(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/00 20060101AFI20220519BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20220519BHJP
B29C 49/22 20060101ALI20220519BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
B65D1/00 120
B29C49/06
B29C49/22
B65D1/02 111
B65D1/02 230
(21)【出願番号】P 2018003237
(22)【出願日】2018-01-12
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】505440295
【氏名又は名称】北海製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃広
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171317(JP,A)
【文献】特開平05-310265(JP,A)
【文献】特開2017-186059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B29C 49/06
B29C 49/22
B65D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の外口部と、該外口部に連設する肩部と、該肩部に連設する胴部と、該胴部に連設しボトル内側に膨出する凹部を有する底部とを備え、外圧に対して原形復帰可能な外殻ボトルと、
該外殻ボトルの該外口部の内周側に配設される円筒状の内口部と、該内口部に連設し該外殻ボトルの内面形状に沿う形状の内容器体本体とを備え、外圧により変形する内容器体と、
該外口部と該内口部との間に形成されて該外殻ボトルと該内容器体との間に外気を導入する通気路とを備え、
前記凹部の底面には、外側に突出する外凸部が設けられ、
前記内容器体本体の底部には、前記外凸部に沿って外側へ突出する内凸部が設けられ、
前記内凸部は、前記外凸部の内面に密着している合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法であって、
ブロー成形する際に、前記外殻ボトルの元となる有底筒状の外プリフォーム内に、前記内容器体の元となる有底筒状の内プリフォームを挿入した状態で、前記外プリフォームと前記内プリフォームとの間に離型剤を介在させて、前記内凸部の内面と同じ形状を先端に備えるロッドで内プリフォームの底部を押圧しながら外殻ボトル用の型の中で、ブロー成形により形成されることを特徴とする合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外圧に対して原形復帰可能な外殻ボトルの内部に、外圧により変形されて減容する(以下、「減容変形」ということがある)内容器体を配置し、該外殻ボトルと該内容器体との間に外気が導入されるようにしたブロー成形多重ボトルが知られている。前記ブロー成形多重ボトルは、例えば、ポリエステル樹脂の射出成形により内プリフォーム及び外プリフォームを形成し、外プリフォームの内周側に内プリフォームを配置した状態でブロー成形することにより製造される。
【0003】
前記ブロー成形多重ボトルは、外殻ボトルの胴部を押圧することにより、内容器体を減容変形させて内容器体に収容されている内容物を注出する一方、押圧が解除されると別途設けられた逆止弁等の作用により外殻ボトルと内容器体との間に外気が導入される。この結果、外気圧により外殻ボトルが原形復帰する一方、前記内容器体は減容変形された状態が維持される。このようにするときには、内容器体内に外気が侵入することが無いので、内容器体内に収容されている内容物が酸化等により変質することを防止することができる。
【0004】
ところで、前記ブロー成形多重ボトルは、前述のようにして内容器体を減容変形させる際に、ボトル底部で前記外殻ボトルから前記内容器体が剥離すると、所期の減容変形が困難になり、内容物を十分に注出することができなくなることがあるという問題がある。
【0005】
