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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220519BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
C09J7/38
B32B27/00 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017108458
(22)【出願日】2017-05-31
(65)【公開番号】P2018203836
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-04-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】樋口 真覚
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-342533(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084948(WO,A1)
【文献】特開2005-298543(JP,A)
【文献】特表2003-531253(JP,A)
【文献】特表2002-544364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J7/00-7/50
B32B27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電子機器を構成する筐体の内面または該筐体の内部に収容される部材に貼り付けて用いられる両面粘着シートであって、
第一粘着面と第二粘着面とを有し、該第一粘着面を構成する粘着剤層を含み、
前記第一粘着面をガラス板に圧着して50℃で24時間保持する経時試験後において前記第一粘着面の全面積のうち前記ガラス板に対する非密着部の合計面積の割合として定義される経時後非密着面積率Saが5%以上であり、前記非密着部は前記第一粘着面に沿って線状に延びる部分を有し、
前記第一粘着面には凹部が形成されており、前記第一粘着剤層の平面視における前記凹部の形成パターンに沿って前記経時試験後の非密着部が形成されるように構成されており、
前記凹部を構成する溝の深さは3μm以下であり、
前記凹部を構成する溝の間隔は1.5mm以上であり、
前記凹部を構成する溝のピッチは1.0~20mmであり、
前記粘着剤層の厚さTに対する前記溝の深さDの比(D/T)は0.05以上0.90以下である、両面粘着シート。
【請求項2】
前記経時試験後の非密着部が前記第一粘着面の外縁まで連続して形成されるように構成されている、請求項1に記載の両面粘着シート。
【請求項3】
前記凹部を構成する溝の深さが0.2μm以上3μm以下である、請求項1または2に記載の両面粘着シート。
【請求項4】
前記経時試験後の非密着部が格子状のパターンを形成するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項5】
前記第一粘着面を前記ガラス板に圧着した直後において前記第一粘着面の全面積のうち前記ガラス板に対する非密着部の合計面積の割合として定義される初期非密着面積率Siが5%以上35%以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項6】
フィルム基材と、
前記フィルム基材の第一面に配置された第一粘着剤層としての前記粘着剤層と、
前記フィルム基材の第二面に配置された第二粘着剤層と、
を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の両面粘着シートと、
85℃で15時間加熱するアウトガス発生試験におけるアウトガス発生量が100μL/g以上であるプラスチック材料により構成された表面を有する部材と、
を備え、前記プラスチック材料により構成された表面に前記両面粘着シートの前記第一粘着面が貼り付けられている、複合体。
【請求項8】
前記プラスチック材料は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂、および塩化ビニル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項7に記載の複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。このような性質を活かして、粘着剤は、基材の少なくとも一方の表面に粘着剤層を設けた基材付き粘着シートの形態で、例えば、各種物品を固定したり、各種物品の表面保護、あるいは装飾など所望の外観を得る等の目的で広く利用されている。
【0003】
従来の粘着シートでは、粘着シートを被着体に貼り付けるときに、粘着シートと被着体との間に空気等の流動性異物が残り、この異物が気泡等(空気だまり等)となって外観品質の低下を引き起こす場合があった。上記のような気泡等は、粘着力の低下など粘着特性に悪影響を及ぼす点でも望ましくない。このように粘着シートの貼付け時における気泡等の発生を予防し、または発生した気泡等を除去する性質(以下「空気抜け性」ともいう。)を付与することを目的として、貼付け前の粘着シートの粘着剤層表面を保護する剥離ライナーの表面に凸条を形成し、該凸条を利用してこれと相補的な形状の溝を粘着剤層表面に形成する技術が知られている(特許文献1)。粘着シートと被着体との間に残ろうとする空気等は、粘着剤層の表面に形成された溝を通じて除去され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-70273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、いったん粘着シートと被着体との間に気泡のない貼付け状態が実現されても、その後、新たに粘着シートと被着体との間にガスが溜まって気泡が形成されることがあり得る。このように事後的に気泡が生じる要因のひとつとして、一般に「アウトガス」とも称される、被着体から発生するガスが挙げられる。上記アウトガスは、例えば、被着体に最初からまたは環境から吸湿することで含まれている水分の蒸発、被着体の製造時における未反応物や添加剤等の低分子量成分の揮発、被着体構成材料の分解、等により発生し得る。特許文献1に記載されているように剥離ライナーの凸条を利用して粘着剤層表面に溝を形成した粘着シートでは、剥離ライナー等を除去して露出させた粘着面を被着体に貼り付けた後は上記溝が粘着剤の流動により縮小または消失してしまい、アウトガスに起因する気泡の発生防止には対応できないことがあり得る。また、アウトガスの発生は経時や温度上昇により促進され得るところ、粘着剤の流動もまた経時や温度上昇により促進される傾向にあり、このことがアウトガスによる気泡の発生防止をますます困難にしている。
【0006】
そこで本発明は、アウトガスに起因する気泡の発生を好適に防止し得る粘着シートを提供することを一つの目的とする。関連する他の目的は、かかる粘着シートがアウトガスを発生しやすい部材に貼り合わされている構造の複合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この明細書によると、粘着面を構成する粘着剤層を含む粘着シートが提供される。上記粘着シートは、経時後非密着面積率Saが5%以上であることによって特徴づけられる。ここで、上記経時後非密着面積率Saは、上記粘着面をガラス板に圧着して50℃で24時間保持する経時試験後において上記粘着面の全面積のうち上記ガラス板に対する非密着部の合計面積の割合として定義される。上記非密着部は、上記粘着面に沿って線状に延びる部分を有することが好ましい。このように構成された粘着シートは、該粘着シートが貼り付けられる被着体からアウトガスが発生し得る使用態様においても、上記非密着部をアウトガスのパスとして有効に機能させ、該被着体と粘着面との間にアウトガスが封じ込められることによる気泡(ガス溜まり)の発生や該気泡の成長を抑制することができる。
【0008】
ここに開示される粘着シートは、上記経時試験後の非密着部が上記粘着面の外縁まで連続して形成されるように構成されていることが好ましい。これにより、アウトガスによる気泡の発生や成長をよりよく抑制することができる。
【0009】
いくつかの態様に係る粘着シートは、上記粘着面に凹部が形成されており、上記粘着剤層の平面視における上記凹部の形成パターンに沿って上記経時試験後の非密着部が形成されるように構成され得る。粘着面に凹部を有する粘着シートは、該凹部を利用して貼付け時の気泡発生を防止し得る一方、経時に伴う粘着剤の流動により上記凹部が縮小または消失して被着体と粘着面との間にアウトガスが封じ込められやすい。したがって、ここに開示される技術を適用してアウトガスに起因する気泡の発生を抑制することが特に有意義である。
【0010】
上記のように粘着剤層表面に凹部を有する粘着シートにおいて、該凹部の深さは0.2μm以上であることが好ましい。かかる粘着シートによると、所定以上の経時後非密着面積率Saを確保しつつ、良好な粘着力が得られやすい。
【0011】
ここに開示される粘着シートのいくつかの態様において、該粘着シートは、上記粘着剤層の表面に該表面を部分的に覆うコート層が配置されており、上記粘着剤層の平面視における上記コート層の配置パターンに沿って上記経時試験後の非密着部が形成されるように構成され得る。かかる構成の粘着シートによると、粘着シートの貼付け時に該粘着シートと被着体との間に残ろうとする空気等を上記コート層沿いに除去し得るとともに、経時後においても上記コート層に沿って所定以上の経時後非密着面積率Saを確保することでアウトガスに起因する気泡の発生を効果的に防止することができる。
【0012】
好ましいいくつかの態様に係る粘着シートは、上記経時試験後の非密着部が格子状のパターンを形成するように構成されている。上記格子状パターンは、例えば、正方格子、長方格子、斜方格子、三角格子、六角格子等の一種または二種以上を含み得る。このような格子状の上記非密着部は、該非密着部において線状に延びる部分が多くの交点または分岐点を含むことにより、上記非密着部に沿う様々な経路でアウトガスを逃すことができる。したがって、粘着面と被着体との間にアウトガスが閉じ込められることによる気泡の発生や該気泡の成長をよりよく防止することができる。
【0013】
ここに開示される粘着シートは、初期非密着面積率Siが5%以上35%以下であることが好ましい。上記初期非密着面積率Siは、上記粘着面を上記ガラス板に圧着した直後において上記粘着面の全面積のうち上記ガラス板に対する非密着部の合計面積の割合として定義される。上記初期非密着面積率Siおよび上記経時後非密着面積率Saを満たす粘着シートは、貼付け時の空気抜け性がよく、かつアウトガスによる気泡の発生等を好適に抑制することができる。上記非密着部は、上記粘着面に沿って線状に延びる部分を有することが好ましい。これにより貼付け時に混入した空気等による気泡の発生をよりよく防止することができる。
【0014】
ここに開示される粘着シートは、フィルム基材と、上記フィルム基材の少なくとも一方の表面に配置された上記粘着剤層とを含む態様で好ましく実施され得る。このようにフィルム基材を有する粘着シートによると、所定以上の経時後非密着面積率Saを安定して実現しやすい。
【0015】
この明細書によると、ここに開示されるいずれかの粘着シートと、85℃で15時間加熱するアウトガス発生試験におけるアウトガス発生量が100μL/g以上であるプラスチック材料により構成された表面を有する部材と、を備え、上記プラスチック材料により構成された表面に上記粘着シートが貼り付けられている複合体が提供される。このような複合体は、上記アウトガス発生量を有するプラスチック材料の表面に粘着シートが貼り付けられた構成でありながら、上記表面と該粘着シートとの間に上記アウトガスに起因する気泡が生じにくい。したがって、上記複合体は、上記部材と上記粘着シートとの接着信頼性に優れたものとなり得る。
【0016】
この明細書によると、ここに開示されるいずれかの粘着シートと、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂、および塩化ビニル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含むプラスチック材料により構成された表面を有する部材と、を備え、上記プラスチック材料により構成された表面に上記粘着シートが貼り付けられている複合体が提供される。一般に上記プラスチック材料はアウトガスを発生しやすいところ、上記粘着シートによると上記表面と該粘着シートとの間にアウトガスに起因する気泡が生じにくい。したがって、上記複合体は、上記部材と上記粘着シートとの接着信頼性に優れたものとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る粘着シートを模式的に示す上面図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3】一実施形態に係る粘着シートの作製に用いられる剥離ライナーを示す断面図である。
図4】一実施形態に係る剥離ライナー付き粘着シートを模式的に示す断面図である。
図5】他の一実施形態に係る粘着シートを模式的に示す断面図である。
図6図5のVI-VI線における断面図である。
図7】他の一実施形態に係る粘着シートの作製に用いられるコート層付き剥離ライナーを示す断面図である。
図8】他の一実施形態に係る粘着シートを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0019】
また、本明細書における粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称され得るものが包含される。また、ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態のシートであってもよい。
【0020】
<粘着シート>
(第一実施形態)
図1は、一実施形態に係る粘着シートの被着体への貼付け時における形状を模式的に示す上面図であり、図2図1のII-II線における断面図である。図面を参照しながら、この実施形態の粘着シートについて説明する。
【0021】
図1,2に示すように、この実施形態に係る粘着シート1は、フィルム基材10と粘着剤層20との積層構造を有する。フィルム基材10は、粘着剤層20を支持している。粘着シート1の一方の表面は、粘着剤層20の表面20Aにより構成された粘着面1Aとなっている。粘着シート1の他方の表面(フィルム基材10側の表面)1Bは、非粘着面である。このように片面のみが粘着面となっている粘着シート、すなわち片面粘着シートは、例えば、粘着面とは反対側の表面に装飾性、表面保護性等の特性が要求される場合や、塗料代替シートとして用いられる場合に好適である。
【0022】
粘着剤層20の表面20Aには凹部30が形成されている。この凹部30は、粘着剤層20の平面視において所定のパターン(凹部パターン)40を形成し、この実施形態では斜方格子状の凹部パターン40を形成している。凹部パターン40は、粘着シート1の被着体への貼り合わせ時に、粘着シート1と被着体との間で空気等が通るパスとなり、空気抜け性を付与する。また、粘着シート1は、粘着面1Aをガラス板に圧着して50℃で24時間保持する経時試験後において、粘着面1Aの全面積のうち上記非密着部の合計面積の割合、すなわち経時後非密着面積率Saが5%以上となり、かつ凹部パターン40に沿って粘着面1Aのガラス板への非密着部が形成されるように構成されている。これにより、粘着シート1は、被着体に貼り付けられてから時間が経っても粘着面1Aと被着体表面との間にアウトガスのパスとして有効に機能し得る非密着部を維持しやすく、例えばポリカーボネート樹脂等のようにアウトガスを発生しやすい被着体に貼り付けられる使用態様においても該アウトガスに起因する気泡の発生や成長を抑制することができる。
【0023】
凹部パターン40は、具体的には、第一ストライプ状パターン部42と、この第一ストライプ状パターン部42と交差するように配置された第二ストライプ状パターン部44とからなる。
【0024】
第一ストライプ状パターン部42は、粘着面1Aの一端から他端に向かって直線状に延びる複数の部分(線状に延びる部分)50から構成されている。本実施形態では、これらの線状に延びる部分50は、線状の凹部、すなわち溝を構成している。したがって、本実施形態において線状に延びる部分50は、溝50と言い換えることができる。第一ストライプ状パターン部42を構成する複数の溝50は、その幅方向に間隔をおいて平行に配置されている。この実施形態では、溝50は、その長手方向が粘着シート1の幅方向の端部と交差する角度で配置されており、それぞれ粘着面1Aの両端に到達している。この実施形態では、溝50の長手方向と粘着シート1の幅方向の端部との交差角度は45度である。
【0025】
第二ストライプ状パターン部44も、第一ストライプ状パターン部42と同様に、粘着面1Aの一端から他端に向かって直線状に延びる複数の溝(線状に延びる部分)50から構成されており、これら複数の溝50は、その幅方向に間隔をおいて平行に配置されている。この実施形態では、溝50は、その長手方向が粘着シート1の幅方向の端部と交差する角度で配置されており、それぞれ粘着面1Aの両端に到達している。
【0026】
この実施形態では、第一ストライプ状パターン部42と第二ストライプ状パターン部44とは、第一ストライプ状パターン部42を構成する溝50と第二ストライプ状パターン部44を構成する溝50とがほぼ直交するように交差している。したがって、第一ストライプ状パターン部42を構成する溝50と第二ストライプ状パターン部44を構成する溝50とは部分的に重なっている。このようにして斜方格子状の凹部パターン40が構成されている。
【0027】
なお、この実施形態では、凹部パターンを構成する線状に延びる部分(図1に示す溝50)は直線状に延びているが、これに限定されない。上記線状に延びる部分は、例えば曲線状や折れ線状に延びていてもよい。上記線状に延びる部分は、例えば波状であり得る。波状の例としては、サインウェーブや疑似サインウェーブ、円弧波等の曲線状のものや、ジグザグ状、三角波等の非曲線状のものが挙げられる。このような波状パターンは、同形または異形の2種以上の波をそれらの位相をずらした状態で、あるいは形状やパターンを反転させる等して、重ねて形成されたものであってもよい。後述する第二実施形態においてコート層パターンを構成する線状に延びる部分につても同様である。また、これらの実施形態において、線状に延びる部分の本数は、粘着シートの粘着面の形状やサイズ等との関係で決定することができ、特定の本数に制限されるものではない。
【0028】
また、本明細書において格子状パターンとは、典型的には、互いに交差する2つのストライプ状パターン部を含むパターンを指し、本実施形態のような斜方格子だけでなく、正方格子、長方格子、三角格子等の各種の格子形状を包含する。線状に延びる部分(本実施形態では溝)が直線状の場合、2つのストライプ状パターン部の交差角度(鋭角側をいう。)は、例えば10度~90度、好ましくは45度~90度、典型的には60度~90度の範囲内で設定され得る。また、ここに開示される格子状パターンには、屈曲を繰り返す複数の線状に延びる部分から構成されるストライプ状パターン部を含むパターン、例えば六角格子のようなパターンも包含されるものとする。そのようなパターンは、隣りあう線状に延びる部分同士が一部で接続したものであり得る。
【0029】
第一ストライプ状パターン部42を構成する溝50の幅(図1中のW1)は、本実施形態では約200μmであり、第二ストライプ状パターン部44を構成する溝50の幅W1も同様であるが、これに限定されない。上記幅W1は、例えば、0.01mm~2mmの範囲内で設定され得る。ここに開示される好ましい経時後非密着面積率Saを実現しやすくする観点から、上記幅W1は、0.05mm以上とすることが有利であり、好ましくは0.10mm以上、より好ましくは0.15mm以上である。アウトガスによる気泡発生をよりよく抑制する観点から、いくつかの態様において、上記幅W1は、例えば0.20mm以上であってよく、0.25mm以上でもよく、0.30mm以上でもよく、0.40mm以上でもよく、0.50mm以上でもよい。また、粘着力や外観等の観点から、上記幅W1は、通常、1.2mm以下とすることが好ましく、1.0mm以下とすることがより好ましい。いくつかの形態において、上記幅W1は、例えば0.70mm未満であってよく、0.50mm未満でもよく、0.40mm未満でもよい。第一ストライプ状パターン部を構成する溝の幅W1と、第二ストライプ状パターン部を構成する溝の幅W1とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
