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特許7075544均一Ni触媒作用によるフルオロアルキル化化合物を調製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】均一Ni触媒作用によるフルオロアルキル化化合物を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 209/68 20060101AFI20220518BHJP
   C07C 211/52 20060101ALI20220518BHJP
   C07C 25/13 20060101ALI20220518BHJP
   C07C 17/269 20060101ALI20220518BHJP
   C07C 17/266 20060101ALI20220518BHJP
   C07C 22/04 20060101ALI20220518BHJP
   C07C 43/225 20060101ALI20220518BHJP
   C07C 41/30 20060101ALI20220518BHJP
   C07C 47/55 20060101ALI20220518BHJP
   C07C 45/61 20060101ALI20220518BHJP
   C07C 25/22 20060101ALI20220518BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20220518BHJP
   C07D 213/30 20060101ALI20220518BHJP
   C07D 213/26 20060101ALI20220518BHJP
   C07D 333/12 20060101ALI20220518BHJP
   C07D 233/64 20060101ALI20220518BHJP
   C07D 333/10 20060101ALI20220518BHJP
   C07D 207/323 20060101ALI20220518BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220518BHJP
【FI】
C07C209/68
C07C211/52
C07C25/13
C07C17/269
C07C17/266
C07C22/04
C07C43/225 A
C07C41/30
C07C47/55
C07C45/61
C07C25/22
C07C21/18
C07D213/30
C07D213/26
C07D333/12
C07D233/64 102
C07D333/10
C07D207/323
C07B61/00 300
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021547422
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 EP2020054542
(87)【国際公開番号】W WO2020169768
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】62/807,899
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19158332.7
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520346882
【氏名又は名称】アークサーダ・アー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テシュラー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】エリンガー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】サラゴサ・デールバルト,フロレンシオ
(72)【発明者】
【氏名】ベラー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ノイマン,ヘルフリート
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シャオク
(72)【発明者】
【氏名】ロッタ-ロリア,ニコラ
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】Org. Lett.,2011年,Vol.13, No.10,2548-2551
【文献】Organometallics,2014年,33,2012-2018
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 209/68
C07C 211/52
C07C 25/13
C07C 17/269
C07C 17/266
C07C 22/04
C07C 43/225
C07C 41/30
C07C 47/55
C07C 45/61
C07C 25/22
C07C 21/18
C07D 213/30
C07D 213/26
C07D 333/12
C07D 233/64
C07D 333/10
C07D 207/323
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基BASの存在下でNi触媒NICATを使用する均一触媒作用により、化合物COMPSUBSTをハロゲン化フルオロアルキルFAHALIDEと反応させることによって、フルオロアルキル化化合物FACOMPSUBSTを調製するための方法であって、
NICATが、Ni-cat1又はNi-cat2であり、
Ni-cat1が、ニッケル塩NISALTとリガンドLIGとの組合せであり、
NISALTが、NiCl又はNi(NOであり、
LIGが、式(DPEPhos)の化合物、式(dppb)の化合物及びPhPからなる群から選択され、
【化1】
Ni-cat2が、式(Ni-cat2)の化合物であり、
【化2】
BASが、CsCO、CsHCO、KPO、NaH及びNaOtBuからなる群から選択され、
FAHALIDEが、式(FAHALIDE)の化合物であり、
X2-R3-X1 (FAHALIDE)
R3が、C1-20アルキレンであり、アルキレン鎖において少なくとも1個の水素はFによって置換されており、
X1が、Br又はIであり、
X2が、Br又はHであり、
COMPSUBSTが、化合物COMPSUBST-I、エテン、シクロヘキセン、エチン及びポリスチレンからなる群から選択され、
エテン及びシクロヘキセンが、非置換である、又は、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【化3】
、ベンジル、フェニル、ナフチル及びモルホリンからなる群から選択される、1、2若しくは3個の置換基によって置換されており、
エチンが、非置換である、又は、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【化4】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択される1個の置換基によって置換されており、
