(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】組換え大腸菌、及び組換え大腸菌を用いたサルビアノリン酸Aの生産方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20220518BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20220518BHJP
C12N 15/60 20060101ALI20220518BHJP
C12P 7/42 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12N15/53
C12N15/60
C12P7/42
(21)【出願番号】P 2020558016
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 CN2018111884
(87)【国際公開番号】W WO2019200873
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】201810352742.9
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810352697.7
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810352668.0
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810352680.1
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】蔡宇傑
(72)【発明者】
【氏名】熊天真
(72)【発明者】
【氏名】劉金彬
(72)【発明者】
【氏名】丁彦蕊
(72)【発明者】
【氏名】白亜軍
(72)【発明者】
【氏名】鄭暁暉
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107299072(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103667371(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-9/99
C12N 15/00-15/90
C12P 1/40-41/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ
及びL-アミノ酸オキシダーゼ
とともに、
外因性L-グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、
外因性L-乳酸デヒドロゲナーゼ、
グルコースデヒドロゲナーゼ、
又は
チロシンフェノールリアーゼ
及び外因性L-乳酸デヒドロゲナーゼ
、
を、
hpaD及びmhpBがノックアウトされている宿主大腸菌に発現させ、
α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼが、lpldhd、efmdhd、lfldhd、bcldhl、wcldhl、又はlfldhlであり、
L-アミノ酸オキシダーゼが、pmaao、cmaao、praao、mmaao、又はilaaoであり、
外因性L-グルタミン酸デヒドロゲナーゼが、bsgdhであり、
外因性L-乳酸デヒドロゲナーゼが、llldhであり、
グルコースデヒドロゲナーゼが、bsgdhであり、
チロシンフェノールリアーゼが、ehtplである、ことを特徴とする組換え大腸菌。
【請求項2】
グルタミン酸トランスポーター遺伝子、乳酸トランスポーター遺伝子、カテコールトランスポーター遺伝子、NAD合成遺伝子、FAD合成遺伝子のうちの1種又は複数種を増強発現させ
、
グルタミン酸トランスポーター遺伝子と乳酸トランスポーター遺伝子を同時に発現させない、ことを特徴とする請求項1に記載の組換え大腸菌。
【請求項3】
増強発現させる遺伝子は、gltS、nadA、ribFのうちの任意の1種又は複数種であり、
増強発現させる遺伝子は、lldP、nadA、ribFのうちの任意の1種又は複数種であり、
又は
増強発現させる遺伝子は、lldP、hpaX、mhpT、nadA、pdxJ、ribFのうちの任意の1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項
2に記載の組換え大腸菌。
【請求項4】
増強発現は、宿主大腸菌のゲノム上の増強発現させる遺伝子の前に構成的プロモータを追加することである、ことを特徴とする請求項
2又は
3に記載の組換え大腸菌。
【請求項5】
外因性L-グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、
外因性L-乳酸デヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、
又は、チロシンフェノールリアーゼ
及び外因性L-乳酸デヒドロゲナーゼ
は、
α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ
及びL-アミノ酸オキシダーゼ
とともに、pCOLADuetを通じて共発現されている、ことを特徴とする請求項1に記載の組換え大腸菌。
【請求項6】
前記宿主大腸菌はEscherichia coli BL21である、ことを特徴とする請求項1に記載の組換え大腸菌。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の
組換え大腸菌を用いる、ことを特徴とするサルビアノリン酸Aの生産方法。
【請求項8】
全細胞変換により生産する、ことを特徴とする請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の組換え大腸菌又は請求項
7、
8のいずれか一項に記載の方法の、化学工業、食品、医薬品調製の分野における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サルビアノリン酸Aの生産方法に関し、生物工学の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
丹参から抽出されたサルビアノリン酸Aは、学名がR-(+)-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシプロピオン酸、D-(+)-β-(3,4-ジヒドロキシフェニル)乳酸、英語名が、Danshensu、D-DSS、R-DSS、(R)-(+)-3-(3,4-Dihydroxyphenyl)-lactic acid、(R)-(+)-3-(3,4-Dihydroxyphenyl)-2-hydroxypropanoic acidであり、D-フェノール酸系化合物である。現在、天然のL-サルビアノリン酸Aが存在しない。
【0003】
サルビアノリン酸Aは、丹参水抽出液中の重要な有効成分であり、中国では、1980年に丹参水抽出液から得られ、構造(丹参水溶性有効成分の研究、II.D(+)β(3,4-ジヒドロキシフェニル)乳酸の構造、上海第一医学院学報、1980,05(7),384-385)が同定され、さまざまな研究から明らかなように、サルビアノリン酸Aは、重要な薬理・薬効の効果を有し、心臓・脳血管疾患の治療などの分野では独特の治療効果がある。
【0004】
現在、サルビアノリン酸Aは、主に丹参から抽出されている(特許CN200810038853.9)。丹参中のサルビアノリン酸Aの含有量が低く、そして、丹参の栽培コストが高く、産量が限られるため、現在、サルビアノリン酸Aは、高価であり、また市場のニーズを満足できない。特許CN201310559498.0は、大腸菌遺伝子組換え菌を構築して、グルコース発酵を利用してサルビアノリン酸Aを生産する方法を提案しており、アナボリック途径が、代謝プロセスにおける産物を酸化しやすく、サルビアノリン酸Aの収率に悪影響を与えるヒドロキシラーゼの利用に係り、また、大腸菌の発酵が高酸素消費プロセスであるので、それによってもサルビアノリン酸Aが酸化され、したがって、現在のところ、該方法は、収率が低く、コストが植物抽出プロセスのコストよりも高い。特許CN201210190171.6は、サルビアノール酸Bを加水分解してサルビアノリン酸Aを生産する方法を提案しており、サルビアノール酸Bは、丹参から抽出されるものであり、しかも、化学加水分解プロセスに大量の副反応が生じるため、同じく量産に適用できない。サルビアノリン酸A(特許CN201210420488.4)をキラル合成するための触媒は極めて高価であり、現在、実験室レベルしかない。
