(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】アナログデジタル変換器
(51)【国際特許分類】
H03M 1/36 20060101AFI20220519BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20220519BHJP
H03M 1/20 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
H03M1/36
H03M1/12 C
H03M1/20
(21)【出願番号】P 2020547611
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2018035248
(87)【国際公開番号】W WO2020065694
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 秀樹
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特公昭51-039825(JP,B2)
【文献】特開平01-174014(JP,A)
【文献】特開昭63-033013(JP,A)
【文献】特開平03-079128(JP,A)
【文献】特開平06-097827(JP,A)
【文献】特開昭60-146528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/36
H03M 1/12
H03M 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたアナログ信号をデジタル値に変換するアナログデジタル変換器であって、高電位側基準電圧と低電位側基準電圧との間に接続された直列抵抗回路によって等しい電位の間隔を有する複数個のリファレンス電圧を生成し、入力された前記アナログ信号とそれぞれ比較することでデジタル値に変換する複数個の単位回路と、複数個の前記単位回路でそれぞれ変換されたデジタル値を加算する加算器と、
複数個の前記単位回路からそれぞれ出力されるデジタル値と、前記加算器から出力されるデジタル値とを任意に選択して出力端子から出力するセレクタと、
m が2 個以上である場合、複数個の前記加算器をバイナリツリー状に備え、
前記セレクタは、2
m
個の前記単位回路からそれぞれ出力されるデジタル値と、複数の
前記加算器からそれぞれ出力されるデジタル値と を任意に選択して出力端子から出力する
ことを具備し、
前記単位回路は、前記直列抵抗回路を他の前記単位回路の前記直列抵抗回路と連結させて前記高電位側基準電圧と前記低電位側基準電圧との間に接続する連結スイッチと、前記直列抵抗回路を連結した他の前記単位回路と入力された前記アナログ信号を共通化する共通化スイッチと を具備することを特徴とするアナログデジタル変換器。
【請求項2】
前記直列抵抗回路によって等しい電位の間隔を有する( 2
n -1 ) 個のリファレンス電圧を生成し、入力された前記アナログ信号とそれぞれ比較することでn ビットのデジタル値に変換する2
m個の前記単位回路と、
2
m個の前記単位回路でそれぞれ変換されたn ビットのデジタル値を加算して( n + m) ビットのデジタル値を出力する前記加算器と、を具備することを特徴とする請求項
1 記載のアナログデジタル変換器。
【請求項3】
前記連結スイッチによってm 個の前記直列抵抗回路を連結させることで、前記高電位側基準電圧と前記低電位側基準電圧との間に、等しい電位の間隔を有する( 2
n -1 ) × m個のリファレンス電圧が生成されることを特徴とする請求項
2記載のアナログデジタル変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力されたアナログ信号をデジタル値に変換するアナログデジタル変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電位比較器(以下、比較器と称す)と、比較器の数の比較電圧を生成するために直列に接続した分圧抵抗からなる比較電圧生成器と、複数の比較器の出力結果をデジタル値に変換するエンコーダ回路とからなるフラッシュ型のアナログデジタル変換器(以下、AD変換器と称す)が用いられている。
【0003】
