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特許7075543均一Ni触媒作用によるフルオロアルキル化1,4-ジオキセンを調製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】均一Ni触媒作用によるフルオロアルキル化1,4-ジオキセンを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 319/12 20060101AFI20220518BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220518BHJP
【FI】
C07D319/12
C07B61/00 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021547421
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2020054546
(87)【国際公開番号】W WO2020169770
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】62/807,911
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19158339.2
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19172869.0
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520346882
【氏名又は名称】アークサーダ・アー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テシュラー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ベルサー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】エリンガー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】サラゴサ・デールバルト,フロレンシオ
(72)【発明者】
【氏名】ベラー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ノイマン,ヘルフリート
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シャオク
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-220020(JP,A)
【文献】特公昭48-43118(JP,B1)
【文献】Journal of Heterocyclic Chemistry,2000年,Vol.37,p.1003-1008
【文献】ORGANOMETALLICS,2014年,Vol.33,p.2012-2018
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 319/12
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基の存在下でNi触媒を使用する均一触媒作用により、1,4-ジオキサンをハロゲ ン化フルオロアルキルと反応させることによって、フルオロアルキル化1,4-ジオキンを調製するための方法であって、
前記Ni触媒が、Ni-cat1又はNi-cat2であり、
Ni-cat1が、ニッケル塩リガンドとの組合せであり、
前記ニッケル塩が、NiCl又はNi(NOであり、
前記リガンドが、式(DPEPhos)の化合物、式(dppb)の化合物及びPhPからなる群から選択され、
【化1】
Ni-cat2が、式(Ni-cat2)の化合物であり、
【化2】
前記塩基が、CsCO、CsHCO、NaCO、KPO、NaH及びNaOtBuからなる群から選択され、
前記ハロゲン化フルオロアルキルが、式(FAHALIDE)の化合物であり、
X2-R3-X1 (FAHALIDE)
R3が、C1-20アルキレンであり、アルキレン鎖において少なくとも1個の水素がFによって置換されており、
X1が、Br又はIであり、
X2が、Br又はHである
方法。
【請求項8】
反応が、無溶媒で、又は溶媒中で行われ、前記溶媒が、アルカン、塩素化アルカン、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ニトリル、脂肪族アミド、スルホキシド、C、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基の存在下での1,4-ジオキサンのハロゲン化フルオロアルキルを用いる均一Ni触媒フルオロアルキル化によるフルオロアルキル化1,4-ジオキンを調製するための方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
