(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 29/02 20060101AFI20220519BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20220519BHJP
F02D 13/02 20060101ALI20220519BHJP
F02D 9/02 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
F02D29/02 341
F02D29/06 E
F02D13/02 H
F02D9/02 315B
(21)【出願番号】P 2018137246
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】福田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 徹也
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特許第5387500(JP,B2)
【文献】特開2011-935(JP,A)
【文献】特開2010-270705(JP,A)
【文献】特開2010-255580(JP,A)
【文献】特開平11-093724(JP,A)
【文献】特開2017-114379(JP,A)
【文献】特開2013-184651(JP,A)
【文献】特開2003-293819(JP,A)
【文献】特開2010-084612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0130572(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
F02D 29/06
F02D 13/02
F02D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン出力軸(13)の回転により駆動され、回転エネルギを電気エネルギ及び熱エネルギの少なくともいずれかとして回収する回収装置(22,30)と、前記回収装置が回収した前記回転エネルギを蓄える蓄積部(21,36)とを備えた車両(100)に適用され、
前記車両の減速時において前記エンジン出力軸の回転方向とは逆向きで作用し、かつ、前記回収装置が前記回転エネルギを回収することにより発生する回収トルクを含むネガティブトルク(Tn)を算出するトルク算出部(S10)と、
前記車両の減速時において前記蓄積部に蓄えられているエネルギ蓄積量(Qe,Qc)を取得する蓄積量取得部(S16)と、
ドライバの減速要求(Ax)に対して前記ネガティブトルクに基づく前記車両の減速度合(An)が大きいかを判定する判定部(S18)と、
前記判定部が大きいと判定した場合に、前記エネルギ蓄積量に応じて、前記ネガティブトルクのうち前記回収トルクを減少させる制御部(S20~S36)と、を備える制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記エネルギ蓄積量が所定の下限値よりも大きいことを条件に、前記回収トルクを減少させる請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記車両は、エンジンの吸気経路(51)に設けられた吸気絞り弁(53)の開閉を制御可能であり、
前記ネガティブトルクは、前記吸気経路のポンピングロスを含む損失トルク(Tl)を含み、
前記制御部は、前記判定部が大きいと判定し、かつ、前記エネルギ蓄積量が前記下限値よりも小さい場合に、前記判定部が小さいと判定した場合に比べて前記吸気絞り弁の開度を開き側に制御する請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記車両は、前記エンジンの吸気バルブ(63)の開閉タイミングを調整するバルブ調整機構(69)を備えており、
前記制御部は、前記吸気絞り弁の開度を開き側に制御した場合に、前記吸気バルブの閉弁タイミングが所定の遅閉じ状態となるように前記バルブ調整機構を制御する請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記車両は、前記吸気経路に接続され、前記吸気経路内の吸気負圧によりブレーキ力を増加させるブレーキブースタ(82)を備えており、
前記制御部は、前記吸気負圧に応じて、前記吸気絞り弁の開度を制御する請求項3又は請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記車両では、
前記エンジン出力軸の回転により発電機(22)が駆動して発電し、前記発電機により発電された電力が蓄電池(21)により蓄えられ、
前記エンジン出力軸の回転により圧縮機(30)が駆動するとともに、前記圧縮機を含む冷凍サイクル(39)の冷媒経路内に蓄冷器(36)が設けられ、
前記発電機と前記圧縮機とが前記回収装置であり、
前記蓄電池と前記蓄冷器とが前記蓄積部であり、
前記ネガティブトルクは、前記発電機の前記回収トルクと、前記圧縮機の前記回収トルクとを含み、
前記蓄積量取得部は、前記蓄電池における前記エネルギ蓄積量である蓄電量(Qe)と、前記蓄冷器における前記エネルギ蓄積量である蓄冷量(Qc)とを取得し、
前記制御部は、前記蓄電量と前記蓄冷量とに応じて、前記発電機の前記回収トルクを減少させる減少割合と、前記圧縮機の前記回収トルクを減少させる減少割合とを決定する請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、所定の蓄電基準値に対する前記蓄電量の割合と、所定の蓄冷基準値に対する前記蓄冷量の割合とのいずれが大きいかを比較し、大きいと判定された割合に対応する前記回収トルクを優先的に減少させるように前記減少割合を決定する請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記判定部が小さいと判定した場合に、前記ドライバの減速要求に対して前記ネガティブトルクに基づく前記車両の減速度合が大きくならない範囲で、前記ネガティブトルクのうち前記回収トルクを増加させる請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記エネルギ蓄積量が所定の上限値よりも小さいことを条件に、前記回収トルクを増加させる請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記車両では、
前記エンジン出力軸の回転により発電機(22)が駆動して発電し、前記発電機により発電された電力が蓄電池(21)により蓄えられ、
前記エンジン出力軸の回転により圧縮機(30)が駆動するとともに、前記圧縮機を含む冷凍サイクル(39)の冷媒経路内に蓄冷器(36)が設けられ、
前記発電機と前記圧縮機とが前記回収装置であり、
前記蓄電池と前記蓄冷器とが前記蓄積部であり、
前記ネガティブトルクは、前記発電機の前記回収トルクと、前記圧縮機の前記回収トルクとを含み、
前記蓄積量取得部は、前記蓄電池における前記エネルギ蓄積量である蓄電量(Qe)と、前記蓄冷器における前記エネルギ蓄積量である蓄冷量(Qc)とを取得し、
前記制御部は、前記蓄電量と前記蓄冷量とに応じて、前記発電機の前記回収トルクを増加させる増加割合と、前記圧縮機の前記回収トルクを増加させる増加割合とを決定する請求項8又は請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、所定の蓄電基準値に対する前記蓄電量の割合と、所定の蓄冷基準値に対する前記蓄冷量の割合とのいずれが小さいかを比較し、小さいと判定された割合に対応する前記回収トルクを優先的に増加させるように前記増加割合を決定する請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
