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特許7075806ツールプリセッタにおけるツール形状の測定装置及び測定方法
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  • 特許-ツールプリセッタにおけるツール形状の測定装置及び測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】ツールプリセッタにおけるツール形状の測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20220519BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
B23Q17/00 C
B23Q17/24 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018080055
(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公開番号】P2019188482
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-12-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 メカトロテックジャパン2017、平成29年10月18日~21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000162180
【氏名又は名称】共立精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】名渕 裕之
(72)【発明者】
【氏名】武村 和行
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-174549(JP,A)
【文献】特開2016-083723(JP,A)
【文献】実開昭62-192847(JP,U)
【文献】特開平06-123711(JP,A)
【文献】特開平08-001405(JP,A)
【文献】特開平11-090783(JP,A)
【文献】特開2000-074644(JP,A)
【文献】特開2002-224936(JP,A)
【文献】特開2015-052872(JP,A)
【文献】米国特許第05084827(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0184570(US,A1)
【文献】国際公開第2011/107287(WO,A2)
【文献】特開平02-024003(JP,A)
【文献】特開平05-269651(JP,A)
【文献】特開平07-060505(JP,A)
【文献】特開平09-253979(JP,A)
【文献】特開平10-277889(JP,A)
【文献】特開2001-269844(JP,A)
【文献】特開2010-099801(JP,A)
【文献】特開2010-256828(JP,A)
【文献】特開2015-102450(JP,A)
【文献】特開2017-196701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00-15/28
B23Q 17/00-23/00
G01B 11/00-11/30
G05B 19/18-19/416
G05B 19/42-19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋削工具であるツールを着脱可能に保持する一方で回転可能に構成されたスピンドルと、該スピンドルの回転軸に対して垂直となるX軸方向に沿って進退可能に構成されたコラムと、該コラム上で前記スピンドルの回転軸に対して平行となるZ軸方向に沿って昇降可能に構成されたガイド部材と、該ガイド部材に搭載されていて前記ツールの刃先を前記Z軸方向の真上から撮影するカメラと、予め設定された基準回転位置からの前記スピンドルの回転角度、及び、前記カメラの画像から得られる前記ツールの刃先の座標に基づいて、前記基準回転位置において前記ツールの刃先が前記スピンドルの回転軸から前記X軸方向及び前記Z軸方向に対して直交するY軸方向にずれたオフセット量を算出する演算手段とを備えることを特徴とするツールプリセッタにおけるツール形状の測定装置。
【請求項2】
