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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】組織プリンタ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220519BHJP
   A61L 27/60 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
C12M1/00 A
A61L27/60
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019518928
(86)(22)【出願日】2017-10-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 CA2017051204
(87)【国際公開番号】W WO2018064778
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】62/405,704
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518353957
【氏名又は名称】ザ ガバニング カウンシル オブ ザ ユニバーシティ オブ トロント
(73)【特許権者】
【識別番号】513193738
【氏名又は名称】サニーブルック リサーチ インスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハキミ,ネイビッド
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リチャード イー‐シウ
(72)【発明者】
【氏名】ソトウデウファー,ムハンマド ハディ
(72)【発明者】
【氏名】バ,チィン
(72)【発明者】
【氏名】アミニ‐ニック,サイード
(72)【発明者】
【氏名】ジェシュケ,マーク ジー.
(72)【発明者】
【氏名】グンサー,アクセル
【審査官】田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0012225(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
A61L 27/60
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオポリマーシートおよび平坦な組織の制御されたインサイチュ形成および表面上の堆積のためのバイオプリンタであって、
a)支持フレームおよび前記支持フレームに取り付けられた印刷ヘッドであって、前記印刷ヘッドは、第1配列の押出チャネルを、および、少なくとも、動作時において前記第1配列の押出チャネルが前記表面に対して近位に隣接して配置され、前記印刷ヘッドの端部区域が、前記第1配列の押出チャネルおよび第2配列の押出チャネルが幅Wにわたるように前記幅Wを有するよう、前記第1配列の押出チャネルに対して配置された、前記第2配列の押出チャネルを、含む、支持フレームおよび印刷ヘッドと、
b)前記支持フレームに取り付けられたバイオポリマーの第1貯蔵槽であって、前記第1配列の押出チャネルは、前記表面上に対して押し出されるバイオポリマーの前記第1貯蔵槽に対して流体連通し、液体の第2貯蔵槽は前記支持フレームに取り付けられ、前記第2配列の押出チャネルは、前記押し出されるバイオポリマーとともに押し出される液体の前記第2貯蔵槽に対して流体連通し、QMの流速でバイオポリマーを吐出するよう構成されたバイオポリマーの前記第1貯蔵槽に関連付けられた第1吐出機構、および、QCの流速で前記液体を吐出するよう構成された液体の前記第2貯蔵槽に関連付けられた第2吐出機構を含む、第1貯蔵槽と、
)オペレータにより作動されたとき前記印刷ヘッドが前記表面の上方で垂直方向高さHに配置された前記表面に沿って事前選択された速度Vで駆動されるよう、前記支持フレームに取り付けられた駆動機構と、
d)前記駆動機構および前記第1吐出機構に接続され、かつ、前記駆動機構を作動させたときに、前記第1吐出機構はバイオポリマーを流速QMで、厚さtの層で吐出するようプログラムされた制御器であって、これは、前記流速QM=W・V・H(6(t/H)-6(t/H)+3(t/H)(μ/μ))/(6(t/H)(μ/μ)-6(t/H)+6)という条件を満足するものであり、ここで、μ は液体の粘度、μ はバイオポリマーの粘度である、制御器と
を含む、バイオプリンタ。
【請求項2】
前記駆動機構は可変速度Vを提供するよう構成され、前記制御器は、所与の速度Vに対して前記条件の速が維持されるよう前記流速QMを応答的に調整するように、前記第1吐出機構を制御するよう命令を用いてプログラムされている、請求項1に記載のバイオプリンタ。
【請求項3】
前記第2吐出機構は、前記制御器に対して動作可能に連結され、
流速QC=0.5W・V・(H-t)
という条件を満足する前記流速QCで前記液体を吐出するよう構成されている、請求項1に記載のバイオプリンタ。
【請求項4】
前記駆動機構は可変速度Vを提供するよう構成され、前記制御器は、所与の速度Vに対して前記条件が維持されるよう前記流速QMおよびQCを応答的に調整するように、前記第1吐出機構および前記第2吐出機構を制御するよう命令を用いてプログラムされている、請求項3に記載のバイオプリンタ。
【請求項5】
前記印刷ヘッドの前記端部区域は、前記第2配列の押出チャネルの上部表面から外向きに延長する張り出し区域を含み、前記張り出し区域は長さLだけ前記端部区域から外向きに延長する、請求項1~請求項4のうちのいずれか1項に記載のバイオプリンタ。
【請求項6】
Lは、Hの値に等しいか、またはHの値よりも大きい、請求項5に記載のバイオプリンタ。
【請求項7】
前記第1配列の押出チャネルは、前記第1貯蔵槽に接続された第1チャネルからなる二叉分岐チャネルネットワークを介して前記第1貯蔵槽に対して流体連通し、前記第1貯蔵槽に接続された第1チャネルは2つのチャネルに二叉分岐し、前記二叉分岐したチャネルは、チャネルの最終個数が前記第1配列の押出チャネルにおける押出チャネルの個数と等しくなるまで、さらに二叉分岐し、各チャネルの端部は前記第1配列の押出チャネルにおける対応する押出チャネルの端部の近位に配置され、前記第2配列の押出チャネルは、前記第2貯蔵槽に接続された第1チャネルからなる二叉分岐チャネルネットワークを介して前記第2貯蔵槽に対して流体連通し、前記第2貯蔵槽に接続された第1チャネルは2つのチャネルに二叉分岐し、前記二叉分岐したチャネルは、チャネルの最終個数が前記第2配列の押出チャネルにおける押出チャネルの個数と等しくなるまで、さらに二叉分岐し、各チャネルの端部は前記第2配列の押出チャネルにおける対応する押出チャネルの端部の近位に配置される、請求項1~請求項6のうちのいずれか1項に記載のバイオプリンタ。
【請求項8】
前記二叉分岐チャネルネットワークにおける前記チャネルの水力直径は、前記貯蔵槽から前記プリンタヘッドまで延長する各流入口から各流出口まで、マレイの法則にしたがって減少する、請求項7に記載のバイオプリンタ。
【請求項9】
吐出動作の際に前記バイオプリンタがハンドヘルド型バイオプリンタとなるようユーザがバイオプリンティングを把持および使用することを可能にするハンドルをさらに含む、請求項7に記載のバイオプリンタ。
【請求項10】
前記駆動機構は前記駆動機構に接続された1対のアクスル装着ローラを含み、前記印刷ヘッドは前記ローラ間に配置され、前記端部区域は、堆積角度が変化した場合でも、前記チャネル装置流出口と堆積表面との間で一定の間隙高さを維持する円形の案内機構を含み、動作時に前記駆動機構が作動すると、前記1対のアクスル装着ローラは、前記ハンドヘルド型バイオプリンタが前記速度Vで前記表面に沿って移動するよう、回転駆動される、請求項9に記載のバイオプリンタ。
【請求項11】
前記駆動機構は前記駆動機構に接続されたローラを含み、前記ローラは前記印刷ヘッドの後方に配置され、前記端部区域は、堆積角度に変化が生じた場合でも前記チャネル装置流出口と堆積表面との間で一定の間隙高さを維持するための円形の案内機構を含み、動作時に前記駆動機構が作動すると、前記ローラは、前記ハンドヘルド型バイオプリンタが前記速度Vで前記表面に沿って移動するよう、回転駆動される、請求項9に記載のバイオプリンタ。
【請求項12】
前記駆動機構は前記支持フレームに取り付けられた並進機構を含み、前記印刷ヘッドは前記並進機構上に取り付けられ、前記並進機構は前記表面に対して前記速度Vで前記プリンタヘッドを移動させるよう構成されている、請求項9に記載のバイオプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイオポリマーまたは工学的組織の層を、試験管内および/または生体内の用途のための表面上に、または創傷エリア上に、等角印刷するためのプリンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚はヒトの最大器官であり、細胞および細胞外マトリクスの成分が層状化された独特な組織を有する。この空間的構成が器官機能の部分的な原因となっている。急性の複雑な創傷または重篤な熱傷などを有する患者などの皮膚疾患を有する患者は多くの場合、広い皮膚領域を失い、そのために日和見感染および脱水症に対して無防備である。真皮、上皮、および下皮が破壊される全層創傷に関して、現在の治療選択肢としては、バクテリアまたは水の損失に対して一時的バリアを提供した後に、網目状の移植片として創傷領域の全域にわたり再分配(自家移植と呼ばれる)されるよう、皮膚を身体の健康な領域から分離することを含む。1937年におけるEarl C.Padgettにより導入されて以来、デルマトームは、皮膚を自家移植のためにドナー部位から外科手術的に採取するために使用されてきているが、それによりまた別の創傷が作られることとなる。網目状化は、被覆可能な創傷エリアが採取部位のサイズを越えることを可能にする。あまり頻繁には実施されない微細移植は、採取部位の最大100倍の面積を被覆することを可能にする。自家移植が現在の臨床業務における標準基準である一方で、大きい創傷、複雑な創傷または大きい熱傷を有する患者においては、自家移植のために利用可能なドナー皮膚が十分ではなく、大きい面積が移植されない状態で、または被覆されない状態で、残されてしまい、そのために結果が不良となってしまう。皮膚代替物のみならず細胞療法さえもが、この制限を克服するために導入された。
【0003】
天然ポリマーに基づく皮膚代替物および合成ポリマーに基づく皮膚代替物の両方が多数開発されてきた。組織工学的皮膚代替物は、市販されてはいるが、細胞の拡張/成長には長時間を要し、高額であるため、広く臨床的に適用されることがなかった。現在の標準基準の1つは、35年以上前に開発されたコラーゲン由来の創傷ドレッシングである。創傷ドレッシングは、残留する健康な細胞が、提供された細孔を通って移動することが可能であり、新しい真皮層が再構築されるにあたっては2~3週間を要する。細胞を創傷エリア上に直接的に堆積することが、より高速でより効果的な治療として提案されてきたが、細胞外マトリクス成分が欠如しているために、構造的完全性および皮膚組織構造体が欠如することとなる。細胞スプレー技術は、部分層創傷に対して拡張することなく低密度の自己細胞を均一に堆積するために臨床的に適用されてきており、改善された結果を示してきた
【0004】