エンジン出力軸(13)の回転により駆動され、回転エネルギを電気エネルギ及び熱エネルギの少なくともいずれかとして回収する回収装置(22,30)と、前記回収装置が回収した前記回転エネルギを蓄える蓄積部(21,36)とを備えた車両(100)に適用され、エンジンの吸気経路(51)に設けられた吸気絞り弁(53)の開閉を制御可能とする制御装置であって、
前記車両の減速時において前記エンジン出力軸の回転方向とは逆向きで作用し、かつ、前記回収装置が前記回転エネルギを回収することにより発生する回収トルクと、前記吸気経路のポンピングロスを含む損失トルク(Tl)と、を含むネガティブトルク(Tn)を算出するトルク算出部(S10)と、
ドライバの減速要求(Ax)に対して前記ネガティブトルクに基づく前記車両の減速度合(An)が大きいかを判定する判定部(S18)と、
前記判定部が大きいと判定した場合に、前記判定部が小さいと判定した場合に比べて前記吸気絞り弁の開度を開き側に制御する制御部(S38)と、を備える制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンにより駆動する補機としては、冷凍サイクル中の冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、及び発電機が挙げられる。特許文献1には、ドライバの減速要求により車両が減速を開始すると、燃料噴射がカットされた燃料カット状態で両補機(圧縮機及び発電機)を駆動させて、エンジンの回転エネルギを蓄冷器及び蓄電器に回収させるシステムが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、回転エネルギを回収する際に、蓄冷要求量と蓄電要求量とのバランスに基づき、減速時における両補機の回収トルク分配率を設定する。そして、圧縮機の回収トルクの応答遅れにより、圧縮機の実回収トルクが回収トルク分配率に応じた圧縮機の目標回収トルクに上昇するまでの応答待ち期間では、発電機の実回収トルクを駆動トルク分配率に応じた発電機の目標回収トルクよりも上昇させる。これによれば、応答待ち期間において、蓄冷器及び蓄電器に回収される回転エネルギの量を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧縮機及び発電機の回収トルクが大きいほど、蓄冷器及び蓄電器に回収される回転エネルギの量を増加させることができる。一方、圧縮機及び発電機の回収トルクが大きいと、エンジンの回転エネルギの減少量が増加し、それにより車両の減速度合が大きくなる。そして、この車両の減速度合が過剰に大きいと、ドライバが減速度合をゆるめるべく、アクセルペダルを踏みこむ。この結果、車両の減速時に燃料カット状態を継続することができなくなり、車両の燃費が悪化する問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車両の減速時において、車両の燃費の悪化を抑制できる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エンジン出力軸の回転により駆動され、回転エネルギを電気エネルギ及び熱エネルギの少なくともいずれかとして回収する回収装置と、前記回収装置が回収した前記回転エネルギを蓄える蓄積部とを備えた車両に適用され、前記車両の減速時において前記エンジン出力軸の回転方向とは逆向きで作用し、かつ、前記回収装置が前記回転エネルギを回収することにより発生する回収トルクを含むネガティブトルクを算出するトルク算出部と、前記車両の減速時において前記蓄積部に蓄えられているエネルギ蓄積量を取得する蓄積量取得部と、ドライバの減速要求に対して前記ネガティブトルクに基づく前記車両の減速度合が大きいかを判定する判定部と、前記判定部が大きいと判定した場合に、前記エネルギ蓄積量に応じて、前記ネガティブトルクのうち前記回収トルクを減少させる制御部と、を備える。
【0008】
車両の減速時には、回収装置によりエンジンの回転エネルギが回収され、それに応じた減速度合で車両が減速する。この車両の減速度合がドライバの減速要求に対して大きいと、ドライバが減速度合をゆるめるべく、アクセルペダルを踏みこむ。この結果、車両の燃費が悪化する。
【0009】
本発明の制御装置では、ドライバの減速要求に対して車両の減速度合が大きいと判定された場合に、蓄積部のエネルギ蓄積量に応じて、回収装置の回収トルクを減少させる。回収トルクを減少させることで、回収トルクを含むネガティブトルクを減少させることができ、車両の減速度合がドライバの減速要求に対して大きくなることを抑制することができる。この結果、車両の減速時にドライバがアクセルペダルを踏みこむことが抑制され、車両の燃費の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】第1実施形態の回収制御処理を示すフローチャート。
【
図4】要求減速度合とブレーキストローク量との関係を示す図。
【
図5】第1実施形態の損失減少処理を示すフローチャート。
【
図9】第2実施形態の回収制御処理を示すフローチャート。
【
図10】第2実施形態の損失減少処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態の制御装置が適用される車両100のエンジン制御システムについて、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、車両100は、内燃機関としてのエンジン10と、制御装置としてのECU40とを備えている。
【0012】
エンジン10は、車両100に搭載される筒内噴射式の4サイクルガソリンエンジンである。具体的には、エンジン10は、4つの気筒を備える4気筒エンジンである。車両100に搭載されたエンジン10の各気筒には、エンジン10の燃焼室61(
図2参照)に燃料を供給するための燃料噴射弁11が備えられている。
【0013】
燃料の燃焼によって発生するエネルギは、エンジン10のクランク軸13の回転動力として取り出される。この回転動力は、変速装置14を介して車両100の図示しない駆動輪へと伝達される。なお、本実施形態において、クランク軸13が「エンジン出力軸」に相当する。
【0014】
クランク軸13には、スタータ20が接続されている。スタータ20は、図示しないイグニッションスイッチのオンによりバッテリ21から電力供給されて始動し、エンジン10を始動させるべくクランク軸13に初期回転を付与する。
【0015】
オルタネータ22は、クランク軸13の回転エネルギにより駆動して発電する発電機である。つまり、オルタネータ22は、エンジン10の回転エネルギを電気エネルギとして回収する回収装置である。オルタネータ22の駆動軸23に機械的に連結されたプーリ24は、ベルト15及びクランクプーリ16を介してクランク軸13と機械的に連結されている。オルタネータ22は、オルタネータ22のロータコイルに流す励磁電流を調節することで、発電量を調節可能である。バッテリ21は、オルタネータ22により発電された電力を蓄える蓄電池である。オルタネータ22とバッテリ21とによって、蓄電システム29が構成されている。ECU40は、バッテリ21からバッテリ21の蓄電量Qeを取得し、この蓄電量Qeが適正範囲となるように、オルタネータ22による発電量を制御する。
【0016】
車両100には、車室内を冷却する冷却システムが搭載されている。この冷却システムは、冷凍サイクル39に冷媒を循環させるべく冷媒を吸入・吐出する圧縮機30や、冷媒経路31a内に設けられたコンデンサ31、レシーバ32、膨張弁33、及び蒸発器34等を備えて構成されている。
【0017】
