(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】半導体装置および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/288 20060101AFI20220519BHJP
H01L 29/43 20060101ALI20220519BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20220519BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20220519BHJP
C23C 18/32 20060101ALI20220519BHJP
H02M 7/48 20070101ALN20220519BHJP
H01L 25/07 20060101ALN20220519BHJP
H01L 25/18 20060101ALN20220519BHJP
【FI】
H01L21/288 E
H01L21/288 M
H01L29/46
H01L21/52 B
H01L21/60 301P
C23C18/32
H02M7/48 Z
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2018159171
(22)【出願日】2018-08-28
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】古川 智康
(72)【発明者】
【氏名】守田 俊章
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 大助
(72)【発明者】
【氏名】田畑 利仁
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-157882(JP,A)
【文献】特開2006-206985(JP,A)
【文献】特開2010-205991(JP,A)
【文献】特開2017-059636(JP,A)
【文献】特開2015-053455(JP,A)
【文献】特開2013-243338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28-21/288
H01L 21/3205-21/3215
H01L 21/44-21/445
H01L 21/52
H01L 21/58
H01L 21/60-21/607
H01L 21/768
H01L 23/48-23/50
H01L 23/52-23/538
H01L 29/40-29/51
H01L 25/07
C23C 18/32
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、
前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、
前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、
メッキ成膜後の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi
3Pの結晶化率は0%以上20%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記第1無電解Niメッキ層は、前記第1電極において、前記第1表面の反対側に配置され、銅焼結層を介して導電部材に接合されることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記半導体素子の前記第1表面とは反対側の第2表面に形成された第2電極をさらに備え、
前記第2電極は、第2無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第2無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、
前記第2無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、かつ、前記第2無電解Niメッキ層中のNi
3Pの結晶化率が0%以上20%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置であって、
前記第2無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項4に記載の半導体装置であって、
前記第2無電解Niメッキ層は、前記第2電極において、前記第2表面の反対側に配置され、銅焼結層を介して導電部材に接合されることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項4に記載の半導体装置であって、
前記第1電極の積層構造と前記第2電極の積層構造は、前記半導体素子を挟んで対称に配置された積層構造であり、
前記第1電極の積層構造を構成する膜の膜厚は、対称となる前記第2電極の積層構造を構成する膜の膜厚と略同一であることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項4に記載の半導体装置であって、
前記第2電極は、ボンディングワイヤが接合されるボンディングパッドであることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
一対の直流端子と、
交流出力の相数と同数の交流端子と、
前記一対の直流端子間に接続され、スイッチング素子および逆極性のダイオードの並列回路が2個直列に接続された、交流出力の相数と同数のスイッチングレッグと、
前記スイッチング素子を制御するゲート回路と、を有する電力変換装置であって、
前記スイッチング素子は、請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体装置であることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の構造とその製造方法に係り、特に、半導体装置を搭載する電力変換装置の小型化・高信頼化に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、システムLSI(Large Scale Integration)や電力変換装置、ハイブリッド自動車等の制御装置等、幅広い分野で使用されている。この半導体装置においては、例えば電子部品の電極端子と回路基板上の回路パターンの電極端子との電気的接合には鉛を含んだ「はんだ」や「はんだ合金」によるものが主流であった。