第一ストライプ状パターン部42を構成する溝50の間隔(図1中のW2)は、本実施形態では約1.8mmであり、第二ストライプ状パターン部44を構成する溝50の間隔(図1中のW2)も同様であるが、これに限定されない。上記溝の間隔W2は、例えば1.0mm~10mmの範囲内で設定することができる。これにより、ここに開示される好ましい経時後非密着面積率Saと粘着力とがバランスよく両立される傾向が高まる。ここで、溝の間隔W2とは、粘着面において隣りあう2つの溝(線状に延びる部分)の間に存在する部分の幅を指す。上記間隔W2は、粘着力向上等の観点から、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2.5mm以上である。ここに開示される好ましい経時後非密着面積率Saを実現しやすくする観点から、上記間隔W2は、例えば8mm以下であってよく、5mm以下でもよく、3mm以下でもよい。第二ストライプ状パターン部を構成する溝の間隔W2も、上記第一ストライプ状パターン部を構成する溝の間隔W2として例示した範囲内から好ましく設定される。第一ストライプ状パターン部を構成する溝の間隔W2と第二ストライプ状パターン部を構成する溝の間隔W2とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。各ストライプ状パターン部を構成する溝の間隔W2は、該ストライプ状パターン部の各部において、概ね等間隔であることが好ましい。
【0031】
第一ストライプ状パターン部42を構成する溝50のピッチは、本実施形態では約2.0mmであり、第二ストライプ状パターン部44を構成する溝50のピッチも同様であるが、これに限定されない。上記ピッチは、粘着力と気泡防止性とをバランスよく両立する観点から、1.0mm~20mmの範囲内とすることが好ましい。粘着力向上の観点から、上記ピッチは、例えば1.5mm以上であってよく、2mm以上でもよく、2.5mm以上でもよい。また、空気抜け性向上の観点から、上記ピッチは、例えば15mm以下であってよく、12mm以下でもよく、5mm以下でもよい。なお、上記ピッチは、上記溝の幅方向の中心線間の距離(間隔)を指すものとする。
【0032】
第一ストライプ状パターン部42を構成する溝50の深さ(図2中のD)は、本実施形態では約2μmであり、第二ストライプ状パターン部44を構成する溝50の深さDも同様であるが、これに限定されない。凹部パターンの深さ(この実施形態では、該凹部パターンを構成する溝の深さ)Dは、例えば、0.1μm以上であって粘着剤層の厚さT以下の範囲内で適宜設定し得る。好ましい一態様において、所定以上の経時後非密着面積率Saを確保しやすくする観点から、上記溝の深さDを例えば0.2μm以上とすることができる。かかる観点から、上記溝の深さDは、例えば0.5μm以上であってよく、0.7μm以上でもよく、1.0μm以上でもよく、1.5μm以上でもよく、1.7μm以上でもよい。また、凹部パターンの形成容易性の観点から、上記溝の深さDは、例えば3μm以下であってよく、2.7μm以下でもよく、2.5μm以下でもよい。
また、粘着剤層の厚さTに対する上記溝の深さDの比、すなわちD/Tは、例えば0.05以上であってよく、0.10以上でもよく、0.15以上でもよく、0.20以上でもよい。D/Tを大きくすることにより、経時による凹部パターンの縮小を抑制しやすくなる傾向にある。また、凹部パターンの形成容易性の観点から、D/Tは、例えば、0.90以下であってよく、0.80以下でもよく、0.70以下でもよい。
【0033】
好ましい一態様では、凹部パターンを形成する溝は、その深さDに対する幅W1の比、すなわちW1/Dが、凡そ20以上である。アウトガスによる気泡発生をよりよく抑制する観点から、W1/Dは、例えば30以上であってよく、50以上でもよく、70以上でもよく、90以上でもよい。また、接着性と気泡防止性とのバランスの観点から、W1/Dは、通常、500以下であることが適当であり、例えば300以下であってよく、250以下でもよく、200以下でもよく、165以下でもよい。
【0034】
ここに開示される粘着シートは、粘着面の全面積のうち凹部パターンの面積の割合が50%以下であることが適当であり、40%以下であることが好ましい。これにより、被着体への貼付け時において良好な接着性を確保することができる。いつかの態様において、上記凹部パターンの面積の割合は、例えば35%以下であってよく、30%以下でもよい。また、ここに開示される好ましい経時後非密着面積率Saを実現しやすくする観点から、上記凹部パターンの面積の割合は、5%超であることが好ましく、7%超でもよく、10%超でもよく、12%超でもよく、15%超でもよく、17%超でもよい。
【0035】
なお、本明細書において、粘着シートの粘着面とは、該粘着面に露出する粘着剤層の粘着性を利用して上記粘着シートを被着体に貼り合わせ可能な面をいう。上記粘着面は、その全面積にわたって粘着剤層が露出していてもよく、例えば後述する第二実施形態のように粘着剤層の一部がコート層で覆われていてもよい。また、粘着面の面積のうち一部には、粘着面が凹んだ部分(凹部;本実施形態では、粘着剤層の表面が凹んだ部分)や、粘着剤層が設けられない箇所が存在していてもよい。したがって、ここでいう粘着面の全面積には、粘着剤層を部分的に覆うコート層の面積や、粘着面が部分的に凹んだ部分の面積、部分的に粘着剤層が設けられていない箇所の面積等も含まれる。
【0036】
上記斜方格子状の凹部パターン40を有する粘着剤層20は、例えば、図3に示すように、この凹部パターン40に対応する形状、すなわち斜方格子状の凸部パターン60が形成された剥離面を有する剥離ライナー100を用いて作製され得る。より具体的には、流動性を有する粘着剤組成物を、所定の凸部パターンを有する剥離面に塗布し、該剥離面上で硬化させて粘着剤層を形成する方法や、あらかじめ形成された粘着剤層に上記剥離面を圧接して変形させる方法等により、上記凸部パターンに対応する形状の凹部パターンを有する粘着剤層を作製することができる。
【0037】
使用前(すなわち、被着体に貼り付けられる前)の粘着シートは、例えば図4に示すように、粘着シート1とその粘着面1Aを覆う剥離ライナー100とを備える剥離ライナー付き粘着シート110の形態であり得る。かかる形態によると、剥離ライナー100によって粘着面1Aの汚れや劣化を防止するとともに、粘着剤の流動による凹部パターン40の変形(典型的には、溝50の幅および/または深さの減少や消失)を防ぐことができる。粘着シート1は、粘着面1Aから剥離ライナー100を剥がし、これにより露出した粘着面1Aを被着体に貼り付けて使用される。
【0038】
なお、基材の片面に粘着剤層が配置された形態の粘着シートにおいて、該基材の背面(上記粘着剤層が配置された面とは反対側の面)を、凸部パターンを有する剥離面として構成し、粘着シートを巻回または積層することにより上記剥離面に粘着面を当接させて、該剥離面を粘着面の保護および凹部パターンの形状維持に利用してもよい。すなわち、片面粘着シートの基材が該粘着シートの剥離ライナーを兼ねる構成としてもよい。
【0039】
上記剥離面の凸部パターンは、粘着剤層の凹部パターンに対応する形状であり得る。いくつかの態様において、上記剥離面の凸部パターンは、粘着剤層の凹部パターンと相補的な形状であってよい。本実施形態では、上記剥離面の凸部パターンは、第一,第二ストライプ状パターン部42,44を構成する溝50に対応する形状および配置で設けられた線状に延びる部分62により、凸部パターン60が形成され得る。上記線状に延びる部分62は、線状に延びる凸部、すなわち畝を構成している。したがって、本実施形態において線状に延びる部分62は、畝62と言い換えることができる。本実施形態における畝62の形状および配置は、凹部パターン40と相補的な形状の凸部パターン60が形成されるように設定することができる。その他、凸部パターンを構成する畝において採用し得る該畝の配置や形状等については、上述した溝の配置や形状から理解することができるので、これ以上の説明は省略する。
【0040】
なお、上述した粘着剤層の各部のサイズ(例えば、凹部パターンの幅W1、間隔W2、深さDおよび粘着剤層の厚さT)は、被着体への貼り付け前の粘着シートにおける各部のサイズをいうものとする。凹部パターンの幅W1や間隔W2は、粘着面を光学顕微鏡で観察することにより把握することができる。凹部パターンの深さDは、粘着剤層の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)またはTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することにより把握することができる。粘着面が剥離ライナーで覆われている場合には、該剥離ライナーを剥がして粘着面を露出させた後、30分以内(好ましくは15分以内)に観察を行うか、観察用サンプルの形状を固定することが望ましい。上記形状の固定は、冷却や樹脂包埋等の公知の技術により行うことができる。また、粘着剤層の厚さTとは、図2に示すように、粘着剤層のうち凹部パターンを有しない部分の厚さをいうものとする。
【0041】
剥離ライナーの剥離面の凸部パターンの各部のサイズ(幅、間隔、高さ等)は、粘着剤層の凹部パターンと同様の方法で把握することができる。また、粘着面から剥離ライナーを剥がした直後における粘着剤表面の凹部パターンの各部のサイズは、通常、剥離面の凸部パターンの各部のサイズを概ね反映すると考えられるため、剥離面の凸部パターンの幅、間隔および高さを、それぞれ、粘着面の凹部パターンの幅W1や間隔W2および深さDの近似値として用いてもよい。
【0042】
(第二実施形態)
図5は、他の一実施形態に係る粘着シートの被着体への貼付け時における形状を模式的に示す上面図であり、図6図5のVI-VI線における断面図である。図面を参照しながら、この実施形態の粘着シートについて説明する。
【0043】
図5,6に示すように、この実施形態に係る粘着シート201は、フィルム基材210と粘着剤層220との積層構造を有する。フィルム基材210は、粘着剤層220を支持している。粘着シート201の一方の表面は、粘着剤層220の表面220Aが部分的に露出した粘着面201Aとなっている。粘着シート201の他方の表面(フィルム基材210側の表面)201Bは非粘着面である。
【0044】
粘着剤層220の表面220Aには、コート層230が部分的に配置されている。換言すると、粘着剤層表面220Aは、コート層230によって部分的に覆われている。このことによって、粘着面201Aは、粘着剤層220が露出しているコート層非配置部と、粘着剤層220がコート層230で覆われたコート層配置部とを有する。すなわち、粘着面201Aは、粘着剤層220の露出面とコート層表面とから構成されている。コート層230は、粘着剤層220の平面視において所定のパターン(コート層パターン)240を形成し、この実施形態では斜方格子状のコート層パターン240を形成している。コート層パターン240は、粘着シート201の被着体への貼り合わせ時に、粘着シート201と被着体との間で空気等が通るパスとなり、空気抜け性を付与する。また、粘着シート201は、粘着面201Aをガラス板に圧着して50℃で24時間保持する経時試験後において、粘着面201Aの全面積のうち上記非密着部の合計面積の割合、すなわち経時後非密着面積率Saが5%以上となり、かつコート層パターン240に沿って粘着面201Aのガラス板への非密着部が形成されるように構成されている。これにより、粘着シート201は、被着体に貼り付けられてから時間が経っても粘着面201Aと被着体表面との間にアウトガスのパスとして有効に機能し得る非密着部を維持しやすく、例えばポリカーボネート樹脂等のようにアウトガスを発生しやすい被着体に貼り付けられる使用態様においても該アウトガスに起因する気泡の発生や成長を抑制することができる。
【0045】
この実施形態に係るコート層パターン240は、第一ストライプ状パターン部242と、この第一ストライプ状パターン部242と交差するように配置された第二ストライプ状パターン部244とからなる。
【0046】
第一ストライプ状パターン部242は、粘着面201Aの一端から他端に向かって直線状に延びる複数の部分(線状に延びる部分。本実施形態では帯状部分)250から構成されている。第一ストライプ状パターン部242を構成する複数の帯状部分250は、その幅方向に間隔をおいて平行に配置されている。この実施形態では、帯状部分250は、その長手方向が粘着シート1の幅方向の端部と交差する角度で配置されており、それぞれ粘着面201Aの両端に到達している。この実施形態では、帯状部分250の長手方向と粘着シート201の幅方向の端部との交差角度は45度である。
【0047】
第二ストライプ状パターン部244も、第一ストライプ状パターン部242と同様に、粘着面201Aの一端から他端に向かって直線状に延びる複数の部分(線状に延びる部分。本実施形態では帯状部分)250から構成されており、これら複数の帯状部分250は、その幅方向に間隔をおいて平行に配置されている。この実施形態では、帯状部分250は、その長手方向が粘着シート201の幅方向の端部と交差する角度で配置されており、それぞれ粘着面201Aの両端に到達している。
【0048】
この実施形態では、第一ストライプ状パターン部242と第二ストライプ状パターン部244とは、第一ストライプ状パターン部242を構成する帯状部分250と第二ストライプ状パターン部244を構成する帯状部分250とがほぼ直交するように交差している。したがって、第一ストライプ状パターン部242を構成する帯状部分250と第二ストライプ状パターン部244を構成する帯状部分250とは部分的に重なっている。このようにして斜方格子状のコート層パターン240が構成されている。
【0049】
第一ストライプ状パターン部242を構成する帯状部分250の幅(図5中のW1)は、本実施形態では約200μmであり、第二ストライプ状パターン部244を構成する帯状部分250の幅W1も同様であるが、これに限定されない。上記幅W1は、例えば、0.01mm~2mmの範囲内で設定され得る。ここに開示される好ましい経時後非密着面積率Saを実現しやすくする観点から、上記幅W1は、0.05mm以上とすることが有利であり、好ましくは0.10mm以上、より好ましくは0.15mm以上である。アウトガスによる気泡発生をよりよく抑制する観点から、いくつかの態様において、上記幅W1は、例えば0.20mm以上であってよく、0.25mm以上でもよく、0.30mm以上でもよく、0.40mm以上でもよく、0.50mm以上でもよい。また、粘着力や外観等の観点から、上記幅W1は、通常、1.2mm以下とすることが好ましく、1.0mm以下とすることがより好ましい。いくつかの形態において、上記幅W1は、例えば0.70mm未満であってよく、0.50mm未満でもよく、0.40mm未満でもよい。第一ストライプ状パターン部を構成する帯状部分の幅W1と、第二ストライプ状パターン部を構成する帯状部分の幅W1とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0050】
第一ストライプ状パターン部242を構成する帯状部分250の間隔(図5中のW2)は、本実施形態では約1.8mmであり、第二ストライプ状パターン部244を構成する溝50の間隔(図5中のW2)も同様であるが、これに限定されない。上記間隔W2は、例えば1.0mm~10mmの範囲内で設定することができる。これにより、ここに開示される好ましい経時後非密着面積率Saと粘着力とがバランスよく両立される傾向が高まる。ここで、帯状部分の間隔W2とは、粘着面において隣りあう2つの帯状部分(線状に延びる部分)の間に存在する部分の幅を指す。上記間隔W2は、粘着力向上等の観点から、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2.5mm以上である。ここに開示される好ましい経時後非密着面積率Saを実現しやすくする観点から、上記間隔W2は、例えば8mm以下であってよく、5mm以下でもよく、3mm以下でもよい。第二ストライプ状パターン部を構成する帯状部分の間隔W2も、上記第一ストライプ状パターン部を構成する帯状部分の間隔W2として例示した範囲内から好ましく設定される。第一ストライプ状パターン部を構成する帯状部分の間隔W2と第二ストライプ状パターン部を構成する帯状部分の間隔W2とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。各ストライプ状パターン部を構成する帯状部分の間隔W2は、該ストライプ状パターン部の各部において、概ね等間隔であることが好ましい。
【0051】
第一ストライプ状パターン部242を構成する帯状部分250のピッチは、本実施形態では約2.0mmであり、第二ストライプ状パターン部244を構成する帯状部分250のピッチも同様であるが、これに限定されない。上記ピッチは、粘着力と気泡防止性とをバランスよく両立する観点から、1.0mm~20mmの範囲内とすることが好ましい。粘着力向上の観点から、上記ピッチは、例えば1.5mm以上であってよく、2mm以上でもよく、2.5mm以上でもよい。また、気泡防止性向上の観点から、上記ピッチは、例えば15mm以下であってよく、12mm以下でもよく、5mm以下でもよい。なお、上記ピッチは、上記帯状部分の幅方向の中心線間の距離(間隔)を指すものとする。
【0052】
第一ストライプ状パターン部242を構成する帯状部分250の厚さ(図6中のT)は、本実施形態では約2μmであり、第二ストライプ状パターン部44を構成する帯状部分250の厚さTも同様であるが、これに限定されない。コート層の厚さ(この実施形態では、コート層パターンを構成する帯状部分の厚さ)Tは、通常、0.1μm以上とすることが適当であり、0.2μm以上とすることが好ましい。これにより、経時に伴う粘着剤の流動等によりコート層の粘着剤層内への埋没が進行しすぎることを回避し、所定以上の経時後非密着面積率Saを確保しやすくなる。かかる観点から、コート層の厚さTは、例えば0.5μm以上であってよく、0.7μm以上でもよく、1.0μm以上でもよく、1.5μm以上でもよく、1.7μm以上でもよい。また、被着体に対する接着性や外観の観点から、コート層の厚さTは、通常、10μm以下であることが適当であり、例えば5μm以下であってよく、3μm以下でもよく、2.7μm以下でもよく、2.5μm以下でもよい。コート層の厚さTを小さくすることは、粘着シートの薄厚化の観点からも好ましい。
【0053】
粘着剤層の厚さTに対するコート層の厚さTの比、すなわちT/Tは、例えば0.05以上であってよく、0.10以上でもよく、0.15以上でもよく、0.20以上でもよい。T/Tが大きくなると、経時に伴う粘着剤の流動等によりコート層の粘着剤層内への埋没が進行しすぎることを回避し、所定以上の経時後非密着面積率Saを確保しやすくなる傾向にある。いくつかの態様において、T/Tは、0.30以上でもよく、0.40以上でもよい。また、被着体に対する接着性や外観の観点から、コート層の厚さTは、粘着剤層の厚さTと同程度か、粘着剤層の厚さTよりも薄いことが好ましい。かかる観点から、T/Tは、例えば、0.90以下であってよく、0.80以下でもよく、0.70以下でもよい。
【0054】
好ましい一態様では、コート層パターンを形成する上記帯状部分は、その厚さTに対する幅W1の比、すなわちW1/Tが、凡そ20以上である。アウトガスによる気泡発生をよりよく抑制する観点から、W1/Tは、例えば30以上であってよく、50以上でもよく、70以上でもよく、90以上でもよい。また、接着性と気泡防止性とのバランスの観点から、W1/Tは、通常、500以下であることが適当であり、例えば300以下であってよく、250以下でもよく、200以下でもよく、165以下でもよい。
【0055】
