(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】路面性状検査システム、路面性状検査方法、及び路面性状検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20120101AFI20220519BHJP
G01H 3/00 20060101ALI20220519BHJP
E01C 23/01 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
G01H3/00 A
E01C23/01
(21)【出願番号】P 2018003590
(22)【出願日】2018-01-12
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】重野 勝
(72)【発明者】
【氏名】院南 誠嗣
【審査官】原 忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-340863(JP,A)
【文献】特開2013-068986(JP,A)
【文献】特開2016-095184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G01H 3/00
E01C 23/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面が濡れているときの道路を走行する車両が集音した走行音に関わる情報を、前記走行音が集音された時点における前記車両の前記道路上の位置情報と対応付けて、前記車両から受信するとともに、前記路面が乾燥しているときの前記道路を走行する車両が集音した走行音に関わる情報を、前記走行音が集音された時点における前記車両の前記道路上の位置情報と対応付けて、前記車両から受信する通信部と、
前記道路上のある位置について、前記路面が濡れているときに集音された前記走行音の特徴と、前記路面が乾燥しているときに集音された前記走行音の特徴とを比較する比較処理を行うことにより、前記道路上のある位置における凹部の有無を検出する検出部と、
を備える路面性状検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の路面性状検査システムであって、
前記検出部は、前記路面の面内方向に分布する複数の位置について、前記比較処理を行うことにより、前記複数の位置のそれぞれにおける凹部の有無を検出する、路面性状検査システム。
【請求項3】
路面が濡れているときの道路を走行する車両が集音した走行音に関わる情報を、前記走行音が集音された時点における前記車両の前記道路上の位置情報と対応付けて、前記車両から受信する通信部と、
前記路面の異なる位置で集音された走行音の特徴を比較する比較処理を行うことにより、前記道路上の凹部の有無を検出する検出部と、
を備える路面性状検査システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の路面性状検査システムであって、
前記検出部は、前記凹部の湿潤状態の経時的な変化に伴う前記走行音の特徴の経時的な変化に基づいて、前記凹部の深さを推定する、路面性状検査システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の路面性状検査システムであって、
前記通信部は、前記車両の挙動の変化を示す挙動情報を前記車両から受信し、
前記検出部は、前記比較処理に前記挙動情報を加味して、前記凹部の有無を検出する、路面性状検査システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の路面性状検査システムであって、
前記通信部は、前記道路の凹部の分布状況を示す情報を前記道路の管理者のコンピュータに送信する、路面性状検査システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の路面性状検査システムであって、
前記通信部は、前記道路の凹部を通過することが見込まれる車両に警告情報を送信する、路面性状検査システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の路面性状検査システムであって、
前記凹部は、轍掘れ、窪み、又は路面の傾斜部分である、路面性状検査システム。
【請求項9】
コンピュータシステムが、
路面が濡れているときの道路を走行する車両が集音した走行音に関わる情報を、前記走行音が集音された時点における前記車両の前記道路上の位置情報と対応付けて、前記車両から受信するステップと、
前記路面が乾燥しているときの前記道路を走行する車両が集音した走行音に関わる情報を、前記走行音が集音された時点における前記車両の前記道路上の位置情報と対応付けて、前記車両から受信するステップと、
