IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立インダストリアルプロダクツの特許一覧

<>
  • 特許-内扇ファンを備えた電動機 図1
  • 特許-内扇ファンを備えた電動機 図2
  • 特許-内扇ファンを備えた電動機 図3
  • 特許-内扇ファンを備えた電動機 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】内扇ファンを備えた電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20220519BHJP
   F04D 23/00 20060101ALI20220519BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
H02K9/06 G
H02K9/06 B
F04D23/00 B
F04D29/58 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018124054
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020005434
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 功
(72)【発明者】
【氏名】里 水里
(72)【発明者】
【氏名】小山 貴之
(72)【発明者】
【氏名】杉本 健一
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-041361(JP,A)
【文献】特開2016-100953(JP,A)
【文献】特開平05-106592(JP,A)
【文献】特開平11-004559(JP,A)
【文献】特開昭56-154198(JP,A)
【文献】特開平07-247991(JP,A)
【文献】特開2013-119816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/06
F04D 23/00
F04D 29/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと共に回転する回転子と、前記回転子の外周面に対向する固定子と、前記回転子に接続したエンドリングと、前記固定子に接続した固定子巻線と、スリーブを介して前記シャフトとともに回転するファンと、前記ファンの翼外周先端に対向するファンガイドと、前記回転子、前記固定子、前記ファン、前記ファンガイド、前記エンドリング、および前記固定子巻線を格納するフレームと、を有し、
前記回転子は、回転子の軸方向に貫通するアキシャルダクト、及び、前記アキシャルダクトに連通し、回転子の内側から外側へ放射状に貫通するラジアルダクトを有し、
前記ファンは、前記フレームの内部に設置される内扇ファンであり、前記内扇ファンは斜流型であると共に内扇ファンの吐出方向が内側方向であり、
前記ファンガイドが2重構造であり、その外径側である外径側ファンガイドを前記内扇ファンの翼外周先端に沿って設置し、その内径側である内径側ファンガイドを前記固定子巻線の外径側輪郭に沿って設置したことを特徴とする内扇ファンを備えた電動機。
【請求項2】
前記スリーブの外周面であって、前記内扇ファンの後流側の外周面端部に、内径方向へ転向する転向面を有することを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記内扇ファンの翼根元側後縁と前記エンドリングとの軸方向距離を、前記内扇ファンの翼最大外径の0.17倍以上0.20倍以下に設置することを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項4】
前記内扇ファンの翼の午面形状が、直線で形成されることを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項5】
前記内扇ファンの翼根元の出口角度が、85°以上90°以下であることを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内扇ファンを備えた電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2004-236439号公報(特許文献1)がある。この公報には、中空にした回転子鉄心を回転子軸アームにより回転子軸に保持させ、これにより回転子鉄心と回転子軸との間にアキシャルダクトを形成するようにした回転電機が記載されている。
【0003】