なお、上述したコート層および粘着剤層の各部のサイズ(例えば、コート層を構成する帯状部分の幅W1、間隔W2、コート層の厚さTおよび粘着剤層の厚さT)は、被着体への貼り付け前の粘着シートにおける各部のサイズをいうものとする。コート層を構成する帯状部分の幅W1や間隔W2は、粘着面を光学顕微鏡で観察することにより把握することができる。コート層の厚さTは、粘着剤層の断面をSEMまたはTEMで観察することにより把握することができる。複数の帯状部分が交差して配置されている形状の(例えば格子状の)コート層パターンにおいては、該帯状部分のうち交差部分以外の箇所についてコート層の厚さTを測定するものとする。また、粘着剤層の厚さTは、その表面にコート層が配置されていない部分について測定するものとする。
【0056】
ここに開示される粘着シートは、粘着面の全面積のうちコート層230で覆われた部分(コート層配置部)の面積の割合が50%以下であることが適当であり、40%以下であることが好ましい。これにより、被着体への貼付け時において良好な接着性を確保することができる。いつかの態様において、上記凹部パターンの面積の割合は、例えば35%以下であってよく、30%以下でもよい。また、ここに開示される好ましい経時後非密着面積率Saを実現しやすくする観点から、上記凹部パターンの面積の割合は、5%超であることが好ましく、7%超でもよく、10%超でもよく、12%超でもよく、15%超でもよく、17%超でもよい。
【0057】
粘着剤層表面にコート層を配置する方法は特に限定されないが、典型的には、次のような方法が採用される。具体的には、コート層形成用組成物を、必要に応じて適当な溶媒に溶解または分散する等して調製する。次いで、公知または慣用の各種の印刷処理方法のうち適当な方法を採用して、当該組成物を剥離性支持体(以下、「コート層転写用フィルム」ともいう。典型的には剥離ライナー)の剥離面に付与して硬化させる。そして、コート層が形成された剥離性支持体表面を粘着剤層表面に当接させてコート層を粘着剤層表面に転写する。このようにして、粘着剤層表面にコート層を部分的に配置することができる。例えば、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の方法を採用することにより、格子状パターン等の所望のコート層パターンを好ましく形成することができる。貼付け時の空気抜け性の観点から、グラビア印刷がより好ましい。あるいは、上記のようにしてコート層が形成された剥離面上に、該コート層を覆うように粘着剤層をさらに形成することによっても、上記と同様の構成が得られる。基材付き粘着シートの場合、形成された粘着剤層は、その後フィルム基材の表面に転写される。当業者であれば、上記のような方法を採用して、本技術分野における技術常識に基づき、剥離性支持体の剥離面に対する濡れ性を考慮してコート層材料を選択し、コート層形成用組成物の粘度を適切な範囲に調節し、さらに例えば適当な印刷手段を選択することによって、ここに開示されるコート層を形成することができる。
【0058】
(粘着シートの特性等)
ここに開示される粘着シートは、経時後非密着面積率Saが5%以上であり、かつ経時試験後の非密着部が線状に延びる部分を有するように構成された粘着面を有する。上記経時後非密着面積率Saは、粘着面をガラス板に圧着して50℃で24時間保持する経時試験後において上記粘着面の全面積のうち上記ガラス板に対する非密着部の合計面積の割合として求められる。経時後非密着面積率Saは、片面に粘着シートが貼り付けられたガラス板の反対側から(すなわち、ガラス板越しに)上記粘着シートを観察した顕微鏡像について画像解析(例えば、一般的な画像処理ソフトを用いた2値化処理)を行い、非密着部の面積割合を求めることにより把握することができる。上記粘着シートの観察には、例えば、キーエンス社製のデジタルマイクロスコープを用いることができる。後述する実施例においても同様の方法が採用される。
【0059】
経時後非密着面積率Saは、例えば、粘着面の構造や、粘着剤層の厚さT、粘着剤層を構成する粘着剤の組成等により調節することができる。ここで、上記粘着面の構造とは、例えば上述した第一実施形態のように粘着剤層表面に格子状の凹部パターンを有する態様では、該凹部パターンを構成する溝の幅W1、間隔W2,深さD、粘着面の平面視における上記溝の形状、粘着シートの幅方向の端部との交差角度等を包含する概念である。また、上記粘着剤層の組成とは、該粘着剤層に含まれるベースポリマーのモノマー組成(種類や使用量比)、架橋剤を使用してなる粘着剤層において該架橋剤の種類や使用量、粘着付与樹脂を含む粘着剤層において該粘着付与樹脂の種類や使用量、粘着剤層のゲル分率、等を包含する概念である。
【0060】
なお、上記経時後非密着面積率Saの測定にガラス板を用いるのは、該ガラス板は上記経時試験条件において実質的にアウトガスを発生しないことから、アウトガスの影響を除いて上記経時後非密着面積率Saを適切に評価し得るためである。また、上記経時試験条件は、粘着シートを室温より高い温度域に保持することにより、粘着剤の流動を促進し、非密着部の維持性を効率よく評価することを意図して設定されたものである。
【0061】
一般的な粘着シートは、平滑で均一に形成された粘着面を有するため、粘着シートを被着体に貼り付けるときに粘着シートと被着体との間に残った空気が閉じ込められて気泡を形成しやすい。このように平滑で均一な粘着面では、上記経時試験により粘着面と被着体との密着がさらに進行することにより、通常、経時後非密着面積率Saは3%未満、典型的には1%未満であり、アウトガスによる気泡の発生や成長の抑制には不向きである。
【0062】
また、粘着剤層表面に溝等の凹部が形成された粘着シートや、粘着剤層が部分的にコート層で覆われた構成の粘着シートでは、上記凹部やコート層を利用して粘着シートと被着体との間に空気等の通るパスを形成し、粘着シートと被着体との間に残ろうとする空気等を除去することにより、貼付け時の気泡発生を抑制し得る。しかし、粘着剤層を構成する粘着剤は上述のように粘弾性体であるため、経時や圧力等により流動(変形)する。このような粘着剤の流動は、上記凹部を縮小または消失させ、また上記コート層の粘着剤層内への埋没を進行させる要因となり得る。その結果、貼付け時において空気等の通るパスとして利用した構造が、経時後に発生するアウトガスのパスとしては機能しないかまたは機能不十分となることがあり得る。
【0063】
経時後非密着面積率Saが5%以上である粘着シートによると、経時試験後の非密着部を利用してアウトガスの逃げ道として効果的に機能させることができる。これにより、アウトガスによる気泡の発生や成長を好適に抑制することができる。アウトガスによる気泡発生をよりよく抑制する観点から、経時後非密着面積率Saは、7%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。より高い効果を得る観点から、いくつかの態様において、経時後非密着面積率Saは、例えば12%以上であってよく、15%以上でもよく、17%以上でもよい。経時後非密着面積率Saの上限は特に限定されない。被着体に対する接着性等の観点から、いくつかの態様において、経時後非密着面積率Saは、例えば35%以下であってよく、30%以下でもよく、25%以下でもよい。経時後非密着面積率Saが低いことは、粘着シートを介しての導電性や伝熱性を高める観点からも有利となり得る。
【0064】
ここに開示される粘着シートは、ガラス板に対する初期非密着面積率Siが5%超であることが好ましい。ここで、上記初期非密着面積率Siは、上記粘着面をガラス板に貼り付けて15分間のオートクレーブ処理(30℃、0.5MPa)により圧着した直後(すなわち、オートクレーブから取り出した直後)における上記粘着面の上記ガラス板に対する非密着部の合計面積の割合として定義される。初期非密着面積率Siは、上述した経時後非密着面積率Saと同様の方法で測定される。
上述のようにガラス板は上記経時試験条件において実質的にアウトガスを発生しないため、上記経時試験により粘着面のガラス板への密着は進行する。したがって、経時後非密着面積率Saを5%以上に維持するためには、初期非密着面積率Siが5%超であることが好ましい。より高い経時後非密着面積率Saを示す粘着シートを得る観点から、いくつかの態様において、初期非密着面積率Siは、例えば7%超であってよく、10%超でもよく、12%超でもよく、15%超でもよく、17%超でもよい。初期非密着面積率Siを高くすることは、貼付け時の気泡発生防止性向上の観点からも有利となり得る。また、初期非密着面積率Siは、通常、50%以下であることが適当であり、40%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましい。被着体に対する接着性等の観点から、いくつかの態様において、初期非密着面積率Siは、例えば32%以下であってよく、30%以下でもよく、28%以下でもよく、25%以下でもよい。初期非密着面積率Siは、例えば、粘着面の構造(例えば、粘着面全体に占める凹部パターンやコート層パターンの面積の割合)により調節することができる。
【0065】
被着体に対する初期接着性とアウトガスによる気泡発生防止性とを好適に両立する観点から、初期非密着面積率Siに対する経時後非密着面積率Saの比、すなわちSa/Siは、0.30以上であることが好ましい。Sa/Siの値がより大きいことは、経時による非密着部の縮小の程度がより少ないことを意味する。かかる観点から、いくつかの態様において、Sa/Siは、例えば0.50以上であってよく、0.60以上でもよく、0.70以上でもよく、0.75以上でもよい。Sa/Siは、一般に1.00未満であり、典型的には0.98以下である。
【0066】
ここに開示される粘着シートは、ポリカーボネート樹脂板(PC板)に対する経時後剥離強度F1が初期剥離強度F0の0.60倍以上であることが好ましい。すなわち、上記初期剥離強度F0に対する上記経時後剥離強度F1の比として定義される剥離強度維持率F1/F0が0.60以上であることが好ましい。
【0067】
ここで、剥離強度維持率F1/F0の算出に用いられる初期剥離強度F0は、粘着シートをPC板に貼り付けて30分後に引張速度300mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力を測定することにより求められる。また、経時後剥離強度F1は、粘着シートをPC板に貼り付けて85℃、85%RHの湿熱環境下に24時間保持し、次いで23℃、50%RHの標準環境下に30分間保持した後、上述した初期剥離強度F0と同様にして180°引き剥がし粘着力を測定することにより求められる。初期剥離強度F0および経時後剥離強度F1は、より詳しくは、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0068】
粘着シートが貼り付けられたPC板は、上記湿熱環境に保持されることによりアウトガスを発生する。このアウトガスは、PC板と粘着シートとの間に溜まって気泡を形成することにより上記PC板に対する剥離強度を低下させ、接着信頼性を損ない得る。ここに開示される粘着シートによると、上記アウトガスを適切に逃すことで該アウトガスに起因する気泡の発生を抑制し、これにより剥離強度維持率F1/F0を高めることができる。すなわち、被着体からアウトガスが発生しやすい使用態様においても、該被着体に対する剥離強度の低下を抑制することができる。ここに開示される粘着シートの剥離強度維持率F1/F0は、0.70以上であることが好ましく、0.75以上であることがより好ましい。いくつかの態様において、剥離強度維持率F1/F0は、例えば0.78以上であってよく、0.80以上でもよく、0.83以上でもよい。F1/F0の上限は特に制限されないが、通常は1.50以下であり、例えば1.20以下であり得る。
【0069】
初期剥離強度F0は特に限定されず、例えば1.0N/20mm~15N/20mmの範囲であり得る。いくつかの態様において、初期剥離強度F0は、例えば1.5N/20mm以上であってよく、2.0N/20mm以上でもよい。経時後剥離強度F1は特に限定されず、例えば1.0N/20mm~15N/20mmの範囲であり得る。いくつかの態様において、経時後剥離強度F1は、例えば1.5N/20mm以上であってよく、2.0N/20mm以上でもよい。好ましい一態様に係る粘着シートは、上記経時後剥離強度F1が1.5N/20mm以上であり、かつ剥離強度維持率F1/F0が0.60以上であり得る。より好ましい一態様に係る粘着シートは、上記経時後剥離強度F1が2.5N/20mm以上であり、かつ剥離強度維持率F1/F0が0.70以上であり得る。
【0070】
ここに開示される粘着シートは、上述のようにアウトガスに起因する気泡の発生を抑制し得るように構成されているため、対PC板初期非密着面積率S0に対する対PC板経時後非密着面積率S1の増加を抑制することができる。ここで、対PC板初期非密着面積率S0は、被着体としてガラス板に代えてPC板を用いる他は上記初期非密着面積率Siの測定と同様にして測定される。対PC板経時後非密着面積率S1は、被着体としてガラス板に代えてPC板を用いる点および経時試験条件を85℃、85%RHで24時間とする点を除いては、上記経時後非密着面積率Saの測定と同様にして測定される。PC板からのアウトガスに起因する気泡の発生および成長が進行すると、該PC板への貼付け当初に比べて、該PC板に粘着面が密着する面積の割合が低下する。すなわち、アウトガスに起因する気泡の発生および成長をよりよく抑制することにより、S1-S0の値はより小さくなる傾向にある。以下、S0およびS1をそれぞれパーセントで表した場合におけるS1-S0の値を「対PC板非密着面積率増加量」ともいう。ここに開示される技術によると、対PC板非密着面積率増加量が20%以下である粘着シートが提供され得る。好ましい一態様に係る粘着シートにおいて、上記対PC板非密着面積率増加量は、例えば15%以下であってよく、10%以下でもよく、5%以下でもよく、3%以下でもよく、0%または0%未満であってもよい。
【0071】
好ましい一態様では、粘着シートの粘着面のライナー剥離力(すなわち、剥離ライナーに対する剥離強度)は1N/50mm未満であり得る。ライナー剥離力が所定値以下に制限された粘着シートは、剥離ライナーの除去がしやすいため、貼り付け時の作業性に優れる。粘着剤層の表面に剥離ライナーの凸部パターンに対応する凹部パターンを有する態様の粘着シートでは、ライナー剥離力が高すぎないことは、上記粘着面を覆う剥離ライナーを該粘着面から除去する際に凹部パターンが変形することを抑制する観点からも好ましい。また、粘着剤層表面を部分的に覆うコート層を有する態様の粘着シートでは、ライナー剥離力が高すぎないことは、上記粘着面を覆う剥離ライナーを該粘着面から除去する際に上記コート層が縒れたりズレたりすることを抑制する観点からも好ましい。いくつかの態様において、ライナー剥離力は、例えば0.5N/50mm以下であってよく、0.4N/50mm以下であってもよい。また、上記ライナー剥離力が小さすぎると作業性が低下する場合があることを考慮して、粘着シートの粘着面のライナー剥離力は、凡そ0.01N/50mm以上であることが好ましい。上記ライナー剥離力は、23℃、50%RHの環境下にて、JIS Z0237に準じて、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で測定される。
【0072】
好ましい一態様では、粘着シートは透明(半透明を包含する。)である。このような粘着シートでは、該粘着シートと被着体との間に、貼付け時に混入(残留)した空気等による気泡や、貼付け後にアウトガスにより発生した気泡等が存在すると、当該気泡等が粘着シート越しに視認されて外観性が損なわれやすい。ここに開示される技術によると、粘着シートと被着体との間における気泡等の発生が防止されるので、透明な粘着シートにおいて優れた外観性が得られる。ここで、粘着シートが透明であることは、粘着シートの構成要素が透明であることを意味する。本明細書において、粘着シートやその構成要素が透明であるとは、粘着シートやその構成要素が50%以上の全光線透過率を示すことを意味し、具体的には80%以上(例えば90%以上、典型的には95%以上)の全光線透過率を示すものであり得る。また、粘着シートのヘイズ値は10%以下(例えば5%以下)であることが好ましい。上記全光線透過率およびヘイズ値は、JIS K7136:2000に準拠して、市販の透過率計(例えば、商品名「HAZEMETER HM-150」、村上色彩技術研究所社製)を使用して測定することができる。後述のフィルム基材の全光線透過率およびヘイズ値も同様の方法で測定される。
なお、上記粘着シートの構成要素には、粘着剤層、コート層を有する構成における該コート層、粘着剤層を支持する非剥離性基材を有する場合における該基材(片面粘着シートにおいて剥離ライナーを兼ねる基材であり得る。)等が含まれ得る。一方、粘着シートとは別体の剥離ライナーは、粘着シートの被着体への貼付け時には粘着シートから分離されるため、上記粘着シートの構成要素からは除かれる。
【0073】
ここに開示される粘着シートの総厚さは特に限定されない。取扱い性等の観点から、粘着シートの総厚さは、例えば凡そ2μm以上であってよく、5μm以上でもよく、10μm以上でもよく、20μm以上でもよい。また、粘着シートの総厚さは、例えば凡そ1000μm以下であってよく、500μm以下でもよく、300μm以下でもよく、100μm以下でもよい。好ましい一態様において、粘着シートの総厚さは、例えば70μm以下であってよく、50μm以下でもよく、40μm以下でもよく、35μm以下でもよい。ここに開示される技術によると、上記のように総厚さが制限された粘着シートであっても、アウトガスによる気泡発生を好適に防止することができ、好ましくはさらに貼付け時における良好な空気抜け性を示し得る。総厚さが制限された粘着シートは、該粘着シートが適用される製品の小型化、軽量化、省資源化等の点で有利なものとなり得る。
【0074】
ここに開示される粘着シートは、該粘着シートの粘着面内に描き得る最大の内接円の直径が凡そ3cm以上である態様で用いられる(すなわち、被着体に貼り付けられる)ことが好ましい。上記内接円の直径が大きくなるにつれて、被着体から発生したアウトガスによる気泡は生じやすくなる傾向にある。したがって、ここに開示される技術を適用してアウトガスによる気泡の発生を抑制することがより有意義となる。いくつかの態様において、上記内接円の直径は、例えば5cm以上であってよく、7cm以上でもよく、10cm以上でもよく、15cm以上でもよい。上記内接円の直径の上限は特に制限されない。上記内接円の直径は、例えば40cm以下であってよく、30cm以下でもよく、20cm以下でもよい。なお、例えば粘着面の形状が縦4cm、横5cmの矩形状である場合、上記内接円の直径は4cmである。
【0075】
(両面粘着シート)
上記第一、第二実施形態では、片面粘着シートを例として説明したが、ここに開示される粘着シートは、両面粘着シート、すなわち両面が粘着面となっている粘着シートの形態でも好適に実施され得る。かかる両面粘着シートは、例えば、基材(例えば、フィルム基材)の第一面上に配置された第一粘着剤層および該基材の第二面に配置された第二粘着剤層を有する基材付き両面粘着シートの形態や、基材を有しない粘着剤層からなる基材レス両面粘着シートの形態等であり得る。上記基材付き両面粘着シートの形態において、第一粘着剤層が配置された側の表面である第一粘着面と、第二粘着剤層が配置された側の表面である第二粘着面のうち、少なくとも一方は、アウトガスによる気泡の発生が防止された粘着面であることが好ましい。また、上記基材レス両面粘着シートの形態において、粘着剤層の一方の表面である第一粘着面と、該粘着剤層の他方の表面(上記第一粘着面とは反対側の面)である第二粘着面のうち、少なくとも一方は、アウトガスによる気泡の発生が防止された粘着面であることが好ましい。上記アウトガスによる気泡の発生が防止された粘着面とは、具体的には、ここに開示される処理の経時後非密着面積率Saを満たし、かつ経時試験後の非密着部が線状に延びる部分を有するように構成された粘着面であり得る。
【0076】
