(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】加熱及び発光機能同時具現レードーム構造
(51)【国際特許分類】
H05B 3/20 20060101AFI20220518BHJP
H05B 3/84 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
H05B3/20 377
H05B3/84
(21)【出願番号】P 2021022073
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0187015
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517245958
【氏名又は名称】イントップス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ホン,テ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ギョム ソン
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-036189(JP,A)
【文献】特開2020-198379(JP,A)
【文献】特開昭63-037591(JP,A)
【文献】特表2008-546582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/20
H05B 3/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両レードーム構造の製作方法であって、発光のための発光回路と加熱のための加熱回路をフィルム上に積層印刷したフィルム部を3次元形状にフォーミング及び切断し、上部カバーと下部カバーとの間にフィルム部が位置するようにボンディング又は射出成形工程で上部カバー、フィルム部及び下部カバーを一体に製作し、
前記上部カバー、フィルム部及び下部カバーをボンディングで製作する工程は、上部カバーを準備し、フィルム部と下部カバーをインサート射出成形して下部組立体を完成した後、前記上部カバーと下部組立体をボンディングする段階によってなされる
、加熱及び発光機能の同時具現可能なレードーム構造の製作方法。
【請求項2】
車両レードーム構造の製作方法であって、発光のための発光回路と加熱のための加熱回路をフィルム上に積層印刷したフィルム部を3次元形状にフォーミング及び切断し、上部カバーと下部カバーとの間にフィルム部が位置するようにボンディング又は射出成形工程で上部カバー、フィルム部及び下部カバーを一体に製作し、
前記上部カバー、フィルム部及び下部カバーを射出成形する工程は、上部カバー用モールドにフィルム部をインサートし、プラスチック樹脂を注入して上部カバーとフィルム部を1次に射出成形し、下部カバー用モールドに端子部をインサートし、前記上部カバーとフィルム部を下部カバー用モールドに装着し、プラスチック樹脂を注入することにより、下部カバーと端子部を2次に射出成形する
、加熱及び発光機能の同時具現可能なレードーム構造の製作方法。
【請求項3】
車両レードーム構造の製作方法であって、発光のための発光回路と加熱のための加熱回路をフィルム上に積層印刷したフィルム部を3次元形状にフォーミング及び切断し、上部カバーと下部カバーとの間にフィルム部が位置するようにボンディング又は射出成形工程で上部カバー、フィルム部及び下部カバーを一体に製作し、
前記上部カバーは、射出成形工程によって上部カバーのベースを完成し、上部カバーの一面にUVハードコーティング層を形成し、前記一面の反対面である上部カバーの他面にUVコーティング層を形成し、前記UVコーティング層上にエムブレム部分を除いた部分に塗装作業を実施して部分塗装層を形成する段階によって製造される
、加熱及び発光機能の同時具現可能なレードーム構造の製作方法。
【請求項4】
車両レードーム構造の製作方法であって、発光のための発光回路と加熱のための加熱回路をフィルム上に積層印刷したフィルム部を3次元形状にフォーミング及び切断し、上部カバーと下部カバーとの間にフィルム部が位置するようにボンディング又は射出成形工程で上部カバー、フィルム部及び下部カバーを一体に製作し、
