(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法および半導体装置用基板
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20220519BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
H01L23/50 N
H01L23/12 501T
(21)【出願番号】P 2017068307
(22)【出願日】2017-03-30
【審査請求日】2019-10-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506334171
【氏名又は名称】トレックス・セミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128532
【氏名又は名称】村中 克年
(72)【発明者】
【氏名】五郎丸 佑也
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-021919(JP,A)
【文献】特開2011-216921(JP,A)
【文献】特開2013-183055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02 - 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の母材上に複数の半導体素子を搭載するとともに、前記半導体素子を樹脂で一体化した複数の半導体装置を個片化により得る半導体装置の製造方法であって、
前記母材の表面の複数個所から一体的に突出する凸部を形成する凸部形成工程と、
前記凸部の側面に金属めっき層を形成する金属めっき層形成工程と、
前記側面に相対向する面である端面が前記金属めっき層に当接するように前
記母材の表面に電極層となる金属層を形成する金属層形成工程と、
前記半導体素子を前記母材上に配設するとともに、前記電極層となる金属層と
電気的に接続する実装工程と、
前記母材上に配設された前記半導体素子を含む配設部分の全体を樹脂で封止
して複数個が一体となった半導体装置を形成する樹脂封止工程と、
複数個が一体となった前記半導体装置から前記凸部と一体となった前記母材
を除去する母材除去工程と、
前記母材の除去により前記凸部に対応して前記樹脂の一方の面である裏面に
形成された凹部の底部を、前記凹部の幅と同等か、または小さい幅で分割して個片化する個片化工程とを有するとともに、
前記凸部形成工程は、前記母材の表面に形成した第1のレジストのパターニングにより所定の開口部を有する凸部用レジストパターンを形成する凸部用レジストパターン形成工程を経た後、前記母材の表面から一体的に突出する凸部を、前記開口部に電鋳により形成する工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載する半導体装置の製造方法において、
前記金属めっき層形成工程は、前記凸部で区画された前記母材の表面の所定の領域に第2のレジストを形成するとともに、前記第2のレジストをパターニングして電鋳用レジストパターンを形成する電鋳用レジストパターン形成工程を経た後、前記凸部の側面に金属めっき層を形成する工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載する半導体装置の製造方法において、
前記金属層形成工程は、前記電鋳用レジストパターンで囲まれた前記母材上の表面に電鋳により金属層を形成する工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一つに記載する半導体装置の製造方法において、
前記金属めっき層形成工程では、前記凸部の側面とともに、前記側面から連続する前記母材の表面にも金属めっき層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載する半導体装置の製造方法において、
前記金属層形成工程において、前記電鋳より形成された前記金属層の表面に
他の金属めっき層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項2または請求項3に記載する半導体装置の製造方法において、
前記金属層形成工程では、前記母材の表面に接触して形成された前記電鋳用
レジストパターンの表面を超えて前記金属層を形成する金属を電着させることにより前記電鋳用レジストパターンの上面側に張り出すオーバーハング部を前記金属層の上端部周縁に形成することを特徴とする半導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法および半導体装置用基板に関し、特に複数の半導体装置の集合体から各半導体装置を個片化した際、各半導体装置の金属層の端面に形成した金属めっき層が封止している樹脂の端面から露出するように形成する場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術に係る半導体装置IV、特に、リードレス表面実装方式の樹脂封止された半導体装置IVの中には、
