(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチド合成用セグメントおよびその製造方法、ならびにそれを用いたオリゴヌクレオチドの合成方法
(51)【国際特許分類】
C07H 21/04 20060101AFI20220519BHJP
A61K 31/7088 20060101ALN20220519BHJP
A61K 48/00 20060101ALN20220519BHJP
【FI】
C07H21/04 Z
C07H21/04 A
A61K31/7088
A61K48/00
(21)【出願番号】P 2020517079
(86)(22)【出願日】2019-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2019018299
(87)【国際公開番号】W WO2019212061
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2018088912
(32)【優先日】2018-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518156680
【氏名又は名称】株式会社ナティアス
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】片岡 正典
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/111137(WO,A1)
【文献】国際公開第1996/016073(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/061115(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/024776(WO,A1)
【文献】特表平08-502642(JP,A)
【文献】JANCZYK,M. et al,A new and convenient approach for the preparation of β-cyanoethyl protected trinucleotide phosphora,Organic & Biomolecular Chemistry,2012年,Vol.10, No.8,pp.1510-1513
【文献】HASSLER,M. et al,RNA synthesis via dimer and trimer phosphoramidite block coupling,Tetrahedron Letters,2011年,Vol.52, No.20,pp.2575-2578
【文献】CHEN,C. et al,Convergent Solution Phase Synthesis of Chimeric Oligonucleotides by a 2+2 and 3+3 Phosphoramidite St,Australian Journal of Chemistry,2010年,Vol.63, No.2,pp.227-235
【文献】GAYTAN,P. et al,TrimerDimer: an oligonucleotide-based saturation mutagenesis approach that removes redundant and sto,Nucleic Acids Research,2009年,Vol.37, No.18,pp.e125/1-e125/13
【文献】LYTTLE,M.H. et al,Mutagenesis using trinucleotide β-cyanoethylphosphoramidites,BioTechniques,1995年,Vol.19, No.2,pp.274-8, 280-1
【文献】VIRNEKAES,B. et al,Trinucleotide phosphoramidites: ideal reagents for the synthesis of mixed oligonucleotides for rando,Nucleic Acids Research,1994年,Vol.22, No.25,pp.5600-5607
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 21/04
A61K 31/7088
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
(式中、
Bは、独立して、保護基によって保護された、または未保護ヌクレオシド塩基であり;
R
1は、保護基であり;
R
2、R
3、R
4は、独立して、OCH
2CH
2CN、SCH
2CH
2CN、OCH
2CH=CH
2、OCH
3であり;
R
5は、置換または未置換の脂肪族基、置換または未置換の芳香族基であり;
Xは、独立して、非共有電子対、=O、または=Sであ
って、少なくとも1つが非共有電子対であり;
Yは、独立して、H、NHR
6、ハロゲン、CN、CF
3、またはアシル系保護基、エーテル系保護基、シリル系保護基で保護された水酸基であり;
R
6は、H、脂肪族基、芳香族基であり;
Zは、独立して、H、アルキル、O-アルキル、N-アルキル、ハロゲンであるか、または、前記Yとの間でZ-Y結合を形成し;
(m+n)の値は、2以上23以下の整数である)
で表されるオリゴヌクレオチド合成用セグメント。
【請求項2】
前記式(I)において、前記Bが保護基によって保護されたヌクレオシド塩基であるとき、該保護基がアシル系保護基である、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド合成用セグメント。
【請求項3】
前記式(I)において、
前記R
1が、酸性条件下で除去可能な保護基またはトリアルキルシリル基であり、
前記YがHまたはt-ブチルジメチルシリル基で保護された水酸基であり、
前記ZがHであり、
前記R
5がイソプロピル基である、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド合成用セグメント。
【請求項4】
下記式(I):
【化2】
(式中、
Bは、独立して、保護基で保護された、または未保護ヌクレオシド塩基であり;