前記問題を解決するために、ボトル底部において、前記外殻ボトルで前記内容器体を挟み込んで一体的に保持する保持リブを備えるブロー成形多重ボトルも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、ボトル底部に、多角錐台状の段部を複数備える凹部を形成し、この凹部で内容器体本体と外殻ボトルとの間における底部の部分への空気の侵入を抑制し、ボトル底部において外殻ボトルから内容器体が剥離しないように構成したものも本出願人は提案している(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-245010号公報
【文献】特開2017-171317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来の合成樹脂製ブロー成形多重ボトルでは、前記外殻ボトルで前記内容器体を挟み込む構成を形成するために、前記保持リブに外力を加える必要がある。前記外力は、例えばブロー成形する際に金型のピンチオフ部に突設されたピンにより加えられるが、このようにするときには前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造に用いる装置の構成が複雑になるという不都合がある。
【0009】
一方、本出願人が提案したように、底部に複数の段部を備える凹部を設ければ、通常使用時におけるボトル底部の内容器体の剥離を阻止することもできる。
【0010】
ここで、合成樹脂製ブロー成形多重ボトルを一般市場に流通させる前には、多重ボトルの製造工程で内容器体本体にピンホールがあいていないかどうか、及び内容器体が外殻ボトルから剥離し減容変形する過程でボトル底部において内容器体が外殻ボトルから容易に剥離することなく内容物を十分に注出することができるものであるかなどの品質検査を行うことが好ましい。
【0011】
この品質検査は、外殻ボトルと内容器体との間に外気を入れて内容器体本体を外殻ボトルから一旦剥離させて減容変形させ、その後、内容器体本体を元の形状に戻すという工程で行うことが考えられる。
【0012】
品質検査においてこのような作業工程を行う場合、外殻ボトルと内容器体との間に外気を入れるときに、通常の使用者が外殻ボトルを押圧するときの押圧力よりも強い外力が内容器体本体に加わる虞があり、多重ボトルにおけるボトル底部での外殻ボトルと内容器体本体との密着性を更に高めることが求められる。
【0013】
また、使用者が想定外の強い押圧力で内容器体本体に強い外力を加えた場合であっても、ボトル底部において外殻ボトルと内容器体とが剥離することなく密着していることが好ましい。
【0014】
本発明は、以上の点に鑑み、構成の簡単な装置により製造することができ、且つボトル底部における外殻ボトルと内容器体との密着性を更に高めることができる合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、
円筒状の外口部と、該外口部に連設する肩部と、該肩部に連設する胴部と、該胴部に連設しボトル内側に膨出する凹部を有する底部とを備え、外圧に対して原形復帰可能な外殻ボトルと、
該外殻ボトルの該外口部の内周側に配設される円筒状の内口部と、該内口部に連設し該外殻ボトルの内面形状に沿う形状の内容器体本体とを有し、外圧により変形する内容器体と、
該外口部と該内口部との間に形成されて該外殻ボトルと該内容器体との間に外気を導入する通気路とを備え、
前記内容器体の元となる有底円筒状の内プリフォームを、前記外殻ボトルの元となる外プリフォームに挿着した状態で、型内でブロー成形により形成される合成樹脂製ブロー成形多重ボトルであって、
前記凹部の底面には、外側に突出する外凸部が設けられ、
前記内容器体本体の底部には、前記外凸部に沿って外側へ突出する内凸部が設けられ、
前記内凸部は、前記外凸部の内面に密着していることを特徴とする。
【0016】
合成樹脂製ブロー成形多重ボトルにおいて、ピンホールやボトル底面における凹部と内容器体本体との密着性などの品質検査を行うときには、まず該外殻ボトルと前記内容器体本体との間に前記通気路から外気を導入して、外気圧により内容器体本体を減容変形させて萎ませる。そして、内容器体本体が萎んだ後、内容器体本体内に外気を導入することにより、内容器体本体を膨らませて外殻ボトルの内面に沿う形状に復元する。
【0017】
