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  • 特許-男性用下着 図1
  • 特許-男性用下着 図2
  • 特許-男性用下着 図3
  • 特許-男性用下着 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】男性用下着
(51)【国際特許分類】
   A41B 9/02 20060101AFI20220519BHJP
【FI】
A41B9/02 G
A41B9/02 C
A41B9/02 Q
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017200696
(22)【出願日】2017-10-17
(65)【公開番号】P2019073824
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】516094515
【氏名又は名称】有限会社アルファメディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100126620
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 豪
(74)【代理人】
【識別番号】100134234
【弁理士】
【氏名又は名称】日向 麻里
(72)【発明者】
【氏名】敦賀 正行
【審査官】武井 健浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-327312(JP,A)
【文献】特開2017-113260(JP,A)
【文献】特開2013-209755(JP,A)
【文献】特開2002-129407(JP,A)
【文献】国際公開第2006/083119(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に陰茎出し入れ用のズボン開口部を備えたズボンの内側に着用し、かつ前面に陰茎出し入れ用の下着開口部を有する男性用下着であって、
前記男性用下着には、前記下着開口部近傍を当該男性用下着の外方から覆うように、当該男性用下着の前面外側に取り付けられたカバーが設けられ、
前記カバーは、下端部が下着開口部下部付近に固定され、下端部を軸として開閉自在となるように上端部が前記男性用下着の前面外側に対し取り外し可能に固定され、開いた時に外側となる開放時外側面が吸水性を有し、閉じた時に外側になる閉鎖時外側面が撥水性を有しており、
前記カバーは、排尿の際に、ズボン開口部からズボンの外側に取り出され、前記開放時外側面がズボンの外側に垂下された状態となって使用され、
前記カバーの上端部は、固定された際に下着開口部の上端部よりも下方に位置し、当該位置において、前記開放時外側面が前記男性用下着の前面外側に係合可能であることを特徴とする男性用下着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性の下半身に着用する下着に関し、より詳しくは、自分でトイレに行って用を足すことができる健常な男性が下半身に着用する下着に関する。
【背景技術】
【0002】
男性がトイレで排尿した後、気づくとズボンの前が少し濡れてシミが目立ってしまう場合がある。特に居酒屋等でトイレから出てきた後など、人前でズボンの前が濡れてしみていると具合が悪い。水による濡れの場合はそのままにしておいても構わないが、尿による濡れの場合は、濡れたズボンを放置しておくと、臭くなる上、カビの原因にもなる。特に、中高年になると、男性が立位で排尿する際に、排尿の勢いが弱くなって尿が自分のズボンに飛散しやすくなる。また、外でトイレに行く回数も増えて、尿の飛散による濡れや汚れが気になる機会も増える。本発明者は、従前から、この問題に悩まされており、それを解決するための試行錯誤を続けている。
【0003】
この問題に関し、例えば、特許文献1には、尿しぶきがかかってズボンの前開き部周辺が汚れるのを防ぐ目的で、「小便しぶき止めの付いたズボン並びにパンツ」が提案されている。特許文献1のものは、布を素材として作った小便しぶき止めを、ズボン本体又はパンツ(下着)本体の前開き部内側の下部終点よりすぐ下に取り付け、口中の舌のように出し入れが容易にできるように構成したもので、小便時は前開き部から小便しぶき止めを取り出し、終わり次第前開き部内側にしまい込むようにして使う。