基材付き両面粘着シートの一形態例を図8に示す。この粘着シート300は、フィルム基材310の第一面310Aおよび第二面310B(いずれも非剥離性)に第一粘着剤層321および第二粘着剤層322がそれぞれ設けられ、それらの粘着剤層321,322が、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー301,302によってそれぞれ保護された構成を有するものであり得る。なお、この粘着シート300では、粘着剤層321の表面にのみ上述した第二実施形態と同様のコート層330が部分的に配置されており、粘着剤層322の表面にはコート層は設けられていないが、コート層330は粘着剤層321,322の各表面に部分的に設けられていてもよい。基材レスの両面粘着シートの形態においても同様に、コート層は、粘着剤層の一方の表面にのみ設けられていてもよく、一方の表面および他方の表面の両方に設けられていてもよい。また、特に図示しないが、両面粘着シートは、フィルム基材の各面(いずれも非剥離性)にそれぞれ粘着剤層が設けられ、それらのうち一方の粘着剤層が、両面が剥離面となっている剥離ライナーにより保護された構成を有していてもよい。この種の粘着シートは、該粘着シートを巻回して他方の粘着剤層を剥離ライナーの裏面に当接させることにより、2つの粘着剤層が1つの剥離ライナーによって保護された構成となる。
【0077】
このような両面粘着シートは、部材を接合または固定(以下、接合等という。)する用途に好ましく用いられ得る。かかる接合等の用途において、粘着面が貼り付けられる部材がアウトガスの発生しやすい材料(例えば、ポリカーボネート樹脂)により構成されている場合、該アウトガスが上記粘着面と上記部材表面との間に溜まると、該アウトガスに起因する気泡の形成および該気泡の成長が進むことにより、上記部材と粘着面との非密着部の面積の割合(非密着面積率)が次第に増大する。かかる非密着部面積率の増大は、上記両面粘着シートを介して接合または固定される部材間の接着信頼性を低下させる要因となり得る。ここに開示される両面粘着シートによると、上記アウトガスによる気泡の発生が防止された粘着面をアウトガスの発生しやすい部材に貼り付けることにより、上記非密着部面積率の増大を防ぐことができる。上記非密着部面積率の増大防止は、接着信頼性の維持のほか、両面粘着シートを介して接合または固定される部材間の導電性や伝熱性を安定して維持する(すなわち、これらの特性の変動を抑制する)観点からも有益である。
【0078】
<粘着シートの構成要素>
(粘着剤層)
ここに開示される粘着剤層は、典型的には、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料(粘着剤)から構成された層をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E(1Hz)<10dyne/cmを満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)であり得る。
【0079】
ここに開示される粘着剤層は、粘着剤の分野において公知のアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の1種または2種以上をベースポリマーとして含むものであり得る。粘着特性(例えば剥離強度や耐反撥性)や分子設計等の観点から、アクリル系ポリマーを好ましく採用し得る。換言すると、粘着剤層は、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むアクリル系粘着剤層であることが好ましい。なお、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるポリマー成分の主成分(典型的には、50重量%を超えて含まれる成分)をいう。
【0080】
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料におけるモノマー組成の50重量%超を占める成分をいう。
【0081】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好ましく使用することができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1~20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1-20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、RがC1-12(例えばC2-10、典型的にはC4-8)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。上記RがC1-20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n-ブチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。
【0082】
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。また、上記副モノマーの種類の選択や使用量の選択により、経時による粘着剤の流動(変形)の程度を調節し、経時後非密着面積率Saや非密着面積維持率Si/Saを調整することができる。
上記副モノマーとしては、例えばカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー等の官能基含有モノマーの1種または2種以上を使用することができる。副モノマーはまた、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、スチレン等の芳香族ビニル化合物、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー等であり得る。例えば、凝集力向上の観点から、上記副モノマーとしてカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが好ましい。カルボキシ基含有モノマーの好適例としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。水酸基含有モノマーの好適例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレートや4-ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。経時による粘着剤の流動の程度を調節するために有用な副モノマーの好適例として、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマーおよびビニルエステル系モノマーが挙げられる。
【0083】
上記副モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の0.5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは1重量%以上である。また、副モノマーの量は、全モノマー成分中の30重量%以下が適当であり、好ましくは10重量%以下、例えば5重量%以下である。アクリル系ポリマーにカルボキシ基含有モノマーが共重合されている場合、粘着力と凝集力との両立の観点から、カルボキシ基含有モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ0.1重量%以上であることが好ましく、0.2重量%以上でもよく、0.5重量%以上でもよく、また、凡そ10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下でもよく、5重量%以下でもよい。アクリル系ポリマーに水酸基含有モノマーが共重合されている場合、粘着力と凝集力との両立の観点から、水酸基含有モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ0.001重量%以上であることが好ましく、0.01重量%以上でもよく、は0.02重量%以上でもよく、また、凡そ10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下でもよく、2重量%以下でもよい。また、上記副モノマーとして酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーが共重合されている場合、上記ビニルエステル系モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ30重量%以下とすることが好ましく、例えば10重量%以下であってよく、7重量%以下でもよく、また、凡そ0.01重量%以上とすることが好ましく、0.1重量%以上でもよく、1重量%以上でもよく、3重量%以上でもよい。
【0084】
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。UV等を照射して行う活性エネルギー線照射重合を採用してもよい。例えば、適当な重合溶媒(トルエン、酢酸エチル、水等)中にモノマー混合物を溶解または分散させ、アゾ系重合開始剤や過酸化物系開始剤等の重合開始剤を用いて重合操作を行うことにより、所望のアクリル系ポリマーを得ることができる。
【0085】
ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)の重量平均分子量(Mw)は、粘着力と凝集力とをバランスよく両立する観点から、好ましくは10×10以上、より好ましくは20×10以上(例えば30×10以上)であり、また、好ましくは100×10以下、より好ましくは80×10以下(例えば60×10以下)である。なお、この明細書においてMwとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。
【0086】
ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)のガラス転移温度(Tg)は特に限定されない。ベースポリマーのTgは、通常、凡そ-80℃~-10℃の範囲であることが好ましく、凡そ-70℃~-20℃の範囲であってもよい。Tgの上昇により、経時による粘着剤の流動は抑制され、非密着面積維持率Si/Saは高くなる傾向にある、かかる観点から、いくつかの態様において、ベースポリマーのTgは、例えば-63℃以上であってよく、-58℃以上でもよく、-53℃以上でもよい。また、被着体に対する貼付け作業性等の観点から、いくつかの態様において、ベースポリマーのTgは、例えば-30℃以下であってよく、-40℃以下でもよく、-45℃以下でもよい。
【0087】
ここで、ベースポリマーのTgとは、該ポリマーを構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの重量分率(重量基準の共重合割合)に基づいてフォックス(Fox)の式から求められる値をいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。
【0088】
ここに開示される技術では、上記ホモポリマーのTgとして、具体的には以下の値を用
いるものとする。
2-エチルヘキシルアクリレート -70℃
n-ブチルアクリレート -55℃
酢酸ビニル 32℃
アクリル酸 106℃
2-ヒドロキシエチルアクリレート -15℃
4-ヒドロキシブチルアクリレート -40℃
【0089】
上記で例示した以外のホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。上記Polymer Handbookに複数の数値が記載されている場合はconventionalの値を採用する。上記Polymer Handbookに記載のないモノマーについては、モノマー製造企業のカタログ値を採用する。上記Polymer Handbookに記載がなく、モノマー製造企業のカタログ値も提供されていないモノマーのホモポリマーのTgとしては、特開2007-51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
【0090】
ここに開示される粘着剤層には、必要に応じて架橋剤が用いられ得る。架橋剤は、経時による粘着力の流動の程度の調節(典型的には抑制)に役立ち得る。架橋剤の例としては、公知のエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を挙げることができる。
【0091】
具体的には、イソシアネート系架橋剤の例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニル(メタ)ンジイソシアネート、水添ジフェニル(メタ)ンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニル(メタ)ントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、および、これらとトリメチロールプロパン等のポリオールとのアダクト体を挙げることができる。あるいは、1分子中に少なくとも1つ以上のイソシアネート基と、1つ以上の不飽和結合を有する化合物、具体的には、2-イソシアナートエチル(メタ)アクリレートなどもイソシアネート系架橋剤として使用することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0092】
エポキシ系架橋剤としては、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンおよび1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
これらの架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここに開示される技術における架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤が好ましく、イソシアネート系架橋剤が特に好ましい。ここに開示される技術は、架橋剤として少なくともイソシアネート系架橋剤を用いる態様で好ましく実施され得る。
【0094】
架橋剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば0.01重量部以上であってよく、0.05重量部以上でもよく、0.10重量部以上でもよく、0.50重量部以上でもよい。架橋剤の使用量の増大により、粘着剤の流動性は低下し、非密着面積維持率Si/Saは高くなる傾向にある。かかる観点から、ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量は、例えば0.70重量部以上であってもよく、1.0重量部以上でもよく、2.0重量部以上でもよい。粘着剤の流動性をよりよく抑制する観点から、いくつかの態様において、上記架橋剤の使用量は、例えば2.5重量超であってよく、3.0重量部超でもよく、3.5重量部超でもよく、4.5重量部超でもよく、5.0重量部超でもよく、5.5重量部超でもよく、6.5重量部超でもよい。また、粘着シートの貼付け作業性等の観点から、ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量は、通常、20重量部以下とすることが適当であり、15重量部以下としてもよく、10重量部以下としてもよい。
【0095】
ここに開示される粘着剤層は、粘着付与樹脂を含む組成であり得る。粘着付与樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0096】
ロジン系粘着付与樹脂の具体例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等。以下同じ。);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。上記ロジン誘導体の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物。例えば重合ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを採用する場合、ロジン系粘着付与樹脂を用いることが好ましい。いくつかの態様において、接着力等の粘着特性向上の観点から、上記ロジン系粘着付与樹脂のなかから、種類、特性(例えば軟化点)等の異なる2種または3種以上を組み合わせて用いることができる。
【0097】
テルペン系粘着付与樹脂の例としては、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体等のテルペン樹脂;これらのテルペン樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン樹脂;等が挙げられる。上記変性テルペン樹脂の例としては、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを採用する場合、テルペン系粘着付与樹脂としては、例えばテルペンフェノール樹脂を好ましく採用し得る。テルペン系粘着付与樹脂と他の粘着付与樹脂(例えば、ロジン系粘着付与樹脂)とを組み合わせて用いてもよい。
【0098】
炭化水素系粘着付与樹脂の例としては、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン-オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
【0099】
粘着付与樹脂の軟化点(軟化温度)は、経時による粘着剤の流動を抑制する観点から、凡そ80℃以上であることが好ましく、凡そ100℃以上であることがより好ましい。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、例えば180℃以下であってよく、凡そ160℃以下でもよく、凡そ140℃以下でもよい。なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K5902:2006およびJIS K2207:2006のいずれかに規定する軟化点試験方法(環球法)によって測定された値として定義される。
【0100】
粘着付与樹脂を使用する場合における使用量は特に制限されず、目的に応じて適宜設定することができる。例えば、粘着付与樹脂の使用量は、固形分基準で、ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)100重量部に対して、凡そ10重量部以上であってよく、凡そ20重量部以上でもよく、凡そ25重量部以上でもよい。また、粘着付与樹脂の使用量は、固形分基準で、ベースポリマー100重量部に対して、例えば凡そ100重量部以下であってよく、凡そ80重量部以下でもよく、凡そ60重量部以下でもよい。
【0101】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、レベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤(フィラー)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤を含有するものであり得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用すればよい。
【0102】
ここに開示される粘着剤層は、水系、溶剤型、ホットメルト型、活性エネルギー線硬化型等の粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。ここで、水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、典型的には、水分散型粘着剤組成物(粘着剤の少なくとも一部が水に分散した形態の組成物)等と称されるものが含まれる。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。環境負荷低減の観点からは水系粘着剤組成物が好ましく、粘着特性等の観点からは溶剤型粘着剤組成物が好ましく用いられる。
【0103】
ここに開示される粘着シートは、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、粘着剤層を支持する基材(支持基材。例えば後述のようなフィルム基材)を有する態様の粘着シートでは、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を好ましく採用することができる。あるいは、基材に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を採用することもできる。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。