図21に示すように、半導体素子01を搭載している金属層02と、該金属層02の図中、X軸方向に沿う両側に配設され半導体素子01とワイヤ03,03で接続される複数の電極層04とを有し、全体を樹脂05で封止して形成したものがある。この種の半導体装置VIでは、金属層02および電極層04を半田06により回路基板09に接合することにより実装される。かかる実装において、半田06の濡れ性を良好に保持するため、金属層02および電極層04の露出面には金めっき膜07,08,08が形成されている。ここで、半導体装置IVにおける電極層04の金属層02と反対側の端面04Aは露出している。
【0003】
リードレス表面実装方式のうち、樹脂封止された半導体装置の電極層04における金属層02と反対側の端面04Aが露出しているものを開示する公知文献として特許文献1(
図7参照)が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如くX軸方向に関して電極層04の金属層02と反対側の端面04Aが露出しているリードレス表面実装方式の半導体装置IVにおいては、半導体装置IVを回路基板09上に実装した場合、
図21に示すように、半田06のフィレットが電極層04の端面04Aに接する部分では凹部となってしまう場合がある。これは、端面04Aの材料であるニッケルに対する半田06の濡れ性があまり良くない点に起因するものである。このように半田06のフィレットに凹部が形成された場合、半導体装置IVの回路基板07に対する半田06による接合状態を半導体装置IVの上方から観察して、その接合の良否の判断をすることが困難になる。すなわち、この場合の半田06によるフィレットは先端部から半導体装置IVの端面上部に向かって徐々に立ち上る曲線形状となるのが理想であり、この場合に半田06による良好な接合が担保される。
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑み、リードレス表面実装方式の半導体装置を回路基板に実装する際の半田フィレットを良好に形成することができ、半導体装置の上方から実装状況を容易に確認し得る半導体装置の製造方法および前記半導体装置を形成するための半導体装置用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
平板状の母材上に複数の半導体素子を搭載するとともに、前記半導体素子を樹脂で一体化した複数の半導体装置を個片化により得る半導体装置の製造方法であって、
前記母材の表面の複数個所から一体的に突出する凸部を形成する凸部形成工程と、
前記凸部の側面に金属めっき層を形成する金属めっき層形成工程と、
前記側面に相対向する面である端面が前記金属めっき層に当接するように前
記母材の表面に電極層となる金属層を形成する金属層形成工程と、
前記半導体素子を前記母材上に配設するとともに、前記電極層となる金属層と
電気的に接続する実装工程と、
前記母材上に配設された前記半導体素子を含む配設部分の全体を樹脂で封止
して複数個が一体となった半導体装置を形成する樹脂封止工程と、
複数個が一体となった前記半導体装置から前記凸部と一体となった前記母材
を除去する母材除去工程と、
前記母材の除去により前記凸部に対応して前記樹脂の一方の面である裏面に
形成された凹部の底部を、前記凹部の幅と同等か、または小さい幅で分割して個片化する個片化工程とを有するとともに、
前記凸部形成工程は、前記母材の表面に形成した第1のレジストのパターニングにより所定の開口部を有する凸部用レジストパターンを形成する凸部用レジストパターン形成工程を経た後、前記母材の表面から一体的に突出する凸部を、前記開口部に電鋳により形成する工程であることを特徴とする。
【0008】
本形態によれば、半導体装置の端面において、樹脂の外側に半田との濡れ性が良好な金属めっき層を露出させることができる。さらに、所望の凸部を電鋳により形成することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載する半導体装置の製造方法において、
前記金属めっき層形成工程は、前記凸部で区画された前記母材の表面の所定の領域に第2のレジストを形成するとともに、前記第2のレジストをパターニングして電鋳用レジストパターンを形成する電鋳用レジストパターン形成工程を経た後、前記凸部の側面に金属めっき層を形成する工程であることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、所望の金属層を電鋳により形成するための電鋳用レジストパターンを形成することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、
第2の態様に記載する半導体装置の製造方法において、
前記金属層形成工程は、前記電鋳用レジストパターンで囲まれた前記母材上の表面に電鋳により金属層を形成する工程であることを特徴とする。