COMPSUBST-Iが式(COMPSUBST-I)の化合物であり、
RINGA (COMPSUBST-I)
RINGAが、芳香族5員又は6員の炭素環又は複素環であり、
RINGAが複素環である場合、RINGAが、互いに独立して、N、O及びSからなる群から選択される、1、2又は3個の同一であり若しくは異なる環内ヘテロ原子を有し、
RINGAが5員環である場合、RINGAが、非置換である、又は1、2、3若しくは4個の同一であり若しくは異なる置換基によって置換されており、
RINGAが6員環である場合、RINGAが、非置換である、又は、1、2、3、4若しくは5個の同一であり若しくは異なる置換基によって置換されており、
RINGAの置換基がいずれも、RINGAのいかなる他の置換基からも独立して、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、OH、N(R10)R11、CN、NH-OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【化5】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択され、
RINGAが、環RINGBと縮合され得、RINGBが5員又は6員の炭素環又は複素環であり、
RINGBが複素環である場合、互いに独立して、N、O及びSからなる群から選択される、1、2又は3個の同一であり若しくは異なる環内ヘテロ原子を含有し、
RINGBが5員環である場合、RINGBが、非置換である、又は1、2若しくは3個の同一であり若しくは異なる置換基によって置換されており、
RINGBが6員環である場合、RINGBが、非置換である、又は、1、2、3若しくは4個の同一であり若しくは異なる置換基によって置換されており、
RINGBの置換基がいずれも、RINGBのいかなる他の置換基からも独立して、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、OH、N(R17)R18、CN、NH-OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH)n-C(O)Y2、S(O)R51、CH=C(H)R38、
【化6】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択され、
RINGA又はRINGBのC1-10アルキル置換基がいずれも、非置換である、又は、ハロゲン、OH、O-C(O)-C1-5アルキル、O-C1-10アルキル、S-C1-10アルキル、S(O)-C1-10アルキル、S(O)-C1-10アルキル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル及び1,2,4-トリアゾリルからなる群から選択される1、2、3、4若しくは5個の同一であり若しくは異なる置換基で置換されており、
RINGA又はRINGBのベンジル、フェニル及びナフチル置換基のいずれも、互いに独立して、非置換である、又は、ハロゲン、C1-4アルコキシ、NO及びCNからなる群から選択される、1、2、3、4又若しくは5個の同一であり若しくは異なる置換基で置換されており、
m及びnが、同一であり又は異なり、互いに独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり、
Y1及びY2が、同一であり又は異なり、互いに独立して、H、OH、C(R14)(R15)R16、C1-6アルキル、O-C1-6アルキル、フェニル、ベンジル、O-フェニル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル及びN(R19)R20からなる群から選択され、
R14、R15及びR16が、同一であり又は異なり、互いに独立して、H、F、Cl及びBrからなる群から選択され、
R10、R11、R17、R18、R19及びR20が、同一であり若しくは異なり、互いに独立してH若しくはC1-6アルキルである、又は、R10及びR11、R17及びR18、若しくはR19及びR20が、一緒になってテトラメチレン鎖若しくはペンタメチレン鎖を表し、
R50及びR51が、同一であり又は異なり、互いに独立して、OH、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシからなる群から選択され、
R24、R34、R28及びR38が、同一であり又は異なり、互いに独立して、H、C1-10アルキル、C(R25)(R26)-O-R27からなる群から選択され、
R25、R26及びR27が、同一であり又は異なり、互いに独立して、H及びC1-10アルキルからなる群から選択される、
方法。
【請求項2】
LIGが、式(DPEPhos)の化合物又はPhPである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
BASが、CsCO、KPO、NaH及びNaOtBuからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
COMPSUBSTが、化合物COMPSUBST-I、エテン、シクロヘキセン、エチン、及びポリスチレンからなる群から選択され、
エテン及びシクロヘキセンが非置換である、又は、C1-10アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、ベンジル、フェニル、ナフチル及びモルホリンからなる群から選択される、1若しくは2個の置換基によって置換されており、
エチンが非置換である、又は、C1-10アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択される、1個の置換基によって置換されており、
COMPSUBST-Iが、
【化7】
からなる群から選択され、
COMPSUBST-Iが、非置換である、又は、
COMPSUBST-Iが5個の環内原子を有する単環式化合物である場合、1、2、3若しくは4個の、
COMPSUBST-Iが6個の環内原子を有する単環式化合物である場合、1、2、3、4若しくは5個の、
COMPSUBST-Iが5員環と6員環がオルト縮合した二環式化合物である場合、1、2、3、4、5若しくは6個の、
COMPSUBST-Iが2個の6員環がオルト縮合した二環式化合物である場合、1、2、3、4、5、6若しくは7個の、
互いに独立して、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、OH、C(H)=O、N(R10)R11、CN、NH-OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【化8】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択される、同一であり若しくは異なる置換基によって置換されており、