I.Hanna in Tetrahedron Letters、1999年、40、2521~2524頁は、フランが多くの天然物で見出すことができる重要な官能基であり、有機合成における中間体として頻繁に使用されてきたことを開示しており、1,4-ジオキンから出発するフランの合成を報告している。
【0003】
US3,592,825は、水素、水及びジエチレングリコールの混合物から、ある特定の触媒上での1,4-ジオキンの調製、並びに、ポリマーの調製における中間体としてのp-ジオキンの、例えば、潤滑油用増粘剤としての使用、及び、例えば、可塑剤、界面活性剤及び接着剤として有用な、環状アルデヒド及びアルコールを生成するための、オキソ化(oxonation)反応及びエポキシ化反応における使用を開示している。
【0004】
有機フッ素化学は、医薬、農業、及び材料の科学並びに分野において、重要な役割を果たしている。フルオロアルキル基は、高い安定性及び親油性などの強い効果を有し、加えて、より長鎖のフルオロアルキル基は、高い耐水性及び耐油性並びに低い摩擦を有する。
【0005】
直接的C-Hフルオロアルキル化による、フルオロアルキル化1,4-ジオキンを調製するための方法が必要であった。
【0006】
予想外に、均一Ni触媒作用による反応が、基材として1,4-ジオキサンを使用する、これらの要件を満たすことが見出された。ジアルキル化生成物は、観察されない。
【0007】
略語
本明細書では、特に記載がない限り、以下の意味が使用される。
アルキル 直鎖又は分岐アルキル、好ましくは直鎖アルキル
DME 1,2-ジメトキシエタン
1,4-ジオキサン CAS123-91-1、式(1)の化合物
【0008】
【化1】
1,4-ジオキン CAS543-75-9、式(2)の化合物
【0009】
【化2】
dppb 1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、式(dppb)の化合物
【0010】
【化3】
dppf 1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、式(4)の化合物
【0011】
【化4】
eq、equive 当量
ハロゲン F、Cl、Br又はI、好ましくはF、Cl又はBr、より好ましくはF又はCl
「直鎖」及び「n-」は、アルカンのそれぞれの異性体に関して同義的に使用される。
MTBE メチルtert-ブチルエーテル
Ni-cat2 (dppf)Ni(o-tol)Cl
PfP-H 1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン
PhB-酸 フェニルボロン酸、式(5)の化合物
【0012】
【化5】
PhP トリフェニルホスフィン
PMHS ポリメチルヒドロシロキサン
RT 室温、周囲温度という表現と同義的に使用される。
「wt%」、「重量%」及び「重量-%」は、同義的に使用され、重量パーセントを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第3,592,825号明細書
【非特許文献】
【0014】
【文献】I.Hanna in Tetrahedron Letters、1999年、40、2521~2524頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
本発明の主題は、塩基BASの存在下でNi触媒NICATを使用する均一触媒作用により、1,4-ジオキサンをハロゲン化フルオロアルキルFAHALIDEと反応させることによって、フルオロアルキル化1,4-ジオキンを調製するための方法であって、NICATが、Ni-cat1又はNi-cat2であり、
Ni-cat1が、ニッケル塩NISALTとリガンドLIGとの組合せであり、
NISALTが、NiCl又はNi(NOであり、
LIGが、式(DPEPhos)の化合物、式(dppb)の化合物及びPhPからなる群から選択され、
【0016】
【化6】
Ni-cat2が、式(Ni-cat2)の化合物であり、
【0017】
【化7】
BASが、CsCO、CsHCO、NaCO、KPO、NaH及びNaOtBuからなる群から選択され、
FAHALIDEが、式(FAHALIDE)の化合物であり、
X2-R3-X1 (FAHALIDE)
R3が、C1-20アルキレンであり、アルキレン鎖において少なくとも1個の水素がFによって置換されており、
X1が、Br又はIであり、
X2が、Br又はHである、
方法である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好ましくは、LIGがPhPである場合、NISALTはNi(NOである。
【0019】
好ましくは、LIGが式(dppb)の化合物である場合、NISALTはNiClである。
【0020】
好ましくは、Ni(NOは、その水和物Ni(NO6HOの形態で使用される。
【0021】
NiClは、それ自体として、又はNiCl(DME)として使用することができ、NiCl(DME)は、NiClと1,2-ジメトキシエタンとの1:1のモル比での混合物であり、
