(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】粘着性組成物、粘着剤および粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 133/06 20060101AFI20220519BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220519BHJP
C09J 7/10 20180101ALI20220519BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220519BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J11/08
C09J7/10
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2018143867
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小澤 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆行
(72)【発明者】
【氏名】小▲鯖▼ 翔
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-155911(JP,A)
【文献】特開2017-036393(JP,A)
【文献】国際公開第2015/030080(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、
ポリロタキサン化合物(B)と
を含有する粘着性組成物であって、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、芳香環含有モノマーと、反応性官能基含有モノマーとを含有し、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中における構成モノマー単位としての前記芳香環含有モノマーの含有量が、2.5質量%以上、30質量%以下であり、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中における構成モノマー単位としての前記反応性官能基含有モノマーの含有量が、
8質量%以上、30質量%以下である
ことを特徴とする粘着性組成物。
【請求項2】
前記粘着性組成物中における前記ポリロタキサン化合物(B)の含有量が、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上、20質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の粘着性組成物。
【請求項3】
架橋剤(C)を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の粘着性組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着性組成物を架橋してなる粘着剤。
【請求項5】
2枚の剥離シートと、
前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層と
を備えた粘着シートであって、
前記粘着剤層が、請求項4に記載の粘着剤からなる
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項6】
光学用であることを特徴とする請求項5に記載の粘着シート。
【請求項7】
-40℃の環境下での使用が想定される光学用であることを特徴とする請求項6に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性組成物、粘着剤および粘着シートに関するものであり、特に、低温下で使用され得る光学用として好適な粘着性組成物、粘着剤および粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末等の各種モバイル電子機器は、液晶素子、発光ダイオード(LED素子)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子等を有する表示体モジュールを使用した表示体(ディスプレイ)を備えている。
【0003】
かかるディスプレイにおいては、通常、表示体モジュールの表面側に保護パネルが設けられている。保護パネルと表示体モジュールとの間には、外力により保護パネルが変形したときにも、変形した保護パネルが表示体モジュールにぶつからないように、空隙が設けられている。
【0004】
しかしながら、上記のような空隙、すなわち空気層が存在すると、保護パネルと空気層との屈折率差、および空気層と表示体モジュールとの屈折率差に起因する光の反射損失が大きく、ディスプレイの画質が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、保護パネルと表示体モジュールとの間の空隙を粘着剤層で埋めることにより、ディスプレイの画質を向上させることが提案されている。ただし、保護パネルの表示体モジュール側には、額縁状の印刷層が段差として存在することがある。粘着剤層がその段差に追従しないと、段差近傍で粘着剤層が浮いてしまい、それにより光の反射損失が生じる。そのため、上記の粘着剤層には、段差追従性が要求される。
【0006】
そこで、特許文献1は、構成モノマーとしてヒドロキシル基含有モノマーを含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体と、ポリロタキサンとを含有する粘着剤層を有する光学用透明粘着シートを提案している。当該発明では、上記のようにポリロタキサンを使用することで、(メタ)アクリル酸エステル重合体の架橋点をスライドさせ、架橋と柔軟性の両立による段差追従性を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の粘着剤層が低温環境におかれると、(メタ)アクリル酸エステル重合体とポリロタキサンとの相溶性が低下し、粘着剤層のヘイズ値が高くなってしまう。そうなると、光学用途としての透明性が確保できなくなる。
【0009】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、(メタ)アクリル酸エステル重合体およびポリロタキサン化合物を含有する場合に、常温環境下および低温環境下にてヘイズ値を低くすることのできる粘着性組成物、粘着剤および粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、ポリロタキサン化合物(B)とを含有する粘着性組成物であって、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、芳香環含有モノマーと、反応性官能基含有モノマーとを含有し、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中における構成モノマー単位としての前記芳香環含有モノマーの含有量が、2.5質量%以上、30質量%以下であり、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中における構成モノマー単位としての前記反応性官能基含有モノマーの含有量が、5質量%以上、30質量%以下であることを特徴とする粘着性組成物を提供する(発明1)。
【0011】
上記発明(発明1)に係る粘着性組成物から得られる粘着剤層においては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として上記のモノマーを上記の量で含有することにより、常温環境下および低温環境下でのヘイズ値を低くすることができる。また、当該粘着剤層においては、ポリロタキサン化合物(B)を含有することにより、応力緩和性が高くなり、段差追従性に優れたものとなる。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記粘着性組成物中における前記ポリロタキサン化合物(B)の含有量が、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上、20質量部以下であることが好ましい(発明2)。
【0013】
上記発明(発明1,2)においては、架橋剤(C)を含有することが好ましい(発明3)。
【0014】
第2に本発明は、前記粘着性組成物(発明1~3)を架橋してなる粘着剤を提供する(発明4)。
【0015】
第3に本発明は、2枚の剥離シートと、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層とを備えた粘着シートであって、前記粘着剤層が、前記粘着剤(発明4)からなることを特徴とする粘着シートを提供する(発明5)。