R
1は、保護基であり;
R
2、R
3、R
4は、独立して、OCH
2CH
2CN、SCH
2CH
2CN、OCH
2CH=CH
2、OCH
3であり;
R
5は、置換または未置換の脂肪族基、置換または未置換の芳香族基であり;
Xは、独立して、非共有電子対、=O、または=Sであ
って、少なくとも1つが非共有電子対であり;
Yは、独立して、H、NHR
6、ハロゲン、CN、CF
3、またはアシル系保護基、エーテル系保護基、シリル系保護基で保護された水酸基であり;
R
6は、H、脂肪族基、芳香族基であり;
Zは、独立して、H、アルキル、O-アルキル、N-アルキル、ハロゲンであるか、または、前記Yとの間でZ-Y結合を形成し;
(m+n)の値は、2以上23以下の整数である)
で表されるオリゴヌクレオチド合成用セグメントの製造方法であって、
(a)下記式(II):
【化3】
によって表されるヌクレオシドを、R
2P{N(R
5)
2}
2の構造を有する三価リン化合物、および、下記式(III):
【化4】
の構造を有するヌクレオシドと反応させ、下記式(IV):
【化5】
の構造を有する化合物を調製する工程と、
(b)前記式(IV)の構造を有する化合物を、R
3P{N(R
5)
2}
2の構造を有する三価リン化合物、および、上記式(III)の構造を有するヌクレオシド、または、下記式(V):
【化6】
の構造を有する化合物、または、下記式(VI):
【化7】
の構造を有する化合物と反応させ、下記式(VII):
【化8】
の構造を有する化合物を調製する工程と、
(c)必要に応じて、前記工程(b)を少なくとも1回繰り返す工程と、
(d)得られた中間体を、R
4P{N(R
5)
2}
2の構造を有する三価リン化合物と反応させ、前記式(I)の構造を有するセグメントを調製する工程と、を含む製造方法。
【請求項5】
前記式(I)において、前記Bが保護基で保護されたヌクレオシドであるとき、該保護基がアシル系保護基である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記式(I)において、
前記R
1が、酸性条件下で除去可能な保護基であり、
前記YがHまたはt-ブチルジメチルシリル基で保護された水酸基であり、
前記ZがHであり、
前記R
5がイソプロピル基である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
必要に応じて、前記工程(a)で得られた式(IV)で表わされる化合物、または前記工程(b)で得られた式(VII)で表わされる化合物に対して、酸化剤または硫化剤を反応させる工程を含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の式(I)で表されるオリゴヌクレオチド合成用セグメントを用いたオリゴヌクレオチドの合成方法であって、
(a)前記式(I)で表されるオリゴヌクレオチド合成用セグメントのアミダイト部分と、ヌクレオシドまたはヌクレオチドの水酸基との縮合工程と、
(b)前記縮合工程で得られた亜リン酸結合部分の酸化または硫化工程と、
(c)前記縮合工程でヌクレオシドまたはヌクレオチドと縮合された前記オリゴヌクレオチド合成用セグメントの末端保護基の脱保護工程と、
を含む合成方法。
【請求項9】
溶液中で前記各工程を行う、請求項8に記載の合成方法。
【請求項10】
固相担体上で前記各工程を行う、請求項8に記載の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴヌクレオチド合成用セグメントおよびその製造方法、ならびにそれを用いたオリゴヌクレオチドの合成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、天然型または非天然型オリゴヌクレオチドを基本骨格とする核酸医薬への注目度が高まっている。目的とした作用が得られるように設計した核酸医薬を得るためには、化学合成法による製造方法が用いられている。
【0003】
従来法によるオリゴヌクレオチド合成においては、モノマーアミダイトを原料とし、1塩基ずつ段階的にカップリング反応を行い、ヌクレオチドの長さを伸長していく方法が主として用いられている(非特許文献1参照)。オリゴヌクレオチド合成における1塩基ずつの伸長にあたっては、モノマーアミダイトとヌクレオシドの5´-水酸基とを反応させるカップリング反応に加えて、3価のリンを酸化または硫化する工程と、次のカップリング反応に備えてヌクレオシドの5´-水酸基の保護基を脱保護する工程が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Caruthersら,Bioactive Molecules,3,pp.3-21(1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来法で使用されている原料を用いた場合、上記オリゴヌクレオチド合成における各カップリング反応の収率は必ずしも100%には到達しない。このため、ある程度の長さを有するオリゴヌクレオチドを高効率で合成することは難しい。
【0006】
カップリング反応に続く酸化/硫化工程、脱保護工程もまた、必ずしも100%では進行しない。このため、目的とするオリゴヌクレオチドの長さが長くなるほど、目的とする長さを有するオリゴヌクレオチドの収率は低下していく。
【0007】
さらに、目的とする長さを有するオリゴヌクレオチドを最終的に得る段階では、上記のような各工程で生じた副生成物や試薬の残渣を除去する精製工程を行う必要がある。オリゴヌクレオチドN量体を合成する場合に生じる、1塩基ずつ伸長する合成方法における副生成物の代表的なものとして、カップリング工程で生じる、1塩基分だけ短い(N-1)量体、2塩基分だけ短い(N-2)量体等がある。このような(N-1)量体、(N-2)量体は、目的とするN量体と構造や物性が非常に類似している。このため、クロマトグラフィー等を用いてN量体を精製する段階で、目的とするN量体の移動度と、副生成物である(N-1)量体、(N-2)量体等の移動度との差が小さい。このことから、N量体とそれ以外とを正確に分離するための精製負荷が大きいという問題が存在する。
【0008】
