(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】超低温容器
(51)【国際特許分類】
F17C 3/08 20060101AFI20220519BHJP
B65D 88/06 20060101ALI20220519BHJP
B23K 9/23 20060101ALI20220519BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
F17C3/08
B65D88/06 B
B23K9/23 B
B23K9/00 501K
(21)【出願番号】P 2018001604
(22)【出願日】2018-01-10
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】502450631
【氏名又は名称】エア・ウォーター・プラントエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】山内 樹
(72)【発明者】
【氏名】今井 久司
(72)【発明者】
【氏名】千葉 達也
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-308014(JP,A)
【文献】特開2008-291862(JP,A)
【文献】特開2013-228082(JP,A)
【文献】特表2001-527167(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0337421(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
B65D 88/06
B23K 9/23
B23K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超低温の収容対象が収容される1または2以上の内容器と、上記内容器が収容される外容器と、上記内容器と上記外容器の間に形成される真空断熱層とを備え、
上記内容器は金属製で、円筒状の胴部と上記胴部の両端開口を塞ぐ鏡板が溶接部を介して接合されて構成され、
上記内容器の少なくとも上記胴部が、下記の材料(A)からなるものである
ことを特徴とする超低温容器。
(A)米国材料試験協会(ASTM)で規定されている201LN
、米国機械学会(ASME)で規定されているSA240-201LN、ユニファイドナンバリングシステム(UNS)で規定されているS20153、のうちいずれかの規格の材料。
【請求項2】
上記材料(A)は、ニッケルを4~5重量%、マンガンを6.4~7.5重量%含むオーステナイト系ステンレス鋼である
請求項1記載の超低温容器。
【請求項3】
上記胴部は、板材を湾曲させて突き合せた端部が第1の溶接部を介して接合されて円筒状に形成され、
上記第1の溶接部が、下記の溶接材料(P)(Q)(R)のうち少なくともいずれかが用いられたものである
請求項1または2記載の超低温容器。
(P)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS308LS
i規格の材料。
(Q)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316
L規格の材料。
(R)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316L
N規格の材料。
【請求項4】
上記第1の溶接部が、プラズマ溶接による溶接部,TIG溶接による溶接部,MIG溶接による溶接部のうち少なくともいずれかである
請求項3記載の超低温容器。
【請求項5】
上記鏡板が、上記材料(A)からなるものである
請求項1~4のいずれか一項に記載の超低温容器。
【請求項6】
上記胴部と上記鏡板を接合する溶接部が、下記の溶接材料(P)(Q)(R)のうち少なくともいずれかが用いられた第2の溶接部である
請求項5記載の超低温容器。
(P)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS308LS
i規格の材料。
(Q)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316
L規格の材料。
(R)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316L
N規格の材料。
【請求項7】
上記第2の溶接部が、プラズマ溶接による溶接部,TIG溶接による溶接部,MIG溶接による溶接部のうち少なくともいずれかである
請求項6記載の超低温容器。
【請求項8】
上記鏡板が、下記の材料(B)(C)(D)(E)のうちいずれかからなるものである
請求項1~4のいずれか一項に記載の超低温容器。
(B)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS30
4規格の材料。
(C)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS304
L規格の材料。
(D)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS31
6規格の材料。
(E)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316
L規格の材料。
【請求項9】
上記胴部と上記鏡板を接合する溶接部が、下記の溶接材料(P)(Q)(R)のうち少なくともいずれかが用いられた第3の溶接部である
請求項8記載の超低温容器。
(P)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS308LS
i規格の材料。
(Q)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316
L規格の材料。
(R)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316L
N規格の材料。
【請求項10】
上記第3の溶接部が、プラズマ溶接による溶接部,TIG溶接による溶接部,MIG溶接による溶接部のうち少なくともいずれかである