【0014】
本形態によれば、所望の金属層を電鋳により容易に形成することができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、
第1~第3の態様のいずれか一つに記載する半導体装置の製造方法において、
前記金属めっき層形成工程では、前記凸部の側面とともに、前記側面から連続する前記母材の表面にも金属めっき層を形成することを特徴とする。
【0016】
本形態によれば、本発明方法により得る半導体装置の回路基板等に対する実装に際し、金属めっき層を介して半導体装置を回路基板等に接触させることができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、
第3または第4の態様に記載する半導体装置の製造方法において、
前記金属層形成工程において、前記電鋳より形成された前記金属層の表面に
他の金属めっき層を形成することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、金属層に対する半導体素子の実装の際の半田等の接合部材との濡れ性を良好に保持することができる。
【0019】
本発明の第6の態様は、
第2または第3の態様に記載する半導体装置の製造方法において、
前記金属層形成工程では、前記母材の表面に接触して形成された前記電鋳用
レジストパターンの表面を超えて前記金属層を形成する金属を電着させることにより前記電鋳用レジストパターンの上面側に張り出すオーバーハング部を前記金属層の上端部周縁に形成することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、封止している樹脂にオーバーハング部を食い込ませることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、樹脂の端面から露出している金属層の端面に金属めっき層が形成されているので、当該半導体装置を回路基板に半田接合した場合、半導体装置の端面に隣接する先端部から前記端面に向けて連続的に立ち上がる曲線状の半田のフィレットが良好に形成される。この結果、半導体装置の上方から前記フィレットの形成状態を容易に視認でき、半田接合の良否を容易かつ確実に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における凸部用レジストパターン形成工程を示す模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における凸部用レジストパターン形成工程を示す模式図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における凸部形成工程を示す模式図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における凸部形成工程を示す模式図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における電鋳用レジストパターン形成工程を示す模式図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における電鋳用レジストパターン形成工程を示す模式図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における金属めっき層形成工程を示す模式図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における金属層形成工程を示す模式図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における金属層形成工程を示す模式図である。
【
図10】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における金属層形成工程を示す模式図である。
【
図11】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における実装工程を示す模式図である。
【
図12】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における実装工程を示す模式図である。
【
図13】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における樹脂封止工程を示す模式図である。
【
図14】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における母材除去工程を示す模式図である。
【
図15】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における個片化工程を示す模式図である。
【
図16】本発明の第1の実施の形態に係る製造方法により個片化して作製した半導体装置の一個を示す模式図である。
【