【0016】
上記発明(発明5)においては、光学用であることが好ましい(発明6)。
【0017】
上記発明(発明6)においては、-40℃の環境下での使用が想定される光学用であることが好ましい(発明7)。
【0018】
第4に本発明は、粘着剤層を備えた粘着シートであって、前記粘着剤層の23℃におけるヘイズ値が8%以下であり、前記粘着シートを-40℃の条件にて3日間保管した後における前記粘着剤層のヘイズ値が8%以下であることを特徴とする粘着シートを提供する(発明8)。
【0019】
第5に本発明は、一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材と、前記一の表示体構成部材と前記他の表示体構成部材とを互いに貼合する粘着剤層とを備えた構成体であって、前記粘着剤層が、前記粘着シート(発明8)の粘着剤層を使用したものであることを特徴とする構成体(表示体を含む)を提供する。
【0020】
前記一の表示体構成部材および他の表示体構成部材の一方または両方は、粘着剤層側に段差を有するものであってもよいし、段差を有しないものであってもよい。また、前記一の表示体構成部材および他の表示体構成部材の一方または両方は、硬質板であってもよい。さらに、前記一の表示体構成部材および他の表示体構成部材の両方とも硬質板であってもよく、当該硬質板の一方または両方は、粘着剤層側に段差を有するものであってもよいし、段差を有しないものであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る粘着性組成物、粘着剤および粘着シートは、(メタ)アクリル酸エステル重合体およびポリロタキサン化合物を含有する場合に、常温環境下および低温環境下にてヘイズ値を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る表示体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着性組成物〕
本実施形態に係る粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、ポリロタキサン化合物(B)とを含有し、好ましくはさらに架橋剤(C)を含有する。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、芳香環含有モノマーと、反応性官能基含有モノマーとを含有する。そして、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中における構成モノマー単位としての芳香環含有モノマーの含有量は、2.5質量%以上、30質量%以下であり、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中における構成モノマー単位としての反応性官能基含有モノマーの含有量は、5質量%以上、25質量%以下である。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0024】
上記粘着性組成物Pから得られる粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、上記のモノマーを上記の量で含有することにより、常温環境下でのヘイズ値を低くすることができる。また、低温環境におかれたときにも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)とポリロタキサン化合物(B)との相溶性が維持され、ヘイズ値の上昇を抑制することができる。例えば、上記粘着剤からなる厚さ50μmの粘着剤層を有する粘着シートを-40℃の条件にて3日間保管した後のヘイズ値を、8%以下に抑えることができる。
【0025】
また、ポリロタキサン化合物(B)は、環状分子とそれを貫通する直鎖状分子との機械的結合を有しており、環状分子は直鎖状分子上を自由に移動(スライド)することが可能となっている。粘着性組成物Pから得られる粘着剤は、かかるポリロタキサン化合物(B)を含有することにより、応力緩和性が高くなり、段差追従性に優れたものとなる。
【0026】
特に、粘着性組成物Pが架橋剤(C)を含有する場合に、粘着性組成物Pを架橋させると、架橋剤(C)の反応性基と、ポリロタキサン化合物(B)が有する環状分子の反応性基とが反応し、架橋剤付加物が形成される。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体が有する反応性官能基含有モノマー由来の反応性官能基により、架橋剤付加物中の架橋剤(C)を介してポリロタキサン化合物(B)の1つの環状分子と結合し、同様に、別の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が当該ポリロタキサン化合物(B)の別の環状分子と結合するものと推定される。その結果、複数の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)同士が、上記のスライド可能な機械的結合を有するポリロタキサン化合物(B)を介して架橋された構造(架橋構造)が形成される。かかる架橋構造を含むことで、得られる粘着剤は、応力緩和性により優れ、段差追従性により優れたものとなる。具体的には、上記粘着剤からなる粘着剤層は、段差を有する部材(例えば、表示体構成部材)に貼付したときに、当該段差に追従し易く、段差近傍に隙間、浮き等が生じることが抑制される。さらに、その状態で高温高湿条件下、例えば、85℃、85%RH条件下に72時間置いた場合でも、段差近傍に気泡、浮き、剥がれ等が発生することが抑制される。
【0027】
なお、得られる粘着剤の全てが上記の構造である必要はなく、2つの(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、ポリロタキサン化合物(B)を介さず、架橋剤(C)により直接結合されている構造等を含んでいてもよい。
【0028】
(1)各成分
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、芳香環含有モノマーと、反応性官能基含有モノマーとを含有する。
【0029】
芳香環含有モノマーとしては、重合性の観点から、芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環、フルオレン環等が挙げられ、中でも、低温環境下でのヘイズ値を低くする観点から、ベンゼン環が好ましい。
【0030】
芳香環含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-フェニルエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシブチル、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、低温環境下でのヘイズ値を低くする観点から、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジルまたは(メタ)アクリル酸2-フェニルエチルが好ましく、特にアクリル酸2-フェノキシエチル、アクリル酸ベンジルまたはアクリル酸2-フェニルエチルが好ましく、さらにはアクリル酸2-フェノキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、芳香環含有モノマーを2.5質量%以上含有し、3.0質量%以上含有することが好ましく、特に5.0質量以上%含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤の低温環境下でのヘイズ値上昇を抑制することができる。また、段差追従性をより優れたものとする観点から、芳香環含有モノマーを30質量%以下含有し、25質量%以下含有することが好ましく、特に20質量%以下含有することが好ましく、さらには12質量%以下含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤の常温環境下でのヘイズ値を低く抑えることができる。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として含有する反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの反応性官能基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記反応性官能基含有モノマーの中でも、低温環境下および常温環境下でのヘイズ値を低く抑える観点から、水酸基含有モノマーまたはカルボキシ基含有モノマーが好ましい。本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーの両方を含有してもよいが、それぞれ単独で含有することが好ましく、特に、水酸基含有モノマーのみを含有することが好ましい。
