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特許7075655洗浄剤組成物、スプレーボトル、ウェットワイパー及び消臭除菌洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物、スプレーボトル、ウェットワイパー及び消臭除菌洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/62 20060101AFI20220519BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20220519BHJP
   C11D 1/92 20060101ALI20220519BHJP
   C11D 3/06 20060101ALI20220519BHJP
   C11D 3/26 20060101ALI20220519BHJP
   C11D 1/94 20060101ALI20220519BHJP
   C11D 17/04 20060101ALI20220519BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
C11D1/62
C11D1/75
C11D1/92
C11D3/06
C11D3/26
C11D1/94
C11D17/04
C11D17/08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018046831
(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2019156999
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000190736
【氏名又は名称】株式会社ニイタカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米川 怜史
(72)【発明者】
【氏名】野口 博章
(72)【発明者】
【氏名】竹本 雄紀
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-096493(JP,A)
【文献】特開2015-074756(JP,A)
【文献】特開2002-060786(JP,A)
【文献】特開2002-060784(JP,A)
【文献】特開平11-061199(JP,A)
【文献】特開2015-168659(JP,A)
【文献】特開平10-330799(JP,A)
【文献】特表2005-505660(JP,A)
【文献】特開2002-294281(JP,A)
【文献】特開2002-348596(JP,A)
【文献】特開2011-190376(JP,A)
【文献】特開2006-143843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0100465(US,A1)
【文献】特開2006-069918(JP,A)
【文献】特開2004-051954(JP,A)
【文献】特開2002-146397(JP,A)
【文献】特開2016-169378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
C23G 1/00-5/06
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール(A)、
両性界面活性剤(B)、
第四級アンモニウム塩(C)、及び、
pH緩衝剤(D)を含み、
前記両性界面活性剤(B)は、アミンオキシド型両性界面活性剤及び/又はベタイン型両性界面活性剤であり、
前記第四級アンモニウム塩(C)は、アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩であり、
前記pH緩衝剤(D)は、リン酸塩、クエン酸塩、及び、リンゴ酸塩からなる群から選択された少なくとも1種であり、
pHが.0~.0であり、
消臭性及び除菌性を備えることを特徴とする汚れ拭き取り用洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記汚れ拭き取り用洗浄剤組成物100重量%中、前記エタノール(A)の配合量が0.5~35.0重量%である請求項に記載の汚れ拭き取り用洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらにアニオン性界面活性剤(E)を含む請求項1又は2に記載の汚れ拭き取り用洗浄剤組成物。
【請求項4】
LD50値が3000mg/kg以上である請求項1~のいずれかに記載の汚れ拭き取り用洗浄剤組成物。
【請求項5】
スプレーボトルに請求項1~のいずれかに記載の汚れ拭き取り用洗浄剤組成物が充填されたことを特徴とするスプレーボトル。
【請求項6】
繊維シートに請求項1~のいずれかに記載の汚れ拭き取り用洗浄剤組成物が含まれたことを特徴とするウェットワイパー。