【0003】
一方、地球環境保全の観点から鉛の使用は厳しく制限されており、鉛の使用を制限して鉛を含まない材料で電極等の接合を行う開発が進められている。特に、「高温はんだ」に関してはその代替となる有効な材料がまだ見出されていない。半導体装置の実装技術においては「鉛フリーの階層はんだ」を用いることが必要不可欠なため、この「高温はんだ」に代わる材料の出現が望まれている。
【0004】
また、インバータなどの電力変換器の主要部品であるパワーモジュールでは、低コスト化と小型化が求められている。同様に、パワーモジュール内のパワーデバイスチップにも低コスト化と小型化が求められ、パワーデバイスチップの高出力電流密度を実現する新しい技術が求められる。高出力電流密度になると、パワーデバイスの単位チップ面積当たりの損失が増え、チップ温度が上昇する。このため、損失密度が増えても高温動作可能な高信頼なパッケージ実装技術が求められている。
【0005】
このような背景から、「高温はんだ」に代わり、高温高信頼な材料として金属粒子と有機化合物の複合材料を用いて電極を接合する接合材料が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、「NiまたはCu電極に対して優れた接合強度が得られる接合技術として、酸化第二銅(CuO)粒子と有機物からなる還元剤を含む接合材料を用いて、還元雰囲気下において接合を行う半導体装置」が開示されている。
【0007】
特許文献1に記載の半導体装置は、加熱還元時に100nm以下の銅粒子を生成させ、銅粒子同士を焼結させて接合する。特許文献1に記載の酸化第二銅(CuO)粒子を用いた接合技術は、従来のナノ粒子接合と比較してNiやCuに対する接合性を改善することができ、Ni電極またはCu電極用の接合材料として期待できる。
【0008】
例えば、電力変換装置のインバータに使用されるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やフリーホイールダイオード等のパワー半導体チップのNi電極に銅焼結層からなる接合層を介して電気的に接続端子に接続することが可能である。
【0009】
パワー半導体チップのNi電極は、Al金属の表面上に、例えば、無電解メッキ法によりNi層を成長させるNi電極形成方法がある。
【0010】
また、特許文献2には、「無電解メッキ法によって形成されNi電極を有する半導体装置」が開示されている。特許文献2に記載の半導体装置は、半導体チップ上に低リン濃度の第1層のNiメッキ層と高リン濃度の第2層のNiメッキ層を備え、第1層のNiメッキ層のリン濃度は4wt%以上6wt%未満となっている。Niメッキ層のリン濃度が低い場合、熱処理を施してもニッケルとリンの合金(例えば、Ni3P)の析出による硬化が起こりにくく、メッキ膜のクラックが生じにくいとしている。また、メッキ膜は熱処理によって全体が結晶化すると記載されている。
【0011】
また、特許文献3には、「無電解メッキ法によって形成されたNi/Au電極を有する半導体装置」が開示されている。特許文献3に記載の半導体装置は、Niメッキ層を非晶質とすることで、温度や応力変化に伴って結晶構造が変化したり、粒界ボイドが発生してメッキ被膜が割れたりすることがなく信頼性が高くなるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第5006081号公報
【文献】特開2015-56532号公報
【文献】特許第5669780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、本願発明者らが検討したところ、特許文献2のように、リン濃度が4wt%以上6wt%未満の場合においても、無電解Niメッキ浴の種類やメッキ成膜後の熱処理条件によってはクラックが生じやすいことが判明した。無電解Niメッキ膜にクラックが発生すると温度や応力変化によってクラックが進展し特性不良が生じる可能性がある。
【0014】
また、半導体チップの無電解Niメッキ電極にクラックがあると、銅焼結層からなる接合層を用いて電気的に接続端子に接続した場合、接合層からパワー半導体チップに銅が拡散し、素子リーク電流の増大、素子耐圧の劣化、素子の特性が変動してしまう課題がある。
【0015】
そこで、本発明の目的は、無電解Niメッキ層を含む電極を有する半導体装置において、無電解Niメッキ層でのクラックの発生が少なく、信頼性の高い半導体装置とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明は、半導体素子と、前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、メッキ成膜後の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は0%以上20%以下であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、一対の直流端子と、交流出力の相数と同数の交流端子と、前記一対の直流端子間に接続され、スイッチング素子および逆極性のダイオードの並列回路が2個直列に接続された、交流出力の相数と同数のスイッチングレッグと、前記スイッチング素子を制御するゲート回路と、を有する電力変換装置であって、前記スイッチング素子は、上記に記載の特徴を有する半導体装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、無電解Niメッキ層を含む電極を有する半導体装置において、無電解Niメッキ層でのクラックの発生が少なく、信頼性の高い半導体装置とその製造方法を実現することができる。
【0019】
これにより、半導体装置を搭載する電力変換装置の小型化・高信頼化が可能となる。
