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特許7075669核酸送達用カチオン性脂質及びその調製物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】核酸送達用カチオン性脂質及びその調製物
(51)【国際特許分類】
   C07C 243/14 20060101AFI20220519BHJP
   C07C 243/34 20060101ALI20220519BHJP
   C07C 239/22 20060101ALI20220519BHJP
   C07C 229/12 20060101ALI20220519BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220519BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220519BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220519BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220519BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220519BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220519BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220519BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220519BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
C07C243/14 CSP
C07C243/34
C07C239/22
C07C229/12
A61K47/18
A61K45/00
A61K48/00
A61K31/7088
A61P29/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/06
A61P43/00 121
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019522244
(86)(22)【出願日】2017-11-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 IL2017051212
(87)【国際公開番号】W WO2018087753
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】62/418,844
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/507,829
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507253749
【氏名又は名称】ラモット アット テル アビブ ユニバーシティ, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ペール,ダン
(72)【発明者】
【氏名】ラミシェッティ,シュリニバス
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/007398(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/111982(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/176330(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/021673(WO,A1)
【文献】特表2012-508264(JP,A)
【文献】DATABASE REGISTRY on STN,2008年,RN 1027464-32-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)又は式(IIIA)の構造で表され、その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びその混合物を含む、カチオン性脂質であって、
式(I):
【化1】
(式中、
YはO又はNHであり、
TはCであり、
Wは結合又はSであり、
、N(RとRは各々独立してC-Cアルキルであるか、又はRとRはそれらが結合している窒素と共に5員若しくは6員の複素環若しくは芳香族複素環を形成し、必要に応じてO、N及びSから成る群から選択される1種以上の更なるヘテロ原子を含む)であり、
とRは、
(a)C10-C22アルキル、
(b)C10-C22アルケニル
(c)C-C10アルキレン-Z-C-C22アルキル、及び
)C-C10アルキレン-Z-C-C22アルケニルから成る群から選択され、
Zは-O-C(=O)-、又は-C(=O)-O-であり、
は1、2、3、又は4であり、
mは0又は1であり、
pは0であり、
zは0である)の構造で表され
式(IIIA):
【化2】
(式中、
XはNであり、
YはNHであり、
は存在せず、
及びR の各々は独立してC 10 -C 22 アルキルであり、
nは1~30の整数であり、
xは0である)の構造で表される、
カチオン性脂質。
【請求項2】
式(I)の構造で表され、その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びその混合物を含む、カチオン性脂質である、請求項1に記載のカチオン性脂質。
【請求項3】
mは0である請求項2に記載のカチオン性脂質。
【請求項4】
は結合であり、化合物は式(Ia):
【化3】
(式中、R、R、R、Y、m、n及びzは請求項1で定義した通りである)の構造で表される、
請求項2に記載のカチオン性脂質。
【請求項5】
合物は式(Ia-1):
【化4】
(式中、R、R、R、R、Y、m、n及びzは請求項で定義された通りである;または
とRは各々CHであるか、又はRとRはそれらが結合している窒素と共に、ピロリジニル、ピペリジニニル及びピペラジニルから成る群から選択される複素環を形成し、これらの各々は必要に応じてアルキルで置換されている)の構造で表される、
請求項4に記載のカチオン性脂質。
【請求項6】
2-(1,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)ヒドラジニル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン、
4-(1,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)ヒドラジニル)-N,N-ジメチルブタン-1-アミン、
1-(4-(1,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)ヒドラジニル)ブチル)ピロリジン、
N,N-ジメチル-4-(((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)(((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)オキシ)アミノ)ブタン-1-アミン、
4-(ジメチルアミノ)-N’-((Z)-オクタデセ-9-エン-1-イル)-N-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)ブタンヒドラジド
-(ジメチルアミノ)-N-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)-N-(((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)オキシ)ブタンアミド
,N-ジメチル-2-(2-((Z)-オクタデセ-9-エン-1-イル)-1-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)ヒドラジニル)エタン-1-アミン、
N,N-ジメチル-2-(1-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)-2-オクタデシルヒドラジニル)エタン-1-アミン
ス(2-ヘキシルデカン酸)(1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ヒドラジン-1,2-ジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)、
ビス(2-ヘキシルデカン酸)(1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ヒドラジン-1,2-ジイル)ビス(ノナン-9,1-ジイル)、
10,10’-(1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ヒドラジン-1,2-ジイル)ビス(デカン酸)ジ(トリデカン-7-イル)
4Z,4’Z)-ビス(2-ヘキシルデセ-4-エン酸)(1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ヒドラジン-1,2-ジイル)ビス(オクタン-8,1-ジイル)、
(3Z,3’Z)-ビス(ノン-3-エン酸)(1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ヒドラジン-1,2-ジイル)ビス(オクタン-8,1-ジイル)
Z)-ノン-3-エン酸8-((((2-(ジメチルアミノ)エチル)チオ)カルボニル)((8-(((Z)-ノン-3-エノイル)オキシ)オクチル)オキシ)アミノ)オクチ
ら成る群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のカチオン性脂質。
【請求項7】
式(IIIA)の構造で表され、その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びその混合物を含む、カチオン性脂質である、請求項1に記載のカチオン性脂質。
【請求項8】
前記カチオン性脂質が、下記の構造式によって表され、その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びその混合物を含む、請求項7に記載のカチオン性脂質。
【化5】
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のカチオン性脂質を含む組成物であって、前記組成物は、任意選択で少なくとも1種の中性脂質又はPEG修飾脂質および/または核酸を更に含む、組成物。
【請求項10】
前記組成物は、メッセンジャーRNA(mRNA)を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
白血球関連病態の治療用の組成物であって、前記白血球関連病態は、癌、感染症、自己免疫疾患、神経変性疾患及び炎症から成る群から選択される組成物である;または
遺伝子サイレンシング用の組成物である;または
mRNAによってコードされているタンパク質の発現用の組成物である、
請求項または10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性脂質と、このような脂質を単独で又は他の脂質と組み合わせて含む脂質ナノ粒子製剤とを提供する。このような脂質ナノ粒子は、核酸と共に製剤化してインビトロ及びインビボ治療用途の両方でその細胞内送達を容易にすることができる。また、本発明は、このような脂質を化学合成する方法、脂質ナノ粒子調製物及び核酸を含む製剤も提供する。
【背景技術】
【0002】
低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボザイム、pDNA及び免疫刺激核酸等の治療用核酸は様々な機序を介して作用する。特定のタンパク質は、RNA干渉(RNAi)を介してsiRNA又はmiRNAによって下方制御されることがある。一般には白血球等の造血細胞、特に初代Tリンパ球及びB細胞は、低分子干渉RNA(siRNA)でトランスフェクトするのが難しいことで有名である。RNA干渉(RNAi)を用いて特定の遺伝子を下方制御することによってT細胞やB細胞等の免疫細胞機能を調節することは、癌、炎症、自己免疫及びウイルス感染を含む多くの免疫関連障害における標的治療を進める上で非常に大きな可能性を有する。siRNA及びmiRNA構築物は標的タンパク質に対する任意のヌクレオチド配列を用いて合成することができるので、RNAiの治療的用途は非常に広い。現在まで、siRNA構築物はインビトロモデルとインビボモデルの両方において標的タンパク質を特にサイレンシングする能力を示している。これらは現在臨床試験で評価されている。
【0003】
メッセンジャーRNA(mRNA)は、DNAからリボソームへ遺伝情報を運ぶ大きなRNA分子のファミリーである。mRNAやプラスミド等の一部の核酸を使用して特定の細胞産物の発現をもたらすことができる。このような核酸は、タンパク質又は酵素の欠損に関連する疾患の治療に有用であろう。しかし、治療的状況において核酸に関連する多くの問題がある。治療用核酸に関する主な問題の1つは、リン酸ジエステルのヌクレオチド間結合の安定性とヌクレアーゼに対するその感受性である。それとは別に、このような核酸は細胞膜を通過する能力が限られている。
【0004】
カチオン性脂質は、遺伝子療法用途において様々な疾患を治療するのに優れた核酸担体であることが証明されている。カチオン性脂質と他の共脂質(例えば、コレステロール、DSPC及びPEG化脂質)から形成された脂質ナノ粒子は、それを分解から保護し、その細胞取込みを促進するオリゴヌクレオチドを封入した。しかし、当技術分野では、オリゴヌクレオチドを送達するのに適切且つ効率的な送達プラットフォームがまだ必要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、脂質ナノ粒子調製物に使用することができる新規カチオン性脂質に関する。このような脂質ナノ粒子は核酸を分解、循環からの排除及び細胞内放出から保護する。更に、核酸封入脂質ナノ粒子は好都合なことには、十分に許容性があって且つ適切な治療指数を提供し、有効量の核酸による患者の治療が患者に対して容認できない毒性及び/又は危険性と関連しないようにする。また、本発明は、このような脂質の化学合成方法、脂質ナノ粒子調製物及び核酸を含む製剤も提供する。
【0006】
ある実施形態では、本発明は、新規のカチオン性脂質、及びこのような脂質とsiRNA及びpDNAとの製剤に関する。このような脂質ナノ粒子(LNP)をDLSによって更に特徴付けし、その様々な癌細胞株におけるインビトロ活性について評価した。
【0007】
本発明の原理によれば、脂質構造は、脂肪酸残基R-C(=O)-、R-C(=O)-O-又はR-(RCOOHは、飽和であっても不飽和であってもよい対応する脂肪酸である)に直接又はリンカーを介して結合したヒドラジン、ヒドラジド又はヒドロキシルアミン等の官能基に基づく。脂質は、官能基、例えば、アミン、N含有複素環若しくはヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖(例えば、ヒスチジン又はアルギニン側鎖)も含み、これはリンカー(例えば、アルキレン鎖)を介して結合している。ある態様では、脂質は非対称構造と高い電荷を特徴とし、従って、このような脂質は構造的不均衡に起因する結合の改善とエンドソームエスケープの改善(即ち、高い安定性)を示すと仮定される。本発明に係る他の脂質は、本明細書で更に記載されるように対称構造を有する。
【0008】
従って、一実施形態では、本発明は、次の構造:
【化1】
(式中、 XとYは各々独立してO、N又はNHであり、XとYが両方同時にOになることはなく、
Wは結合、O、NH又はSであり、
TはC又はSであり、
mは0又は1であり、
zは0又は2である)で表される官能基を含むカチオン性脂質であって、
官能基は少なくとも1種の飽和又は不飽和脂肪酸残基に結合しているカチオン性脂質に関する。
【0009】
ある実施形態では、カチオン性脂質は、上述の官能基に対称又は非対称に結合している2種の脂肪酸残基を含む。
【0010】
本発明の一態様では、カチオン性脂質は、式(I):
【化2】
(式中、
YはO又はNHであり、
TはC又はSであり、
Wは結合、O、NH又はSであり、
は、
(a)NR(RとRは各々独立してC-Cアルキルであるか、又はRとRはそれらが結合している窒素と共に5員若しくは6員の複素環若しくは芳香族複素環を形成し、必要に応じてO、N及びSから成る群から選択される1種以上の更なるヘテロ原子を含むか、又はNRはグアニジン基(-NHC(=NH)NH)を表す)、
(b)天然又は非天然アミノ酸の側鎖、及び
(c)O、N及びSから成る群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む5員又は6員の複素環又は芳香族複素環から成る群から選択され、
とRは、
(a)C10-C22アルキル、
(b)C10-C22アルケニル、
(c)C10-C22アルキニル、
(d)C-C10アルキレン-Z-C-C22アルキル、及び
(e)C-C10アルキレン-Z-C-C22アルケニルから成る群から選択され、
Zは-O-C(=O)-、-C(=O)-O-又は-O-であり、
nは0、1、2、3、4、5又は6であり、
mは0又は1であり、
pは0又は1であり、
zは0又は2である)の構造で表され、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びその混合物を含む。
【0011】
ある実施形態では、式(I)の化合物は、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジド、エタノールアミン及びエチレンジアミンから選択される官能基を含む。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0012】
式(I)のある実施形態では、mは0である。式(I)の他の実施形態では、mは1である。式(I)の他の実施形態では、pは0である。式(I)の他の実施形態では、pは1である。式(I)の他の実施形態では、mは0であり、pは0である。式(I)の他の実施形態では、mは1であり、pは0である。式(I)の他の実施形態では、zは0である。式(I)の他の実施形態では、zは2である。式(I)の他の実施形態では、TはCである。式(I)の他の実施形態では、Wは結合である。式(I)の他の実施形態では、RはNRである。
【0013】
式(I)のある代表的な実施形態では、pは0であり、Wは結合であり、TはCであり、化合物は式(Ia)の構造で表される。式(Ia)のある代表的な実施形態では、RはNRであり、化合物は式(Ia-1)の構造で表される。式(Ia)及び(Ia-1)の構造は以下の詳細な説明で示す。
【0014】
本発明の他の態様では、カチオン性脂質は、式(II):
【化3】
(式中、Aは
【化4】
又は
【化5】
であり、
X’はO又はNHであり、
Y’はO又はNHであり、
Aが
【化6】
の場合には、
X’とY’が両方同時にOになることはなく、
TはC又はSであり、
Wは結合、O、NH又はSであり、
は、
(a)NR(RとRは各々独立してC-Cアルキルであるか、又はRとRはそれらが結合している窒素と共に5員若しくは6員の複素環若しくは芳香族複素環を形成し、必要に応じてO、N及びSから成る群から選択される1種以上の更なるヘテロ原子を含むか、又はNRはグアニジン基(-NHC(=NH)NH)を表す)、
(b)天然又は非天然アミノ酸の側鎖、及び
(c)O、N及びSから成る群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む5員又は6員の複素環又は芳香族複素環から成る群から選択され、
とRは、
(a)C10-C22アルキル、
(b)C10-C22アルケニル、
(c)C10-C22アルキニル、
(d)C-C10アルキレン-Z-C-C22アルキル、及び
(e)C-C10アルキレン-Z-C-C22アルケニルから成る群から選択され、
Zは-O-C(=O)-、-C(=O)-O-又は-O-であり、
nは0、1、2、3、4、5又は6であり、
mは0又は1であり、
pは0又は1であり、
zは0又は2である)の構造で表され、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びその混合物を含む。
【0015】
ある実施形態では、式(II)の化合物は、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジド、エタノールアミン及びエチレンジアミンから選択される官能基を含む。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0016】
式(II)のある実施形態では、mは0である。式(II)の他の実施形態では、mは1である。式(II)の他の実施形態では、mは1である。式(II)の他の実施形態では、mは1であり、pは0である。式(II)の他の実施形態では、zは0である。式(II)の他の実施形態では、zは2である。式(II)の他の実施形態では、TはCである。式(II)の他の実施形態では、Wは結合である。式(II)のある実施形態では、mは0であり、WはOである。
【0017】
式(II)のある代表的な実施形態では、カチオン性脂質は式(IIa)の構造で表される。式(IIa)のある代表的な実施形態では、カチオン性脂質は式(IIa-1)の構造で表される。式(IIa)の他の代表的な実施形態では、カチオン性脂質は式(IIa-2)の構造で表される。式(IIa)の他の代表的な実施形態では、カチオン性脂質は式(IIa-3)の構造で表される。式(IIa)の他の代表的な実施形態では、カチオン性脂質は式(IIa-4)の構造で表される。式(II)の他の代表的な実施形態では、カチオン性脂質は式(IIb)の構造で表される。式(IIb)のある代表的な実施形態では、カチオン性脂質は式(IIb-1)の構造で表される。
【0018】
式(IIa)、(IIa-1)、(IIa-2)、(IIa-3)、(IIa-4)、(IIb)及び(IIb-1)の構造は以下の詳細な説明で示す。
【0019】
式(I)、(Ia)、(Ia-1)、(II)、(IIa)、(IIa-1)、(IIa-2)、(IIa-3)、(IIa-4)、(IIb)及び(IIb-1)の化合物の具体例は化合物1~66であり、その構造を詳細な説明において表1に示す。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0020】
式(IIa-4)の化合物の調製に使用することができる式(IIa-5)の中間体は本発明の別個の実施形態を表す。
【0021】
他の態様では、本発明のカチオン性脂質は、式(III):
【化7】
(式中、
XとYは各々独立してO、N又はNHであり、XとYが両方同時にOになることはなく、
、R及びRの各々は独立して存在しないか、又はC10-C22アルキル、C10-C22アルケニル若しくはC10-C22アルキニルであり、
nは1~30の整数である)の構造で表され、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びその混合物を含む。
【0022】
他の態様では、本発明のカチオン性脂質は、式(IIIA):
【化8】
(式中、
XとYは各々独立してO、N又はNHであり、XとYが両方同時にOになることはなく、
、R及びRの各々は独立して存在しないか、又はC10-C22アルキル、C10-C22アルケニル若しくはC10-C22アルキニルであり、
nは1~30の整数であり、
xは0又は2である)の構造で表され、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びその混合物を含む。
【0023】
式(III)の化合物の具体例は化合物67~70であり、その構造は詳細な説明において表2に示す。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0024】
他の態様では、本発明は、式(I)、(Ia)、(Ia-1)、(II)、(IIa)、(IIa-1)、(IIa-2)、(IIa-3)、(IIa-4)、(IIb)、(IIb-1)及び(III)のいずれか1つのカチオン性脂質を含み、少なくとも1種の更なる中性脂質又はPEG修飾脂質を更に含む組成物に関する。ある実施形態では、組成物は更に核酸を含むことができる。核酸の例としては、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボザイム、pDNA、CRISPR mRNA、gRNA及び免疫刺激核酸が挙げられるが、これらに限定されない。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0025】
他の態様では、本発明は、本発明に係る組成物に細胞を接触させる工程を含む遺伝子サイレンシングの方法に関する。ある実施形態では、細胞は癌細胞である。
【0026】
他の実施形態では、本発明の組成物を送達系として使用し、治療剤を体内のその標的部位に投与することができる。従って、ある実施形態では、本発明は、治療剤を投与するための方法であって、本明細書に記載のカチオン性脂質と治療剤とを含む組成物を調製し、この組成物をそれを必要とする対象に投与して行う方法に関する。
【0027】
本発明のカチオン性脂質は単独で、又は他の脂質成分、例えば、中性脂質、荷電脂質、ステロイド(例えば、ステロール等)及び/又はそれらの類似体、及び/又はポリマー結合脂質等と組み合わせて使用して、治療剤の送達のための脂質ナノ粒子を形成することができる。ある場合には、脂質ナノ粒子を使用して、様々な疾患又は病態、特に炎症及び/又は十分なタンパク質の欠如等の白血球関連病態の治療のために核酸を送達する。
【0028】
従って、ある実施形態では、本発明は、白血球関連病態を治療する方法であって、本発明に係る組成物をそれを必要とする対象に投与する工程を含む方法に関する。白血球関連病態は、癌、感染症、自己免疫疾患、神経変性疾患及び炎症から成る群から選択することができる。
【0029】
本発明の更なる実施形態及び全適用範囲は、以下に記載の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、この詳細な説明から、本発明の精神及び範囲内の様々な変更や修正が当業者には明らかになるため、詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、単なる一例として記載されていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】脂質1のインビトロ遺伝子サイレンシング効果:ヒトT細胞SupT1をsiCD45封入カチオン性脂質1からなる脂質ナノ粒子(LNP)で48時間(A)又は72時間(B)、異なるsiRNA用量(0.4μM、0.2μM、0.1μM)で処理した。
図2】薬剤耐性ヒト卵巣癌細胞(NAR)をLNP-siPLK-1又はLNP-siLucナノ粒子のいずれかで72時間処理し、PLK-1発現をqPCRで測定した。
図3】NAR細胞における脂質1のインビトロ遺伝子サイレンシング効果:ヒト卵巣癌細胞(NAR細胞)を脂質1/siPLK1ナノ粒子で48時間、異なるsiRNA濃度(0.2μM及び0.1μM)で処理した。アポトーシス細胞をPI/アネキシンを用いたFACSにより解析した。
図4】NAR細胞における脂質10及び11のインビトロ遺伝子サイレンシング効果:ヒト卵巣癌細胞(NAR細胞)を脂質1/siPLK1ナノ粒子で48時間、異なるsiRNA濃度(0.1μM及び0.05μM)で処理した。アポトーシス細胞をPI/アネキシンを用いたFACSにより解析した。
図5】ヒト卵巣癌細胞(OVCAR8)をLNP-siPLK-1又はLNP-siLucナノ粒子のいずれかで72時間処理し、PLK-1発現をqPCRによって測定した。
図6】薬剤耐性ヒト卵巣癌細胞(NAR)のスフェロイドを、LNP-siPLK-1又はLNP-siLucナノ粒子のいずれかで72時間処理し、PLK-1発現をqPCRによって測定した。
図7】ヒト結腸癌細胞(HCT116)を対照siRNAを有するLNP(MC3、脂質38又は脂質55を含む)と共に72時間インキュベートした。細胞生存率をXTTアッセイにより測定した。図10は細胞増殖(未処理細胞の%)対siPLK1濃度を示す。
図8】脂質38又は55のインビトロ遺伝子サイレンシング効果。ヒト多発性骨髄腫浮遊細胞(U266)をsiPLK1を異なる濃度で含むLNPと共に48時間インキュベートした。PLK1発現はqPCRにより測定した。PLK1-mRNAレベルをLNP-対照siRNA処理細胞に対して正規化した。
図9】細胞生存率に対するPLK1サイレンシングの効果。ヒト多発性骨髄腫浮遊細胞(U266)を、カチオン性脂質38又は55及びsiPLK1又は対照siRNAを異なる濃度で含むLNPと共に48時間インキュベートした。PLK1の下方制御によって誘導される細胞生存率をXTTアッセイによって測定した。
図10】細胞生存率に対するPLK1サイレンシングの効果:ヒトB細胞リンパ腫浮遊細胞(RPMI-8226)を、カチオン性脂質38又は55及びsiPLK1又は対照siRNAを異なる濃度で含むLNPと共に48時間インキュベートした。PLK1の下方制御によって誘導される細胞生存率をXTTアッセイによって測定した。
図11】細胞生存率に対するPLK1サイレンシングの効果。ヒト多発性骨髄腫浮遊細胞(MM1)を、カチオン性脂質38又は55及びsiPLK1又は対照siRNAを異なる濃度で含むLNPと共に48時間インキュベートした。PLK1の下方制御によって誘導される細胞生存率をXTTアッセイによって測定した。
図12】pDNAのインビトロ発現。ヒト結腸癌細胞(HCT116)をLNP-LUC pDNAと共に異なる濃度で48時間インキュベートした。ルシフェラーゼ発現はルミノメーターによって測定した。リポフェクタミン2000(Lipo2000)を陽性対照として使用した。LNPは、他の共脂質Chol及びPEG-DMGと共に、脂質38及び異なる量のDOPEで製剤化した。
図13】HEK293細胞をLNP-DNAナノ粒子(10:1 N/P比、0.6nM DNA)で72時間処理し、mKATE発現をフローサイトメトリーによって解析した。
図14】HEK293細胞をLNP-DNAナノ粒子(10:1 N/P比)(異なるDNA)で72時間処理し、mKATE発現をフローサイトメトリーによって解析した。図14A:脂質1。図14B:脂質10。
図15】mRNAのインビトロ送達。トランスフェクトしにくいマウスマクロファージ細胞(RAW264.7)を、カチオン性脂質38又は55及びルシフェラーゼmRNA(異なるmRNA濃度)を含むLNPで18時間処理した。ルシフェラーゼ発現をルミノメーターによって測定した。
図16】mRNAのインビボ送達。カチオン性脂質38又は55及びルシフェラーゼmRNAを含むLNPをC57BL6/jマウスに1mg/kg体重で筋肉内投与した。ルシフェラーゼ発現は、生物発光画像化システムBiospaceによって(a)筋肉内投与から8時間後、(b)24時間後に測定した。
図17】ルシフェラーゼmRNAで製剤化された脂質54又は脂質38のいずれかからなるLNPをC57BL6/jマウスに1mg/kg体重で静脈内投与した。8時間後、ルシフェラーゼ発現を生物発光画像化システムBiospaceによって測定した。
図18】肝臓へのmRNAのインビボ送達。ルシフェラーゼmRNAで製剤化された脂質38からなるLNPをC57BL6/jマウスに1mg/kg体重で静脈内投与した。投与から8時間及び24時間後、ルシフェラーゼ発現を生物発光画像化システムBiospaceによって測定した。
図19】MC3と比較して非ヒト霊長類において肝臓毒性がない。カニクイザル(1群当たりn=2、雄性)に対し、siNC5を有するMC3粒子(0.5mg/kg)及びsiNC5を有する脂質38ベースの粒子(0.5mg/kg)の単回静脈内投与(1mg/kg)を行った。投与から1時間後と24時間に、血清を採取し、ALT、ASTについて解析した。各データ点は2匹の平均±SEMである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、インビトロ及びインビボで活性剤を送達する脂質ナノ粒子の調製に有用なカチオン性脂質の発見に基づく。本発明のカチオン性脂質は、siRNA、miRNA及びmRNA等の核酸の送達に有用である。
【0032】
カチオン性脂質
ある実施形態では、本発明は、少なくとも1種の飽和又は不飽和脂肪酸残基に結合したヒドラジン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、エタノールアミン又はジエチレンジアミン部分を含むカチオン性脂質に関する。ある実施形態では、カチオン性脂質は、ヒドラジン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、エタノールアミン、またはジエチレンジアミン部分に非対称に結合した2種の脂肪酸残基を含む。
【0033】
本明細書で企図されるように、本発明は、次の構造:
【化9】
(式中、 XとYは各々独立してO、N又はNHであり、XとYの両方がOになることはなく、
Wは結合、O、NH又はSであり、
TはC又はSであり、
mは0又は1であり、
zは0又は2である)で表される官能基を含むカチオン性脂質であって、
官能基は少なくとも1種の飽和又は不飽和脂肪酸残基に結合しているカチオン性脂質に関する。
【0034】
ある実施形態では、XとYは各々独立してO又はNであり、XとYの両方がOになることはない。
【0035】
ある実施形態では、カチオン性脂質は、上述の官能基に対称又は非対称に結合している2種の脂肪酸残基を含む。
【0036】
本発明の一態様では、XはNであり、カチオン性脂質は、式(I):
【化10】
(式中、
YはO又はNHであり、
TはC又はSであり、
Wは結合、O、NH又はSであり、
は、
(a)NR(RとRは各々独立してC-Cアルキルであるか、又はRとRはそれらが結合している窒素と共に5員若しくは6員の複素環若しくは芳香族複素環を形成し、必要に応じてO、N及びSから成る群から選択される1種以上の更なるヘテロ原子を含むか、又はNRはグアニジン基(-NHC(=NH)NH)を表す)、
(b)天然又は非天然アミノ酸の側鎖、及び
(c)O、N及びSから成る群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む5員又は6員の複素環又は芳香族複素環から成る群から選択され、
とRは、
(a)C10-C22アルキル、
(b)C10-C22アルケニル、
(c)C10-C22アルキニル、
(d)C-C10アルキレン-Z-C-C22アルキル、及び
(e)C-C10アルキレン-Z-C-C22アルケニルから成る群から選択され、
Zは-O-C(=O)-、-C(=O)-O-又は-O-であり、
nは0、1、2、3、4、5又は6であり、
mは0又は1であり、
pは0又は1であり、
zは0又は2である)の構造で表され、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びその混合物を含む。
【0037】
式(I)のある実施形態では、RとRは、(a)C10-C22アルキル、C10-C22アルケニル又はC10-C22アルキニル、及び(b)C-C10アルキレン-Z-C-C22アルキル(Zは-O-C(=O)-、-C(=O)-O-又は-O-である)から成る群から選択される。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0038】
式(I)のある実施形態では、RはNRである。式(I)のある実施形態では、Rは天然又は非天然アミノ酸の側鎖である。式(I)のある実施形態では、RはO、N及びSから成る群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む5員又は6員の複素環又は芳香族複素環である。
【0039】
ある実施形態では、式(I)の化合物は、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジド、エタノールアミン及びエチレンジアミンから成る群から選択される官能基を含む。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0040】
式(I)のある実施形態では、mは0である。式(I)の他の実施形態では、mは1である。式(I)の他の実施形態では、pは0である。式(I)の他の実施形態では、pは1である。式(I)の他の実施形態では、mは0であり、pは0である。式(I)の他の実施形態では、mは1であり、pは0である。式(I)の他の実施形態では、zは0である。式(I)の他の実施形態では、zは2である。式(I)の他の実施形態では、TはCである。式(I)の他の実施形態では、Wは結合である。
【0041】
式(I)のある代表的な実施形態では、pは0であり、Wは結合であり、TはCであり、化合物は式(Ia):
【化11】