【0034】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として水酸基含有モノマーを含有する場合、上記の中でも、低温環境下でのヘイズ値を低くする観点および架橋剤(C)との反応性の観点から、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたは(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく、特にアクリル酸2-ヒドロキシエチルまたはアクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく、さらにはアクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位としてカルボキシ基含有モノマーを含有する場合、上記の中でも、低温環境下でのヘイズ値を低くする観点および架橋剤(C)との反応性の観点から、アクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中における構成モノマー単位としての反応性官能基含有モノマーの含有量(反応性官能基含有モノマーを2種以上含有する場合には、その合計量)は、5質量%以上であり、10質量%以上であることが好ましく、特に15質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、30質量%以下であり、25質量%以下であることが好ましく、特に20質量%以下であることが好ましい。反応性官能基含有モノマーの含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤の、低温環境下でのヘイズ値上昇を抑制することができ、また、得られる粘着剤の段差追従性を優れたものにすることができる。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位としての反応性官能基含有モノマーとして、水酸基含有モノマーのみを含有する場合、その含有量は、7質量%以上であることが好ましく、特に13質量%以上であることが好ましく、さらには15質量%以上であることが好ましい。また当該含有量は、30質量%以下であることが好ましく、特に25質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。
【0038】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位としての反応性官能基含有モノマーとして、カルボキシ基含有モノマーのみを含有する場合、その含有量は、5質量%以上であることが好ましく、特に7質量%以上であることが好ましく、さらには9質量%以上であることが好ましい。また当該含有量は、25質量%以下であることが好ましく、特に20質量%以下であることが好ましく、さらには15質量%以下であることが好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、良好な粘着性を発現することができる。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよい。
【0040】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、粘着性の観点から、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0041】
上記の中でも、粘着力を効率的に付与するとともに、良好な段差追従性を確保する観点から、アルキル基の炭素数が2~12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アルキル基の炭素数が4~10のアクリル酸アルキルエステルが特に好ましく、アルキル基の炭素数が5~8のアクリル酸アルキルエステルがさらに好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルまたは(メタ)アクリル酸イソオクチルが好ましく、特にアクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルまたはアクリル酸イソオクチルが好ましく、さらにはアクリル酸2-エチルヘキシルまたはアクリル酸イソオクチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、粘着性を付与する観点から、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50質量%含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましく、70質量%含有することが特に好ましい。また、他の成分の配合量を確保する観点から、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを95質量%以下含有することが好ましく、90質量%以下含有することがより好ましく、85質量%以下含有することが特に好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、前述した反応性官能基含有モノマーの作用を阻害しないためにも、反応性を有する官能基を含まないモノマーであることが好ましい。かかる反応性を有する官能基を含まないモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の脂環式構造含有モノマー、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、下限値として、20万以上であることが好ましく、特に30万以上であることが好ましく、さらには40万以上であることが好ましい。重量平均分子量の下限値が上記であると、得られる粘着剤の凝集力を確保して、高温高湿条件下での段差追従性をより優れたものにすることができる。また、上記重量平均分子量は、上限値として、180万以下であることが好ましく、150万以下であることがより好ましく、特に120万以下であることが好ましく、さらには75万以下であることが好ましい。重量平均分子量の上限値が上記であると、得られる粘着剤の柔軟性を確保して、段差追従性をより優れたものにすることができる。ここで、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0046】
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
本実施形態に係る粘着性組成物P中における(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の含有量は、下限値として、60質量%以上であることが好ましく、特に70質量%以上であることが好ましく、さらには80質量%以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の含有量の下限値が上記であることにより、得られる粘着剤の粘着力が良好なものとなる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の含有量は、上限値として、98質量%以下であることが好ましく、特に97質量%以下であることが好ましく、さらには95質量%以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の含有量の上限値が上記であることにより、ポリロタキサン化合物(B)(および架橋剤(C))の含有量を確保して、得られる粘着剤の段差追従性を良好にすることができる。
【0048】
(1-2)ポリロタキサン化合物(B)
ポリロタキサン化合物(B)は、少なくとも2つの環状分子の開口部に直鎖状分子が貫通し、かつ、直鎖状分子の両末端にブロック基を有してなる化合物である。このポリロタキサン化合物(B)においては、環状分子が直鎖状分子上を自由に移動することが可能であるが、ブロック基により環状分子は直鎖状分子からは抜け出せない構造となっている。すなわち、直鎖状分子および環状分子は、共有結合等の化学結合ではなく、いわゆる機械的結合によりその形態を維持するものとなっている。
【0049】
本実施形態におけるポリロタキサン化合物(B)は、反応性基を含む環状分子を有することが好ましい。当該反応性基としては、架橋剤(C)の反応性基と反応可能なものであれば特に限定されず、例えば、水酸基、カルボキシ基等が挙げられ、中でも水酸基が好ましい。
【0050】