COMPSUBST-IのC1-10アルキル置換基が、非置換である、又は、ハロゲン、OH、O-C(O)-C1-5アルキル、O-C1-10アルキル、S-C1-10アルキル、S(O)-C1-10アルキル、S(O)-C1-10アルキル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル及び1,2,4-トリアゾリルからなる群から選択される、1、2、3、4又は5個の、同一であり若しくは異なる置換基で置換されており、
COMPSUBST-Iのベンジル、フェニル及びナフチル置換基が、互いに独立して、非置換である、又は、ハロゲン、C1-4アルコキシ、NO及びCNからなる群から選択される、1、2、3、4若しくは5個の同一であり若しくは異なる置換基で置換されており、
R10、R11、m、Y1、R28、R50、R24及びハロゲンが、請求項1に定義される通りである、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
COMPSUBST-Iが非置換である、又は、
COMPSUBST-Iが5個の環内原子を有する単環式化合物である場合、1、2又は3個の、
COMPSUBST-Iが6個の環内原子を有する単環式化合物である場合、1、2、3、4又は5個の、
COMPSUBST-Iが、5員環及び6員環がオルト縮合した二環式化合物である場合、1、2、3又は4個の、
COMPSUBST-Iが、2個の6員環がオルト縮合した二環式化合物である場合、1、2、3、4又は5個の、
互いに独立して、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、OH、C(H)=O、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、CF、(CH-C(O)Y1、及びS(O)R50からなる群から選択される、同一であり若しくは異なる置換基によって置換されており、
COMPSUBST-IのC1-4アルキル置換基が、非置換である、又は、ハロゲンからなる群から選択される、1、2若しくは3個の、同一であり若しくは異なる置換基で置換されており、
R10、R11、m、Y1、R50及びハロゲンが、請求項1に定義される通りである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
COMPSUBSTが、
【化9】
、エテン、シクロヘキセン、エチン、及びポリスチレンからなる群から選択され、
Yが、C1-6アルキルであり、
エテン及びシクロヘキセンが、非置換である、又は、C1-10アルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、ベンジル、フェニル及びモルホリンからなる群から選択される、1若しくは2個の置換基によって置換されており、
エチンが、非置換である、又は、C1-10アルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、ベンジル及びフェニルからなる群から選択される、1個の置換基によって置換されており、
R10、R11、m及びY1が、請求項1に定義される通りである、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
FAHALIDEが、ペルフルオロC1-20アルキル-X1、Br-(CFn3-Br、及びFHC-X1からなる群から選択され、
n3が2~10の整数である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
n3が、2、3、4、5又は6である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
FAHALIDEが、F2110-I、F2110-Br、F17-I、F17-Br、F13-I、F13-Br、F-I、F-Br、F-I、F-Br、FC-I、FC-Br、Br-(CF-Br、FHC-I、及びFHC-Brからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
反応が、添加剤ADDの存在下で行われ、
ADDが、Zn、ポリメチルヒドロシロキサン、及びフェニルボロン酸からなる群から選択される、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
反応が、乾燥剤DRYAGの存在下で行われ、
DRYAGが、分子ふるい及びNaSOからなる群から選択される、
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
反応が、無溶媒で、又は溶媒SOL中で行われ、SOLが、アルカン、塩素化アルカン、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ニトリル、脂肪族アミド、スルホキシド、C、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基の存在下でのハロゲン化フルオロアルキルを用いる均一Ni触媒フルオロアルキル化による、フルオロアルキル化化合物を調製するための方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
有機フッ素化学は、医薬、農業、及び材料の科学並びに分野において、重要な役割を果たしている。フルオロアルキル基は、高い安定性及び親油性などの強い効果を有し、加えて、より長鎖のフルオロアルキル基は、高い耐水性及び耐油性並びに低い摩擦を有する。
【0003】
Loy,R.N.ら、Organic Letters 2011年、13、2548~2551頁は、26%のGC収率でのCF-IとベンゼンとのPd触媒カップリングを開示している。
【0004】
表1の項目(entry)10によれば、C13Iのカップリングは81%の収率を提供した。
【0005】
しかしヨウ化物の代わりに臭化物を用いてこの実験を繰り返すと、1%未満の収率を提供し、本明細書の比較例を参照されたい。
【0006】
高収率を提供するが、配向基又は電子豊富な芳香族化合物の補助を必要としない、直接的C-Hフルオロメチル化によるフルオロアルキル化化合物を調製するための、均一な触媒方法の必要性が存在した。この方法は多種多様な基材に適用できるべきであり、多種多様な官能基と適合性があるべきである。さらに、この方法は、アルキル化剤としてのヨウ化物のみに限定されるべきではなく、臭化物とでも作用するべきである。
【0007】
予想外に、これらの条件を満たす、均一Ni触媒作用を用いる反応が見出された。ジアルキル化生成物は、観察されない。フルオロアルキル化ハロゲン化物において、Hに対するハロゲン化物のわずかな交換のみが観察される。
【0008】
略語
本明細書では、特に記載がない限り、以下の意味が使用される。
アルキル 直鎖又は分岐アルキル、好ましくは直鎖アルキル
DME 1,2-ジメトキシエタン
dppb 1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、式(dppb)の化合物
【0009】
【化1】
dppf 1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、式(4)の化合物
【0010】
【化2】
eq、equiv 当量
