(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル
(51)【国際特許分類】
A61J 1/06 20060101AFI20220519BHJP
B65D 17/34 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
A61J1/06 D
A61J1/06 E
B65D17/34
(21)【出願番号】P 2017559182
(86)(22)【出願日】2016-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2016088719
(87)【国際公開番号】W WO2017115752
(87)【国際公開日】2017-07-06
【審査請求日】2019-09-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2015256887
(32)【優先日】2015-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】矢後 誠司
(72)【発明者】
【氏名】岩切 智佐都
(72)【発明者】
【氏名】原田 尚美
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】栗山 卓也
【審判官】千壽 哲郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/141813(WO,A1)
【文献】実開昭59-169832(JP,U)
【文献】特開平8-322908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物充填済み合成樹脂製アンプルであって、
前記合成樹脂製アンプルは、自立可能なアンプル本体と、前記アンプル本体内に収納された前記薬物とを備え、
前記アンプル本体は、自立時に上部に位置する先端部と、薬物収納部を有する中空部と、前記先端部の下部と前記中空部の上部間に設けられた破断可能部とを備え、
前記先端部は、
前記先端部の上部である板状本体部と、前記板状本体部の上部に
より形成された前記破断可能部の破断操作用の押圧部を備え、
前記押圧部は、前記破断可能部の上部上方に位置し、
前記板状本体部の上部により形成された前記押圧部が形成する面
の指での押圧時に、前記押圧部が形成する面と直交する方向
に前記押圧部が押圧されるものとなっており、
前記中空部は、自立のための底面部を有し、前記底面部は、
前記押圧部が形成する面と直交する方向に延出する延出部を備え、前記合成樹脂製アンプルは、前記押圧部を
指で押圧すると、
前記押圧部が形成する面と直交する方向に前記押圧部が押圧され、前記底面部に設けられた前記延出部が支えとなり、前記押圧部に付与した押圧力は前記破断可能部に伝達され、前記破断可能部が破断するものとなっていることを特徴とする自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
【請求項2】
前記先端部は、前記破断可能部の破断操作用かつ前記直交する方向
に押圧
させるための第1の押圧部と、前記直交する方向と反対方向
に押圧
させるための第2の押圧部とを備え、前記底面部は、前記直交する方向に延出する第1の延出部と、前記直交する方向と反対する方向に延出する第2の延出部を備えている請求項1に記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
【請求項3】
前記アンプル本体は、前記先端部を含む前記破断可能部より上部部分に、薬物を保留可能な部分を持っていない請求項1または2に記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
【請求項4】
前記底面部は、前記底面部の中央から前記延出部の外縁までの距離が、前記底面部の中央からの外縁までの最長距離部となっている請求項1ないし3のいずれかに記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
【請求項5】
前記アンプル本体は、前記中空部の下端開口を封止する底板部材を備えている請求項1ないし4のいずれかに記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
【請求項6】
前記底板部材は、前記底板部材内に形成された前記薬物収納部の底面部の中心方向に向かって傾斜する錐体状上面を備えている請求項5に記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
【請求項7】
前記延出部は、前記底板部材に設けられている請求項5または6に記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
【請求項8】
前記延出部は、前記中空部の下端部に設けられている請求項1ないし6のいずれかに記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
【請求項9】
前記中空部は、前記破断可能部に向かって、縮径する内面テーパー部を備えている請求項1ないし8のいずれかに記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
【請求項10】
前記アンプル本体は、前記中空部の下端開口に設けられた外方に延びるフランジ部と、前記中空部の下端開口を封止するとともに、前記フランジ部の下面に上面が当接した底板部材とを備えている請求項1ないし4のいずれかに記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
【請求項11】
前記アンプル本体は、前記中空部の下端開口を封止する底板部材を備え、前記延出部は、前記底板部材または前記中空部の下端部に一体に設けられている請求項1ないし4のいずれかに記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
【請求項12】
前記先端部は、前記板状本体部の外面に、前記アンプル本体の軸方向に沿って延びる複数のリブを備えている請求項1ないし11のいずれかに記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破断操作により開栓される薬物充填済み合成樹脂製アンプルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、薬液を収容するアンプルなどの容器は、落下時の破損、開封時の怪我、破片の発生などの安全性の観点、扱いやすさなどの点より、ガラス製の容器に代わり、合成樹脂製アンプルが用いられるようになってきている。