ここで、本発明の合成樹脂製ブロー成形多重ボトルでは、底部に設けられた凹部の底面に、外側へ突出する外凸部が設けられている。この外凸部を備える凹部は、ブロー成形の際に前記内プリフォームが前記外プリフォームに熱圧着されることとなり、該凹部において、前記内容器体が前記外殻ボトルに密着されて、外凸部の内面形状に沿う形状の内凸部が形成される。
【0018】
前記凹部は、前述のように前記内容器体が前記外殻ボトルに密着されている上、底面に外側に突出する外凸部を備えている。この凹部の底面から外側に向かって突出する外凸部及び内凸部の間には、内凸部が外凸部に密着しているため、通気路から導入された外気が凹部の中では特に侵入し難くなっており、外殻ボトルから内容器体が剥離することを確実に防止することができる。このように、本発明の多重ボトルにおいては、比較的強い外圧が加えられる虞がある品質検査や、使用者等によって想定外の強い外力が加わった場合でも、ボトル底部において内容器体が外殻ボトルと密着した状態を維持することができ、内容器体内の内容物を十分に出し切ることができる。
【0019】
尚、本発明の合成樹脂製ブロー成形多重ボトルは、前記凹部に前記形状を付与する金型を用い、前記外プリフォームの内周側に前記内プリフォームを配置した状態で、外プリフォームと内プリフォームとを同時にブロー成形するだけでよく、容易に製造することができる。
【0020】
[2]また、本発明においては、前記凹部は、複数段の錐台状に形成され、少なくとも錐台状の最下段が多角錐台状であることが好ましい。
【0021】
前記凹部は、前述のように前記内容器体が前記外殻ボトルに密着されている上、複数段の錐台状に形成されており、錐台状の少なくとも最下段が多角錐台状であることにより、段部や、多角錐台状の角からなる多数の屈曲部を備える形状となっている。このため、前記凹部は、前記通気路から導入された外気が前記内容器体と前記外殻ボトルとの間に侵入し難くなっており、該外殻ボトルから該内容器体が剥離することを更に確実に防止することができる。
【0022】
[3]また、本発明の合成樹脂製ブロー成形多重ボトルは、前記凹部が、複数段の多角錐台状に形成されていることが好ましい。
【0023】
前記凹部は、複数段の多角錐台状に形成されていることにより、複数の段部と多角錐台の角からなる多数の屈曲部を備えることができ、ブロー成形の際に凹部における内容器体と外殻ボトルとの密着性を更に向上させることができる一方、通気路から導入された外気が凹部において内容器体と外殻ボトルとの間に侵入することをさらに効果的に阻止することができる。
【0024】
[4]また、本発明においては、胴部と内容器体本体との間に離型剤を介在させることが好ましい。
【0025】
内容器体本体は、凹部と強く密着し、胴部から剥離し易いことが減容変形する上で好ましい。多重ボトルの材料としてポリエチレンテレフタレート樹脂を主体とする材料を用いた場合などでは、延伸ブローされた多重ボトルの胴部において、内容器体本体との密着性が高く、剥離し難くなり減容変形し難い場合がある。かかる場合には、離型剤を外殻ボトルの胴部と胴部に対応する内容器体本体の部分との間に離型剤を介在させることが好ましい。かかる構成によれば、凹部に内容器体本体が密着し、胴部から内容器体本体が容易に剥離する。このため、内容器体本体の胴部に対応する部分の折り畳み減容変形が更に容易となる。
【0026】
離型剤としては、流動パラフィン、シリコン化合物、その他の各種の離型剤を用いることができる。ポリエステル樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート主体の多重ボトルにおいては、流動パラフィンが好ましい。
【0027】
[5]また、本発明の合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法は、
円筒状の外口部と、該外口部に連設する肩部と、該肩部に連設する胴部と、該胴部に連設しボトル内側に膨出する凹部を有する底部とを備え、外圧に対して原形復帰可能な外殻ボトルと、
該外殻ボトルの該外口部の内周側に配設される円筒状の内口部と、該内口部に連設し該外殻ボトルの内面形状に沿う形状の内容器体本体とを備え、外圧により変形する内容器体と、
該外口部と該内口部との間に形成されて該外殻ボトルと該内容器体との間に外気を導入する通気路とを備え、