前記道路上のある位置について、前記路面が濡れているときに集音された前記走行音の特徴と、前記路面が乾燥しているときに集音された前記走行音の特徴とを比較する比較処理を行うことにより、前記道路上のある位置における凹部の有無を検出するステップと、
を実行する路面性状検査方法。
【請求項10】
請求項9に記載の路面性状検査方法をコンピュータシステムに実行させる路面性状検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面性状検査システム、路面性状検査方法、及び路面性状検査プログラムに関わる。
【背景技術】
【0002】
国土交通省は、道路の老朽化に起因する事故やトラブルなどを未然に防止するため、路面性状の測定実施要領を各地方自治体などに通達している。路面性状の測定方法として、例えば、機械式測定器具やスケッチなどを用いた人手による測定方法や、路面性状測定車両を用いた非接触式の測定方法などがよく知られている。このような事情を背景に、特開2005-115687号公報は、カメラ、マイク、音響センサ、及び振動センサを用いて、道路の劣化状態を点検する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような道路の劣化状態は、目視では判定が難しく、特開2005-115687号公報に記載されているような、カメラ、マイク、音響センサ、及び振動センサなどの多くの部品を搭載した測定器具を搭載した高額な車両が必要となる。一方で近年は、スマートフォンに搭載される加速度センサを活用し、道路の凹凸を測定する方法も活用される。しかしながら、道路の劣化が進行した状態での一次スクリーニングには、有効な手法であるが、検出精度が低く、道路劣化の初期段階での欠陥検知ができないため、予防保全には適用できない。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題を解決し、道路上の凹部の有無を高精度に且つ低コストで検出することのできる路面性状検査システムを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明に関わる路面性状検査システムは、路面が濡れているときの道路を走行する車両が集音した走行音に関わる情報を、走行音が集音された時点における車両の道路上の位置情報と対応付けて、車両から受信するとともに、路面が乾燥しているときの道路を走行する車両が集音した走行音に関わる情報を、走行音が集音された時点における車両の道路上の位置情報と対応付けて、車両から受信する通信部と、道路上のある位置について、路面が濡れているときに集音された走行音の特徴と、路面が乾燥しているときに集音された走行音の特徴とを比較する比較処理を行うことにより、道路上のある位置における凹部の有無を検出する検出部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に関わる路面性状検査システムによれば、道路上の凹部の有無を高精度に且つ低コストで検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に関わる路面性状検査システムの概略構成を示す説明図である。
【
図2】道路の凹部に溜まる水分の深さの時間経過に伴う変化を示す複数の測定点をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。ここで、同一符号は同一の構成要素を示すものとし、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の実施形態に関わる路面性状検査システム10の概略構成を示す説明図である。路面性状検査システム10は、道路40を走行する複数の車両20,30のそれぞれから得られる情報(走行音に関わる情報及び位置情報)を基に、路面の平坦部41から陥没する凹部の有無及びその位置を検査する。道路40の路面に形成される凹部の種類として、例えば、局所的な荷重分布により形成される轍掘れ42や、局所的或いは広域的に形成される凹み43などがある。局所的な凹み43は、例えば、路面の部分的な破損などにより形成される窪みである。広域的な凹み43は、例えば、水はけの悪い部分であり、具体的には、路面の傾斜部分(例えば、路面の広い部分にわたって、なだらかに陥没する部分)を含む。道路40には、各種の舗装(例えば、アスファルト舗装、コンクリート舗装、半たわみ舗装、保水性舗装、インターロッキング舗装、天然石舗装、ゴムチップ舗装、ウッドチップ舗装、ロードヒーティング舗装など)が施されていてもよい。
【0010】
路面性状検査システム10は、ハードウェア資源として、プロセッサ、記憶装置、通信モジュール、及び入出力インタフェースを備えるコンピュータシステムである。記憶装置には、本発明の実施形態に関わる路面性状検査方法をプロセッサに実行させるための路面性状検査プログラムが格納されている。プロセッサが路面性状検査プログラムを解釈及び実行することにより、各部(通信部11、記憶部12、検出部13、作成部14、警告部15)の機能が実現される。これらの各部は、路面性状検査システム10のハードウェア資源と路面性状検査プログラムとの協働により実現される機能であり、その機能の詳細については後述する。