また、汎用されているオリゴヌクレオチド合成では、固相担体に3´-末端を固定したヌクレオシドに対して5´-方向に鎖伸長を行う固相合成法が用いられている。この方法においては、固相合成に用いられるモノマーアミダイトの市販品を購入するか、実験者が自ら調製する必要がある。一般に、市販されているモノマーアミダイトは高価であり、目的とするオリゴヌクレオチドを大量に合成するための障害となっている。また、実験者が自ら調製する場合には、目的とするモノマーアミダイトを高純度かつ高収量で準備しておく必要がある。モノマーヌクレオチドが高純度でなければ、オリゴヌクレオチド合成におけるカップリング反応に影響を及ぼすおそれが高いためである。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、より簡便に精製でき、かつ、大量に供給することができるオリゴヌクレオチド合成用セグメントおよびその製造方法、ならびにそれを用いたオリゴヌクレオチドの合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のオリゴヌクレオチド合成用セグメントおよびその製造方法、ならびにそれを用いたオリゴヌクレオチドの合成方法は、以下の手段を採用する。
本発明の第1の態様は、下記式(I):
【化1】
で表されるオリゴヌクレオチド合成用セグメントである。
【0011】
前記式(I)中、Bは、独立して、保護または未保護ヌクレオシド塩基であり;R1は、保護基であり;R2、R3、R4は、独立して、OCH2CH2CN、SCH2CH2CN、OCH2CH=CH2、OCH3であり;R5は、置換または未置換の脂肪族基、置換または未置換の芳香族基であり;Xは、独立して、非共有電子対、=O、または=Sであり;Yは、独立して、H、NHR6、ハロゲン、CN、CF3またはアシル系保護基、エーテル系保護基、シリル系保護基で保護された水酸基であり;R6は、H、脂肪族基、芳香族基であり;Zは、独立して、H、アルキル、O-アルキル、N-アルキル、ハロゲンであるか、または、前記Yとの間でZ-Y結合を形成し;(m+n)の値は、2以上23以下の整数である。
【0012】
上記第1の態様においては、前記式(I)におけるBが保護基によって保護されたヌクレオシド塩基であるとき、該保護基がアシル系保護基であってもよい。
【0013】
上記第1の態様においては、前記式(I)において、前記R1が、酸性条件下で除去可能な保護基またはトリアルキルシリル基であり、前記Yが好ましくはHまたはt-ブチルジメチルシリル基で保護された水酸基であり、前記Zが好ましくはHであり、前記R5がイソプロピル基であってもよい。
【0014】
本発明の第2の態様は、下記式(I):
【化2】
で表されるオリゴヌクレオチド合成用セグメントの製造方法である。
【0015】
前記式(I)中、Bは、独立して、保護または未保護ヌクレオシド塩基であり;R1は、保護基であり;R2、R3、R4は、独立して、OCH2CH2CN、SCH2CH2CN、OCH2CH=CH2、OCH3であり;R5は、置換または未置換の脂肪族基、置換または未置換の芳香族基であり;Xは、独立して、非共有電子対、=O、または=Sであり;Yは、独立して、H、NHR6、ハロゲン、CN、CF3またはアシル系保護基、エーテル系保護基、シリル系保護基で保護された水酸基であり;R6は、H、脂肪族基、芳香族基であり;Zは、独立して、H、アルキル、O-アルキル、N-アルキル、ハロゲンであるか、または、前記Yとの間でZ-Y結合を形成し;(m+n)の値は、2以上23以下の整数である。
【0016】
前記製造方法は、
(a)下記式(II):
【化3】
によって表されるヌクレオシドを、R
2P{N(R
5)
2}
2の構造を有する三価リン化合物、および、下記式(III):
【化4】
の構造を有するヌクレオシドと反応させ、下記式(IV):
【化5】
の構造を有する化合物を調製する工程と、
(b)前記式(IV)の構造を有する化合物を、R
3P{N(R
5)
2}
2の構造を有する三価リン化合物、および、上記式(III)の構造を有するヌクレオシド、または、下記式(V):
【化6】
の構造を有する化合物、または、下記式(VI):
【化7】
の構造を有する化合物と反応させ、下記式(VII):
【化8】
の構造を有する化合物を調製する工程と、
(c)必要に応じて、前記工程(b)を少なくとも1回繰り返す工程と、
(d)得られた中間体を、R
4P{N(R
5)
2}
2の構造を有する三価リン化合物と反応させ、前記式(I)の構造を有するセグメントを調製する工程と、を含む。
【0017】
上記第2の態様において、前記式(I)におけるBが保護基によって保護されたヌクレオシドであるとき、該保護基がアシル系保護基であってもよい。
【0018】
前記第2の態様において、前記式(I)において、前記R1が、酸性条件下で除去可能な保護基またはトリアルキルシリル基であり、前記Yが好ましくはHまたはt-ブチルジメチルシリル基で保護された水酸基であり、前記Zが好ましくはHであり、前記R5がイソプロピル基であってもよい。
【0019】
上記第2の態様において、必要に応じて、前記工程(a)で得られた式(IV)で表わされる化合物、または前記工程(b)で得られた式(VII)で表わされる化合物に対して、酸化剤または硫化剤を反応させる工程を含んでもよい。
【0020】
本発明の第3の態様は、上記式(I)で表されるオリゴヌクレオチド合成用セグメントを用いたオリゴヌクレオチドの合成方法である。
【0021】
前記合成方法は、(a)前記式(I)で表されるオリゴヌクレオチド合成用セグメントのアミダイト部分と、ヌクレオシドまたはヌクレオチドの水酸基との縮合工程と、(b)前記縮合工程で得られた亜リン酸結合部分の酸化工程と、(c)前記縮合工程でヌクレオシドまたはヌクレオチドと縮合された前記オリゴヌクレオチド合成用セグメントの末端保護基の脱保護工程と、を含む。
【0022】
上記第3の態様においては、溶液中で前記各工程を行ってもよい。
【0023】
上記第3の態様においては、固相担体上で前記各工程を行ってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明のオリゴヌクレオチド合成用セグメントによれば、汎用されているモノマーのアミダイトを用いて段階的にオリゴヌクレオチドを合成する場合と比べて、工程数を減らすことができる。このため、目的とする長さのオリゴヌクレオチドの収率を従来法での収率よりも向上することができる。