【0005】
1988年に、Rothらにより、まず、化学法でL-ドパを処理して、対応する3,4-ジヒドロキシフェニルピルビン酸を得て、次に、酵素法によりS-(+)-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシプロピオン酸(S-DSS、L-DSS)を合成する方法(Enzymatic Synthesis of (S)-(-)-3-(3,4-Dihydroxyphenyl)lactic Acid, Arch. Pharm. (Weinheim) 321,179-180 (1988))が提案されている。Z. Findrikらは、蛇毒のアミノ酸オキシダーゼを用いてL-ドパを3,4-ジヒドロキシフェニルピルビン酸に転化し、次に、D-乳酸デヒドロゲナーゼを用いて還元して、D-(3,4-ジヒドロキシフェニル)乳酸(Modelling and Optimization of the(R)-(+)-3,4-dihydroxyphenyllactic Acid Production Catalyzed with D-lactateDehydrogenase from Lactobacillus leishmannii Using Genetic Algorithm, Chem. Biochem. Eng. Q. 19 (4) 351-358 (2005))を生成する。この2種の方法を用いて3,4-ジヒドロキシフェニルピルビン酸中間体を調製すると、コストが高く、しかも、操作が複雑である。
【0006】
現在の各種の方法の欠陥に対して、本発明は、光学的に純粋なサルビアノリン酸Aの生産方法を提供し、複数の酵素を共発現させた遺伝子操作菌を構築し、それによって、サルビアノリン酸Aの効率的な生産を実現する。本発明が解決しようとする課題は、低コストでサルビアノリン酸Aを生産し得る組換え菌を提供することである。また、本発明は、該菌株の構築及び使用についての技術的課題を解決しようとする。
【0007】
本発明の第1の目的は、光学的に純粋なサルビアノリン酸Aを低コストで生産し得る組換え菌を提供することであり、前記組換え菌は、α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼとL-アミノ酸オキシダーゼ、及び外因性L-グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、外因性L-乳酸デヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、チロシンフェノールリアーゼのうちの任意の1種を同時に発現させ、チロシンフェノールリアーゼを発現させるとともに、L-乳酸デヒドロゲナーゼを発現させ、宿主大腸菌からフェノール系化合物分解に関連する遺伝子をノックアウトされている。
【0008】
一実施形態では、前記α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼは、Lactobacillus plantarum ATCC 14917、Enterococcus faecalis ATCC 35038又はLactobacillus fermentum ATCC 14931に由来するD型α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼである。
【0009】
一実施形態では、前記α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼは、Bacillus coagulans DSM 1、Weissella confusa strain DSM 20196又はLactobacillus fermentum ATCC 14931に由来するL型α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼである。
【0010】
一実施形態では、前記α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼは、D-α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼであり、そのアミノ酸配列が、NCBIのaccession NO.がWP_003643296.1、WP_002335374.1、又はEEI22188.1である配列であり、α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼは、L-α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼであり、そのアミノ酸配列が、NCBIのaccession NO.がWP_013858488.1、WP_003607654.1又はWP_035430779.1である配列である。
【0011】
一実施形態では、D-α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼのヌクレオチド配列は、NCBIのaccession NO.がNZ_GL379761 REGION: COMPLEMENT(533562..534560)、NZ_KB944641 REGION: 161892..162830、ACGI01000078 REGION: 20793..21791である配列であり、L-α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼのヌクレオチド配列は、NCBIのaccession NO.がNZ_ATUM01000014 REGION: 39316..40254、NZ_JQAY01000006 REGION: 69708..70640、NZ_GG669901 REGION: 45517.46470である配列である。
【0012】
一実施形態では、前記L-グルタミン酸デヒドロゲナーゼは、Escherichia coli BL21、Rhodobacter sphaeroides ATCC BAA-808、Clostridium symbiosum ATCC 14940、Bacillus subtilis 168に由来する。
【0013】
一実施形態では、L-グルタミン酸デヒドロゲナーゼのアミノ酸配列は、NCBIのaccession NOがWP_000373021.1、WP_011338202.1、WP_003497202.1、WP_010886557.1である配列である。
【0014】
一実施形態では、L-グルタミン酸デヒドロゲナーゼのヌクレオチド配列は、NCBIのaccession NO:NC_012892 REGION: 1786741..1788084、NC_007493 REGION: complement (2129131..2130558)、NZ_KE992901 REGION: complement (17603..18955)、NC_000964 REGION: complement (2402067..2403350)の配列である。
【0015】
一実施形態では、前記L-アミノ酸オキシダーゼは、Proteus mirabilis ATCC 29906、Cosenzaea myxofaciens ATCC 19692、Morganella morganii ATCC 49993、Providencia rettgeri DSM 1131又はIgnatzschineria larvae DSM 13226に由来する過酸化水素を産生しないL-アミノ酸オキシダーゼである。
【0016】
一実施形態では、L-アミノ酸オキシダーゼのアミノ酸配列は、NCBIのaccession NOがWP_004244224.1、OAT30925.1、EFE55026.1、WP_036414800.1又はWP_026879504.1である配列である。
【0017】
一実施形態では、L-アミノ酸オキシダーゼのヌクレオチド配列は、配列表のうち、NZ_GG668576 REGION: 1350390..1351805、LXEN01000066 REGION: 20563..21963、ACCI02000030 REGION: 21025..22443、NZ_LAGC01000006 REGION: 309569..310993、NZ_KI783332 REGION: 35799..37217に示される。
【0018】
