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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】エナメルリムーバー
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20220519BHJP
   A61Q 3/04 20060101ALI20220519BHJP
   A61Q 5/08 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q3/04
A61Q5/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018094380
(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公開番号】P2019199432
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390020019
【氏名又は名称】レック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 励
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2000-0063944(KR,A)
【文献】Swabplus, USA,Nail Polish Remover,Mintel GNPD [online],2003年04月,<URL:https://WWW.portal.mintel.com>,ID#10133645
【文献】Model Product Distributors, South Africa,Liquid Buds Nail Polish Remover,Mintel GNPD [online],2003年05月,<URL:https://WWW.portal.mintel.com>,ID#208004
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール又はそれらの誘導体である五員複素環式化合物であって、該誘導体は、フルフリルアルコール又はテトラヒドロフルフリルアルコールの五員環部分に炭素数1~6の低級アルキル基又は水酸基が置換した誘導体、あるいは、フルフリルアルコール又はテトラヒドロフルフリルアルコールの水酸基が炭素数1~6の低級アルキルエステル基もしくは炭素数1~6の低級アルコキシ基に変換された誘導体である、五員複素環式化合物、キレート剤及び水を含有することを特徴とするエナメルリムーバー。
【請求項2】
前記五員複素環式化合物を、エナメルリムーバー中に15質量%~98質量%含有する請求項1に記載のエナメルリムーバー。
【請求項3】
さらに脱脂剤を含有する請求項1又は2に記載のエナメルリムーバー。
【請求項4】
脱脂剤が乳酸エステルである請求項に記載のエナメルリムーバー。
【請求項5】
キレート剤がエチレンジアミン四酢酸塩である請求項に記載のエナメルリムーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエナメルリムーバーに関する。さらに詳細には、本発明は、テトラヒドロフルフリルアルコールやフルフリルアルコールなどの、水酸基、エステル基又はアルコキシ基で置換されていてもよいアルキル基で置換された、環中に1個の酸素原子を含む五員複素環式化合物及び水を含有することを特徴とするエナメルリムーバーであって、マニキュアなどのネイルエナメル等を除去する充分な除去力を有し、かつ、揮発しにくく、使用時の刺激臭がなく、しかも使用感、特に使用時の爪のマイルド感やうるおい感等に優れたエナメルリムーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
マニキュアなどのネイルエナメル等は、通常、ニトロセルロースや樹脂類で構成されている。ネイルエナメル等を除去するエナメルリムーバーは、ニトロセルロースなどを溶解するための有機溶剤で主に構成され、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エタノールなどを配合したエナメルリムーバーが除去力の強さから従来使用されている。
【0003】
しかしながら、これらのエナメルリムーバーは脱水・脱油力が強く、爪中の水分や脂質が失われ、2枚爪・割れなどの損傷を引き起こす原因となっていた。さらに、これらは揮発しやすく何度も注ぎ足して除去する必要があるばかりでなく、刺激臭もあるという問題があった。刺激臭の問題に対しては、種々の検討がなされてきた。例えば、従来用いられていたアセトンや酢酸エチルなどの有機溶剤の代わりに、フェニルエチルアルコールやシトラールなどの成分を含有する天然精油や低級アルコールを配合する方法(例えば、特許文献1参照)、乳化タイプや増粘剤の併用により粘性をもたせ、使用時に爪周辺への皮膚に液が広がらないようにする方法(例えば、特許文献2参照)などが報告されているが、未だ本質的な解決には至っていない。
【0004】
また、安全で爪や皮膚に損傷を与えない除去力が向上したエナメルリムーバーとして、1,3-ジオキソラン-2-オン誘導体を含有するエナメルリムーバーも報告されている(特許文献3参照)が、満足のいくものとはいえない。
このように種々のエナメルリムーバーが報告されているが、揮発しやすく何度も注ぎ足して除去する必要があるという問題に至っては、未だ充分な検討がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-205921号公報
