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特許7075714鮮度保持用途に適した押出ラミネートフィルム、及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】鮮度保持用途に適した押出ラミネートフィルム、及びその用途
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20220519BHJP
   A23L 3/00 20060101ALI20220519BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20220519BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220519BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220519BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
B32B27/18 F
A23L3/00 101Z
A23L5/00 B
B32B27/00 H
B65D65/40 D
B65D85/50 120
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2016148670
(22)【出願日】2016-07-28
(65)【公開番号】P2018016002
(43)【公開日】2018-02-01
【審査請求日】2019-04-12
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 淳一
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】西村 泰英
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/142218(WO,A1)
【文献】特開2015-93693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 81/00-81/17,85/50-85/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が、少なくとも一方の表面に0.002~0.5g/m存在する高分子フィルム層Aと、
予め作製された該高分子フィルム層A上に押出ラミネーションを行うことで形成された押出高分子フィルム層Bと、を有する押出ラミネートフィルムであって、
該押出高分子フィルム層B中に、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が、0.01~2質量%配合されている、上記押出ラミネートフィルム。
【請求項2】
前記押出高分子フィルム層B上に、更に延伸フィルム層Cを積層してなる、請求項1に記載の押出ラミネートフィルム。
【請求項3】
前記高分子フィルム層Aが、ポリエチレン系フィルムである、請求項1又は2に記載の押出ラミネートフィルム。
【請求項4】
前記押出高分子フィルム層Bが、直鎖状ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンのうち少なくとも一種を含んでなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の押出ラミネートフィルム。
【請求項5】
前記延伸フィルム層Cが、コロナ処理及び/又はアンカーコート処理を施されたものである、請求項1から4のいずれか一項に記載の押出ラミネートフィルム。
【請求項6】
前記延伸フィルム層Cが、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、又はポリプロピレンの1軸又は2軸延伸フィルムである、請求項1から5のいずれか一項に記載の押出ラミネートフィルム。
【請求項7】
22℃、40%RHでの酸素透過度が、500から50000cc/m/day/atmの範囲内である、請求項1から6のいずれか一項に記載の押出ラミネートフィルム。
【請求項8】
鮮度保持用途に用いられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の押出ラミネートフィルム。
【請求項9】
請求項1から7の何れか一項に記載の押出ラミネートフィルムを含んでなる、包装容器。
【請求項10】
前記押出ラミネートフィルムが少なくとも1の開口部を有し、該開口部の長さが0.5~7mmであり、該開口部の幅が10μm未満である、請求項9に記載の包装容器。
【請求項11】
カット野菜または青果物の鮮度保持用に用いられる、請求項9又は10に記載の包装容器。
【請求項12】
カット野菜または青果物を、請求項9から11のいずれか一項に記載の包装容器に収納してなる、カット野菜または青果物鮮度保持用包装体。
【請求項13】
更に吸湿剤、及び/又は抗菌剤を収納してなる、請求項12に記載の青果物鮮度保持用包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出ラミネート加工による雑菌増殖抑制性能の低下を防止又は軽減できる、鮮度保持用途に適した押出ラミネートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、果物等の生鮮食品など鮮度が求められる商品は、フィルムからなる包装容器に入れられて流通している。これらの生鮮食品は、経時による変色、萎えなどの劣化、さらには腐敗が生じると、その商品価値が低下する。そのため、これらの生鮮食品をはじめとする商品は、包装容器に収納されることでその鮮度を保持することが求められている。
【0003】
特に近年、カット野菜包装が、スーパーマーケット等で販売されたり、チェーンレストランで調理の手間を省くために利用されたりしている。該カット野菜包装においては、折角殺菌処理した内容物に菌が入らないように、また内容物から溶出した栄養液が包装材の内面に付着して菌が繁殖しないようにする必要があり、抗菌性が高く、かつ抗菌成分の内容物への移行が少ないフィルム及び包装材の開発が求められている。
高い抗菌性を有する鮮度保持フィルムとして、特定の化合物が、少なくとも一方の表面に特定量存在する鮮度保持フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この様な鮮度保持フィルムを用いてラミネートフィルムを作成すると、ラミネート加工において抗菌性が低下するという問題があった。日本国内のカット野菜は現在ほとんどがOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルム単体の包装で販売されているが、海外ではOPP層/接着層/ポリエチレン層、ナイロン層/接着層/ポリエチレン層などのラミネート構成の包装で販売されるのが一般的であり、特にこの様な場合に、ラミネートによる抗菌性の低下を防止又は軽減することが求められていた。
一方、ドライラミネートフィルムと並んで広く用いられている押出ラミネートフィルムについては、ラミネートによる抗菌性の低下を防止又は軽減できる具体的な方策は見い出されておらず、その解決が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/142218 A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決し、押出ラミネートフィルムにおいて、ラミネートによる抗菌性の低下を有効に防止又は軽減でき、鮮度保持用途に適した押出ラミネートフィルム、及びその用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、押出ラミネートフィルムを構成する押出高分子フィルム層に、特定の化合物を特定量配合することで、ラミネートによる抗菌性の低下が有効に防止又は軽減され、上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】