前記凹部の底面には、外側に突出する外凸部が設けられ、
前記内容器体本体の底部には、前記外凸部に沿って外側へ突出する内凸部が設けられ、
前記内凸部は、前記外凸部の内面に密着している合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法であって、
ブロー成形する際に、前記外殻ボトルの元となる有底筒状の外プリフォーム内に、前記内容器体の元となる有底筒状の内プリフォームを挿入した状態で、前記外プリフォームと前記内プリフォームとの間に離型剤を介在させて、前記内凸部の内面と同じ形状を先端に備えるロッドで内プリフォームの底部を押圧しながら外殻ボトル用の型の中で、ブロー成形により形成されることを特徴とする。
【0028】
本発明の製造方法によれば、外プリフォームと内プリフォームとの間に離型剤を介在させることにより、外殻ボトルの側面を押圧して、内容器体本体内の内容物を内口部から吐出させる際に、凹部を除いて内容器体本体が外殻ボトルの内面から剥離し易く、内容物を容易に取り出すことができる。
【0029】
また、外プリフォーム及び内プリフォームを押し延ばすロッドの先端が、内凸部の内面と同じ形状であるため、外凸部と内凸部との間に離型剤が入っても、他の部分に押し出され、外凸部と内凸部との間には離型剤が存在しないか或いは極めて少ない状態とすることができ、外凸部と内凸部とが離れ難くなる。これにより、更に、外凸部と内凸部との間に外気が入り込み難くなり、内容器体本体が外殻ボトルの底面から剥離することを更に確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態の合成樹脂製ブロー成形多重ボトルを示す斜視図。
【
図2】
図1のII-II線で切断した状態を示す断面図。
【
図3】本実施形態の合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造に用いる内プリフォームを外プリフォーム内に配置した状態を示す断面図。
【
図4】
図4Aは本実施形態の合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法の初期工程を示す模式的断面図、
図4Bはブロー成形工程を示す模式的断面図、
図4Cはブロー成形工程の終了段階を示す模式的断面図。
【
図5】本実施形態の合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの底部を拡大して示す断面図。
【
図6】比較例の合成樹脂多重ボトルの底部を拡大して示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図を参照して、本発明の合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの実施形態について説明する。
【0032】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1は、外圧に対して原形復帰可能な外殻ボトル2と、外殻ボトル2の内側に収容され外圧により減容変形する内容器体3とからなる。
【0033】
外殻ボトル2は、例えば、円筒状の外口部4と、外口部4に連接する四角錐状の肩部5と、肩部5に連接する四角筒状の胴部6と、胴部6に連接する四角錐状の底部7とを備える。外口部4は外周面に雄ねじ部10と、サポートリング11とを備え、底部7は下端接地部7bと、外殻ボトル2の内側に膨出して多重ボトル1に自立性を付与する凹部8とを備えている。少なくとも胴部6と胴部6に対応する内容器体本体14との間には、離型剤が介在している。
【0034】
図5に拡大して示すように、凹部8は、多角錐台状凹部が複数段積層された形状を備え、例えば、第1多角錐台状凹部8aと、第1多角錐台状凹部8aの内周側に積層されたより小さい第2多角錐台状凹部8bと、第2多角錐台状凹部8bの内周側に積層されたさらに小さい第3多角錐台状凹部8cとを備えている。
【0035】
第3多角錐台状凹部8cの中央には、外殻ボトル2の外側に向かって突出する有底円筒状の外凸部9aが設けられている。内容器体本体14には、外凸部9aの内面に沿った有底円筒状の内凸部9bが設けられている。
【0036】