このようなAD変換器において、比較電位生成器にスイッチを付加することで解像度を変更可能にする技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1では、状況に応じてAD変換器の解像度を変更できることを目的とし、特許文献2では、解像度の変更を利用してテストの容易化を目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-186025号公報
【文献】特開平07-326970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、1つのアナログ信号に対して解像度を可変とすることができるが、解像度が低くても複数のアナログ信号をデジタル値に変換する必要がある場合には、変換するアナログ信号と同数のAD変換器が必要になる。従って、高い解像度のAD変換と、複数のアナログ信号に対する低い解像度のAD変換との両方のニーズを満たすためには、高い解像度でAD変換を行うことができる多数のAD変換器を備えなければならず、レイアウト面積が大きくなり、コストが高いものとなってしまう。また、どちらかのニーズにターゲットを絞れば汎用性に乏しくなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、従来技術の上記問題を解決し、高い解像度のAD変換と、複数のアナログ信号に対する低い解像度のAD変換との両方のニーズを満たすことができるアナログデジタル変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアナログデジタル変換器は、入力されたアナログ信号をデジタル値に変換するアナログデジタル変換器であって、高電位側基準電圧と低電位側基準電圧との間に接続された直列抵抗回路によって等しい電位の間隔を有する複数個のリファレンス電圧を生成し、入力された前記アナログ信号とそれぞれ比較することでデジタル値に変換する複数個の単位回路と、複数個の前記単位回路でそれぞれ変換されたデジタル値を加算する加算器と
複数個の前記単位回路からそれぞれ出力されるデジタル値と、前記加算器から出力されるデジタル値とを任意に選択して出力端子から出力するセレクタと、
m が2 個以上である場合、複数個の前記加算器をバイナリツリー状に備え、
前記セレクタは、2
m
個の前記単位回路からそれぞれ出力されるデジタル値と、複数の前記加算器からそれぞれ出力されるデジタル値と を任意に選択して出力端子から出力することを具備し、前記単位回路は、前記直列抵抗回路を他の前記単位回路の前記直列抵抗回路と連結させて前記高電位側基準電圧と前記低電位側基準電圧との間に接続する連結スイッチと、入力された前記アナログ信号を前記直列抵抗回路を連結した他の前記単位回路と共通化する共通化スイッチと を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、連結スイッチ及び共通化スイッチによって、解像度の低い複数個の単位回路を直列接続させるか独立させるかを切り替えることができるため、高い解像度のAD変換と、複数のアナログ信号に対する低い解像度のAD変換との両方のニーズを満たすことができ、汎用性が高いという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るアナログデジタル変換器の実施の形態の構成例を示す構成図である。
【
図2】
図1に示すアナログデジタル変換器の第1の使用例を説明する説明図である。
【
図3】
図1に示すアナログデジタル変換器の第2の使用例を説明する説明図である。
【
図4】本発明に係るアナログデジタル変換器の他の構成例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態において、同様の機能を示す構成には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0011】
本実施の形態のAD変換器1は、
図1を参照すると、2個の単位回路10
1、10
2と、加算器20と、セレクタ30とを備えている。なお、2個の単位回路10
1、10
2は、同一の構成であるため、単位回路10として説明する。また、本実施の形態では、少なくとも1つの比較器から構成され、入力アナログ値と基準電圧入力値とを比較して、その電圧の大小関係から0乃至は1のデジタル変換値に変換して出力するアナログデジタル変換器を単位回路と称す。
【0012】