図17】本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における実装工程を示す模式図である。
【
図18】本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における個片化工程を示す模式図である。
【
図19】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における実装工程を示す模式図である。
【
図20】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法における個片化工程を示す模式図である。
【
図21】従来技術に係る半導体装置を個片化してその一個を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、各実施の形態中、同一部分には同一番号を付し重複する説明は省略する。
【0026】
[第1の実施の形態]
図1~
図16は第1の実施の形態の各工程を示す模式図である。これらの図に示すように、本形態に係る半導体装置は、次のような各工程を経て製造される。以下、順次詳細に説明する。
【0027】
<凸部用レジストパターン形成工程>
図1に示すように、平板状の母材1の表面(図中のX軸Y軸方向に沿う平面である上面;以下同じ)にレジスト(第1のレジスト)2Aを形成する。ここで、母材1は導電性を有する材料であれば特に限定はないが、SUSが好適である。
【0028】
次に、
図2に示すように、レジスト2Aのパターニングにより所定の開口部2Cを有する凸部用レジストパターン2Bを形成する。
【0029】
<凸部形成工程>
図3に示すように、凸部用レジストパターン2Bに形成した開口部2Cに電鋳により凸部3を形成する。その後、
図4に示すように、凸部用レジストパターン2Bを所定の薬剤で除去することにより母材1の表面からZ軸に沿い図中上方に向かって一体的に突出する凸部3を形成する。ここで、凸部3を形成する材料としては、電鋳を行うことができる金属であれば特に制限はないが、後の母材除去工程(
図14参照)のことを考慮すれば、母材1との一体性を良好にする必要がある。母材1と凸部3との密着性を確保する手段として、例えば、ストライクめっきなどの密着処理が挙げられる。また、母材1上に凸部3を形成後、母材1および凸部3の表面全面を覆うようにカバーめっき層を形成しても良い。
【0030】
<電鋳用レジストパターン形成工程>
図5に示すように、凸部3で区画された母材1の表面の所定の領域にレジスト(第2のレジスト)4Aを形成する。これは所定のレジスト4Aを塗布することによっても形成し得るが、シート状のレジスト4Aを、凸部3を覆うように母材1の表面に貼着することで良好に形成することができる。
【0031】
続いて
図6に示すように、レジスト4Aをパターニングして電鋳用レジストパターン4Bを形成する。なお、電鋳用レジストパターン4Bは、凸部3上に形成しなくても良く、その場合は、凸部3上に対する電鋳用レジストパターン4Bの位置ズレを考慮しなくて済み、生産性を向上できる。
【0032】
<金属めっき層形成工程>
図7に示すように、凸部3の側面および母材1の表面が露出している領域にめっきを施すことにより金属めっき層5を形成する。ここで金属めっき層5の材料としては半田との間で大きな濡れ性を有する金属であれば、特別な限定はないが、耐食性が大きく化学的に安定な金が最適である。なお、金属めっき層5は少なくとも凸部3の側面に形成されていれば良い。また、金属めっき層5の形成前には、
母材1に剥離処理を施すと良い。後の母材除去工程(
図14参照)において
母材1の金属めっき層5からの剥離を容易するためである。
【0033】
<金属層形成工程>
図8に示すように、電鋳用レジストパターン4Bで囲まれた母材1上の表面に電鋳により金属層6を形成する。かかる電鋳においては、母材1を一方の電極とする。また、電鋳の際の材料金属として本形態ではニッケルを用いた。ただ電鋳を行うための金属としては他にもニッケル・コバルト合金や銅等を用いることもできる。なお、金属層6は、これら金属を用いて単層構造あるいは多層構造とすることができる。すなわち、金属層6がニッケル単層であれば問題はないが、金属層6に銅を用いた場合、金属めっき層5の表面に銅が拡散してしまうので、この場合にはバリア層としてニッケル層を形成しておくのが望ましい。
【0034】
さらに、本形態における電鋳の際には、母材1の表面に接触して形成された電鋳用レジストパターン4Bの上面を超え、かつ凸部3の上面に形成された電鋳用レジストパターン4Bの上面よりも低い位置まで導電性金属を電着させることにより金属層6の上端部周縁にレジストパターン4Bの上面側から張り出すオーバーハング部6Aを形成している。このように、オーバーハング部6Aを形成することは必須ではない。ただ、オーバーハング部6Aを形成することで、金属層6が樹脂11(
図13参照;以下同じ)から抜け落ちるのを防止することができる。すなわち、後の樹脂封止工程(