一実施形態では、前記L-乳酸デヒドロゲナーゼは、Lactococcus lactis ATCC 19257に由来する。
【0019】
一実施形態では、前記L-乳酸デヒドロゲナーゼのアミノ酸配列は、NCBIのaccession NOがWP_003131075.1である配列である。
【0020】
一実施形態では、前記L-乳酸デヒドロゲナーゼのヌクレオチド配列は、NCBIのaccession NO:NZ_JXJZ01000017 REGION: 18532..19509の配列である。
【0021】
一実施形態では、前記チロシンフェノールリアーゼは、Erwinia herbicola ATCC 214344に由来する。
【0022】
一実施形態では、前記チロシンフェノールリアーゼのアミノ酸配列は、NCBIのaccession NOがP31011.2である。
【0023】
一実施形態では、前記グルコースデヒドロゲナーゼは、Bacillus subtilis ATCC 13952に由来する。
【0024】
一実施形態では、前記グルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列は、NCBIのaccession NOがWP_013351020.1である配列である。
【0025】
一実施形態では、前記グルコースデヒドロゲナーゼのヌクレオチド配列は、NCBIのaccession NO:NZ_CP009748 REGION: 386154..38693である。
【0026】
一実施形態では、前記組換え菌としては、L-アミノ酸オキシダーゼ、α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、及びL-グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子をすべてプラスミドに連結し、3つの遺伝子を共発現させた組換えプラスミドを構築し、次に、組換えプラスミドを用いて対応する菌株を形質転換し、遺伝子組換え操作菌を得る。
【0027】
一実施形態では、前記組換え菌としては、L-アミノ酸オキシダーゼ、α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、及びL-乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子をすべてプラスミドに連結し、3つの遺伝子を共発現させた組換えプラスミドを構築し、次に、組換えプラスミドを用いて対応する菌株を形質転換し、遺伝子組換え操作菌を得る。
【0028】
一実施形態では、前記組換え菌としては、チロシンフェノールリアーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、及びL-乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を、2つのプラスミドに連結し、次に、組換えプラスミドを用いて宿主大腸菌を形質転換し、遺伝子組換え操作菌を得る。
【0029】
一実施形態では、前記α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子及びL-乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子は、プラスミドpETDuet-1に連結された後に発現され、L-アミノ酸オキシダーゼ及びチロシンフェノールリアーゼ遺伝子は、プラスミドpACYCDue-1に連結された後に発現される。
【0030】
一実施形態では、前記組換え菌としては、L-アミノ酸オキシダーゼ、α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、及びグルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子をすべてプラスミド上に連結し、3つの遺伝子を共発現させた組換えプラスミドを構築し、次に、組換えプラスミドを用いて対応する菌株を形質転換し、遺伝子組換え操作菌を得る。
【0031】
一実施形態では、前記遺伝子操作菌は、Escherichia coli BL21(DE3)を宿主として構築したものである。
【0032】
一実施形態では、前記フェノール系化合物分解に関連する遺伝子は、hpaD、mhpBのうちの任意の1種又は2種の組み合わせである。
【0033】
一実施形態では、前記フェノール系化合物分解に関連する遺伝子のヌクレオチド配列は、NCBIのaccession NO:NC_012892 REGION: complement(4505585..4506436)とNC_012892 REGION: 339806..340750である。
【0034】
一実施形態では、前記組換え大腸菌は、また、グルタミン酸トランスポーター遺伝子、乳酸トランスポーター遺伝子、カテコールトランスポーター遺伝子、NAD合成遺伝子、FAD合成遺伝子のうちの1種又は複数種を増強発現させ、カテコールトランスポーター遺伝子を発現させるとともに、乳酸トランスポーター遺伝子を発現させ、グルタミン酸トランスポーター遺伝子と乳酸トランスポーター遺伝子は同時に発現させない。
【0035】
一実施形態では、前記増強発現は、Escherichia coli BL21(DE3)のゲノムの増強発現させる遺伝子の前に構成的プロモータを追加することである。
【0036】
一実施形態では、前記増強発現させる遺伝子は、gltS(グルタミン酸トランスポーター遺伝子)、nadA(NAD合成遺伝子)、ribF(FAD合成遺伝子)のうちの任意の1種又は複数種である。
【0037】
一実施形態では、前記gltSは、NCBIのaccession NOが、NC_012892 REGION: complement(3694931..3696136);nadAがNC_012892 REGION: 740487..741530;ribFがNC_012892 REGION: 25479..26420である。
【0038】
一実施形態では、前記増強発現させる遺伝子は、lldP(乳酸トランスポーター遺伝子)、nadA(NAD合成遺伝子)、ribF(FAD合成遺伝子)のうちの任意の1種又は複数種である。
【0039】
一実施形態では、前記lldPは、NCBIのaccession NOが、NC_012892 REGION: 3646638..3648293;nadAが、NC_012892 REGION: 740487..741530;ribFが、NC_012892 REGION: 25479..26420である。
【0040】
一実施形態では、前記増強発現させる遺伝子は、lldP(乳酸トランスポーター遺伝子)、hpaX(カテコールトランスポーター遺伝子)、mhpT(カテコールトランスポーター遺伝子)、nadA(NAD合成遺伝子)、pdxJ(リン酸ピリドキサール合成遺伝子) 、ribF(FAD合成遺伝子)のうちの任意の1種又は複数種である。
【0041】
一実施形態では、前記lldPは、NCBIのaccession NOが、NC_012892 REGION: 3646638..3648293;hpaXが、NC_012892 REGION: complement(4502025..4503401);mhpTが、NC_012892 REGION: 344788..345999;nadAが、NC_012892 REGION: 740487..741530;pdxJが、NC_012892 REGION: complement (2567591..2568322);ribFが、NC_012892 REGION: 25479..26420である。
【0042】
一実施形態では、前記組替え菌は、hpaDとmhpBをノックアウトした大腸菌宿主を基に、lldP、hpaX、mhpT、nadA、pdxJ及びribFを増強発現させ、また、チロシンフェノールリアーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、L-乳酸デヒドロゲナーゼ、及びα-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼを同時に発現させたものである。
【0043】
本発明の第2の目的は、本発明の組替え菌を用いたサルビアノリン酸Aの生産方法を提供することである。
【0044】
一実施形態では、前記サルビアノリン酸Aの生産は、全細胞変換による生産である。
【0045】