【請求項7】
洗浄対象物の表面に請求項1~のいずれかに記載の汚れ拭き取り用洗浄剤組成物を吹き付け、
前記洗浄対象物の表面に吹き付けた洗浄剤対象物を拭き取ることにより、洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を行うことを特徴とする消臭除菌洗浄方法。
【請求項8】
汚れ拭き取り用洗浄剤組成物の吹き付けを、請求項に記載のスプレーボトルを用いて行う請求項に記載の消臭除菌洗浄方法。
【請求項9】
洗浄対象物の表面を請求項に記載のウェットワイパーで拭くことにより洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を行うことを特徴とする消臭除菌洗浄方法。
【請求項10】
繊維シートに請求項1~のいずれかに記載の汚れ拭き取り用洗浄剤組成物を含ませて、請求項に記載のウェットワイパーを得て、
洗浄対象物の表面を前記ウェットワイパーで拭くことにより洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を行うことを特徴とする消臭除菌洗浄方法。
【請求項11】
繊維シートに、請求項に記載のスプレーボトルを用いて汚れ拭き取り用洗浄剤組成物の吹き付けを行い、
前記ウェットワイパーを得る請求項10に記載の消臭除菌洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物、スプレーボトル、ウェットワイパー及び消臭除菌洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レストランやホテル等における、テーブル等の表面や部屋の壁面などに付着した油汚れやタバコの煙による汚れは、衣類や食器に付着した汚れとは異なり洗浄機による洗浄によって落とすことはできない。
そのため、これらの面に付着した汚れに対しては、洗浄剤組成物をスプレーボトル等により噴霧して拭き取ることで汚れを除去することが行われている。
特許文献1には、このような用途に使用される洗浄剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3021941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テーブル等の表面や部屋の壁面などに油汚れやタバコの煙による汚れが付着していると、不快臭が生じるが、特許文献1に記載の洗浄剤組成物による洗浄を行った後にも不快臭が残留することがあった。
その場合、テーブル等の表面や部屋の壁面などに対して洗浄剤組成物とは別に消臭剤を噴霧する等の処理が必要となることがあり、清掃を行う際の作業負担を増大させていた。
また、これらの表面に対しては清掃作業の際に除菌を行うことも同時に要望されていた。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためにされたものであり、テーブル等の表面や部屋の壁面などに対して、汚れの洗浄と同時に消臭及び除菌を行うことのできる、消臭性及び除菌性を備える洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の洗浄剤組成物は、
エタノール(A)、
両性界面活性剤(B)、
第四級アンモニウム塩(C)、及び、
pH緩衝剤(D)を含み、
pHが5.0~9.0であり、
消臭性及び除菌性を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の洗浄剤組成物は、エタノールと両性界面活性剤の作用により洗浄剤組成物として作用する。
その上で、エタノールによる除菌効果が発揮され、さらに第四級アンモニウム塩によっても除菌効果が発揮される。
また、両性界面活性剤は臭気の原因物質を包み込むことで消臭作用を発揮させる。
pH緩衝剤は酸性の臭気(脂肪酸の体臭等)、アルカリ性の臭気(アミン臭等)を中和することにより消臭作用を発揮させる。
さらに、除菌効果があると菌が生み出す臭気も低減される。
これらの作用が相互に発揮されることにより、本発明の洗浄剤組成物は消臭性及び除菌性を備える洗浄剤組成物となる。
また、pHが5.0~9.0であるため洗浄剤組成物を作業者が吸い込んだ場合の不快感が少なく、安全性が高い洗浄剤組成物である。
【0008】
本発明の洗浄剤組成物において、上記両性界面活性剤(B)は、アミンオキシド型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤及びアミノ酸型両性界面活性剤からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
両性界面活性剤(B)がアミンオキシド型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤及びアミノ酸型両性界面活性剤からなる群から選択された少なくとも1種であると、臭気成分の揮発を抑制することができる。
