(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】大粒子トレハロースの製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/12 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
C12P19/12
(21)【出願番号】P 2020562806
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(86)【国際出願番号】 CN2018097576
(87)【国際公開番号】W WO2019144588
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】201810079541.6
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520278594
【氏名又は名称】トンリャオ メイファ バイオロジカル サイ-テック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TONGLIAO MEIHUA BIOLOGICAL SCI-TECH CO., LTD
【住所又は居所原語表記】YI,Tingting Khorqin District Mulitu Industrial Park Tongliao, Inner Mongolia 028024 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イー, ティンティン
(72)【発明者】
【氏名】フー, チュンリー
(72)【発明者】
【氏名】チー, チウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン, シユアン
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107446972(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105925642(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1502702(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 19/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大粒子トレハロースの製造方法であって、デンプンミルクを製造するステップ(1)と、液化するステップ(2)と、二重酵素分解を行うステップ(3)と、濾過してタンパク質を取り除くステップ(4)と、脱色するステップ(5)と、脱塩するステップ(6)と、精製するステップ(7)と、濃縮及び結晶化を行うステップ(8)と、分離及び乾燥して完成品を得るステップ(9)とを含み、
ここで、濃縮及び結晶化を行う前記ステップ(8)において、精製するステップで得られた精製液を蒸発及び結晶化させ、前記蒸発及び結晶化が終了した後、蒸発結晶液を得、前記蒸発結晶液におけるトレハロースの質量百分率含有量は≧60%であり、前記蒸発結晶液を冷却及び結晶化させ、冷却及び結晶化の降温速度は4~6℃/hであり、50~60℃に冷却したときに、種結晶を添加し、前記種結晶の添加量は前記蒸発結晶液質量の1~5%であり、さらに20℃以下に冷却して冷却結晶液を
得、
デンプンミルクを製造する前記ステップにおいて、トウモロコシを水に浸漬し、前記トウモロコシと前記水の割合が5~8:2~5であり、浸漬水温が40~60℃であり、前記トウモロコシの種皮が剥離できるまで浸漬し、浸漬トウモロコシを得、水分を濾別し、且つ整粒量が<10粒/100gになるまで前記浸漬トウモロコシを破砕し、破砕トウモロコシを得、前記破砕トウモロコシを研磨して、研磨液におけるトウモロコシ胚芽の数が5個/100mlより小さくなるまでトウモロコシにおける胚芽を除去し、研磨液を得、前記研磨液におけるタンパク質含有量が≦10%になるまで前記研磨液に対してディスク分離を行い、前記デンプンミルクを得、