図13参照)において、樹脂11に対し各オーバーハング部6Aを食い込ませることができる。この結果、オーバーハング部6Aの食い込み効果により、後の工程である母材1の剥離作業(
図14参照)等により母材1を樹脂11による封止部側から引き剥して除去する際、金属層6が母材1側にくっついて樹脂11から引き剥がされる心配はなく、確実に樹脂11による封止部側に残すことができる。この結果、金属層6のズレや脱落等を効果的に防止して、半導体装置Iの信頼性を向上させることができる。また、金属層6の上端部周縁全周にわたって形成される特有のオーバーハング部6Aの形状により、半導体装置Iの裏面側から金属層6と樹脂11との境界部分を通して侵入する水分等の上方への侵入を阻止し、耐水性にも優れたものとすることができる。
【0035】
次に、本形態では
図9に示すように、金属層6の上面に金属めっき層7を形成している。金属めっき層7は必ずしも形成する必要はないが、金属めっき層7を形成することで、後の実装工程(
図11、
図12参照)におけるワイヤ等による所定部品の電気的な接合を良好に行うことができる。ここで、金属めっき層5と金属層6の材料との前述の如き関係は、金属層6の材料と金属めっき層7との関係においても同様である。すなわち、金属層6がニッケル単層であれば問題はないが、金属層6に銅を用いた場合、金属めっき層7の表面に銅が拡散してしまうので、この場合にもバリア層としてのニッケル層を形成しておくのが望ましい。
【0036】
凸部3の表面に電鋳用レジストパターン4Bを形成すれば、後の個片化工程(
図15参照)で除去される凸部3の上面に無駄な金属めっき層7を形成することを回避し得る。特に金属めっき層7を高価な金めっき層とした場合には顕著なコストの低減効果を得る。
【0037】
なお、本形態における金属めっき層7の材料としては、ワイヤ10(
図12参照)等との良好な接着性を確保し得る金属であれば良く、金の他にも銀やパラジウムも好適に適用し得る。
【0038】
所定の金属めっき層7を形成した後、
図10に示すように、電鋳用レジストパターン4Bを薬剤により除去する。
【0039】
<実装工程>
図11に示すように、半導体素子8を、金属層6を介して母材1上に配設するとともに、
図12に示すように、金属層6のうち凸部3に当接するものを電極層として半導体素子8と電気的に接続する。かかる接続はワイヤ10を用いてワイヤボンディング法を適用することにより行う。ここで、金属層6に載置された半導体素子8はペースト等の介在層9で固定する。
【0040】
<樹脂封止工程>
図13に示すように、母材1上に配設された半導体素子8を含む配設部分の全体を樹脂11で封止して複数個が一体となった半導体装置Iを形成する。
【0041】
<母材除去工程>
図14に示すように、複数個が一体となった半導体装置Iから凸部3と一体となった母材1を除去する。本形態においては、凸部3と一体となった母材を樹脂11から剥離することで除去する。この結果、樹脂11の一方の面である裏面には凸部3の位置に対応する凹部3Aが形成される。なお、母材1の除去方法として、剥離除去以外に、溶解除去法、研削除去法等を適用し得る。
【0042】
図15に示すように、樹脂11の裏面に形成された凹部3Aの底部を貫通して凹部3Aの幅Wと同等か、または小さい幅で樹脂11の他方の面である表面に向かう切断線CL(図中のZ軸に沿い図中上方に向かう線)に沿いダイシングソー12で樹脂11を切断して複数個(図では3個)の半導体装置I,I,Iに個片化する。
【0043】
図16は、個片化した後の本形態に係る半導体装置Iの一個を示す模式図である。同図に示すように、半導体装置Iは、半導体素子8を搭載している金属層6と、電極として機能する複数の金属層6とを樹脂11で一体的に封止してなる。ここで、電極となる金属層6は、半導体素子8が載置された金属層6のX軸および/またはY軸方向に沿う両側に配設されて半導体素子8とワイヤ10で接続されるとともに、樹脂11のX軸および/またはY軸方向に沿う外側の端面(YZ平面および/またはXZ平面内の一面)が樹脂11から露出している。したがって、回路基板13に載置し、半田14で接合して半導体装置Iを回路基板13に実装した場合、半導体装置Iの端面に隣接する先端部から前記端面に向けて連続的に立ち上がる曲線状の半田14のフィレットが良好に形成される。この結果、半導体装置Iの上方から前記フィレットの形成状態を容易に視認でき、半田14による接合の良否を容易かつ確実に検査することができる。
【0044】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、第1の実施の形態と異なり、半導体素子8を隣接する金属層6間に跨って配設したものである。すなわち半導体素子8の実装方法が異なる。
【0045】
本形態における実装工程では、
図17に示すように、半導体素子8を隣接する金属層6の間に跨って配設し、介在層となるバンプ20を介して金属層6との間の電気的な接合を確保している。かかる実装工程は、
図1~
図10に示す凸部用レジストパターン形成工程、凸部形成工程、電鋳用レジストパターン形成工程および金属層形成工程を経た後の工程である。
