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特許7075687色変換システム、色変換装置及び色変換方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】色変換システム、色変換装置及び色変換方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/60 20060101AFI20220519BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20220519BHJP
   H04N 1/407 20060101ALI20220519BHJP
   G01J 3/46 20060101ALI20220519BHJP
   G01J 3/52 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
H04N1/60 830
H04N1/60 160
H04N1/60 970
G06T1/00 510
H04N1/407
H04N1/407 780
G01J3/46 Z
G01J3/52
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021104039
(22)【出願日】2021-06-23
(62)【分割の表示】P 2018525320の分割
【原出願日】2017-06-30
(65)【公開番号】P2021166393
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2016130685
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596115698
【氏名又は名称】株式会社プロスパークリエイティブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】木島 明良
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0044540(US,A1)
【文献】特開2006-254371(JP,A)
【文献】特開2007-110651(JP,A)
【文献】特開2006-186846(JP,A)
【文献】特開2016-048904(JP,A)
【文献】特開2009-200820(JP,A)
【文献】特開2015-139179(JP,A)
【文献】特開2007-074521(JP,A)
【文献】特開2005-141676(JP,A)
【文献】特開2001-320596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0204084(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/46-62
G06T 1/00
H04N 1/40
G01J 3/46
G01J 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力機器で対象物を測色したときに、前記入力機器から出力される第1の色空間で表現された機器依存の第1の測色値を、基準となる専用測色機器で前記対象物を測色したときに、前記専用測色機器から出力される第2の色空間で表現された機器に依存しない第2の測色値に変換する色変換装置であって、
前記入力機器から出力される前記第1の測色値を、前記第2の色空間で表現された機器依存の第3の測色値に変換する第1の色変換部と、
第1の色域の色パッチを有する第1の色チャートを前記入力機器で測色し前記第1の色変換部で変換して得られた前記各色パッチの前記第3の測値と前記色パッチのIDとを対応付けた第1測色値テーブルと、
前記第1の色域の色パッチと同等又はそれより多数の色を含む第2の色域を有する第2の色チャートを前記専用測色機で測色して得られた前記各色パッチの第2の測色値と前記色パッチのIDとを対応付けた第2測色値テーブルと、
前記入力機器から出力された前記第1の測色値を前記第1の色変換部で変換して得られた前記第3の測色値を入力し、前記第3の測色値から前記第1測色値テーブルの色パッチのIDを特定し、前記特定された色パッチのIDから前記第2測色値テーブルを参照して前記第2の測色値を求める色空間変換部と
を備えた色変換装置。
【請求項2】
前記入力機器は、RGBスキャナ、RGBカメラ、4Kカメラ、8Kカメラ、4Kビデオカメラ又は8Kビデオカメラである
請求項1記載の色変換装置。
【請求項3】
前記専用測色機は、分光光度計、分光測色計、積分球分光測色計、又はCIEXYZ入力機である
請求項1又は2記載の色変換装置。
【請求項4】
前記第1の色空間は、RGB色空間である
請求項1~3のいずれか1項記載の色変換装置。
【請求項5】
前記第2の色空間は、L*a*b*色空間である
請求項1~4のいずれか1項記載の色変換装置。
【請求項6】
前記第1測色値テーブルは、前記入力機器の照明環境毎に設けられる
請求項1~5のいずれか1項記載の色変換装置。
【請求項7】
前記第2測色値テーブルは、前記専用測色機器の照明環境毎に設けられる
請求項1~6のいずれか1項記載の色変換装置。
【請求項8】
前記第1測色値テーブルは、前記対象物である印刷物の色材毎に設けられる
請求項1~7のいずれか1項記載の色変換装置。
【請求項9】
前記第2測色値テーブルは、前記対象物である印刷物の色材毎に設けられる
請求項1~8のいずれか1項記載の色変換装置。
【請求項10】
前記第1測色値テーブルは、前記対象物である印刷物の媒体毎に設けられる
請求項1~9のいずれか1項記載の色変換装置。
【請求項11】
前記第2測色値テーブルは、前記対象物である印刷物の媒体毎に設けられる
請求項1~10のいずれか1項記載の色変換装置。
【請求項12】
前記第1の色チャートまたは前記第2の色チャートは、色が連続的に変化するグラデーションチャートを含む
請求項1~11のいずれか1項記載の色変換装置。
【請求項13】
前記第1の色チャートまたは前記第2の色チャートは、特色チャートを含む
請求項1~12のいずれか1項に記載の色変換装置
【請求項14】
前記第1測色値テーブル及び前記第2測色値テーブルのいずれにもない特定の色情報を有する第3測色値テーブルを有し、
前記第1の測色値は、前記第3測色値テーブルを参照して前記第2の測色値に変換される
請求項1~13のいずれかに記載の色変換装置。
【請求項15】
複数の前記専用測色機器において、同じ測色条件で測色した複数の前記第2測色値テーブルを有し、
前記複数の第2測色値テーブルごとに算出された複数の前記第2の測色値の統計処理を行うことで、L*a*b*値である第4の測色値に変換する
請求項1~14のいずれか1項記載の色変換装置。
【請求項16】
前記第4の測色値を、RGB値である第5の測色値にさらに変換する
請求項15に記載の色変換装置。
【請求項17】
前記第4の測色値を、印刷プロファイルに従って、CMYK%値で表す第6の測色値に変換する
請求項15に記載の色変換装置。
【請求項18】
前記第1の測色値は、ITU-R勧告BT.2020規格の4K又は8Kによる測色値を含む
請求項16記載の色変換装置。
【請求項19】
前記色空間変換部は、前記第1の色変換部で変換して得られた前記第3の測色値に最も近い前記第1測色値テーブルの色パッチを少なくとも2つ検出し、前記少なくとも2つの色パッチのIDを特定し、前記特定された少なくとも2つの色パッチの色空間座標と前記第3の測色値の色空間座標との位置関係を求め、前記少なくとも2つの色パッチのIDから前記第2測色値テーブルを参照して前記少なくとも2つの色パッチに対応する前記第2の測色値を求め、更に前記少なくとも2つの色パッチの色空間座標と前記第3の測色値の色空間座標との位置関係に基づいて、前記第3の測色値に対応する前記第2の測色値を求める
ことを特徴とする請求項1記載の色変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種照明条件の下、各種媒体及び各種色材毎の特定色チャートを使って、一方の(スキャナ等の)各種入力機器による測色値をL*a*b*値に変換し、同様に、各種媒体及び各種色材毎の特定色チャートを使って、必要な照明条件で、もう一方の専用測色機器単独の測色したL*a*b*値、或は複数の専用測色機器の基準値で測色したL*a*b*値に変換し、両者の測色値テーブルを保存し、必要な入力とターゲットの測色値テーブルの選択と色値の変換を行う色変換エンジンを使って、各種入力機器の測色値を専用測色機器の測色値に変換することで、RGB入力機器に依存しないRGB画像の生成や、異なる照明条件で要求される色再現をRGBやCMYK画像で可能にする色変換システム、色変換装置及び色変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
同じデータから出力した見本プリントと印刷物の色合わせ(カラーマッチング)を行う場合、以下のファクターを考慮する必要がある。例えば、入力機器とそのセンサ(スキャナ/カメラ、レンズ、受光素子CCD/CMOS)の違い、専用測色機器の測色方式とメーカーや機種間による測色誤差、照明の色温度による測色値への影響、照明のスペクトルや演色性による色への影響、印刷方式での発色の違い、用紙による素材色(紙白など)や色再現への影響、色材や色光による色への影響、表面加工による紙白など素材の白や色再現への影響、そしてIT-8等のICCプロファイル作成チャート(色チャートを構成する多数の色パッチとその色域)によるカラーマッチング精度の違い、等である。これら各ファクターの違いなどで、印刷やプリント、塗装、染色関連の複雑なカラーマネージメント技術の活用を余儀なくされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-004448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在標準的に使われているスキャナやカメラ(以下、「スキャナ等」という)の色再現補正用に利用されているICCプロファイル及び色変換エンジンであるCMM(Color Management Module)は、図1に示す、264色から成るカラーターゲットを用いることで、入力したカラーターゲットの写真画像(RGB画像)を、非デバイス依存のL*a*b*色空間の画像データに変換できるが、比較する用紙等の媒体が異なったり、前記カラーターゲットと色材の異なる印刷物やインクジェット等で出力したプリント物の場合、これらを分光光度計等の専用測色機器で測色した値と比べると大きく異なるという問題がある。
【0005】
IT8.7/2色チャートの媒体(写真プリント)と印刷物の媒体(印刷用紙)と色材(インキなど)が異なる場合、スキャナ専用のICCプロファイルを作成してカラーマネージメントを行っていても、入力する紙媒体や色材の種類がチャートと異なる場合、スキャナ等の入力照明光とCCDやCMOS等の受光センサの分光特性によって、媒体の白地のL*a*b*値が大きく異なって入力されるため、図2のような結果となって誤差が出てしまう。これは、図3に示すように、入力照明光による分光分布や、受光センサの色感度等が異なっていることに起因する。
【0006】
本発明は、上記のICCプロファイルの弱点を見直し、特定色チャートを、分光光度計或いは色彩輝度計等の専用測色機器で測色した、L*a*b*値によるカラーテーブルを基準にして、必要な各印刷物等を見る環境照明下において実測した条件と実測値を入力し、求める条件の色変換を行うことが可能な色変換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、第1の色域をもち、対象物を測色して第1の測色値を出力する第1の測色用入力機と、第1の測色値が入力される入力部と、第1の測色値を第2の測色値に変換する変換部と、第2の測色値を出力する出力部と、を備え、変換部は、第1の測色用入力機によって測色する際に用いる測定光源毎の色情報を有する第1測色値テーブルと、第2の色域をもつ第2の測色機器によって測色する際に用いる測定光源毎の色情報を有する第2測色値テーブルと、を保存するとともに、第1測色値テーブルの測色値と第2測色値テーブルの測色値とを対応させることで、第1の測色値を、第2の測色値に変換する色変換システムである。
【0008】
また、色変換システムは、第2の測色機器を含み、第2の色域は、デバイスに依存しない色域であってもよい。
【0009】
また、第1の測色値テーブルは、第1の色域の色パッチを有する第1の色チャートを有し、第2の測色値テーブルは、第1の色域の色パッチに含まれる色と同等或はより多数の色を含む第2の色域を有する第2の色チャートを有していてもよい。
【0010】
また、第1或は第2の色チャートは、色が連続的に変化するグラデーションチャートを含んでいてもよい。
【0011】
また、第1の色チャートまたは第2の色チャートは、特色チャートを含んでいてもよい。
【0012】
また、特色チャートは、台紙と、当該台紙上に貼付された複数の特色チップからなっていてもよい。
【0013】
第2の色域内に存在する色は、第1の色域内に存在する色を含んでいてもよい。
【0014】
第1測色値テーブル及び第2測色値テーブルはさらに、第1の測色用入力機及び第2の測色機器によって測色する際の媒体、媒体の光沢度、色材、測定光源の分光値、又は測定光源の色温度毎の色情報を有していてもよい。
【0015】
また、測色値テーブルは、第1測色値テーブル及び第2測色値テーブルのいずれにもない特定の色情報を有する第3測色値テーブルを有し、第1測色値は、第3測色値テーブルを参照して第2の測色値に変換されてもよい。
【0016】
第1の測色用入力機は、RGB入力機であってもよい。
【0017】
第2の測色機器は、分光光度計、分光濃度計、又は積分球分光測色計、又はCIEXYZ入力機のいずれかであってよい。
【0018】
比較側で、色チャートを測色した比較側の第1の測色値を比較側の第2の測色値に変換し、基準側で、比較側とは異なる測色機器を用いて色チャートを測色した基準側の第1の測色値を基準側の第2の測色値に変換し、比較側の第2の測色値と基準側の第2の測色値とを比較し、差分をとり、差分に基づいて、基準側の第2の測色値が比較側の第2の測色値と略同じ値になるように基準側の測色機器を調整してもよい。
【0019】
複数の第2の測色機器において、同じ測色条件で測色した複数の第2の測色値テーブルを有し、複数の第2の測色値テーブルごとに算出された複数の第2の測色値の統計処理を行うことで、第4の測色値に変換してもよい。
【0020】
複数の前記第2の測色機器において、同じ測色条件で測色した複数の前記第2の測色値テーブルを有し、複数の第2の測色値テーブルごとに算出された複数の第2の測色値の統計処理を行うことで、L*a*b*値である第4の測色値に変換してもよい。
【0021】
第4の測色値を、RGB値である第5の測色値にさらに変換してもよい。
【0022】
測色値テーブルに、所定のCMYK変換用ターゲットプロファイルを登録させ、第4の測色値を、CMYK変換用プロファイルに従って、CMYK網点%値で表す第6の測色値に変換してもよい。
【0023】
入力部及び前記変換部は、前記第1の測色用入力機内に設けられ、第1の測色用入力機は、画像を取り込み、入力部に入力する画像取込部を備え、第1の測色値は、第2の測色を、ISOに準拠した各種の測色機器を用い統計処理で得られた基準値に色変換したものをさらに所定の色温度を基準としてRGB変換したものとしてもよい。
【0024】
デバイス依存のRGB色空間より広い色空間を持つ入力機の測色値は、TU-R勧告BT.2020規格の4K又は8Kによる測色値であってもよい。
【0025】
複数の第1の測色用入力機から送信された複数の第1測色値テーブルを保存する第1サーバを有し、ネットワークを介して、前記第1サーバとデータの送受信が可能に構成されてもよい。
【0026】
複数の第2の測色機器から送信された複数の第2測色値テーブルを保存する第2サーバを有し、ネットワークを介して、前記第2サーバとデータの送受信が可能に構成されてもよい。
【0027】
第2の測色値に基づいて、ベクターデータからラスターデータに画像変換するRIP装置が含まれ、RIP装置は、画像変換の際に、測色値テーブルを参照して、ラスターデータを作成と同時またはPDF画像を生成する際に色補正を行ってもよい。
【0028】
出力部に接続され、第2の測色値に基づいて、ベクターデータからラスターデータに画像変換するRIP装置をさらに有し、RIP装置は、変換したラスターデータを、出力部を介して変換部に出力し、変換部において、測色値テーブルを参照して再度色補正させてもよい。
【0029】
また、本発明の別の実施形態においては、第1の測色用入力機によって測色した際に出力される、第1の測色用入力機による第1の色空間の第1の測色値を、第2の測色機器によって出力される、第2の測色機器による第2の色空間の第2の測色値に変換する色変換装置であって、色変換装置は、第1の測色値が入力される入力部と、第2の測色値を出力する出力部と、第1の測色値を第2の測色値に変換する変換部と、を備え、変換部は、第1の測色用入力機によって測色する際に用いる測定光源毎の色情報を有する第1測色値テーブルと、第2の測色機器によって測色する際に用いる測定光源毎の色情報を有する第2測色値テーブルと、第1測色値テーブル及び第2測色値テーブルを保存するとともに、第1測色値テーブルの色値と第2測色値変換テーブルの色値とを対応させることで、第1の測色値を、第2の測色値に変換する色変換装置である。
【0030】
また、本発明の別の実施形態においては、第1の測色用入力機によって測色した際に出力される、第1の測色用入力機による第1の色空間の第1の測色値を、第2の測色機器によって出力される、第2の測色機器による第2の色空間の第2の測色値に変換する色変換方法であって、色変換方法は、第1の測色用入力機によって測色する際に用いる測定光源毎の色情報を有する第1測色値テーブルを作成し、第2の測色機器によって測色する際に用いる測定光源毎の色情報を有する第2測色値テーブルを作成し、第1測色値テーブル及び第2測色値テーブルを保存するとともに、第1測色値テーブルの色値と第2測色値テーブルの色値とを対応させることで、第1の測色値を、第2の測色値に変換する色変換方法である。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、各種媒体及び各種色材毎の特定色チャートを、RGBスキャナ等を用いて、入力機器に依存する値であった各種入力機器で取得した画像の測色値を、一旦L*a*b*値の測色値に変換し、各種媒体及び各種色材を、基準の分光光度計により測色した同じ表色系(Color System)の測色値として色変換を行う。これにより、異なる測色機器であっても専用測色機器のL*a*b*測色値への色変換が容易に行える。また色評価を行う際の照明環境を、色変換条件に加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】ICCプロファイルで用いられるIT8.7/2カラーターゲットを示す図である。
図2】分光光度計とICCによるL*a*b*変換値の誤差を示すグラフである。
図3】各種照明による分光分布の違いを示すグラフである。
図4】本発明に係る色変換システムの概要を示すブロック図である。
図5図5(a)は、本発明で用いられる、少数特定色チャートを表すイメージ図であり、図5bは、本発明で用いられる、多数特定色チャートを表すイメージ図である。
図6】一実施形態に係る、入力カラーテーブルの作成フロー図である。
図7】一実施形態に係る、ターゲットカラーテーブルの作成フロー図である。
図8】一実施形態に係る、ある測色値を、異なる照明環境下における別の測色値に変換するフローを説明するフロー図である。
図9】一実施形態に係る、異なる照明・媒体・色材での測色値を比較するフロー図である。
図10】2つの色空間値から、補間曲線を用いて測色チャートに無い色を求めることを表すモデル図である。
図11】グラデーションチャートの一例を示す図である。
図12】グラデーション面チャートの一例を示す図である。
図13】5000色チャートの構成の一例を示す図である。
図14図14(a)は、入力機器による色空間の歪みを表すイメージ図であり、図14(b)は、絶対値を表すCIEXYZ色空間を表すイメージ図である。