ハロゲン F、Cl、Br又はI、好ましくはF、Cl又はBr、より好ましくはF又はCl
「直鎖」及び「n-」は、アルカンのそれぞれの異性体に関して同義的に使用される。
MTBE メチルtert-ブチルエーテル
Ni-cat2 (dppf)Ni(o-tol)Cl
PfP-H 1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン
PhB-酸 フェニルボロン酸、式(5)の化合物
【0011】
【化3】
PhP トリフェニルホスフィン
PMHS ポリメチルヒドロシロキサン
RT 室温、周囲温度という表現と同義的に使用される。
「wt%」、「重量%」及び「重量-%」は、同義的に使用され、重量パーセントを意味する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Loy,R.N.ら、Organic Letters 2011年、13、2548~2551頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明の主題は、塩基BASの存在下でNi触媒NICATを使用する均一触媒作用により、化合物COMPSUBSTをハロゲン化フルオロアルキルFAHALIDEと反応させることによって、フルオロアルキル化化合物FACOMPSUBSTを調製するための方法であって、
NICATが、Ni-cat1又はNi-cat2であり、
Ni-cat1が、ニッケル塩NISALTとリガンドLIGとの組合せであり、
NISALTが、NiCl又はNi(NOであり、
LIGが、式(DPEPhos)の化合物、式(dppb)の化合物及びPhPからなる群から選択され、
【0014】
【化4】
Ni-cat2が、式(Ni-cat2)の化合物であり、
【0015】
【化5】
【0016】
BASが、CsCO、CsHCO、KPO、NaH及びNaOtBuからなる群から選択され、
FAHALIDEが、式(FAHALIDE)の化合物であり、
X2-R3-X1 (FAHALIDE)
R3が、C1-20アルキレンであり、アルキレン鎖において少なくとも1個の水素がFによって置換されており、
X1が、Br又はIであり、
X2が、Br又はHであり、
COMPSUBSTが、化合物COMPSUBST-I、エテン、シクロヘキセン、エチン、及びポリスチレンからなる群から選択され、
エテン及びシクロヘキセンが、非置換である、又は、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【0017】
【化6】
、ベンジル、フェニル、ナフチル及びモルホリンからなる群から選択される、1、2若しくは3個の置換基によって置換されており、
エチンが、非置換である、又は、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【0018】
【化7】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択される1個の置換基によって置換されており、
COMPSUBST-Iが、式(COMPSUBST-I)の化合物であり、
RINGA (COMPSUBST-I)
RINGAが、芳香族5員又は6員の炭素環又は複素環であり、
RINGAが複素環である場合、RINGAが、互いに独立して、N、O及びSからなる群から選択される、1、2又は3個の同一であり若しくは異なる環内ヘテロ原子を有し、
RINGAが5員環である場合、RINGAが、非置換である、又は1、2、3若しくは4個の同一であり若しくは異なる置換基によって置換されており、
RINGAが6員環である場合、RINGAが、非置換である、又は、1、2、3、4若しくは5個の同一であり若しくは異なる置換基によって置換されており、
RINGAの前記置換基がいずれも、RINGAのいかなる他の前記置換基からも独立して、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、OH、N(R10)R11、CN、NH-OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【0019】
【化8】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択され、
RINGAが環RINGBと縮合され得、RINGBが5員又は6員の炭素環又は複素環であり、
RINGBが複素環である場合、互いに独立して、N、O及びSからなる群から選択される、1、2又は3個の同一であり若しくは異なる環内ヘテロ原子を含有し、
RINGBが5員環である場合、RINGBが、非置換である、又は1、2若しくは3個の同一であり若しくは異なる置換基によって置換されており、
RINGBが6員環である場合、RINGBが、非置換である、又は、1、2、3若しくは4個の同一であり若しくは異なる置換基によって置換されており、
RINGBの前記置換基がいずれも、RINGBのいかなる他の前記置換基からも独立して、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、OH、N(R17)R18、CN、NH-OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH)n-C(O)Y2、S(O)R51、CH=C(H)R38、
【0020】
【化9】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択され、
RINGA又はRINGBの前記C1-10アルキル置換基がいずれも、非置換である、又は、ハロゲン、OH、O-C(O)-C1-5アルキル、O-C1-10アルキル、S-C1-10アルキル、S(O)-C1-10アルキル、S(O)-C1-10アルキル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル及び1,2,4-トリアゾリルからなる群から選択される1、2、3、4若しくは5個の同一であり若しくは異なる置換基で置換されており、
RINGA又はRINGBの前記ベンジル、フェニル及びナフチル置換基のいずれも、互いに独立して、非置換である、又は、ハロゲン、C1-4アルコキシ、NO及びCNからなる群から選択される、1、2、3、4若しくは5個の同一であり若しくは異なる置換基で置換されており、
m及びnが、同一であり又は異なり、互いに独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり、
Y1及びY2が、同一であり又は異なり、互いに独立して、H、OH、C(R14)(R15)R16、C1-6アルキル、O-C1-6アルキル、フェニル、ベンジル、O-フェニル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル及びN(R19)R20からなる群から選択され、
R14、R15及びR16が、同一であり又は異なり、互いに独立して、H、F、Cl及びBrからなる群から選択され、
R10、R11、R17、R18、R19及びR20が、同一であり若しくは異なり、互いに独立してH若しくはC1-6アルキルである、又は、R10及びR11、R17及びR18、若しくはR19及びR20が、一緒になってテトラメチレン鎖若しくはペンタメチレン鎖を表し、