すなわち本発明は、
[1]
パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が、少なくとも一方の表面に0.002~0.5g/m存在する高分子フィルム層Aと、
該高分子フィルム層A上に形成された押出高分子フィルム層Bと、を有する押出ラミネートフィルムであって、
該押出高分子フィルム層B中に、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が、0.01~2%配合されている、上記押出ラミネートフィルム、である。
【0009】
以下、[2]から[13]は、それぞれ本発明の好ましい実施形態の一つである。
[2]
前記押出高分子フィルム層B上に、更に延伸フィルム層Cを積層してなる、[1]に記載の押出ラミネートフィルム。
[3]
前記高分子フィルム層Aが、ポリエチレン系フィルムである、[1]又は[2]に記載の押出ラミネートフィルム。
[4]
前記押出高分子フィルム層Bが、直鎖状ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンのうち少なくとも一種を含んでなる、[1]から[3]のいずれか一項に記載の押出ラミネートフィルム。
[5]
前記延伸フィルム層Cが、コロナ処理及び/又はアンカーコート処理を施されたものである、[1]から[4]のいずれか一項に記載の押出ラミネートフィルム。
[6]
前記延伸フィルム層Cが、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、又はポリプロピレンの1軸又は2軸延伸フィルムである、[1]から[5]のいずれか一項に記載の押出ラミネートフィルム。
[7]
20℃、80%RHでの酸素透過度が2000ml/m・MPa以下である、[1]から[6]のいずれか一項に記載の押出ラミネートフィルム。

[8]
鮮度保持用途に用いられる、[1]から[7]のいずれか一項に記載の押出ラミネートフィルム。
[9]
[1]から[7]の何れか一項に記載の押出ラミネートフィルムを含んでなる、包装容器。
[10]
前記押出ラミネートフィルムが少なくとも1の開口部を有し、該開口部の長さが0.5~7mmであり、該開口部の幅が10μm未満である、[9]に記載の包装容器。
[11]
カット野菜または青果物の鮮度保持用に用いられる、[9]又は[10]に記載の包装容器。
[12]
カット野菜または青果物を、[9]から[11]のいずれか一項に記載の包装容器に収納してなる、カット野菜または青果物鮮度保持用包装体。
[13]
更に吸湿剤、及び/又は抗菌剤を収納してなる、[12]に記載の青果物鮮度保持用包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、押出ラミネートフィルムにおいて、ラミネート工程における抗菌性の低下を、有効に防止又は軽減することができる。
押出ラミネートフィルムにおいては、その層構成を適宜設計することで、バリア性、手切れ性、多色印刷性、表面光沢等を向上させることができるので、鮮度保持に十分な抗菌性を保ちながら、バリア性、手切れ性、多色印刷性、表面光沢等に優れた押出ラミネートフィルムを実現することができる。
本発明の押出ラミネートフィルムは、上記の優れた特性を有するので、包装容器、特に青果物の鮮度保持用の包装容器等に、好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本発明は、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物(以下、「特定化合物」ともいう。)が、少なくとも一方の表面に0.002~0.5g/m存在する高分子フィルム層Aと、
該高分子フィルム層A上に形成された押出高分子フィルム層Bと、を有する押出ラミネートフィルムであって、
該押出高分子フィルム層B中に、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が、0.01~2%配合されている、上記押出ラミネートフィルム、である。
【0012】
(高分子フィルム層A)
本発明の押出ラミネートフィルムを構成する高分子フィルム層Aは、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が、少なくとも一方の表面に0.002~0.5g/m存在する高分子フィルム層である。
高分子フィルム層Aを構成する高分子には特に限定は無く、従来より使用されている高分子フィルムから、目的、用途との関係で好適な高分子を適宜選定、改良して用いればよい。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれを使用しても良いが、フィルム形成における加工性等の観点から、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
該熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル・1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレンなどのエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体などのプロピレン系重合体、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル・1-ペンテンなどのポリオレフィンが挙げられる。更に、該熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性樹脂、あるいはこれらの混合物等も使用することができる。これらの熱可塑性樹脂は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、コスト、加工性、透明性等の観点から、エチレン系重合体を用いることが好ましい。
【0013】
(ポリエチレン系フィルム)
本発明を構成する高分子フィルム層Aにおいて好ましく用いられるポリエチレン系フィルムは、その主要量がエチレン系重合体から構成されている。エチレン系重合体とは、エチレン単独重合体および/またはエチレン共重合体をいう。具体的には、例えば、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレンなどのエチレン系重合体を、その好適な例として挙げることができる。
(エチレン系重合体)
前記エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主要モノマーとし、それと炭素数3から8のα-オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、そのケン化物及びアイオノマーを、その好適な例として挙げることができる。より具体的には、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体などのエチレンを主要モノマーとし、これと炭素数3から8のα-オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体を、そのより好適な例として挙げることができる。これらの共重合体中のα-オレフィンの割合は、1~15モル%であることが好ましい。