【0025】
さらに、本発明のオリゴヌクレオチド合成用セグメントを用いてN量体のオリゴヌクレオチドを合成する場合、N-1~N-3の長さを有する副生成物が生じない。このため、目的とするN量体のオリゴヌクレオチドの精製負荷を小さくすることができることで、より簡便に精製することができ、かつ、より大量に目的物を供給することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例1で得られたオリゴヌクレオチド合成用セグメントであるdT3量体アミダイトのESI-MSスペクトルを表した図である。
【
図2】実施例1で得られたオリゴヌクレオチド合成用セグメントであるdT3量体アミダイトの
31P NMRスペクトルを表した図である。
【
図3】実施例1で得られたオリゴヌクレオチド合成用セグメントを用いて合成したオリゴチミジン18量体のLCスペクトルを表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係るオリゴヌクレオチド合成用セグメントを得るための一実施形態について説明する。
本実施形態におけるオリゴヌクレオチド合成用セグメントは、下記式(I):
【化9】
で表される構造を有する。
前記式(I)中、Bは、独立して、保護または未保護ヌクレオシド塩基であり;R
1は、保護基であり;R
2、R
3、R
4は、独立して、OCH
2CH
2CN、SCH
2CH
2CN、OCH
2CH=CH
2、OCH
3であり;R
5は、置換または未置換の脂肪族基、置換または未置換の芳香族基であり;Xは、独立して、非共有電子対、=O、または=Sであり;Yは、独立して、H、NHR
6、ハロゲン、CN、CF
3またはアシル系保護基、エーテル系保護基、シリル系保護基で保護された水酸基であり;R
6は、H、脂肪族基、芳香族基であり;Zは、独立して、H、アルキル、O-アルキル、N-アルキル、ハロゲンであるか、または、前記Yとの間でZ-Y結合を形成し;(m+n)の値は、2以上23以下の整数である。
【0028】
本実施形態におけるオリゴヌクレオチド合成用セグメントは、(1)5´-水酸基および必要に応じてヌクレオシド塩基部分を保護基で保護し、3´-水酸基を無保護としたヌクレオシド(以下、「5´-保護・3´-無保護ヌクレオシド」という)を出発物質として、3´-水酸基にリン酸化を行って3´-ホスホロアミダイトを反応系中で中間体として得、(2)得られた中間体と、必要に応じてヌクレオシド塩基部分を保護基で保護し、その一方で3´-水酸基と5´-水酸基の両方を無保護としたヌクレオシド(以下、「3´,5´-無保護ヌクレオシド」という)の5´-水酸基との反応を行い、3´-末端に残っている無保護の3´-水酸基を3価のリン酸化剤と反応させて、ホスホロアミダイト化することで得られる。(2)を必要回数(n回)繰り返すことで(n+1)量体ヌクレオチドホスホロアミダイトが合成される。
【0029】
これに対し、従来法でヌクレオチド2量体や3量体を合成する場合には、5´-保護・3´-無保護ヌクレオシドに対して、3´-水酸基を保護する反応を行い、その後で5´-水酸基の保護基のみを除去する反応を行って、3´-水酸基および必要に応じてヌクレオシド塩基部分を保護基で保護し、5´-水酸基を無保護としたヌクレオシド(以下、「5´-無保護・3´-保護ヌクレオシド」という)を予め調製しておく必要があった。これに対して本実施形態では、従来法よりも保護基が一つ少ない、5´-水酸基と3´-水酸基の両方を無保護としたヌクレオシドをセグメント合成に用いることができる。このため、セグメント合成の主要原料の一つである、3´,5´-無保護ヌクレオシドを、従来法に比して少ない工程数で調製することができることで、低コスト・短時間でより大量に合成することができる。
【0030】
本実施形態におけるヌクレオシド塩基は、アデニル基、グアニル基、シトシニル基、チミニル基、ウラシル基などの天然型塩基、5-メチルシトシニル基、5-フルオロウラシル基、7-メチルグアニル基、7-デアザアデニル基などの修飾塩基を含む。これらのヌクレオシド塩基中のアミノ基は、ベンジル系保護基、アリル系保護基、カルバメート系保護基、アシル系保護基を含む。好ましくは、アセチル基、ベンゾイル基、フェノキシアセチル基、イソプロピルカルボニル基などのアシル系保護基を用いる。
【0031】
本実施形態における脂肪族基は、飽和または不飽和の、直鎖状または分岐しているC1-C18炭化水素、飽和または不飽和の環状C3-C18炭化水素を含む。好ましくは、飽和または不飽和の、C1-C8炭化水素またはC3-C8環状炭化水素である。本実施形態における芳香族基は、フェニル基などの炭素環式芳香環、ナフチル基などの炭素環式芳香環または非炭素式芳香環に縮合した炭素環式芳香環を含む。本実施形態における脂肪族基、芳香族基は、飽和または不飽和の、C1-C8炭化水素またはC3-C8環状炭化水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、芳香環などの置換基で置換されていてもよい。
【0032】
本実施形態における5´-、3´-または2´-水酸基の保護基は、酸性条件下で除去可能な保護基、アシル系保護基、シリル系保護基を含む。酸性条件下で除去可能な保護基は、置換または未置換のトリチル基を含むエーテル系保護基、ピキシル基、置換または未置換のテトラヒドロピラニル(THP)基を含み、代表的な保護基として4,4´-ジメトキシトリチル基がある。シリル系保護基は、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基を含む。アシル系保護基は、アセチル基、ベンゾイル基を含む。また、4´-位と2´-位とを架橋するように結合したヌクレオシドを原料として用いることもできる。この場合、4´-位と2´-位とは、(4´-位)-L-O-(2´-位)という結合を形成することができ、Lの例としてC1-C6アルキレン基(途中の炭素原子が、酸素原子、アルキル基が結合した窒素原子と置換されていてもよい)がある。
【0033】