ヒト組織の構造の様々な側面を再現する細胞担持・構造化バイオポリマー構成体を形成するために、付加製造手法が用いられる傾向が増大しつつある4~6。示された3Dバイオプリンティング手法は、フィラメントおよび微小液滴押出成形7、8、光造形法9、10、インクジェット印刷11、12、レーザ支援印刷13、14、レプリカ成形15を含む。これらの手法は主に、異なる細胞腫類およびバイオポリマーを用いる試験管内研究のために使用される。後者は「バイオインク」と呼ばれることもあり、天然バイオポリマー(例えばアルギン酸塩、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、アガロース、デキストラン)および合成バイオポリマー(例えばポリエチレングリコールおよびポリカプロラクトン)の両方を含む。選択されるタンパク質由来物質は、哺乳動物組織において最も豊富に含まれるタンパク質であるコラーゲンと、創傷治癒の様々な段階において関与するフィブリンと、を含む。細胞は、高い多孔率および含水量を有するこれらの柔らかいゲルに対して好都合である16、17。しかし、機械的に弱いゲルから作られたセンチメートルサイズのバイオプリンティング済みのシートを操作することは、基質支持体がない状態では困難な作業である。この制限を克服するための1つの方策は、合成ポリマーから支持構造体を印刷することを含む複合材料による手法を利用することである。他の問題点は、タンパク質由来のバイオポリマーに通常関連付けられる数分のオーダーの長いゲル化時間である。
【0005】
この限界を緩和するための方策は、より高速でゲル化するバイオポリマーの添加であり18、犠牲物質を印刷し、引き続き犠牲物質を除去することである。現在の3Dバイオプリンティング手法は、試験管内で組織関連のアーキテクチャを用いて工学的な構成体を画成することにおいては功を奏してきたが、生体内への移行は複数の工程を要する困難なプロセスであり、このプロセスは、天然組織の機械的特性を越える足場として合成支持物質を使用することに依存する。一方、注入可能なヒドロゲルを使用すること19、創傷床におけるミクロスケールのビルディングブロックの自己組み立て20、高速架橋結合する細胞を含有するヒドロゲル前駆体を噴霧すること21、22、様々な光架橋可能なカートリッジ充填剤および接着剤23~25、を介して示される組織のインサイチュ形成に対する現在の手法では、細胞およびバイオポリマーの空間的組織化に対する決定論的な制御が欠如している。
【発明の概要】
【0006】
構築された平坦なバイオ物質および組織をインサイチュ形成することを、堆積表面に沿ってプリンタヘッドを並進させることにより可能にする器具が本明細書で開示される。係る器具のハンドヘルド型実施形態では、細胞担持バイオポリマー溶液は、微細加工されたプリンタヘッドを移動させることを通して分散され、固定された平坦表面または創傷上に堆積される。プリンタヘッドは駆動機構を介して並進され得る。小型動物および大型動物内における生体内応用および臨床応用のための係る器具の異なる実施形態が開示される。係る器具の据置型実施形態は、平坦なバイオ物質および組織の連続的形成、およびロールツーロール処理に対しても好適である。
【0007】
本開示は、
a)支持フレームおよび支持フレームに取り付けられた印刷ヘッドであって、印刷ヘッドは、第1配列の押出チャネルを、および、少なくとも、動作時において第1配列が表面に対して近位に隣接して配置され、印刷ヘッドの端部区域が、第1配列および第2配列が幅Wにわたるように幅Wを有するよう、第1配列に対して配置された、押出チャネルの第2配列を、含む、支持フレームおよび印刷ヘッドと、
b)フレームに取り付けられた第1貯蔵槽であって、押出チャネルの第1配列は、表面上に対して押し出されるバイオポリマーの第1貯蔵槽に対して流体連通し、液体の第2貯蔵槽はフレームに取り付けられ、第2配列は、押し出されるバイオポリマーとともに押し出される液体の第2貯蔵槽に対して流体連通し、QMの流速でバイオポリマーを吐出するよう構成された第1貯蔵槽に関連付けられた第1吐出機構、および、QCの流速で液体を吐出するよう構成された第2貯蔵槽に関連付けられた第2吐出機構を含む、第1貯蔵槽と、
c)オペレータにより作動されたとき印刷ヘッドが表面の上方で垂直方向高さHに配置された表面に沿って事前選択された速度Vで駆動されるよう、フレームに取り付けられた駆動機構と、
d)駆動機構および第1吐出機構に接続され、かつ、駆動機構を作動させたときに、第1吐出機構はバイオポリマーを流速QM、厚さtの層で吐出するようプログラムされた制御器であって、これは、
QM=W・V・H(6(t/H)-6(t/H)+3(t/H)(μ/μ))/(6(t/H)(μ/μ)-6(t/H)+6)
という条件を満足する、制御器と
を含む、バイオポリマーシートおよび平坦な組織の制御されたインサイチュ形成および表面上の堆積のためのバイオプリンタを提供する。
【0008】
駆動機構は可変速度Vを提供するよう構成され得る。制御器は命令を用いてプログラムされ、係るプログラムの結果、第1吐出機構が流速QMを応答的に調整する。なお、係る応答的な調整は、所与の速度Vに対して流速状態を維持するものである。
【0009】
第2吐出機構は、制御器に対して動作可能に連結され得、
QC=0.5W・V・(H-t)
を満足する流速QCで液体を吐出するよう構成される。
【0010】
駆動機構は可変速度Vを提供するよう構成され得る。制御器は命令を用いてプログラムされ、係るプログラムの結果、第1吐出機構が流速QM及びQCを応答的に調整する。なお、係る応答的な調整は、所与の速度Vに対して流速状態を維持するものである。
【0011】
印刷ヘッドの流出区域は、第2配列の上部表面から外向きに延長する張り出し区域含み得、張り出し突出区域は長さLだけ流出区域から外向きに延長する。
【0012】
長さLは、Hの値に等しくてもよく、またはHの値よりも大きくてもよい。
【0013】
押出チャネルの第1配列は、第1貯蔵槽に接続された第1チャネルからなる二叉分岐チャネルネットワークを介して第1貯蔵槽に対して流体連通し得る。係るチャネルは2つのチャネルに二叉分岐し、これら二叉分岐したチャネルは、チャネルの最終個数が第1配列における押出チャネルの個数と等しくなるまで、さらに二叉分岐する。各チャネルの端部は第1配列における対応する押出チャネルの端部の近位に配置され、押出チャネルの第2配列は、第2貯蔵槽に接続された第1チャネルからなる二叉分岐チャネルネットワークを介して第2貯蔵槽に対して流体連通し得る。係るチャネルは2つのチャネルに二叉分岐し、これら二叉分岐したチャネルは、チャネルの最終個数が第2配列における押出チャネルの個数と等しくなるまで、さらに二叉分岐する。各チャネルの端部は第2配列における対応する押出チャネルの端部の近位に配置される。
【0014】
二叉分岐チャネルネットワークにおけるチャネルの水力直径は、貯蔵槽からプリンタヘッドまで延長する各流入口から各流出口まで、マレイの法則にしたがって減少する。
【0015】
バイオプリンタは、吐出動作の際にバイオプリンタがハンドヘルド型バイオプリンタとなるようユーザがバイオプリンティングを把持および使用することを可能にするハンドルをさらに含み得る。
【0016】
駆動機構は、駆動機構に接続された1対のアクスル装着ローラを含み得る。なお、ここでは、プリンタヘッドは、これらのローラ間に配置され、端部区域は、堆積角度に変化が生じた際にもチャネル装置流出口と堆積表面との間の間隙高さを一定に保持する円形の案内機構を含み、動作時に駆動機構が作動すると、この1対のアクスル装着ローラは、ハンドヘルド型バイオプリンタが速度Vで表面に沿って移動するよう、回転駆動される。
【0017】
駆動機構は、駆動機構に接続されたローラを含み得、ローラは印刷ヘッドの後方に配置され、端部区域は、堆積角度に変化が生じた際にもチャネル装置流出口と堆積表面との間の間隙高さを一定に保持する円形の案内機構を含み、動作時に駆動機構が作動すると、このローラは、ハンドヘルド型バイオプリンタが速度Vで表面に沿って移動するよう、回転駆動される。
【0018】
駆動機構は、フレームに取り付けられた並進機構を含み得、印刷ヘッドは、並進機構上に取り付けられ、並進機構は、表面に対して速度Vでプリンタヘッドを移動させるよう構成されている。
【0019】
実施形態について、以下の図面を参照して、単なる例示として、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】側面装着型ホイールを有する実施形態におけるハンドヘルド型バイオプリンタの概略図である。
図2】プリンタヘッドの後方に駆動機構を有する実施形態におけるハンドヘルド型バイオプリンタの概略図である。
図3】走査プリンタヘッドを有する実施形態におけるハンドヘルド型バイオプリンタの概略図である。
図4】コンベアベルト上に堆積する空間的に固定されたプリンタヘッドを有する実施形態におけるハンドヘルド型バイオプリンタの概略図である。
図5】縞パターンを有するシート形成に対する概略図である。
図6】平行な繊維の堆積および起伏を有するシートに対する概略図である。
図7】斑点パターンを有するシート形成の概略図である。
図8】3D印刷実施形態におけるプリンタヘッド設計内の微小チャネルネットワークの正面図である。
図9】プリンタヘッド設計の側面図である。
図10】熱エンボス加工または微小射出成形を使用して熱可塑性基板内に製造されたプリンタヘッドを示す図である。
図11】プリンタヘッドの両側に取り付けられたローラを有する実施形態におけるハンドヘルド型バイオプリンタの斜視図である。
図12】プリンタヘッドの両側に取り付けられたローラを有する実施形態におけるハンドヘルド型バイオプリンタの側面図および正面図である。
図13】プリンタヘッドの両側に取り付けられたローラを有する実施形態におけるハンドヘルド型バイオプリンタの分解図である。
図14】プリンタヘッドの後方に取り付けられたローラを有する実施形態におけるハンドヘルド型バイオプリンタの分解図である。
図15】プリンタヘッドの後方に取り付けられたローラを有する実施形態におけるハンドヘルド型バイオプリンタの斜視図である。
図16】プリンタヘッドの後方に取り付けられたローラを有する実施形態におけるハンドヘルド型バイオプリンタの側面図および正面図である。
図17】プリンタヘッドが移動するコンベア表面の上方における空間的に固定された位置に取り付けられた実施形態において、バイオポリマーシートは、コロイド状ペイロードを含み得る1つまたは複数のバイオポリマー前駆体溶液から作られ、架橋剤溶液(上)およびバイオポリマー溶液(下)はプリンタヘッド流出口において層状流を形成し、それにより境界面においてゲル化が開始する連続的シート形成の概略図である。
図18】2層型プリントヘッドにはポリマーおよび架橋剤溶液が供給され、溶液は、圧力制御された送達または流速制御された送達を介して、外部シリンジポンプから貯蔵槽により供給され、突出区域(上)および移動コンベアベルト(下)を有する据置型プリンタヘッドは、シート形成およびゲル化のための流体力学的境界状態を確立し、ステッパモータは速度Vでベルトを並進させる、コンベアベルトを有する構成におけるシート形成に対する実験的構成の概略図である。
図19】スケールバーが10mmである、バイオプリンタ実施形態1に対して製作された3D印刷された微細加工済みプリンタヘッドの写真である。
図20】架橋剤溶液で水和されたアガロース基質が両方の場合で使用され、画像は4度の角度で取得された、100μl液滴のフィブリン/HAバイオポリマー溶液の手動堆積後(左)およびハンドヘルド型バイオプリンタ実施形態1を使用して堆積されたシート(右)の側面画像の比較を示す図である。
図21】W=14mmであり、ハンドヘルド型バイオプリンタの実施形態1を用いて取得されたt=0.3mmのシートの代表的な光学的形状測定画像および断面図である。
図22】破線はQC/(W・V・H)=t/Hに対応し、ゲル化はモデルでは無視される、ゼロ圧力勾配状態を実現するためのμ/μ=0.01の粘度比に対して要求されるQC/(W・V・H)およびQM/(W・V・H)状態を示す分析モデル予測(実線)を示す図である。
図23】測定値がハンドヘルド型バイオプリンタ実施形態1に対して取得されたものである、無次元バイオポリマー流速、QM=QM/(WVH)の関数としての無次元シート厚さ、t=t/Hに対する測定値およびモデル予測を示す図である。
図24】測定値がハンドヘルド型バイオプリンタ実施形態1に対して取得されたものである、異なる厚さを有するフィブリン由来シートの正規化された濁度における時間依存性の変化に基づくゲル化動力学の特徴を示す図である。