また、前記エチレン系重合体としては、ポリエチレンの名称で製造・販売されているエチレンの重合体を好適な例として挙げることができる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましく、LLDPEがより好ましい。LLDPEは、エチレンと、少量のプロピレン、ブテン-1、ヘプテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチル-ペンテン-1等との共重合体である。また、前記エチレン系重合体は、エチレンの単独重合体であってもよく、LLDPE等のエチレンを主体とする重合体であってもよい。
前記エチレン系重合体の密度は0.910~0.940g/cmが好ましく、0.920~0.930g/cmがより好ましい。該密度が0.910g/cm以上であることにより、ヒートシール性が向上する。また、該密度が0.940g/cm以下であることにより、加工性および透明性が向上する。
【0014】
(特定化合物)
本発明の押出ラミネートフィルムを構成する高分子フィルム層Aの表面には、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物(特定化合物)が特定量存在する。
特定化合物としては、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノラウレートを単独で用いてもよく、これらの混合物を用いてもよい。パルミチルジエタノールアミンは、炭素数16の長鎖アルキル基であるパルミチル基を有するアルキルジエタノールアミンである。ステアリルジエタノールアミンは、炭素数18のステアリル基を有するアルキルジエタノールアミンである。グリセリンモノラウレートは、ラウリン酸(炭素数12)とグリセリンとのモノエステルである。ジグリセリンモノラウレートは、ラウリン酸(炭素数12)とジグリセリンとのモノエステルである。
ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは、ミリスチルジエタノールアミンやラウリルジエタノールアミンに比べて融点が比較的高い。このため、高分子フィルム層Aを例えば溶融成形する際、特に高分子フィルム層Aが延伸フィルムである場合の熱固定において、ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは比較的揮発しにくい。また、ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは、抗菌性、および鮮度保持性に優れる。さらに、本発明の押出ラミネートフィルムを包装用フィルムとして用いた場合、包装用フィルムに接触する内容物である被包装物への移行が比較的遅く、安全性に優れており、加えてその性能を持続することができる。なお、鮮度保持フィルムの「被包装物」を「内容物」と記すことがある。
(アルキルジエタノールアミン;長鎖アルキル基の部分の炭素数;融点)
ステアリルジエタノールアミン;18個;51℃
パルミチルジエタノールアミン;16個;28℃
ミリスチルジエタノールアミン;14個;22~23℃
ラウリルジエタノールアミン;12個;常温で液体
【0015】
本発明において用いられる特定化合物は、個々に、類似化合物を含有していてもよい。パルミチルジエタノールアミン(炭素数16)は、例えば少量のミリスチルジエタノールアミン(炭素数14)や、ステアリルジエタノールアミン(炭素数18)等の炭素数12~20のアルキル基を有するアルキルジエタノールアミンを含んでもよい。また、ステアリルジエタノールアミン(炭素数18)は、例えば炭素数16~20のアルキル基を有するアルキルジエタノール等を少量含んでもよい。また、特定化合物は、これらのパルミチルジエタノールアミンおよびステアリルジエタノールアミンの類似化合物のアミンの一部が脂肪族カルボン酸とエステルを形成した化合物を少量含んでもよい。さらに、グリセリンモノラウレートは、例えば炭素数が10、14等である高級直鎖脂肪族カルボン酸とグリセリンとのモノエステル等を少量含んでもよい。また、ジグリセリンモノラウレートは、炭素数が10、14等である高級脂肪族カルボン酸とジグリセリンとのモノエステル等を少量含んでもよい。また、前記(ジ)グリセリンモノエステルは、(ジ)グリセリンジエステル、(ジ)グリセリントリエステルなどの類似化合物、さらにはグリセリン部分がジグリセリン、ジグリセリン部分がトリグリセリンである類似化合物を少量含んでもよい。これら特定化合物の類似化合物は、一般に特定化合物の合成、分離などの工程において、同時に合成されたり、分離が困難であったりする。また、当該類似化合物は、特定化合物100質量部に対して、50質量部以下含まれてもよく、40質量部以下含まれてもよく、含まれないことが好ましい。
さらに、本発明に係る本発明の押出ラミネートフィルムを構成する高分子フィルム層Aは、後述するように特定化合物以外にも、必要に応じて帯電防止剤、防曇剤(但し、特定化合物を除く。)滑材などの他の添加剤を含むことができる。これら他の添加剤と、前記類似化合物との合計は、特定化合物100質量部に対して、50質量部以下含まれてもよく、40質量部以下含まれてもよく、30質量部以下含まれてもよい。
【0016】
(抗菌性、鮮度保持性などの機能付与)
本発明を構成する高分子フィルム層Aにおいては、そのいずれの表面に特定化合物が0.002~0.5g/m存在していてもよいが、押出高分子フィルム層Bと接していない側の表面(以下、「反ラミ面」ということがある。)に、特定化合物が0.002~0.5g/m存在していることが好ましい。本発明の押出ラミネートフィルムを構成する高分子フィルム層Aは、好ましくはコロナ処理を行ったポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の1軸または2軸延伸フィルムである、延伸フィルム層Cとの積層前の状態で、反ラミ面表面に特定化合物が0.002~0.5g/m存在することが好ましく、0.004~0.4g/m存在することがより好ましく、0.01~0.3g/m存在することがさらに好ましく、0.02~0.2g/m存在することが最も好ましい。高分子フィルム層Aの反ラミ面に特定化合物を前記の量を存在させる方法としては、例えば、表面に特定化合物を噴霧したり、表面に特定化合物を含む溶液、懸濁液等を塗布したりするコート法が挙げられる。また、高分子フィルム層Aまたはそれ以外の層に特定化合物を含有させることにより、高分子フィルム層Aの反ラミ面に特定化合物をブリードアウトさせることにより特定化合物を0.002~0.5g/m存在させてもよい。なお、本発明の押出ラミネートフィルム中の特定化合物の総含有量は、特定化合物を表面に前記範囲の量ブリードアウトさせることができる観点から、0.001~3質量%が好ましく、0.01~3質量%がより好ましく、0.1~2質量%がさらに好ましい。
【0017】
(高分子フィルム層の表面における特定化合物の定量方法)
高分子フィルム層Aの表面における特定化合物の量は、コート法により表面に特定化合物を付与する場合は、特定化合物のコート量から算出した値である。また、特定化合物が高分子フィルム層A、及び/又はそれ以外の層に配合されている場合には、高分子フィルム層Aの表面における特定化合物の量は、高分子フィルム層Aの表面を、ジクロロメタンを用いて洗浄し、洗浄液を回収し、濃縮して定容した後、シリル化し、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)を用いて定量した値である。
【0018】
(押出高分子フィルム層B)