【0009】
本発明の洗浄剤組成物においては、上記pH緩衝剤(D)がグリシン、リン酸、フタル酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸、炭酸、ホウ酸、トリスヒドロキシメチルアミノメタン及びヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
pH緩衝剤(D)がこれらの物質であると、酸性およびアルカリ性の臭気に対して消臭性能を発揮することができる。
【0010】
本発明の洗浄剤組成物においては、上記エタノール(A)の配合量が0.5~35.0重量%であることが好ましい。
エタノールの配合量が上記範囲内であると、洗浄剤組成物の揮発を容易にし、また洗浄剤組成物の臭気を抑えることができる。
【0011】
本発明の洗浄剤組成物は、さらにアニオン性界面活性剤(E)を含むことが好ましい。
アニオン性界面活性剤(E)を含むことで油汚れ等の汚れに対する洗浄性を発揮させることができ、臭気の原因物質を包み込むことで消臭作用を発揮させることができる。
【0012】
本発明の洗浄剤組成物においては、LD50値が3000mg/kg以上であることが好ましい。
本発明の洗浄剤組成物はスプレーボトルで噴霧して使用することがあるため、使用者がミストを吸い込む可能性がある。そのため、生体毒性が低いことが好ましいため、LD50値が上記範囲内であることが好ましい。
【0013】
本発明のスプレーボトルは、スプレーボトルに本発明の洗浄剤組成物が充填されたことを特徴とする。
上記スプレーボトルを使用して本発明の洗浄剤組成物を洗浄対象物の表面に吹き付け、洗浄剤組成物を拭き取ることにより、洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を同時に行うことができる。
【0014】
本発明のウェットワイパーは、繊維シートに本発明の洗浄剤組成物が含まれたことを特徴とする。
上記ウェットワイパーにより洗浄対象物の表面を拭くと、拭き取り動作のみで洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を同時に行うことができる。
【0015】
本発明の消臭除菌洗浄方法の第1の形態は、洗浄対象物の表面に本発明の洗浄剤組成物を吹き付け、
上記洗浄対象物の表面に吹き付けた洗浄剤対象物を拭き取ることにより、洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を行うことを特徴とする。
また、洗浄剤組成物の吹き付けを、本発明のスプレーボトルを用いて行うことが好ましい。
本発明の洗浄剤組成物を洗浄対象物の表面に吹き付け、洗浄剤組成物を拭き取ることにより、洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を同時に行うことができる。
なお、衣類用および空間消臭用の消臭剤として実用化されているスプレーボトル式の消臭剤では、消臭剤を吹き付けた後に拭き取りを行うことはないので、本発明とはその方法は相違している。
【0016】
本発明の消臭除菌洗浄方法の第2の形態は、洗浄対象物の表面を本発明のウェットワイパーで拭くことにより洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を行うことを特徴とする。
上記ウェットワイパーにより洗浄対象物の表面を拭くと、拭き取り動作のみで洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を同時に行うことができる。
【0017】
本発明の消臭除菌洗浄方法の第3の形態は、繊維シートに本発明の洗浄剤組成物を含ませて、本発明のウェットワイパーを得て、
洗浄対象物の表面を上記ウェットワイパーで拭くことにより洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を行うことを特徴とする。
また、繊維シートに、本発明のスプレーボトルを用いて洗浄剤組成物の吹き付けを行い、
上記ウェットワイパーを得ることが好ましい。
この形態は、洗浄対象物の表面を拭く直前に、繊維シートにその都度洗浄剤組成物を含ませてから、洗浄対象物の表面を拭く形態である。
この方法でも洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を同時に行うことができる。
繊維シートに洗浄剤組成物を含ませる際に、スプレーボトルを用いた吹き付けを行うと作業性が良好であるため好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の洗浄剤組成物は、消臭性及び除菌性を備える洗浄剤組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の洗浄剤組成物は、エタノール(A)、両性界面活性剤(B)、第四級アンモニウム塩(C)、及び、pH緩衝剤(D)を含み、pHが5.0~9.0であり、消臭性及び除菌性を備えることを特徴とする。