また、本技術分野の背景技術として、特開平11-4559号公報(特許文献2)がある。この公報には、回転子鉄心に冷却用気体が通る複数の冷却用貫通孔が形成された電動機本体と、電動機本体の出力軸が突出する端部とは反対側の端部側に設けられて複数の冷却用貫通孔を通る冷却用気体に圧力を付与する冷却ファンと、複数の冷却用貫通孔と冷却ファンの通風路とを連結する気体流通路を構成するダクトとを具備している冷却ファン付き電動機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-236439号公報
【文献】特開平11-4559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1には、アキシャルダクトが形成された回転電機が、また、前記特許文献2には、冷却ファン付き電動機が、それぞれ記載されている。しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の回転電機もしくは電動機では、電動機(回転電機)が更に高出力化や高密度化された場合、回転子及び固定子で発生する発熱量が電動機の冷却能力を上回ってしまい、回転子及び固定子の温度上昇が定格値を超過してしまう可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、電動機が高出力化や高密度化される場合であっても、電動機の大型化や騒音増大することなく、回転子及び固定子を効率よく冷却することができる内扇ファンを備えた電動機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の内扇ファンを備えた電動機は、シャフトと共に回転する回転子と、回転子の外周面に対向する固定子と、回転子に接続したエンドリングと、固定子に接続した固定子巻線と、スリーブを介してシャフトとともに回転するファンと、ファンの翼外周先端に対向するファンガイドと、回転子、固定子、ファン、ファンガイド、エンドリング、および固定子巻線を格納するフレームと、を有し、回転子は、回転子の軸方向に貫通するアキシャルダクト、及び、アキシャルダクトに連通し、回転子の内側から外側へ放射状に貫通するラジアルダクトを有し、ファンは、フレームの内部に設置される内扇ファンであり、内扇ファンは斜流型であると共に内扇ファンの吐出方向が内側方向であり、ファンガイドが2重構造であり、その外径側である外径側ファンガイドを内扇ファンの翼外周先端に沿って設置し、その内径側である内径側ファンガイドを固定子巻線の外径側輪郭に沿って設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電動機が高出力化や高密度化される場合であっても、電動機の大型化や騒音増大することなく、回転子及び固定子を効率よく冷却することができる内扇ファンを備えた電動機を提供することができる。
【0009】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施例に係る内扇ファンを備えた電動機の要部断面を示す模式図である。
図2】本実施例に係る内扇ファンの寸法定義を子午面で説明する説明図である。
図3】本実施例に係る内扇ファンの寸法定義を翼型で説明する説明図である。
図4】他の実施例に係る内扇ファンを備えた電動機の要部断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本実施例に係る内扇ファンを備えた電動機の要部断面を示す模式図である。
【0013】
なお、本実施例で記載する電動機100は、比較的容量が大きなMW(メガワット)クラスの産業用誘導電動機(例えば、回転速度60Hz)などの電動機である。
【0014】
電動機100は、シャフト2と、シャフト2によって支持され、シャフト2と共に回転する回転子3と、回転子3の外周面に対向するように位置して回転子3が回転することで磁力が発生する固定子11と、これらを格納するフレーム1と、で構成される。
【0015】
フレーム1には、シャフト2が軸受10を介して回転自在に設置される。二つある軸受10の間の部分に回転子3が固定されており、回転子3はシャフト2の軸線を中心にシャフト2と一体に回転する。
【0016】
そして、回転子3には両端部に2つのエンドリング6が接続され、固定子11には両端部に2つの固定子巻線12が接続される。また、シャフト2には、スリーブ21を介して支持され、シャフト2と共に回転する内扇ファン22が設置される。更に、内扇ファン22の翼外周先端には、内扇ファン22に対向するように、ファンガイド23が設置される。
【0017】