R50及びR51が、同一であり又は異なり、互いに独立して、OH、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシからなる群から選択され、
R24、R34、R28及びR38が、同一であり又は異なり、互いに独立して、H、C1-10アルキル、C(R25)(R26)-O-R27からなる群から選択され、
R25、R26及びR27が、同一であり又は異なり、互いに独立して、H及びC1-10アルキルからなる群から選択される、
方法である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好ましくは、LIGがPhPである場合、NISALTはNi(NOである。
【0022】
好ましくは、LIGが式(dppb)の化合物である場合、NISALTはNiClである。
【0023】
好ましくは、LIGは、式(DPEPhos)の化合物又はPhPである。
【0024】
好ましくは、Ni(NOは、その水和物Ni(NO6HOの形態で使用される。
【0025】
NiClは、それ自体として、又はNiCl(DME)として使用することができ、NiCl(DME)は、NiClと1,2-ジメトキシエタンとの1:1のモル比での混合物であり、
好ましくは、NiClは、NiCl(DME)として使用される。
【0026】
好ましくは、BASは、CsCO、KPO、NaH、及びNaOtBuからなる群から選択され、より好ましくは、
COMPSUBSTがCOMPSUBST-I又はポリスチレンである場合、BASは、CsCO又はKPOであり、
COMPSUBSTがエテン、シクロヘキセン又はエチンである場合、BASは、NaH又はNaOtBuである。
【0027】
好ましくは、m及びnは、同一であり又は異なり、互いに独立して、0、1、2、3又は4であり、より好ましくは、m及びnは、同一であり又は異なり、互いに独立して、0又は4である。
【0028】
好ましくは、Y1及びY2は、同一であり又は異なり、互いに独立して、H、OH、C1-2アルキル、及びO-C1-2アルキルからなる群から選択される。
【0029】
好ましくは、COMPSUBSTは、化合物COMPSUBST-I、エテン、シクロヘキセン、エチン、及びポリスチレンからなる群から選択され、
エテン及びシクロヘキセンは非置換である、又は、C1-10アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、ベンジル、フェニル、ナフチル及びモルホリンからなる群から選択される、1若しくは2個の置換基によって置換されており、
エチンは非置換である、又は、C1-10アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択される、1個の置換基によって置換されており、
COMPSUBST-Iは、
【0030】
【化10】
からなる群から選択され、
COMPSUBST-Iは、非置換である、又は、
COMPSUBST-Iが5個の環内原子を有する単環式化合物である場合、1、2、3若しくは4個の、
COMPSUBST-Iが6個の環内原子を有する単環式化合物である場合、1、2、3、4若しくは5個の、
COMPSUBST-Iが、5員環と6員環がオルト縮合した二環式化合物である場合、1、2、3、4、5若しくは6個の、
COMPSUBST-Iが、2個の6員環がオルト縮合した二環式化合物である場合、1、2、3、4、5、6若しくは7個の、
互いに独立して、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-4アルコキシ、OH、C(H)=O、N(R10)R11、CN、NH-OH、NO、NO、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、S(O)R50、CH=C(H)R28、
【0031】
【化11】
、ベンジル、フェニル及びナフチルからなる群から選択される、同一であり若しくは異なる置換基によって置換されており、
COMPSUBST-Iの前記C1-10アルキル置換基は、非置換である、又は、ハロゲン、OH、O-C(O)-C1-5アルキル、O-C1-10アルキル、S-C1-10アルキル、S(O)-C1-10アルキル、S(O)-C1-10アルキル、O-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル及び1,2,4-トリアゾリルからなる群から選択される、1、2、3、4若しくは5個の、同一であり若しくは異なる置換基で置換されており、
COMPSUBST-Iの前記ベンジル、フェニル及びナフチル置換基は、互いに独立して、非置換である、又は、ハロゲン、C1-4アルコキシ、NO及びCNからなる群から選択される、1、2、3、4若しくは5個の、同一であり若しくは異なる置換基で置換されており、
R10、R11、m、Y1、R28、R50、R24及びハロゲンは、本明細書で定義され、それらのすべての実施形態も有する。
【0032】
より好ましくは、COMPSUBST-Iは非置換である、又は、
COMPSUBST-Iが5個の環内原子を有する単環式化合物である場合、1、2又は3個の、
COMPSUBST-Iが6個の環内原子を有する単環式化合物である場合、1、2、3、4又は5個の、
COMPSUBST-Iが、5員環及び6員環がオルト縮合した二環式化合物である場合、1、2、3又は4個の、
COMPSUBST-Iが、2個の6員環がオルト縮合した二環式化合物である場合、1、2、3、4又は5個の、
互いに独立して、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、OH、C(H)=O、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、CF、(CH-C(O)Y1、及びS(O)R50からなる群から選択される、同一であり若しくは異なる置換基によって置換されており、
COMPSUBST-Iの前記C1-4アルキル置換基は、非置換である、又は、ハロゲンからなる群から選択される、1、2若しくは3個の、同一であり若しくは異なる置換基で置換されており、
R10、R11、m、Y1、R50及びハロゲンは、本明細書で定義され、それらのすべての実施形態も有する。
【0033】
特に、COMPSUBSTは、
【0034】
【化12】
、エテン、シクロヘキセン、エチン、及びポリスチレンからなる群から選択され、
Yは、C1-6アルキルであり、
エテン及びシクロヘキセンは、非置換である、又は、C1-10アルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、ベンジル、フェニル及びモルホリンからなる群から選択される、1若しくは2個の置換基によって置換されており、
エチンは、非置換である、又は、C1-10アルキル、C1-4アルコキシ、N(R10)R11、CN、F、Cl、Br、I、CF、(CH-C(O)Y1、ベンジル及びフェニルからなる群から選択される、1個の置換基によって置換されており、