図15】一実施形態に係る、測色値の求め方を説明するための図である。
図16】一実施形態に係る、異なる色空間の間で測色値を変換する方法を説明するためのグラフである。
図17】一実施形態に係る、特色チャートを用いた場合の測色色域の拡張を説明するためのイメージ図である。
図18】一実施形態に係る、顧客の要求色を再現するためのフロー図である。
図19】様々な色方向に画像の色を修正した場合の色再現のカラーバリエーション・ガイドを示す図である。
図20】カラーバリエーション・ガイドの使用例を説明する図である。
図21】印刷オペレータ用のスーパービュアによる色評価画面を示す図である。
図22】一実施形態に係る、ユニバーサルRGBへの変換方法を示すフロー図である。
図23】各種の色域を表したグラフである。
図24】一実施形態に係る本システムで用いるRIPの概念について説明する図である。
図25】一実施形態に係る、色評価方法を示すフロー図である。
図26】一実施形態に係る、要求色による色管理方法を実施するためのフロー図である。
図27】一実施形態に係る、カメラやスマートフォンを用いて測色値を変換する方法を示すブロック図である。
図28】一実施形態に係る、カラー調整BOXを用いた活用方法を示す図である。
図29】一実施形態に係る、色評価と文字・汚れ検査を一括で行う方法を示す運用フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る色変換システム、色変換装置及び色変換方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0034】
(定義)
まず、以下の実施の形態の説明に用いるいくつかの用語について、その定義を記載する。
【0035】
(媒体)
媒体とは、色材が着肉または着色または発光される支持体を表すもので、アート/コート、マットコート、上質等の用紙、また布、金属、フィルム、ディスプレイなどがある。同じ色材を異なる種類の用紙に印刷をした場合、同じ濃度で印刷してもC、M、Y、K、インキをそれぞれ組合せによる掛け合わせ網点%によって表す色は、目視の色感覚と測色値が異なることがある。また、ICC(International Color Consortium)では、用紙(媒体)と色材を1セットにした印刷プロファイルが作成される。なお、同じ媒体であっても、印刷方式(例えばオフセット/グラビア/フレキソ/インクジェット/トナー方式)とそれに伴い色材、網点形状等でも色再現が変わる特性を持つ。
【0036】
(色材)
色材とは、広義にさまざまな物体に着色する成分、すなわち天然または人工の「色素」および「色料」を指す。狭義には、それらの色料によって作られた印刷インキ、塗料、絵具などを「色材」という。また、色材には、染色に用いられる繊維の間に侵入して着色する「染料」と、狭義の色材の着色となる不溶性の「顔料」がある。印刷インキでは、グラビアインキ、オフセットインキ、フレキソインキに分けられ、さらにオフセットインキには油性インキ、UVインキ、水無しインキなどがある。その他にも、水性インク、トナーなどがあり、用途によって耐光インキ、耐熱インキなどがある。分光反射特性や色域もそれぞれ異なる。
【0037】
(CMYKプロセスインキ)
減色混合の原色、すなわちY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の3色にK(ブラック)を加えた4色が通常一組になっていて,それぞれの色を重ね刷りすることによってすべての色を再現しようとする印刷用インキのことである。
【0038】
(色域)
特定の色材や媒体で作成した印刷物等の絵柄や物体に白色の照明を当てて発色した色や、カラーモニタが発色する色数全てを特定する色空間(CIEXYZやL*a*b*等)で表した色の範囲のことである。
【0039】
(表面加工)
表面加工とは、光沢、マット/箔押し、ニス引き、PP貼り、インキ塗布などの、媒体の表面に施す種々の加工を指す。
【0040】
(照明環境)
照明環境とは、印刷物等を見る環境における照明の違いにより、色再現が違って見える状況を指す。一般的には、その特性をスペクトル、色温度、演色性で表す。
【0041】
(照明のスペクトル)
照明のスペクトルとは、光の分光分布を表すもので、電磁波のうち、ヒトの目で見える波長のもの。可視光線に相当する電磁波の波長の下界はおおよそ360-400nm、上界はおおよそ760-830nmである。可視光線より波長が短くなっても長くなっても、ヒトの目には見ることができなくなる。可視光線より波長の短いものを紫外線、長いものを赤外線と呼ぶ。
【0042】
(演色性)
演色性とは、“光源の色”である「光色」と“光源によって照らされた物の色の見え方”の違いのことを指す。「演色性」は光源から出てくる光が持つ波長ごとの成分の割合によって変化する。光色は空間の印象に影響を与え、演色性は物の色の見えに影響を与える。また、演色性は、平均演色評価数(Ra)で表される。平均演色評価数は、照明で照らした際にどれだけ自然な色で見えるかを表したものであり、例えば、Ra100は、自然光が当たったときと同様の色を再現していることを意味する。波長ごとの成分がフラットであればRa95やRa98と演色性が高くなり、標準照明として利用されている。波長の所々に光の成分が欠けている一般の蛍光灯はRa60-75と低いため、色が濁るなど悪く見える原因となっている。また、演色性は、例えばハロゲン、蛍光灯、LEDのスペクトルの特定波長の欠落によって影響され、また紫外線の有無等により影響される。
【0043】
(色温度)
点灯中の光源の光の色には、青みがかったものや黄みがかったものがある。これを光源の光色という。色温度とは、炭素を熱したときに温度とその発光する色を言い、この光源の光色を客観的に表すものである。光源の光色は白色光と有色光とに大別できるが、色温度という概念を適用できるのは白色光に対してだけであり、有色光については色温度を定めることはできない。太陽光の色温度は地球の緯度により変化するが標準的には日中5500K、ストロボやモニタは色温度が6000~6500Kが標準、印刷業界では、5000Kが標準となっている。また、白熱電球は、約3000Kである。
【0044】
(分光光度計の測色条件)
用紙に蛍光増白剤が使用された場合とそうでない場合によって、用紙の測定値と観察された「見え」の相関にズレが生じる。これは紙に蛍光増白材が含まれている場合に測色計の光源に使用されている光のUV量と、観察照明に使用されている光のUV量が異なることが影響し、UV光が他の波長に変化することで起こる。そこで、ISOではMファクター(M0~M3)を加え、照明条件によって測定値を各フィルタで制御する機能を設けた(ISO-13655-2009)。M0はフィルタなし、M1はPart-1:D50、M2はUVカットフィルタ、そしてM3は偏光フィルタである。
【0045】
(環境光)
環境光とは、被写体や印刷物やプリントを見る環境の照明のスペクトルのことである。一般的には、屋外や屋内の自然光と電灯などの明かりを指す。
【0046】
(記憶色)
人間の記憶内にほぼ共通の色感覚として持っている色を記憶色と呼ぶ。現実の色と結びついて、連想したり思い起こせる色のこと。一般に、実際の色よりもその特徴が強調されて記憶されている場合が多い。また、記憶色は国や生活文化の違いで、異なることが多いので、国内や地方間での記憶色が近いと言われている。
【0047】
(CMM)
CMM(Color Management Module)とは、ColorSync2.0/2.5やICM2.0などOSに組み込まれているICCに基づく色変換エンジンのことである。なおICM2.0は、Windows OSに搭載されたCMMを利用したシステムレベルの色変換プログラムの略称であり、ColorSync2.0/2.5はMac OSに搭載されたCMMを利用したシステムレベルの色変換プログラムの略称である。これらのCMMを利用することで、様々な異なるメディアやデバイス間の色を合わせるためのCIEXYZやCIELAB並びにCMYK等をベースにした異なる色空間の間での画像の色変換が行えることが特長である。
【0048】
(キャリブレーション)
RGB入力装置がスキャナであるかデジタルカメラ或いはデジタルビデオカメラ(以下、総称で単にカメラという)であるかによって、またセンサの分光感度特性や色域やガンマが異なるため、被測色媒体である測色チャートの分光特性の違いによる影響も異なる。さらには、照明光の照射ムラや感度ムラやコントラスの違いが生じる。キャリブレーションとは、これらの影響を補正するために、入力プロファイル作成時や画像入力の際に、予めRGB入力装置に行うコントラスト補正やガンマ補正やムラ補正のことである。
【0049】
(IT-8.7/2やIT8.7/4などの基準色チャート)
測色値の変換(或は置換)テーブルを作成する場合、初めに高精度な(分光光度計等の)専用測色機器で専用の多数特定色チャートまたは入力機器用IT-8.7/2の265色チャートや、印刷または出力デバイスのICCプロファイル作成に用いられるIT8.7/4などの1617色の色パッチから成る専用の多数特定色チャートを測色する。そして各色パッチ(色チャートを構成するそれぞれ個別の色見本の小片のこと)にIDを付けて測色したL*a*b*値を保存したデータを専用測色機器による測色値テーブルとして保存する。
【0050】
(測色値テーブル)
ここでいう測色値テーブルとは、本システムで色変換を行うために必要な、専用の多数特定色チャートの各パッチを、分光光度計で測色した基準値(ターゲットカラーテーブルという)と同じ色チャートを、スキャナ等で入力した各パッチをL*a*b*値に変換した測色値(入力カラーテーブルという)を指す。
【0051】
(機器依存)
機器固有に持っている色空間を指し、具体的には機器に設置された受光センサにより入力された画像の色空間や色再現特性が異なるが、この機器固有の色再現をデバイスディペンデントカラーと言う。例えば、RGBのカメラやスキャナであり、BT.2020で規定された広色域を持つ4K、8Kのカメラも同様である。本発明では、これらのデバイスディペンデントな入力機器を、固有RGB入力機器等と呼ぶ。
【0052】
(測色機器)
測色機器は、分光方式測色機器の分光光度計(或は分光濃度計)、CIEXYZ入力機のほか、入力機器のRGB入力機、Adobe-RGB色域より色域の広く、可視光領域よりも色域の狭いBT.2020基準の4K、8Kビデオ用入力機によるものも活用が可能である。
【0053】
(専用測色機器)
本明細書でいう、「専用測色機器」とは、一般的には分光光度計のように分光反射率から測色値を算出するものと、CIEXYZカメラ、色彩計のように三刺激値から測色値を算出するものをいう。また、これら測色機器の測色方式としては、例えば分光フィルタやCIEXYZフィルタを用いたものが挙げられる。
【0054】
(CIP3、CIP4)
CIP3は、印刷のプリプレス工程における画像の濃度情報や、ページ割付け、製本仕様などを印刷機や加工機の初期調整に活用しようという目的でつくられたプリプレス・プレス・ポストプレスのPを頭文字とする三つの工程のデータ連携の規格。世界中の多くのプリプレス機器,印刷機,加工機のメーカーが参加している。CIP3が定めたデータ交換のための標準フォーマットがPPF(Print Production Format)。CIP3は、プリプレスの画像面積データを印刷機のインキキーコントロールに使い,刷りだし時間の大幅な短縮に貢献した。2000年にprocessを加えたCIP4に名称変更をしている。
【0055】
(L*a*b*色空間)
L*a*b*色空間とはCIE(国際照明委員会:The International Commission on Illumination)が定めた色空間で、同じくCIEXYZ色空間(人の目が認識できる可視光領域の各色に5000Kや6500Kの白色光を表す単位を当てた時に見えた色をRGBの3つの光の強さを変えて混合して表わせるように実験で求めた等色関数に負の値が生じないよう数値的に扱い易く改良したXYZ軸の3次元で表した図である。明るさを2次元の色度図に置き換えたもの。白色光の色を表すK=ケルビンの色温度で表し、色温度が高いと青味をおび、低くなると赤味をおびる。)に対して人の目が色の違いを均等に数値化したもので、L*値は縦軸軸の座標として明るさを表し、a*値とb*値はL*軸と直角に交わる面の座標で色相と彩度で各色を表す色空間である。
【0056】
(IT8.7/2チャート)
なお、IT8.7/2チャートとはANSI(米国国家規格協会=American National Standards Institute)のIT8.7/2-1993規格で定めたフォーマットによる色チャートで、RGB入力装置の色域情報を得るために異なる明度・彩度・色相を持つ各種の色パッチ約250個から成る色チャートのことである。ここで、色パッチとは色チャートを構成するそれぞれ個別の色見本の小片 (Color Patch)を言う。
【0057】
図4は、本発明に係る、色変換システムの概要を説明するブロック図である。図4に示すように、本発明に係る色変換システム(カラーコンバージョンシステム:以下、CCSという)は、各種入力機器3aから出力される第1の測色値が入力される測色値テーブル作成部、第1の測色値を、第2の測色値に変換する測色値保存部及び色変換部(カラーコンバージョンエンジン、以下、CCEと略す)17、及び第2の特定色チャート測色値のカラーテーブルを保存するカラーテーブル保存部18と、を有する。カラーテーブル保存部18は、各種入力機器3aによって測色する際に用いる測定光源(色温度、照明スペクトル)毎の色情報を有する入力カラーテーブル20と、基準とする専用測色機器によって測色する際に用いる光源毎の色情報を有するターゲットカラーテーブル21と、を有する。さらに、入力カラーテーブル20と、ターゲットカラーテーブル21とを保存するとともに、入力カラーテーブル20の色値と、ターゲットカラーテーブル21の色値と対応させるテーブル値対応調整部23を有し、データベース化する。色変換システムは、この測色値テーブル19を参照することで、第1の測色値を、第2の測色値に変換する。
【0058】
尚、色値とは計測器から得られた色の値すべてを含むものとする。代表的なものにRGB、CMYK濃度、CIEXYZ、2つの色を比較した差分を表す値には濃度差、ΔE、CIEDE2000などがある。
色パッチとは各種の色を均一にした測色機器で測定できる大きさの四角状の面にしたものである。 XYZカメラとはCIEXYZフィルタ(眼の分光特性に近い分光特性を持つ3つのフィルタで構成される。)で撮影することで、分光光度計のL*a*b*測色値と同様の値による画像が得られるものである。
【0059】
図4に示すカラーコンバージョンシステム(CCS)では、基準とする分光光度計等の専用測色機器を用い、蛍光灯やLED照明や太陽光などの各種環境光の下で分光スペクトル(図3参照)を測定し、そのスペクトルデータを用いて、IT8.7/4以上の多数の色パッチを配置した多数特定色チャートを、専用測色機器で測色する。これらの測色値全てを記載した本システム専用のファイルをターゲットカラーテーブル13とする。また、眼で見える色特性に近いCIEXYZカメラを用いて各種照明光で前記IT8.7/4以上の多数の色を配置した特定色チャートを測色して作成したものもターゲットカラーテーブル13とすることが可能である。また、分光光度計やCIEXYZカメラやRGBスキャナまたはRGBカメラ、さらにBT.2020基準の4K8Kの入力機等、広色域の入力が可能な入力機器3aを様々な印刷物の測色機器として用いて、それらの入力機器3aから得られた機器依存の測色値を、基準とする分光光度計等の専用測色機器の測色値に等しい値に変換することが出来る。そのため、高精度な色変換エンジン17を持つ色変換システムとなる。
【0060】
そして、色評価部26は、見本等の基準画像と比較する画像を本システムの入力機器3bで入力し、「測色値/画像入力部14」に保存した2つの入力画像を正しい測色値で測色し、色の違いを色差(ΔE)やCMYK%による差分等で表し、それらを基に色評価を行った結果を数値や様々な色判定方法で表したり、「色評価レポート30」を出力する。さらに、比較画像を見本等の基準画像に近付けるための「色補正情報30」を出力する。
【0061】
また、図4のカラーコンバージョンエンジン(色変換部:CCE)ではIT8.7/4以下の少数の色チャートで構成された少数特定色チャートを入力または測色する際、「単一の入力機、或は複数の異なる個別の入力機を使って入力した「単一の媒体と色材と照明光」或は「複数の異なる媒体と色材と照明光」で得られた画像を用いる。そして、少数特定色チャートを入力した画像をL*a*b*値に色変換した後、基準とする専用測色機器を使って、少数特定色チャートの色を含む多数特定色チャートを、各種の照明環境2bに対応する環境光のスペクトルデータを加味して測色することで、環境光の持つ各スペクトル(光の波長)に対する分光反射率に合わせた色を算出する。続いて、少数特定色チャートに無い色を含め少数特定色チャートと同じ測色条件で測色した多数特定色チャートの対応する色を、入力カラーテーブル13のL*a*b*値に変換し割り当てる。
【0062】
そして、チャートの対応する色パッチの数を合わせたところで、CCE17の色空間変換モジュール22が、L*a*b*値の異なる2つの色空間値の一方の値を、変換先の基準測色値とし、他方の値をこれに変換することで、高精度で必要な測色値(例えば異なる照明条件下での異なる測色値)への変換を可能にする。
【0063】
さらに少数特定色チャートを用いても、CCSによる高精度な測色テーブル値で同様に色変換を行うには、専用測色機器を用い、まず多数特定色チャートを入力し、CCSに多数特定色の基準値を記憶しておく。こうすることで、少数特定色チャートだけを入力した場合よりも少数特定色チャートに無い多数特定色チャートの色を正確に予測することが可能となる。続いて同様にCCEで、少数特定色チャートの色パッチの測色値と多数特定色チャートの対応する色パッチの測色値を比較して、専用測色機器で測色した多数特定色チャートの値に変換し、さらに目的の媒体と色材と固有の照明環境下での固有の測色値に正確な変換を行うことが可能である。
【0064】
多数特定色チャートは、色変換を行うために必要な特定色を持つチャートであるが、少数特定色チャートはこれらの多数特定色チャートの全色パッチと基本的に同等の色域を持っていることが望ましい。図5は、少数特定色チャートと多数特定色チャートのカラースペースと測色値データ数の違いを表したイメージ図である。図5(a)が、カラースペース内の少数特定色チャートを表し、図5(b)が同一のカラースペース内の多数特定色チャートを表している。
【0065】
図5から理解される通り、カラースペースに含まれる多数特定色チャートの色の数は、同一カラースペースに含まれる少数特定色チャートの色の数より多い。また、同一のカラースペースであっても、多数特定色チャートは少数特定色チャートの全色を含んだものとなっている。即ち、カラースペース内に存在する少数特定色チャートの色は、多数特定色チャートにも存在している。
【0066】
また、特定色チャートを媒体や色材毎に作成し、各種の測色機器とその機器の基準照明光で測色したデータと、異なる各種の照明環境の下で測色した対応する色パッチの測色値で構成された測色値テーブルをCCSにデータベース化しておくことで、CCEを用い、何時でも必要なデータの測色値テーブルを呼び出して、必要な測色環境での測色値の再現が可能となる。
【0067】
ここで得られた測色値は、ISO-13655-2009基準を測色条件とする基準測色機器を用いるだけでなく、他の照明光による測色条件を基準にできる測色機器を用いることで、幅広い測色値テーブルをデータベース化とすることが可能となる。照明環境に合わせた測色機器に依存しない高精度な測色値のターゲットカラーテーブルを得ることが可能である。
【0068】