【0004】
また、特許文献2には、排尿後の陰茎収納時における残尿によるズボンや下着の外面付着汚れを防止することを目的として、「下着前部に設けられた陰茎出し入れ用の開口部の内側に、開口部を通して陰茎と共に出し入れ可能で、排尿時に陰茎の下方に垂下され、排尿後の陰茎収納時に陰茎の先端を下方から覆う、吸水性材料からなる出し入れ片を設けた男性用尿漏れ対策下着」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-327312
【文献】特許第5608302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の経験では、濡れたり汚れたりしてもよい布または濡れたり汚れたりしにくい布を、排尿時に、ズボンの前面(外側)に設けておくことは、ズボンに尿しぶきが付着するのを防ぐことに効果があることがわかっており、その点では特許文献1の提案と同様のものを試作しようとしたことがあるが、ズボンに直接そのような布を縫い付けるのは困難であった。また、頻繁に洗濯したいもの(「小便しぶき止め」のようなもの)をズボンに取り付けるのは、頻繁には洗濯したくないズボンを頻繁に洗濯することとなってズボンの生地が痛むため避けたい。手持ちのズボンすべてにそのようなものをいちいち取り付けるわけにもいかない。
【0007】
特許文献1では、小便しぶき止めは、ズボン本体又は(下着としての)パンツ本体に取り付けることは開示されているが、いずれが良いかは開示されていない。また、特許文献1のものは、排尿時に外側に出しておいた面、すなわち尿しぶきが付着した面が、小便しぶき止めをズボン本体又は下着の内側に収納したときは、ズボン本体又はパンツ本体の内側の生地に接する面となるので、小便しぶき止めに付着した尿がズボンの外面にしみ出る恐れがある。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、排尿時、尿しぶきがかかってズボンの前開き部周辺外面が濡れたり汚れたりするのを防ぎ、かつ、陰茎収納後にも外側(ズボン側)にしみ出しにくい、男性用下着を提供することにある。併せて、構造が比較的単純で作りやすく使いやすい男性用下着を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様による男性用下着は、前面に陰茎出し入れ用の開口部を有する男性用下着であって、この開口部近傍を覆うように、外側にカバーが設けられ、このカバーは、下端部が開口部下部付近に固定され、下端部を軸として開閉自在となるように上端部が取り外し可能に固定され、開いた時に外側となる面が吸水性を有し、閉じたときに外側となる面が撥水性を有していることを特徴とする。
【0010】
本発明の男性用下着は、ズボンのすぐ内側に履くことを想定している。トランクス,ボクサーなどの下着の上に履くズボン下に本発明を適用してもよく、ズボン下を着用しない場合のために、トランクス,ボクサーなどの、肌に直接着用する下着に本発明を適用してもよい。
【0011】
本発明の男性用下着は、下着の開口部近傍を覆うように、外側にカバーを設け、このカバーの下端部を開口部下部付近に固定させ、固定された下端部を軸として開閉自在となるように上端部を固定させた構成としている。この構成により、排尿時には、下着外側に設けられたカバーを上部から開いて、ズボンの前開き部から引き出してズボンの外側に垂下させることができる。すなわち、排尿時には、本発明による男性用下着に設けられたカバーが、陰茎とズボンの前面との間に存在することとなり、その範囲では尿飛沫がズボンに直接付着するのを防ぐことができる。
【0012】
さらに、カバーを閉じた際に内側になる面、すなわち、カバーを上部から開いて下部に垂下させた際に外側になる面が吸水性を有していることにより、開口部から陰茎を出して排尿した際に尿が飛散したとしても、その水分をカバーが吸収することができる。
【0013】
