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特許7075707溶融混練押出装置の運転の際に必要なエネルギーを低減可能とする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】溶融混練押出装置の運転の際に必要なエネルギーを低減可能とする方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/57 20190101AFI20220519BHJP
   B29C 48/405 20190101ALI20220519BHJP
   B29C 48/575 20190101ALI20220519BHJP
   B29C 48/635 20190101ALI20220519BHJP
【FI】
B29C48/57
B29C48/405
B29C48/575
B29C48/635
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021213998
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2021-12-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509222578
【氏名又は名称】株式会社STEER JAPAN
(74)【代理人】
【識別番号】100102738
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】中塚 剛志
(72)【発明者】
【氏名】山中 智史
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-208209(JP,A)
【文献】特表2013-505864(JP,A)
【文献】特表2011-524278(JP,A)
【文献】特表2011-524280(JP,A)
【文献】特表2011-524284(JP,A)
【文献】特表2013-522088(JP,A)
【文献】特許第6982214(JP,B1)
【文献】米国特許第06783270(US,B1)
【文献】国際公開第2016/068049(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111941798(CN,A)
【文献】中国実用新案第202123643(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00-27/96
B29B 7/00-7/94
B29C 45/00-45/84
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの円筒シリンダを長手方向に平行に連結し、長手方向に直交する断面において、一対の円弧部が連なるまゆ形であるバレルと、
長手方向を中心に、同方向に回転可能な、互いに所定間隔を隔てた2軸の回転シャフトであって、各回転シャフトは、対応する円弧部の中心と同心状に配置され、対応する円筒シリンダ内で長手方向に延びる、2軸の回転シャフトと、
前記回転シャフトが前記回転シャフトの長手方向を中心として回転可能なように、前記回転シャフトに連結される駆動モーターと、
各々、前記2軸の回転シャフトそれぞれに対して外嵌する、一対のスクリューエレメントとを有し、
該一対のスクリューエレメントは、互いに同一であり、前記バレルの長手方向の同位置に設けられ、前記2軸の回転シャフト間で所定間隔を隔てて噛み合うように配置され、
固形材料を前記バレル内に供給する供給部と、前記バレル内を搬送される固形材料を融点またはそれ以上に加熱し、混練する溶融混練部と、溶融された固形材料を混合する混合部とが、長手方向にこの順に設けられ、
前記溶融混練部において、前記バレルの内面を伝熱面とする外部加熱タイプであり、前記一対のスクリューエレメントは、前記一対のスクリューエレメント間のスペースを通じて、溶融状態の固形材料を混練可能な混練用スクリューエレメントである、溶融混練押出装置であって、
前記一対の混練用スクリューエレメントの各々の前記バレルの長手方向に直交する断面外形を構成する外周閉曲線部と前記円弧部との間に形成される領域が複数の部分領域に区分けされるように、前記混練用スクリューエレメントの外周面の形状が設定され、
前記部分領域における固形材料の非充満部を低減し、かつ、一対の前記混練用スクリューエレメント間の回転方向クリアランス前後における固形材料の内圧の変動差を低減可能なように、前記一対の混練用スクリューエレメントの各々は、軸方向に直交する任意断面の外周縁形状が軸方向に亘って同じであり、前記回転シャフトの回転中心と該混練用スクリューエレメントの中心とを所定偏心状とし、かつ、一対の該混練用スクリューエレメント間のクリアランスが、前記回転シャフトの回転中、一定の所定値に維持されるように、一対の該混練用スクリューエレメント間の周方向の相対的角度位置関係が設定される、ことを特徴とする溶融混練押出装置。
【請求項2】
溶融混練ゾーン、および混合ゾーンを軸方向にこの順に設け、各々、2軸の回転シャフトそれぞれに対して外嵌する、一対のスクリューエレメントの回転により、固形材料を軸方向に搬送しつつ、溶融混練し、均一に混合された押出物を押し出す2軸式溶融混練押出方法であって、
前記混練段階における混練用スクリューエレメントの外周閉曲線部と前記バレルとの間に形成される領域が複数の部分領域に区分けされるように、前記混練用スクリューエレメントの外周面の形状を設定する段階と、
前記部分領域における固形材料の非充満部を低減し、かつ、一対の前記混練用スクリューエレメント間の回転方向クリアランス前後における固形材料の内圧の変動差を低減するように、前記混練用スクリューエレメントの中心を前記回転シャフトの中心に所定偏心配置とする段階と、
2軸を同方向に回転させることにより、バレル内の固形材料を軸方向に搬送しつつ、バレル内面を伝熱面として外部加熱により溶融し、溶融した固形材料を混練して、押出す段階と、
を有する、ことを特徴とする溶融混練押出方法。
【請求項3】
前記混練用スクリューエレメントは、前記回転シャフトが内嵌する円形開口を有し、周方向に3以上のチップを有するディスクが長手方向に積み重ねられ、長手方向に隣接するディスクの対応するチップは、周方向にずれている、長手方向に不連続タイプであり、前記バレルの中心に対して、前記円形開口の中心がオフセット配置される、請求項2に記載の溶融混練押出方法。
【請求項4】
前記混練用スクリューエレメントは、前記回転シャフトが内嵌する円形開口を有するモノリシック状であり、長手方向に離間する両端面それぞれにおいて、周方向に3以上のチップを有し、周側面には、両端面のチップに連なる螺旋状リードが設けられる、長手方向に連続タイプであり、前記バレルの中心に対して、前記円形開口の中心がオフセット配置される、請求項2に記載の溶融混練押出方法。
【請求項5】
固形材料は、工業用固形材料、または天然物の単一または異種混合固形材料であり、バルク状、ペレット状、フレーク状片、粒状、粉状のいずれかである、請求項2ないし請求項4いずれか1項に記載の溶融混練押出方法。
【請求項6】
固形材料は、工業用固形材料、または天然物の単一または異種混合固形材料であり、バルク状、ペレット状、フレーク状片、粒状、粉状のいずれかである、請求項1に記載の溶融混練押出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融混練押出装置の運転の際に必要なエネルギーを低減可能とする方法に関し、より詳細には、所望の混練度合いを具備する押出物を所望の吐出量で得るのに、溶融混練押出装置への投入コストを抑制しつつ、溶融混練押出装置の運転の際に必要なエネルギーを低減可能とする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、いわゆる2軸同方向回転の溶融混練押出装置が用いられている。
