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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】土木構造物及び土木構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20220519BHJP
   E02B 3/14 20060101ALI20220519BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
E02D17/20 103G
E02B3/14 301
E02D29/02 308
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020129160
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022025950
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2021-06-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-02
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019323
【氏名又は名称】小岩金網株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515162442
【氏名又は名称】旭化成アドバンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】坂本 茂
(72)【発明者】
【氏名】関下 啓誠
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】森次 顕
【審判官】西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-183367(JP,A)
【文献】特開2009-046819(JP,A)
【文献】実開平06-067545(JP,U)
【文献】特開2017-025579(JP,A)
【文献】特開2015-193998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D17/20
E02D29/02
E02B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面上に連続して立設した複数の円筒篭と、
前記円筒篭の内部に充填した充填体と、
隣接する2つの前記円筒篭同士を連結した連結手段と、を備え、
隣接する2つの前記円筒篭が、相互に外周を一部重合させて構成した重合部を共有し
前記連結手段が、前記重合部内に配置した部材であり、
前記充填体が、前記円筒篭内に配置した袋状又は筒状のシートと、前記袋状又は筒状のシートの内部に充填した場所打ちコンクリートであり、
前記円筒篭内における前記充填体の内圧によって、隣接する前記円筒篭を前記連結手段に押し付けて固定したことを特徴とする、
土木構造物。
【請求項2】
前記連結手段が、前記重合部内に配置した袋状又は筒状のシートと、前記袋状又は筒状のシートの内部に充填した場所打ちコンクリートであることを特徴とする、請求項に記載の土木構造物。
【請求項3】
前記複数の円筒篭を上下に複数段積み上げたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の土木構造物。
【請求項4】
設置面上に複数の円筒篭を連続して立設する配置工程と、
隣接する2つの前記円筒篭同士を連結手段で連結する連結工程と、
前記円筒篭の内部に充填体を充填する充填工程と、を備え、
隣接する2つの前記円筒篭が、相互に外周を一部重合させて構成した重合部を共有し、
前記連結手段が、前記重合部内に配置した部材であり、
前記充填体が、前記円筒篭内に配置した袋状又は筒状のシートと、前記袋状又は筒状のシートの内部に充填した場所打ちコンクリートであり、
前記充填工程において、前記円筒篭内における前記充填体の内圧によって、隣接する前記円筒篭を前記連結手段に押し付けて固定することを特徴とする、
土木構造物の構築方法。
【請求項5】