図5では、内容器体本体14が、点線で示すように、外殻ボトル2の内面に沿った形状から、実線で示すように、内容器体本体14が凹部8に対応する部分を除いて外殻ボトル2から剥離して、縦断面視で内容器体本体14の側面が傾斜するように減容変形した状態を示している。
【0037】
肩部5、底部7はそれぞれ四角形の頂点にRが付されており、該頂点に稜線5a、7aを備えている。ここで、稜線7aは稜線5aに対応して外殻ボトル2の周方向における同一位置に形成されている。
【0038】
一方、内容器体3は、外口部4の内周側に配設される円筒状の内口部13と、内口部13に連接し、外殻ボトル2の肩部5、胴部6、底部7、凹部8の内面形状に沿う形状の内容器体本体14とを備えている。内口部13は、上部に外口部4の上端よりも上方に延出された延出部15と、延出部15から径方向外方に張り出す鍔部16とを備えており、鍔部16により外口部4の上端縁に係止されている。
【0039】
また、内口部13は、外周面に溝17を備えている。鍔部16の下面には、溝17に連設された溝18が形成されており、溝18は鍔部16の外周縁で外部に開放されている。この結果、溝17及び溝18により、外殻ボトル2と内容器体3との間に外気を導入する通気路19が形成されている。
【0040】
内容器体本体14には、凹部8bの内面形状に沿う形状となる部分に、外凸部9aの内面形状に沿う有底円筒状の内凸部9bが形成されている。
【0041】
多重ボトル1は、例えば、
図3に示すように、内プリフォーム21を外プリフォーム22の内側に配置して同時にブロー成形することにより製造することができる。
【0042】
内プリフォーム21は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂を材料として射出成形により形成され、内口部13と、内口部13の下方に連設され内口部13よりも外径が小さい有底円筒状の内胴部23とにより形成される。内口部13は、内容器体3の内口部13と同一形状であり、同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。内胴部23の外径が内口部13よりも小さいことにより、溝17の下端は内口部13と内胴部23との境界で内胴部23の外面に臨んで開放される。
【0043】
外プリフォーム22は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂を材料として射出成形により形成され、外口部4と、外口部4の下方に連設された有底円筒状の外胴部24とにより形成される。外口部4は、外殻ボトル2の外口部4と同一形状であり、同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0044】
内プリフォーム21の内口部13は外プリフォーム22の外口部4に挿着され、内プリフォーム21の内胴部23は外プリフォーム22の外胴部24の内部に配置される。このとき、延出部15が外プリフォーム22の外口部4の上方に延出し、鍔部16が外プリフォーム22の外口部4の上端面に当接して係止される。これにより、内プリフォーム21の内口部13は、外プリフォーム22の外口部4の内側に確実に位置決めされる。
【0045】
次に、
図4A~
図4Cを参照して、本実施形態の多重ボトル1のブロー成形について説明する。
【0046】
本実施形態において使用するブロー成形装置は周知のものであり、
図4A~
図4Cにおいて要部を示すように、金型31と、ブローノズル32と、ストレッチロッド33とを備えている。ストレッチロッド33の先端形状は、内凸部9bの内面形状に沿う円柱形状に形成されている。ストレッチロッド33の先端形状を円柱形状とすることにより、有底円筒状に形成される外凸部9aと内凸部9bとの間に離型剤が意図せずに入り込んだとしても押し出して強く密着させることができる。
【0047】
金型31は、外殻ボトル2の肩部5、胴部6、底部7の外面形状に沿う形状の成形部34と、凹部8の外面形状に沿う形状の凹部成形部35と、外プリフォーム22の外口部4のサポートリング11の上方を露出させて支持する支持開口部36とを備えている。凹部成形部35には、外凸部9aの外面形状に沿う形状の外凸部成形部35aが形成されている。金型31は図示しない割型構造とされており、成形部34の左右側と底部成形部35側とで分割することによって成形後の多重ボトル1が金型から取り出せるようになっている。
【0048】