【0020】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法における各工程の断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法における各工程の断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る無電解Niメッキのプロセスフローを示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る無電解NiメッキのNiメッキ膜中のリン濃度とNi結晶化度及びクラック発生の関係を示す特性図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る無電解Niメッキ(A浴)のX線回折プロファイルフィッティング図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る無電解Niメッキ(B浴)のX線回折プロファイルフィッティング図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る無電解Niメッキ(C浴)のX線回折プロファイルフィッティング図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る無電解Niメッキ(D浴)のX線回折プロファイルフィッティング図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る無電解Niメッキ(E浴)のX線回折プロファイルフィッティング図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係る無電解Niメッキ(F浴)のX線回折プロファイルフィッティング図である。
【
図12】本発明の第1の実施形態に係る無電解Niメッキ(G浴)のX線回折プロファイルフィッティング図である。
【
図13】本発明の第1の実施形態に係る無電解Niメッキ(F浴)成膜のNi結晶化度とNi
3P結晶化度のアニール温度依存性を示す特性図である。
【
図14】本発明の第1の実施形態に係る無電解Niメッキ(F浴)成膜のX線回折プロファイルのアニール温度依存性を示す特性図である。
【
図15】本発明の第1の実施形態に係る無電解Niメッキのリン濃度の違いによるNi
3P結晶化度のアニール温度依存性を示す特性図である。
【
図16A】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【
図17】本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【
図18】本発明の第4の実施形態に係る電力変換装置の概略構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0023】
図1から
図15を参照して、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置とその製造方法について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の断面図であり、パワー半導体チップのフリーホイールダイオードに適用した場合の断面構造を示している。なお、以下では、n型Si基板を用いたダイオードを想定して説明するが、これに限定されるものではない。p型Si基板を用いた場合においても同様に、取り扱うことができる。また、縦方向に電流を流すIGBTの電極構造においても、同様に取り扱うことができる。更に、SiCやGaN、GaOといったワイドギャップ半導体に関しても同様に取り扱うことができる。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の半導体装置100は、n型Siからなる半導体基板108を備える。半導体基板108は、表面から順に(
図1の上層側から下層側に向かって)、p型半導体層108a、n
-型ドリフト層108b、高濃度のn型不純物領域からなるn
+型半導体層108cを備え、これらの半導体層からなる半導体素子150を形成している。半導体基板108は、第1の半導体チップの電極構造体(カソード電極)112が形成される第1表面108dと、アノード電極109が形成される第2表面108eと、を有する。
【0025】
半導体装置100は、半導体素子150が形成された半導体基板108のn
+型半導体層108cの第1表面108dに、この半導体素子150と電気的に接続され、AlもしくはAl合金からなる第1のAl金属層106a、Cu拡散防止層107、AlもしくはAl合金からなる第2のAl金属層106b、およびNi層104が、この順に(
図1の上層側から下層側に向かって)形成され第1の半導体チップの電極構造体(カソード電極)112と、Ni層104の表面104aに配置され、銅焼結層103を介して第1の半導体チップの電極構造体112と接合された導電部材102と、を備える。
【0026】
ここで、Ni層104は無電解Niメッキ層であり、Ni(ニッケル)、P(リン)を組成として含み、P(リン)の濃度は2.5wt%以上6wt%以下となっている。また、Ni層(無電解Niメッキ層)104におけるNi(ニッケル)の結晶化率は70%以上95%以下となっており、Ni(ニッケル)とP(リン)の化合物Ni3Pの結晶化率は0%以上20%以下となっている。
【0027】
なお、第1の半導体チップは、半導体基板108と、第1の半導体チップの電極構造体(カソード電極)112と、を含んで構成されている。
第1のAl金属層106a、Cu拡散防止層107、第2のAl金属層106b、およびNi層104は、この順に(
図1の上層側から下層側に向かって)形成されて、半導体基板108の裏面側の電極構造体であるカソード電極112を構成する。カソード電極112は、銅焼結層103を用いてセラミックス絶縁基板101上の導電部材102に接合されている。
【0028】
半導体基板108の第2表面108e側のアノード電極109は、AlもしくはAl合金からなる電極構造を有し、一部は、半導体基板108のp型半導体層108aと接しており、他の一部は、絶縁酸化膜110と接している。また、絶縁酸化膜110上には、パッシベーション膜111が形成されている。パッシベーション膜111は、例えばポリイミドで構成されている。