このような溶融混練押出装置は、2つの円筒シリンダを長手方向に平行に連結し、長手方向に直交する断面において、一対の円弧部が連なるまゆ形であるバレルと、それぞれ、対応する円筒シリンダ内で円筒シリンダと同心状に長手方向に延び、長手方向を中心に、同方向に回転可能な、互いに所定間隔を隔てた2軸の回転シャフトと、各々、2軸の回転シャフトそれぞれに対して外嵌する、一対のスクリューエレメントとを有し、一対のスクリューエレメントは、互いに同一であり、バレルの長手方向の同位置に設けられ、2軸の回転シャフト間で所定間隔を隔てて噛み合うように配置され、固形材料をバレル内に供給する供給部と、固形材料の融点またはそれ以上にまで固形材料を加熱する溶融混練部と、溶融された固形材料を混合する混合部とが設けられ、溶融混練部において、一対のスクリューエレメントは、溶融状態の固形材料を混練可能な既存の混練用スクリューエレメントである。
以上の構成によれば、駆動モーターにより、2軸の回転シャフトが同方向に回転し、回転シャフトに外嵌する混練用スクリューエレメントが、回転シャフトを中心に回転することにより、バレル内に投入された固形材料がバレルの下流方向に搬送されながら、溶融加熱、混練され、混練された固形材料が押し出されるようになっている。
【0003】
しかしながら、以上の2軸同方向回転の溶融混練押出装置には、以下のような技術的問題点が存する。
すなわち、溶融混練押出装置を運転して、所望の混練度合いを具備する押出物を所望の吐出量で得るのに、固形材料を溶融混練押出する際に必要なエネルギーが多く、運転コストがかかる点である。
より詳細には、溶融混練押出装置は、バレル内面を伝熱面とする加熱ヒーターによりバレル内部の固形材料を溶融し、有用した固形材料を駆動モーターにより回転シャフト、すなわちスクリューエレメントを回転させることにより、固形材料を混練するところ、固形材料の種類、および態様に係わらず、駆動モーターにより回転シャフトを回転させることにより、バレル内の固形材料を混練するのに必要な電力、および加熱ヒーターにより固形材料を溶融状態まで加熱するのに必要な電力が多い。
この場合、固形材料の溶融加熱は、固形材料を混練するまでに行われる必要があり、加熱ヒーターによる固形材料の加熱が溶融状態まで達しなければ、下流の固形材料の混練が困難であったり、不能となったりする一方、ヒーターにより固形材料を溶融状態まで加熱したからといって、固形材料の混練が不十分であれば、異種固形材料の場合、押出しの際、均一に混練された押出物とならないし、混練時間を確保するために、回転シャフトの回転数を低減すると、押出物の時間当たりの吐出量が低減する。
このように、固形材料の時間当たりの搬送量が加熱時間および混練時間を決定するところ、固形材料の搬送量は、回転シャフトの回転数に依存することから、固形材料の溶融混練を行うのに、駆動モーターへ供給すべき電力と、ヒーターへ供給すべき電力とは、互いに影響し合っている。
【0004】
特に、固形材料をせん断加熱により溶融し、せん断混練することにより、混練する場合には、以下のような問題がある。
ここに、せん断混練とは、混練対象固形材料が、2軸同方向溶融混練押出装置の各スクリューの回転により、バレルの内面とスクリューの外面との間のスぺ―スをスクリューの長手方向に螺旋状に搬送される際、一対のスクリュー間のクリアランスを境として、回転方向進み側スペースの溶融固形材料の圧力と、回転方向戻り側スペースの溶融固形材料の圧力との圧力差に起因して、固形材料が一対のスクリュー間のクリアランスを通過することにより、半径方向成分を主として含む溶融固形材料の引きちぎり(せん断)により、混練促進される混練を意味する。
従来、このようなせん断混練によれば、混練効率の確保は可能である反面、固形材料の過熱による品質劣化、セルフクリーニング、粘度差の異なる異種固形材料の混練、特に、分配および分散の両立は困難である。
加えて、このようなせん断混練によれば、混練対象固形材料が、バレルの内面とスクリューの外面との間のスぺ―スをスクリューの長手方向に螺旋状に搬送される際、半径方向成分を主として含む溶融固形材料の引きちぎり(せん断)であることから、スクリューを回転駆動する駆動モーターの消費電力が必要とされるとともに、混練対象固形材料のバレルの内面とスクリューの外面との間のスぺ―スにおける充満度がばらけることから、バレルの内面からの加熱エネルギーロスも大きく、総じて、所定の押出量のもとで所定の混練度合いを達成するのに要するエネルギー消費が高くなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、このような原因が、固形材料の種類、態様に係わらず、混練用スクリューエレメントによる溶融混練メカニズムにある点を見出し、解決策を提案するものである。
本発明の目的は、均一に混合された押出物を所望の吐出量で得るのに、溶融混練押出装置への投入コストを抑制しつつ、溶融混練押出装置の運転の際に必要なエネルギーを低減可能とする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本願発明の溶融混練押出装置の運転の際に必要なエネルギーを低減可能とする方法は、2つの円筒シリンダを長手方向に平行に連結し、長手方向に直交する断面において、一対の円弧部が連なるまゆ形であるバレルと、
長手方向を中心に、同方向に回転可能な、互いに所定間隔を隔てた2軸の回転シャフトであって、各回転シャフトは、対応する円弧部の中心と同心状に配置され、対応する円筒シリンダ内で長手方向に延びる、2軸の回転シャフトと、
前記回転シャフトが前記回転シャフトの長手方向を中心として回転可能なように、前記回転シャフトに連結される駆動モーターと、
各々、前記2軸の回転シャフトそれぞれに対して外嵌する、一対のスクリューエレメントとを有し、
該一対のスクリューエレメントは、互いに同一であり、前記バレルの長手方向の同位置に設けられ、前記2軸の回転シャフト間で所定間隔を隔てて噛み合うように配置され、
固形材料を前記バレル内に供給する供給部と、前記バレル内を搬送される固形材料を融点またはそれ以上にまで加熱し、混練する溶融混練部と、溶融された固形材料を混合する混合部とが、長手方向にこの順に設けられ、
前記溶融混練部において、前記一対のスクリューエレメントは、前記一対のスクリューエレメント間のスペースを通じて、溶融状態の固形材料をせん断混練可能な既存の混練用スクリューエレメントである、溶融混練押出装置であって、
前記既存の混練用スクリューエレメントのみを混練用スクリューエレメントに交換する段階を有し、
該混練用スクリューエレメントは、軸方向に直交する任意断面の外周縁形状が同じであり、前記回転シャフトの回転中心と該混練用スクリューエレメントの中心とを所定偏心状とし、かつ、一対の該混練用スクリューエレメント間のクリアランスが、前記回転シャフトの回転中、一定の所定値に維持されるように、一対の該混練用スクリューエレメント間の周方向の相対的角度位置関係が設定され、
前記混練用スクリューエレメントの前記外周面と前記バレルの内面との間のスペースを通じて、溶融された固形材料を混練する段階を有する、
構成としている。
【0007】
以上の構成を有する溶融混練押出装置の運転の際に必要なエネルギーを低減可能とする方法によれば、2軸同方向回転の溶融混練押出装置にあって、たとえば、従来の2条混練用スクリューエレメントのように、バレル中心と同心の回転シャフトの回転中心とスクリューエレメントの中心とが同心状である場合には、固形材料がバレル内を搬送される際、バレル内の一対の混練用スクリューエレメントにおいて、軸線方向に直交する断面におけるバレルとスクリューエレメントの外周縁との間のスペースが、スクリューエレメントのチップ先端とバレル内面、および一対のスクリューエレメント間のクリアランスにより区分されるところ、区分されるスぺ―ス間で、バレル内の固形材料の内圧の変動差が大きいことから、区分されるスペースに応じて固形材料の非充満部を場合により生じるような、バレル内の固形材料の流動の不均一性が引き起こされるとともに、特に、一対のスクリューエレメント間のクリアランスを介して固形材料が流動する際、スクリュー回転方向遅れ側の区分ゾーンは高圧であり、スクリュー回転方向進み側の区分ゾーンは低圧であることから、一対のスクリューエレメント間のクリアランス間で固形材料の高せん断が生じるところ、軸方向に直交する任意断面の外周縁形状が同じである混練用スクリューエレメントにあって、回転シャフトの回転中心とスクリューエレメントの中心とを所定偏心状とし、かつ、一対のスクリューエレメント間のクリアランスを、回転に係わらず、一定の所定値に維持することにより、バレル内の固形材料の不均一な流動を改善するとともに、一対のスクリューエレメント間のクリアランス間で固形材料の高せん断を減じる一方、固形材料の縮流を主として軸方向に発現することにより、均一に混合された押出物を所望の吐出量で得るのに、必要な消費エネルギーを大幅に低減することが可能となる。