液化する前記ステップにおいて、前記デンプンミルクの製造が終了した後、前記デンプンミルクを15~30Beまで濃縮し、濃縮デンプンミルクを得、前記濃縮デンプンミルクを液化温度110~120℃、液化時間15~25分で液化して液化液を得、
二重酵素分解を行う前記ステップにおいて、液化が終了した後、複合酵素を前記液化液に添加し、前記複合酵素の質量は前記デンプンミルクの質量の5~15%であり、pH4.0~4.5、温度48~62℃の条件で酵素分解を行い、酵素分解時間は36~60hであり、酵素分解溶液を得、
濾過してタンパク質を取り除く前記ステップにおいて、二重酵素分解が終了した後、前記酵素分解溶液を濾過し、濾過精度が5~25μmであり、濾過液の光透過率の値が90%以上になるまで循環濾過して脱タンパク質溶液を得、
脱色する前記ステップにおいて、濾過してタンパク質を取り除く前記ステップが終了した後、前記脱タンパク質溶液に活性炭粒子を添加し、前記活性炭粒子の質量は前記濾過液の質量の0.1~1%であり、温度65~70℃の条件で30~60分脱色を行い、そして濾過液の光透過率の値が98%以上になるまで循環濾過して活性炭粒子を除去し、脱色液を得、
脱塩する前記ステップにおいて、脱色が終了した後、イオン交換液の導電率が50us/cmより小さくなるまで前記脱色液に対してイオン交換を行い、脱塩液を得、
精製するステップにおいて、前記脱塩液を純水で希釈して希釈液を得、クロマトグラフィー分離温度65~75℃で前記希釈液に対してクロマトグラフィー分離を行い、前記精製液を得、前記精製液におけるトレハロースの質量百分率含有量が≧99%であり、
分離及び乾燥して完成品を得る前記ステップにおいて、濃縮及び結晶化が終了した後、前記冷却結晶液を遠心分離して湿潤生成物を得、前記湿潤生成物を水分含有量が<1%になるまで加熱乾燥させて、前記大粒子トレハロース完成品を得、
前記複合酵素にはMThaseとMTsaseが含まれ、前記MThaseと前記MTsaseの添加質量比は2:1であり、前記MThaseと前記MTsaseの活性値はいずれも1~20U/gであることを特徴とする大粒子トレハロースの製造方法。
【請求項2】
前記種結晶は80メッシュのトレハロースであることを特徴とする
請求項1に記載の大粒子トレハロースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレハロースの製造方法に関し、特に、大粒子トレハロースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トレハロースは、漏蘆(Radix rhapontici)シュガー、キノコシュガーなどとも呼ばれ、安全で信頼性の高い天然糖類である。トレハロースは生体に対する不思議な保護作用を有し、トレハロースは、高温、高寒、高浸透圧、乾燥失水などの過酷な環境条件下で細胞の表面に独特な保護膜を形成し、タンパク質分子を効果的に保護して変性失活しないようにし、生物のライフプロセスと生物学的特性を維持する。しかし、スクロースやグルコースなどの自然界の他の糖類には、この機能がない。このユニークな機能特性により、トレハロースはタンパク質医薬品、酵素、ワクチン、その他の生物学的製品の優れた活性保護剤だけでなく、細胞活性の維持と保湿化粧品の重要な成分にもなり、食品の劣化を防ぎ、食品の新鮮な風味を維持し、食品の品質を向上させるユニークな食品成分であり、トレハロースの天然食用甘味糖としての機能が大幅に拡張される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
