(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】配線用遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 73/02 20060101AFI20220519BHJP
H01H 73/00 20060101ALI20220519BHJP
H01H 73/20 20060101ALI20220519BHJP
H01H 73/06 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
H01H73/02 B
H01H73/00 A
H01H73/20 A
H01H73/06 B
(21)【出願番号】P 2018062641
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2021-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕史
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-287581(JP,A)
【文献】特開2011-150939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/02
H01H 73/00
H01H 73/20
H01H 73/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースの背面に電源側端子が、前面に負荷側端子が夫々配設されているとともに、前記負荷側端子が、前記本体ケースの前面に沿って上下方向へ一列に並べられた複数の速結端子からなり、さらに各前記速結端子の上下何れかに隣接して、測定端子を差し込み可能な差込孔が開設された配線用遮断器であって、
前記本体ケースの前面の左右両側縁に沿って、前方へ突出する支持壁が設けられているとともに、
両前記支持壁間に、前記差込孔及び/又は前記速結端子を被覆/露出するカバー部材が、前記本体ケースの前面に沿って上下方向へスライド可能に取り付けられている一方、
少なくとも左右何れか一方の支持壁で、各前記差込孔の側方となる位置に、切り欠きが夫々設けられていることを特徴とする配線用遮断器。
【請求項2】
前記本体ケースの前面に、前記切り欠きから前記差込孔内へ向かって、後方へ階段状に下がる案内段部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の配線用遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば分電盤内等に設置される配線用遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薄型化を目指した配線用遮断器としては、本体ケースの後面に電源側端子を構成する切り欠き部を、前面に負荷側端子を構成する速結端子を夫々上下一列に設けたものがある。また、そのような配線用遮断器の本体ケース前面で、且つ、各速結端子の近傍となる位置に、絶縁抵抗測定試験を実施するために測定端子を差し込むための差込孔を開設することで、更なる薄型化を図ったものもある(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような配線用遮断器では、速結端子に負荷配線を接続していると、差込孔が見えづらく、絶縁抵抗測定試験を実施しづらいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、速結端子に負荷配線を接続した状態にあっても、絶縁抵抗測定試験を容易に実施することができる配線用遮断器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、本体ケースの背面に電源側端子が、前面に負荷側端子が夫々配設されているとともに、前記負荷側端子が、前記本体ケースの前面に沿って上下方向へ一列に並べられた複数の速結端子からなり、さらに各前記速結端子の上下何れかに隣接して、測定端子を差し込み可能な差込孔が開設された配線用遮断器であって、前記本体ケースの前面の左右両側縁に沿って、前方へ突出する支持壁が設けられているとともに、両前記支持壁間に、前記差込孔及び/又は前記速結端子を被覆/露出するカバー部材が、前記本体ケースの前面に沿って上下方向へスライド可能に取り付けられている一方、少なくとも左右何れか一方の支持壁で、各前記差込孔の側方となる位置に、切り欠きが夫々設けられていることを特徴とする。