図25】測定はハンドヘルド型バイオプリンタ実施形態1を用いて準備されたシートに対してなされたものである、走査型電子顕微鏡法の使用による異なるバイオポリマー成分を有する印刷されたシートの微細構造の特徴を示す図である。
図26】測定はハンドヘルド型バイオプリンタ実施形態1を用いて準備されたシートに対してなされたものである、フィブリン-HA/Col、フィブリン-HA、コラーゲン-アルギン酸塩、およびアルギン酸塩からなるシートに対して測定されたヤング率(左)および破断における伸長(右)を示す図である。
図27】左は、緑色蛍光微小粒子のペイロードを有する0.2mm厚さのアルギン酸塩シート(底部層)と、赤色蛍光微小粒子を有する0.1mm厚さのアルギン酸塩シートと、を引き続き堆積することにより準備された2層シートの共焦点画像を示し、右は、青色微小粒子を有する0.5mmフィブリン-HAシート(底部層)と、FITC標識コラーゲンを有する0.2mmアルギン酸塩-コラーゲンシート(中間層)と、赤色微小粒子を有する0.15mmアルギン酸塩シート(上部層)と、を引き続き堆積することにより準備された3層シートの共焦点画像を示す、スケールバーは0.1mmであり、データはハンドヘルド型バイオプリンタ実施形態1を用いて準備されたシートに対して取得された、図である。
図28】ケラチン生成細胞(k14およびファロイジンの共染色)が皮膚の2層構造に類似するFB(ファロイジン)の上部に印刷され、データはハンドヘルド型バイオプリンタ実施形態1を用いて準備されたシートに対して取得された、ヒト皮膚線維芽細胞(FB)を含む均質印刷されたシートを示す図であって、カルセイン染色により示される生細胞、および、蛍光性エチジウムホモダイマー-1により示される死細胞、を示す図、(b)10日間培養中に90%を越える細胞生存率を有する印刷されたフィブリン/HA/コラーゲン-IバイオインクにおけるFB生存率の定量的評価を示す図、(c)様々な濃度の細胞が、ヘキスト核染色を使用してバイオインクにおいて印刷および定量化され、印刷による細胞総数における損失は示されなかったことを示す図、(d)ステップ状の様式で印刷された2層構成を示す図、である。
図29】(a)1.25%フィブリン/0.25%コラーゲン/0.25%HA細胞外マトリクス物質内で印刷され、ヘキストおよびファロイジンを用いて染色されたFBが、12時間の間に細胞の付着および伸長を示す図である。(b)第3日までに細胞のグループ化および凝集化を示す、細胞核、アクチン、ケラチン-14に対する免疫蛍光染色を使用してフィブリンゲルに印刷されたヒトケラチン生成細胞(KC)の第0日と第3日との間の比較を示す図である。(c)3日以上にわたる培養のFBおよびKC細胞数の定量的評価を示す図である。スケールバー:0.1mm(a,b)であり、データはハンドヘルド型バイオプリンタ実施形態1を用いて準備されたシートに対して取得された。
図30】上は、ハンドヘルド型皮膚プリンタの使用による全層切除ブタ創傷の上部に対する0.25mm厚さのフィブリン-HA/コラーゲンシートのインサイチュ堆積を示す代表的な写真、および、マイクロ流体カートリッジを用いた創傷エリア内の堆積の拡大図を示し、下は、バイオ物質の層の堆積の5分後における第0日の対照エリアおよび創傷を示す、スケールバーが10mmであり、データはハンドヘルド型バイオプリンタ実施形態1を用いて準備されたシートに対して取得された、図である。
図31】(a)トリクローム染色が肉芽組織の形成および上皮再形成の程度を示すことを示す図である。(a)における矢印は新規に形成された肉芽組織と無損傷状態の皮膚との間の境界線を示し、矢尻は上皮形成エリアを示し、治療済み創傷の中央における矢尻は完全な上皮再形成を示し、その一方で、対照創傷における中央の矢尻は創傷中央部における上皮再形成ゾーンが存在しないことを示す。(b)ケラチン10染色が分化されたケラチン生成細胞の同等な程度を示すことを示す図である。印刷済み創傷の隅部では、より多数のケラチン陽性細胞が観察され、このことは、印刷済み物質フィブリン-HAシートが創傷治癒を向上させる可能性があるという概念を支持する。(c)α-SMA染色が、印刷済み創傷および対照創傷の両方において同等な個数の陽性細胞を明らかにすることを示す図である。スケールバー:1mm(a右、b左)、0.1mm(b右)、0.05mm(c)であり、データはハンドヘルド型バイオプリンタ実施形態1を用いて準備されたシートに対して取得された。
図32】微細加工されたプリンタヘッドを使用して縞パターンに組織化されたバイオ物質および細胞の概略図である。(b)縞状の単分子層の代表的な共焦点画像である。(c)流速比の関数としての相対的縞幅Wstripe/Wを示す図である。(d)圧力制御されたスポッティングに対する代表的な画像である。(e)200ms作動時間に対する貯蔵槽ヘッド圧力の関数としてのスポット体積を示す図である。スケールバーは2mm(b)、6mm(d)であり、データはハンドヘルド型バイオプリンタ実施形態1を用いて準備されたシートに対して取得された。
図33】(a)マイクロ流体カートリッジを使用して起伏を有するシートまたは平行な線維に組織化されたバイオ物質および細胞の概略図である。(b)画像は4度の角度で捕捉され、挿入体は、2度で2つの隣接する尖頭部の画像においてズームされていることを示す、8つの尖頭部を有する起伏を有するシートの代表的な明視野画像である。(c)4つの尖頭部を有するシートの断面の代表的な再構築された共焦点画像である。(d)第1層(緑)は均一であり、上部層は4つの平行な縞からなる、2層シートの断面の代表的な再構築された共焦点画像である。(e)互いに対して垂直である8つの平行な縞を印刷することにより印刷された網目パターンを示す図である。(f)アルギン酸塩シート内におけるフィブリン-HAの縞状の代表的な複数物質組織化を示す図である。スケールバーは5mm(b)、0.2mm(c、d)、4mm(e)、0.5mm(f)であり、データはハンドヘルド型バイオプリンタ実施形態1を用いて準備されたシートに対して取得された。
図34】(a)マウスの創傷上に堆積された縞パターンのフィブリン-HAシートを示す図である。(b)マウス切除創傷モデル上に直接的に堆積された縞パターンの蛍光画像を示す図である。(c)破線で描かれた円は創傷の縁部を示し、矢印は印刷が定常状態堆積に到達するまでの印刷の始動位相を示し、1μm緑色蛍光微小粒子はラベルとして使用される、8mm創傷モデル上に印刷された4つの縞の代表的な画像である。(d)インサイチュ印刷された縞状アルギン酸塩シート(実線)およびフィブリンシート(破線)における正規化された蛍光強度を示す図である。(e)傾斜角を有する平坦表面上に堆積されたバイオプリンティングされたフィブリン-HAシートの公称平面内解像度の推定値を示す図である。()はフローフォーカシング機能を有さないマイクロ流体カートリッジ上のバイオインク縞を供給するチャネルの幅を示し、(**)は内部フローフォーカンシグ機能を有する3D印刷されたマイクロ流体カートリッジより達成された改善された解像度を示す。スケールバーは2mmであり、データはハンドヘルド型バイオプリンタ実施形態1を用いて準備されたシートに対して取得された。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の様々な実施形態および態様について、以下に論じる詳細を参照しつつ説明する。以下の説明および図面は、本開示を例示するものであり、本開示を制限するものと解釈されるべきでない。これらの図面は原寸に比例しない。多数の固有の詳細は、本開示の様々な実施形態の完全な理解を提供するために、説明されたものである。しかし特定の事例では、周知の詳細または従来の詳細については、本開示の様々な実施形態に関して簡潔な議論を提供するために、説明しない。
【0022】
本明細書で使用される「含む」または「含んだ」という用語は、包括的および非限定的であるものとして解釈されるべきであり、排他的であると解釈されるべきではない。特に、明細書および請求項において使用される場合、「含む」および「含んだ」という用語およびこれらの用語の変化は、特定の特徴、ステップ、または成分が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップ、または成分を除外するものと解釈されるべきではない。
【0023】
本明細書で使用される「代表的」、「例示的」、および「例えば」という用語は、「例、事例、例示として作用する」を意味し、本開示で開示される他の構成に対して好適であるまたは有利であるものと解釈されるべきではない。
【0024】
本明細書出使用される「約」および「およそ」という用語は、例えば特性、パラメータ、および寸法における変化などの値の範囲の上限および下限内に存在し得る変化を含むことを意味する。1つの非限定的な事例では、「約」および「およそ」という用語は±10パーセント以下を意味する。
【0025】
他に定義しない限り、本明細書中に使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者により一般に理解される意味と同一の意味を有することが意図される。
【0026】
3Dバイオプリンティング方策は、異なる細胞腫類および細胞外マトリクス成分の異なる位置を制御することにより天然組織の構造要素を再構成することを目指すものである。提供される微環境および空間的組織化は、細胞の移動、伸長、凝集、拡散、分化、および機能に影響を及ぼす。現在のバイオプリンティングプラットフォームは、有望な試験管内結果をもたらすが、臨床的に関連する設定に対しては未だに適合しない。高い印刷速度、短縮化された準備および待機の時間、および器官スケールの印刷済み組織の現場での堆積または転送のためのコンパクトな解決策が、最も顕著な臨床的および経済的な難題の中のひとつである、急性の創傷または複雑な創傷を有する患者を最終的に治療するにあたり要求される。創傷に接着する皮膚代替物をインサイチュ形成することによりこれらの制限を克服するハンドヘルド型皮膚プリンタが本明細書で開示される。
【0027】
本開示は、
a)支持フレームおよび支持フレームに取り付けられた印刷ヘッドであって、印刷ヘッドは、第1配列の押出チャネルを、および、少なくとも、動作時において第1配列が表面に対して近位に隣接して配置され、印刷ヘッドの端部区域が、第1配列および第2配列が幅Wにわたるように幅Wを有するよう、第1配列に対して配置された、押出チャネルの第2配列を、含む、支持フレームおよび印刷ヘッドと、
b)フレームに取り付けられた第1貯蔵槽であって、押出チャネルの第1配列は、表面上に対して押し出されるバイオポリマーの第1貯蔵槽に対して流体連通し、液体の第2貯蔵槽はフレームに取り付けられ、第2配列は、押し出されるバイオポリマーとともに押し出される液体の第2貯蔵槽に対して流体連通し、QMの流速でバイオポリマーを吐出するよう構成された第1貯蔵槽に関連付けられた第1吐出機構、および、QCの流速で液体を吐出するよう構成された第2貯蔵槽に関連付けられた第2吐出機構を含む、第1貯蔵槽と、
c)オペレータにより作動されたとき印刷ヘッドが表面の上方で垂直方向高さHに配置された表面に沿って事前選択された速度Vで駆動されるよう、フレームに取り付けられた駆動機構と、
d)駆動機構および第1吐出機構に接続され、かつ、駆動機構を作動させたときに、第1吐出機構はバイオポリマーを流速QM、厚さtの層で吐出するようプログラムされた制御器であって、これは、QM=W・V・H(6(t/H)-6(t/H)+3(t/H)(μ/μ))/(6(t/H)(μ/μ)-6(t/H)+6)という条件を満足する、制御器と
を含む、バイオポリマーシートおよび平坦な組織の制御されたインサイチュ形成および表面上の堆積のためのバイオプリンタを提供する。
【0028】
一実施形態では、駆動機構は可変速度Vを提供するよう構成され得る。ここでは、制御器は命令を用いてプログラムされ、係るプログラムの結果、第1吐出機構が流速QMを応答的に調整する。なお、係る応答的な調整は、所与の速度Vに対して流速状態を維持するものである。