前記連結工程が、前記重合部内に袋状又は筒状のシートを配置する工程と、前記袋状又は筒状のシートの内部にコンクリートを打設する工程と、を備え、前記コンクリートの硬化後に前記充填工程を行うことを特徴とする、請求項に記載の土木構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木構造物及び土木構造物の構築方法に関し、特に、設計・施工の自由度と構造の連続性を兼備し、施工性が高い、土木構造物及び土木構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
斜面の土留めや護岸等を目的として、布団篭を段積みしてなる土木構造物が設置される。特許文献1には、斜面前面に沿って連続配置した直方体状の布団篭の内部に中詰材を投入し、これを階段状に積み上げて構築した土木構造物が開示されている。しかし直方体状の布団篭からなる土木構造物は、湾曲した斜面に沿って連続配置する場合、前面側又は背面側に隙間が生じる。
これに対し、特許文献2には、直方体状の布団篭の隙間に配置することで、土木構造物の配列を斜面に沿って曲折させる、平面視台形の布団篭が開示されている。このような布団篭は、斜面の湾曲に応じて内角や幅を個別に設計する必要があり、コストが嵩む上、現場で内角や延長の微調整ができない。
一方、特許文献3には、円筒形の布団篭を連続配置し、布団篭の配列の外側から複数の結束チェーンで締め付けて固定する土木構造物が開示されている。この構造によれば、布団篭の連結方向によって、湾曲した斜面に沿って配置することも可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-69078号公報
【文献】特開2012-21321号公報
【文献】特開2015-193998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の円筒状の布団篭からなる土木構造物は、布団篭が側面で点状に接する構造であるため、構造の一体性に欠け、布団篭の接点部分が構造上の弱部となっている。
布団篭全体を外側から結束チェーンで締め付ければ、一時的に布団篭同士を緊結することができるが、中詰材が石材であるため、経年に伴い布団篭内の石材が空隙に寄ることで、布団篭が痩せて、長期的には結束チェーンが緩んで外れてしまう。
以上のように、直方体状の布団篭からなる土木構造物は、湾曲した斜面に沿って配置できず、一方、円筒状の布団篭からなる土木構造物は、湾曲した斜面に沿って配置できる反面、構造の一体性に欠けるという問題点がある。
また、いずれの土木構造物も、隣接する布団篭同士が側面で連結するため、延長の調整ができないという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、以上のような問題点を解決できる土木構造物、土木構造物の構築方法、及び円筒篭を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の土木構造物は、設置面上に連続配置した複数の円筒篭と、円筒篭の内部に充填した充填体と、隣接する2つの円筒篭同士を連結した連結手段と、を備え、隣接する2つの円筒篭が、相互に外周を一部重合させて構成した重合部を共有していることを特徴とする。
【0007】
本発明の土木構造物は、連結手段が、重合部内に配置した部材であってもよい。
【0008】
本発明の土木構造物は、連結手段が、重合部内に配置した袋状又は筒状のシートと、袋状又は筒状のシートの内部に充填した場所打ちコンクリートであってもよい。
【0009】
本発明の土木構造物は、充填体が、円筒篭内に配置した袋状又は筒状のシートと、袋状又は筒状のシートの内部に充填した場所打ちコンクリートであってもよい。
【0010】
本発明の土木構造物は、複数の円筒篭を上下に複数段積み上げていてもよい。
【0011】
本発明の土木構造物の構築方法は、設置面上に複数の円筒篭を連続配置する配置工程と、隣接する2つの円筒篭同士を連結手段で連結する連結工程と、円筒篭の内部に充填体を充填する充填工程と、を備え、隣接する2つの円筒篭が、相互に外周を一部重合させて構成した重合部を共有することを特徴とする。
【0012】
本発明の土木構造物の構築方法は、連結工程が、重合部内に袋状又は筒状のシートを配置する工程と、袋状又は筒状のシートの内部にコンクリートを打設する工程と、を備え、コンクリートの硬化後に充填工程を行ってもよい。