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記本体ケースの前面に、前記切り欠きから前記差込孔内へ向かって、後方へ階段状に下がる案内段部が設けられていることを特徴とする。
なお、本発明において、複数の速結端子を「本体ケースの前面に沿って上下方向へ一列に並べ」るとは、本体ケースの前面が傾斜面に成形されている際には、傾斜方向に平行な斜め方向に沿って一列に並べることも含む。また、「本体ケースの前面の左右両側縁に沿って、前方へ突出する支持壁が設けられている」とは、本体ケースの前面が傾斜面に成形されている際には、傾斜面に直交する方向となる斜め前方へ突出するように支持壁を設けることも含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、本体ケースの前面の左右両側縁に沿って設けられた支持壁の少なくとも何れか一方で、各差込孔の側方となる位置に、切り欠きを夫々設けている。したがって、速結端子に負荷配線が接続され、差込孔の位置が直接視認しづらいような場合でも、切り欠きの位置から差込孔の位置を容易に把握することができる。また、切り欠きのある位置から測定端子の先端を左右方向へ移動させるだけで、差込孔の前方に測定端子を位置させることができる。したがって、絶縁抵抗測定試験等の各種試験を容易に行うことができる。
さらに、請求項2に記載の発明によれば、本体ケースの前面に、切り欠きから差込孔内へ向かって、後方へ階段状に下がる案内段部を設けている。したがって、測定端子の先端を案内段部上に当接させながら、測定端子を左右方向へ移動させるだけで、測定端子を電源座に接触させる等することができ、各種試験を非常に容易に行うことができる上、差込孔の内部から切り欠きにかけて十分な絶縁距離を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】配線用遮断器の外観を前側及び左側から示した斜視説明図である。
【
図2】配線用遮断器を右側から示した説明図である。
【
図3】配線用遮断器を前側から示した説明図である。
【
図4】配線用遮断器における負荷側端子部分の内部構造を示した斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となる配線用遮断器(以下、単に遮断器と称す)について、図面にもとづき詳細に説明する。
図1は、遮断器1の外観を前側及び左側から示した斜視説明図である。
図2は、遮断器1を右側から示した説明図である。
図3は、遮断器1を前側から示した説明図である。
図4は、遮断器1における負荷側端子3部分の内部構造を示した斜視説明図である。尚、遮断器1の負荷側端子3側を、遮断器1の前側とする。また、
図4において、遮断機構部や負荷側端子3と電源側端子2とを電気的に繋ぐ電路等は省略している。
【0010】
遮断器1は、合成樹脂製の左右一対のケース部材を組み立ててなる本体ケース4を有しており、本体ケース4の上面には、ハンドル7が前後方向へ回動操作可能に設けられている。そして、ハンドル7を回動操作することで、本体ケース4内に組み込まれている図示しない遮断機構部が作動し、後述する電源側端子2と負荷側端子3とを電気的につなぐ電路が接続/開放されるようになっている。また、本体ケース4の底部には、図示しない取付パネルへ掛止するための一組の掛止片(前掛止片8及び後掛止片9)が設けられているとともに、取付パネルへの掛止状態のままロックするためのロック部材10も設けられている。なお、本体ケース4内には、図示しない過電流検知機構も設けられており、過電流を検知すると上記遮断機構部が開動作するようになっている。
【0011】
また、本体ケース4の後面には、プラグイン方式の端子P1、P2、P3を上下方向へ一列に備えてなる電源側端子2が配置されている。各端子P1~P3は、本体ケース4を左右方向に貫通したコ字状に切り欠いて形成されており、分電盤内等に配設される電源ラインである導体バー(図示せず)や該導体バーから分岐された分岐バー(図示せず)を容易に挿入接続可能となっている。
【0012】
一方、本体ケース4の前面は、前側へ向かって下降傾斜する傾斜面に形成されており、該傾斜面には、負荷配線(図示せず)を挿入接続可能な3つの端子L1、L2、L3を傾斜面に沿って一列に配設してなる負荷側端子3が配置されている。また、各端子L1~L3は、傾斜面に開設された端子孔11を備えており、当該端子孔11を介して傾斜面に直交する方向へ負荷配線を本体ケース4内へ挿入可能となっている。さらに、本体ケース4内で端子孔11の内側となる箇所には、挿入された負荷配線に接触する速結端子金具15が設置されており、各端子L1~L3は、所謂速結端子として機能するようになっている。
【0013】