圧縮機30は、クランク軸13の回転エネルギにより駆動され、圧縮機30に備えられた電磁駆動式のコントロールバルブ(CV)30aの通電操作によって、冷媒の吐出容量を連続的に可変設定可能な可変容量型圧縮機である。圧縮機30の駆動軸37に機械的に連結されたプーリ38は、ベルト15及びクランクプーリ16を介してクランク軸13と機械的に連結されている。このクランク軸13の回転動力が圧縮機30に伝達される状況下において、CV30aへの通電操作により上記吐出容量が調節される。なお、圧縮機30では、上記吐出容量が0より大きくなる状態を圧縮機30が駆動される状態とし、上記吐出容量が0となる状態を圧縮機30が停止される状態とする。
【0018】
コンデンサ31は、DCモータ等によって回転駆動される図示しないファンから送風される空気(外気)と、圧縮機30から吐出供給される冷媒との熱交換が行われる部材である。レシーバ32は、コンデンサ31より流入した冷媒を気液分離して且つ分離された液冷媒を一時的に貯蔵し、液冷媒のみを下流側に供給するために設けられるものである。レシーバ32に貯蔵された液冷媒は、膨張弁33によって急激に膨張され霧状とされる。霧状とされた冷媒は、車室内へ送風される空気を冷却する蒸発器34に供給される。
【0019】
蒸発器34では、DCモータ等によって回転駆動されるファン(エバファン)35から送風された空気と、上記霧状とされた冷媒とが熱交換することで、冷媒の一部又は全部が気化する。これにより、エバファン35から送風された空気が冷却され、冷却された空気が車室内へと送風されることで車室内を冷房することが可能となる。なお、蒸発器34の出口直近には、冷媒温度を検出する冷媒温度センサ34aが設けられている。また、蒸発器34から流出した冷媒は、圧縮機30の吸入口に吸入される。
【0020】
本実施形態の冷凍サイクル39では、蒸発器34に蓄冷器36が取り付けられている。蓄冷器36は、冷媒の熱を蓄えるパラフィン等の蓄冷剤を封入して構成される。例えばアイドル運転時に所定の停止条件が成立するとエンジン10を自動停止させるいわゆるアイドル停止制御では、エンジン10の自動停止により圧縮機30も自動停止する。蓄冷器36が取り付けられていると、圧縮機30が停止された状況下、エバファン35から送風された空気と蓄冷器36とが熱交換することにより、上記送風された空気が冷却され、冷却された空気が車室へと送られることで車室内を冷房することが可能となる。蓄冷器36への蓄冷は、例えば所定の冷房要求量に対して圧縮機30を余剰運転させることで行われる。つまり、圧縮機30は、エンジン10の回転エネルギを熱エネルギとして回収する回収装置である。
【0021】
ECU40には、車両乗員により操作されるA/Cスイッチの操作信号であって、車室内を冷房すべく圧縮機30を駆動させる信号や、車両乗員により操作される目標温度設定スイッチの操作信号であって、車室内の目標温度を設定する信号、車室内温度を検出する車室内温度センサ及び冷媒温度センサ34a等の検出信号が入力される。ECU40は、これら入力に応じてROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、エバファン35や、CV30a等の各種機器を操作する。そして、これら各種機器を操作することで、圧縮機30の駆動制御や車室内の冷房制御等を行う。
【0022】
圧縮機30の駆動制御では、圧縮機30のCV30aに流す通電量を調整することで、蓄冷器36の蓄冷量Qcを調整可能である。ECU40は、冷房要求量に対して圧縮機30を余剰運転させた余剰運転量に基づいて蓄冷器36の蓄冷量Qcを算出する。ECU40は、この蓄冷量Qcが適正範囲となるように、CV30aの通電量を制御する。なお、本実施形態において、オルタネータ22及び圧縮機30が「回収装置」に相当し、バッテリ21及び蓄冷器36が「蓄積部」に相当し、蓄電量Qe及び蓄冷量Qcが「エネルギ蓄積量」に相当する。
【0023】
また、車両100には、油圧駆動式のブレーキアクチュエータ80を備えている。ブレーキアクチュエータ80は、ドライバによるブレーキ操作量に応じたブレーキトルクTbを発生させ、クランク軸13の回転を停止させる。
【0024】
次にエンジン10の構造について説明する。
図2に、エンジン10の全体構成を示す。なお、
図2では、エンジン10が備える4つの気筒のうち、1つの気筒のみを図示し、他の気筒については図示を省略している。
【0025】
図2に示すように、エンジン10において、吸気管51にはスロットルバルブ53が設けられている。ECU40は、モータ54によってスロットルバルブ53の開閉を制御する。吸気管51においてスロットルバルブ53の下流側にはサージタンク56が設けられ、サージタンク56にはブレーキブースタ82及び吸気マニホールド57が接続されている。なお、本実施形態において、吸気管51が「吸気経路」に相当し、スロットルバルブ53が「吸気絞り弁」に相当する。
【0026】
ブレーキブースタ82は、ブレーキアクチュエータ80において、サージタンク56内の吸気負圧Pmによりブレーキ力を増加させる機構である。吸気マニホールド57は、各気筒の吸気ポート58に接続されている。吸気ポート58はエンジン10のシリンダヘッドに形成され、燃焼室61と連通している。また、シリンダヘッドには排気ポート59が形成されている。排気ポート59は、燃焼室61と連通しており、排気管52に接続されている。
【0027】
吸気ポート58には吸気バルブ63が設けられ、排気ポート59には排気バルブ64が設けられている。吸気バルブ63が開動作されると、吸気管51内の空気が吸気ポート58を介して燃焼室61に導入される。また、排気バルブ64が開動作されると、燃焼後の排ガスが排気ポート59を介して排気管52に排出される。吸気バルブ63及び排気バルブ64の開閉タイミングは、バルブ調整機構69によりそれぞれ可変制御される。ECU40は、バルブ調整機構69によって吸気バルブ63及び排気バルブ64の開閉タイミングを制御する。
【0028】
エンジン10は、各気筒に燃料を噴射供給する電磁駆動式の燃料噴射弁11を備えている。燃料噴射弁11は、燃料配管66を介して燃料タンク67に接続されている。燃料タンク67には、燃料が充填されている。燃料タンク67内の燃料は、ポンプ68により汲み上げられることで各気筒の燃料噴射弁11に供給される。
【0029】
エンジン10のシリンダヘッドには、各気筒ごとに点火プラグ71が取り付けられている。この点火プラグ71による火花放電によって燃焼室61内の混合気に対する着火が行われる。
【0030】
排気管52には、排ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ72が設けられている。排気管52において酸素濃度センサ72の下流側には、排ガスを浄化する三元触媒等の触媒73が設けられている。
【0031】
その他、エンジン10には、エンジン10の冷却水温を検出する冷却水温センサ75や、吸入空気量や吸気負圧Pmといったエンジン負荷を検出する負荷センサ76、エンジン10の所定クランク角毎に矩形状の信号を出力するクランク角度センサ77などが設けられている。また、クランク角度センサ77の出力信号に基づいてエンジン回転速度Neが検出される。
【0032】
ECU40は、周知の通りCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。ECU40には、前述した各種センサなどから各々検出信号が入力される。ECU40は、上記入力に応じて、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、燃料噴射弁11による燃料噴射制御等、エンジン10の燃焼制御を実施するとともに、スロットルバルブ53、吸気バルブ63、及び排気バルブ64等のエンジン10の各構成を制御する。
【0033】