【0029】
[半導体装置100の製造方法]
次に、
図2および
図3を用いて、
図1に示す本実施形態の半導体装置100の製造方法について説明する。
図2および
図3は、半導体装置100の製造方法の各工程を示す図である。
【0030】
<半導体素子150の作製工程>
図2(a)は、本実施形態におけるアノードP型半導体領域形成後の断面図である。
【0031】
先ず、ダイオードを作製するためのSiウエハ90を準備する。Siウエハには、耐圧に応じた比抵抗を有するウエハを用いることができる。例えば、1700Vの耐圧をもつダイオードでは120Ωcm程度、3.3kVの耐圧をもつダイオードでは250Ωcm程度とすることができる。このとき、Siウエハ90は、比抵抗が高くn-層の役割を果たす。以降、p型半導体層108aが形成されたSiウエハ90を、n-ドリフト層108bと呼ぶ。
【0032】
図示しない最初の工程で、Si基板90の表面全体に熱酸化により酸化膜を形成する。次に、p型半導体層108aを設ける領域を形成するためのフォトリソグラフィ工程を行う。このフォトリソグラフィ工程では、Si基板90の表面にレジスト材料を塗布した後、露光、現像することで、p型半導体層108a領域が開口したレジストを形成する。その後、p型不純物をイオン注入する。p型不純物は例えば、ボロンが挙げられる。その後、レジストを除去し、不純物を活性化するためのアニールを施すことにより、
図2(a)に示すように、p型半導体層108aが形成される。
【0033】
図2(b)は、本実施形態におけるコンタクト部形成後の断面図であり、
図2(c)は、アノード電極形成後の断面図である。
【0034】
次に、Si基板90の表面(主面)に熱酸化によるシリコン酸化膜形成、および化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により、絶縁酸化膜110を堆積し、p型半導体層108aとアノード電極109(
図2(c)参照)を接続するコンタクト部を形成するためのフォトリソグラフィ工程を行う。絶縁酸化膜110の表面にレジスト材料を塗布した後、露光、現像により形成されたレジストパターンをマスクに、絶縁酸化膜110をエッチングすることにより、
図2(b)に示すように、p型半導体層108aとアノード電極を接続するコンタクト部が形成される。
【0035】
続いて、AlもしくはAl合金からなるアノード電極109をスパッタリング法により成膜し、フォトリソグラフィ工程によりレジストをパターニングし、エッチングすることにより、
図2(c)に示すように、アノード電極109が形成される。
【0036】
次に、表面保護膜であるパッシベーション膜111(
図3参照)を形成する。保護膜の形成法としては、例えば、ポリイミドの前駆体材料と感光材料とを含有する溶液を塗布し、ターミネーション領域を露光して前駆体をポリイミド化することで、パッシベーション膜(表面保護膜)111を形成することができる。
【0037】
次に裏面カソード側の製造工程について説明する。
【0038】
<裏面カソード側の作製工程>
図3(a)は、本実施形態における表面保護膜形成の裏面n
+型半導体層形成後の断面図である。
【0039】
先ず、n-型ドリフト層108bの裏面を研削し、ウエハ厚を薄くする。ウエハ厚は、耐圧に応じて異なり、例えば、1700V耐圧品では190μm程度、3300V耐圧品では400μm程度である。
【0040】
その後、n-型ドリフト層108bの裏面側からウエハ全面に、n型不純物のイオン注入を行う。n型不純物は、例えばリン(P)やヒ素(As)等が挙げられる。
【0041】
続いて、イオン注入したn型不純物を活性化させるためにレーザアニールを行い、n+型半導体層108cが形成される。
【0042】
<裏面カソード電極112の作製工程>
次に、裏面のカソード電極112の製造方法について説明する。
【0043】
図3(b)は、本実施形態における裏面のカソード電極112形成後の断面図である。
【0044】
カソード電極112は、スパッタリングにより裏面電極の第1のAl金属層106aを例えばAlSi合金が0.6μm、Cu拡散防止層107を例えばチタン(Ti)が0.2μm、第2のAl金属層106bを例えばAlSi合金が2μmを順に成膜することで形成する。
【0045】
裏面のカソード電極112内にチタン(Ti)からなるCu拡散防止層107を設けることで、後述する銅焼結層103からなる接合層を用いて、電気的に接続端子に接続した場合に、この接合層から第1の半導体チップ(p型半導体層108a,n-型ドリフト層108b,n+型半導体層108c)に銅が拡散することを防止し、長期接合信頼性が向上される。
【0046】
なお、本実施形態では、Cu拡散防止層107にチタン(Ti)を用いたが、例えば、導電性を確保したままでCu拡散防止層が形成可能な窒化チタン(TiN)、チタンタングステン(TiW)、タングステン(W)等の材料が同様に使用可能である。
【0047】
<Ni層104の作製工程>
図3(c)は、本実施形態におけるNi層104形成後の断面図である。
【0048】
Ni層104は無電解メッキ法により形成する。
図4に無電解Niメッキのプロセスフローを示す。
図3(c)および
図4には図示しないが、本実施形態ではカソード電極112のみ無電解Niメッキを成膜するためアノード電極109側に表面保護テープを貼り付けて無電解Niメッキを行っている。また、アノード電極109側のみ無電解Niメッキを成膜する場合は、カソード電極112側に表面保護テープを貼り付けて無電解Niメッキを行う。
【0049】
無電解Niメッキのプロセスは、最初に第2のAl金属層106b表面に付着している油分をアルカリ脱脂剤でクリーニングする。(工程1)次に、水酸化ナトリウム(NaOH)をベースとした強アルカリ溶液で第2のAl金属層106bをエッチングし、酸化皮膜を除去する。(工程2)次に、酸化皮膜除去時に生じたAl(OH)
3や不純物を酸洗浄により除去する。(工程3)次に、メッキ液中ですばやくNi置換されるように亜鉛(Zn)を皮膜するジンケート処理を行う。(工程4)