上記工程(1)では、5´-保護・3´-無保護ヌクレオシドの3´-水酸基を、3価のリン酸化剤と反応させて3´-ホスホロアミダイトを系中で生成させた後、得られた3´-ホスホロアミダイトを単離精製することなく、アミダイト部分を活性化する活性化剤を添加した後、3´,5´-無保護ヌクレオシドと反応させることで、1塩基分の伸長を行う。さらに3価のリン酸化剤と反応させて3´-ホスホロアミダイトを生成させる。3価のリン酸化剤の代表的なものとしては、NCCH2CH2OP[N(i-C3H7)2]2、CH2=CHCH2OP[N(i-C3H7)2]2があるが、これらに限定されない。活性化剤の代表的なものとしては、1H-テトラゾール、S-エチルチオ-1H-テトラゾール、ジシアノイミダゾールや、スルホン酸とアゾールまたは3級アミンの塩があるが、これらに限定されない。反応は、ジクロロメタン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、DMF、トルエン等の溶媒を乾燥させたものの中で行う。
【0034】
上記工程(1)においては、5´-保護・3´-無保護ヌクレオシドの溶液(0.2~0.4M)に、3価のリン酸化剤(5´-保護・3´-無保護ヌクレオシドの1.05~1.2当量)および活性化剤(5´-保護・3´-無保護ヌクレオシドの0.4~0.7当量)を加え、室温で2~5時間攪拌する。得られた3´-ホスホロアミダイトをシリカゲル精製後、続く工程(2)を行う。
【0035】
上記工程(2)では、上記工程(1)で得られた3´-ホスホロアミダイトに、3´,5´-無保護ヌクレオシド(5´-保護・3´-無保護ヌクレオシドの1.3~2.0当量)および活性化剤(5´-保護・3´-無保護ヌクレオシドの2~3当量)を加え、室温で0.5~1.5時間反応させ、シリカゲル濾過とろ液の濃縮を経て、1塩基分伸長した、3´-末端に無保護水酸基を有するヌクレオチド中間体を得る。収率は、約60~95%である。このヌクレオチド中間体の溶液(0.05~0.4M)に対して、3価のリン酸化剤(5´-保護・3´-無保護ヌクレオシドの1.2~2.0当量)および活性化剤(5´-保護・3´-無保護ヌクレオチドの0.5~1.0当量)と反応させて3量体ヌクレオチド3´-ホスホロアミダイトが得られる。必要に応じて、さらに工程(2)を行うことで、4量体以上のヌクレオチドが得られる。4量体以上のセグメントを合成する場合には、1塩基ずつ伸張させていく方法の別法として、既に2量体以上となっているセグメントどうしを縮合させることで、2以上の塩基分を一度に伸張させることもできる。
【0036】
上記式(I)で表されるオリゴヌクレオチド合成用セグメントを用いたオリゴヌクレオチドの合成は、溶液中で行う(以下、「液相合成法」という)ことができ、また固相担体上で行う(以下、「固相合成法」という)こともできる。液相合成法で合成を行う場合には、反応溶媒に対する溶解性を高めるために3´末端側のヌクレオシドの3´-水酸基にシリル系の保護基、または脂肪族を含む保護基を導入したものを用い、そのものに対して(a)前記式(I)で表されるオリゴヌクレオチド合成用セグメントとの縮合工程と、(b)前記縮合工程で得られた亜リン酸結合部分の酸化または硫化工程と、(c)前記縮合工程でヌクレオシドまたはヌクレオチドと縮合された前記オリゴヌクレオチド合成用セグメントの末端保護基の脱保護工程を繰り返す。固相合成法で合成を行う場合には、(a)前記式(I)で表されるオリゴヌクレオチド合成用セグメントとの縮合工程と、(b)固相担体上のヌクレオシドまたはヌクレオチドの未反応の5´-水酸基のキャッピング工程と、(c)前記縮合工程で得られた亜リン酸結合部分の酸化工程と、(d)前記縮合工程でヌクレオシドまたはヌクレオチドと縮合された前記オリゴヌクレオチド合成用セグメントの末端保護基の脱保護工程を繰り返す。両方法とも、その後の塩基性条件での処理により、目的のオリゴヌクレオチドを得ることができる。
【0037】
具体的には、液相合成法、固相合成法のどちらを用いる場合も、オリゴヌクレオチド合成の第1段階として、上記式(I)で表されるオリゴヌクレオチド合成用セグメントの3´-末端アミダイトを活性化剤で活性化し、5´-水酸基を無保護としたヌクレオシドまたはヌクレオチドと縮合させる反応を行う。活性化剤としては、汎用されている3価のリンを活性化させる活性化剤を用いることができ、例えば1H-テトラゾール、S-エチルチオ-1H-テトラゾール、ジシアノイミダゾールや、スルホン酸とアゾールまたは3級アミンからなる塩があるが、これらに限定されない。本縮合反応に必要な時間は、一般的に1分~30分程度であり、反応を行うスケールに依存する。
【0038】
次に、オリゴヌクレオチド合成の第2段階として、上記縮合反応で得られた中間体を、酸化剤または硫化剤と反応させて、5価のホスフェートまたはチオホスフェートヌクレオチドを得る。
【0039】
次いで、オリゴヌクレオチド合成の第3段階として、上記酸化または硫化反応で得られた中間体を、無水の酸性溶液と反応させて、5´-水酸基無保護ヌクレオチドを得る。
【0040】
本実施形態におけるオリゴヌクレオチド合成用セグメントを用いて合成したオリゴヌクレオチド中の、ヌクレオシド塩基の保護基、5´-、3´-または2´-水酸基の保護基、リン酸結合中のリン酸の保護基は、用いられている保護基に対応した脱保護条件下で脱保護される。
【0041】
以下の実施例は、本発明の一実施形態を説明し、例示するものである。実施例1および実施例2に示す手順に従い、上記式(I)で表されるオリゴヌクレオチド合成用セグメントの一つである4量体ホスホロアミダイトを合成した。また、実施例3に示す手順に従い、上記式(I)で表されるオリゴヌクレオチド合成用セグメントの一つである5量体ホスホロアミダイトを合成した。さらに、実施例4に示す手順に従い、上記式(I)で表される化合物の一例である3量体ホスホロアミダイトを用いてオリゴヌクレオチド18量体を合成した。
【0042】
〔実施例1〕4量体ホスホロアミダイト(3)の合成
(ステップ1:DMTr-T
p(OCH2CH2CN)T
(OCH2CH2CN)(N(i-C3H7)2)(1)の合成)
【化10】
【0043】