【0029】
一実施形態では、第2吐出機構は、制御器に対して動作可能に連結され得、
QC=0.5W・V・(H-t)という条件を満足する流速QCで液体を吐出するよう構成される。
【0030】
一実施形態では、駆動機構は可変速度Vを提供するよう構成され得る。ここでは、制御器は命令を用いてプログラムされ、係るプログラムの結果、第1吐出機構および第2吐出機構が流速QMおよび流速QCを応答的に調整する。なお、係る応答的な調整は、所与の速度Vに対して流速状態を維持するものである。
【0031】
一実施形態では、印刷ヘッドの流出区域は、第2配列の上部表面から外向きに延長する張り出し区域を含み、張り出し突出区域は長さLだけ流出区域から外向きに延長する。
【0032】
一実施形態では、長さLは、Hの値に等しいか、またはHの値よりも大きい。
【0033】
一実施形態では、押出チャネルの第1配列は、第1貯蔵槽に接続された第1チャネルからなる二叉分岐チャネルネットワークを介して第1貯蔵槽に対して流体連通する。係るチャネルは2つのチャネルに二叉分岐し、これら二叉分岐したチャネルは、チャネルの最終個数が第1配列における押出チャネルの個数と等しくなるまで、さらに二叉分岐し、各チャネルの端部は第1配列における対応する押出チャネルの端部の近位に配置される。押出チャネルの第2配列は、第2貯蔵槽に接続された第1チャネルからなる二叉分岐チャネルネットワークを介して第2貯蔵槽に対して流体連通する。係るチャネルは2つのチャネルに二叉分岐し、これら二叉分岐したチャネルは、チャネルの最終個数が第2配列における押出チャネルの個数と等しくなるまで、さらに二叉分岐し、各チャネルの端部は第2配列における対応する押出チャネルの端部の近位に配置される。
【0034】
一実施形態では、二叉分岐チャネルネットワークにおけるチャネルの水力直径は、貯蔵槽からプリンタヘッドまで延長する各流入口から各流出口まで、マレイの法則にしたがって減少する。
【0035】
一実施形態では、バイオプリンタは、吐出動作の際にバイオプリンタがハンドヘルド型バイオプリンタとなるようユーザがバイオプリンティングを把持および使用することを可能にするハンドルをさらに含む。
【0036】
一実施形態では、駆動機構は駆動機構に接続された1対のアクスル装着ローラを含み、プリンタヘッドはローラ間に配置され、端部区域は、堆積角度に変化が生じた際にもチャネル装置流出口と堆積表面との間の間隙高さを一定に保持する円形の案内機構を含み、動作時に駆動機構が作動すると、この1対のアクスル装着ローラは、ハンドヘルド型バイオプリンタが速度Vで表面に沿って移動するよう、回転駆動される。
【0037】
一実施形態では、駆動機構は駆動機構に接続されたローラを含み、このローラは印刷ヘッドの後方に配置され、端部区域は、堆積角度に変化が生じた際にもチャネル装置流出口と堆積表面との間の間隙高さを一定に保持する円形の案内機構を含み、動作時に駆動機構が作動すると、このローラは、ハンドヘルド型バイオプリンタが速度Vで表面に沿って移動するよう、回転駆動される。
【0038】
一実施形態では、駆動機構は、フレームに取り付けられた並進機構を含み、印刷ヘッドは並進機構上に取り付けられ、並進機構は表面に対して速度Vでプリンタヘッドを移動させるよう構成されている。
【0039】
組織印刷装置について、ここで図面および以下のパーツリストを参照して、説明する。
【0040】
【表1】
【0041】
支持フレームに取り付けられたプリンタヘッドを有する支持フレームを含む、表面上にバイオポリマーシートを制御された様式で堆積するためのバイオプリンタが本明細書で開示される。
【0042】
印刷されるシートを構成する前駆体溶液は、天然または合成のバイオポリマー溶液と、細胞および/または成長因子と、の混合物であるが、細胞外マトリクス物質または任意の構造アナログに限定されない。臨床使用に対して承認され、かつ、効果的であることが示されている合成ポリマーは、バッチ間変動を有さない大規模な合成の利点のために、潜在的に適用され得る。バイオポリマーは、1~20ccの範囲の標準的BDシリンジまたは3D印刷された特徴物に限定されず、かつ、所望の貯蔵温度に保持される、ハンドヘルド型プリンタ(図1図11図12図13)貯蔵槽のうちの1つに装填される。バイオポリマー溶液がプリンタヘッドを通って分散され、損傷部位上に堆積されると、バイオポリマー溶液は重合された後、凝固する。凝固は、異なる機構(イオン誘導、pH誘導、および温度誘導によるゲル化の他にも、酵素反応、および紫外線光により誘導される重合、およびこれらの組み合わせを含み得る)を介して誘導され得る。フィブリノゲンなどの天然バイオポリマーに対して、架橋は創傷床において血漿から始動され得る。プリンタヘッドは、第1配列の押出チャネルと、動作時にプリンタが1つまたは複数の層を吐出または押し出す際に第1配列が、層(単数または複数)が堆積される表面に対して近位に配置されるよう、第1配列に対して配置された第2配列の押出チャネルと、を含む。事前混合のための架橋剤を含み得るバイオポリマーは全般に、均一な被覆が創傷に、または、以下で説明されるようにバイオプリンタが構成される様式に応じて他の表面に、適用されるよう、第1配列のチャネルを通って分散される。架橋剤を含み得る封じ込め流体または2次的流体は、第2配列のチャネルを通って分散され、創傷または堆積表面に近接した側面上においてバイオポリマー被覆に送達される。架橋剤が封じ込め流体に加えられた場合、架橋剤はバイオポリマー層へと拡散的に輸送される。
【0043】
層がそこから吐出されるプリンタヘッドの端部区域(図8図9図10図19参照)は幅Wを有し、それにより第1配列および第2配列は、端から端までの距離がこの幅Wとなる。第1貯蔵槽は、基部プレートに取り付けられ、第1配列の押し出しチャネルに対して上流側で流体連通する。第1貯蔵槽は、動作時に表面上に直接的に押し出される粘度μのバイオポリマーを含む。封じ込め液体または2次液体の第2貯蔵槽がフレームに取り付けられており、第2配列に対して上流側で流体連通し、第2配列を通って、粘度μの2次液体が第1層の上部に対して共押出しされる。第1貯蔵槽に関連付けられた吐出機構はQMの体積流量でバイオポリマーを供給するよう構成され、第2貯蔵槽に関連付けられた他の吐出機構はQCの体積流量で2次液体または封じ込め液体を供給するよう構成されている。
【0044】
バイオプリンタは、作動されたときに表面の上方における垂直方向高さHに配置されたプリントヘッドが事前選択された速度Vで表面に沿って駆動されるよう、フレームに取り付けられた駆動機構を含む。制御器は、駆動機構および第1吐出機構に接続され、制御器は、駆動機構を作動させたとき、第1吐出機構が厚さtのバイオポリマーを流速QMで吐出するよう、プログラムされる。なお、この流速QMは、
QM=W・V・H(6(t/H)-6(t/H)+3(t/H)(μ/μ))/(6(t/H)(μ/μ)-6(t/H)+6)
という条件を満足する。
【0045】
図22を参照する。
多くの場合では、封じ込め溶液はバイオポリマー溶液の粘度、μよりもはるかに低い粘度、μを有し、関係はQM=W・V・tに簡略化される。Wは、プリントヘッドの設計特徴であり、したがって固定値であり、通常は、約5mm~約30mmの範囲内の値として選択される。後で論じるように、プリントヘッドの幅全体にわたり印加される力は、プリントヘッドにおいて第1配列の押出チャネルの幅の全域にわたり均一な吐出が保証されるよう、均等であると好適である。吐出されるバイオポリマーの厚さtは通常、約0.01mm~約1mmの範囲内である(図21および図23参照)。
【0046】
厚さtは、血管発生を生じさせることなく細胞に対して栄養素供給が可能となるよう、およそ1mmよりも小さい値であるべきである。バイオポリマーシートの厚さは、健康な皮膚の標的組織厚さ、および創傷の重大度に応じて選択され得る。皮膚損傷が、単に部分層創傷であり、真皮層が無損傷状態である場合、印刷されるシート厚さは約0.3mmである。基底膜に対しては、工学的組成物はわずか0.01mmのシートしか必要でない。真皮層も損傷を受けている(皮膚全層損傷)場合、より厚いシートが必要となる。皮膚における真皮層および上皮層は損傷に基づいて身体上で異なる厚さを有する。真皮層および上皮層は、連続的に印刷されるか、または同時に共押出しされる。真皮層および上皮層のそれぞれは、異なる組成および細胞種の装填を有し得る(図25図26図28、および図29参照)。
【0047】
Vは通常、約1mm/秒~約20mm/秒の範囲内であり、1~8mm/秒の範囲の速度が好適であり得る。低速ゲル化(例えば厚いシート、事前混合なし)の場合、より低い速度が好適であり(図14図16図24参照)、速度が低い場合には、シート厚さに対する測定値およびモデル予測が提供され、速度Vを変更することは、シート物質厚さtにおける変化に対応する。プリントヘッドの幅Wと速度Vとの積は、時間あたりの印刷可能面積を決定する。大きい皮膚損傷(標準サイズ男性における40%熱傷はおよそ1平方メートルに相当する)に対して、創傷を素早く被覆することは有益である。W=20mmの印刷ヘッドを用いると、プリンタは半時間以内で1平方メートルをカバーすることが可能である。Hは標的シート厚さ、tの少なくとも2倍の値でなければならない。Hは、0.15mm~2mmの範囲内で変動し得、tは、0.01mm~1mmの範囲内で変動し得る。
【0048】
上述のように、吐出機構および駆動機構は、バイオポリマー流速QMを与えるよう構成されている。この流速QMは、QM=W・V・tという条件を満足する。オペレータは標的厚さを決定する。速度Vはゲル化動力学に基づいて選択される。流速QM(およびQC)は、上記の関係式を使用して計算された所与のプリントヘッド設計(L、H、およびW)に対する値であり、ユーザインターフェースを通してコンピュータ上でオペレータにより選択される。一実施形態では、係るオペレータによる選択は、ハンドル(図2、および図15におけるパーツ4)上に設けられた単一のスイッチを介して実施されるであろう。
【0049】
駆動機構バイオプリンタは可変速度Vを提供するよう構成され得る。制御器は命令を用いてプログラムされ、係るプログラムの結果、第1吐出機構が流速QMを応答的に調整する。なお、係る応答的な調整は、所与の速度Vに対して流速状態を維持するものである。
【0050】
一実施形態では、液体の流速、QCも、特定の条件を満足するよう制御され得る。この場合、第2吐出機構も制御器に接続され、
QC=0.5W・V・(H-t)
という条件を満足する流速QCで液体を吐出するよう構成される。
【0051】
流速QMおよびQCの両者が上記の条件を満足するよう選択された場合、駆動機構は、可変速度Vを提供するよう構成される。制御器は命令を用いてプログラムされ、係るプログラムの結果、第1吐出機構および第2吐出機構が流速QMおよびQCを応答的に調整する。その結果、所与の速度Vに対して上述の流速状態が維持される。
【0052】
制御器は、流速QMならびにQCおよび横方向におけるバイオプリンタ移動の速度Vを示す視覚的ディスプレイを有するコンピュータマイクロプロセッサであり得る。QM、QC、およびVに対する値は、コンピュータを通して入力されると、対応するモータスピードがリアルタイムで更新されるであろう。ハンドル上に配置されたon/offスイッチは、ハンドヘルド型バイオプリンタの押し出しおよび/または横方向運動を開始および停止させるであろう。
【0053】
バイオプリンタは、プリンタヘッドの流出区域が第2配列の上部表面から外向きに延長する張り出し区域を含むよう構成され得る。この張り出し突出区域は、流出区域から長さLだけ外向きに延長する。なお長さLは、図17において示されるように、Hの値と等しいかまたはHの値よりも大きい。
【0054】