旋削工具であるツールを着脱可能に保持する一方で回転可能に構成されたスピンドルと、該スピンドルの回転軸に対して垂直となるX軸方向に沿って進退可能に構成されたコラムと、該コラム上で前記スピンドルの回転軸に対して平行となるZ軸方向に沿って昇降可能に構成されたガイド部材と、該ガイド部材に搭載されていて前記ツールの刃先を前記Z軸方向の真上から撮影するカメラと、予め設定された基準回転位置からの前記スピンドルの回転角度、及び、前記カメラの画像から得られる前記ツールの刃先の座標に基づいて、前記基準回転位置において前記ツールの刃先が前記スピンドルの回転軸から前記X軸方向及び前記Z軸方向に対して直交するY軸方向にずれたオフセット量を算出する演算手段とを備えた測定装置を使用し、前記基準回転位置において前記ツールの刃先が前記カメラの視野から外れる場合、前記ツールの刃先が前記カメラの視野内に入るように前記スピンドルを回転させ、その状態で前記カメラの画像に基づいて前記ツールの刃先の座標を取得し、前記スピンドルの回転角度及び前記ツールの刃先の座標に基づいて前記基準回転位置における前記ツールの刃先のオフセット量を算出することを特徴とするツールプリセッタにおけるツール形状の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツールプリセッタにおけるツール形状の測定装置及び測定方法に関し、更に詳しくは、ツールのY軸方向のオフセット量が大きい場合であっても、そのオフセット量を測定することを可能にしたツールプリセッタにおけるツール形状の測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械用のツールの刃先の形状や寸法を予め調整する際に用いられるツールプリセッタにおいて、ツールの刃先の形状や寸法を測定するために、水平方向に移動可能なコラムに対して水平投影装置が搭載されている(例えば、特許文献1参照)。このようなツールプリセッタでは、水平投影装置の視野内にツールの測定点が収まるように、コラムの移動方向であるX軸方向やX軸方向に垂直なZ軸方向に水平投影装置を移動させ、ツールの刃先の形状や寸法の自動測定を行うように構成されている。
【0003】
また、工作機械用のツールの中には、X軸方向及びZ軸方向に対して直交するY軸方向にずれたオフセット量が大きいツールがある。このようなツールの刃先の形状や寸法の自動測定を行う場合、工作機械内に設置されたツールプリセッタを利用して測定することも可能であるが、測定環境としては好ましくないため故障の原因となり易く、工作機械の稼働を停止させなければならないため生産性の観点で不利である。また、工作機械内のツールプリセッタを利用しない場合には、Y軸方向の移動を可能にする駆動装置を従来のツールプリセッタに対して付加する必要があるため、コストの観点で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-083723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ツールのY軸方向のオフセット量が大きい場合であっても、そのオフセット量を測定することを可能にしたツールプリセッタにおけるツール形状の測定装置及び測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のツールプリセッタにおけるツール形状の測定装置は、旋削工具であるツールを着脱可能に保持する一方で回転可能に構成されたスピンドルと、該スピンドルの回転軸に対して垂直となるX軸方向に沿って進退可能に構成されたコラムと、該コラム上で前記スピンドルの回転軸に対して平行となるZ軸方向に沿って昇降可能に構成されたガイド部材と、該ガイド部材に搭載されていて前記ツールの刃先を前記Z軸方向の真上から撮影するカメラと、予め設定された基準回転位置からの前記スピンドルの回転角度、及び、前記カメラの画像から得られる前記ツールの刃先の座標に基づいて、前記基準回転位置において前記ツールの刃先が前記スピンドルの回転軸から前記X軸方向及び前記Z軸方向に対して直交するY軸方向にずれたオフセット量を算出する演算手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のツールプリセッタにおけるツール形状の測定方法は、旋削工具であるツールを着脱可能に保持する一方で回転可能に構成されたスピンドルと、該スピンドルの回転軸に対して垂直となるX軸方向に沿って進退可能に構成されたコラムと、該コラム上で前記スピンドルの回転軸に対して平行となるZ軸方向に沿って昇降可能に構成されたガイド部材と、該ガイド部材に搭載されていて前記ツールの刃先を前記Z軸方向の真上から撮影するカメラと、予め設定された基準回転位置からの前記スピンドルの回転角度、及び、前記カメラの画像から得られる前記ツールの刃先の座標に基づいて、前記基準回転位置において前記ツールの刃先が前記スピンドルの回転軸から前記X軸方向及び前記Z軸方向に対して直交するY軸方向にずれたオフセット量を算出する演算手段とを備えた測定装置を使用し、前記基準回転位置において前記ツールの刃先が前記カメラの視野から外れる場合、前記ツールの刃先が前記カメラの視野内に入るように前記スピンドルを回転させ、その状態で前記カメラの画像に基づいて前記ツールの刃先の座標を取得し、前記スピンドルの回転角度及び前記ツールの刃先の座標に基づいて前記基準回転位置における前記ツールの刃先のオフセット量を算出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、旋削工具であるツールを着脱可能に保持する一方で回転可能に構成されたスピンドルと、このスピンドルの回転軸に対して垂直となるX軸方向に沿って進退可能に構成されたコラムと、このコラム上でスピンドルの回転軸に対して平行となるZ軸方向に沿って昇降可能に構成されたガイド部材と、このガイド部材に搭載されていてツールの刃先をZ軸方向の真上から撮影するカメラと、予め設定された基準回転位置からのスピンドルの回転角度、及び、カメラの画像から得られるツールの刃先の座標に基づいて、基準回転位置においてツールの刃先がスピンドルの回転軸からX軸方向及びZ軸方向に対して直交するY軸方向にずれたオフセット量を算出する演算手段とを備えているので、ツールのY軸方向のオフセット量が大きい場合であっても、ツールプリセッタにY軸方向の移動を可能にする別の駆動装置を付加せずに、そのY軸方向のオフセット量を測定することができる。これにより、工作機械の外部で(ツールプリセッタ内で)高精度な測定を行うことができると共に、工作機械を停止せずに済むため生産性の向上を図ることができる。更には、ツールプリセッタにY軸方向の移動を可能にする装置を付加する必要がないので、コストや精度、耐久性の観点から有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態からなるツール形状の測定装置を備えたツールプリセッタを示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態からなるツール形状の測定装置を備えたツールプリセッタを示す正面図である。
図3】本発明の実施形態からなるツール形状の測定装置を備えたツールプリセッタを示す側面図である。
図4】本発明のツール形状の測定装置におけるスピンドルの周辺を拡大して示す平面図であり、ツールの刃先をZ軸方向の真上からカメラで撮影した際にスピンドルの基準回転位置においてカメラの視野内にツールTの刃先が収まる状態を示すものである。
図5】(a),(b)は本発明のツール形状の測定装置におけるスピンドルの周辺を拡大して示す平面図であり、ツールの刃先をZ軸方向の真上からカメラで撮影した際に、(a)はスピンドルの基準回転位置においてカメラの視野からツールTの刃先が外れた状態を示し、(b)はスピンドルを基準回転位置から回転してカメラの視野内にツールTの刃先を収めた状態を示すものである。
図6】スピンドルの基準回転位置からの回転前後の状態におけるツールの刃先の位置をXY座標に投影して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1図3は本発明の実施形態からなるツール形状の測定装置を備えたツールプリセッタを示すものである。なお、図1図3において、スピンドルの回転軸に対して垂直となる方向をX軸方向とし、スピンドルの回転軸に対して平行となる方向をZ軸方向とし、X軸方向及びZ軸方向に対して直交する方向をY軸方向とする。
【0011】
本実施形態のツールプリセッタは、ツール形状を測定する機能を有し、ドリルやエンドミル、サイドカッタ等の標準的な切削ツールを含め、刃先の先端部が階段状に形成された段付刃物や被加工物に対して内径旋削するボーリングバー、先端が球状に形成されたボールエンドミル、多数刃を有するフライスカッタ等の特殊な切削ツールについてもその刃先の形状や寸法を測定することが可能である。
【0012】
