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  • 特許-フランジ継手部の漏出防止装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】フランジ継手部の漏出防止装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/168 20060101AFI20220519BHJP
   F16L 23/22 20060101ALI20220519BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20220519BHJP
   E03B 7/00 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
F16L55/168
F16L23/22
F16J15/10 L
E03B7/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020179418
(22)【出願日】2020-10-27
(62)【分割の表示】P 2019033648の分割
【原出願日】2015-03-02
(65)【公開番号】P2021028540
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2020-10-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸継 昭人
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 一博
(72)【発明者】
【氏名】笑喜 悠輔
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-100752(JP,A)
【文献】特開2005-016703(JP,A)
【文献】特開2009-156445(JP,A)
【文献】特開2013-204636(JP,A)
【文献】特開2007-303683(JP,A)
【文献】特開2014-015998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/16
F16L 23/00-25/14
F16J 15/10
E03B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管のフランジ継手部の外周に配置されるパッキンと、前記パッキンを介して前記フランジ継手部の外周側に装着される環状の固定金具とを備えるフランジ継手部の漏出防止装置において、
前記パッキンは、周方向に延びるベルト状の本体と、前記本体から内周側に向かって突出する複数の突起とを備え、その複数の突起が、フランジ同士の隙間を閉塞するセンター突起と、前記センター突起の両側に形成されてフランジの外周面に密着するサイド突起とを含み、前記本体と前記センター突起と前記サイド突起は同一部材に形成され、
前記センター突起及び前記サイド突起が、それぞれ半円形の断面形状を有し、
前記センター突起の突出量が前記サイド突起の突出量よりも大きく、
前記センター突起と前記サイド突起との間には、断面において管軸方向に平行な平坦面が形成されており、前記センター突起の半円形と前記平坦面が接続され、前記サイド突起と前記平坦面とが接続されており、
前記センター突起の中心および前記サイド突起の中心は、前記平坦面の管軸方向に沿った延長線上に位置しており、
前記本体の幅方向両端に、前記サイド突起よりも外側に突き出た突出部が設けられていて、前記突出部の厚みが前記パッキンの厚みの半分よりも大きいフランジ継手部の漏出防止装置。
【請求項2】
前記パッキンの幅方向両端から前記パッキンの中央に向かって、前記パッキンの内周面が内周側に傾斜している、請求項1に記載のフランジ継手部の漏出防止装置。
【請求項3】
前記パッキンの幅は、接合された状態の前記フランジの幅よりも大きく、
前記サイド突起の先端同士の距離は、前記フランジの幅よりも小さく、
前記突起部は、それぞれ、前記フランジの幅よりも前記パッキンの幅方向外側にはみ出している、請求項1又は2に記載のフランジ継手部の漏出防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管のフランジ継手部における流体の漏出を防止するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体管のフランジ継手部では、地震などの外力や老朽化の影響により、フランジ同士の隙間から流体が漏出することがある。本出願人による特許文献1,2では、このような流体の漏出を未然に防止するため、あるいは既に発生している流体の漏出を防ぎ止めるための手法として、図7のような装置が提案されている。この装置101は、フランジ継手部の外周に巻き付けられるパッキン103と、そのパッキン103を介して装着される環状の固定金具104とを備える。図1,2は、この装置の正面図及び側面図としても参照できる。