請求項9記載の超低温容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体窒素などの低温液化ガスの収容に適用することができる超低温容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超低温容器の一例として、低温液化ガスを貯蔵する低温液化ガス容器が使用されている。上記低温液化ガス容器は、ガスが液化された低温液化ガスを貯蔵し、液体のままあるいは気化させたガス状で取り出して利用に供するものである。貯蔵するガスは、窒素,アルゴン,酸素,炭酸ガス等の無機系ガスや、天然ガス,エチレン等の有機系ガスがあげられる。このような低温液化ガス容器には、大型の定置式貯槽、比較的小型の可搬式容器、あるいはタンクローリ等に搭載する移動式タンク等が、各々の産業分野で使用されている。
【0003】
このような低温液化ガス容器には、本体重量の軽量化が求められる。特に移動式タンクでは、軽量化すなわち積載重量の増量であり、低温液化ガスの輸送コストに直結するからである。もちろん定置式貯槽や可搬式容器であっても、その軽量化は、容器自体の輸送コストを節減するものである。また、きわめて当然のことながら、輸送コストだけでなく、容器自体の製造コストも節減することが、常に求められる。
【0004】
このような低温液化ガス容器に関する先行技術として、本出願人は、以下の特許文献1を把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
上記特許文献1には、つぎの記載がある。
[0004]
しかしながら、さらなる輸送効率の向上が望まれており、そのためには、上記二重殻タンクをさらに軽量化することが必要となる。
[0005]
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、さらなる軽量化を実現することができる超低温容器構造体の提供をその目的とする。
[0006]
上記の目的を達成するため、本発明の超低温容器構造体は、金属板同士が溶接されてなる超低温容器と、この超低温容器に取り付けられている付属部材とを備えた超低温容器構造体であって、上記超低温容器を構成する金属板の一部もしくは上記付属部材の少なくとも一部が、下記の(A)または(B)からなり、それ以外の部分が、下記の(C)または(D)からなり、下記の(A)または(B)からなる部分同士の溶接および下記の(A)または(B)からなる部分と下記の(C)または(D)からなる部分との溶接が、下記の(a)または(b)からなる溶接ワイヤまたは溶接棒が用いられて行われているという構成をとる。
(A)日本工業規格(JIS)G4304(1999年)で規定されている材料SUS304N2。
(B)日本工業規格(JIS)G4305(1999年)で規定されている材料SUS304N2。
(C)日本工業規格(JIS)G4304(1999年)で規定されている材料SUS304,SUS304L,SUS316もしくはSUS316L。
(D)日本工業規格(JIS)G4305(1999年)で規定されている材料SUS304,SUS304L,SUS316もしくはSUS316L。
(a)ステンレス協会規格(SAS)521(1991年)で規定されている溶接材料AD316LN,AY316LN,AYF316LNもしくはAS316LN。
(b)ステンレス協会規格(SAS)521(1991年)で規定されている溶接材料AD317LN,AY317LN,AYF317LNもしくはAS317LN。
[0010]
そこで、本発明者らは、さらに鋭意研究を重ねた。その結果、上記常識に反して、上記SUS304N2からなる金属板同士の溶接における溶接材料として、使用が推奨されていない溶接材料である上記(a)〔以下、上記(a)のAD316LN,AY316LN,AYF316LNもしくはAS316LNを、単に「316LN」と略す〕または(b)〔以下、上記(b)のAD317LN,AY317LN,AYF317LNもしくはAS317LNを、単に「317LN」と略す〕を使用すると、室温(25℃)での溶接継手の引張試験および曲げ試験たけでなく、-150℃以下での溶接継手の衝撃試験も満足することを突き止めた。さらに、その溶接材料316LNまたは317LNは、上記SUS304N2からなる金属板と上記(C)または(D)からなる金属板との溶接においても、室温(25℃)での溶接継手の引張試験および曲げ試験たけでなく、-150℃以下での溶接継手の衝撃試験も満足することも見出し、本発明に到達した。
[0011]
このように、本発明の超低温容器構造体では、常識に反する金属材料および溶接材料を使用している。すなわち、本発明の超低温容器構造体では、超低温容器に使用することを通常発想しない材料SUS304N2を超低温容器の一部等に使用しており、しかも、そのSUS304N2からなる金属板等同士の溶接およびSUS304N2からなる金属板等と従来より使用されている上記(C)または(D)からなる金属板等との溶接には、溶接ワイヤまたは溶接棒として、使用することを通常発想しない溶接材料316LNまたは317LNからなるものを使用している。
[0012]
なお、従来より使用されている上記(C)または(D)からなる金属板等同士の溶接には、溶接ワイヤまたは溶接棒として、従来より推奨されている通常の溶接材料からなるものが使用される。すなわち、上記(C)または(D)のうち、金属板等がSUS304の場合は、溶接材料はAD308,AY308,AYF308もしくはAS308(以下、これら4種類を、単に「308」と略す)またはAD308L,AY308L,AYF308LもしくはAS308L(以下、これら4種類を、単に「308L」と略す)が使用され、金属板等がSUS304Lの場合は、溶接材料は上記308Lが使用され、金属板等がSUS316の場合は、溶接材料はAD316,AY316,AYF316もしくはAS316またはAD316L,AY316L,AYF316LもしくはAS316L(以下、これら4種類を、単に「316L」と略す)が使用され、金属板等がSUS316Lの場合は、溶接材料は上記316Lが使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