トレハロースの実際の使用において、トレハロースは一般に塩類又は糖類と配合する必要があり、トレハロースと塩類の配合は、製品の塩度をより均一にし、製品の品質を向上させることができ、トレハロースと糖類の配合は、製品の糖度を減らし、高血糖の人々に適しており、製品の販売範囲を拡大することができる一方、メイラード反応を低減し、食品の外観を改善するために食品分野で使用される。ただし、現在のトレハロースの製造方法では、選択した種結晶のサイズが均一ではなく、結晶化プロセス中に冷却及び結晶化の降温速度が不当に設定され、結果として得られるトレハロース粒子が細かく且不均一になり、粒子サイズが一般的に20メッシュ以下であるトレハロースが90%以上の比率を占め、40メッシュ以下であるトレハロースが50%以上の比率を占め、60メッシュ以下であるトレハロースが30%以上の比率を占め、塩類や糖類と配合すると使いづらくなり、プロポーションの偏りが生じやすく、使用量を正確に把握できず、製品の品質が不安定になる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、製品粒子が大きくて均一で、使用しやすい大粒子トレハロースの製造方法を提供することである。
【0005】
本発明は次の技術的解決手段によって実施され、大粒子トレハロースの製造方法は、具体的には、デンプンミルクを製造するステップ(1)と、液化するステップ(2)と、二重酵素分解を行うステップ(3)と、濾過してタンパク質を取り除くステップ(4)と、脱色するステップ(5)と、脱塩するステップ(6)と、精製するステップ(7)と、濃縮及び結晶化を行うステップ(8)と、分離及び乾燥して完成品を得るステップ(9)とを含む。
【0006】
ここで、濃縮及び結晶化を行う前記ステップ(8)において、精製するステップで得られた精製液を蒸発及び結晶化させ、前記蒸発及び結晶化が終了した後、蒸発結晶液を得、前記蒸発結晶液におけるトレハロースの質量百分率含有量は≧60%であり、前記蒸発結晶液に対して冷却及び結晶化を行い、冷却及び結晶化の降温速度は4~6℃/hであり、50~60℃に冷却したときに、種結晶を添加し、前記種結晶の添加量は前記蒸発結晶液質量の1~5%であり、続いて20℃以下に冷却して冷却結晶液を得る。濃縮及び結晶化時の降温速度を適切に設定することにより、製品の粒径及び均一性の向上に極めて大きな促進効果を発揮する。
【0007】
好ましくは、デンプンミルクを製造する前記ステップにおいて、トウモロコシを水に浸漬し、前記トウモロコシと前記水の割合が5~8:2~5であり、浸漬水温が40~60℃であり、前記トウモロコシの種皮が剥離できるまで浸漬し、浸漬トウモロコシを得、水分を濾別し、且つ整粒量が<10粒/100gになるまで前記浸漬トウモロコシを破砕し、破砕トウモロコシを得、前記破砕トウモロコシを研磨して、研磨液におけるトウモロコシ胚芽の数が5個/100mlより小さくなるまでトウモロコシにおける胚芽を除去し、研磨液を得、前記研磨液におけるタンパク質含有量が≦10%になるまで前記研磨液に対してディスク分離を行い、前記デンプンミルクを得る。
【0008】
液化する前記ステップにおいて、デンプンミルクの製造が終了した後、前記デンプンミルクを15~30Beまで濃縮し、濃縮デンプンミルクを得、前記濃縮デンプンミルクを液化温度110~120℃、液化時間15~25分で液化して液化液を得る。
【0009】
二重酵素分解を行う前記ステップにおいて、液化が終了した後、複合酵素を前記液化液に添加し、前記複合酵素の質量は前記デンプンミルクの質量の5~15%であり、pH4.0~4.5、温度48~62℃の条件で酵素分解を行い、酵素分解時間は36~60hであり、酵素分解溶液を得る。
【0010】
濾過してタンパク質を取り除く前記ステップにおいて、二重酵素分解が終了した後、前記酵素分解溶液を濾過し、濾過精度が5~25μmであり、濾過液の光透過率の値が90%以上になるまで循環濾過して脱タンパク質溶液を得る。
【0011】
脱色する前記ステップにおいて、濾過してタンパク質を取り除くステップが終了した後、前記脱タンパク質溶液に活性炭粒子を添加し、前記活性炭粒子の質量は前記濾過液の質量の0.1~1%であり、温度65~70℃の条件で30~60分脱色を行い、そして濾過液の光透過率の値が98%以上になるまで循環濾過して活性炭粒子を除去し、脱色液を得る。