さらに、ECU40は、車両100の減速時においてエンジン10の回転エネルギを回収する回収制御を実施する。すなわち、ECU40は、減速時にドライバのアクセル操作量がゼロとなり燃料噴射弁11からの燃料噴射をカットした状態で車両100が減速走行している時に、ネガティブトルクTnを発生させる制御を実施する。これにより、エンジン10の回転エネルギは、熱エネルギに変換されて蓄冷器36に蓄冷されるとともに、電気エネルギに変換されてバッテリ21に蓄電されることとなる。
【0034】
ここで、ネガティブトルクTnとは、エンジン10のクランク軸13の回転方向とは逆向きで作用するトルクであり、発電トルクTe、駆動トルクTc、及び損失トルクTlを含む。発電トルクTeは、オルタネータ22を駆動させることで発生するトルクであり、駆動トルクTcは、圧縮機30を駆動させることで発生するトルクである。また、損失トルクTlは、エンジン10内での振動や摩擦等により発生するトルクであり、吸気管51内の圧力損失であるポンプロスを含む。なお、本実施形態において、発電トルクTe及び駆動トルクTcが「回収トルク」に相当する。
【0035】
ところで、発電トルクTe及び駆動トルクTcが大きいほど、バッテリ21及び蓄冷器36に回収される回転エネルギの量を増加させることができる。一方、発電トルクTe及び駆動トルクTcが大きいと、これらを含むネガティブトルクTnが大きくなり、エンジン10の回転エネルギの減少量が増加する。この結果、車両100の減速度合が大きくなる。そして、この車両100の減速度合が過剰に大きいと、ドライバが減速度合をゆるめるべく、アクセルペダルを踏みこむ。この結果、車両100の減速時に燃料カット状態を継続することができなくなり、車両100の燃費が悪化する問題が生じる。
【0036】
本実施形態のECU40は、上記問題を解決するために回収制御処理を実施する。回収制御処理では、ドライバの減速要求に対してネガティブトルクTnに基づく車両100の減速度合が大きいかを判定し、ドライバの減速要求に対してネガティブトルクTnに基づく車両100の減速度合が大きいと判定された場合に、バッテリ21の蓄電量Qe及び蓄冷器36の蓄冷量Qcに応じて、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を減少させる。これにより、ネガティブトルクTnに基づく車両100の減速度合を減少させることができる。この結果、車両100の減速時にドライバがアクセルペダルを踏みこむことが抑制され、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0037】
図3に本実施形態の回収制御処理のフローチャートを示す。この制御処理は、例えば車両100の減速中、ECU40により所定周期で繰り返し実行される。
【0038】
回収制御処理を開始すると、まずステップS10において、ネガティブトルクTnを算出する。ネガティブトルクTnは、発電トルクTe、駆動トルクTc、及び損失トルクTlに基づいて算出される。具体的には、発電トルクTeは、エンジン回転速度Ne及びオルタネータ22のロータコイルに流す励磁電流量から算出することができる。駆動トルクTcは、エンジン回転速度Ne及び圧縮機30のCV30aへの通電量から算出することができる。損失トルクTlを構成するポンプロスは、エンジン回転速度Ne及びスロットルバルブ53の開度から算出することができる。なお、本実施形態において、ステップS10の処理が「トルク算出部」に相当する。
【0039】
ステップS12において、ステップS10で算出されたネガティブトルクTnに基づく車両100の減速度合Anを算出する。
【0040】
ステップS14において、ドライバの要求減速度合Axを算出する。要求減速度合Axは、ドライバが要求する減速度合であり、ブレーキ操作量であるブレーキストローク量Sb、ドライバによるアクセル操作量であるアクセルストローク量Sa、及びエンジン回転速度Neから算出することができる。例えば、
図4に示すように、要求減速度合Axは、ブレーキストローク量Sbが多いほど大きくなる関係を有する。また、要求減速度合Axは、エンジン回転速度Neが大きくなるほど、要求減速度合Axが増加する側にシフトし、エンジン回転速度Neが小さくなるほど、要求減速度合Axが減少する側にシフトする。
【0041】
ステップS16において、バッテリ21から蓄電量Qeを取得し、蓄冷器36から蓄冷量Qcを取得する。続くステップS18において、ステップS12で算出された減速度合Anが、ステップS14で算出された要求減速度合Axよりも大きいかを判定する。なお、本実施形態において、ステップS16の処理が「蓄積量取得部」に相当し、ステップS18の処理が「判定部」に相当する。
【0042】
ステップS18で肯定判定すると、ステップS16で取得された蓄電量Qe及び蓄冷量Qcに応じて、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を減少させる回収減少処理(ステップS20~S36)を実施する。回収減少処理では、まずステップS20において、ネガティブトルクTnの超過量Tdを算出する。具体的には、ステップS14で算出された要求減速度合Axを満たす要求減速トルクTxを算出し、ネガティブトルクTnから要求減速トルクTxを差し引いたものが超過量Tdとなる。
【0043】
次に、ステップS22~S36において、ステップS20で算出された超過量Tdのうち、発電トルクTeと駆動トルクTcとのそれぞれから減少させる超過量Tdの割合である減少割合Wdを決定する。減少割合Wdを決定する際に、ステップS16で取得された蓄電量Qeと蓄電下限値Qedとを比較し、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも大きいことを条件に、発電トルクTeを減少させる。ここで、蓄電下限値Qedは、バッテリ21の過放電保護を図るために定められた蓄電量Qeの下限値であり、例えば一定値である。バッテリ21は、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも大きい場合に放電し、小さい場合に放電を停止する。
【0044】
また、ステップS16で取得された蓄冷量Qcを蓄冷下限値Qcdと比較し、蓄冷量Qcが蓄冷下限値Qcdよりも大きいことを条件に、駆動トルクTcを減少させる。ここで、蓄冷下限値Qcdは、圧縮機30が停止された状況下で、一定期間に亘って冷却された空気が車室に送られることを確保するために定められた蓄冷量Qcの下限値であり、外気温等により変動する変動値である。例えば、蓄冷下限値Qcdは外気温が高いほど大きい値に設定される。蓄冷器36は、蓄冷量Qcが蓄冷下限値Qcdよりも大きい場合に、エバファン35から送風された空気と熱交換し、小さい場合にエバファン35が停止することで熱交換を停止する。
【0045】
具体的には、ステップS22において、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも大きく、かつ、蓄冷量Qcが蓄冷下限値Qcdよりも大きいかを判定する。ステップS24で肯定判定すると、発電トルクTeと駆動トルクTcとのいずれも減少可能と判定する。この場合、発電トルクTeと駆動トルクTcとの減少割合Wdは、蓄冷量Qcと蓄電量Qeとのバランスに応じて決定される。
【0046】
具体的には、ステップS24において、ステップS16で取得された蓄電量Qeの蓄電上限値Qeuに対する割合である蓄電割合Weと、ステップS16で取得された蓄冷量Qcの蓄冷上限値Qcuに対する割合である蓄冷割合Wcと、を算出し、蓄電割合Weが蓄冷割合Wcよりも大きいかを判定する。
【0047】