ブローノズル32は、図示しない昇降手段により昇降され、Oリング37を介して内プリフォーム21の鍔部16の上端面に気密に当接する。ブローノズル32にはストレッチロッド33が挿通され、ストレッチロッド33の外周面とブローノズル32の内周面との間には、図示しない高圧気体供給手段に接続された気体通路38が形成されている。
【0049】
ストレッチロッド33は、図示しない進退駆動手段によってブロー成形時に前進される。尚、
図4Aにおいては、ストレッチロッド33がブローノズル32の先端から突出しているが、ストレッチロッド33は未使用時には後退されてブローノズル32の内方(図中上方)に収納されている。
【0050】
上述の構成のブロー成形装置によって、多重ボトル1を製造するときには、
図4Aに示すように、内プリフォーム21を外プリフォーム22に挿着し、内プリフォーム21と外プリフォーム22との間であってブロー成形後の凹部8となる部分を除く部分(内プリフォーム21と外プリフォーム22の半球状の底面を除く側面)に離型剤を塗布する。このように離型剤を塗布することによりブロー成形後に凹部8と内容器体本体14との間に離型剤が入り込み難くすることができ、凹部8に内容器体本体14を適切に圧着させることができる。
【0051】
そして、外プリフォーム22を金型31にセットした後、内プリフォーム21の内口部13にブローノズル32を接続する。尚、内プリフォーム21及び外プリフォーム22は、金型31にセットされるに先立ってブロー成形可能な温度に加熱される。
【0052】
次いで、
図4Bに示すようにブローノズル32の気体通路38から内プリフォーム21内に加圧空気を導入し、同時にストレッチロッド33を下方に前進させる。これにより、内プリフォーム21が膨張して未膨張状態の外プリフォーム22の内面に密着する。
【0053】
続いて、
図4Bに示す状態から、更に内プリフォーム21内に加圧空気を導入しつつ、ストレッチロッド33を下方に前進させると、膨張した内プリフォーム21の内胴部23により外プリフォーム22の外胴部24が広げられ、
図4Cに示すように、金型31の成形部34により外殻ボトル2の肩部5、胴部6、底部7の形状に成形され、凹部成形部35により凹部12の形状に成形される。
【0054】
また、ストレッチロッド33の先端は、外凸部成形部35aに挿入され、外凸部9a及び内凸部9bを形成する。このとき、ストレッチロッド33の先端で、内凸部9bが外凸部9aを外凸部成形部35aに押し付けるため、外凸部9aと内凸部9bとの間に離型剤が意図せずに入り込んだ場合であっても外凸部9aと内凸部9bとの間から押し退けられて、外凸部9aと内凸部9bとが強く密着して剥離し難くすることができる。
【0055】
また、内プリフォーム21の内胴部23は、外殻ボトル2の肩部5、胴部6、底部7、凹部8の内面形状に沿う形状に成形される。この結果、
図1及び
図2に示す多重ボトル1が得られる。
【0056】
多重ボトル1では、前記ブロー成形により凹部8が形成される際に、内プリフォーム21が外プリフォーム22に熱圧着されることにより、内容器体本体14が外殻ボトル2に密着される。
【0057】
本実施形態の多重ボトル1は、使用状態では、内容器体3に図示しない内容物が収容されており、該内容物を注出するときには、外口部4及び内口部13を下方に向けて傾ける。そして、外殻ボトル2の胴部6を押圧すると、内容器体本体14の外殻ボトル2の凹部8に対応する部分が外殻ボトル2の凹部8と一体化して密着固定しているため、外口部4から下端接地部7bまでに対応する内容器体本体14の領域において内容器体本体14が外殻ボトル2から剥離して減容変形することにより、前記内容物が注出される。多重ボトル1では、胴部6が円筒状であるので、周方向のどの部分を押圧してもよく、内容器体本体14を減容変形させることができる。
【0058】
次に、外殻ボトル2の胴部6の押圧を解除すると、外殻ボトル2と内容器体本体14との間に通気路19から外気が導入され、外気圧により外殻ボトル2は原形に復帰するが内容器体本体14は減容変形したままの状態が維持される。
【0059】
このとき、前記内容物は重力により内口部13方向に集中しており、内容器体本体14は外殻ボトル2の胴部6に対応する部分から、内容器体本体14の稜線5a,5a,7a,7aに挟まれる部分に対応する側面部分の中心部に谷折れ部が形成されて内側に没入することにより、谷折れ変形が始まる。