また、RGB色域のデバイス依存の汎用スキャナを測色機器として利用しても、CCEで高精度な専用測色用機器の測色値と同等の精度でL*a*b*測色が可能となる。即ち、測色対象となる媒体(用紙)や色材毎に作成した例えばIT8.7/4の全ての色を含んだ1617色以上の多数特定色チャートを作製して、基準とする特定色チャートとして、入力測色値カラーテーブルを作成することで、異なる媒体や色材によるプリント物での測色値からでも正確な測色値を得ることが可能となる。また、キャリブレーション調整されたRGBスキャナやカメラ等(以下、スキャナ等という)で入力し、ICCプロファイルとCMM(カラーマネージメントモジュール)でL*a*b*変換した値を、再度補正する色変換を行うことで、より正確なL*a*b*と色差等(ΔE、CIEDE2000等)が得られる。但し、本システムを利用するスキャナ等は、色や濃度のレンジが広くノイズが少ないことに加え、各色に対してなめらか且つ十分幅広い色階調の再現が得られるCCDスキャナ等が望ましい。また、キャリブレーション調整されたRGBカメラのほか、4K8K仕様のCCD、C-mos、密着、センサのスキャナやカメラによる入力機でも良い。なお、印刷業界で色の差分を表す色差(ΔE)や、人の眼で見た感度で色差分を表すCIEDE2000で色評価を行う。
【0069】
これらプリント物等をRGBスキャナ等で入力し、L*a*b*変換値を補正する色変換を行うカラーコンバージョンエンジン(CCE)を含む本システム(測色・色変換・色評価・色補正を行う装置)の概要と機能は、以下の通りである。
(1)RGB画像入力装置は、機器(デバイス)毎に固有の色再現特性を持っており、入力する媒体や色材の種類によっても入力画像の色再現が変化する。これは、スキャナ等によって使用するセンサの分光感度と照明の分光波長分布とに違いがあるためである。これはデジタルカメラやスマートフォンカメラも同様で、さらに広色域のITU(International Telecommunication Union)-R勧告BT.2020仕様の4K、8Kビデオカメラ及び4K、8Kカメラも同様である。
【0070】
またスキャナ等の分光感度は、眼の分光感度及び実際の照明とも異なるため、目視の色認識とスキャナ等入力画像による測色値に差が生じる原因となっている。これらの色差を補正するには、入力装置と測色対象となる媒体や色材毎に入力カラーテーブルを作成する必要がある。そのため、CCSは多数特定色チャートの全ての個別の色パッチ(色パッチ個数は特に制限しない)を一括入力して10秒程度の短時間で測色するマトリックス測色機能を有する。
【0071】
(2)図6で示す通り、スキャナ等で入力した特定色チャートの画像(IT8.7/4(1617色)など色チャートの色パッチ及び色情報は、本システムCCSにも搭載されているCMMとスキャナ等自身の入力プロファイルを用い、L*a*b*値に変換する。しかし、これらのL*a*b*値はまだ機器固有のL*a*b*値(L*a*b*RGBと表記する)であるため、ここで得られた特定色チャートの測色値を、CCSの入力カラーテーブル作成部(図4参照)で測色と各色パッチにID番号付けをした入力値カラーテーブルを作成する。
【0072】
(3)次に、図7に示す通り、基準とする専用測色機器(分光光度計やCIEXYZ入力装置)で得られた測色値に照明光のスペクトルデータを付加して、前記の同じ特定色チャートを測色して得られたL*a*b*値にID番号を付けて、CCSのターゲットカラーテーブル作成部(図4参照)でターゲットカラーテーブルを作成する。この時に、色評価に使用される照明光のスペクトルデータを与えて測色することで、その環境光特有の測色値が得られ、ここで作成されたターゲットカラーテーブルは照明光の分光特性を補正するテーブルとして利用することが出来る。
【0073】
(4)図8に示すように、これら入力カラーテーブルとターゲットカラーテーブルの2つのカラーテーブルをCCSにセットすることで、測色対象の媒体と色材及び環境光に合わせて色変換を行うスキャナ等でRGB入力した印刷見本の画像のL*a*b*変換値(L1*a1*b1*RGB)を、専用測色機器による測色値(L2*a2*b2*CIEXYZ)に変換を行うことである。これで、スキャナ等の入力画像を測色したときに基準とする分光光度計等の専用測色機器の測色値が得られる。
【0074】
また、比較する印刷物同士の媒体と色材が同じでも環境光が異なるものを比較する場合は、それぞれの印刷物に合わせた2つのターゲットカラーテーブルを個別に選択することで、これらの媒体と色材及び環境光による影響含めた測色値(L*a*b*)で比較することができる。つまり、2種類の照明光下で測定値を再現できることになる。これで同じ印刷物を見たときに色がどのように変わって見えるかを目視に近い色評価を数値で表すことが可能となる。
【0075】
図9は、照明環境が異なるもの同士の色比較を表す「異なる照明・媒体・色材」での測色値を比較するフローである。スキャナを入力用の測色機器にする場合は、スキャナの照明は同じであるため、そのままL*a*b*変換した入力カラーテーブルや印刷見本等の測色物を含め、両者とも同じ値を示すが、ターゲットカラーテーブルに異なる蛍光灯とLED照明によるスペクトルデータを用い分光光度計等で測色した値を用いることで、容易にそれぞれの環境での測色物の色再現の違いを数値化することが可能である。
【0076】
続いて、環境光とカラーマネージメントとの関係について説明する。これまで印刷物の色評価を行う場合、照明環境が変わると色の見え方が変わってしまうことから、印刷業界では照明の色温度を5000K、演色性がRa98以上といった色再現に優れた蛍光灯を標準光源として使って来た。しかし、発注者やデザイン会社など色の良否を最終判断する側では、印刷物を評価する一般的な照明光は蛍光灯であったり、最近ではLED照明の下で色の確認が行われたりしており、照明環境が違うことで、色が違って見えてしまうために刷り直しになってしまうといったトラブルになることも少なくない。
【0077】
一般的な蛍光灯では、昼光色が約6500K、昼白色が約5000K、白色が約4200K、温白色が約3500Kとなっている。また、基本となる媒体の色である白い部分の白点も変化してしまう。即ち、蛍光管の色温度の違いで同じ印刷物の色が大きく変わって見える。例えば、空や樹木などの青系の色は、昼光色の方が鮮やかに見えて、人物や赤い果物の色は青白くくすんで見える。また、例えば白色や温白色の蛍光管の発光色だと、まったく逆に人物や赤い果物の色は鮮やかに見える。
【0078】
また、印刷物を実際に手にする消費生活者も印刷の発注者と同様な照明環境で色を見ている場合が多い。例えばポスターは野外に貼りだされたり地下鉄の駅壁に貼りだされたりと、照明環境は様々なのが現状である。こうした問題を改善するためには、ISOによるD50標準光源で一定の色評価を行うことは間違いではないが、この標準光源環境は消費生活者が通常見る照明環境とは違っている。さらに通販やネットショッピングの増加も考慮すると、モニタやスマートフォンやタブレット端末のディスプレイでの色再現を含め、様々な照明環境での色確認が行える仕組みや、各種の照明環境で見た時の色の違いを数値化して評価することや、照明環境に合わせた色管理を行うことが重要といえる。
【0079】
さらに高精度な測色値を得る場合は、専用測色機器で色数の多い「多数特定色チャート(1617色以上5000色程度)」を測色するとさらに良い。また、色チャート測色と同時に各パッチの対応する色を同じ位置に配置するか、各パッチにIDを登録し、専用測色機器で測色したL*a*b*値と、異なる(RGB入力機等の)入力装置で入力した各色パッチのL*a*b*変換値の関係付けを行う。
【0080】
次に、本実施の形態においてまさに解決しようとする、ICCプロファイルを用いた場合の誤差について説明する。図10は、2つの色空間値から測色チャートに無い色を求めることを表すモデル図である。同系色の色パッチを測色した色階調が同図の1~4を示すが、線形変換で得られた曲線が実線であるが、色パッチにない色を測色すると、線形補間により推測された色再現曲線によると番号5の点が予測される。しかし、スキャナ等から得られたRGB値をICCプロファイルでL*a*b*値に色変換すると、色パッチの色は番号6で示す位置の値を示しているとしたら、大きな誤差が生じることになる。
【0081】
一方、CCSによる色変換では、スキャナ等の実測値を直接分光光度計等の専用測色機器の測色値から作成したターゲットカラーテーブルであるL*a*b*値に座標変換することで、正確な変換値を容易に得ることが可能である。CMMでもCCSであっても、中間色の色パッチの色数をさらに増やすことにより、色変換誤差を減らしていくことは可能である。しかし、前述の説明のように1617色以上の多数の特定色チャートによる実測値がある場合は、xyz小色立体による色座標変換方式を採用するCCSの方が高精度であることが明らかである。
【0082】
もし、少数特定色チャートだけで色補正のための2つの色空間の変換を行う場合は、色パッチが少ない分だけ色変換の基準ポイントが少なくなるため、基準ポイントとなる特定色を1600色以上にふやしておくべきである。この場合は、線形変換により特定色の中間点を予測することが可能である。また1600色程の多数特定色チャートに対して中間点を同様に線形変換で予め求めておいたものを特定色チャートとしても良いが、前記の説明の通り予想通りの測色結果とならない場合もあるため、両者を組み合わせた平均値によりCCSによる色変換を行うことも可能である。この場合、予め特定色チャートの色パッチ(ポイント)数を増加させた入力カラーテーブルを基に、スキャナ等の測色値(L*a*b*変換したもの)に近い色パッチを探し、後は同様にターゲットカラーテーブルの色パッチIDに変換してxyz小色立体を用いた測色値の変換を行うことで、色差が近い色パッチを検出する色差の範囲を狭めることができるため、近似色の検出速度を速めることが可能であるといったメリットがある。
【0083】
次に、本発明において使われる「多数特定色チャート」について説明する。特定色チャートは、本実施例における色変換を高精度に行うために最も重要な要素の一つである。多数特定色チャートは、1617色以上、5000色程度の色パッチ或はグラデーションによる色情報を持つ色変換に欠かせない重要な要素である。なお、多数特定色チャートの色数はこれらに限定されることはない。
【0084】
具体的には、例えばIT8.7/4チャートの1617色の色パッチに加え、さらに新たな色パッチを加える。また、連続階調のグラデーションチャートを加えてもよい。グラデーションチャートのグラデーション部分を測色するときの測色距離間隔を短くすることで、結果的に色パッチに相当する色数を自由に増やすことができる。その他には人物の画像や、その人の肌の色を表す肌色、また、人にとって共通のイメージとして脳に記憶された記憶色、例えば自然の風景による草木の緑、空の青、食品、嗜好品など各種の記憶として持つ色等を表す画像や或はそれらに相当する色チップや写真などの記憶色が盛り込まれても良く、CCSのCCEで色変換を行うために必要な入力カラーテーブルや出力カラーテーブルを作成するために用いられる。各種チャートの詳細と利用方法については、以下に説明する。
【0085】
CCEを用いる場合でも、特定色チャートの色数は多い方が色補正精度を高めたり、測色可能な色域を広げたりできるため、重要な要素である。それは、チャートに無い色を測色する場合、測色ポイント数は多いほど、色空間において対応する色チャート間の色差が小さくなるため、測色点のL*a*b*値とIDを持つ基準点との色空間の距離が近くなり、色値を予測する際の精度を高めることが出来るからである。
【0086】
しかし、CMYKインキの掛け合わせ%で作成する色チャートの数を増やすには、各色パッチのサイズを例えば通常6mm角以上を半分程度に小さくすれば良いが、測色機器により測色可能な色パッチサイズの限度がある。そこで、チャートの単位面積当たりの測色数を多くするため、R、G、B、C、M、Y、K、特色の各色インキのグラデーションチャートを使用する。すると、通常の色パッチでは実用上A4判に800色前後、A3判に1600色前後のパッチしか配置していなかったものが、追加パッチや、グラデーションチャートを使うことでグラデーションをより細かい測色ピッチでの測色が可能となる。そして、特定色チャートでは、A3判であっても実用上パッチと組み合わせても5000色程度が得られる。その分、色空間における測色ポイントと、特定色チャートの色との距離が近くなるため、補正値誤差が少なくなるという効果が得られる。
【0087】
従来の色パッチ測色方式では、実用上大きいものがIT8.7/4の1617色なので測色チャートに無い中間の色については、補間計算で中間値を作っている。高い補間精度を得るためには、基準測色点の間隔を半分以下にする必要があるが、そのためには1万色以上の基準測色点が必要となってしまう。
【0088】
グラデーションチャートの測色したい箇所の測色値を精度良く測定するには、自動測色ロボットを用い、測色箇所を座標入力して連続測色を行う方が効率的であるが、図11のようにターゲットマークとなる罫線(+マーク)をチャートの外側に記して置くことで、自動でも手動でも常に一定した値を得ることができる。また、CCSでターゲットカラーテーブルを作成するためには専用測色機器での正確な測色が必要であるため、グラデーションの途中に特定色となる単一或は複数の平網パッチ(一例)を入れて、その平網パッチの前後のグラデーションチャートの測色にエラーがないかを確認するチェックポイントとして利用する。
【0089】
図12に示すような、上下と左右で異なる色のグラデーションを刷り重ねた広い面のチャートを測色する場合は、xyの両方の座標を指示する必要があるため、手動では測色ができない。そこで、自動測色ロボットによる例を記載する。まず、自動測色ロボットの測色値テーブルに、測色するグラデーションチャートを載せて固定する。チャートの左上原点と原点上の反対側のコーナーを選択することで、測定テーブル上のチャートの位置と大きさと傾き補正角度を入力する。図では原点の「x=0:y=0」と座標「x=0:y=100」と、「x=100:y=0」を入力することで、スキャナ等で入力したチャートの画像を自動測色機器のモニタに表示させ、表示画像上でも同じ個所の座標のターゲットマーク位置を入力することで、両者の座標位置を一致させる。これにより、手動または数値で測定箇所の座標を指定することが可能である。
【0090】
前記第1の多数特定色チャートと第2の少数特定色チャートの両方の特定色チャートには、色合わせの業務に関係する自然などの記憶色や、商品、ロゴマークなどを同じ色に合わせるために特定色チャートに配置して、さらにその基準とする専用測色機器によるL*a*b*測色値をCCSの測色値テーブルに登録テーブル/色として、登録する。また特に色確認をしたい写真や図柄、ロゴマークなどの印刷物等の絵柄(以下、単に絵柄と言う)をさらに配置すると目視による色評価に役立つので、重要である。図13は、5000色チャートの構成図の一例である。
【0091】
色パッチのほかグラデーションや絵柄で構成された「第2の多数特定色チャート」を作成し、「第2の専用測色機器」で測色した「第2の測色値」と、第2の多数特定色チャートの一部の色を配色構成した「第1の少数特定色チャート」を作成し、「第1の(代替)測色機器」(汎用の(RGB)入力機を含む)で測色した「第1の測色値」を、「第2の多数特定色チャート」と「第1の少数特定色チャート」の対応する色の測色値テーブル間の関連付けを行い、対応する「第2の測色値」を「第1の測色値」に置き換えて変換することで、「第1の少数特定色チャート」と「第1の(代替)測色機器」から、高精度の「第2の測色値」を得る。また、第1の測色値の色パッチ数を第2の測色値の色パッチ数と合わせることで、色チャートを構成するすべての色パッチのIDを対応させることが可能となり、2つの色空間の色変換が可能となる。もちろん、多数特定色チャートや少数特定色チャートは色パッチだけで構成されてもよい。
【0092】
上記で説明した2種類の特定色チャートを用いることで、本発明の測色値変換が可能になる。図14(a)は、入力機器により色空間の歪みを表すイメージ図であり、図14(b)は、絶対値を表すXYZ(CIEXYZの略)色空間を示すイメージ図である。付された番号は、各色パッチのアドレスを表す。即ち、図14(a)及び図14(b)それぞれで同じ番号を付されたパッチが、1対1対応している。
【0093】
第1の少数特定色チャートは、第2の多数特定色チャートの中から最低限必要な色で構成される。また、第1、第2の特定色チャートには特色や、人や風景、静物などの標準的な或は顧客独自の絵柄やロゴマークを加えても良い。
【0094】
第2の多数特定色チャートは、IT8.7/4(1617色)色チャート、及びIT8.7/4にない追加の色パッチで基本構成される。また、人や風景、静物などの標準的な絵柄(写真等)や、またチャートの測色数を増すためにグラデーションチャートを加えたり、CMYKインキの色域内外の特色を合わせるためのチャートを加えたり、見る人の記憶にあるロゴの色や商品や自然などの記憶色を加えることで、精度良く測色が行える色域を広げていくことが可能である。絵柄(印刷物等のイラストレーションや写真等)は、絵柄の特定部分を測定する。また、医療用画像など、得られた画像の濃度に着色して評価する画像については、その着色した画像について測定する。
【0095】
次に、特定色チャートに無い色の測色値の求め方について述べる。図15は、ある明度L*におけるa*b*グラフであり、1617色の測色ポイントを示す。そして、図15に示すように、RGB入力機で入力したモニタ画面の画像(色パッチや絵柄の中の色等)の色を、PCの場合は接続されたマウスやタッチパネル、キーボード等の入力デバイスでクリックして測色を行うと、測色した箇所のL*a*b*値に最も近い色を、特定色チャートの測色値である入力カラーテーブルの中から2つを検出する。しかし、測色点のL*a*b*値の周囲には他の特定色チャートの色パッチの測色値が多数存在しており、全ての点を毎回確認すると余分な測定時間が掛かり不効率である。そのため、最も近い色差の点が直ぐに見つかり易いよう色差を例えばΔE3ぐらいで始めに検出する。もし、検出されない場合は、ΔEを徐々に増やして例えば5ぐらいに増やしていき、2点が検出されるまで繰り返す。色差の計算式は、以下の数式で表すことができる。
【0096】
[数1]
ΔEab=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2
【0097】
入力カラーテーブルの中から色差が最も少ない2点の特定パッチの色が検出されたら、対応するターゲットカラーテーブルの中から対応する色(L*a*b*値)を2つ見出し、2つの色座標から描ける小さな色立体が、入力カラーテーブルの色空間のものとターゲットカラーテーブルの色空間のものとが作成できる。図15は、a*値とb*値のみを表したグラフであるが、実際にはL*値(濃度)の差を読み取るとL*a*b*色立体が構成される。さらに、スキャナ等による色立体の中のどこに測色値があるかを、図16のように色立体のxyz座標に変換し、ターゲットカラーテーブルによるxyz座標に置き換える。そこから得られた座標をさらにL*a*b*値へと変換することで、容易に分光光度計で測色した正確な測色値を得ることが可能である。尚、入力カラーテーブルの中から色差が最も少ない3点の特定パッチの色からさらに精度の高い測色値を求めてもよい。
【0098】
「CCS」が、より正確な測色値に変換できる理由は、(5000色チャートなどの多数特定色チャートを用い、且つ)従来の計算方法のように基準色チャートに無い色を線形補間で存在しない座標を予測するのではなく、実際に存在するスキャナ等入力画像から得られた測色値近辺の狭い範囲の色空間の中(色空間の外でも良い)のxyz座標に変換し、それと同じ比率で基準となる測色機器の同じ狭い範囲の色空間において座標変換を行うことである。微細な色の変化を直接座標変換できるため、非直線的な色階調の変化が起こっている場合にも細かく対応出来ることである。つまり、2つの色空間値との相関関係を保ちながら色変換が行えるため、より正確な色変換が行えることが特徴である。
【0099】
また、一般的なRGB、或いはBT.2020基準の4K、8Kのカメラやスキャナによる第1の測色値を、多数特定色チャートを分光光度計などの専用測色機器から第2の測色値に変換し活用できるので、安価で簡便なしかも高精度の測色値が得られる。
【0100】
(顧客の)第1の少数特定色チャートをRGB、或いはBT.2020基準の4K、8Kの入力機器で測色した場合は、(印刷会社は)入力機器の入力プロファイル等を用いL*a*b*値に変換する。(印刷会社では)第2の多数特定色チャートを分光光度計或はCIEXYZ入力機器等の専用測色機器で測色(L*a*b*)し、(顧客の)第1の少数特定色チャートの測色値に対し、不足している色パッチの測色値を多数特定色チャートの値から変換して作成する。また、(印刷会社の)第1の少数特定色チャートを別の(異なる)RGB、或いはBT.2020基準の4K、8Kの入力機器で測色した場合も同様に、(印刷会社の)第1の少数特定色チャートの測色値に対し、不足している色パッチの測色値を多数特定色チャートの値から変換して作成する。