一実施形態では、前記組換え大腸菌がα-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、及び外因性L-グルタミン酸デヒドロゲナーゼを同時に発現させた場合、前記全細胞変換による生産系には、細胞(湿重量)1~200g/L、L-ドパ1-200g/L、L-グルタミン酸1~200g/Lが含まれ、pH 6.0~9.0これらは、15~40℃で1~48時間反応する。
【0046】
一実施形態では、前記組換え大腸菌が、α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、及び外因性L-乳酸デヒドロゲナーゼを同時に発現させた場合、前記全細胞変換による生産系には、細胞(湿重量)1~200g/L、L-ドパ1~200g/L、L-乳酸1~200g/Lが含まれ、pH 4.0~9.0、これらは、15~40℃で1~48時間反応する。
【0047】
一実施形態では、前記組換え大腸菌がα-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、チロシンフェノールリアーゼ、及びL-乳酸デヒドロゲナーゼを同時に発現させた場合、前記全細胞変換による生産系には、細胞(湿重量)1~200g/L、カテコール1~200g/L、L-乳酸1~200g/L、pH 6.0~9.0、アンモニウムイオン1~30g/Lが含まれ、これらは、15~40℃で1~48時間反応する。変換終了後、液体クロマトグラフィーによりサルビアノリン酸Aの産量及び立体配置を測定する。
【0048】
一実施形態では、前記組換え大腸菌がα-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、及びグルコースデヒドロゲナーゼを同時に発現させた場合、前記全細胞変換による生産系には、細胞(湿重量)1~200g/L、L-ドパ1~200g/L、グルコース1~200g/Lが含まれ、pH 6.0~9.0、これらは、15~40℃で1~48時間反応する。
【0049】
本発明の第3の目的は、本発明の組換え菌又は本発明の方法の、化学工業、食品、医薬などの分野における使用を提供することである。
【0050】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
本発明は、3つの酵素を共発現させた新規の遺伝子組換え菌を構築し、該菌は、光学的に純粋な3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシプロピオン酸の生産に用いられ得る。本発明で選択される(D/L)-α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼは、すべて基質特異性が悪く、光学特異性が高いという特徴を有し、光学的に純粋なD-サルビアノリン酸A及びL-サルビアノリン酸Aを生産することができる。さらに、大腸菌ゲノムの関連遺伝子をナックアウト又は増強発現することにより、基質の輸送を促進し、産物の分解を減少させ、組換え菌の生産効率を高める。本発明の組換え菌を用いてサルビアノリン酸Aとα-ケトグルタル酸を変換して生産する方法は、実施されやすく、原料が入手しやすく、このため、工業的応用の将来性が期待できる。
【0051】
本発明の組換え菌の機能のコアは、複数種の酵素を同時に発現できることにあり、これらの酵素は、それぞれ、L-アミノ酸オキシダーゼとα-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、及び、外因性L-グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、外因性L-乳酸デヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、チロシンフェノールリアーゼ及びL-乳酸デヒドロゲナーゼのうちの任意の1種であり、その中でも、チロシンフェノールリアーゼとL-乳酸デヒドロゲナーゼを同時に発現させる。その原理は、以下のとおりである。組換え菌の全細胞には、L-グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、L-乳酸デヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼのうちの任意の1種は、菌体内のNADを補酵素として、対応するL-グルタミン酸、L-乳酸、グルコースを脱水素し、対応するα-ケトグルタル酸、ピルビン酸、グルコン酸、及びNADHを生成し、チロシンフェノールリアーゼは、ピルビン酸、アンモニウムイオン、カテコールを触媒してL-ドパを生成し、L-ドパは、L-アミノ酸オキシダーゼにより脱アミノ化されて3,4-ジヒドロキシフェニルピルビン酸を生成し、α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼは、グルタミン酸脱水素プロセスで生成したNADHを利用して、3,4-ジヒドロキシフェニルピルビン酸をサルビアノリン酸Aに還元し、また、補酵素NADも再生される。さらに、大腸菌ゲノムの関連遺伝子をノックアウト又は増強発現することにより、基質の輸送を促進し、産物の分解を減少させ、それによって、目的産物の産量を向上させる。
【0052】
上記技術的課題を解決するために、本発明で使用される構成は以下のとおりである。
【0053】
1.本発明に係る菌株及びプラスミド
アメリカンタイプカルチャーコレクションATCCから購入されるLactobacillus plantarum ATCC 14917、Enterococcus faecalis ATCC 35038、Lactobacillus fermentum ATCC 14931、Bacillus subtilis ATCC 13952、Escherichia coli BL21 (DE3)、Proteus mirabilis ATCC 29906、Cosenzaea myxofaciens ATCC 19692、Morganella morganii ATCC 49993、Lactococcus lactis ATCC 19257、Erwinia herbicola ATCC 214344、Aeromonas phenologenes ATCC 7966。ドイツカルチャーコレクションDSMZから購入されるBacillus coagulans DSM 1、Weissella confusa strain DSM 20196、Providencia rettgeri DSM 1131、Ignatzschineria larvae DSM 13226。Novagen社から購入されるpETDuet-1、pACYCDue-1、pCOLADuet-1、pRSFDuet-1プラスミド、及びEscherichia coli BL21(DE3)。pCasRed、pCRISPR-gDNAは、abmgoodchina lnc.から購入される。
【0054】
2.大腸菌における関連遺伝子のノックアウト及び構成的な増強発現
(1)大腸菌からのフェノール系化合物分解に関連する遺伝子のノックアウト
本発明では、フェノール類物質がすべて大腸菌中の酵素により分解されやすく、文献(Biodegradation of Aromatic Compounds by Escherichia coli、Microbiol Mol Biol Rev. 2001, 65(4): 523-569.)に従って、関連遺伝子をノックアウトすることで、産物や基質の分解を防止する。選択される遺伝子は、hpaDとmhpBであり、NCBIのaccession NO:NC_012892 REGION: complement(4505585..4506436)、及びNC_012892 REGION: 339806..340750である。
(2)大腸菌でのグルタミン酸トランスポーター遺伝子の構成的な増強発現
全細胞変換プロセスにおいて、基質を細胞内に輸送する必要があり、グルタミン酸トランスポータータンパク質を強化させることは、細胞内基質の高濃度を素早く長期的に維持することに寄与し、反応の進行に有利となる。グルタミン酸の輸送に関連する遺伝子として、NCBIのaccession NO:NC_012892 REGION: complement(3694931..3696136)のgltSが選択される。ドバは、芳香族アミノ酸と同様に、細胞培養プロセスにアミノ酸などを吸収する必要があり、したがって、菌体自体が大量のアミノ酸トランスポータータンパク質を発現させるので、さらなる増強発現を必要としない。
(3)大腸菌の補酵素合成関連の重要遺伝子の構成的な増強発現