前記フィルム部は、ベースであるフィルムに蒸着層を形成し、伝導性インク及び蛍光インクをスクリーニング印刷して蒸着層上に発光回路を形成し、発光回路を保護するとともに電気絶縁を維持するように発光回路上に保護コーティング層を形成し、スクリーニング印刷の可能な伝導性インクを印刷して加熱回路を形成し、加熱回路を保護するために保護コーティング層を形成する段階によって製造される
、加熱及び発光機能の同時具現可能なレードーム構造の製作方法。
【請求項5】
フィルム部を熱成形、真空成形又は高圧成形して所定の立体形状にフォーミングし、製品の形状に合うようにフォーミングされたフィルムを切断する段階をさらに含む、請求項
4に記載の加熱及び発光機能の同時具現可能なレードーム構造の製作方法。
【請求項6】
上部カバーと下部組立体をボンディングする段階は、上部カバー及び下部カバーの縁部の両面又は一面にPUR(ポリウレタン)ホットメルトを塗布し、縁部を除いた内側の両面又は一面に瞬間接着剤を塗布してから圧着してボンディングする段階であり、
下部カバーの背面部に熱融着でエアベントを形成する段階をさらに含む、請求項
1に記載の加熱及び発光機能の同時具現可能なレードーム構造の製作方法。
【請求項7】
車両レードーム構造であって、射出成形工程によって製作された上部カバーと、蒸着されたフィルムに発光のために印刷された発光回路、保護コーティング層及び加熱回路を含むフィルム部と、射出成形工程によって製作された下部カバーとからな
り、
前記発光回路は、車両のエムブレム又は所定デザインのグリル状に沿って発光できるように発光及び伝導性インクからなり、
前記加熱回路は、車両のエムブレム又は所定デザインのグリル状の外面に付く霜、雪又は氷を溶かすように発熱機能の伝導性インクからなり、
前記下部カバーを貫通して前記発光回路又は加熱回路と接続するための導電性の端子部をさらに含む、加熱及び発光機能の同時具現可能なレードーム構造。
【請求項8】
端子部と、発光回路又は加熱回路とは伝導性テープ又はリベットを介して電気的に連結される、請求項
7に記載の加熱及び発光機能の同時具現可能なレードーム構造。
【請求項9】
前記下部カバーの背面部にはエアベントが形成される、請求項
7に記載の加熱及び発光機能の同時具現可能なレードーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用レードーム構造、具体的には加熱、つまりヒーティング及び発光、つまりライティング機能を同時に具現したレードーム構造及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に装着されるレーダーセンサーは1970年代初から商用化のための開発が始まった。雨、雪、霧などの悪天候と土及びほこりに脆弱な欠点を克服するために1980年代後半からミリメートル波を用いたレーダー方式が普及された。
【0003】
車両用レーダーとしては、77GHzの周波数を用いて比較的遠距離(200m)まで探知する、例えば前方衝突警告システムに用いられる高級型のレーダーと、24GHzの周波数を用いて中間距離(100m)まで探知する、例えば死角地帯の探知、車線変更システム又はバードビュー映像撮影に用いられる一般型のレーダーとが開発されて商用化している。
【0004】
一方、車両用レーダーセンサーが用いられる分野としては、適応走行制御(ACC:adaptive cruise control)分野がある。元々、走行制御は運転者が車両速度を増加させるためにボタンを押しても現在の車両速度を維持し、時速40km以下では走行機能をなくしたものであり、長距離高速道路が多くて長期間にわたって定速走行が必要な米国で運転者の便宜のために1958年最初に自動車に適用して普遍化した技術である。ところが、最近DAS(driver assistance system)技術の開発によって、先行車両との安全距離を自動で調整するシステム、すなわち“適応型”システムに進化し、Lidar(光で距離探知)又はLaser(レーザーで距離探知)又は超音波で適応走行制御を具現している。
【0005】