好ましくは、NiClは、それ自体として使用される。
【0022】
好ましくは、NISALTは、NiClであり、LIGは、式(dppb)の化合物である。
【0023】
好ましくは、BASは、CsCO、NaCO、KPO、NaH及びNaOtBuからなる群から選択され、
より好ましくは、BASは、CsCO、NaCO又はNaHである。
【0024】
好ましくは、R3はC1-15アルキレンであり、アルキレン鎖において少なくとも1個の水素はFによって置換されており、
より好ましくは、R3はC1-10アルキレンであり、アルキレン鎖において少なくとも1個の水素はFによって置換されている。
【0025】
特に、FAHALIDEは、ペルフルオロC1-20アルキル-X1、Br-(CFn3-Br、及びFHC-X1からなる群から選択され、
より特別には、FAHALIDEは、ペルフルオロC1-15アルキル-X1、Br-(CFn3-Br又はFHC-X1からなる群から選択され、
さらにより特別には、FAHALIDEは、ペルフルオロC1-10アルキル-X1、Br-(CFn3-Br又はFHC-X1からなる群から選択され、
n3は、2~10の整数であり、
好ましくは、n3は、2、3、4、5、6であり、
より好ましくは、n3は、2、4又は6であり、
さらにより好ましくは、n3は、4である。
【0026】
格別には、FAHALIDEは、F2110-I、F2110-Br、F17-I、F17-Br、F13-I、F13-Br、F-I、F-Br、F-I、F-Br、FC-I、FC-Br、Br-(CF-Br、FHC-I、及びFHC-Brからなる群から選択され、
より格別には、FAHALIDEは、F2110-I、F17-I、F13-I、F-I、F-I、及びFC-Iからなる群から選択され、
さらにより格別には、FAHALIDEは、F2110-I、F17-I、F-I、F-I、及びFC-Iからなる群から選択される。
【0027】
特に、FAHALIDEは、F2110-Iである。
【0028】
一実施形態では、
X1はIであり、
X2はHである。
【0029】
一実施形態では、
R3は、ペルフルオロアルキレンである。
【0030】
別の実施形態では、R3は、ペルフルオロC1-20アルキルであり、
好ましくは、R3はペルフルオロC1-15アルキルであり、
より好ましくは、R3はペルフルオロC1-10アルキルである。
【0031】
好ましくは、0.1~20mol%、より好ましくは0.5~15mol%、さらにより好ましくは1~10mol%、特に2~7.5mol%、より特別には3~6mol%、さらにより特別には4~5.5mol%のNICATが反応で使用され、mol%はFAHALIDEのモル量に基づく。
【0032】
好ましくは、0.1~20mol%、より好ましくは0.5~15mol%、さらにより好ましくは1~12.5mol%、特に2~10mol%、より特別には3~7.5mol%、さらにより特別には4~5.5mol%のLIGが反応で使用され、mol%はFAHALIDEのモル量に基づく。
【0033】
周囲温度でFAHALIDEがガス状の形態である場合、好ましくは、FAHALIDEは、周囲温度で1~20bar、より好ましくは1~15bar、さらにより好ましくは1~10bar、特に2~10bar、より特別には3~8bar、さらにより特別には4~8barの圧力に相当する量で、反応で使用される。
【0034】
好ましくは、1~20モル当量、より好ましくは1~15モル当量、さらにより好ましくは1~10モル当量、特に1~7.5モル当量、より特別には1.5~5モル当量、さらにより特別には2~4モル当量の1,4-ジオキサンが反応で使用され、モル当量はFAHALIDEのモル量に基づく。
【0035】
好ましくは、0.1~10モル当量、より好ましくは0.5~7.5モル当量、さらにより好ましくは1~5モル当量、特に1~4モル当量、より特別には1~3モル当量のBASが反応で使用され、モル当量はFAHALIDEのモル量に基づく。
【0036】
反応の反応温度は、好ましくは20~200℃、より好ましくは50~175℃、さらにより好ましくは60~150℃、特に70~140℃である。
【0037】
反応の反応時間は、好ましくは1~96時間、より好ましくは5~72時間、さらにより好ましくは7.5~48時間、特に10~24時間、より特別には12~20時間である。
【0038】
好ましくは、反応は不活性雰囲気下で行われる。好ましくは、不活性雰囲気は、好ましくはアルゴン、別の希ガス、低沸点アルカン、窒素からなる群から選択される不活性ガス、より好ましくは窒素の使用によって達成される。
【0039】
低沸点アルカンは、好ましくは、C1-3アルカン、すなわち、メタン、エタン又はプロパンである。
【0040】
反応は閉端系で行うことができ、閉端系の選択された温度で反応混合物によってもたらされる圧力にて、反応は実施され得る。前記不活性ガスで圧力を加えることも可能である。周囲圧力で反応を実行することも可能である。
【0041】
反応は、添加剤ADDの存在下で行うことができ、
ADDは、KI、ノルボルネン、Zn、ポリメチルヒドロシロキサン、及びフェニルボロン酸からなる群から選択され、