単位回路10は、等しい電位の間隔を有する3個のリファレンス電圧を生成する直列抵抗回路11と、入力されたアナログ信号と3個のリファレンス電圧とそれぞれ比較する3個の比較器CP1~CP3と、比較器CP1~CP3における比較結果を2ビットのデジタル値に変換するエンコーダ12とを備えている。
【0013】
直列抵抗回路11は、直列に接続された抵抗R1~R4で構成され、抵抗R1の解放端が高電位側端子であり、抵抗R4の解放端が低電位側端子である。抵抗R2、R3は、同じ抵抗値を有する。従って、高電位側端子と低電位側端子との間に電圧を印加すると、抵抗R1~R3の低電位側のノードの電位が等しい電位の間隔を有する3個のリファレンス電圧として比較器CP1~CP3の反転入力端子にそれぞれ入力される。
【0014】
また、抵抗R1の抵抗値と抵抗R4の抵抗値と合計は、抵抗R2~R3のそれぞれの抵抗値と同じになるように設定されている。なお、抵抗R1の抵抗値を抵抗R2、R3と同じ抵抗値に設定した場合には、抵抗R4を省略できる。また、抵抗R4の抵抗値を抵抗R2~R3と同じ抵抗値に設定した場合には、抵抗R1を省略できる。
【0015】
比較器CP1~CP3は、入力されたアナログ信号と直列抵抗回路11によって生成された3個のリファレンス電圧とをそれぞれ比較する。比較器CP1~CP3の出力は、アナログ信号がリファレンス電圧よりも大きい場合にハイレベル信号になる。そして、比較器CP1~CP3の出力は、アナログ信号がリファレンス電圧よりも小さい場合にローレベル信号になる。
【0016】
エンコーダ12は、比較器CP1~CP3の出力、すなわち比較器CP1~CP3から出力されるハイレベル信号の数を2ビットのデジタル値に変換する。
【0017】
また、単位回路10は、第1端子T1と、第2端子T2と、第3端子T3と、第4端子T4と、第5端子T5と、第6端子T6と、第7端子T7と、第8端子T8と、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2と、第3スイッチSW3と、第4スイッチSW4とを備えている。
【0018】
第1端子T1は、高電位側基準電圧VCCと接続される高電位入力端子である。そして、第1端子T1は、第1スイッチSW1を介して直列抵抗回路11の高電位側端子に接続されている。
【0019】
第2端子T2は、低電位側基準電圧GNDと接続される低電位入力端子である。そして、第2端子T2は、第2スイッチSW2を介して直列抵抗回路11の低電位側端子に接続されている。
【0020】
第3端子T3は、アナログ信号が入力される端子であり、比較器CP1~CP3の非反転入力端子にそれぞれ接続されている。
【0021】
第4端子T4は、エンコーダ12の出力端子に接続され、エンコーダ12によって変換された2ビットのデジタル値が出力される端子である。
【0022】
第5端子T5は、高電位側の単位回路10とアナログ信号を共通化する高電位側アナログ信号共通化端子である。また、第6端子T6は、低電位側の単位回路10とアナログ信号を共通化する低電位側アナログ信号共通化端子である。そして、第5端子T5は、比較器CP1~CP3の非反転入力端子にそれぞれ接続されていると共に、第6端子T6は、第3スイッチSW3を介して比較器CP1~CP3の非反転入力端子にそれぞれ接続されている。なお、第5端子T5と比較器CP1~CP3のそれぞれの非反転入力端子とを、第3スイッチSW3を介して接続しても良い。
【0023】
第7端子T7は、高電位側に配置された他の単位回路10の第8端子T8と接続される端子であり、第4スイッチSW4を介して直列抵抗回路11の高電位側端子に接続されている。なお、最も高電位側に配置された単位回路101では、第7端子T7、第4スイッチSW4及び第1スイッチSW1を省略して、直列抵抗回路11の高電位側端子と第1端子T1とを直接接続しても良い。
【0024】
第8端子T8は、低電位側に配置された他の単位回路10の第7端子T7と接続される端子であり、直列抵抗回路11の低電位側端子に接続されている。なお、最も低電位側に配置された単位回路102では、第8端子T8及び第2スイッチSW2を省略して、直列抵抗回路11の低電位側端子と第2端子T2とを直接接続しても良い。
【0025】
また、第4スイッチSW4は、第8端子T8と直列抵抗回路11の低電位側端子との間に接続しても良い。
【0026】