車両用レーダーセンサーは普通その前方にレーダーセンサーを覆う膨らんでいるカバー又はハウジングであるレードーム(radome)に収容され、その後方には車体にすぐ付着されるマウントが結合されたモジュールとして提供される。すなわち、車両用レーダーセンサーアセンブリーは、厳密にはレードームと、レーダーセンサーと、マウントとが一体に結合されたものである。
【0006】
レーダーセンサーアセンブリーは車両前方のセンターグリル、前方左右バンパーの側面下端(駐車補助用レーダー)又はウインドシールドに付着され、美観のためにレードームにエムブレムが一体に形成される場合が多い。
【0007】
レードームが備えなければならない重要な機能の一つとして、悪天候の場合又は気温が急降下する場合、レードームの外面に生成される氷、霜、水などを迅速に除去してレーダーセンサーの感知能力が低下しないように発熱機能を備えるものである。このために、熱線のような加熱手段を用いてIML(In mold labeling)又はIME(In mold electronics)、つまり複合射出工程を用いてフィルムに熱線を付着又は印刷している。もしくは、赤外線でカバーを加熱するかヒーターで内部空気を加熱する方法を用いる。
【0008】
韓国公開特許第10-2014-0103982号公報はレードームのヒーティング構造であり、加熱導体を蒸着又はスクリーン印刷法で塗布した弾性キャリアを後方射出成形又はオーバーモールド又は押出しコートする内容を開示している。特開2019-137380号公報は炭素ナノチューブで製作した発熱体をカバーに埋め込んだ構造を開示している。韓国公開特許第10-2018-0025722号公報は透明基板、透明基板上に形成される接着層及び接着層上に形成されるグラフェン層を含み、グラフェン層は、所定電圧が印加される場合、グラフェン層に沿って流れる電流によって発熱するグラフェン発熱装置を備えたレードームを開示している。
【0009】
しかし、レードームは、固有のヒーティング機能の他に、例えばエムブレムのようなデザインの発光機能まで拡張する必要がある。エムブレムを発光する技術に関連して特開2020-036189号公報はエムブレムに発光領域を設けているが、光沢性の金属を用いるものである。米国特許出願公開第2018-0275269号明細書はエムブレム構造とレーダー装置が一体に製作されるアセンブリーを開示するが、発光機能については言及していない。エムブレムを発光する技術として、エムブレムの後面に別途のLEDを内蔵したものがあるが、レードーム構造とは関係ないものである。
【0010】
発明者らは、以上の先行技術と特許を考慮して、車両用レーダーセンサーに関連して、熱線パターンを含む回路を迅速で精密に製作し、回路機能と用途を拡張し、これを収容することができるレードーム構造を開発することになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0103982号公報
【文献】特開2019-137380号公報
【文献】韓国公開特許第10-2018-0025722号公報
【文献】特開2020-036189号公報
【文献】米国特許出願公開第2018-0275269号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明は、車両用レーダー装置に加熱、つまりヒーティングと発光、つまりライティング機能をさらに付与することができる車両用レードーム構造、及びこの構造を迅速で正確に製作することができる製作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するために、本発明は、車両レードーム構造の製作方法であって、発光のための発光回路と加熱のための加熱回路をフィルム上に積層印刷したフィルム部を3次元形状にフォーミング及び切断し、上部カバーと下部カバーとの間にフィルム部が位置するようにボンディング又は射出成形工程で上部カバー、フィルム部及び下部カバーを一体に製作する、加熱及び発光機能の同時具現可能なレードーム構造の製作方法を提供する。
【0014】
前記上部カバー、フィルム部及び下部カバーをボンディングで製作する工程は、上部カバーを準備し、フィルム部と下部カバーをインサート射出成形して下部組立体を完成した後、前記上部カバーと下部組立体をボンディングする段階によってなされることができる。
【0015】