低温液化ガス用の超低温容器の周辺には、依然としてつぎのような問題があり、容器重量のさらなる軽量化と製造コストの節減が求められている。
(1)低温液化ガス用の超低温容器には、高圧ガスに関する法令で定められた材料が存在する。実務的には、その材料を使用した容器でなければ産業界で使用できない。この点において、容器の軽量化に対して加えられる工夫に制限がある。このため、各製造業者にとって、開発に対する動機づけが弱いのが実情である。
(2)また、タンクローリー用の移動式タンクでは、道路交通に関する法令による規制が存在し、輸送可能な重量(貯槽の重量および積載量)が制限されている。
(3)したがって、タンクローリー用の移動式タンクは、貯槽の重量も積載量も、各製造業者のあいだで同程度である。各社ともにコストメリットを出せていない。
(4)上記特許文献1で採用されているSUS304N2材は、コスト面で十分なメリットがでないのが実情である。上記SUS304N2材は、各鉄鋼メーカーの生産量が少なく、市場での流通性が悪いことによる。
【0008】
本発明の目的はつぎに示すとおりであり、上記課題を解決することにある。
容器重量のさらなる軽量化と製造コストの節減を実現する超低温容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したように、低温液化ガス用の超低温容器においては、超低温での機械的性質を確保する必要があることから、使用できる金属材料は高圧ガス保安法で定められている。業界は、その法令を遵守しなければならない。言い換えれば、法令を遵守していればよい、というのが、業界の常識である。このため、新たな材料への開発意欲はなく、極めて保守的なのが実情である。しかしながら、誰かが何らかの開発をしなければ、いつまでたっても技術的な進歩を見ることがなく、我が国の技術が世界から立ち遅れることになる。
そこで、本発明者らは、上記のような常識に根ざす風潮を打ち破り、業界を先駆ける技術革新を目指して研究と開発に専心し、本発明を完成するに至った。
【0010】
請求項1記載の超低温容器は、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
超低温の収容対象が収容される1または2以上の内容器と、上記内容器が収容される外容器と、上記内容器と上記外容器の間に形成される真空断熱層とを備え、
上記内容器は金属製で、円筒状の胴部と上記胴部の両端開口を塞ぐ鏡板が溶接部を介して接合されて構成され、
上記内容器の少なくとも上記胴部が、下記の材料(A)からなるものである。
(A)米国材料試験協会(ASTM)で規定されている201LN、、米国機械学会(ASME)で規定されているSA240-201LN、ユニファイドナンバリングシステム(UNS)で規定されているS20153、のうちいずれかの規格の材料。
【0011】
請求項2記載の超低温容器は、請求項1記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記材料(A)は、ニッケルを4~5重量%、マンガンを6.4~7.5重量%含むオーステナイト系ステンレス鋼である。
【0012】
請求項3記載の超低温容器は、請求項1または2記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記胴部は、板材を湾曲させて突き合せた端部が第1の溶接部を介して接合されて円筒状に形成され、
上記第1の溶接部が、下記の溶接材料(P)(Q)(R)のうち少なくともいずれかが用いられたものである。
(P)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS308LSi規格の材料。
(Q)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316L規格の材料。
(R)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316LN規格の材料。
【0013】
請求項4記載の超低温容器は、請求項3記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記第1の溶接部が、プラズマ溶接による溶接部,TIG溶接による溶接部,MIG溶接による溶接部のうち少なくともいずれかである。
【0014】
請求項5記載の超低温容器は、請求項1~4のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記鏡板が、上記材料(A)からなるものである。
【0015】
請求項6記載の超低温容器は、請求項5記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記胴部と上記鏡板を接合する溶接部が、下記の溶接材料(P)(Q)(R)のうち少なくともいずれかが用いられた第2の溶接部である。
(P)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS308LSi規格の材料。
(Q)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316L規格の材料。
(R)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316LN規格の材料。
【0016】
請求項7記載の超低温容器は、請求項6記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記第2の溶接部が、プラズマ溶接による溶接部,TIG溶接による溶接部,MIG溶接による溶接部のうち少なくともいずれかである。
【0017】
請求項8記載の超低温容器は、請求項1~4のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記鏡板が、下記の材料(B)(C)(D)(E)のうちいずれかからなるものである。
(B)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS304規格の材料。