本発明の押し出しラミネートフィルムにおいては、高分子フィルム層A上に、押出ラミネート法により押出高分子フィルム層Bが形成されている。本発明においては、押出高分子フィルム層Bを有することで、押出高分子フィルム層Bに、高分子フィルム層Aと異なる機能を担わせることが可能となり、複合的な機能を有するフィルムを実現することができる。また、押出高分子フィルム層Bは、通常、高分子フィルム層Aとの接着性に優れるだけでなく、それ以外の層との接着性にも優れているので、高分子フィルム層Aとは異なる機能を有する他の層、好ましくは延伸フィルム層C、を更に積層することで、更に複合的な機能を有するフィルムを実現することができる。例えば、バリア性、手切れ性、多色印刷性、表面光沢等を向上させることができる。
また、押出ラミネート法によれば、高速で、密着性良く、また接着剤や溶剤等を必要とせずに、ラミネートフィルムを製造することができるので、生産性、コスト、品質、作業環境等の点でも、有利である。
【0019】
押出高分子フィルム層Bを構成する高分子は、高分子フィルム層A上に押出ラミネートすることができるものであればよく、特に制限は無いが、融点、加工性、高分子フィルム層Aとの間の接着性、延伸フィルム層Cとの間の接着性などに優れることから、ポリエチレンであることが好ましい。
(押出高分子フィルム層Bに好ましく用いられるポリエチレン)
本発明を構成する押出高分子フィルム層Bに好ましく用いられるポリエチレンとしては、ASTM D1238に準じ190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(以下MFRと略記する)が1~50、好ましくは3~40(g/10分)であり、密度(ASTMD1505)が0.900~0.940、好ましくは0.900~0.930(g/cm)であるエチレン系重合体を例示することができる。
メルトテンション(MT)は、溶融させたエチレン系重合体を一定速度で延伸したときの応力を測定することによって求められる値である。具体的には、東洋精機製MT測定機を用い、樹脂温度190℃、押出速度15mm/分、巻取速度15m/分、ノズル径2.09mmφ、ノズル長さ8mmの条件で測定した値である。
本発明を構成する押出高分子フィルム層Bに好ましく用いられるポリエチレンは、前記の物性を満たしていることが好ましいが、その製法は特に限定されない。したがって、ラジカル触媒を用いて高圧下で製造されたいわゆる高圧法ポリエチレン(低密度ポリエチレン)であっても、あるいはチーグラー触媒またはメタロセン触媒を用い、エチレンと所望によりα-オレフィン等のコモノマーの存在下、中低圧下で製造されたいわゆる中低圧ポリエチレンであってもよい。高圧法ポリエチレンでは、分子鎖中に長鎖分岐が存在し、これにより高い溶融張力を示すことから、本発明においては特に好ましく使用できる。また、いわゆる直鎖状低密度ポリエチレンも、本発明において好ましく使用することが可能であり、特に長鎖分岐を有する直鎖状低密度ポリエチレンを好ましく使用することができる。
また、本発明を構成する押出高分子フィルム層Bに好ましく使用される押出ラミ層のポリエチレンは、本発明におけるシーラントフィルムとしての特性を損なわない限り、エチレンと少量の酢酸ビニル等の不飽和カルボン酸との共重合体であっても良い。エチレンと少量の不飽和カルボン酸との共重合体は、他の樹脂との接着性に優れるので、押出高分子フィルム層Bにおいて好適に使用できる。
【0020】
(押出高分子フィルム層Bの特定化合物含有量)
本発明の押出ラミネートフィルムを構成する押出高分子フィルム層Bには、特定化合物、すなわちパルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が、0.01~2質量%配合されている。
押出高分子フィルム層Bに特定化合物が0.01~2質量%配合されことで、押出ラミネート工程による抗菌性の低下が有効に防止又は低減され、長期間にわたって安定した抗菌性能を有する押出ラミネートフィルムを実現することができる。
押出高分子フィルム層Bに特定化合物が所定量配合されることで押出ラミネート工程による抗菌性の低下が防止又は低減されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、高分子フィルム層Aに隣接する押出高分子フィルム層B中に特定化合物が比較的高い濃度で存在することで、高分子フィルム層A中の特定化合物の押出高分子フィルム層B(及び延伸フィルム層C等の他の層)の濃度勾配が小さくなり、前記押出高分子フィルム層B(及び延伸フィルム層C等の他の層)への拡散が抑制され、高分子フィルム層A内部及び表面における特定化合物濃度が比較的高いレベルで維持され易いことと、何らかの関係があるものと推定される。
【0021】
特定化合物の配合量が0.01質量%以上であることで、抗菌性の低下を効果的に防止又は低減することができる一方、2質量%以下であることで、望まない箇所でのブリードアウト等の好ましくない現象を効果的に抑制できる。
押出高分子フィルム層Bにおける特定化合物の配合量は、0.05~1.5質量%であることが好ましく、0.08~1.0質量%であることが特に好ましい。
押出高分子フィルム層Bにおける特定化合物の配合量は、押出高分子フィルム層Bを構成する高分子材料を調製する際に特定化合物の配合量を増減することで、適宜調節することができる。特定化合物を高分子材料に直接配合してもよいし、特定化合物を少量の高分子材料に配合した組成物(マスターバッチ)を準備しておき、最終的に特定化合物の配合量が所望の範囲になるように、マスターバッチと高分子材料とを混合してもよい。
具体的な特定化合物の詳細は、高分子フィルム層Aにおいて使用する特定化合物について上記で説明したものと同様である。
【0022】
(表面処理)
押出高分子フィルム層Bの形成にあたっては、押出ラミネーションに先立ち、高分子フィルム層に接着性を向上させるための表面処理を行ってもよい。表面処理としては、コロナ処理、アンカーコート処理等を好ましく適用することができる。
(アンカーコート剤)
上記態様において好ましく用いられるアンカーコート剤としては、コロナ処理を行った高分子フィルム層Aに、アンカーコート剤を有機溶剤中に、固形分濃度15~50%で溶解したものを塗布量(固形分)0.1~0.5g/mとなるように塗布することができる。
ここで用いられる有機溶剤は、一般に以下のように分類できる。
炭化水素系溶剤:トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン、イソオクタン、ノルマルデカン等
アルコール系溶剤:メタノール、エタノール、ブタノール、IPA(イソプロピルアルコール)、ノルマルプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール、TBA(ターシャリーブタノール)、ブタンジオール、エチルヘキサノール、ベンジルアルコール等
ケトン系溶剤:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、DAA(ジアセトンアルコール)等
エステル系溶剤:酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等
エーテル系溶剤:イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)、ブチルカルビトール等
上記から、アンカーコート剤、高分子フィルム層A、及び押出高分子フィルム層Bの素材、並びに押出ラミネートプロセスとの関係において適切な有機溶剤を選択すればよい。
【0023】
アンカーコート材として用いる樹脂には特に制限はなく、高分子フィルム層A、及び押出高分子フィルム層Bの素材、並びに押出ラミネートプロセスとの関係において適切な樹脂を適宜選択すればよいが、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステルエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、ポリエーテルウレタン系樹脂、ポリエステルエーテル系樹脂、ポリエステルエーテルウレタン系樹脂等は、十分なラミネート強度が得られることから、好ましく用いることができる。