なお、第1スイッチSW1~第4スイッチSW4のオンオフは、マイコン等の制御装置によって静的、あるいは動的に切り替える。例えば、書き換え可能なフラグレジスタによって第1スイッチSW1~第4スイッチSW4のオンオフを制御することができる。
【0027】
加算器20は、単位回路101の第4端子T4から出力される2ビットのデジタル値と、単位回路102の第4端子T4から出力される2ビットのデジタル値とを加算し、3ビットのデジタル値を出力する。
【0028】
セレクタ30は、単位回路101の第4端子T4から出力される2ビットのデジタル値と、単位回路102の第4端子T4から出力される2ビットのデジタル値と、加算器20は、加算器20から出力される3ビットのデジタル値とがそれぞれ入力される3個の入力端子と、2個の出力端子とを備えている。そして、セレクタ30は、マイコン等の制御回路によって、3個の入力端子から入力される入力信号を任意に選択して2個の出力端子から出力する。
【0029】
AD変換器1は、
図2に示すように、単位回路10
1、10
2において、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2をオンに、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4をオフにそれぞれ設定することで、単位回路10
1、10
2を分解能2ビットの個別のAD変換器として機能させることができる。なお、単位回路10
1における第4スイッチSW4と、単位回路10
2における第3スイッチSW3とは、オンに設定しても良い。
【0030】
すなわち、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2をオン、第4スイッチSW4をオフに設定することで、単位回路101、102のそれぞれの直列抵抗回路11は、高電位側端子が高電位側基準電圧VCCに、低電位側端子が低電位側基準電圧GNDに接続される。なお、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2と、第4スイッチSW4とは、高電位側基準電圧VCCと低電位側基準電圧GNDとの短絡防止のため、排他的にオンオフ制御することが望ましい。
【0031】
また、第3スイッチSW3がオフに設定することで、単位回路101、102の第3端子T3にそれぞれ入力されたアナログ信号a、bは、単位回路101、102によって2ビットのデジタル値にそれぞれ変換されて第4端子T4から出力される。そして、単位回路101、102からそれぞれ出力される2ビットのデジタル値を、セレクタ30によって選択して出力することで、アナログ信号aを分解能2ビットでAD変換したデジタル信号aと、アナログ信号bを分解能2ビットでAD変換した2ビットのデジタル信号bとを得ることができる。
【0032】
AD変換器1は、
図3に示すように、単位回路10
1において、第1スイッチSW1及び第3スイッチSW3をオンに、第2スイッチSW2及び第4スイッチSW4をオフにそれぞれ設定すると共に、単位回路10
2において、第2スイッチSW2及び第4スイッチSW4をオンに、第1スイッチSW1及び第3スイッチSW3をオフにそれぞれ設定することで、単位回路10
1、10
2を連結させて分解能3ビットのAD変換器として機能させることができる。なお、単位回路10
1における第4スイッチSW4と、単位回路10
2における第3スイッチSW3とは、オンに設定しても良い。
【0033】
第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第4スイッチSW4は、直列抵抗回路11を他の単位回路10の直列抵抗回路11と連結させて高電位側基準電圧VCCと低電位側基準電圧GNDとの間に接続する連結スイッチとして機能する。すなわち、単位回路102の第4スイッチSW4をオンに設定することで、単位回路101における直列抵抗回路11の低電位側端子と、単位回路102における直列抵抗回路11の高電位側端子と連結される。そして、単位回路101において第1スイッチSW1をオン、第2スイッチSW2をオフにそれぞれ設定し、単位回路102において第1スイッチSW1をオフ、第2スイッチSW2をオンにそれぞれ設定することで、高電位側基準電圧VCCと低電位側基準電圧GNDとの間に、連結された単位回路101における直列抵抗回路11と、単位回路102における直列抵抗回路11とが接続される。これにより、等しい電位の間隔を有する8個のリファレンス電圧が生成され、高電位側の上位3個のリファレンス電圧が単位回路101の比較器CP1~CP3の反転入力端子にそれぞれ入力され、低電位側の下位3個のリファレンス電圧が単位回路102の比較器CP1~CP3の反転入力端子にそれぞれ入力される。