前記上部カバー、フィルム部及び下部カバーを射出成形する工程は、上部カバー用モールドにフィルム部をインサートし、プラスチック樹脂を注入して上部カバーとフィルム部を1次に射出成形し、下部カバー用モールドに端子部をインサートし、前記上部カバーとフィルム部を下部カバー用モールドに装着し、プラスチック樹脂を注入することにより、下部カバーと端子部を2次に射出成形することができる。
【0016】
前記上部カバーは、射出成形工程によって上部カバーのベースを完成し、上部カバーの一面にUVハードコーティング層を形成し、前記一面の反対面である上部カバーの他面にUVコーティング層を形成し、前記UVコーティング層上にエムブレム部分を除いた部分に塗装作業を実施して部分塗装層を形成する段階によって製造されることができる。
【0017】
前記フィルム部は、ベースであるフィルムに蒸着層を形成し、伝導性インク及び蛍光インクをスクリーニング印刷して蒸着層上に発光回路を形成し、発光回路を保護するとともに電気絶縁を維持するように発光回路上に保護コーティング層を形成し、スクリーニング印刷の可能な伝導性インクを印刷して加熱回路を形成し、加熱回路を保護するために保護コーティング層を形成する段階によって製造されることができる。
【0018】
フィルム部を熱成形、真空成形又は高圧成形して所定の立体形状にフォーミングし、製品の形状に合うようにフォーミングされたフィルムを切断する段階をさらに含むことができる。
【0019】
上部カバーと下部組立体をボンディングする段階は、上部カバー及び下部カバーの縁部の両面又は一面にPUR(ポリウレタン)ホットメルトを塗布し、縁部を除いた内側の両面又は一面に瞬間接着剤を塗布してから圧着してボンディングする段階であることができ、下部カバーの背面部に熱融着でエアベントを形成する段階をさらに含むことができる。
【0020】
また、本発明は、車両レードーム構造であって、射出成形工程によって製作された上部カバーと、蒸着されたフィルムに発光のために印刷された発光回路、保護コーティング層及び加熱回路を含むフィルム部と、射出成形工程によって製作された下部カバーとからなる、加熱及び発光機能の同時具現可能なレードーム構造を提供する。
【0021】
前記発光回路は、車両のエムブレム又は所定デザインのグリル状に沿って発光できるように発光及び伝導性インクからなることができる。
【0022】
前記加熱回路は、車両のエムブレム又は所定デザインのグリル状の外面に付く霜、雪又は氷を溶かすように発熱機能の伝導性インクからなることができる。
【0023】
前記下部カバーを貫通して前記発光回路又は加熱回路と接続するための導電性の端子部をさらに含むことができる。
【0024】
端子部と、発光回路又は加熱回路とは伝導性テープ又はリベットを介して電気的に連結されることができる。
【0025】
前記下部カバーの背面部にはエアベントが形成されることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は先行技術に比べて簡素化した工程を提供し、加熱及び発光機能を同時に発揮するレードーム構造及びその製造方法を提供する効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明のレードーム構造の全体分解斜視図である。
【
図2】本発明の上部カバーの構造を示す断面図である。
【
図3】(a)は本発明のフィルム部の構造を示す断面図である。(b)は本発明の下部カバーの構造を示す断面図である。
【
図4】本発明のフィルム部と下部カバーが結合された状態を示す断面図である。
【
図5】本発明の上部カバーと下部組立体が結合される状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の下部カバーの背面にエアベント熱融着を施行した状態を示す断面図である。
【
図9】本発明の工程によって完成されたレードーム構造の最終形態を示す図である。
【
図10】本発明の他の実施例による上部カバーの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明による各実施例は本発明の理解を助けるための一例に過ぎなく、本発明がこのような実施例に限定されるものではない。本発明は各実施例に含まれる個別構成及び個別機能の少なくともいずれか一つ以上の組合せから構成されることができる。
【0029】