【0011】
路面性状検査プログラムは、例えば、メインプログラムの中で呼び出されて実行される複数のソフトウェアモジュールを備えてもよい。このようなソフトウェアモジュールは、例えば、上述の各部の機能を実現する処理を実行するためにモジュール化されたサブプログラムである。上述の各部の機能と同様の機能を、専用のハードウェア資源(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)など)やファームウェアを用いて実現してもよい。なお、路面性状検査システム10の記憶装置は、例えば、半導体メモリ又はディスク媒体などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0012】
車両20は、集音部21、位置検出部22、挙動検出部23、及び通信部24を備える。集音部21は、車両20の走行音を集音する装置であり、例えば、車載マイクを備えている。位置検出部22は、車両20の位置情報を取得する装置であり、例えば、車両20の絶対位置を検出するGPS(Global Positioning System)と、車両20の相対位置を検出する車速センサ及び方位センサとを備えている。挙動検出部23は、車両20の挙動(例えば、ローリング、ピッチング、ヨーイング、バウンシング、ハーシュネス、及びジャークなど)を検出する装置であり、例えば、角速度センサ、加速度センサ、及び加加速度センサを備える。通信部24は、車両20と路面性状検査システム10との間の無線通信を制御する装置であり、例えば、移動通信モジュールを備えている。
【0013】
車両20は、集音部21を用いて集音した車両20の走行音に関わる情報を、その走行音が集音された時点において、位置検出部22を用いて取得した車両20の位置情報と対応付けて、これらの情報を、通信部24を通じて、路面性状検査システム10に送信する。車両20は、走行音が集音された時点において、挙動検出部23を用いて取得した、車両20の挙動の変化を示す挙動情報を、通信部24を通じて、路面性状検査システム10に送信する。
【0014】
車両30は、集音部31、位置検出部32、挙動検出部33、及び通信部34を備える。集音部31は、車両30の走行音を集音する装置であり、その構成は、集音部21と同様である。位置検出部32は、車両30の位置情報を取得する装置であり、その構成は、位置検出部22と同様である。挙動検出部33は、車両30の挙動を検出する装置であり、その構成は、挙動検出部23と同様である。通信部34は、車両30と路面性状検査システム10との間の無線通信を制御する装置であり、その構成は、通信部24と同様である。
【0015】
車両30は、集音部31を用いて集音した車両30の走行音に関わる情報を、その走行音が集音された時点において、位置検出部32を用いて取得した車両30の位置情報と対応付けて、これらの情報を、通信部34を通じて、路面性状検査システム10に送信する。車両30は、走行音が集音された時点において、挙動検出部33を用いて取得した、車両30の挙動の変化を示す挙動情報を、通信部34を通じて、路面性状検査システム10に送信する。
【0016】
道路40の路面は、気象状況に応じて、濡れているときもあれば、乾燥している場合もあり得る。降雨や積雪などの気象状況の下では、道路40の路面は、濡れており、時間の経過に伴い、湿潤状態から半乾燥状態(半湿潤状態)を経て乾燥状態へと経時的に変化することがある。また、路面が凍結する場合は、湿潤状態から凍結状態へと変化し、更に、外気温の影響により、凍結状態から溶融状態(湿潤状態)を経て、乾燥状態へと変化することもある。路面性状検査システム10は、路面が濡れているときの道路40を走行する複数の車両20,30のそれぞれが集音した走行音に関わる情報を、走行音が集音された時点における各車両の道路上の位置情報と対応付けて、各車両から通信部11を通じて受信する。同様に、路面性状検査システム10は、路面が乾燥しているときの道路40を走行する複数の車両20,30のそれぞれが集音した走行音に関わる情報を、走行音が集音された時点における各車両の道路上の位置情報と対応付けて、各車両から通信部11を通じて受信する。
【0017】
路面性状検査システム10は、通信部11を通じて各車両20,30から受信した情報(走行音に関わる情報及び位置情報)を記憶部12に蓄積する。