特に、バレル内面を通じて固形材料を加熱することにより固形材料の溶融を行うのに、従来のせん断混練のもとでは、固形材料の流動の不均一性に起因する固形材料の加熱効率の低さゆえに、たとえば、スクリューエレメントとしてのニーディングディスクの追加や、回転数の増大による対処を行う必要があったが、このような混練用スクリューエレメントによれば、固形材料の粘度に係わらず、このような対処をすることなく、固形材料の溶融温度に加熱温度の設定が可能となり、混練用スクリューエレメントを回転させる駆動モーターの消費エネルギーおよび固形材料を加熱する加熱ヒーターの消費エネルギーのトータルで考えても、固形材料へのエネルギー伝達の効率性向上により、必要な消費エネルギーを大幅に低減することが可能となる。
ここに、偏心度は、回転シャフトの中心とスクリューエレメントの中心とのずれにより定義され、スクリューエレメントの中心は、円形断面の場合は、その中心、非円形断面の場合は、チップの構成面の中心を始点とし、構成面に直交する線分が反対側の外周縁に交差する終点までの長さの二分の一により定義される。
【0008】
以上の課題を解決するために、本願発明の溶融混練押出における消費エネルギーの低減方法は、
溶融混練ゾーン、および混合ゾーンを軸方向にこの順に設け、各々、2軸の回転シャフトそれぞれに対して外嵌する、一対のスクリューエレメントの回転により、固形材料を軸方向に搬送しつつ、溶融混練し、均一に混合された押出物を押し出す2軸式溶融混練押出方法であって、
少なくとも前記溶融混練ゾーンまたは前記混合ゾーンのいずれかにおいて、前記一対のスクリューエレメントの間のせん断混練方式を、前記一対のスクリューエレメント間外の伸長混練方式に切り替える段階を有する、構成としている。
【0009】
以上の構成を有する溶融混練押出における消費エネルギーの低減方法によれば、以下に示すメカニズムで、溶融混練押出における消費エネルギーの低減が可能である。
ここに、伸長混練とは、溶融混練ゾーンにおいて、一対のスクリューエレメントの回転による2軸押出方式を前提に、バレル内面とスクリューエレメントの外表面の間の溶融固形材料が、スクリューエレメントの長手方向を中心とする回転により、スクリューエレメントの長手方向に搬送されながら伸長され、それによる破断および液滴化を通じての縮流分散化により、溶融」固形材料を混練するものであり、混合ゾーンにおいて、異種材料を含む固形材料の分散または分配する準備となるものである。
このような伸長混練を行うのに、Do/Di、条数、回転シャフトに対するスクリューエレメントの偏心度、一対のスクリューエレメント間のクリアランスおよびバレル内面とスクリューエレメントの外表面のクリアランスというスクリューエレメントの諸元が重要なパラメータである。
以上の伸長混練においては、同じ溶融状態の固形材料に対して、所望の吐出量の均一な混合の押出物を確保するのに、一対のスクリューエレメント間のクリアランスの通過により溶融固形材料をせん断混練する場合に比べて、スクリューエレメントの長手方向を中心とする回転に要するエネルギーを省略化することが可能である。
混練対象である固形材料は、混練する際、溶融状態まで加熱される必要があるところ、回転シャフトの回転数がバレル内の固形材料の搬送速度を決定する一方、固形材料の加熱は、伝熱面積を構成するバレル内面との接触時間が加熱時間を構成することから、伸長混練によれば、バレル内の固形材料の不均一な流動を改善するとともに、一対のスクリューエレメント間のクリアランス間で固形材料の高せん断を減じるとともに、バレル内面とスクリューエレメントの外表面の間のスペース内の固形材料の充満度を上昇させてバレル内面との接触面積(伝熱面積)を増大することにより、回転シャフトの回転数を低減して加熱時間を長くすることなしに、押出効率を確保しつつ、加熱ヒーターに要するエネルギーを省略化することが可能である。
特に、溶融温度の異なる異種固形材料を混練する場合、溶融温度の高いほうの固形材料が溶融する温度まで異種固形材料全体を加熱せざるを得ないところ、接触面積(伝熱面積)の増大により、回転シャフトの回転数を低減して加熱時間を長くなるのを回避し、以て、押出効率の確保に加え、溶融温度の低いほうの固形材料の過熱、場合により、固形材料の品質劣化を抑制することにも資するか、または、溶融温度の低いほうの固形材料のバレル長手方向の投入位置の選択の柔軟性を向上することが可能である。
【0010】
さらに、前記溶融混練ゾーンおよび前記混合ゾーンにおいて、バレル内の回転シャフトに外嵌されたスクリューエレメントの回転により、固形材料を軸方向に搬送しつつ、前記溶融混練ゾーンにおいては、バレル加熱により、固形材料を溶融するのがよい。
【0011】
以上の構成を有する混練用スクリューエレメントの設計方法によれば、
軸方向に直交する断面の外周形状が同じである混練用スクリューエレメントであって、
一対の円弧部が連なるまゆ形であり、円弧部各々において、同方向に回転する一対の混練用スクリューエレメントの一方を収容するバレルの軸線と、混練用スクリューエレメントが外嵌される回転シャフトの回転中心軸線とを一致させた状態で、所与のDo/Diのもとで、所要回転シャフトの回転中心軸線に対する混練用スクリューエレメントの中心の偏心度を設定する段階と、
設定された偏心度に基づいて、一対の混練用スクリューエレメントの回転中に一対の混練用スクリューエレメント間のクリアランスが一定に保持されるとともに、バレルの内面と混練用スクリューエレメントの外周縁との間のスペース内の固形材料の充満度を確保可能なように、バレルの長手方向に直交する断面外形において、混練用スクリューエレメントの条数および周方向に隣接するチップ間の角度間隔を設定する段階と、
設定した条数に基づいて、各チップにおいて、チップの先端により仕切られるバレルの内面と混練用スクリューエレメントの外周縁との間のスペースにおいて、回転方向遅れ側からバレルの内面とチップとのクリアランスを介しての進み側への固形材料の要求流れに応じて、チップアングルを設定する段階と、
一対の混練用スクリューエレメント間の相対的周方向位置関係を設定する段階と、を有し、
上記偏心度設定段階、上記条数設定段階、上記チップアングル設定段階および上記周方向位置関係設定段階を繰り返すことにより、バレルの長手方向に直交する断面外形の全体プロファイルを決定し、固形材料が一対の混練用スクリューエレメント間を通過することによるせん断混練の度合いを低減しつつ、バレルの内面と混練用スクリューエレメントの外周縁との間のスペース内の固形材料がバレルの軸線方向に搬送されながら混練される度合いを高める、構成としている。
【0012】
また、2つの円筒シリンダを長手方向に平行に連結し、長手方向に直交する断面において、一対の円弧部が連なるまゆ形であるバレルと、
長手方向を中心に、同方向に回転可能な、互いに所定間隔を隔てた2軸の回転シャフトであって、各回転シャフトは、対応する円弧部の中心と同心状に配置され、対応する円筒シリンダ内で長手方向に延びる2軸の回転シャフトと、
前記回転シャフトが前記回転シャフトの長手方向を中心として回転可能なように、前記回転シャフトに連結される駆動モーターと、
各々、前記2軸の回転シャフトそれぞれに対して外嵌する、一対のスクリューエレメントとを有し、
該一対のスクリューエレメントは、互いに同一であり、前記バレルの長手方向の同位置に設けられ、前記2軸の回転シャフト間で所定間隔を隔てて噛み合うように配置され、
固形材料を前記バレル内に供給する供給部と、前記バレル内を搬送される固形材料を融点またはそれ以上にまで加熱し、混練する溶融混練部と、溶融された固形材料を混合する混合部とが設けられ、
前記溶融混練部において、前記一対のスクリューエレメントは、前記一対のスクリューエレメント間のスペースを通じて、溶融状態の固形材料をせん断混練可能な既存の混練用スクリューエレメントである、溶融混練押出装置であって、
該混練用スクリューエレメントは、その外周面と前記バレルの内面との間に所定クリアランスを保持し、前記バレルの長手方向に直交する断面外形を構成する前記外周閉曲線部は、非円形状、または、円形状であり
前記既存の混練用スクリューエレメントのみを、請求項4の設計方法により設計された混練用スクリューエレメントに交換する条件のもとで、前記混練用スクリューエレメントの前記外周面と前記バレルの内面との間のスペースを通じて、溶融された固形材料を伸長混練する段階を有する、のがよい。