【0101】
第1の少数特定チャートに絵柄が入っている場合は、第1の少数特定色チャートと第2の特定色チャートの同一の絵柄部分を画素レベルで合わせる画像重合(Image Matching)処理して、絵柄部分の同一地点を測色することにより、それぞれL*a*b*値に変換して、第1の少数特定色チャートの測色値を第2の多数特定色チャートの測色値に対応する色座標に変換することで、絵柄の測色値を多数特定色チャートの色空間に変換したときの値が得られる。
【0102】
多数特定色チャートにあって、少数特定色チャートにない色については、多数特定色チャートとの対応する色を予め測色しておいたL*a*b*値に共通の変換係数を掛けることで多数特定色チャートの測色値を不足している少数特定色チャートに加えることが可能である。ここでいう変換係数とは、多数特定色チャートを一度測色した値を基にその測色機器が測色した少数特定色チャートに不足している色を多数特定色チャートの測色値の中からその近辺の色パッチ2点或いは3点を検出し、そこから得られたxyz小色空間における座標の位置関係を変数としたものである。
【0103】
さらに、絵柄の測色においても同様に2つの色座標から作成した小さなxyz色空間の中の座標に絵柄の測色値を算出し、多数特定色チャートでも同様に2つの同じIDの色から作成した小さなxyz色空間で同じ比率となる座標を測色値に変換することで、目的とする色空間での絵柄の測色値を求めても良い。
【0104】
また、同一の時期に製作した多数特定色チャートを使って、第三者(遠隔地や第三国など海外)からの測定値のターゲットカラーテーブルの提供を受けて、自社で作成した入力カラーテーブルと組み合わせて活用しても良い。但し、多数特定色チャートが異なっても良いが、同じ照明環境と、同じ用紙等の媒体とインキ等の色材で作成したもの以外の条件を混合することは出来ない。
【0105】
尚、多数特定色チャートは事前に色評価基準とするカラータイル(経年色変化が極めて少ない白・黒・色タイルで基準色パッチとするもの)で色較正(基準色値のキャリブレーション)を行った基準の測色機器で測定して測色値を記録・登録しておく。また、紙やプラスチックなどに印刷或いはデジタルプリントされた特定色チャート自体の色の変化が起こらない有効期限を考慮し、一般的には1年毎に新たに作成し直されるが、1年毎の作成の場合に多少色が異なるだけであっても、新しい特定色チャートを作成する。その際は、前記の測色基準とする測色機器を用い各色パッチの測色値の変化を表す色差データを取得し、新しい多数特定色チャートには前回のチャートとの色差データを添付する。その色差データをCCS(の基準データ補正機能)に入力することでターゲットカラーデータ値の補正が可能なため、分光光度計等による新しい多数特定色チャートの再測定を省くことも出来る。尚、これらの特定色チャートは、塗装によるものも、染色によるものも含まれる。
【0106】
スキャナ等の入力機器は機器自身の色再現が経時変化を起こすこともあるため、再測定が必要であるが、日常も同様なことは必要であり、画像入力や測色時間は5000色でも1分未満程度の短時間で出来、殆ど手間も掛からないため、大きな問題となることはない。
【0107】
一方、スマートフォン等のカメラの色補正に関しては、ハンディなカードサイズ特定色チャートを作製し、カードサイズ特定色チャートの入力カラーテーブルを事前に機種ごとに再測定したデータをWebサーバ等にアップロードしておくことで、新しいカードサイズ特定色チャートを入手した時点でその(新しいカードサイズ特定色チャート)シリアル番号を選択すれば、新しい測色値の入力カラーテーブルを利用することが可能である。
【0108】
印刷会社と顧客との色合わせ方法について述べる。
第1の多数特定色チャートの数と第2の少数特定チャートは色数が異なるため、測色機器の色調整を行う場合、事前設定として、まず多数特定色チャートを顧客のプリンタで出力し、顧客のスキャナ等で入力した画像データを印刷会社が受け取る。この色チャートの画像データを印刷会社のCCSで測色し、プリント物の色チャートは印刷会社の基準となり、顧客側の測色機器とは異なる測色機器で測色する。さらにデジタル画像とプリント物の測色値テーブルのそれぞれを、多数特定色チャートと少数特定色チャートに分けて、入力カラーテーブル2種とターゲットカラーテーブル2種を作成する。そして、印刷会社では顧客プリンタの出力物である第2の少数特定色チャートに無い色パッチの測色値をCCSで前述の手法を用いて予測計算することにより、第2の多数特定色チャートに相当する入力カラーテーブルを作成する。次に多数特定色チャートの同じパッチ色の実測値と予測値を比較し、その差分を補正値として記録しておく。これで、次回からは顧客のプリンタで出力した第2の少数特定色チャートを、顧客のスキャナ等で入力したRGB画像データと同じプリンタで出力した印刷見本だけを受け取るだけで、スキャナ等の変動を含めた正しい予測値に補正する入力カラーテーブルを作成し、絵柄の色評価を正しいL*a*b*値で確認することが可能である。
【0109】
同様に上記の顧客のプリンタと印刷物による2種の多数の特定色チャートを印刷会社のスキャナ等でRGB画像入力し、各色チャートのパッチをマトリックス測色で各色パッチに分割して測色し、全ての色パッチのL*a*b*値に変換する。これらを、顧客のプリンタと印刷物の2種の多数の特定色チャートそれぞれを「RGB入力画像の入力カラーテーブル」とし、さらに少数と多数の特定色チャートとに分けることで4種の測色値テーブルが作成される。これらを保存しておくことにより、いつでも多数の測色値テーブルを参照することができるため、この後は少数の測色値テーブルしか無くても多数の測色値テーブルへの正確な色変換が可能となる。
【0110】
以上のように、第1の多数特定色チャートを少数測色値テーブルから多数測色値テーブルを作成するための事前作業として利用することで、プリンタや印刷機の色再現を正確にプロファイル化(色域を数値化)するだけでなく、スキャナ等を測色機器として利用する場合、スキャナ等の入力特性に合わせた色再現特性を細かく捉えることが、正確な色合わせを行う上で必要不可欠となる。
【0111】
また、少数特定色チャートを測色した入力カラーテーブルを作成する理由は、顧客のプリンタで出力した見本プリントの色が常に安定しているとは限らないため、色見本プリントの出力と同時期にこの少数の特定色チャートを一緒にプリントし、始めにプリントした少数の基準色チャートと一緒に顧客のスキャナ等で入力したRGB画像データを毎回受け取るだけで、スキャナ等の色変化と現在のプリンタの色再現を正確に読み取ることが可能なためである。
さらには、実際の見本プリントを分光光度計で測色しなくても顧客のスキャナ等で入力されたRGB画像だけを受け取るだけで、プリンタ出力された色見本画像の色をL*a*b*測色、色再現を数値で比較確認することも可能となる。
【0112】
印刷会社でも自社の印刷機での色再現にカラーマッチングを行ったプルーファー(色校正用の高精度カラープリンタをいう)で、顧客の画像データを出力し、自社のスキャナ等で入力しその画像を測色することで、L*a*b*値を算出して顧客のプリント出力した色見本との違いを色差ΔEやCMYK%値による差分に変換することで、印刷再現の違いや色補正量を容易に確認することが可能である。
【0113】
これにより、遠隔地の顧客からでも色見本データを基に色修正を行うことが可能となる。但し、画像を測色して比較する場合は、画像の位置合わせを行う「画像重合(image-Matching)処理機能」により画素ズレを1ピクセル以内にしておくことで、2つの画像の測色誤差をΔEでおよそ0.1以内にすることが可能である。
但し、画像解像度は一例として200dpiを基準とするが、解像度の違いや絵柄に柄や階調変化のある場所等では測色精度が変わる場合もあるので、同一にすることが望ましい。
【0114】
前記第2の多数色と第1の少数色の2つの特定色チャートの色パッチ数が異なるが、第1の対応する色チャートの内一部分はスキャナ等入力画像を測色した多数特定色チャートの測色値テーブルから、測色値のL*a*b*値の座標変換を行うことで、第1の少数特定色チャートの測色値からでも高精度な色修正またはCTP(Computer to Plate)カーブなどの色補正データを作成し、印刷では見本通りの色再現が可能となる。
【0115】
次に、特定色チャートに無い色域外の特色の管理方法について説明する。本発明は、特定色チャートの測色値の色域内にある色を高精度に合わせることができる点が特徴である。そして、本発明の1つの実施形態として、色域や色が異なる複数の色チャートを専用測色機器で個別に測色して一つの入力カラーテーブル及びターゲットカラーテーブルに付加することを可能として、特色の色管理を行う。これにより、特定色チャートの測色値の色域を超えた色を測色した場合でも、高精度の測色値が得られるようになる。
【0116】
これで、CMYKプロセスインキの色域を超えた特色であっても精度良く測色できる色空間を拡張して行くことが可能になる。そして、色域の広い特色インキで印刷された、或は特色の色チップをチャート台紙に貼った色チャート等を用い、測色することで、容易に特色にも対応して行くことが出来る。図17は、多数特定色チャート(IT8.7/4+グラデーションチャート)と、各色の特色インキの濃淡を表した特色チャートとを組み合わせた場合の、測色色域が広がるイメージを表す。ここで、特色のチップとは、特色インキを100%ベタ(Solid)や一部網点で印刷したものを小さくカットできる色見本チップのことをいう。また、特色チャートとは、ここでは高い彩度を持つ特色インキのベタの網点100%とそこから0%までの間の色の複数の階調を表すための多数の色パッチで構成されたものを表す。
【0117】
ただし、追加する特色を配置した特色カラーチャートは、これまでのCMYK測色値から色空間で極端に離れた特色だけを入力すると、色差の大きな色空間の色を検出できない場合が多く、補正値の精度が悪くなる恐れがある。このため、各色パッチ間の色差がL値を除いて計算した色差がΔE5以下になるように配置することが望ましい。従来のICCによる方法でも特色チャートのような入力カラーターゲット(IT8.7/2)の色域以外の測色ができるが、あくまでも予測値であった。
そこで本システムでは、CMYKプロセスカラーによる色チャートの色域にない色については、特色チャートの測色値によるターゲットカラーテーブルを使って、特色の色空間を補充して行くことが可能な方式である。(広色域の色空間での色差を数値的に十分に判別できることができるスキャナを利用する必要がある。)こうした方式は、ICCにはない方法であり、色域の広い色に対するカラーマッチング精度が不十分な場合があった。
【0118】
前記、第2の多数特定色チャート及び第1の少数特定色チャートにない色域外の高い明度と彩度を持つ特色等の個別の色の測色は、第1及び第2の測色値テーブルの色域を拡げた(拡張ID付きの)特色チャートを用い、RGBなど色域の狭い画像入力装置で測色した第1の測色値を、測色色域の広い専用測色機器で測定した第の測色値になるようにテーブル変換する。また、第1の少数特定色チャートの測色値に特色を補充することで、多数特定色チャートだけでなく、少数特定色チャートでもより広い色域の測色に対応できるようにする。ただし、実用上のほぼ全ての色域外の特色を測色することは難しいため、CIEXYZ入力装置による多くの特色パッチを含めた全色域を表わす色チャートを測色して第1の少数特定色チャートの測色値に追加補充することで、色域外の測色精度を高くする。
【0119】
CMYKプロセスインキによる特定色チャートを用い作成した入力カラーテーブル及び分光光度計等によるターゲットカラーテーブルの色域の外側にある鮮やかな色を測色すると、測色値は色域を超えた値の精度が下がるため、高い彩度を持つ特色インキによる特色チャートを用いた新たな測色値テーブルを作成し、CMYKプロセスインキによる入力及びターゲットカラーテーブルに付加統合して広色域での測色精度を高める必要がある。
【0120】
特色インキは、CMYKプロセスインキより鮮やかな色が多いため、特色インキとCMYインキを掛け合わせた色チャートを加えた特色混合色チャートを用いることがある。例えばチャートを作成する際にKインキの代わりに特色インキを使って印刷を行い、同様にRGB入力機器と分光光度計等で測色して作成した特定色チャートの測色テーブルと分光光度計等により測定して作成した測色値テーブルを作成する。
【0121】
作成した分光光度計等による測色値テーブルや入力機器で入力した特色チャート画像から作成した測色値テーブルは、同じ印刷媒体のCMYKプロセスインキの測色値テーブルとは統合せず分けて保存する。そして、「測色箇所がCMYKインキのみであるか」または「特色と掛け合わせたCMY色であるか」を、特色を含む元版のTIFF画像データを重ねて測色箇所を比較することで「特色を含む測色値テーブル」と「CMYKのみの測色値テーブル」のどちらかが自動選択され、最適な測色値が表示される。こうして得られたL*a*b*値から測色値テーブル変換をしてCMYKと特色の網点%やインキ補正量を算出することが可能となる。CIP3-PPFファイル(インキ量計算に必要なCMYK画像の絵柄面積を得るための刷版データを粗くした画像を含む印刷機へ渡すためのジョブ管理情報)を参照ファイルとして利用する場合は、その中の画像ファイルに特色も含まれているため、入力機器で入力した画像との位置合わせ等の画像重合処理を行った後、絵柄を測色すれば、実際の画像データに特色が含まれているかどうかがPPFと比較し判断できるため、TIFF画像の場合と同様に特色及びスミ版の分離が容易に行える。
【0122】
CCSで用いる、特色チャートの製作方法について説明する。従来の特色チャートは、インキメーカーに特色インキを発注して特色チャートを印刷していた。一方、本発明の特色システムでは、チャート台紙を作成し、インキメーカーが製作印刷し販売或いは提供しているカラーガイドのような色チップ集から、各クライアントや印刷会社が必要な色チップを切り取って作成する。また、印刷発注者が希望する色の用紙破片(ピース)を追加してチャート台紙に貼って特色チャートをつくることも出来、印刷色精度の優れた、安価で、しかも製作時間を掛けずに、顧客(印刷発注者)の要望に応じた専用の特色チャートを作成することが可能となる。
【0123】
これを、専用測色機器と汎用の画像入力機器で測色し、測色値テーブルを作成してCCEで色変換すれば、特色インキを高い精度で測色することが可能となる。これにより、印刷企業向けの特色だけを集めた製作に多額の費用を要する専用の特色チャートが、安価に容易に作成できる。また、前述のように特色インキによる特製の特色チャートを印刷せずに済むため、チャート作成時間に要する長期の時間が大幅に削減できる。
【0124】
CCEを利用することで、印刷発注者(顧客)が印刷物を掲示する場所だけでなく、さらに印刷発注者の顧客となる消費生活者等が印刷物を見る照明環境下で、希望する色見本を正確に測色する。「カラーガイドのカラーチップ、前回の印刷物、他社で印刷された印刷物、或いはインクジェットプリンタによる出力物」などを印刷発注者の指定する照明環境で要望する色を正確に測色できる。これで、今までは曖昧な言葉でしか伝えられなかった色補正に対する注文や色指示を数値で行うことが可能となる。さらに、前記の色見本をスキャナ等で入力して遠隔地の印刷工場に伝達することが可能となるため、印刷の色管理に必要な顧客や印刷発注者が色再現を望み要求する色(以下、「要求色」という)を短時間に正しく印刷することが可能である。
【0125】
デバイス依存の異なるRGB入力機器同士であっても、CCEを用いることにより、第1(顧客)のカラープリンタで出力した色を顧客要求色とし、別のRGB入力機器でも同じ測色値が得られるように基準の専用測色機器の測色値への色空間変換を行うことにより、正確な測色を行うことが可能である。
【0126】
この機能を応用して、顧客の要求する色を表す見本プリントなどの色を、顧客のスキャナ等で画像入力して、入力カラーテーブルとターゲットカラーテーブルを予め用意しておけば、スキャナ等を測色機器代わりに利用し、重要な絵柄やロゴ等の色を数値化することが可能である。また、入力カラーテーブルとターゲットカラーテーブルを予め用意しておくことで、印刷会社の印刷工程に顧客の要求色を表す見本プリントを送付する際には、印刷会社の測色基準となる分光光度計等の専用測色機器で測色した値にそのまま色変換できる。このため、前述の顧客の要求色を表す見本プリントの重要箇所の色を、正しい数値で印刷工程に伝達することが出来る。また同様に、印刷会社でも自社のスキャナ等を基準の測色機器に測色値を合わせておくことで、顧客からの色見本が無くても、顧客からの色見本画像と社内のプルーフを、印刷会社のスキャナ等で入力して重要ポイントの色を比較評価することが可能となる。
【0127】
また、インキメーカーがクラウドサーバから自社の色票(色パッチ)情報とインキ情報とを提供している。色票(色パッチ)情報には、色票(色パッチ)番号に基づくL*a*b*値の色空間情報、インキ情報には、C,M、Y、Kインキ各色の構成配合比率或いは特色の配合比率、耐熱、耐光機能を有するかなどの情報も含まれている。顧客は、この色票(色パッチ)情報とインキ情報を基に、必要な専用の特色チャートを作成してもよい。L*a*b*値の色空間情報を顧客の要求色として、印刷会社に印刷色再現の基準とすることが出来る。こうした方法もあるが、要求色を実現するシステムでは、色票を用いずに顧客からの見本絵柄や見本プリントの色チャートを用いることで、顧客の要求する色再現を実現する。
【0128】
顧客の要求色を再現するためのフロー図である図18を用い、実際の画像データ変換のフローと測色値テーブルの使われ方について説明する。顧客のスキャナ等を専用の測色機器代わりに利用する場合、少数特定色チャートのデータ(CMYK)を顧客のプリンタによるプリント出力物として、或いは印刷会社で印刷し、両者の第1の少数特定色チャートを第1の(顧客の)RGB入力機器で入力する。そして、第1の少数特定色データを、カラーコンバージョンエンジン(CCE)で測色し、第1の入力カラーテーブルを作成する。
【0129】
一方、印刷会社では、第2の多数特定色チャートデータを印刷機で印刷した多数特定色チャートの印刷物を、印刷会社の第2のRGB入力機器で入力して、CCEで測色値に変換して、入力カラーテーブルを作成する。次に顧客がプリント出力した第1の少数特定色チャートと印刷会社で印刷した第2の多数特定色チャートの印刷物を印刷会社の基準測色機器で測色し、2つのターゲットカラーテーブルを作成する。
【0130】
そして、プリント見本と校正刷りまたは印刷物との色を比較する場合は、第1のRGB入力機器と第2のRGB入力機器で入力した、それぞれの画像に対応する2つの入力カラーテーブルと2つのターゲットカラーテーブルをCCEにセットすることで、印刷会社の基準測色機器で測色したL*a*b*値を基に色差(ΔE)やCMYK%の差分を算出し、第1の測定値を(顧客の)要求色として、色差を確認できる。第2の測色値に色差があれば要求色に合わせるための元画像データに対する入力カラーテーブルを用い、CCEで色変換を行うことで容易に色補正画像を得ることが可能である。
【0131】
もし、顧客のプリンタから出力した色が経時変化を起こすことが懸念される場合は、顧客が色見本をプリントする際に少数特定色チャートを必ず一緒にプリントして、そのプリントを印刷会社に渡し、印刷会社の専用測色機器で測定すれば、容易に色の変化が判る。さらに測色値を補正した入力カラーテーブルを利用することにより、正確な測色結果が得られる。また、印刷見本が第三者で印刷されている場合は、事前に各種の用紙で印刷した少数の特定色チャートを顧客の入力機器で入力し作成した入力カラーテーブルと、印刷した多数の特定色チャートを第三者の入力機器で入力し作成したターゲットカラーテーブルの中から、同じ用紙または同じ用紙に分類されるものを選択してCCEにセットすることで、正確な測色や色比較が行える。
【0132】