本実施形態におけるポリロタキサン化合物(B)は、環状分子として環状オリゴ糖を有することが好ましい。環状オリゴ糖は、修飾しない状態で、反応性基として水酸基を有する。また、ポリロタキサン化合物(B)の環状分子として環状オリゴ糖を使用することにより、適切な環径の選択が可能となり、それにより、直鎖状分子上で環状分子が移動することによる効果が発現しやすい。さらに、様々な置換基等の導入も容易であり、それにより、得られる粘着剤の物性を調整することが可能となる。さらに、環状オリゴ糖であれば、入手も容易であるという利点もある。なお、本明細書において、「環状分子」または「環状オリゴ糖」の「環状」は、実質的に「環状」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で移動可能であれば、環状分子は完全には閉環でなくてもよく、例えば螺旋構造であってもよい。
【0051】
環状オリゴ糖としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン等のシクロデキストリンが好ましく挙げられ、中でも特にα-シクロデキストリンが好ましい。ポリロタキサン化合物(B)の環状分子は、ポリロタキサン化合物(B)中または粘着性組成物P中で2種以上混在していてもよい。
【0052】
上記環状オリゴ糖が反応性基として有する水酸基は、環状オリゴ糖がオリジナル(修飾前の状態をいう。)で有する水酸基であってもよいし、環状オリゴ糖に置換基として導入された水酸基であってもよい。
【0053】
上記環状分子の水酸基価は、下限値として10mgKOH/g以上であることが好ましく、30mgKOH/g以上であることがより好ましく、50mgKOH/g以上であることが特に好ましい。水酸基価の下限値が上記であると、ポリロタキサン化合物(B)が架橋剤(C)と十分に反応することができる。また、上記環状分子の水酸基価は、上限値として1000mgKOH/g以下であることが好ましく、200mgKOH/g以下であることがより好ましく、100mgKOH/g以下であることが特に好ましい。水酸基価の上限値が上記の値を超えると、同一の環状分子において多数の架橋が生じることにより、当該環状分子自体が架橋点となり、ポリロタキサン化合物(B)全体としての架橋点の効果を発揮できなくなり、その結果、得られる粘着剤において十分な柔軟性が確保できなくなるおそれがある。
【0054】
ポリロタキサン化合物(B)の直鎖状分子は、環状分子に包接され、共有結合等の化学結合でなく機械的な結合で一体化することができる分子または物質であって、直鎖状のものであれば、特に限定されない。なお、本明細書において、「直鎖状分子」の「直鎖」は、実質的に「直鎖」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で環状分子が移動可能であれば、直鎖状分子は分岐鎖を有していてもよい。
【0055】
ポリロタキサン化合物(B)の直鎖状分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアクリル酸エステル、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましく、これらの直鎖状分子は、粘着性組成物P中で2種以上混在していてもよい。
【0056】
ポリロタキサン化合物(B)の直鎖状分子の数平均分子量は、下限値として3,000以上であることが好ましく、特に10,000以上であることが好ましく、さらには20,000以上であることが好ましい。数平均分子量の下限値が上記であると、環状分子の直鎖状分子上での移動量が確保され、ポリロタキサン化合物(B)に起因する架橋構造の柔軟性が十分に得られる。また、ポリロタキサン化合物(B)の直鎖状分子の数平均分子量は、上限値として300,000以下であることが好ましく、特に200,000以下であることが好ましく、さらには100,000以下であることが好ましい。数平均分子量の上限値が上記であると、ポリロタキサン化合物(B)の溶媒への溶解性が良好になる。
【0057】
ポリロタキサン化合物(B)のブロック基は、環状分子が直鎖状分子により串刺し状になった形態を保持し得る基であれば、特に限定されない。このような基としては、嵩高い基、イオン性基等が挙げられる。
【0058】
具体的には、ポリロタキサン化合物(B)のブロック基は、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、アントラセン類等、あるいは、数平均分子量1,000~1,000,000の高分子の主鎖または側鎖等が好ましく、これらのブロック基は、ポリロタキサン化合物(B)中または粘着性組成物P中で2種以上混在していてもよい。
【0059】
以上説明したポリロタキサン化合物(B)は、従来公知の方法(例えば特開2005-154675に記載の方法)によって得ることができる。
【0060】
本実施形態に係る粘着性組成物P中におけるポリロタキサン化合物(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として1質量部以上であることが好ましく、特に2質量部以上であることが好ましく、さらには4質量部以上であることが好ましい。ポリロタキサン化合物(B)の含有量の下限値が上記であると、得られる粘着剤の応力緩和性がより高くなり、それによって段差追従性がより優れたものとなる。また、ポリロタキサン化合物(B)の含有量は、上限値として20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましく、8質量部以下であることがさらに好ましい。ポリロタキサン化合物(B)の含有量の上限値が上記であると、得られる粘着剤の常温環境下でのヘイズ値が高くなり過ぎることを抑制することができる。
【0061】
(1-3)架橋剤(C)
架橋剤(C)は、反応性基を有する。この反応性基は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する水酸基またはカルボキシ基、およびポリロタキサン化合物(B)の環状分子が有する反応性基と反応可能なものであればよい。かかる架橋剤(C)は、ポリロタキサン化合物(B)と架橋剤付加物を形成する。そして、当該架橋剤付加物は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)同士を架橋する。
【0062】
架橋剤(C)が有する反応性基としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、ビニルスルホン基、有機金属等が挙げられる。かかる反応性基を有する架橋剤(C)としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、ビニルスルホン系架橋剤、有機チタン・ジルコニウム化合物等が挙げられる。これらの中でも、水酸基との反応性が高いイソシアネート系架橋剤が好ましい。イソシアネート系架橋剤によれば、反応性基として水酸基を有するポリロタキサン化合物(B)の架橋剤付加を十分に行うことができ、それによって、得られる粘着剤の応力緩和性をより優れたものにすることができる。なお、架橋剤(C)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0064】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを含有する場合には、架橋剤(C)として、カルボキシ基との反応性が高いエポキシ系架橋剤を使用することも好ましい。
【0065】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。中でもカルボキシ基との反応性の観点から、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンが好ましい。
【0066】
粘着性組成物P中における架橋剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.03質量部以上であることが好ましく、さらには0.05質量部以上であることが好ましい。架橋剤(C)の含有量の下限値が上記であると、前述したポリロタキサン化合物(B)の架橋剤付加物を良好に形成することができ、得られる粘着剤の応力緩和性をより優れたものにすることができる。また、架橋剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、上限値として2.5質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以下であることがより好ましく、特に1.5質量部以下であることが好ましく、さらには0.5質量部以下であることが好ましい。架橋剤(C)の含有量の上限値が上記であると、架橋の程度を適度なものとし、得られる粘着剤の段差追従性を良好に確保することが可能である。