【0104】
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、コンマコーター、ディップロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40~150℃程度とすることができ、通常は60~130℃程度とすることが好ましい。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、基材や粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行ってもよい。
【0105】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。粘着剤層の厚さは、例えば200μm以下であってよく、100μm以下でもよく、80μm以下でもよく、60μm以下でもよく、40μm以下でもよく、30μm以下でもよく、25μm以下でもよい。粘着剤層の厚さを制限することは、粘着シートの薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の点で有利となり得る。いくつかの態様において、粘着剤層の流動を抑制して非密着面積維持率Sa/Siを高める観点から、粘着剤層の厚さは、例えば20μm以下であってよく、15μm以下でもよく、10μm未満でもよく、7μm未満でもよく、5μm未満でもよい。粘着剤層の厚さを小さくすることにより、粘着シートが被着体に貼り付けられた状態における粘着剤層の流動が抑制される傾向にある。また、被着体に対する貼付け作業性や製造容易性の観点から、粘着剤層の厚さは、通常、凡そ0.5μm以上程度とすることが適当である。粘着剤層の厚さは、例えば1μm以上であってよく、2μm以上でもよく、3μm以上でもよく、5μm以上でもよく、7μm以上でもよい。ここに開示される技術が、基材の両面に粘着剤層を備える両面粘着シートの形態で実施される場合、各粘着剤層の厚さは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0106】
(コート層)
粘着剤層表面を部分的に覆うコート層を有する態様において、コート層は、該コート層に沿って粘着面の被着体への非密着部を構成し得るものであればよく、その限りにおいて特に制限はない。コート層構成材料の好適例としては樹脂材料が挙げられる。外観性の観点から、透明または半透明の樹脂材料から形成されたコート層が好ましい。
【0107】
コート層を構成し得る樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、尿素メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリシラザン系樹脂、フッ素系樹脂、フェノキシ樹脂、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル-ウレタン系樹脂、アクリル-スチレン系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、セルロース類、ポリアセタール等が挙げられる。これらの樹脂は、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂等の各種タイプの樹脂から選択される1種または2種以上の樹脂であり得る。
【0108】
ここに開示されるコート層は、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、滑剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、流動性調整剤(チクソトロピー剤、増粘剤等)、造膜助剤等の各種添加剤を、必要に応じて含んでよい。
【0109】
コート層は、典型的には非粘着性または弱粘着性である。このことによって、コート層が設けられた箇所において粘着面の被着体への密着を好適に抑制し得る。ここで、コート層が非粘着性または弱粘着性であるとは、コート層の180度剥離強度が3N/25mm未満(典型的には1N/25mm未満、粘着力が低すぎて測定不可能な場合を包含する。)であることをいう。コート層の180度剥離強度は、具体的には下記の方法で測定される。すなわち、粘着剤層表面の全面にコート層を配置した粘着シートを幅25mm、長さ100mmのサイズにカットした測定サンプルにつき、23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルのコート層表面をステンレス鋼板(SUS304BA板)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着し(接着しない場合には、この時点で非粘着性とみなされる。)、これを同環境下に30分間放置した後、万能引張圧縮試験機を使用して、JIS Z0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度(N/25mm)を測定する。
【0110】
典型的な一態様では、コート層表面の算術平均粗さは0.1μm以上であり得る。このように構成することで、粘着シートの粘着面が被着体に貼り合わされた状態において、上記コート層表面の凹凸により被着体との間に空隙が形成されて、コート層表面と被着体との間におけるガスの移動性がよくなる。このことによってアウトガスに起因する気泡の発生をよりよく防止し得る。コート層表面と被着体との間のガスにおける移動性がよいことは、粘着シートを被着体に貼り合わせる際の空気抜け性の向上にも有利に寄与し得る。コート層表面の算術平均粗さは、好ましくは0.2μm以上であり、例えば1.0μmよりも大きい。上記コート層表面の算術平均粗さの上限は特に制限されないが、通常は5.0μm以下程度とすることが適当である。
【0111】
粘着剤層表面にコート層を配置する方法は特に限定されないが、典型的には、次のような方法が採用される。具体的には、コート層形成用組成物を、必要に応じて適当な溶媒に溶解または分散する等して調製する。次いで、公知または慣用の各種の印刷処理方法のうち適当な方法を採用して、当該組成物を剥離性支持体(「コート層転写用フィルム」ともいう。典型的には剥離ライナー)の剥離面に付与して硬化させる。そして、コート層が形成された剥離性支持体表面を粘着剤層表面に当接させてコート層を粘着剤層表面に転写する。このようにして、粘着剤層表面にコート層を部分的に配置することができる。例えば、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の方法を採用することにより、格子状パターン等の所望のコート層パターンを好ましく形成することができる。空気抜け性の観点から、グラビア印刷がより好ましい。あるいは、上記のようにしてコート層が形成された剥離面上に、該コート層を覆うように粘着剤層をさらに形成することによっても、上記と同様の構成が得られる。基材付き粘着シートの場合、形成された粘着剤層は、その後フィルム基材の表面に転写される。当業者であれば、上記のような方法を採用して、本技術分野における技術常識に基づき、剥離性支持体の剥離面に対する濡れ性を考慮してコート層材料を選択し、コート層形成用組成物の粘度を適切な範囲に調節し、さらに例えば適当な印刷手段を選択することによって、ここに開示されるコート層を形成することができる。
【0112】
(基材)
ここに開示される粘着シートは、上記粘着剤層を支持(裏打ち)する基材を含み得る。このような構成の粘着シートは、上記基材(支持基材)の少なくとも一方の表面に粘着剤層が配置された基材付き粘着シートとして把握され得る。上記基材の粘着剤層配置側の面は非剥離性である。基材の一方の表面のみに粘着剤層が配置される構成の粘着シートにおいて、該基材の他方の表面は、剥離性であってもよく、非剥離性であってもよい。基材の材質は特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて適宜選択し得る。使用し得る基材の非限定的な例としては、ポリプロピレンやエチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィンを主成分とするポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを主成分とするポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルを主成分とするポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布;和紙、上質紙、クラフト紙、クレープ紙等の紙類;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等が挙げられる。これらを複合した構成の基材であってもよい。このような複合基材の例として、例えば、金属箔と上記プラスチックフィルムとが積層した構造の基材、ガラスクロス等の無機繊維で強化されたプラスチック基材等が挙げられる。
【0113】
ここに開示される粘着シートの基材としては、各種のフィルム基材を好ましく用いることができる。フィルム基材としては、例えば、樹脂フィルム、紙、布、ゴムフィルム、発泡体フィルム、金属箔、これらの複合体や積層体等を用いることができる。なかでも、貼り付け性や外観性の観点から、樹脂フィルム層を含むフィルム基材が好ましい。樹脂フィルム層を含むことは、寸法安定性、厚さ精度、加工性、引張強度等の観点からも有利である。樹脂フィルムの例としては、PE、PP、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂フィルム;PET、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム;塩化ビニル系樹脂フィルム;酢酸ビニル系樹脂フィルム;ポリイミド系樹脂フィルム;ポリアミド系樹脂フィルム;フッ素系樹脂フィルム;セロハン;等が挙げられる。好適例としては、PE、PP、PETから形成された樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムのなかでは、ポリエステルフィルムがより好ましく、そのなかでもPETフィルムがさらに好ましい。フィルム基材は、単層構造であってもよく、2層または3層以上の多層構造を有してもよい。
【0114】
好ましい一態様では、フィルム基材は、発泡体フィルムを備える基材(発泡体含有基材)である。これによって、粘着シートに衝撃吸収機能が付与される。ここで発泡体フィルムとは、気泡(気泡構造)を有する部分を備えたフィルム状構造体をいう。発泡体含有基材は、発泡体フィルムから構成された単層構造体であってもよく、2層以上の多層構造のうちの少なくとも1層が発泡体フィルム(発泡体層)で構成された多層構造体であってもよい。発泡体含有基材の構成例としては、発泡体フィルム(発泡体層)と非発泡体フィルム(非発泡体層)とが積層された複合基材が挙げられる。非発泡体フィルム(非発泡体層)とは、発泡体とするための意図的な処理(例えば気泡導入処理)を行っていないフィルム状構造体をいい、気泡構造を実質的に有しないフィルムをいう。非発泡体フィルムの典型例としては、発泡倍率が1.1倍未満(例えば1.05倍未満、典型的には1.01倍未満)の樹脂フィルム(例えばPET等のポリエステル系樹脂フィルム)が挙げられる。フィルム基材が2層以上の発泡体層を含む場合、それらの発泡体層の材質や構造は、同一であってもよく異なってもよい。また、発泡体フィルムが発泡体層を含む多層構造を有する場合、各層の間には層間密着性向上の観点から接着層が配置されていてもよい。
【0115】
上記発泡体フィルムの平均気泡径は特に限定されないが、通常は10μm以上であることが適当であり、好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。平均気泡径を10μm以上とすることにより、衝撃吸収性が向上する傾向がある。また上記平均気泡径は、通常は200μm以下であることが適当であり、好ましくは180μm以下であり、さらに好ましくは150μm以下である。平均気泡径を200μm以下とすることにより、取扱い性や防水性(止水性)が向上する傾向がある。発泡体フィルムの平均気泡径(μm)は、市販の低真空走査電子顕微鏡を用いて、発泡体断面の拡大画像を取り込み、画像解析することにより求めることができる。解析する気泡数は10~20個程度とすればよい。低真空走査電子顕微鏡としては、例えば、日立ハイテクサイエンスシステムズ社製の商品名「S-3400N型走査電子顕微鏡」を用いることができる。
【0116】
上記発泡体フィルムの密度(見掛け密度)は、特に限定されないが、通常は0.01g/cm以上とすることが適当であり、好ましくは0.01g/cm以上、さらに好ましくは0.02g/cm以上である。密度を0.01g/cm以上とすることにより、発泡体フィルムの強度(ひいては粘着シートの強度)が向上し、耐衝撃性や取扱性が向上する傾向にある。また上記密度は、好ましくは0.7g/cm以下、さらに好ましくは0.5g/cm以下である。密度を0.7g/cm以下とすることにより、柔軟性が低下しすぎず、段差追従性が向上する傾向にある。発泡体フィルムの密度(見掛け密度)は、JIS K7222:1999に記載の方法に準拠して測定される。具体的には、発泡体フィルムを100mm×100mmのサイズに打抜いて試料を作製し、当該試料の寸法を測定する。また、測定端子の直径が20mmである1/100ダイヤルゲージを用いて試料の厚さを測定する。これらの値から発泡体フィルム試料の体積を算出する。また、上記試料の重量を最小目盛り0.01g以上の上皿天秤にて測定する。これらの値から発泡体フィルムの見掛け密度(g/cm)を求めることができる。
【0117】
上記発泡体フィルムの50%圧縮荷重は特に限定されない。耐衝撃性の観点からは、発泡体フィルムは0.1N/cm以上の50%圧縮荷重を示すことが適当である。50%圧縮荷重が所定値以上であることにより、例えば発泡体フィルムが薄厚(例えば100μm程度の厚さ)の場合にも、圧縮された際に十分な抵抗(圧縮された際に押し戻そうとする力)を示し、良好な耐衝撃性を保つことができる。上記50%圧縮荷重は、好ましくは0.2N/cm以上であり、より好ましくは0.5N/cm以上である。また、柔軟性と耐衝撃性とをバランスよく両立する観点から、上記50%圧縮荷重は、8N/cm以下であることが適当であり、好ましくは6N/cm以下であり、より好ましくは3N/cm以下である。発泡体フィルムの50%圧縮荷重(硬さ)は、JIS K6767:1999に準拠して測定される。具体的には、発泡体フィルムを100mm×100mmに切り抜き、総厚さが2mm以上になるように積層し、これを測定サンプルとする。室温条件にて、圧縮試験機を用いて上記測定サンプルに対して10mm/分の速度で圧縮を行い、圧縮率が50%に達したところ(初期厚さに対して厚さが50%まで圧縮された時点)で、10秒保持した後の値(反発応力:N/cm)を50%圧縮荷重として記録する。その他の条件(例えば治具や計算方法等)については、JIS K6767:1999に準じればよい。
【0118】
ここに開示される発泡フィルムを構成する発泡体の気泡構造は特に制限されない。気泡構造としては、連続気泡構造、独立気泡構造、半連続半独立気泡構造のいずれであってもよい。衝撃吸収性の観点からは、連続気泡構造、半連続半独立気泡構造が好ましい。
【0119】
発泡体フィルムの材質は特に制限されない。発泡体フィルムは、典型的にはポリマー成分(例えば熱可塑性ポリマー)を含む材料から形成され得る。通常は、プラスチック材料の発泡体(プラスチック発泡体)により形成された発泡体フィルムが好ましい。プラスチック発泡体を形成するためのプラスチック材料(ゴム材料を包含する意味である。)は、特に制限されず、公知のプラスチック材料のなかから適宜選択することができる。プラスチック材料(典型的には熱可塑性ポリマー)は1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、フィルム基材や発泡体フィルムに含まれるポリマー成分の主成分(典型的には、50重量%を超えて含まれる成分)を、以下「ベースポリマー」ということがある。
【0120】
発泡体の具体例としては、PE製発泡体、PP製発泡体等のポリオレフィン製樹脂発泡体;PET製発泡体、ポリエチレンナフタレート製発泡体、ポリブチレンテレフタレート製発泡体等のポリエステル系樹脂製発泡体;ポリ塩化ビニル製発泡体等のポリ塩化ビニル系樹脂製発泡体;酢酸ビニル系樹脂製発泡体;アクリル系樹脂製発泡体;ポリフェニレンスルフィド樹脂製発泡体;ポリアミド(ナイロン)樹脂製発泡体、全芳香族ポリアミド(アラミド)樹脂製発泡体等のアミド系樹脂製発泡体;ポリイミド系樹脂製発泡体;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製発泡体;ポリスチレン製発泡体等のスチレン系樹脂製発泡体;ポリウレタン樹脂製発泡体等のウレタン系樹脂製発泡体;等が挙げられる。また、発泡体として、ポリクロロプレンゴム製発泡体等のゴム系樹脂製発泡体を用いてもよい。
【0121】
好ましい一態様では、発泡体としてアクリル系樹脂発泡体(アクリル系樹脂製発泡体)が用いられる。ここでアクリル系樹脂発泡体とは、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む発泡体のことをいう。本明細書におけるアクリル系ポリマーの定義は前述のとおりである。アクリル系ポリマーを構成するアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数1~20(好ましくは1~8、典型的には1~4)の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上が好ましく用いられる。アルキル(メタ)アクリレートの好適例としては、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。主モノマーとしてのアルキル(メタ)アクリレートの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の70重量%以上とすることが適当であり、好ましくは75重量%以上(例えば80重量%以上)である。また、上記アルキル(メタ)アクリレートの量は、全モノマー成分中の98重量%以下が適当であり、好ましくは97重量%以下(例えば96重量%以下)である。
【0122】
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。副モノマーとして、例えばカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー等の官能基含有モノマーの1種または2種以上を使用することができる。副モノマーはまた、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、スチレン等の芳香族ビニル化合物、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー等であり得る。上記副モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の0.5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは1重量%以上である。また、副モノマーの量は、全モノマー成分中の30重量%以下が適当であり、好ましくは10重量%以下である。
【0123】
エマルション型の樹脂組成物を使用し、撹拌など機械的に空気等の気体を混入させる発泡方法を採用して発泡体を形成する場合には、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分に、副モノマーとして窒素原子含有モノマーが含まれていることが好ましい。これにより、発泡時には気泡が発生しやすく、また、発泡体形成時(典型的には、上記樹脂組成物の乾燥時)には、上記組成物の粘度が上昇して発泡体内に気泡が保持されやすいという作用が発揮され得る。
【0124】