【0003】
合成樹脂製アンプルとしては、例えば、特開2013-095436(特許文献1)のものがある。特許文献1の合成樹脂製アンプルは、注出口8が形成されたアンプル本体3と、注出口8に沿って形成されたネック部4を介してアンプル本体3に連通可能に接続された栓部5と、栓部5から外側へ突出した薄板状のエッジ部6を介して栓部5に接続されたヘッド部7とを備えるプラスチックアンプル1において、エッジ部6に対して交差する方向に扁平な形状のアーム板15をヘッド部7に形成する。そして、アーム板15を指で摘み、アーム板15を引き上げることでネック部4を支点にアンプル本体3とヘッド部7との間を折り曲げて、ネック部4を折り切ることにより開栓するものとなっている。
【0004】
また、合成樹脂製アンプルとしては、特開2014-69856(特許文献2)のものがある。特許文献2の合成樹脂製アンプル容器は、有底筒状に2軸延伸ブロー成形され、内容液(N)を収容する本体部(1)と、該本体部(1)の上端に起立連設された有頂筒状の頭部(6)と、前記本体部(1)と頭部(6)の境界部に形成され、前記本体部(1)と頭部(6)の相対変動により破断される弱化部(10)とを備え、前記頭部(6)内に位置する残留内容液(n)の下端液面(n1)の周端縁が付着する内周面部分(7)に、周方向に沿って多数の縦リブ(9)を並列設して凹凸面部(8)を形成し、該凹凸面部(8)を、上端の高さ位置が異なる縦リブ(9)を混在させて形成したものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-095436
【文献】特開2014-69856
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2の合成樹脂製アンプルは、合成樹脂により形成されているため、落下時の破損がなく、取り扱いも容易である。
しかし、特許文献1および2のものでは、アンプル自体の安定性が悪く、開栓操作が、容易なものではなかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、自立可能であるとともに、自立状態における開栓操作を容易に行うことができる薬物充填済み合成樹脂製アンプルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
薬物充填済み合成樹脂製アンプルであって、前記合成樹脂製アンプルは、自立可能なアンプル本体と、前記アンプル本体内に収納された前記薬物とを備え、前記アンプル本体は、自立時に上部に位置する先端部と、薬物収納部を有する中空部と、前記先端部の下部と前記中空部の上部間に設けられた破断可能部とを備え、前記先端部は、前記先端部の上部である板状本体部と、前記板状本体部の上部により形成された前記破断可能部の破断操作用の押圧部を備え、前記押圧部は、前記破断可能部の上部上方に位置し、前記板状本体部の上部により形成された前記押圧部が形成する面の指での押圧時に、前記押圧部が形成する面と直交する方向に前記押圧部が押圧されるものとなっており、前記中空部は、自立のための底面部を有し、前記底面部は、前記押圧部が形成する面と直交する方向に延出する延出部を備え、前記合成樹脂製アンプルは、前記押圧部を指で押圧すると、前記押圧部が形成する面と直交する方向に前記押圧部が押圧され、前記底面部に設けられた前記延出部が支えとなり、前記押圧部に付与した押圧力は前記破断可能部に伝達され、前記破断可能部が破断するものとなっている自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの正面図である。
【
図2】
図2は、
図1の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの平面図である。
【
図3】
図3は、
図1の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの左側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の他の実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の他の実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の他の実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の他の実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの正面図である。
【
図9】
図9は、
図8の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの平面図である。
【
図12】
図12は、本発明の他の実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの縦断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の他の実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの縦断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の他の実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの縦断面図である。
【
図15】
図15は、本発明の他の実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの正面図である。
【
図21】
図21は、
図15の薬物充填済み合成樹脂製アンプルに用いられている筒状本体の底面図である。
【
図22】
図22は、
図15の薬物充填済み合成樹脂製アンプルに用いられている底板部材の上面側斜視図である。
【
図23】
図23は、
図15の薬物充填済み合成樹脂製アンプルに用いられている底板部材の底面側斜視図である。
【
図24】
図24は、