(式中、R、R、R、Y、m、n及びzは式(I)で定義した通りである)の構造で表される。
【0042】
式(Ia)のある実施形態では、mは0である。式(Ia)の他の実施形態では、mは1である。式(I)の他の実施形態では、zは0である。式(Ia)の他の実施形態では、RとRは各々独立してC14-C20アルキル又はC14-C20アルケニルである。式(Ia)の他の実施形態では、RとRは各々独立してC-C10アルキレン-Z-C-C22アルキル(Zは-O-C(=O)-、-C(=O)-O-又は-O-)である。式(a)の他の実施形態では、RとRは各々独立してC-C10アルキレン-Z-C-C22アルケニル(Zは-O-C(=O)-、-C(=O)-O-又は-O-)である。式(Ia)の他の実施形態では、YはOである。式(Ia)の他の実施形態では、YはNHである。
【0043】
式(I)の他の代表的な実施形態では、RはNRであり、化合物は式(Ia-1):
【化12】

(式中、R、R、R、R、Y、m、n及びzは式(I)で定義された通りである)の構造で表される。
【0044】
式(Ia-1)のある実施形態では、RとRは各々CHである。式(Ia-1)の他の実施形態では、RとRはそれらが結合している窒素と共に、ピロリジニル、ピペリジニニル及びピペラジニルから成る群から選択される複素環を形成し、これらの各々は必要に応じてアルキルで置換されている。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0045】
本発明の他の態様では、カチオン性脂質は、式(II):
【化13】
(式中、Aは
【化14】
又は
【化15】
であり、
X’はO又はNHであり、
Y’はO又はNHであり、
Aが
【化16】
の場合には、
X’とY’の両方がOになることはなく、
TはC又はSであり、
Wは結合、O、NH又はSであり、
は、
(a)NR(RとRは各々独立してC-Cアルキルであるか、又はRとRはそれらが結合している窒素と共に5員若しくは6員の複素環若しくは芳香族複素環を形成し、必要に応じてO、N及びSから成る群から選択される1種以上の更なるヘテロ原子を含むか、又はNRはグアニジン基(-NHC(=NH)NH)を表す)、
(b)天然又は非天然アミノ酸の側鎖、及び
(c)O、N及びSから成る群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む5員又は6員の複素環又は芳香族複素環から成る群から選択され、
とRは、
(a)C10-C22アルキル、
(b)C10-C22アルケニル、
(c)C10-C22アルキニル、
(d)C-C10アルキレン-Z-C-C22アルキル、及び
(e)C-C10アルキレン-Z-C-C22アルケニルから成る群から選択され、
Zは-O-C(=O)-、-C(=O)-O-又は-O-であり、
nは0、1、2、3、4、5又は6であり、
mは0又は1であり、
pは0又は1であり、
zは0又は2である)の構造で表され、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びその混合物を含む。
【0046】
式(II)のある実施形態では、RとRは、(a)C10-C22アルキル、C10-C22アルケニル又はC10-C22アルキニル、及び(b)C-C10アルキレン-Z-C-C22アルキル(Zは-O-C(=O)-、-C(=O)-O-又は-O-である)から成る群から選択される。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0047】
式(II)のある実施形態では、mは0である。式(II)の他の実施形態では、mは1である。式(II)の他の実施形態では、mは1である。式(II)の他の実施形態では、mは1であり、pは0である。式(II)の他の実施形態では、zは0である。式(II)の他の実施形態では、zは2である。式(II)の他の実施形態では、TはCである。式(II)の他の実施形態では、Wは結合である。式(II)のある実施形態では、mは0であり、WはOである。
【0048】
式(II)のある代表的な実施形態では、カチオン性脂質は式(IIa):
【化17】