【0012】
脱塩する前記ステップにおいて、脱色が終了した後、イオン交換液の導電率が50us/cmより小さくなるまで前記脱色液に対してイオン交換を行い、脱塩液を得る。
【0013】
精製する前記ステップにおいて、前記脱塩液を純水で希釈して希釈液を得、クロマトグラフィー分離温度65~75℃で前記希釈液に対してクロマトグラフィー分離を行い、前記精製液を得、前記精製液におけるトレハロースの質量百分率含有量が≧99%である。
【0014】
分離及び乾燥して完成品を得る前記ステップにおいて、濃縮及び結晶化が終了した後、前記冷却結晶液を遠心分離して湿潤生成物を得、前記湿潤生成物を水分含有量が<1%になるまで乾燥させて、前記大粒子トレハロース完成品を得る。
【0015】
好ましくは、前記種結晶は80メッシュのトレハロースであり、製品の粒径と均一性を向上させるのに役立つ。
【0016】
好ましくは、前記複合酵素にはMThase(マルトオリゴシルトレハローストレハロヒドロラーゼ)とMTsase(マルトオリゴシルトレハロースシンターゼ)が含まれ、前記MThaseと前記MTsaseの添加質量比は2:1であり、前記MThaseと前記MTsaseの活性値はいずれも1~20U/gである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の利点は次のとおりであり、本発明にて製造された製品の粒子が大きく且つ均一であり、粒子度が40メッシュ以上の製品は35%以上の比率を占め、40メッシュ以下の製品は65%程度の比率を占め、使用しやすく、塩類又は糖類と配合する時に、配合量を正確に把握することができ、塩類配合製品の塩度がより均一であり、糖類配合製品の甘味度とメイラード反応を低減させ、配合製品の品質を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
大粒子トレハロースの製造方法は、具体的には、デンプンミルクを製造するステップ(1)と、液化するステップ(2)と、二重酵素分解を行うステップ(3)と、濾過してタンパク質を取り除くステップ(4)と、脱色するステップ(5)と、脱塩するステップ(6)と、精製するステップ(7)と、濃縮及び結晶化を行うステップ(8)と、分離及び乾燥するステップ(9)とを含む。
【0019】
デンプンミルクを製造するステップ(1)において、トウモロコシを水に浸漬し、トウモロコシと水の割合は6.5:4.5であり、浸漬水温は50℃であり、トウモロコシの種皮が剥離できるまで浸漬し、浸漬トウモロコシを得、水分を濾別し、且つ整粒量が6粒/100gになるまで浸漬トウモロコシを破砕して種皮を分離し、破砕トウモロコシを得、破砕トウモロコシを研磨して、研磨液におけるトウモロコシ胚芽の数が3個/100mlになるまでトウモロコシにおける胚芽を除去し、研磨液を得、研磨液におけるタンパク質含有量が6%になるまで研磨液に対してディスク分離を行い、デンプンミルクを得る。
【0020】
液化するステップ(2)において、デンプンミルクを製造するステップ(1)が終了した後、デンプンミルクを23Beまで濃縮し、濃縮デンプンミルクを得、濃縮デンプンミルクを液化温度115℃、液化時間22分(min)で液化して液化液を得る。
【0021】
二重酵素分解を行うステップ(3)において、液化するステップ(2)が終了した後、複合酵素を液化液に添加し、複合酵素にはMThaseとMTsaseが含まれ、MThaseとMTsaseの添加質量比は2:1であり、MThaseとMTsaseの活性値はいずれも3U/gであり、複合酵素の質量はデンプンミルクの質量の10%であり、pH4.3、温度50℃の条件で酵素分解を行い、酵素分解時間は48hであり、酵素分解溶液を得る。
【0022】
濾過してタンパク質を取り除くステップ(4)において、二重酵素分解を行うステップ(3)が終了した後、酵素分解溶液を濾過し、濾過精度が15μmであり、濾過液の光透過率の値が95%になるまで循環濾過して脱タンパク質溶液を得る。