これらの樹脂は樹脂単独で使用してもよいし、ポリイソシアネート化合物等をふくむ硬化剤と組み合わせ、2液硬化型で使用してもよい。
【0024】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類若しくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステル系樹脂或いはポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステル系樹脂等を、好適な例として挙げることができる。
ポリエーテル系樹脂としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテル系樹脂等を、好適な例として挙げることができる。
ポリエーテルエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、上記ポリエーテル系樹脂を反応させて得られるポリエーテルエステル系樹脂等を、好適な例として挙げることができる。
【0025】
有機ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4′-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4′,4″-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエン等の有機トリイソシアネート、4,4′-ジフェニルジメチルメタン-2,2′-5,5′-テトライソシアネート等の有機テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体、上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6-オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3′-ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量200未満の低分子ポリオールとの付加体、或いは、分子量200~20,000のポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオール等の付加体等を、好適な例として挙げることができる。
また、上記有機ポリイソシアネートは、有機溶剤型接着剤の硬化剤として使用することもできる。
【0026】
(延伸フィルム層C)
本発明の押出ラミネートフィルムは、押出高分子フィルム層B上に、更に延伸フィルム層Cが積層されていることが好ましい。延伸フィルム層Cには、高分子フィルム層Aとは異なる機能を付与することが容易であるので、延伸フィルム層Cを、押出高分子フィルム層Bを介して高分子フィルム層Aと積層することで、複合的な機能を有するフィルムを実現することができる。例えば、延伸フィルム層Cとして、バリア性、手切れ性、多色印刷性、及び/又は表面光沢等を有するものを用いることで、本発明の押出ラミネートフィルムにおいて、これらの性質を向上させることができる。
【0027】
延伸フィルム層Cとして用いる延伸フィルムには特に制限はなく、高分子フィルム層A、及び押出高分子フィルム層Bの素材、押出ラミネートフィルムの用途、押出ラミネートフィルムに付与しようとする性質等との関係において適切なフィルムを適宜選択することができるが、入手、加工のし易さ、機械的性質等の観点から、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、又はポリプロピレンの1軸又は2軸延伸フィルムを用いることが好ましい。
ナイロン6、ナイロン66等に代表されるポリアミドからなるフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルからなるフィルム、ポリプロピレンからなるフィルムが好ましいが、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、及びポリスチレンフィルム、並びにポリL乳酸、ポリD乳酸、またはポリL乳酸とポリD乳酸を精密に配位したステレオコンプレックス晶ポリ乳酸からなるフィルム等の、一軸又は二軸延伸フィルムも、延伸フィルム層Cとして用いることができる。
また延伸フィルム層Cはアルミニューム、亜鉛、シリカ等の無機物あるいはその酸化物を蒸着した延伸フィルムであってもよい。
【0028】
押出高分子フィルム層Bとの接着性を向上させるため、延伸フィルム層Cには、コロナ処理及び/又は、アンカーコート処理を行うことが好ましい。
延伸フィルム層Cにおける、コロナ処理、及びアンカーコート処理の詳細は、高分子フィルム層Aにおけるコロナ処理、及びアンカーコート処理に関して上記で説明したものと同様である。
【0029】
<他の添加剤>
本発明の押出ラミネートフィルムを構成する高分子フィルム層A、押出高分子フィルム層B、及び延伸フィルム層Cの全層またはいずれかの層には、本発明の目的を損なわない範囲で、耐熱安定剤(酸化防止剤)、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の添加剤を添加することができる。また、タルク、シリカ、珪藻土などの各種フィラー類を添加してもよい。
【0030】
耐熱安定剤としては、例えば、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系酸化防止剤、2-(2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、置換ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系酸化防止剤、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、フェニルサルチレート、4-t-ブチルフェニルサリチレート等を、好ましい例として挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
帯電防止剤としては、例えば、アルキルアミンおよびその誘導体、高級アルコール、ピリジン誘導体、硫酸化油、石鹸類、オレフィンの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル類、脂肪酸エチルスルフォン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルナタレンスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、琥珀酸エステルスルフォン酸塩、リン酸エステル塩、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトルのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール等を、好ましい例として挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0031】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、高級アルコール、流動パラフィン等を、好ましい例として挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、エチレン-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2、2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン等を、好ましい例として挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