α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼの還元プロセスには、NADHを補酵素とする必要があり、大腸菌NAD合成経路のキー酵素を増強発現させることは、菌体内のNADレベルを高め、サルビアノリン酸Aの生成に寄与する。選択される遺伝子には、NCBIのaccession NO:NC_012892 REGION: 740487..741530のnadAがある。
FADは、L-アミノ酸オキシダーゼの補酵素であり、該補酵素経路における重要な遺伝子ribFを過剰発現させることは、L-アミノ酸オキシダーゼの活性強化に有利である。FADはNCBIのaccession NO:NC_012892 REGION: 25479..26420である。
【0055】
3.酵素の選択
(1)L-アミノ酸オキシダーゼの選択
L-アミノ酸オキシダーゼは、細菌、真菌、哺乳動物細胞、蛇毒、昆虫毒素や藻類に幅広く存在している(L-amino acid oxidase as biocatalyst: a dream too far. Appl. Microbiol. Biotechnol. 2013,97:9323-41)。L-アミノ酸オキシダーゼは、αアミノ基とCα上の水素をFADに移し、ほとんどは、分子酸素直接レドックスFADを用いて、酸化型FADを再生しながら、過酸化水素を生成する。たとえば、Poljanacらは、ヒガシダイヤガラガラヘビの蛇毒L-アミノ酸オキシダーゼを用いてドバを酸化し、3,4-ジヒドロキシフェニルピルビン酸を生成し、次に、乳酸デヒドロゲナーゼとギ酸デヒドロゲナーゼを加えて3,4-ジヒドロキシフェニル乳酸を生成し、このプロセスには、過酸化水素の毒性を解消するためにカタラーゼを別に添加する必要がある(Modelling and Optimization of the (R)-(+)-3,4-Dihydroxyphenyllactic Acid Production Catalyzed, Chem. Biochem. Eng. Q.2005,19 (4) 351-358)。また、細胞膜上の電子伝達系に関連するL-アミノ酸オキシダーゼもあり、電子が呼吸鎖を通じてチトクロームオキシダーゼに伝達され、分子状酸素を水に還元し、このように、過酸化水素が生成されないようにし、このような酵素類は、主に、プロテウス属(Proteus sp.)、プロビデンシア属(Providencia sp.)、モーガネラ属(Morganella sp.)などの細菌に存在する(Crystal structure of a membrane-bound l-amino acid deaminase from Proteus vulgaris. J. Struct. Biol.2016,195:306-15)。本発明では、過酸化水素を産生しない5種類のL-オキシ酸オキシダーゼが選択され、Proteus mirabilis ATCC 29906、Cosenzaea myxofaciens ATCC 19692、Providencia rettgeri DSM 1131、Morganella morganii ATCC 49993、Ignatzschineria larvae DSM 13226のそれぞれから、L-アミノ酸オキシダーゼ遺伝子pmaao、cmaao、praao、mmaao、ilaaoをクローニングし、これらのアミノ酸配列は、NCBIのaccession NO.がWP_004244224.1、OAT30925.1、EFE55026.1、WP_036414800.1又はWP_026879504.1の配列であり、これらの酵素はすべて、基質の種類が多く、活性が高いという特徴を有する。
(2)α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼの選択
最適基質に応じて、α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼには、乳酸デヒドロゲナーゼ、α-ヒドロキシイソカプロン酸デヒドロゲナーゼ、マンデル酸デヒドロゲナーゼ、グリオキシル酸還元酵素などが含まれ、これらの酵素は、複数種の基質に作用してα-ヒドロキシカルボン酸を生成することができ、通常、その最適な作用基質に応じて命名される。本発明では、これらから光学性が強く且つ3,4-ジヒドロキシフェニルピルビン酸に対して高活性がある酵素を、D又はLサルビアノリン酸Aの生産に用いる。Lactobacillus plantarum ATCC 14917、Enterococcus faecalis ATCC 35038、Lactobacillus fermentum ATCC 14931のそれぞれから、D型α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子lpldhd、efmdhd、lfldhdをクローニングし、これらのアミノ酸配列は、NCBIのaccession NO.がWP_003643296.1、WP_002335374.1、EEI22188.1の配列である。Bacillus coagulans DSM 1、Weissella confusa strain DSM 20196、Lactobacillus fermentum ATCC 14931のそれぞれから、L型α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子bcldhl、wcldhl、lfldhlをクローニングし、これらのアミノ酸配列は、NCBIのaccession NOがWP_013858488.1、WP_003607654.1、WP_035430779.1の配列である。
(3)L-グルタミン酸デヒドロゲナーゼの選択
L-グルタミン酸は、最も低価なアミノ酸であり、脱水素してなるα-ケトグルタル酸が高い付加価値を有し、現在、L-グルタミン酸オキシダーゼを用いてL-グルタミン酸を酸化しα-ケトグルタル酸を生産するのが一般的であるが、このプロセスにおいて、L-グルタミン酸から離脱した水素が無駄になる。Lグルタミン酸デヒドロゲナーゼは、ほぼすべての生物に存在し、L-グルタミン酸を基質としてL-グルタミン酸上で生成した水素を補酵素NAD又はNADPに伝達し、NADH又はNADPHを生成する。NADH又はNADPHは、前述ヒドロキシヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼの水素供与体として機能できる。本発明では、Escherichia coli BL21、Rhodobacter sphaeroides ATCC BAA-808、Clostridium symbiosum ATCC 14940、Bacillus subtilis 168のそれぞれから、L-グルタミン酸遺伝子ecgdh(アミノ酸配列WP_000373021.1)、rsgdh(アミノ酸配列WP_011338202.1)、csgdh(アミノ酸配列WP_003497202.1)、bsgdh(アミノ酸配列WP_010886557.1)を得る。
(4)L-乳酸デヒドロゲナーゼの選択
L-乳酸は、最も低価な有機酸であり、脱水素してなるピルビン酸が高い付加価値を有する。現在、L-乳酸オキシダーゼを用いてL-乳酸を酸化してピルビン酸を生産するのが一般的であり、このプロセスにおいて、L-乳酸から離脱した水素が無駄になる。また、酵母発酵によりケト酸を生産する方法もある。L-乳酸デヒドロゲナーゼは、複数の微生物に幅広く存在し、L-乳酸を基質としてL-乳酸上で生成した水素を補酵素NAD又はNADPに伝達し、NADH又はNADPHを生成する。NADH又はNADPHは、前述α-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼの水素供与体として機能できる。通常、NAD(NADP)を補酵素とする乳酸デヒドロゲナーゼは、ピルビン酸を基質として乳酸を合成する傾向がある、乳酸が過剰である場合、一部の乳酸デヒドロゲナーゼは乳酸の水素を脱離してピルビン酸を生成することもある。
本発明は、Lactococcus lactis ATCC 19257からL-乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子llldh(アミノ酸配列WP_003131075.1)を得る。
(5)チロシンフェノールリアーゼの選択