【0013】
本発明の円筒篭は、複数の横線材と複数の縦線材を組み合わせた溶接金網からなり、円筒篭の外周の少なくとも1か所に、縦線材の配列ピッチの内、一部に対応する縦線材を欠損してなる挿通窓を備え、隣接する2つの円筒篭の挿通窓を突き合わせることで、挿通窓内への横線材の通過を許容して、隣接する2つの円筒篭の外周を一部重合可能に構成したことを特徴とする。
【0014】
本発明の円筒篭は、半筒状の2つの分割篭を、複数の連結材によって一体に連結してなってもよい。
【0015】
本発明の円筒篭は、分割篭が、横線材の端部を折り返して形成したループ端を備え、連結材が、複数のピン部材であり、円筒状に組み合わせた2つの分割篭のループ端同士を重合させ、ピン部材をループ端の内部に挿入することで、2つの分割篭を連結可能であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の土木構造物、土木構造物の構築方法、及び円筒篭は以上の構成を備えるため、次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>隣接する円筒篭が重合部を共有し、充填体と連結手段が円筒篭を介して一体に連結する構造であるため、構造の一体性が高い。
<2>挿通窓の設置方向を選択することで延長方向を自由に変更できる。また、円筒篭のラップ長を任意に設定することで延長の調整を容易に行える。これらの調整を現場で容易に行えるため、設計・施工の自由度が非常に高い。
<3>施工場所で円筒篭を組み立て、内部にコンクリートを打設するだけで土木構造物を構築できるため、施工効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の土木構造物の説明図。
図2】本発明の円筒篭の説明図。
図3】分割篭と連結材の説明図。
図4】連結材の説明図。
図5】本発明の土木構造物の構築方法の説明図(1)。
図6】本発明の土木構造物の構築方法の説明図(2)。
図7】本発明の土木構造物の構築方法の説明図(3)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の土木構造物、土木構造物の構築方法、及び円筒篭について詳細に説明する。なお、円筒篭については、土木構造物の記述の中で説明する。また、本発明において「コンクリート」とは、モルタルを含んだ意味で使用する。
【実施例1】
【0019】
[土木構造物]
<1>全体の構成(図1)。
本発明の土木構造物Aは、斜面の土留めや護岸等の土木用途に用いる構造物である。本例では、土木構造物Aを、斜面前面に配置した土留め用擁壁として用いる例について説明する。
土木構造物Aは、設置面上に連続配置した複数の円筒篭1と、円筒篭1の内部に充填した充填体A1と、隣接する円筒篭1同士を連結した連結手段A2と、を少なくとも備える。
土木構造物Aは、隣接する円筒篭1の外周を一部重合させて重合部Rを構成した円筒篭1のラップ連結構造に一つの特徴を有する。
本例では土木構造物Aを、上下2段積み構造とし、上段の円筒篭1の列を、斜面の勾配に合わせて下段の円筒篭1より斜面側にずらして配置する。ただし土木構造物Aはこれに限らず、1段又は3段以上であってもよい。また、上下の円筒篭1を垂直方向に積み上げた直壁構造であってもよい。
【0020】
<2>円筒篭(図2)。
円筒篭1は、充填体A1及び連結手段A2の型枠の機能を有する部材である。
本例では、円筒篭1が、2つの分割篭10と、複数の連結材20の組合せからなる。詳細には、円筒状に組み合わせた2つの分割篭10を複数の連結材で一体に連結して、円筒篭1を構成する。
円筒篭1を、分割篭10の組合せとすることで、分割篭10を重ねた状態で保管、搬送できるため、空間を有効利用できると共に、搬送効率が良くなる(図3)。
【0021】
<2.1>分割篭(図3)。
分割篭10は、組合せて円筒篭1を構成する部材である。
分割篭10は、複数のアーチ状の横線材11と、複数の直線状の縦線材12を組み合わせた、半筒状の溶接金網からなる。
2つの分割篭10の内少なくとも一方には、縦線材12の一部を欠損してなる挿通窓13を備える。ここで縦線材12の「欠損」とは、製造当初から縦線材12を設置しないことに加え、設置した縦線材12を現場等において横線材11との交点付近で切断することを含む。
本例では分割篭10の両側辺に、ループ端12aを形成する。