(式中、R、R、R、X’、T、W、n、m、p及びzは式(II)で定義した通りである)の構造で表される。
【0049】
式(IIa)のある実施形態では、pは0であり、Wは結合であり、TはCであり、化合物は式(IIa-1):
【化18】

(式中、R、R、R、X’、n、m及びzは式(II)で定義した通りである)の構造で表される。
【0050】
式(IIa)の他の実施形態では、RはNRであり、化合物は式(IIa-2):
【化19】

(式中、R、R、R、R、X’、n、m及びzは式(II)で定義した通りである)の構造で表される。
【0051】
式(IIa)の更に他の実施形態では、pは1であり、mは1であり、Wは結合であり、TはCであり、化合物は式(IIa-3):
【化20】

(式中、Rは天然又は非天然アミノ酸の側鎖であり、R、R、X’、n及びzは式(II)で定義した通りである)の構造で表される。
【0052】
式(IIa)のある実施形態では、pは0であり、RはNRであり、Wは結合であり、mは0であり、X’はOであり、化合物は式(IIa-4):
【化21】
の構造で表される。
【0053】
ある実施形態では、式(IIa-5):
【化22】

(式中、RとRは式(IIa-4)で定義した通りである)の化合物は、式(IIa-4)の化合物を調製するための中間体として使用することができる。
【0054】
式(II)の他の代表的な実施形態では、カチオン性脂質は式(IIb):
【化23】

(式中、R、R、R、T、W、X’、Y’、n、m、p及びzは式(II)で定義した通りである)の構造で表される。
【0055】
式(IIb)のある代表的な実施形態では、pは0であり、Wは結合であり、TはCであり、RはNRであり、化合物は式(IIb-1):
【化24】

(式中、R、R、R、R、X’、Y’、n、m及びzは式(II)で定義した通りである)の構造で表される。
【0056】
式(II)、(IIa)、(IIa-1)、(IIa-2)、(IIa-3)、(IIa-4)、(IIb)及び(IIb-1)のいずれかの化合物のある実施形態では、RとRは各々独立してC14-C20アルキル又はC14-C20アルケニルである。
【0057】
式(II)、(IIa)、(IIa-1)、(IIa-2)、(IIa-3)、(IIa-4)、(IIb)及び(IIb-1)のいずれかの化合物の他の実施形態では、RとRは各々独立してC-C10アルキレン-Z-C-C22アルキル(Zは-O-C(=O)-、-C(=O)-O-又は-O-)である。
【0058】
式(II)、(IIa)、(IIa-1)、(IIa-2)、(IIa-3)、(IIa-4)、(IIb)及び(IIb-1)のいずれかの化合物の他の実施形態では、RとRは各々独立してC-C10アルキレン-Z-C-C22アルケニル(Zは-O-C(=O)-、-C(=O)-O-又は-O-)である。
【0059】
式(II)、(IIa)、(IIa-1)、(IIa-2)、(IIa-3)、(IIa-4)、(IIb)及び(IIb-1)のいずれかの化合物の他の実施形態では、X’はOである。
【0060】
式(II)、(IIa)、(IIa-1)、(IIa-2)、(IIa-3)、(IIa-4)、(IIb)及び(IIb-1)のいずれかの化合物の他の実施形態では、X’はNHである。
【0061】
式(II)、(IIa)、(IIa-1)、(IIa-2)、(IIa-3)、(IIa-4)、(IIb)及び(IIb-1)のいずれかの化合物の他の実施形態では、Y’はNHである。
【0062】
式(II)、(IIa)、(IIa-1)、(IIa-2)、(IIa-3)、(IIa-4)、(IIb)及び(IIb-1)のいずれかの化合物の他の実施形態では、RとRは各々CHであるか、又はRとRはそれらが結合している窒素と共に、ピロリジニル、ピペリジニル及びピペラジニルから成る群から選択される複素環を形成し、これらの各々は必要に応じてアルキルで置換されている。
【0063】
式(I)、(Ia)、(Ia-1)、(II)、(IIa)、(IIa-1)、(IIa-2)、(IIa-3)、(IIa-4)、(IIa-5)、(IIb)及び(IIb-1)の化合物の具体例は化合物1~66であり、その構造を以下の表1に示す。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0064】
【表1】
【0065】
他の態様では、本発明のカチオン性脂質は、式(III):
【化25】
(式中、
XとYは各々独立してO、N又はNHであり、XとYの両方がOになることはなく、
、R及びRの各々は独立して存在しないか、又はC10-C22アルキル、C10-C22アルケニル若しくはC10-C22アルキニルであり、
nは1~30の整数である)の構造で表され、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びその混合物を含む。
【0066】
他の態様では、本発明のカチオン性脂質は、式(IIIA):
【化26】
(式中、
XとYは各々独立してO、N又はNHであり、XとYの両方がOになることはなく、
、R及びRの各々は独立して存在しないか、又はC10-C22アルキル、C10-C22アルケニル若しくはC10-C22アルキニルであり、
nは1~30の整数であり、
xは0又は2である)の構造で表され、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びその混合物を含む。
【0067】
式(III)又は(IIIA)のある実施形態では、XとYは各々独立してO及びNから成る群から選択される。式(III)の他の実施形態では、XとYは各々独立してO、N及びNHから成る群から選択される。
【0068】
式(III)の化合物の具体例は化合物67~70であり、その構造を表2に示す。
【0069】
【表2】
式中、nは式(III)又は(IIIA)について上で定義した通りである。
【0070】
本発明の更なる実施形態
更なる実施形態では、本発明は、次の構造:
【化27】

(式中、 XとYは各々独立してO又はNであり、XとYの両方がOになることはなく、
Wは結合、O、NH又はSであり、
TはC又はSであり、
mは0又は1であり、
zは0又は2である)で表される官能基を含むカチオン性脂質であって、
官能基は少なくとも1種の飽和又は不飽和脂肪酸残基に結合しているカチオン性脂質に関する。
【0071】
ある実施形態では、カチオン性脂質は、上述の官能基に対称又は非対称に結合している2種の脂肪酸残基を含む。
【0072】
本発明の一態様では、カチオン性脂質は、式(I’):
【化28】
(式中、
YはO又はNHであり、
TはC又はSであり、
Wは結合、O、NH又はSであり、
は、
(a)NR(RとRは各々独立してC-Cアルキルであるか、又はRとRはそれらが結合している窒素と共に5員若しくは6員の複素環若しくは芳香族複素環を形成し、必要に応じてO、N及びSから選択される1種以上のヘテロ原子を含むか、又はNRはグアニジン基(-NHC(=NH)NH)を表す)、
(b)天然又は非天然アミノ酸の側鎖、及び
(c)O、N及びSから選択される1種以上のヘテロ原子を含む5員又は6員の複素環又は芳香族複素環から成る群から選択され、
とRは、
(a)C10-C22アルキル、C10-C22アルケニル又はC10-C22アルキニル、及び
(b)C-C10アルキレン-Z-C-C22アルキル(Zは-O-C(=O)-又は-C(=O)-Oである)から成る群から選択され、
nは0、1、2、3、4、5又は6であり、
mは0又は1であり、
pは0又は1であり、
zは0又は2である)の構造で表され、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びその混合物を含む。
【0073】
ある実施形態では、式(I’)の化合物は、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン及びヒドラジドから選択される官能基を含む。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0074】
式(I’)のある実施形態では、mは0である。式(I’)の他の実施形態では、mは1である。式(I’)の他の実施形態では、pは0である。式(I’)の他の実施形態では、pは1である。式(I’)の他の実施形態では、mは0であり、pは0である。式(I’)の他の実施形態では、mは1であり、pは0である。式(I’)の他の実施形態では、zは0である。式(I’)の他の実施形態では、zは2である。式(I’)の他の実施形態では、TはCである。式(I’)の他の実施形態では、Wは結合である。式(I’)の他の実施形態では、RはNRである。
【0075】
式(I’)のある代表的な実施形態では、pは0であり、Wは結合であり、TはCであり、化合物は式(Ia’):
【化29】

(式中、R、R、R、Y、m、n及びzは式(I’)で定義した通りである)の構造で表される。式(Ia’)のある実施形態では、mは0である。式(Ia’)の他の実施形態では、mは1である。式(Ia’)の他の実施形態では、zは0である。式(Ia’)の他の実施形態では、RとRは各々独立してC14-C20アルキル又はC14-C20アルケニルである。式(Ia’)の他の実施形態では、RとRは各々独立してC-C10アルキレン-Z-C-C22アルキル(Zは-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-)である。式(Ia)の他の実施形態では、YはOである。式(Ia’)の他の実施形態では、YはNHである。
【0076】
式(I’)の他の代表的な実施形態では、RはNRであり、化合物は式(Ia-1’):
【化30】

(式中、R、R、R、R、Y、m、n及びzは式(I)で定義された通りである)の構造で表される。式(Ia-1’)のある実施形態では、RとRは各々CHである。式(Ia-1’)の他の実施形態では、RとRはそれらが結合している窒素と共に、ピロリジニル、ピペリジニニル及びピペラジニルから選択される複素環を形成し、これらの各々は必要に応じてアルキルで置換されている。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。本発明の他の態様では、カチオン性脂質は、式(II’):
【化31】
(式中、Aは
【化32】
又は
【化33】
であり、
X’はO又はNHであり、
Y’はO又はNHであり、
Aが
【化34】
の場合には、
X’とY’の両方がOになることはなく、
TはC又はSであり、
Wは結合、O、NH又はSであり、
は、
(a)NR(RとRは各々独立してC-Cアルキルであるか、又はRとRはそれらが結合している窒素と共に5員若しくは6員の複素環若しくは芳香族複素環を形成し、必要に応じてO、N及びSから選択される1種以上のヘテロ原子を含むか、又はNRはグアニジン基(-NHC(=NH)NH)を表す)、
(b)天然又は非天然アミノ酸の側鎖、及び
(c)O、N及びSから選択される1種以上のヘテロ原子を含む5員又は6員の複素環又は芳香族複素環から成る群から選択され、
とRは、
(a)C10-C22アルキル、C10-C22アルケニル又はC10-C22アルキニル、及び
(b)C-C10アルキレン-Z-C-C22アルキル(Zは-O-C(=O)-又は-C(=O)-O)から成る群から選択され、
nは0、1、2、3、4、5又は6であり、
mは0又は1であり、
pは0又は1であり、
zは0又は2である)の構造で表され、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びその混合物を含む。
【0077】
ある実施形態では、式(II’)の化合物は、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン及びヒドラジドから選択される官能基を含む。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0078】
式(II’)のある実施形態では、mは0である。式(I)の他の実施形態では、mは1である。式(II’)の他の実施形態では、mは1である。式(I)の他の実施形態では、mは1であり、pは0である。式(II’)の他の実施形態では、zは0である。式(II’)の他の実施形態では、zは2である。式(II’)の他の実施形態では、TはCである。式(II’)の他の実施形態では、Wは結合である。
【0079】
式(II’)のある代表的な実施形態では、カチオン性脂質は式(IIa)’:
【化35】

(式中、R、R、R、X’、T、W、n、m、p及びzは式(II’)で定義した通りである)の構造で表される。
【0080】
式(IIa’)のある実施形態では、pは0であり、Wは結合であり、TはCであり、化合物は式(IIa-1’):
【化36】

(式中、R、R、R、X’、n、m及びzは式(II)で定義した通りである)の構造で表される。
【0081】
式(IIa’)の他の実施形態では、RはNRであり、化合物は式(IIa-2’):
【化37】

(式中、R、R、R、R、X’、n、m及びzは式(II’)で定義した通りである)の構造で表される。
【0082】
式(IIa’)の更に他の実施形態では、pは1であり、mは1であり、Wは結合であり、TはCであり、化合物は式(IIa-3’):
【化38】

(式中、Rは天然又は非天然アミノ酸の側鎖であり、R、R、R、X’、n及びzは式(II)で定義した通りである)の構造で表される。
【0083】
式(II’)の他の代表的な実施形態では、カチオン性脂質は式(IIb’):
【化39】

(式中、R、R、R、T、W、X’、Y’、n、m、p及びzは式(II’)で定義した通りである)の構造で表される。
【0084】
式(IIb’)のある代表的な実施形態では、pは0であり、Wは結合であり、TはCであり、RはNRであり、化合物は式(IIb-1’):
【化40】