【0060】
多重ボトル1では、外殻ボトル2の胴部6の押圧と該押圧の解除とを繰り返すことにより次第に前記内容物が減少する。前記内容物が減少すると、内容器体本体14の谷折れ変形が更に進行し、隣接する側面部分が接して、断面視十字状に折りたたまれて変形する。
【0061】
上述のように谷折れ部が形成される際に、多重ボトル1では、凹部8が多角錐台状凹部8a,8b,8cからなる形状を備えているので、ブロー成形時の加熱圧着により、内容器体本体14が外殻ボトル2に密着している。また、凹部8が多角錐台状凹部8a,8b,8cからなり、多数の段差部と屈曲部とを備えていることにより、凹部8においては通常使用時において外殻ボトル2と内容器体本体14の間に外気が侵入することがない。
【0062】
従って、外殻ボトル2の長さ方向に沿って谷折れ部が形成される間に、凹部8において外殻ボトル2から内容器体本体14が剥離することがなく、内容器体本体14に収容されている内容物を余すことなく注出することができ、残液を減少させることができる。
【0063】
また、本実施形態の合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1では、底部7に設けられた凹部8の底面に、外側へ突出する外凸部9aが設けられている。この外凸部9aを備える凹部8は、ブロー成形の際に内プリフォーム21が外プリフォーム22に熱圧着されることとなり、凹部8において、内容器体3が外殻ボトル2に密着される。これにより、通気路19から導入された外気が内容器体3と外殻ボトル2との間に侵入し難くなっている。
【0064】
また、凹部8は、前述のように内容器体3が外殻ボトル2に密着されている上、底面に外側に突出する外凸部9aを備えている。この凹部8の底面から外側に向かって突出する外凸部9aには、外凸部9aの内面形状に沿う形状の内凸部9bが密着しており、凹部8の底面に位置すると共に、凹部8の凹み方向とは逆方向に突出した外凸部9a及び内凸部9bとの間には特に外気が侵入し難い。
【0065】
これにより、使用者の手で外殻ボトル2を押圧する通常使用時のみならず、内容器体本体14のピンホール検査などの各種品質検査のときの内容器体本体14を外殻ボトル2の胴部6から一旦剥離させて後に戻す工程や、外殻ボトル2に想定外の外力が加えられたとき等のように、内容器体本体14に比較的強い外力が加わるような状況下であっても、外殻ボトル2の凹部8から内容器体3が剥離することを確実に防止することができる。
【0066】
尚、本発明の合成樹脂製ブロー成形多重ボトルは、前記凹部に前記形状を付与する金型を用い、前記外プリフォームの内周側に前記内プリフォームを配置した状態で、同時にブロー成形するだけでよく、容易に製造することができる。
【0067】
また、本実施形態においては、凹部8は、錐台状凹部8a~8cが複数段積層された形状を備え、少なくとも該錐台状凹部8aの最下段が多角錐台状である。
【0068】
凹部8は、前述のように内容器体3が外殻ボトル2に密着されている上、錐台状凹部8a~8cが複数段積層されているので多数の段差部を備え、少なくともその最下段が多角錐台状であることにより多数の屈曲部を備える形状となっている。このため、凹部8は、通気路19から導入された外気が内容器体3と外殻ボトル2との間に侵入し難くなっており、外殻ボトル2から内容器体3が剥離することを更に確実に防止することができる。
【0069】
また、本実施形態の合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1は、凹部8が、複数段の多角錐台状凹部8a~8cを備えている。
【0070】
凹部8は、複数段の多角錐台状凹部8a~8cを備えることにより、多数の段差部と屈曲部とを備えることができ、ブロー成形の際に内容器体3と外殻ボトル2との密着性を向上させることができる一方、通気路19から導入された外気が内容器体3と外殻ボトル2との間に侵入することをさらに効果的に阻止することができる。そして、多重ボトル1の品質管理工程等において比較的強い外圧が加わる可能性のある内容器体本体14のピンホール検査を外凸部9aと内凸部9bとを剥離させることなく密着させたまま行うことができる。このため、品質検査工程と内容器体本体14の折目形成工程とを含めた多重ボトル1の製造工程の合理化及び簡略化を図ることができる。
