(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】ウォッシャブルフロアー
(51)【国際特許分類】
B60P 3/00 20060101AFI20220519BHJP
【FI】
B60P3/00 N
(21)【出願番号】P 2022000256
(22)【出願日】2022-01-04
【審査請求日】2022-01-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593157622
【氏名又は名称】株式会社ヨコハマ・モーターセールス
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】永野 文義
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-217085(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2121167(KR,B1)
【文献】特公昭64-010376(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/00,3/04-3/05,
3/06-3/10,3/20,
3/32-3/39
A61G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の収容室に配置される床洗浄機能を有するウォッシャブルフロアーであって、
洗浄水によって洗浄される被洗浄面と、
前記被洗浄面から流れた洗浄汚水を排出する排出縁部と、
前記排出縁部を除く前記被洗浄面の周囲において前記被洗浄面と継ぎ目なく一体的に隆起し、かつ洗浄機構が設けられた隆起縁部と
を備え、
前記洗浄機構は、
前記隆起縁部の内壁面に突設され、前記被洗浄面に向けて洗浄水を噴射する複数の噴射ノズル
と、
前記隆起縁部の内部に内蔵され、水道蛇口から供給された洗浄水を前記噴射ノズルに供給する洗浄配管と
を備えることを特徴とするウォッシャブルフロアー。
【請求項2】
前記排出縁部は、前記車両の側面ドアおよび後面ドアの二箇所に位置し、
複数の前記噴射ノズルには、前記車両の幅方向に噴射方向を有するもの、および前記後面ドアの方向に噴射方向を有するものが含まれることを特徴とする請求項
1記載のウォッシャブルフロアー。
【請求項3】
前記隆起縁部の一部には、他の部分よりも大きく形成されたシート台座が形成され、
前記シート台座に突設された前記噴射ノズルは、前記被洗浄面に向けて下方に洗浄水を噴射することを特徴とする請求項1
または2に記載のウォッシャブルフロアー。
【請求項4】
前記洗浄配管の端部には、カプラー式の接続部が形成されていることを特徴とする請求項
1記載のウォッシャブルフロアー。
【請求項5】
前記車両が救急車であることを特徴とする請求項1~
4の何れか一項に記載のウォッシャブルフロアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば救急車などの特装車両の収容室に設けられた、床洗浄機能を有するウォッシャブルフロアーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、救急を要する患者を搬送する車両として救急車などの特装車両が用いられている(例えば、特許文献1参照)。かかる救急車の床には、搬送患者の嘔吐物、尿、血液等が散乱する場合があり、これらが散乱した場合には水道ホースによる放水洗浄に併せて作業員によるデッキブラシで汚物を除去するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来の除去作業を行った場合、排水方向でない方向の放水が避けられない場合があり、かえって汚物を拡散させてしまうことがあった。また、片手でホースを持ち、もう片手でデッキブラシを操作することは作業員にとって作業がし難いという課題があった。
【0005】
汚物が広範囲に散乱した場合には、作業員が立ち入るまでの間に各方向から放水して汚物をある程度除去する必要があるため時間が掛かってしまう。そして、手持ちのホースのように放水口が一箇所しかない場合、部分的な洗浄となる上、洗浄に時間を要し、次の出動までに洗浄しきれないことが多々見られた。
【0006】
また、床と壁の継ぎ目はコーキングされているため、定期的なコーキングが必要でメンテナンスに手間がかかるという問題があった。
さらに、隊員用シート台座や棚類と床面が接する部分などの内、複雑な形状の部分にはコーキングがなされておらず、この部分に汚物が入り込んだ場合には歯ブラシ状の器具で時間をかけて洗浄する必要があった。
【0007】
本発明の目的は、容易で的確かつ短時間に床面に散乱した汚物を除去することが可能、かつメンテナンスが不要なウォッシャブルフロアーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のウォッシャブルフロアーは、
車両の収容室に配置される床洗浄機能を有するウォッシャブルフロアーであって、
洗浄水によって洗浄される被洗浄面と、
前記被洗浄面から流れた洗浄汚水を排出する排出縁部と、
