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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20220519BHJP
   A01C 11/02 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
A01B69/00 303V
A01C11/02 331C
A01C11/02 331D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019034848
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020137442
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】川上 修平
(72)【発明者】
【氏名】有坂 悟
(72)【発明者】
【氏名】河原田 崇
(72)【発明者】
【氏名】奥平 雄右
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-014045(JP,A)
【文献】特開2018-164423(JP,A)
【文献】実開昭56-024824(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第03272950(EP,A1)
【文献】再公表特許第2011/158347(JP,A1)
【文献】特開平07-281743(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0261146(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0084851(US,A1)
【文献】特開平09-154315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を自律走行する作業車両であって、
前記作業車両の走行方向を調節可能な操舵部と、前記作業車両の現在位置を取得する位置情報取得装置と、前記圃場の作業経路を算定する経路算定部と、前記作業車両に搭載した機器の異常を検出する異常検出部と、前記操舵部を制御して前記作業車両自律走行させる自動運転制御部とを備え、
前記経路算定部は、前記作業車両の手動走行による位置情報に基づいて、前記圃場内を直進する直進経路と、枕地内を旋回する旋回経路とからなる作業経路を算定するよう構成され、
前記自動運転制御部は、前記作業経路上を自律走行させる作業経路走行手段と、予め登録された復帰地点まで自律走行させる復帰地点移動手段と、前記復帰地点の登録手段と、前記圃場の形状に関する位置情報と前記作業経路の情報と前記登録された復帰地点の位置情報とを圃場ごとに記録する記録部と、作業走行中に前記異常検出部によって前記作業車両に搭載された機器の異常が検出されると、前記自律走行を停止する自律走行停止手段とを備え、
前記復帰地点の登録手段は、前記復帰地点を、前記作業経路の前記旋回経路上に限り登録可能に構成され、
作業走行中、前記異常検出部によって前記作業車両の駆動系の異常が検出された場合、前記自律走行停止手段により自律走行を停止するよう構成され、また、
作業走行中、前記異常検出部によって前記作業車両の駆動系以外の異常が検出された場合、前記記録部に前記登録された復帰地点の位置情報が存在するかを判定し、
前記登録された復帰地点の位置情報が存在するとき、前記復帰地点移動手段により登録された復帰地点まで自律走行させ、前記登録された復帰地点の位置情報が存在しないとき、前記作業車両を停車し、報知手段により作業者に停車を報知するよう制御することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記自動運転制御部は、前記作業車両が前記作業経路の走行を完了させると、前記記録部から前記登録された復帰地点の位置情報を削除することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
苗を載置する苗載台と、前記苗載台から苗を取り出して圃場に複数条植え付ける苗植付具とを有する苗植付装置を備え、
前記苗植付装置の植付条数が所定数以上である場合は、前記直進経路から前記旋回経路を通過する際に前記圃場の端部から所定距離後進してから旋回に入るように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記苗植付装置は、前記苗載台に載置された苗の位置及び残量を作業者に報知する苗位置表示手段と、前記苗載台において苗送り不良が生じた苗を苗取り出し口側へと送る苗送り機構とを備えていることを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を自律走行する農業用の作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圃場で苗の植え付け等の作業をしながら走行する苗移植機などの農業用の作業車両として、圃場内を自律走行可能な車両を用いられることがある。例えば、特許文献1には、自律走行可能で、自律走行の際に、車両の進行方向を自動的に修正する自動操舵装置を備えた作業車両が記載されている。この自動操舵装置は、GPS等の衛星測位システムにより車両の自機位置及び走行経路を把握し、基準となる走行経路に沿って圃場を自律走行するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-24541
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、作業車両の走行中に、走行に関係する機器やセンサに異常が生じた場合には、自動操舵に支障が生じるため、走行の基準となる経路にから外れて、植え付ける苗の位置にズレが生じ、苗の生育や収穫に悪影響を与えることがあった。