【0067】
(1-4)活性エネルギー線硬化性成分(D)
粘着性組成物Pは、さらに活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有してもよい。活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有する粘着剤は、硬化前には段差追従性により優れたものとなり、硬化後の粘着剤は、高温高湿条件下での段差追従性により優れたものとなる。
【0068】
活性エネルギー線硬化性成分(D)は、活性エネルギー線の照射によって硬化し、上記の効果が得られる成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、耐ブリスター性により優れる多官能アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。
【0069】
多官能アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型などが挙げられる。上記の中でも、得られる粘着剤の高温高湿条件下での段差追従性の観点から、2官能型もしくは3官能型の多官能アクリレート系モノマーが好ましく、特にトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートまたはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましく、さらにはトリメチロールプロパンジアクリレートまたはトリメチロールプロパントリアクリレートが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性の観点から、多官能アクリレート系モノマーは、分子量1000未満のものが好ましい。
【0070】
粘着性組成物P中における活性エネルギー線硬化性成分(D)の含有量は、得られる粘着剤の凝集力を向上させ、高温高湿条件下での段差追従性をより優れたものとする観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることが特に好ましい。一方、上記含有量は、反り抑制効果を得る観点から、上限値として20質量部以下であることが好ましく、18質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることが特に好ましい。
【0071】
(1-5)各種添加剤
粘着性組成物Pは、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤等を含有してもよい。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
【0072】
ここで、粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有し、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤を含有することにより、活性エネルギー線硬化性成分(D)を効率良く硬化させることができ、また重合硬化時間および紫外線の照射量を少なくすることができる。
【0073】
光重合開始剤としては、例えば、ベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
粘着性組成物P中における光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分(D)100質量部に対して、下限値として、1質量部以上であることが好ましく、特に4質量部以上であることが好ましく、さらには8質量部以上であることが好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、上限値として、30質量部以下であることが好ましく、特に20質量部以下であることが好ましく、さらには15質量部以下であることが好ましい。
【0075】
(2)粘着性組成物の製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、ポリロタキサン化合物(B)とを混合するとともに、所望により、架橋剤(C)、活性エネルギー線硬化性成分(D)、添加剤等を加えることで製造することができる。
【0076】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、無溶剤にて重合してもよい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0077】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0078】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0079】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0080】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、ポリロタキサン化合物(B)、ならびに所望により、架橋剤(C)、活性エネルギー線硬化性成分(D)、希釈溶剤、添加剤等を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0081】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0082】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0083】
〔粘着剤〕
本実施形態に係る粘着剤は、前述した粘着性組成物Pを架橋することにより得られる。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗膜から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0084】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~5分であることが好ましい。
【0085】
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
【0086】
粘着性組成物Pが架橋剤(C)を含有する場合、上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(C)を介して、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)およびポリロタキサン化合物(B)が架橋される。このようにして得られる粘着剤は、段差追従性により優れたものとなる。
【0087】
なお、粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有する場合、上記のように粘着性組成物Pを所望の対象物に塗布し加熱処理を行った後、活性エネルギー線の照射により粘着性組成物Pを硬化させて粘着剤(粘着剤層)を形成してもよいが、活性エネルギー線照射前の状態で被着体に貼付し、その後、活性エネルギー線を照射することが好ましい。これにより、初期段階の段差追従性がより優れたものとなる。
【0088】
本実施形態に係る粘着剤のゲル分率は、下限値として20%以上であり、30%以上であることが好ましく、40%以上であることが特に好ましい。粘着剤のゲル分率の下限値が上記であると、粘着剤の凝集力が高くなり、高温高湿条件下での段差追従性が優れたものとなる。また、本実施形態に係る粘着剤のゲル分率は、上限値として95%以下であり、85%以下であることが好ましく、特に75%以下であることが好ましく、さらには65%以下であることが好ましい。粘着剤のゲル分率の上限値が上記であると、粘着剤が硬くなり過ぎず、初期の段差追従性が優れたものとなる。ここで、粘着剤のゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0089】
なお、粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有する場合、粘着剤は、活性エネルギー線照射後において上記ゲル分率を満たすことが好ましい。
【0090】
〔粘着シート〕
本実施形態に係る粘着シートは、少なくとも、前述した粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着シートであり、好ましくは、当該粘着剤層の片面または両面に剥離シートを積層してなる粘着シートである。
【0091】
本実施形態に係る粘着シートの一例としての具体的構成を