ここで、蓄電上限値Qeuは、バッテリ21の過充電保護を図るために定められた蓄電量Qeの上限値であり、例えば一定値である。オルタネータ22は、蓄電量Qeが蓄電上限値Qeuよりも小さい場合に発電するとともに、蓄電量Qeが蓄電上限値Qeuよりも大きい場合に発電を停止する。また、蓄冷上限値Qcuは、蓄冷器36が完全に冷却された状態の蓄冷量Qcである。圧縮機30は、蓄冷量Qcが蓄冷上限値Qcuよりも小さい場合に余剰運転されるとともに、蓄冷量Qcが蓄冷上限値Qcuよりも大きい場合に余剰運転が停止される。なお、本実施形態において、蓄電上限値Qeuが「蓄電基準値」に相当し、蓄冷上限値Qcuが「蓄冷基準値」に相当する。
【0048】
ステップS24で肯定判定すると、ステップS26において、蓄電割合Weに対応する発電トルクTeを優先的に減少させるように減少割合Wdを決定し、この減少割合Wdに従って発電トルクTeと駆動トルクTcとを減少させ、回収制御処理を終了する。一方、ステップS24で否定判定すると、ステップS28において、蓄冷割合Wcに対応する駆動トルクTcを優先的に減少させるように減少割合Wdを決定し、この減少割合Wdに従って発電トルクTeと駆動トルクTcとを減少させ、回収制御処理を終了する。
【0049】
一方、ステップS22で否定判定すると、ステップS30において、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも小さく、かつ、蓄冷量Qcが蓄冷下限値Qcdよりも大きいかを判定する。ステップS30で肯定判定すると、発電トルクTeは減少不可能であり、駆動トルクTcは減少可能と判定する。この場合、続くステップS32において、ステップS20で算出された超過量Tdを駆動トルクTcから減少させ、回収制御処理を終了する。
【0050】
ステップS30で否定判定すると、ステップS34において、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも大きく、かつ、蓄冷量Qcが蓄冷下限値Qcdよりも小さいかを判定する。ステップS34で肯定判定すると、発電トルクTeは減少可能であり、駆動トルクTcは減少不可能と判定する。この場合、続くステップS36において、ステップS20で算出された超過量Tdを発電トルクTeから減少させ、回収制御処理を終了する。
【0051】
ステップS34で否定判定すると、つまり蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも小さく、かつ、蓄冷量Qcが蓄冷下限値Qcdよりも小さいと判定すると、発電トルクTeと駆動トルクTcとのいずれも減少不可能と判定する。この場合、回収減少処理を終了し、続くステップS38において、損失トルクTlのうち、ポンプロスを減少させる損失減少処理を実施し、回収制御処理を終了する。なお、本実施形態において、ステップS20~S56の処理が「制御部」に相当する。
【0052】
図5に本実施形態の損失減少処理のフローチャートを示す。損失減少処理を開始すると、まずステップS60において、負荷センサ76を用いて吸気負圧Pmを取得する。続くステップS62において、吸気負圧Pmの絶対値が基準負圧Pkの絶対値よりも小さいかを判定する。基準負圧Pkは、ブレーキアクチュエータ80において車両100の基本性能のブレーキ力を確保するための負圧である。ステップS62で否定判定すると、損失減少処理を終了する。
【0053】
一方、ステップS62で肯定判定すると、ステップS64において、ステップS62で否定判定した場合に比べてスロットルバルブ53の開度を開き側に制御する。これにより、吸気管51内の圧力損失が減少し、ポンプロスが減少する。つまり、スロットルバルブ53の開度は、吸気負圧Pmに応じて制御される。
【0054】
ステップS66において、吸気バルブ63の閉弁タイミングが所定の遅閉じ状態となるようにバルブ調整機構69を制御する。これにより、燃焼室61内の混合気の燃焼開始後において、吸気バルブ63が開弁している開弁期間が長くなり、吸気管51内に逆流するEGR量が増加する。
【0055】
ステップS68において、ポンプロス減少後のネガティブトルクTnを算出する。以下、ステップS68で算出されるネガティブトルクTnを第2ネガティブトルクTn2という。第2ネガティブトルクTn2では、ポンプロスを含む損失トルクTlが減少しているため、ネガティブトルクTnよりも小さい。
【0056】
ステップS70において、ステップS68で算出された第2ネガティブトルクTn2に基づく車両100の第2減速度合An2を算出する。続くステップS72において、ステップS70で算出された第2減速度合An2が、ステップS14で算出された要求減速度合Axよりも小さいかを判定する。ステップS72で否定判定すると、損失減少処理を終了する。
【0057】
一方、ステップS72で肯定判定すると、第2ネガティブトルクTn2に基づく第2減速度合An2がステップS14で算出された要求減速度合Axよりも大きくならない範囲で、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を増加させる分配処理(ステップS74~S90)を実施する。つまり、損失トルクTlの減少により生じた要求減速トルクTxの余剰を、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方に分配する処理を実施する。分配処理では、まずステップS74において、ネガティブトルクTnの余剰量Tuを算出する。具体的には、ステップS68で算出された第2減速度合An2がステップS14で算出された要求減速度合Axと等しくなるための第2ネガティブトルクTn2の増加量を算出する。
【0058】
次に、ステップS74で算出された余剰量Tuのうち、発電トルクTeと駆動トルクTcとのそれぞれを増加させる余剰量Tuの割合である増加割合Wuを決定する。増加割合Wuを決定する際に、ステップS16で取得された蓄電量Qeと蓄電上限値Qeuとを比較し、蓄電量Qeが蓄電上限値Qeuよりも小さいことを条件に、発電トルクTeを増加させる。また、ステップS76において、ステップS16で取得された蓄冷量Qcを蓄冷上限値Qcuと比較し、蓄冷量Qcが蓄冷上限値Qcuよりも小さいことを条件に、駆動トルクTcを増加させる。
【0059】
具体的には、ステップS76において、蓄電量Qeが蓄電上限値Qeuよりも小さく、かつ、蓄冷量Qcが蓄冷上限値Qcuよりも小さいかを判定する。ステップS76で肯定判定すると、発電トルクTeと駆動トルクTcとのいずれも増加可能と判定する。この場合、発電トルクTeと駆動トルクTcとの増加割合Wuは、蓄冷量Qcと蓄電量Qeとのバランスに応じて決定される。
【0060】
具体的には、ステップS78において、蓄電割合Weが蓄冷割合Wcよりも小さいかを判定する。ステップS78で肯定判定すると、ステップS80において、蓄電割合Weに対応する発電トルクTeを優先的に増加させるように増加割合Wuを決定し、この増加割合Wuに従って発電トルクTeと駆動トルクTcとを増加させ、損失減少処理を終了する。一方、ステップS78で否定判定すると、ステップS82において、蓄冷割合Wcに対応する駆動トルクTcを優先的に増加させるように増加割合Wuを決定し、この増加割合Wuに従って発電トルクTeと駆動トルクTcとを増加させ、損失減少処理を終了する。ステップS80、S82では、蓄電割合Weと蓄冷割合Wcとが等しくなるように発電トルクTe又は駆動トルクTcを優先的に減少させる。
【0061】
一方、ステップS76で否定判定すると、ステップS84において、蓄電量Qeが蓄電上限値Qeuよりも大きく、かつ、蓄冷量Qcが蓄冷上限値Qcuよりも小さいかを判定する。ステップS84で肯定判定すると、発電トルクTeは増加不可能であり、駆動トルクTcは増加可能と判定する。この場合、続くステップS86において、ステップS74で算出された余剰量Tuを駆動トルクTcに増加させ、損失減少処理を終了する。
【0062】