前記排出縁部を除く前記被洗浄面の周囲において前記被洗浄面と継ぎ目なく一体的に隆起し、かつ洗浄機構が設けられた隆起縁部と
を備え、
前記洗浄機構は、
前記隆起縁部の内壁面に突設され、前記被洗浄面に向けて洗浄水を噴射する複数の噴射ノズルと、
前記隆起縁部の内部に内蔵され、水道蛇口から供給された洗浄水を前記噴射ノズルに供給する洗浄配管と
を備えることを特徴とする。
【0009】
すなわち、複数の噴射ノズルが隆起縁部の内壁面に固定されており、各噴射ノズルから洗浄水が一斉に噴射されて被洗浄面を洗い流すため、被洗浄面上に散乱した汚物を短時間で的確に排出することができる。また、隆起縁部が被洗浄面と一体的に隆起しているため、継ぎ目に汚物が入り込むことがなく容易に汚物を排出することができる。また、隆起縁部は、排出縁部を除く被洗浄面の周囲において被洗浄面と継ぎ目なく一体的に隆起しているため、コーキング等のメンテナンスが不要である。よって、容易で的確かつ短時間に床面に散乱した汚物を除去することが可能、かつメンテナンスが不要なウォッシャブルフロアーを提供することができる。
【0010】
また、噴射ノズルが隆起縁部に固定されるため、作業員は放水の向きを変える必要がなく両手でデッキブラシを操作できる。
【0011】
また、本発明のウォッシャブルフロアーは、
前記排出縁部は、前記車両の側面ドアおよび後面ドアの二箇所に位置し、
複数の前記噴射ノズルには、前記車両の幅方向に噴射方向を有するもの、および前記後面ドアの方向に噴射方向を有するものが含まれることを特徴とする。
これにより、汚物を壁際に押し付け留めたり拡散することなく的確に各排出縁部から洗浄汚水として的確に排出することができる。
【0012】
また、本発明のウォッシャブルフロアーは、
前記隆起縁部の一部には、他の部分よりも大きく形成されたシート台座が形成され、
前記シート台座に突設された前記噴射ノズルは、前記被洗浄面に向けて下方に洗浄水を噴射することを特徴とする。
これにより、所定の高さを有するシート台座の近傍の汚物も的確に排除することができる。
【0013】
また、本発明のウォッシャブルフロアーは、
前記洗浄配管の端部には、カプラー式の接続部が形成されていることを特徴とする。
これにより、短時間で容易かつ確実に洗浄機構をホースと接続することができる。
【0014】
また、本発明のウォッシャブルフロアーは、
前記車両が救急車であることを特徴とする。
すなわち、本発明は、特に救急車のような、搬送患者の嘔吐物、尿、血液等が床面に散乱する機会が多い車両に用いるのに好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、容易で的確かつ短時間に床面に散乱した汚物を除去することが可能、かつメンテナンスが不要なウォッシャブルフロアーを提供するがことできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に係るウォッシャブルフロアーを備えた救急車を後方から視た図である。
【
図2】実施の形態に係るウォッシャブルフロアーを上方から視た斜視図である。
【
図3】実施の形態に係るウォッシャブルフロアーを上方から視た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るウォッシャブルフロアーについて、
図1に示すように、救急車である車両1の収容室に配置されている場合を例に説明する。
図2は、実施の形態に係るウォッシャブルフロアー2を上方から視た斜視図であり、
図3はその平面図である。
図2、3に示すように、ウォッシャブルフロアー2は、収容室の全床面に配置可能な形状を有しており、洗浄水によって洗浄される被洗浄面4、被洗浄面4から流れた洗浄汚水を排出する排出縁部6、被洗浄面4の周囲の縁から上方に隆起して設けられた隆起縁部8を備えている。
【0018】
ここで、排出縁部6には、収容室の側面ドア(不図示)の位置に位置する側部排出縁部6a、および収容室の後面ドア3(
図1参照)の位置に位置する後部排出縁部6bが含まれている。
【0019】
被洗浄面4は、後部排出縁部6bの方向に向かって低くなるように傾斜しており、略中央部には中央シート台座10が被洗浄面4と継ぎ目なく一体的に隆起して形成されている。
【0020】
隆起縁部8は、排出縁部6を除く被洗浄面4の周囲において被洗浄面4と継ぎ目なく一体的に隆起し、腰壁状に形成されている。そして、隆起縁部8の内壁面には、被洗浄面4に向けて洗浄水を噴射する複数の噴射ノズル12が突設して設けられている。
【0021】
噴射ノズル12には、車両1の側面に位置し、車両1の幅方向に噴射方向を有する噴射ノズル12a、および後面ドア3の方向に噴射方向を有する噴射ノズル12bが含まれる。ここで、噴射ノズル12aは側部排出縁部6aの位置には設けられていないため、すべての噴射ノズル12において洗浄水は、排出縁部6から排水し易いように噴射される。
【0022】
また、車両1の後部タイヤ5の位置に設けられた隆起縁部8は、他の部分よりも高さ、奥行きとも大きく形成され、シート台座14を構成している。シート台座14には、被洗浄面4に向けて下方に洗浄水を噴射する噴射ノズル12cが突設されている。