【0013】
また、前記混練用スクリューエレメントの前記外周閉曲線部と前記円弧部との間に形成される領域が複数の部分領域に区分けされるように、前記混練用スクリューエレメントの外周面の形状が設定されているのがよい。
さらに、前記混練用スクリューエレメントは、前記回転シャフトが内嵌する円形開口を有し、周方向に3以上のチップを有するディスクが長手方向に積み重ねられ、長手方向に隣接するディスクの対応するチップは、周方向にずれている、長手方向に不連続タイプであり、前記バレルの中心に対して、前記円形開口の中心がオフセット配置されるのがよい。
さらにまた、前記混練用スクリューエレメントは、前記回転シャフトが内嵌する円形開口を有するモノリシック状であり、長手方向に離間する両端面それぞれにおいて、周方向に3以上のチップを有し、周側面には、両端面のチップに連なる螺旋状リードが設けられる、長手方向に連続タイプであり、前記バレルの中心に対して、前記円形開口の中心がオフセット配置されるのがよい。
【0014】
加えて、前記チップの数は、3条ないし5条であるのがよい。
また、前記溶融混練部は、前記バレルの内面を介して、前記バレル内部において、前記バレルの下流側に搬送される固形材料を加熱するタイプであり、前記混練用スクリューエレメントにより、固形材料と前記バレルの内面との接触面積を増大するのがよい。
さらに、前記溶融混練部の上流側には、前記バレル内に供給される固形材料を下流側に搬送する搬送部が設けられ、該搬送部において、前記一対のスクリューエレメントは、前記溶融混練部の前記混練用スクリューエレメントと同じタイプのスクリューエレメントであるのがよい。
さらにまた、固形材料は、工業用固形材料、または天然物の単一または異種混合固形材料であり、バルク状、ペレット状、フレーク状片、粒状、粉状のいずれかであるのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図面を参照しながら、本発明の溶融混練押出装置による消費エネルギーの低減方法を以下に詳細に説明する。
図1および図2に示すように、溶融混練押出装置10は、固形材料Mをバレル16内に供給する供給部22と、供給部22により供給される固形材料Mを混合する混合部24と、混合部24により混合されるまでに、固形材料Mの融点まで固形材料Mを加熱する溶融混練部28と、固形材料Mを外部に押し出す押出部33とから概略構成されている。
【0016】
より具体的には、内部に固形材料Mを搬送するバレル16が設けられ、スタンド25により支持された長手方向Xに延びるシリンダ12が備えられ、シリンダ12の一端には、供給部22、シリンダ12の他端には、押出部33が設けられ、一端から他端に向かって長手方向Xに、混合部24および溶融混練部28が設けられ、供給部22から供給された固形材料Mが、バレル16内で長手方向Xの下流側に搬送されつつ、溶融混練され、混合されて、外部に押し出すようにしている。
【0017】
図4に示すように、バレル16は、2つの円筒シリンダ13を長手方向に平行に連結し、長手方向Xに直交する断面において、一対の円弧部14が連なるまゆ形であり、それぞれ、対応する円筒シリンダ13内で円筒シリンダ13と同心状に長手方向Xに延び、長手方向Xを中心に回転可能な、互いに所定間隔を隔てた2軸の回転シャフト18が設けられる。
各回転シャフト18は、対応する円弧部14の中心と同心にバレル16内に配置され、通常どおり、長手方向Xを中心に回転可能なように、たとえば、軸受け(図示せず)により軸支され、各回転シャフト18は、回転駆動モーター19に回転伝達機構21を介して、同じ方向に同期し回転するように連結されている。
2軸の回転シャフト18それぞれにおいて、一対のスクリューエレメント20(後に説明する搬送用スクリューエレメント20A、混練用スクリューエレメント20Bを含む)が、回転シャフト18の長手方向Xを中心に回転可能なように、たとえば、回転シャフト18の外周面に対して外嵌され(たとえば、インボリュートまたはスプライン嵌合)、一対のスクリューエレメント20は、金属製で、互いに同一であり、バレル16の長手方向Xの同位置に設けられ、2軸の回転シャフト18間で所定間隔D(図4参照)を隔てて噛み合うように配置される。
【0018】
シリンダ12は、図2(C1からC11)に示すように、内部に形成されるバレル16(後に説明)とともに長手方向に分割され、各分割された部分の端面には、張り出しフランジ41が設けられ、張り出しフランジ41に設けられるねじ穴43を介して、長手方向に隣接する分割部同士を液封状にねじ締結しており、各分割部は、押出し部33を除き、搬送部を構成する。これにより、搬送部に対応したバレル16内のスクリューエレメント20を点検、交換等する場合に、有効である。
【0019】
固形材料Mは、加熱により溶融する固形材料Mである限り、任意であり、樹脂製等工業用固形材料M、天然物、または食品残渣であり、態様は、バルク状、ペレット状、フレーク状片、粒状、粉状のいずれでもよい。
原料供給部10は、ホッパー23、いずれも従来既知の重量式/容量式フィーダー(図示せず)、シューター(図示せず)、強制フィーダー(図示せず)から構成され、シューターが、固形材料M供給口31で接続されている。
ホッパー23の下部のコンパクターは、ホッパー23に投入された固形材料Mを、シューターに供給するものであり、シューターには、固形材料Mを強制フィードするために、押し込み能力とフィード能力を有する強制フィーダーが挿入され、時間当たりの固形材料Mのバレル16内への供給量を設定可能としている。変形例として、シューターを介さず、固形材料M供給口31にホッパー23を直接接続するのでもよい。
なお、固形材料Mのバレル16内部への供給について、重力による飢餓供給でも、固形材料Mの供給を駆動力による強制供給でも、固形材料Mのバレル16内搬送中における充満度に影響のない限り、以下に説明する、本願発明における回転駆動モーター19の必要電力、および加熱ヒーターの必要電力を低減することによる消費エネルギーの低減効果は同様に生じる。
【0020】
溶融混練部28は、従来既知のシリンダ12の内部に設けられる加熱ヒーターにより、バレル16内の固形材料Mをバレル16の内面を介して、外部加熱するように構成され、固形材料Mが固形材料M供給口31から供給された後に説明する混合部24に到達するまでに、固形材料Mの融点またはそれ以上にまで固形材料Mが加熱されるようにしている。
これにより、固形材料Mが混合部24に到達する時点において、混練可能なように溶融状態とされるとともに、固形材料Mが過熱されないようにすることにより、材質を確保する。以上のように、溶融混練部28による加熱温度は、固形材料Mの種類に応じて、設定されるのが好ましい。
加熱ヒーターは、従来既知のタイプでよく、供給部22より下流部位から押出し部33までの各ゾーンごとに、バレル16の内外面の間にバレル16内部を覆うように設けられ、バレル16内面を伝熱面として、バレル16内部の固形材料Mを加熱したり、溶融させたり、溶融させた固形材料Mを溶融状態に維持するように保温するようにしている。
さらに、各ゾーンごとに、バレル16内部の固形材料Mの温度を測定するセンサー(図示せず)が設けられ、センサーにより測定されたバレル16内部の固形材料Mの温度に基づいて、加熱ヒーターの制御を行う温度制御手段(図示せず)に基づいて、各ゾーンごとに、バレル16内部の固形材料Mの温度が目標温度、たとえば、固形材料Mの溶融温度に達していない場合、温度制御手段により加熱ヒーターの出力を上げるように制御し、逆に、バレル16内部の固形材料Mの温度が目標温度、たとえば、固形材料Mの溶融温度を超えている場合、温度制御手段により加熱ヒーターの出力を下げるように制御するようにしている。
押出部33は、従来、溶融混練押出装置に用いられているものと同様に、ダイス35を設けて、混練済の固形材料Mを絞って外部に押し出すようにしている。
【0021】
以下、各スクリューエレメント20が対応する回転シャフト18に設けられる一対のスクリューエレメント20は、互いに同一であるので、その一方について、説明する。
搬送部30において、一対のスクリューエレメント20は、各々固形材料Mをバレル16の長手方向X下流側に搬送可能な搬送用スクリューエレメント20Aであり、搬送用スクリューエレメント20Aは、従来既知のフルフライトスクリューエレメントでよい。
【0022】
溶融混練部32において、一対のスクリューエレメント20は、各々固形材料Mを混練可能な混練用スクリューエレメント20Bである。