R10、R11、m及びY1は、本明細書で定義される通りであり、それらのすべての実施形態も有する。
【0035】
好ましくは、Yはメチル又はエチルであり、
より好ましくは、Yはエチルである。
【0036】
置換されたエテンの実施形態は、プロペン、エテン-1,1-ジイルジベンゼン及び3,3-ジメチルブタ-1-エンであり:
好ましくは3,3ジメチルブタ1エンである。
【0037】
置換されたシクロヘキセンの実施形態は、4-(シクロヘキサ-1-エン-1-イル)モルホリンである。
【0038】
置換されたエチンの実施形態は、1-オクチンである。
【0039】
COMPSUBSTの実施形態は、式(PYRAZ)
【0040】
【化13】
[式中、
Yはメチル又はエチルであり、
好ましくは、Yはエチルである。]
の化合物である。
【0041】
好ましくは、R3はC1-15アルキレンであり、アルキレン鎖において少なくとも1個の水素はFによって置換されており、
より好ましくは、R3はC1-10アルキレンであり、アルキレン鎖において少なくとも1個の水素はFによって置換されている。
【0042】
特に、FAHALIDEは、ペルフルオロC1-20アルキル-X1、Br-(CFn3-Br、及びFHC-X1からなる群から選択され、
より特別には、FAHALIDEは、ペルフルオロC1-15アルキル-X1、Br-(CFn3-Br又はFHC-X1からなる群から選択され、
さらにより特別には、FAHALIDEは、ペルフルオロC1-10アルキル-X1、Br-(CFn3-Br又はFHC-X1からなる群から選択され、
n3は、2~10の整数であり、
好ましくは、n3は、2、3、4、5、6であり、
より好ましくは、n3は、2、4又は6であり、
さらにより好ましくは、n3は、4である。
【0043】
特に、FAHALIDEは、F2110-I、F2110-Br、F17-I、F17-Br、F13-I、F13-Br、F-I、F-Br、F-I、F-Br、FC-I、FC-Br、Br-(CF-Br、FHC-I、及びFHC-Brからなる群から選択され、
より特別には、FAHALIDEは、F2110-I、F17-I、F-I、F-I、FC-Br、及びBr-(CF-Brからなる群から選択される。
【0044】
一実施形態では、
X1はIであり、
X2はHである。
【0045】
一実施形態では、
R3は、ペルフルオロアルキレンである。
【0046】
好ましくは、0.1~20mol%、より好ましくは0.5~15mol%、さらにより好ましくは0.5~10mol%、特に0.5~7.5mol%、より特別には0.5~6mol%、さらにより特別には0.75~5.5mol%のNICATが反応で使用され、mol%はFAHALIDEのモル量に基づく。
【0047】
好ましくは、0.1~20mol%、より好ましくは0.5~15mol%、さらにより好ましくは1~12.5mol%、特に2~12.5mol%のLIGが反応で使用され、mol%はFAHALIDEのモル量に基づく。
【0048】
周囲温度でFAHALIDEがガス状の形態である場合、好ましくは、FAHALIDEは、周囲温度で1~20bar、より好ましくは1~15bar、さらにより好ましくは1~10bar、特に2~10bar、より特別には3~8bar、さらにより特別には4~8barの圧力に相当する量で、反応で使用される。
【0049】
好ましくは、1~20モル当量、より好ましくは1~15モル当量、さらにより好ましくは2~15モル当量、特に2~12.5モル当量、より特別には2~11モル当量、さらにより特別には2.5~11モル当量のCOMPSUBSTが反応で使用され、モル当量はFAHALIDEのモル量に基づく。
【0050】
好ましくは、0.1~10モル当量、より好ましくは0.5~5モル当量、さらにより好ましくは0.75~5モル当量、特に0.85~5モル当量、より特別には0.95~5モル当量、さらにより特別には0.95~4モル当量、格別には0.95~3モル当量のBASが反応で使用され、モル当量はFAHALIDEのモル量に基づく。
【0051】
反応の反応温度は、好ましくは20~200℃、より好ましくは30~175℃、さらにより好ましくは40~175℃、特に40~150℃である。
【0052】
反応の反応時間は、好ましくは1~96時間、より好ましくは2~84時間、さらにより好ましくは3~80時間、特に4~76時間である。
【0053】
好ましくは、反応は不活性雰囲気下で行われる。好ましくは、不活性雰囲気は、好ましくはアルゴン、別の希ガス、低沸点アルカン、窒素からなる群から選択される不活性ガス、より好ましくは窒素の使用によって達成される。
【0054】
低沸点アルカンは、好ましくは、C1-3アルカン、すなわち、メタン、エタン又はプロパンである。
【0055】
反応は閉端系で行うことができ、閉端系の選択された温度で反応混合物によってもたらされる圧力、及び/又は、COMPSUBSTがガス状の形態にある場合、COMPSUBSTによって加えられる圧力によってもたらされる圧力にて、反応は実施され得る。前記不活性ガスで圧力を加えることも可能である。周囲圧力で反応を実行することも可能である。
【0056】
反応は、添加剤ADDの存在下で行うことができ、
ADDは、Zn、ポリメチルヒドロシロキサン、及びフェニルボロン酸からなる群から選択される。
【0057】
好ましくは、1~40mol%、より好ましくは1~30mol%、さらにより好ましくは1.5~30mol%、特に1.5~25mol%、より特別には2~25mol%のADDが反応で使用され、mol%はFAHALIDEのモル量に基づく。
【0058】
反応は、乾燥剤DRYAGの存在下で行うことができ、
DRYAGは、分子ふるい及びNaSOからなる群から選択され、
好ましくは、分子ふるいは、4オングストロームの細孔径を有する。
【0059】
分子ふるいは、好ましくはNa12[(AlO12(SiO12]xHOである。
【0060】
好ましくは、反応で使用されるDRYAGの量は、FAHALIDEの重量に基づいて、0.1~2倍、より好ましくは0.1~1.5倍、さらにより好ましくは0.1~1倍、特に0.1~0.75倍、より特別には0.1~0.5倍である。
【0061】
好ましくは、NICATがNi-cat1である場合、反応は、DRYAGの存在下で行われ得る。
【0062】
反応は、無溶媒で又は溶媒SOL中で行うことができ、SOLは、好ましくはアルカン、塩素化アルカン、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ニトリル、脂肪族アミド、スルホキシド、C、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
好ましくは、SOLは、C5-8アルカン、塩素化C5-8アルカン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、MTBE、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル、バレロニトリル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、C、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