【文献】特開平09-268114号公報
【文献】特開2000-319134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決すべく達成されたものであり、ネイルエナメルなどの除去力を有し、かつ、揮発しにくく刺激臭がなく、しかも使用感、特に使用時の爪のマイルド感やうるおい感に優れたエナメルリムーバーであって、皮膚などに付着したヘアカラーや白髪染め、ヘアマニキュアなどの染毛剤・染毛料の除去にも使用可能であるエナメルリムーバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上述の課題に鑑み鋭意研究した結果、テトラヒドロフルフリルアルコールやフルフリルアルコールなどと水を配合してなるエナメルリムーバーが、ネイルエナメルなどの除去力を有し、かつ、揮発しにくく刺激臭がなく、しかも使用感、特に使用時の爪のマイルド感やうるおい感に優れ、皮膚などに付着したヘアカラーや白髪染め、ヘアマニキュアなどの染毛剤・染毛料の除去にも使用可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、水酸基、エステル基又はアルコキシ基で置換されていてもよいアルキル基で置換された、環中に1個の酸素原子を含む五員複素環式化合物及び水を含有することを特徴とするエナメルリムーバーを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエナメルリムーバーは、ネイルエナメルなどに対し充分な除去力を有し、かつ、揮発しにくく刺激臭がなく、使用感、特に使用時の爪のマイルド感やうるおい感に優れている。また、本発明のエナメルリムーバーは、皮膚などに付着したヘアカラーや白髪染め、ヘアマニキュアなどの染毛剤・染毛料を皮膚などに刺激を与えることなく有効に除去することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のエナメルリムーバーには、水酸基、エステル基又はアルコキシ基で置換されていてもよいアルキル基で置換された、環中に1個の酸素原子を含む五員複素環式化合物が用いられる。ここで、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピルなどの炭素数1~6の低級アルキル基が好ましく挙げられる。アルキル基に置換してもよいエステル基としては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルなどの炭素数1~6の低級アルキルエステル基が好ましく挙げられる。アルキル基に置換してもよいアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどの炭素数1~6の低級アルコキシ基が好ましく挙げられる。
【0011】
五員複素環式化合物としては、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール又はそれらの誘導体が好ましい。それらの誘導体としては、例えば、テトラヒドロフルフリルアルコールやフルフリルアルコールの五員環部分にアルキル基又は水酸基が置換した誘導体;テトラヒドロフルフリルアルコールやフルフリルアルコールの水酸基がエステル基やアルコシ基に変換された誘導体などが好ましいものとして挙げられる。これらの五員複素環式化合物は、二種以上を混合して用いることもできる。これらの五員複素環式化合物は、植物由来品を用いた製造方法や化学合成品を用いた製造方法などの公知の方法で製造でき、また、市販品を使用することもできる。
【0012】
本発明のエナメルリムーバーにおける、前記五員複素環式化合物の含有量は、エナメルリムーバー中に15質量%~98質量%が好ましく、20質量%~95質量%がさらに好ましく、40質量%~90質量%が特に好ましい。この範囲で含有すると、本発明のエナメルリムーバーは除去力、使用感の点で特に優れるものとなる。
【0013】
本発明のエナメルリムーバーに用いられる水は、水層を形成するものであり、精製水の他にローズ水やラベンダー水などの植物由来の水蒸気蒸留水などを使用することができる。水の含有量としては、エナメルリムーバー中に2質量%~85質量%が好ましく、5質量%~80質量%がさらに好ましく、10質量%~60質量%が特に好ましい。この範囲であれば、本発明のエナメルリムーバーは使用感、揮発しにくい点で特に優れるものになる。
【0014】
本発明のエナメルリムーバーには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、目的に応じて、上述の必須成分である五員複素環式化合物及び水以外に、通常、エナメルリムーバーなどの化粧料に使用される各種成分を配合することができる。これらの成分としては、例えば、脱脂剤、キレート剤、界面活性剤、香料、増粘剤、保湿剤、油剤などが挙げられ、必要に応じて各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0015】