第1配列の押出チャネルは、第1貯蔵槽に接続された第1チャネルからなる二叉分岐チャネルネットワークを介して第1貯蔵槽に対して流体連通する。係るチャネルは2つのチャネルに二叉分岐し、これら二叉分岐したチャネルは、チャネルの最終個数が第1配列における押出チャネルの個数と等しくなるまで、さらに二叉分岐し、各チャネルの下流側端部は第1配列における対応する押出チャネルの端部の近位に配置される。第2配列の押出チャネルは上述の第1配列と同じように第2貯蔵槽に対して流体連通する。
【0055】
代替的に、バイオポリマーおよび架橋剤はプリンタヘッド内で事前混合され得る。この場合、貯蔵槽から送達される流体は押出チャネルに到達する以前に微細加工済み混合器を通過する。この構成では、封じ込め溶液は、ゲル化を促進することなく緩衝液からなり得る。この場合のシート厚さはt=((QM+QC,PREMIX)/WV)である。式中、QC,PREMIXは、事前混合のためにバイオポリマー溶液に加えられる架橋剤の体積流量である。
【0056】
代替的に、紫外線光源がカートリッジ流出口の上部に直接的に配置されてもよい。凝固はバイオポリマーのフリーラジカル重合により開始され得る。バイオポリマーが、ハンドヘルド型バイオプリンタに装填される前に光開始剤と混合されるか、または光開始剤がプリントヘッド上で直線に並んで混合される。バイオポリマーが損傷部位上に押し出される際、発光ダイオードまたはレーザダイオードにより生成された紫外線光のシートは、バイオポリマーシートを重合する機能を有し得る。この場合のシート厚さはt=(QM/WV)である。
【0057】
凝固機構は熱ゲル化によっても適用され得る。この実施形態では、バイオポリマー溶液は、貯蔵槽およびプリントヘッド内で加熱状態または冷却状態のいずれかで保たれる。バイオポリマーがカートリッジから流出して創傷エリアと接触すると、バイオポリマーはゲル化および凝固する。シート厚さはt=(QM/WV)である。
【0058】
二叉分岐チャネルネットワークにおけるチャネルの水力直径は、分配チャネルにおける流れ抵抗を増加させ、かつ堆積されるシートの均一性を確保するために、貯蔵槽からプリンタヘッドまで延長する各流入口から各流出口まで減少する。二叉分岐の各段階において流れ抵抗を増加する1つの方法はマレイの法則にしたがって娘分岐の水力直径を小さくすることである。マレイの法則によれば、輸送ネットワークにおける分岐の直径が、媒体の輸送および維持に起因すると考えられる仕事を最小化することが予測される。共通の母分岐から分離するn個の娘分岐に対して、マレイの法則によれば、r=r +r +r +…+r が成り立つ。式中、rは親分岐の半径であり、r,…rは娘分岐の半径である(Sherman, TF, J Gen Physiol, 1981)。後続の分岐アーキテクチャに対してチャネル深さが一定に保たれる一方でチャネル幅が大きくなるため、圧力を減少させるための抵抗が減少し、そのためにバイオ物質が閉塞する可能性が減少する(図8参照)。
【0059】
後に説明される図面で示される貯蔵槽および吐出機構の非限定的な例としては、制御器がステッパモータシャフトの回転を制御するよう、プランジャ上の歯付きギアと係合する歯付きギアベルトを、歯付きモータシャフトを介して駆動するモータ(例えばステッパモータなど)に接続されたプランジャを有するシリンジが挙げられる。この実施形態がステッパモータ、サーボモータ、DCモータ、空圧駆動器、または他種類の線形駆動器に限定されないことは明らかであろう。
【0060】
加えて、上述のモータ、ギア、および歯付きギアベルト以外の種類の吐出機構が使用され得る。例えば、矩形波圧力信号が空気充填された貯蔵槽頭隙に加えられ得る。圧力信号の周波数およびデューティサイクルを変化させるようArduino Megaマイクロコントローラを用いて制御されるソレノイドバルブが使用され得る(図7参照)。スポットサイズおよび堆積は、上方圧力レベルおよびバルブ開放時間を調整することにより、制御され得る。標的体積流量QMおよびQCも、圧力調節器を使用して貯蔵槽の上部圧力を個別的に制御することにより間接的に選択され得る。印加される流入口圧力と取得される流速との間の関係は、較正測定から異なる流体に対して取得され得る。
【0061】
マイクロ流体印刷ヘッドは平坦方向にバイオ物質を組織化することを可能にし得る。複数の貯蔵槽が層内の分配チャネルに取り付けられ得、縞構成で堆積され得る。堆積された縞の幾何学的形状および幅は、各貯蔵槽から流入するバイオポリマー溶液の相対的流速を調節することにより制御され得る(図5図6図32参照)。
【0062】
架橋剤およびバイオポリマーは、起伏を有するシートまたは平行な繊維を達成するために、平坦な幾何学的形状に共押出しされ得る(図6図33参照)。
【0063】
組織バイオプリンタは、例えば移動コンベア上に被覆を生成することが望まれる場合(図4図18参照)に、例えばバイオ物質および組織シートの連続的なロールツーロール処理を可能にするために、人間オペレータから独立的に取り付けられるよう構成され得る。
【0064】
他の実施形態では、バイオプリンタは、表面上で装置を片手で運用する臨床医によるハンドヘルドが可能となるよう構成され得る。この状況では、バイオプリンタは、臨床医による把持のためのハンドルを有するよう構成される。ハンドルは、プリンタが患者の創傷エリアの上方で移動される際に臨床医が把持するための速度制御スイッチまたはボタンを用いて、人間工学的に設計され得る。一実施形態では、速度制御スイッチは、スイッチが押されたときに1つの設定速度を与えるよう構成されてもよく、他の実施形態では、速度制御スイッチは、臨床医がスイッチを押下する程度に応じて可変速度を与えるよう構成されてもよい。
【0065】
ハンドヘルド型バイオプリンタに対して、駆動機構は、駆動機構に接続された1対のアクスル装着ローラを含み得る。その場合、プリンタヘッドはローラ間に配置され、プリンタヘッドの端部と表面との間の角度は人間オペレータにより維持される。プリントヘッドの流出区域は、回転軸から1駆動ホイール半径分だけ下方に配置され、押し出し方向は駆動ホイールに対して接線方向である。この構成は、堆積角度にわずかな変化が生じたとしても、安定したシート堆積を可能にする。プリントヘッドの底部側は堆積表面のごく近傍に配置され、Hは設計により維持される。プリンタヘッドがコンベアの上方で固定された角度で配置される場合、高さHは独立的に選択され、堆積の実施中は維持される。動作時、駆動機構が作動すると、1対のアクスル装着ローラは、ハンドヘルド型バイオプリンタが表面に沿って選択された速度Vで移動するよう、モータ(ステッパモータ、歯付きギア、駆動機構のギアベルト形成部分を含むがこれらに限定されない)により回転駆動される。
【0066】
代替的に、駆動機構は駆動機構に接続されたローラを含み、ローラはプリントヘッドの後方に配置される(図2)。この場合、プリントヘッドは、ローラの回転軸の周りで回転し得る様式で取り付けられる。バイオポリマーがそこから押し出されるプリントヘッドの端部区域はバネ機構により堆積表面と接触される。動作時、駆動機構が作動すると、ローラは、ハンドヘルド型バイオプリンタが表面に沿って選択された速度Vで移動するよう、モータ(ステッパモータ、歯付きギア、駆動機構のギアベルト形成部分を含むがこれらに限定されない)により回転駆動される(図14図15参照)。駆動機構は必ずしもステッパモータ、歯付きギア、および歯付きギアベルトに限定されない。他種類の駆動機構は、サーボモータおよび空気圧駆動からなり得る。
【0067】
代替的に動きは、オペレータが能動的にプリンタを移動させることにより達成されてもよい。この実施形態では、動きは、遊動輪を用いて、または、任意の運動センサなどの非接触式運動検出方法、加速度計、またはレーザ光を用いて、測定される。この場合、動きはコンピュータにより登録および計算され、バイオポリマーおよび架橋剤の流速を支配するシリンジポンプまたは空気圧は閉ループにおいて制御および調整される。
【0068】
代替的に、ハンドヘルド型バイオプリンタは、堆積中は静止状態に維持されるよう構成され得、プリンタヘッドのみが、プリンタヘッドが並進機構上に取り付けられた状態で駆動機構の一部を形成する並進機構を介して動かされる(図3)。並進機構は制御器に接続され、この制御器は、表面およびハンドヘルド型バイオプリンタの他の部分に対して選択された速度Vでプリンタヘッドを移動させるよう並進機構に命令するようプログラムされている。
【0069】
バイオプリンタ装置は、実質的に平坦または湾曲した表面上へのバイオポリマーシートの制御された堆積を可能にする。物質は平坦または湾曲表面上に、または直接的に創傷エリア上に、堆積される。シートは、均質的または異型の組成を有し得る(図20図27図32図33図34)。アスペクト比(幅対高さ、w/t)は10~3,000の範囲内である。
【0070】
バイオプリンタ装置は、実質的に平坦または湾曲した表面上へのバイオポリマーシートの制御された堆積を可能にする(図30図31図34)。物質は平坦または湾曲表面上に、または直接的に創傷エリア上に、堆積される。シートは、均質的または異型の組成を有し得る。アスペクト比(幅対高さ、w/t)は10~3,000の範囲内であり得る。
【0071】
印刷機構は均質に層状化されたシートを生産することに限定されない。本明細書で開示のプリンタを使用すると、より複雑名組織がボトムアップ手法からインサイチュで製作され得る。各層は所望の幾何学的形状および組成を有するよう調節され得る。任意の追加層が上述の層の上部に堆積され得る。
【0072】
本装置および本戦略の使用によるインサイチュバイオプリンティングの適用は、局部的手術および皮膚手術に限定されない。任意の組織接着剤、またはより複雑な幾何学的形状が、内部臓器に対して、および、手術において、適用および具体化され得る。
【0073】
本プリンタの適用は上述の細胞腫類に限定されない。IPS由来細胞などの他の細胞種類、バクテリアなどの他の微生物、および真菌は、本方法を使用して、インサイチュで印刷され、ヒドロゲルシート内で組織化され得る。負荷は、微小粒子、金および銀のナノ粒子、マイクロバブル、黒鉛、導電インク、および任意の他の混合物のエマルジョンを有し得、上記の物質の懸濁液も本方法を使用して印刷され得る。この方法の適用バイオ物質に限定されない。とりわけ美容用品、タトゥー、クリーム、局部的被覆、運動・曲げセンサ、導電インクがインサイチュでパターン化および印刷され得る。
【0074】
生体内および試験管内の両方の研究における本組織プリンタの使用について、ここで以下の非限定的な事例を用いて説明する。
【0075】
試験管内および生体内の研究
特に、生体内および試験管内の両方の研究が、組織プリンタのハンドヘルド型実施形態を使用して実施された。前者に対して、発明者らは、シャーレまたは複数ウェルを有するプレートの底部表面をヒドロゲル層(例えばアガロースまたはゼラチン)で被覆し、架橋剤溶液を用いてヒドロゲル層を水和させた。親水性および生物学的不活性を示す表面は、印刷整合性を保証し、培養の間の機械的支持を有するバイオプリンティングされた皮膚組織を提供する。ハンドヘルド型組織プリンタがバイオインク層を堆積した後、ゲル化が、下方から、および、上部に共押出しされた架橋剤層から、架橋剤の拡散的放出により、誘導された。用途に応じて、バイオプリンティングされた皮膚代替物は同一のシャーレで培養されてもよく、または、切断され、2~10分(シート厚さに応じて)後に、他のシャーレ、マルチウェルプレート、トランスウェルインサートに、または創傷部位に、転送され得る。生体内での直接的堆積に対する本アプローチの適合性を示すよう作用する事例研究として、われわれはバイオインク層を創傷床に対して直接的に堆積した。
【0076】
方法
アガロース基質の準備
脱イオン化(DI)水内の2%アガロース(UltraPure Agarose、16500100、Invitrogen)の溶液が、マイクロ波加熱により準備された。溶液は、殺菌済み正方形シャーレ(モデルZ692344、Sigma Aldrich)に注がれる前に摂氏60度に冷却されることを許可され、3mm厚さのゲルが生成された。ゲルは使用の前に室温で30分間で凝固した。アルギン酸ナトリウム由来のシートを準備するために50mM塩化カルシウム(CCL302、BioShop)がマイクロ波処理の前に溶液に加えられた。フィブリン由来シートの印刷の前に、PBS(10010023、Gibco)中の2mlの50IUトロンビン(T4648、Sigma Aldrich)が押し出しの前にアガロース基質を水和するためにピペット分注された。