また、印刷発注者のプリンタの色再現特性をプロファイル化することで、印刷会社の印刷プロファイルを印刷発注者のプリンタにセットして、印刷再現を顧客のプリンタで出力した色として色再現シミュレーションさせることが可能になる。これにより、要求色と印刷再現色の違いを、デザイナーや広告代理店をはじめ発注者自身でも事前に確認することが可能となる。しかし、それらを確実にするためには、要求色を正しい照明環境下で色評価する必要があるため、CCSを用いて色管理を行う。
【0133】
顧客に校正刷りの色の確認と校正の最終了解(校了)を得るためには、印刷データを作成する前にプルーフ出力物や印刷データ(PDF)を作成し、校正終了、即ち校了のサインをもらう必要がある。しかし多くの場合、顧客から色修正の要望を受けて、責任校了(責了)となる場合があるが、色修正の指示ニュアンスを印刷現場に口頭で伝えるのは非常に難しい。
【0134】
そこで、色修正で求められる色空間での移動方向(例えば商品の色の赤みを増やすなど)を、色の修正方向や修正量の数値表示や色見本帳チップや色パッチデータ(測色値)などで、指示できる色修正指示伝達手段と、色修正の色校正紙指示を記入するソフトウエアを顧客のPCにインストールしておいて、この色修正指示をインターネット経由でオンラインに行うことも可能である。
【0135】
もし、色修正指示があっても印刷では色再現できない色が指示された場合は、ソフトウエアを開発して、色校正で顧客の了解を得た責了画像と色補正画像の色の部分をマーキング表示やフラッシング(点滅)表示や基準画像と比較画像の交互表示を、単一表示或は複合表示させるなどのモニタ表示機能を用い、モニタ画面表示する。またソフトウエアで、責了画像と色補正画像のモニタ表示のその部分をマウスや他の入力機器等でクリックなどの指示を行うと、色の違いを色差ΔE表示や2つの色を色パッチとして並べて比較表示させるなど、絵柄の色修正具合を数値とモニタ画面上でも視覚的にも理解できるようにする。或はまたソフトウエアで、顧客自身でも誰でも、責了画像と色補正画像の2つの絵柄を並べて色比較したり、測色したりして色を数値で比較することを可能にして、色指示が正確に行える色修正指示伝達手段とする。
【0136】
もし、特色インキを使って色再現を重要視する場合は、特色パッチを専用測色機器またはスキャナ等の入力機器で測色し、特色を登録保存する際にその特色名と特色インキカラーコードを付けて、色表示することができる。この色名と特色インキカラーコードは、各インキメーカーの色名と特色インキカラーコードを使っても良い。色名と特色インキカラーコードで登録された情報には、特色のL*a*b*値とその特色に含まれる白インキや墨インキ情報を含むインキの組成(組み合わせた基本インキコードと名称や混合比、グラビアインキ等ではメジュームや溶剤の比率)が含まれる。登録した特色は、基準色として実際の印刷物の絵柄中の色との色差を数値比較したり、カラーチップとして自由に絵柄に重ねて比較したりできる。
【0137】
また、色校正を行った際に一部の色に多少の色修正の注文指示がついていて責了となる場合が多い。こうした責了の場合の数値によらない感覚的な色修正量の把握をどう行うかが現状大きな問題となっており、印刷物を納品した時にクレームとなるケースが少なくない。
【0138】
これらを解消する方法としては、様々な色空間の方向に画像の色を修正した場合の色再現の「カラーバリエーション・ガイド」という責了色をシミュレーション表示できるソフトを開発して、印刷発注者のプリンタで出力して確認をしてもらう。そして色修正すべき色空間方向を印刷発注者に判断してもらうことで、責了色再現のためのΔEやCIEDE2000による了解できる色差の範囲または限度を見出す。また、色修正の目標となる色のプリント画像を、印刷データ入校時に印刷会社の印刷データの色修正担当者に渡すことで、印刷現場に色補正方向をプリント画像として伝達したり、実際に測色することで数値による色修正方法の正確な伝達を可能にする。
【0139】
また、色校正を行っても一部の色に多少の色修正注文がついていて責了となる場合が多い。こうした責了の場合の色修正量の把握をどう行うかが現状大きな問題となっており、印刷物を納品した時にクレームとなるケースが少なくない。これらを解消する方法としては、要求色シミュレーションソフトのカラーバリエーション・ガイド(図19を参照)機能を開発して、中心に基準の色を配置して、様々な色方向に画像の色を修正した色再現のカラーバリエーションを印刷発注者のプリンタで出力して確認をしてもらう。そして修正すべき色の方向を印刷発注者に判断してもらう。これにより、色再現に対する期待値を見出すことや、色修正の目標となる色のプリント画像を入校時に社内(印刷会社)に持ち帰ることで、印刷現場に色補正方法をプリント画像として伝達したり、実際に測色することで数値による色修正方法の正確伝達を可能にする。
【0140】
図20は、印刷物の絵柄の中で顧客が修正したい箇所の色を測色機器で測色して、修正する色空間の方向を確認する場合、前記「カラーバリエーション・ガイド」をPCのモニタ上で希望する色を選択すると、希望する色の「デジタルカラーチップ」が絵柄の中央に表示される仕組みを表したものである。「デジタルカラーチップ」は、比較したい箇所に自由に移動できるため、色修正したい箇所の絵柄に重ねることにより色のイメージが異なれば、「カラーバリエーション・ガイド」でさらに色を変更し、欲しい色が見つかるまで自由に変更し、希望する色を決定する。希望する色が決定したら、印刷時の色補正量がΔL*、Δa*、Δb*の色差、CMYK%の差分またはマンセル系の色相関環による明度・彩度・色相で表示される。同時に色補正量を印刷工程に前記のL*a*b*値、またはCMYK%数値で伝達が可能である。また、ここで選択した顧客のロゴの色や商品カラーなど一定した色再現が今後必要な場合は、選択した色を「カラーバリエーション・ガイド」で登録し、いつでも「デジタルカラーチップ」として表示可能である。
【0141】
また、別に開発する「簡易色修正指示ソフト」は、顧客が自由に絵柄の色修正指示などを書き込めるレイヤーを画像のオーバーレイのように1枚持たせて置き、色修正指示内容を書き込む機能を使ってPCのモニタ画面で指示を行ったり、手書きで書き込んで指示を行ったりすることも可能とする(図21参照←図の修正あり!)。「簡易色修正指示ソフト」があれば、前述の「色修正指示画像データ」表示と「色修正評価結果ビュアー画像」とを切り替えて表示することも可能である。また、修正前と修正後の画像をあおり表示や測色値での色差を数値で確認できる。
【0142】
「簡易色修正指示ソフト」には、ΔE、ΔL*、Δa*、Δb*、CMYK%による差分の表示を行ったり、また印刷オペレータ用に開発する操作や表示切替え機能付きの表示ソフトウエアであるスーパービュア機能では、L*a*b*とCMYK%の基準画像の値、ドットゲインの違いやインキキーごとのインキ補正量の表示や、色修正指示の色シミュレーションを可能としてもよい。
【0143】
CCSによる色指示作業では、前述のように印刷発注顧客である企業担当者や広告代理店は、印刷見本となる印刷物を自社のスキャナ等で入力した画像データを、印刷会社に渡すか或いは送信するだけで済み、印刷会社では受け取った印刷見本画像データからCCSを使って色調整データを自動取得する。これで、顧客の要求する色をモニタやプルーフに色再現できるため、見本の色に合わせた色修正の結果を確認しながら印刷を行うことが可能となる。この場合、印刷会社は事前に印刷発注者のスキャナ等で入力した特定色チャートのRGB画像データと、同じ特定色チャートを自社の基準測色機器(分光光度計等)で測色した入力カラーテーブルを作成しておく必要がある。
【0144】
もし、印刷会社で色再現できない色があれば、前述の「簡易色修正指示ソフト」を使用して、印刷会社からはどの部分の色が再現できないかを知らせる3D色空間での表示や色評価レポートを表示・出力することができるため、顧客と印刷会社の両者は印刷の前に色再現の問題点を確認し、さらなる色修正を行っておくことが可能である。また、印刷会社においても自社のプルーファーで出力したプルーフを自社のスキャナ等で入力した画像データと印刷発注者から受け取った印刷画像データそれぞれに対応する(前回作成した)入力カラーテーブルを用いることで、直ぐに2つの画像をCCEとPCに接続されたモニタ画面で色比較と色評価及び色評価レポートを出力することが可能である。
【0145】
CCSでの自動色補正を行ったプルーフに対して、印刷発注者の校了サインを受け取ったら、実画像データに対する色補正を行う。この場合、印刷発注者のプリンタから出力された特定色チャートプリントの色再現をL*a*b*測色した測色値テーブルをプロファイル作成ソフトが受け取れるフォーマットに変換し、要求色をターゲット測色値にした印刷プロファイルを作成する。作成した新しい印刷プロファイルを用いRIP出力時に現状のC、M、Y、K(各網点%)値を、要求色の色再現に必要なC、M、Y、K(各網点%)に色変換する機能を用い、色補正済みのCTPプレート出力を行う。これにより、要求色を基準にした印刷を開始することが可能となる。尚この一連の作業をCCS装置としてRIPに組み込んだり、接続し情報処理を相互に連携させる。そして、RGB画像データは、目的の照明環境に合わせた色変換をRIPの解像度で行うことが可能になる。本発明に係る色変換システムで用いるRIPの概念を図24に示す。図24に示すように、RIP部は、本システムの色変換モジュールを包含した構成でもよいし、RIPとCCSとが独立した構成でもよい。現在のRIPに搭載されているCMMは、印刷条件に合わせたカラーマネージメントを行い、適切な印刷データを作成することに利用されている。本システムのCCEを独立させたものは、従来のRIP用CMMに変わる色変換エンジンとして利用するものである。この色変換エンジンの特徴は、全く異なる照明環境下に合わせて一般の5000Kの色温度による印刷再現に近い色再現を可能にする印刷データを作成することが可能であり、印刷物を見る場所の照明環境に合わせた色再現を可能にすることが可能となるため、印刷に利用価値を広げるものである。
【0146】
印刷会社においては、顧客に納品する印刷物の色再現チェックが重要であるが、特定色チャートを用いることで、色修正は自動的に補正が行われるため顧客の確認の必要性は少なくなることになる。しかし、印刷発注者が、印刷物の写真やロゴマークなどの重要な絵柄を測色して、印刷で再現できるかどうかを事前に確認していないと、絵柄はRGBからCMYKに変換される際に色域外にあると印刷で色再現が出来ずに、トラブルとなる恐れがあるため、このことを印刷の事前に顧客に対して説明し、妥協点を見出すか、広色域インキや特色を選択するなどアドバイスが必要である。
【0147】
そこで、印刷発注者から受け取った色見本プリント物と印刷用DTPデータ(PDFなど)を自社のプルーファーで出力したプルーフとを比較する際に、顧客が重要視する箇所の色が許容範囲内(例えば事前に取り決めした色差:ΔE)に入っているかを開発する色評価ソフトウエアで絵柄の中で数か所の任意の部分の色を測色したり、絵柄全面を最大で1万箇所ぐらいを均等の間隔と特定の測色スポットサイズで自動測色して平均または最大色差を検査し、色を保証する色品質評価証という形態で出力することで色のトラブルを無くすことが可能である。
【0148】
また、事前にプルーフで色再現ができない色があった場合は、どの程度色が合っているかの色差を数値を3Dの立体色空間で表すと共に、印刷結果が予想された違いとの差があるかどうかを印刷の事前に確認し、顧客の了解を受けることが重要である。色修正を行った場合は、同様に補正後の色が発注者の要望した色に近づいたかを確認し、場合によっては再度DTP(Desk Top Publishing=コンピュータによるページ編集)デザイン工程や、RIP処理時の色補正を行ってからプルーフに出力し直す。また、印刷のRGB色空間の色域外にある場合は、前述のようにこれを評価する色品質評価証の数値評価結果を顧客に伝えるなど、色再現の限度を通知することで色のクレームを防ぐことができる。また、色評価を行う際にCCSで顧客が必要とする照明環境に合わせた分光特性に対する補正テーブルを用いて、その照明下での印刷物等の測色値に変換することや、色変換シミュレーションソフトウエアを使って、ノートPCなどを用いて客先で判断を行って貰うことで、理解が得られ易い結果となる。なお、分光特性補正テーブルとは、測色機器による測色時または入力機器による入力時の照明光の分光特性で得られた測色値を、目的の照明光の分光特性で得られた測色値に変換するための、入力カラーテーブルとターゲットカラーテーブルを組み合わせたものを言う。
【0149】
RGB入力機器等は、その機器が固有に持っている機器固有の色空間で、「デバイスディペンデントカラー(device dependent color)と言い、RGB入力機器等で得られた色は固有の色を持つため、基準となる色として扱うことが出来ない。そこで、測色用の特定色チャートを使って、ISOの新規格であるD50(5000K)照明光のM1を基準にした照明光の分光特性で測色できる、分光光度計などの各種専用測色機器で各色を測色して対応する色を比較し、後述の統計的手法で評価する。これらの測色にあたっては、基準器に相当する専用測色機器を選定する。例えば、多数特定色チャートを各メーカーのさらに各種の複数の専用測色機器で測色したそれぞれの測色値から、統計的手法により得られたL*a*b*測色値と、各分光光度計で近いL*a*b*測色値を示した専用測色機器を基準となる専用測色基準機として数種類程度の機種を選定する。ここでいう統計的手法とは、平均値、中央値、あるいは最頻値等、種々の統計的数値の算出を含む。
【0150】
そしてこの基準となる専用測色機器の測色したL*a*b*値から、基準測色機器とする機種を選択し、これらの複数の測色機器の測色値から統計的中央値或は最頻値から得られたL*a*b*値をL*a*b*測色基準としたものを「ユニバーサルL*a*b*値」と定義する。
【0151】
また、この「ユニバーサルL*a*b*値」を基に、Adobe-RGBやsRGB等の、一般的に定義されている色空間に変換したものを、「ユニバーサルRGB値」と定義する。さらにまた、「ユニバーサルL*a*b*値」からCMYK値に変換したものを、「ユニバーサルCMYK値」と定義する。
【0152】
RGB入力機器等により特定色チャートを入力し、得られた機器固有の測色値を基に、前述のようにCCSで機器に依存しない「ユニバーサルRGB値」として変換され、色情報の流通・保存に活用する。
【0153】
専用の特定色チャートの測色に、CIEXYZカメラを用い入力した場合、そのCIEXYZ値は、以下の3次元色座標変換式を用い(照明光の分光特性を考慮した)L*a*b*値へと変換することが可能である。また、基準値とする分光光度計等により、前記の専用特定色チャートの測色値テーブルを作成し、L*a*b*値を補正することで、ユニバーサルL*a*b*測色を可能にする専用測色機器として利用できる。
【0154】
[数2]
L* = 116(Y/Yn)^1/3-16
a* = 500{(X/Xn)^1/3-(Y/Yn)^1/3}
b* = 200{(Y/Yn)^1/3-(Z/Zn)^1/3}
【0155】
尚、D50光源下の場合は、Xn=98.072;Yn=100;Zn=118.225とし、D65光源下の場合では、Xn=95.045;Yn=100;Zn=108.892を用いる。
【0156】
これまでのRGB入力機器等も、CCSとCCSの持つデータベースに保存されている各種ターゲットカラーテーブル作成の際に使用した媒体と色材による特定色チャートをRGB入力機器等により測色し、入力カラーテーブルを作成することでCCEにより色変換をする。これで、デバイスに依存しない色の基準となる「ユニバーサルRGB値」出力を行えるようにすることで、デバイスインディペンデントな入力機器として活用することが可能となる。
【0157】
図22は、CCSによる各種ユニバーサル画像データ生成を表すフローである。図左上のRGB入力機器等により得られた特定色チャートの画像は、各RGB入力機器それぞれ固有のRGB測色値を持つため、測色値テーブル作成部で固有のL*a*b*値に変換して入力カラーテーブルを作成する。次に、前述した複数の専用測色機器と統計的手法で基準となる各色の測色値を得る。
【0158】
まず、前述の特定色チャートに対し、さらに色基準とするカラータイル(経年変化が少ない色票)の測色値との違いを記したカラータイルによる特定色チャートとその測色値テーブルを用意する。次に、基準となる測色環境とISO準拠した数台の専用測色機器でその多数特定色チャートを測色し、その測色値の違いを統計的手法で処理することで「ユニバーサルL*a*b*値」が得られる。このように色標準として色の経時変化が極めて少ないカラータイルの測色値との色差分を加味したターゲットカラーテーブル使って得られたものを、次に説明するRGB共通の「ユニバーサルRGB値」の色基準とする。
【0159】
色材や媒体別に用意された、多数特定色チャートの測定値を前述の統計的手法で基準とした「ユニバーサルL*a*b*値」を、さらに特定の色温度のRGBカラースペースを定義するCIEXYZ色空間に変換してから算出されたRGB値を「ユニバーサルRGB値」とする。そして、第1の少数特定色チャートを使う場合は、複数の測定者がそれぞれ異なる測定機器で測色したそれぞれの測定値を、前記ユニバーサル基準のRGB値に変換する。そして、このユニバーサル特定色テーブルを用いて、それぞれのRGB画像データに変換したものを、「ユニバーサルRGB画像データ」と呼び、保存或は画像・映像情報として流通する。第1の少数特定色チャートにない色は、第2の多数特定色チャートの測定値から変換して補完(補充)する。
【0160】
また、5000Kや6500K等、基準となる照明光を用いたユニバーサルRGB値でのRGB画像に色変換することで、共通のデバイス非依存の色空間の絶対値RGB画像DB(データベース)ともなり、RGB画像の情報流通を普及する。さらに、CCEを利用することで他の照明光の色温度や分光特性での色再現への変換が可能なため、アーカイブ画像や映像での理論的には絶対値色空間での基準色となり、出力プリンタ(モニタ)等の出力(表示)プロファイルだけ用意すれば、例え1000年保存しても正確な色再現の元データとなる。
【0161】
図23(各種色域の違いを比較した色空間図)は、新しい規格のBT.2020及びデジタルシネマの色空間規格であるDCI/P3、そしてAdobe-RGBやプロセスインキ(CMYK)の各種の色域を表したものである。一般のRGBデジタルカメラやRGBスキャナ、及び広色域規格のBT.2020の4K、8Kビデオカメラなどの入力機器等は、sRGB色空間やAdobe-RGB色空間や、BT.2020色空間に対応させて出力をするものが多いが、入力されたRGB画像の色は、各社それぞれのフィルタやセンサや光源の分光特性によって異なるため、CCSを用いることで、目的の照明環境下での色再現を実現する「分光特性補正テーブル」の利用や各社の入力機器で得られた画像色の標準化を図ることで、色の信頼度を高めことが可能となる。
【0162】
すなわち、ユニバーサルRGB値の基準を設けることで、それぞれ異なる個別機器のRGB値を、ユニバーサル基準のRGB値に置き換えて、各社の入力機器で得られた画像色の標準化を図り、共通のRGB値とすることで、ユニバーサルRGBデータベースやユニバーサルRGB画像の情報流通での色のトラブルを解消するなど、利用者の利便性を図ることが可能である。尚、前述のBT.2020の色域においてもユニバーサルBT.2020として、RGB色域より広色域の仕様として位置づけて、ユニバーサルRGBと同様に扱う。このとき、BT.2020の基準色温度は6500Kであるのに対して、RGBの基準色温度は5000Kであるため、CCSで色温度変換を行うことが必要になる。色温度変換もターゲットカラーテーブルで行う。
【0163】
前記RGBの基準となるユニバーサルRGBは、入力機器の入力画像を基準色画像として活用する場合に役立つが、併せてこれは出力においても基準色となるユニバーサルCMYKがあれば、共通基準のプロファイル或はLUTとして活用できる。なお、ここでのLUTは色変換処理用ルックアップテーブルを指し、入力値それぞれに対応した異なる値を持つ変換テーブルのことを言う。
【0164】