チロシンフェノールリアーゼ(Tyrosine phenol lyase, TPL, E.C.4.1.99.2)は、β-チロシナーゼとしても知られ、チロシンフェノールリアーゼは、L-チロシンのβ-消去反応を触媒フェノール、ピルビン酸及びアンモニアの生成してもよく、ドバのβ-消去反応を触媒してカテコール、ピルビン酸及びアンモニアを生成してもよい。該反応は可逆的であり、カテコール、ピルビン酸及びアンモニアは、チロシンフェノールリアーゼの触媒下でL-ドバを生成することができる。本発明は、Erwinia herbicola ATCC 214344のそれぞれから、アミノ酸の配列がP31011.2であるチロシンフェノールリアーゼ遺伝子ehtplをクローニングする。
(6)グルコースデヒドロゲナーゼの選択
生体内変換反応において、α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼは、NADH及び/又はNADPHを補酵素とする必要があり、通常、ギ酸デヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、亜リン酸デヒドロゲナーゼなどが使用され、これらのうち、グルコースデヒドロゲナーゼは最も高活性であり、したがって、本発明は、Bacillus subtilis ATCC 13952からグルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子bsgdh(アミノ酸配列WP_013351020.1)を得る。
【0056】
4.共発現系の構築及び細胞の培養
現在、大腸菌での複数の遺伝子の共発現には、多数の方法があり(大腸菌での複数の遺伝子の共発現の戦略、中国生物工学雑誌、2012,32(4):117-122)、本発明では、劉向磊(合成生物学技術により大腸菌を改造してシキミ酸及びレスベラトロールを生産すること、2016、上海医薬工業研究院、博士論文)による方法を用いて構築し、各遺伝子の前には、T7プロモータとRBS結合サイトが含まれており、理論的には、各遺伝子の前にT7とRBSがあるので、並べ替え順序による遺伝子の発現強度への影響が小さい。各プラスミドには3つの遺伝子が含まれており、構築されたプラスミドを大腸菌コンピテント細胞に熱により導入し、抗生物質固体プレートに塗布し、陽性形質転換体をスクリーニングすると、組換え大腸菌を得る。細胞の培養:クラシックな組換え大腸菌の培養及び誘導発現手段に従って、組換え大腸菌を体積比が2%となる量でLB発酵培地(ペプトン10g/L、酵母粉5g/L、NaCl 10g/L)に播種し、細胞OD600が0.6~0.8になると、最終濃度0.4mMのIPTGを加え、20℃で誘導発現培養を8h行う。誘導発現終了後、20℃、8000rpmで20分間遠心分離して細胞を収集する。
【0057】
5.サンプルの検出分析
サルビアノリン酸Aの定量的分析:形質転換液について、PerkinElmer Series 200高速液体クロマトグラフを用いて検出分析を行い、また示差屈折率検出器も装備している。クロマトグラフィー条件:移動相:メタノール-0.1%ギ酸水(40:60)、Hanbon社製のMegres C18クロマトグラフィーカラム(4.6×250mm、5μm)、流速1ml/min、カラム温度30℃、注入量20μl。
キラル分析:PerkinElmer Series 200高速液体クロマトグラフを用いて検出分析を行い、また示差紫外検出器も装備している。Chiralcel OD-Hキラルカラム(4.6×250mm)、移動相:体積比でn-ヘキサン:イソプロパノール:トリフルオロ酢酸=80:20:0.1、流速0.5 mL/min、カラム温度25℃、注入量20μL、検出波長280nm。
サルビアノリン酸Aは、溶解度が低く、変換プロセスに結晶が析出されると、希釈して測定する。
サルビアノリン酸Aの光学純度は、エナンチオマー過剰率(%e.e)で評価される。
R-サルビアノリン酸Aを生産する場合、
エナンチオマー過剰率%e.e=[(SR-SS)/(SR+SS)×100%]
S-サルビアノリン酸Aを生産する場合、
エナンチオマー過剰率%e.e=[(SS-SR)/(SR+SS)×100%]
式中、SSは変換液中のS-サルビアノリン酸Aのピーク面積、SRは変換液中のR-サルビアノリン酸Aの液体クロマトグラフィーのピーク面積である。
本発明が解決しようとする技術的課題、技術案及び有益な効果をより明確にするために、以下、実施例を参照しながら、本発明を詳しく説明する。なお、ここで説明する特定の実施例は、本発明を解釈するために過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0058】
実施例1
L-グルタミン酸デヒドロゲナーゼのスクリーニング
各菌株から複数種のL-グルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子をそれぞれクローニングし、Escherichia coli BL21(DE3)にて発現させた。
誘導発現方法
組換え大腸菌を体積比が2%となる量でLB発酵培地(ペプトン10g/L、酵母粉5g/L、NaCl 10g/L)に播種し、細胞OD
600が0.6~0.8になると、最終濃度0.4mMのIPTGを加え、20℃で誘導発現培養を8h行った。誘導発現終了後、20℃、8000rpmで20分間遠心分離して、細胞を収集した。
文献(納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニング、発現及び酵素活性の測定.上海交通大学学報・農業科学版、2010,1:82-86.)に従って細胞を破壊し粗酵素液の活性を測定し、前記方法では、NADを補酵素とするL-グルタミン酸デヒドロゲナーゼの活性を測定し、結果を表1に示す。したがって、枯草菌由来のL-グルタミン酸デヒドロゲナーゼbsgdhをサルビアノリン酸Aの生産に用いるのが最も好ましい。
【0059】
実施例2
文献Large scale validation of an efficient CRISPR/Cas-based multi gene editing protocol in Escherichia coli. Microbial Cell Factories,2017,16(1):68に記載の方法に従って、Escherichia coli BL21(DE3)上のhpaDとmhpBを一重又は二重ノックアウトした。ここで、本発明では、遺伝子ノックアウト用のプラスミドとして、pCasRedを用いて、pCRISPR-gDNA(hpaD sgRNA)及びホモロジーアーム(hpaD donor)とともにEscherichia coli BL21(DE3)に導入し、Cas9/sgRNAで宿主のhpaD遺伝子部位での二本鎖切断を誘発させ、組換え酵素Redを通じてhpaD donorをhpaD遺伝子に組み込み、それによって、遺伝子をノックアウトし、またシーケンシングして検証した。hpaD sgRNA、hpaD donor、mhpB sgRNA、mhpB donorは、それぞれ配列表SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19に示される。mhpBについては、同様にしてノックアウトした。
L-ドパ又はD-サルビアノリン酸A4g/L、菌体の湿重量200g/LからなるpH7の溶液を調製し、35℃で10時間放置後、濃度を測定し、反応系中のL-ドパとD-サルビアノリン酸Aの残留量を表2に示す。
Escherichia coli BL21(ΔhpaDΔmhpB,DE3)は、効果が最も高く、Escherichia coli HMと命名された。
【0060】
実施例3
α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、及び外因性L-グルタミン酸デヒドロゲナーゼを同時に発現させた組換え大腸菌の構築
まず、チロシンフェノールリアーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、及びL-グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を、プラスミドに連結した。3つの遺伝子を共発現させた組換えプラスミドを得て、プラスミドを用いて大腸菌Escherichia coli HMを形質転換し、抗生物質プレートで陽性形質転換体をスクリーニングすると、組換え大腸菌を得た。
組換え大腸菌の誘導発現が終了した後、菌体を収集し、細胞(湿重量)40g/L、L-ドパ(濃度40g/L)、L-グルタミン酸(濃度30g/LからなるpH 8.0の100ml反応系において、35℃で12時間反応させた。変換終了後、液体クロマトグラフィーによりサルビアノリン酸Aの産量及び立体配置を測定し、結果を表3に示す。