好ましくは、ADDはKI又はノルボルネンである。
【0042】
好ましくは、0.5~5当量、より好ましくは0.75~3当量のADDが反応で使用され、当量はFAHALIDEのモル量に基づく。
【0043】
反応は、無溶媒で又は溶媒SOL中で行うことができ、SOLは、好ましくはアルカン、塩素化アルカン、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ニトリル、脂肪族アミド、スルホキシド、C、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
好ましくは、SOLは、C5-8アルカン、塩素化C5-8アルカン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、MTBE、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル、バレロニトリル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、C、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
より好ましくは、SOLは、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、バレロニトリル、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、C、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
さらにより好ましくは、SOLは、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジメチルスルホキシド、C、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
特に、SOLはCである。
【0044】
1,4-ジオキサン及び/又はFAHALIDEを、溶媒として同時に使用することも可能であり、反応が無溶媒で行われることを意味する。
【0045】
好ましくは、反応は、無溶媒で、又はSOLとしてのC中で行われる。
【0046】
SOLの量は、好ましくは、FAHALIDEの重量の0.1~100倍、より好ましくは1~50倍、さらにより好ましくは1~25倍、特に1~12.5倍、より特別には1~10倍、さらにより特別には3~10倍である。
【0047】
反応の後、フルオロアルキル化1,4-ジオキンは、それ自体当業者に公知である標準的な方法、例えば、揮発性成分の蒸発、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、クロマトグラフィー及びこれらの任意の組合せによって単離され得る。
【実施例
【0048】
略語:
Conv 1,4-ジオキサンに関するmol%での転化率
Sel 1,4-ジオキサンに関するmol%での選択率
Ex 実施例
Proc (一般的な)手順
T 反応温度
t 反応時間
【0049】
一般的な手順1:Ni塩
1,4-ジオキサン、FAHALIDE、NICAT、LIG、BAS、ADDの混合物(すべての当量及び量は、実験の表に規定されている)を、肉厚の圧力管(Ace圧力管、Sigma-Adrich Art.Nr.Z564575)に入れた。圧力管中のガス雰囲気を窒素でフラッシュし、管をねじ蓋で密閉し、加熱した(反応温度及び反応時間は表3に指定されている。)。得られた混合物を室温に冷却し、ジクロロメタン(4ml)で希釈した。固形物は、遠心分離(3000rpm、15分)によって除去した。得られた生成物溶液を、定量GC分析(内部標準ヘキサデカン)、内部標準の1,2-ジフルオロベンゼン若しくは1,4-ジフルオロベンゼンを使用する19F-NMR分析、又はGC-MSによって分析した。
【0050】
生成物の単離は、長鎖ペルフルオロアルキル鎖(10個以上の炭素原子を含有するアルキル鎖)に対して、Fluoro Flash(登録商標)逆相シリカゲル(Sigma Aldrich No.:00866)及び勾配溶媒溶離(gradient solvent elution)(1.MeOH:HO(4:1、10mL) 2.MeOH(100%、10mL) 3.アセトン(100%、10mL))を使用するピペットカラムクロマトグラフィーによって、又は、10個未満の炭素原子を含有するペルフルオロアルキル鎖に対して、シリカゲル(Sigma Aldrich No.:236802)及び勾配溶媒溶離(1.ペンタンエーテル(100%) 2.ペンタン:ジエチルエーテル(50%:50%、10ml))を使用する順相シリカゲルクロマトグラフィーによって、行った。
【0051】
「Ni-cat2の予備形成(preformation)」手順
Ni-cat2の予備形成は、Standley,E.A.ら、A Broadly Applicable Strategy for Entry into Homogeneous Nickel(0) Catalysts from Air-Stable Nickel(II) Complexes、Organometallics 2014、33、2012によって行った。