【0046】
その後、
図13~
図15に示す第1の実施の形態の樹脂封止工程、母材除去工程および個片化工程と類似の工程を経て個片化された半導体装置IIを形成する。本形態における個片化工程では、
図18に示すように、金属層6に跨って配設され、金属層6との間の電気的な接合がバンプ20により確保された半導体素子8を切断線CLに沿いダイシングソー12により樹脂11を切断して個片化する。したがって、本形態における半導体装置IIは、半導体装置Iよりもより多くの半導体素子8を含ませることができる。
【0047】
本形態の半導体装置IIでも
図16に示す半導体装置Iの場合と同様に、半導体装置IIの端面に隣接する先端部から端面に向けて連続的に立ち上がる曲線状の半田14のフィレットを形成することができる。なお、半導体素子8と金属層6との電気的な接続はバンプ20(フリップチップ接続)により行っているが、ワイヤ(ワイヤボンディング接続)により行っても良い。
【0048】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、第1の実施の形態と異なり、半導体素子8をX軸および/またはY軸方向で隣接する金属層6の間に配設して電極となる各金属層6との間をワイヤ10により接続することで両者の電気的接続を確保したものである。
【0049】
本形態は、第1の実施の形態と同様の工程であり、
図1~
図10に示す凸部用レジストパターン形成工程、凸部形成工程、電鋳用レジストパターン形成工程および金属層形成工程を経た後の実装工程が異なる。すなわち、本形態における実装工程では、
図19に示すように、半導体素子8をX軸および/またはY軸方向で隣接する金属層6の間で母材1の表面に介在層(図示せず)を介在させて配設するとともに、電極となる各金属層6との間をワイヤ10により接続する。なお、本発明においては、半導体素子8が、金属層6を介して(
図11および
図17参照)、または金属層6を介することなく(
図19参照)、配設されているが、本発明では、これらのいずれの状態も含めて「母材1上に半導体素子8を搭載している」という。
【0050】
その後、
図13~
図15に示す第1の実施の形態の樹脂封止工程、剥離工程および個片化工程と類似の工程を経て個片化された半導体装置IIIを形成する。本形態における個片化工程では、
図20に示すように、X軸および/またはY軸方向で隣接する金属層6の間に配設されて各金属層6とワイヤ10により接続された半導体素子8を切断線CLに沿いダイシングソー12により樹脂11を切断して個片化する。したがって、本形態における半導体装置IIIでは、半導体素子8が介在層9を介して樹脂11の裏面に露出されたものとなる。
【0051】
本形態の半導体装置IIIでも、
図16に示す半導体装置Iの場合と同様に、半導体装置IIIの端面に隣接する先端部から端面に向けて連続的に立ち上がる曲線状の半田のフィレットを形成することができる。
【0052】
[他の実施の形態]
上記第1~第3の実施の形態においては、凸部3および金属層6を電鋳により形成しているが、これに限るものではない。1)母材1の表面の複数個所から一体的に突出する凸部3を形成することができ、2)凸部3の側面に相対向する面である端面が金属めっき層5に当接するよう電極層となる金属層6を母材1の表面に形成することができれば他の方法でも構わない。したがって、かかる他の実施の形態の場合、凸部用レジストパターン2Bおよび電鋳用レジストパターン4Bを形成する必要はない。
【0053】
[半導体装置用基板に関する実施の形態]
本形態に係る半導体装置用基板は、半導体素子8の実装工程、樹脂11による樹脂封止工程およびダイシングソー12による個片化工程を経て半導体装置Iを作製するための基板である。したがって、例えば
図10に示すように、平板状の母材1と、母材1にその表面の複数個所から突出させて形成した凸部3と、凸部3の側面に形成した金属めっき層5と、凸部3の側面に相対向する面である端面が金属めっき層5に当接するように母材1の表面に形成されて電極層となる金属層6とを有している。なお、
図10に示す場合は、オーバーハング部6Aおよび金属層6の表面の金属めっき層7を有するとともに、金属めっき層5は凸部3の側面から母材1の表面に連続させて形成してある。
【0054】
ここで、半導体装置用基板は、上述の如き所定の後工程を経て半導体装置II,IIIを作製するための基板であるので、半導体素子8を電極層6に実装する
図17の前の状態の基板および、
図19の前の状態の基板も本形態に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
I~III 半導体装置
1 母材
2A (第1の)レジスト
2B 凸部用レジストパターン
2C 開口部
3 凸部
4A (第2の)レジスト
4B 電鋳用レジストパターン
5,7 金属めっき層
6 金属層
6A オーバーハング部
8 半導体素子
10 ワイヤ
11 樹脂
12 ダイシングソー
13 回路基板
20 バンプ
CL 切断線