5´-O-DMTrチミジン(16.3g、30.0mmol)のジクロロメタン溶液(90mL)に、アミダイト化試薬NCCH2CH2OP[N(i-C3H7)2]2(10.5mL、33.0mmol)、ジイソプロピルアミン(2.12mL、15.0mmol)、1H-テトラゾール(1.05g、15.0mmol)をこの順に室温で加えた。室温で3時間撹拌した後、反応液をチミジン(10.9g、45.0mmol)および1H-テトラゾール(5.25g、75.0mmol)のジメチルホルムアミド(DMF)溶液(90mL)に加え、室温で1時間撹拌した。反応溶液に180mLのジクロロメタンを加えた後、340gのシリカゲルに供して、ジクロロメタンで洗浄した。得られたろ液を、減圧下で濃縮することにより中間体を得た。中間体をジクロロメタン(180mL)に溶解した後、アミダイト化試薬NCCH2CH2OP[N(i-C3H7)2]2(12.4mL、39.0mmol)、1H-テトラゾール(1.05g、15.0mmol)をこの順に室温で加えた。室温で3時間撹拌した後、ジクロロメタン-IPAを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のホスホロアミダイト1を得た(24.2g、収率74.4%)。
MS:1108.4(MNa+)
【0044】
(ステップ2:DMTr-T
p(OCH2CH2CN)T
p(OCH2CH2CN)T
(OCH2CH2CN)(N(i-C3H7)2)(2)の合成)
【化11】
【0045】
上記ホスホロアミダイト1(10.0g、9.21mmol)のジクロロメタン溶液(23mL)を、チミジン(2.90g、12.0mmol)および1H-テトラゾール(1.94g、27.6mmol)のDMF溶液(30mL)に滴下し、室温で1時間撹拌した。反応溶液にジクロロメタン(46mL)を加えた後、340gのシリカゲルに供して、ジクロロメタンで洗浄した。濾液を濃縮後ジクロロメタン溶液(81mL)に溶解し、アミダイト化試薬NCCH
2CH
2OP[N(i-C
3H
7)
2]
2(3.19mL、10.6mmol)、1H-テトラゾール(0.4g、5.70mmol)をこの順に室温で加えた。室温で3時間撹拌した後、ジクロロメタン(163mL)に溶解した後、ジクロロメタン-IPAを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のホスホロアミダイト2を得た(9.65g、収率73.4%)。得られたホスホロアミダイト2のESI-MSスペクトルを
図1に、
31P NMRスペクトルを
図2に、それぞれ示した。
MS:1448.5(MNa
+)
【0046】
(ステップ3:DMTr-T
p(OCH2CH2CN)T
p(OCH2CH2CN)T
p(OCH2CH2CN)T
p(OCH2CH2CN)(N(i-C3H7)2)(3)の合成)
【化12】
【0047】
上記ホスホロアミダイト2(10.0g、7.01mmol)のジクロロメタン溶液(70mL)を、チミジン(2.21g、9.11mmol)および1H-テトラゾール(1.47g、21.2mmol)のDMF溶液(90mL)に加え、室温で1時間撹拌した。反応溶液にジクロロメタン(140mL)を加えたのち、340gのシリカゲルに供して、ジクロロメタンで洗浄した。濾液を濃縮後ジクロロメタン溶液(70mL)に溶解し、アミダイト化試薬NCCH2CH2OP[N(i-C3H7)2]2(2.89mL、9.11mmol)、1H-テトラゾール(0.340g、4.90mmol)をこの順に室温で加えた。室温で3時間撹拌した後、ジクロロメタン(140mL)に溶解した後、ジクロロメタン-IPAを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の4量体ホスホロアミダイト3を得た(9.40g、収率75.9%)。
MS:1791.6(MNa+)
【0048】
〔実施例2〕4量体ホスホロアミダイト(6)の合成
(ステップ4:DMTr-T
p(OCH2CH2CN)C
(OCH2CH2CN)(N(i-C3H7)2)(4)の合成)
【化13】
【0049】
5´-O-DMTrチミジン(16.3g、30.0mmol)のジクロロメタン溶液(90mL)に、アミダイト化試薬NCCH2CH2OP[N(i-C3H7)2]2(10.5mL、33.0mmol)、ジイソプロピルアミン(2.12mL、15.0mmol)、1H-テトラゾール(1.05g、15.0mmol)をこの順に室温で加えた。室温で3時間撹拌した後、反応液をN4-ベンゾイルシチジン(12.9g、39.0mmol)および1H-テトラゾール(6.31g、90.0mmol)のDMF溶液(90mL)に加え、室温で1時間撹拌した。反応溶液に180mLのジクロロメタンを加えた後、アミダイト化試薬NCCH2CH2OP[N(i-C3H7)2]2(12.4mL、39.0mmol)、1H-テトラゾール(1.05g、15.0mmol)をこの順に室温で加えた。室温で3時間撹拌した後、340gのシリカゲルに供して、ジクロロメタンで洗浄した。得られたろ液を、減圧下で濃縮することにより中間体を得た(収率70-90%)。中間体をジクロロメタン(180mL)に溶解した後、ジクロロメタン-IPAを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のホスホロアミダイト4を得た(27.1g、収率77.0%)。
MS:1197.4(MNa+)
【0050】
(ステップ5:dG
p(OCH2CH2CN)T(5)の合成)
【化14】
【0051】
2-シアノエチル5´-O-DMTr-N2-イソブチリル-グアノシン3´-(N,N´-ジイソプロピル)ホスホロアミダイト(30.0g、35.7mmol)とチミジン(11.2g、46.4mmol)のジクロロメタン溶液(180mL)に1H-テトラゾール(7.50g、107mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応溶液にフェニルアセチルジスルフィド(32.4g、107mmol)を加え、さらに1時間撹拌した。180mLのジクロロメタンを加えた後、340gのシリカゲルに供して、ジクロロメタンで洗浄した。得られたろ液を、減圧下で濃縮することにより生成物を得た(収率70-90%)。ジクロロメタン(180mL)に溶解した後、ジクロロメタン-IPAを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、中間体を得た(収率70-90%)。中間体(15g、15.3mmol)に3%ジクロロ酢酸ジクロロメタン溶液を0℃下1000mL加え、室温で30分撹拌した。反応液を1500gのシリカゲルに供して、酢酸エチルで洗浄した。さらに、ジクロロメタン-IPAを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の2量体5を得た(22.1g、収率87.3%)。