上記窒素原子含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;N-ビニル-2-ピロリドン等のラクタム環含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有モノマー;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、アクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー、N-ビニル-2-ピロリドン等のラクタム環含有モノマーが好ましい。
【0125】
上記窒素原子含有モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の2重量%以上とすることが適当であり、好ましくは3重量%以上(例えば4重量%以上)である。また、上記窒素原子含有モノマーの量は、全モノマー成分中の30重量%以下が適当であり、好ましくは25重量%以下(例えば20重量%以下)である。
【0126】
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、塊状重合法、懸濁重合法、活性エネルギー線重合法(例えばUV重合法)等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、適当な重合溶媒(トルエン、酢酸エチル、水等)中にモノマー混合物を溶解または分散させ、アゾ系重合開始剤や過酸化物系開始剤等の重合開始剤を用いて重合操作を行うことにより、所望のアクリル系ポリマーを得ることができる。起泡性や環境面から、エマルション重合法により得られたアクリル系樹脂発泡体(エマルション型アクリル系樹脂発泡体)が好ましく用いられる。
【0127】
アクリル系樹脂発泡体形成用組成物は、凝集力を高める観点から架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤の種類は特に制限されず、各種架橋剤の1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。架橋剤の好適例としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、金属酸化物系架橋剤が挙げられる。なかでも、オキサゾリン系架橋剤が好ましい。架橋剤の使用量は特に制限されず、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ10重量部以下(好ましくは凡そ5重量部以下)とすることが適当であり、また、例えば凡そ0.005重量部以上(好ましくは凡そ0.01重量部以上)であり得る。
【0128】
他の好ましい一態様では、発泡体としてポリオレフィン系樹脂発泡体(ポリオレフィン製樹脂発泡体)が用いられる。上記ポリオレフィン系発泡体を構成するプラスチック材料としては、公知または慣用の各種のポリオレフィン系樹脂を特に限定なく用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。このようなポリオレフィン系樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0129】
ここに開示される技術における発泡体フィルムの好適例としては、耐衝撃性や防水性等の観点から、ポリエチレン系樹脂の発泡体から実質的に構成されるポリエチレン系発泡体フィルム、ポリプロピレン系樹脂の発泡体から実質的に構成されるポリプロピレン系発泡体フィルム等が挙げられる。ここで、ポリエチレン系樹脂とは、エチレンを主モノマー(すなわち、モノマーのなかの主成分)とする樹脂を指し、HDPE、LDPE、LLDPE等のほか、エチレンの共重合割合が50重量%を超えるエチレン-プロピレン共重合体やエチレン-酢酸ビニル共重合体等を包含し得る。同様に、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンを主モノマーとする樹脂を指す。ここに開示される技術における発泡体フィルムとしては、ポリプロピレン系発泡体フィルムを好ましく採用し得る。
【0130】
発泡体フィルムの発泡方法は、特に限定されず、目的や操作性等に応じて化学的手法、物理的手法等の手法を単独でまたは組み合わせて採用することができる。汚染性等の観点から物理的発泡法が好ましい。具体的には、炭化水素等の低沸点化合物や熱膨張微小球等の発泡剤をフィルム形成材料中に含有させておき、当該発泡剤から気泡を形成する発泡方法、機械的に空気等の気体を混入させる発泡方法、水等の溶媒の除去を利用した溶媒除去発泡法、超臨界流体を利用した発泡法等が挙げられる。また例えば、発泡体フィルム形成用ポリマー中に加圧条件下で不活性ガス(例えば二酸化酸素)を注入し、それを減圧することで発泡体フィルムを形成する方法も好ましく採用され得る。この方法によると、平均気泡径を所定以下に制限しやすく、かつ発泡体フィルムを低密度化しやすい。
【0131】
上記のような発泡方法を採用することにより、発泡体フィルムは作製される。発泡体フィルムの形成は、特に制限されず、例えば、機械的に空気等の気体を混入させる発泡方法を採用する場合には、その後、気泡を含む樹脂組成物(例えばエマルション型樹脂組成物)を基材または剥離紙等の上に塗布し、乾燥させることにより発泡体フィルムを得ることができる。乾燥は、気泡安定性等の観点から、50℃以上125℃未満の予備乾燥工程と、125℃~200℃の本乾燥工程を含むことが好ましい。あるいは、カレンダや押出機、コンベアベルトキャスティング等を用いて連続的にフィルム状の発泡体を形成してもよく、発泡体形成材料の混練物をバッチ方式で発泡成形する方法を採用してもよい。発泡体フィルムの形成にあたっては、表層部分をスライス加工により除去し、所望の厚さ、発泡特性となるよう調整してもよい。
【0132】
上記発泡体フィルムに含まれ得る熱可塑性ポリマー(例えばポリオレフィン系ポリマー)には、常温ではゴムとしての性質を示し、高温では熱可塑性を示す熱可塑性エラストマーが含まれ得る。柔軟性や追従性の観点から、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチレン等のオレフィン系エラストマー;スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体等のスチレン系エラストマー;熱可塑性ポリエステル系エラストマー;熱可塑性ポリウレタン系エラストマー;熱可塑性アクリル系エラストマー;等の熱可塑性エラストマーのうち1種または2種以上を用いることができ、そのなかでも、ガラス転移温度が室温以下(例えば20℃以下)である熱可塑性エラストマーが好ましく用いられる。上記発泡体フィルムにおける熱可塑性エラストマーの含有割合は、発泡体フィルム中の熱可塑性ポリマーの凡そ10重量%以上(例えば20重量%以上)程度とすることが好ましく、また90重量%以下(例えば80重量%以下)程度とすることが好ましい。
【0133】
気泡形成ガスの混入性や気泡の安定性の観点から、発泡体フィルム形成材料(例えばエマルション型アクリル系樹脂組成物)には、起泡剤として、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の各種界面活性剤を用いることができる。炭化水素系やフッ素系の界面活性剤を用いてもよい。なかでも、気泡径の微細化や気泡安定性の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましく、ステアリン酸アンモニウム等の脂肪酸アンモニウム(典型的には高級脂肪酸アンモニウム)系界面活性剤がより好ましい。上記界面活性剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記界面活性剤の含有量は、発泡体フィルムのベースポリマー100重量部に対して、0.1重量部以上(例えば0.5重量部以上)程度とすることが好ましく、また10重量部以下(例えば8重量部以下)程度とすることが好ましい。なお、本明細書における起泡剤には、起泡作用を示す剤だけでなく、気泡径を微細化する気泡径調整剤や、整泡剤等の気泡安定剤が含まれるものとする。
【0134】
発泡体フィルム形成材料が水性分散液(例えばアクリルエマルション)の場合には、上記起泡剤としてシリコーン系化合物を使用することが好ましい。これにより、圧縮後の厚さ回復性(回復の程度や速度)が向上する傾向がある。シリコーン系化合物としては、シロキサン結合が2000以下のシリコーン系化合物が好ましい。シリコーン系化合物として、例えば、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンレジン等が挙げられる。なかでも、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルが好ましい。シリコーン系化合物として、シリコーン変性ポリマー(例えば、シリコーン変性アクリル系ポリマー、シリコーン変性ウレタン系ポリマー等)を用いてもよい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。シリコーン系化合物の含有量は、発泡体フィルムのベースポリマー100重量部に対して、0.01重量部以上(例えば0.05重量部以上、典型的には0.1重量部以上)程度とすることが好ましく、また5重量部以下(例えば4重量部以下、典型的には3重量部以下)程度とすることが好ましい。
【0135】
また、気泡安定性、成膜性向上の観点から、発泡体フィルム形成材料(例えばエマルション型アクリル系樹脂組成物)は、増粘剤を含んでもよい。増粘剤としては、特に制限されず、例えばアクリル酸系増粘剤、ウレタン系増粘剤、ポリビニルアルコール系増粘剤等が挙げられる。なかでも、ポリアクリル酸系増粘剤、ウレタン系増粘剤が好ましい。増粘剤の含有量は、発泡体フィルムのベースポリマー100重量部に対して、0.1~10重量部(例えば0.1~5重量部)程度とすることが好ましい。
【0136】
上記フィルム基材として発泡体含有基材を用いる場合には、発泡体フィルムは、例えば、金属水酸化物(例えば水酸化マグネシウム)等の気泡核剤を含むことが好ましい。これによって、発泡体フィルム中の平均気泡径の調整が容易となり、所望の衝撃吸収性や柔軟性等が得られやすくなる傾向がある。気泡核剤は、金属酸化物、複合酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩等であってもよい。気泡核剤の含有量は、発泡体フィルムのベースポリマー100重量部に対して、0.5重量部以上(例えば1重量部以上)程度とすることが好ましく、また125重量部以下(例えば120重量部以下)程度とすることが好ましい。
【0137】
上記フィルム基材として発泡体含有基材を用いる場合には、発泡体フィルムは、気泡形成時における発泡体からのガス成分の透過を抑制する観点から、脂肪酸アミド等のガス透過抑制剤を含むことが好ましい。脂肪酸アミドは、ビスアミド構造を有するものがより好ましい。ガス透過抑制剤は、脂肪酸金属塩であってもよい。ガス透過抑制剤の含有量は、発泡体フィルムのベースポリマー100重量部に対して0.5重量部以上(例えば0.7重量部以上、典型的には1重量部以上)程度とすることが好ましく、また10重量部以下(例えば8重量部以下、典型的には6重量部以下)程度とすることが好ましい。
【0138】
上記フィルム基材(例えば発泡体フィルム)は、フィルム形成材料に所望の流動性を持たせ柔軟性等の特性を改善する目的で軟化剤を含んでもよい。また、発泡体フィルムに軟化剤を含ませることにより、フィルム延伸性や発泡倍率等の特性が好ましく調節され得る。例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系軟化剤や、ステアリン酸モノグリセリド等のエステル系軟化剤、脂肪酸系軟化剤の1種または2種以上を好ましく使用することができる。軟化剤の含有量は、フィルム基材(例えば発泡体フィルム)のベースポリマー100重量部に対して0.5重量部以上(例えば0.8重量部以上、典型的には1重量部以上)程度とすることが好ましく、また50重量部以下(例えば40重量部以下、典型的には30重量部以下)程度とすることが好ましい。
【0139】
また、エマルション型アクリル系樹脂発泡体を使用する場合、発泡体フィルムに隣接する金属部材の腐食防止のため、任意の防錆剤を含んでいてもよい。防錆剤として、アゾール環含有化合物が好ましい。アゾール環含有化合物を用いることにより、金属腐食防止性と被着体への密着性とを高いレベルで両立することができる。なかでも、アゾール環がベンゼン環等の芳香環と縮合環を形成している化合物が好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物が特に好ましい。防錆剤の含有量は、発泡体フィルムのベースポリマー100重量部に対して、0.2重量部以上(例えば0.3重量部以上)程度とすることが好ましく、また5重量部以下(例えば2重量部以下)程度とすることが好ましい。
【0140】
好ましい一態様では、フィルム基材は透明(半透明を包含する。)である。このようなフィルム基材を備える粘着シートでは、該粘着シートの貼付け時に混入した気泡や貼付け後のアウトガス等により生じた気泡等が外部から視認されて外観性が損なわれやすい。ここに開示される技術によると、粘着シートと被着体との間における気泡の混入や発生が防止されるので、透明基材を備える構成において優れた外観性が得られる。具体的には、上記フィルム基材は80%以上(例えば90%以上、典型的には95%以上)の全光線透過率を示すものであり得る。また、フィルム基材のヘイズ値は10%以下(例えば5%以下)であることが好ましい。
【0141】
上記フィルム基材(例えば樹脂フィルム)は、所望の意匠性や光学特性を付与するために、各種着色剤(例えば顔料)を含ませて黒色、白色その他の色に着色されていてもよい。黒色系着色剤としてはカーボンブラックが好ましい。また、フィルム基材の少なくとも一方の表面(片面または両面)に印刷等により1層または2層以上の着色層(例えば黒色層や白色層)を積層する方法を採用してもよい。
【0142】
ここに開示される粘着シートの基材(例えば、樹脂フィルム基材や発泡体フィルム基材等のようなフィルム基材)には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等;フィラーともいう。)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤等の各種添加剤がさらに配合されていてもよい。
【0143】
粘着シートが片面粘着シートである場合、フィルム基材の表面のうち、粘着剤層が設けられる面とは反対側の表面(背面)は、平滑に形成されていることが好ましい。上記の平滑表面は粘着シートの外面となり得るため、当該平滑表面を有する粘着シートを例えば装飾シートや表面保護シートとして使用する場合には、より良好な外観性(意匠性)を与え得る。好ましい一態様では、粘着特性、外観性(意匠性)の観点から、フィルム基材の背面における算術平均粗さは1μm以下(例えば凡そ0.75μm以下、典型的には凡そ0.5μm以下)であり、また例えば凡そ0.05μm以上(典型的には凡そ0.1μm以上)であり得る。
【0144】
片面粘着シートを巻回して、フィルム基材の背面に粘着剤層の表面を当接させる場合には、該フィルム基材の背面(粘着剤層が設けられる面とは反対側の面)に、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系等の剥離処理剤による剥離処理が施されていてもよい。剥離処理を施すことにより、粘着シートをロール状に巻回した巻回体の巻き戻しを容易にする等の効果が得られる。
一方、上記フィルム基材の粘着剤層側表面には、基材と粘着剤層との密着性を高めること等を目的として、コロナ放電処理、下塗り剤の塗布等の従来公知の表面処理が施されていてもよい。粘着シートが基材付き両面粘着シートである場合、上記基材と粘着剤層との密着性を高める表面処理は、基材の両面に施されてもよい。
【0145】
フィルム基材の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。一般的には、上記厚さは、通常は1μm以上(例えば2μm以上程度)とすることが適当であり、5μm以上(例えば10μm以上、典型的には15μm以上)程度とすることが好ましい。また上記厚さは、例えば500μm以下程度とすることが適当であり、200μm以下(典型的には100μm以下)程度とすることが好ましい。好ましい一態様では、フィルム基材の厚さは、凡そ30μm以下であり、より好ましくは12μm以下であり、さらに好ましくは10μm未満(例えば5μm未満、典型的には3μm未満)である。フィルム基材の厚さを制限することは、粘着シートの薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の点で有利である。
【0146】
フィルム基材が発泡体フィルムを含む場合、発泡体含有基材(例えば発泡体フィルム基材)の厚さは、粘着シートの強度や柔軟性、使用目的等に応じて適宜設定することができる。衝撃吸収性等の観点からは、発泡体含有基材の厚さを30μm以上とすることが適当であり、好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上(例えば80μm以上)である。粘着シートの薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の観点から、通常は、発泡体含有基材の厚さを1mm以下とすることが適当である。ここに開示される発泡体フィルムを使用することにより、上記厚さが350μm以下(より好ましくは250μm以下、例えば180μm以下)程度でも、優れた衝撃吸収機能を発揮することができる。なお、発泡体含有基材における発泡体フィルム(発泡体層であり得る。)の厚さも、上述の発泡体含有基材の厚さとして例示した範囲から好ましく選定され得る。
【0147】
(フィラー)
いくつかの態様において、ここに開示される粘着シートの基材としては、熱伝導性および導電性の少なくとも一方の機能を有するフィラーを含む基材を好ましく採用し得る。以下、熱伝導性および導電性の少なくとも一方を指す意味で、「熱伝導性/導電性」という用語を用いることがある。熱伝導性/導電性フィラーを含有する基材を用いることにより、粘着シートの熱伝導性/導電性を改善し得る。ここに開示される粘着シートは、被着体からアウトガスが発生し得る態様で使用されても該アウトガスによる気泡の発生や成長が生じにくい。したがって、上記気泡の発生および成長により粘着シートと被着体との密着面積が減少して両者間の熱伝導性/導電性が低下する事象を抑制し、該熱伝導性/導電性の変動を抑制することができる。上記粘着シートが両面粘着シートである態様では、該粘着シートを介して接合または固定される部材間の熱伝導性/導電性の変動を抑制することができる。
【0148】
熱伝導性フィラーとしては、粘着シートの熱伝導性を向上させ得るものを特に制限なく用いることができる。例えば、粒子状や繊維状のフィラーを用いることができる。フィラー(典型的には粒子状フィラー)の構成材料は、例えば、銅、銀、金、白金、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス等の金属;酸化アルミニウム、酸化ケイ素(二酸化ケイ素)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化銅、酸化ニッケル等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、珪酸、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化バリウム、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ドウソナイト、硼砂、ホウ酸亜鉛等の金属水酸化物および水和金属化合物;炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素、炭化カルシウム等の炭化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ガリウム等の窒化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等のチタン酸塩;カーボンブラック、カーボンチューブ(カーボンナノチューブ)、カーボンファイバー、ダイヤモンド等の炭素系物質;ガラス;等の無機材料;等であり得る。あるいは、火山シラス、クレイ、砂等の天然原料粒子を用いてもよい。繊維状フィラーとしては、各種合成繊維材料や天然繊維材料を使用することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。母材への分散性等の観点から、粒子状のフィラーを好ましく採用し得る。なかでも無機材料(例えば、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物や水和金属化合物)から構成された粒子状フィラーの使用が好ましい。