しかしながら、例えば日本では、印刷業界はJAPANCOLORを基準としていて、まだ一部だが採用を始めている。同様に新聞業界はオフセット輪転機用に対応したNSAC、雑誌広告業界はJMPAカラーと、日本だけでもこれらの印刷カラー再現を統一した統合デバイスプロファイルとして基準化されていない。また、世界の印刷業界をみてもアメリカのG7(2007年にオフ輪転向けの規格と商業枚葉印刷向けの規格を一つにまとめたカラー印刷の管理法)、ドイツのFOGRA(「ISO12647-2」認証は、オフセット印刷に関する国際規格、「ISO12647-2」に基づくドットゲイン重視型管理/150線)といった各国各様の基準があり、出力機器メーカーもこれらの国で販売するためには、これら各種の印刷基準の統一を図るには各国の基準を満たす必要がある。
【0165】
そこで、それぞれの印刷標準とされるCMYKの標準的な色再現に基づく特定色チャートを作成し、前述の方法で得られたユニバーサルL*a*b*値をベースに、CCEで変換し、ユニバーサルCMYK値を得る。そしてユニバーサルCMYK値を活用するには、各種の標準印刷基準をベースにした各種インキと印刷条件で、数種類の多数特定色チャートを印刷する。これら印刷条件毎に数種類の多数特定色チャートの各色パッチを測色し、得られた数種類の測色値を統計的手法で標準的な測色値を得る。さらに、これを標準的な中間の印刷プロファイルとして位置付けてデータベース化するとともに、各国や業界基準の出力用中間プロファイルに変換して活用する。そのために、ユニバーサルCMYKや各国や業界基準の出力用中間プロファイルをCCSのデータベースに保存し、活用する。なお、中間プロファイルとは、共通の色再現を可能にする印刷プロファイルのことである。
【0166】
これにより、ユニバーサルCMYK値をより標準的な出力色管理基準として扱うことを可能にする。このようにユニバーサルCMYK値から既存の出力用中間プロファイルに変換し、利用することで、世界各国や業界基準の出力用中間プロファイルへの橋渡しが可能となる。そして、ユニバーサルCMYKから各種の印刷標準への変換を行うことで、色評価を各種の印刷標準で行い、色修正指示情報やドットゲインの補正量及び印刷のインキ量の補正指示等、各種の印刷標準環境下での印刷の色管理が容易となり、世界のどこでも同じ色に、プリント、印刷できる統合された色管理の環境が整う。また、プリンタや印刷機による印刷作業を世界のあらゆる地域に向けて同じ色管理で行うことが可能となる。
【0167】
ユニバーサルCMYKを実現するためには、まずRGB入力機器等と(分光測色計の)L*a*b*またはXYZ測色機器とCCEを用い、個々の入力機器や専用測色機器による色チャート測色で得られたプリント物のL*a*b*変換値を、ユニバーサルL*a*b*値に変換できるようにする。つまり、ユニバーサル測色できる環境を用意し、これらを使って、各国や各種の印刷標準(各CMYKベタ部のL*a*b*値、ドットゲイン等)で特定色チャートとIT8.7/4チャートを印刷する。さらに、ユニバーサルL*a*b*測色を行い、CMYK値に変換したものを各国や各種の印刷標準のユニバーサルCMYKとし、各国や業界別に存在する基準のCMYK共通プロファイルとして配布することで、L*a*b*基準値を明確な印刷プロファイルとして活用することができる。また、ユニバーサルCMYKを用いることで、互いが異なる印刷標準を利用していたとしても、自社の入力機器や専用の測色機器もCCSと組み合わせることで、各種CMYKの掛け合わせの色がユニバーサルL*a*b*値で表して比較したり、異なるCMYK標準間での色変換も可能なため、互いに色を合わせたりすることが容易となる。実際の運用では、固有の入力機器から得られた入力値を、L*a*b*値に変換して、色材、光源、媒体毎のターゲットカラーテーブルを用い、前述の方法で得たユニバーサルL*a*b*値に変換してそれを基に、さらに各国基準のL*a*b*値で表すCMYKカラースペースに変換して、運用する。
【0168】
尚、前述のように業界別のJAPANCOLORなど各種の業界標準のCMYKへの変換も、ユニバーサルCMYK値から変換を行うことで、目的の照明環境で同様な色再現を実現する印刷物を得ることが可能である。このように、これにより、基準となるユニバーサルCMYK値は、変換LUTで各国のそれぞれの基準とする印刷プロファイルとの測色値変換が出来る。
【0169】
上述のように、ユニバーサルL*a*b*及びユニバーサルRGB、ユニバーサルCMYKを用いることで、例えば世界中どことでも遠隔地の印刷工場の各印刷機に、特定色チャートを印刷して、管理センターに送っておくことで、管理センターではCCSを使って各工場の印刷機毎の印刷データを変換し、これを各印刷工場の印刷機で使用するように送信して、どこの印刷工場でそれぞれの印刷機で印刷しても、殆んど色変化のない印刷物を提供する印刷色管理ネットワークシステムとして構築することが出来る。
【0170】
続いて、カメラに、CCSを組み込む場合について説明する。デジタルカメラやスマートフォン内蔵カメラ、或はRGBより広い色領域を持つBT.2020基準の4K、8Kビデオカメラを測色機器として用いる場合は、撮影(入力)できる画角全体を画像として画像を取り込むと、照明光の照度ムラや中心と周辺とでは入射角が変わるため、安定した測色値が得られない。特に異なる用紙や色材を比する場合は、被写体の中心と周辺では大きく異なる場合がある。
【0171】
そのため、照明光の位置をどのように調整しても、全面の白ムラ、コントラスト、階調、色にムラが発生するという問題がある。そこで、照明光の照射軸を45度になるように、長い照明フードを取り付けることで、周囲に広がる光をカットして印刷物や特定色チャート面では光の入射角が一定になるようにしたり、ムラの出ない範囲(平均差ΔE0.3以内)を測色範囲として限定したりすることで、改善を行う。
【0172】
また、他の方法としては、撮影画面の周辺と中心付近での差を補正するため、全画面を縦横にマトリックス状に分割(例:7×7=49分割)し、各分割画像の色チップにIDを付けておき、エリア毎に少数特定色チャートを自動測色して、色再現の違いがあれば、各エリア別に「入力カラーテーブル」を作成する。つまり、分割したエリア毎に異なる「入力カラーテーブル」を用いて色変換を行うことで、撮影画面全体の色再現ムラを補正することを可能にするものである。マトリックス分割数を決める場合は、始めに紙白と色材(CMYKインキを刷り重ねたもの)が5%から100%(ベタ=solid)の色チャートを30×42mmの範囲ぐらいに組み込んだ「ムラ検出チャート」として撮影画面全面に配置したものを撮影し、全てのパッチを測色することでムラの大きさや分布を検出して補正値を決定する。また、前記の照明光の入射角度調整を行った上で、分割エリア毎の色補正を行うことで、入力ムラを抑えることが可能である。
【0173】
以下、印刷会社での一般的な運用事例を示す。例えば印刷営業所では、印刷用のDTPデータからプリントした校正紙1を顧客に持って校正に行く。顧客の意見をもとに、前述の色校正シミュレータで色確認をして、CMYK%や色差で数値表示する。その色校正データを印刷営業所から、印刷本社に送信する。印刷本社では、顧客が色校正した画像の測色値データをもとに、DTPデータを色補正し、印刷営業所に送信する。印刷営業所では、色補正し送信された、DTPデータから校正紙1をプリントしたプリンタで校正紙2をプリントする。校正紙1と校正紙2の色を測色機器で測色し測色値を比較して、色校正指示の色差以内になっているか確認する。そして印刷営業所のスタッフが、プリントした校正紙1と校正紙2を顧客に持って再度色校正を行う。この色校正作業を繰り返す。そして顧客の意見で、校了や責了となった場合は、印刷本社に校了、或は責了の連絡をする。
【0174】
校了の場合は、本社にメール連絡し、確認返信メールを貰う。また責了の場合は、色修正する印刷部分とそのL*a*b*値及び色差かCMYK値を本社に送り、或は色シミュレーションした時の補正値データを本社に送信する。印刷本社では、校了或は責了だが、場合によっては印刷データの色修正シミュレーションを行い、DTPデータの最終チェックや色補正をして、印刷DTPデータの画像やベクターデータから網点を形成するラスターデータに変換するRIP処理を行う。次に刷版をCTP(コンピュータtoプレート)レコーダーで出力し、このCMYKインキ用などの刷版を印刷機に巻き付けて印刷を行う。このとき、印刷工程における試し刷り、即ち刷り出し印刷物と、校了紙をスキャナ等で入力し、入力されたRGB画像からRGB測色値に変換し、さらに分光光度計で測色した色パッチのL*a*b*値を基に、スキャナ等で入力し対応する色パッチのL*a*b*値をプロファイル或いはLUTで変換して、差分比較を行い、色差ΔE値が問題ない色差内であれば、印刷を行う。印刷機では色調整できない範囲を越えた色差の時は、プリプレス部門やDTP部門に調整できない色差外のデータを送り、色修正する。また、印刷会社の色校正と顧客のプリントで事前に色差基準を設定して確認しておくことで、印刷時に色が合わないという問題を防ぐことが可能である。
【0175】
次に、本発明の色変換システム(CCS)を、広域ネットワークやLANを活用して使用する実施の形態について説明する。A地点にある少数特定色チャートを設定したスキャナ等で測色し、そのデータをB地点或は測色サーバに送信する。B地点では例えば多数特定色チャートを測色し、保存或は測色サーバに送信する。B地点のCCSでは、測色サーバに同一Job名の測色データが揃ったら、入力カラーテーブルまたはターゲットカラーテーブル作成のための照明環境や媒体、色材などの条件テーブルを選択して、測色値やRGB画像をL*a*b*値に変換する。このとき、別のCCSサーバにネット接続して、出力目的のターゲットカラーテーブルを選択して、ダウンロードさせて使用してもよい。また、別のCCSサーバに、出力目的のターゲットカラーテーブルを選択して、同時に自社の入力カラーテーブルと、画像データをCCSサーバに送信して、色変換処理を行い(依頼し)、処理済みの画像データを受け取って、それを使用してもよい。
【0176】
インターネットを用いて測色する他の方法についていくつか説明する。
運用例:
1.A地点にあるチャートを測色し、そのデータをB地点或は測色サーバに送信する。
2.B地点では例えば多数色チャートを測色し、保存或は測色サーバに送信する。
3.測色ユニットでは、測色サーバに同一Job名の測色データが揃ったら、出力のための照明環境や媒体、色材などの条件に合わせた測色値テーブルを選択して、色差や出力のためのL*a*b*値に変換する。
【0177】
特定色チャートの測色データをネットワーク経由で、印刷データと一緒に必要なら暗号化し一方通行で通信し、各工程でのアクセス通信する方法について説明する。特定色チャートのRGB測色データをネット受信し、前述の方法でユニバーサルL*a*b*値から、ユニバーサルRGB又は、ユニバーサルCMYK測色値に変換する。特定色チャートの測色値データはネットワークを介し、印刷データと一緒に必要なら暗号化し、別の会社の次の工程に一方通行通信、または各工程へ順次アクセスし、通信を行う。また、ネットで測色値の自動変換処理をするために、RGB測色データをCIEXYZ測色値に自動変換する変換テーブルを指定するタグ情報を付加して送信するとよい。
[送信側(顧客側)]
〈1A〉第1測色チャート或は第3のカード型色チャートいずれかを、送信者の測色機器で測色した測色値を印刷会社に送信する。
[受信側(印刷会社側)]
〈1B〉送信者から送信された測色チャートの測色値と、受信者が第1測色チャートから第3のカード型特定色チャートいずれかを受信者の測色機器で測色した測色値との、対応する色について、送信者或は受信者の特定色としての活用方針により、特定色値に色変換する。
[送信側(顧客側)]
〈2〉第1の少数特定色チャート或は第3のカード型特定色チャートを第1のRGB入力機器等で得た画像(及び測色した第1の測色値と)を印刷会社に送信する。
[送信側(印刷会社側)]
〈3〉第1の少数色チャート或は第3のカード型特定色チャートのデータを出力し、その出力したチャートプリントを第1の測色機器で測色した第1の測色値と、チャートプリントを印刷会社に送信する。
[受信側(顧客側)]
CIEXYZ値:CIEXYZ値 CIEXYZ値:RGB値 RGB値:RGB値
また、遠隔地で「異なる測色機器」の測色値を、他方の測色値に変換することで、どんな場所からでも簡便に必要な測色値を得ることが出来る。
【0178】
また、別の使用例としてCCEは、色の変換の完全可逆性を活かして、出力側を色暗号とすることが出来る。つまり、基準RGBを暗号変換用のLUTで変換し、表示色とする。暗号変換にパスワードを加えることで、パスワードを知らないと復号色変換できない方式で色暗号とすることが出来る。
【0179】
「色評価結果ビュアー画像」や「色指示シミュレーション表示画像」は専用データであるため、一般の画像処理ソフトでは表示できない。また、間違って他の顧客に送ってしまった場合でも、画像データに埋め込んだパスワードと登録された顧客や自社の担当者が持つ「簡易カラーコミュニケーションツール」または「カラーコミュニケーションソフト」が持つID或はパスワードが合わないと、画像を見ることができないので、安全性が保たれる。
【0180】
また、前述のセキュリティーロック付のデータとして送信し、別便によるパスワードをメールに分けて送信したり、安全な暗号化によるセキュリティーシステムを使用して情報漏洩が起こらない仕組みを用いて行えばさらに安全性が高まる。
【0181】
A地点(例:東京)に印刷色管理室があり、B(例:埼玉)、C(例:熊本)、D(例:パリ)、に印刷工場があり、それぞれ数台の印刷機、デジタル印刷機があるとすると、例えば東京のファッションのメーカーは、印刷会社にどの印刷工場で印刷しても同じ色で印刷出来るように望む。今まではこの色合わせが出来なかったので、1か所で印刷をして世界の各地に配送する必要があった。しかし、大量の印刷物だと物流コストの採算が合うので、賃金の低い国で印刷して、船便で配送して来た。急ぎもあるので、航空便との併用で行ってきた。しかし、大量に印刷するクライアントは限られてきて、さらに通信網の発達によりネットの活用と現地印刷で、時間の削減と配送コストの削減が実現でき、ネットを活用して印刷するクライアント数は極端に多くなっている。しかし、大きな課題は、印刷の色合わせが出来ていないという現状がある。
【0182】
本システムでは、例えばA地点に印刷色管理室があり、B、C、Dの印刷工場の各複数の印刷機がある印刷会社で、クライアントの印刷したい紙と、多数色チャートを用いそれぞれの工場の印刷機で印刷をしたものを事前にA地点の印刷色管理室に送っておく。印刷色管理室では、最も整備された印刷機やデジタル印刷機を基準印刷機、基準デジタル印刷機として、この印刷機で多数の特定色チャートの印刷を行い、印刷色管理室の専用測色機器で測色しL*a*b*値による基準ターゲットカラーテーブルを作成する。そして、送られた各印刷工場の多数の特定色チャートの印刷物をそれぞれ印刷色管理室の専用測色機器で測色し、印刷機毎の測色L*a*b*値を表すターゲットカラーテーブルを作成する。
【0183】
各印刷工場では、さらに、基準ターゲットカラーテーブルと、印刷工場に設置した測色用スキャナ等とCCEで作成した入力カラーテーブルを、CCEにセットすることで、印刷工場に設置した測色用のスキャナ等で、印刷物の正確な測色が可能となる。実運用において、各工場で、刷り出し印刷物をスキャナ等入力し、印刷色管理室から送られたCCEの測色値テーブルを使って、見本印刷物と刷り出し印刷物を比較し、印刷機のインキコントロールを行う。色差ΔEやCMYK%差分をモニタ表示で確認できるので、印刷オペレータは、色管理が容易になる。また、印刷機とのオンラインインターフェイスを用いれば、測色、分析の後、自動インキコントロールでの印刷を可能とする。
【0184】
さらに、図25は、色評価工程において、顧客色見本と印刷会社で校正用として出力したプルーフ画像の色の違いを特定色チャートを使って分析するフロー図である。そして、これらの工程で得られたL*a*b*値やCMYKによる差分の情報を基に、1.色補正情報を出力したり、修正情報パラメータをCCSが作成し、2.自動色修正ソフトに渡して直接色修正を行う。また部分的な色修正が必要な場合は、市販の色修正用の3.DTPソフトに色修正値情報を渡し色修正することが可能である。この際、顧客から入手した元画像であるRGB画像を用いれば、ホワイトバランス、黒のバランス、グレーバランス、色バランスの様に色空間全体の色変換を容易に行うことが可能である。
【0185】
また、色の違いをプロファイルで変換を行うことで、RGBまたはCMYK画像に於いても全ての色を個別に色見本に合わせることが可能である。これらの色補正を行う場合は、顧客からは色見本の印刷画像だけでなく、同じ条件でプリント出力した「CMYK特定色チャート」を添付してもらい、分光光度計等の専用測色機器で測色することで、プリンタの色の変化を正確に捉えた色修正を行うことが可能となる。これにより、これまで熟練した技術者が行ってきた色修正を機械化できると共に色の好みに対する修正に関してもヒューマンエラーを無くすことも可能となる。
【0186】
色評価方法としては、紙白の色差、グレーバランス、記憶色/ロゴカラー、要求色の色差、全測色点の色差、全測色点の総評価、紙面のマトリックス分割での測色評価、再現不可色の特定の項目を色差で評価することが可能である。さらにまた、階調再現の違いやCMYKインキの全体の色再現のバランスは、グレーバランスやドットゲインの比較で確認し、評価及び画像の修正のための情報として出力することが可能である。
【0187】
ここでは、特定色チャートだけを用いてどのように顧客のプリンタなどで出力した色見本の色を印刷会社の印刷機で印刷再現可能にするための実際のシステム構成と作業ステップについて述べる。
【0188】
図25は、顧客のプリンタなどで出力した色見本の代わりに特定色チャートを同じプリンタで出力を行い、多数特定色チャートと少数特定色チャート(またはカードチャート)を使った色合わせフロー図である。
【0189】
顧客は、「(少数)特定色チャートデータ」を用い、発注者のプリンタで出力し、そのプリント出力した「(少数)特定色チャートの入力データ1」と発注者のスキャナ等で読み取った「(少数)特定色チャートの入力データ1」と「RGBスキャナ入力カラーテーブル」と「印刷用画像データ(個別RGB画像)」を印刷会社に渡す。
【0190】
印刷会社は、発注者から受け取った「特定色チャートの入力データ1」を「スキャナ等の入力カラーテーブル」を用いて「特定色チャートの測色値テーブル作成プログラム」で発注者のスキャナ等の色再現をL*a*b*値で表す「特定色チャート測色値テーブル(A)」を作成する。
【0191】
次に印刷会社は、発注者がプリント出力した「特定色チャート」を分光光度計で測色し、「分光光度計等による測色値テーブル作成プログラム」で発注者のプルーフの色再現をL*a*b*値で表す「分光光度計等による測色値テーブル」を作成する。
【0192】
さらに印刷会社は、「特定色チャートデータ」を印刷会社のプリンタで出力し、印刷会社のスキャナ等で読み取って「特定色チャートの入力データ2」を作成する。また、印刷会社で作成した「特定色チャートの入力データ2」と「(少数)特定色チャートの入力データ1」の2つのデータの画像重合処理を行い、特定色チャート全ての色パッチの同一箇所のRGB値を比較する。次にRGB値をL*a*b*値に変換し、目的の印刷媒体の色チャートを分光光度計で測色して印刷用の色再現を表す測色値テーブルを作成する。それら前述のデータ1と2の2つの測色値テーブルを用い、異なる部分の色をL*a*b*値で測色し、RGB変換した値でRGB画像をトーンカーブ(階調)補正やポイントカラーコレクション(特定の狭い範囲の色のみを修正する機能)など各種色修正機能の中から色品質管理プログラムが導き出した階調補正または色修正方法で自動または手動で色補正する。
【0193】
以下の説明は、印刷(受託者)会社のプルーファーで出力した特定色チャートは、印刷出来る色空間を表し、印刷発注者である顧客のプリンタで出力した特定色チャートは、顧客の色見本(要求色)である絵柄の代わりを表す。そして、印刷出来る色空間と色見本との違いを補正する色合せを自動化したり、或は色再現できない場合に顧客に対して事前にその度合いを表示したり、顧客との色補正範囲の合意点を見出すための色管理方法を表すワークフローの説明である。
【0194】
印刷会社は、少数または多数の特定色チャートを測色するために以下の機器が必要となる。
1.分光光度計とXY自動測色ロボット(または、自走式測色システム)