本発明のレードーム構造1は代表的に適応走行制御センサーアセンブリーに用いられるが、これに限定されない。レードーム構造1は、周囲環境(水分及び霜)によるレーダーセンサーの性能低下を防止するだけでなく、デザイン目的のライティング機能を提供する。
【0030】
図1は本発明のレードーム構造1の全体分解斜視図である。“レードーム”は車両でレーダー、ライダー、レーザー又は超音波を発信し、反射波や音響を受信するセンサーを覆うカバー又は蓋を意味するものであり、最大限広義に解釈されなければならない。
【0031】
レードーム構造1は、上部の上部カバー2と、下部の下部カバー6と、その間に位置するフィルム部4とからなる。フィルム部4と下部カバー6には、例えば彫り上げで立体的に成形された“M”字形のエムブレムを具現するための第1エムブレム部4’と、これと同じ形状の第2エムブレム部6’が前方に、すなわち上部カバー2に向かって膨らむように形成される。下部カバー6とフィルム部4は、図示のように、ほぼ同じ形状を有し、素材が異なる点を考慮して、インサート成形工法で一体に製作される。上部カバー2とフィルム部4は、後述するように、それぞれが多層複合構造であるが、下部カバー6は単一素材から一回の工程で成形される。
【0032】
図2を参照して本発明の上部カバー2の構造及び製造工程について説明する。図面で上部が車両の外部に向かう面である。
【0033】
まず、射出成形工程によって上部カバー2のベース20を完成する。ベース20は上部カバー2の大部分を占める。ベース20の材料は、PC、PMMA(アクリル)、ABS、AESなどを含む成形可能な全てのプラスチック樹脂を含む。ベース20は基本的に下部カバー6の形状及び構造とマッチするように形成され、よって図示しない背面がエムブレムを収容するように全体的に立体的に製作される。
【0034】
ついで、ベース20の下面である第1面、すなわち下部カバー6に向かう面にコーティング層22を形成する。コーティング工程は、施工時間を縮め、完全硬化を待つ必要がなく、耐久性と環境に優しいUVコーティングが好ましい。
【0035】
ついで、美麗な色相の具現のために、塗料を用いて塗装作業を実施して塗装層26を形成する。塗装層26はレーザー、超音波が透過する透過性材料から製作され、エムブレム、すなわちデザイン部分を除いた部分に形成される。必要な場合、上部カバーの背面に塗装作業を実施した後、必要な部分を除いた部位に対してレーザーエッチング工程も可能である。
【0036】
最後に、ベース20の上面である第2面に表面保護のためのハードコーティング層28を形成する。コーティング工程は、施工時間を縮め、完全硬化を待つ必要がなく、耐久性と環境に優しいUVコーティングが好ましい。他の例として、インサート成形工程によっても具現可能である。ハードコーティング層28を形成するために、出願人の韓国特許第10-1856441号に開示されたもののように金型装置を用いることができる。
【0037】
本発明の上部カバー2の基本的な構造は最初に射出成形されたベース20によって決定され、上述した層はベース20の形状に沿ってその表面に形成されることに気を付けなければならない。
【0038】
図3を参照して本発明のフィルム部4及び下部カバー6の構造及び製造工程について説明する。図面で上部が車両の外部に向かう面である。
【0039】
図3(a)で、フィルム部4は、フィルム40、インジウム蒸着層40a、発光(ライティング)回路42、保護コーティング層44、加熱(ヒーティング)回路46及び保護層48の順に整列される複合層構造を有する。上部カバー2とフィルム部4の形状がマッチすることを示すように、
図2の上部カバー2の背面2aとフィルム部4の前面4a’が接合されてぴったり合うように示されていることに気を付けなければならない。
【0040】
フィルム40は、PET、PC、PMMA(アクリル)、ABS、AESなどを含む成形可能ないずれのプラスチック樹脂でも製作することができるが、高温に耐える耐熱性を有するものが良い。フィルム40を含む複合層の素材はフォーミング(forming)作業に耐えることができる十分な強度及び靭性を有するものから選択される。
【0041】