図1に示す。
図1に示すように、一実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0092】
(1)構成要素
(1-1)粘着剤層
粘着剤層11は、前述した粘着剤から構成され、すなわち、粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤から構成される。
【0093】
本実施形態に係る粘着シート1における粘着剤層11の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、下限値として10μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、特に50μm以上であることが好ましい。粘着剤層11の厚さの下限値が上記であると、所望の粘着力を発揮し易く、さらに、通常の段差、例えば表示体構成部材の印刷層による段差に対して十分な段差追従性を確保することができる。
【0094】
また、粘着剤層11の厚さは、上限値として1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、特に300μm以下であることが好ましい。粘着剤層11の厚さの上限値が上記であると、加工性が良好なものとなる。なお、粘着剤層11は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0095】
(1-2)剥離シート
剥離シート12a,12bは、粘着シート1の使用時まで粘着剤層11を保護するものであり、粘着シート1(粘着剤層11)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1において、剥離シート12a,12bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
【0096】
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0097】
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0098】
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
【0099】
(2)物性(ヘイズ値)
本実施形態に係る粘着シート1の粘着剤層11(厚さ:50μm)の23℃におけるヘイズ値は、8%以下であることが好ましく、特に7%以下であることが好ましく、さらには5%以下であることが好ましい。また、本実施形態に係る粘着シート1(粘着剤層11の厚さ:50μm)を-40℃の条件にて3日間保管した後、23℃の条件にて1時間放置したときの、当該粘着剤層11のヘイズ値は、8%以下であることが好ましく、特に7%以下であることが好ましく、さらには5%以下であることが好ましい。粘着剤層11のヘイズ値が上記であることにより、常温環境下でも、低温環境下でも、光透過性に優れ、光学用途として好適なものとなる。特に、粘着剤層11の厚さが50μmと比較的厚くても光透過性に優れるため、段差を有する光学部材を被着体とする場合に好適である。本実施形態に係る粘着シート1では、前述した粘着剤組成物Pを使用することにより、上記のような低いヘイズ値を達成することができる。
【0100】
一方、本実施形態に係る粘着シート1の粘着剤層11(厚さ:50μm)の23℃におけるヘイズ値の下限値は、特に限定されず、0%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましい。また、本実施形態に係る粘着シート1(粘着剤層11の厚さ:50μm)を-40℃の条件にて3日間保管した後の、当該粘着剤層11のヘイズ値の下限値も、特に限定されず、0%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましい。ここで、本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。
【0101】
なお、粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有する場合、粘着剤層11は、活性エネルギー線照射後において上記ヘイズ値を満たすことが好ましい。
【0102】
(3)粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例としては、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成した後、その塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層11となる。以上の工程により、粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0103】
粘着シート1の他の製造例としては、一方の剥離シート12aの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12aを得る。また、他方の剥離シート12bの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート12aと塗布層付きの剥離シート12bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された塗布層が粘着剤層11となる。以上の工程により、上記粘着シート1が得られる。この製造例によれば、粘着剤層11が厚い場合であっても、安定して製造することが可能となる。
【0104】
上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0105】
〔用途〕
本実施形態に係る粘着シート1は、種々の用途に使用することができ、中でも光学用として使用することが好ましく、特に、-40℃の環境下での使用が想定される光学用として使用することが好ましい。また、本実施形態に係る粘着シート1は、段差追従性にも優れるため、粘着剤層11側に段差を有する部材を貼合する用途にも好ましく使用することができる。また、光学用の2枚の硬質板同士を貼合する用途にも好ましく使用することができる。かかる光学用途としては、例えば、表示体(ディスプレイ)や太陽電池モジュールが好ましく挙げられ、特に表示体が好ましく挙げられ、さらには粘着剤層11側に段差を有する表示体が好ましく挙げられる。
【0106】
なお、光学用の2枚の硬質板同士を貼合する用途において、一方または両方の硬質板は、粘着剤層11側に段差を有するものであってもよいし、両方の硬質板とも段差を有しないものであってもよい。段差を有しない硬質板の場合でも、本実施形態における粘着剤層11は、段差追従性に優れるという特性によって高い柔軟性を有しており、それにより、貼合時にしならない硬質板同士を良好に貼合することができる。
【0107】
以下、表示体を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0108】
本実施形態に係る粘着シート1を使用して得られる表示体の一例を
図2に示す。本実施形態に係る表示体2は、少なくとも貼合される側の面に段差を有する第1の表示体構成部材21(一の表示体構成部材)と、第2の表示体構成部材22(他の表示体構成部材)と、それらの間に位置し、第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22を互いに貼合する粘着剤層11とを備えて構成される。本実施形態に係る表示体2では、第1の表示体構成部材21は、粘着剤層11側の面に段差を有しており、具体的には、印刷層3による段差を有している。
【0109】
表示体2としては、例えば、液晶(LCD)ディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電子ペーパー等が挙げられ、タッチパネルであってもよい。また、表示体2としては、それらの一部を構成する部材であってもよい。
【0110】
上記表示体2におけるにおける粘着剤層11は、前述した粘着シート1の粘着剤層11そのものであるか、前述した粘着シート1の粘着剤層11を活性エネルギー線照射により硬化させたものである。
【0111】
第1の表示体構成部材21は、ガラス板、プラスチック板等の他、それらを含む積層体などからなる保護パネルであることが好ましい。この場合、印刷層3は、第1の表示体構成部材21における粘着剤層11側に、額縁状に形成されることが一般的である。
【0112】
上記ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1~5mmであり、好ましくは0.2~2mmである。
【0113】