α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、及び外因性L-乳酸デヒドロゲナーゼを同時に発現させた組換え大腸菌の構築
まず、L-アミノ酸オキシダーゼ、α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、及びL-乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を、pETDuet-1又はpACYCDuet-1プラスミドに連結した。3つの遺伝子を共発現させた組換えプラスミドを得て、プラスミドを用いて大腸菌Escherichia coli HMを形質転換し、クロランフェニコールとアンピシリンプレートを用いて陽性形質転換体をスクリーニングすると、組換え大腸菌を得た。
組換え大腸菌誘導発現が終了した後、菌体を収集し、細胞(湿重量)40g/L、L-ドパ(濃度40g/L)、L-乳酸(濃度30g/L)からなるpH 8.0の100ml反応系において、35℃で12時間反応させた。変換終了後、液体クロマトグラフィーによりサルビアノリン酸Aの産量及び立体配置を測定し、結果を表4に示す。
α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、チロシンフェノールリアーゼ、及びL-乳酸デヒドロゲナーゼを同時に発現させた組換え大腸菌の構築
まず、チロシンフェノールリアーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、及びL-乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を、それぞれpETDuet-1又はpACYCDuet-1プラスミドに連結した。2つの遺伝子を共発現させた組換えプラスミドを2種得て、2種のプラスミドを用いて大腸菌Escherichia coli HMを形質転換し、クロランフェニコールとアンピシリンプレートを用いて陽性形質転換体をスクリーニングすると、組換え大腸菌を得た。
組換え大腸菌誘導発現が終了した後、菌体を収集し、細胞(湿重量)20g/L、カテコール(濃度10g/L)、L-乳酸(濃度10g/L)、pH 8.0、アンモニウムイオン(濃度30g/L)からなる100ml反応系において、35℃で12時間反応させた。変換終了後、液体クロマトグラフィーによりサルビアノリン酸Aの産量及び立体配置を測定し、結果を表5に示す。
α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、及びグルコースデヒドロゲナーゼを同時に発現させた組換え大腸菌の構築
まず、L-アミノ酸オキシダーゼ、α-ヒドロキシカルボン酸デヒドロゲナーゼ、及びグルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を、pETDuet-1又はpACYCDuet-1プラスミドに連結した。3つの遺伝子を共発現させた組換えプラスミドを得て、プラスミドを用いて大腸菌Escherichia coli HMを形質転換し、クロランフェニコールとアンピシリンプレートを用いて陽性形質転換体をスクリーニングすると、組換え大腸菌を得た。
誘導発現方法
組換え大腸菌を体積比が2%となる量でLB発酵培地(ペプトン10g/L、酵母粉5g/L、NaCl 10g/L)に播種し、細胞OD
600が0.6~0.8になると、最終濃度0.4mMのIPTGを加え、20℃で誘導発現培養を8h行った。誘導発現終了後、20℃、8000rpmで20分間遠心分離して、細胞を収集した。
組換え大腸菌誘導発現が終了した後、菌体を収集し、細胞(湿重量)40g/L、L-ドパ(濃度40g/L)、グルコース(濃度30g/L)からなるpH 8.0の100ml反応系において、35℃で12時間反応させた。変換終了後、液体クロマトグラフィーによりサルビアノリン酸Aの産量及び立体配置を測定し、結果を表6に示す。
【0061】
実施例4
文献Large scale validation of an efficient CRISPR/Cas-based multi gene editing protocol in Escherichia coli. Microbial Cell Factories,2017,16(1):68に記載の方法によって、Escherichia coli HMゲノム上の対応する遺伝子の前に、大腸菌のグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(gpdA)の前の発現強度が中等である、配列がSEQ ID NO:15に示される構成的プロモータ(PG)を追加した。
遺伝子gltSの発現を強化させる場合は、Escherichia coli HMゲノムをテンプレートとして、プライマーgltS-FF/gltS-FR、gltS-gpdA-F/gltS-gpdA-R、gltS-RF/gltS-RRを用いて、上流の配列、プロモータ、下流の配列を増幅し、gltS-FFとgltS-RRをプライマーとして融合し、gpdAプロモータを含有する発現カセットを得た。次に、プラスミドpCasRed、pCRISPR-gDNA(gltS sgRNA含有)とともにEscherichia coli HMに導入した後、Cas9/sgRNAで宿主のgltS遺伝子部位での二本鎖切断を誘発し、組換え酵素RedでgpdAプロモータをgltS遺伝子の前に組み込み、シーケンシングして検証した。
以下の表7には、プライマー名及び配列表番号に対応するインデックスが示されている。
実施例1に記載の方法に従って誘導発現を行い、各細胞を収集して変換して分析し、結果を表8に示す。変換系のうち、全細胞変換系は、細胞(湿重量)5 g/L、L-グルタミン酸50g/L、L-ドパ 20g/L、pH 8.0、温度40℃、シェーカーの回転数:250回転/分、変換の時間:12時間であった。
効果が最も高いEscherichia coli HM (PG-gltS)をEscherichia coli HML-1と命名した。
遺伝子lldPの発現を強化させる場合は、Escherichia coli HMゲノムをテンプレートとし、上流、プロモータ、下流の配列を増幅し、gpdAプロモータを含有する発現カセットを得た。次に、プラスミドpCasRed、pCRISPR-gDNA(lldP sgRNA含有)とともにEscherichia coli HMに導入した後、Cas9/sgRNAで宿主のlldP遺伝子部位での二本鎖切断を誘発し、組換え酵素RedでgpdAプロモータをlldP遺伝子の前に組み込み、シーケンシングして検証した。
実施例2に記載の方法に従って誘導発現を行い、各細胞を収集して変換して分析し、結果を表9に示す。変換系のうち、全細胞変換系は、細胞(湿重量)5g/L、L-乳酸50g/L、L-ドパ 20g/L、pH 8.0、温度40℃、シェーカーの回転数:250回転/分、変換の時間:12時間であった。
効果が最も高いEscherichia coli HM (PG-lldP)をEscherichia coli HML-2と命名した。
遺伝子hpaXの発現を強化させる場合は、遺伝子lldPの発現を強化させる方法と同様に、まず、上流、プロモータ、下流の配列を増幅し、プライマーを設計して融合し、gpdAプロモータを含有する発現カセットを得た。次に、プラスミドpCasRed、pCRISPR-gDNA(hpaX sgRNA含有)とともにEscherichia coli HMに導入した後、Cas9/sgRNAで宿主のhpaX遺伝子部位での二本鎖切断を誘発し、組換え酵素RedでgpdAプロモータをhpaX遺伝子の前に組み込み、シーケンシングして検証した。
遺伝子mhpTの発現を強化させる場合は、遺伝子lldPの発現を強化させる方法と同様に、まず、上流、プロモータ、下流の配列を増幅し、プライマーを設計して融合し、gpdAプロモータを含有する発現カセットを得た。次に、プラスミドpCasRed、pCRISPR-gDNA(mhpT sgRNA含有)とともにEscherichia coli HMに導入した後、Cas9/sgRNAで宿主のmhpT遺伝子部位での二本鎖切断を誘発し、組換え酵素RedでgpdAプロモータをmhpTの前に組み込み、シーケンシングして検証した。
実施例2に記載の方法に従って誘導発現を行い、各細胞を収集して変換して分析し、結果を表10に示す。変換系のうち、全細胞変換系は、細胞(湿重量)10g/L、L-乳酸200g/L、カテコール10g/L、pH 8.0、温度40℃、シェーカーの回転数:250回転/分、変換の時間:12時間であった。