【0005】
したがって、本発明は、作業走行中に機体に異常が生じた場合に、自動操舵を停止して、苗の植付不良を防ぐことができる作業車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のかかる目的は、圃場を自律走行する作業車両であって、前記作業車両の走行方向を調節可能な操舵部と、前記作業車両の現在位置を取得する位置情報取得装置と、前記圃場の作業経路を算定する経路算定部と、前記作業車両に搭載した機器の異常を検出する異常検出部と、前記作業車両の自律走行を制御する自動運転制御部とを備え、前記異常検出部によって前記作業車両に搭載された機器の異常が検出されると、前記自動操舵を停止するように構成されていることを特徴とする作業車両によって達成される。
【0007】
本発明によれば、作業車両は、自動操舵によって圃場について算定された作業経路に沿って圃場を作業走行することができ、機体に異常が検出されると、作業が停止されるとともに自動操舵が停止されるので、機体の異常により不適切な作業が行われ、苗の植付不良が生じることを防止することができる。
【0008】
本発明の好ましい実施態様においては、前記自動運転制御部は、前記操舵部を制御して、前記経路算定部によって算定された前記作業経路に基づいて、前記作業車両の走行方向を調節する自動操舵をすることができるとともに、前記作業車両の作業走行中に、前記異常検出部によって前記作業車両に搭載した機器の異常が検出されると、前記作業車両の作業走行を中断するとともに、検出された異常が前記作業車両の駆動系の異常であれば前記作業車両を停車するように制御し、駆動系以外の異常であれば前記作業車両をあらかじめ設定された復帰地点に移動するように制御するように構成されている。
【0009】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、作業車両は、圃場を作業走行中に機体に異常が検出されると、駆動系に異常がない限り圃場について登録された復帰地点に移動することによって、圃場を脱して枕地上に位置することができるので、作業車両に異常が発生しても圃場内に放置されることが少なくなり、メンテナンス性が向上する。
【0010】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記自動運転制御部には、前記圃場の形状に関する位置情報と、前記圃場に設定された作業経路の情報と、前記圃場に設定された前記復帰地点の位置情報とを、圃場ごとに記録する記録部が設けられているように構成されている。
【0011】
本発明のこのさらに好ましい実施態様によれば、復帰地点は、作業経路とともに記録部に圃場ごとに登録されるので、圃場の形状に適するように設定でき、どのような形状の圃場であっても異常が検出された作業車両を確実にメンテナンス性が高い位置に誘導することができる。
【0012】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記復帰地点は、前記圃場外で、かつ、前記圃場に設定された前記作業経路上にのみ登録することができ、前記自動運転制御部は、前記圃場について前記復帰地点が設定されていない場合、前記異常検出部によって前記作業車両に搭載した機器の異常が検出されると、前記作業車両を停車するように制御するとともに、作業者に前記作業車両の停車を報知するように構成されている。
【0013】
本発明のこのさらに好ましい実施態様によれば、復帰地点が作業経路上に限定されていることで、異常が解消したときに作業車両が作業走行に復帰しやすく、異常発生に伴う作業効率の悪化を低減することができる。また、復帰地点には、常に圃場外が選択されるので、異常が検出された作業車両を確実にメンテナンス性が高い位置に誘導することができる。ことができる。
【0014】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記自動運転制御部は、前記作業車両が前記作業経路の走行を完了させると、前記圃場情報記録部から前記復帰地点の位置情報を削除するように構成されている。
【0015】
本発明のこのさらに好ましい実施態様によれば、作業車両は、圃場の作業走行を完了すると、圃場について復帰地点の登録を解除するので、圃場とは別の圃場で作業するときに、その別の圃場を離れて圃場の復帰地点に移動する危険性がなくなる。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、苗を載置する苗載台と、前記苗載台から苗を取り出して圃場に複数条植え付ける苗植付具とを有する苗植付装置を備え、前記作業経路は、前記圃場上を直進する複数の直進経路と、前記圃場の端部で前記直進経路から隣接する直進経路に旋回するように折り返す複数の旋回経路とから構成されており、前記苗植付装置の植付条数が所定数以上である場合は、前記直進経路から前記旋回経路を通過する際に前記圃場の端部から所定距離後進してから旋回に入るように構成されている。
【0017】
本発明のこのさらに好ましい実施態様によれば、作業車両が所定の植付条数以上のとき、作業車両が旋回経路に進入する前に所定距離後進するように自動運転制御部が作業車両の走行を制御することにより、植付条数が多くて旋回幅が大きい場合でも旋回経路から次の直進経路にずれなく移ることができ、作業車両が確実に作業経路に沿った作業走行を行うことができる。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記苗植付装置は、前記苗載台に載置された苗の位置及び残量を作業者に報知する苗位置表示手段を備えているように構成されている。
【0019】