2.カラースキャナ或いはカメラ
3.マトリックス分割測色と測色値テーブル作成ソフトウエア(専用ソフト)
4.測色機器の色較正ソフトウエア(専用ソフト)
5.色評価と色補正ソフトウエア(専用ソフト)
6.カラーコミュニケーションソフトウエア(専用ソフト)
7.印刷プロファイル作成ソフトウエア
8.WindowsなどOSの汎用PC
9.その他(DTPソフト、色修正ソフト、RIP、プルーファー、CTP、印刷機、等)
10.多数特定色チャート及び少数特定色チャート
発注者に必要な機器システム構成は、カラースキャナ或いはカメラ、Windowsなどの汎用PC、少数特定色チャート等である。
【0195】
印刷会社(受注者)は、顧客(印刷発注者)から印刷を受注する際に、以下のものを受け取る。
1.少数特定色チャートのプリント物:
印刷発注者と印刷会社が共通に保有する第2の少数特定色チャートデータ(CMYK)を、顧客の保有するプリンタで出力したプリント物
2.DTPデータ:
文字や画像を含む印刷用レイアウトをPDF等のファイルにしたデータ
3.印刷用色見本プリント物(要求色):DTPデータを前記の顧客のプリンタで出力した顧客の要求色を表すプリント物
【0196】
印刷発注者は、保有するプリンタで少数色チャートをプリント出力し、これをさらに印刷発注者の保有するスキャナ等で入力して得たRGB画像データを印刷会社が受け取り、印刷会社は、そのスキャナ等の入力プロファイルでL*a*b*画像データに変換する。次にチャート全ての色パッチを一括して測色する「マトリックス測色機能」で、特定色チャートの各色パッチを測色して、印刷発注者スキャナの第3の測色値テーブル(図26)を作成する。これは、CCEの入力カラーテーブルとなる。
【0197】
この作業により、印刷発注者のプリンタで出力した色チャートを要求基準色とした場合の、印刷発注者のスキャナ等での、要求色の色再現特性を数値化することが可能である。これにより、印刷発注者の保有するプリンタ出力の色特性や、スキャナの入力画像特性は、機器毎に異なるので、予め多数特定色チャートを専用測色機器(分光光度計或は分光濃度計、分光放射輝度計、CIEXYZ入力機など)で測色し、測色値を比較し、予めテストした特定色チャートの測色結果から、顧客に推奨するRGBプリンタやRGBスキャナ等を選択して使用することで測色値の精度が安定する。
【0198】
同様に印刷会社では、印刷発注者のプリンタで出力した少数特定色チャートと同一データを印刷会社のプルーファーで出力する。さらに印刷会社のスキャナ等で入力して得たRGB画像データを、同スキャナ等の入力プロファイルと「色変換プログラム(ICM2.0等)」を用い(スキャナ等で入力した少数特定色チャートの)RGB画像データをL*a*b*画像データに変換する。続いて、チャート全ての色パッチを一括して測色する「マトリックス測色機能」を使って、特定色チャートの各色パッチを測色して、印刷会社プルーフの色再現領域を表す第4の測色値テーブル(図26)を作成する。これも、CCEの入力カラーテーブルとなる。これにより、印刷会社のプルーファーで出力した色チャートを基準色とした場合の、印刷会社のスキャナ等の色再現特性を数値化することが可能である。
【0199】
印刷会社は、印刷発注者から受け取った印刷発注者のプリンタで出力した少数特定色チャートのプリント物及び、印刷会社がプルーファーで出力した少数/多数特定色チャートのプルーフ出力物を、専用測色機器(分光光度計或は分光光度計、分光放射輝度計、CIEXYZ入力機など)で測色し、これら2つの出力物である特定色チャートに対する正しいL*a*b*となる第1の測色値テーブル(図26)を作成する。これを、それぞれのターゲットカラーテーブルとする。これにより、印刷発注者のプリンタで出力した色チャートと印刷会社のプルーファーで出力した色チャートの、それぞれの色チャートのL*a*b*基準値を得ることができ、印刷画像の測色も同様に行えるようになる。
【0200】
こうしてスキャナ等画像を用いても正確な測色が行えるため一般的なプロファイル作成ソフトが読み込めるIT8.7-4チャート形式の測色値テーブルを一般のプロファイル作成ソフトに入力し、印刷用のICCプロファイルを作成することで、要求色を表すプロファイルが作成可能となる。こうして作成した要求色を表すプロファイル(A)の色空間の色を、印刷会社の印刷プロファイル(B)の色空間で再現するため、例えばRIP時にこれら(A)と(B)の2つのプロファイルを用いプルーフ出力することで、印刷の色空間内での色再現を可能にする。
【0201】
これにより次回からの入稿時には、少数特定色チャートのプリント物は不要となる。つまり、文字や画像を含む印刷用レイアウトをPDF等のファイルにしたDTPデータとDTPデータを前記の顧客のプリンタで出力した要求色を表す色見本プリント物だけ渡すことで済むことになる。但し、印刷発注者のプリンタとスキャナ等が常に一定した色再現をしている必要があり、難しい場合もしくは安定するまでは毎回少数特定色チャートのプリント物とスキャナ等による同チャートの入力画像を受け取るようにすると良い。
【0202】
デジタル印刷機は、印刷用画像データを作成するときにターゲットの印刷条件のプロファイルを選択すれば、ある程度印刷物に合わせた色再現をすることは可能である。しかし、デジタル印刷機の場合、色見本と印刷物の色が合わなくてもデジタル印刷機上では色を変えることが出来ない。そこで、本システムでは、元版データであるRGB画像の絵柄の色を直接測色して色評価および指定した色や校了紙を基に自動補正を行うことや、色補正情報を外部の色修正プログラムに数値で伝達することができるため、デジタル印刷の前工程のプリプレス部門に戻して色修正ソフトでマニュアルによる色補正を行うことも可能である。
【0203】
デジタル印刷機の場合は、色管理にカラーバーまたはコントロールストリップは使わないが、デジタル印刷機のキャリブレーション次第では十分安定した色再現は可能である。従って、POD(Print On Demand)などのデジタル印刷機の色管理は、印刷データを作成するソフトで行わなければならない。そこで、デジタル印刷で作成したターゲット媒体の色チャートで作成したプロファイルと、各種印刷条件のプロファイルを作っておけば(測定データの変換により)正確な測色が可能となる。またデジタル印刷条件に合わせたプロファイルを使ってL*a*b*変換してから他の印刷条件のプロファイルで色分解すれば、正しい色変換データを作成できる。一方、色調整のマッチングが十分でない場合に一般の印刷機のように色再現をコントロールすることができないため、色を濃くしたり薄くしたりといった補正が行えない。つまり、これまでは全ての色修正はプリプレス側の画像修正ソフトに戻して絵柄の色を修正しなければならなかった。
【0204】
CCSの色管理機能では、元データであるRGB画像の絵柄の色を直接測色して専用の測色機器の測定値に変換した値で色評価および指定した色や校了紙を基に自動補正が行える。また、以下の方法でプリプレス工程に色修正情報を提供することも可能であり、色修正ソフトでマニュアル(手動)操作により色補正結果を確認しながらじっくり色修正を行うことも可能である。色評価方法としては、以下の色比較や色評価機能を有する。紙白の色差、階調再現、グレーバランスの比較、記憶色、ロゴカラー、商品等の重要な色のスポット(部分)測色、各測色点の色差ΔE、全測色点の総評価、マトリックス測色評価等である。
【0205】
特に従来の印刷機での印刷物とデジタル印刷機の印刷物を色比較した場合に、ロゴ等の色を含め商品カタログの色が異なるという問題が起こり易いことから、印刷面の重要な箇所の色チェックや個別の色合わせは欠かせない。また前記印刷面の色差分データを、印刷システム全体の色調整のためのフィードバックを行うことで、正しい色調整方法を導き出すことができるため、デジタル印刷機を含めて、これまで目視判断に基づく絵柄の色管理を、官能検査から数値検査に転換することが可能となる。
【0206】
「マトリックス測色」は、基準画像と比較画像のサイズと位置を合わせる画像重合(イメージマッチング)処理を始めに行い、例えば印刷機の場合は各インキゾーン(印刷機の用紙幅に対して個別にインキ量をコントロールできる最小単位の幅で、その幅にある絵柄全てのことである)の範囲で、或はさらに小さく分割し、印刷絵柄全面を縦横のマトリックス状に分割して測色し、各マトリックス内の平均ΔEを算出し、その結果をマトリックスの各枠に色で分けて表示することができる。また、前記分割した各マトリックス内の平均L*a*b*値を求め、印刷プロファイルでCMYK変換を行った後、絵柄面積率で割ることでCMYK%の差分値を求めたり、インキ補正数として表示したりすることが可能である。なお、ΔEの計算式は以下の通りである。
【0207】
[数3]
ΔEab=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2
【0208】
また、平均ΔEの計算は次の通りである。
【0209】
[数4]
平均ΔE=
{(ΔEab)1+(ΔEab)2+(ΔEab)3+・・・(ΔEab)n}÷n
【0210】
さらに、マトリックス測色機能を用い絵柄全体を測色することで、印刷物全体の色ムラや特定の色が大きく異なって印刷されている箇所があると、モニタ画面に、その範囲にあるマトリックス枠に色が赤く変化して見えるように設定しておけば、重要な色の部分に問題がないかどうかを瞬時に判断できることが特長である。
【0211】
こうしたマトリックス単位の分析を行った後に、重要な印刷絵柄箇所のスポット測色を行い、適正な部分と異常のある部分を分けて色評価と分析が行える。また、色補正を行う手段として、インキ量の補正で色合わせが出来るのか、またはCTPカーブの補正で行うのかなど、どの工程での色補正が必要なのかを、短時間で判断することが可能となる。
【0212】
本実施形態のCCEは、デジタルカメラやスマホの構造の一部に組込むことで、以下の色管理が可能となる。まず、小型の分光光度計をカメラに内蔵して、各種の条件での基準となる特定色チャートの撮影環境の照明光の分光特性を測色のために撮影を行う。撮影したRAWデータ画像をCCSと色処理のCCEに渡し、ユニバーサルRGB値設定をすることで、各種の照明条件別にカメラで撮影した時に同じ照明条件で人の目で見た通りの色を測色値としたターゲットカラーテーブルが得られる。そして、次に同じ環境下での撮影を行うことでユニバーサルRGB値での撮影画像が得られる。
【0213】
次に、撮影した特定色チャートのRGB画像をCCEに渡すと、予め登録された色チャートの測色値から目的の測色値テーブルにL*a*b*変換を行い、入力カラーテーブル変換を自動で作成する。
【0214】
同時に、これら照明光と測色媒体と色材の組み合わせから作成されたターゲットカラーテーブルと入力カラーテーブルをペアにしてデータベースに保存する。
【0215】
撮影した特定色チャートのRGB画像の色再現に近い入力カラーテーブルがデータベースにある場合は、入力カラーテーブルの作成は不要となり、CCEを内蔵或は接続したカメラであればデータベースから直ぐに入力カラーテーブルとターゲットカラーテーブルを自動選択する。すなわち各色パッチの同じID同士を全て個別に比較し、色差の平均値を算出する。例えば、平均色差がΔE0.3以内か一番小さなものを選択する。次に被写体の撮影を行うと、CCEは選択されたカラーテーブルを用い照明光で色再現されるべきRGBデータに色変換を行い、L*a*b*画像または目的の色空間に変換を行い、画像出力を行う。
【0216】
図27は、上記の説明の概念を表したものであるが、スマートフォンの内蔵カメラのようにユーザーが色管理を行うことは容易とは言えず、また高精度の色管理は行えない。従って基本的にはこれらの多種のターゲットカラーテーブルと入力カラーテーブルをペアにしたものをCCEのデータベースに保存しておき、ユーザーは簡易な基準色チャートを使うことで、スマートフォン内で照明光を分析する。
CCEでは、GPSによる緯度地域と季節と天候を含めた基準色チャートの色再現を表す各種のカラーテーブルをデータベース化しておくことにより、スマートフォン側では、実際のターゲットカラーテーブルと入力カラーテーブルをネットに接続されたクラウドなどのデータベースから自動的に目的の入力カラーテーブル及びターゲットカラーテーブルを探し出し、色変換を行うことで撮影条件に合った最適な色のRGB画像を保存することが可能となる。この場合、カメラの撮影条件を記録して色再現の変化を補正できるようにするために白色平板や、ポケット型の色チャートを同時に撮影しておくと良い。
【0217】
このように、CCEをカメラやスマートフォンに応用すれば、例えば店内で見た衣服等の色が屋外表の太陽光の下ではどのように見えるかを確認することが可能となり、商品をインターネットで購入する際にも利用することで、色のトラブルを削減することが可能である。
【0218】
本システムの絵柄の測色技術をスマートフォンに搭載することで、より多くの人にも利用できるようにすることで、誰にでも容易にスマートフォンのディスプレイの色表示を正しい色で見ることができる。
【0219】
例えば、色の違いを数値で表示することで、例えば持参の服やバッグ等を撮影してデータ保存しておき、その服やバッグ等の色を見ながらこれから購入する服のカラーコーディネートの参考にしたり、買いたい服や商品の色が太陽光やLEDまたは蛍光灯等、照明の違いにより色がどう変化するかをスマートフォンのディスプレイに正しく表示させたりすることが可能となる。これにより、これまで色に対して曖昧な認識であったり、経験と官能で色比較を行っていたりしていたが、ディスプレイへの正しい色表示が可能である。また、店内で商品の購入時でも、ネット通販でも色のトラブルや失敗を無くすことで、消費生活を改善するものである。
【0220】
スマートフォン等の内蔵カメラやデジタルカメラを使用して顧客の要求する色を印刷会社の印刷現場に伝達する場合は、カードタイプの小型色チャートを用いると誰にでも色の伝達が確実且つ容易に行うことが可能である。スマートフォン等の内蔵カメラやデジタルカメラを使用して小型色チャートを測色した測色値を、第2の少数特定色チャート或は第1の多数特定色チャートの対応する色と比較し、色合わせに利用したり、経時測色値変化を確認したりすることが出来る。
【0221】
なお、カードタイプの小型色チャートは、媒体の基準となる白色点(紙白部)、グレー階調、R、G、B、C、M、Yの値、或はその階調を保有しており、多数特定色チャートにある特定色となる色パッチと同じ測色値を持つものでなければならない。
【0222】
現在、スマートフォンで利用されている液晶ディスプレイは、「IPS方式」と「VA方式」と「有機EL」「量子ドット方式」の4種類あり、各々発色の違いがあるが色再現は全く異なるため、正しい色を再現できるものはない。従って、限られた色再現空間に限定はされるが、L*a*b*画像からRGB変換する際に各メーカーのディスプレイ用に事前に少数色チャートの色を個別に発生させたディスプレイ(モニタ)の色再現を記録するため、モニタ用の測色機器或いはカメラで測色し、モニタプロファイルを作成しておくことで、色再現を一定のものにすることが可能である。これらのモニタプロファイルは、スマートフォン専用のカラーコンバージョンエンジン(CCE)と一緒にインストールすることで、容易に利用可能となる。
【0223】
これらを可能にするため、測色機器としてスマートフォンを代用する場合、そのスマートフォンのオペレーティングシステムにはColorSync2.0(2.0以上)やICM2.0以上といったCMM(Color Matching Module)と呼ばれる色変換エンジンや、各種入力デバイス及び出力デバイスまたは小型ディスプレイの色再現特性をICCプロファイルと呼ばれるCIELABカラースペースにより記録したルックアップテーブル(LUT)を用い、RGBからL*a*b*や、L*a*b*からCMYKまたはその逆の色変換を行うことで、各種デバイス間のカラーマッチングを行うが、現在はこの仕組みが組み込まれていない。
【0224】
そこで、前記CMMの代わりにCCSを専用のアプリケーションと共にスマートフォンに内蔵することで、スマートフォンに搭載されたカメラとディスプレイを正しい測色機器と色表示装置として利用できるようにするとともに、色評価に必要な機能と異なるスマートフォン間や遠隔地間でも色の違いを確認したり、見る色を共有したりすることを可能にするものである。
【0225】
特定色チャートを用いたスマートフォンのカメラ用入力プロファイル作成と測色値の補正方法は、基本的には前述の図27の「カメラやスマートフォンを用いて測色値を変換する方法」のとおりであるが、個人が購入したスマートフォンのカメラの色補正を行う場合は、難しい作業や高度な基準色チャートを容易に扱えないことが予測される。このため、「C、M、Y、R、G、B+黒+白」の基準色とC、M、Y、R、G、B各色の階調とグレー階調から成る少数色チャートを用い、そのカメラの基本的な色再現範囲を表す粗い入力基準色チャートを添付し、スマートフォンのカメラで撮影するだけで簡単に測色値テーブルを作成するソフトを利用してもらうようにする。一方、本ソフトウエアと一緒にインストールした前述の高精細な色チャートの測色値テーブルとスマートフォン専用のカラーコンバージョンエンジンを用い、粗い(少数の)特定色チャートの測色値テーブルを前述の高精細な色チャートの測色データの色座標を基準に、粗い特定色チャートの測色値テーブルを細分化する新たな色座標を多数の色パッチを有する基準色チャートから座標変換することで、多数特定色チャートから作成した特定色チャートの測色値テーブルに変換する。
【0226】
こうして出来た多数の測色値を持つ特定色チャートの測色値テーブルと高精度の分光光度計等による測色値テーブルを用いることで、CCEにより、正しい色座標変換(測色値)を得ることが可能である。また、使用する照明光の分光特性補正テーブルは予め事前に用意されたネット上のデータベースにアクセスすることで、自由に自動選択が行えるため、幅広い照明環境への対応が可能である。
【0227】
スマホ画面やタブレットPC画面、PCに接続されたモニタ画面の画像の色再現を行うため、それぞれのモニタ画面に、データの特定色チャートと、そのチャートを撮影した画像や小型のカードタイプの特定色チャートと、そのチャートを撮影した単数或は複数のデータの特定色チャートと、そのチャートを撮影した画像を表示して、別のCIEXYZカメラ入力機やBT.2020の入力機、RGBのデジタルカメラで撮影した画像から、測色データを前述したそれぞれの方法で取得し、そのデータをL*a*b*値に変換して、CCEで基準となる画像の色に変換し色補正を行う。
【0228】
本色変換システムでは、基本的にどんな色再現の入力画像からでも他の色再現への変換が可能であるため、その応用として色弱者等への応用について次に記載する。健常人では、すべての色は赤(長波長光)、緑(中波長光)、青(短波長光)の3種類すべての色の知覚できるが、色弱者は赤、緑、青のうち1種類が正常でない異常三色型色覚、2種類だけで色が成立する異常二色型色覚、1種類だけの一色型色覚に分けられる。そこで、色弱者が見えている色に対して、特定色チャートを作製して、色弱色を例えば「1.見えない」、「2.薄く見える」、「3.まあ見える」、「4.良く見える」で、色弱の検査者が特定色の色番号に前述の数字をマークする。これを基に個人別の色弱チャートを作製して、出来るだけ色が見えるチャートを作製する。即ち、色弱色を1.見えない、2.薄く見える、3.まあ見える、4.良く見えるの逆の色補正濃度を乗じて作成する。この色弱者プロファイル(色弱者が識別できる色の範囲全ての色を表す)を基に、プリントするプリント物の色補正をする。これにより、色弱者にとって判別が難しい色に付いた文字や画像を問題なく認識できる書籍や印刷物を作成することが可能となる。
【0229】
(応用例)
以下、本システムのさらなる応用例を説明する。以下に説明する応用例は、上記の各実施例や運用例と同様に、本システムを用いて好適に実施されるものである。
【0230】
(1)本システムを活用したカラー調整BOXについて
カラー調整BOXは、1台の印刷機やプリンター等の出力機毎に設置して、それぞれ出力機の固有の色管理に必要な測色値テーブルなどの情報を持ち、色調整・色管理する。複数の出力機の色調整をカラー調整BOXで行うときは、基準となる出力機を設定して、この出力機で出力した特定色チャートのターゲットカラー色管理テーブルを作成する。これをこの基準色管理テーブルとし、基準の出力機と同じ色を出力する色調整に用いる。そして、固有の出力機の色管理測色値テーブルと基準色管理テーブルとで色変換処理を行うことで、他の出力機のカラー調整BOXを設置した出力機を同じ色で出力可能となる。