図1図3に示すように、機台1上には、工作機械において使用するツールTを着脱可能に保持すると共に、回転可能に構成されたスピンドル3と、このスピンドル3に対してX軸方向に沿って進退可能に構成されたコラム4とが設置されている。ツールTは、スピンドル3に対して直接装着されていても良いが、図2に示すようにテーパーアダプタ2を介してスピンドル3に装着されていても良い。テーパーアダプタ2を使用することで、多種のツールTのシャンクサイズに素早く対応することができるため有利である。
【0013】
コラム4には、ガイド部材5がZ軸方向に沿って昇降可能に設置され、このガイド部材5には、水平方向に延びる一対の支持部材6,7が配設されている。支持部材6には、ツールTを前方から撮影するためのカメラ8(第一カメラ)が搭載されている。このカメラ8は、ツールTをY軸方向に向かって撮影し、ツールTの高さや外径を測定可能に構成されている。一方、支持部材7には、Y軸方向と平行な回転軸を有する回転駆動装置9と、回転駆動装置9により回転駆動される旋回アーム10が配設され、旋回アーム10にはツールTを側方又は上方から撮影するためのカメラ11(第二カメラ)が搭載されている。このカメラ11は、ツールTをX軸方向又はZ軸方向から撮影可能に構成されている。図1~3の実施形態において、カメラ11は、通常時にはX軸方向に向かって配置されているが、ツールTのY軸方向のオフセット量を測定する際には旋回アーム10が軸回りに旋回し、ツールTのZ軸方向の真上に移動して撮影を行う。
【0014】
上述したツールプリセッタにおいて、機台1には、スピンドル3の回転やコラム4又はガイド部材5の移動を操作するための操作ボックス12が配設されている。また、機台1には、その側面側に設けられた載置台16に、カメラ8又はカメラ11により撮影された画像や操作画面等を表示するためのタッチパネルモニター13と、入力操作を行うためのキーボード14と、測定結果等を印刷する印刷機15とが設置されている。なお、図3では、スピンドル3とカメラ11の関係を示すため、タッチパネルモニター13、キーボード14、印刷機15及び載置台16の描写を省略した。
【0015】
また、機台1の内部にはコンピュータ17が内蔵されている。コンピュータ17は、操作ボックス12、タッチパネルモニター13又はキーボード14により与えられた指示に基づいて、コラム4のX軸方向の移動量、ガイド部材5のZ軸方向の移動量、スピンドル3の回転量、回転駆動装置9の回転量を制御する制御装置として機能すると共に、カメラ8,11から得られた画像により各種の寸法を演算する演算装置として機能するように構成されている。特に、ツールTのY軸方向のオフセット量を算出する場合、予め設定された基準回転位置からのスピンドル3の回転角度θ1、及び、カメラ11の画像から得られるツールTの刃先Taの座標に基づいて、Y軸方向のオフセット量を算出する。このようなコンピュータ17(演算手段)は、例えば、上述した処理を実行可能なプログラムとして構成することができる。
【0016】
なお、基準回転位置は、工作機械上で基準となるスピンドル3の回転位置をツールプリセッタ上において再現したものである。Y軸方向のオフセット量は、ツールTの刃先Taがスピンドル3の回転軸EからY軸方向にずれたオフセット量であり、スピンドル3の中心を原点としたXY座標におけるY座標に相当する。ツールTの刃先Taは、加工時においてツールTが被加工物に直接に接触する部分である。
【0017】
上述したツール形状の測定装置を備えたツールプリセッタを用いて、ツールTの刃先Taの形状や寸法を測定するにあたって、予め、テーパーアダプタ2を取り付けたスピンドル3の基準回転位置を求め、スピンドル3をその基準回転位置に設定しておく。そして、スピンドル3に取り付けられたテーパーアダプタ2にツールTを装着する。
【0018】
ここで、ツールTの高さを測定する場合は、カメラ8(第一カメラ)によりツールTを撮影し、その画像を処理することにより、必要な寸法を正確に測定することができる。
【0019】
一方、ツールTのY軸方向のオフセット量を測定する場合は、カメラ11(第二カメラ)を使用する。カメラ11によりツールTの刃先TaをZ軸方向の真上から撮影した際、図4に示すように、カメラ11の視野11A内にツールTの刃先Taが収まる場合、そのカメラ11の画像に基づいて、ツールTの刃先TaのXY座標を取得する。この場合、基準回転位置からスピンドル3を回転させる必要がないためスピンドル3の回転角度θ1は0°とし、カメラ11の画像から得られるツールTの刃先TaのXY座標に基づいてY軸方向のオフセット量を算出する。即ち、スピンドル3の中心を原点とするXY座標におけるY座標が、基準回転位置におけるY軸方向のオフセット量となる。