本発明のこのさらに好ましい実施態様によれば、作業者は、苗位置表示手段により、苗載台の苗残量および苗送り不良の有無を把握することができるので、作業効率を悪化させることなく欠株の発生を抑止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、作業走行中に機体に異常が生じると、自動操舵を停止して、苗の植付不良を防ぐことができる作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の好ましい実施態様に係る作業車両の略平面図である。
図2図2は、図1の作業車両の略左側面図である。
図3図3は、図1の作業車両1における電気系統を示すブロック図である。
図4図4は、作業経路に沿って圃場を自律走行する作業車両を示す説明図である。
図5図5は、作業車両が走行した経路から作業経路を算定する方法を示す説明図である。
図6図6(a)は、作業経路上に登録されている復帰地点を示す模式図であり、図6(b)は、異常を検出した作業車両が復帰地点に移動する様子を示す模式図である。
図7図7は、図6(a)の復帰地点の登録プロセスを示すフローチャートである。
図8図8は、異常検出時の対応も含めた作業車両1の作業走行の工程を示すフローチャートである。
図9図9は、図8の異常検出処理の流れを示すフローチャートである。
図10図10は、作業車両の旋回経路への進入の仕方を決定するプロセスを示すフローチャートである。
図11図11は、図1の作業車両の苗移植装置に設けられた苗載台を示す略背面図である。
図12図12(a)は、苗検出センサと液晶パネルの関係を示すブロック図であり、図12(b)は、図11の苗載台に載せられたマット苗の残量が表示された図1の作業車両の液晶パネルを示す説明図である。
図13図13は、図11の苗載台の苗レーンに取り付けられた苗送り機構を示す略平面図である。
図14図14は、図13の苗送り機構の略側面図である。
図15図15(a)は、図14の苗送り機構のアームが降ろされた状態を示す略側面図であり、図15(b)は、苗送り機構のアームがスライドしてマット苗を押し込んだ状態を示す略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照しつつ、詳細に説明を加える。なお、以下の実施態様は、本発明の具体的な実施の一例であり、本発明の技術範囲を限定するものではない。
【0023】
図1は、本発明の好ましい実施態様に係る作業車両1の略平面図であり、図2は、その作業車両1の略左側面図である。本明細書においては、図1に示されるように、作業車両1の車両の進行方向となる側を前方(F)といい、その反対側を後方(B)といい、進行方向の左手側を左方(L)といい、進行方向の右手側を右方(R)という。
【0024】
図1および図2に示されるように、作業車両1は、走行車体100と、苗植付装置200とからなる乗用型田植機である。走行車体100のメインフレーム110には左右一対の前輪101a及び左右一対の後輪101bが設けられており、走行車体100前部の左右両側には、補給用の苗を複数段に分けて載せておく予備苗載台139が設けられている。
【0025】
走行車体100の車体中央部には、フロア130が設けられており、フロア130の左右両側は一部が格子状になった台であるフロアステップ135が設けられている。フロア
130の上には、作業車両1を操縦可能な操縦部133が設けられており、操縦部133には、操縦席133aと、前輪101aを操向操作可能なステアリングハンドル133bとが設けられ、ステアリングハンドル133bはステアリングポスト133cによって支持されている。また、ステアリングハンドル133bの下方には、ステアリングポスト133cに取り付けられたタッチ操作可能な液晶パネル50が設けられており、作業車両1の情報を表示できるように構成されている。
【0026】
操縦席133aの下には、エンジンカバー132に覆われたエンジン131が設けられている。エンジン131は、駆動力が左右の前輪101aおよび左右の後輪101bのそれぞれに走行動力として伝達されるように取り付けられている。
【0027】
走行車体100の後部には、施肥装置120が設けられており、施肥装置120には、粒状の肥料が貯留されている肥料ホッパ121と、肥料ホッパ121に貯留されている肥料を一定量ずつ繰り出す繰出部122と、繰り出された肥料を苗植付装置200まで運ぶ施肥ホース123とが設けられている。
【0028】
苗植付装置200は、走行車体100の後方に、昇降リンク装置113により昇降自在に連結されている。苗植付装置200の上面には、後方に向けて下方へ傾斜し、マット苗を載置可能な苗レーン283を複数列備えた苗載台280が設けられており、苗載台280の各苗レーン283には、マット苗を、苗載台280の後部にある苗取出口281へ送る苗送りベルト282が設けられている。苗植付装置200の後端部には、苗取出口281に臨むマット苗から苗株を取り出して圃場に植え付ける苗植付具210が、苗載台280の各苗レーン283に対応して左右方向に並ぶように設けられるとともに、圃場の泥面を整地する複数のフロート220が設けられている。作業車両1は、苗植付装置200を下降させた状態で走行することにより、各フロート220に圃場の泥面を滑走させて整地させつつ、その整地跡に苗載台280から供給される苗を、苗植付具210により圃場に植付けられるように構成されている。
【0029】
また、苗植付装置200は、フロート220の左右両側に取り付けられた、施肥ホース123で運ばれた肥料を受ける施肥ガイド213と、施肥ガイド213の前側に設けられた、苗植付条の側部近傍に溝を作る作溝体214とを備えている。すなわち、作業車両1は、施肥装置120から供給される肥料を作溝体214によって形成される施肥用の構に落とし込むことができるように構成されている。したがって、作業車両1は、圃場に苗の植付をしながら施肥もすることができる。
【0030】
以下、作業車両1が苗の植え付けおよび施肥の作業をしながら走行することを作業走行と呼ぶ。
【0031】