図20の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの破断可能部付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明の薬物充填済み合成樹脂製アンプル1は、自立可能なアンプル本体2と、アンプル本体2内に収納された薬物6とを備える。アンプル本体2は、自立時に上部に位置する先端部3と、薬物収納部23を有する中空部21と、先端部3の下部と中空部21の上部間に設けられた破断可能部5とを備える。先端部3は、破断可能部5の破断操作時に所定方向への押圧を誘導する押圧部31、32を備える。中空部21は、自立のための底面部4を有する。底面部4は、押圧部31,32の破断操作時に誘導される所定方向(X方向,Y方向)に延出する延出部41,42を備えている。
【0011】
本発明の薬物充填済み合成樹脂製アンプル1は、
図1ないし
図4に示すように、自立可能なアンプル本体2と、アンプル本体2内に収納された薬物6とを備える。
【0012】
アンプル本体2は、
図1ないし
図4に示すように、自立時に上部に位置する先端部3と、薬物収納部23を有する中空部21と、先端部3の下部と中空部21の上部間に設けられた破断可能部5とを備える。この実施例のアンプル1では、自立可能なアンプル本体2は、筒状本体20と、筒状本体20の下端開口を封止する底板部材40を備えている。筒状本体20が、中空部21、先端部3、破断可能部5を備えるものとなっている。
【0013】
筒状本体20は、下端開口を有し、上方に延びる中空部21と、中空部の上部に位置する先端部3と、先端部3の下部と中空部21の上部間、言い換えれば、先端部3と中空部21の境界部を形成するように設けられた破断可能部5とを備える。中空部21は、薬物収納部23を備える。薬物収納部23の容積は、0.5~50ml程度であることが好ましい。中空部21は、
図4に示すように、ほぼ同一外径および内径にて所定長延びる円筒部と、円筒部の上部に位置する内面テーパー部22を備えている。このため、この実施例のアンプル1では、中空部21は、破断可能部5に向かって、縮径する内面テーパー部22を備えるものとなっている。なお、テーパー部22は、内外面ともに上部に向かって縮径するテーパー部であってもよい。
【0014】
筒状本体20は、射出成型によって成形することができる。例えば、中空部21を含む筒状の本体部分を射出成型で成形後、超音波溶着または高周波溶着にて、破断可能部5を取り付けるものとしてもよい。また、破断可能部5を含む筒状本体20の全体を射出成形により形成するものであってもよい。そして、底面部4は、筒状本体20もしくは中空部21を含む筒状の本体部分を成型する際に一体となって成形してもよい。また、底面部4は、破断可能部5と同様に、筒状本体20に対して超音波溶着または高周波溶着等で後から取り付けてもよい。
【0015】
円筒部の内径としては、6~33mmが好ましく、特に、7~24mmが好ましい。また、円筒部の外径としては、7~35mmが好ましく、特に、10~25mmが好ましい。テーパー部22としては、細径部における内径が、3~12mmであることが好ましく、特に、3~9mmが好ましい。
【0016】
筒状本体20の中空部(薬物収納部23)は、収納されている薬物が目視可能に透明に形成されていることが好ましい。また、筒状本体20の薬物収納部23は、常圧でもよいが、減圧または真空状態としてもよい。このように、薬物収納部が減圧または真空状態であると、薬物の変質分解・劣化等の防止効果が向上する。
【0017】
収納される薬物6としては、粉末、顆粒状などの固体状、液体状等いかなるものでもよい。薬物としては、モルヒネ(麻薬性鎮痛薬)等の鎮痛薬、インシュリン、抗腫瘍薬、強心薬、静注麻酔薬、抗パーキンソン薬、潰瘍治療薬、副腎皮質ホルモン、不整脈薬、補正電解質、抗ウィルス薬、免疫賦活薬、抗生物質、キシロカイン等の局所麻酔薬、ビタミン、総合ビタミン剤、各種アミノ酸、ヘパリン等の抗血栓薬等が挙げられる。特に、麻薬性鎮痛薬、抗腫瘍薬などの取り扱い、管理に注意が必要な薬物が好ましい。
【0018】
破断可能部5は、薬物収納部23と先端部3の境界部付近に設けられた薄肉脆弱部である。この実施例において、薄肉脆弱部(破断可能部)は、筒状本体20の外面に形成された環状溝により形成されている。具体的には、筒状本体20のテーパー部22の上端部の外面に形成されている。そして、筒状本体20に対し、先端部3を折り曲げると、破断可能部5にて破断され、薬物収納部23が開口する。また、溝形成部は、断面がV字状となっている。具体的には、溝形成部の断面V字角度は、30~90°、特に、40~50°であることが好ましい。このような角度に溝形成部を作製することにより、先端部3を折り曲げた際、破断可能部の中心に応力が集中して確実に破断するものとなる。
【0019】
また、溝形成部は、破断容易な形状であればいかなる形状のものであってもよく、実施例のようなV字形状に限られず半円形状、半楕円形状等であってもよい。また、溝形成部の肉厚を溝部形成部付近の肉厚より相対的に薄く作製することにより破断容易としてもよい。また、破断可能部を他の部分より脆弱な材料により作製してもよい。具体的には、多色成形によって、破断可能部付近のみ容易に破断可能な材料で環状に作製して、その他の部分を破断容易でない材料にて作製することが好ましい。また、本発明の実施例では、溝形成部は環状溝形成部であり薬物収納部の外周面全周に連続して設けられているが、これに限られず断続的に設けられていてもよい。
【0020】
また、破断可能部5を形成する環状溝形成部のテーパー部側縁部、先端部側の縁部は、面取り加工されていてもよい。具体的には、テーパー部側外側縁部、先端側外側面縁部は、丸みを帯びるように作製されていてもよい。
【0021】
先端部3は、アンプル本体2の上部を形成しており、また、筒状本体20の上部に位置している。そして、先端部3は、破断可能部5の破断操作時に所定方向への押圧を誘導する押圧部31、32を備える。そして、本発明のアンプル1では、中空部21は、自立のための底面部4を有する。
【0022】
合成樹脂製アンプル1は、この底面部4を有することにより、中空部の上部が上方を向き、先端部3もその先端が上方を向く状態にて、自立する。合成樹脂製アンプル1は、ぐらつくことなく自立することが好ましい。しかし、ある程度、揺動するもの、傾斜するものであってもよい。また、揺動する場合もしくは傾斜する場合には、後述する破断可能部5の破断操作用かつ第1の所定方向(X方向)もしくは第1の所定方向と反対方向(Y方向)に揺動もしくは傾斜するものであることが好ましい。