図3に示すように、混練用スクリューエレメント20Bは、回転シャフト18が内嵌する円形開口48を有し、周方向に2以上のチップ50を有するディスク52が長手方向Xに積み重ねられ(図3において、7枚)、長手方向Xに隣接するディスク52の対応するチップ50は、周方向にずれている、長手方向Xに不連続タイプであり、バレル16の中心に対して、円形開口48の中心がオフセット配置される。
混練用スクリューエレメント20Bは、軸方向に直交する任意断面の外周縁形状が同じであり、回転シャフト18の回転中心と混練用スクリューエレメント20Bの中心とを所定偏心状とする。
さらに、一対の混練用スクリューエレメント20B間のクリアランスが、回転シャフト18の回転中、一定の所定値に維持されるように、一対の混練用スクリューエレメント20B間の周方向の相対的角度位置関係が設定される。
より具体的には、各端部に設けられるディスク52は、3条であり、両端部の間に設けられるディスク52は、4条である。各ディスク52には、当接面に凹凸を設け、長手方向に隣接するディスク52が嵌合固定されるようにしている。
各ディスクの厚みtは、後に説明するように、混練用スクリューエレメント20Bの長手方向長さLにより、混練用スクリューエレメント20Bの回転数との関係において、固形材料Mが混練用スクリューエレメント20Bを通過する時間を調整する観点から定めるのがよい。
混練用スクリューエレメント20Bは、搬送用スクリューエレメント20Aと同様に、回転シャフト18の軸線方向を中心とする回転により、固形材料Mを長手方向Xの下流方向に搬送するように構成され、ディスク52は、回転シャフト18の軸方向に傾斜して設けられている(図面上、傾斜は図示省略)。
【0023】
図6に示すように、4条のディスク52それぞれは、外周縁は、円弧の組み合わせから構成され、4つのチップ50は、周方向に所定間隔を隔てて配置され、1つは、チップアングルΘ1、1つは、Θ1より大きいチップアングルΘ2により構成され、他の2つは、チップアングルΘ1、Θ2より小さい角度で構成され、バレル16の内面36と混練用スクリューエレメント20Bの外周縁34との間に構成される流路断面積SAは、3条のディスク52と同様に、チップ50により区分されている。
チップの周方向の配置、チップアングルは、偏心量dと同様に、固形材料Mに対する所望の混練度合いを達成する観点から定めればよい。
2組の混練用スクリューエレメント20Bは、上流側の組の最下流側の3条ディスク52と、下流側の組の最上流側の3条ディスク52とが当接する態様で、回転シャフト18にそれぞれ連結され、最下流側の3条ディスク52と最上流側の3条ディスク52とは、回転シャフト18の周方向にずらして当接させるのでもよく、周方向にずらさずに当接させるのでもよい。一方、上流側の組の最上流側の3条ディスク52、および下流側の組の最下流側の3条ディスク52はそれぞれ、隣接する搬送用スクリューエレメント20Aの端面と当接する態様で、回転シャフト18にそれぞれ連結されている。
【0024】
以上、混練用スクリューエレメント20Bの両端部の3条ディスク52は、それぞれ、混練用スクリューエレメント20Bの組付け性の観点から設けられており、所望の混練度合いが確保される限りにおいて、両端部の3条ディスク52の一方、または両方は、中間部の4条ディスク52と同様に、4条としてもよく、または、中間部の4条ディスク52すべて、または一部を両端部の3条ディスク52と同様に、3条としてもよい。
【0025】
図3に図示する7枚のディスクから構成される混練用スクリューエレメント20Bについては、両端面側はいずれも、いわゆるおむすび形の3条であり、両端面の間の5枚のディスクは、いずれも4条であり、流路断面積は、両端面側に比べて、より小さく構成されており、両端面の間を通過する間に、固形材料Mは、半径方向を含め、より混練力が負荷されるようにしている。このように、各ディスクの条数を個別に設定することにより、上流側に隣接して配置される搬送用スクリューエレメントに対する流路断面積の狭まり方を調整し、それにより、固形材料Mの混練度合いを調整することが可能である。混練度合いは、下流側の混合ゾーンにおいて、溶融混練された固形材料Mの分散および/または分散による均一な混合を達成する観点から定められる。
一方において、各ディスクの厚みtを個別に設定することにより、固形材料Mが混練用スクリューエレメント20Bを通過する間の混練時間を調整し、それにより、同様に、混練度合いを調整することが可能である。
また、上述のように、混練用スクリューエレメント20Bの隣接するディスク間において、チップの位置を周方向にずらすことにより、隣接するディスクすべて、チップの位置を周方向に整列する場合に比して、固形材料Mが、バレル16の内面36と混練用スクリューエレメント20Bの外表面の間の流路を流れる際、固形材料Mの流れに対する抵抗となり、場合により乱流が引き起され、その分、混練度合いが向上する。よって、隣接するディスク間において、チップの位置を周方向にずらす角度は、このような観点から定めるのがよく、ずらす角度は、たとえば、隣接するディスク間の対応するチップ同士で、数度ないし数十度である。
【0026】
図4に示すように、各混練用スクリューエレメント20Bにおいて、バレル16の長手方向Xに直交する断面外形を構成する外周閉曲線部40は、混練用スクリューエレメント20Bの回転シャフト18を中心とする回転により外周閉曲線部40と円弧部14との間に所定間隔dを保持しつつ、外周閉曲線部40と円弧部14との間に形成される領域が複数の部分領域42に区分けされ、いずれかの部分領域42の面積が、混練用スクリューエレメント20Bの回転シャフト18を中心とする回転に応じて増減するように、外周閉曲線部40は、非円形状で、対応する回転シャフト18の回転軸線は、円弧部14の中心と同心状である。
より詳細には、外周閉曲線部40と円弧部14との間に形成される領域は、部分領域42として、SA1ないしSA5の5つの領域に区分され、図4(A)ないし図4(C)に示すように、回転シャフト18の回転に応じて、SA1ないしSA5の面積はそれぞれ、増減している。
所定間隔dについて、バレル16の内面36に対して、チップ50の先端が接触しない範囲で、なるべく小さいのが好ましく(たとえば、0.2ミリ以下)、それにより、流路断面積SA1ないしSA5間が区分されることから、流路断面積SA1ないしSA5の総面積が、長手方向上流側に隣接する搬送部における総面積より小さく設定する場合に、流路断面積SA1ないしSA5それぞれにおける、固形材料Mの混練に有効である。
以上の点は、一対の混練用スクリューエレメント20Bそれぞれにおいて、両端部の間に設けられる4条のディスク52により形成される流路断面積SAについても同様である。
【0027】
混練用スクリューエレメント20Bの外表面34とバレル16の内面36との間に構成される固形材料Mの流路断面積SAは、搬送用スクリューエレメント20Aの外表面34Aとバレル16の内面36との間に構成される固形材料Mの流路断面積SAより小さく設定される。これにより、後に説明するように、溶融状態の固形材料Mが、搬送部30から溶融混練部32に搬送されることにより、混練される。固形材料Mの流路断面積SAは、このような観点から定めるのがよい。
【0028】
より詳細には、図4に図示するバレル16の内面36と、混練用スクリューエレメント20Bの外表面34Bとの間に形成される固形材料Mの流路断面の断面積SA(SA1ないしSA5の合計)は、図5に図示するバレル16の内面36と、搬送用スクリューエレメント20Aの外表面34Aとの間に形成される流路断面の断面積SAより小さく設定されており、それにより、搬送部30において、バレル16の長手方向上流側で隣接する搬送用スクリューエレメント20Aの回転により搬送される固形材料Mは、溶融混練部32に流入し、混練用スクリューエレメント20Bの回転により、下流方向に搬送されつつ混練され、バレル16の長手方向下流側に搬送されるように構成している。
以上より、溶融混練部32における流路断面の狭め方は、混練度合いの調整の観点から定まればよい。なお、搬送用スクリューエレメント20Aは、図5に示すように、2条のフルフライトスクリューエレメントだけでなく、溶融混練部32における流路断面の狭め方に適合する限り、1条または3条のフルフライトスクリューエレメントでもよい。
【0029】