このようにカラー調整BOXは、一つの出力された印刷物等の絵柄の色を基準として、他の出力機で印刷された印刷物等の絵柄の色を簡便に色合わせを行う装置で、色管理を必要とする一般企業の開発部門や広告部門、また広告代理店や印刷会社、塗装会社、染色会社などでの色管理を行う場合に、適用する。
【0231】
1.事前の基本チェック
(1)基準チャートを専用測色機器で測色した多数特定色チャート色チップ単位の測色値を測色値テーブルとしてカラー調整BOXの記憶装置に保存する。
(2)スキャナやカメラのRGB入力装置で同じ多数特定色チャートを入力して得た色チップ単位の測色値を測色値テーブルとしてカラー調整BOXの記憶装置に保存する。
(3)以上の2つの測色値テーブルを対応する色ごとに比較して、色補正用の測色値テーブルを作成し、カラー調整BOXの記憶装置に保存する。
これにより、スキャナやカメラのRGB入力装置で入力した画像を、専用測色機器で測色したL*a*b*値で特定の出力物(プリンタや印刷機)での印刷色再現のための色変換と色管理が可能になる。
【0232】
次に、複数の出力機の中から色管理の基準出力機を設定する。即ち、設定された出力機から出力された色に、他の出力機から出力された色が同一になるように色変換する。また、印刷機やプルルーフなどを何台も設備している場合に、各装置間の色再現をコントロールするためにそれぞれ専用のカラー調整BOXを設置することで、個別の色管理を各装置のカラーマッチングのためのデータ管理を行い、担当者が自身で色品質の管理を行う。実運用にあたっては、少なくともカラー調整BOX同士を(ルーターなどの)通信装置を経由してLAN或いは広域ネットと接続して基準色管理テーブルを共有することで色変換・色管理を行う。
【0233】
2.基本操作
カラー調整BOXに記憶された専用測色機の色補正用の測色値テーブルをもとに、スキャナやカメラのRGB入力機器でプリンタのプリント物(絵柄)を入力し、得たL*a*b*値を、基準色管理テーブルから得たL*a*b*値に色補正する。
すなわち使用する出力機で色再現できるCMYK値に画素単で変換を行い、CMYK画像データを作成する。
【0234】
3.カラー調整Boxの活用ステップ
カラー調整Boxの活用ステップは、以下の通りである。なお、最初に、印刷物の色にカラープルーファーの色を合わせる例について説明する。カラー調整Boxを用いた活用ステップは、図28のように表される。
【0235】
まず、特定色チャートデータ(CMYKデータ)を基準の印刷条件(用紙、インキ、印刷機)で印刷し、同様にプルーファーで出力した特定色チャートをキャリブレーション調整されたRGBスキャナ等でカラー調整Boxに入力する。
【0236】
次に、入力された2つの特定色チャートの画像データを測色装置で測色し、それぞれの測色値テーブルを作成する。続いて、次にカラー調整Boxにプルーフの測色値テーブルを入力カラーテーブルとしてセットし、印刷物の測色値テーブルをターゲットカラーテーブルとしてセットすると、カラー調整Boxの内部のCCEでは2つのカラーテーブルそれぞれのL*a*b*色空間が生成され、入力カラーテーブルの色からターゲットカラーテーブルへの色変換が可能となる。
【0237】
そして、カラー調整Boxにプルーフ出力するためのCMYK画像データが入力されると、カラー調整Boxの内部ではL*a*b*画像に変換され、プルーフの各画素の色(L*a*b*値)から印刷物の色(L*a*b*値)に変換される。さらにプルーフの各画素の色(L*a*b*値)を印刷で同じ色を再現するためのCMYK%値に変換し、全画素の色変換が終るとプルーフで印刷物の色を再現するため印刷のL*a*b*値をプルーフで色再現するためのCMYKデータに変換される。
また、画像だけであれば「カラー調整Box」だけでも色補正は可能であるが、CCEを搭載したRIPを用いることで、図形やロゴマークなど高解像な輪郭部分に対しても色補正が可能である。
【0238】
4.カラー調整Boxのカラープリフライト機能
さらに、カラー調整Boxの他の機能として、プリンタA(または色見本)で再現した色がプリンタB(または印刷機)で再現できるかを事前に可否確認するカラープリフライトという機能を持つ。この機能は、特定色チャートだけでなく絵柄でも利用することが出来るマトリックス測色で画像全面を自動的に10,000ポイントを測色したり、手動で測色ポイントを追加できるものである。これにより、「平均色差」や個別の色の色差を「ΔE」または「CIEDE2000」を用い、例えばΔE4.0以上の大きな色差を持つ色をリストアップ表示したり、各色の色差の値を表示する。さらに、色補正テーブルを作成し、「L*a*b*画像の色修正部」で正しいL*a*b*値に補正する。
【0239】
もし、カラー調整Boxのカラープリフライト機能でカラーマッチングが難しい色が事前に検出された場合は、その色補正方法は各種の色補正パラメータから選択することで、目視で似たイメージになるような色補正をプルーフだけでなく印刷物に対しても行うことが可能である。
どのように補正するかの選択は、例えば「L*値が高い(明るい)のに色が濃い(鮮やか)」、「L*値が低い(暗い)のに色が鮮やかに見える」、「同じL*値(明るさ)の色が鮮やかに見える」、等に分類し、さらに補正量の強弱の設定で、色補正が実行できる。
【0240】
また、色見本が印刷物でCMYKプロセスインキの色域である場合は、カラープリフライトをCMYK画像に対して用いると、プルーフ画像に対する印刷画像の色再現として各CMYK別に0%~100%までの階調再現の違いをグラフによるカーフで表示したり、網点%値の差で表示する。さらに補正カーブを作成し、CMYK画像に対して階調補正を行うことで、目的の印刷画像にさらに近付けることが自動的に行える。
カラー調整BOXの主な機能は以下の通りである。
(1)RGB入力機で正確な色調整や色変換を行う。
(2)測色した色が予め設定した色差範囲に入っているかの色判定を行う。
(3)測色した色が印刷で再現可能かの色空間判定を行う。
(4)測色した色がターゲットとなるインキを混ぜるとどのような色になるかのモニターシミュレーションと、L*a*B*値、CMYK%表示を行う。
【0241】
また、カラー調整BOXのシステムの基本構成は以下のとおりである。
コンピュータ、モニタ、CCE色変換ソフトウエア(カラープレフライト機能を含む)、特定色チャート(データと印刷物)、入力機器及び各種測色カラーテーブル、各種プロファイル。
【0242】
(2)スキャナやカメラの画像全面のシェーディング補正機能
スキャナ等の入力機器の受光センサのセル毎に感度差が僅かでもあると入力画像の全入力面での白や黒にムラが発生し、正しい測色ができないという問題を改善する。このためには、こうしたムラを無くすためのシェーディング補正を白と黒だけでなく、さらにグレー階調やCMYKRGBの色立体においても行うことで、画像全面の濃度だけでなく色も一定した測色値が得られるよう、ムラを補正行う機能を持つ。
【0243】
スキャナ入力画像の場合、全面同じ色(白、灰色、黒、C、M、Y、R、G、Bなど各色)の用紙をキャリブレーションの調整されたスキャナでスキャニングして、さらに入力画像の平均化をするために面全体の濃度や色のスキャニングムラを色毎に、濃度の逆数のフィルタリング処理を行い、ムラを取り除く。
【0244】
1ショットカメラ入力画像の場合、一度の撮影で絵柄全面を入力できるワンショットカメラの場合、全面同じ色(白、灰色、黒、C、M、Y、R、G、Bなど)の用紙を45度入射角度の演色性の良い光源で撮影し、面全体の濃度や色むらを除く。これらを各色中心部の平均L*a*b*値を基準値にして、周辺部のシェーディング補正を1画素単位で行う。
【0245】
(3)ハイブリッド画像比較
印刷用の元画像であるCMYKデジタル画像データは網点%値が用いられている。しかし、印刷物等の画像をスキャナ入力によりアナログ画像をデータ化したものは、RGB画像であるため、これらの色比較を容易に行うことはできない。これらデジタル画像データとスキャナ等の入力によるアナログ画像の画像比較を可能にすることを「ハイブリッド画像比較」と呼ぶこととする。「ハイブリッド画像比較」を行うためには、印刷用のDTPデータをRIP処理して、50dpiから300dpi程度の8ビット画像にしたカラー画像データと、特定の印刷機或いはプリンタで出力したプルーフプリントをスキャナやカメラで入力した同じ解像度の、画像を比較する。この時、プルーフプリントのスキャニング画像や印刷物は媒体の白の濃度やドットゲインなどの影響があり、RIP処理して得られた8ビット画像は、媒体の影響がないので、媒体のプロファイルをかける等して、色空間上の色再現をマッチングさせて画像を比較することが可能となる。
【0246】
(4)CMYK濃度変換
オフセット印刷機には、インキゾーンと言われる印刷面を十数列に分割して印刷全面を色コントロールしている。このインキゾーン毎の絵柄測色を行い、L*a*b*測色値からCMYK各色インキのそれぞれのインキゾーン毎の濃度値を算出して、印刷インキ調整を行う。すなわち本システムで、印刷絵柄を印刷機の印刷面の中心部からインキゾーンの幅で分割し、印刷絵柄の各画素の測色値L*a*b*値をICCプロファイルによってCMYKの網点%に変換する。そしてインキゾーン毎に集計して平均の網点濃度%値を算出して、印刷を行う。この作業により、さらに各インキのベタ濃度を予測することも可能となる。
【0247】
しかし、計算上は100%以上の濃度の色があっても、ICCプロファイルによる色変換では、100%以上の値を得ることができないため、基準濃度より高い濃度で印刷された場合の濃度値が相対的に低く変換されてしまうという問題がある。そこで、本システムでは、各CMYKインキの設定濃度(例:C=1.5、M=1.4、Y=1.3、K=1.9)で印刷して「得られた各画素のL*a*b*値とデジタル画像のCMYKデータをプロファイル変換して得られた各画素のL*a*b*値との差を算出し、基準値より大きなL*a*b*であれば、CMYK値が100%以上の値になるように補正する変換プロセスを設ける。これにより、CMYK%値から各CMYKベタ部の濃度値への変換精度を高めることが可能である。また、絵柄の測色値からベタ部(100%部)の濃度を予測する場合、印刷物のインキが付かない紙白部を除いた絵柄部のみを画素毎にCMYK%に変換して集計を行うことで、さらに網点%から濃度値へ変換するテーブルを用いた計算処理を行う際の誤差を無くすことができる。
【0248】
(5)基準色と比較色の色評価合否判定
これまで印刷においては、印刷機において安定した色再現を得ることを目的としたカラーバーなどのチャートを用いて色管理が行われてきた。本システムでは汎用の入力機器を利用しても高精度な絵柄面測色が行えるため、本来必要であった絵柄による色評価と色管理を容易に実現可能にすると共に、目視に近い数値による色評価を一般に広めるものである。
【0249】
さらに、目視による色評価を数値化及び可視化することで、印刷された印刷物の色の合否判定を実現する。合否判定は、印刷発注者や印刷担当営業及び印刷オペレータにとって納得のいく数値で合格と不合格の数値レベルを設定する。併せて、様々な用紙等の色材や光源別の色温度などによる判定方式を用意し、だれが色判定作業を行っても、判定基準に差が出ないような方式を選択する。また判定方式を組み合わせることを行ってもよい。
【0250】
そこでまず、媒体に印刷(プリント)された同一の絵柄或いは色パッチ、或いは色見本となる印刷物等(染色物、塗装物、モニタ画像も含む)をデジタル画像入力した画像と、色判定を行うための同じくする画像を入力し、その2つの画像を画素レベルで重ね合わせる。次に2つの画像の中から比較した部分の色の差をL*a*b*値と色差を得る。この値をもとに、予め顧客との合意で設定した色差の許容範囲や評価光源を設定して、色評価を行う。これらの条件下での合否判定を行った結果、基準値内であれば「合格」または全ての比較箇所の平均色差によって「◎、○」または数値ランク「A/AA/AAA」などの表示を行う。基準値外であれば「不合格」または全ての比較箇所の平均色差によって「△×」または「B、C、D」などの表示を行うことで誰にでも理解し易い判定を行うようにする。また、印刷では再現できない色がある場合は、色差を数値と警告の色で表示し、人が再判断できるようにしても良い。
【0251】
(6)色評価と文字・汚れ検査を一括で行う装置
印刷の品質管理には、「印刷物の周辺の一端に付けたカラーバーと呼ばれるインキ濃度が一定になるように印刷するためのカラーストリップのチャートを付けて色管理を行っている。併せて、「文字欠けや汚れなどの検査」を同時に行う必要がある(カラーバーとは、各CMYKインキのベタ等で構成される各種のカラーパッチを一列に並べたカラーチャートで、印刷機の色管理に用いられる。コントロールストリップともいう)。
【0252】
この2つの検査を行うために印刷機にカメラ等を搭載して、画像やカラーバーを撮影した画像を用い、印刷中に品質管理を行うインラインシステムを行っているが、絵柄の色管理はできない。絵柄の色管理は目視で行われている場合が多く、印刷機の自動化は進んでも、色管理の最終確認は人の眼で行っており、人により色判定基準が異なることが問題となっている。本システムは画像matching技術と測色・色評価・色判定技術が基本になっている。また、入力画像を取り込んで色評価していることから、同じ測色・色評価・色判定の技術で、色の違いを基にした画像検査を行うことが出来る。即ち本システムの色管理技術で、「色評価」と同時に「文字欠けや汚れなどの濃度検査」を同時に行えることで、色管理技術を基にした初めての異なる2つの検査が出来る。そして、印刷オペレータの負担を殆ど増やさずに高精度の品質検査を実現することが可能となる。
【0253】
図29に示す「色評価と文字・汚れ検査を一括で行う運用フロー図」は、検査と色管理が自動で行われるフローを表したものである。
(1)スキャナ入力した印刷物(B1とB2)は、印刷検査を行うための専用検査システムで処理される。検査システムの入力フォルダに入力された画像は、そのまま色管理システムの入力フォルダに自動転送される。このように、同じ画像を兼用することで、以下のようなことが可能になる。
(2)検査システムに呼出したPDFやTIFFの基準画像との比較検査
(3)色管理システムに呼出されたCIP3-PPF画像との色比較の2つの処理を同時に効率良く連携して進める。さらに、基準画像との比較検査結果を表示する。
(4)ビュアーと印刷機のインキゾーン毎のCMYKインキの濃度を表示する。
(5)モニタは印刷機の制御装置(色見台)のところに設置することで、2台の印刷機の制御装置に送信され、印刷物との比較確認及び印刷機の制御が1箇所で行える。
【0254】
(7)遠隔医療診断装置
遠隔医療診断装置とは、遠隔地から顔や肌色をビデオカメラで撮影し、さらに脈拍や心電図などの情報を基に医者が診断するセンサ付き通信・撮影Box装置を言う。遠隔医療診断装置は、医療機関と無医村の遠隔地に設置、或いは医療機関と自動車や電車などの移動可能な車体に設置した医療診断装置とを有線或いは無線の通信手段で接続し、医者は遠隔地から診断する。遠隔医療診断装置の基本設備は、本システムの基本技術を元に正確な色判断をするための照明機器と4K.8K色域のデジタルビデオカメラ或いはRGBデシタルビデオカメラを備え、またマイク、スピーカー(イヤホンも可)や、医療機器も備えて、医療機器と通信設備及びこれらのデータを記憶させ、通信させる機器を備えて、患者の顔や身体の正確な色情報をもとに遠隔医療診断を行う。
【0255】
(8)車塗装や家電製品のロボットによる塗装ムラの管理と塗装。
塗装ロボットによる塗装作業に於いて、塗装ロボットに直接或いは本システムの測色・色評価・色判断基本技術を基に、別に設置した塗装ムラや塗装色検査装置により、塗装面の画像入力と照明の無影状態をつくり、平均化された照明環境下で塗装や色ムラの色判定を行う。また、色差がある場合にはその補正データを塗装ロボットに送信する。色差が予め設定した許容値内になれば、合格判定を行う。さらに、色ムラや傷などが発見しやすい角度の照明条件を作っての評価も出来るようにすると良い。さらにまた、屋外朝・昼・夕方などの実運転環境などを照明装置で色温度変換して、自然環境に近い照明を作っての判定も可能とする。
また、ロボットは塗装以外の、正確な色認識が必要な分野にも使用される。
例えば、平面は一眼の例えば4Kカメラで、立体は二眼の例えば4Kカメラで、対象映像や画像を入力(撮影)し、本システムの色変換技術で絶対値のL*a*b*値に変換して、正確な色判断を行うことが出来る。このL*a*b*値は、世界の基準値であることから、ロボットの正確な“眼”として、色評価を必要な分野に使用する。
【0256】
(9)カメラの画角中央部分の範囲を利用した高精度な部分絵柄面測色装置
カメラを用いて、その画角全面を正確な値で測色するためには、「正しいライティング(照明光の当て方)や「白と黒とグレー階調のシェーディング補正」だけでなく、白と黒とグレー階調に加えR、G、B、C、M、Yの各色で構成される色空間の色ズレを画素単位で全画面を補正するといった高度で手間の掛かる補正が必要となる。
【0257】
そこで、カメラの画角中央部分の高精度で安定した範囲の画像だけを利用し、濃度や色ムラの殆ど無い範囲で、特定色チャートとCCSにより測色対象物のL*a*b*画像への変換と基準の測色機器で測色したL*a*b*値で構成される色空間への変換を行えば、シェーディング補正が単純でしかも容易に基準画像と比較画像の色比較が可能となる。
【0258】
カメラの色補正を行う場合は、まず、事前にWebサーバ等の各種入力機器による測色値テーブルのデータベースを設置して、予め同じカメラで撮影した多数特定色チャートを、RGBからL*a*b*に変換した測色値テーブルと同じ多数特定色チャートを基準の測色機器でL*a*b*測色した測色値テーブルをダウンロードする。次に、前記の多数特定色チャートと同じ色を含む少数特定色チャートを撮影、これに多数特定色チャートの色空間を少数特定色チャートに割り当てるマッピング処理を行うことで、使用するカメラの色再現特性にあわせた多数特定色チャートを作成する。これらの、チャートをCCSにセットすることで、正確な測色が可能となる。
【0259】
実際に絵柄を測色する場合は、まず基準とする色見本やプルーフを平らな台にセットし、三脚等のカメラ台に固定された照明とハンディカメラやスマートフォンのビデオ画像を見ながら、測色したい絵柄部分にカメラの中央に表示された「測色可能な範囲」を表す枠が位置するようにカメラ台を移動させる。次に、前記の枠の中央に表示された「測色ポイント」を示すもっと小さな枠を正確に移動させ撮影する。このように測色したい箇所を何箇所か撮影する。尚、測色ポイントは、カメラ画像のXY軸の画素数を指定することで、大きさを自由に設定可能である。
【0260】
次に、比較したい印刷物等を例えば同じ机に置いた板上にセットし、同様に絵柄の「測色ポイント」がカメラの中央に表示された「測色可能な範囲」を示す枠の中に入るように印刷物等を板上で移動させて撮影を行う。尚、撮影された画像はデータ容量を抑えるため、画像形状が認識が可能な範囲を枠で設定して不必要な周辺部の画像を自動的に切り取っても良い。
また、比較する印刷物等の画像を撮影する際に生じた基準画像との撮影範囲の左右上下のずれと傾きや原稿の浮きによる画像の歪みは、画像重合(イメージマッチング)処理ソフトで自動補正されて、それぞれの測色値と色差などの比較結果が表示される。
上述の測色システムは、絵柄面測色技術を生かした絵柄の高精度な色比較の小型化や低価格化を可能にすると共に、将来的には「色の物差し」の概念を一般に提供するものである。
【0261】
このレンズの中央部分を測色するカメラは、4Kや8Kカメラだけでなく、汎用のデジタルカメラや、ビデオカメラ、スマートフォンの付属カメラであってもよい。またこれらのカメラに身に三脚や四脚とLEDライトを付けて撮影するとよい。
【0262】
上記のように、本システムは、印刷物の色合わせだけではなく、種々の非常に有用な用途に使用可能であることが理解される。
図1
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