上記プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、アクリル板、ポリカーボネート板等が挙げられる。プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2~5mmであり、好ましくは0.4~3mmである。
【0114】
なお、上記ガラス板やプラスチック板の片面または両面には、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層等)が設けられていてもよいし、光学部材が積層されていてもよい。また、透明導電膜および金属層は、パターニングされていてもよい。
【0115】
第2の表示体構成部材22は、第1の表示体構成部材21に貼付されるべき光学部材、表示体モジュール(例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール等)、表示体モジュールの一部としての光学部材、または表示体モジュールを含む積層体であることが好ましい。
【0116】
上記光学部材としては、例えば、飛散防止フィルム、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、透明導電性フィルム等が挙げられる。飛散防止フィルムとしては、基材フィルムの片面にハードコート層が形成されてなるハードコートフィルム等が例示される。
【0117】
印刷層3を構成する材料は特に限定されることなく、印刷用の公知の材料が使用される。印刷層3の厚さ、すなわち段差の高さの下限値は、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが特に好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。下限値が上記であることにより、電気配線を視認者側から見えなくする等の隠蔽性を十分に確保することができる。また、上限値は、80μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることが特に好ましい。上限値が上記であることにより、当該印刷層3に対する粘着剤層11の段差追従性の悪化を防止することができる。
【0118】
上記表示体2を製造するには、一例として、粘着シート1の一方の剥離シート12aを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11を、第1の表示体構成部材21の印刷層3が存在する側の面に貼合する。このとき、粘着剤層11は、段差追従性に優れるため、印刷層3による段差近傍に隙間や浮きが生じることが抑制される。
【0119】
その後、粘着シート1の粘着剤層11から他方の剥離シート12bを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11と第2の表示体構成部材22とを貼合する。また、他の例として、第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22の貼合順序を入れ替えてもよい。
【0120】
ここで、粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有する場合、第1の表示体構成部材21および粘着剤層11の積層体と第2の表示体構成部材22とを貼合した後、第1の表示体構成部材21および/または第2の表示体構成部材22越しに粘着剤層11に対して活性エネルギー線を照射して、粘着剤層11を硬化させることが好ましい。これにより、高温高湿条件下での段差追従性がより優れたものとなる。
【0121】
活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0122】
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50~1000mW/cm2程度であることが好ましい。また、光量は、50~10000mJ/cm2であることが好ましく、80~5000mJ/cm2であることがより好ましく、300~2000mJ/cm2であることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10~1000krad程度が好ましい。
【0123】
上記表示体2は、常温環境にて粘着剤層11のヘイズ値を低く抑えつつ、低温環境、例えば-40℃の環境でも、粘着剤層11におけるヘイズ値の上昇を抑制することができる。具体的には、それぞれのヘイズ値を8%以下に抑えることができる。そのため、常温環境下でも、低温環境下でも、粘着剤層11の光透過性が優れ、表示体2の視認性が十分に担保される。なお、上記の効果は、粘着剤層11の厚さが比較的厚くても、発揮されるものである。
【0124】
また、上記表示体2において、粘着剤層11は高温高湿条件下での段差追従性に優れるため、表示体2が、例えば高温高湿条件下(例えば、85℃、85%RH)に置かれた場合でも、段差近傍に気泡、浮き、剥がれ等が発生することが抑制される。
【0125】
なお、本実施形態に係る粘着シート1(粘着剤層11)の表示体における使用位置は、上記の例に限定されるものではない。例えば、本実施形態に係る粘着シート1は、上記のような段差を有しない表示体構成部材同士を貼合するのに使用してもよい。
【0126】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0127】
例えば、粘着シート1における剥離シート12a,12bのいずれか一方または両方は省略されてもよく、また、剥離シート12aおよび/または12bの替わりに所望の光学部材が積層されてもよい。また、第1の表示体構成部材21は、印刷層3以外の段差を有するものであってもよい。さらには、第1の表示体構成部材21のみならず、第2の表示体構成部材22も粘着剤層11側に段差を有するものであってもよい。
【実施例】
【0128】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0129】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル80質量部、アクリル酸2-フェノキシエチル5質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル15質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
【0130】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、ポリロタキサン化合物(B)(アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製,製品名「セルム スーパーポリマー SH3400P」,直鎖状分子:ポリエチレングリコール,環状分子:ヒドロキシプロピル基およびカプロラクトン鎖を有するα-シクロデキストリン,ブロック基:アダマンタン基,重量平均分子量(Mw)70万,水酸基価72mgKOH/g)5.0質量部と、架橋剤(C)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製,製品名「コロネートL」)0.3質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0131】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
PEA:アクリル酸2-フェノキシエチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
Bz:アクリル酸ベンジル
BA:アクリル酸n-ブチル
AA:アクリル酸
[架橋剤(C)]
TDI:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製,製品名「コロネートL」)
エポキシ:N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン(綜研化学社製,製品名「E-AX」)
【0132】
3.粘着シートの製造
上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、100℃で4分間加熱処理して塗布層を形成した。
【0133】
次いで、上記で得られた重剥離型剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382120」)とを、当該軽剥離型剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ50μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。