変形例として、対応する回転シャフト18の回転軸線は、円弧部14の中心と同心状である限り、外周閉曲線部40が、円形状でもよい。
混練用スクリューエレメント20Bの外表面34とバレル16の内面36との間に構成される固形材料Mの流路断面積SAが所定面積となるように、混練用スクリューエレメント20Bのバレル16の長手方向Xに直交する横断面の外周縁形状が設定される。
流路断面積をどの程度小さく設定するかに応じて、バレル16の固形材料Mの流量に依存して、溶融混練部における固形材料Mの混練度合いが調整される。
【0030】
混練用スクリューエレメント20Bの軸方向長さL、混練用スクリューエレメント20Bのバレル16の内面36に対向する側周面34Bは、回転シャフト18の所与回転数のもとで、固形材料Mが混練用スクリューエレメント20Bの固形材料M搬送方向上流側端部44から固形材料M搬送方向下流側端部46を通過するまでの混練時間が所定時間確保可能なように形状設定される。たとえば、回転シャフト18の所与回転数のもとで、軸方向長さLが長いほど、固形材料Mが混練用スクリューエレメント20Bを通過するのに時間を要し、混練時間が長く設定される。
【0031】
固形材料Mの種類、嵩比重、または粘度に応じて、スクリューエレメント20の条数、所定チップ50のチップアングル、偏心量、および所定間隔Dが選択される。
所定間隔Dについては、たとえば、0.2ミリ以下であり、そこにおいて、固形材料Mのせん断による過熱が発生せず、または、混練用スクリューエレメント20Bのセルフクリーニングが可能となるように設定される。
変形例として、混練用スクリューエレメント20Bにおいて、条数、偏心量のいずれかが異なる、異なる種類のスクリューエレメント20が、バレル16の長手方向Xに整列されるのでもよい。
【0032】
たとえば、複数の混合部24において、バレル16の長手方向Xに下流側に位置する混合部24ほど、混練用スクリューエレメント20Bの条数が増大されているのでもよく、これにより、下流ほど混練度合いを高めることが可能となり、ディスク52ごとに条数を変えるのでもよい。
混合部24の特殊スクリューエレメントについても、上述の溶融混練用スクリューエレメントと同様であり、混合用特殊スクリューエレメント20Bは、軸方向に直交する任意断面の外周縁形状が同じであり、回転シャフト18の回転中心と混練用スクリューエレメント20Bの中心とを所定偏心状とされ、さらに、一対の混合用特殊スクリューエレメント20B間のクリアランスが、回転シャフト18の回転中、一定の所定値に維持されるように、一対の混合用特殊スクリューエレメント20B間の周方向の相対的角度位置関係が設定される。
【0033】
溶融ゾーン84の直下流に、上面に排気口82を有する排気ゾーン80が設けられ、溶融ゾーン84において、固形材料Mを加熱溶融する際に発生するガス等を排気口82より外部に排気するようにしている。
【0034】
一方、サイドフィーダー31が設けられるゾーンより下流、押出し部33より直上流に、真空ベントゾーン86が設けられ、バレル16内を上流から搬送される溶融混練済の固形材料Mと、サイドフィーダー31からバレル16内に搬送される異種材料(たとえば、)とが、分散および/又は分配により混合される際に発生する溶融物中の水分等揮発性物質を、従来既知の真空ベント装置88により、除去するようにしている。
真空ベントゾーン86を減圧にする装置については、通常の減圧装置、真空装置などいずれであってもよく特に制限はない。例えば、排気ブロワ、水流式アスピレーターなどを使用することができる。さらに、発生ガス回収用のトラップを設けるようにしてもよい。
【0035】
サイドフィーダー31は、端部がスタンド29により支持され、バレル16の側面に設けた流入開口(図示せず)に連通接続され、端部に材料供給開口を有するケーシング(図示せず)と、ケーシング内に設けられ、流入開口に向かって進む向きに回転するスクリューエレメント(図示せず)とが設けられ、材料供給開口を通じて、ケーシング内に供給される材料(たとえば、無機物の添加剤)は、スクリューエレメントの回転により流入開口に向かって搬送され、これにより、バレル16内で、別途、溶融ゾーンにおいて加熱溶融、混練された樹脂製固形材料Mに混ぜられ、混合ゾーンにおいて、固形材料Mと分散および/または分配により均一に混合され、押し出されるようにしている。
【0036】
上記の構成を有する軸方向に直交する任意断面の外周形状が同じである混練用スクリューエレメントの設計手順は、たとえば、以下の通りである。
一対の円弧部が連なるまゆ形であり、円弧部各々において、同方向に回転する一対の混練用スクリューエレメントの一方を収容するバレル16の軸線と、混練用スクリューエレメントが外嵌される回転シャフト18の回転中心軸線とを一致させた状態で、所与のDo/Diのもとで、所要回転シャフト18の回転中心軸線に対する混練用スクリューエレメントの中心の偏心度を設定する。
次いで、設定された偏心度に基づいて、一対の混練用スクリューエレメントの回転中に一対の混練用スクリューエレメント間のクリアランスが一定に保持されるとともに、バレル16の内面と混練用スクリューエレメントの外周縁との間のスペース内の固形材料Mの充満度を確保可能なように、バレル16の長手方向に直交する断面外形において、混練用スクリューエレメントの条数および周方向に隣接するチップ間の角度間隔を設定する。
次いで、設定した条数に基づいて、各チップにおいて、チップの先端により仕切られるバレル16の内面と混練用スクリューエレメントの外周縁との間のスペースにおいて、回転方向遅れ側からバレル16の内面とチップとのクリアランスを介しての進み側への固形材料Mの要求流れに応じて、チップアングルを設定する。
次いで、一対の混練用スクリューエレメント間の相対的周方向位置関係を設定する。
上記偏心度設定段階、上記条数設定段階、上記チップアングル設定段階および上記周方向位置関係設定段階を繰り返すことにより、バレル16の長手方向に直交する断面外形の全体プロファイルを決定し、固形材料Mが一対の混練用スクリューエレメント間を通過することによるせん断混練の度合いを低減しつつ、バレル16の内面と混練用スクリューエレメントの外周縁との間のスペース内の固形材料Mがバレル16の軸線方向に搬送されながら混練される度合いを高めることが可能である。
【0037】
以上の構成を有する溶融混練押出装置10について、以下に、溶融混練押出方法を含め、その作用を説明する。
まず、既存の混練用スクリューエレメント、たとえば、せん断加熱およびせん断混練を主体とする混練用スクリューエレメントを有する溶融混練押出装置において、溶融混練押出装置全体を入れ替えるのではなく、混練用スクリューエレメントのみを上記構成を有する混練用スクリューエレメント20Bに交換することにより、溶融混練押出の際の消費エネルギーの低減効果が得られるところ、このような交換手順について、説明する。
なお、スクリューエレメントの回転シャフト18への嵌合タイプは、たとえば、インボリュート嵌合、スプライン嵌合は、交換前後で共通とする。

1:ギアボックス側シャフトとスクリューエレメントシャフトを連結固定しているカプラー90を緩める。
2:スクリューエレメント先端のスクリューエレメントキャップ94を外し、スクリューエレメント抜き治具(図示せず)を装着する。
3:スクリューエレメント抜き治具を介してスクリューエレメント20を抜く。
4:スクリューエレメント抜き治具を外す。
5:スクリューエレメントヘッド92を外す。
6:先端から順番にスクリューエレメント20を外す。
7:溶融混練部までのスクリューエレメント20を外し、混練スクリューエレメント20Bを組み込み、混練スクリューエレメント20Bのみを交換する。
8:他のスクリューエレメント20を組み戻す。
9:スクリューエレメントヘッド92を装着し仮締めする。
10:スクリューエレメント20を組み合わせた状態でバレル16内に挿入する。
11:ギアボックス側のシャフトと連結し、カプラー90で固定する。
12:スクリューエレメントヘッド92を締める。
13:スクリューエレメントキャップ94をつける。
上記2から13までの工程を、各回転シャフト18について行う。
以上の工程により、混練用スクリューエレメントのみを交換することにより、以下に示すように、固形材料Mの溶融混練押出しの際の消費エネルギーの低減が可能である。
【0038】
まず、固形材料Mの種類に応じて、溶融混練部28により、混練されるまでに固形材料Mの融点まで固形材料Mが加熱されるように加熱温度を設定する。