図1の符号P1,P2は、車両20が走行する軌跡上の異なる位置を示している。同様に、符号P3,P4は、車両30が走行する軌跡上の異なる位置を示している。記憶部12は、路面が濡れているときの位置P1を走行する車両の走行音に関わる情報と、路面が乾燥しているときの位置P1を走行する車両の走行音に関わる情報とを関連付けて記憶する。これらの情報は、位置P1を異なる日時に異なる気象状況の下で走行する異なる車両から取得されたものでもよい。記憶部12は、位置P2,P3,P4についても同様に、路面が濡れているときの車両の走行音に関わる情報と、路面が乾燥しているときの車両の走行音に関わる情報とを関連付けて記憶する。
【0018】
なお、説明の便宜上、
図1では、複数の位置P1,P2,P3,P4のそれぞれの範囲が、路面の面内方向において、互いに重複しないように分布する場合を例示しているが、これらの位置の範囲は、路面の面内方向において、一部重なり合っても差し支えない。例えば、位置P1の範囲と位置P3の範囲とが一部重なり合っても差し支えない。
【0019】
検出部13は、道路40上のある位置(例えば、位置P1)について、路面が濡れているときに集音された走行音の特徴と、路面が乾燥しているときに集音された走行音の特徴とを比較する比較処理を行うことにより、道路40上のある位置(例えば、位置P1)における凹部の有無を検出する。路面を走行する車両の走行音の特徴(例えば、音圧、周波数(音の高さ)、音色)は、車両が走行する路面の凹部の有無及びその湿潤状態に応じて変化する。
【0020】
例えば、平坦部41及び轍掘れ42のそれぞれが濡れているときには、それらの上を走行する車両20の走行音の音圧は、平坦部41及び轍掘れ42のそれぞれが乾燥しているときに、それらの上を走行する車両20の走行音の音圧よりも大きい。特に、濡れている平坦部41を走行する車両20の走行音の音圧よりも、濡れている轍掘れ42を走行する車両20の走行音の音圧の方が大きい。
【0021】
例えば、平坦部41が乾燥しており、轍掘れ42が濡れているときには、それらの上を走行する車両20の走行音の音圧は、平坦部41及び轍掘れ42のそれぞれが乾燥しているときに、それらの上を走行する車両20の走行音の音圧よりも大きい。特に、乾燥している平坦部41を走行する車両20の走行音の音圧よりも、濡れている轍掘れ42を走行する車両20の走行音の音圧の方が大きい。
【0022】
例えば、平坦部41及び轍掘れ42のそれぞれが乾燥しているときには、平坦部41を走行する車両20の走行音の音圧と、乾燥している轍掘れ42を走行する車両20の走行音の音圧との間に大きな差はない。
【0023】
上述の説明では、走行音の特徴として、音圧を例示したが、周波数や音色についても、車両が走行する路面の凹部の有無及びその湿潤状態に応じて変化し得る。また、走行音の特徴は、路面が凍結しているときと凍結していないときとの間でも変化し得るため、このような変化を利用して路面の凹部を検出することもできる。また、比較処理を通じて検出される凹部の具体例として、轍掘れ42を例示したが、同様の比較処理を行うことにより、凹み43の有無を検出することができる。
【0024】
検出部13は、路面の面内方向に分布する複数の位置P1,P2,P3,P4について、比較処理を行うことにより、複数の位置P1,P2,P3,P4のそれぞれにおける凹部の有無を検出する。それぞれの位置P1,P2,P3,P4における凹部の有無を示す情報は、凹部の位置情報として記憶部12に格納される。説明の便宜上、
図1に図示されている車両の台数は2台であるが、道路40上を走行する車両の台数は、3台以上でもよい。道路40を走行する複数の車両のそれぞれの走行軌跡は、異なり得るため、路面性状検査システム10は、道路40上のあらゆる位置について、走行音に関わる情報を取得することができる。道路40上のあらゆる位置について取得された走行音に関わる情報は、それらの位置における凹部の有無の検出に用いられる。
【0025】
なお、上述の説明では、路面が濡れているときに集音された走行音の特徴と、路面が乾燥しているときに集音された走行音の特徴とを比較する比較処理を用いて、道路40上の凹部を検出する例について説明したが、濡れている凹部を走行する車両20の走行音の特徴と、濡れている平坦部41を走行する車両20の走行音の特徴との間の相違を利用して、路面が濡れているときに路面の異なる位置で集音された走行音の特徴を比較する比較処理を行うことにより、道路40上の凹部の有無を検出してもよい。
【0026】
路面性状検査システム10は、複数の車両20,30のそれぞれの挙動の変化を示す挙動情報を、通信部11を通じて、各車両20,30から受信する。検出部13は、比較処理に挙動情報を加味して、凹部の有無を検出する。挙動情報は、走行音が集音された時点において、挙動検出部33を用いて取得されたものであるため、挙動情報が示す車両の挙動の変化が、凹部を走行したときの車両の挙動の変化に類似している場合には、走行音が集音された時点において車両が走行していた位置に凹部が存在するものと推定できる。これにより、凹部の検出精度を高めることができる。
【0027】