ついで、フィルム上に蒸着工程によって蒸着層40aを形成する。蒸着層は、例えばインジウム(In)、アルミニウム又はニッケルなどの金属から形成される。蒸着層40aは、フィルム部4にエムブレムに対応する、例えばデザインを形成する場合に有用である。
【0042】
発光回路42は伝導性電極層の間に蛍光体が塗布されている構造であり、両電極の間に特定の電圧を印加することにより、蛍光体の色相によって多様な光を発し、この全ての工程はスクリーン印刷で具現可能である。発光回路42は、車両のエムブレム又は所定デザインのグリル状に沿って発光できるように発光及び伝導性インクからなる。発光回路パターンは第1エムブレム部4’の縁部に沿って配置されるか又は第1エムブレム部4’の領域内に密接に配置されることにより、電源が印加されときにエムブレムの形状を表示するようにする。また、これと同時に、発光回路42は下部カバー6の外周に沿って発光するように配置されることができる。一般に、伝導性インクを印刷して導線を形成することはエッチング工程に比べて多くの利点を有するが、電気伝導度が低いという欠点があると知られている。しかし、本発明の発光回路42は、微細な電流の流れの断続が重要なマイクロ素子とは違い、エムブレムの形状に沿って連続的な感じを与えるように伝導して発光すれば十分なので、パターン印刷方式が適切である。発光色は多様に具現されることができる。
【0043】
保護コーティング層44は、その上下の発光回路42及び加熱回路46を保護するとともに回路間の接触による漏電を防止するために、非伝導性の樹脂から製作される。
【0044】
加熱回路46は電気を伝導する伝導性インクを使って発熱効果を出し、電気伝導性のスクリーン印刷が可能な伝導性インクはいずれも使用可能である。加熱回路46は、車両のエムブレム又は所定デザインのグリル状の外面に付く霜、雪又は氷を溶かすように、発熱機能の伝導性インクからなる。
【0045】
ついで、保護層48はフィルムと印刷層を保護するための層であり、下部カバー6の射出時に発生するフィルム及び印刷層のダメージを最小化するようにコーティングされる。
【0046】
このように製作されたフィルム部4は一般的に平たい構造を有するので、第1エムブレム部4’を含めて立体形状になるように、フィルム部4全体を3次元形状にフォーミング(forming)した後、切断する。具体的に、フィルム部4を熱成形、真空成形又は高圧成形で所定の立体形状にフォーミングし、製品形状に合うように、フォーミングされたフィルムを切断する段階を経る。
図3はフォーミング及び切断工程を経たフィルム部4を示すものである。
【0047】
図3(b)で、下部カバー6はフィルム部4の最終形状、すなわちフォーミング及び切断された形状に合わせて射出成形でいっぺんに製作され、後続層は塗布されない。よって、後続工程は必要ではない。下部カバー6の素材は、PET、PC、PMMA(アクリル)、ABS、AESなどを含む成形可能ないずれのプラスチック樹脂でも製作することができる。
【0048】
図3(b)に示すように、下部カバー6を射出成形するとき、その背面から貫通するようにエアベントホール80を形成することができる。
【0049】
本発明で、以上で記述した上部カバー2、フィルム部4及び下部カバー6は、下部カバー6とフィルム部4を先に成形し、上部カバー2とボンディングする工程によって一体に製作することができる。
【0050】
この場合、下部カバー6は、フィルム部4をモールドにインサートした後、下部カバー6を成す樹脂を注入するインサート射出工程で成形する。すなわち、下部カバー6はインサート射出工程でフィルム部4と一体に成形される。3次元フォーミングされたフィルム部4の形状と下部カバー6の形状が一致するから、同じ形状のモールドを使う点で便利である。この工程で第2エムブレム部6’も下部カバー6に形成される。このように形成された下部組立体100がエアベントホール80を含んでいるものが
図4の断面図に示されている。
【0051】
その後、
図5に示すように、上部カバー2と、一体に製作されたフィルム部4及び下部カバー6からなる下部組立体100とをボンディングして結合する。上部カバー2と下部組立体100の対向面の凹凸部は互いに相応するように形成されるので、ボンディングによって間隙なしに互いに緊密に接着される。ボンディング5aは、1次製品の縁部にポリウレタンホットメルトを塗布する。また、両部材の隙間を最小化するために、内側5bの領域に瞬間接着剤を塗布する。そして、両部材が圧着されれば強くボンディングされて走行制御センサーカバー1が出来上がる。