つまり、シャフト2には、軸受10と回転子3との間の両側の部分にスリーブ21を介して内扇ファン22がそれぞれ固定され、シャフト2と一体に回転される。このとき、内扇ファン22とスリーブ21とは斜流型である。また、内扇ファン22は、2つの軸受10の間、つまり、フレーム1の内部に設置されるファンである。
【0018】
ファンガイド23は、内扇ファン22の翼外周先端と対向するように設置され、内扇ファン22の吸込側と吐出側とを区切るように設置される。
【0019】
このように、内扇ファン22の外周面には、ファンガイド23が隙間を介して対向する。また、ファンガイド23は、フレーム1の中に設置される天板33に固定される。
【0020】
フレーム1は、回転子3、固定子11、内扇ファン22、ファンガイド23、エンドリング6、固定子巻扇12を格納する。
【0021】
なお、フレーム1の上側には、クーラーボックス14が設置される。クーラーボックス14の中には、図示していないが、水平方向に長い冷却管が多数設置される。
【0022】
回転子3には、回転子3の軸方向に貫通するアキシャルダクト5が設置され、アキシャルダクト5に連通し、回転子3の内側から外側へ放射状に貫通するラジアルダクト4が設置される。
【0023】
このように、回転子3には、回転子3の内径から外径に放射状に延びた複数のラジアルダクト4と、回転子3の内径側の部分に、シャフト2の軸線方向に沿って延び、かつ、周方向に互いに間隔をおいて設けられた複数のアキシャルダクト5と、が設置される。
【0024】
回転子3の外周面には、円筒状の固定子11の内面が隙間を介して対向する。固定子11にも、固定子11の内径から外径に放射状に延びた複数のラジアルダクト4が設置される。
また、固定子11は、フレーム1の中に設置される天板33に固定される。
【0025】
内扇ファン22は、フレーム1の内部に設置されるものである。そして、この内扇ファン22は斜流型である。更に、この内扇ファン22の吐出方向は、内側方向、つまり、回転子3や固定子11が設置されている方向(冷却風の流れ方向31)である。
【0026】
なお、内扇ファン22は、回転子3の近傍の片側もしくは両側に、吐出方向が回転子3側になるように設置される。
【0027】
また、内扇ファン22とシャフト2との間に介在するスリーブ21は、その外周面に、内扇ファン22の後流側の外周面端部が、内径方向に転向するように転向面40が形成される。
【0028】
これにより、内扇ファン22の出口で、斜め外径方向に吐出される冷却風の流れの一部を、内径方向に転向させ、回転子3のアキシャルダクト5やラジアルダクト4への冷却風の流入を促進することができ、回転子3のアキシャルダクト5やラジアルダクト4への冷却風の風量低下を抑制することができ、冷却能力を増大させることができる。
【0029】
さらに、内扇ファン22から吐出される冷却風の流れと、冷却風にとっては障害物となるエンドリング6との干渉を効率的に抑制し、冷却能力を増大することができる。
【0030】
フレーム2の内部は、フレーム2の外部と異なり、回転子3や固定子11が密集して設置され、ファンを設置する空間的余裕が小さい。このため、ファンの体格が過大になると周辺構造物と干渉し、十分な冷却能力を得られないとの課題があった。しかし、本実施例に記載する内扇ファン22やスリーブ21を使用することにより、回転子3や固定子11や固定子巻線12に効率よく冷却風を供給することができるため、冷却能力を増大することができる。
【0031】
また、内扇ファンを使用する場合、通常、冷却風をファンの内側から外側へ流通させる。回転子3や固定子11を均等に冷却するためである。しかし、本実施例に記載する電動機100では、斜流型の内扇ファン22を使用し、冷却風の流れ方向31を内扇ファン22の外側から内側へとすることにより、回転子3や固定子11や固定子巻線12に直接的に冷却風を供給することができるため、局所的な冷却能力を増大することができる。さらに、冷却風の流れ方向31をアキシャルダクト5の吸込方向と同じにすることで、ラジアルダクト4の昇圧効果を損なくことなく、冷却風を効率的に用いることができる。
【0032】
電動機100は、電力が印加されると、シャフト2に支持された回転子3が固定子11で発生した磁力によって高速で回転することにより駆動する。
【0033】
このとき熱損失により、回転子3及び固定子11の温度が上昇する。電動機100は、この熱損失による温度上昇の上限を定格値に保持するため、アキシャルダクト5、ラジアルダクト4、内扇ファン22等の放熱手段を備える。
【0034】
例えば、フレーム1の内部に冷却風(強制対流)を発生させる内扇ファン22を、シャフト2で支持するようにして備え、回転子3と固定子11との間の隙間や、回転子3や固定子11に冷却風を通風させるようにする。