ステップS84で否定判定すると、ステップS88において、蓄電量Qeが蓄電上限値Qeuよりも小さく、かつ、蓄冷量Qcが蓄冷上限値Qcuよりも大きいかを判定する。ステップS88で肯定判定すると、発電トルクTeは増加可能であり、駆動トルクTcは増加不可能と判定する。この場合、続くステップS90において、ステップS74で算出された余剰量Tuを発電トルクTeに増加させ、損失減少処理を終了する。
【0063】
ステップS88で否定判定すると、つまり、蓄電量Qeが蓄電上限値Qeuよりも大きく、かつ、蓄冷量Qcが蓄冷上限値Qcuよりも大きいと判定すると、発電トルクTeと駆動トルクTcとのいずれも増加不可能と判定し、損失減少処理を終了する。
【0064】
図3に戻り、ステップS18で否定判定すると、ネガティブトルクTnに基づく減速度合AnがステップS14で算出された要求減速度合Axよりも大きくならない範囲で、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を減少させる回収増加処理(ステップS40~S56)を実施し、回収制御処理を終了する。なお、回収制御処理における回収増加処理は、参照するネガティブトルクがステップS10で算出されたネガティブトルクTnである他は、算出損失減少処理における分配処理(ステップS74~S86)と同一の処理であり、重複した説明を省略する。
【0065】
続いて、
図6~
図8に、回収制御処理の一例を示す。ここで、
図6は、回収減少処理の一例を示し、
図7は、損失減少処理の一例を示し、
図8は、回収増加処理の一例を示す。
図6~
図8において、(a)は、ネガティブトルクTnと要求減速トルクTxとの大小関係を示し、(b)は、第2ネガティブトルクTn2と要求減速トルクTxとの大小関係を示す。また、
図7(c)は、分配処理後の第2ネガティブトルクTn2と要求減速トルクTxとの大小関係を示す。なお、
図6~
図8において、ネガティブトルクTn,要求減速トルクTx及び第2ネガティブトルクTn2は、エンジン10のクランク軸13の回転方向とは逆向きで作用することから、負側に増大する量として記載されている。
【0066】
図6(a)に示すように、ネガティブトルクTnは、発電トルクTe、駆動トルクTc、及び損失トルクTlにより構成される。
図3を用いて説明したように、車両100の減速時に、ネガティブトルクTnが要求減速トルクTxよりも大きくなると、ネガティブトルクTnに基づく減速度合Anがドライバの要求減速度合Axよりも大きくなる。従来技術のように、減速度合Anが要求減速度合Axよりも大きい状態が維持されると、ドライバは減速度合Anをゆるめるべく、アクセルペダルを踏みこむ。つまり、要求減速トルクTxに対するネガティブトルクTnの超過量Tdを、アクセルペダルを踏みこむことによるアクセルトルクTaによって補う。この結果、車両100の減速時に燃料カット状態がオフされて燃料噴射が再開されることで、車両100の燃費が悪化する。つまり、燃料カット状態F/Cによる燃費低減効果が軽減されてしまう。
【0067】
本実施形態では、車両100の減速時に、ネガティブトルクTnが要求減速トルクTxよりも大きくなると、回収減少処理を実施する。具体的には、
図6(b)に示すように、ネガティブトルクTnと要求減速トルクTxとが等しくなるように、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を減少させる処理を実施する。この結果、ドライバはアクセルペダルを踏みこむことがなくなり、車両100の減速時に燃料カット状態が継続されることで、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0068】
一方、発電トルクTeを減少させると、バッテリ21の蓄電量Qeが減少する。蓄電量Qeの減少により、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも小さくなると、バッテリ21が放電を停止し、車両100の駆動に影響が及ぶ。同様に、駆動トルクTcを減少させると、蓄冷器36の蓄冷量Qcが減少する。蓄冷量Qcの減少により、蓄冷量Qcが蓄冷下限値Qcdよりも小さくなると、圧縮機30が停止された状況下で、冷却された空気を車室に送ることができなくなり、車室内の環境が悪化する。
【0069】
そのため、本実施形態では、車両100の減速時に、ネガティブトルクTnが要求減速トルクTxよりも大きくなった場合であって、発電トルクTe及び駆動トルクTcを減少させることができない場合には、損失減少処理を実施する。具体的には、
図7(b)に示すように、ポンプロスを減少させることにより損失トルクTlを減少させる処理を実施する。この結果、第2ネガティブトルクTn2が要求減速トルクTxよりも小さくなると、ドライバはアクセルペダルを踏みこむことがなくなり、車両100の減速時に燃料カット状態が継続されることで、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。なお、
図7(a)は、
図6(a)と同じであり、重複した説明を省略する。
【0070】
損失トルクTlを減少させた結果、第2ネガティブトルクTn2が要求減速トルクTxよりも小さくなることがある。本実施形態の損失減少処理では、第2ネガティブトルクTn2が要求減速トルクTxよりも小さいと、分配処理を実施する。具体的には、
図7(c)に示すように、損失トルクTlを減少させたことによる第2ネガティブトルクTn2の余剰量Tuを、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方に分配して、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を増加させる処理を実施する。この結果、損失トルクTlの一部を、発電トルクTeや駆動トルクTcとして回収することができ、車両100のエネルギ効率の悪化を抑制することができる。
【0071】
また、
図8(a)に示すように、車両100の減速時に、ネガティブトルクTnが要求減速トルクTxよりも小さくなることがある。ネガティブトルクTnが要求減速トルクTxよりも小さくなると、ネガティブトルクTnに基づく減速度合Anがドライバの要求減速度合Axよりも小さくなる。従来技術のように、減速度合Anが要求減速度合Axよりも小さい状態が維持されると、ドライバが減速度合Anをたかめるべく、ブレーキペダルを踏みこむ。つまり、要求減速トルクTxに対するネガティブトルクTnの余剰量Tuを、ブレーキペダルを踏みこむことによるブレーキトルクTbにより消費していた。この結果、車両100の減速時における車両100のエネルギ効率が悪化する。
【0072】
本実施形態では、車両100の減速時に、ネガティブトルクTnが要求減速トルクTxよりも小さくなると、回収増加処理を実施する。具体的には、
図8(b)に示すように、ネガティブトルクTnと要求減速トルクTxとが等しくなるように、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を増加させる処理を実施する。この結果、ドライバはブレーキペダルを踏みこむことがなくなり、車両100の減速時における車両100のエネルギ効率の悪化を抑制することができる。
【0073】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0074】
・車両100の減速時には、オルタネータ22及び圧縮機30によりエンジン10の回転エネルギが回収され、それに応じた減速度合Anで車両100が減速する。この車両100の減速度合Anがドライバの減速要求に対して大きいと、ドライバは減速度合Anをゆるめるべく、アクセルペダルを踏みこむ。この結果、車両100の燃費が悪化する。本実施形態では、ドライバの要求減速度合Axに対して減速度合Anが大きいと判定された場合に、蓄電量Qe及び蓄冷量Qcに応じて、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を減少させる。これにより、ネガティブトルクTnを減少させることができ、減速度合Anが要求減速度合Axに対して大きくなることを抑制することができる。この結果、車両100の減速時にドライバがアクセルペダルを踏みこむことが抑制され、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0075】