次いで、供給部22におけるフィーダーによる時間当たり固形材料Mの供給量、搬送部におけるスクリューエレメント20の回転による時間当たりの固形材料Mの搬送量を設定する。
これにより、固形材料Mの順方向の搬送速度を調整することにより、バレル16の内部である密閉空間内の固形材料Mの充満度を調整する。
【0039】
以上、バレル16内に配置され、回転シャフト18の軸線を中心として回転可能な回転シャフト18に外嵌されるスクリューエレメント20の回転により、固形材料Mを連続的に搬送する準備が完了する。
次いで、バレル16内面が所定温度に保持され、フィーダーおよび駆動モーター19により回転シャフト18が回転した状態で、固形材料Mを連続的に供給する。
供給された固形材料Mは、バレル16の長手方向下流に向かって、搬送され、その間に、固形材料Mの融点まで固形材料Mが加熱され、混練される。
【0040】
より詳細には、溶融混練段階は、密閉空間内の延び方向下流側に向かって、固形材料Mを連続的に搬送しながら、密閉空間内の所定長さに亘って流路断面積が狭められた部分を通過させることにより、固形材料Mを所定の混練時間に亘って混練され、所定の混練度合いとなる。
その際、密閉空間の下流側に、流路断面積が狭められることにより、圧力障壁を形成することにより、圧力障壁上流側における密閉空間内の加熱された固形材料Mの充満度を高めつつ、固形材料Mを混練する。
以上、2軸同方向回転の溶融混練押出装置にあって、たとえば、従来の2条混練用スクリューエレメント20Bのように、バレル16中心と同心の回転シャフト18の回転中心とスクリューエレメントの中心とが同心状である場合には、固形材料Mがバレル16内を搬送される際、バレル16内の一対の混練用スクリューエレメント20Bにおいて、軸線方向に直交する断面におけるバレル16とスクリューエレメントの外周縁との間のスペースが、スクリューエレメントのチップ先端とバレル16内面、および一対のスクリューエレメント間のクリアランスにより区分されるところ、区分されるスぺ―ス間で、バレル16内の固形材料Mの内圧の変動差が大きいことから、区分されるスペースに応じて固形材料Mの非充満部を場合により生じるような、バレル16内の固形材料Mの流動の不均一性が引き起こされるとともに、特に、一対のスクリューエレメント間のクリアランスを介して固形材料Mが流動する際、スクリューエレメント回転方向遅れ側の区分ゾーンは高圧であり、スクリューエレメント回転方向進み側の区分ゾーンは低圧であることから、一対のスクリューエレメント間のクリアランス間で固形材料Mの高せん断が生じるところ、軸方向に直交する任意断面の外周縁形状が同じである混練用スクリューエレメント20Bにあって、回転シャフト18の回転中心とスクリューエレメントの中心とを偏心状とし、かつ、一対のスクリューエレメント間のクリアランスを、回転に係わらず、一定の所定値に維持することにより、バレル16内の固形材料Mの不均一な流動を改善するとともに、一対のスクリューエレメント間のクリアランス間で固形材料Mの高せん断を減じる一方、固形材料Mの縮流を主として軸方向に発現することにより、固形材料Mの時間当たりの所定吐出量の固形材料Mを混練するに際し、同程度の固形材料Mの分散化を達成するのに、必要な消費エネルギーを大幅に低減することが可能となる。
特に、バレル16内面を通じて固形材料Mを加熱することにより固形材料Mの溶融を行うのに、従来のせん断混練のもとでは、固形材料Mの流動の不均一性に起因する固形材料Mの加熱効率の低さゆえに、たとえば、スクリューエレメントとしてのニーディングディスクの追加や、回転数の増大による対処を行う必要があったが、このような混練用スクリューエレメント20Bによれば、固形材料Mの粘度に係わらず、このような対処をすることなく、固形材料Mの溶融温度に加熱温度の設定が可能となり、混練用スクリューエレメント20Bを回転させる駆動モーター19の消費エネルギーおよび固形材料Mを加熱する加熱ヒーターの消費エネルギーのトータルで考えても、固形材料Mへのエネルギー伝達の効率性向上により、必要な消費エネルギーを大幅に低減することが可能となる。
【0041】
以上の構成を有する溶融混練押出における消費エネルギーの低減方法によれば、同じ溶融状態の固形材料Mに対して、所望の吐出量の均一な混合の押出物を確保するのに、一対のスクリューエレメント間のクリアランスの通過により溶融固形材料Mをせん断混練する場合に比べて、スクリューエレメントの長手方向を中心とする回転に要するエネルギーを省略化することが可能である。
混練対象である固形材料Mは、混練する際、溶融状態まで加熱される必要があるところ、回転シャフト18の回転数がバレル16内の固形材料Mの搬送速度を決定する一方、固形材料Mの加熱は、伝熱面積を構成するバレル16内面との接触時間が加熱時間を構成することから、伸長混練によれば、バレル16内の固形材料Mの不均一な流動を改善するとともに、一対のスクリューエレメント間のクリアランス間で固形材料Mの高せん断を減じるとともに、バレル16内面とスクリューエレメントの外表面の間のスペース内の固形材料Mの充満度を上昇させてバレル16内面との接触面積(伝熱面積)を増大することにより、回転シャフト18の回転数を低減して加熱時間を長くすることなしに、押出効率を確保しつつ、加熱ヒーターに要するエネルギーを省略化することが可能である。
特に、溶融温度の異なる異種固形材料Mを混練する場合、溶融温度の高いほうの固形材料Mが溶融する温度まで異種固形材料M全体を加熱せざるを得ないところ、接触面積(伝熱面積)の増大により、回転シャフト18の回転数を低減して加熱時間を長くなるのを回避し、以て、押出効率の確保に加え、溶融温度の低いほうの固形材料Mの過熱、場合により、固形材料Mの品質劣化を抑制することにも資するか、または、溶融温度の低いほうの固形材料Mのバレル16長手方向の投入位置の選択の柔軟性を向上することが可能である。
この点、従来のスクリューエレメントの回転によるせん断を利用する固形材料Mの溶融混練および混合は、回転シャフト18の回転数により大きく左右されることから、溶融混練および混合それぞれの最適化に合わせて回転数を設定することは困難であり、回転シャフト18を回転する駆動モーター19の必要電力が過度になっていた。
【0042】
以上の構成を有する溶融混練押出装置10によれば、回転シャフト18を回転駆動するモーターに対して、過剰トルクとならないように、バレル16の内部空間内で長手方向に完全充満する形態で、加熱により溶融状態の固形材料Mを搬送することは回避しながら、固形材料Mを連続的に長手方向に搬送しつつ、溶融混練を可能としている。
【0043】
より詳細には、以上の溶融混練押出装置10によれば、回転シャフト18がその軸線を中心として回転することにより、各回転シャフト18に外嵌される一対のスクリューエレメント20が、同方向に回転し、それにより、バレル16内に投入される固形材料Mは、バレル16の長手方向X下流に搬送される。
その際、加熱溶融された固形材料Mについて、混練用スクリューエレメント20Bの外表面34とバレル16の内面36との間に構成される固形材料Mの流路断面積SAは、搬送用スクリューエレメント20Aの外表面34Aとバレル16の内面36との間に構成される固形材料Mの流路断面積SAより小さく設定されるので、固形材料Mは、溶融混練部32において、流路断面積SA全体に充満することにより、流路断面積SA内で、固形材料Mは、混練用スクリューエレメント20Bの固形材料Mの搬送方向上流側端部44から固形材料M搬送方向下流側端部46を通過するまで、混練され、バレル16内で長手方向X下流側に搬送されるようにしている。
以上、固形材料Mは、混合部24において、流路断面積SAの狭まりにより所定の混練時間に亘って、混練され、所定の混練度合いとなる。
【0044】
一方、本実施形態の混練方法によれば、固形材料Mを連続的に順方向に密閉空間内で密閉空間の延び方向に沿って搬送しながら、固形材料Mの融点まで加熱し、混練することにより、固形材料Mを混合可能な溶融状態とし、密閉空間の下流側に圧力障壁を形成することにより、圧力障壁上流側における密閉空間内の加熱された固形材料Mの充満度を高めることにより、固形材料Mの溶融混練を通じて、混練された固形材料Mの下流側における分散および/または分配による均一な混合を促進することが可能である。
次いで、加熱溶融され混練された固形材料Mは、混合部24において、連続的に長手方向下流に搬送されながら、分散および/または分配により混合される。