【0020】
以下、本発明の洗浄剤組成物を構成する、エタノール(A)、両性界面活性剤(B)、第四級アンモニウム塩(C)、及び、pH緩衝剤(D)について、それぞれ説明する。
【0021】
エタノール(A)は、除菌性、洗浄性を発揮させるために有効である。また、エタノール(A)が含まれることで洗浄剤組成物が揮発しやすくなり、洗浄剤組成物を洗浄対象物に吹き付けや塗布した後の乾きが良くなる。
エタノールの配合量は0.5~35.0重量%であることが好ましく、0.5~30.0重量%であることがより好ましく、0.5~20.0重量%であることがさらに好ましい。
エタノールの配合量が上記範囲内であると、洗浄剤組成物の揮発を容易にし、また洗浄剤組成物の臭気を抑えることができる。
【0022】
両性界面活性剤(B)は、洗浄性、消臭性を発揮させるために有効である。その界面活性作用により油汚れ等の汚れに対する洗浄性を発揮させることができ、臭気の原因物質を包み込むことで消臭作用を発揮させる。
両性界面活性剤(B)としては、アミンオキシド型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤及びアミノ酸型両性界面活性剤からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましく、アミンオキシド型両性界面活性剤及びベタイン型両性界面活性剤からなる群から選択された少なくとも1種であることがより好ましい。
両性界面活性剤(B)がアミンオキシド型両性界面活性剤及びベタイン型両性界面活性剤からなる群から選択された少なくとも1種であると、臭気成分の揮発をより抑制することができる。
【0023】
アミンオキシド型両性界面活性剤としては、アルキルアミンオキシド、アミドアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
ベタイン型両性界面活性剤としては、アルキルアミノベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルアミノスルホベタイン等が挙げられる。
アミノ酸型両性界面活性剤としては、3-(ドデシルアミノ)プロピオン酸ナトリウム、N-テトラデシル-β-アラニン等が挙げられる。
これらのなかではラウリルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド、ヤシ脂肪酸アミドプロピルベタインが好ましい。
両性界面活性剤(B)の配合量は0.01~2.0重量%であることが好ましい。
両性界面活性剤(B)の配合量が上記範囲内であると、臭気成分の揮発を抑制することができる。
また、両性界面活性剤(B)を複数種類含むときの両性界面活性剤(B)の含有量は、その合計量として定める。
【0024】
第四級アンモニウム塩(C)は、除菌性を発揮させるために有効である。除菌性を発揮することで菌の存在に起因する臭気を抑制できることから消臭効果を長く維持するためにも有効である。
第四級アンモニウム塩(C)としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩及びアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩が挙げられる。
これらの中ではアルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩が好ましく、塩化アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムがより好ましい。
また、塩化ベンザルコニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウムも好ましい。
また、第四級アンモニウム塩(C)を構成する塩としてはハロゲン化物が好ましく、塩化物、臭化物がより好ましい。
第四級アンモニウム塩(C)の配合量は0.01~2.0重量%であることが好ましい。
第四級アンモニウム塩(C)の配合量が上記範囲内であると、洗浄剤に除菌性をもたせることができる。
また、第四級アンモニウム塩(C)を複数種類含むときの第四級アンモニウム塩(C)の含有量は、その合計量として定める。
【0025】
pH緩衝剤(D)は、酸性成分及びアルカリ性成分を中和して、脂肪酸等の酸性成分に起因する臭気に対する消臭性、アミン等のアルカリ性成分に起因する臭気に対する消臭性を発揮させるために有効である。また、pHに対する緩衝作用により洗浄剤組成物の液性を中性付近に調整することにより、安全性の高い洗浄剤組成物とすることに寄与する。
pH緩衝剤(D)としては、グリシン、リン酸、フタル酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸、炭酸、ホウ酸、トリスヒドロキシメチルアミノメタン及びヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種が挙げられる。