【0023】
そして、この実施例では、底面部4は、ほぼ平坦の底面を備えており、先端部3がほぼ起立した状態にて、ぐらつくことなく、合成樹脂製アンプル1が自立するものとなっている。なお、底面部4は、底面のほぼ全体が平坦面となっていることが好ましいが、中央部が窪んだものであってもよく、また、環状の突出部を有し、この環状突出部により、自立するものであってもよい。
【0024】
特に、
図1ないし
図4に示す実施例のアンプル1では、先端部3は、破断可能部5の破断操作用かつ第1の所定方向(X方向)への押圧を誘導する第1の押圧部31と、第1の所定方向と反対方向(Y方向)への押圧を誘導する第2の押圧部32とを備えている。そして、底面部4は、押圧部31の破断操作時に誘導される所定方向(X方向)に延出する延出部41を備え、さらに、底面部4は、押圧部32の破断操作時に誘導される所定方向(Y方向)に延出する延出部42を備えている。
【0025】
また、この実施例のアンプル1では、
図4に示すように、アンプル本体2は、先端部3を含む破断可能部5より上部部分に、ガラスアンプルでは一般的な構成である薬物を保留可能な部分を持っていない。このため、破断時における薬物(特に薬液)の飛散、破断した先端部側に薬物が残留することがない。なお、この実施例では、先端部3は、中実先端部3となっている。なお、先端部は、完全な中実ではなく、内部に閉塞した内腔部を有するものであってもよい。さらに、この実施例では、破断可能部5は、上述した様に外側溝部により形成されており、内面突出部を構成しない。このため、破断可能部に起因する薬物貯留部を持たないものとなっている。
【0026】
この実施例のアンプル1では、先端部3は、板状本体部34と、板状本体部34の両面に軸方向に沿って延び、かつ、板状本体部に対して垂直に形成された複数のリブを備えている。第1の押圧部31側には、軸方向(上下方向)に延びるリブ31a,31b,31cが設けられている。そして、先端部3の上部に、破断可能部5の破断操作用かつ第1の所定方向(X方向)への押圧を誘導する第1の押圧部31が形成されている。
【0027】
具体的には、第1の押圧部31は、
図1および
図2に示すように、板状本体部34の外面に設けられた軸方向(上下方向)に延びるリブ31a,31b,31cの上部にて形成されている。リブ31a,31b,31cの上部は、ほぼ同じ高さにて、板状本体部34より突出している。このため、指により良好に押圧することができ、押圧方向は、第1の押圧部31が形成する面(仮想面)に対し、直交する方向となり、これが第1の所定方向(X方向)となっている。よって、第1の押圧部31を指等で押圧することにより、先端部3は、X方向に押圧され、破断可能部5は、第1の押圧部31の下方にて破断を開始する。そして、破断の進行により、先端部3が、X方向に倒れる。
【0028】
また、リブ31a,31b,31cは、
図2ないし
図4に示すように、押圧部31より下方に延びるに従って、突出長が大きくなっており、先端部3の全体における補強部を形成している。
【0029】
そして、先端部3の上部に、破断可能部5の破断操作用かつ第2の所定方向(Y方向)への押圧を誘導する第2の押圧部32が形成されている。また、この実施例のアンプル1では、先端部3は、第1の押圧部側と同様に、第2の押圧部32側にも、軸方向(上下方向)に延びるリブ32a,32b,32cが設けられている。
【0030】
第2の押圧部32は、
図2に示すように、板状本体部34の外面に設けられた軸方向(上下方向)に延びるリブ32a,32b,32cの上部にて形成されている。リブ32a,32b,32cの上部は、ほぼ同じ高さにて、板状本体部34より突出している。このため、指により良好に押圧することができ、押圧方向は、第2の押圧部32が形成する面(仮想面)に対し、直交する方向となり、これが第2の所定方向(Y方向)となっている。よって、第2の押圧部32を指等で押圧することにより、先端部3は、Y方向に押圧され、破断可能部5は、第2の押圧部32の下方にて破断を開始する。そして、破断の進行により、先端部が、Y方向に倒れる。
【0031】
また、リブ32a,32b,32cは、
図2に示すように、押圧部32より下方に延びるに従って、突出長が大きくなっており、先端部3の全体における補強部を形成している。
なお、押圧部31,32は、一方のみでもよく、また、押圧部は、上述したようなリブではなく、平板部により形成してもよい。
【0032】
そして、本発明のアンプル1では、アンプル本体2は、押圧部31の破断操作時に誘導される所定方向(X方向)に延出する延出部41と、押圧部32の破断操作時に誘導される所定方向(Y方向)に延出する延出部42を備えている。
延出部41,42は、アンプル本体2の底面部に形成されている。
図1ないし
図4に示す実施例のアンプル1では、底面部4は、底板部材40により形成されており、
延出部41,42は、底板部材40に形成されている。この実施例の底板部材40は、
図4に示すように、板状の底板本体と、底板本体の上面より、上方に延びる筒状部43を備えている。筒状部43は、筒状本体20の下端開口24内に、進入している。
【0033】
そして、底面部4を形成する底板部材40は、
図1ないし
図4に示すように、筒状本体20の下端面より外側(半径方向外側)に延出する第1の延出部41を備えている。そして、この第1の延出部41は、押圧部31の破断操作時に誘導される第1の所定方向(X方向)に延出するものとなっている。このため、自立させた状態にて、先端部に設けられた押圧部31を誘導される押圧方向(X方向)に押圧すると、押圧時に、底面部4(底板部材40)に設けられた延出部41が支えとなり、押圧部31に付与した押圧力を確実に破断可能部に伝達でき、破断可能部は、容易に破断する。
【0034】
また、この実施例のアンプル1では、底面部4を形成する底板部材40は、
図1ないし
図4に示すように、筒状本体20の下端面より外側(半径方向外側)に延出する第2の延出部42を備えている。第2の延出部42は、第1の延出部41と向かい合うように設けられている。そして、この第2の延出部42は、押圧部32の破断操作時に誘導される第2の所定方向(Y方向)に延出するものとなっている。このため、自立させた状態にて、先端部に設けられた押圧部32を誘導される押圧方向(Y方向)に押圧すると、押圧時に、底面部4(底板部材40)に設けられた延出部42が支えとなり、押圧部32に付与した押圧力を確実に破断可能部に伝達でき、破断可能部は、容易に破断する。