【0035】
冷却能力の向上のため、回転子3と固定子11とにラジアルダクト4を設置し、回転子3の内側から外側へ放射状に冷却風を通風させると共に、固定子11の内側から外側へ放射状に冷却風を通風させ、回転子3及び固定子11とを冷却する。
【0036】
つまり、本実施例に記載するラジアルダクト4は、回転子3と固定子11とを通って、回転子3の内径側から外径側へ放射状に、そして、固定子11の内径側から外径側へ放射状に、延びている複数の通風路のことである。
【0037】
なお、ファンの形状を大別すると、遠心ファン、軸流ファン、斜流ファンとなる。ファンの形状にはそれぞれに長所と短所がある。一般的に、軸流ファンは大風量・低圧力、遠心ファンは小風量・高圧力であり、斜流ファンは軸流ファンと遠心ファンとの中間の特性を有する。また、遠心ファンよりも軸流ファンの方が、一般的に構造が単純であり、斜流ファンはその中間である。
【0038】
本実施例に記載する電動機100では、斜流ファンを使用し、特に、フレーム1の外部に設置する外扇ファンとして使用するのではなく、この斜流ファンをフレーム1の内部に設置する内扇ファンとして使用している。外扇ファンは、通常、温度が上がった冷却風の温度を下げるための熱交換用に使用され、本実施例においても、図示はしていないが、こうした外扇ファンを設置してもよい。
【0039】
このように、本実施例に記載する電動機100に使用されるファンは、フレーム1の内部に設置される内扇ファン22であり、内扇ファン22は斜流型であると共に内扇ファン22の吐出方向が内側方向、つまり回転子3側になる。
【0040】
これにより、本実施例に記載する内扇ファン22を備えた電動機は、アキシャルダクト5やラジアルダクト4の昇圧効果と内扇ファン22の昇圧効果とを効率的に使用し、通風抵抗が大きい通風路においても、冷却風の風量を増大させることができ、冷却能力を増大することができる。また、本実施例に記載する内扇ファン22を備えた電動機100は、内扇ファン22を大型化及び騒音増大することなく、冷却能力を向上させることができる。
【0041】
このように本実施例では、冷却能力の向上のため、適切な形状の冷却用の内扇ファン22やスリーブ21を備えることにより、内扇ファン22と周辺構造物との干渉を抑制することができる。
【0042】
次に、動作について説明する。
【0043】
本実施例に記載する電動機100は、固定子11と固定子巻線12とへの通電により、回転子3、シャフト2、スリーブ21及び内扇ファン22が回転する。これにより、回転子3及び固定子11に熱が発生する。
【0044】
一方、内扇ファン22とラジアルダクト4とでは空気が昇圧され、この回転により、冷却風が発生する。
【0045】
冷却風の流れ方向31は、内扇ファン22の外側から内側であり、つまり、回転子3や固定子11へ向かう方向である。内扇ファン22の出口から吐出された冷却風は、外径側の主に固定子巻線12の間を通過する方向とアキシャルダクト5を通過する方向に分岐するように流れる。これは、スリーブ21に形成される転向面40が作用するためである。
【0046】
アキシャルダクト5を通過した冷却風は、ラジアルダクト4を通過し、クーラーボックス14に中央部から流入する。固定子巻線12の間を通過した冷却風も、同様にクーラーボックス14に中央部から流入する。内扇ファン22の出口から吐出された冷却風は、クーラーボックス14に流入するまでの間に、回転子3と固定子11とで発生した熱を吸熱し、温度が上昇する。
【0047】
このように温度が上昇した冷却風は、クーラーボックス14の中に設置される冷却管を流れる低温空気と熱交換(低温空気に放熱)し、温度が低下する。温度が低下した冷却風は、クーラーボックス14の端部から下方に流れ、再度、内扇ファン22の入口から吸い込まれる。そして、冷却風は、フレーム1の下方とクーラーボックス14との間を循環する。
【0048】
本実施例に記載する内扇ファン22を有する電動機100では、内扇ファン22の吐出方向とアキシャルダクト5の吸込方向が同じであるため、両方の昇圧効果を効率的に用いることができる。さらに、内扇ファン22は、斜流型であるため、通風抵抗が比較的大きな通風路であっても、外径を大きくすることなく、大きな風量の冷却風を発生させることができる。
【0049】
このように、電動機100が高出力化される場合や構成部品が高密度実装(高密度化)される場合のように、通風抵抗が大きくなる場合であっても、電動機100の小型化や低騒音化を実現しつつ、回転子3及び固定子11の温度上昇を抑制することができる。
【0050】