【0020】
また、テーパーアダプタ2にツールTを装着した状態で、カメラ11によりツールTの刃先TaをZ軸方向の真上から撮影した際、図5(a)に示すように、カメラ11の視野11AからツールTの刃先Taが外れる場合、基準回転位置からスピンドル3を回転し、図5(b)に示すように、カメラ11の視野11A内にツールTの刃先Taが収まるようにする。その際、スピンドル3を回転すると共に、コラム4をX軸方向に沿って移動し、カメラ11の視野11A内とする。図6に示すように、基準回転位置からスピンドル3を回転させた角度を回転角度θ1とする。そして、カメラ11の画像に基づいて、ツールTの刃先Taの座標(X2,Y2)を取得する。なお、図6に示すXY座標において、基準回転位置からスピンドル3を回転する前のツールTの刃先Taを点P1とし、基準回転位置からスピンドル3を回転した後のツールTの刃先Taを点P2とする。
【0021】
取得した点P2の座標(X2,Y2)に基づいて、下記の数式1により、原点から点P2までを結ぶ線分T2の長さLを求める。そして、下記の数式2により、長さL及び点P2のY座標(Y2)に基づいて角度θ2を算出する。この角度θ2は、線分T2とX軸との間の角度である。数式2において、点P2のY座標(Y2)が正の場合はθ2が正の数値となり、点P2のY座標(Y2)が負の場合はθ2が負の数値となる。
【0022】
【数1】
【0023】
【数2】
【0024】
次に、スピンドル3の回転角度θ1及び算出した角度θ2に基づいて、原点から点P1までを結ぶ線分T1とX軸との間の角度θ3を算出する。この角度θ3は、回転角度θ1から角度θ2を引いて求められる角度(θ1-θ2)である。なお、線分T1の長さは、線分T2の長さと同等であるため、上記数式1で求めた長さLとなる。
【0025】
上記長さLと算出した角度θ3に基づいて、下記の数式3及び数式4により、点P1のX座標(X1)及びY座標(Y1)をそれぞれ求める。
【0026】
【数3】
【0027】
【数4】
【0028】
カメラ11の視野11AからツールTの刃先Taが外れる場合、上述のようにスピンドル3の回転角度θ1及び点P2の座標(X2,Y2)から逆算して、基準回転位置におけるY軸方向のオフセット量である点P1のY座標(Y1)を算出することができる。
【0029】
上述したツール形状の測定装置及び測定方法では、ツールTを着脱可能に保持する一方で回転可能に構成されたスピンドル3と、X軸方向に沿って進退可能に構成されたコラム4と、このコラム4上でZ軸方向に沿って昇降可能に構成されたガイド部材5と、このガイド部材5に搭載されていてツールTの刃先TaをZ軸方向の真上から撮影するカメラ11と、予め設定された基準回転位置からのスピンドル3の回転角度θ1、及び、カメラ11の画像から得られるツールTの刃先Taの座標に基づいて、基準回転位置においてツールTの刃先Taがスピンドル3の回転軸EからY軸方向にずれたオフセット量を算出する演算手段とを備えているので、ツールのY軸方向のオフセット量が大きい場合であっても、ツールプリセッタにY軸方向の移動を可能にする別の駆動装置を付加せずに、そのY軸方向のオフセット量を測定することができる。これにより、工作機械の外部で(ツールプリセッタ内で)高精度な測定を行うことができると共に、工作機械を停止せずに済むため生産性の向上を図ることができる。更には、ツールプリセッタにY軸方向の移動を可能にする装置を付加する必要がないので、コストや精度、耐久性の観点から有利である。
【0030】
上述したツール形状の測定装置を含むツールプリセッタによれば、カメラ8,11により得られる画像を使用することにより、形状の異なる様々な工作機械用のツールTに対して、そのツールTの形状や寸法を高精度に測定することができる。また、カメラ11は旋回可能に設置されているので、ツールTの欠陥検出にも利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 機台
2 テーパーアダプタ
3 スピンドル
4 コラム
5 ガイド部材
6,7 支持部材
8 カメラ(第一カメラ)
9 回転駆動装置
10 旋回アーム
11 カメラ(第二カメラ)
12 操作ボックス
13 タッチパネルモニター
14 キーボード
15 印刷機
16 載置台
17 コンピュータ(演算手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6