防曇剤としては、特定化合物を除き、例えば、高級脂肪族アルコール類、グリセリン脂肪酸類、ジグリセリン脂肪酸類、これらのモノ又はジグリセリン脂肪酸の酸エステル類、高級脂肪族アミン類、高級脂肪酸エステル類、これらの混合物等を、好ましい例として挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0032】
<押出ラミネートフィルム及びその製造方法>
本発明の押出ラミネートフィルムは上記高分子フィルム層A上に、押出高分子フィルム層Bを形成し、更に所望により延伸フィルム層Cを積層することにより、製造することができる。
例えば、予め作製された延伸フィルム層Cと高分子フィルム層Aとに、所望により上述のアンカーコートを行った後に、押出高分子フィルム層Bを用いた押出ラミネーションを行うことで、本発明の押出ラミネートフィルムを製造することができる。
押出高分子フィルム層Bを構成するラミネート用樹脂として、特定化合物を0.01~2質量%配合した高分子樹脂、好ましくは特定化合物を0.01~2質量%配合した低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることで、特に良好な押出ラミネートフィルムを、生産性よく製造することができる。
またアンカーコート剤を塗布する場合、延伸フィルム層Cの表面にはコロナ処理をしておくことが接着安定性の観点から好ましい。具体的には、コロナ処理後のフィルム表面の表面張力が接着安定性の観点から、35mN/m以上となる様処理することが好ましく、40mN/m以上となる様処理することがより好ましい。
【0033】
また延伸フィルム層Cの厚さが10~50μmであり、高分子フィルム層Cの厚さが10~120μmであることが、得られる押出ラミネートフィルムの抗菌性能の観点から好ましいが、詳細な層構成は用途として必要なバリア性能、手切れ性(易開封性)、多色印刷適性、自立性(腰感)、包装袋表面の光沢等により、適宜設計することが好ましい。
本発明の押出ラミネートフィルムを鮮度保持フィルムとして用いる場合、20℃、80%RHでの酸素透過度(JISK7126に準じて測定)が2000ml/m・MPa以下であることが好ましい。酸素透過度が2000ml/m・MPa以下であると、被包装物を低酸素濃度に保つことが容易であるので、レタス等のカット野菜を包装する場合にはその褐変を抑え、精肉、鮮魚、総菜のように呼吸しない生鮮物では、菌の繁殖を抑えられるので、鮮度保持性能を向上させる観点から好ましい
【0034】
<包装容器>
本発明の押出ラミネートフィルムは、包装容器に好ましく用いることができる。
本発明の押出ラミネートフィルムを含んでなる包装容器は、例えば、押出ラミネートフィルムの表面層を内面として二つに折畳んで、両端をヒートシール、溶断シールなどにより封止することにより製造することができる。また、二枚の押出ラミネートフィルムを、表面層が内面になるように重ね合わせて、三方をヒートシール、溶断シールなどにより封止することでも製造することができる。前記包装容器は、包装容器に成型する前に必要に応じて裏面層に印刷処理を行ってもよい。
【0035】
また、青果物等の呼吸をする被包装物の鮮度保持用の包装容器の場合には、押し出しラミネートフィルムに開口部を設けてもよい。この態様においては、押出ラミネートフィルムが、少なくとも1の開口部を有し、該開口部は長さ0.5~7mmである1以上のスリット状の形状の部分を有することが好ましい。すなわち、該開口部の長さのうち少なくとも0.5mmにわたって幅が10μm未満である部分が存在することが好ましい。外部からの異物等の侵入を防止する観点からは、該開口部の長さの全てにわたって幅が10μm未満であることが好ましい。開口部は異物等の侵入防止、生産性、ハンドリング性の観点から1以上、5以下のスリット状の形状の部分から構成されていることが好ましく、1以上、3以下のスリット状の形状から構成されていることがより好ましく、1または2のスリット状の形状から構成されていることがさらに好ましい。
【0036】
開口部が1つのスリット状の形状の部分から構成されている場合であって、2以上の開口部が設けられる場合には、スリット状の形状の部分の長さ方向が例えば互いに垂直なるように等任意の角度で設けることができるが、ハンドリング性等の観点からスリット状の形状の部分の長さ方向が互いに略平行になるように設けることが好ましい。
また、開口部が2以上のスリット状の形状の部分を組み合わせて構成されている場合には、各々のスリット状の形状の部分を例えば、2つのスリット状の形状の部分を「十」や「X」のように互いに交差させるように設けてもよいし、3以上のスリット状の形状の部分を互いに一点で交差させるように設けてもよい。また、例えば、「T」のようにスリット状の形状の部分どうしを交差させずに互いに異なった長さ方向で、連続するように設けてもよい。この様なスリット状の形状の開口部を有することで、上記高分子フィルムを含んでなる包装容器は、22℃、40%RHでの酸素透過度が、青果物等の内容物の鮮度保持に適した範囲、例えば500から50000cc/m/day/atmの範囲内、より好ましくは1000から5000cc/m/day/atmの範囲内となる一方で、外部からの異物、例えば微細な無機物、花粉、雑菌等や雑菌等を含んだ浮遊物が包装容器内に侵入することを効果的に抑制することが可能となる。さらに、開口部を形成するスリット状の形状の部分の幅を好ましくは10μm未満とすることで、最大径10μm以上の空気中の異物等の侵入を防止することができる。
【0037】
上記スリット状の開口部を形成するスリット状の形状の連続する略直線部分の最大の長さは、通気性を確保する観点から、典型的には0.5~7mmであり、好ましくは0.7~7mmであり、より好ましくは0.8~5mmであり、さらに好ましくは1.0~3.0mmであり、特に好ましくは1.0~2.0mmである。一方、上記スリット状の開口部の幅は、前記外部からの異物の侵入を防止する観点から、10μm未満であることが好ましく、より好ましくは7μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下であり、特に好ましくは3μm以下である。
【0038】
上記態様の包装容器は、好適な酸素透過度を有し、これにより包装容器内の酸素濃度を制御しながら、抗菌性が維持され、雑菌等の繁殖を抑制することができるので、呼吸を行い、かつ水分を多く含む内容物の鮮度保持用、とりわけ青果物の鮮度保持用、に好ましく用いられる。
この実施形態において包装容器に収納され鮮度保持される青果物には特に制限は無いが、例えばバナナ、マンゴー、ウメ、リンゴ、イチゴ、ミカン、ブドウ、和梨、西洋梨のような果実類、ダイコン、ニンジン、ナガイモ、ゴボウのような根菜類、トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、エダマメ、オクラのような果菜類、緑豆モヤシ、大豆モヤシ、トウミョウのような芽物類、シイタケ、シメジ、エリンギ、マイタケ、マツタケのような菌茸類(キノコ類)、ブロッコリー、ホウレンソウ、コマツナ、チンゲンサイ、キャベツ、レタス、アスパラガスのような葉茎菜類、キク、ユリ、カーネーション等の花卉または苗が挙げることができる。
【0039】
この実施形態において包装容器に収納され鮮度保持される青果物の形態にも特に制限は無いが、酸素濃度を制御し、これにより青果物の呼吸を制御しながら、雑菌等の繁殖を抑制することにより鮮度を保持するという本実施形態の作用からは、水分を多く含有し、かつ実質的に呼吸を行っている形態の青果物の鮮度保持に特に有効である。