作成部14は、記憶部12に格納されている凹部の位置情報を基に、道路40上の凹部の分布状況を示す情報(例えば、地図情報)を作成する。この地図情報は、例えば、ナビゲーション用の地図情報に、凹部の位置情報とその種別(例えば、轍掘れ42や凹み43などの種別)を示す情報とをマッピングしたマップデータである。ナビゲーション用の地図情報は、例えば、複数の道路の接続関係に関わる情報を担う道路レイヤと、背景オブジェクトを表示するための背景レイヤと、市町村などの文字を表示するための文字レイヤと、IIS(Integrated Information Service)情報を担うIISレイヤとを含む。路面性状検査システム10は、道路40上の凹部の分布状況を示す地図情報を出力する出力デバイスを備えてもよい。出力デバイスは、例えば、地図情報を印刷するプリンタでもよく、或いは地図情報を表示するディスプレイでもよい。
【0028】
通信部11は、道路40上の凹部の分布状況を示す情報を、道路40の管理者のコンピュータに送信してもよい。管理者とは、例えば、道路法の適用を受ける道路(国道、道道、市町村道など)について、同法の規定に基づき道路の管理を行う者を意味する。道路40上の凹部の位置情報を道路管理者に通知することにより、道路40の修復作業などに役立てることができる。
【0029】
路面性状検査システム10は、道路40上を走行する各車両の位置情報を定期的に取得している。外気温が閾値温度未満であるときに、警告部15は、路面の凍結を警告する警告情報を生成する。通信部11は、道路40上の凹部を通過することが見込まれる車両に警告情報を送信する。
【0030】
図2は、道路40の凹部に溜まる水分の深さの時間経過に伴う変化を示す複数の測定点Q1,Q2,Q3をプロットした図である。測定点Q1は、凹部に溜まる水分の深さが最大となるポイントを示しており、このときの水分の深さをH1とすると、凹部の深さはH1に等しい。水分の深さがH1であるときの時刻をT0とする。測定点Q2は、時刻T0から一定時間経過した時刻T1のときに、凹部に溜まる水分の深さがH2となるポイントを示す(0<H2<H1)。測定点Q3は、時刻T1から更に一定時間経過した時刻T2のときに、凹部に溜まる水分の深さが0となるポイントを示す。ここで、測定点Q1,Q2における凹部の状態は、湿潤状態にあり、このときに凹部を走行する車両の走行音の音圧は相対的に高い。一方、測定点Q3における凹部の状態は、乾燥状態にあり、このときに凹部を走行する車両の走行音の音圧は相対的に低い。凹部の状態が湿潤状態から乾燥状態に経時的に変化すると、凹部を走行する車両の走行音の特徴も経時的に変化する。検出部13は、凹部の湿潤状態の経時的な変化に伴う走行音の特徴の経時的な変化に基づいて、凹部の深さを推定する。凹部を走行する車両の走行音の特徴が変化するのに要する時間(例えば、時刻T2-時刻T0)は、主に、凹部の深さH1と外気温度とに依存するため、記憶部12は、例えば、凹部を走行する車両の走行音の特徴が変化するのに要する時間と凹部の深さH1との対応関係を示す深さ情報を外気温度毎に分けて記憶する。検出部13は、凹部を走行する車両の走行音の特徴が変化するのに要する時間と外気温度とから、深さ情報を参照して、凹部の深さH1を推定することができる。このような深さ情報を得るために、複数の車両20,30のそれぞれは、路面性状検査システム10に送信する位置情報に時刻情報と温度情報とを追加してもよい。ここで、時刻情報とは、走行音が集音された時刻を示す情報を意味する。温度情報とは、走行音が集音された時刻における外気温度を示す情報を意味する。
【0031】
本発明の実施形態によれば、路面を走行する車両の走行音の特徴は、車両が走行する路面の凹部の有無及びその湿潤状態に応じて変化することを利用して、走行音の比較処理を行うことにより、道路上の任意の位置における凹部の有無を検出することが可能となる。また、道路40を走行する複数の車両のそれぞれの走行軌跡は、異なり得るため、道路40上のあらゆる位置について、走行音に関わる情報を取得することができる。道路40上のあらゆる位置について取得された走行音に関わる情報は、それらの位置における凹部の有無の検出に用いられる。また、路面の面内方向に分布する複数の位置について、走行音の比較処理を行うことにより、複数の位置のそれぞれにおける凹部の有無を検出することができる。また、凹部の湿潤状態の経時的な変化に伴う走行音の特徴の経時的な変化に基づいて、凹部の深さを推定することができる。走行音の比較処理に挙動情報を加味することにより、凹部の検出精度を高めることができる。
【0032】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0033】
10…路面性状検査システム 11…通信部 12…記憶部 13…検出部 14…作成部 15…警告部 20…車両 21…集音部 22…位置検出部 23…挙動検出部 24…通信部 30…車両 31…集音部 32…位置検出部 33…挙動検出部 34…通信部 40…道路 41…平坦部 42…轍掘れ 43…凹み