【0034】
また、第3スイッチSW3は、直列抵抗回路11を連結した他の単位回路10と入力されたアナログ信号を共通化する共通化スイッチとして機能する。すなわち、単位回路101の第3スイッチSW3をオンに設定することで、単位回路101、102に入力されるアナログ信号が共通化される。これにより、単位回路101の第3端子T3に入力されたアナログ信号は、単位回路101によって上位2ビットのデジタル値に変換されて第4端子T4から出力されると共に、単位回路102によって下位2ビットのデジタル値に変換されて第4端子T4から出力される。従って、加算器20からは、単位回路101から出力される上位2ビットのデジタル値と、単位回路102から出力される下位2ビットのデジタル値とを加算した3ビットのデジタル値が出力される。加算器20から出力される3ビットのデジタル値をセレクタ30によって選択して出力することで、アナログ信号を分解能3ビットでAD変換したデジタル信号を得ることができる。
【0035】
以上説明したように、AD変換器1は、2個の単位回路101、102を直列接続することで、分解能3ビットで1つのアナログ信号をAD変換することができる。また、逆に2個の単位回路101、102を独立させることで、分解能2ビットで2つのアナログ信号をそれぞれAD変換することができる。
【0036】
また、単位回路10の分解能及び個数は適宜設定することができる。分解能nビットの単位回路10を2m個設けた場合、2m個の単位回路10を直列接続することで、分解能n+mビットで1つのアナログ信号をAD変換することができる。2m個の単位回路10を独立させることで、分解能nビットで2m個のアナログ信号をそれぞれAD変換することができる。そして、2m個の単位回路10の内、直列接続する個数及び組み合わせを適宜設定することで、最も精度が高い分解能n+mビットと最も精度が低い分解能nビットの範囲で、分解能が低いが多くのアナログ信号をAD変換する設定と、少ないアナログ信号を高い分解能でAD変換する設定を簡単に切り替えることができる。
【0037】
例えば、分解能2ビットの単位回路10を4個設けた場合、4個の単位回路10を直列接続することで、分解能4ビットで1つのアナログ信号をAD変換することができる。そして、単位回路10を2個ずつ直列接続することで、分解能3ビットで2つのアナログ信号をAD変換することができる。また、4個の単位回路10を独立させることで、分解能2ビットで4つのアナログ信号をそれぞれAD変換することができる。
【0038】
例えば、分解能2ビットの単位回路10を8個設けた場合、8個の単位回路10を直列接続することで、分解能5ビットで1つのアナログ信号をAD変換することができる。そして、単位回路10を4個ずつ直列接続することで、分解能4ビットで2つのアナログ信号をAD変換することができる。また、単位回路10を2個ずつ直列接続することで、分解能3ビットで4つのアナログ信号をAD変換することができる。さらに、8個の単位回路10を独立させることで、分解能2ビットで8つのアナログ信号をそれぞれAD変換することができる。なお、8個の単位回路10の内、直列接続する個数及び組み合わせは適宜設定することができる。例えば、4個の単位回路10を直列接続し、他の4個を独立させても良い。
【0039】
なお、単位回路10の分解能は、必ずしもビット単位である必要はない。例えば、単位回路10は、リファレンス電位、比較器の個数を4とし、0~4の5つの状態にデジタル変換するAD変換器であっても良い。
【0040】
また、単位回路10を直列接続した際の出力も必ずしもビット単位である必要はない。例えば、0~4の5つの状態にデジタル変換するAD変換器を3個直列接続した場合、12個のリファレンス電位、比較器を持ち、(10進数で)0~12のデジタル値を出力するAD変換器になる。
【0041】
図4には、単位回路10を8個設けたAD変換器1aが示されている。4個以上の単位回路10を備える場合、