【0003】
固定金具104は、周方向の複数箇所に分割部を有し、その各々にボルトとナットで構成された締結具が取り付けられている。締結具を締め付けると、固定金具104が縮径してパッキン103がフランジ継手部10に押し当てられる。パッキン103は、内周側に向かって突出する三つの突起を備えており、そのうち中央に位置する突起132がフランジ同士の隙間を閉塞し、その両側に位置する突起133,134がフランジ111,112の外周面に密着する。
【0004】
ところで、この装置101では、固定金具104を縮径させたときに突起133,134が外側へ逃げるように変形し、フランジ111,112の外周面に対する密着性が弱まって、流体の漏出を防止する効果が低下することがあった。特に分割部では、図5において破線で示すように、そのようなパッキンの外側への変形が顕著であった。また、この場合において、突起133,134の密着性を高めようとすると、締結具を一層強く締め付けなければならず、作業時のトルクが増大するために作業性の悪化を招来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】意匠登録第1305825号公報
【文献】特開2013-204636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、固定金具の縮径に伴うパッキンの外側への変形を抑えて、漏出防止効果の低下や作業性の悪化を防ぐことができるフランジ継手部の漏出防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係るフランジ継手部の漏出防止装置は、流体管のフランジ継手部の外周に配置されるパッキンと、前記パッキンを介して前記フランジ継手部の外周側に装着される環状の固定金具とを備えるフランジ継手部の漏出防止装置において、前記パッキンは、周方向に延びるベルト状の本体と、前記本体から内周側に向かって突出する複数の突起とを備え、その複数の突起が、フランジ同士の隙間を閉塞するセンター突起と、前記センター突起の両側に形成されてフランジの外周面に密着するサイド突起とを含み、前記センター突起の突出量が前記サイド突起の突出量よりも大きいものである。かかる構成によれば、センター突起によって隙間を閉塞しやすくなるとともに、サイド突起をフランジの外周面に密着させるためのトルクを小さくできるので、固定金具の縮径に伴うパッキンの外側への変形が抑えられ、その結果、漏出防止効果の低下や作業性の悪化を防ぐことができる。
【0008】
前記センター突起及び前記サイド突起が、それぞれ半円形の断面形状を有することが好ましい。かかる構成によれば、湾曲した突起の先端に力が集中して作用するため、作業時のトルクを増大させることなく、センター突起によりフランジ同士の隙間を適切に閉塞しつつ、フランジの外周面にサイド突起を強く密着させることができる。また、前記センター突起及び前記サイド突起の断面形状における半円形の中心が、前記パッキンの厚みの中央よりも内周側に位置することで、パッキンの外側への変形をより有効に抑制できる。
【0009】
前記突出部の内周面が、前記パッキンの中央に向かって内周側に傾斜するものが好ましい。かかる構成によれば、サイド突起が外側に逃げるように変形し難くなるので、パッキンの外側への変形をより効果的に抑制できる。
【0010】
前記固定金具が周方向の複数箇所に分割部を有し、前記固定金具を構成する複数の分割片が、前記分割部に取り付けられた締結具によって連結され、前記分割部で互いに突き合わせられる前記分割片の端部のうち、一方には前記パッキンの中央を通るセンター歯が設けられ、他方には前記センター歯の両側に配置されるサイド歯が設けられ、前記センター歯と前記サイド歯とが互いに嵌合する相補形状をなし、前記サイド突起の中央が前記サイド歯の中央よりも内側に配置されているものが好ましい。かかる構成によれば、サイド突起に対してサイド歯が外側寄りに位置することから、サイド突起が外側に逃げるように変形し難くなり、パッキンの外側への変形をより効果的に抑制できる。
【0011】