【0023】
脱色するステップ(5)において、濾過してタンパク質を取り除くステップ(4)が終了した後、脱タンパク質溶液に活性炭粒子を添加し、活性炭粒子の質量は濾過液の質量の0.5%であり、温度68℃の条件で45分脱色を行い、そして濾過液の光透過率の値が99%になるまで循環濾過して活性炭粒子を除去し、脱色液を得る。
【0024】
脱塩するステップ(6)において、脱色するステップ(5)が終了した後、イオン交換液の導電率が30us/cmになるまで脱色液に対してイオン交換を行い、脱塩液を得る。
【0025】
精製するステップ(7)において、脱塩液を純水で希釈して希釈液を得、温度70℃で希釈液に対してクロマトグラフィー分離を行い、精製液を得、精製液におけるトレハロースの質量百分率含有量が99.5%である。
【0026】
濃縮及び結晶化を行うステップ(8)において、精製するステップ(7)が終了した後、まず、蒸発結晶液におけるトレハロースの質量百分率含有量が65%になるまで精製液を蒸発及び結晶化させ、さらに冷却及び結晶化させ、冷却及び結晶化の降温速度は5℃/hであり、55℃に冷却したときに、80メッシュのトレハロースである種結晶を添加し、種結晶の添加量は蒸発結晶液の質量の3%であり、16℃まで冷却し続けて冷却結晶液を得る。
【0027】
分離及び乾燥するステップ(9)において、濃縮及び結晶化を行うステップ(8)が終了した後、冷却結晶液を遠心分離して湿潤生成物を得、湿潤生成物を水分含有量が0.5%になるまで加熱乾燥させ、大粒子トレハロース完成品を得る。
【0028】
本実施例では、大粒子トレハロース完成品におけるトレハロースの粒子度が40メッシュ以上の製品は35%以上の比率を占め、40メッシュ以下の製品は65%程度の比率を占め、使用しやすく、塩類又は糖類と配合する時に、配合量を正確に把握することができ、塩類配合製品の塩度をより均一にし、糖類配合製品の糖度とメイラード反応を低減させる。
【実施例】
【0029】
実施例1
【0030】
大粒子トレハロースの製造方法は、具体的には、デンプンミルクを製造するステップ(1)と、液化するステップ(2)と、二重酵素分解を行うステップ(3)と、濾過してタンパク質を取り除くステップ(4)と、脱色するステップ(5)と、脱塩するステップ(6)と、精製するステップ(7)と、濃縮及び結晶化を行うステップ(8)と、分離及び乾燥するステップ(9)とを含む。
【0031】
デンプンミルクを製造するステップ(1)において、トウモロコシを水に浸漬し、トウモロコシと水の割合が5:2であり、浸漬水温が40℃であり、トウモロコシの種皮が剥離できるまで浸漬し、浸漬トウモロコシを得、水分を濾別し、且つ整粒量が8粒/100gになるまで浸漬トウモロコシを破砕して種皮を分離し、破砕トウモロコシを得、破砕トウモロコシを研磨して、研磨液におけるトウモロコシ胚芽の数が4個/100mlになるまでトウモロコシにおける胚芽を除去し、研磨液を得、研磨液におけるタンパク質含有量が8%になるまで研磨液に対してディスク分離を行い、デンプンミルクを得る。
【0032】
液化するステップ(2)において、デンプンミルクを製造するステップ(1)が終了した後、デンプンミルクを15Beまで濃縮し、濃縮デンプンミルクを得、濃縮デンプンミルクを液化温度110℃、液化時間15分で液化して液化液を得る。
【0033】
二重酵素分解を行うステップ(3)において、液化するステップ(2)が終了した後、複合酵素を液化液に添加し、複合酵素にはMThaseとMTsaseが含まれ、MThaseとMTsaseの添加質量比は2:1であり、MThaseとMTsaseの活性値はいずれも1U/gであり、複合酵素の質量はデンプンミルクの質量の5%であり、pH4.0、温度48℃の条件で酵素分解を行い、酵素分解時間は60hであり、酵素分解溶液を得る。
【0034】
濾過してタンパク質を取り除くステップ(4)において、二重酵素分解を行うステップ(3)が終了した後、酵素分解溶液を濾過し、濾過精度は5μmであり、濾過液の光透過率の値が93%になるまで循環濾過して脱タンパク質溶液を得る。