・発電トルクTeや駆動トルクTcを減少させると、オルタネータ22や圧縮機30に回収される回転エネルギが減少し、蓄電量Qeや蓄冷量Qcが減少する。これにより、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも小さくなると、バッテリ21から放電することができない。また、蓄冷量Qcが蓄冷下限値Qcdよりも小さくなると、圧縮機30が停止された状況下で、冷却された空気を車室に送ることができない。本実施形態では、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも大きいことを条件に、発電トルクTeを減少させ、蓄冷量Qcが蓄冷下限値Qcdよりも大きいことを条件に、駆動トルクTcを減少させる。これにより、車両100の減速時に、バッテリ21及び蓄冷器36の動作を確保しながら、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0076】
・本実施形態では、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を減少させる場合に、蓄電量Qeと蓄冷量Qcとに応じて、発電トルクTeと駆動トルクTcとの一方を優先的に減少させる。これにより、蓄電量Qeと蓄冷量Qcとの調和を取りながら、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を減少させることができる。
【0077】
・特に本実施形態では、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を減少させる際に、蓄電上限値Qeuに対する蓄電量Qeの蓄電割合Weと、蓄冷上限値Qcuに対する蓄冷量Qcの蓄冷割合Wcとを比較し、いずれか大きいと判定された割合に対応するトルクを優先的に減少させる。これにより、蓄電量Qeの蓄電割合Weと、蓄冷量Qcの蓄冷割合Wcとを略同一に保ちながら、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を減少させることができる。
【0078】
・一方、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも小さく、かつ、蓄冷量Qcが蓄冷下限値Qcdよりも小さい場合には、発電トルクTe及び駆動トルクTcを減少させることができない。本実施形態では、ドライバの要求減速度合Axに対して減速度合Anが大きいと判定された場合であって、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも小さく、かつ、蓄冷量Qcが蓄冷下限値Qcdよりも小さい場合に、ポンピングロスを減少させる。具体的には、ドライバの要求減速度合Axに対して減速度合Anが大きいと判定された場合に、小さいと判定された場合に比べてスロットルバルブ53の開度を開き側に制御する。これにより、吸気管51内の圧力損失が減少し、ポンプロスが減少する。そのため、損失トルクTlを含むネガティブトルクTnを減少させることができ、減速度合Anが要求減速度合Axに対して大きくなることを抑制することができる。この結果、車両100の減速時にドライバがアクセルペダルを踏みこむことが抑制され、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0079】
・スロットルバルブ53の開度を開き側に制御すると、エンジン10に吸入される空気量が増加する。これにより、エンジン10からの排気に含まれる酸素量が増加すると、エンジン10の排気管52に設けられた触媒73の酸素ストレージ量が過剰になる。すると、車両100の減速後の加速開始時において、過剰となった触媒73の酸素を除去するために、エンジン10への燃料噴射量を増量してリッチ燃焼させる必要があり、車両100の燃費が悪化する。本実施形態では、スロットルバルブ53の開度を開き側に制御する場合に、吸気バルブ63の閉弁タイミングが遅れ側となるようにバルブ調整機構69を制御する。これにより、吸気管51内に逆流するEGR量が増加し、エンジン10に吸入される空気量の増加が抑制され、触媒73の酸素ストレージ量が過剰となることが抑制される。この結果、車両100の加速開始時において、エンジン10への燃料噴射量の増量が抑制され、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0080】
・また、スロットルバルブ53の開度を開き側に制御すると、サージタンク56内の吸気負圧Pmの絶対値が大きくなる。これにより、ブレーキブースタ82により生じるブレーキ力が低下し、車両100のブレーキ性能が低下する。本実施形態では、吸気負圧Pmが基準負圧Pkよりも小さい場合に、スロットルバルブ53の開度を開き側に制御する。つまり、吸気負圧Pmに応じてスロットルバルブ53の開度を開き側に制御する。これにより、車両100のブレーキ性能を確保しつつ、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0081】
・本実施形態では、スロットルバルブ53の開度を開き側に制御したことにより、損失トルクTlが過剰に減少した場合には、損失トルクTlを減少した後の減速度合である第2減速度合An2が要求減速度合Axに対して大きくならない範囲で、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を増加させる。これにより、損失トルクTlの一部を発電トルクTeや駆動トルクTcとして回収することができ、車両100のエネルギ効率の悪化を抑制することができる。
【0082】
・また、車両100の減速時において、車両100の減速度合Anがドライバの減速要求に対して小さいと、ドライバは減速度合Anをたかめるべく、ブレーキペダルを踏みこむ。この結果、エンジン10の回転エネルギがブレーキトルクTbにより消費され、車両100のエネルギ効率が悪化する。本実施形態では、ドライバの要求減速度合Axに対して減速度合Anが小さいと判定された場合に、減速度合Anが要求減速度合Axに対して大きくならない範囲で、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を増加させる。これにより、ブレーキトルクTbとして消費されていた回転エネルギを、発電トルクTeや駆動トルクTcとして回収することができ、車両100のエネルギ効率の悪化を抑制することができる。
【0083】
・発電トルクTeや駆動トルクTcを増加させると、オルタネータ22や圧縮機30に回収される回転エネルギが増加し、蓄電量Qeや蓄冷量Qcが増加する。これにより、蓄電量Qeが蓄電上限値Qeuよりも大きくなると、オルタネータ22はバッテリ21に充電することができない。また、蓄冷量Qcが蓄冷上限値Qcuよりも大きくなると、圧縮機30は蓄冷器36に冷媒の熱を蓄えることができない。本実施形態では、蓄電量Qeが蓄電上限値Qeuよりも大きいことを条件に、発電トルクTeを増加させ、蓄冷量Qcが蓄冷上限値Qcuよりも大きいことを条件に、駆動トルクTcを増加させる。これにより、損失トルクTlの一部を発電トルクTeや駆動トルクTcとして好適に回収することができる。
【0084】