作業車両1には、圃場に設けられた走行基準線を検出する基準検出装置であるステレオカメラ300が、車両前方の映像を撮影できるように取り付けられている。ステレオカメラ300は、走行車体100の車体前端部に設けられた左右一対のステー320(320L、320R)の上方に延びた支持柱310(310L、310R)支持柱310に取り付けられた、左カメラ300Lおよび右カメラ300Rから構成されている。作業車両1は、ステレオカメラ300により視差情報を有する映像を撮影することができる。
【0032】
また、図2に示されるように、苗植付装置200の左右両側には、圃場の表土面に線引きする線引きマーカ148が設けられている。線引きマーカ148は、上下に揺動自在に支持された軸部材であるマーカアーム148aと、このマーカアーム148aの軸端部に回転自在に支持されたマーカリング148bとを備えている。マーカリング148bは、外周に鉤爪状の複数の突起が形成された輪形部材であり、マーカアーム148aが下降す
ると圃場面に接し、上昇すると圃場面から離れるように構成されている。
【0033】
作業車両1の走行中にマーカアーム148aが降ろされると、マーカリング148bの外周の突起が圃場面に接触し、作業車両1の走行に伴って回転しながら、作業車両1の側方で、圃場面に連続的な窪みを形成する。作業車両1に線引きマーカ148が設けられていることにより、作業車両1の両側の、車両が走行した経路に沿って圃場面に点線状の印をつけることができる。この圃場面につけられた点線状の印が、作業車両1が再度圃場を走行する際の基準となる走行基準線となる。このように、作業車両1は、線引きマーカ148を備えていることによって、圃場を走行する際に、圃場面に走行基準線を引いて、圃場を再度走行する際の基準とすることができる。
【0034】
図3は、本発明の好ましい実施態様に係る作業車両1における電気系統を示すブロック図である。
図3に示されるように、図1の作業車両1には、制御系として、自機の位置情報を取得する位置情報取得装置450と、作業車両1の異常を検出する異常検出部460と、作業車両1の動作機器を制御する機器制御部470と、制御プログラムおよび各種データを格納する記録部481を備え、作業車両1の自律走行を制御する自動運転制御部480とが設けられおり、それぞれが車載LANで接続され、相互にデータ交換可能に構成されている。
【0035】
位置情報取得装置450は、GPSユニット451と、方位センサ452とを備えている。GPSユニット451は、GPS衛星からGPS信号を受信することで緯度や経度などの位置情報を検出できるように構成されている。したがって、作業車両1は、GPSユニット451が受信するGPS信号に基づいて、現在の自機の位置情報を取得することができる。方位センサ452は、作業車両1の瞬間的な動きや向きを検出するジャイロ加速度センサと磁気方位センサとを備えている。したがって、作業車両1は、方位センサ452により、現在の自機の走行方向の情報を取得することができる。
【0036】
また、位置情報取得装置450は、取得した作業車両1の位置情報および走行方向の情報を自動運転制御部480に送り、自動運転制御部480は、作業車両1の位置情報および走行方向の情報を受け取ると記録部481に記録するように構成されている。
【0037】
異常検出部460は、作業車両1のセンサ類である位置情報取得装置450やステレオカメラ300の状態、作業車両1の駆動系であるエンジン131やモータの状態、苗植付装置200の状態を監視して、それぞれが正常な状態にあるか否かを検出することができ、検出した情報を自動運転制御部480に送るように構成されている。具体的には、異常検出部460は、センサ類であれば、例えばGPSユニット451および方位センサ452の測定精度、ステレオカメラ300の動作状態、駆動系であれば、例えばエンジン131の回転数、車輪回転数、変速位置、燃料残量、苗植付装置200であれば、例えば苗残量、肥料残量、姿勢(上昇状態や下降状態)、苗植付具210の作業状態(苗植付運動を行っているか否か)の状態を検出することができる。
【0038】
機器制御部470は、自動運転制御部480からの指令に基づいて走行車体100に装備された動作機器に対して、油圧制御信号や電子制御信号を送るように構成されており、走行車体100に設けられているエンジン131を含む、駆動系に属する機器、電動モータ151によって図1のステアリングハンドル133bを回動可能な操舵部であるステアリング装置150を含む操舵系に属する機器を制御するとともに、昇降リンク装置113による苗植付装置200の昇降や苗植付装置200の動作を制御するように構成されている。
【0039】
また、機器制御部470は、液晶パネル50にされた作業者の操作に応じて、異常検出部460が検出した異常の情報、位置情報取得装置450が取得した位置情報、ステレオカメラ300が撮影した映像、自動運転制御部480の記録部481に記録された情報、および機器制御部470が制御可能な機器に関する情報を、液晶パネル50に表示できるように構成されている。
【0040】
自動運転制御部480には、走行経路を算定する経路算定部482と、自動操舵を行う操舵制御部483と、ステレオカメラ300が撮影した映像を処理する映像処理部484が構築されている。記録部481には、圃場の地図情報や圃場の境界線を規定する畦の位置情報、圃場で実施される作業に関する機器設定データ、例えば作業幅(作業車両1が一度の走行で苗を植え付け可能な幅)や植付条数などの作業情報、作業車両が走行した経路の位置情報の履歴が格納できるように構成されている。
【0041】
操舵制御部483は、機器制御部470に対してステアリング装置150を動かすように指令を出すことにより作業車両1の操舵を行うように構成されている。
【0042】
映像処理部484は、ステレオカメラ300の映像から、圃場10にある物体や、図2の線引きマーカ148により圃場10に作られた窪みを検出して、それらの視差情報から車両との距離を算出することができるように構成されている。したがって、作業車両1は、前方にある障害物や、線引きマーカ148により引かれた走行基準線を検出することができる。また、検出された障害物や走行基準線に関する情報は、記録部481に記録されるように構成されている。