(C)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS304L規格の材料。
(D)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316規格の材料。
(E)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316L規格の材料。
【0018】
請求項9記載の超低温容器は、請求項8記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記胴部と上記鏡板を接合する溶接部が、下記の溶接材料(P)(Q)(R)のうち少なくともいずれかが用いられた第3の溶接部である。
(P)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS308LSi規格の材料。
(Q)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316L規格の材料。
(R)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316LN規格の材料。
【0019】
請求項10記載の超低温容器は、請求項9記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記第3の溶接部が、プラズマ溶接による溶接部,TIG溶接による溶接部,MIG溶接による溶接部のうち少なくともいずれかである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の超低温容器は、超低温の収容対象が収容される1または2以上の内容器の少なくとも胴部が、米国材料試験協会(ASTM)で規定されている201LN、、米国機械学会(ASME)で規定されているSA240-201LN、ユニファイドナンバリングシステム(UNS)で規定されているS20153、のうちいずれかの規格の材料からなる。
上記201LN材、SA240-201LN材、S20153材は、高圧ガス保安法には列記されていない材料であるところ、ニッケル量が少なく安価であるうえ、超低温容器として従来品を超える機械的特性が得られた。上記201LN材、SA240-201LN材、S20153材を内容器の胴部に採用することにより、機械的強度において基準をクリアしながら板厚を薄くし、軽量化とコスト節減を実現する超低温容器となる。
【0021】
請求項2記載の超低温容器は、上記材料(A)が、ニッケルを4~5重量%、マンガンを6.4~7.5重量%含むオーステナイト系ステンレス鋼である。
ニッケル量が少ない分だけ安価であり、高マンガンにより機械的特性を確保した。これにより、機械的強度において基準をクリアしながら板厚を薄くし、軽量化とコスト節減を実現する超低温容器となる。
【0022】
請求項3記載の超低温容器は、上記胴部を円筒状に形成する第1の溶接部に用いられた溶接材料が、JISで規定されているSUS308LSi、SUS316L、SUS316LN規格の材料である。
これらの溶接材料を用いることにより、板材から容器を成形する際に必須となる溶接部の機械的特性を確保できる。これにより、機械的強度において基準をクリアしながら板厚を薄くし、軽量化とコスト節減を実現する超低温容器となる。
【0023】
請求項4記載の超低温容器は、上記第1の溶接部が、プラズマ溶接による溶接部,TIG溶接による溶接部,MIG溶接による溶接部のうち少なくともいずれかである。
これらの溶接方法を用いることにより、板材から容器を成形する際に必須となる溶接部の機械的特性を確保できる。これにより、機械的強度において基準をクリアしながら板厚を薄くし、軽量化とコスト節減を実現する超低温容器となる。
【0024】
請求項5記載の超低温容器は、上記鏡板が、上記材料(A)からなる。
これにより、機械的強度において基準をクリアしながら板厚を薄くし、軽量化とコスト節減を実現する超低温容器となる。
【0025】
請求項6記載の超低温容器は、上記胴部と上記鏡板を接合する第2の溶接部に用いられた溶接材料が、JISで規定されているSUS308LSi、SUS316L、SUS316LN規格の材料である。
これらの溶接材料を用いることにより、201LN材同士の接合となる胴部と鏡板の溶接部の機械的特性を確保できる。これにより、機械的強度において基準をクリアしながら板厚を薄くし、軽量化とコスト節減を実現する超低温容器となる。
【0026】
請求項7記載の超低温容器は、上記第2の溶接部が、プラズマ溶接による溶接部,TIG溶接による溶接部,MIG溶接による溶接部のうち少なくともいずれかである。
これらの溶接方法を用いることにより、201LN材同士の接合となる胴部と鏡板の溶接部の機械的特性を確保できる。これにより、機械的強度において基準をクリアしながら板厚を薄くし、軽量化とコスト節減を実現する超低温容器となる。
【0027】
請求項8記載の超低温容器は、上記鏡板が、JISで規定されているSUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L規格の材料である。
これにより、鏡板にSUS304を使用しながら胴部には201LNを使用し、機械的強度において基準をクリアしながら板厚を薄くし、軽量化とコスト節減を実現する超低温容器となる。
【0028】
請求項9記載の超低温容器は、上記胴部と上記鏡板を接合する第3の溶接部に用いられた溶接材料が、JISで規定されているSUS308LSi、SUS316L、SUS316LN規格の材料である。
これらの溶接材料を用いることにより、201LN材とSUS材の接合となる胴部と鏡板の溶接部の機械的特性を確保できる。これにより、機械的強度において基準をクリアしながら板厚を薄くし、軽量化とコスト節減を実現する超低温容器となる。
【0029】
請求項10記載の超低温容器は、上記第3の溶接部が、プラズマ溶接による溶接部,TIG溶接による溶接部,MIG溶接による溶接部のうち少なくともいずれかである。