【0134】
なお、上記粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
【0135】
〔実施例2~8,比較例1~8〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量、ポリロタキサン化合物(B)の配合量、ならびに架橋剤(C)の種類および配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0136】
〔実施例9〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル77質量部、アクリル酸2-フェノキシエチル15質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル8質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)57万であった。
【0137】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部と、ポリロタキサン化合物(B)(アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製,製品名「セルム スーパーポリマー SH3400P」,直鎖状分子:ポリエチレングリコール,環状分子:ヒドロキシプロピル基およびカプロラクトン鎖を有するα-シクロデキストリン,ブロック基:アダマンタン基,重量平均分子量(Mw)70万,水酸基価72mgKOH/g)5.0質量部と、架橋剤(C)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製,製品名「コロネートL」)0.3質量部と、活性エネルギー線硬化性成分(D)としてのトリメチロールプロパントリアクリレート6.0質量部と、光重合開始剤としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.6質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0138】
3.粘着シートの製造
上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を使用する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0139】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0140】
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0141】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表2に示す。
【0142】
なお、実施例9の粘着シートについては、粘着剤層に対して活性エネルギー線(紫外線;UV)を照射(重剥離型剥離シート側から照射)した後のゲル分率を測定した。活性エネルギー線の照射条件は以下の通りである。
【0143】
<活性エネルギー線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm2,光量1000mJ/cm2
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0144】
〔試験例2〕(ヘイズ値の測定)
(1)23℃におけるヘイズ値
実施例および比較例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、ソーダライムガラスに貼付した。次いで、粘着剤層から重剥離型剥離シートを剥がし、得られた積層体における粘着剤層について、23℃の条件にて、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH-5000」)を用いてヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0145】
なお、実施例9の粘着シートについては、上記と同様にしてソーダライムガラスに貼付した後、粘着剤層に対して活性エネルギー線(紫外線)を照射(重剥離型剥離シート側から照射)した。次いで、重剥離型剥離シートを剥がし、得られた積層体における粘着剤層について、23℃の条件にて、ヘイズ値(%)を測定した。活性エネルギー線の照射条件は、試験例1と同様である。
【0146】
(2)-40℃におけるヘイズ値
実施例および比較例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、ソーダライムガラスに貼付した。この積層体を、-40℃の条件にて3日間保管し、その後、23℃の条件にて1時間放置した。次いで、粘着剤層から重剥離型剥離シートを剥がし、得られた積層体における粘着剤層について、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH-5000」)を用いてヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0147】
なお、実施例9の粘着シートについては、上記と同様にしてソーダライムガラスに貼付した後、粘着剤層に対して活性エネルギー線(紫外線)を照射(重剥離型剥離シート側から照射)した。得られた積層体を、-40℃の条件にて3日間保管し、その後、23℃の条件にて1時間放置した。次いで、重剥離型剥離シートを剥がし、得られた積層体における粘着剤層について、ヘイズ値(%)を測定した。活性エネルギー線の照射条件は、試験例1と同様である。
【0148】
〔試験例3〕(段差追従性の評価)
ガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラス イーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ社製,製品名「POS-911墨」)を額縁状(外形:縦90mm×横50mm,幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射(80W/cm2,メタルハライドランプ2灯,ランプ高さ15cm,ベルトスピード10~15m/分)して、印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差(段差の高さ:30μm)を有する段差付ガラス板を作製した。
【0149】
実施例および比較例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。次いで、重剥離型剥離シートを剥がして粘着剤層を表出させ、ラミネーター(フジプラ社製,製品名「LPD3214」)を用いて、粘着剤層が額縁状の印刷全面を覆うように各段差付ガラス板にラミネートした。その後、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理し、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。
【0150】
なお、実施例9の粘着シートについては、PETフィルム越しに粘着剤層に対して活性エネルギー線(紫外線)を照射し、粘着剤層を硬化させた。活性エネルギー線の照射条件は、試験例1と同様である。
【0151】
次いで、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて72時間保管し(耐久試験)、その後、23℃、50%RHの環境下に取り出した。そして、粘着剤層(特に印刷層による段差の近傍)を目視により確認し、以下の基準により段差追従性を評価した。結果を表2に示す。
◎:段差近傍に気泡や浮き・剥がれが確認されなかった。
〇:段差近傍に直径0.2mm以下の気泡が確認され、浮き・剥がれは確認されなかった。
×:段差近傍に直径0.2mm超の気泡、または浮き・剥がれが確認された。
【0152】
【0153】
【0154】
表2から分かるように、実施例で得られた粘着シートは、常温環境下でも、低温環境下でも、ヘイズ値が低く、また、段差追従性にも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の粘着性組成物、粘着剤および粘着シートは、例えば、-40℃等の低温環境で使用されることが想定される表示体(例えば車載用ディスプレイ)における、段差を有する保護パネルと所望の表示体構成部材との貼合に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0156】
1…粘着シート
11…粘着剤層
12a,12b…剥離シート
2…表示体
21…第1の表示体構成部材
22…第2の表示体構成部材
3…印刷層