【0077】
バイオインクの準備
3つの異なる組成を有するバイオインクが準備された。アルギン酸塩-コラーゲンシートに対して、アルギン酸ナトリウム(Pronva UPLVG、Novamatrix)がDMEM(11965-084、Gibco)および20mMのHEPES(15630080、Gibco)中に溶解され、0.1μmシリンジマイクロフィルタ(Millipore)を使用して濾過された。1型コラーゲン(rat tail、354249、Corning)は、PBS中の1MのNaOHを使用してpH7に均衡された。2つの原液が混合され、5mg/mlの最終濃度のコラーゲンおよび2%アルギン酸塩が得られた。溶液は使用の前に氷の上で保たれた。真皮層のためのバイオインクを準備するために、5%フィブリノゲン(F8630、Sigma)が摂氏37度で2時間にわたる穏やかな攪拌によりPBS中で溶解された。1%HA(sodium hyaluronate Pharma Grade 80、Novamatrix)がPBS中で溶解された。溶液は1:1の比率で混合され、次に濾過された。1型コラーゲン溶液はpH7となるようNaOHと均衡され、1.25%の最終濃度のフィブリノゲン、0.25%HA、および0.25%コラーゲンを得るために、濾過済みフィブリン/HA溶液と混合された。溶液は使用の前に氷の上で保たれた。上皮層のためのバイオインクは2.5%の最終濃度のフィブリノゲンおよび0.25%HAを用いて準備された。
【0078】
フィブリン由来シートを印刷することに対して、50IUトロンビンの層がフィブリノゲン由来の真皮および上皮のバイオインクの上方に共押出しされた。フィブリノゲンとトロンビンとの間の高速な酵素反応は、考慮される場合において制限された質量移動である。選択された手法は、トロンビン濃度およびシート厚さ、tに応じて数十秒~数分の範囲の時間尺度において凝固したシートの形成を堆積部位上において可能にした。ゲル化時間は直接的にシート厚さに依存する。コラーゲンおよびフィブリノゲンの混合物からなる真皮バイオインクに対して、フィブリノゲンのゲル化が、最初に発生し、このゲル化はトロンビンの拡散により誘導される。その結果、中性pHコラーゲンのより低速の熱誘導によるゲル化が進行する間、シート厚さおよび組成は維持される。
【0079】
アルギン酸塩由来のシートは、バイオポリマー層の上方における10mM塩化カルシウムの共押出しにより準備された。同様に、アルギン酸塩の高速イオン架橋結合は中性pHコラーゲンのより低速な熱ゲル化に先行した。シートのゲル化が完了した後、アルギン酸塩は、30分間にわたり1mg/mlアルギン酸塩リアーゼ(A1603、Sigma)においてシートをインキュベートすることにより取り除かれた。
【0080】
堆積された皮膚代替物の物理特性評価
堆積されたシートの物理特性評価は、シート厚さならびに接触角の測定、斑点ならびに縞のサイズ、および引っ張り強度の測定を含んだ。微細構造はn≧3の試料に対して走査型電子顕微鏡法(SEM)により特性評価された。
【0081】
シート厚さ
前駆体溶液は5%の0.2μm直径の蛍光微小粒子(FP-0245-2またはFP-0256-2、Spherotech)と混合された。シートは顕微鏡カバースライド上に転送され、デジタルカメラ(モデルRetiga 2000R Fast 1394、Q Imaging)を使用する共焦点顕微鏡(モデルA1、Nikon)を使用して撮影された。画像はImageJソフトウェアを使用して分析された。各試料上の5つのランダムな地点の厚さが平均され、合計で5つのランダムな地点が、各実験条件に対して選択された。シート厚さも、光学式表面形状測定器(モデルContour GT-K、Bruker)を使用して決定された。シートは、アガロース基質に取り付けられている間に切断され、表面形状測定器ステージに転送された。Vision64ソフトウェアプログラムが、シート厚さデータの分析およびエクスポートのために使用された。次に3DプロファイルデータがMatLabにインポートされた。報告された厚さデータは、試料上でランダムに選択された5つの地点のうちの各地点に対する0.5×0.5mmの対象領域における局所的平均に対応する。各実験条件に対して、n=3のシートが測定された。図21では測定データが示されている。様々な厚さを取得するためにこの研究調査で使用された流速は、図22で示されるモデルから導出される。図23では、モデル予測と比較して異なるバイオポリマーにおいて準備されたシートに対する測定データが示されている。
【0082】
接触角
われわれはアルギン酸塩-コラーゲン、フィブリン-コラーゲン、およびフィブリンのシートを、10mmの長さ、14mmの幅、および250μmの厚さを有するアガロース上に堆積した。並列試験では、同等体積のフィブリン-HAバイオインク、35μLがアガロース基質上にピペット分注され、培養器内で飽和空気(湿度100%)の状況下でゲル化することが許可された。堆積された液滴およびハンドヘルド型皮膚プリンタを使用して取得されたシートの形状が、基質平面に対して2度の傾斜角で液滴形状分析器(DSA30、KRUSS)を用いて写真撮影された。
【0083】
濁度測定
インサイチュ濁度測定(IST:in-situ turbidity measurement)が以下のようにして実施された。持続波アルゴンイオンレーザ(λ=488nm、200mW、Spectra-Physics)のビームが10倍拡張され、ミラーを用いて案内され、光学的に透明な測定区域を垂直に貫通し、増幅光検出器(Thorlabs)により収集された。シート堆積実験は、アガロースで被覆されたシャーレ内で、測定区域の上部で実施された。シャーレおよびアガロースの吸収は無視可能であると見出された。ハンドヘルド型組織プリンタが、異なる厚さ(100、200、400、および600μm)を有するフィブリン-HAバイオインクを、V=4mm/秒の堆積スピードでアガロース層の上部に堆積するために使用された。伝達されたレーザ光から生成された電圧信号(U)はオシロスコープ(Tektronix)を使用して取得された。ISTを定量化するために、オシロスコープ上の記録された電圧は、A=-log(U/U)=αlにより、吸収度に変換された。式中、Uはシートが存在しない状態でオシロスコープにより読み取られた電圧であり、αは吸収係数(cm-1)であり、lはシート厚さ、tに等しい光路の長さである。濁度、τ=(A/l)ln10が図24で示されるように一定時間にわたりプロットされた。濁度測定は、ハンドヘルド型組織プリンタのカートリッジが光路から出されたおよそ3秒後に記録された。
【0084】
縞および斑点サイズ
2つのシリンジのバイオインクが準備されたハンドヘルド型組織プリンタに装填された。2次バイオポリマー溶液は、蛍光性ナイルレッド微小粒子(FCM-1056-2、Spherotech)と、蛍光性粒子を有さない1次バイオポリマー溶液と、を含んだ。架橋剤溶液は外部シリンジポンプ(PH2000、Harvard Apparatus)を用いて供給された。縞パターンシートは専用のマイクロ流体カートリッジ設計を使用して堆積された。その微小チャネル構成は、バイオポリマーシートの形成を可能にした。ここでは、2次バイオポリマーの縞または斑点が周期的に1次バイオポリマー溶液内に組み込まれた。1次溶液および2次溶液の流速比を変動させることは、相対的縞幅を制御可能に変動させることを可能にした。ゲル化の後、縞パターンシートは共焦点のためにカバースライド上に転送された。報告された縞幅は、すべての縞に対して3つの地点(上部、中間、底部)において測定された個々の縞幅の集合平均を表す。ImageJが画像解析のために使用された。
【0085】
斑点パターンを取得するために、内蔵貯蔵槽(すなわち、シリンジポンプに代わる貯蔵槽)から2次バイオポリマー溶液を供給する他の専用のマイクロ流体カートリッジ設計が準備された。貯蔵槽に蛍光標識2次バイオポリマー溶液を充填した後、矩形波圧力信号が空気充填された貯蔵槽頭隙に印加された。ソレノイドバルブ(LHLシリーズ、Lee Company)は、Arduino Megaマイクロコントローラを用いて、圧力信号の周波数およびデューティサイクルを変化させるよう制御した。斑点サイズおよび体積は上方圧力レベルおよびバルブ開放時間を調整することにより制御された。
【0086】
引っ張り特性
コラーゲンおよびアガロースシートの一軸性引っ張り測定が、Tremblayら32により説明された設計に基づいて、受注製造の引っ張り試験機を使用して測定された。およそ10mm長さの水和された試料シートが、両側部において、サンドペーパーがクランプ表面上に取り付けられた受注製造のC字形状クランプにより保持された。クランプは、手動並進ステージ(MT1B; Thorlabs)を使用して垂直方向、zに配置された。引っ張り方向、xに沿った運動は、ボールベアリングスライド(37-360、Edmund Optics)上のリニアボイスコイルモータ(LVCM-051-051-01、MotiCont)により制御された。運動制御器(DMC-4143、Galil)は受注生産のLabVIEWソフトウェアプログラムを使用して扱われ、光学式エンコーダ(MII 1610S-40、Celera Motion)信号を用いてフィードバックモードでボイスコイルモータの移動を制御した。試料は0.01mm/秒のスピードで引っ張られ、破裂が生じるまで変位された。ロードセル(モデル31Low、Honeywell)が所与の変位における力を測定した。DAQカード(USB-1208LS、Measurement Computing)および増幅器(モデルUV-10、Measurement Computing)が、信号をロードセルから運動制御器に転送するために使用された。試料の長さおよび幅が、断面積を計算するために、ZeissおよびNikonのTi倒立顕微鏡を使用して評価された。後者と、モータ位置およびロードセル補正された力と、が組み合わされて、応力-歪み曲線が得られた。線形回帰が各試料のヤング率を計算するために、弾性領域に対して適用された。図26では、引っ張り測定からの結果が示されている。
【0087】
微細構造
アルギン酸塩、コラーゲン、およびフィブリン由来のバイオ物質は1時間にわたり室温でSorensenの緩衝液においてKarnovskyの固定液を用いて固定され、引き続き、30%~100%の範囲のエタノールを含む溶液を用いて連続的なエタノール洗浄において脱水された。次に試料は臨界点乾燥機を使用して乾燥された。30kVの加速電圧を使用する走査型電子顕微鏡(S-3400N、Hitachi)上での撮影の前に、金がスパッタされた。図25では、異なる組成を有する印刷されたバイオ物質シートの電子顕微鏡写真が示されている。
【0088】
試験管内特性評価
細胞供給源:
HDFは手術後に健康なヒトの通常皮膚から得られた。細胞は、コンフルエントに近い状態まで成長培地(DMEM、10%ウシ胎仔血清(FBS)および1%抗生物質/抗真菌剤(Ab/Am))、内で培養され、0.05%トリプシン-EDTA処理を用いて処理することにより、さらなる通路に分割された。ヒト臍帯表皮角化細胞(C-011-5C、Gibco Invitrogen)は、EpiLife培地内で1%HKGSおよび1%Ab/Amを用いて会社の説明にしたがって培養され、線維芽細胞の場合と同一のトリプシン-EDTA溶液を使用してトリプシン処理された。細胞通過3~5が本研究を通して使用された。
【0089】
細胞含有皮膚代替物の堆積