効果が最も高いEscherichia coli HM (PG-lldP,PG-hpaX,PG-mhpT)をEscherichia coli HMLHMと命名した。
【0062】
実施例5
実施例4に記載の方法に従って、Escherichia coli HML中のnadA、ribF遺伝子の前に、大腸菌のグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(gpdA)の前の発現強度が中等である、配列がSEQ ID NO:15に示される構成的プロモータ(PG)を追加した。次に、プラスミドを導入した。
遺伝子nadAの発現を強化させる場合、Escherichia coli HMLゲノムをテンプレートとし、プライマーnadA-FF/nadA-FR、nadA-gpdA-F/nadA-gpdA-R、nadA-RF/nadA-RRを用いて、上流、プロモータ、下流の配列を増幅し、nadA-FFとnadA-RRをプライマーとして融合し、gpdAプロモータを含有する発現カセットを得た。次に、プラスミドpCasRed、pCRISPR-gDNA(nadA sgRNA含有)とともにEscherichia coli HMLに導入した後、Cas9/sgRNAで宿主のnadA遺伝子部位での二本鎖切断を誘発し、組換え酵素RedでgpdAプロモータをnadA遺伝子の前に組み込み、シーケンシングして検証した。
遺伝子ribFの発現を強化させる場合、Escherichia coli HMLゲノムをテンプレートとし、プライマーribF-FF/ribF-FR、ribF-gpdA-F/ribF-gpdA-R、ribF-RF/ribF-RRを用いて、上流、プロモータ、下流の配列を増幅し、ribF-FFとribF-RRをプライマーとして融合し、gpdAプロモータを含有する発現カセットを得た。次に、プラスミドpCasRed、pCRISPR-gDNA(ribF sgRNA含有)とともにEscherichia coli HMLに導入した後、Cas9/sgRNAで宿主のribF遺伝子部位での二本鎖切断を誘発し、組換え酵素RedでgpdAプロモータをribF遺伝子の前に組み込み、シーケンシングして検証した。
以下の表11には、プライマー名及び配列表番号に対応するインデックスが示されている。
遺伝子改変終了後、共発現プラスミドを導入した。実施例1に記載の方法に従って誘導発現を行い、各細胞を収集して変換して分析し、結果を表12に示す。変換系のうち、全細胞変換系は、細胞(湿重量)20g/L、L-グルタミン酸120 g/L、L-ドパ120g/L、pH 9.0、温度30℃、シェーカーの回転数250回転/分、変換の時間:24時間であり、変換結果の比較を表12に示す。
最適なEscherichia coli HML(PG-nadA,PG-ribF)をEscherichia coli HNR-1と命名した。
遺伝子改変終了後、共発現プラスミドを導入した。実施例1に記載の方法に従って誘導発現を行い、各細胞を収集して変換して分析し、結果を表7に示す。変換系のうち、全細胞変換系は、細胞(湿重量)20g/L、L-乳酸100 g/L、L-ドパ120g/L、pH 9.0、温度30℃、シェーカーの回転数250回転/分、変換の時間:24時間であり、変換結果の比較を表13に示す。
最適なEscherichia coli HML(PG-nadA,PG-ribF)をEscherichia coli HNR-2と命名した。
遺伝子改変終了後、共発現プラスミドを導入した。実施例1に記載の方法に従って変換を行い、各細胞を収集して変換して分析し、結果を表14に示す。変換系のうち、全細胞変換系は、細胞(湿重量)20g/L、L-乳酸200 g/L、カテコール200g/L、pH 9.0、温度30℃、シェーカーの回転数250回転/分、変換の時間:24時間であった。
最適なEscherichia coli HMLHM(PG-nadA,PG-ribF,PG-pdxJ)をEscherichia coli NPRと命名した。
遺伝子改変終了後、共発現プラスミドを導入した。実施例1に記載の方法に従って誘導発現を行い、各細胞を収集して変換して分析し、結果を表15に示す。変換系のうち、全細胞変換系は、細胞(湿重量)20g/L、グルコース100 g/L、L-ドパ120g/L、pH 9.0、温度30℃、シェーカーの回転数250回転/分、変換の時間:24時間であった。
最適なEscherichia coli HM(PG-nadA,PG-ribF)をEscherichia coli NRと命名した。
【0063】
実施例6
実施例1に記載の誘導発現方法により、Escherichia coli HNR/pCOLADuet-1-efmdhd-bsgdh-cmaaoの誘導発現を完了した後、菌体を収集し、100ml反応系では、細胞(湿重量)1g/L、L-グルタミン酸1 g/L、L-ドパ1g/L、pH 6.0、温度15℃、シェーカーの回転数:250回転/分、変換の時間:1時間とした。測定の結果、R-サルビアノリン酸Aは、濃度が93 mg/Lであり、e.e%>99.9であった。
実施例1に記載の誘導発現方法により、Escherichia coli HNR/pCOLADuet-1-efmdhd-llldh-cmaaoの誘導発現を完了した後、菌体を収集し、100ml反応系では、細胞(湿重量)1g/L、L-乳酸1 g/L、L-ドパ1g/L、pH 6.0、温度15℃、シェーカーの回転数250回転/分、変換の時間:1時間とした。測定の結果、R-サルビアノリン酸Aは、濃度が93 mg/Lであり、e.e%>99.9であった。
実施例1に記載の誘導発現方法により、Escherichia coli NPR/pETDuet-1-wcldhl-llldh+pACYCDuet-1-cmaao-ehtplの誘導発現を完了した後、菌体を収集し、100ml反応系では、細胞(湿重量)1g/L、L-乳酸1 g/L、カテコール1g/L、pH 6.0、温度15℃、シェーカーの回転数250回転/分、変換の時間:1時間とした。測定の結果、S-サルビアノリン酸Aは、濃度が78 mg/Lであった。
実施例1に記載の誘導発現方法により、Escherichia coli NR/pCOLADuet-1-efmdhd-bsgdh-cmaaoの誘導発現を完了した後、菌体を収集し、100ml反応系では、細胞(湿重量)1g/L、グルコース1 g/L、L-ドパ1g/L、pH 6.0、温度15℃、シェーカーの回転数250回転/分、変換の時間:1時間とした。測定の結果、S-サルビアノリン酸Aは、濃度が93 mg/L、e.e%>99.9であった。
【0064】
実施例7
実施例1に記載の誘導発現方法により、表16中の菌株の誘導発現を完了した後、菌体を収集し、100ml反応系では、細胞(湿重量)200g/L、L-グルタミン酸200g/L、L-ドパ200g/L、pH 8.5、温度40℃、シェーカーの回転数250回転/分、変換の時間:48時間とした。沈殿をすべて希釈して溶解した後測定し、結果を表16に示す。
実施例1に記載の誘導発現方法により、表17中の菌株の誘導発現を完了した後、菌体を収集し、100ml反応系では、細胞(湿重量)200g/L、L-乳酸200g/L、L-ドパ200g/L、pH 8.5、温度40℃、シェーカーの回転数250回転/分、変換の時間:48時間とした。沈殿をすべて希釈して溶解した後測定した。
実施例1に記載の誘導発現方法により、表18中の菌株の誘導発現を完了した後、菌体を収集し、100ml反応系では、細胞(湿重量)200g/L、L-乳酸200g/L、カテコール200g/L、pH 8.5、温度40℃、シェーカーの回転数250回転/分、変換の時間:48時間とした。沈殿をすべて希釈して溶解した後測定した。
実施例1に記載の誘導発現方法により、表19中の菌株の誘導発現を完了した後、菌体を収集し、100ml反応系では、細胞(湿重量)200g/L、グルコース200g/L、L-ドパ200g/L、pH 8.5、温度40℃、シェーカーの回転数250回転/分、変換の時間:48時間とした。沈殿をすべて希釈して溶解した後測定した。
【0065】
以上の酵素及びその共発現遺伝子組換え菌の改変及び構築、菌体の培地の組成及び培養方法、全細胞生物変換は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、理論的には、ほかの細菌、糸状真菌、放線菌、動物細胞についても、ゲノムの改変、複数の遺伝子を共発現させる全細胞の触媒への使用が可能である。本発明の原則及び思想を逸脱することなく、任意の修正、等価置換を行える。
【配列表】