前記本体の外周にスリットが形成されているものが好ましい。スリットの形成によってパッキンの断面積が減少するため、パッキンの外側への変形を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】フランジ継手部に取り付けた漏出防止装置の正面図
図2図1の漏出防止装置の側面図
図3図1のA-A断面図
図4】パッキンの断面図
図5】分割部を拡大して示す側面図
図6】漏出防止装置の他の実施形態を示す断面図
図7】従来の漏出防止装置を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1,2は、流体管である水道管P1,P2が互いにフランジ接合されたフランジ継手部10を示している。フランジ継手部10では、水道管P1,P2の端部に形成された一対のフランジ11,12が固着具20によって締結される。固着具20は、周方向の複数箇所(本実施形態では四箇所)に取り付けられている。図3に示すように、一対のフランジ11,12の間には環状のガスケット13を介在させているが、これに限られるものではない。また、フランジ11,12の間には、外周側(径方向外側)へ向けて開口した隙間14が形成されている。
【0015】
固着具20は、フランジ11,12のボルト穴に挿通されたボルト21と、そのボルト21に螺合されるナット22,23とを備え、その一対のナット22,23によりフランジ11,12を挟持している。ボルト21は両ねじボルトで構成され、ナット23は袋ナット(キャップナット)で構成されている。更に、固着具20は、ナット23とフランジ11との間を密封するシール材24と、シール材24よりも硬質な素材(例えば、金属)で形成されたフレーム25と、ナット22とフランジ12との間を密封するシール材26とを備える。シール材24には、ボルト孔に入り込むヒレ部が形成されている。
【0016】
このような水道管のフランジ継手部10では、地震などの外力や老朽化の影響によってフランジ同士が離間した場合に、その隙間14から漏水することがある。そこで、漏水を未然に防止するため、あるいは既に発生している漏水を防ぎ止めるために、漏出防止装置1が取り付けられている。尚、フランジ同士が離間した場合は、フランジ11,12のボルト孔からの漏水も懸念されるが、本実施形態においては、シール材24,26を備えた固着具20によって、そのようなボルト孔からの漏水を防ぎ止めることができる。
【0017】
漏出防止装置1は、フランジ継手部10の外周に巻き付けられるパッキン3と、そのパッキン3を介してフランジ継手部10の外周側に装着される環状の固定金具4とを備える。パッキン3は、周方向に延びるベルト状の本体31と、本体31から内周側(径方向内側)に向かって突出する複数(本実施形態では三つ)の突起とを備える。その複数の突起は、フランジ同士の隙間14を閉塞するセンター突起32と、センター突起32の両側に形成されてフランジ11,12の外周面に密着するサイド突起33,34とを含み、各々が周方向に連続して延びている。パッキン3は、ゴムなどの弾性材により形成される。図面上の区別を容易にするため、図1,2,5ではパッキン3を着色して描いている。
【0018】
固定金具4は、周方向の複数箇所(本実施形態では二箇所)に分割部41を有し、その固定金具4を構成する複数(本実施形態では二つ)の分割片4A,4Bが、分割部41に取り付けられた締結具42によって連結されている。締結具42を締め付けることにより固定金具4が縮径し、パッキン3がフランジ継手部10に押し当てられる。締結具42はボルトとナットで構成され、そのボルトは、周方向における分割片4A,4Bの端部から図1の左右方向に張り出した延設部43に挿通されている。
【0019】
この漏出防止装置1では、パッキン3の本体31の幅方向両端に、サイド突起33,34よりも外側に突き出た突出部35が設けられている。このような突出部35が本体31に設けられていることで、分割部41においても、固定金具4を縮径させたときにサイド突起33,34が外側へ逃げることなく、フランジ11,12の外周面と固定金具4の内周面との間で挟圧されたパッキン3の外側への変形が抑えられ、その結果、漏出防止効果の低下や作業性の悪化を防ぐことができる。
【0020】
本実施形態では、図3のように、接合されたフランジ11,12の幅W1よりもパッキン3の幅W2(図4参照)の方が大きく、その外側にはみ出した部分が突出部35で形成されている。また、固定金具4には、内周側に突出した一対の内フランジ44が設けられており、それらは本体31を挟むように突出部35の幅方向両端に配置されている。突出部35は、微小な隙間を設けて内フランジ44と対向しており、固定金具4の縮径に伴って本体31が外側に膨らんだ場合でもその変形量は僅かである。