【0022】
<2.1.1>挿通窓(図2)。
挿通窓13は、隣接する円筒篭1を重合するための切欠き部である。
挿通窓13は、縦線材12の配列ピッチの内、一部に対応する縦線材12を欠損してなる。すなわち、縦線材12の均一の配列ピッチ間における縦線材12の欠損部は、本発明の挿通窓13ではない。
直列する複数の円筒篭1の内、外側の2つの円筒篭1は、他の円筒篭1と連結する内側にのみ挿通窓13を備えていればよい。外側の円筒篭1以外の円筒篭1は、両側に挿通窓13を備える必要がある。
隣接する2つの円筒篭1の挿通窓13を突き合わせることで、他の円筒篭1の横線材11を挿通窓13内へ通過させて、2つの円筒篭1の外周を一部重合させることができる。
なお、本発明の土木構造物Aは、主に充填体A1と連結手段A2を躯体とみなす構造であり、円筒篭1は主として捨て型枠として機能する。従って、円筒篭1に欠損部である挿通窓13を設けても、構造上の弱点とならない。
【0023】
<2.1.2>ループ端(図4)。
ループ端11aは、後述する連結材20と組み合わせて2つの分割篭10を連結するための連結要素である。
ループ端11aは、横線材11の両端部を鉤状に折り返して構成する。詳細には、分割篭10を構成する各横線材11の両端部を内側に折り返し、これを縦線材12で上下に連結してなる。
ループ端11aを、外向きでなく内向きに構成することで、後述する充填体A1の充填時、充填体A1の内圧によって、ループ端11aの先端がループを閉じる方向に押し潰されるため、ループ端11aの変形による連結材20の離脱、及びこれによる円筒篭1の分解を防ぐことができる。
【0024】
<2.2>連結材(図4)。
連結材20は、2つの分割篭10を連結するための部材である。
本例では連結材20として長尺のピン部材を採用する。
連結材20の長さは、円筒篭1の高さに対応させ、連結材20の頭部は鉤状に下向きに折り返す。
2つの分割篭10を円筒状に組み合わせ、ループ端11a同士を重合させた状態で、ループ端11aの内部に連結材20を差し入れることで、2つの分割篭10を簡易かつ確実に連結することができる。
なお、連結材20はピン部材に限らず、例えばコイル状の鉄線を採用してもよい。詳細には、円筒状に向かい合わせた2つの分割篭10の端部の縦線材12同士を突き合わせ、コイル状の鉄線を巻き付けることで、分割篭10同士を連結する。
この場合、分割篭10にループ端12aを設ける必要はない。
【0025】
<3>充填体。
充填体A1は、円筒篭1内に充填して、土木構造物Aの躯体を構成する部材である。
本例では、充填体A1として、円筒篭1の内部に配置した布製型枠A1aと、布製型枠A1aの内部に打設したコンクリートA1bの組合せを採用する。
本例の布製型枠A1aは、不織布性を有底状に縫製した袋体からなる。ただし袋体の素材は、不織布でなく、織布、編地、フェルト、樹脂シート等であってもよい。
布製型枠A1aの寸法は、円筒篭1の幅と高さに対応させる。
布製型枠A1a内にコンクリートA1bを打設し、コンクリートA1bを硬化させることで、布製型枠A1a内のコンクリートA1b、布製型枠A1aの布目に浸み込んだコンクリートA1b、布製型枠A1aの側面に食い込んだ円筒篭1の鉄線、及び後述する連結手段A2の布製型枠A2aの布目に浸み込んだコンクリートA2bが、一体化する。
なお、充填体A1は布製型枠A1aに限らず、一般的な土木工事用シートを袋状又は筒状に構成したものを用いてもよい。例えば、コンクリートA1bの粘度が十分に高ければ、円筒篭1の内部に土木工事用シートを筒状に配置し、その内部にコンクリートA1bを打設することで、コンクリートA1bを漏らすことなく筒内に保持することができる。
【0026】
<4>連結手段。
連結手段A2は、隣接する円筒篭1同士を連結する手段である。
本例では、連結手段A2として、重合部Rの内部に配置した布製型枠A2aと、布製型枠A2aの内部に打設したコンクリートA2bの組合せを採用する。
布製型枠A2aの寸法は、重合部Rの幅と高さに対応させる。
連結手段A2における布製型枠A2a及びコンクリートA2bのその他の構成は、前述した充填体A1における布製型枠A1a及びコンクリートA1bと同様であるので、ここでは詳述しない。
【0027】
<5>土木構造物の構築方法。
本発明の土木構造物Aは、例えば、組立工程、配置工程、連結工程、充填工程、及び積上工程からなる以下の一連の手順によって構築することができる。