ここで、
図4に示す無電解メッキ工程においては、下地電極となる第2のAl金属層106bは容易に酸化皮膜を形成するため、Niメッキ膜との密着性向上を目的に、亜鉛(Zn)置換を2回繰り返すダブルジンケート処理を行っている。(工程5,工程6)次に、無電解NiメッキによりNi膜を例えば3μm成膜する。(工程7)無電界Niメッキの反応では、還元剤である次亜リン酸塩が酸化され亜リン酸塩になる。
【0050】
このとき電子を放出してNiイオンを還元しNi(メッキ被膜)となる下記の反応でメッキが進行する。
【0051】
H2PO2
-→H2PO3
-+2e-
Ni2
++2e-→Ni
このため、無電解Niメッキ膜104は、リン(P)を含み、P含有量の違いにより性質の異なる被膜が得られる。また、無電解Niメッキ膜は、錯化剤やpH濃度によってリン(P)の含有量が異なる。
【0052】
インバータなどの電力変換器の主要部品であるパワーモジュールに実装される半導体装置100は、パワー半導体チップと導電部材102(例えばCu)で配線層が形成されたセラミック絶縁基板101と、酸化第二銅(CuO)粒子を用いた接合剤で導電部材102とチップ裏面のカソード電極112が接合される。この接合工程において、還元雰囲気下、多段階加熱と加圧が加えられる。接合工程で多段階加熱は、例えば350℃の熱負荷がパワー半導体チップに与えられる。この熱負荷によって、無電解Niメッキ層104にクラックが発生すると、接合層からパワー半導体チップに銅が拡散し、素子リーク電流の増大や素子耐圧の劣化、素子の特性が変動してしまう課題がある。
【0053】
図5は、本願発明者らが検討した、無電解Niメッキ膜104成膜後に350℃の熱処理を行った場合のNiメッキ膜中のリン(P)濃度とNi結晶化度の実験結果である。P濃度はオージェ電子分光法により無電解Niメッキ層104中のP濃度を分析し、Ni結晶化度はX線回折法によって30≦2θ≦62degの範囲で、(結晶質ピーク積分強度総和/全ピーク積分強度総和)×100%の算出式で求めている。
【0054】
本願発明者らが検討した結果から、特許文献2のリン濃度が4wt%以上6wt%未満の場合においても、無電解Niメッキ浴の種類やメッキ成膜後の熱処理によってはクラックが生じやすい場合があり、クラック発生の抑制にはリン濃度に加えてNiメッキ膜のNi結晶化度が高いことが必要であることがわかった。
【0055】
本結果より、クラック抑制のためには、Niメッキ膜のリン(P)の濃度は2.5wt%以上6wt%以下となっており、ニッケル(Ni)の結晶化率が70%以上95%以下となっていることが必要である。
【0056】
図6から
図12に、本願発明者らが検討したA浴(
図6)からG浴(
図12)の無電解Niメッキ膜104成膜後に350℃の熱処理を行った場合のX線回折のプロファイルフィッティング結果をそれぞれ示す。A浴からG浴は、Niメッキ膜中のリン(P)濃度がそれぞれ各図中に示す濃度となる条件に設定されたメッキ浴である。
【0057】
Niの結晶化度が70%以下でNiメッキ膜のクラックが発生するA浴、B浴、C浴及びD浴は、Ni(111)、Ni(200)の回折ピークに加えて、ニッケル-リンの化合物に由来するNi3P(321)及び(141)の回折ピークが観測され、熱処理によって相変化を起こしクラック発生に至ったと考えられる。
【0058】
一方、Niの結晶化度70%以上のE浴、F浴及びG浴は、Ni(111)、Ni(200)の回折ピークが支配的で、わずかにNi3P(321)のピークが観測されるのみであり、熱処理によってNiメッキ膜の相変化が少ないためクラック発生が抑制されたと考えられる。
【0059】
図13は、Niメッキ膜中のリン濃度が2.7wt%のF浴による無電解Niメッキ膜104成膜後の結晶化度のアニール温度依存性を示している。Ni
3Pの結晶化度は、Niの結晶化度と同様にX線回折法によって30≦2θ≦62degの範囲でNi
3Pの回折ピークから(Ni
3Pの結晶質ピーク積分強度総和/全ピーク積分強度総和)×100%の算出式で求めている。
【0060】
リン(P)濃度が低くNiメッキ膜成膜直後からNi結晶化度が高い場合、その後の熱処理によってもNi結晶化度の変化は少なく相変化が少ないためNiメッキ膜のクラック発生は抑制できる。一方、熱負荷が大きくなりニッケル-リンの化合物であるNi3Pの結晶化度が高くとなるとクラックが発生する。
【0061】
図14は、Niメッキ膜中のリン濃度が2.7wt%のF浴による無電解Niメッキ膜104成膜後のX線回折プロファイルのアニール温度依存性を示している。Niメッキ成膜直後の段階でNiの(111)及び(200)の回折線が確認でき、熱負荷が増大すると回折線がシャープになり、高温になるほど結晶化が進行していることがわかる。アニール温度が400℃になるとニッケル-リンの化合物であるNi
3Pが生成されNi
3P(321)及び(141)の回折線が確認できる。
【0062】
図15は、リン(P)濃度が異なる無電解Niメッキ膜のNi
3Pの結晶化度のアニール温度依存性を示している。リン濃度が7.3wt%のA浴のNiメッキは、Ni
3Pの結晶化が250℃以上で始まり、Ni
3Pの結晶化度も高く300℃以上でNiメッキ膜にクラックが発生する。また、リン濃度が2.7wt%のF浴のNiメッキは、Ni
3Pの結晶化が350℃以上で始まり、400℃でNi
3Pの結晶化度が26%となりNiメッキ膜にクラックが発生する。一方、リン濃度が2.5wt%のG浴のNiメッキは、Ni
3Pの結晶化が350℃以上で始まり、400℃でNi
3Pの結晶化度が20%となるがNiメッキ膜にクラックが発生しない。このようにアニール温度の高温化と共にニッケル-リンの化合物であるNi
3Pが生成され、Ni
3Pの結晶化度が20%を超えるとNiメッキ膜にクラックが発生する。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の半導体装置とその製造方法によれば、無電解Niメッキ層104は、Ni(ニッケル)、P(リン)を組成として含み、P(リン)の濃度は2.5wt%以上6wt%以下となっており、Ni(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下となっており、Ni(ニッケル)とP(リン)の化合物Ni3Pの結晶化率は0%以上20%以下とすることでNiメッキ膜の相変化を抑制でき、高耐熱性に優れた特性を得ることができる。