【0043】
また、自動運転制御部480は、作業車両1の走行中に位置情報取得装置450によって所定の時間間隔で取得した位置情報を続けて記録部481に記録していくことで、走行した経路を、圃場上の複数の位置情報を線状につなげたデータである経路情報として取得することができるように構成されている。
【0044】
自動運転制御部480が圃場内で作業車両1を自律走行させるには、自機の位置情報の取得の他、圃場の形状を示す情報である圃場形状情報が必要となるが、自動運転制御部480は、作業者の操縦によって作業車両1が圃場の外周に沿って1周することで、圃場を囲う経路情報、すなわち、圃場形状情報を取得することができる。したがって、作業車両1は、作業走行を行う圃場についてあらかじめ圃場形状情報が設定されていなくても、簡易に圃場形状情報の取得を行なうことができる。
【0045】
図4は、作業車両1が作業経路21に沿って圃場10を自律走行する様子を示す模式図である。
図4に示されるように、走行基準線20は、畦12に囲まれた圃場10及び枕地11において作業車両1の線引きマーカ148によって圃場10に引かれた線であり、作業経路21は、図3の経路算定部482により作業車両1の作業走行のための進路として仮想的に設定された経路である。作業経路21は、経路情報として図3の記録部481に格納されている。
【0046】
作業車両1は、作業経路21に沿って圃場10上では直進しながら作業幅Wの範囲で苗を植付し、枕地11では苗の植え付けを一時停止した上でUターン旋回して再度圃場10に戻り、直進しながら苗の植付を再開することを繰り返し、圃場10上を万遍なく通過するように構成されている。したがって、作業車両1が苗植付装置200に苗植付運動をさせながら作業経路21に沿って自律走行することで、作業者によって操縦されることなく圃場10に苗を均等に植え付けることができる。
【0047】
図5は、作業車両1が走行した直線経路L1から作業経路21を算定する方法を示す説明図である。
図5に示されるように、作業経路21は圃場10においては圃場10上を進行する経路である直線経路L(L1~L7)と枕地11上を旋回する経路である旋回経路C(C1~C6)から構成されている。作業車両1が圃場10の端を縦断するように直線経路L1まで手動走行すると、直線経路L1の位置情報が図3の記録部481に記録される。図3の経路算定部482は、記録部481から圃場10の地図情報と、作業車両1の作業幅Wと、直線経路L1の位置情報とを取得すると、これらの情報から直線経路L2~L7と旋回経路C1~C6とを算定できるように構成されている。
【0048】
具体的には、経路算定部482は、直線経路L1から作業幅W離れた位置に、直線経路L1と平行な直線経路L2を算定するとともに、直線経路L1と直線経路L2をつなぐように旋回経路C1を算定する。さらに、直線経路L2から作業幅W離れた位置に、直線経路L2と平行な直線経路L3を算定し、直線経路L2と直線経路L3をつなぐように旋回経路C3を算定する。このプロセスを圃場10の端に行きつくまで繰り返すことで、直線経路L2~L7と旋回経路C1~C6とを算定することができる。
【0049】
そして、経路算定部482は、得られた直線経路L1~L7と旋回経路C1~C6とを組み合わせることで、圃場10全体の走行の基準となる作業経路21の経路情報を出力することができる。出力された作業経路21の経路情報は記録部481に記録される。
【0050】
このように、作業車両1は圃場10を一度、縦断(または横断)するように走行することによって、作業経路21の経路情報を算定でき、作業経路21に沿って自律的に作業走行ができるようになるので、圃場10全体を手動操縦によって走行する必要がなく、使用者の手間を省くことができる。
【0051】
また、記録部481は作業車両1の走行中に取得した車両の現在位置やステレオカメラ300により検出した走行基準線20の情報を走行履歴として記録しているので、圃場10全体を複数回走行することにより、圃場10全体に引かれた走行基準線20や、GPSからの位置情報の軌跡として得られた作業経路21を複数記録することもできる。
【0052】
経路算定部482は、このようにして記録部481に記録された走行履歴から複数の作業経路21を算定することで、当初に記録された作業経路21の位置情報を、後に算定された複数の作業経路21により補正することができるように構成されている。
【0053】
したがって、作業車両1は、圃場10を複数回走行することにより、作業経路21に沿った自律走行の精度を向上させることができる。
【0054】
また、経路算定部482は、作業車両1の走行中にも自動的に作業経路21の算定や補正をすることができるように構成されている。そのため、作業経路21の算定や補正のために作業車両1の走行を停止する必要がなく、作業車両1の作業効率が低下することがない。
【0055】
図6(a)は、作業経路21上に登録されている復帰地点15を示す模式図であり、図6(b)は、異常を検出した作業車両1が復帰地点15に移動する様子を示す模式図である。
【0056】
図6(a)に示されるように、復帰地点15は、作業車両1に異常があったときに作業車両1を安全な場所に待機させておくために、作業者によって圃場10ごとに登録される位置情報であり、復帰地点15の登録情報は、図3の自動運転制御部480の記録部48
1に記録されている。
【0057】
図6(b)に示されるように、圃場10について復帰地点15が登録されていると、作業車両1は、異常検出時に作業走行を中断し、駆動系に異常がない限り作業経路21上に設定された直近の復帰地点15まで自律走行によって移動するように構成されている。
【0058】
