時出力させる と装置音でうるさいため、通常はスピーカからの音声出力を切断しておく場合が多く、装 置異常の発見に時間を要することが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、運用者による監視の 手間を軽減しつつ、監視対象物の異常を早期に発見することが可能な監視システムを提供 することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、監視システムを以下のように構成した。
すなわち、本発明に係る監視システムは、特定の運動を繰り返す機構を有する監視対象 物を監視して異常を検出する監視システムにおいて、前記監視対象物を撮影するカメラと 、前記カメラから送信される複数のフレームの画像に基づいて、前記機構の一部に付され た目印が基準位置で撮影されたフレームから、該フレームの次に前記目印が前記基準位置 で撮影されたフレームまでのフレーム数を測定する測定手段と、前記測定手段により測定 されたフレーム数の変動に基づいて、前記監視対象物の異常を検出する異常検出手段と、 を備えたことを特徴とする。
【0007】
前記監視対象物の一例としては、回転するモータギアを有するモータ装置が挙げられる 。この場合、前記モータギアの一部に前記目印を付しておき、前記異常検出手段は、正常 時の前記モータ装置において前記モータギアの1周に要するフレーム数を基準フレーム数 とし、前記測定手段により測定されたフレーム数と前記基準フレーム数との差分が所定の 閾値以上の場合に、前記モータ装置の異常と判定する構成とすることができる。
【0008】
ここで、前記カメラとしては、150フレーム毎秒以上のフレームレートでの撮影に対 応したカメラであることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、上記監視システムを構成する監視装置として把握することもできる。
すなわち、本発明に係る監視装置は、特定の運動を繰り返す機構を有する監視対象物を 監視して異常を検出する監視装置において、前記監視対象物を撮影するカメラから送信さ れる複数のフレームの画像に基づいて、前記機構の一部に付された目印が基準位置で撮影 されたフレームから、該フレームの次に前記目印が前記基準位置で撮影されたフレームま でのフレーム数を測定する測定手段と、前記測定手段により測定されたフレーム数の変動 に基づいて、前記監視対象物の異常を検出する異常検出手段と、を備えたことを特徴とす る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、運用者による監視の手間を軽減しつつ、監視対象物の異常を早期に発 見することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る監視システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図1の監視システムによる異常検知の仕組みについて説明する図である。
【
図3】
図1の監視システムによる異常検知に係る処理フローの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る監視システムについて、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る監視システムの構成例を示してある。本例の監視 システムは、モータ装置10と、監視カメラ20と、監視装置30とを備えている。
【0013】
モータ装置10は、本システムによる監視対象物の一例であり、回転するモータギア1 1を有している。モータギア11の一部には、目印12が付されている。目印12は、監 視カメラ20の映像から監視装置30で検出できればよく、種々の形式の目印を使用する ことができる。
【0014】
監視カメラ20は、モータ装置10の付近に設置され、モータ装置10を撮影して映像 信号を出力する。監視カメラ20は、モータギア11の回転によって移動する目印12を 、モータギア11が1周する間に少なくとも1回は撮影できるように配置されている。本 例では、監視カメラ20として、150~300フレーム毎秒のフレームレートで撮影を 行うことができる高速産業カメラを用いているが、更に高速な撮影に対応したカメラを用 いても構わない。
【0015】