MS:723.2(MNa+)
【0052】
(ステップ6:DMTr-T
p(OCH2CH2CN)C
(OCH2CH2CN)G
p(OCH2CH2CN)T
(OCH2CH2CN)(N(i-C3H7)2)(6)の合成)
【化15】
【0053】
前記化合物4(10.0g、8.51mmol)のジクロロメタン溶液(50mL)を、前記化合物5(7.26g、10.2mmol)および1H-テトラゾール(1.79g、25.5mmol)のDMF溶液(45mL)に滴下し、室温で1時間撹拌した。反応溶液にジクロロメタン(90mL)を加えたのち、340gのシリカゲルに供して、ジクロロメタンで洗浄した。ろ液を濃縮後ジクロロメタン溶液(85mL)に溶解し、アミダイト化試薬NCCH2CH2OP[N(i-C3H7)2]2(3.19mL、10.6mmol)、1H-テトラゾール(0.420g、5.96mmol)をこの順に室温で加えた。室温で3時間撹拌した後、ジクロロメタン(170mL)に溶解した後、ジクロロメタン-IPAを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のホスホロアミダイト6を得た(9.42g、収率63.1%)。
MS:1974.6(MNa+)
【0054】
〔実施例3〕5量体アミダイト(15)の合成
(ステップ7:DMTr-A
Bz
p(OCH2CH=CH2)(8)の合成)
【化16】
【0055】
5´-O-DMTr-N-5-ベンゾイル2´-デオキシアデノシン(7)(3.3g、5.0mmol)のジクロロメタン―アセトニトリル(1:1)溶液(20mL)に、アミダイト化試薬CH2=CHCH2OP[N(i-C3H7)2]2(2.3mL、7.5mmol)、1H-テトラゾール(0.25g、3.5mmol)を0℃下で2回に分けて加えた。室温で12時間撹拌した後、ジクロロメタン(60mL)を加え、ヘキサン―酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のホスホロアミダイト8を得た(4.0g、収率94%)。
【0056】
(ステップ8:3´-TBS-T(9)の合成)
【化17】
【0057】
チミジン(10g、41mmol)のDMF溶液(200mL)に、イミダゾール(33、500mmol)、塩化tert-ブチルジメチルシリル(25g、170mmol)を2回に分けて加えた。室温で3時間撹拌した後、反応液にメタノール5mLを加え、蒸留水(1000mL)に滴下した。残渣をろ別したのち、THFに溶解した。トリフルオロ酢酸(40mL)および蒸留水(40mL)を0℃で加え、1時間撹拌した。反応液を蒸留水(500mL)に滴下し、ジクロロメタン(500mL)で抽出した。得られた粗生成物をヘキサン―酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の3´-保護チミジン9を得た(13g、収率88%)。
【0058】
(ステップ9:T
p(OCH2CH=CH2)T
OTBS(10)の合成)
【化18】
【0059】
ホスホロアミダイト単量体8(1.3g、1.0mmol)および3´-保護チミジン9(0.36g、1.0mmol)のジクロロメタン―アセトニトリル溶液(1:1、10mL)に、5-エチルチオ-1H-テトラゾール(0.62g、4.0mmol)を加えた。室温で30分撹拌した後、TBHP(tert-ブチルヒドロペルオキシド)のデカン溶液(0.60mL、3.0mmol)を加え、さらに室温で30分撹拌した。反応液を濃縮後、得られた粗生成物を3%ジクロロ酢酸のジクロロメタン溶液(20mL)で室温15分処理した後、反応液をジクロロメタン―メタノールを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の5´-無保護dAT2量体10を得た(0.65g、収率58%)。
【0060】
(ステップ10:DMTr-A
Bz
p(OCH2CH=CH2)A
Bz
p(OCH2CH=CH2)T
OTBS(11)の合成)
【化19】
【0061】
ホスホロアミダイト単量体8(0.83g、0.99mmol)および5´-無保護dAT2量体10(0.62g、0.76mmol)のジクロロメタン―アセトニトリル溶液(10mL)に、5-エチルチオ-1H-テトラゾール(0.47g、3.0mmol)を加えた。室温で30分撹拌した後、TBHPのデカン溶液(0.46mL、2.3mmol)を加え、さらに室温で30分撹拌した。反応液を濃縮後、得られた粗生成物をジクロロメタン―メタノールを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の5´-DMTr-dAAT3量体11を得た(0.65g、収率58%)。
【0062】
(ステップ11:DMTr-A
Bz
p(OCH2CH=CH2)A
Bz
p(OCH2CH=CH2)T
(OCH2CH=CH2)(N(i-C3H7)2)(12)の合成
【化20】
【0063】
5´-DMTr-dAAT3量体11(0.94g、0.60mmol)に、フッ化テトラブチルアンモニウムのTHF溶液(1.2mL、1.2mmol)を0℃で加えた。4時間撹拌した後、反応液を濃縮し、得られた粗生成物をジクロロメタン―メタノールを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空下1晩乾燥した。この中間体の一部0.71g、0.49mmol)を使用し、ジクロロメタン―アセトニトリル溶液(5.0mL)とした後に、アミダイト化試薬CH2=CHCH2OP[N(i-C3H7)2]2(0.21mL、0.74mmol)、1H-テトラゾール(0.024g、0.34mmol)を0℃下で2回に分けて加えた。室温で12時間撹拌した後、ジクロロメタン(5.0mL)を加え、ヘキサン―酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の5´-DMTr保護3量体ホスホロアミダイト12を得た(0.39g、通算収率66%)。