したがって、作業車両1は、圃場10を作業走行中に機体に異常が検出されると駆動系に異常がない限り圃場10について登録された復帰地点15に移動することによって、圃場10を脱して枕地11上に位置することができるので、作業車両1に異常が発生しても圃場10内に放置されることが少なくなり、メンテナンス性が向上する。
【0059】
また、作業車両1は、復帰地点15に移動したとき圃場10外の枕地11上の位置することができるように、登録可能な復帰地点15の位置を作業経路21の旋回経路C上に限定するように構成されている。
【0060】
復帰地点15が作業経路21上に限定されていることで、異常が解消したときに作業車両1が作業走行に復帰しやすく、異常発生に伴う作業効率の悪化を低減することができる。また、復帰地点15には、常に圃場10の外周にあたる枕地11上が選択されるので、異常が検出された作業車両1を確実にメンテナンス性が高い位置に誘導することができる。
【0061】
また、復帰地点15は、作業経路21とともに記録部481に圃場10ごとに登録されるので、圃場10の形状に適するように設定でき、どのような形状の圃場であっても異常が検出された作業車両1を確実にメンテナンス性が高い位置に誘導することができる。
【0062】
図7は、図6(a)の復帰地点15の登録プロセスを示すフローチャートである。
図7に示されるように、作業者によって圃場10の復帰地点15が入力されると(ステップS1)、自動運転制御部480は、記録部481を参照して作業経路21が算定されているかを確認する(ステップS2)。
【0063】
自動運転制御部480は、作業経路21が算定されていれば、入力された復帰地点15が作業経路21の旋回経路C上にあるかを判断する(ステップS3)。作業経路21が算定されていなければ、作業経路21が算定されるまで入力された復帰地点15の登録を保留して(ステップS2a)、作業経路21が算定されるのを待ってから(ステップS2b)、入力された復帰地点15が作業経路21上にあるかを判断する(ステップS4)。
【0064】
そして、入力された復帰地点15が作業経路21の旋回経路C上にあれば、自動運転制御部480は、入力された復帰地点15を圃場10の復帰地点15として記録部481に登録する(ステップS301)。
【0065】
このように、復帰地点15の登録が作業経路21の算定を待って行われるので、復帰地点15が旋回経路C上以外の場所に登録されることがなく、
【0066】
図8は、異常検出時の対応も含めた作業車両1の作業走行の工程を示すフローチャートであり、図9は、図8の異常検出処理の流れを示すフローチャートである。
【0067】
図8に示されるように、自動運転制御部480が、あらかじめ算定され、記録部481に記録されている作業経路21に沿って作業車両1の作業走行を開始すると(ステップS101)、作業走行が完了するまでの間、後述する異常検出処理が行われる(ステップS102)。自動運転制御部480は、位置情報取得装置450により自機の位置情報を取
得して、作業車両1が作業走行により作業経路21の終点を通過したことを確認すると、圃場10での作業が完了したと判断し(ステップS103)、圃場10について復帰地点15が登録されているかを確認する(ステップS104)。
【0068】
自動運転制御部480は、圃場10について復帰地点15が登録されていれば、復帰地点15の登録を解除してから(ステップS105)、復帰地点15が登録されていなければそのまま、記録部481に記録されている圃場形状情報に基づいて作業車両1に圃場10の外周に沿って作業走行させ、枕地11の作業を行う。(ステップS106)。
【0069】
図9に示されるように、異常検出処理が開始されると、異常検出部460によって作業車両1に異常が発生しているか否かが検査される(ステップS201)。異常検出部460により作業車両1に異常が検出されると、自動運転制御部480は、作業を中止するように機器制御部470に指令を出す。その旨の指令を受け取った機器制御部470は、昇降リンク装置113により苗植付装置200を上昇させるとともに、苗植付装置200の動作を停止させ、作業車両1の作業を中止させる(ステップS202)。
【0070】
また、自動運転制御部480は、操舵制御部483による作業車両1の自動操舵を中止すると(ステップS203)、異常検出部460が検出した異常が作業車両1の駆動系に関するものかを判断するとともに(ステップS204)、記録部481を参照して圃場10について復帰地点15が登録されているかを確認する(ステップS205)。
【0071】
検出された異常が作業車両1の駆動系以外に関するものであり(ステップS206)、かつ、圃場10について復帰地点15が登録されていれば(ステップS207)、自動運転制御部480は、位置情報取得装置450により現在位置している異常発生地点の位置情報を取得して記録部481に記録するとともに(ステップS208a)、記録部481を参照して現在位置から直近の復帰地点15に作業車両1を移動させる(ステップS209a)。
【0072】
その後、異常検出部460によって異常が検出されなくなると、自動運転制御部480は、作業車両1の異常が解消したと判断し(ステップS210a)、記録部481を参照して移動した復帰地点15から異常発生地点に戻って作業車両1に作業走行を再開させる(ステップS211a)。
【0073】
一方で、検出された異常が作業車両1の駆動系に関するものであるか、駆動系以外に関するものであっても、圃場10について復帰地点15が登録されていなければ、自動運転制御部480は、機器制御部470に作業車両1の走行を停止するように指令を出し(ステップS206b)、その旨の指令を受けた機器制御部470は、エンジン130を停止するとともに液晶パネル50にエンジン130を停止した旨を表示して作業車両1に搭乗している作業者に作業車両1の走行停止を報知する(ステップS207b)。
【0074】