【0035】
脱色するステップ(5)において、濾過してタンパク質を取り除くステップ(4)が終了した後、脱タンパク質溶液に活性炭粒子を添加し、活性炭粒子の質量は濾過液の質量の0.1%であり、温度65℃の条件で30分脱色を行い、そして濾過液の光透過率の値が98.5%になるまで循環濾過して活性炭粒子を除去し、脱色液を得る。
【0036】
脱塩するステップ(6)において、脱色するステップ(5)が終了した後、イオン交換液の導電率が40us/cmになるまで脱色液に対してイオン交換を行い、脱塩液を得る。
【0037】
精製するステップ(7)において、脱塩液を純水で希釈して希釈液を得、クロマトグラフィー分離温度65℃で希釈液に対してクロマトグラフィー分離を行い、精製液を得、精製液におけるトレハロースの質量百分率含有量が99.2%である。
【0038】
濃縮及び結晶化を行うステップ(8)において、精製するステップ(7)が終了した後、まず、蒸発結晶液におけるトレハロースの質量百分率含有量が60%になるまで精製液を蒸発及び結晶化させ、さらに冷却及び結晶化させ、冷却及び結晶化の降温速度は4℃/hであり、50℃に冷却したときに、80メッシュのトレハロースである種結晶を添加し、種結晶の添加量は蒸発結晶液の質量の1%であり、17℃まで冷却し続けて冷却結晶液を得る。
【0039】
分離及び乾燥するステップ(9)において、濃縮及び結晶化を行うステップ(8)が終了した後、冷却結晶液を遠心分離して湿潤生成物を得、湿潤生成物を水分含有量が0.8%になるまで加熱乾燥させ、大粒子トレハロース完成品を得る。
【0040】
本実施例では、大粒子トレハロース完成品におけるトレハロースの粒子度が40メッシュ以上の製品は35%以上の比率を占め、40メッシュ以下の製品は65%程度の比率を占め、使用しやすく、塩類又は糖類と配合する時に、配合量を正確に把握することができ、塩類配合製品の塩度をより均一にし、糖類配合製品の糖度とメイラード反応を低減させる。
【0041】
実施例2
【0042】
大粒子トレハロースの製造方法は、具体的には、デンプンミルクを製造するステップ(1)と、液化するステップ(2)と、二重酵素分解を行うステップ(3)と、濾過してタンパク質を取り除くステップ(4)と、脱色するステップ(5)と、脱塩するステップ(6)と、精製するステップ(7)と、濃縮及び結晶化を行うステップ(8)と、分離及び乾燥するステップ(9)とを含む。
【0043】
デンプンミルクを製造するステップ(1)において、トウモロコシを水に浸漬し、トウモロコシと水の割合が8:5であり、浸漬水温が60℃であり、トウモロコシの種皮が剥離できるまで浸漬し、浸漬トウモロコシを得、水分を濾別し、整粒量が3粒/100gになるまで浸漬トウモロコシを破砕して種皮を分離し、破砕トウモロコシを得、破砕トウモロコシを研磨して、研磨液におけるトウモロコシ胚芽の数が2個/100mlになるまでトウモロコシにおける胚芽を除去し、研磨液を得、研磨液におけるタンパク質含有量が5%になるまで研磨液に対してディスク分離を行い、デンプンミルクを得る。
【0044】
液化するステップ(2)において、デンプンミルクを製造するステップ(1)が終了した後、デンプンミルクを30Beまで濃縮し、濃縮デンプンミルクを得、濃縮デンプンミルクを液化温度120℃、液化時間25分で液化して液化液を得る。
【0045】
二重酵素分解を行うステップ(3)において、液化するステップ(2)が終了した後、複合酵素を液化液に添加し、複合酵素にはMThaseとMTsaseが含まれ、MThaseとMTsaseの添加質量比は2:1であり、MThaseとMTsaseの活性値はいずれも5U/gであり、複合酵素の質量はデンプンミルクの質量の15%であり、pH4.5、温度62℃の条件で酵素分解を行い、酵素分解時間は36hであり、酵素分解溶液を得る。
【0046】
濾過してタンパク質を取り除くステップ(4)において、二重酵素分解を行うステップ(3)が終了した後、酵素分解溶液を濾過し、濾過精度は25μmであり、濾過液の光透過率の値が95%になるまで循環濾過して脱タンパク質溶液を得る。