従って、青果物は収穫されたままのものであってもよく、外葉等を除去したいわゆる前処理済みのものであってもよく、カット済みのいわゆるカット野菜であってもよい。また、青果物は、洗浄、冷却、脱水等の処理のいずれか又は全てを行ったものであってもよく、またこれらの処理のいずれも行わないものであってもよい。
【0040】
カット野菜は、簡便に食事に供することができることなどから近年需要が増加しており、高い経済的価値を有する。一方、野菜はカットされることにより呼吸作用や代謝反応が急激に活発化し、品質が急激に低下する傾向がある。また、比較的広いカット面を有するため、雑菌や腐敗物の影響を受けやすい。更に、カット面から有機成分等が結露中に溶出した場合等には、これを養分とした雑菌等の顕著な繁殖がしばしば発生する。本実施形態は、この様なカット野菜の鮮度保持に有効に用いることができるので、特に高い経済的価値を有する。
【0041】
青果物の種類及び形態により、鮮度保持に好ましい酸素濃度がある程度異なり、それに伴い好ましい酸素透過度、並びにその様な酸素透過度を与える高分子フィルム中の開口部の、好ましい大きさ、形状、及び数も異なるが、これらを適切に設定することで、上記青果物のいずれについても、本発明の押出ラミネートフィルムを含んでなる包装容器によって有効に鮮度保持を行うことができる。
【0042】
青果物を上記態様の包装容器に収納することで、本発明の一実施形態である青果物鮮度保持用包装体を製造することができる。
以下、この実施形態の青果物鮮度保持用包装体の製造方法を、カット野菜の鮮度保持用包装体を例に説明する。
【0043】
まず前処理工程において、手作業で外葉を取り除き、2~4分割し、芯を取り除くなどした野菜をコンベヤーに供給する。コンベヤーで搬送された野菜は、スライサーでカットされ、冷水を満たした洗浄槽で冷却を兼ねて洗浄され、水切り後遠心脱水機等で脱水される。脱水されたカット野菜は、本実施形態の包装容器(一辺が封止されていないもの)に詰められ、計量後包装容器が封止され、カット野菜の鮮度保持用包装体が製造される。
【0044】
カット野菜の鮮度保持の観点からは、切れ味の良い刃を用い、切断面に生ずる傷をより少なくすることが好ましい。
また、カット幅が狭いほど、切断面積が増加し、鮮度保持がより困難になるため、鮮度保持の観点からは、需要の形態に適合する限りにおいてカット幅が広い方が好ましい。
更に、カット野菜に当初から雑菌が多く付着していると、鮮度保持がより困難になるため、カット野菜をよく洗浄するなどして、雑菌の付着をできるだけ低減することが好ましい。洗浄は、雑菌の付着を低減するばかりか、活性の高い酵素等を含み変色等の原因となりうる細胞液等を除去する効果もあるため、鮮度保持のために特に有効である。
加えて、洗浄後にカット野菜表面に付着した水分を十分に除去することが、鮮度保持のために重要である。洗浄後静置して水切りを行っても、カット野菜表面にはなお多くの水が付着している場合が多いので、遠心脱水機等を用いて水分を除去することが有効である。
【0045】
なお、本実施形態の青果物鮮度保持用包装体は、青果物の収納及び包装容器の封止後に、脱気を行ってもよい。脱気を行うことにより、包装容器の酸素透過度と青果物の呼吸量の平衡状態として設計される所望の酸素濃度に速やかに到達することが可能となり、鮮度保持に有利である。
また、流通の過程での効率向上やスペース節約、特定の気体の排除等の観点からも、包装容器の封止後に脱気を行うことが好ましい。
上述の様に、本実施形態の包装容器を構成する高分子フィルム中の開口部はスリット状の断面形状を有するので、機械的圧力をかける等の比較的簡便な手段で、スリットの中央部の幅を拡げて気体透過性を顕著に増大させることが可能であり、これにより包装体を比較的容易にかつ短時間で脱気することが可能である。
【0046】
本実施形態の青果物鮮度保持用包装体は、本実施形態の包装容器中に青果物のみが収納されていてもよいし、更にそれ以外の部材が収納されていてもよい。
例えば、青果物に加えて、吸湿剤、及び/又は抗菌剤が包装容器中に収納されていてもよい。
吸湿剤には特に限定は無く、吸湿効果または調湿効果を有する公知又は市販の材料を使用することができる。吸湿剤として好適に用いられるものとしては、例えば、活性炭、シリカゲル、アルミナゲル、シリカアルミナゲル、無水硫酸マグネシウム、ゼオライト、合成ゼオライト、酸化カルシウム、塩化カルシウム、及び、焼ミョウバン、又はこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中でも、青果物への影響や食品である青果物等の近くで使用することに関する懸念の比較的少ない活性炭を用いることが特に好ましい。活性炭は粉末状、粒状どちらでも何ら差し支えなく、原料はヤシ殻、おがくず、木炭、竹炭、褐炭、泥炭、ほね、石油ピッチなどどんなものでも差し支えない。また活性炭は不織布、セロファン、紙などなどで使用単位毎に包装してあることが望ましいが、活性炭自体が繊維状になったものでも差し支えない。活性炭の包材としては、合成樹脂からなる不織布のように、ヒートシール性を有するものが好ましいが、水蒸気透過性を有しかつ活性炭がこぼれないもので有れば、紙、天然繊維などでも何ら問題ない。
【0047】
抗菌剤には特に限定は無く、抗菌作用を有する物質を適宜使用することができるが、青果物への影響や食品である青果物等の近くで使用することに関する懸念の比較的少ない天然性抗菌剤を好ましく使用することができる。より具体的には、天然性抗菌剤であるキトサン、アリルイソチオシアネート、ヒノキチオール、リモネン等を、包装容器内に収納することができる。
【実施例
【0048】
以下、実施例/比較例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0049】
以下の実施例/比較例において、各特性の評価は以下の方法で行った。
(抗菌試験)
(1)抗菌試験
JISZ2801に準じた抗菌試験を、大腸菌(Escherichia coli)を用いて行った。但し、下記のとおり条件を一部変更し、また鮮度保持フィルムの表面の状態を保つためにアルコールによるふき取りは行わなかった。
1/500普通ブイヨン培地に大腸菌(Escherichia coli)を規定数量入れたもの(JIS試験で0.4cc用いるブイヨン)を、評価対象である4cm角の鮮度保持フィルム表面に滴下して、上面にも配置したもう一枚の鮮度保持フィルムとの間に挟み込んだ。35℃で24時間経過した後に鮮度保持フィルム表面を洗浄し、上記普通ブイヨン培地を含む洗浄液を回収し、それを、普通寒天培地を用いて培養してコロニーの数をカウントした。
即ち、顕微鏡下で菌の個数をカウントすることは困難なため、コロニーの数を、目視によりカウントし、その1グラム(g)あたりのコロニーの数を生菌数CFU(colony forming unit)(単位[個/g])とした。また2枚の特定化合物が配合されていないポリエチレンフィルムの間に挟み込んだサンプルをコントロール(Control)として、比較の基準とした。
表2には、n=3の平均値も併せて示した。但し、測定値のバラツキが10倍以上の場合には、JIS規格上平均値は計算できない。
(酸素透過度)
酸素透過度は内部に窒素を封入した後の酸素濃度の変化から下記の方法で測定した。
まず、次の方法で内寸220mm×240mmの袋を形成した。
1枚のフィルムをほぼ均等に2つ折りにし約5mm幅で、インパルスシーラー(富士インパルス社製、品番Fi-200-10WK)で加熱条件の目盛を3に設定してヒートシールを行い、当該ヒートシール辺がほぼ中央にくるようにヒートシール辺とほぼ垂直をなす辺の一方の全体を、他方の辺の一方の連通部となる端部約2cmを除く全体をヒートシールして、内寸220mm×240mmの袋を形成した。