その後、異常検出部460によって異常が検出されなくなると、自動運転制御部480は、作業車両1の異常が解消したと判断し(ステップS208b)、記録部481を参照して移動した復帰地点15から異常発生地点に戻って作業車両1に作業走行を再開させる(ステップS209b)。
【0075】
このように、作業車両1は、機体に異常が検出されると、作業が停止されるとともに自動操舵が停止されるので、機体の異常により不適切な作業が行われること、例えば、位置情報取得装置450やステアリング装置150の異常により作業車両1が作業経路21に沿わずに作業走行したり、昇降リンク装置113や苗植付装置200の異常により苗の植付不良が生じたりすることを防止することができる。
【0076】
また、圃場10について復帰地点15が登録されていない場合、作業車両1は走行を停止してその旨を作業者に報知するので、
【0077】
さらに、作業車両1は、圃場10の作業走行を完了すると、圃場10について復帰地点15の登録を解除するので、圃場10とは別の圃場で作業するときに、その別の圃場を離れて圃場10の復帰地点15に移動する危険性がなくなる。
【0078】
図10は、作業車両1の旋回経路Cへの進入の仕方を決定するプロセスを示すフローチャートである。以下では、作業車両1は、図4の作業経路21に沿って作業走行中であることを想定している。
【0079】
作業車両1は、苗植付装置200の植付条数によって作業幅が変わるので、それに応じて作業経路21の旋回経路Cの半径の大きさも変化する。作業車両1が所定の植付条数以上、経験的には植付条数が7以上となると、通常の走行で旋回経路Cへ進入するのでは、旋回経路Cに続く直線経路Lへの進入がずれることがある。そこで、自動運転制御部480は、作業車両1の植付条数に応じて旋回経路Cへ進入の仕方を変えるように構成されている。
【0080】
図10に示されるように、自動運転制御部480は、図5の直進経路L上を走行中に(ステップS401)、位置情報取得装置450から取得した自機の位置情報と記録部481に記録されている圃場形状情報とから、作業車両1が直進経路Lから図5の旋回経路Cに進入すると判断すると(ステップS402)、図1の苗植付装置200を上昇させて苗の植え付けを停止し(ステップS403)記録部481に記録されている作業車両1の植付条数を取得する。
【0081】
自動運転制御部480は、取得した作業車両1の植付条数が7以上であった場合(ステップS404)、所定距離後進した後に操舵制御部483から機器制御部470に旋回を行うよう指令を出す。その旨の指令を受けた機器制御部470は、作業車両1を所定距離後進させた後(ステップS405)、旋回経路Cを沿うように作業車両1を走行させる(ステップS406)。
【0082】
取得した作業車両1の植付条数が7未満であった場合は、自動運転制御部480は、そのまま操舵制御部483から機器制御部470に旋回を行うよう指令を出し、その旨の指令を受けた機器制御部470は、すぐさま旋回経路Cを沿うように作業車両1を走行させる。
【0083】
自動運転制御部480は、作業車両1が旋回経路C走行しきったと判断すると、苗植付装置200を下降させて苗の植え付けと直進走行とを再開する(ステップS407)。
【0084】
このように、作業車両1が所定の植付条数以上のとき、作業車両1が旋回経路Cに進入する前に所定距離後進するように自動運転制御部480が作業車両1の走行を制御することにより、植付条数が多くて旋回幅が大きい場合でも旋回経路Cから次の直進経路Lにずれなく移ることができ、作業車両1が確実に作業経路21に沿った作業走行を行うことができる。
【0085】
図11は、図1の作業車両1の苗移植装置200に設けられた苗載台280を示す略背面図である。
図11に示されるように、苗載台280の隣接する各苗レーン283は、仕切り板284により仕切られている。各苗レーン283の左側または右側の仕切り板284には、隣接する苗レーン283上のマット苗5を検出する苗検出センサ288が一定間隔で取り付けられている。苗検出センサ288は、対応する苗レーン283において、設置位置に近接するマット苗5があると、マット苗5を検出するように構成されている。
【0086】
したがって、各苗レーン283において、苗取り出し口281の側からいくつの苗検出センサ288がマット苗5を検出しているかにより、大まかな苗残量を把握することができる。また、一つの苗レーン283において、苗検出センサ288の並びの途中でマット苗5を不検出のものがあると、そこでマット苗5の送り不良が生じていることを把握することもできる。
【0087】
また、各苗検出センサ288には、LEDランプである苗位置表示ランプ286が設けられており、苗検出センサ288がマット苗5を検出すると点灯するように構成されている。苗位置表示ランプ286があることによって、視界の悪い夜間においても苗載台280の各苗レーン283におけるマット苗5の残量や送り不良を作業者が目視により把握することができるので、苗載台280に苗がないまま植付作業し、圃場に苗が植付されていない状態、すなわち欠株が発生することを抑止することができる。
【0088】
図12(a)は、苗検出センサ288と液晶パネル50の関係を示すブロック図であり、図12(b)は、図11の苗載台280に載せられたマット苗5の残量が表示された図1の作業車両1の液晶パネル50を示す説明図である。
【0089】
図12(a)および図12(b)に示されるように、機器制御部470は、苗植付装置200に設けられている苗検出センサ288が検出した図11のマット苗5の位置を苗位置情報として取得して、その情報を苗位置表示手段となる液晶パネル50に、図11の苗レーン283ごとに苗残量が把握できるようにグラフ状に表示するように構成されている。また、機器制御部470は、苗検出センサ288が検出した苗位置情報に苗送り不良があった場合、苗送り不良が生じている位置に苗送り不良警告51を表示させるように構成されている。
【0090】