【0035】
また、この実施例のアンプル1では、底面部4を形成する底板部材40は、
図1ないし
図4に示すように、筒状本体20の下端面より外側(半径方向外側)に延出するさらに2つの延出部47,48を備えている。そして、この実施例のアンプル1では、延出部47,48は、向かい合うように設けられている。また、延出部47,48は、延出部31,32の結ぶ仮想線に対して、ほぼ直交するように設けられている。さらに、この実施例のアンプル1では、底面部4(底板部材40)の外形は、矩形状、具体的には、ほぼ正方形状のものとなっている。このため、アンプル1を倒した時、アンプルの回転、揺動を規制するものとなっている。
【0036】
なお、本発明の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの底面部の形態は、
図5に示す実施例のアンプル1aのようなものであってもよい。この実施例のアンプル1aでは、底面部4aは、向かい合う2つのみの延出部41a,42aを備えている。上述したアンプル1と同様に、延出部41aは、X方向に延出し、延出部42aは、Y方向に延出している。延出部41a,42aの外縁は、丸みを帯びたものとなっている。そして、この実施例の底面部4aは、延出部41a,42a以外の延出部を持たないものとなっている。このため、この実施例のアンプル1aでは、底面部4aは、底面部4aの中央から延出部41a,42aの外縁までの距離が、底面部4aの中央からの外縁までの最長距離部となっている。この実施例においても、延出部を備えることにより、アンプル転倒時において、アンプルは転がらないものとなっている。
【0037】
また、本発明の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの底面部の形態は、
図6に示す実施例のアンプル1bのようなものであってもよい。この実施例のアンプル1bでは、底面部4bは、向かい合う2つのみの延出部41b,42bを備えている。上述したアンプル1と同様に、延出部41bは、X方向に延出し、延出部42bは、Y方向に延出している。延出部41b,42bの外縁は、丸みを帯びたものとなっている。そして、この実施例の底面部4bは、延出部41b,42b以外の延出部を持たないものとなっている。また、延出部41bは、延出部42bより、延出長が長いものとなっている。このため、この実施例のアンプル1bでは、底面部4bは、底面部4bの中央から延出部41bの外縁までの距離が、底面部4bの中央からの外縁までの最長距離部となっている。この実施例においても、延出部を備えることにより、アンプル転倒時において、アンプルは転がらないものとなっている。
【0038】
また、本発明の薬物充填済み合成樹脂製アンプルの底面部の形態は、
図7に示す実施例のアンプル1cのようなものであってもよい。この実施例のアンプル1cでは、底面部4cは、1つのみの延出部41cを備えている。上述したアンプル1と同様に、延出部41cは、X方向に延出している。延出部41cの外縁は、丸みを帯びたものとなっている。そして、この実施例の底面部4cは、延出部41c以外の延出部を持たないものとなっている。このため、この実施例のアンプル1cでは、底面部4cは、底面部4cの中央から延出部41cの外縁までの距離が、底面部4cの中央からの外縁までの最長距離部となっている。この実施例においても、延出部を備えることにより、アンプル転倒時において、アンプルは転がらないものとなっている。
【0039】
次に、
図8ないし
図11に示す実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプル1dについて説明する。
この実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプル1dと上述した実施例のアンプル1との相違は、底面部の形成形態、具体的には、筒状本体の下部形態および底板部材の形態のみであり、その他の部分については、同じである。同じ符号を付した部分については、上述した説明を参照する。
【0040】
この実施例のアンプル1dでは、アンプル本体2aの筒状本体20aは、上方に延びる中空部21aと、中空部の上部に位置する先端部3と、先端部3の下部と中空部21aの上部間、言い換えれば、先端部3と中空部21aの境界部を形成するように設けられた破断可能部5とを備える。そして、アンプル本体2aの筒状本体20aは、下端開口より外方に延出する膨出部25,26を備えている。そして、この膨出部25,26の下面により、底面部4dは、延出部25a,26aを有するものとなっている。
【0041】
筒状本体20aは、下端より外側(半径方向外側)に膨出する第1の膨出部25を備え、この膨出部25の下面は平坦面となっており、第1の延出部25aを形成している。そして、この第1の延出部25aは、押圧部31の破断操作時に誘導される第1の所定方向(X方向)に延出するものとなっている。このため、自立させた状態にて、先端部に設けられた押圧部31を誘導される押圧方向(X方向)に押圧すると、押圧時に、筒状本体20a(底板部材40a)に設けられた延出部25aが支えとなり、押圧部31に付与した押圧力を確実に破断可能部に伝達でき、破断可能部は、容易に破断する。
【0042】
同様に、筒状本体20aは、下端より外側(半径方向外側)に膨出する第2の膨出部26を備え、この膨出部26の下面は平坦面となっており、第2の延出部26aを形成している。そして、この第2の延出部26aは、押圧部32の破断操作時に誘導される第2の所定方向(Y方向)に延出するものとなっている。このため、自立させた状態にて、先端部に設けられた押圧部32を誘導される押圧方向(Y方向)に押圧すると、押圧時に、筒状本体20aに設けられた延出部26aが支えとなり、押圧部32に付与した押圧力を確実に破断可能部に伝達でき、破断可能部は、容易に破断する。
【0043】
そして、この実施例のアンプル1dでは、筒状本体20aの下端開口を封止する底板部材40aは、
図11に示すように、筒状本体20aの下端面に形成された凹部内に嵌入可能な形態を有している。また、底板部材40aの外縁は、筒状本体20aの外縁に到達しないものとなっている。
【0044】