また、スリーブ21は、内扇ファン22の後流側の外周面端部が、内径方向に滑らかに転向するように形成される(転向面40が形成される)ため、斜流型の内扇ファン22の出口で、斜め外径方向に吐出される冷却風の流れの一部を内径方向に転向させ、回転子3のアキシャルダクト5への冷却風の流入を促進し、冷却風の風量を増大することができる。従って、回転子3の温度上昇を抑制することができる。
【0051】
なお、本実施例では、スリーブ21の内扇ファン22の後流側の外周面端部に形成される転向面40の形状は、曲面を有するが、平面の組み合わせであってもよい。
【0052】
本実施例によれば、電動機100の出力を向上させる(高出力化する)場合であっても、ファンを大型化することなく(小型化(同サイズ)のまま)、実現することができる。すなわち、ファンの大型化を図ることなく、冷却効率を高める(効率よく冷却風を使用する)ことができるためである。また、ファンの大型化を図る必要がないため、ファンの大型化による風切り音の増大も抑制することができ、低騒音化も実現することができる。
【0053】
このように、内扇ファン22の外径を小さくすることにより、低騒音化が可能となり、冷却風の風量を増大することにより、冷却能力を増大することができる。
【0054】
また、本実施例に記載する電動機100は、内扇ファン22の翼根元側後縁とエンドリング6との軸(回転軸)方向距離32を、内扇ファン22の翼最大外径41の0.17倍以上0.20倍以下に設置することが好ましい。具体的には、本実施例に記載する電動機100は、内扇ファン22の翼根元側後縁とエンドリング6との軸方向距離32が内扇ファン22の翼最大外径41の0.18倍になる位置に設置される。
【0055】
本実施例に記載する電動機100は、内扇ファン22の翼根元側後縁とエンドリング6との軸方向距離32を小さく設定することができ、軸長が短縮され、振動低減が実現できる。また、内扇ファン22と吐出側障害物との距離は、干渉を避けるために、流れ方向に、内扇ファン22の翼最大外径41の0.20倍以上に設定されることが好ましく、内扇ファン22の翼根元側後縁とエンドリング6との軸方向距離32を、内扇ファン22の翼最大外径41の0.20倍と設定すれば、内扇ファン22から吐出される冷却風の風量低下を抑制することができる。更に、内扇ファン22から吐出される冷却風の風量低下を抑制するためには、斜流型である内扇ファン22の傾斜角度は、軸流型との差異を発揮するために、30°以上であることが好ましく、こうした内扇ファン22の傾斜角度を考慮すると、内扇ファン22の翼根元側後縁とエンドリング6との軸方向距離32を、内扇ファン22の翼最大外径41の0.17(0.20×cos30°=0.17)倍以上とすることが好ましい。すなわち、内扇ファン22の翼根元側後縁とエンドリング6との軸方向距離32を、内扇ファン22の翼最大外径41の0.17倍以上0.20倍以下とすることが好ましい。
【0056】
内扇ファン22とエンドリング6との間の軸方向距離32を、このように設置することにより、内扇ファン22の吐出流れ(冷却風流れ)とエンドリング6との干渉が抑制され、冷却風の風量の低下を回避することができる。結果的に、回転子3と固定子11との温度上昇を抑制することができる。
【0057】
図2は、本実施例に係る内扇ファンの寸法定義を子午面で説明する説明図である。
【0058】
本実施例に記載する内扇ファン22は、図2に示すように、翼の子午面形状を、曲線を用いずに、全て直線で形成することが好ましい。このような形状とすることにより、翼の形状が、比較的単純な形状となるため、製造や組立が容易となる。
【0059】
また、内扇ファン22とファンガイド23との隙間量を、より小さな値に管理できるようになり、内扇ファン22の性能を向上することができる。これにより、冷却能力を増加することができる。結果的に、回転子3と固定子11との温度上昇を抑制することができる。
【0060】
また、内扇ファン22の翼の軸(回転軸)方向全長(L)を翼最大外径41(出口外径:D2)の0.17倍以下(0.15倍以上)とすることが好ましい。
【0061】
本実施例では、図2に示すように、翼の子午面において、内扇ファン22の翼子午面形状は、全て直線で形成される。そして、翼の軸方向全長(L)は、翼最大外径41(出口外径:D2)の0.16倍となっている。
【0062】
このような形状とすることにより、内扇ファン22とエンドコイル6との距離を、適切な距離に保ちつつ、2つの軸受間距離を過大にすることなく適切な距離に設定することができるため、軸振動を安定化させることができ、内扇ファン22の吐出流れ(冷却風流れ)とエンドリング6との干渉が抑制され、冷却風の風量の低下を回避することができる。結果的に、回転子3と固定子11との温度上昇を抑制することができる。
【0063】