【0052】
図6は本発明の他の実施例を示すものであり、下部カバー6の背面部にエアベントが形成されたものを示す。エアベントは熱融着工法によってエアベントホール80を覆うように形成される。エアベントは、上部カバー2と下部カバー6のボンディング結合の際に発生するガスの除去と外部湿気浸透の防止の機能を果たす。
【0053】
一方、以上とは違い、本発明は、上部カバー2、フィルム部4及び下部カバー6を二重射出成形工程で製作することができる。
【0054】
図7は二重射出成形工程を示している。発熱及び発光の機能を有するフィルム部4を所望の形状にフォーミング及び切断し、金型内に挿入した後、1次に上部カバー2を射出する。下部カバー用モールドに端子部70をインサートし、上部カバー2及びフィルム部4が装着された金型を回転させて下部カバー用モールドに位置させた後、プラスチック樹脂を注入して下部カバー6及び端子部70を2次に射出成形することで、上部カバー2、フィルム部4及び下部カバー6を一体に製作する。
【0055】
フィルム部4の発光回路42と加熱回路46の端部は端子部70と連結され、この端子部70はレーダーセンサーの機能を制御するメインボードと電気的に連結され、レーダーセンサーの制御部の制御によってオン/オフに転換される。すなわち、
図8(a)に示すように、端子部70とフィルム部4の連結は、伝導性テープ71を介しての間接連結、又は
図8(b)に示すように、リベット72を用いた直接連結など、電源の印加が可能な全ての方法で連結することができる。制御部は、現在の時間、気温などの周辺状況とレーダーなどの透過体の透過程度を感知して電源をオン/オフする。
【0056】
図9(a)は本発明の加熱及び発光の機能を同時に具現したレードーム構造1の最終断面を示している。レードーム構造1は、普段には、
図9(b)に示すように、電源がオフされた状態で固有のカバー及びレーダー透過の機能を果たすが、電源が供給されれば、
図9(c)に示すように、エムブレムの周囲と下部カバー6又は上部カバー2の内側縁部に沿って発光するとともにエムブレムの全区域にわたって加熱機能を果たすことによって霜や氷を除去する。
【0057】
図10は本発明の上部カバー2の他の実施例を示すものであり、上部カバー2のベース90に前面ハードコーティング層91、上部カバー背面UVコーティング層92、エムブレム部部分蒸着層93及び部分蒸着層を除いた部分塗装層94の順に整列される複合層構造を有することができる。
【0058】
以上で本発明の実施例を説明したが、これは本発明を限定しないものであり、本発明の多様な変形及び修正が可能である。例えば、ライティング部は車両のエムブレムではなくて所定デザインのグリルに沿って設けられることができる。本発明の権利範囲は以下で記述する請求範囲と同一乃至均等な範囲まで及ぶというのは自明である。
【符号の説明】
【0059】
1 レードーム構造
2 上部カバー
4 フィルム部
4’ 第1エムブレム部
6 下部カバー
6’ 第2エムブレム部
20 ベース
22 コーティング層
26 塗装層
28 ハードコーティング層
40 フィルム
40a インジウム蒸着層
42 発光回路
44 保護コーティング層
46 加熱回路
48 保護層
70 端子部
80 エアベントホール
90 ベース
91 前面ハードコーティング層
92 上部カバー背面UVコーティング層
93 エムブレム部部分蒸着層
94 部分塗装層
100 下部組立体
【要約】
【課題】車両用レーダー装置に加熱、つまりヒーティングと発光、つまりライティング機能をさらに付与することができる車両用レードーム構造、及びこの構造を迅速で正確に製作することができる、加熱及び発光機能の同時具現可能なレードーム構造の製作方法と、この製造方法によって製作される車両のレードーム構造を提供する。
【解決手段】この方法は、発光のための発光回路と加熱のための加熱回路をフィルム上に積層印刷したフィルム部を3次元形状にフォーミング及び切断し、上部カバーと下部カバーとの間にフィルム部が位置するようにボンディング又は射出成形工程で上部カバー、フィルム部及び下部カバーを一体に製作する。
【選択図】
図1