【0064】
(ステップ12:DMTr-A
Bz
p(OCH2CH=CH2)A
Bz
p(OCH2CH=CH2)A
Bz
p(OCH2CH=CH2)T
OTBS(13)の合成
【化21】
【0065】
5´-DMTr保護ホスホロアミダイト3量体12(0.54g、0.33mmol)および5´-無保護二量体10(0.24g、0.30mmol)のジクロロメタン―アセトニトリル溶液(6mL)に、5-エチルチオ-1H-テトラゾール(0.19g、1.2mmol)を加えた。室温で90分撹拌した後、TBHPのデカン溶液(0.20mL、0.9mmol)を加え、さらに室温で30分撹拌した。反応液を濃縮後、得られた粗生成物をジクロロメタン―メタノールを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の5´,3´-保護dAATAT5量体13を得た(0.67g、収率94%)。
【0066】
(ステップ13:DMTr-A
Bz
p(OCH2CH=CH2)A
Bz
p(OCH2CH=CH2)A
Bz
p(OCH2CH=CH2)T
OH(14)の合成)
【化22】
【0067】
5´,3´-保護dAATAT5量体13(0.67g、0.28mmol)に、フッ化テトラブチルアンモニウムのTHF溶液を(0.56mL、0.56mmol)を0℃で加えた。4時間撹拌した後、反応液を濃縮し、得られた粗生成物をジクロロメタン―メタノールを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の5´-保護3´-無保護5量体14を得た(0.51g、通算収率80%)。
【0068】
(ステップ14:DMTr-A
Bz
p(OCH2CH=CH2)A
Bz
p(OCH2CH=CH2)A
Bz
p(OCH2CH=CH2)T
(OCH2CH=CH2)(N(i-C3H7)2)(15)の合成)
【化23】
【0069】
5´-保護3´-無保護dAATAT5量体14(0.46g、0.21mmol)のジクロロメタン―アセトニトリル溶液(2.0mL)に、アミダイト化試薬CH2=CHCH2OP[N(i-C3H7)2]2(0.89μL、0.31mmol)、1H-テトラゾール(0.010g、0.14mmol)を0℃下で2回に分けて加えた。室温で12時間撹拌した後、ジクロロメタン(5.0mL)を加え、ヘキサン―酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の5量体ホスホロアミダイト15を得た(0.41g、通算収率81%)。
【0070】
〔実施例4〕
(dT18の固相合成)
NTS社のM-2-MXオリゴヌクレオチド固相合成装置において、実施例1で得られた合成セグメント(4量体ホスホロアミダイト)3を用い、ChemGene社のユニバーサルリンカーCPG1000Å(1.0μmol)を出発物質として下記のプロトコールでオリゴヌクレオチド(dT18量体)を合成した。
合成サイクル:
(縮合)0.1M4量体ホスホロアミダイト3/アセトニトリル溶液(14.4μL)
0.25M5-ベンジルチオテトラゾール/アセトニトリル溶液(24.8μL)
反応時間:2分
(キャッピング)10%無水酢酸/THF溶液(320μL)
0.2MN-メチルイミダゾール/アセトニトリル溶液
反応時間:1分
(酸化)0.05Mヨウ素/水/ピリジン溶液(320μL)
(脱トリチル化)10%ジクロロ酢酸/トルエン溶液(765μL)
反応時間:2分
(切り出し・脱保護)濃アンモニア水
反応時間:60分、室温
【0071】
得られたdT18量体のLCスペクトルを
図3に示した。
【0072】
以上から、本実施形態のオリゴヌクレオチド合成用セグメントによれば、オリゴヌクレオチド合成において、ヌクレオシド3量体以上の長さのアミダイトを用いることができる。このため、目的とする長さがN量体であるオリゴヌクレオチドの合成の場合には、汎用されているオリゴヌクレオチド合成のモノマーアミダイトのカップリング工程で生じる、1塩基分だけ短い(N-1)量体、2塩基分だけ短い(N-2)量体等が生じ得ない。したがって、オリゴヌクレオチド合成の最終段階で、クロマトグラフィー等を用いてN量体を精製する際に、目的とするN量体の移動度と、(N-3)量体以下の長さの副生成物の移動度との差が大きいことから、N量体とそれ以外とを分離するための精製負荷を小さくすることができる。
【0073】
また、本実施形態のオリゴヌクレオチド合成用セグメントによれば、同じN量体のオリゴヌクレオチドを合成するにあたって、従来法である1塩基ずつ伸長を行う方法と比べて、必要となる工程数を減らすことができる。したがって、目的とする長さのオリゴヌクレオチドの収率を向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態のオリゴヌクレオチド合成用セグメントの製造にあたっては、セグメントの段階で部分的に酸化/硫化した5価のリン酸結合部分を形成しておくことができる。したがって、オリゴヌクレオチド中の一部のリン酸結合のみを他の部分のリン酸結合と異なる酸化/硫化状態とする場合においても、オリゴヌクレオチド合成の手順を変えることなく、より簡便に、目的とする修飾されたリン酸結合部分を含むオリゴヌクレオチドを合成することができる。
【0075】
さらに、本実施形態のオリゴヌクレオチド合成用セグメントの製造方法においては、5´-水酸基のみ保護したヌクレオシド、または5´-水酸基、3´-水酸基をともに未保護としたヌクレオシドと、アミダイト調製用のリン酸化剤とを直接反応させる。このため、モノマーの3´-アミダイトの市販品を購入したり、予め調製しておく必要が無い。したがって、所望のオリゴヌクレオチド合成用セグメントを従来法と比べて大量に製造することが可能となる。
【0076】
また、本実施形態のオリゴヌクレオチド合成用セグメントは、比較的短鎖のオリゴヌクレオチドを液相合成法で大量に合成する場合に用いることができるとともに、固相合成法による長鎖のオリゴヌクレオチド合成にも用いることができる。したがって、N-1やN-2の長さを有する副生成物が生じないことから、特に長鎖のN量体オリゴヌクレオチドを合成した後の精製負荷を小さくすることができ、より簡便な精製で目的とするN量体オリゴヌクレオチドを得ることができる。