さらに、内扇ファン22の翼の前縁外径D1を翼最大外径D2の0.87倍以上(0.89倍以下)と設定し、スリーブ21の外周部とシャフト2の軸線との間の傾斜角度θを、45°以上(50°以下)とすることが好ましい。
【0064】
本実施例では、内扇ファン22の翼の前縁外径D1は翼最大外径D2の0.88倍となっている。さらに、スリーブ21の外周部とシャフト2の軸線との間の傾斜角度θは、約45°となっている。
【0065】
このような形状とすることにより、内扇ファン22の翼の前縁外径D1を適切に設定することができ、かつ、スリーブ21の外周部とシャフト2の軸線との間の傾斜角度θも適切に設定することができるため、翼間流れのはく離を抑制しつつ、内扇ファン22の静圧効率を高めることができる。結果的に、回転子3と固定子11との温度上昇を抑制することができる。
【0066】
図3は、本実施例に係る内扇ファンの寸法定義を翼型で説明する説明図である。
【0067】
内扇ファン22の翼根元の出口角度β2は、図3に示すように、約90°と設定されている。なお、内扇ファン22の翼根元の出口角度β2は、85°以上90°以下であることが好ましい。このような形状とすることにより、内扇ファン22の翼先端の出口角度β2(図示なし)を適切な角度とし、翼先端での隙間漏れ流れやはく離流れの悪影響を抑制しつつ、内扇ファン22を高圧化することができる。これにより、冷却能力を増加することができる。
【0068】
このように、内扇ファン22の翼根元の出口角度β2を大きくするにより、内扇ファン22から吐出される冷却風の風量低下を抑制することができる。したがって、回転子3や固定子11の温度上昇を抑制することができる。
【0069】
このような形状とすることにより、入口での速度を小さくすることで入口損失を小さくし、翼間で増速することができる。そして、翼間の流れのはく離を抑制し、大きな遠心力を圧力に変換することができ、内扇ファン22の静圧効率を高くすることができ、冷却能力を増加することができる。
【実施例2】
【0070】
図4は、他の実施例に係る内扇ファンを備えた電動機の要部断面を示す模式図である。
【0071】
本実施例(図4)に記載する電動機100は、実施例1(図1)に記載した電動機100と概ね同様であり、実施例1に記載した電動機100との相違は、実施例1に記載するファンガイド23が、本実施例では、内径側ファンガイド24と外径側ファンガイド25との2重構造になっている点である。
【0072】
なお、図4に記載する符号は、図1に記載した符号と同様であるため、説明を省略する。
【0073】
内扇ファン22と外径側ファンガイド25との隙間を小さくすることにより、内扇ファン22の翼先端部の(内扇ファン22と外径側ファンガイド25との隙間における)漏れ流れを抑制し、内扇ファン22の性能を向上させることができる。
【0074】
同時に、固定子巻線12と内径側ファンガイド24との隙間を小さくすることにより、固定子巻線12と内径側ファンガイド24との隙間における漏れ流れや渦を抑制し、固定子巻線12近傍の通風路における損失を低減することができる。
【0075】
これにより、回転子3や固定子11の温度上昇を抑制することができる。
【0076】
なお、外径側ファンガイド25の材質は鉄材で構成されることが好ましい。また、内径側ファンガイド24の材質は樹脂などの非鉄材で構成されてもよい。
【0077】
つまり、本実施例に記載する電動機100は、実施例1に記載するファンガイド23を2重構造とし、外径側(外径側ファンガイド25)は内扇ファン22の翼外周の先端部に沿って設置され、内径側(内径側ファンガイド24)は固定子巻線12の外径側輪郭に沿って設置されることが好ましい。
【0078】
このように構成することにより、内扇ファン22と外径側ファンガイド25との隙間を小さくしつつ、固定子巻線12と内径側ファンガイド24との隙間も小さくすることができ、漏れ流れや渦を抑制し、通風路における損失を低減し、簡易な構成で冷却能力を増加することができる。
【0079】
なお、本発明は上記した本実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0080】
なお、本実施例に記載した電動機は、誘導電動機や永久磁石同期電動機に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 フレーム
2 シャフト
3 回転子
4 ラジアルダクト
5 アキシャルダクト
6 エンドリング
10 軸受
11 固定子
12 固定子巻線
14 クーラーボックス
21 スリーブ
22 内扇ファン
23 ファンガイド
31 冷却風の流れ方向
33 天板
図1
図2
図3
図4