(式中、R、R、R、R、X’、Y’、n、m及びzは式(II’)で定義した通りである)の構造で表される。
【0085】
式(II’)、(IIa’)、(IIa-1’)、(IIa-2’)、(IIa-3’)、(IIb’)及び(IIb-1’)のいずれかの化合物のある実施形態では、RとRは各々独立してC14-C20アルキル又はC14-C20アルケニルである。
【0086】
式(II’)、(IIa’)、(IIa-1’)、(IIa-2’)、(IIa-3’)、(IIb’)及び(IIb-1’)のいずれかの化合物の他の実施形態では、RとRは各々独立してC-C10アルキレン-Z-C-C22アルキル(Zは-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-)である。
【0087】
式(II’)、(IIa’)、(IIa-1’)、(IIa-2’)、(IIa-3’)、(IIb’)及び(IIb-1’)のいずれかの化合物の他の実施形態では、X’はOである。
【0088】
式(II’)、(IIa’)、(IIa-1’)、(IIa-2’)、(IIa-3’)、(IIb’)及び(IIb-1’)のいずれかの化合物の他の実施形態では、X’はNHである。
【0089】
式(II’)、(IIa’)、(IIa-1’)、(IIa-2’)、(IIa-3’)、(IIb’)及び(IIb-1’)のいずれかの化合物の他の実施形態では、Y’はNHである。
【0090】
式(II’)、(IIa’)、(IIa-1’)、(IIa-2’)、(IIa-3’)、(IIb’)及び(IIb-1’)のいずれかの化合物の他の実施形態では、RとRは各々CHであるか、又はRとRはそれらが結合している窒素と共に、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニルから選択される複素環を形成し、これらの各々は必要に応じてアルキルで置換されている。
【0091】
他の態様では、本発明のカチオン性脂質は、式(III’):
【化41】
(式中、
XとYは各々独立してO又はNであり、
、R及びRの各々は独立して存在しないか、又はC10-C22アルキル、C10-C22アルケニル若しくはC10-C22アルキニルであり、
nは1~30である)の構造で表され、
その塩、水和物、溶媒和物、多形体、光学異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びその混合物を含む。
【0092】
化学的定義
「アルキル」基は、直鎖及び分岐鎖アルキル基等の任意の飽和脂肪族炭化水素を意味する。一実施形態では、アルキル基は1~4個の炭素を有し、本明細書ではC-Cアルキルと称される。他の実施形態では、アルキル基は10~22個の炭素を有し、本明細書ではC10-C22アルキルと称される。他の実施形態では、アルキル基は4~10個の炭素を有し、本明細書ではC-C10アルキルと称される。他の実施形態では、アルキル基は4~22個の炭素を有し、本明細書ではC-C22アルキルと称される。アルキル基は置換されていなくてもよく、或いはハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシカルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、チオ及びチオアルキルから選択される1種以上の基で置換されていてもよい。
【0093】
「アルケニル」基は、直鎖、分岐鎖及び環状アルケニル基等の少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む脂肪族炭化水素基を意味する。一実施形態では、アルケニル基は10~22個の炭素を有し、本明細書ではC10-C22アルケニルと称される。他の実施形態では、アルケニル基は4~10個の炭素を有し、本明細書ではC-C10アルケニルと称される。他の実施形態では、アルケニル基は4~22個の炭素を有し、本明細書ではC-C22アルケニルと称される。アルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル、n-ブテニル、i-ブテニル、3-メチルブト-2-エニル、n-ペンテニル、ヘプテニル、オクテニル、シクロヘキシル-ブテニル及びデセニルが挙げられる。アルケニル基は、置換されていなくてもよく、或いは、利用可能な炭素原子を介し、アルキルに関して上で定義された1種以上の基で置換されていてもよい。
【0094】
「アルキニル」基は、直鎖及び分岐鎖を含む少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を含む脂肪族炭化水素基を意味する。一実施形態では、アルキニル基は10~22個の炭素を有し、本明細書ではC10-C22アルキニルと称される。他の実施形態では、アルキニル基は4~10個の炭素を有し、本明細書ではC-C10アルキニルと称される。他の実施形態では、アルキニル基は4~22個の炭素を有し、本明細書ではC-C22アルキニルと称される。アルキニル基の例としては、エチニル、プロピニル、n-ブチニル、2-ブチニル、3-メチルブチニル、n-ペンチニル、ヘプチニル、オクチニル及びデシニルが挙げられる。アルキニル基は、置換されていなくてもよく、或いは、利用可能な炭素原子を介し、アルキルに関して上で定義された1種以上の基で置換されていてもよい。
【0095】
単独で又は別の基の一部として本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、原子が窒素、硫黄及び酸素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子環を含む複素環式芳香族系を意味する。ヘテロアリールは5個以上の環原子を含む。ヘテロアリール基は、単環式、二環式、三環式等とすることができる。この定義にはベンゾ複素環も含まれる。窒素が環原子である場合、本発明は窒素含有ヘテロアリールのN-オキシドも企図する。ヘテロアリール部分の非限定的な例としては、チエニル、ベンゾチエニル、1-ナフトチエニル、チアントレニル、フリル、ベンゾフリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、プリニル、イソキノリル、キノリル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルボリニル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル等が挙げられる。ヘテロアリール基は、置換されていなくてもよく、或いは、利用可能な原子を介し、アルキルに関して上で定義された1種以上の基で置換されていてもよい。
【0096】
単独で又は別の基の一部として本明細書で使用される「複素環」又は「ヘテロシクリル」という用語は、1~4個のヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄及び/又は窒素、特に窒素を単独で、或いは硫黄又は酸素環原子と共に)を有する5員~8員環を意味する。このような5員~8員環は、飽和、完全不飽和又は部分不飽和であってもよいが、完全飽和環が好ましい。好ましい複素環部分としては、ピペリジニル、ピロリジニル、ピペラジニル、ピロリニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、チオピラニル、インドリニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロチアゾリル等が挙げられる。ある実施形態では、環式基はピロリジニルである。他の実施形態では、ヘテロアリール又はヘテロシクリル基はピペリジニルである。他の実施形態では、ヘテロシクリル基はピペリジンである。ヘテロシクリル基は、置換されていなくてもよく、或いは、利用可能な原子を介し、アルキルに関して上で定義された1種以上の基で置換されていてもよい。
【0097】
本明細書中及び以下の特許請求の範囲の中で使用される「アミノ酸」又は「アミノ酸(複数)」という用語は、20個の天然に存在するアミノ酸、即ち、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンを包含すると理解されたい。各々の可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。他の実施形態によれば、アミノ酸という用語は、非天然アミノ酸又は合成アミノ酸を意味する。
【0098】
更に、「アミノ酸」という用語は、D-アミノ酸とL-アミノ酸の両方を包含する。本発明の原理によれば、「アミノ酸側鎖」という用語は、式HN-C(R)-COOHのアミノ酸の基「R」を意味する。
【0099】
「ヒドラジン」部分という用語は、基「-NH-NH-」を意味する。
【0100】
本明細書で使用される「ヒドロキシルアミン」部分という用語は、基「-NH-O-」を意味する。
【0101】
本明細書で使用される「ヒドラジド」部分という用語は、基「-C(=O)-N-N」を意味する。
【0102】
本明細書で使用される「ヒドロキシルアミン」部分という用語は、基「-O-CH-CH-N-」又は「-N-CH-CH-O-」を意味する。
【0103】
本明細書で使用される「エチレンジアミン」部分という用語は、基「-N-CH-CH-N-」又は「-N-CH-CH-N-」を意味する。
【0104】
本明細書で使用される「グアニジン」という用語は、-NHC(=NH)NH基を意味する。
【0105】
本明細書で使用される「脱離基」という用語は、別の部分によって容易に置換される任意の不安定な脱離基を意味する。ある実施形態では、脱離基は、ハロゲン、スルホニルオキシ及び-OC(O)R’(R’はアルキル、アリール又はアルキルアリールである)から成る群から選択される。ある好ましい実施形態では、脱離基は、Cl、Br、I、メシレート(OMs)、トリフレート(OTr)及びトシレート(OTs)から成る群から選択される。現在好ましい実施形態では、脱離基XはBrである。各々の可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0106】
「保護基」という用語は、化学合成中に反応部位をブロックするのに使用する化学残基を意味し、これによって、多官能性化合物中の1個の反応部位で化学反応を選択的に行わせ、他の反応部位を一時的にブロックしなければならない。このような反応部位をブロックするのに使用する残基を保護基と称する。
【0107】
本明細書で互換的に使用される「窒素保護基」又は「N保護基」又は「アミノ保護基」という用語は、アミノ基に結合した容易に切断可能な基を意味する。アミノ保護基の例としては、t-ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル、アセチル、フェニルカルボニル、又はシリル基が挙げられ、これはアルキル(トリアルキルシリル)、アリール(トリアリールシリル)又はそれらの組み合わせ(例えば、ジアルキルフェニルシリル)で置換することができる(例えば、トリメチルシリル(TMS)又はt-ブチルジメチルシリル(TBDMS)。ヒドロキシ保護基の他の例としては、例えば、C-Cアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、-CHPh(ベンジル又はbzl)、アリル(All)、(アリル)-CO-(C-Cアルキル)、-SO-(C-Cアルキル)、-SO-アリール、-CO-Ar(Arは上で定義したアリール基である)、及び-CO-(C-Cアルキル)Ar(例えば、カルボキシベンジル(Bz)基)が挙げられる。ヒドロキシ保護基の他の例としては、テトラヒドロピラニル(THP)、メトキシメチル(MOM)、トリフェニルメチル(トリチル)及びジメトキシトリチル(DMT)等の酸感受性保護基が挙げられる。各々の可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。保護基は、当技術分野で公知のように脱保護剤を用いて除去することができる。組込み方法及び脱保護方法は、C.B.Reese及びE.Haslam,“Protective Groups in Organic Chemistry,”J.G.W.McOmie,Ed.,Plenum Press,New York,NY,1973,それぞれChapters3及び4,T.W.Greene及びP.G.M.Wuts,“Protective Groups in OrganicSynthesis,”2nd ed.,John Wiley and Sons,New York,NY,1991及びA.J.Pearson及びW.R.Roush,Activating Agents and Protecting Groups,John Wiley and Sons(1999)に記載されており、これらの各々の内容は全て参照によって本明細書に組み込まれる。ある実施形態によれば、薬学的に許容し得る塩は、酸又は塩基の生物学的有効性を保持する「酸」及び「塩基」付加塩の両方を含む。
【0108】
本発明のカチオン性脂質の1種以上は塩として存在することができる。「塩」という用語は、塩基付加塩と酸付加塩の両方を包含し、カルボン酸塩又はアミン窒素との塩を含むがこれらに限定されず、以下に記載の有機及び無機のアニオン及びカチオンと共に形成される塩を包含する。更に、この用語は、塩基性基(アミノ基等)及び有機酸又は無機酸との標準的な酸-塩基反応によって形成する塩を包含する。このような酸としては、塩酸、フッ化水素酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、リン酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、パルミチン酸、コール酸、パモン酸、粘液酸、D-グルタミン酸、D-ショウノウ酸、グルタル酸、フタル酸、酒石酸、ラウリン酸、ステアリン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ソルビン酸、ピクリン酸、安息香酸、ケイ皮酸等の酸が挙げられる。各々の可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0109】
「有機又は無機カチオン」という用語は、塩のアニオンに対する対イオンを意味する。対イオンとしては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、バリウム、アルミニウム及びカルシウム等);アンモニウム及びモノ、ジ及びトリアルキルアミン、例えば、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン;及び有機カチオン、例えば、ジベンジルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、2-ヒドロキシエチルアンモニウム、ビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、フェニルエチルベンジルアンモニウム、ジベンジルエチレンジアンモニウム等のカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Bergeら、J.Pharm.Sci.(1977),66:1-19を参照(この文献は参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0110】
組成物及び治療的用途
ある態様では、本発明は、式(I)、(Ia)、(Ia-1)、(II)、(IIa)、(IIa-1)、(IIa-2)、(IIa-3)、(IIa-4)、(IIb)及び(IIb-1)のいずれか1つに係るカチオン性脂質、例えば、化合物1~66のいずれか1つと、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む組成物を提供する。組成物は、少なくとも1種の更なる中性脂質又はPEG修飾脂質を更に含むことができる。
【0111】
ある実施形態では、組成物は更に核酸を含むことができる。核酸の例としては、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボザイム、pDNA、CRISPR mRNA、gRNA及び免疫刺激核酸が挙げられる。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0112】
ある実施形態では、本発明は、本発明のカチオン性脂質を含む組成物に細胞を接触させる工程を含む遺伝子サイレンシングの方法を提供する。ある実施形態では、細胞は癌細胞である。
【0113】
他の実施形態では、組成物は、中性脂質、荷電脂質、ステロイド及びポリマー結合脂質から成る群から選択される1種以上の成分を更に含む。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0114】
他の実施形態では、本発明の組成物を送達系として使用し、治療剤を体内のその標的部位に投与することができる。従って、ある実施形態では、本発明は、治療剤を投与するための方法であって、本明細書に記載のカチオン性脂質と治療剤とを含む組成物を調製し、この組成物をそれを必要とする対象に投与して行う方法に関する。
【0115】
特定の実施形態では、本発明は、IVT-mRNA及び/又は他のオリゴヌクレオチドのインビトロ及びインビボ送達のための改良組成物の製剤化を可能にする新規カチオン性脂質を提供する。
【0116】
ある実施形態では、このような脂質ナノ粒子組成物は、mRNAによってコードされているタンパク質の発現に有用である。
【0117】
他の実施形態では、このような改良脂質ナノ粒子組成物は、1種の標的mRNA又は数種のmRNAを調節するmiRNAの群又は1種の特定のmiRNAを標的とするmiRNA阻害剤を送達することによる内在性タンパク質発現の上方制御に有用である。
【0118】
他の実施形態では、このような改良脂質ナノ粒子組成物は、標的遺伝子のタンパク質レベル及び/又はmRNAレベルを下方制御(例えば、サイレンシング)するのに有用である。
【0119】
ある他の実施形態では、脂質ナノ粒子は、導入遺伝子の発現のためのmRNA及びプラスミドの送達にも有用である。
【0120】
更に他の実施形態では、脂質ナノ粒子組成物は、タンパク質の発現に起因する薬理学的効果、例えば、適切なエリスロポエチンmRNAの送達による赤血球産生の増加、又は適切な抗体をコードするmRNAの送達による感染に対する保護を誘導するのに有用である。
【0121】
ある実施形態によれば、カチオン性脂質はナノ粒子の形態とすることができ、そのまま投与することができる。ある実施形態では、ナノ粒子を溶液として投与することができる。ある実施形態では、ナノ粒子は、任意の所望の投与経路で投与するのに適した医薬組成物に製剤化することができる。投与経路の例としては、局所投与、経口投与又は非経口投与等の経路が挙げられるが、これらに限定されない。所期の投与方法に応じて、使用する組成物は、例えば、錠剤、坐剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤等の固体、半固体又は液体剤形の形態とすることができるが、好ましくは、正確な投与量の単回投与に適した単位投与形態である。医薬組成物は、カチオン性粒子、薬学的に許容し得る賦形剤を含むことができ、必要に応じて、他の薬剤、医薬品、担体、アジュバント等を含むことができる。薬学的に許容し得る担体は、粒子内に封入された核酸に対して不活性であり、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有さないものであることが好ましい。ある実施形態では、投与は局所的である。ある実施形態では、投与は全身的である。
【0122】
ある実施形態では、非経口投与用の注射用製剤は、液状の溶液剤又は懸濁剤、注射前の液状の溶液剤又は懸濁剤に適した固体形態、又は乳剤として調製することができる。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等である。更に、必要に応じて、投与する医薬組成物は、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン等の湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤等の少量の無毒性補助物質を含むこともできる。また、水性注射懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストラン等の懸濁液の粘度を増加させる物質を含むこともできる。必要に応じて、懸濁液は安定剤を含むこともできる。非経口製剤は、アンプルやバイアル等の単位用量又は複数用量の密封容器中に存在させることができ、例えば、使用直前の注射用水等の無菌液状担体の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存することができる。ある実施形態では、非経口投与は静脈内投与を含む。
【0123】
他の実施形態では、経口投与の場合、薬学的に許容し得る無毒性の組成物は、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウム等の通常使用される賦形剤のいずれかを組み込むことによって形成することができる。このような組成物としては、液剤、懸濁剤、錠剤、分散錠、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放製剤等が挙げられる。経口投与に適した製剤は、水、生理食塩水又はオレンジジュース等の希釈剤に溶解した有効量の化合物(複数可)の液状溶液、所定量の活性成分を固形物又は顆粒として含むサシェ剤、ロゼンジ剤、及びトローチ剤、散剤、適切な液体中の懸濁剤、適切な乳剤で構成することができる。液体製剤は、水やアルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、及びポリエチレンアルコール)等の希釈剤を含むことができ、薬学的に許容し得る界面活性剤、懸濁剤又は乳化剤を添加しても添加しなくてもよい。
【0124】
投与する粒子の投与量を決定する際に、投与量及び投与頻度は、粒子内に封入される特定の核酸の薬理学的特性に関連させて選択することができる。
【0125】
ある代表的な実施形態では、例えば、siRNA、miRNA、shRNA、アンチセンスRNA等の核酸を含む粒子を、核酸、特異的標的白血球等の同一性に応じて様々な白血球関連病態の治療に使用することができる。ある実施形態では、粒子内に封入される核酸は、標的遺伝子のサイレンシングを誘導することができる核酸とすることができる。ある実施形態では、標的遺伝子は任意の遺伝子とすることができ、その発現は治療対象の病態に関連する。ある実施形態では、標的遺伝子は、増殖因子(EGFR、PDGFR等)、血管形成経路に関連する遺伝子(VEGF、インテグリン等)、細胞内シグナル伝達経路及び細胞周期調節に関与する遺伝子(PI3K/AKT/mTOR、Ras/Raf/MAPK、PDK1、CHK1、PLK1、サイクリン等)から選択される遺伝子とすることができるが、これらに限定されない。ある実施形態では、各々が1種以上の標的を有する核酸の組み合わせを粒子内に封入することができる。
【0126】
ある実施形態によれば、標的粒子によって治療可能な白血球関連病態の例としては、様々な種類の癌、様々な感染症(例えば、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染等)、自己免疫疾患、神経変性疾患、炎症等から選択され得るが、これらに限定されない。
【0127】
ある代表的な実施形態では、核酸(例えば、siRNA又はmiRNA、shRNA、アンチセンスRNA等)を含む標的粒子を癌の治療に使用することができる。
【0128】
ある実施形態では、癌は、細胞の集団が様々な程度で、通常の増殖や分化を制御する機序に応答しなくなった障害である。ある実施形態では、癌は血液癌である。血液癌の非限定的な例は、リンパ腫、白血病及び骨髄腫である。リンパ腫は、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2種のカテゴリーに分類される。殆どの非ホジキンリンパ腫はB細胞リンパ腫であり、急速に(高悪性度)又はゆっくり(低悪性度)と成長する。14種類のB細胞非ホジキンリンパ腫が存在する。他はT細胞リンパ腫である。
【0129】
ある代表的な実施形態では、癌の治療に使用することができる核酸は、細胞周期の調節に関与する標的遺伝子に対するものである。ある代表的な実施形態では、標的遺伝子は、ポロ様キナーゼ1(PLK)、サイクリンD1、CHK1、Notch経路遺伝子とすることができる。
【0130】
ある例示的な実施形態によれば、脂質粒子の複数の脂質は天然又は合成起源のものとすることができ、カチオン性脂質、ホスファチジルエタノールアミン、イオン化脂質、膜安定化脂質、リン脂質等、又はこれらの組み合わせから選択することができるが、これらに限定されない。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0131】
ある実施形態では、膜安定化脂質は、コレステロール、リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール)、セファリン、スフィンゴ脂質(スフィンゴミエリン及びスフィンゴ糖脂質)、グリセロ糖脂質、及びこれらの組み合わせから選択することができるが、これらに限定されない。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0132】
ある実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、1,2-ジラウロイル-L-ホスファチジル-エタノールアミン(DLPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPhPE)、1,3-ジパルミトイル-sn-グリセロ-2-ホスホエタノールアミン(1,3-DPPE)、1-パルミトイル-3-オレオイル-sn-グリセロ-2-ホスホエタノールアミン(1,3-POPE)、ビオチン-ホスファチジルエタノールアミン、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)又はこれらの組み合わせから選択することができるが、これらに限定されない。ある実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、PEG-アミン誘導体に結合することができる。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0133】
ある実施形態によれば、「中性脂質」とは、生理学的pHで非荷電又は中性双性イオン形態として存在する複数の脂質種のいずれかを意味し、このような脂質としては、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)等のホスホチジルコリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)等のホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン(SM)、セラミド、ステロール及びその誘導体等のステロイドが挙げられるが、これらに限定されない。中性脂質は合成又は天然由来とすることができる。
【0134】
ある実施形態によれば、粒子(その脂質相)は1種以上のPEG誘導体を更に含むことができる。ある実施形態では、脂質等の1種以上の更なる分子にPEG誘導体を結合することができる。ある実施形態では、PEG誘導体は、PEG-DMG 3-N-(-メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル-1,2-ジミリシルグリセロール、PEG-cDMA 3-N-(-メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル-1,2-ジミリスチルオキシ-プロピルアミン、PEG-cDSA、3-N-(-メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル-1,2-ジステアリルオキシ-プロピルアミン、DSPE-PEG、PEG-マレイミド、DSPE-PEG-マレイミド、又はこれらの組み合わせから選択されるが、これらに限定されない。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0135】
ある実施形態では、マレイミド誘導体/部分は、PEG誘導体に結合、接合、又は連結していてもよく、それ自体で脂質に結合、連結及び/又は接合していてもよい。
【0136】
ある実施形態によれば、粒子中の様々な脂質間の比率は変動し得る。ある実施形態では、比率はモル比である。ある実施形態では、比率は重量比である。ある実施形態では、脂質基の各々は、約1%~99%のモル比/重量比となり得る。
【0137】
ある実施形態によれば、核酸と脂質混合物との重量比を調整して、核酸による標的部位への生物学的効果が最大となるようにすることができる。ある実施形態では、核酸と脂質相との比率は1:1とすることができる。例えば、核酸と脂質相との重量比は1:2とすることができる。例えば、核酸と脂質相との重量比は1:5とすることができる。例えば、核酸と脂質相との重量比は1:10とすることができる。例えば、核酸と脂質相との重量比は1:16とすることができる。例えば、核酸と脂質相との重量比は1:20とすることができる。ある実施形態では、核酸と脂質相との重量比は、約1:1~1:20(w:w)である。
【0138】
ある実施形態では、粒子はナノ粒子である。ある実施形態では、粒子(内部に封入された核酸を含む)及び表面粒子上の標的部分は、約10~約500nmの範囲の粒径(直径)を有する。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約10~約350nmの範囲である。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約50~約250nmの範囲である。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約10~約200nmの範囲である。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約20~約200nmの範囲である。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約50~約200nmの範囲である。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約75~約200nmの範囲である。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約90~約200nmの範囲である。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約100~約200nmの範囲である。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約120~約200nmの範囲である。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約150~約200nmの範囲である。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約50~約150nmの範囲である。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約10nmを超える範囲である。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約20nmを超える。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約30nmを超える。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約40nmを超える。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約50nmを超える。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約60nmを超える。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約70nmを超える。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約80nmを超える。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約90nmを超える。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約100nmを超える。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約200nmを超える。ある実施形態では、粒子は粒径(直径)が約500nm以下である。ある実施形態では、粒子(内部に封入された核酸を含む)は粒径(直径)が約5~約200nmの範囲である。ある実施形態では、粒子(内部に封入された核酸を含む)は粒径(直径)が約50~約60nmの範囲である。ある実施形態では、粒子(内部に封入された核酸を含む)は粒径(直径)が約55~約58nmの範囲である。ある実施形態では、粒径は流体力学的直径である。
【0139】
例示的な実施形態によれば、粒子は、カチオン性脂質(表1又は表2に示される化合物等)、コレステロール、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、PEG誘導体(DMG-PEG等)及び脂質に結合したPEG-マレイミド(DSPE-PEG-マレイミド等)を様々なモル:モル比で含むことができ、更に標的部分に結合し、標的部分は、マレイミド部分に結合、連結、接合している。例えば、脂質相は、カチオン性脂質(DLinMC3)/DSPC/コレステロール/DMG-PEG/DSPE-PEG-マレイミド(モル/モル 50:10:38:1.5:0.5)からなり得る。例えば、脂質相は、DLinMC3-DMA/Chol/DSPC/DMG-PEG/DSPE-PEG-マレイミド(モル/モル 50:38:10:1.95:0.05)からなり得る。
【0140】
ある実施形態によれば、脂質相は約30~60%(モル)のカチオン性脂質を含むことができる。例えば、カチオン性脂質(複数可)は脂質相の約40~50%(モル)を構成することができる。
【0141】
ある実施形態によれば、脂質相は約20~70%(モル)の膜安定化脂質を含むことができる。例えば、膜安定化脂質は脂質相の約40~60%を構成することができる。ある実施形態では、2種以上の膜安定化脂質を脂質相に使用することができる。例えば、膜安定化脂質は、コレステロール(脂質相の約30~50%(モル)である)と、脂質相の約5~15%(モル)となり得るリン脂質(例えば、DSPC等)とを含むことができる。
【0142】
ある実施形態によれば、脂質相は約0.01~3%(モル:モル)のPEG-マレイミド(必要に応じて脂質に結合している)を含むことができる。例えば、PEG-マレイミドは脂質混合物の約0.05~0.6%を構成することができる。
【0143】
ある実施形態によれば、更なるPEG誘導体(脂質に結合)は脂質相組成物の約0.5~10%を構成することができる。
【0144】
ある例示的な実施形態によれば、白血球への核酸の送達のための標的粒子を調製する方法が提供され、この方法は次の工程:
a)本発明に係るカチオン性脂質、膜安定化脂質、及びリン脂質に結合したPEG-マレイミドを含む複数の脂質を有機溶媒中で所望の比率で混合する工程、
b)適切な溶液中の混合物に核酸を所望の比率で添加する工程、
c)マイクロ流体マイクロミキサー内で脂質混合物と核酸とを混合して粒子を形成する工程、
d)粒子を透析して望ましくない溶媒を除去する工程、
e)粒子を還元型標的抗体と共にインキュベートして標的化粒子を生成する工程、
f)必要に応じてゲル濾過によって非結合抗体を除去する工程、
g)核酸分子を封入している再構成t-結合粒子を濾過する工程の一つ以上を含む。
【0145】
ある実施形態では、脂質はエタノール等の酸性水性緩衝液に懸濁している。ある実施形態では、核酸は酢酸緩衝液中にある。
【0146】
ある実施形態では、核酸をマイクロフルイダイザーミキサーで脂質混合物と混合して、核酸を封入/担持している粒子を形成することができる。
【0147】
定義
本発明の理解を円滑化するため、幾つかの用語及び表現を以下に定義する。このような用語及び表現は説明を目的としており、限定を目的とするものではなく、本明細書の用語又は語法は、本明細書に提示された教示や指針に鑑み、当業者の知識と組み合わせて当業者が解釈することが理解されるべきである。
【0148】
本明細書で使用される用語「核酸」、「核酸分子」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」及び「ヌクレオチド」は、本明細書では互換的に使用され得る。これらの用語は、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、リボヌクレオチド(RNA)及びその修飾型のポリマーの別々の断片の形態、又はより大きな構築物、直鎖又は分岐鎖、一本鎖、二本鎖、三本鎖又はそれらのハイブリッドの構成要素としての形態に関する。この用語はRNA/DNAハイブリッドも包含する。ポリヌクレオチドは、センス及びアンチセンスオリゴヌクレオチド、又はDNA又はRNAのポリヌクレオチド配列を包含し得る。DNA又はRNA分子は、例えば、相補的DNA(cDNA)、ゲノムDNA、合成DNA、組換えDNA、又はそのハイブリッド、又はmRNA、shRNA、siRNA、miRNA、アンチセンスRNA等のRNA分子を挙げることができるが、これらに限定されない。各々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。これらの用語は更に、天然に存在する塩基、糖、及び共有ヌクレオシド間結合から成るオリゴヌクレオチド、並びにそれぞれの天然に存在する部分と同様に機能する天然に存在しない部分を有するオリゴヌクレオチドを包含する。
【0149】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は本明細書中で互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを意味する。これらの用語は、1種以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学的類似体であるアミノ酸ポリマー、及び天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用される。
【0150】
本明細書で使用される「構築物」という用語は、1種以上の核酸配列を含み得る人工的に組み立てられた又は単離された核酸分子を意味し、この場合、核酸配列はコード配列(即ち、最終産物をコードする配列)、調節配列、非コード配列、又はそれらの任意の組み合わせを包含し得る。構築物という用語は、例えば、ベクターを包含するが、それに限定されると見なされるべきではない。
【0151】
「発現ベクター」とは、外来細胞中に異種核酸断片(例えば、DNA等)を組み込んで発現する能力を有する構築物を意味する。換言すれば、発現ベクターは転写され得る核酸配列/断片(DNA、mRNA、tRNA、rRNA等)を含む。多くの原核生物及び真核生物の発現ベクターが既知及び/又は市販されている。適切な発現ベクターの選択は当業者の知識の範囲内である。ある代表的な実施形態では、発現ベクターは標的部位内の二本鎖RNA分子をコードすることができる。
【0152】
本明細書で使用される「発現」という用語は、標的細胞での所望の最終産物分子の産生を意味する。最終産物分子は、例えば、RNA分子、ペプチド又はタンパク質等、又はその組み合わせを含むことができる。
【0153】
本明細書で使用される「導入する」及び「トランスフェクション」という用語は互換的に使用することができ、例えば、核酸、ポリヌクレオチド分子、ベクター等の分子を標的細胞(複数可)へ導入すること、より具体的には、標的細胞(複数可)の膜で囲まれた空間の内部へ導入することを意味する。分子は、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(2001)(この文献の内容は参照によって本明細書に組み込まれる)によって教示されているように、当業者に既知の任意の手段で標的細胞(複数可)に「導入」することができる。細胞に分子を「導入する」手段としては、例えば、熱ショック、リン酸カルシウムトランスフェクション、PEIトランスフェクション、電気穿孔、リポフェクション、トランスフェクション試薬(複数可)、ウイルス媒介導入等、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。細胞のトランスフェクションは、例えば、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、ウイルス細胞等の任意の起源の任意の種類の細胞に対して実施することができる。細胞は、単離細胞、組織培養細胞、細胞株、生体内に存在する細胞等から選択することができる。
【0154】
本明細書で使用される「治療する」及び「治療」という用語は、疾患又は病態の進行を抑制する、阻害する、遅らせる又は逆転させる、疾患又は病態の臨床症状を改善する、或いは疾患又は病態の臨床症状の出現を予防することを意味する。「予防する」という用語は、本明細書では、対象が障害又は疾患又は病態を獲得することを妨げることとして定義される。
【0155】
「癌の治療」という用語は、癌の増殖速度の低下(即ち、癌は依然として増殖するが遅い速度で増殖する)、癌性増殖の停止(即ち、腫瘍増殖の停滞)、及び腫瘍のサイズの減少又は縮小の内の1つ以上を包含するものとする。また、この用語は、転移数の減少、新たに形成された転移数の減少、ある段階から他の段階への癌の進行の遅延、及び癌によって誘発される血管新生の減少も包含する。最も好ましい場合では、腫瘍は完全に除去されている。この用語に更に包含されるのは、治療を受けている対象の生存期間の延長、疾患進行の期間の延長、腫瘍縮小等である。ある実施形態では、癌は血液癌である。
【0156】
「白血球」という用語は、骨髄中の多能性の造血幹細胞から産生し、それに由来する白血球細胞(WBC)に関する。白血球細胞は核を有し、白血球細胞の種類は、機能的又は物理的特性に基づいて5つの主な種類、即ち、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、及び単球等に分類することができる。主な種類はサブタイプに分類することができる。例えば、リンパ球としては、B細胞、T細胞及びNK細胞が挙げられる。B細胞は、例えば、抗体を放出し、T細胞の活性化を支援する。T細胞は、例えば、幾つかのサブタイプに分類することができ、その例としては、T細胞及びB細胞を活性化し調節するTヘルパー細胞(CD4+Th)、ウイルス感染細胞及び腫瘍細胞を標的として殺すことができる細胞傷害性T細胞(CD8+)、自然免疫応答と適応免疫応答との間を橋渡しして食作用に関与することができるガンマ-デルタT細胞(γδT細胞)、免疫系を調節し、自己抗原に対する寛容性を維持し、自己免疫状態を抑制する調節性(サプレッサー)T細胞等が挙げられる。
【0157】
合成方法
本発明の化合物は、以下の一般的な合成方法に従って調製することができる。
【化42】
【化43】
【化44】
【0158】
上述した関連技術の例及びそれに関連する限定は例示的であり、排他的ではないことが意図される。関連技術の他の限定は、本明細書を読み、図面を検討することによって当業者には明らかになるであろう。
【0159】
本明細書に引用された全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0160】
実施例1:材料及び方法:
材料
脂質:LNPの製造に使用される全ての脂質(コレステロール、DSPC及びDSPE PEG-Mal)は、Avanti Polar lipids(米国)から購入した。
モノクローナル抗体:抗CD45 AF647、アネキシン-647はBioLegendから購入した。
ヨウ化プロポデウムはSigma-Aldrichから購入した。
siRNA分子は、Alnylam Pharmaceuticals(米国)によって設計及びスクリーニングされた。
化学修飾siRNA配列:
CD45 siRNA:
センス鎖:cuGGcuGAAuuucAGAGcAdTsdT(配列番号:1)
アンチセンス鎖:UGCUCUGAAAUUcAGCcAGdTsdT(配列番号:2)
NC5 siRNA(siNC5又は対照siRNA):
センス鎖:CAUAUUGCGCGUAUAGUCGCGUUAG
アンチセンス鎖:UGGUAUAACGCGCAUAUCAGCGCAAUC
Luc siRNA(siLuc):
センス鎖:cuuAcGcuGAGuAcuucGAdTsdT(配列番号:3)
アンチセンス鎖:UCGAAGuACUcAGCGuAAGdTsdT(配列番号:4)
Alexa-647標識siRNAはsiLucと同じ配列を有していた。2’-OMe修飾ヌクレオチドは小文字で示し、ホスホロチオエート結合は「s」によって表す。
PLK1 siRNA(PLK1)
センス鎖:GCUUAAUGACGAGUUCUUUACUUCT
アンチセンス鎖:GACGAAUUACUGCUCAAGAAAUGAAGA
細胞株
SupT1細胞、HEK293細胞、NAR細胞及びOVCAR-8細胞は、American Type Culture Collection(ATCC)から購入し、推奨通りに培養した。
【0161】
siRNA封入脂質ベースのナノ粒子(LNP)の調製
LNPは、Cohenらによって記載されているように、マイクロ流体マイクロ混合物(Precision NanoSystems、カナダ、ブリティッシュコロンビア州、バンクーバー)を使用して調製した。エタノール中1倍容量の脂質混合物(カチオン性脂質、DSPC、Chol、DMG-PEG及びDSPE-PEG Mal、50:10:38:1.5:0.5モル比、9.64nM総脂質濃度)と酢酸緩衝溶液を含む3倍容量のsiRNA(1:16w/w siRNA:脂質)をマイクロミキサーを介して2mL/分の複合流速(エタノール:0.5mL/分及び水性緩衝液:1.5mL/分)で注入した。標識LNPについては、10%のAlexa-647標識siRNAを組み込んだ。Cy5標識粒子については、10%Cy5標識非標的siRNAを使用した。得られた混合物をPBS(pH7.4)に対して16時間透析してエタノールを除去した。
【0162】
αCD38-LNP-siRNAの径、ζ電位及び超微細構造解析
LNP径分布及びζ電位は、MalvernナノZSζサイザー(Malvern instruments、英国)を使用して動的光散乱によって測定した。径測定のために、LNPをPBSで1:20に希釈した。利用した全てのサンプルは0.2より低い多分散指数(PDI)を示した。ζ電位測定のために、LNPをDDWで1:200に希釈した。ある場合では、以下に示すように、径測定とゼータ電位測定を水中で行った。
【0163】
定量的リアルタイムPCR
細胞中のポロ様キナーゼ1(PLK1遺伝子)のmRNAレベルを、トランスフェクションから48時間後又は72時間後にリアルタイムPCRによって定量した。全RNAをE-Z RNA精製キット(Biological industries、Beit Haemek、イスラエル)を使用して単離し、各サンプル由来の1μgのRNAをHigh Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)を使用してcDNAに逆転写し、cDNAの定量化(合計5ng)はsyber green(Applied Biosystems)を使用してstep one Sequence Detection System(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)で行った。GAPDHをハウスキーピング遺伝子として選択した。
リアルタイムPCRのために以下のプライマーを選択した。
PLK1用のプライマー:
順方向:ACCAGCACGTCGTAGGATTC
逆方向:CAAGCACAATTTGCCGTAGG
GAPDH用のプライマー:
順方向:TCA GGG TTT CAC ATT TGG CA
逆方向:GAG CAT GGA TCG GAA AAC CA
【0164】
インビトロ遺伝子サイレンシング
Supt1又はNAR又はOVCAR細胞を、1mLの完全培地と共に1×10細胞の密度で組織培養12ウェルプレートに入れた。様々なsiRNA(siPLK1又はsiCD45又はsiLUC)を含有するLNPをウェルに添加し、濃度を図に記載した。図に記載の様々な時間間隔で細胞を単離し、フローサイトメトリー(siCD45ノックダウン用)又はPLK1サイレンシング解析用のqPCRのいずれかによって解析した。siPLK1誘導細胞死の場合には、PI/アネキシンを用いたアポトーシスアッセイをフローサイトメトリーによって解析した。
【0165】
細胞周期研究:
トランスフェクトした細胞を氷冷PBSで洗浄し、70%エタノールで1時間固定した。次に、細胞を冷PBSで2回洗浄し、10μg/mLのヨウ化プロピジウム(PI)、2.5μg/mLのDNaseフリーRNaseA(Sigma、米国)及び0.01%トリトン-Xと共に250μLのPBS中、37℃で10分間インキュベートした。PI蛍光はフローサイトメトリーによって評価した。FlowJo(商標)による解析は、FL2-面積/FL2-幅チャンネルに基づいて、デブリ及び細胞二重線をゲートアウトした後、試料1個当たり少なくとも9000個の細胞に対して行った。細胞周期分布は、1.5~2.5の範囲のRMSスコアでゲート細胞にディーン・ジェット・フォックスモデルを適用することによって得た。
【0166】
実施例2:脂質の合成:
一般的な調製方法(スキーム1~3の例示的実施形態)。
【化45】
【化46】
【化47】
【0167】
方法A:
化合物(i)又は上で定義したアミン官能性化合物を標準的なEDC/NHCカップリング法によって脂肪酸に結合させて化合物(ii)を得る。水素化アルミニウムリチウム(LAH)で更に還元した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して所望の最終化合物(iii)を得る。
【0168】
方法B:
化合物(i)及び/又はアミン官能性化合物とアルキル/アルケニル脂肪鎖対応アルデヒドをアルゴン下、室温で2時間撹拌した後、NaCNBH又はトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムで還元し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して所望の最終化合物を得る。
【0169】
方法C:
化合物(i)又は上で定義したアミン官能性化合物を対応する臭化アルキル/アルケニル(上で定義した他のもの)と共に一晩加熱した後、カラムクロマトグラフィーで精製して所望の最終化合物(ii)を得る。
【0170】
方法D:
トリエチルアミンの存在下でジヒドロキシル化合物を脂肪酸塩化物と反応させて化合物(ii)を得る。化合物(ii)をクロロクロム酸ピリジニウム(PCC)で更に酸化した後、アミン官能性化合物と反応させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して所望の化合物(iv)を得る。
【0171】
脂質1の合成(方法A):
【化48】
リノール酸(0.88mg、3.14mmol)とEDCI(0.9mg、4.71mmol)を100mLのフラスコに入れ、乾燥DCMに溶解した後、ジメチルアミノエチルヒドラジン塩酸塩(0.2mg、1.25mmol)とトリエチルアミン(0.1ml)を添加した。反応混合物を24時間撹拌し、水とブライン溶液で洗浄した。粗化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl(4:96))で精製して0.8gの純粋な化合物(9Z,12Z)-N’-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-N’-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエノイル)オクタデカ-9,12-ジエンヒドラジドを得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.22-5.45 (8H, m); 3.7-3.8 (1H, t); 3.2-3.3 (1H, m); 2.8 (4H, t), 2.6 (2H, t), 2.3 (6H, s); 2.2 (4H, m); 2.0 (8H, q); 1.2-1.4 (32H, m), 0.9 (6H, t).
ESI-MS: 628.6 (M+1)
【0172】
上述の化合物(0.8mg、1.27mmol)を50mLの丸底(RB)フラスコに入れ、5mLの乾燥THFに溶解した後、1NのLAH THF溶液(6mL、6.36mmol)を添加し、反応混合物を24時間還流した。反応を0℃の飽和塩化アンモニウムで停止させた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl(2:98))で精製して0.3gの純粋な化合物2-(1,2-ジ((9Z,12Z))-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)ヒドラジニル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミンを淡黄色液体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ NMR: 5.22-5.45 (8H,m); 3.2 (2H,t); 3.1 (2H, t); 2.8 (4H, t), 2.5 (2H, m); 2.4 (6H, s); 2.3 (1H, m); 2.0 (12H, q); 1.5 (4H, m); 1.2-1.4 (32H, m), 0.9 (6H, t).
ESI-MS: 600.6 (M+1)
【0173】
脂質10&12の合成:
【化49】
リノールアルコール(1.7g、6.3mmol)をアルゴン下で乾燥DCMに溶解し、モレキュラーシーブを反応混合物に添加した。PCC(2g、9.5mmol)を10分間に亘って反応混合物に少しずつ添加した。反応混合物を1時間撹拌し、シリカパッドを通して濾過してPCCを除去した後、溶媒を蒸発させて1.5gの粗リノールアルデヒドを得た。粗アルデヒド(1.5g、5.6mmol)とBoc-ヒドラジド(0.6g、4.5mmol)をアルゴン雰囲気下で乾燥DCMに溶解し、次いでトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(4.7g、22.6mmol)を反応混合物に添加し、室温で24時間撹拌した。反応を水酸化ナトリウム溶液で停止させ、DCM(3×50mL)で抽出した後、水とブライン溶液で洗浄した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカカラムクロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン(5:95))で精製して1.3gの純粋な化合物N,N-ジリノレイル-bocヒドラジドを得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.22-5.45 (8H, m); 2.8 (4H, t), 2.6 (3H, bs), 2.0-2.1 (8H, q); 1.5-1.8 (6H, m); 1.4-1.5 (12H, s), 1.2-1.4 (32H, m), 0.9 (6H, t)
ESI-MS: 629.6 (M+1)
【0174】
N,N-ジリノレイル-bocヒドラジド(1.3g、2.07mmol)をアルゴン雰囲気下で乾燥DCMに溶解した。反応混合物を0℃に冷却し、トリフルオロ酢酸(TFA)(2mL)を滴下して3時間撹拌した。TLC解析によって反応が完了した際、反応混合物を重炭酸ナトリウムで洗浄した後、ブライン溶液で洗浄した。溶媒を蒸発させ、粗反応混合物(0.4g、0.76mmol)、N,N-ジメチルアミノ酪酸(0.19g、1.3mmol)及びEDCI(0.43g、2.26mmol)をアルゴン雰囲気下で乾燥DCMに溶解した。トリエチルアミンを添加し、反応物を24時間撹拌した。反応混合物を水で洗浄した後、重炭酸ナトリウムとブライン溶液で洗浄した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl(2:98))で精製して0.3gの純粋な脂質10を無色の液体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.22-5.45 (8H,m); 2.8 (4H,t), 2.6 (3H,m), 2.3-2.5 (4H,m); 2.2 (6H,s); 2.0(8H,q); 1.6-1.8 (8H, m); 1.2-1.5 (36H,m), 0.9 (6H,t)
ESI-MS: 642.6 (M+1)
【0175】
化合物2を乾燥THF中に溶解し、1MのLAH THF溶液を反応混合物に添加し、12時間還流した。反応を塩化アンモニウム溶液で停止させた後、溶媒を蒸発させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して純粋な脂質12を得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ NMR: 5.22-5.45 (8H, m); 2.8 (4H, t), 2.6 (2H, m), 2.4-2.5 (6H, m); 2.2 (6H, s); 2.0(8H, q); 1.6-1.8 (8H, m); 1.2-1.5 (36H, m), 0.9 (6H, t)
ESI-MS: 629.1 (M+1)
【0176】
脂質11の合成:
【化50】
N,N-ジリノレイルヒドラジン(300mg、0.56mmol)、Nε,Nεジメチル-Nαboc L-リジン(180mg、1.13mmol)及びEDCI(320mg、1.68mmol)を50mLのRBフラスコに入れ、アルゴン下で10mLの乾燥DCMに溶解した。反応混合物を24時間撹拌し、次いで反応混合物を水で洗浄した後、重炭酸ナトリウムとブライン溶液で洗浄した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl;3:97)で精製して200mgの純粋な化合物を得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.22-5.45 (8H, m); 3.8-4.0 (1H, m); 2.8 (4H, t), 2.6-2.7 (4H, t), 2.4 (2H, m); 2.2 (6H, s), 2.0 (8H, m), 1.5-1.8 (6H, m); 1.4 (9H, s), 1.2-1.4 (34H, m), 0.9 (6H, t).
ESI-MS: 785.6 (M+1)
【0177】
上述の化合物(200mg、0.25mmol)を50mLのRBフラスコに入れ、アルゴン雰囲気下で4mLの乾燥DCMに溶解した。トリフルオロ酢酸(2mL)を0℃で滴下した。反応混合物を3時間撹拌した。溶媒を重炭酸ナトリウム溶液で洗浄した後、ブラインで洗浄した。クロロホルムとメタノールの溶媒系(95:5)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって反応混合物を精製して、120mgの純粋な化合物11(2-アミノ-6-(ジメチルアミノ)-N’,N’-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)ヘキサンヒドラジド)を半固形物として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.22-5.45 (8H, m); 3.4 (1H, m), 2.8 (4H, t), 2.7 (4H, t), 2.5 (2H, t), 2.4 (6H, s), 2.0 (m), 1.6 (2H, m), 1.4-1.5 (6H, m), 1.2-1.4 (34H, m), 0.9 (6H, t)
ESI-MS: 686.6 (M+1)
【0178】
脂質14の合成:
【化51】
リノレイルアルデヒド(2.64g、10.0mmol、2当量)とヒドロキシルアミン塩酸塩(0.34g、5.0mmol、1.0当量)をアルゴン雰囲気下で乾燥DCMに溶解し、次いでトリメチルアミン(0.7ml、5.0mmol、1.0当量)を添加した。化合物を溶解した後、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(3.1g、15.0mmol、3当量)を反応混合物に添加し、室温で24時間撹拌した。反応を水酸化ナトリウム溶液で停止させた後、水とブライン溶液で洗浄した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカカラムクロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン(5:95))で精製して、1.5g(55%)の純粋な白色化合物N,N-ジリノレイル-ヒドロキシルアミンを得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.27-5.39 (8H, m); 2.77 (4H, t, J = 6.84 Hz), 2.57-2.68 (4H, m), 2.05 (8H, q, J = 6.80, 6.87 Hz); 1.50-1.65 (4H, m); 1.22-1.42 (32H, m), 0.89 (6H, t, J = 6.86 Hz).
ESI-MS: 530 [M+1]
【0179】
N,N-ジリノレイル-ヒドロキシルアミン(0.48g、0.90mmol、1当量)N,N-ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(0.30g、1.8mmol、2当量)、EDCI(0.34g、1.8mmol、2当量)及びDMAP(0.01g、0.09mmol、0.1当量)をアルゴン雰囲気下で乾燥DCMに溶解した。次にトリメチルアミン(0.25ml、1.8mmol、2当量)を添加し、反応物を24時間撹拌した。反応混合物を水で洗浄した後、重炭酸ナトリウムとブライン溶液で洗浄した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl(3:97))で精製して、0.6g(85%)の純粋な脂質14を無色の液体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.22-5.45 (8H, m); 2.71-2.87 (8H, m), 2.24-2.36 (4H,m); 2.21 (6H, s); 1.93-2.12 (8H, m); 1.74-1.81 (2H, m); 1.42-1.58 (4H, m); 1.6-1.8 (8H, m); 1.20-1.40 (32H, m), 0.89 (6H, t, J = 6.90 Hz).
Mass: 643.1 [M]; 644.1 [M+1]
【0180】
脂質15の合成:
【化52】
リノレイルアルデヒド(1.7g、6.06mmol、2当量)、N,N-ジメチルアミノエチルヒドラジン塩酸塩(0.53g、3.03mmol、1当量)及びトリメチルアミン(0.84ml、6.06mmol、2当量)をアルゴン雰囲気下で乾燥DCMに溶解し、次にトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.91g、9.09mmol、3当量)を添加し、反応混合物を室温で24時間撹拌した。反応を水酸化ナトリウム溶液で停止させた後、水とブライン溶液で洗浄した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl(3:97))によって精製して、1.08g(60%)の純粋な脂質15を無色の液体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 6.77 (1H, t, J = 5.55 Hz ), 5.34-5.48 (8H, m); 3.13 (2H, m), 3.00-3.05 (2H, m), 2.77 (4H, t, J = 6.44 Hz), 2.41-2.48 (4H, m), 2.22-2.34 (2H, m), 2.28 (s, 6H); 1.46-1.51 (4H, m); 1.32-1.40 (32H, m), 0.89 (6H, t, J = 6.90 Hz).
ESI-MS : 599 ([M]), 600 ([M+1]).
【0181】
脂質22の合成:
【化53】
N,N-ジリノレイル-ヒドロキシルアミン(0.20g、0.37mmol、1当量)N-メチルピペリジンプロパン酸(0.12g、0.74mmol、2当量)、EDCI(0.13g、0.74mmol、2当量)及びDMAP(5mg、0.03mmol、0.1当量)をアルゴン雰囲気下で乾燥DCMに溶解した。次にトリメチルアミン(0.1ml、0.74mmol、2当量)を添加し、反応物を24時間撹拌した。反応混合物を水で洗浄した後、重炭酸ナトリウムとブライン溶液で洗浄した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl(5:95))で精製して、0.21g(76%)の純粋な脂質を無色の液体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.21-5.45 (8H, m); 2.75-2.87 (8H, m), 2.70 (2H, t, J = 7.28 Hz ); 2.47 (2H, t, J = 7.25 Hz ); 2.27 (3H, s); 1.98-2.10 (8H, m); 1.44-1.57 (4H, m); 1.15-1.40 (32H, m), 0.88 (6H, t, J = 6.81 Hz).
Mass: 684.8 [M+1]
【0182】
脂質38の合成:
【化54】
リノレイルアルデヒド(2.64g、10.0mmol、2当量)とエタノールアミン(0.30g、5.0mmol、1当量)をアルゴン雰囲気下で乾燥DCMに溶解し、次いでトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(3.1g、15.0mmol、3当量)を添加し、反応混合物を室温で24時間撹拌した。反応を水酸化ナトリウム溶液で停止させた後、水とブライン溶液で洗浄した。溶媒を蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl(2:98))で精製して、2.3g(85%)の純粋な黄色の化合物N,N-ジリノレイル-アミノエタノールを得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.35-5.46 (8H, m); 3.52 (2H, t, J = 5.38 Hz ); 2.77 (4H,t, J = 6.37 Hz), 2.57 (2H,t, J = 5.38 Hz), 2.43-2.49 (4H, m), 2.05 (8H, q, J = 6.73, 6.75 Hz), 1.43-1.48 (4H, m), 1.32-1.38 (32H, m), 0.89 (6H, t, J = 6.85 Hz)
ESI-MS: 558 [M+1]
【0183】
N,N-ジリノレイル-アミノエタノール(0.55g、1.0mmol、1当量)、N,N-ジメチルアミノ酪酸(0.33g、2.0mmol、2当量)、EDCI(0.38g、2.0mmol、2当量)及びDMAP(0.01g、0.01mmol、0.1当量)をアルゴン雰囲気下で乾燥DCMに溶解した。トリメチルアミン(0.28ml、2.00mmol、2当量)を添加し、反応混合物を24時間撹拌した。反応混合物を水で洗浄した後、重炭酸ナトリウムとブライン溶液で洗浄した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl(3:97))で精製して、0.46g(70%)の純粋な脂質38を無色の液体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.27-5.45 (8H, m); 4.12 (2H, t, J = 6.33 Hz ); 2.77 (4H, t, J = 6.37 Hz ); 2.67 (2H, t, J = 6.34 Hz ); 2.38-2.49 (4H, m), 2.19-2.38(4H, m); 2.21 (6H,s); 2.05 (8H, q, J = 6.82, 6.84 Hz ); 1.70-1.85 (4H, m); 1.20-1.50 (36H, m), 0.9 (6H, t, J = 6.85 Hz ).
ESI-MS: 671 ([M]), 672 ([M+1]).
【0184】
脂質54及び57の合成:
【化55】
【0185】
デカン酸7-オキソヘプチル:
【化56】