さらに、カバーの他方の面、すなわち、カバーを閉じた際に外側となる面であり、着用してカバーを閉じた際にズボンの前開き部内面に対峙する側の面であり、カバーを開いて前開き部からズボンの外側に取り出した際にズボンの前側に対峙する面が、撥水性を有していることにより、吸収された水分がはじかれるからズボン側にしみ出ず、ズボンが濡れたり、汚れたりすることを防ぐことができる。
【0014】
なお、本発明におけるカバーの片面が有する吸収性は、排尿時や陰茎収納時に付着しやすい尿飛沫,微量の尿を吸収できれば良い程度であり、介護用パンツに要求されるような多量の尿を吸収できるほどの吸収性は必要ない。
【発明の効果】
【0015】
以上のような構成を採っているので、本発明によれば、排尿時、尿しぶきがかかってズボンの前開き部周辺外面が濡れたり汚れたりするのを防ぎ、かつ、陰茎収納後にも外側(ズボン側)にしみ出しにくい、男性用下着を提供することができる。
【0016】
また、本発明によれば、特許文献1における尿しぶき止めと異なり、尿しぶき止めに相当するカバーを、ズボンに直接取り付けず、下着の一部として縫着等により下着本体の外側に取り付けて提供するので、取り付けが容易である。すなわち、本発明によれば、構造が比較的単純で作りやすく使いやすい男性用下着を提供することができる。また、尿飛沫等が付着したカバーも下着本体と一緒に気軽に洗濯でき、ズボンは頻繁に洗濯しなくて良いという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明をズボン下に適用した実施形態である男性用下着を、カバーを閉じた状態で前側から見た模式的な正面図である。
図2図2は、図1と同じ男性用下着を、カバーを開いた状態で前側から見た模式的な正面図である。
図3図3は、本発明をトランクスに適用した実施形態である男性用下着を、カバーを閉じた状態で前側から見た模式的な正面図である。
図4図4は、図3と同じ男性用下着を、カバーを開いた状態で前側から見た模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図において、同一部分ないし相当する部分には、同一の符号を付してある。
【0019】
図1及び図2は、本発明を長丈のズボン下に適用した一実施形態を示している。男性用下着1は、ズボンのすぐ内側に着用する長丈のズボン下である。図1及び図2に示すように、男性用下着1は、前面に、陰茎を出し入れするための開口部(以下、前開き部ともいう)を有し、下着本体の前面外側には、この開口部近傍を覆うように、下端部が固定されて上下に開閉自在なカバー2が設けられている。
【0020】
カバー2は、図1に示すように、閉じた状態における下側の4分の1から3分の1ぐらいの部分が方形で、残りの部分(図面上側部分)が下側の方形部分よりも幅広な略円形状の形状となるように形成されている。なお、図2に示すように、開いた状態では、少し幅広で丸みを帯びた略円形状の部分が下側になる。カバー2をこのような形状とすることで、閉じた状態では、尿が付着しやすい部分である前開き部近傍を十分に覆うことができる。したがって、排尿時及び排尿後の陰茎収納時に尿が付着したとしても、その濡れ・汚れがズボン側にしみ出しにくいようにすることができる。
【0021】
図1及び図2に示すように、カバー2は、カバーを閉じた状態における下端部が、前面の開口部(前開き部)下部に、縫着等により固定されている。カバー2は、この固定された箇所を軸に、上部にある面ファスナー3を外して開き、垂れ下げることができる。カバー2には、図2に示すように、垂れ下げた状態で下端よりやや上となる位置(閉じた状態では上端よりやや下となる位置)に、面ファスナー3a(A面:フック面)が縫着されている。男性用下着1本体の前面、カバー2を閉じた際に面ファスナー3aに相対する位置には、面ファスナー3b(B面:ループ面)が縫着されている。すなわち、カバー2は、面ファスナー3a(A面:フック面),面ファスナー3b(B面:ループ面)により上下に開閉自在になるよう固定されている。
【0022】
カバー2は、布地で作られており、一方の面は吸水性を有し、他方の面は撥水性を有している。より具体的には、カバーを閉じたときに内側になる面、すなわち開いた時に外側になる面は、少なくとも尿飛沫を吸収できる程度の吸水性を有している。閉じたときに外側になる面、すなわち、外側にズボンを着用した際にズボンに相対する面は、撥水性を有する。したがって、放尿した際に飛散してかかった水分がカバー2で吸収されやすくなり、吸収された水分は撥水性を有する面ではじかれるのでズボン側は濡れにくくなる。布地の材料は、一般的に入手可能な市販品の中から適宜選択することができる。