【0064】
つまり、無電解Niメッキ層を含む電極を有する半導体装置において、無電解Niメッキ層でのクラックの発生が少なく、信頼性の高い半導体装置とその製造方法を実現することができる。また、これにより、当該半導体装置を搭載する電力変換装置の小型化・高信頼化が可能となる。
【0065】
なお、本実施形態では、「Ni層(無電解Niメッキ層)104は、Ni(ニッケル)、P(リン)を組成として含み、P(リン)の濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、Ni層(無電解Niメッキ層)104におけるNi(ニッケル)の結晶化率は70%以上95%以下であり、Ni(ニッケル)とP(リン)の化合物Ni3Pの結晶化率は0%以上20%以下である」ことを特徴としているが、これらの条件のうち、少なくとも、「P(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、かつ、前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は0%以上20%以下である」という条件を満たすことで、効果の度合いは低下するが、従来に比べてクラックの発生を抑制することが可能である。
【実施例2】
【0066】
図16Aおよび
図16Bを参照して、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置とその製造方法について説明する。
図16Aは、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置200の断面図である。
図16Bは、
図16Aの半導体装置200のワイヤボンディング後の断面図である。
【0067】
本実施形態の半導体装置200は、実施例1と同様に、パワー半導体チップのフリーホイールダイオードに適用した場合の例である。なお、以下では、n型Si基板を用いたダイオードを想定して説明するが、これに限定されるものではない。p型Si基板を用いた場合においても同様に、取り扱うことができる。また、縦方向に電流を流すIGBTの電極構造においても、同様に取り扱うことができる。更に、SiCやGaN、GaOといったワイドギャップ半導体に関しても同様に取り扱うことができる。
【0068】
図16Aに示すように、本実施形態の半導体装置200は、半導体素子150が形成された半導体基板108の第2表面108eに、AlもしくはAl合金からなるAl金属層109およびNi層104がこの順に(
図16Aの下層側から上層側に向かって)形成されている第2の半導体チップの電極構造体113をさらに備え、第1表面108dの第1の半導体チップの電極構造体112のNi層104と同様にNi層104は無電解Niメッキ層であり、Ni(ニッケル)、P(リン)を組成として含み、P(リン)の濃度は2.5wt%以上6wt%以下となっている。
【0069】
第2の半導体チップの電極構造体113は、第1の半導体チップの電極構造体112が形成される半導体基板108の第1表面108dとは反対側の第2表面108eに形成されている。
【0070】
また、Ni層(無電解Niメッキ層)104におけるNi(ニッケル)の結晶化率は70%以上95%以下となっており、Ni(ニッケル)とP(リン)の化合物Ni3Pの結晶化率は0%以上20%以下となっている。
【0071】
このように、本実施形態の半導体装置200は、第1の半導体チップの電極構造体112と第2の半導体チップの電極構造体113が、半導体基板108の両面に形成され、導電部材102は銅焼結層103を介して第1の半導体チップの電極構造体112と接合されている。また、
図16Bに示すように、第2の半導体チップの電極構造体113は、ボンディングワイヤ151によってセラミック絶縁基板101上の導電部材102に接続される。つまり、第2の半導体チップの電極構造体113は、ボンディングワイヤが接合されるボンディングパッド(パッド電極)である。
【0072】
なお、第2の半導体チップの電極構造体113は、第1の実施形態の
図2および
図3で説明した第1の半導体チップの電極構造体112の作製工程と同様の工程を経て作製する。
【0073】
本実施形態の半導体装置とその製造方法によれば、第1の実施形態の効果に加えて、半導体基板108の両面に同様な電極構成体(第1の半導体チップの電極構造体112と第2の半導体チップの電極構造体113)を設け、Siウエハ90の表面及び裏面で対称性のよい電極膜を形成しているので、電極膜の応力によるウエハ反りを低減でき、製造性を向上させることができる。
【0074】
また、パワーモジュールの高温動作に伴い、半導体チップの表面電極は発熱によりアルミニウムの結晶粒が粗大化し、半導体チップとの線熱膨張係数差により、半導体チップ表面電極に応力が加わりアルミニウムワイヤ(ボンディングワイヤ151)の接合部下の表面電極内にクラックが進展し信頼性が劣化する。この現象を防ぐために、半導体チップ表面電極に発生する応力を低減し、アルミニウム(Al)よりもシリコン(Si)に近い線熱膨張係数をもつニッケル(Ni)をアルミニウム電極上に無電解Niメッキで成膜することでパワーモジュールの高温信頼性が向上できる。
【0075】
また、Ni結晶化度が高く高硬度なNi膜が得られるため、ワイヤボンディング時の半導体チップへの機械的ダメージを低減できる。
【実施例3】
【0076】
図17を参照して、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置とその製造方法について説明する。
図17は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置300の断面図である。
【0077】