これらの中ではクエン酸塩が好ましく、クエン酸ナトリウム(クエン酸三ナトリウム)がより好ましい。
pH緩衝剤(D)がクエン酸ナトリウムであると、pHを中性付近に調整することができる。
また、リン酸二水素ナトリウム、DL-リンゴ酸ナトリウムも好ましい。
pH緩衝剤(D)を構成する塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
pH緩衝剤(D)の配合量は0.1~1重量%であることが好ましい。
pH緩衝剤(D)の配合量が上記範囲内であると、酸性およびアルカリ性の臭気に対して消臭性能を発揮することができる。
また、pH緩衝剤(D)を複数種類含むときのpH緩衝剤(D)の含有量は、その合計量として定める。
【0026】
本発明の洗浄剤組成物において、上記(A)~(D)成分の他には残部としての水が含まれる。水としては、とくに限定されるものではないが、水道水、蒸留水、純水及びイオン交換水等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
また、洗浄剤組成物には上記(A)~(D)成分及び水の他に、任意成分としてアニオン性界面活性剤(E)、ノニオン性界面活性剤、水以外の溶媒、キレート剤、可溶化剤、色素、香料、防腐剤等を含んでいてもよい。
【0027】
アニオン性界面活性剤(E)は、洗浄性、消臭性を発揮させるために有効である。その界面活性作用により油汚れ等の汚れに対する洗浄性を発揮させることができ、臭気の原因物質を包み込むことで消臭作用を発揮させる。
アニオン性界面活性剤(E)としては、脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホメチルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、アルキルコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩(AES)等が挙げられる。
これらの中では芳香族スルホン酸塩が好ましく、キシレンスルホン酸塩がより好ましい。
アニオン性界面活性剤(E)の配合量は0.01~1.0重量%であることが好ましい。
アニオン性界面活性剤(E)の配合量が上記範囲内であると、油汚れに対し高い洗浄力をもたせることができる。
アニオン性界面活性剤(E)を構成する塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。
また、アニオン性界面活性剤(E)を複数種類含むときのアニオン性界面活性剤(E)の含有量は、その合計量として定める。
【0028】
本発明の洗浄剤組成物のpHは5.0~9.0である。また、pHが6.0~8.0であることが好ましい。
洗浄剤組成物のpHが5.0~9.0であるため洗浄剤組成物を作業者が吸い込んだ場合の不快感が少なく、安全性の高い洗浄剤組成物である。
pHの測定は、市販のpHメーター等を用いて行えばよいが、例えば、堀場製作所製、D-21型を用いて測定することができる。
【0029】
本発明の洗浄剤組成物は、LD50値が3000mg/kg以上であることが好ましく、LD50値が10000mg/kg以上であることがより好ましく、LD50値が15000mg/kg以上であることがさらに好ましい。
LD50値は、OECD TG420 急性経口毒性試験(固定用量法)に準拠してラット経口急性毒性試験で定められる値である。
本発明の洗浄剤組成物はスプレーボトルで噴霧して使用することがあるため、使用者がミストを吸い込む可能性がある。そのため、生体毒性が低いことが好ましく、LD50値が上記範囲内であることが好ましい。
LD50値は経口急性毒性の評価であり、ミストを吸い込む場合の吸入毒性とは異なる。しかし主要な化学品は吸入毒性の測定がされていないため、ミストの吸入リスクを評価するには、LD50値(経口)で評価するのは妥当といえる。
【0030】
本発明の洗浄剤組成物は、除菌性を備える組成物であるが、除菌対象の菌は特に限定されるものではない。例えば、カンピロバクター、大腸菌、レジオネラ菌、緑膿菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、腸炎ビブリオ、カンジダ等の病原菌となり得る菌が挙げられる。
また、本発明の洗浄剤組成物は、消臭性を備える組成物であるが、消臭対象の臭気は特に限定されるものではない。
消臭対象の臭気の例としては、体臭、タバコ臭、食品臭、汗臭、アンモニア臭、便臭、調理臭等が挙げられる。
また、本発明の洗浄剤組成物で洗浄する対象の汚れは、特に限定されるものではないが、油汚れ、タバコ汚れ、皮脂汚れ、タンパク質汚れ、デンプン汚れ、汗汚れ等が挙げられる。
【0031】
本発明の洗浄剤組成物は、任意の方法で製造することができる。
例えば、エタノール(A)、両性界面活性剤(B)、第四級アンモニウム塩(C)、及び、pH緩衝剤(D)と、必要に応じてその他の成分とを添加し、攪拌混合すればよい。通常は水をともに混合して、洗浄剤組成物のpH及び粘度を調整する。