【0149】
導電性フィラーとしては、粘着シートの導電性を向上させ得るものを特に制限なく用いることができる。例えば、上述した熱伝導性フィラーのうち導電性を有する材料、例えば金属や炭素系物質を、導電性フィラーとして用いることができる。なかでも、銅、銀、金、白金、ニッケル、アルミニウム等の高導電性金属からなる導電性フィラーが好ましい。また、粒子状の導電性フィラーを好ましく使用し得る。
【0150】
このような熱伝導性/導電性フィラー(以下、単に「フィラー」と表記することもある。)の平均粒径は、取扱い性や分散性等の観点から、例えば0.5μm以上であってよく、1μm以上でもよく、3μm以上でもよく、5μm以上でもよい。また、フィラーを含む基材の表面平滑性等の観点から、フィラーの平均粒径は、通常は100μm以下であることが適当であり、例えば50μm以下であってよく、30μm以下でもよく、20μm以下でもよい。
基材全体におけるフィラーの配合量は、熱伝導性向上の観点から、重量基準で、例えば5重量%以上とすることができ、10重量%以上としてもよく、20重量%以上としてもよく、30重量%以上としてもよい。また、基材の強度や表面平滑性の観点から、基材全体におけるフィラーの配合量は、例えば60重量%以下であってよく、50重量%以下でもよく、40重量%以下でもよい。
【0151】
なお、このようにフィラーを含有する基材を備える構成の粘着シートにおいて、該粘着シートの粘着剤層は、フィラーを含んでいなくてもよく、フィラーを含んでいてもよい。あるいは、ここに開示される粘着シートは、上述したいずれかのフィラーを含む粘着剤層がフィラーを含まない基材の表面上に配置された構成であってもよく、上述したいずれかのフィラーを含む粘着剤層からなる基材レスの粘着シートであってもよい。粘着剤層がフィラーを含む場合、該フィラーとしては、基材に使用し得るものとして上記で例示したフィラーと同様のものから選択することができ、その材質、形状、平均粒径、配合量等についても基材におけるフィラーと同様の範囲から選択することができる。
【0152】
<剥離ライナー>
剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。ここに開示される剥離ライナーの好適例として、PET等のポリエステル製フィルムの少なくとも一方の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、片面または両面にプラスチックフィルム(例えばPE樹脂)がラミネートされた紙(例えば上質紙)が挙げられる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。
【0153】
粘着面(典型的には、粘着剤層の表面)に凹部パターンを有する形態の粘着シートにおいて、該粘着シートの作製または使用前の表面保護に用いられる剥離ライナーは、例えば図3に示す剥離ライナー100のように、粘着剤層の凹部パターンに対応する凸部パターン60が形成された剥離面を有する剥離ライナーであり得る。このような表面形状を有する剥離ライナーを得る方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を適宜採用することができる。例えば、目的とする表面形状を凹凸反転した形状のエンボスロールを用いて、あらかじめ成形されたフィルム基材(樹脂フィルム、)をエンボス加工することで凹部を形成する方法や、溶融状態の樹脂フィルム材料を上記エンボスロールに接触させて冷却することでフィルム基材の成形と凹部の形成とを同時に行う方法等を採用し得る。他の方法として、あらかじめ成形されたフィルム基材の表面に、所望の凹凸形状が得られるように(例えば、中間部に対応するパターンおよび凹部の深さDに対応する厚さで)、印刷インクや硬化性樹脂組成物等の適切な材料を付与する方法が挙げられる。これらの方法は、一種を単独でまたは二種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0154】
また、粘着剤層の表面がコート層で部分的に覆われた形態の粘着シートにおいて、該粘着シートは、例えば図7に示すように、剥離面420Aを有する剥離性支持体420を備えるコート層付きの剥離ライナー410を用いて作製することができる。剥離性支持体420は、ライナー基材の少なくとも一方の表面に剥離処理層を有するものであってもよく、低接着性材料からなる支持体であってもよい。この剥離性支持体420の剥離面420A上に、粘着剤層に転写可能なコート層230が設けられる。つまり、コート層230は、粘着剤の粘着力等によって剥離面420Aから分離可能な状態で剥離面420A上に配置されている。このような、転写可能なコート層230を表面に有する剥離ライナー410を用いることにより、ここに開示される粘着シートが好ましく作製される。剥離性支持体の剥離面上に設けられるコート層の構成(形状、配置状態、配置関係、サイズ、パターン等)は、上述した粘着シートの接着面におけるコート層の構成と基本的に同じであるので、説明は省略する。なお、ライナー基材の両面に剥離処理層を有する場合、剥離作業性等の観点から、例えばコート層を形成する予定の剥離面の剥離力を反対側の剥離面よりも低く設定するなど、各剥離面の剥離力を異ならせてもよい。上記剥離力は、前述のライナー剥離力と同様の方法で測定される。
【0155】
このように粘着剤層に転写可能なコート層を有する剥離ライナー(剥離フィルム)のいくつかの態様において、該剥離ライナーの剥離面(コート層形成面)の算術平均粗さは、例えば0.1μm以上であり得る。剥離ライナー剥離面の算術平均粗さを0.1μm以上とすることによって、上記剥離面に対向するコート層の表面に上記粗さで表わされる凹凸が転写される。このような剥離面上のコート層を粘着剤層に転写して形成された粘着シートは、被着体に貼り合わされた状態において、上記コート層表面の凹凸により被着体との間に空隙が形成されて、コート層表面と被着体との間におけるガスの移動性がよくなる。このことによって、アウトガスによる気泡の発生および貼付け時の気泡混入をよりよく防止し得る。上記剥離面の算術平均粗さは、好ましくは0.2μm以上であり、例えば1.0μmよりも大きい。ライナー剥離力が高くなりすぎることを避ける観点から、上記剥離面の算術平均粗さは、通常、5.0μm以下程度とすることが適当である。上記算術平均粗さは、剥離ライナー(典型的には剥離ライナー基材)の表面に、エンボスロール加工やサンドブラスト加工等の処理を施すことにより調節することができる。例えば、サンドブラスト加工や、サンドブラストを施したロールによるロール加工を採用することにより、剥離ライナーの剥離面に不規則な凹凸が形成される。あるいはまた、剥離ライナー基材の表面に粗化処理層(例えば、粒子含有インクから形成され得る。)を形成した後、その上から剥離処理を行うことによっても、剥離ライナーの剥離面の算術平均粗さを0.1μm以上に調節することができる。なお、本明細書において算術平均粗さは、一般的な表面粗さ測定装置(例えば、Veeco社製の非接触3次元表面形状測定装置、型式「Wyko NT-3300」)を用いて測定することができる。
【0156】
剥離ライナーの厚さ(総厚さ)は特に限定されないが、剥離作業性や取扱い性、強度等の観点から、凡そ10μm以上であることが好ましく、例えば凡そ15μm以上であってよい。また、剥離ライナーの厚さは、例えば凡そ500μm以下であってよく、凡そ100μm以下であってもよい。
【0157】
<複合体>
この明細書によると、ここに開示されるいずれかの粘着シートと、アウトガスを発生し得るプラスチック材料により構成された表面を有する部材と、を含み、上記プラスチック材料により構成された表面に上記粘着シートが貼り付けられている複合体が提供される。上記粘着シートは、被着体からアウトガスが発生しても該アウトガスによる気泡が生じにくいように構成されている。したがって、上記複合体は、上記部材と上記粘着シートの接着信頼性のよいものとなり得る。アウトガスによる気泡が生じにくいことは、上記部材と上記粘着シートとの間の熱伝導性/導電性の経時安定性を高める観点からも好ましい。
【0158】
ここに開示される複合体は、上記粘着シートが両面粘着シートであって、上記アウトガスを発生し得るプラスチック材料により構成された表面を有する部材(第一部材)の該表面に上記両面粘着シートの第一粘着面が貼り付けられており、上記両面粘着シートの第二粘着面が貼り付けられた他の部材(第二部材)をさらに含んでいてもよい。このように構成された複合体は、上記両面粘着シートの機能により、第一部材と第二部材との接着信頼性に優れたものとなり得る。また、上記両面粘着シートの機能により、第一部材と第二部材との熱伝導性/導電性の経時安定性に優れたものとなり得る。上記両面粘着シートは、基材付き両面粘着シートであってもよく、基材レスの両面粘着シートであってもよい。両面粘着シートの第二粘着面が貼り付けられるた第二部材表面がアウトガスを発生し得るプラスチック材料により構成された表面であってもよく、質的にアウトガスを発生しない材料により構成された表面であってもよい。前者の場合、上記両面粘着シートの第二粘着面は、アウトガスによる気泡が生じにくいように構成されていることが望ましい。
【0159】
アウトガスを発生し得るプラスチック材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂、塩化ビニル樹脂、および、これらのうち少なくとも一種の樹脂を含むブレンド材料や複合材料が挙げられる。
【0160】
上記複合体において、アウトガスを発生し得るプラスチック材料は、例えば、85℃で15時間加熱するアウトガス発生試験におけるアウトガス発生量が100μL/g以上であり得る。これは、上記アウトガス発生試験により発生するアウトガスの体積が、上記プラスチック材料1g当たり100μL以上であることを意味する。なお、この明細書において、アウトガス発生量を体積の数値は、85℃、1気圧におけるアウトガスの体積を表すものとする。ここに開示される技術によると、このようにアウトガス発生量の多いプラスチック材料により構成された表面に粘着シートが貼り付けられた構成の複合体においても、アウトガスに起因する気泡の発生を効果的に抑制することができる。上記アウトガス発生量が100μL/g以上であるプラスチック材料の代表例としてはポリカーボネート樹脂が挙げられる。
上記アウトガス発生量は、具体的には以下の方法で測定することができる。すなわち、23℃、50%RHの恒温室内で長期保存したプラスチック材料(試料)約6gを、同恒温室内において22mLのバイアル瓶に封入する。そのバイアルを85℃で15時間加熱した後、85℃において気相部から1mLのサンプルを採取してガスクロマトグラフ分析を行う。水分の定量は熱伝導度検出器により、有機物の定量は質量分析計により行うことができる。また、ブランクとして恒温室内の空気を測定する。プラスチック材料を入れて加熱したバイアルから採取したサンプル中のガス濃度とブランクのガス濃度との差から、上記アウトガス発生試験によりプラスチック材料1gから発生したアウトガスの重量を求め、気体の状態方程式を用いて85℃、1気圧における体積に換算する(東亞合成グループ研究年報、TREND2014、第17号、第12頁参照)。上記バイアル瓶に封入する試料としては、例えば、測定対象のプラスチック材料からなる約1mm~約3mm(例えば2mm程度)の平板状の成形体を上記バイアル瓶に封入し得るサイズにカットしたものを用いることができる。
【0161】
上記複合体を構成する粘着シートは、該粘着シートの粘着面内に描き得る最大の内接円の直径が凡そ3cm以上であることが好ましい。上記内接円の直径が大きくなるにつれて、被着体から発生したアウトガスによる気泡は生じやすくなる傾向にある。したがって、ここに開示される技術を適用してアウトガスによる気泡の発生を抑制することがより有意義となる。いくつかの態様において、上記内接円の直径は、例えば5cm以上であってよく、7cm以上でもよく、10cm以上でもよく、15cm以上でもよい。上記内接円の直径の上限は特に制限されない。上記内接円の直径は、例えば40cm以下であってよく、30cm以下でもよく、20cm以下でもよい。
【0162】
<用途>
ここに開示される粘着シートは、上述のように貼付け後に被着体から発生し得るアウトガスによる気泡の発生や成長を抑制する機能を備える。このことによって、被着体との接着信頼性に及ぼす経時や保存環境の影響を抑制することができる。特に、上記粘着シートが剛性を有する部材の接合に用いられる態様や、上記粘着シートが剛性を有する筐体の内面や該筐体の内部に収容される部材に貼り付けられる態様では、貼付け後に新たに生じる気泡(典型的には、アウトガスに起因する気泡)に対し、粘着シートの背面を直接押さえて上記気泡を強制的に粘着面の端まで移動させて押し出す等の気泡除去手段を採用することができない。したがって、このような使用態様においては、ここに開示される技術を適用して貼付け後の気泡発生を抑制することが特に有意義である。
【0163】
かかる観点から、ここに開示される粘着シートは、電子機器を構成する部材に貼り付けられる態様で好ましく用いられ得る。例えば、電子機器を構成する部材(好ましくは、剛性を有する部材)の接合や固定等に用いることができる。また、電子機器を構成する筐体の内部は、該電子機器の作動等により高温となり得ることから、被着体の材質によってはアウトガスが発生しやすく、貼付け後の気泡が生じやすい。したがって、ここに開示される粘着シートは、電子機器を構成する筐体の内面や該筐体の内部に収容される部材に貼り付けられる態様で好ましく用いられ得る。ここでいう電子機器の例には、高温環境に曝され得る車載電子機器(例えば、エンジン、トランスミッション、ブレーキ等の駆動系電子機器、カーナビゲーションシステムの操作端末やスピードメータ等の情報機器)や、各種のディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイパネル、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル等)を備えたテレビやコンピュータ等が含まれる。上記電子機器は、据え置き型でもよく、携帯型(ポータブル型)であってもよい。
【0164】
接着信頼性や接合状態の安定性(例えば、熱伝導性/導電性の変動が少ないこと)に対する要請が強いことから、ここに開示される粘着シートは、携帯電子機器用途に好ましく適用され得る。具体的には、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等の携帯電子機器の表面保護シート、上記携帯電子機器の液晶表示装置における接合固定用途、上記携帯電子機器の表示部を保護する保護パネル(レンズ)固定、携帯電話のキーモジュール部材固定、リムシート固定、デコレーションパネル固定、バッテリー固定、その他各種部材の固定、ロゴ(意匠文字)や各種デザイン等の表示物(各種標章を含む。)の固定等の用途に好ましく適用され得る。なお、本明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは十分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。
【0165】
この明細書により開示される事項には、以下のものが含まれる。
(1) 粘着面を構成する粘着剤層を含む粘着シートであって、
上記粘着面をガラス板に圧着して50℃で24時間保持する経時試験後において上記粘着面の全面積のうち上記ガラス板に対する非密着部の合計面積の割合として定義される経時後非密着面積率Saが5%以上であり、上記非密着部は上記粘着面に沿って線状に延びる部分を有する、粘着シート。
(2) 上記経時試験後の非密着部が上記粘着面の外縁まで連続して形成されるように構成されている、上記(1)に記載の粘着シート。
(3) 上記粘着面には凹部が形成されており、上記粘着剤層の平面視における上記凹部の形成パターンに沿って上記経時試験後の非密着部が形成されるように構成されている、上記(1)または(2)に記載の粘着シート。
(4) 上記凹部の深さが0.2μm以上である、上記(3)に記載の粘着シート。
(5) 上記粘着剤層の表面には該表面を部分的に覆うコート層が配置されており、上記粘着剤層の平面視における上記コート層の配置パターンに沿って上記経時試験後の非密着部が形成されるように構成されている、上記(1)~(4)のいずれかに記載の粘着シート。
(6) 上記経時試験後の非密着部が格子状のパターンを形成するように構成されている、上記(1)~(5)のいずれかに記載の粘着シート。
(7) 上記粘着面を上記ガラス板に圧着した直後において上記粘着面の全面積のうち上記ガラス板に対する非密着部の合計面積の割合として定義される初期非密着面積率Siが5%以上35%以下である、上記(1)~(6)のいずれかに記載の粘着シート。
(8) 上記粘着剤層は、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤層である、上記(1)~(7)のいずれかに記載の粘着シート。
(9) 上記粘着剤層は、ベースポリマーと架橋剤とを含む粘着剤組成物から形成されている、上記(1)~(8)のいずれかに記載の粘着シート。
(10) 上記架橋剤の使用量は、上記ベースポリマー100重量部に対して、2.0重量部以上、3.5重量部超、5.0重量部超、または6.5重量部超である、上記(9)に記載の粘着シート。
(11) 上記粘着剤層の厚さは、20μm以下、15μm以下、10μm未満、7μm未満、または5μm未満である、上記(1)~(10)のいずれかに記載の粘着シート。
(12) 上記粘着面を上記ガラス板に圧着した直後において上記粘着面の全面積のうち上記ガラス板に対する非密着部の合計面積の割合として定義される初期非密着面積率Siと、上記経時後非密着面積率Saとの関係が、Sa/Si≧0.60を満たす、上記(1)~(11)のいずれかに記載の粘着シート。
(13) 上記粘着面をポリカーボネート樹脂板(PC板)に圧着した直後において上記粘着面の全面積のうち上記PC板に対する非密着部の合計面積の割合として定義される対PC板初期非密着面積率S0と、上記粘着面を上記PC板に圧着して50℃で24時間保持する経時試験後において上記粘着面の全面積のうち上記PC板に対する非密着部の合計面積の割合として定義される対PC板経時後非密着面積率S1との関係が、S1-S0≦20%を満たす、上記(1)~(12)のいずれかに記載の粘着シート。
(14) 上記粘着面をPC板に貼り付けて30分後に引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で測定される初期剥離強度F0と、上記粘着面を上記PC板に貼り付けて85℃、85%RHの湿熱環境下に24時間保持し、次いで23℃、50%RHの標準環境下に30分間保持した後に引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で測定される経時後剥離強度F1との関係が、F1/F0≧0.60を満たす、上記(1)~(13)のいずれかに記載の粘着シート。
(15) 上記経時後剥離強度F1が2.5N/20mm以上であり、かつF1/F0が0.70以上である、上記(14)に記載の粘着シート。
(16) 上記粘着面内に描き得る最大の内接円の直径が凡そ3cm以上である態様で用いられる、上記(1)~(15)のいずれかに記載の粘着シート。
(17) 両面粘着シートの形態で、部材を接合または固定する用途に用いられる、上記(1)~(16)のいずれかに記載の粘着シート。
(18) 上記部材は、85℃で15時間加熱するアウトガス発生試験におけるアウトガス発生量が100μL/g以上であるプラスチック材料により構成された表面を有し、上記プラスチック材料により構成された表面に上記粘着面を貼り付けて用いられる、上記(17)に記載の粘着シート。
(19) フィルム基材と、
上記フィルム基材の少なくとも一方の表面に配置された上記粘着剤層と、