本実施形態の半導体装置300は、実施例1と同様に、パワー半導体チップのフリーホイールダイオードに適用した場合の例である。なお、以下では、n型Si基板を用いたダイオードを想定して説明するが、これに限定されるものではない。p型Si基板を用いた場合においても同様に、取り扱うことができる。また、縦方向に電流を流すIGBTの電極構造においても、同様に取り扱うことができる。更に、SiCやGaN、GaOといったワイドギャップ半導体に関しても同様に取り扱うことができる。
【0078】
図17に示すように、本実施形態の半導体装置300は、半導体素子150が形成された半導体基板108の第2表面108eに、AlもしくはAl合金からなる第1のAl金属層106a、Cu拡散防止層107、AlもしくはAl合金からなる第2のAl金属層106b、およびNi層104がこの順に(
図17の下層側から上層側に向かって)形成されている第3の半導体チップの電極構造体301と、第3の半導体チップの電極構造体301のNi層104の表面104aに配置され、銅焼結層103を介して第3の半導体チップの電極構造体301と接合された導電部材102と、をさらに備え、第1表面108dの第1の半導体チップの電極構造体112のNi層104と同様にNi層104は無電解Niメッキ層であり、Ni(ニッケル)、P(リン)を組成として含み、P(リン)の濃度は2.5wt%以上6wt%以下となっている。また、Ni層(無電解Niメッキ層)104におけるNi(ニッケル)の結晶化率は70%以上95%以下となっており、Ni(ニッケル)とP(リン)の化合物Ni
3Pの結晶化率は0%以上20%以下となっている。
【0079】
このように、本実施形態の半導体装置300は、第1の半導体チップの電極構造体112と第3の半導体チップの電極構造体301が、半導体基板108の両面に形成され、導電部材102は銅焼結層103を介して第1の半導体チップの電極構造体112および第3の半導体チップの電極構造体301に接合されている。
【0080】
なお、第1の半導体チップの電極構造体112と第3の半導体チップの電極構造体301は、半導体基板108(半導体素子150)を挟んで上下対称に配置されており、第1の半導体チップの電極構造体112を構成する各膜の膜厚は、対称となる第3の半導体チップの電極構造体301を構成する各膜の膜厚と略同一に形成されている。
【0081】
なお、第3の半導体チップの電極構造体301は、第1の実施形態の
図2および
図3で説明した第1の半導体チップの電極構造体112の作製工程と同様の工程を経て作製する。
【0082】
本実施形態の半導体装置とその製造方法によれば、第2の実施形態の効果に加えて、半導体基板108の両面に同様な電極構成体(第1の半導体チップの電極構造体112と第3の半導体チップの電極構造体301)を設け、Siウエハ90の表面及び裏面で対称性のよい電極膜を形成しているので、高温環境で顕著になる各部材の熱膨張差に起因する熱応力を小さくすることができる。理想的には銅焼結層103の熱膨張係数を導電部材102のそれに一致させることで、銅焼結層103に生じる熱応力が最小になり、長期信頼性が向上する。
【実施例4】
【0083】
図18を参照して、本発明の半導体装置を電力変換装置に適用した第4の実施形態について説明する。
図18は、第1の実施形態に係る半導体装置100を採用した電力変換装置500の構成を示す回路図である。
図18は、本実施形態の電力変換装置500の回路構成の一例と直流電源と三相交流モータ(交流負荷)との接続の関係を示す。なお、ここでは、第1の実施形態に係る半導体装置100を採用した場合を想定して説明するが、第2の実施形態に係る半導体装置200または第3の実施形態に係る半導体装置300を採用する場合でも同様である。
【0084】
本実施形態の電力変換装置500では、第1の実施形態の半導体装置100を電力スイッチング素子501~506として用いている。電力スイッチング素子501~506は、例えばIGBTである。
【0085】
図18に示すように、本実施形態の電力変換装置500は、一対の直流端子であるP端子531、N端子532と、交流出力の相数と同数の交流端子であるU端子533、V端子534、W端子535とを備えている。
【0086】
また、一対の電力スイッチング素子501および502の直列接続からなり、その直列接続点に接続されるU端子533を出力とするスイッチングレッグを備える。また、それと同じ構成の電力スイッチング素子503および504の直列接続からなり、その直列接続点に接続されるV端子534を出力とするスイッチングレッグを備える。また、それと同じ構成の電力スイッチング素子505および506の直列接続からなり、その直列接続点に接続されるW端子535を出力とするスイッチングレッグを備える。
【0087】
電力スイッチング素子501~506からなる3相分のスイッチングレッグは、P端子531、N端子532の直流端子間に接続されて、図示しない直流電源から直流電力が供給される。電力変換装置500の3相の交流端子であるU端子533、V端子534、W端子535は図示しない三相交流モータに三相交流電源として接続されている。
【0088】
電力スイッチング素子501~506には、それぞれ逆並列にダイオード521~526が接続されている。IGBTからなる電力スイッチング素子501~506のそれぞれのゲートの入力端子には、ゲート回路511~516が接続されており、電力スイッチング素子501~506はゲート回路511~516によりそれぞれ制御される。なお、ゲート回路511~516は統括制御回路(不図示)によって統括的に制御されている。
【0089】
ゲート回路511~516によって、電力スイッチング素子501~506を統括的に適切に制御して、直流電源Vccの直流電力は、三相交流電力に変換され、U端子533、V端子534、W端子535から出力される。
【0090】
上記実施例1から実施例3の各実施形態に係る半導体装置を電力変換装置500に適用することで、電力変換装置500の長期信頼性が向上する。また、高温環境の場所に搭載することができ、なおかつ、専用の冷却器を持たなくても長期的な信頼性を確保することが可能になる。或いは、冷却器を小型化でき電力変換装置を小型化できる。
【0091】
なお、本発明は、電子部品中の電気的接合部(例えば、半導体素子と回路部材との接合部)の接合層に関し、特に、無電解Niメッキ層を有する半導体装置に適用して好適である。
【0092】