この実施例のアンプル1dでは、底面部4dは、向かい合う2つのみの延出部25a,26a(膨出部25,26)を備えている。そして、この実施例の底面部4dは、延出部25a,26a以外の延出部を持たないものとなっている。このため、この実施例のアンプル1dでは、底面部4dは、底面部4dの中央から延出部25a,26aの外縁までの距離が、底面部4dの中央からの外縁までの最長距離部となっている。なお、延出部は、上述したアンプル1と同様に、4つ設けてもよい。また、上述した実施例のアンプル1cのように一方のみ、具体的には、膨出部25(延出部25a)のみ、または、膨出部26(延出部26a)のみであってもよい。
【0045】
また、上述したアンプル1dのように、筒状本体が膨出部を有し、その下端面より延出部が形成されている実施例において、筒状本体の膨出部は、
図12に示す実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプル1eのように、中空部となっているものであってもよい。この実施例のアンプル1eでは、筒状本体20cの下端部は、中空状でありかつ外方に膨出した膨出部25,26を備えている。そして、この膨出部の下端面および底板部材40cの外縁部により、延出部25a,26aが形成されている。
【0046】
また、底板部材により延出部が形成される実施例においても、
図13に示す実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプル1fのように、筒状本体は、下部膨出部を有するものであってもよい。そして、
図13に示す実施例のアンプル1fのように、膨出部は、中空部となっているものであってもよい。この実施例のアンプル1fでは、筒状本体20bの下端部は、中空状でありかつ外方に膨出した膨出部25,26を備えている。そして、この膨出部を含む筒状本体の下端面は装着された底板部材40bの外縁部により、延出部41,42が形成されている。
【0047】
また、すべての実施例において、
図14に示すアンプル1gの底板部材40dのように、底板部材は、底板部材内に形成された薬物収納部の底面部の中心方向に向かって傾斜する錐体状上面45を備えているものであってもよい。この実施例では、筒状本体内への挿入部44の上面は、底板部材40dの中心方向に向かって縮径する円錐状上面45を備えるものとなっている。なお、錐体状上面は、多角錐状上面であってもよい。このような錐体状上面を設けることにより、薬物採取作業の終了時において、薬物が、円錐状上面45の中心に集まるため、より確実に薬物を採取することができる。
【0048】
そして、本発明の薬物充填済み合成樹脂製アンプルは、薬物が充填され密封された状態にて、加圧蒸気滅菌されている。特に、120℃以上の温度にて加圧蒸気滅菌されていることが好ましい。具体的には、加圧蒸気滅菌条件としては、オーバーキル条件(ISO/TS 17665-2)である121℃、15分にて行うことが好ましい。
【0049】
薬物充填済み合成樹脂製アンプル本体(筒状本体および底板部材)の構成材料としては、加圧蒸気滅菌可能なものであることが好ましい。特に、上記のオーバーキル条件(ISO/TS 17665-2)に適応可能なものであることが好ましい。具体的には、アンプル本体の構成材料としては、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、環状ポリオレフィン、具体的には、ZEONEX(日本ゼオン株式会社製)、APEL(三井化学株式会社製)、ポリプロピレンホモポリマー、高密度ポリエチレンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ブタジエン-スチレン共重合体、芳香族または脂肪族ポリアミド等の各種樹脂、あるいはこれらを任意に組み合わせたものが挙げられる。
本合成樹脂製アンプル本体は、前述の通り、射出成型にて成形されるものであり、射出成形に適した硬質の各種樹脂材料を用いることが好ましい。
【0050】
次に、
図15ないし
図24に示す実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプルについて説明する。
この実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプル10は、自立可能なアンプル本体7と、アンプル本体7内に収納された薬物6とを備える。アンプル本体7は、自立時に上部に位置する先端部3と、薬物収納部78を有する中空部71と、先端部3の下部と中空部71の上部間に設けられた破断可能部5とを備える。先端部3は、破断可能部5の破断操作時に所定方向への押圧を誘導する押圧部31、32を備える。中空部71は、自立のための底面部9を有する。底面部9は、押圧部31,32の破断操作時に誘導される所定方向(X方向,Y方向)に延出する延出部92a,92bを備えている。
【0051】
この実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプル10は、
図15ないし
図23に示すように、自立可能なアンプル本体7と、アンプル本体7内に収納された薬物6とを備える。アンプル本体7は、筒状本体70とその下端開口を封止する底板部材90により構成されている。この実施例の薬物充填済み合成樹脂製アンプル10の基本構成は、上述した薬物充填済み合成樹脂製アンプル1と同じである。主な相違点は、底面部9の構成、筒状本体70の中空部71の上部の形態である。
【0052】
アンプル本体7は、
図15ないし
図23に示すように、自立時に上部に位置する先端部3と、薬物収納部78を有する中空部71と、先端部3の下部と中空部71の上部間に設けられた破断可能部5とを備える。この実施例のアンプル10では、自立可能なアンプル本体7は、筒状本体70と、筒状本体70の下端開口を封止する底板部材90を備えている。筒状本体70が、中空部71、先端部3、破断可能部5を備えるものとなっている。
【0053】
筒状本体70は、下端開口を有し、上方に延びる中空部71と、中空部の上部に位置する先端部3と、先端部3の下部と中空部71の上部間、言い換えれば、先端部3と中空部71の境界部を形成するように設けられた破断可能部5とを備える。中空部71は、薬物収納部78を備える。薬物収納部78の容積は、0.5~50ml程度であることが好ましい。中空部71は、
図20に示すように、ほぼ同一外径および内径にて所定長延びる円筒部と、円筒部の上部に位置する縮径部72を備えている。このため、この実施例のアンプル10では、中空部71は、破断可能部5に向かって、内径および外径ともに縮径するものとなっている。