【0032】
次に、本発明の洗浄剤組成物を使用した本発明の消臭除菌洗浄方法について説明する。
本発明の洗浄剤組成物を使用した本発明の消臭除菌洗浄方法は、洗浄対象物の洗浄を行うものであるので、洗浄対象物に付着した汚れを拭くことによって除去する工程を伴う。
これは、衣類用の消臭剤として実用化されているスプレーボトル式の消臭剤を使用した消臭方法のように、対象物に消臭剤を吹き付けて以後の拭き取りを行わない消臭方法とは異なる。
【0033】
本発明の洗浄剤組成物を使用した本発明の消臭除菌洗浄方法としては、洗浄剤組成物を洗浄対象物に付与する方法の違いから、3つの形態が挙げられる。
【0034】
本発明の消臭除菌洗浄方法の第1の形態は、洗浄対象物の表面に本発明の洗浄剤組成物を吹き付け、上記洗浄対象物の表面に吹き付けた洗浄剤対象物を拭き取ることにより、洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を行うことを特徴とする。
本発明の洗浄剤組成物を洗浄対象物の表面に吹き付け、洗浄剤組成物を拭き取ることにより、洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を同時に行うことができる。
洗浄剤組成物の吹き付けは、本発明の洗浄剤組成物が充填されたスプレーボトルにより行うことが好ましい。
なお、本発明の洗浄剤組成物が充填されたスプレーボトルは本発明のスプレーボトルである。
【0035】
本発明の消臭除菌洗浄方法の第1の形態では、洗浄剤組成物を洗浄対象物の表面に吹き付け、所定時間放置して汚れを洗浄対象物の表面から浮き上がらせたのちに拭き取ってもよい。また、洗浄剤組成物を洗浄対象物の表面に吹き付けてすぐに拭き取ってもよい。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物を用いた消臭除菌洗浄方法の対象となる洗浄対象物としては、硬質表面を有する物品が挙げられる。
硬質表面を有する物品としては、テーブル、椅子、部屋の壁面、家具、厨房器具、食品製造装置、機械製品、電化製品、トイレ(便器)、浴室(浴槽)、各種金属製品、プラスチック製品等が挙げられる。
洗浄対象物の材質としては、ステンレス、鋳鉄、鉄鋼、ステンレス、メッキ鋼板、アルミニウム、陶器、プラスチック、壁面材等が挙げられる。
本発明の洗浄剤組成物を用いた消臭除菌洗浄方法は、自動洗浄機による洗浄を行うことが難しい物品に対して使用することが好ましい。
また、本発明の洗浄剤組成物を衣類、ソファ、ベッド等の布製品に対して使用することは可能であるが、本発明の洗浄剤組成物が浸みこみやすく、汚れの拭き取りが難しいためこれらは最適な洗浄対象物ではない。
【0037】
なお、本発明の洗浄剤組成物は、洗浄対象物の表面に吹き付ける代わりに塗布等の他の方法により洗浄対象物の表面に付与して使用してもよい。
【0038】
本発明の消臭除菌洗浄方法の第2の形態は、洗浄対象物の表面を、繊維シートに本発明の洗浄剤組成物が含まれたウェットワイパーで拭くことにより洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を行うことを特徴とする。
上記ウェットワイパーにより洗浄対象物の表面を拭くと、拭き取り動作のみで洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を同時に行うことができる。
繊維シートに本発明の洗浄剤組成物が含まれたウェットワイパーは本発明のウェットワイパーである。
なお、ウェットワイパーに使用される「繊維シート」とは、不織布、織布、編布等の繊維により構成されるシートやスポンジ、ウェス等の洗浄剤組成物を吸液することのできる部材を意味する。
また、この形態における洗浄対象物は、上記した第1の形態における洗浄対象物として例示した物品と同様にすることができる。
【0039】
本発明の消臭除菌洗浄方法の第3の形態は、繊維シートに本発明の洗浄剤組成物を含ませて、本発明のウェットワイパーを得て、洗浄対象物の表面を上記ウェットワイパーで拭くことにより洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を行うことを特徴とする。
また、繊維シートに、本発明のスプレーボトルを用いて洗浄剤組成物の吹き付けを行い、
上記ウェットワイパーを得ることが好ましい。
この形態は、洗浄対象物の表面を拭く直前に、繊維シートにその都度洗浄剤組成物を含ませてから、洗浄対象物の表面を拭く形態である。
この方法でも洗浄対象物の表面の消臭、除菌及び洗浄を同時に行うことができる。
繊維シートに洗浄剤組成物を含ませる際に、スプレーボトルを用いた吹き付けを行うと作業性が良好であるため好ましい。
ウェットワイパーに使用される「繊維シート」は、上記した第2の形態におけるものと同様にすることができる。また、この形態における洗浄対象物は、上記した第1の形態における洗浄対象物として例示した物品と同様にすることができる。