を備える、上記(1)~(18)のいずれかに記載の粘着シート。
(20) 上記(1)~(19)のいずれかに記載の粘着シートと、
85℃で15時間加熱するアウトガス発生試験におけるアウトガス発生量が100μL/g以上であるプラスチック材料により構成された表面を有する部材と、
を備え、上記プラスチック材料により構成された表面に上記粘着シートが貼り付けられている、複合体。
(21) 上記プラスチック材料は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂、および塩化ビニル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、上記(20)に記載の複合体。
(22) 上記粘着シートは、該粘着シートの粘着面内に描き得る最大の内接円の直径が凡そ3cm以上である、上記(20)または(21)に記載の複合体。
【実施例
【0166】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0167】
<剥離フィルムの作製>
(剥離フィルムR1)
厚さ75μmのポリエステル樹脂フィルム(商品名「ルミラーS10」、東レ社製)の片面に格子状の凸部パターンを形成し、その凸部パターン形成面にシリコーン系剥離剤による剥離処理を施して、剥離フィルムR1を作製した。上記凸部パターンは、互いに平行に直線状に延びる複数の畝からなる第一ストライプ状パターンと、この第一ストライプ状パターンと直交して互いに平行に直線状に延びる複数の畝からなる第二ストライプ状パターンと、により構成されている。第一、第二ストライプ状パターンを構成する各畝は、上記フィルム基材の長手方向と45度の角度をなす方向に延びており、その一端および他端は上記フィルム基材の外縁に至っている。第一、第二ストライプ状パターンを構成する各畝の高さは2.0μmであり、幅は0.2mmである。各ストライプ状パターンを構成する畝の線間隔は1.8mmであり、ピッチは2.0mmである。上記凸部パターン形成面の面積全体のうち凸部パターンの占める面積は19%である。
【0168】
(剥離フィルムR2)
厚さ75μmのポリエステル樹脂フィルムの片面にシリコーン系剥離処理剤による剥離処理が施された剥離フィルム(商品名「#75セラピール MDA(S)」、東レフィルム加工社製)を用意した。上記剥離フィルムの剥離処理面に、コート層形成材料(ウレタン系:2液混合硬化型インク)をグラビア印刷により付与し、格子状パターンを有するコート層を形成した。この格子状パターンは、互いに平行に直線状に延びる複数の線状コート層からなる第一ストライプ状パターンと、この第一ストライプ状パターンと直交して互いに平行に直線状に延びる複数の線状コート層からなる第二ストライプ状パターンと、により構成されている。第一、第二ストライプ状パターンを構成する各線状コート層は、上記フィルム基材の長手方向と45度の角度をなす方向に延び、その一端および他端は上記フィルム基材の外縁に至っている。第一、第二ストライプ状パターンを構成する各線状コート層の厚さは2.0μmであり、幅は0.2mmである。各ストライプ状パターンを構成する線状コート層の線間隔は1.8mmであり、ピッチは2.0mmである。上記コート層が形成された剥離処理面の面積全体のうち、該コート層の占める面積は19%である。
【0169】
また、以下の例1~5では、剥離フィルムR3として、三菱樹脂社製の商品名「ダイヤホイルMRF38」(片面が剥離処理されたPETフィルム、厚さ38μm)を使用した。この剥離フィルムR3の剥離面は平滑であり、凸部パターンは形成されていない。また、剥離フィルムR3の剥離面上にはコート層は形成されていない。
【0170】
<アクリル系ポリマーの調製>
(アクリル系ポリマーA)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート70部と、2-エチルヘキシルアクリレート27部と、アクリル酸3部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.05部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.08部と、重合溶媒としてのトルエン135部とを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間攪拌した。
このようにして系内の酸素を除去した後、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1部を加え、60℃で6時間重合反応を行って、アクリル系ポリマーAのトルエン溶液を得た。このトルエン溶液の固形分は42.5%であった。アクリル系ポリマーAのMwは約40万であった。
【0171】
(アクリル系ポリマーB)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート92部と、酢酸ビニル5部と、アクリル酸2.9部と、ヒドロキシエチルアクリレート0.1部と、重合溶媒としての酢酸エチル30部およびトルエン120部とを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間攪拌した。
このようにして系内の酸素を除去した後、AIBN0.2部を加え、60℃で6時間重合反応を行って、アクリル系ポリマーBのトルエン溶液を得た。このトルエン溶液の固形分は40.0%であった。アクリル系ポリマーBのMwは55×10であった。
【0172】
<粘着シートの作製>
(例1)
上記アクリル系ポリマーAのトルエン溶液(固形分42.5%)100gに、架橋剤として東ソー社製の商品名「コロネートL」(芳香族ポリイソシアネート、固形分75%)を有姿で4.0g添加し、均一に混合して、粘着剤組成物C1を調製した。上記架橋剤の添加量は、上記トルエン溶液中のアクリル系ポリマーA100部に対して芳香族ポリイソシアネート7.1部に相当する。
この粘着剤組成物C1を、剥離フィルムR3の剥離処理面に塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ9μmの粘着剤層1-aを形成した。この粘着剤層1-aに、支持基材としてのPETフィルム(商品名「ルミラー#12S10」、東レ社製、厚さ12μm)の第一面を貼り合わせた。また、剥離フィルムR1の凸部パターン形成面に粘着剤組成物C1を塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ9μmの粘着剤層1-bを形成した。次いで、粘着剤層1-bに上記支持基材の第二面を貼り合わせて、総厚30μmの基材付き両面粘着シートを作製した。
得られた基材付き両面粘着シートの粘着剤層1-aは剥離フィルムR3により、粘着剤層1-bは凸部パターンを有する剥離フィルムR1により、それぞれ覆われている。粘着剤層1-bから剥離フィルムR1を除去することにより、該剥離フィルムR1の凸部パターンを反映した凹部パターンを表面に有する粘着剤層1-bが露出する。
【0173】
(例2)
上記アクリル系ポリマーAのトルエン溶液(固形分42.5%)100gに、架橋剤として東ソー社製の商品名「コロネートL」(芳香族ポリイソシアネート、固形分75%)を有姿で3.5g添加し、均一に混合して、粘着剤組成物C2を調製した。上記架橋剤の添加量は、上記トルエン溶液中のアクリル系ポリマーA100部に対して芳香族ポリイソシアネート5.3部に相当する。
この粘着剤組成物C2を、剥離フィルムR3の剥離処理面に塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ3μmの粘着剤層2-aを形成した。この粘着剤層2-aに、支持基材としてのPETフィルム(商品名「ルミラー#25S10」、東レ社製、厚さ24μm)の第一面を貼り合わせた。また、剥離フィルムR1の凸部パターン形成面に粘着剤組成物C2を塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ3μmの粘着剤層2-bを形成した。次いで、粘着剤層2-bに上記支持基材の第二面を貼り合わせて、総厚30μmの基材付き両面粘着シートを作製した。
得られた基材付き両面粘着シートの粘着剤層2-aは剥離フィルムR3により、粘着剤層2-bは凸部パターンを有する剥離フィルムR1により、それぞれ覆われている。粘着剤層2-bから剥離フィルムR1を除去することにより、該剥離フィルムR1の凸部パターンを反映した凹部パターンを表面に有する粘着剤層2-bが露出する。
【0174】
(例3)
上記アクリル系ポリマーBのトルエン溶液(固形分40.0%)100gに、粘着付与樹脂として、ロジン系樹脂A(重合ロジンペンタエリスリトールエステル、商品名「ハリタック PCJ」、ハリマ化成社製、軟化点118~128℃)4gと、ロジン系樹脂B(水添ロジングリセリンエステル、商品名「ハリタック SE10」、ハリマ化成社製、軟化点75~85℃)4gと、ロジン系樹脂C(水添ロジンメチルエステル、商品名「フォーラリン 5020F」、イーストマンケミカル社製)2gと、テルペン変性フェノール系樹脂(商品名「スミライトレジン PR-12603N」、住友ベークライト社製)6gとを添加し、さらに架橋剤として東ソー社製の商品名「コロネートL」(芳香族ポリイソシアネート、固形分75%)を有姿で1.1g添加し、均一に混合して、粘着剤組成物C3を調製した。上記架橋剤の添加量は、上記トルエン溶液中のアクリル系ポリマーB100部に対して芳香族ポリイソシアネート2.1部に相当する。
この粘着剤組成物C3を、剥離フィルムR3の剥離処理面に塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ9μmの粘着剤層3-aを形成した。この粘着剤層3-aに、支持基材としてのPETフィルム(商品名「ルミラー#12S10」、東レ社製、厚さ12μm)の第一面を貼り合わせた。また、剥離フィルムR2のコート層形成面に、該コート層の上から粘着剤組成物C3を塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ9μmの粘着剤層3-bを形成した。次いで、粘着剤層3-bに上記支持基材の第二面を貼り合わせて、総厚30μmの基材付き両面粘着シートを作製した。
得られた基材付き両面粘着シートの粘着剤層3-aは剥離フィルムR3により、また粘着剤層3-bはコート層を有する剥離フィルムR2により、それぞれ覆われている。粘着剤層3-bから剥離フィルムR2を除去することにより、該剥離フィルムR2から転写されたコート層により部分的に覆われた粘着剤層3-bが露出する。。
【0175】
(例4)
本例に係る粘着シートとしては、支持基材としての厚さ5μmのPETフィルムの第一面、第二面の各々に厚さ12.5μmのアクリル系粘着剤層4-a,4-bが設けられた構成の、総厚30μmの基材付き両面粘着シートを使用した。この基材付き両面粘着シートの粘着剤層4-a,4-bはそれぞれ剥離フィルムR3により覆われている。したがって、剥離フィルムR3を除去することにより露出する粘着剤層4-a,4-bは、いずれも、凹部パターンやコート層を有しない、平滑で均質な粘着面である。
【0176】
(例5)
上述した粘着剤組成物C1の調製において、上記アクリル系ポリマーAのトルエン溶液(固形分42.5%)100gに加える架橋剤の量を、有姿で0.3gに変更した。上記架橋剤の添加量は、上記トルエン溶液中のアクリル系ポリマーA100部に対して芳香族ポリイソシアネート0.53部に相当する。その他の点は粘着剤組成物C1の調製と同様にして、粘着剤組成物C5を調製した。
粘着剤組成物C1に代えて粘着剤組成物C5を用いた他は例1に係る両面粘着シートの作製と同様にして、厚さ12μmの支持基材の第一面、第二面の各々に厚さ9μmの粘着剤層5-a,5-bを有する、総厚30μmの基材付き両面粘着シートを作製した。
得られた基材付き両面粘着シートの粘着剤層5-aは剥離フィルムR3により、粘着剤層5-bは凸部パターンを有する剥離フィルムR1により、それぞれ覆われている。粘着剤層5-bから剥離フィルムR1を除去することにより、該剥離フィルムR1の凸部パターンを反映した凹部パターンを表面に有する粘着剤層5-bが露出する。
【0177】
<測定および評価>
各例に係る粘着シートは、50℃の環境下に24時間保持し、次いで23℃、50%RHの標準環境下に3時間以上保持した後、以下の測定および評価に供した。
1.非密着面積率の測定
例1~5に係る粘着シートを50mm角の正方形状にカットし、粘着剤層1-b~5-bを覆う剥離フィルムを除去して、該粘着剤層1-b~5-bを露出させた。水平に載置されたガラス板上(松波硝子工業社製、厚さ1.35mm、青板縁磨品)に、各例に係る両面粘着シートを、上記粘着剤層露出面(粘着面)がガラス板側になるようにして軽く載せ、次いで15分間のオートクレーブ処理(30℃、0.5MPa)を行って圧着することにより、例1~5の各々に対応するサンプル1~5を得た。
オートクレーブから取り出した直後のサンプルについて、上述した方法により、粘着面の全面積(ここでは25cm)のうち上記ガラス板に対する非密着部の合計面積の占める割合、すなわち初期非密着面積率Si(%)を測定した。
また、オートクレーブから取り出したサンプルを50℃の温度下に24時間保持し、次いで23℃、50%RHの標準環境下に30分間保持した後、上述した方法により、粘着面の全面積(ここでは25cm)のうち上記ガラス板に対する非密着部の合計面積の占める割合、すなわち経時後非密着面積率Sa(%)を測定した。なお、この経時後非密着面積率の測定において、例1~3において観察された非密着部は、線状に連なって粘着面の外縁に至っていることが認められた。
【0178】
2.対PC板剥離強度の測定
(初期剥離強度F0)
例1~5に係る粘着シートを幅20mmの帯状にカットして、測定用の試験片を作製した。上記試験片の粘着剤層1-b~5-bを覆う剥離フィルムを除去して粘着剤層1-b~5-bを露出させた。その粘着剤層露出面(粘着面)を、被着体としての厚さ2mmのポリカーボネート樹脂板(PC板)に、2kgのローラを1往復させて圧着した。
このサンプルを23℃、50%RHの標準環境下に30分間保持した後、同標準環境下において、万能引張圧縮試験機(ミネベア社製、装置名「引張圧縮試験機、TG-1kN」)を使用し、JIS Z0237:2000に準じて、引張速度300mm/分の条件で、180°引き剥がし粘着力(N/20mm)を測定した。測定は3回行い(すなわちN=3)、それらの測定値の平均を初期剥離強度F0とした。
(経時後剥離強度F1)
例1~5に係る粘着シートを幅20mmの帯状にカットして、測定用の試験片を作製した。上記試験片の粘着剤層1-b~5-bを覆う剥離フィルムを除去して、該粘着剤層1-b~5-bを露出させた。その粘着剤層露出面(粘着面)を、被着体としてのPC板に、2kgのローラを1往復させて圧着した。
このサンプルを85℃、85%RHの湿熱環境下に24時間保持し、次いで23℃、50%RHの標準環境下に30分間保持した後、上述した初期剥離強度F0の測定と同様にして180°引き剥がし粘着力(N/20mm)を測定した。測定は3回行い(すなわちN=3)、それらの測定値の平均を経時後剥離強度F1とした。
なお、上記PC板としては、タキロン株式会社製の品番「PC1600」を使用した。このPC板は、85℃で15時間加熱する上述のアウトガス発生試験において、100μL/g以上のアウトガスを発生することがわかっている。
【0179】
3.接着信頼性評価
上記で得られた結果から、各例に係る粘着シートの剥離強度維持率を、初期剥離強度F0に対する経時後剥離強度F1の比として算出した。結果を表1に示した。
上記剥離強度維持率(F1/F0)の値がより大きいことは、被着体(ここではPC板)からアウトガスが発生する環境に曝されることによる粘着力の低下がより少ないことを意味する。評価結果の把握を容易にするため、上記剥離強度維持率(F1/F0)が0.80以上であるものを「E」(接着信頼性に優れる)、0.70以上0.80未満であるものを「G」(接着信頼性良好)、0.60以上0.70未満であるものを「A」(実用上許容可能な接着信頼性を有する)、0.60未満であるものを「P」(接着信頼性に乏しい)と分類し、その結果を表1に併せて示した。
【0180】
【表1】
【0181】
表1に示す結果からわかるように、例1~3の粘着シートは、アウトガス発生性の被着体(ここではPC板)に貼り付けた後に上記湿熱環境に曝されても高い剥離強度維持率を示し、良好な接着信頼性を示した。これは、これらの粘着シートは、経時後の非密着面積が10%以上であることにより、上記湿熱環境において被着体から発生したアウトガスが非粘着部を伝って粘着剤層の外縁から外部に抜け出すことができるため、すなわちアウトガスの抜け性が良いためと考えられる。また、例1~3に係る粘着シートは、ガラス板上に載置して手で圧着した際の空気抜け性も良好であることが認められた。
一方、経時後の非密着面積が小さい例4,5の粘着シートでは、上記湿熱環境に曝されることにより粘着力が大きく低下した。これは、例4,5の粘着シートはアウトガスの抜け性に乏しいため、被着体と粘着面との間に閉じ込められたアウトガスが気泡を形成し、この気泡により被着体と粘着剤層との密着性が低下したためと推測される。
【0182】
例1~3に係る粘着シートにおいて、例4,5に係る粘着シートに比べて顕著に優れた剥離強度維持率が得られた理由を確認するため、さらに以下の実験を行った。
すなわち、上記ガラス板に代えて上記PC板を使用した他は上記初期非粘着面積率Siの測定と同様にして、対PC板初期非密着面積率S0を測定した。また、上記ガラス板に代えて上記PC板を使用し、かつオートクレーブから取り出したサンプルを85℃、85%RHの条件下に24時間保持し、次いで23℃、50%RHの標準環境下に30分間保持した後に測定を行った点を除いては上記経時後非密着面積率Saの測定と同様にして、対PC板経時後(湿熱後)非密着面積率S1を測定した。さらに、、上記ガラス板に代えて上記PC板を使用し、かつオートクレーブから取り出したサンプルを60℃の温度下に3日間保持し、次いで23℃、50%RHの標準環境下に30分間保持した後に測定を行った点を除いては上記経時後非密着面積率Saの測定と同様にして、対PC板経時後(加熱後)非密着面積率S2を測定した。結果を表2に示した。
【0183】
【表2】
【0184】
表2に示されるように、剥離強度維持率の低い例4,5の粘着シートは、PC板に貼り付けて85℃、85%RHの湿熱環境下に24時間保持することにより、初期(すなわち、オートクレーブで圧着した直後)に比べて非密着部の面積が顕著に増大した。また、目視においても、上記湿熱環境下に保持した後のサンプルでは粘着面とPC板との間に気泡溜まりが形成されていることが明らかに認められた。60℃で3日間保存したサンプルについても同様の傾向がみられた。これらの結果は、上述した接着信頼性評価において、例4,5の粘着シートでは、上記湿熱環境下においてPC板から発生したアウトガスが該PC板と粘着面との間に閉じ込められて気泡を形成し、この気泡により被着体と粘着剤層との密着性が低下することで初期に比べて経時後の剥離強度が大きく低下し、接着信頼性が損なわれたことを裏付けるものである。例1~3に係る粘着シートは、上記湿熱環境下に保持されてもアウトガスの抜け性を維持できるため、閉じ込められたアウトガスによる気泡の発生が回避され、高い剥離強度維持率が得られたものと考えられる。
【0185】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0186】
1 粘着シート
10 フィルム基材
20 粘着剤層
30 凹部
40 凹部パターン
42,44 ストライプ状パターン部
50 溝(線状に延びる部分)
60 凸部パターン
62 畝(線状に延びる部分)
100 剥離ライナー
110 剥離ライナー付き粘着シート
201 粘着シート
201A 粘着面
210 フィルム基材
220 粘着剤層
220A 粘着剤層表面
230 コート層
240 コート層パターン
242,244 ストライプ状パターン部
250 帯状部分(線状に延びる部分)
300 粘着シート(基材付き両面粘着シート)
301,302 剥離ライナー
310 フィルム基材
321,322 粘着剤層
330 コート層
410 剥離ライナー
420 剥離性支持体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8