【0054】
また、縮径部72は、
図20および
図24に示すように、円筒部の先端より湾曲しながら縮径する湾曲内面部72aと、湾曲内面部72aの先端から先端部3の内底面33までほぼ同一内径にて延びる円筒状内面部72bを備えている。そして、破断可能部5は、円筒状内面部72b、特に、円筒状内面部72bの上部部位(先端部3の内底面33に近接する部位)に、位置するものとなっている。上記のような形態とすることにより、薬液吸い切りの際、針先の刃面が沿いやすいものとなる。
【0055】
筒状本体70は、射出成型によって成形することができる。底板部材90は、筒状本体70に対して超音波溶着または高周波溶着等で後から取り付けられる。 筒状本体70の円筒部の内径としては、6~33mmが好ましく、特に、7~24mmが好ましい。また、円筒部の外径としては、7~35mmが好ましく、特に、10~25mmが好ましい。縮径部72としては、円筒状内面部72bにおける内径が、3~12mmであることが好ましく、特に、3~9mmが好ましい。
【0056】
筒状本体70の中空部(薬物収納部78)は、収納されている薬物が目視可能に透明に形成されていることが好ましい。また、筒状本体70の薬物収納部78は、常圧でもよいが、樹脂にガスバリア性を持たせた場合には、減圧または真空状態としてもよい。このように、薬物収納部が減圧または真空状態であると、薬物の変質分解・劣化等の防止効果が向上する。収納される薬物6としては、上述したものが使用される。
【0057】
破断可能部5は、薬物収納部78と先端部3の境界部付近に設けられた薄肉脆弱部である。この実施例において、薄肉脆弱部(破断可能部)は、筒状本体70の外面に形成された環状溝により形成されている。具体的には、筒状本体70の縮径部72の上端部の外面に形成されている。そして、筒状本体70に対し、先端部3を折り曲げると、破断可能部5にて破断され、薬物収納部78が開口する。また、溝形成部は、断面がV字状となっている。
また、上述したすべての実施例を含め、溝形成部の断面V字角度は、30~90°、特に、50~70°であることが好ましい。このような角度に溝形成部を作製することにより、先端部3を折り曲げた際、破断可能部の中心に応力が集中して確実に破断するものとなる。また、破断可能部5における筒状本体70の肉厚は、0.05~0.5mmが好ましく、特に、0.1~0.4mmが好ましい。
【0058】
また、破断可能部および溝形成部は、破断容易な形状であればいかなる形状のものであってもよく、実施例のようなV字形状に限られず半円形状、半楕円形状等であってもよい。また、溝形成部の肉厚を溝部形成部付近の肉厚より相対的に薄く作製することにより破断容易としてもよい。また、破断可能部を他の部分より脆弱な材料により作製してもよい。具体的には、多色成形によって、破断可能部付近のみ容易に破断可能な材料で環状に作製して、その他の部分を破断容易でない材料にて作製することが好ましい。また、本発明の実施例では、溝形成部は環状溝形成部であり薬物収納部の外周面全周に連続して設けられているが、これに限られず断続的に設けられていてもよい。
【0059】
また、破断可能部5を形成する環状溝形成部のテーパー部側縁部、先端部側の縁部は、面取り加工されていてもよい。具体的には、テーパー部側外側縁部、先端側外側面縁部は、丸みを帯びるように作製されていてもよい。
先端部3は、アンプル本体7の上部を形成しており、また、筒状本体70の上部に位置している。そして、先端部3は、破断可能部5の破断操作時に所定方向への押圧を誘導する押圧部31、32を備える。先端部3については、上述した合成樹脂製アンプル1にて説明したものと同じである。
【0060】
そして、この実施例のアンプル10では、自立のための底面部9を有する。合成樹脂製アンプル10は、この底面部9を有することにより、中空部の上部が上方を向き、先端部3もその先端が上方を向く状態にて、自立する。合成樹脂製アンプル10は、ぐらつくことなく自立することが好ましい。また、揺動する場合もしくは傾斜する場合には、後述する破断可能部5の破断操作用かつ第1の所定方向(X方向)もしくは第1の所定方向と反対方向(Y方向)に揺動もしくは傾斜するものであることが好ましい。
【0061】
そして、第1の押圧部31を指等で押圧することにより、先端部3は、X方向に押圧され、破断可能部5は、第1の押圧部31の下方にて破断を開始する。そして、破断の進行により、先端部3が、X方向に倒れる。同様に、第2の押圧部32を指等で押圧することにより、先端部3は、Y方向に押圧され、破断可能部5は、第2の押圧部32の下方にて破断を開始する。そして、破断の進行により、先端部3が、Y方向に倒れる。
【0062】
そして、この実施例のアンプル10では、底面部9は、先端部3の押圧部32の破断操作時に誘導される所定方向(Y方向)に延出する延出部92aと、先端部3の押圧部31の破断操作時に誘導される所定方向(X方向)に延出する延出部92bとを備えている。
この実施例のアンプル10では、底板部材90と筒状本体70の下端77に設けられたフランジ部73により、底面部9が形成されている。具体的には、この実施例のアンプル10では、アンプル本体7は、中空部の下端77に設けられた外方に延びるフランジ部73と、中空部の下端77の開口を封止するとともに、フランジ部73の下面に上面が当接した底板部材90とを備えている。底面部9が、フランジ部とそれと積層された底板部材90により構成されているので、底面部9は、十分な強度および剛性を備えている。
【0063】
筒状本体70のフランジ部73は、
図15ないし
図21に示すように、外筒本体70の下端77より外方に延びるように設けられており、円盤状のものとなっている。また。フランジ部73は、ほぼ均一の肉厚を有するものとなっている。そして、この実施例のものでは、フランジ部73は、向かい合う2つの凹部74a,74bを備えている。凹部74a,74bは、波状の凹部となっている。また、フランジ部73は、向かい合う2つの湾曲角部75a,75bを備えている。そして、フランジ部73の凹部74a,74bと湾曲角部75a,75bを繋ぐ外縁は、ほぼ直線状に延びるものとなっている。よって、フランジ部73は、矩形板形状のフランジ部であり、かつ、向かい合う1組の角部が、凹部を備え、向かい合う他の組の角部が、湾曲角部を備えるものとなっている。