ここで、一般的なモータギアの回転速度は約3000rpmである。この場合、モータ ギアの回転数は約50回/秒となる。これに対し、一般的な監視カメラのフレームレート は30フレーム/秒であるため、1フレームでモータ1回転以内の様子を撮影することは できない。一方で、150フレーム/秒以上の産業用カメラのフレームレートであれば、 1フレームでモータ1/3回転以内の様子を撮影することができる。以上より、150フ レーム/秒以上の産業用カメラを使用すれば、1回転あたり複数のフレームの画像の取得 が可能であるため、この複数のフレームの画像を用いてモータギア1回転あたりのフレー ム数の増減を検出し、モータ異常有無を判断することが可能となる。このように、本例で は、産業用カメラのような高フレームレートのカメラを用いることにより、モータ装置の ような動きの速い装置の異常を検知できるようにしている。
【0016】
監視装置30は、監視カメラ20からの映像信号に基づいてモータ装置10の異常を検 出し、運用者に報知する装置である。本例の監視装置30は、フレーム数測定部31と、 異常検出部32と、異常報知部33とを有している。また、監視装置30には、運用者に 操作されるキーボードやマウス等の操作器35と、運用者に提供する各種の情報を表示す るモニタ36とが接続されている。
【0017】
フレーム数測定部31は、監視カメラ20から送信される複数のフレームの画像に基づ いて、モータギア11に付された目印12が基準位置で撮影されたフレームから、該フレ ームの次に目印12が基準位置で撮影されたフレームまでのフレーム数を測定し、異常検 出部32に出力する。フレーム数の測定は、例えば、以下の手順で行うことができる。ま ず、各フレームを画像解析してフレーム内での目印12の位置を特定し、基準位置に目印 12があるフレームを検出すると、そのフレーム番号をメモリに記憶する。その後、次に 同様のフレームを検出すると、そのフレーム番号と前回のフレーム番号(メモリ内のフレ ーム番号)との差分を演算する。これにより、目印12が基準位置で撮影された2つのフ レーム間のフレーム数を測定することができる。
【0018】
異常検出部32は、フレーム数測定部31により測定されたフレーム数の変動に基づい て、モータ装置10の異常を検出する。本例では、正常時のモータ装置10においてモー タギア11の1周に要するフレーム数を事前に測定し、基準フレーム数としてメモリに保 持している。そして、フレーム数測定部31による測定フレーム数と基準フレーム数との 差分が所定の閾値以上の場合に、モータ装置10の異常と判定する。
【0019】
異常報知部33は、異常検出部32によりモータ装置10の異常が検出された場合に、 モータ装置10の異常を運用者に報知する。本例では、モータ装置10の異常を通知する 警告メッセージと、監視カメラ20の映像とをモニタ36に表示出力させることで、モー タ装置10の異常の報知を行っている。なお、警告ランプの点灯又は点滅や、警報音の出 力や、それらの組み合わせによりモータ装置10の異常を報知してもよい。
【0020】
モータ装置10の異常の報知を受けた運用者は、操作器35の操作により監視カメラ2 0の制御を行うことができる。すなわち、監視装置30は、操作器35の操作に応じた制 御信号を生成して監視カメラ20に送信し、監視カメラ20のパン・チルト・ズームなど を制御することで、運用者が所望する映像をモニタ36に表示させることができる。
【0021】
次に、本例の監視装置30による異常検知の仕組みについて、
図2を参照して説明する 。
図2には、モータ装置10においてモータギア11が右回りに回転する様子を撮影した 各フレームの画像51を示してある。
1フレーム目の画像51(1)は、目印12が基準位置15にある状態を撮影した画像 である。2フレーム目の画像51(2)、目印12が基準位置15の先(右側)に進んだ 状態を撮影した画像である。nフレーム目の画像51(n)は、目印12が基準位置15 の手前(左側)にある状態を撮影した様子である。n+1フレーム目の画像51(n+1 )は、目印12が基準位置15に戻ってきた状態を撮影した画像である。この場合、正常 時のモータ装置10では、モータギア11の1周に要するフレーム数はnとなる。
【0022】
モータギア11の1周に要するフレーム数は、モータ装置10が正常な場合には、一定 (又は略一定)であるが、モータ装置10に異常がある場合には、変動(増減)が発生す ると想定される。そこで、本例の監視装置30では、モータ装置10の稼働中に撮影した 映像に基づいて、モータギア11の1周に要するフレーム数の変動を監視し、正常時に取 得しておいた基準フレーム数と比較することで、モータ装置10の異常の検知を行う。
【0023】
図3には、本例の監視装置30による異常検知に係る処理フローの例を示してある。
フレーム数測定部31は、1フレーム分の画像データを取得し(ステップS11)、画 像解析してフレーム内での目印12の位置を特定し(ステップS12)、目印12の位置 と基準位置が一致するか否かを判定する(ステップS13)。目印12の位置と基準位置 が一致しない場合は、ステップS11に戻り、次のフレームの処理に進む。目印12の位 置と基準位置が一致する場合は、そのフレーム番号を取得し、その前に目印12が基準位 置で撮影されたフレームのフレーム番号(メモリ内のフレーム番号)と比較し、これらフ レーム間のフレーム数を算出する(ステップS14)。なお、今回取得したフレーム番号 は、次回のフレーム数の算出で使用できるようにメモリに記憶しておく。