皮膚代替物の試験管内準備のために、真皮バイオインクは0.5×10個のヒト初代線維芽細胞を含み、次に、アガロース上にδ=500μm厚さのシートとして堆積された。シートは、コラーゲンの完全な熱ゲル化を可能にするために、摂氏37度で20分間にわたりインキュベートされた。上皮バイオインクは1.5×10個のヒト初代ケラチン生成細胞を含んだ。上皮層はt=200μmの厚さを有する真皮層の上部に連続的に印刷された。研究に応じて、異なるパターンの上皮層(均一または縞状)が真皮層の上部に堆積された。次にシートは培地(EpiLife培地、60μMのカルシウムを含む、GibcoTM)において浸漬された。シートはアガロース基質から取り外され、所望のサイズに切断され、マルチウェルプレートにおいて培養された。
【0090】
細胞生存率
ヒトの皮膚線維芽細胞およびケラチン生成細胞は、HKGS成長補助剤および1%ペニシリン-ストレプトマイシンとともにEpiLife培地において3日間にわたり、それぞれコラーゲン/フィブリンおよびフィブリンゲルにおいて培養された。次に細胞は、生細胞対死細胞の分析のために、細胞核染色液としてのヘキストに加えて、カルセインおよびエチジウムホモダイマーを使用して染色された。個々の96ウェルプレートにおけるバイオ物質中の細胞の共焦点画像が、3回の生物学的反復を用いて4倍および10倍の拡大率で取られた。生存率パーセンテージは、カルセインまたはエチジウムホモダイマーのいずれかに対して陽性に染色された細胞の個数を計数するためにImageJソフトウェアを使用して計算され、この個数は、図28aおよび図28bで示されるようにヘキスト核染色を使用して示された細胞の総数と、比較された。
【0091】
細胞密度
ヒト皮膚線維芽細胞およびケラチン生成細胞は前述の方法を使用して3日間にわたり培養された。細胞密度はヘキストを用いて細胞を染色し、共焦点顕微鏡検査を用いて撮影し、ImageJソフトウェアを使用して細胞の総数を自動計算することにより、観察された。
【0092】
免疫組織化学
シートにおける細胞は室温に置いて1時間にわたりHBSSにおいて4%パラホルムアルデヒドを用いて固定され、その後、HBSSを用いて洗浄された。係る細胞は、室温において30分にわたりHBSSにおいて0.5%TritonX-100を用いて透過処理された後、HBSSを用いて洗浄された。細胞は1時間にわたりブロック緩衝液(HBSS内のBSA0.25%TritonX-100における1%BSA)を用いてブロックされた。抗体はブロック緩衝液内で希釈され、摂氏4度で終夜インキュベートされた。初代抗体はフルオレセインファロイジン(Life Technologies)およびサイトケラチン14(Santa Cruz Biotechnology)を含んだ。ファロイジン染色のみが実施された場合では、封入ステップは次に実施された。ケラチン生成細胞とともに試料はHBSSを用いて洗浄され、次に2次Alexa Fluor抗体(Life Technologies)とともにインキュベートされた。3回の洗浄の後、スライドはDAPI(Vector Laboratories)を有するVectashield封入剤を用いて封入された。画像は、Apotome Axiovert全視野蛍光またはObserver Z1スピニングディスク型共焦点顕微鏡上で取られた(両者、Zeiss)。
【0093】
組織学
組織試料は、終夜摂氏4度で10%緩衝ホルマリンにおいて固定され、70%エタノールにおいて格納され、パラフィンにおいて包埋された。試料は創傷の中央において5μmの区域に切断された。トリクローム試薬は特記なき限りEMS(Hatfield)から取得された。簡略には、パラフィン包埋スライドはシトロソールを用いて脱パラフィン処理された後、様々な等級のエタノールを通して水に再水和された。スライドは摂氏60度で1時間にわたりブアン溶液に配置され、水中で洗浄された。ヘマトキシリン(Sigma)およびビーブリッヒスカーレット-酸性フクシン溶液が、それぞれ10分間にわたり、それぞれ中間に洗浄を行う状態で染色された。スライドは、15分間にわたりリンモリブデンタングステン酸において分化され、5分間にわたりアニリンブルーに転送された。スライドは2分間にわたり1%酢酸において洗滌および分化された。スライドは95%エタノールおよび無水エタノールを通して脱水され、その後、シトロソール中で洗浄された。スライドはSHUR/Mountキシレン由来液体封入剤(Triangle Biomedical Sciences)を用いて封入された。画像は光学顕微鏡(Leica DM2000LED)を使用して取得された。
【0094】
免疫組織化学染色のために、パラフィン包埋皮膚組織スライドは、シトロソールを用いて脱パラフィン処理された後、再水和された。抗原賦活物質(1X、Biocare)が、摂氏110度で4分間にわたり、予熱された抗原賦活化装置においてスライドに加えられた。試料は10分間にわたり3%Hを用いてブロックされ、次に、洗浄緩衝液(DI水中の0.05MのTris-HCl、0.15MのNaCl、0.05%のTween20)を用いて洗浄された。初代抗体はPBSにおいて希釈され、1時間にわたり室温でインキュベートされた。使用された初代抗体はサイトケラチン14(Santa Cruz Biotechnology)であった。次に、スライドは最初にヤギ抗マウス/ラットプローブ(Biocare Medical)を用いて、次にヤギ抗マウス/ラットHRP-ポリマーを用いて、15分間にわたりインキュベートされた。ベタゾイドDABクロモゲンキット(Biocare Medical)が5~10分間にわたり加えられ、反応は流水を用いて停止された。核染色は30秒間にわたりヘマトキシリンを用いて実施され、次に1.5%酸性アルコールに3回浸漬することにより分化され、10秒間にわたり0.1%重炭酸ナトリウム中で青色化された。区域は95%エタノールおよび無水エタノールを通してシトロソールに脱水され、前述のようにSHUR/Mountを用いて封入された。画像はLeicaDM2000LED光学顕微鏡を使用して取得された。
【0095】
シートの均質性および均一性
図20では、手動ピペット分注されたヒドロゲル前駆体(左)と比較して皮膚プリンタを用いて生成された(右)、t=300μmのシートの明視野画像が示されている。両方の画像は、水和されたアガロース層で被覆された平坦表面に対して4度の角度で取られた。ピペット分注されたヒドロゲルは、不均一な厚さを有するドーム形状の湾曲した構造を形成する。接触角が小さいにも関わらず、ヒドロゲルの均一の展開は、外辺部から進行するヒドロゲルのゲル化により、妨げられた。一方、ハンドヘルド型皮膚プリンタで印刷されたシートは一定の厚さtを示した。なぜなら、マイクロ流体カートリッジ上の平行なチャネルを使用してヒドロゲル前駆体溶液が横方向、yに沿って均一に分配され、高速なゲル化がシートに垂直な方向において均一に発生したためである。結果として、堆積されたt=300μm厚さ、およびw=14mm幅のシートは、光学式表面形状測定器スキャン(図20b)で示されるように、均一な厚さおよび鋭利な縁部を有した。アガロース層に対するシートの接触線に起因する不均一性は、各側面からシート幅の5%より小さい範囲でのみ生じる。
【0096】
次にわれわれは、印刷パラメータの関数として厚さtについて論じる。われわれは、2つの表面間の層状化された流体の層流について検討し、潤滑理論を適用する28。w/H>10であるため、われわれは水力直径を2Hとして近似する。われわれは、z方向における圧力勾配および慣性力については無視する。連続方程式および簡略化された運動量収支は、薄膜に沿った圧力勾配を説明する単一の楕円型微分方程式をもたらす。分析モデルが導出された。このモデルでは、バイオポリマーおよび架橋剤溶液の粘度(μ、μ)および流速(QC、QM)が考慮され、バイオポリマーシート厚さt(図22)が予測される。分析的に予測されたシート厚さは、バイオプリンティングされたフィブリン由来およびアルギン酸塩由来のシートに対して測定された値に対して良好な一致を示した(図23)。t=100μm~600μmの範囲のシート厚さは、考慮されるマイクロ流体カートリッジ(H=1mm)を使用して高い信頼性で取得され得る。より厚いシートを印刷する場合には、変更されたカートリッジ設計(H>1mm)が要求されることとなるであろう。加えて、より大きいシート厚さは、拡散長さを~t/2に、拡散時間を~t/4に、ゲル化時間を、増加させ、厚さを均一に減少させる。一定のシート堆積はゼロ圧力勾配の場合に対して達成される。所与の粘度μおよびμに対して、流速QMおよびQCは、圧力が堆積の方向に沿って不変(dP/dx=0)となり、逆流またはオーバーフローが回避されるよう、選択される。
【0097】
本明細書で開示のハンドヘルド型組織プリンタは、異なるバイオポリマーに対して適合する。ここで、われわれは、イオン架橋を使用する多糖類由来バイオポリマー(アルギン酸塩)およびタンパク質由来バイオポリマー(フィブリン)に対する、酵素反応に対する、適合性を示す。アルギン酸塩のみの場合およびアルギン酸塩-コラーゲンの場合では、ゲル化は塩化カルシウムとのイオン架橋により誘導される。フィブリンおよびフィブリン-コラーゲンシートは、フィブリノゲン前駆体とトロンビンとの間の酵素反応により準備される。上皮層バイオインクおよび真皮層バイオインクおよび架橋剤溶液の組成が表1にまとめられている。両方のバイオインクは生体適合性および生分解性が高く、試験管内培養または直接的生体内実装の前に、2次洗浄ステップを必要としない。
【表2】
【0098】
シートのゲル化の進行を理解することは、ハンドヘルド型組織プリンタの応用に関する極めて重要な側面である。ゲル化はバイオポリマー層と架橋剤層との間の境界面で開始され、バイオポリマーの厚さ全体を通って進行し、それによりシートの完全なゲル化が生じる。アルギン酸塩由来のシートに対して、イオン性ゲル化は、上方から同時供給された塩化カルシウムと接触すると急速に誘導される。フィブリンのゲル化はより低速の処理である。堆積されたシートアーキテクチャ(例えば多層または縞パターン上のシート)を保持するために、ゲル化が発生する間、われわれはヒアルロン酸を加えることによりフィブリン由来のバイオインクの粘度を増加させた。われわれはゲル化の動力学を推定するために体系的な濁度測定を実施した。図24では、t=100μm~600μmの範囲内で変動する、異なる厚さにおけるフィブリン-HAシートの濁度測定が示されている。ゲル化は、上方から(共押出し)および下方から(拡散的放出)のトロンビンの相互拡散により誘導された。
【0099】
多糖類由来(例えばアルギン酸塩)およびタンパク質由来物質(例えばフィブリン-コラーゲン)の両方およびこれらの混合物を制御可能に堆積する能力は、われわれが好適な印刷挙動および細胞の付着および機能に照らしてバイオ物質組成を選択することを可能にする。図25では、本明細書で考慮される4つのバイオインク組成の微細構造の代表的な走査型電子顕微鏡法(SEM)画像が示されている。図26では、堆積されたシートのヤング率および破断における伸長が示されている。アルギン酸塩由来の複合物はフィブリン由来シートと比較して、より高いヤング率を示す。後者は、より高い弾性と、破断における2.6倍の伸長を示す(一定歪み)。
【0100】
制御可能な厚さを有する多層化されたシートを取得するためにシートはハンドヘルド型皮膚プリンタを使用して連続的に堆積され得る。段階的な手法は、マトリクスまたは細胞組成が垂直(z)方向に変動する状態で多層化されたシートの堆積を可能にする。図27では、3つの連続的な層において形成されたシートの共焦点顕微鏡写真が示されている。第1に、0.1μm青色ポリスチレン粒子のペイロードを有する500μm層のフィブリンが堆積された。5分後に、アルギン酸塩とFITC標識タイプIコラーゲンとの混合物が第1層の上部に堆積された。30分後、0.2μmナイルレッド粒子を含む最終的な150μm厚さの層のアルギン酸塩が堆積された。
【0101】
縞および斑点パターンのシート