これらの溶接方法を用いることにより、201LN材とSUS材の接合となる胴部と鏡板の溶接部の機械的特性を確保できる。これにより、機械的強度において基準をクリアしながら板厚を薄くし、軽量化とコスト節減を実現する超低温容器となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1実施形態の超低温容器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
【0032】
図1は、本発明が適用された第1実施形態の超低温容器を示す断面図である。
【0033】
〔全体構造〕
この例は、本発明の超低温容器を低温液化ガスの貯留容器に適用したものを示している。本発明の適用範囲はこれに限定するものではない。内部の超低温を維持するための容器であれば各種の用途を適用対象としうる趣旨である。例えば、クライオポンプや冷凍機等の極低温機器を収容する収容容器等にも適用することができる。
【0034】
図示した例では、本実施形態の超低温容器は、内容器1が単数である例を示している。すなわち、この例の超低温容器は、全体として横長のカプセル状を呈し、1つの内容器1と外容器2を備え、上記内容器1と上記外容器2による二重構造となっている。上記内容器1と上記外容器2のあいだの隙間には、真空断熱層3が形成されている。
【0035】
上記内容器1は、超低温の収容対象が収容される。この例は、上記収容対象として低温液化ガスを想定したものである。
上記外容器2は、上記内容器1が収容される。上記内容器1と外容器2のあいだには、上記真空断熱層3を構成するための隙間が形成されている。
【0036】
上記真空断熱層3は、内容器1と外容器2のあいだの隙間が真空減圧されて形成されている。上記真空断熱層3は、必要に応じて上記隙間に、グラスウールやパーライト等からなる断熱材,輻射層を形成するアルミニウム箔等による金属箔,上記断熱材や金属箔に巻き付けて崩れを防止する金属メッシュ等を設けて構成することができる。これにより、外容器2の外側から侵入しようとする熱を真空断熱層3で遮断し、内容器1の内部空間を低温に維持しうるようになっている。
【0037】
上記内容器1と外容器2のあいだの隙間には、外容器2に対する内容器1の相対位置をずらさないように支持する複数の支持部材4が配置されている。上記外容器2の下部には、設置用である複数の脚部5を有している。また、上記内容器1に収容された低温液化ガスを取り出したり充填したりするための配管類を備えている。上記配管類とは、複数の配管自体と、それらに取り付けられたノズルやバルブ等の機器を含む趣旨である。上記各配管は、上記外容器2を貫通して設けられる。図示した例では、上記配管類を構成する配管として、過充填防止管11、通気管12、液充填管13、液面計頂部管14、液面計底部管15、液体取出管16を有している。
【0038】
〔内容器〕
図2は、上記内容器1を示す図である。(A)は分解斜視図、(B)は縮小した側面図である。
上記内容器1は金属製で、円筒状の胴部21と上記胴部21の両端開口を塞ぐ鏡板22とが接合されて構成されている。上記胴部21は、複数(この例では3つ)の円筒21Aが接合されて構成されている。上記各円筒21Aは、同じ直径であり、この例では長さも同じに設定されている。上記各円筒21Aが長さ方向に同心状に配列して接合され、上記胴部21が形成されている。
【0039】
上記各円筒21Aは、板材を湾曲させて突き合せた端部が、第1の溶接部20Aを介して接合されている。上記各円筒21Aを長さ方向に配列して接合するとき、隣あう円筒21A同士のあいだで、上記第1の溶接部20Aの位置が重ならずにずれるよう、各円筒21Aが配置される。
【0040】
図示した例では、上記円筒21Aを3つ配列して接合することにより胴部21を構成しているが、これに限定するものではない。上記円筒21Aを1つで胴部21を構成することもできるし、上記円筒21Aを2つ配列したり、4つ以上を配列して胴部21を構成することもできる。
【0041】
〔構成材料〕
つぎに内容器1を構成する材料について説明する。
【0042】
〔胴部の材料〕
本実施形態は、上記内容器1の少なくとも上記胴部21が、下記の材料(A)からなるものである。
(A)米国材料試験協会(ASTM)で規定されている201LN、またはそれに相当する規格の材料。
【0043】
すなわち、上記内容器1は、ASTM規格の201LN材の板材によって構成される。上記規格の材料に相当する規格の材料として、米国機械学会(ASME)で規定されているSA240-201LN、ユニファイドナンバリングシステム(UNS)で規定されているS20153等をあげることができる。これらの規格の材料を上記内容器1を構成する材料に使用した超低温容器も、本発明に含む趣旨である。
【0044】
上記材料(A)は、ニッケルを4~5重量%、マンガンを6.4~7.5重量%含むオーステナイト系ステンレス鋼である。
【0045】
上記材料(A)は、具体的には、炭素0.03重量%以下、クロム16~18重量%、ニッケル4~5重量%、マンガン6.4~7.5重量%、ケイ素0.75重量%以下、リン0.045重量%以下、イオウ0.03重量%以下、窒素0.01~0.25重量%、銅1重量%以下、残部が鉄および不可避的不純物からなるステンレス鋼である。
【0046】
上記材料(A)は、ニッケルを4~5重量%含む。一般に、オーステナイト系ステンレス鋼においてオーステナイト組織を安定化させるニッケル量は8重量%である。本発明で採用した上記材料(A)は、ニッケルの含有量を4~5重量%まで少なくすることにより、コストダウンを図っている。また、ニッケルの含有量を4~5重量%まで少なくすることにより、応力腐食割れに対する抵抗力を高くしている。
【0047】
上記材料(A)は、クロム16~18重量%含む。本発明で採用した上記材料(A)は、上述したようにニッケル量が低い。そのため、オーステナイト組織を維持するために、クロムの含有量を若干引き下げている。
【0048】
上記材料(A)は、マンガンを6.4~7.5重量%含む。マンガンは、冷間加工強度をあげるのに有効であり、上記内容器1を構成する板材の耐力および引っ張り強度を確保する。
【0049】
上記材料(A)は、耐力310MPa以上、引張強さ655MPa以上、伸び45%以上、硬さ241HB以下である。また、-196℃における低温靭性値(吸収エネルギー)は100Jである。