【0021】
パッキン3が備える突起は、先端が凸状に湾曲した断面形状を有することが好ましく、例えば台形の上面を凸状に湾曲させた形状が考えられる。本実施形態では、突起32~34が半円形の断面形状を有し、これによれば湾曲した突起の先端に力が集中して作用するため、作業時のトルクを増大させずに、センター突起32によりフランジ同士の隙間を適切に閉塞しつつ、フランジ11,12の外周面にサイド突起33,34を強く密着させることができる。センター突起32の湾曲した先端は隙間14の開口に面し、その先端の両側が隙間14の開口を塞ぐようにフランジ11,12のエッジに当接する。サイド突起33,34の湾曲した先端は、それぞれフランジ11,12の外周面に当接する。
【0022】
図4のように、このパッキン3では、センター突起32及びサイド突起33,34の断面形状における半円形の中心C32~C34が、それぞれパッキン3の厚みTの中央よりも内周側に位置する。これにより、パッキン3の外側への変形を有効に抑制できる。センター突起32では、サイド突起33,34よりも半円形の曲率半径が大きく、その突出量が相対的に大きい。そのため、センター突起32によって隙間14を閉塞しやすくなるとともに、サイド突起33,34をフランジ11,12の外周面に密着させるためのトルクを小さくできる。センター突起32とサイド突起33,34との間には平坦部37が形成されているので、パッキン3が強く挟圧されたときでも、隣接する突起同士が干渉することが抑制され、フランジ11,12の外周面に各突起を適切に密着させることができる。
【0023】
また、このパッキン3では、突出部35の内周面が、幅方向におけるパッキン3の中央に向かって内周側に傾斜している。かかる構成によれば、締結具42を締め付けて固定金具4を縮径させたときに、サイド突起33,34が外側に逃げるように変形し難くなり、パッキン3の外側への変形をより効果的に抑制できる。また、突出部35の厚みは、パッキン3の厚みTの半分(即ち、T/2)よりも大きく、このことはパッキン3の外側への変形を抑制するうえで有利である。
【0024】
図5は、分割部41を拡大して示しており、図2の破線部に相当する。本実施形態では、分割部41で互いに突き合わせられる分割片4A,4Bの端部のうち、一方にはパッキン3の中央を通るセンター歯51が設けられ、他方にはセンター歯51の両側に配置されるサイド歯52,53が設けられ、そのセンター歯51とサイド歯52,53とが互いに嵌合する相補形状をなしている。これらの嵌合の具合(噛み合いの程度)は、フランジ11,12の径寸法や締結具42の締め付けに応じて変化する。
【0025】
サイド突起33,34の中央CL33,34は、それぞれサイド歯52,53の中央CL52,53よりも内側に配置されている。かかる構成によれば、サイド突起33,34に対してサイド歯52,53が外側寄りに位置することから、固定金具4を縮径させたときにサイド突起33,34が外側に逃げるように変形し難くなり、パッキン3の外側への変形をより効果的に抑制できる。センター突起32の中央CL32はセンター歯51の中央CL51と一致しているが、これらは多少ずれていても構わない。
【0026】
図6の例では、パッキン3の本体31の外周にスリット36が形成されている。このようなスリット36によりパッキン3の断面積を減少させることによっても、パッキン3の外側への変形を低減できる。スリット36は、パッキン3の幅方向において突起32を避けた位置に形成されているため、突起32の形成箇所におけるパッキン3の厚みが確保され、隙間14を封止する機能に支障を来たさない。スリット36は、周方向に連続して延びることが好ましい。また、スリット36はパッキン3の厚み方向に延びているが、これに限られるものではない。
【0027】
本実施形態では流体管として水道管を例に挙げたが、これに限られるものではなく、水以外の各種の液体、気体などの流体に用いる流体管に適用できる。
【0028】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 漏出防止装置
3 パッキン
4 固定金具
4A 分割片
4B 分割片
10 フランジ継手部
11 フランジ
12 フランジ
14 隙間
31 本体
32 センター突起
33 サイド突起
34 サイド突起
35 突出部
36 スリット
41 分割部
42 締結具
51 センター歯
52 サイド歯
53 サイド歯
P1 水道管(流体管の一例)
P2 水道管(流体管の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7