1,7-ヘプタンジオール(5g、37mmol)を100mLのフラスコに入れ、乾燥DCM中に溶解した後、PCC(8.9g、41.6mmol)を15分間に亘って少しずつゆっくりと添加した。次に、反応混合物を室温で2時間撹拌した。粗反応混合物をシリカゲルパッドを通して濾過し、DCM(2×50mL)で洗浄した。有機溶媒をNaSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。得られた粗ヒドロキシルアルデヒドを更に精製せずに直接使用した。
【0186】
粗ヒドロキシアルデヒド(1.3g、10.0mmol)、デカン酸(2.0g、12.0mmol)及びEDC(2.8g、15.0mmol)を100mLフラスコに入れ、乾燥DCMに溶解し、0℃でDMAP(触媒)を添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌した。次に反応混合物を水で洗浄した後、ブライン溶液で洗浄し、無水NaSOで乾燥させた。粗混合物をシリカカラムクロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン(05:95))で精製して、無色油状物を収率90%(2.4g)で得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 9.76 (1H, t, J = 1.91 Hz ); 4.05 (2H, t, J = 6.76 Hz), 2.43 (2H, dt, J = 7.48, 5.70 Hz ); 2.28(2H, t, J = 7.68 Hz ); 1.78- 1.52 (8H, m); 1.44-1.33 (4H, m); 1.32-1.20 (12H, m), 0.87 (3H, t, J = 6.62 Hz).
Mass: 285.8 [M+1], 283.8 [M-1]
【0187】
ビス(デカン酸)(2-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ヒドラジン-1,1-ジイル)ビス(ヘプタン-7,1-ジイル)(脂質57):
【化57】