【実施例
【0040】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例において、特に断らない限り「部」は「重量部」を「%」は「重量%」をそれぞれ意味する。
【0041】
(洗浄剤組成物の調製)
表1に示す処方に従い、各成分を混合して、各実施例及び比較例に係る洗浄剤組成物を得た。
なお、表中に示す成分は全て純分換算した重量であり、各成分としては以下のものを用いた。
エタノール:第一アルコール(株)製「発酵アルコール」
ラウリルアミドプロピルジメチルアミンオキシド:ラウリン酸とジメチルアミノプロピルアミンとのアミド化物を過酸化水素により反応させて得たもの
ラウリルジメチルアミンオキシド:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「カデナックスDM12D-W(C)」
ヤシ脂肪酸アミドプロピルベタイン:クラリアントジャパン(株)製「GENAGEN CAB-818J」
塩化アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム:クラリアントジャパン(株)製「PRAEPAGEN HY」
塩化ベンザルコニウム:「三洋化成(株)製 濃塩化ベンザルコニウム液50」
塩化ジデシルジメチルアンモニウム:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「リポカード210-80E」
クエン酸三ナトリウム:磐田化学工業(株)製「クエン酸三ナトリウム」
リン酸二水素ナトリウム:キシダ化学(株)製「りん酸二水素ナトリウム(2水和物)」
DL-リンゴ酸ナトリウム:扶桑化学工業(株)製「DL-リンゴ酸ナトリウム」
キシレンスルホン酸ナトリウム:テイカ(株)製「テイカトックスN1140」
アルカンスルホン酸ナトリウム:クラリアントジャパン(株)製「HOSTAPUR SAS30」
α―オレフィンスルホン酸ナトリウム:クラリアントジャパン(株)製「HOSTAPUR OS LIQUID」
また、残部としてイオン交換水とpH調整剤(酸又はアルカリ)を加えてpHが7.5となるように調整した。
【0042】
(pHの測定)
各実施例及び比較例の洗浄剤組成物に対し、pHメーターを用いてpHを測定した。結果を表1に示した。
【0043】
(洗浄性試験)
[油汚れ又は皮脂汚れに対する洗浄性試験]
ビニールクロス貼りの壁面に油汚れ(大豆白絞油)又は皮脂汚れ(トリオレイン30%、トリパルミチン30%、オレイン酸15%、パルミチン酸15%、スクアレン10%の混合物)を塗布した試験用壁面に対し、各実施例及び比較例の洗浄剤組成物をスプレーボトルを用いて染み込ませたカウンタークロスで壁面に付着した洗浄剤組成物を拭き取り、壁面の汚れの落ち具合を評価した。
結果を表1に示す。評価基準は以下の通りである。
◎:汚れが確認できない程度によく落ちていた。
○:汚れが少量残った。
×:汚れが大部分残った。
【0044】
(消臭性試験)
[タバコ臭又は食品油臭に対する消臭性試験]
タバコ臭又は食品油臭を付した綿布をポリ容器に入れ、におい袋に集気した。
パネラーがにおい袋のにおいを嗅ぎ、6段階臭気強度表示法での評価を行った。
タバコ臭又は食品油臭を付した綿布に対して各実施例及び比較例の洗浄剤組成物をスプレーボトルで噴霧して1分間経過した後の綿布もポリ容器に入れ、におい袋に集気して同様に6段階臭気強度表示法での評価を行った。
洗浄剤組成物の有無によるにおいの評価結果を対比して、以下のように良否を判定した。
結果を表1に示す。評価基準は以下の通りであり、評価は6人のパネラーの評価点の平均点を用いて行った。
○:洗浄剤組成物の噴霧により臭気強度の評価点が1.0点以上減少
×:洗浄剤組成物の噴霧により臭気強度の評価点が1.0点未満の減少、変化なし又は増加
【0045】
(除菌性試験)
(大腸菌に対する除菌効果の評価)
(1)大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)を普通ブイヨン培地に接種し、35℃で24時間培養し菌液とした。
【0046】
(2)各実施例及び比較例の洗浄剤組成物と菌液とを99:1の割合(容量)で混合し、室温で1分経過後、SCDLP培地に1白金耳移植し、35℃で48時間培養後、菌の生死を判定した。
【0047】
(3)SCDLP培地に濁りが見られた場合、菌が死滅しなかったと判断し、濁りが見られない場合菌が死滅したと判断した。
結果を表1に示す。評価基準は以下の通りである。
○:大腸菌が死滅した。
×:大腸菌が死滅しなかった。
【0048】
【表1】
【0049】
表1の結果より、本発明の洗浄剤組成物は、洗浄性と消臭性及び除菌性を兼ね備えた洗浄剤組成物であることが確認できた。
比較例1の洗浄剤組成物は消臭性に劣り、比較例2の洗浄剤組成物は洗浄性に劣り、比較例3の洗浄剤組成物は除菌性に劣っていた。