【0050】
〔鏡板の材料〕
◆第1例
第1例は、上記鏡板22が、下記の材料(A)からなるものである。
上記材料(A)については、上述したとおりである。
【0051】
◆第2例
第2例は、上記鏡板22が、下記の材料(B)(C)(D)(E)のうちいずれかからなるものである。
(B)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS304、またはそれに相当する規格の材料。
(C)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS304L、またはそれに相当する規格の材料。
(D)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316、またはそれに相当する規格の材料。
(E)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316L、またはそれに相当する規格の材料。
【0052】
上記材料(B)は、炭素を0.08重量%以下、ニッケルを8~10.5重量%、クロムを18~20重量%含むオーステナイト系ステンレス鋼である。
上記材料(C)は、炭素を0.03重量%以下、ニッケルを8~10.5重量%、クロムを18~20重量%含むオーステナイト系ステンレス鋼である。
上記材料(D)は、炭素を0.08重量%以下、ニッケルを11~14重量%、クロムを18~20重量%、モリブデンを2~3重量%含むオーステナイト系ステンレス鋼である。
上記材料(E)は、炭素を0.03重量%以下、ニッケルを11~14重量%、クロムを18~20重量%、モリブデンを2~3重量%含むオーステナイト系ステンレス鋼である。
【0053】
〔溶接部〕
つぎに溶接部について説明する。
〔概要〕
本実施形態では、下記の溶接部が想定されている。
第1の溶接部20A:円筒21Aの突き合せ部(201LN材同士)
第2の溶接部20B:鏡板22と胴部21(201LN材同士)
第3の溶接部20C:鏡板22と胴部21(201LN材とSUS材)
第4の溶接部20D:円筒21A同士の接続部(201LN材同士)
【0054】
〔胴部の溶接部〕
上記各円筒21Aは、板材を湾曲させて突き合せた端部が、第1の溶接部20Aを介して接合されている。
上記各円筒21A同士は、第4の溶接部20Dを介して接合されている。
【0055】
〔第1の溶接部〕
上記第1の溶接部20Aは、上記円筒21Aを構成する材料同士が溶接されることによってできた溶接部である。言い換えると、上記第1の溶接部20Aは、同じ材料同士の突き合せ溶接によってできた溶接部である。
【0056】
上記第1の溶接部20Aは、下記の溶接材料(P)(Q)(R)のうち少なくともいずれかが用いられたものとすることができる。
(P)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS308LSi、またはそれに相当する規格の材料。
(Q)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316L、またはそれに相当する規格の材料。
(R)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316LN、またはそれに相当する規格の材料。
【0057】
上記第1の溶接部20Aは、プラズマ溶接による溶接部,TIG溶接による溶接部,MIG溶接による溶接部のうち少なくともいずれかとすることができる。
【0058】
これらの溶接方法と溶接材料を用いることにより、201LN材同士の溶接部において、所定の機械的強度を確保できる。
【0059】
〔第4の溶接部〕
上記第4の溶接部20Dは、上記各円筒21A同士が溶接されることによってできた溶接部である。
【0060】
上記各円筒21Aは、いずれもおなじ材料から構成されている。言い換えると、上記第4の溶接部20Dは、同じ材料同士の突き合せ溶接によってできた溶接部である。
【0061】
上記第4の溶接部20Dは、下記の溶接材料(P)(Q)(R)のうち少なくともいずれかが用いられたものとすることができる。
(P)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS308LSi、またはそれに相当する規格の材料。
(Q)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316L、またはそれに相当する規格の材料。
(R)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316LN、またはそれに相当する規格の材料。
【0062】
上記第4の溶接部20Dは、プラズマ溶接による溶接部,TIG溶接による溶接部,MIG溶接による溶接部のうち少なくともいずれかとすることができる。
【0063】
溶接材料と溶接方式は、上述した第1の溶接部と同様である。
【0064】
これらの溶接方法と溶接材料を用いることにより、201LN材同士の溶接部において、所定の機械的強度を確保できる。
【0065】
〔胴部21と鏡板の溶接部〕
上記胴部21と上記鏡板22は、第2の溶接部20Bまたは第3の溶接部20Cを介して接合されている。
【0066】
◆第1例
〔第2の溶接部〕
上記第2の溶接部20Bは、上記胴部21と上記鏡板22がおなじ材料から構成されているケースにおける溶接部である。つまり上記第2の溶接部20Bは、同じ材料同士の突き合せ溶接によってできた溶接部である。
【0067】
第1例では、上記第2の溶接部20Bは、上記胴部21と上記鏡板22を接合する溶接部20を、下記の溶接材料(P)(Q)(R)のうち少なくともいずれかが用いられたものとすることができる。
(P)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS308LSi、またはそれに相当する規格の材料。
(Q)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316L、またはそれに相当する規格の材料。