印刷方向(x)および横方向(y)の両方においてシート組成を制御する能力により、可動部分を必要とすることなく、構築されたシートの生産が可能になる。それぞれのバイオポリマー流速は、縞パターンが提供されるよう搭載型シリンジポンプを使用して(図5または図32a)、または斑点パターンが提供されるよう圧力制御を使用して(図7)、制御され得る。微細加工されたカートリッジの最小形状寸法よりも狭い縞は、流体力学的収束を利用することにより実現された29。ここで、われわれは、以前に開発された手法を使用することによる4つの縞の2次バイオポリマーの組み込みを示す30。相対的縞幅、wStripe/w、は、図32bおよび図32cで示されるように流速比Q/Qを変化させることにより、変更された。2次バイオポリマー溶液が加圧ウェルから供給され、時間依存性の上部圧力が印加されたとき、縞に代わって斑点がパターン化された。矩形波圧力信号の周波数およびデューティサイクルを操作することにより、異なる斑点サイズがもたらされ得る。後続の斑点間の距離は、バルブのoff時間および1次バイオポリマー溶液の流速により、管理される(図32d、e)。
【0102】
ハンドヘルド型組織プリンタの試験管内研究
ハンドヘルド型組織プリンタは、物質選択および印刷パラメータに起因する細胞生存率に影響を及ぼすことなく、哺乳動物細胞を堆積する能力を有する。試験管内実験に対して、われわれは、ヒアルロン酸、フィブリノゲン、およびI型コラーゲンを含むバイオインク組成物を選択した。フィブリノゲン成分のゲル化は、中性pHおよび室温におけるトロンビンの酵素活性により誘導される。ヒアルロン酸の添加は、細胞生存率に悪影響を及ぼすことなく、バイオインクの粘度および印刷適性を改善した。したがって印刷手法は、細胞に損傷を生じさせない低い(1/秒のオーダー)剪断速度により特性評価される。図28aおよび図28bでは、培養の10日後に実施された生/死アッセイに基づいて、フィブリン由来バイオ物質に包埋されたヒト皮膚線維芽細胞(HDFa)が90%を越える生存能力を示したことが示されている。われわれは、10万~1000万/mlの範囲の5つの異なる濃度の細胞に対して、元の細胞播種密度が、印刷されたシートに対するヘキスト核染色および共焦点顕微鏡検査を実施した後の時間0において得られた細胞密度と一致することを見出した。細胞またはバイオ物質の凝集塊または凝集体は、印刷の直後にはまったく観察されなかった。このことは、供給された細胞がバイオ物質内で均等に分散された状態に保たれたことを示すものである。
【0103】
FBは、フィブリン-コラーゲン-HAヒドロゲル前駆体と混合され、ハンドヘルド型組織プリンタを使用して印刷された。バイオプリンティングされたシートは印刷後の異なる時間点(0、3、6、および12時間)において核および細胞骨格に対して固定および染色された。結果は、細胞が形態に影響を及ぼすことなく3D足場に適応することを示唆する。なぜなら細胞は、印刷の最初の数時間以内(図29a)に、標準的な細胞培養状態に匹敵する伸長および付着を示すためである。供給された物質に対して進入および含有するにあたりホストから近傍の細胞に依存するIntegra(登録商標)などの無細胞足場と比較して、われわれの手法は、細胞の存続および周囲の微環境との相互作用を支援するために堆積の前に細胞と事前混合されたヒドロゲルを利用する31。これは、無細胞マトリクスと比較して、生体内におけるより高速な真皮層の再構築を促進する。
【0104】
ケラチン生成細胞(HEKa)は皮膚上皮層の主要な細胞成分である。ヒトKCは、125万/mlの濃度で混合され、われわれのフィブリン/HAバイオインクを使用してδ=200μm層において印刷された。コラーゲン-I物質は、創傷修復の途中にある上皮層を模倣するために、この成分から除外された。3日間にわたりKCシートを培養することにより、われわれは印刷されたケラチン生成細胞がこの3Dマトリクスにおいて通常の形態を示したことを示した(図29c)。第0日目において、細胞は個別的に分散され、シート内に均質に分配されている。3D培養の3日間以内では、印刷されたケラチン生成細胞は、z-スタック共焦点顕微鏡検査を使用して視覚化されたように凝集した形態を有した。このことは通常の上皮活動を示唆するものである。加えて、われわれは、ケラチン生成細胞も、縞を含む特異的パターンで組織化され得ることを示した。縞の幅および距離は、流体の体積流量、および図34aで示されるようにマイクロ流体プリンタヘッドの設計を調整することにより、管理され得る。ここで、wStripe=500μmを有する4つのケラチン生成細胞含有縞は、8mm幅シートにおいてパターン化され、ファロイジン染色を使用して視覚化された。
【0105】
皮膚の層状化されたアーキテクチャを模擬するために、ケラチン生成細胞および皮膚線維芽細胞の両方を含む2層状シートが堆積された(図28d)。第1に、コラーゲン/フィブリンマトリクス内の4×10細胞/mlの濃度の500μm厚さの層のヒト皮膚線維芽細胞が堆積された。第2に、フィブリン/HAマトリクス内に包埋された100μm層のケラチン生成細胞が真皮層の上部に堆積された。2層構成体の免疫染色は、2つの特定的であるが接続された層の細胞を用いて示されるように特異的な層状化された構造体における細胞区画化を明らかにした。細胞数は、細胞総数が3日間の培養期間にわたり増加したこと(これは、継続的な細胞成長および拡散を示唆する(図部29b))を示すために、ヘキスト核染色および共焦点顕微鏡検査を使用して定量化された。
【0106】
ブタモデルを使用する生体内堆積に関する事例研究
25kgの体重を有するオスのヨークシャーピッグが、Sunnybrook動物実験委員会による審査プロトコル(AUP #:16-600)にしたがって切除皮膚生検に曝露された。ピッグはSunnybrook Research Instituteにおいて好みに合わせて食料および水が与えられる状態で12時間の明暗サイクルで室温において個々の檻において収容された。給餌および日常的ケアが家畜動物職員により実施され、担当獣医師により監督された。標準的な給餌および動物ケアの標準処理手順が順守された。すべての動物は手術前の少なくとも6時間の断食が実施され、獣医師と一緒に入念に作成された標準化されたプロトコルを使用して日常的に評価された。疼痛薬物治療が適宜調整された。麻酔の導入後、毛が電気シェーバーを用いて除去され、その後、化学的除毛が実施された。手術エリアはポビドンヨードで消毒され、以前に標識されたエリアにおける皮膚切除が外科用メスを用いて実施され、手術の残りの部分は単極電気メスを用いて実施された。単極電気メスは止血のためにも使用された。
【0107】
ブタ皮膚は、ヒト皮膚といくつかの特性を共有する。そのためブタ皮膚は、臨床的に関連する設定において組織プリンタを利用することの実現可能性を評価するための理想的なモデルとなる。われわれは20mm×40mm全層切除皮膚創傷上に堆積させ、まったく物質を受容しなかった対側損傷と比較した(対照、n=4)。創傷は、手術前に動物の背中上に標識され、全層切除皮膚創傷が加えられた。切除の後、創傷は、300μmフィブリン-HAシートの直接的堆積(図30a~図30d)により被覆され、または、対照として、まったく被覆されなかった。出血は、創傷接着シートにより被覆された創傷において、およそ5分後に停止した。その一方で、対照的創傷は数十分後に止血を達成した。
【0108】
採取された治癒済み創傷(第20日目に屠殺)の顕微鏡的分析は、処理済み創傷および対照的創傷の両方が完全な肉芽組織を形成すること(図31)、および、処理済み創傷および対照的創傷の両方のコラーゲン堆積および細胞質のレベルが比較可能であることを、明らかにした。4つの対照的創傷のうちで1つの創傷のみが完全な上皮再形成を示し、その一方で、4つの処理済み創傷のうちで3つの創傷が完全な上皮再形成を有した(非顕著なパラメータ試験)。創傷治癒特性をさらに評価および比較するために、治癒済み創傷は、α平滑筋アクチン(α-SMA)およびケラチン10(K10)抗体を用いて染色された。α-SMAは、皮膚治癒の間、筋線維芽細胞により過渡的に表現され、皮膚治癒の進行を評価するためのマーカとして機能する。
【0109】
現在のデータは、対照的創傷と処理済み創傷と間の顕著な差異を示さない。K10に対する染色、上皮層における細胞の分化のマーカ、は、処理済み創傷における分化された細胞の程度と、対照との間の、顕著な差異を示唆しなかった。生体内結果は、皮膚代替物のインサイチュ堆積が、適用の直後に無害な止血バリアを提供することを、および、通常の上皮再形成および創面収縮を妨げないことを、示す。
【0110】
上述のように、20日後の実験の終了時において、ブタは安楽死され、創傷/瘢痕は摘出され、ホルムアルデヒドにおいて固定され、組織構造準備のために送られた。染色のための全組織はパラフィンにおいて包埋され、5μm厚さのスライスに切断され、トリクローム染色および免疫組織化学染色のために標準的ガラススライド上に配置された。染色のために、シトロソール(CitriSolv Hybrid(登録商標)、Decon Labs)を用いた脱パラフィン処理の後、組織を含有するスライドは室温で24時間にわたりブアン液(Bouin’s Fixative、Electron Microscopy Sciences)内でインキュベートされた。染色は以下のように、すなわち、ヘマトキシリン(Harris Hematoxylin Solution、Sigma-Aldrich)、ビーブリッヒスカーレット酸性フクシン(Electron Microscopy Sciences)、その後にアニリンブルー(Electron Microscopy Sciences)により、実施された。
【0111】
概要
構造化、標的表面に対する層状化されたバイオ物質および層状化された組織の制御されたインサイチュ堆積を可能にする技術的プラットフォームとしてのバイオプリンタが本明細書で開示される。利用可能なバイオポリマー堆積速度は、使用されるカートリッジおよびプリンタ前進速度に応じて、0.3~1.6cm/秒である。これは、大部分の押し出しを利用するバイオプリンタのうちの1つを少なくとも1オーダーの大きさだけ越える。皮膚の状況における線維芽細胞およびケラチン生成細胞に対して示す一方で、本発明者らは、この手法が広範囲な細胞種類に対して適合可能であると考えた。用いられたバイオ物質を越えて、発明者らは広範囲な天然バイオポリマー溶液および合成バイオポリマー溶液が本開示に対して適合可能であると考えた。
【0112】
工学的皮膚代替物(ESS)は、平坦表面(試験管内)または創傷床(生体内)に対して容易に堆積される。この手法は、普通であれば要求される追加的な洗浄およびインキュベーションステップの他に、弱く、かつ大アスペクト比の構成体の複雑な操作も回避する。ESSは臨床的に関連する速度で数分内に準備される。逆デルマトームは使いやすく、複雑なインサイチュ走査および多軸印刷ヘッド並進を要求しない。われわれは、オペレータトレーニングの要求されるレベルが通常のデルマトームに対して要求されるレベルに匹敵するものと期待する。
【0113】
本明細書で開示のハンドヘルド型組織プリンタは、手術室内での日常的使用のために設計されたコンパクトな器具(0.8kg未満の重量)である。ブタ創傷モデルに対するバイオポリマー堆積の選択された事例研究のために取得された生体内結果は、本方法が、臨床現場における創傷治癒研究に対する細胞、成長因子、細胞外マトリクス物質(ECM)の供給に対して貢献することを示唆する。
【0114】
本明細書における説明は例示的であり、本発明またはその応用を限定するものと解釈してはならない。説明において記載の特定のパーツまたはパーツ番号は、機能的均等物により置き換えられ得る。
【0115】
上述の特定的な実施形態は、事例として示されたものであり、これらの実施形態は様々な変更例および代替的な形態が可能であることが理解されるべきである。請求項が開示される特定の形態に限定されるものではなく、むしろ本開示の趣旨および範囲に属するすべての変更例、均等物、および代替例を含むものであると意図されることがさらに理解されるべきである。
【0116】
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