【0052】
NiCl・6HO(8.5mmol、2.02g)及びEtOH(25mL)を、アルゴンでフラッシュした、セプタム及び還流冷却器を装備した丸底フラスコ(Schlenk-flask)に入れた。次に、dppf(8.5mmol、4.712g)を添加し、得られた反応混合物を、(温度約80℃で)30分間還流し、その後0℃に10分間冷却した。そのように形成された固形物をろ過によって収集し、EtOH(10mLで2回)及びジエチルエーテル(10mLで2回)により2度洗浄した。真空下(約20mbar、室温)で固形物を乾燥させた後、85%の収率に相当する、4.98gの中間体Ni-int1、(dppf)NiClを濃緑色粉末として得た。
【0053】
このNi-int1(6.81mmol、4.658g)及び180mLのCHClを、アルゴンでフラッシュした丸底フラスコに入れた。得られた溶液を0℃に冷却し、次にo-トリルマグネシウム塩化物(6.81mmol、THF中0.945M、7.21mL)を激しく撹拌しながら滴下した。添加終了近くに、溶液の色は緑色からオレンジ色に変わった。添加後、この溶液を0℃でさらに15分間撹拌し、次に、室温、真空下で溶媒を蒸発させた。次に25mlのMeOHを添加し、反応混合物を室温で5分間撹拌した。この混合物を0℃に冷却した後、固形物をろ過によって収集し、残留物をMeOHで洗浄し(5mlで2回)、室温、真空下(約5mbar)で乾燥し、92%の収率に相当する、4.63gのNi-cat2、(dppf)Ni(o-tol)Clを細かい鮮黄色粉末として得た。
H NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ = 8.23 - 8.12 (m, 4H), 8.02 - 7.93 (m, 2H), 7.51 - 7.38 (m, 7H), 7.27 (td, J = 8.3, 2.0 Hz, 2H), 7.21 - 7.15 (m, 1H), 6.99 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 6.76 (td, J = 8.2, 2.6 Hz, 2H), 6.66 - 6.54 (t, 2H), 6.43 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 6.30 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 6.10 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 5.15 (s, 1H), 4.54 (m, 1H), 4.25 (s, 1H), 4.19 (s, 1H), 4.02 (d, J = 10.1 Hz, 2H), 3.52 (m, 1H), 3.33 (m, 1H), 2.44 (s, 3H).
31P NMR (162 MHz, CDCl): δ = 29.51 (d, J = 25.9 Hz, 1P), 12.12 (d, J = 25.9 Hz, 1P).
【0054】
一般的な手順2:予備形成Ni-cat2を使用するフルオロアルキル化
FAHALIDE(1当量、0.2mmol)、Ni-cat2(5mol%、0.01mmol、7.40mg、手順「Ni-cat2の予備形成」によって調製)、1,4-ジオキサン(10当量、2mmol)、及びBASの混合物を、肉厚のAce圧力管(Sigma-Aldrich Art.Nr.Z564575)に入れた。圧力管中のガス雰囲気を窒素でフラッシュし、管をねじ蓋で密閉し、表に規定された反応時間の間反応温度で加熱した。得られた反応混合物を室温に冷却し、ジクロロメタン(4ml)で希釈した。固形物を、遠心分離(3000rpm、15分)によって除去した。得られた生成物溶液を、内部標準として1,4-ジフルオロベンゼン又は1,2-ジフルオロベンゼンを使用する定量19F-NMR分析、内部標準としてヘキサデカンを使用する定量GC分析、又はGC-MSによって分析した。
【0055】
生成物の単離は、長鎖ペルフルオロアルキル鎖(10個以上の炭素原子を含有するアルキル鎖)に対して、FluoroFlash(登録商標)逆相シリカゲル(Sigma Aldrich No.:00866)及び勾配溶媒溶離(1.MeOH:HO(4:1、10mL) 2.MeOH(100%、10mL) 3.アセトン(100%、10mL))を使用するピペットカラムクロマトグラフィーによって、又は、10個未満の炭素原子を含有するペルフルオロアルキル鎖に対して、シリカゲル(Sigma Aldrich No.:236802)及び勾配溶媒溶離(1.ペンタンエーテル(100%) 2.ペンタン:ジエチルエーテル(50%:50%、10ml))を使用する順相シリカゲルクロマトグラフィーによって、行った。
【0056】
実施例の詳細は、表1、2及び3に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】