【0071】
本実施形態の合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1の製造方法によれば、外プリフォーム22と内プリフォーム21との胴部の間に(凹部8を形成する部分を除く部分に)、離型剤を塗布してブロー成形で製造することにより、外殻ボトル2の側面を押圧して、内容器体本体14内の内容物を内口部から吐出させる際に、凹部8を除いて内容器体本体14が外殻ボトル2の内面から剥離し易く、内容物を容易に取り出すことができる。
【0072】
離型剤としては、例えば、流動パラフィンを用いることができる。離型剤は薄層で内プリフォーム21と外プリフォーム22の筒状胴部の間に介在させて、ブロー成形後の凹部8と凹部8に対応する内容器体本体14との間には存在しないように塗布することが好ましい。
【0073】
また、外プリフォーム22及び内プリフォーム21を押し延ばすストレッチロッド33の先端が、内凸部9bの内面形状に沿う形状であるため、外凸部9aと内凸部9bとの間の離型剤は、外凸部9aと内凸部9bとの間以外の他の部分に押し出され、外凸部9aと内凸部9bとの間では実質的に離型剤が存在せず、外凸部9aと内凸部9bとが離れ難くなる。これにより、更に、外凸部9aと内凸部9bとの間に外気が入り込み難くなり、内容器体本体14が外殻ボトル2の底面から剥離することを更に確実に防止できる。
【0074】
図6A及び
図6Bは、比較例として、外凸部9a及び内凸部9bを形成することなく、比較的強い外圧を加えて内容器体本体14のピンホール検査を行ったときの凹部8の剥離状態を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、外凸部9a及び内凸部9bがない場合には、内容器体本体14が比較的強い外力に胴部6から剥離すると、凹部8に密着していた内容器体本体14が凹部8から剥離してしまう虞があった。
【0075】
尚、本実施形態では、凹部8が第1から第3の3つの多角錐台状凹部8a,8b,8cからなる3段構成となっているが、凹部8は、円錐台形状であっても多角錐台形状であってもよく、多角錐台形状においては少なくとも最下段の錐台状凹部8aが多角錐台状であることが好ましく、他の段は多角錐台状であってもよく、円錐台状であってもよい。また、凹部8は、多角錐台状凹部を複数段備えていればよく、前記3段構成には限定されない。
【0076】
また、外凸部9a及び内凸部9bは、円筒形状に限定されず、多角形状でも錐台形状でもよい。
【0077】
また、本実施形態では、外殻ボトル2の肩部5、底部7を四角錐状としているが、肩部5、底部7は三角錐状、五角錐状、六角錐状のいずれか1つの多角錐状であってもよい。
【0078】
また、前記多角錐状又は多角筒状は、多角形の頂点がカットされ、或いは多角形の頂点にRが付されていてもよい。さらに、前記頂点に挟まれた辺を外方に膨出させてもよく、膨出させた辺に1以上の頂点を備えていてもよい。
【0079】
さらに、多重ボトル1は、外殻ボトル2が外圧に対して原形復帰可能であり、内容器体3が外圧により変形するものであればよく、外殻ボトル2の肩部5、胴部6、底部7の形状は、上述の形状に限定されず、どのような形状であってもよい。
【0080】
また、本実施形態では、外口部4の外周面に雄ねじ部10を備える構成としているが、外口部4は雄ねじ部10を備えない単なる円筒状であってもよく、このようにすることにより例えば醤油ボトル等の打栓式口部等に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 合成樹脂製ブロー成形多重ボトル
2 外殻ボトル
3 内容器体
4 外口部
5 肩部
5a 稜線
6 胴部
7 底部
7a 稜線
7b 下端接地部
8 凹部
8a 第1多角錐台状凹部
8b 第2多角錐台状凹部
8c 第3多角錐台状凹部
9a 外凸部
9b 内凸部
10 雄ねじ部
11 サポートリング
13 内口部
14 内容器体本体
15 延出部
16 鍔部
17 溝
18 溝
19 通気路
21 内プリフォーム
22 外プリフォーム
23 内胴部
24 外胴部
31 金型
32 ブローノズル
33 ストレッチロッド
34 成形部
35 凹部形成部
35a 外凸部成形部
36 支持開口部
37 Oリング
38 気体通路
40 離型剤