【0064】
そして、底板部材90は、
図22に示すように、基板部91と、基板部91の向かい合う角部に位置する延出部92a、92bを備えている。延出部92aは、先端部3の押圧部32の破断操作時に誘導される所定方向(Y方向)に延出している。延出部92bは、先端部3の押圧部31の破断操作時に誘導される所定方向(X方向)に延出している。また、延出部92a、92bは、上方に突出する突出部となっている。具体的には、延出部92a、92bは、向かい合う中央凹部を有する略ハート状の突出
部を形成している。延出部92a、92bは、中央凹部の両側部に形成された膨出部を有する。延出部92aは、フランジ部73の凹部74aと係合し、延出部92bは、フランジ部73の凹部74bと係合している。さらに、この実施例の底板部材90は、
図22に示すように、基板部91の上面
に形成された環状リブ95を備えている。この環状リブ95は、
図20に示すように、筒状本体70の下端77の開口部内に進入し、係合するものとなっている。また、底板部材90を筒状本体70のフランジ部73(下端77の開口部)に、超音波融着する場合には、上記環状リブ95は、超音波シール用リブとして利用できる。
【0065】
さらに、この実施例の底板部材90は、
図23に示すように、基板部91の下面に形成された中央環状下部リブ93と、各角部に形成された角部下部リブ94a,94b,94c,94dを備えている。そして、中央環状下部リブ93、角部下部リブ94a,94b,94c,94dの下面は、ほぼ同じ平面上となるように形成されている。そして、中央環状下部リブ93の上部には、環状リブ95が位置している。また、角部下部リブ94aの上部には、延出部92aが位置し、角部下部リブ94bの上部には、延出部92bが位置するものとなっている。 そして、底板部材90の上面に筒状本体70のフランジ部73が、積層されることにより、底板部9が形成されている。この実施例のアンプル10においても、底面部9(底板部材90)の外形は、矩形状、具体的には、ほぼ正方形状のものとなっている。このため、アンプル
10の転倒時における、アンプルの回転、揺動を規制するものとなっている。また、すべて角部が丸みを帯びたのとなっているので、アンプルを握った際に、作業者に痛みを与えることもない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプルは、以下のものである。
(1) 薬物充填済み合成樹脂製アンプルであって、前記合成樹脂製アンプルは、自立可能なアンプル本体と、前記アンプル本体内に収納された前記薬物とを備え、前記アンプル本体は、自立時に上部に位置する先端部と、薬物収納部を有する中空部と、前記先端部の下部と前記中空部の上部間に設けられた破断可能部とを備え、前記先端部は、前記破断可能部の破断操作時に所定方向への押圧を誘導する押圧部を備え、前記中空部は、自立のための底面部を有し、前記底面部は、前記押圧部の前記所定方向に延出する延出部を備えている自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
【0067】
特に、この薬物充填済み合成樹脂製アンプルは、自立のための底面部を有し、かつ、底面部は、押圧部の所定方向に延出する延出部を備えている。このため、自立させた状態にて、先端部に設けられた押圧部を誘導される押圧方向に押圧すると、押圧時に、底面部に設けられた延出部が支えとなり、押圧部に付与した押圧力を確実に破断可能部に伝達でき、破断可能部は、容易かつ安全に破断する。このため、自立状態における開栓操作が極めて容易に行うことができる。さらに、薬物の飛散による被ばくを防止できる。また、容器の破損、転倒に起因する薬剤流失が極めて少ないため、特に厳重管理が必要な薬物を安全に管理、使用することができる。さらに、開栓後の合成樹脂製アンプルは、自立状態を維持するため、その後の薬物の吸引作業も容易である。
【0068】
また、上記の実施態様は、以下のものであってもよい。
(2) 前記先端部は、前記破断可能部の破断操作用かつ第1の所定方向への押圧を誘導する第1の押圧部と、前記第1の所定方向と反対方向への押圧を誘導する第2の押圧部とを備え、前記底面部は、前記第1の所定方向に延出する第1の延出部と、前記反対方向に延出する第2の延出部を備えている上記(1)に記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
(3) 前記アンプル本体は、前記先端部を含む前記破断可能部より上部部分に、薬物を保留可能な部分を持っていない上記(1)または(2)に記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
(4) 前記底面部は、前記底面部の中央から前記延出部の外縁までの距離が、前記底面部の中央からの外縁までの最長距離部となっている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
(5) 前記アンプル本体は、前記中空部の下端開口を封止する底板部材を備えている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
(6) 前記底板部材は、前記底板部材内に形成された前記薬物収納部の底面部の中心方向に向かって傾斜する錐体状上面を備えている上記(5)に記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
(7) 前記延出部は、前記底板部材に設けられている上記(5)または(6)に記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
(8) 前記延出部は、前記中空部の下端部に設けられている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
(9) 前記中空部は、前記破断可能部に向かって、縮径する内面テーパー部を備えている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。
(10) 前記アンプル本体は、前記中空部の下端開口に設けられた外方に延びるフランジ部と、前記中空部の下端開口を封止するとともに、前記フランジ部の下面に上面が当接した底板部材とを備えている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の自立可能な薬物充填済み合成樹脂製アンプル。