【0047】
脱色するステップ(5)において、濾過してタンパク質を取り除くステップ(4)が終了した後、脱タンパク質溶液に活性炭粒子を添加し、活性炭粒子の質量は濾過液の質量の1%であり、温度70℃の条件で60分脱色を行い、そして濾過液の光透過率の値が99.7%になるまで循環濾過して活性炭粒子を除去し、脱色液を得る。
【0048】
脱塩するステップ(6)において、脱色するステップ(5)が終了した後、イオン交換液の導電率が20us/cmになるまで脱色液に対してイオン交換を行い、脱塩液を得る。
【0049】
精製するステップ(7)において、脱塩液を純水で希釈して希釈液を得、クロマトグラフィー分離温度75℃で希釈液に対してクロマトグラフィー分離を行い、精製液を得、精製液におけるトレハロースの質量百分率含有量が99.9%である。
【0050】
濃縮及び結晶化を行うステップ(8)において、精製するステップ(7)が終了した後、まず、蒸発結晶液におけるトレハロースの質量百分率含有量が70%になるまで精製液を蒸発及び結晶化させ、さらに冷却及び結晶化させ、冷却及び結晶化の降温速度は6℃/hであり、60℃に冷却したときに、80メッシュのトレハロースである種結晶を添加し、種結晶の添加量は蒸発結晶液の質量の5%であり、15℃まで冷却し続けて冷却結晶液を得る。
【0051】
分離及び乾燥するステップ(9)において、濃縮及び結晶化を行うステップ(8)が終了した後、冷却結晶液を遠心分離して湿潤生成物を得、湿潤生成物を水分含有量が0.3%になるまで加熱乾燥させ、大粒子トレハロース完成品を得る。
【0052】
本実施例では、大粒子トレハロース完成品におけるトレハロースの粒子度が40メッシュ以上の製品は35%以上の比率を占め、40メッシュ以下の製品は65%程度の比率を占め、使用しやすく、塩類又は糖類と配合する時に、配合量を正確に把握することができ、塩類配合製品の塩度をより均一にし、糖類配合製品の糖度とメイラード反応を低減させる。
産業上の利用可能性
【0053】
一、塩類との配合
【0054】
通常のトレハロースと本発明のものを取り出し、それぞれ1:9の比率で食用塩と配合し、配合が終了した後、それぞれ対照群及び試験群と名付け、同じ質量の対照群と試験群をそれぞれ同じ温度と同じ量の純水に溶解させ、各群につき5つの平行群を設け、2つの群のそれぞれ5つの平行群について塩度のブラインドテストを行い、ブラインドテストの結果を表1に示す。
【0055】
【0056】
表1から明らかなように、通常のトレハロース製品に比べ、本発明のものは粒子が大きく且つ均一であるため、本発明のものを塩類製品と配合する時に、配合量を正確に把握することができ、塩類配合製品の塩度をより均一にし、塩類配合製品に用いることにより、配合生産量の品質安定を確保することができる。
【0057】
二、糖類との配合
【0058】
通常のトレハロースと本発明のものを取り出し、それぞれ2:8の比率で白砂糖と配合し、配合が終了した後、それぞれ対照群及び試験群と名付け、対照群と試験群をそれぞれ同じ温度と同じ量の純水に溶解させて濃度5%の配合溶液を製造し、各群につき3つの平行群を設け、2つの群のそれぞれ3つの平行群について甘味度検出を行い、甘味度は白砂糖の甘味度を100%とし、検出結果を表2に示す。同時に、各群の溶液についてメイラード反応を検出し、検出結果を表3に示す。
【0059】
【0060】
【0061】
表2から明らかなように、通常のトレハロース製品に比べ、本発明のものは粒子が大きく且つ均一であるため、本発明を糖類製品と配合する時に、配合量を正確に把握することができ、糖類配合製品の甘味度をより均一にし、糖類配合製品に用いることにより、配合生産量の品質安定を確保することができる。表3から明らかなように、糖類配合製品に用いる場合には、本発明のものを添加した配合製品の反応前後の色度差が低いことから、本発明のものはメイラード反応の発生を低減でき、青果物の色保護に用いられ、色保護能力が高いことがわかる。