また、実施例2および実施例3では、半導体素子150の裏面電極(電極構造体112)および表面電極(電極構造体113,電極構造体301)の両方の無電解Niメッキ層104に本発明を適用する例を示したが、裏面電極(電極構造体112)は従来の方法で作製し、表面電極(電極構造体113,電極構造体301)のみに本発明を適用することも可能である。
【0093】
また、実施例4では、本発明の半導体装置の電力変換装置への適用例として、インバータ装置の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、直流-直流コンバータや、交流-直流コンバータなど、他の電力変換装置にも適用することもできる。
【0094】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0095】
また、図中の電気配線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上、必ずしも全ての電気配線を示しているとは限らない。
【0096】
なお、本発明は、以下の付記1から付記6に記載の特徴も有している。
【0097】
[付記1]
(a)半導体基板の裏面に、スパッタリングにより第1のAl(アルミニウム)金属膜を成膜する工程、
(b)前記(a)工程の後、スパッタリングにより前記第1のAl(アルミニウム)金属膜上にCu拡散防止層となるTi(チタン)膜を成膜する工程、
(c)前記(b)工程の後、スパッタリングにより前記Ti(チタン)膜上に第2のAl(アルミニウム)金属膜を成膜する工程、
(d)前記(c)工程の後、無電解メッキ法により前記第2のAl(アルミニウム)金属膜上にNi(ニッケル)膜を成膜する工程、
を有する半導体装置の製造方法であって、
前記Ni(ニッケル)膜は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、P(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、かつ、前記Ni(ニッケル)膜中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0098】
[付記2]
付記1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記Ni(ニッケル)膜は、Ni(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0099】
[付記3]
(a)半導体基板の表面に、スパッタリングによりAl(アルミニウム)金属膜を成膜する工程、
(b)前記(a)工程の後、無電解メッキ法により前記Al(アルミニウム)金属膜上にNi(ニッケル)膜を成膜する工程、
を有する半導体装置の製造方法であって、
前記Ni(ニッケル)膜は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、P(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、かつ、前記Ni(ニッケル)膜中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0100】
[付記4]
付記3に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記Ni(ニッケル)膜は、Ni(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0101】
[付記5]
付記1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(a)工程の前、或いは、前記(d)工程の後に、
(e)半導体基板の表面に、スパッタリングにより第1のAl(アルミニウム)金属膜を成膜する工程、
(f)前記(e)工程の後、スパッタリングにより前記第1のAl(アルミニウム)金属膜上にCu拡散防止層となるTi(チタン)膜を成膜する工程、
(g)前記(f)工程の後、スパッタリングにより前記Ti(チタン)膜上に第2のAl(アルミニウム)金属膜を成膜する工程、
(h)前記(g)工程の後、無電解メッキ法により前記第2のAl(アルミニウム)金属膜上にNi(ニッケル)膜を成膜する工程、
を有する半導体装置の製造方法であって、
前記Ni(ニッケル)膜は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、P(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、かつ、前記Ni(ニッケル)膜中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0102】
[付記6]
付記5に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記Ni(ニッケル)膜は、Ni(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0103】
90…Siウエハ(Si基板)
100,200,300…半導体装置
101…セラミック(絶縁)基板
102…導電部材
103…銅焼結層
104…Ni層(無電解Niメッキ膜)
104a…Ni層の表面
106a…第1のAl金属層
106b…第2のAl金属層
107…Cu拡散防止層
108…半導体基板
108a…p型半導体層
108b…n-型ドリフト層
108c…n+型半導体層
108d…(半導体基板の)第1表面
108e…(半導体基板の)第2表面
109…アノード電極(Al金属層)
110…絶縁酸化膜
111…パッシベーション膜(表面保護膜)
112…第1の半導体チップの電極構造体(カソード電極)
113…第2の半導体チップの電極構造体(アノード電極)
150…半導体素子
151…ボンディングワイヤ
301…第3の半導体チップの電極構造体(アノード電極)
500…電力変換装置
501~506…電力スイッチング素子
511~516…ゲート回路
521~526…ダイオード
531…P端子
532…N端子
533…U端子
534…V端子
535…W端子