したがって、作業者は、液晶パネル50を見ることにより、図1の作業車両1に搭乗したまま図11の苗載台280の各苗レーン283の苗残量および苗送り不良の有無を把握することができるので、作業車両1の背後を目視する必要がなく、作業効率を悪化させることなく欠株の発生をより抑止することができる。
【0091】
図13は、図11の苗載台280の苗レーン283に取り付けられた苗送り機構500を示す略平面図であり、図14は、図13の苗送り機構500の略側面図である。
【0092】
苗載台280は、各苗レーン283の下側に苗送りベルト282を備えており、苗レーン283に載せられたマット苗5を下方に送ることができるように構成されているが、苗レーン283の上側にはマット苗5を下方に送る機構がなく、苗送り不良が生じやすい。これに対しては、苗レーン283の上側に苗送り機構500を設けることで解決を図ることができる。以下にその説明を行う。また、以下では、苗レーン283上側の傾斜に沿った方向をV方向と呼び、V方向に垂直な方向をU方向と呼ぶ。
【0093】
図13および図14に示されるように、苗載台280の苗レーン283には、苗送り不良が生じたときにマット苗5を下方に送る苗送り機構500が取り付けられている。苗送り機構500は、マット苗5を押さえる苗送りバー502が取り付けられたアーム503と、アーム503をU方向にスライドさせるアーム昇降部504と、アーム昇降部504をV方向にスライドさせるスライド機構510が、金属製のプレート501に取り付けられて構成されている。
【0094】
プレート501は、仕切り板284から延びたプレート支持部505によって、マット苗5の苗送りの妨げとならないよう、苗レーン283からU方向に所定距離離れるように取り付けられている。また、アーム503も通常は、マット苗5の苗送りの妨げとならないようアーム昇降部504によってU方向に引き上げられている。
【0095】
図15(a)は、図14の苗送り機構500のアーム503が降ろされた状態を示す略側面図であり、図15(b)は、苗送り機構500のアーム503がスライドしてマット苗5を押し込んだ状態を示す略側面図である。
【0096】
図15(a)および図15(b)に示されるように、苗レーン283に苗送り不良が発生すると、まずアーム昇降部504によってアーム503がU方向に下ろされる。そして、アーム昇降部504がスライド機構510によってV方向にスライドされる。すると、苗レーン283の上側で止まっていたマット苗5が苗送りバー502によってV方向に押し込まれるので、苗レーン283の下側に移動する。
【0097】
このように、苗載台280の各苗レーン283に苗送り機構500を設けることで、苗送り不良が生じても苗送り機構500が解消できるので、欠株の発生をよくしするとともに、作業者が手作業で苗送り不良を解消する必要がなくなり、作業効率が向上する。
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0098】
例えば、作業車両1は、GPSユニット451によって自機の位置情報を取得するように構成されているが、位置情報を取得する方式は必ずしもGPSである必要はなく、人工衛星から電波を受信して自機の位置情報を取得できる衛星測位システム(GNSS;Global Navigation Satellite System)であればよい。
【0099】
また、図1の作業車両1は、走行基準線を検出するための基準検出装置としてステレオカメラ300を備えているが、走行基準線を検出するために必ずしもステレオカメラ300を用いる必要はなく、作業車両1に単一のカメラやレーダ、レーザセンサなどの他の検出装置を設けて走行基準線を検出可能にしたり、カメラやレーダなどの検出装置を搭載したドローンに走行基準線を検出させ、ドローンとの通信によって作業車両1が走行基準線に関する情報を取得できるようにしたりしてもよい。
【0100】
また、図12(b)の液晶パネル50は、苗送り不良が生じている位置に苗送り不良警告51を表示させるように構成されているが、警告は液晶パネル50に表示するものに限る必要はなく、液晶パネル50にスピーカを設けて所定時間苗送り不良が解消されない場合にはブザー音により作業者に苗送り不良の警告を報知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 作業車両
2 作業車両
5 マット苗
10 圃場
11 枕地
12 畦
15 復帰地点
20 走行基準線
21 作業経路
100 走行車体
101a 前輪
101b 後輪
110 メインフレーム
113 昇降リンク装置
120 施肥装置
121 肥料ホッパ
122 繰出部
123 施肥ホース
131 エンジン
132 エンジンカバー
133 操縦部
133a 操縦席
133b ステアリングハンドル
133c ステアリングポスト
135 フロアステップ
139 予備苗載台
148 線引きマーカ
148a マーカアーム
148b マーカリング
150 ステアリング装置
151 電動モータ
200 苗植付装置
210 苗植付具
213 施肥ガイド
214 作溝体
220 フロート
280 苗載台
281 苗取出口
282 苗送りベルト
283 苗レーン
284 仕切り板
286 苗位置表示ランプ
288 苗検出センサ
300 ステレオカメラ
300R 右カメラ
300L 左カメラ
310 支柱
310R 右支柱
310L 左支柱
320 ステー
320R 右ステー
320L 左ステー
450 位置情報取得装置
451 GPSユニット
452 方位センサ
460 異常検出部
470 機器制御部
480 自動運転制御部
481 記録部
482 経路算定部
483 操舵制御部
484 映像処理部
500 苗送り装置
501 プレート
502 苗送りバー
503 アーム
504 アーム昇降部
505 プレート支持部
510 スライド機構
C 旋回経路
L 直進経路
R 復帰点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15