【0028】
<5.1>組立工程。
所定の数の円筒篭1を組み立てる。詳細には、一対の分割篭10を円筒状に組んで各ループ端12aを重ね合わせ、ループ端12aの内部に連結材20を挿入することで、分割篭10を一体に連結する。
本例の土木構造物Aは、充填体A1が布製型枠A1aとコンクリートA1bの組合せからなるため、円筒篭1に蓋網と底網を設ける必要がない。
このため、蓋網等の円周を円筒篭1の縁にコイル連結する煩雑な作業が不要であり、施工性が高い。
【0029】
<5.2>配置工程(図5)。
組み立てた円筒篭1を、斜面に沿って連続配置する。この際、隣接する円筒篭1の横線材11を、相互に挿通窓13に挿入して、円筒篭1を一部ラップさせた重合部Rを構成する。
なお、組立工程と配置工程とを分けず、円筒篭1を設置場所で直接組み立ててもよい。
本発明の土木構造物Aは、円筒篭1の縦線材12を、任意の位置でカットすることで、挿通窓13の向きを変え、円筒篭1の連結方向を現場で設定することができる。
また、縦線材12のカット本数を選択することで、重合部Rの幅を変えて、円筒篭1の延長を現場で自由に調整することができる。
【0030】
<5.3>連結工程(図6)。
隣接する円筒篭1同士を、連結手段A2で連結する。詳細には、2つの円筒篭1が共有する重合部Rの内部に、上方に口を開いた布製型枠A2aを設置し、布製型枠A2aの内部にコンクリートA2bを打設する。
コンクリートA2bの打設によって、布製型枠A2aが外向きに膨らんで、重合部Rを限界まで押し広げる。
コンクリートA2bの打設後、布製型枠A2aの袋口をコンクリートA2bの液面上に折りたたむ。これによって、袋口の布目に未硬化のコンクリートA2bが滲み込んで、コンクリートA2bと一体化する。
コンクリートA2bの硬化によって、重合部Rが最大に開いた状態で固定されて、円筒篭1同士が堅固に連結される。
【0031】
<5.4>充填工程(図7)。
円筒篭1の内部に充填体A1を充填する。詳細には、円筒篭1の内部に、上方に口を開いた布製型枠A1aを設置し、布製型枠A1aの内部にコンクリートA1bを打設する。
打設後は、連結工程と同様に、布製型枠A1aの袋口をコンクリートA1bの液面上に折りたんで一体化させる。
コンクリートA1bの充填によって、布製型枠A1aが外向きに膨らんで、円筒篭1を外向きに押し広げる。
同時に、充填体A1の布製型枠A1aの側面が、円筒篭1の鉄線を挟んで、連結手段A2の布製型枠A2aの側面に押し付けられ、充填体A1の布製型枠A1aの布目に滲んだコンクリートA1bが硬化することによって、充填体A1、連結手段A2、及び円筒篭1が一体に連結した、土木構造物Aが構築される。
【0032】
<5.5>積上工程。
土木構造物Aを複数段の積層構造とする場合には、必要に応じて下段の土木構造物Aの背面を埋め戻し、上述した<5.1>~<5.4>の手順で、下段の土木構造物Aの上方に上段の土木構造物Aを積み上げる。
【実施例2】
【0033】
[充填体と連結手段に石材等を用いる実施例]
実施例1では、充填体A1及び連結手段A2をそれぞれ、布製型枠とコンクリートの組合せとしたが、これに限られない。
本例では、充填体A1及び連結手段A2として、40~150mm程度の割栗石を採用する。この他、円筒篭1の目合いに対応した粒径の砕石、玉石、コンクリートガラ、レンガガラ等を採用してもよい。
本例でも、実施例1と同様にまず連結工程によって重合部R内に連結手段A2を投入し、円筒篭1同士を連結した(連結工程)後、円筒篭1内に充填体A1を投入する(充填工程)。
円筒篭1には、必要に応じて蓋網や底網を設置してもよい。また、重合部Rの縦線材12同士をコイル状の線材で一体に固定して、円筒篭1の連結を補強してもよい。
更に、充填体A1及び連結手段A2の一方を布製型枠とコンクリートの組合せとし、他方を石材等としてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 円筒篭
10 分割篭
11 横線材
11a ループ端
12 縦線材
13 挿通窓
20 連結材
A 土木構造物
A1 充填体
A1a 布製型枠
A1b コンクリート
A2 連結手段
A2a 布製型枠
A2b コンクリート
R 重合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7