デカン酸7-オキソヘプチル(0.6g、2.2mmol)とジメチルアミノエチルヒドラジン塩酸塩(0.18g、1.0mmol)を乾燥DCMに溶解した後、トリメチルアミン(0.1ml)を添加した。トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.6g、3.0mmol)を反応混合物に添加し、室温で24時間撹拌した。反応混合物をNaHCO溶液で洗浄した後、ブライン溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。粗混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl(5:95))で精製して、73%(0.51g)の純粋なビス(デカン酸)(2-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ヒドラジン-1,1-ジイル)ビス(ヘプタン-7,1-ジイル)を淡黄色の液体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 9.28 (1H, t, J = 5.55 Hz ); 4.01 (1H, t, J = 6.60 Hz), 3.70 (2H, t, J = 7.70 Hz), 3.30-3.20 (3H, m), 2.54 (3H, t, J = 7.55 Hz), 2.33-2.21 (6H, m), 2.20 (s, 6H); 1.80-1.70 (4H, m); 1.37-1.17 (24H, m), 0.83 (6H, t, J = 6.90 Hz).
ESI-MS: 640 ([M+1]).
【0188】
ビス(デカン酸)((2-ヒドロキシエチル)アザンジイル)ビス(ヘプタン-7,1-ジイル):
【化58】