より好ましくは、SOLは、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、バレロニトリル、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、C、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
さらにより好ましくは、SOLは、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジメチルスルホキシド、C、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
特に、SOLはCである。
【0063】
COMPSUBST及び/又はFAHALIDEを、溶媒として同時に使用することも可能であり、反応が無溶媒で行われることを意味する。
【0064】
好ましくは、反応は、無溶媒で、又はSOLとしてのC中で行われる。
【0065】
SOLの量は、好ましくは、FAHALIDEの重量の0.1~100倍、より好ましくは1~50倍、さらにより好ましくは1~25倍、特に1~12.5倍、より特別には1~10倍、さらにより特別には3~10倍である。
【0066】
反応の後、FACOMPSUBSTは、それ自体当業者に公知である標準的な方法、例えば、揮発性成分の蒸発、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、クロマトグラフィー及びこれらの任意の組合せによって単離され得る。
【実施例
【0067】
略語:
4A-MS 4オングストロームの分子ふるい、70955-01-0、Na12[(AlO12(SiO12]xH
Conv COMPSUBSTに関するmol%での転化率
Sel COMPSUBSTに関するmol%での選択率
Ex 実施例
Ni(NOは、Ni(NO6HOとして使用した。
Proc 手順
T 反応温度
t 反応時間
【0068】
一般的な手順1:Ni塩及び還元添加剤
COMPSUBST、FAHALIDE、NICAT、LIG、BAS、ADD、DRYAG、溶媒の混合物(すべての当量及び量は、実験の表に規定されている。)を、肉厚の圧力管(Ace圧力管、Sigma-Adrich Art.Nr.Z564575)に入れた。圧力管中のガス雰囲気を窒素でフラッシュし、管をねじ蓋で密閉し、加熱した(反応温度及び反応時間は表3に指定されている。)。得られた混合物を室温に冷却し、ジクロロメタン(4ml)で希釈した。固形物は、遠心分離(3000rpm、15分)によって除去した。得られた生成物溶液を、定量GC分析(内部標準ヘキサデカン)、内部標準の1,2-ジフルオロベンゼン若しくは1,4-ジフルオロベンゼンを使用する19F-NMR分析、又はGC-MSによって分析した。
【0069】
生成物の単離は、長鎖ペルフルオロアルキル鎖(10個以上の炭素原子を含有するアルキル鎖)に対して、Fluoro Flash(登録商標)逆相シリカゲル(Sigma Aldrich No.:00866)及び勾配溶媒溶離(gradient solvent elution)(1.MeOH:HO(4:1、10mL) 2.MeOH(100%、10mL) 3.アセトン(100%、10mL))を使用するピペットカラムクロマトグラフィーによって、又は、10個未満の炭素原子を含有するペルフルオロアルキル鎖に対して、シリカゲル(Sigma Aldrich No.:236802)及び勾配溶媒溶離(1.ペンタンエーテル(100%) 2.ペンタン:ジエチルエーテル(50%:50%、10ml))を使用する順相シリカゲルクロマトグラフィーによって、行った。
【0070】
「Ni-cat2の予備形成(preformation)」手順
Ni-cat2の予備形成は、Standley,E.A.ら、A Broadly Applicable Strategy for Entry into Homogeneous Nickel(0) Catalysts from Air-Stable Nickel(II) Complexes、Organometallics 2014、33、2012によって行った。
【0071】
NiCl・6HO(8.5mmol、2.02g)及びEtOH(25mL)を、アルゴンでフラッシュした、セプタム及び還流冷却器を装備した丸底フラスコ(Schlenk-flask)に入れた。次に、dppf(8.5mmol、4.712g)を添加し、得られた反応混合物を、(温度約80℃で)30分間還流し、その後0℃に10分間冷却した。そのように形成された固形物をろ過によって収集し、EtOH(10mLで2回)及びジエチルエーテル(10mLで2回)により2度洗浄した。真空下(約20mbar、室温)で固形物を乾燥させた後、85%の収率に相当する、4.98gの中間体Ni-int1、(dppf)NiClを濃緑色粉末として得た。
【0072】
このNi-int1(6.81mmol、4.658g)及び180mLのCHClを、アルゴンでフラッシュした丸底フラスコに入れた。得られた溶液を0℃に冷却し、次にo-トリルマグネシウム塩化物(6.81mmol、THF中0.945M、7.21mL)を激しく撹拌しながら滴下した。添加終了近くに、溶液の色は緑色からオレンジ色に変わった。添加後、この溶液を0℃でさらに15分間撹拌し、次に、室温、真空下で溶媒を蒸発させた。次に25mlのMeOHを添加し、反応混合物を室温で5分間撹拌した。この混合物を0℃に冷却した後、固形物をろ過によって収集し、残留物をMeOHで洗浄し(5mlで2回)、室温、真空下(約5mbar)で乾燥し、92%の収率に相当する、4.63gのNi-cat2、(dppf)Ni(o-tol)Clを細かい鮮黄色粉末として得た。
H NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ = 8.23 - 8.12 (m, 4H), 8.02 - 7.93 (m, 2H), 7.51 - 7.38 (m, 7H), 7.27 (td, J = 8.3, 2.0 Hz, 2H), 7.21 - 7.15 (m, 1H), 6.99 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 6.76 (td, J = 8.2, 2.6 Hz, 2H), 6.66 - 6.54 (t, 2H), 6.43 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 6.30 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 6.10 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 5.15 (s, 1H), 4.54 (m, 1H), 4.25 (s, 1H), 4.19 (s, 1H), 4.02 (d, J = 10.1 Hz, 2H), 3.52 (m, 1H), 3.33 (m, 1H), 2.44 (s, 3H).