また、各端子L1~L3の下方には、たとえば絶縁抵抗測定試験等を行うための各種計器の測定端子を差し込み可能な差込孔16が開設されている。各差込孔16内には、その直上に位置する端子L1、L2、L3の速結端子金具15と接触している電源座17が夫々露出している。そして、各種計器の測定端子を差込孔16から差し込んで電源座17に接触させることで、絶縁抵抗測定試験等を実施することができる。
【0014】
さらに、本体ケース4の前面には、その左右両縁に沿って、且つ、傾斜面に対して垂直方向に起立する支持壁5、5が設けられている。また、支持壁5、5の基端内面には、係合溝6が傾斜方向に沿って延設されている。そして、係合溝6には、差込孔16、16・・を被覆/露出するためのカバー部材12が、傾斜方向へスライド自在に支持されている。なお、21は、カバー部材12の摘まみであり、22は、カバー部材12に設けられた案内突起である。また、本体ケース4の側面には、本体ケース4前面の傾斜方向に沿って延びる案内スリット23が開設されている。そして、案内スリット23内に案内突起22が入り込んでおり、カバー部材12のスライド時に案内するようになっている。
【0015】
加えて、一方の支持壁5(ここでは前面から見て右側の支持壁5)で、各差込孔16の側方となる位置には、切り欠き31が夫々設けられている。また、各切り欠き31から各差込孔16内に露出する電源座17へ向かっては、後方に下がる階段状に形成された案内段部32が設けられている。
【0016】
そして、上述したような遮断器1において絶縁抵抗測定試験等を実施する際には、切り欠き31、31・・を目印として、試験を実行したい端子L1~L3に対応する差込孔16の側方に測定端子の先端を位置させる。それから、測定端子の先端を左側へ移動させ、切り欠き31を介して本体ケース4の前面上(差込孔16の前方)に移動させるとともに、測定端子の先端を案内段部32上に当接させつつ更に左側へ移動させれば、電源座17に接触させることができ、ひいては各種試験を実施することができる。
【0017】
以上のような構成を有する遮断器1によれば、本体ケース4の前面の左右両側縁に沿って、傾斜面に対して垂直方向に起立する支持壁5、5を設けているとともに、右側の支持壁5で、且つ、各差込孔16の右側となる位置に、切り欠き31を夫々設けている。そのため、絶縁抵抗測定試験等を実施する際には、たとえ端子L1~L3に負荷配線が接続されて差込孔16、16・・の位置が直接視認しづらい状況にあっても、切り欠き31、31・・を目印として差込孔16の位置を容易に把握することができる。また、試験を実行したい端子L1~L3に対応する差込孔16の側方に測定端子の先端を位置させ、そのまま左側へ移動させれば、測定端子の先端を差込孔16の前方に位置させることができる。したがって、絶縁抵抗測定試験等の各種試験を容易に行うことができる。
【0018】
また、各切り欠き31から各差込孔16内に露出する電源座17へ向かっては、後方に下がる階段状に形成された案内段部32を設けらている。したがって、切り欠き31を介して本体ケース4の前面側に移動させた測定端子の先端を、案内段部32上に当接させつつ左側へ移動させるだけで、電源座17に接触させることができ、ひいては各種試験を実施することができる。したがって、絶縁抵抗測定試験等の各種試験を非常に容易に行うことができる上、電源座17から切り欠き31にかけて十分な絶縁距離を確保することができる。
【0019】
なお、本発明の遮断器に係る構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、遮断器の全体的な構成は勿論、切り欠きや案内段部等に係る構成ついても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0020】
たとえば、上記実施形態では、右側の支持壁に切り欠きを設けているが、左側の支持壁に切り欠きを設けてもよいし、上下の差込孔については右側の支持壁、中の差込孔については左側の支持壁等、左右両支持壁に切り欠きを設けるような構成を採用することも可能である。
また、上記実施形態では、各速結端子の下方に差込孔を開設しているが、上方に差込孔を開設しても何ら問題はない。
さらに、上記実施形態では、差込孔を被覆/露出するカバー部材を設けているが、それに代えて使用しない速結端子を被覆するようなカバー部材を設けて構成することも可能であるし、差込孔用のカバー部材と速結端子用のカバー部材との両方を設けるように構成しても何ら問題はない。
【符号の説明】
【0021】
1・・遮断器、2・・電源側端子、3・・負荷側端子、4・・本体ケース、5・・支持壁、11・・端子孔(速結端子)、12・・カバー部材、15・・速結端子金具(速結端子)、16・・差込孔、17・・電源座、31・・切り欠き、32・・案内段部。