デカン酸7-オキソヘプチル(1.0g、3.7mmol)とエタノールアミン(0.11g、1.85mmol)を乾燥DCMに溶解した後、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.1g、5.5mmol)を添加し、反応混合物を室温で24時間撹拌した。反応混合物を重炭酸ナトリウム溶液で洗浄した後、ブライン溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。粗混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl(2:97))で精製して、85%(0.91g)の純粋なビス(デカン酸)((2-ヒドロキシエチル)アザンジイル)ビス(ヘプタン-7,1-ジイル)を淡色液体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 4.05 (4H, t, J = 6.98 Hz); 3.60 (2H, t, J = 5.31 Hz ); 2.66 (2H, t, J = 5.31 Hz ); 2.54 ( 4H, t, J = 7.58 Hz); 2.28 (4H, t, J = 7.58 Hz); 1.68-1.54 (8H, m ); 1.53-1.41 (4H, m ); 1.20-1.40 (32H, m), 0.89 (6H, t, J = 6.80 Hz ).
ESI-MS: 598 ([M+1]).
【0189】
ビス(デカン酸)((2-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)エチル)アザンジイル)ビス(ヘプタン-7,1-ジイル)(脂質54):
【化59】

ビス(デカン酸)((2-ヒドロキシエチル)アザンジイル)ビス(ヘプタン-7,1-ジイル)(0.4g、0.7mmol)と4-(ジメチルアミノ)ブタン酸(0.17g、1.0mmol)を100mLフラスコに入れて、乾燥DCMに溶解させた。次いで、EDCI(0.27g、1.4mmol)を反応混合物に添加した後、DMAP(触媒)を添加し、それを一晩撹拌した。反応混合物を水で洗浄した後、ブライン溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させた。粗混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl(2:98))で精製して、75%(0.37g)の純粋なビス(デカン酸)((2-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)エチル)アザンジイル)ビス(ヘプタン-7,1-ジイル)を淡色液体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 4.11 (2H, t, J = 6.51 Hz); 4.04 (4H, t, J = 6.78 Hz); 2.66 (2H, t, J = 6.51 Hz ); 2.43(4H, t, J = 7.73 Hz ); 2.33 ( 2H, t, J = 7.58 Hz); 2.28 (4H, t, J = 7.58 Hz); 2.21 (6H, s); 1.68-1.54 (6H, m ); 1.67-1.52 (8H, m ); 1.46-1.36 (4H, m ); 1.20-1.40 (32H, m), 0.87 (6H, t, J = 6.80 Hz ).
ESI-MS: 711 ([M+1]).
【0190】
脂質24の合成
【化60】
【0191】
2-ヘキシルデカン酸:
【化61】

新たに調製したLDA(9.0mL、THF中2M、18.0mmol)のTHF(30mL)溶液をデカン酸(2.6g、15.3mmol)とNaH(60w/w%鉱油懸濁液、690mg、18.0mmol)のTHF(19mL)溶液に0℃でゆっくりと添加し、室温で30分間撹拌した。n-C13I(2.6mL、18.0mmol)を添加した後、反応混合物を45℃で6時間撹拌し、次いで室温で1NのHClで反応停止させた。有機層を無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュシリカカラムクロマトグラフィー(EtOAc:Hex(10:90))で精製して(3.7g、65%)を無色の液体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 2.38-2.28 (1H, m); 1.69-1.53 (2H, m); 1.50-1.40 (2H, m); 1.36-1.20 (20H, m); 0.87 (6H, t, J = 6.87 Hz).
Mass: 255 [M-1]
【0192】
6,6’-(1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ヒドラジン-1,2-ジイル)ビス(6-オキソヘキサン酸)ジメチル:
【化62】

アジピン酸メチル(1.6g、10.0mmol)、ジメチルアミノエチルヒドラジン(0.88g、5.0mmol)及びEDC(2.8g、15.0mmol)を乾燥DCMに溶解した後、トリエチルアミンを添加した。反応混合物を一晩撹拌した。反応混合物を水で洗浄した後、ブライン溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。粗混合物をカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl(5:95))で精製して、淡黄色の液体を得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 3.66 (3H, s); 3.64 (3H, s); 2.26-2.41(6H, m); 2.15-2.26 (12H, s); 1.65- 1.54 (4H, m); 1.65-1.55 (4H, m).
Mass: 388 [M+1]
【0193】
6,6’-(1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ヒドラジン-1,2-ジイル)ビス(ヘキサン-1-オール):
【化63】

6,6’-(1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ヒドラジン-1,2-ジイル)ビス(6-オキソヘキサン酸)ジメチル(0.77g、2.0mmol)を乾燥THFに溶解した後、過剰のLAH(10.0mL、THF中2M、20.0mmol)を添加した。反応混合物を24時間還流し、HOをゆっくり添加して反応を停止させ、濾過し、NaSOで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、90%(0.5g)の純粋な6,6’-(1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ヒドラジン-1,2-ジイル)ビス(ヘキサン-1-オール)を得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 3.62 (4H, t, J = 6.70 Hz); 2.70 (2H, t, J = 6.87 Hz ); 2.65(2H, t, J = 7.10 Hz ); 2.50-2.60 ( 4H, m,); 2.44 (2H, t, J = 6.91 Hz); 2.29 (6H, s); 1.65-1.45 (6H, m ); 1.44-1.25 (8H, m ).
ESI-MS: 304 ([M+1]).
【0194】
ビス(2-ヘキシルデカン酸)(1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ヒドラジン-1,2-ジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)(脂質24):
【化64】

6,6’-(1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ヒドラジン-1,2-ジイル)ビス(ヘキサン-1-オール)(0.30g、1.0mmol)と2-ヘキシル-デカン酸(0.50g、2.2mmol、2当量)を50mLフラスコに入れ、乾燥DCMに溶解した。次いで、EDC(0.27g、1.4mmol)を反応混合物に添加した後、DMAP(触媒)を添加し、反応物を一晩撹拌した。反応混合物を水で洗浄した後、ブライン溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させた。粗混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl(5:95))で精製して、65%(0.49g)の純粋な化合物を淡色液体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 3.72 (4H, t, J = 5.65 Hz); 3.20-3.34 (4H, m); 2.31 (4H, t, J = 6.71 Hz ); 2.21 (6H, s); 1.71-1.85 (4H, m); 1.68-1.50 (6H, m ); 1.50-1.36 (6H, m ); 1.32-1.17 (50H, m), 0.84 (12H, t, J = 6.91 Hz ).
ESI-MS: 780 ([M+1]).
【0195】
脂質56の合成
【化65】
【0196】
6-ヒドロキシヘキサン酸:
【化66】

ε-カプロラクトン(2.2g、20.0mmol)をジオキサン6mLに溶解し、3MのNaOH溶液50mLを添加した。混合物を室温で一晩撹拌した。溶液を酢酸エチルで洗浄して一部の有機不純物を除去した。水層を37%濃HClでpH3~4に酸性化し、次いで酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。有機層を飽和NaCl(2×50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。有機層を真空下で濃縮して、>90%(2.0g)を無色油状物として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 3.62 (2H, t, J = 6.30 Hz); 2.33(2H, t, J = 7.45 Hz); 1.63 (2H, pent); 1.55 (2H, q, J = 7.45 Hz); 1.42-1.32 (2H, m).
【0197】
7-オキソヘプタン酸:
【化67】

6-ヒドロキシヘキサン酸(0.60g、4.5mmol)のDMSO(10mL)溶液にIBX(1.0g、3.5mmol、1.5当量)を添加した。混合物を6時間撹拌し、水を添加して反応を停止させた。沈殿物を濾過によって除去した。酢酸エチル(2×50ml)で抽出し、NaSOで脱水し、溶媒を真空下で除去して、ほぼ純粋なオキソ酸を収量0.46g(78%)で無色油状物として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 9.48 (1H, t, J = 1.57 Hz); 2.33 (2H, t, J = 7.45 Hz); 2.20 (2H, t, J = 7.20 Hz); 2.10-1.95 (2H, m), 1.45-1.32 (2H, m).
【0198】
6-オキソヘキサン酸(Z)-ノン-2-エン-1-イル:
【化68】