(R)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316LN、またはそれに相当する規格の材料。
【0068】
上記第2の溶接部20Bは、プラズマ溶接による溶接部,TIG溶接による溶接部,MIG溶接による溶接部のうち少なくともいずれかとすることができる。
【0069】
これらの溶接方法と溶接材料を用いることにより、201LN材同士の溶接部において、所定の機械的強度を確保できる。
【0070】
◆第2例
〔第3の溶接部〕
上記第3の溶接部20Cは、上記胴部21と上記鏡板22が異なる材料から構成されているケースにおける溶接部である。つまり上記第3の溶接部20Cは、異種材料同士の突き合せ溶接によってできた溶接部である。
【0071】
第2例では、上記第3の溶接部20Cが、上記胴部21と上記鏡板22を接合する溶接部20を、下記の溶接材料(P)(Q)(R)のうち少なくともいずれかが用いられたものとすることができる。
(P)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS308LSi、またはそれに相当する規格の材料。
(Q)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316L、またはそれに相当する規格の材料。
(R)日本工業規格(JIS)で規定されているSUS316LN、またはそれに相当する規格の材料。
【0072】
上記第3の溶接部20Cは、プラズマ溶接による溶接部,TIG溶接による溶接部,MIG溶接による溶接部のうち少なくともいずれかとすることができる。
【0073】
これらの溶接方法と溶接材料を用いることにより、201LN材とSUS材の溶接部において、所定の機械的強度を確保できる。
【0074】
〔溶接材料〕
上記SUS308LSi材は、ワイヤー材や溶加棒を溶接棒として使用することができる。上記ワイヤー材は、具体的には、炭素0.02重量%、ケイ素0.85重量%、マンガン1.8重量%、リン0.025重量%以下、硫黄0.02重量%以下、ニッケル10重量%、クロム20重量%、モリブデン0.2重量%、フェライト5~10重量%、残部鉄および不可避的不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼である。上記溶加棒は、具体的には、炭素0.025重量%、ケイ素0.85重量%、マンガン1.8重量%、リン0.025重量%以下、硫黄0.02重量%以下、ニッケル10.2重量%、クロム20重量%、モリブデン0.2重量%、フェライト5~10重量%、残部鉄および不可避的不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼である。
【0075】
上記SUS316L材は、溶加棒を溶接棒として使用することができる。上記溶接棒は、具体的には、炭素0.03重量%以下、ケイ素0.65重量%以下、マンガン1~2.5重量%、リン0.03重量%以下、硫黄0.03重量%以下、ニッケル11~14重量%、クロム18~20重量%、モリブデン2~3重量%、銅0.75重量%以下、残部鉄および不可避的不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼である。
【0076】
上記SUS316LN材は、溶加棒を溶接棒として使用することができる。上記溶接棒は、具体的には、炭素0.03重量%以下、ケイ素0.9重量%以下、マンガン2.5重量%以下、ニッケル11~16重量%、クロム17~20重量%、モリブデン2~3重量%、窒素0.08~0.22重量%、残部鉄および不可避的不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼である。
【0077】
〔溶接方式〕
上記MIG溶接は、シールドガスに不活性ガスのみを使い、金属電極棒を溶接材料として送給ローラーで自動的に送り込み、電極が発するアークでそのまま溶接材料を溶融して溶接する方式である。
上記TIG溶接は、シールドガスに不活性ガスのみを使い、電極棒として消耗しないタングステン電極を使用し、上記電極とは別の溶接材料をアーク中で溶融して溶接する方式である。
上記プラズマ溶接は、電極棒として消耗しないタングステン電極を使用し、プラズマガスとノズル電極による熱的ピンチ効果を利用してアークを細く絞り、熱源を集中させて溶接する方式である。
【0078】
〔実施形態の効果〕
本実施形態の超低温容器は、機械的強度において基準をクリアしながら板厚を薄くし、軽量化とコスト節減を実現する超低温容器となる。軽量化した分だけ、輸送の燃料費を節減したり、軽量になるだけ液化ガスなどの積載品の積載量を増量したりすることが可能であり、いずれにしても輸送効率が向上する。
【0079】
つまり、上記201LN材は、SUS304材と比較し、25%程度強度が高い。また、材料自体の低温じん性は液化窒素や液化天然ガス等の使用において問題のないレベルである。また、溶接において308L等の一般的な溶接材料を使用することができる。したがって、従来のSUS304材と比べて、高強度である分だけ板厚を薄することが可能で、それにより限られた輸送重量の中で内容器の容積を大きくすることができる。しかも、上記201LN材は、ニッケル量がSUS304と比較して少ない分、低コストである。
【実施例】
【0080】
〔実施例の仕様〕
下記の仕様で実施例の超低温容器を製作した。
内容器の材質 :201LN材
内容器の内径 :3000mm
胴部の長さ :13198mm
胴部の板厚 :8mm
鏡板び板厚 :9mm
外容器の材質 :SS400
外容器の内径 :3500mm
外容器の全長 :15420mm
外容器の胴厚 :12mm
外容器の鏡板厚:14mm
【0081】
〔比較例の仕様〕
下記の仕様で比較例の超低温容器を製作した。
内容器の材質 :SUS304材
内容器の内径 :3000mm
胴部の長さ :13198mm
胴部の板厚 :10mm
鏡板び板厚 :11mm
外容器の材質 :SS400
外容器の内径 :3500mm
外容器の全長 :15420mm
外容器の胴厚 :12mm
外容器の鏡板厚:14mm
【0082】
〔対比〕