31P NMR (162 MHz, CDCl): δ = 29.51 (d, J = 25.9 Hz, 1P), 12.12 (d, J = 25.9 Hz, 1P).
【0073】
一般的な手順2:予備形成Ni-cat2を使用するフルオロアルキル化
FAHALIDE(1当量、0.2mmol)、Ni-cat2(5mol%、0.01mmol、7.40mg、手順「Ni-cat2の予備形成」によって調製)、COMPSUBST(10当量、2mmol)、及びBASの混合物を、肉厚のAce圧力管(Sigma-Aldrich Art.Nr.Z564575)に入れた。圧力管中のガス雰囲気を窒素でフラッシュし、管をねじ蓋で密閉し、表に規定された反応時間の間反応温度で加熱した。得られた反応混合物を室温に冷却し、ジクロロメタン(4ml)で希釈した。固形物を、遠心分離(3000rpm、15分)によって除去した。得られた生成物溶液を、内部標準として1,4-ジフルオロベンゼン又は1,2-ジフルオロベンゼンを使用する定量19F-NMR分析、内部標準としてヘキサデカンを使用する定量GC分析、又はGC-MSによって分析した。
【0074】
生成物の単離は、長鎖ペルフルオロアルキル鎖(10個以上の炭素原子を含有するアルキル鎖)に対して、FluoroFlash(登録商標)逆相シリカゲル(Sigma Aldrich No.:00866)及び勾配溶媒溶離(1.MeOH:HO(4:1、10mL) 2.MeOH(100%、10mL) 3.アセトン(100%、10mL))を使用するピペットカラムクロマトグラフィーによって、又は、10個未満の炭素原子を含有するペルフルオロアルキル鎖に対して、シリカゲル(Sigma Aldrich No.:236802)及び勾配溶媒溶離(1.ペンタンエーテル(100%) 2.ペンタン:ジエチルエーテル(50%:50%、10ml))を使用する順相シリカゲルクロマトグラフィーによって、行った。
【0075】
実施例の詳細は、表1、2及び3に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
[比較例]
【0080】
【化14】
【0081】
Loy,R.N.ら、Organic Letters 2011年、13、2548~2551頁の表1の項目10を、S5頁の表S4中の項目9と関連してS3頁に「最適化手順」の下に記述されている、前記記事のサポート情報に与えられている詳細手順によって繰り返した。
【0082】
ホスフィンは、BINAPであった。
【0083】
[Pd]は、Pddba3であった。
【0084】
塩基は、CsCOであった。
【0085】
アルキルハロゲニド(alkylhalogenid)は、ペルフルオロヘキシルヨウ化物の代わりにペルフルオロヘキシル臭化物であった。
【0086】
ねじ蓋、1ドラムのバイアルに、塩基(0.4mmol、2当量)、[Pd](0.02mmol、10mol%)及びホスフィン(0.04~0.08mmol、20~40mol%)を添加した。ベンゼン(1mL)及びペルフルオロヘキシル臭化物(43マイクロL、0.2mmol、1当量)を添加し、得られた混合物をテフロン裏打ちキャップ(Teflon-lined cap)で密閉し、アルミニウム反応ブロックにて、激しく撹拌しながら、80℃で15時間加熱した。反応混合物を23℃に冷却し、GCの内部標準としてクロロベンゼン(20マイクロL)を添加した。粗反応混合物からアリコート(約100マイクロL)を取り出し、セライトのプラグを通過させ、EtOAc(2mL)で溶出した。次に、この試料をGCによって分析し、クロロベンゼン内部標準に対する検量との比較によって、収率を決定した。
【0087】
結果:1%未満の収率が測定された。