【0024】
異常検出部32は、フレーム数測定部31による測定フレーム数と基準フレーム数との 差分を算出し(ステップS15)、この差分が所定の閾値以上か否かを判定する(ステッ プS16)。差分が所定の閾値未満の場合には、モータ装置10は正常であると判断し、 ステップS11に戻り、次のフレームの処理に進む。差分が所定の閾値以上の場合には、 モータ装置10は異常であると判断し、異常報知部33に報知指示を出力する。異常報知 部33は、異常検出部32からの報知指示に基づいて、モータ装置10の異常を通知する 警告メッセージと、監視カメラ20の映像とをモニタ36に表示出力させる(ステップS 17)。
【0025】
以上説明したように、本例の監視システムでは、150フレーム毎秒以上のフレームレ ートで撮影することが可能な監視カメラ20を用いて、回転するモータギア11を有する モータ装置20を撮影する。そして、監視装置30において、フレーム数測定部31が、 モータギア11の一部に付された目印12が基準位置15で撮影されたフレームから、該 フレームの次に目印12が基準位置15で撮影されたフレームまでのフレーム数を測定し 、異常検出部32が、フレーム数測定部31により測定されたフレーム数の変動に基づい てモータ装置20の異常を検出し、異常報知部33が、異常検出部32により検出された モータ装置10の異常を報知する構成となっている。
【0026】
より具体的には、異常検出部32が、正常時のモータ装置10においてモータギア11 の1周に要するフレーム数を基準フレーム数とし、フレーム数測定部31により測定され たフレーム数と基準フレーム数との差分が所定の閾値以上の場合に、モータ装置10の異 常と判定する構成となっている。
【0027】
このような構成により、監視カメラ20の映像によりモータ装置10の異常を自動的に 判別して速やかに報知することができる。したがって、運用者による監視の手間を軽減し つつ、モータ装置10の異常を早期に発見することが可能となる。
【0028】
ここで、本例の監視システムでは、監視カメラ20が本発明に係る「カメラ」に対応し 、監視装置30が本発明に係る「監視装置」に対応している。また、フレーム数測定部3 1が本発明に係る「測定手段」に対応し、異常検出部32が本発明に係る「異常検出手段 」に対応している。
【0029】
なお、本例では、測定フレーム数と基準フレーム数との差分が所定の閾値以上の場合に モータ装置10の異常と判定しているが、これに限定されず、他の手法でモータ装置10 の異常を判定してもよい。例えば、測定フレーム数と基準フレーム数とが一致しない場合 に、モータ装置10の異常と判定してもよい。この手法は、正常時はモータギア11の回 転数の変動がない(或いは非常に小さい)モータ装置10に対して有効である。ただし、 正常時でも測定フレーム数に多少の増減があり得るので、本例のように閾値を設けて差分 と比較する方式の方が好ましい。
【0030】
また、基準フレーム数としては、正常時のモータ装置10について事前に測定したフレ ーム数に限定されない。例えば、基準フレーム数として、過去の一定期間における測定フ レーム数の平均値を用いてもよい。
【0031】
また、監視装置30による監視対象物としては、モータ装置10に限られず、特定の運 動を繰り返す機構を有する他の装置であってもよい。例えば、搬送ベルトを有するベルト コンベアを監視してもよく、この場合は、搬送ベルトの一部に目印を付しておけばよい。
【0032】
以上、本発明について実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は、ここに記載され た監視システムに限定されるものではなく、上記以外の監視システムにも広く適用できる ことは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法や方式、そのような方法や 方式を実現するためのプログラム、そのプログラムを記憶する記憶媒体などとして提供す ることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、監視対象物を監視して異常を検出する種々の監視システムに利用することが できる。
【符号の説明】
【0034】
10:モータ装置、 11:モータギア、 12:目印、 15:基準位置、 20: 監視カメラ、 30:監視装置、 31:フレーム数測定部、 32:異常検出部、 3 3:異常報知部、 35:操作器、 36:モニタ