実施例の超低温容器の重量と許容引張応力は、つぎのとおりである。
パーライト断熱材 :39068kg
グラスウール断熱材:34535kg
許容引張応力 :187N/mm2
比較例の超低温容器の重量は、つぎのとおりである。
パーライト断熱材 :41600kg
グラスウール断熱材:37067kg
許容引張応力 :137N/mm2
【0083】
実施例は比較例に比べ、上記仕様において2532kg軽量化できた。パーライト断熱材で約6.5%、グラスウール断熱材で約7.3%の軽量化を達成した。しかも、許容引張応力は、実施例が比較例よりも50N/mm2高い。
【0084】
〔実験例〕
つぎに、上記実施形態で想定した下記の各溶接部に対応した溶接継手の機械試験を行った。
第1の溶接部20A:円筒21Aの突き合せ部(201LN材同士)
第2の溶接部20B:鏡板22と胴部21(201LN材同士)
第3の溶接部20C:鏡板22と胴部21(201LN材とSUS材)
第4の溶接部20D:円筒21A同士の接続部(201LN材同士)
【0085】
〔供試材〕
下記の表1に示す実験例No.1~No.14を供試材として準備した。
No.1は、201LN材自体を供試材とした。
No.2は、201LN材と201LN材を、308LSi材でプラズマ溶接したものを供試材とした。
No.3は、201LN材と201LN材を、溶接材料を使わずにプラズマ溶接した後、308LSi材でTIG溶接したものを供試材とした。
No.4は、201LN材と201LN材を、溶接材料を使わずにプラズマ溶接した後、316L材でTIG溶接したものを供試材とした。
No.5は、201LN材と201LN材を、308LSi材でTIG溶接したものを供試材とした。
No.6は、201LN材と201LN材を、316LN材でTIG溶接したものを供試材とした。
No.7は、201LN材とSUS304材を、308LSi材でプラズマ溶接したものを供試材とした。
No.8は、201LN材とSUS304材を、溶接材料を使わずにプラズマ溶接した後、316L材でTIG溶接したものを供試材とした。
No.9は、201LN材とSUS304材を、308LSi材でTIG溶接したものを供試材とした。
No.10は、201LN材とSUS304材を、308LSi材でTIG溶接したものを供試材とした。
No.11は、201LN材とSUS304材を、316LN材でTIG溶接したものを供試材とした。
No.12は、201LN材とSUS304材を、316L材でTIG溶接したものを供試材とした。
No.13は、201LN材とSUS304材を、308LSi材でTIG溶接した後、308LSi材でサブマージ溶接したものを供試材とした。
No.14は、201LN材とSUS304材を、308LSi材でTIG溶接した後、308LSi材でMIG溶接したものを供試材とした。
【0086】
上記各実験例において、溶接を2回行った供試材(No.3,No.4,No.8,No.13,No.14)は、1回目の溶接でできたビードの上に重ねて2回目の溶接を行ったものである。
【0087】
【0088】
〔機械強度の計測〕
上記各実験例の供試材について、引張強度、曲げ(表/裏)、衝撃試験(溶着部/熱影響部)を測定した。
【0089】
〔供試材〕
板厚:6mm
開先形状:I型開先およびV型開先
【0090】
〔計測方法〕
◎引張強度
試験片:JIS Z 3121の1号試験片を使用した。
試験方法:JIS Z 2241により行った。
◎曲げ
試験片:JIS Z 3122の表曲げ試験片および裏曲げ試験片を使用した。
試験方法:曲げ半径(R)=板厚(t)×2のローラー曲げ試験を行い、試験後の試験片の表面状態を調べた。
◎衝撃試験
試験片:JIS Z 3128に準じて溶接金属の中央部,溶接熱影響部,母材部を切り欠きとするサブサイズ(5mm×10mm)の2mmVノッチ衝撃試験片を各3本ずつ使用した。
試験方法:シャルピー衝撃試験機を用い、JIS Z 2242に準じて-196℃の液体窒素から試験片を取り出した後、6秒以内に試験を行い、衝撃値(J/cm2)を測定した。
【0091】
〔判定基準〕
◎引張強度
以下の基準以上のものを良好と判断した。
201LN材同士の溶接:655N/mm2以上
201LN材とSUS304材の溶接:520N/mm2以上
◎曲げ
3mm以上の割れがなく、かつ3mm以下の割れの長さ合計が7mm以下のものを合格とした。
◎衝撃値
高圧ガス保安法に基づく容器保安規則により、吸収エネルギが以下の基準以上のものを合格と判定した。なお、吸収エネルギを単位面積当たりに換算した値が衝撃値である。
平均値:30J/cm2以上
最低値:20J/cm2以上
【0092】
〔結果〕
各実験例の供試材について、引張強度、曲げ(表/裏)、衝撃試験(溶着部/熱影響部)を測定した結果を下記の表2および表3に示す。
【0093】
【0094】
【0095】
〔評価〕
いずれの実験例の供試材も引張強度は、上記基準に照らし、問題なしと判断した。
いずれの実験例の供試材も衝撃値は、上記基準を超えており、合格と判定した。
【0096】
〔変形例〕
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
【0097】
上記実施形態では、本発明の超低温容器を低温液化ガスの貯留容器に適用し、横長でカプセル状の二重構造としたものを示した。あくまでこれは例示であり、本発明の適用範囲はこれに限定するものではない。たとえば、縦長としたものに適用することもできるし、1つの外容器2の中に複数の内容器2を備えたものに適用することもできる。また、内部の超低温を維持するための容器であれば各種の用途を適用対象とする趣旨である。例えば、クライオポンプや冷凍機等の極低温機器を収容する収容容器等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1:内容器
2:外容器
3:真空断熱層
4:支持部材
5:脚部
11:過充填防止管
12:通気管
13:液充填管
14:液面計頂部管
15:液面計底部管
16:液体取出管
20:溶接部
20A:第1の溶接部
20B:第2の溶接部
20C:第3の溶接部
20D:第4の溶接部
21:胴部
21A:円筒
22:鏡板