・本実施形態では、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を増加させる場合に、蓄電量Qeと蓄冷量Qcとに応じて、発電トルクTeと駆動トルクTcとの一方を優先的に増加させる。これにより、蓄電量Qeと蓄冷量Qcとの調和を取りながら、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を増加させることができる。
【0085】
・特に本実施形態では、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を増加させる際に、蓄電上限値Qeuに対する蓄電量Qeの蓄電割合Weと、蓄冷上限値Qcuに対する蓄冷量Qcの蓄冷割合Wcとを比較し、いずれか小さいと判定された割合に対応するトルクを優先的に増加させる。これにより、蓄電量Qeの蓄電割合Weと、蓄冷量Qcの蓄冷割合Wcとを略同一に保ちながら、発電トルクTeと駆動トルクTcとの少なくとも一方を増加させることができる。
【0086】
(第2実施形態)
次に第2実施形態に係る車両100について
図9,
図10を用いて説明する。第2実施形態に係る車両100は、第1実施形態に係る車両100と比べて、冷凍サイクル39を備えない点で異なる。以下では、第2実施形態に係る回収制御処理と損失減少処理について説明する。
【0087】
図9に本実施形態の回収制御処理のフローチャートを示す。本実施形態の回収制御処理では、ステップS10において、ネガティブトルクTnが発電トルクTe及び損失トルクTlに基づいて算出される。また、ステップS16において、蓄電量Qeのみが取得される。そして、ステップS20でネガティブトルクTnの超過量Tdが算出されると、ステップS100において、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも大きいかを判定する。
【0088】
ステップS100で肯定判定すると、発電トルクTeは減少可能と判定する。この場合、続くステップS102において、ステップS20で算出された超過量Tdを発電トルクTeから減少させ、回収制御処理を終了する。一方、ステップS100で否定判定すると、発電トルクTeは減少不可能と判定する。この場合、続くステップS38において損失減少処理を実施し、回収制御処理を終了する。
【0089】
また、ステップS40でネガティブトルクTnの余剰量Tuが算出されると、ステップS104において、蓄電量Qeが蓄電上限値Qeuよりも小さいかを判定する。ステップS104で肯定判定すると、発電トルクTeは増加可能と判定する。この場合、続くステップS106において、ステップS40で算出された余剰量Tuを発電トルクTeに増加させ、回収制御処理を終了する。一方、ステップS104で否定判定すると、発電トルクTeは増加不可能と判定し、回収制御処理を終了する。
【0090】
図10に本実施形態の損失減少処理のフローチャートを示す。本実施形態の損失減少処理では、ステップS70において、第2ネガティブトルクTn2が発電トルクTe及び損失トルクTlに基づいて算出される。そして、ステップS74でネガティブトルクTnの余剰量Tuが算出されると、ステップS110において、蓄電量Qeが蓄電上限値Qeuよりも小さいかを判定する。
【0091】
ステップS110で肯定判定すると、発電トルクTeは増加可能と判定する。この場合、続くステップS112において、ステップS74で算出された余剰量Tuを発電トルクTeに増加させ、回収制御処理を終了する。一方、ステップS104で否定判定すると、発電トルクTeは増加不可能と判定し、回収制御処理を終了する。
【0092】
・以上説明した本実施形態によれば、ドライバの要求減速度合Axに対して減速度合Anが大きいと判定された場合に、蓄電量Qeに応じて、発電トルクTeを減少させる。これにより、ネガティブトルクTnを減少させることができ、減速度合Anが要求減速度合Axに対して大きくなることを抑制することができる。この結果、車両100の減速時にドライバがアクセルペダルを踏みこむことが抑制され、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0093】
・一方、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも小さい場合には、発電トルクTeを減少させることができない。本実施形態では、ドライバの要求減速度合Axに対して減速度合Anが大きいと判定された場合であって、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも小さい場合に、ポンピングロスを減少させる。これにより、損失トルクTlを含むネガティブトルクTnを減少させることができ、減速度合Anが要求減速度合Axに対して大きくなることを抑制することができる。この結果、車両100の減速時にドライバがアクセルペダルを踏みこむことが抑制され、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0094】
・また、本実施形態では、ドライバの要求減速度合Axに対して減速度合Anが小さいと判定された場合に、減速度合Anが要求減速度合Axに対して大きくならない範囲で、発電トルクTeを増加させる。これにより、ブレーキトルクTbとして消費されていた回転エネルギを発電トルクTeとして回収することができ、車両100のエネルギ効率の悪化を抑制することができる。
【0095】
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、次のように実施されてもよい。
【0096】
・上記実施形態では、要求減速度合Axをブレーキストローク量Sbやエンジン回転速度Neから算出する例を示したが、これに限られない。例えば、ECU40にブレーキストローク量Sbやエンジン回転速度Neに対して要求減速度合Axが予め規定されたマップ情報が記憶されており、このマップ情報と、取得されたブレーキストローク量Sbやエンジン回転速度Neに基づいて要求減速度合Axが決定されてもよい。
【0097】
・上記実施形態では、蓄電基準値が蓄電上限値Qeuである例を示したが、これに限られない。例えば、蓄電下限値Qedであってもよい。蓄冷基準値についても同様である。
【0098】
・上記実施形態では、回収低減処理において発電トルクTeと駆動トルクTcとのいずれも減少不可能と判定された場合に損失減少処理が実施される例を示したが、これに限られない。例えば、ステップS12で算出された減速度合Anが、ステップS14で算出された要求減速度合Axよりも大きいと判定された場合に、損失減少処理が実施されてもよい。これにより、発電トルクTe及び駆動トルクTcを減少させることなく、減速度合Anが要求減速度合Axに対して大きくなることを抑制することができる。
【0099】
・第1実施形態では、蓄電割合Weと蓄冷割合Wcとを比較して、増加割合Wuや減少割合Wdを決定する例を示したが、これに限られず、例えば、蓄電量Qeと蓄冷量Qcとを比較して、増加割合Wuや減少割合Wdを決定してもよい。また例えば、ECU40に蓄電量Qe及び蓄冷量Qcに対して増加割合Wuが予め規定されたマップ情報が記憶されており、このマップ情報と、取得された蓄電量Qeや蓄冷量Qcに基づいて増加割合Wuが決定されてもよい。減少割合Wdについても同様である。
【0100】
・第1実施形態では、蓄冷器36を蒸発器34に設けているが、蓄冷器36の配置はこれに限られず、例えば、圧縮機30の冷媒吸入口と蒸発器34との間に蓄冷器36が接続されてもよければ、蒸発器34と蓄冷器36とが並列に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0101】
13…クランク軸、21…バッテリ、22…オルタネータ、30…圧縮機、36…蓄冷器、100…車両、An…減速度合、Ax…要求減速度合、Qc…蓄冷量、Qe…蓄電量、Tn…ネガティブトルク。