次に前記連通部から窒素ガスを注入し、袋内が飽和状態になってから袋内のガスを連通部からほぼすべて排出した。この操作を5回繰り返した後、窒素ガスを注入して袋内を窒素ガスで飽和させて連通部を前記インパルスシーラーで同様の条件でヒートシールした。窒素ガスを飽和させた袋を22℃、相対湿度40%の空気中(1気圧、酸素濃度:21%、窒素濃度:79%)の室内に6時間放置した。
次にサンプリング針チューブで袋内のガスを約20ccサンプリングして食品包装用ジルコニア酸素濃度計(東レエンジニアリング社製、型番LC-750F)にて袋中の酸素濃度を測定した。さらに、袋中の気体の体積を測定し、下記の式から酸素透過度を算出した。
(式)酸素透過度=内部酸素濃度変化(%)/100×体積(cm)×24×60/時間(360分)×10000cm/面積(1232cm)/0.21(酸素の分圧)
(特定化合物の存在量)
高分子フィルムの表面を、ジクロロメタンを用いて洗浄し、洗浄液を回収し、濃縮して定容した後、シリル化し、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)を用いて定量した。
【0050】
(高分子フィルム層Aの製造)
高分子フィルム層Aとして、下記の条件に従い、裏面層/中間層/表面層の3層構成を有する高分子フィルムを製造した。
(1)中間層
中間層の材料には、直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学株式会社製、密度:0.940g/cm、MFR:4.0g/10分、融点:117.3℃)を用いた。
(2)表面層及び裏面層
表面層及び裏面層の材料には、前記の直鎖状低密度ポリエチレンに対して、シリカ(富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア730(平均粒径3μm))及びエルカ酸アミド(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:ATMERSA1753)をそれぞれ1000ppm添加した材料を用いた。
(3)添加剤
各層に、下記抗菌成分が表1に示す量で含まれるように、下記抗菌成分をマスターバッチに配合した。
(a)ステアリルジエタノールアミン(C18DEA) 理研ビタミン株式会社製
(4)高分子フィルム層Aの製造
前記各材料を用いて、裏面層/中間層/表面層の3層キャストフィルムを層厚み比1/3/1、全体厚み30、40、50、及び70μmで、高分子フィルム層Aを製造した。
高分子フィルム層Aの製造は、押出機のダイス温度:200℃、チル温度:50℃で行った。得られた高分子フィルム層Aの裏面層側をコロナ処理した。コロナ処理された表面の濡れ指数が38dyn以上であることを、和光純薬株式会社製の濡れ張力試験用混合液NO.38.0を用いて確認した。
表1に示す様に、高分子フィルム層A1は、中間層及び裏面層(シール層)にステアリルジエタノールアミン(C18DEA)を800ppm含むものであり、高分子フィルム層A2は、いずれの層にもステアリルジエタノールアミン(C18DEA)を含まないものであった。
【表1】

【0051】
(参考例1)
上記で作成した高分子フィルム層A1をそのまま使用し、押出ラミネートは行わなかった。また、OPPフィルムとの積層も行わなかった。評価結果を、表2に示す。
上記の様に高分子フィルム層A1は、中間層と裏面層(シール層)にステアリルジエタノールアミン(C18DEA)を800ppm含むポリエチレンフィルムであり、30~70μmの各フィルムで十分な抗菌性を示した。すなわち、抗菌性の点では優れたフィルムであるが、押出ラミネートによりバリア性、手切れ性、多色印刷性、表面光沢等を向上させることは行っていない。
(参考例2)
上記で作成した高分子フィルム層A2をそのまま使用し、押出ラミネートは行わなかった。また、OPPフィルムとの積層も行わなかった。評価結果を、表2に示す。
上記の様に高分子フィルム層A2は、ステアリルジエタノールアミン(C18DEA)を含まないポリエチレンフィルムであり、そのため抗菌性を示さなかった。また、押出ラミネートによりバリア性、手切れ性、多色印刷性、表面光沢等を向上させることも行っていない。
(比較例1)
上記で作成した高分子フィルム層A1上に、以下の条件で押出ラミネートを行い、押出高分子フィルム層B1を形成した。なお、アンカーコート剤として、大日精化工業株式会社製セイカダイン 2710A、同2810C(T)、及び酢酸エチルを=1:2:15.6の割合で混合したものを用いて、押出ラミネート前に、高分子フィルム層A1の表面をアンカーコート処理した。
押出高分子フィルム層B1の厚みは15~20μm程度であった。押出ラミネートに用いた樹脂は、日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE、ノバテック LD LC600A)であり、ステアリルジエタノールアミン(C18DEA)等の添加物は添加しなかった。
・押出温度(℃)
C1/C2/C3/C4/AD/D1~4=175/257/322/325/325/327~327
・成形速度 AC 99m/分 引取 106/分
・エージング 40℃×24h
更に、延伸フィルム層Cとして、厚み15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製:U-1)を積層して、アンカーコート処理した上で押出ラミを行い、押出ラミネートフィルムを作製した。
評価結果を、表2に示す。
高分子フィルム層A1の厚みが70μmの場合には、十分な抗菌性が発現したものの、抗菌性は押し出しラミ層(B1)への特定成分の移動が原因で不安定であり、厚みが小さくなるにつれて抗菌性が発現しにくくなり、厚み30μmの場合には抗菌性が発現しなかった。
(比較例2)
高分子フィルム層A1に代えて高分子フィルム層A2を使用した他は、比較例1と同様にして、押出ラミネートフィルムを作製した。
評価結果を、表2に示す。
実質的な抗菌性は得られなかった。
(実施例1)
押出ラミネートに用いた樹脂(日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン、ノバテック LD LC600A)に、ステアリルジエタノールアミン(C18DEA)を900ppm添加して、押出高分子フィルム層B2を形成し、これを押し出し高分子フィルム層B1に代えた他は、比較例1と同様にして、押出ラミネートフィルムを作製した。
評価結果を、表2に示す。
30~70μmの各厚みにおいて十分な抗菌性が得られたことが確認できた。すなわち、抗菌性の点では優れたフィルムであり、また、押出ラミネートによりバリア性、手切れ性、多色印刷性、表面光沢等を向上させることも可能なフィルムであった。
また、22℃、40%RHでの酸素透過度は500~2000cc/m /day/atm程度であり、カット野菜包装、精肉、鮮魚の包装に適したフィルムであった。
(参考例3)
押出ラミネートに用いた樹脂(日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン、ノバテック LD LC600A)に、ステアリルジエタノールアミン(C18DEA)を900ppm添加して、押出高分子フィルム層B2を形成し、これを押し出し高分子フィルム層B1に代えた他は、比較例2と同様にして、押出ラミネートフィルムを作製した。
評価結果を、表2に示す。
実質的な抗菌性は得られなかった。
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の押出ラミネートフィルムは、鮮度保持に十分な抗菌性を保ちながら、バリア性、手切れ性、多色印刷性、表面光沢等に優れた押出ラミネートフィルムを実現することができるので、カット野菜包装、精肉、鮮魚等の高い経済的価値を有する一方で雑菌の影響を受けやすい内容物の鮮度保持に好適に用いることが可能であり、食品加工、流通、外食などの産業の各分野において高い利用可能性を有する。