【0023】
下着本体の前面外側、特に開口部近傍は、陰茎を出し入れするために、尿が付着しやすい。その部分をカバー2で下着本体の外側から覆うことで、排尿後の陰茎収納時に下着本体に尿が付着したとしても、その濡れ・汚れがズボン側にしみ出るのを防ぐことができる。さらに、上述のようにカバー2を閉じた際の外側の面には撥水性が付与されているので、カバー2の内側の面に付着した尿による濡れ・汚れがズボン側にしみ出るのをより一層防ぐことができる。
【0024】
次に、トイレで用を足す際の男性用下着1の使い方について説明する。
【0025】
男性用下着1は、通常のズボン下と同様に、トランクスやボクサー等の直接陰部の上に着用する下着の外側、ズボンの内側に着用する。トイレで用を足す際は、まず、ズボンの前開きファスナーを下ろし、その開口部から手を入れて、男性用下着1のカバー2上部を面ファスナー3bから剥がしてカバー2を開き、カバー2をズボンの外に取り出す。このとき、カバー2は、内側だった面が外側になって垂下される。次に、陰茎をカバー2の外側に出して垂下させ、通常通り用を足す。その後は、逆順で元に戻す。
【0026】
男性用下着1は、上記のような構成であり、上記のように使用するので、排尿時に尿が飛散しても、尿飛沫はカバー2の垂下時外側面で吸収され、ズボン側は濡れにくくなる。
【0027】
このように使用するので、特許文献2に記載されているような手順、すなわち、陰茎と一緒に出し入れ片を取り出し、一緒に収納するという手順ではない。カバー2をズボンの前開き部から取り出して垂下させてから、陰茎を取り出してカバー2の外側(前側)に出すという手順である。少なくとも、発明者、及び、試用してもらった人たちにとっては、この手順のほうが使い易いと感じている。
【0028】
上記のように制作した男性用下着1の試作品を着用して実際に何度か用を足してみたところ、上記課題が解決され、本発明の効果が確認された。
【0029】
次に、他の一実施形態について、図3及び図4を参酌しながら説明する。図3は、本発明をトランクスに適用した実施形態である男性用下着10を、カバーを閉じた状態で前側から見た模式的な正面図である。図4は、図3と同じ男性用下着10を、カバーを開いた状態で前側から見た模式的な正面図である。
【0030】
図3及び図4に示すように、本発明の他の一実施形態である男性用下着10は、肌に直接着用するトランクスである。図示するように、男性用下着10にも、カバー2,面ファスナー3a,3bが設けられており、丈が短いという点を除けば、男性用下着1と同様の構成をしている。使い方も、肌に直接着用するトランクスであるという点を除けば同様なので、説明を省略する。このように、本発明をトランクスに適用しても良い。ボクサー、ブリーフに適用しても良い。
【0031】
なお、上記構成は、一例であり、本発明は上記構成に限られるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、自由に構成することができる。
たとえば、カバーの形状は、図1乃至図4に記載のものと同じ形状でなくてもよい。前開き部近傍の汚れやすい部分を十分に覆うことができ、ズボンの外側に垂下させた際にある程度の広がりを持って尿飛沫の付着を防げるような他の形状・大きさであれば良い。
【0032】
なお、ズボン下としての男性用下着1またはトランクスとしての男性用下着10のカバー2,面ファスナー3a,3b以外の構成としては、それぞれの下着としての一般的な機能を果たすものであれば、特にこだわらない。カバー2の大きさ、面ファスナー3a,3bの大きさなどの寸法は、下着本体の大きさや形状等に合わせ、適宜調節されるものであるから、上記では寸法の記載を省略した。
【符号の説明】
【0033】
1…本発明の一実施形態に係る男性用下着
2…カバー
3a…面ファスナー(A面:フック面)
3b…面ファスナー(B面:ループ面)
10…本発明の他の一実施形態に係る男性用下着
図1
図2
図3
図4