7-オキソヘプタン酸(0.26g、2.0mmol)とシス-2-ノネン-1-オール(0.28g、2.0mmol、1当量)を50mLのフラスコに入れ、乾燥DCMに溶解し、EDCI(0.27g、1.4mmol)を反応混合物に添加した後、DMAP(触媒)を添加して一晩撹拌した。反応混合物を水で洗浄した後、ブライン溶液で洗浄し、亜硫酸ナトリウムで乾燥させた。粗混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン(5:95))で精製して、85%(0.44g)の純粋な化合物を液体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 9.74 (1H, t, J = 1.69 Hz), 5.68-5.58 (1H, m); 5.54-5.44 (1H, m); 4.60 (2H, d, J = 7.20 Hz); 2.40-2.50 (2H, m); 2.38-2.28 (2H, m); 2.08 (2H, q, J = 7.70, 6.90 Hz); 1.70-1.60 (4H, m); 1.40-1.20 (8H, m ); 0.86(6H, t, J = 6.95 Hz ).
ESI-MS: 277 ([M+Na]).
【0199】
6,6’-(2-(tert-ブトキシカルボニル)ヒドラジン-1,1-ジイル)ジヘキサン酸ジ((Z)-ノン-2-エン-1-イル):
【化69】

6-オキソヘキサン酸(Z)-ノン-2-エン-1-イル(0.25g、1.0mmol、2当量)とBoc-ヒドラジン(0.06g、0.5mmol、1.0当量)を窒素雰囲気下で乾燥DCMに溶解し、次いでトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.63g、3.0mmol、3.0当量)を反応混合物に添加し、室温で12時間撹拌した。
反応を重炭酸ナトリウム溶液で停止させ、DCMで抽出した後、水とブライン溶液で洗浄した。溶媒を蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン(10:90))で精製して、0.21g(78%)の純粋な脂質を無色の液体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.60-5.50 (2H, m); 5.47-5.37 (2H, m); 5.25 (br s, 1H), 4.53 (2H, s), 4.51(2H, s), 2.65-2.42 (4H, m), 2.21 (4H, t, J = 7.50 Hz), 2.00 (4H, q, J = 7.90, 7.11 Hz), 1.54 (4H, pent); 1.32-1.45 (15H, m), 1.30-1.09 (18H, m), 0.79 (6H, t, J = 6.75 Hz).
ESI-MS: 609 ([M+1]), 553 ([M-t-Bu]).
【0200】
6,6’-(ヒドラジン-1,1-ジイル)ジヘキサン酸ジ((Z)-ノン-2-エン-1-イル):
【化70】

上述のBoc保護ヒドラジン化合物(0.25g、0.41mmol)を窒素雰囲気下、室温で2時間TFA/DCM(2:8)10mLに溶解した。反応を重炭酸ナトリウム溶液で停止させ、DCMで抽出した後、水とブライン溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させ、更に精製を行わずに0.20g(99%)の純粋なヒドラジンを淡黄色の液体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.70-5.58 (2H, m); 5.56-5.42 (2H, m); 4.62 (2H, s), 4.60 (2H, s); 2.44 (4H, t, J = 7.52 Hz); 2.31 (4H, t, J = 7.52 Hz); 2.09 (4H, q, J = 7.52, 7.15 Hz); 1.64 (4H, pent); 1.55 (4H, pent); 1.43-1.20 (18H, m); 0.87 (6H, t, J = 7.15 Hz).
ESI-MS: 509 ([M+1]
【0201】
6,6’-(2-(4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)ヒドラジン-1,1-ジイル)ジヘキサン酸ジ((Z)-ノン-2-エン-1-イル)(脂質56):
【化71】

6,6’-(ヒドラジン-1,1-ジイル)ジヘキサン酸ジ((Z)-ノン-2-エン-1-イル)(0.20g、0.4mmol、1当量)、N、N-ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(0.10g、0.6mmol、1.5当量)、EDC(0.15g、0.8mmol、2.0当量)及びDMAP(触媒)を窒素雰囲気下で乾燥DCMに溶解した。次にトリメチルアミン(0.28ml、2.00mmol、2当量)を添加し、反応物を12時間撹拌した。反応混合物に重炭酸ナトリウムを添加し、混合物を水で洗浄した後、ブライン溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させ、反応混合物をシリカカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl(5:95))で精製して、85%(0.20g)の純粋な脂質を淡黄色の液体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.67-5.57 (4H, m); 5.57-5.44 (4H, m); 4.61 (4H, t, J = 5.52 Hz); 2.66 (2H, t, J = 8.16 Hz ); 2.45 (2H, t, J = 7.47 Hz ); 2.40 (2H, t, J = 7.75 Hz); 2.34-2.20 (4H, m); 2.28 (6H, s); 2.08 (4H, q, J = 7.80 Hz ); 2.00-1.90 (4H, m); 1.86-1.76 (2H, m); 1.70-1.55 (4H, m), 1.54-1.40 (4H, m), 1.38-1.20 (14H, m), 0.87 (6H, t, J = 6.92 Hz ).
ESI-MS: 622 ([M+1]).
【0202】
実施例3:物理化学的特徴付け
【表3】
【0203】
実施例4:生物学的結果
実施例1に記載のようにインビトロ遺伝子サイレンシングを行った。
【0204】
図1は、脂質1のインビトロ遺伝子サイレンシング効果を示す:ヒトT細胞SupT1をsiCD45封入カチオン性脂質1からなる脂質ナノ粒子(LNP)で48時間(A)又は72時間(B)、異なるsiRNA用量(0.4μM、0.2μM、0.1μM)で処理した。この結果から、トランスフェクトしにくいT細胞においてCD45遺伝子を下方制御する脂質1の効率が分かる。
【0205】
薬剤耐性ヒト卵巣癌細胞(NAR)をLNP-siPLK-1又はLNP-siLucナノ粒子のいずれか(脂質1のLNP(A)、脂質10&11のLNP(B))で72時間処理し、PLK-1発現を実施例1に記載のようにqPCRで測定した。図2Aに示すように、脂質1含有LNPは癌原遺伝子PLK1を効率的に下方制御し、これは癌細胞においてアポトーシスを誘導することができる。高用量の対照LUC-siRNAでは、脂質1を有するLNPはplk1発現に影響を及ぼさなかった。更に図2Bに示すように、脂質10&11含有LNP-siPLK1も異なる用量でplk1遺伝子を効率的に下方調節するが、siLUC LNPはplk1発現に影響を及ぼさない。
【0206】
NAR細胞における脂質1のインビトロ遺伝子サイレンシング効果:ヒト卵巣癌細胞(NAR細胞)を脂質1/siPLK1ナノ粒子で48時間、異なるsiRNA濃度(0.2μM及び0.1μM)で処理した。アポトーシス細胞をPI/アネキシンを用いたFACSにより解析した。図3に示すように、脂質1を有するsiPLK1-LNPは、癌原遺伝子plk1の下方制御に起因して癌細胞においてアポトーシスを誘導する。初期アポトーシス細胞の割合は、0.2μM用量のsiPLK1のsiPLK1-LNPで処理した細胞において高かった。siLUC-LNPで処理した細胞では細胞周期に影響がなかったことから、NAR細胞へのsiPLK1の効率的な送達が示された。
【0207】
NAR細胞における脂質10及び11のインビトロ遺伝子サイレンシング効果:ヒト卵巣癌細胞(NAR細胞)を脂質10又は脂質11のいずれかの/siPLK1ナノ粒子で48時間、異なるsiRNA濃度(0.1μM及び0.05μM)で処理した。siLUC-LNPを陰性対照として用いた。アポトーシス細胞をPI/アネキシンを用いたFACSにより解析した。図4に示すように、脂質10又は脂質11のいずれかからなるsiPLK1-LNPは、効率的にPLK1遺伝子を下方制御した後、NAR細胞においてアポトーシスを誘導する。
【0208】
ヒト卵巣癌細胞(OVCAR8)をsiPLK1又はsiLUCのいずれかと共に脂質1含有LNPで72時間処理し、PLK-1発現をqPCRによって測定した。図5に示すように、脂質1含有siPLK1-LNPは、dlin-mc3-dma含有LNPと比較して、PLK1遺伝子を効率的に下方制御する。
【0209】
薬剤耐性ヒト卵巣癌細胞(NAR)のスフェロイドを、脂質1からなるLNPとsiPLK-1又はsiLucのいずれかで72時間処理し、PLK-1発現をqPCRによって測定した。スフェロイドはインビボ腫瘍を模倣する腫瘍細胞の3D培養物である。図6に示すように、脂質1含有siPLK1-LNPは、siLUC-LNPと比較してPLK1遺伝子を有意に下方制御しており、これはsiRNAをNARスフェロイドに送達するための脂質1の効率を示している。
【0210】
ヒト結腸癌細胞(HCT116)を対照siRNA(方法を参照)を有するLNPと共に72時間インキュベートした。細胞生存率をXTTアッセイにより測定した。脂質38又は脂質55のいずれかからなるLNPの毒性を、Dlin-MC3-DMAからなる至適基準LNPと比較する。図7に示すように、脂質38又は脂質55のいずれかからなるLNPは、Dlin-MC3-DMAからなるLNPよりも用量依存的に毒性が低い。
【0211】
脂質38及び55のインビトロ遺伝子サイレンシング効果。ヒト多発性骨髄腫浮遊細胞(U266)をsiPLK1を異なる濃度で含むLNPと共に48時間インキュベートした。PLK1発現はqPCRにより測定した。PLK1-mRNAレベルをLNP-対照siRNA処理細胞に対して正規化した。図8に示すように、PLK1遺伝子は、Dlin-MC3-DMA LNPと比較して、脂質38又は脂質55のいずれかからなるsiPLK1-LNPで処理された細胞において効率的に下方制御された。
【0212】
多発性骨髄腫細胞の生存に対するPLK1の下方制御の効果:ヒト多発性骨髄腫浮遊細胞(U266)を、脂質38又は55のいずれかからなるsiPLK1-LNP又はsiCtl-LNPと共に異なる濃度で48時間インキュベートした。PLK1の下方制御によって影響を受ける細胞生存率をXTTアッセイによって測定した。図9に示すように、脂質38又は脂質55のいずれかからなるsiPLK1-LNPは、PLK1遺伝子の効率的な下方制御に起因して、Dlin-MC3-DMA LNPと比較して細胞生存率に対して大きな影響を及ぼすが、siCtl-LNPは新しい脂質の安全な使用を示す細胞生存率に対して影響を及ぼさない。
【0213】
B細胞リンパ腫生存率に対するPLK1サイレンシングの効果:ヒトB細胞リンパ腫浮遊細胞(RPMI-8226)を、脂質38又は55のいずれかからなるsiPLK1-LNP又はsiCtl-LNPと共に異なる濃度で48時間インキュベートした。PLK1の下方制御によって影響を受ける細胞生存率をXTTアッセイによって測定した。図10に示すように、脂質38又は脂質55のいずれかからなるsiPLK1-LNPはPLK1遺伝子の効率的な下方制御に起因してB細胞リンパ腫癌細胞の生存率に対して用量依存的な効果を示すが、siCtl-LNPは細胞生存率に影響を及ぼさない。
【0214】
細胞生存率に対するPLK1サイレンシングの効果:ヒト多発性骨髄腫浮遊細胞(MM1)を、脂質38又は55のいずれかからなるsiPLK1-LNP又はsiCtl-LNPと共に異なる濃度で48時間インキュベートした。PLK1の下方制御によって影響を受ける細胞生存率をXTTアッセイによって測定した。図11に示すように、脂質38又は脂質55のいずれかからなるsiPLK1-LNPは、PLK1の下方制御に起因して多発性骨髄腫癌細胞の生存率に対して用量依存的な効果を示すが、siCtl-LNPは細胞生存率に影響を及ぼさない。
【0215】
pDNAのインビトロ発現:ヒト結腸癌細胞(HCT116)をLNP-LUC pDNAと共に異なる濃度で48時間インキュベートした。ルシフェラーゼ発現はルミノメーターによって測定した。リポフェクタミン2000(Lipo2000)を陽性対照として使用した。LNPは、Chol、PEG-DMG等の他の共脂質と共に、脂質38及び異なる量の共脂質DOPEで構成されていた。図12に示すように、脂質38からなるLNP-pDNAはpDNAを核に効率的に送達する。ルシフェラーゼ発現量は陽性対照lipo2000と同程度であった。
【0216】
HEK293細胞におけるpDNAのインビトロ発現:HEK細胞を、0.6nMのpDNA濃度でmKATE-pDNAが封入された脂質1又は脂質10のいずれかからなるLNPで処理した。72時間後、mKATE発現をフローサイトメトリーによって解析した。図13に示すように、脂質1又は脂質10のいずれかからなるLNPはpDNAを核に効率的に送達し、mKATE発現が観察されたが、Dlin-MC3-DMA LNPはmKATE発現に対して如何なる効果も示さなかった。
【0217】
HEK293細胞におけるpDNAの用量依存的発現:HEK細胞を、異なる量のpDNAでmKATE-pDNAが封入された脂質1又は脂質10のいずれかからなるLNPで処理した。72時間後、mKATE発現をフローサイトメトリーによって解析した。図14Aに示すように、脂質1からなるLNP-pDNAは用量依存的な発現を示さなかったが、図14Bに示すように、脂質10含有LNPは用量依存的なmKATEの発現を示した。
【0218】
mRNAのインビトロ送達:トランスフェクトしにくいマウスマクロファージ細胞(RAW264.7)を、脂質38又は脂質54のいずれかで構成され、mRNAの量が異なるルシフェラーゼmRNAで製剤化されたLNPで処理した。18時間後、ルシフェラーゼ発現をルミノメーターによって測定した。図15に示すように、ルシフェラーゼ発現は、脂質54-LNPと比較して脂質38-LNPで効率的に処理された細胞において観察され、更に用量依存的発現が脂質38含有LNPで観察された。
【0219】
筋細胞へのmRNAのインビボ送達:ルシフェラーゼmRNAで製剤化された脂質54又は脂質38のいずれかからなるLNPをC57BL6/jマウスに1mg/kg体重で筋肉内投与した。ルシフェラーゼ発現は、生物発光画像化システムBiospaceによって(a)筋肉内投与から8時間後、(b)24時間後に測定した。図16に示すように、脂質38又は脂質54のいずれかからなる両方のLNPについて、投与8時間後に有意な量のルシフェラーゼが観察された。LNP投与24時間後でも発現は依然として高く、これは、インビボでのmRNAの送達におけるこれらの脂質の効率を示す。
【0220】
肝臓へのmRNAのインビボ送達:ルシフェラーゼmRNAで製剤化された脂質54又は脂質38のいずれかからなるLNPをC57BL6/jマウスに1mg/kg体重で静脈内投与した。8時間後、ルシフェラーゼ発現を生物発光画像化システムBiospaceによって測定した。図17に示すように、脂質54からなるLNPと比較して、脂質38及びmRNAからなるLNPで処理したマウスでは、有意な量のルシフェラーゼがマウス肝臓において示される。
【0221】
肝臓へのmRNAのインビボ送達:ルシフェラーゼmRNAで製剤化された脂質38からなるLNPをC57BL6/jマウスに1mg/kg体重で静脈内投与した。投与から8時間及び24時間後、ルシフェラーゼ発現を生物発光画像化システムBiospaceによって測定した。図18に示すように、有意な量のルシフェラーゼ発現が肝臓において観察された。更に、ルシフェラーゼ発現は、24時間後と比較して8時間後に高かった。
【0222】
図19は、MC3と比較して非ヒト霊長類において肝臓毒性がないことを示す。カニクイザル(1群当たりn=2、雄性)に対し、siNC5を有するMC3粒子(0.5mg/kg)及びsiNC5を有する脂質38ベースの粒子(0.5mg/kg)の単回静脈内投与(1mg/kg)を行った。投与から1時間後と24時間に、血清を採取し、ALT、ASTについて解析した(Roch Cobra Autoアナライザーによる)。各データ点は2匹の平均±SEMである。
【0223】
本発明を詳細に説明してきたが、当業者であれば多くの変更や修正が可能であることを理解するであろう。従って、本発明は詳細に説明された実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、本発明の範囲及び概念は、添付の特許請求の範囲を参照することによってより容易に理解されるであろう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19