【0023】
さらに、隆起縁部8には、噴射ノズル12から洗浄水を噴射することを可能にするための洗浄機構16が内蔵されている。洗浄機構16は、噴射ノズル12、噴射ノズル12に洗浄水を供給する洗浄配管18を有しており、洗浄配管18の最上流の端部には、水道蛇口等の洗浄水供給部20とホース22を介して接続される接続部24が形成されている。なお、接続部24にはカプラー式のソケットが用いられており、短時間で容易かつ確実にホース22と接続することができる。
【0024】
次に、車両1を洗浄する際の一連の手順について説明する。まず、被洗浄面4に汚物が散乱した状態の車両1が出動から戻ってくると、車両1は、洗浄水供給部20が設けられている位置に停車する。そして、作業員により、側面ドアと後面ドア3が開放される。
【0025】
次に、作業員は、洗浄水供給部20にホース22の一方の端部を接続し、他方の端部(カプラー式ソケット)を接続部24に接続する。これにより、噴射ノズル12から洗浄水を噴射する準備が完了する。
【0026】
洗浄水供給部20の蛇口を開放すると、接続部24、洗浄配管18を介して噴射ノズル12に洗浄水が供給され、各噴射ノズル12から洗浄水が一斉に噴射される。なお、洗浄水は、各噴射ノズル12の噴射口において円錐状に噴射される。具体的には、噴射ノズル12a、12bにおいては、軸線から40~50°の範囲(40°<θ1<50°)、噴射ノズル12cにおいては、軸線から60~70°の範囲(60°<θ2<70°)で円錐状に噴射される。
【0027】
複数の噴射ノズル12から洗浄水が噴射されると、被洗浄面4が瞬時に水浸しになり、被洗浄面4に散乱・付着した汚物は、各噴射ノズル12から噴射された洗浄水によって洗い流され、各排出縁部6から洗浄汚水として排出される。
【0028】
この状態で、さらに作業員によってデッキブラシによる汚物除去作業が行われる。かかる作業と相俟って、被洗浄面4は良好に洗浄される。
この実施の形態のウォッシャブルフロアー2によれば、容易で的確かつ短時間に被洗浄面4に散乱した汚物を除去することができる。
【0029】
すなわち、複数の噴射ノズル12が隆起縁部8の内壁面に固定されており、各噴射ノズル12から洗浄水が一斉に噴射されて被洗浄面4を洗い流すため、被洗浄面4上に散乱した汚物を短時間で的確に排出することができる。また、隆起縁部8が被洗浄面4と一体的に隆起しているため、継ぎ目に汚物が入り込むことがなく容易に汚物を排出することができる。
【0030】
また、隆起縁部8は、排出縁部6を除く被洗浄面4の周囲において被洗浄面4と継ぎ目なく一体的に隆起しているため、コーキング等のメンテナンスが必要なくなり便利である。
【0031】
また、噴射ノズル12は、車両1の幅方向、および後面ドア3の方向に向けて、被洗浄面4の傾斜に合わせて噴射されるため、汚物を壁際に押し付け留めたり拡散することなく的確に各排出縁部6から洗浄汚水として排出することができる。
【0032】
また、噴射ノズル12は固定されているため、作業員は放水の向きを変える必要がなく両手でデッキブラシを操作できる。
また、作業員が車両1の収容室に立ち入る前に噴射ノズル12から噴射された洗浄水で洗浄がなされているため、作業員は汚物を気にせず容易かつ短時間に収容室に立ち入ることができる。
【0033】
また、複数の噴射ノズル12から洗浄水が噴射されると、瞬時に被洗浄面4が水浸しになるため、作業員はすぐに洗浄作業を開始できる。なお、3名程度の作業員が同時に洗浄作業をすることができるため、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0034】
なお、上述の実施の形態においては、ウォッシャブルフロアー2が救急車に配置されている場合を例に説明したが、ウォッシャブルフロアー2は、魚介類、農産物、家畜類の搬送車、およびモトクロスバイクやバギーの搬送車等、床面が著しく汚されるワンボックスカーに設置することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 車両
2 ウォッシャブルフロアー
3 後面ドア
4 被洗浄面
5 後部タイヤ
6 排出縁部
6a 側部排出縁部
6b 後部排出縁部
8 隆起縁部
10 中央シート台座
12 噴射ノズル
12a 噴射ノズル
12b 噴射ノズル
12c 噴射ノズル
14 シート台座
16 洗浄機構
18 洗浄配管
20 洗浄水供給部
22 ホース
24 接続部
【要約】
【課題】容易で的確かつ短時間に床面に散乱した汚物を除去することが可能、かつメンテナンスが不要なウォッシャブルフロアーを提供する。
【解決手段】車両の収容室に配置される床洗浄機能を有するウォッシャブルフロアーであって、洗浄水によって洗浄される被洗浄面と、前記被洗浄面から流れた洗浄汚水を排出する排出縁部と、前記排出縁部を除く前記被洗浄面の周囲において前記被洗浄面と継ぎ目なく一体的に隆起し、かつ洗浄機構が設けられた隆起縁部とを備え、前記洗浄機構は、前記隆起縁部の内壁面に突設され、前記被洗浄面に向けて洗浄水を噴射する複数の噴射ノズルを備える。
【選択図】
図2