以上を経て、固形材料Mは、所定の吐出量で均一な混合の押出物として、ダイス(図示せず)を介して外部に押し出される。
【0045】
以下に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様な構成要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について、図7を参照しながら詳細に説明する。
本発明の第2実施形態の特徴は、溶融混練部に設ける混練用スクリューエレメント20Bである。
【0046】
第1実施形態において、固形材料Mのバレル16の軸方向への搬送および混練を兼ねるスクリューエレメント20Bについて、複数の薄板状のものが、周方向にチップ50の位置(尖点)が非連続にずれながら、軸方向に積み重ねたタイプのものとして説明したが、それに限定されることなく、スクリューエレメントの回転により、固形材料Mのバレル16の軸方向への搬送が可能であるとともに、軸方向に固形材料Mの流路面積の絞りが形成され、それにより混練が可能である限り、複数の薄板状のものが積み重ねられるのではなく、モノリシック状のスクリューエレメントであって、外表面34Bに周方向のチップ50の位置が長手方向に連続的に連なるリード30が形成されるものであってもよい。
より詳細には、図7に示すように、混練用スクリューエレメント20Bは、4条であり、回転シャフト18が内嵌する円形開口48を有するモノリシック状であり、長手方向Xに離間する両端面44、46それぞれにおいて、周方向に2以上(4つ)のチップ50を有し、周側面には、両端面44、46のチップ50に連なる螺旋状リード56が設けられる、長手方向Xに連続タイプであり、バレル16の中心に対して、円形開口48の中心がオフセット配置される。
螺旋状リード56のピッチを調整することにより、混練用スクリューエレメント20Bによる固形材料Mの搬送速度、すなわち、固形材料Mの混練時間を調整することが可能である。
複数の混合部24を設ける場合において、ある混合部24には、第1実施形態における、不連続タイプの混練用スクリューエレメント20B、ある混合部24には、本実施形態における、連続タイプの混練用スクリューエレメント20Bを採用してもよい。
なお、図8ないし図10を参照すれば、混練用スクリューエレメント20Bの変形例として、図8に示すように、図7と類似の螺旋状リード56を有するタイプ、図9および図10に示すように、図3と類似の複数のディスクから構成されるタイプ、いずれも適用可能である。
【0047】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、溶融混練部において、固形材料Mの種類、態様に応じて、スクリューエレメント20を選択する点を説明したが、スクリューエレメント20の選択に際し、スクリューエレメント20のリードを含む外周面形状、長手方向長さにより、溶融混練部における混練時間を調整したり、または、スクリューエレメント20の条数を含む外周縁形状により、流路断面積を増減させて、溶融混練部における混練力を調整したり、または、溶融混練部における混練時間および混練力の両方を調整することにより、このようにして選択したスクリューエレメント20、および固形材料Mの種類、態様に応じて、最適な回転シャフト18の回転数を設定したうえで、混練効果を最適化すればよい。
たとえば、本実施形態において、溶融混練部において、固形材料Mの種類、態様に応じて、スクリューエレメント20を選択する点、より詳細には、 スクリューエレメント20の条数を含む外周縁形状により、流路断面積を増減させて、溶融混練部における混練度合いを調整したり、または、溶融混練部における混練時間および混練力の両方を調整する点を説明したが、上流側の搬送用スクリューエレメント20Aによりバレル16内を非充満状態で搬送される固形材料Mが、混練用スクリューエレメント20Bを通過する際、バレル16の内面36と混練用スクリューエレメント20Bの外周面34との間に構成される流路における固形材料Mの充満度を上げることにより、所望の混練度合いが達成されるように、バレル16の内面36と混練用スクリューエレメント20Bの外周面との間に構成される流路の容積を定めるのでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の第1実施形態に係る溶融混練押出装置10の概略全体斜視断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る溶融混練押出装置10の概略部分断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る溶融混練押出装置10の混合部24のスクリューエレメント20Bの側面図、端面図および斜視部図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る溶融混練押出装置10の混合部24のスクリューエレメント20Bの回転に応じて((A)から(C))、バレル16内面とスクリューエレメント20との間に形成される流路断面SAの変化を示す概略断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る溶融混練押出装置10の搬送部30のスクリューエレメント20Aの図4と同様な図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る図3のスクリューエレメント20Bにおいて、中間部の4条ディスク同士の図5と同様な図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る溶融混練押出装置10のスクリューエレメント20Bの斜視図である。
図8】本発明の溶融混練押出装置10のスクリューエレメント20Bの変形例の斜視図である。
図9】本発明の溶融混練押出装置10のスクリューエレメント20Bの変形例の斜視図である。
図10】本発明の溶融混練押出装置10のスクリューエレメント20Bの変形例の斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
X 長手方向
D 所定間隔
M 固形材料M
SA 流路断面積
L スクリューエレメントの軸方向長さ
d 所定クリアランス
t ディスクの厚み
10 溶融混練押出装置
12 シリンダ
13 円筒シリンダ
14 円弧部
16 バレル
17 内部スペース
18 回転シャフト
19 駆動モーター
20 スクリューエレメント
20A 搬送用スクリューエレメント
20B 混練用スクリューエレメント
21 回転伝達機構
22 供給部
23 ホッパー
24 混合部
25 支持スタンド
27 駆動モーター
28 溶融混練部
29 支持スタンド
30 搬送部
31 回転伝達機構
33 押出部
34A 搬送用スクリューエレメント20Aの外表面
34B 混練用スクリューエレメント20Bの外表面
36 内面
40 外周閉曲線部
41 張り出しフランジ
42 部分領域
43 ねじ穴
44 固形材料M搬送方向上流側端部
46 固形材料M搬送方向下流側端部
48 円形開口
50 チップ
52 ディスク
56 螺旋状リード
80 排気ゾーン
82 排気口
84 溶融混練ゾーン
86 真空ゾーン
88 脱気装置
90 カップラ―
92 スクリューエレメントヘッド
94 スクリューエレメントキャップ

【要約】      (修正有)
【課題】所望の混練度合いを具備する押出物を所望の吐出量で得るのに、溶融混練押出装置への投入コストを抑制しつつ、溶融混練押出装置の運転の際に必要なエネルギーを低減可能とする方法を提供する。
【解決手段】2軸同方向回転の溶融混練押出装置にあって、混練用スクリューエレメント20Bは、軸方向に直交する任意断面の外周縁形状が同じであり、回転シャフト18の回転中心と該混練用スクリューエレメント20Bの中心とを偏心状とし、かつ、一対の該混練用スクリューエレメント間のクリアランスが、前記回転シャフトの回転中、一定の所定値に維持されるように、一対の該混練用スクリューエレメント間の周方向の相対的角度位置関係が設定され、溶融された固形材料Mを伸長混練する段階を有する、前記溶融混練押出装置の運転の際に必要なエネルギーを低減可能とする方法。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10