図4に示すように、複数個の加算器20をバイナリツリー状に備えると良い。この場合、セレクタ30aによって、4個以上の単位回路10からそれぞれ出力されるデジタル値と、複数の加算器20からそれぞれ出力されるデジタル値とを任意に選択可能に構成する。例えば単位回路10の分解能をnとすると、1列目の加算器20からは分解能n+1のデジタル値を、2列目の加算器20からは分解能n+2のデジタル値を、最終段である3列目の加算器20からは分解能n+3のデジタル値をそれぞれ出力することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態によれば、入力されたアナログ信号をデジタル値に変換するアナログデジタル変換器1であって、高電位側基準電圧VCCと低電位側基準電圧GNDとの間に接続された直列抵抗回路11によって等しい電位の間隔を有する複数個のリファレンス電圧を生成し、入力されたアナログ信号とそれぞれ比較することでデジタル値に変換する複数個の単位回路10と、複数個の単位回路10でそれぞれ変換されたデジタル値を加算する加算器20とを具備し、単位回路10は、直列抵抗回路11を他の単位回路10の直列抵抗回路11と連結させて高電位側基準電圧VCCと低電位側基準電圧GNDとの間に接続する連結スイッチとして機能する第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第4スイッチSW4と、入力されたアナログ信号を直列抵抗回路11を連結した他の単位回路10と共通化する共通化スイッチとして機能する第3スイッチSW3とを備えている。
この構成により、連結スイッチ及び共通化スイッチによって、解像度の低い複数個の単位回路10を直列接続させるか独立させるかを切り替えることができるため、高い解像度のAD変換と、複数のアナログ信号に対する低い解像度のAD変換との両方のニーズを満たすことができ、汎用性が高いマイコンを提供できる。例えば、マイコンなどに内蔵するアナログデジタル変換器は、その使用目的により、AD変換の数は少なくても良いが高い精度が求められる場合と、低い精度で良いが多数のAD変化が求められる場合との両方のニーズがある。
【0043】
さらに、本実施の形態は、直列抵抗回路11によって等しい電位の間隔を有する(2n-1)個のリファレンス電圧を生成し、入力された前記アナログ信号とそれぞれ比較することでnビットのデジタル値に変換する2m個の単位回路10と、2m個の単位回路10でそれぞれ変換されたnビットのデジタル値を加算して(n+m)ビットのデジタル値を出力する加算器20とを備えている。
この構成により、2m個の単位回路10の内、直列接続する個数及び組み合わせを適宜設定することで、最も精度が高い分解能n+mビットと最も精度が低い分解能nビットの範囲で、分解能が低いが多くのアナログ信号をAD変換する設定と、少ないアナログ信号を高い分解能でAD変換する設定を簡単に切り替えることができる。
【0044】
さらに、本実施の形態は、連結スイッチ(第1スイッチSW1、第2スイッチSW及び第4スイッチSW4)によってm個の直列抵抗回路11を連結させることで、高電位側基準電圧VCCと低電位側基準電圧GNDとの間に、等しい電位の間隔を有する(2n-1)×m個のリファレンス電圧が生成される。
この構成により、直列抵抗回路11を連結させることで、精度が高い分解能でのAD変換を実現することができる。
【0045】
さらに、本実施の形態は、2m個の単位回路10からそれぞれ出力されるデジタル値と、加算器20から出力されるデジタル値とを任意に選択して出力端子から出力するセレクタ30を備えている。
この構成により、出力するデジタル値を適宜選択することができる。
【0046】
さらに、本実施の形態は、mが2個以上である場合、複数個の加算器20をバイナリツリー状に備え、セレクタ30は、2m個の単位回路10からそれぞれ出力されるデジタル値と、複数の加算器20からそれぞれ出力されるデジタル値とを任意に選択して出力端子から出力する。
この構成により、出力するデジタル値の分解能を適宜設定することができる。
【0047】
以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1、1a アナログデジタル変換器(AD変換器)
10、101、102 単位回路
11 直列抵抗回路
12 エンコーダ
20 加算器
30、30a セレクタ
CP1~CP3 比較器
T1 第1端子
T2 第2端子
T3 第3端子
T4 第4端子
T5 第5端子
T6 第6端子
T7 第7端子
T8 第8端子
SW1 第1スイッチ
SW2 第2スイッチ
SW3 第3スイッチ
SW4 第4スイッチ
R1~R4 抵抗