脱脂剤としては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル、炭酸プロピレン、ベンジルアルコールなどが挙げられる。キレート剤としては、例えば、エデト酸(エチレンジアミン四酢酸)、エデト酸塩(エチレンジアミン四酢酸塩)、エチドロン酸、エチドロン酸塩、フィチン酸、クエン酸などが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルやポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非イオン界面活性剤が挙げられる。香料としては通常化粧料に使用されるものであれば植物由来、化学合成品のいずれも使用することができる。香料としては、例えば、オレンジ油、シトラール、シネオール、ローズ油、ローズナリー油などが挙げられる。増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー、メチルセルロース、キサンタンガムなどが挙げられる。保湿剤としては、例えば、ヒアルロン酸、ポリオール類、ピロリドンカルボン酸などが挙げられる。油剤としては、例えば、エステル油類、高級アルコール類、油脂、ロウ類、炭化水素油などが挙げられる。
【0016】
本発明のエナメルリムーバーは、上記した脱脂剤やキレート剤を含むのが好ましく、特に、脱脂剤として乳酸エチルなどの乳酸エステルを含み、キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(EDTA-4Na)などのエチレンジアミン四酢酸塩を含むのが好ましい。
【0017】
本発明のエナメルリムーバーは、通常のエナメルリムーバーの製造方法によって製造することができる。例えば、前記五員複素環式化合物及び水、さらには、必要に応じて、脱脂剤、キレート剤、界面活性剤、香料、増粘剤、保湿剤、油剤などを、通常使用される攪拌機などにより、よく混合することにより製造することができる。
【0018】
本発明のエナメルリムーバーは、通常使用される方法により用いることができる。例えば、本発明のエナメルリムーバーを含浸させたコットンなどを用いて、爪や付け爪などに塗布されたエナメルを除去することができる。また、通常使用されるワンタッチキャップ容器やロールオン容器、毛筆付き容器や毛筆ペンタイプの容器などに充填して使用することもできる。さらに基材シートに含浸しウエットシートとしても使用することができる。
【0019】
本発明のエナメルリムーバーは、ネイルエナメルなどの爪化粧料の除去以外にも、皮膚などに付着した白髪染めなどの染毛料の除去にも使用可能である。例えば、本発明のエナメルリムーバーを含浸させたコットンなどを用いて、皮膚などに付着したヘアカラーや白髪染め、ヘアマニキュアなどの染毛剤・染毛料を、皮膚などに刺激を与えることなく有効に除去することもできる。
【実施例
【0020】
以下に実施例及び比較例により本願発明をより詳細に説明する。なお、これらの実施例は本願発明を限定するものではない。
【0021】
実施例1~10及び比較例1~13
表1及び表2に示す成分からなる実施例1~10及び比較例1~13のエナメルリムーバーを通常の方法により製造した。製造したエナメルリムーバーについて、以下に記載する方法で各評価項目について評価し、得られた判定結果を表1及び表2に示した。
【0022】
評価方法
評価項目1:エナメルの除去力(ラメ無し/ラメ有り)
ネイルエナメルを塗布してから1時間後にエナメルリムーバーを使用し、エナメル除去力の効果をパネラー10名により、以下の評価基準で評価した。
評価基準:
◎:パネラー8名以上がエナメル除去力が高いと評価した。
○:パネラー6名以上8名未満がエナメル除去力が高いと評価した。
△:パネラー4名以上6名未満がエナメル除去力が高いと評価した。
×:パネラー3名以下がエナメル除去力が高いと評価した。
【0023】
評価項目2:溶剤臭のなさ
エナメルリムーバー使用時の溶剤臭(刺激臭)の有無をパネラー10名により、以下の評価基準で評価した。
評価基準:
◎:パネラー8名以上が溶剤臭が気にならないと評価した。
○:パネラー6名以上8名未満が溶剤臭が気にならないと評価した。
△:パネラー4名以上6名未満が溶剤臭が気にならないと評価した。
×:パネラー3名以下が溶剤臭が気にならないと評価した。
【0024】
評価項目3:使用時の爪のうるおい感
エナメルリムーバー使用時の爪のうるおい感の有無をパネラー10名により、以下の評価基準で評価した。
評価基準:
◎:パネラー8名以上が使用時の爪にうるおい感があると評価した。
○:パネラー6名以上8名未満が使用時の爪にうるおい感があると評価した。
△:パネラー4名以上6名未満が使用時の爪にうるおい感があると評価した。
×:パネラー3名以下が使用時の爪にうるおい感があると評価した。
【0025】
評価項目4:使用後の爪の状態(白くなるかどうか・乾燥するかどうか)
エナメルリムーバー使用後の爪や皮膚の状態(白くなるかどうか・乾燥するかどうか)をパネラー10名により、以下の評価基準で評価した。
評価基準:
◎:パネラー8名以上が使用後の爪・皮膚が白くならない・乾燥しないと評価した。
○:パネラー6名以上8名未満が使用後の爪・皮膚が白くならない・乾燥しないと評価した。
△:パネラー4名以上6名未満が使用後の爪・皮膚が白くならない・乾燥しないと評価した。
×:パネラー3名以下が使用後の爪・皮膚が白くならない・乾燥しないと評価した。
【0026】
評価項目5:揮発しにくさ
エナメルリムーバーを適量爪の上に滴下し、室温下での揮発しやすさについてパネラー10名により、以下の評価基準で評価した。
評価基準:
◎:パネラー8名以上が揮発しにくいと評価した。
○:パネラー6名以上8名未満が揮発しにくいと評価した。
△:パネラー4名以上6名未満が揮発しにくいと評価した。
×:パネラー3名以下が揮発しにくいと評価した。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
表1及び表2の判定結果から分かるように、本発明のエナメルリムーバーは、エナメルの除去力、溶剤臭、使用時の爪のうるおい感、使用後の爪の状態及び揮発性の全ての点において優れていた。